説明

磁気記録媒体及び磁気記録装置

【課題】書き込み性能と熱揺らぎ耐性とを両立させることが可能な磁気記録媒体及び磁気記録装置を提供すること。
【解決手段】基材1と、基材1の上に形成された下地層12と、下地層12の上に形成され、異方性磁界がHk1で磁化曲線の反転部の傾きがα1である垂直磁気異方性を有する主記録層7と、主記録層7の上又は下に該主記録層7に接して形成され、異方性磁界がHk2で磁化曲線の反転部の傾きがα2である書き込み補助層8とを有し、異方性磁界Hk1、Hk2と傾きα1、α2とが、それぞれHk2<Hk1及びα2>α1を満たすことを特徴とする磁気記録媒体11による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体及び磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ等で処理される情報量は目覚しい勢いで増大しており、そのコンピュータと共に使用される記録装置に対して、更なる高記録密度が求められている。数ある記録媒体の中で、磁気ディスク等の磁気記録媒体は、他の媒体に比べて歴史的に古く、一般に広く普及している。
【0003】
現在まで市場に供給されている磁気記録媒体の大部分は、記録層に記録された磁化の方向が面内方向に向いた面内磁気記録媒体と呼ばれるものである。この面内磁気記録媒体において高記録密度を得る方法としては、例えば、記録層を薄くすると共に該記録層を構成する磁性結晶粒を微細化し、磁性結晶粒同士の相互作用を低減する方法がある。しかしながら、このように磁性結晶粒を微細化すると、その磁性結晶粒の熱安定性が低下し、磁気ディスクに熱が加わったときに情報が消失する現象が起きてしまう。このような現象は、熱揺らぎ現象と呼ばれ、高記録密度化を阻む一つの要因となっている。
【0004】
そこで、磁性結晶粒を微細化せずに高記録密度を達成する磁気記録媒体として、記録層における磁化の方向を、記録層の面内方向の垂直方向に向ける垂直磁気記録媒体が近年脚光を浴びている。
【0005】
この垂直磁気記録媒体によれば、面内磁気記録媒体と比較して、記録層の表面における一つ一つの磁区の面積が小さくなるので、より大きな記録密度を達成することが可能となる。更に、記録層の面内方向の垂直方向に磁化が向いているので、記録層の厚さを厚くすることが可能となり、記録層を薄膜化した場合に発生する熱揺らぎ現象が起き難い。
【0006】
このような垂直磁気記録媒体の記録層として最近注目されているものに、グラニュラー記録層がある。グラニュラー記録層は、記録層の垂直方向に長い柱状の磁性結晶粒同士が、酸化物又は窒化物によって互いに分離されてなり、例えばCoPt合金等がその磁性結晶粒として用いられる。
【0007】
ところで、そのグラニュラー記録層では、酸化物や窒化物の含有量を増やすと垂直磁気異方性が必要以上に高められる。こうなると、磁気ヘッドを用いてグラニュラー記録層の磁化を反転させるのが困難となり、グラニュラー記録層への情報の書き込みが難しくなる。
【0008】
一方、これとは逆に、酸化物や窒化物の含有量を減らすと、グラニュラー記録層の磁気異方性が低減されて書き込みが行い易くなるものの、熱によって磁性結晶粒の磁化の向きが反転し易くなり、既述の熱揺らぎ現象が発生してしまう。
【0009】
このように、グラニュラー記録層を用いた垂直磁気記録媒体では、書き込み性能と熱揺らぎ耐性とがトレードオフの関係にあり、例えば今後200Gbit/in2以上の高記録密度を達成するには、これらの特性をどのようにして両立させるかが課題となる。
【0010】
なお、本願に関連する技術として、特許文献1には、酸化物含有量の異なる複数のグラニュラー磁性層で記録層を構成し、最下層のグラニュラー磁性層における酸化物含有量を記録層の中で最も高くする点が開示されている。
【0011】
また、特許文献2には、記録層の下に形成される軟磁性層として、垂直磁気異方性を持つ軟磁性層と、面内磁気異方性を持つ軟磁性層とをこの順に形成する点が開示されている。
【0012】
その他に、本願に関連する技術が特許文献3及び特許文献4にも開示されている。
【特許文献1】特開2004−259423号公報
【特許文献2】特開2004−227666号公報
【特許文献3】特開2001−148109号公報
【特許文献4】特開2005−044415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、書き込み性能と熱揺らぎ耐性とを両立させることが可能な磁気記録媒体及び磁気記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一観点によれば、基材と、前記基材の上に形成された下地層と、前記下地層の上に形成され、異方性磁界がHk1で磁化曲線の反転部の傾きがα1である垂直磁気異方性を有する主記録層と、前記主記録層の上又は下に該主記録層に接して形成され、異方性磁界がHk2で磁化曲線の反転部の傾きがα2である書き込み補助層とを有し、前記異方性磁界Hk1、Hk2と前記傾きα1、α2とが、それぞれHk2<Hk1及びα2>α1を満たす磁気記録媒体が提供される。
【0015】
本発明によれば、主記録層と書き込み補助層のそれぞれの異方性磁界Hk1、Hk2と、上記の傾きα1、α2とが、Hk2<Hk1及びα2>α1を満たす。このような特性は、主記録層の垂直磁気異方性が書き込み層のそれよりも大きい場合に見られるものであるため、本発明では、垂直磁気異方性が大きな主記録層と、それが小さな書き込み層とを積層した構造が得られる。
【0016】
主記録層は、垂直磁気異方性が大きいため、それ単独では外部磁界によって磁化が反転し難く、磁気情報を書き込み難い。ところが、上記のように垂直磁気異方性が弱く外部磁界によって磁化が容易に反転する書き込み補助層をその主記録層に接して設けると、これらの層のスピン同士の相互作用によって、書き込み補助層の磁化が外部磁界により反転するのにつられて主記録層の磁化も反転するようになり、主記録層への磁気情報の書き込みが容易になる。
【0017】
しかも、主記録層の垂直磁気異方性が大きいため、主記録層のそれぞれの磁区における磁化同士がそれらの相互作用によってその向きが安定するので、磁気情報を担う磁化の向きが熱によって反転し難くなり、主記録層の熱揺らぎ耐性が高くなる。
【0018】
これらにより、本発明では、書き込み性能と熱揺らぎ耐性とが両立された磁気記録媒体を提供することが可能となる。
【0019】
また、本発明の別の観点によれば、基材と、前記基材の上に形成された下地層と、前記下地層の上に形成され、異方性磁界がHk1で磁化曲線の反転部の傾きがα1である垂直磁気異方性を有する主記録層と、前記主記録層の上又は下に該主記録層に接して形成され、異方性磁界がHk2で磁化曲線の反転部の傾きがα2である書き込み補助層とを有する磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に対向して設けられた磁気ヘッドとを有し、前記異方性磁界Hk1、Hk2と前記傾きα1、α2とが、それぞれHk2<Hk1及びα2>α1を満たす磁気記録装置が提供される。
【0020】
本発明によれば、上記のように書き込み性能と熱揺らぎ特性とが両立された磁気記録媒体を備えるので、書き込み動作が容易であると共に、情報保持の信頼性が長期にわたって保証される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、主記録層と書き込み補助層とを積層し、それぞれの異方性磁界Hk1、Hk2と磁化曲線の反転部の傾きα1<α2が、Hk2<Hk1及びα2>α1を満たすようにした。その結果、主記録層の垂直磁気異方性が書き込み補助層のそれよりも大きくなり、主記録層の熱揺らぎ耐性が向上すると共に、垂直磁気異方性の小さな書き込み補助層によって主記録層での磁化の反転が補助され、主記録層に磁気情報を書き込み易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(1)本発明の実施の形態
次に、本発明の実施の形態に係る磁気記録媒体について、その製造工程を追いながら詳細に説明する。
【0023】
図1〜図2は、本実施形態に係る磁気記録媒体の製造途中の断面図である。この磁気記録媒体は、記録層における磁化の方向が面内方向の垂直方向に向いた垂直磁気記録媒体である。
【0024】
最初に、図1(a)に示すように、表面の化学処理によって剛性が高められたガラス基板等の非磁性の基材1の上に、成膜圧力を約0.3〜0.8Paとするスパッタ法によりCr(クロム)層を厚さ約3nmに形成してそれを第1シード層2とする。なお、第1シード層2の成長レートは特に限定されないが、本実施形態では例えば1nm/secとする。この第1シード層2は、後の工程で積層される膜に基材1の表面状態を伝えないようにする役割を担うと共に、密着層としての機能も有し、これを形成しなくても後の膜の結晶性に問題が無いなら、第1シード層2を省略してもよい。
【0025】
また、基材1はガラス基板に限定されず、記録媒体がハードディスクのようなソリッドな媒体の場合には、プラスチック基板、NiPめっきアルミ合金基板、及びシリコン基板を基材1として採用してもよい。また、記録媒体が可撓性のテープ状である場合には、PET(Poly Ethylene Telephtharate)基材、PEN(Ploy Ethylene Naphthalate)基材、ポリイミド基材等を基材1として使用してもよい。
【0026】
次に、図1(b)に示すように、成膜圧力を0.3〜0.8Pa、成長レートを5nm/secとするスパッタ法により、第1シード層2の上に下側軟磁性裏打層3aとして軟磁性のアモルファスCoZr(コバルト‐ジルコニウム合金)層を厚さ約30nmに形成する。なお、上記のCoZrにTa(タンタル)又はNb(ニオブ)を添加してもよい。また、下側軟磁性裏打層3aを構成する軟磁性のアモルファス材料はCoZrに限定されず、FeC(鉄‐炭素合金)で下側軟磁性裏打層3aを構成してもよい。その場合、FeCにCo(コバルト)又はNi(ニッケル)を添加してもよい。
【0027】
そして、この下側軟磁性裏打層3aの上に、スパッタ法により極薄い非磁性層、例えば厚さ約0.5nm〜0.8nmのRu(ルテニウム)層を形成し、それを磁区制御層3bとする。なお、ルテニウム層に代えて銅層を磁区制御層3bとして形成してもよい。
【0028】
更に、既述の下側軟磁性裏打層3aと同じ成膜条件を採用するスパッタ法を用いて、上側軟磁性裏打層3cとして厚さ約30nmのアモルファスCoZr層を磁区制御層3bの上に形成する。既述の下側軟磁性裏打層3aと同様に、上側軟磁性裏打層3cは軟磁性のアモルファス材料で構成されれば良く、FeC層を上側軟磁性裏打層3cとして形成してもよい。
【0029】
これにより、第1シード層5の上には、下側軟磁性裏打層3a、磁区制御層3b、及び上側軟磁性裏打層3cをこの順に形成してなる裏打層3が形成されたことになる。
【0030】
このような構造の裏打層3では、磁区制御層3bを介して下側軟磁性裏打層3aと上側軟磁性裏打層3cとが反強磁性結合をするため、各軟磁性層3a、3bの磁化M1は互いに反並行の状態で安定する。上側軟磁性層3aもしくは下側軟磁性層3bの膜面内に隣り合う磁化が反対方向を向く場合に見られる「突合せ」が存在しても、そこから漏れる磁束は3a、3cの軟磁性層の磁化が反並行状態にあるため裏打層3内で還流する。その結果、磁壁を発生源とする磁束が裏打層3の上方に延び難くなるため、後述の磁気ヘッドがその磁束を拾わなくなり、上記の磁束に起因して読み取り時に発生するスパイクノイズを減少させることが可能となる。
【0031】
なお、このようにスパイクノイズを減少させる構造としては、反強磁性体層の上に単層の軟磁性裏打層を形成する構造もある。この場合の反強磁性層は、例えばIrMnやFeMn等で構成される。
【0032】
続いて、図1(c)に示すように、裏打層3の上に第2シード層4としてタンタル層を厚さ約3nmに形成する。そのタンタル層はスパッタ法により形成され、例えば成膜圧力0.3〜0.8Pa、成長レート1nm/secが成膜条件として採用される。なお、タンタル層に代えて、炭素層を第2シード層4として形成してもよい。
【0033】
その後に、第2シード層4の上に、成膜圧力を0.3〜0.8Pa、成長をレート1nm/secとするスパッタ法により、軟磁性のNiFe(ニッケル鉄合金)層を厚さ約5nmに形成し、それを配向制御層5とする。
【0034】
配向制御層5を構成するNiFe層は、その下に第2シード層4を形成したことで、裏打層3の表面状態を拾わずに良好なfcc構造の結晶構造となる。このようなfcc構造を持つ配向制御層5は、NiFeの他に、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、NiFeSi(ニッケル鉄シリコン合金)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、及びIn(インジウム)のいずれかでも構成され得る。
【0035】
また、その配向制御層5を上記のようなNiFe等の軟磁性材料で構成すると、配向制御層5が上側軟磁性裏打層3cの機能をも兼ねるようになるので、後述の磁気ヘッドから上側軟磁性裏打層3cまでの距離が見かけ上短くなり、磁気ヘッドによって磁気情報を感度良く拾うことができる。
【0036】
次いで、図1(d)に示すように、成膜圧力を4〜10Paとするスパッタ法により、配向制御層5の上に非磁性層6としてRu層を厚さ約10nmに形成する。そのRu層の成長レートはなるべく低いのが好ましく、本実施形態では0.5nm/secとする。
【0037】
非磁性層6を構成するRu層の結晶構造はhcp(hexagonal close-packed)構造であるが、このhcp構造は配向制御層5の結晶構造であるfcc(face-centered cubic)構造と格子マッチングがよい。更に、配向制御層5は、その下の第2シード層4の上面の凹凸を吸収するようにも機能する。このような配向制御層5の作用によって、配向が一方向に揃えられて良好な結晶性を有する非磁性層6が配向制御層5上に成長する。
【0038】
なお、Ru層に代えて、Co、Cr、W(タングステン)、及びRe(レニウム)のいずれかとRuよりなるRu合金により、hcp構造の非磁性層6を構成するようにしてもよい。
【0039】
ここまでの工程により、基材1の上に、上記の各層2〜6を積層してなる下地層12が形成されたことになる。
【0040】
次に、図2(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0041】
まず、Co70Cr10Pt20ターゲットとSiO2ターゲットとが設けられたスパッタチャンバ内に基材1を入れる。次いで、微量のO2、例えば流量比で0.2%〜2%のO2をArガスに添加してなるガスをスパッタガスとしてチャンバ内に導入して圧力を比較的高圧な約3〜7Paに安定させる。
【0042】
そして、このような状態で、上記のターゲットと基材1との間に、パワーが100〜2000Wの高周波電力を印加することにより、Co70Cr10Pt20とSiO2とのスパッタを開始する。その高周波電力の周波数は特に限定されず、例えば13.56MHzでよい。更に、そのような高周波電力に代えて、パワーが100〜2000W程度のDC電力を用い、チャンバ内で放電を行ってもよい。
【0043】
上記のように、スパッタ法において比較的高圧(約3〜7Pa)の成膜条件を採用すると、低圧且つ高温で成膜する場合と比較して疎な膜ができる。そのため、非磁性層6の上では、ターゲット材料のCo70Cr10Pt20とSiO2とが互いに混ざり合わず、酸化シリコン(SiO2)よりなる非磁性材料7a中にCo70Cr10Pt20よりなる磁性粒子7bが分散されたグラニュラー構造の主記録層7が形成される。その主記録層7では、非磁性材料7aの含有率が約5〜15at%であるのが好ましく、本実施形態ではその含有率が7at%である(Co70Cr10Pt20)93(SiO2)7層が主記録層7として形成される。また、主記録層7の厚さは特に限定されないが、本実施形態では例えば12nmである。そして、主記録層7の成長レートを例えば5nm/secとする。
【0044】
そして、主記録層7の下のhcp構造の非磁性層6は、面内方向の垂直方向に磁性粒子7bの配向を揃えるように機能するため、磁性粒子7bは、非磁性層6と同じように垂直方向に延びたhcp構造の結晶構造となると共に、hcp構造の六角柱の高さ方向が磁化容易軸になり、主記録層7が垂直磁気異方性を呈するようになる。
【0045】
このようなグラニュラー構造の主記録層7では、それぞれの磁性粒子7bが磁化容易軸を揃えて孤立化しているため、主記録層7でのノイズを低減することが可能になる。
【0046】
また、磁性粒子7bにおいて、Pt含有率を25at%以上とすると、主記録層7の磁気異方性定数Kuが低下するので、磁性粒子7bでのPt含有率は25at%未満とするのが好ましい。
【0047】
更に、上記のように、スパッタガス中に流量比で0.2%〜2%程度の微量のO2を添加することにより、主記録層7における磁性粒子7bの孤立化が促進され、電磁変換特性を向上させることが可能になる。
【0048】
なお、磁性粒子7bの孤立化、つまり各磁性粒子7b同士の間隔の拡大は、主記録層7の下の非磁性層6の表面の凹凸を大きくすることによっても促進することができる。このように凹凸を大きくするには、非磁性層6を構成するRu層を、既述のような0.5nm/sec程度の低成長レートで成長すればよい。
【0049】
そして、上記では、非磁性材料7aとして酸化シリコンを採用したが、酸化シリコン以外の酸化物を非磁性材料7aとして用いてもよい。そのような酸化物としては、例えば、Ti(チタン)、Cr、及びZr(ジルコニウム)のいずれかの酸化物がある。更に、Si(シリコン)、Ti、Cr、及びZrのいずれかの窒化物を非磁性材料7bとしてもよい。
【0050】
更に、磁性粒子7bとして、CoとFe(鉄)とを含むCoFe合金で構成される粒子を採用してもよい。このCoFe合金を使用する場合、主記録層7に対して熱処理を施し、磁性粒子7bの結晶構造をHCT(Honeycomb Chained Triangle)構造にするのが好ましい。また、そのCoFe合金に銅又は銀を添加してもよい。
【0051】
次に、Arガスをスパッタガスとするスパッタ法により、CoとCrとを含む合金層、例えばCo66Cr20Pt10B4層を主記録層7の上に厚さ約6nmに形成し、それを書き込み補助層8とする。書き込み補助層8の成膜条件は特に限定されないが、本実施形態では、例えば成膜圧力0.3〜0.8Pa、成長レート3nm/secを採用する。
【0052】
書き込み補助層8を構成するCo66Cr20Pt10B4層は、その下の主記録層7中の磁性粒子7bと同じ結晶構造のhcp構造を有するため、磁性粒子7bと補助層8との格子マッチングは良好であり、結晶性の良い書き込み補助層8が主記録層7上に成長する。
【0053】
また、そのCo66Cr20Pt10B4層では、CrとPtがそれぞれ20at%及び10at%の含有率で含有されているのに対し、主記録層7の磁性粒子7bを構成するCo70Cr10Pt20では、CrとPtがそれぞれ10at%及び20at%の含有率で含有されている。このように、書き込み補助層8と比較して、磁性粒子7bにおけるCrの含有率を低く、且つPtの含有率を高くすることにより主記録層7の垂直磁気異方性が書き込み補助層8よりも一層高められる。その結果、主記録層7での磁気データの分解能が高まって書き込みコア幅を狭くすることが可能となり、主記録層7の高記録密度化を図ることができる。
【0054】
更に、CrとPtの含有率を上記のようにすることで、主記録層7の抗磁力Hcが増大し、主記録層でのノイズの一部、例えば遷移ノイズをより一層低減することも可能となる。
【0055】
以上により、主記録層7と書き込み補助層8とをこの順に積層してなる記録層9が非磁性層6上に形成されたことになる。
【0056】
なお、書き込み補助層8を構成するCo66Cr20Pt10B4層に、Ta(タンタル)、Cu(銅)、及びNi(ニッケル)のいずれかを添加してもよい。
【0057】
その後に、図2(b)に示すように、C2H2ガスを反応ガスとするRF-CVD(Radio Frequency-Chemical Vapor Deposition)法により、記録層9の上に保護層10としてDLC(Diamond Like Carbon)層を厚さ約4nmに形成する。この保護層10の成膜条件は、例えば、成膜圧力約4Pa、高周波電力のパワー1000W、及び基材‐シャワーヘッド間のバイアス電圧200Vである。
【0058】
以上により、本実施形態に係る磁気記録媒体11の基本構造が完成した。
【0059】
図3は、この磁気記録媒体11への書き込み動作を説明するための断面図である。
【0060】
書き込みを行うには、図3に示すように、主磁極13bとリターンヨーク13aよりなる磁気ヘッド13を磁気記録媒体11に対向させ、断面積の小さな主磁極13bで発生した磁束密度が高い記録磁界Hを記録層9に通す。このようにすると、垂直磁気異方性を有する主記録層7のうち、主磁極13bの直下にある磁区では、この記録磁界Hによって磁化が反転し、情報が書き込まれる。
【0061】
記録磁界Hは、このように主記録層7を垂直に貫いた後、磁気ヘッド13と共に磁束回路を構成する裏打層3を面内方向に走り、再び主記録層9を通って、断面積の大きなリターンヨーク13aに低い磁束密度で帰還される。
【0062】
そして、磁気記録媒体11と磁気ヘッド13とを面内において図のAの方向に相対移動させつつ、記録信号に応じて記録磁界Hの向きを変えることにより、垂直方向に磁化された複数の磁区が記録媒体11のトラック方向に連なって形成され、記録信号が磁気記録媒体11に記録されることになる。
【0063】
その磁気記録媒体11では、主記録層7と書き込み補助層8との二層が協同して記録層9を構成するが、このような構造により得られる利点を説明するために、各層の磁気特性について次に説明する。
【0064】
図4(a)の実線の曲線は、書き込み補助層8を形成しない場合において、主記録層7にその磁化容易軸方向の磁界を印加したときの磁化曲線であり、横軸が磁界H、縦軸が磁化Mを表す。また、同図において、点線の曲線は、上記の場合において、主記録層7に面内方向の磁界を印加したときの磁化曲線である。
【0065】
既述のように、主記録層7は、非磁性材料7aと磁性粒子7bとで構成されるグラニュラー構造を有する。このような構造では、主記録層7における非磁性材料7aの含有率を多くして磁性粒子7b同士の間隔を広めると、磁性粒子7a同士の相互作用が小さくなって、主記録層7の磁気異方性が高められる。そのため、主記録層7に外部磁界を印加しても、磁性粒子7aの磁化がその外部磁界によって反転し難くなり、磁化曲線と横軸との成す角a1が小さくなると共に、異方性磁界Hk1が大きくなる。
【0066】
このように、磁気異方性は、上記の角a1と異方性磁界Hk1によって表すことができるが、そのうちの角a1に等価な指標として、磁化曲線の反転部の傾きα1がある。その傾きα1は、磁化反転パラメータ等とも呼ばれ、次の数1によって定義される。
【0067】
【数1】

なお、数1において、Hc1は抗磁力であり、磁化曲線と横軸との交点における磁界Hの値である。
【0068】
グラニュラー構造の磁性層では、磁性粒子同士の間隔が広くなって各磁性粒子の孤立化度が高まるほど傾きαが最小値である1に近づき、上記の間隔が狭くなり各磁性粒子の相互作用が大きくなるほどαが大きくなる。
【0069】
そして、書き込み補助層8を形成しない場合、主記録層7の傾きα1は、典型的には1〜2程度と小さな値になり、異方性磁界Hk1は8〜20kOe程度と大きな値になる。
【0070】
一方、図4(b)は、主記録層7を形成せずに、書き込み補助層8のみを非磁性層6上に形成した場合における、書き込み補助層8の磁化曲線である。図4(a)と同様に、実線の曲線は、書き込み補助層8にその磁化容易軸方向(垂直方向)の磁界を印加したときのものであり、点線は、面内方向に磁界を印加したときの磁化曲線である。
【0071】
書き込み補助層8を構成するCo66Cr20Pt10B4層は、上記した主記録層7と比較して磁気異方性が低い。そのため、書き込み補助層8の磁化反転パラメータ(磁化曲線の傾き)α2は、主記録層の磁化反転パラメータα1よりも大きくなり、5〜30程度の値になる。また、異方性磁界Hk2は3〜10kOe程度になり、主記録層7単独の異方性磁界Hk1よりも小さくなる。
【0072】
これに対し、図4(c)は、図2(b)のように主記録層7と書き込み補助層8とを積層した記録層11の磁化曲線である。図4(c)においても、図4(a)、(b)と同様に、主記録層7にその磁化容易軸方向の磁界を印加した場合の磁化曲線を実線で表し、面内方向の磁界を印加した場合の磁化曲線を点線で表している。
【0073】
同図に示されるように、記録層11の磁化曲線の傾きα0は、主記録層7と補助層8のそれぞれの傾きα1、α2の中間の値となり、また、異方性磁界Hk0も上記のHk1、Hk2の中間の値となる。これは、記録層11が外部磁界に曝されると、磁気異方性が小さく外部磁界に反応し易い書き込み補助層8中の磁化が反転し、これにつられて主記録層7の磁化も反転するので、主記録層7単独の場合よりも記録層11の磁気異方性が小さくなるためである。
【0074】
このように、書き込み補助層8は、それよりも磁気異方性が大きい主記録層7の磁化の反転を補助する機能を有するので、書き込み補助層8が無い場合と比較して、主記録層7の磁化を反転させるのが容易となり、磁気ヘッドから出る書き込み用の磁界を強めなくても、主記録層7への情報の書き込みが容易となる。
【0075】
しかも、主記録層7自体は、書き込み補助層8と比較して磁気異方性が大きく、それぞれの磁区内における磁化が互いに強く結合しているので、熱が印加されても磁化の向きが反転し難く、熱揺らぎ耐性に優れている。
【0076】
これらにより、本実施形態では、書き込み性能と熱揺らぎ耐性とが両立された磁気記録媒体を提供することが可能となる。
【0077】
本願発明者は、この磁気記録媒体11の熱揺らぎ耐性が実際に向上されていることを確かめるため、次のような調査を行った。その調査では、書き込み補助層8を形成せずに主記録層7だけで記録層9を構成したものを比較例とし、その比較例と上記の磁気記録媒体11のそれぞれに対し、読み取り時のS/N比が調査された。その結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

なお、表1において、高周波及び低周波とは、それぞれ500kFCI(Flux Change per Inch)と50kFCIの記録密度で書き込まれている磁気情報を読み取ったことを示す。
【0079】
表1に示されるように、本実施形態では、高周波(500kFCI)では2dB、そして低周波(50kFCI)では4dBだけ比較例よりもS/N比が改善されている。このことから、上記した磁気記録媒体11において、ノイズが実際に低減できることが理解できる。
【0080】
本願発明者は、この磁気記録媒体11の書き込み補助層8の飽和磁化(Ms)を変化させた媒体を作製し、R(Read)/W(Write)評価を行う事で、書き込み補助層8に最適なMsの範囲を見出す調査を行った。
【0081】
この調査では、Co66Cr20Pt10B4ターゲット、Crターゲット、及びCoターゲットが独立して設けられたチャンバを用い、各々のターゲットに印加する電力を独立に制御して堆積レートを調整することにより、書き込み補助層8のMsが異なる複数のサンプルを作成した。各々の媒体の膜厚は、Msと膜厚との積がCo66Cr20Pt10B4を6nm積層したものと同じになるように調整した。その他の成膜条件は第1実施形態の媒体と同じとした。
【0082】
図5(a)、(b)は、上記調査の結果を示すグラフである。
【0083】
これらのうち、図5(a)は、書き込み補助層8のMsによって全S/N比がどのように変化するかを示すグラフである。なお、全S/N比とは、磁気記録媒体11、磁気ヘッド13、及び制御用回路の全てを合わせたS/N比のことである。
【0084】
磁気記録媒体11が実使用に耐え得るには、本調査で用いた磁気ヘッドで5dB以上の全S/N比が必要である。そのような全S/N比を得るには、書き込み補助層8のMsを350emu/cc以上850emu/cc以下にすればよいことが図5(a)から分かる。
【0085】
一方、図5(b)は、書き込み補助層8のMsによって書き込み層8のオーバーライト特性がどのように変化するかを示すグラフである。
【0086】
磁気記録媒体11が実使用に耐え得るには、書き込み補助層8のオーバーライト特性が−35dB以下であることが必要であるが、図5(b)によれば、このようなオーバーライト特性は書き込み補助層8のMsを300emu/cc以上850emu/cc以下とすることにより得られる。
【0087】
これらの結果から、書き込み補助層8のMsを350emu/cc以上850emu/cc以下とする事で、良好なオーバーライト特性と全S/N比とが得られる事が分かる。
【0088】
(2)第2実施形態
上記した第1実施形態では、主記録層7の上に書き込み補助層8を形成したが、これらの形成順序は特に限定されない。本実施形態では、これらの層7、8を第1実施形態とは逆の順序で形成する。
【0089】
図6は、本実施形態に係る磁気記録媒体の断面図である。同図において、第1実施形態で説明した要素には第1実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0090】
図6に示されるように、この磁気記録媒体15では、磁気異方性の小さな書き込み補助層8の上に、それと接して磁気異方性の大きな主記録層7が形成される。これ以外の構成は第1実施形態と同じであり、また、この磁気記録媒体15を構成する各層の成膜条件も第1実施形態と同じである。
【0091】
上記のように、主記録層7と書き込み補助層8との形成順序を第1実施形態の逆にしても、記録層9が外部磁界に曝されることにより、磁気異方性が小さな書き込み補助層8において磁化が容易に反転する。そして、この磁化の反転に伴い、書き込み補助層8と主記録層9のそれぞれのスピン同士の相互作用によって、磁気異方性が大きくそれ単独だけでは磁化が反転し難い主記録層7の磁化も反転する。
【0092】
このように、磁気異方性が小さい書き込み補助層8とそれが大きな主記録層7とを組み合わせることで、主記録層7への磁気情報の書き込みが書き込み補助層8によって容易になると共に、磁気異方性が強く熱揺らぎ耐性に優れた主記録層7によって、書き込まれた磁気情報が主記録層7に安定して保持される。
【0093】
(3)第3実施形態
本実施形態では、第1実施形態で説明した主記録層7だけでなく、書き込み補助層8もグラニュラー構造にする。
【0094】
図7は、本実施形態に係る磁気記録媒体の断面図である。同図において、第1実施形態で説明した要素には第1実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0095】
図7に示すように、本実施形態における書き込み補助層8は、非磁性材料8a中に磁性粒子8bを分散させてなるグラニュラー構造を有する。このような書き込み補助層8は、非磁性材料8a用のターゲットと、磁性粒子8b用のターゲットとが同一チャンバ内に設けられたスパッタ装置により成膜され得る。
【0096】
非磁性材料8aとしては、第1実施形態と同様に、Si、Ti、Cr、及びZrのいずれかの酸化物又は窒化物が採用される。そして、磁性粒子8bとしては、CoCr合金又はCoよりなる粒子が用いられる。なお、CoCr合金を用いる場合は、それにPt、Ta、B、Cu、及びNiのいずれかを添加してもよい。
【0097】
このような書き込み補助層8は、外部磁界に対して磁化が容易に反転され易くするために、主記録層7よりも垂直磁気異方性が小さい必要がある。垂直磁気異方性を小さくするには、主記録層7における非磁性材料7aの含有率と比較して、書き込み補助層8における非磁性材料8aの含有率を低くすればよい。このようにすると、非磁性材料8aによって隣接する磁性粒子8b同士の間隔が狭くなるので、該磁性粒子8bの間の相互作用が強まり、書き込み補助層8の垂直異方性が小さくなる。その結果、書き込み補助層8単独での磁化反転パラメータα2が、図4(b)で説明したように主記録層7の磁化反転パラメータα1よりも大きくなると共に、その異方性磁界Hk2が主記録層7の異方性磁界Hk1よりも小さくなる。
【0098】
これらにより、第1実施形態と同様に、垂直磁気異方性の小さな書き込み補助層8の磁化が外部磁界によって容易に反転し、それにつられて主記録層7の磁化も反転するため、垂直記録層7への書き込みが容易になる。更に、主記録層7の垂直磁気異方性が書き込み補助層8よりも大きいため、主記録層7の磁化が熱によって揺らぎ難くなり、主記録層7の熱揺らぎ耐性が向上する。
【0099】
(4)第4実施形態
本実施形態では、上記した第1実施形態の磁気記録媒体11を備えた磁気記録装置について説明する。
【0100】
図8は、その磁気記録装置の平面図である。この磁気記録装置は、パーソナルコンピュータやテレビの録画装置に搭載されるハードディスク装置である。
【0101】
この磁気記録装置では、磁気記録媒体11が、スピンドルモータ等によって回転可能な状態でハードディスクとして筐体17に収められる。更に、筐体17の内部には、軸16を中心にしてアクチュエータ等により回転可能なキャッリッジアーム14が設けられており、このキャリッジアーム14の先端に設けられた磁気ヘッド13が磁気記録媒体11を上方から走査し、磁気記録媒体11への磁気情報の書き込みと読み取りが行われる。
【0102】
なお、磁気ヘッド13の種類は特に限定されず、GMR(Giant Magnetro Resistive)素子やTMR(Ferromagnetic Tunnel Junction Magnetro Resistive)素子で磁気ヘッドを構成してよい。
【0103】
このようにしてなる磁気記録装置によれば、磁気記録媒体11において、書き込み性能と熱揺らぎ耐性との両立が図られているので、書き込み動作が容易であると共に、情報保持の信頼性が長期にわたって保証される。
【0104】
なお、磁気記録装置は、上記のようなハードディスク装置に限定されず、可撓性のテープ状の磁気記録媒体に対して磁気情報を記録するための装置であってもよい。
【0105】
以下に、本発明の特徴について付記する。
【0106】
(付記1) 基材と、
前記基材の上に形成された下地層と、
前記下地層の上に形成され、異方性磁界がHk1で磁化曲線の反転部の傾きがα1である垂直磁気異方性を有する主記録層と、
前記主記録層の上又は下に該主記録層に接して形成され、異方性磁界がHk2で磁化曲線の反転部の傾きがα2である書き込み補助層とを有し、
前記異方性磁界Hk1、Hk2と前記傾きα1、α2とが、それぞれHk2<Hk1及びα2>α1を満たすことを特徴とする磁気記録媒体。
【0107】
(付記2) 前記主記録層は、磁性粒子を非磁性材料内に分散させてなるグラニュラー構造を有することを特徴とする付記1に記載の磁気記録媒体。
【0108】
(付記3) 前記書き込み補助層の飽和磁化(Ms)は、350emu/cc以上850emu/ccの範囲にあることを特徴とする付記1に記載の磁気記録媒体。
【0109】
(付記4) 前記書き込み補助層と前記磁性粒子は、Co(コバルト)、Cr(クロム)、及びPt(プラチナ)を含む合金で構成されることを特徴とする付記2に記載の磁気記録媒体。
【0110】
(付記5) 前記書き込み補助層と比較して、前記磁性粒子におけるCrの含有率を低くし、且つPtの含有率を高くすることを特徴とする付記4に記載の磁気記録媒体。
【0111】
(付記6) 前記磁性粒子は、コバルトと鉄とを含む合金で構成されることを特徴とする付記2に記載の磁気記録媒体。
【0112】
(付記7) 前記磁性粒子に、銅又は銀を添加したことを特徴とする付記6に記載の磁気記録媒体。
【0113】
(付記8) 前記非磁性材料は、シリコン、チタン、クロム、及びジルコニウムのいずれかの酸化物若しくは窒化物であることを特徴とする付記2に記載の磁気記録媒体。
【0114】
(付記9) 前記書き込み補助層は、コバルトとクロムとを含む合金層よりなることを特徴とする付記1に記載の磁気記録媒体。
【0115】
(付記10) 前記コバルトとクロムとを含む合金層に、白金、タンタル、ホウ素、銅、及びニッケルのいずれかを添加したことを特徴とする付記9に記載の磁気記録媒体。
【0116】
(付記11) 前記下地層は、軟磁性層を有する裏打層と、最上層に形成された非磁性層とを含む積層膜であることを特徴とする付記1に記載の磁気記録媒体。
【0117】
(付記12) 前記軟磁性層は、軟磁性のアモルファス材料で構成されることを特徴とする付記11に記載の磁気記録媒体。
【0118】
(付記13) 前記アモルファス軟磁性材料は、コバルト‐ジルコニウム合金、又は鉄‐炭素合金であることを特徴とする付記12に記載の磁気記録媒体。
【0119】
(付記14) 前記非磁性層の上に前記主記録層が接して形成されると共に、該主記録層が、磁性粒子を非磁性材料内に分散させてなるグラニュラー構造を有し、
前記非磁性層の結晶構造と前記磁性粒子の結晶構造とが同じであることを特徴とする付記11に記載の磁気記録媒体。
【0120】
(付記15) 前記結晶構造はhcp構造であることを特徴とする付記14に記載の磁気記録媒体。
【0121】
(付記16) 前記下地層は結晶構造がfcc構造の配向制御層を含み、該配向制御層の上に前記非磁性層が形成されたことを特徴とする付記15に記載の磁気記録媒体。
【0122】
(付記17) 前記配向制御層は、白金、パラジウム、ニッケル鉄合金、ニッケル鉄シリコン合金、アルミニウム、銅、及びインジウムのいずれかで構成されることを特徴とする付記16に記載の磁気記録媒体。
【0123】
(付記18) 基材と、
前記基材の上に形成された下地層と、
前記下地層の上に形成され、異方性磁界がHk1で磁化曲線の反転部の傾きがα1である垂直磁気異方性を有する主記録層と、
前記主記録層の上又は下に該主記録層に接して形成され、異方性磁界がHk2で磁化曲線の反転部の傾きがα2である書き込み補助層とを有する磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対向して設けられた磁気ヘッドとを有し、
前記異方性磁界Hk1、Hk2と前記傾きα1、α2とが、それぞれHk2<Hk1及びα2>α1を満たすことを特徴とする磁気記録装置。
【0124】
(付記19) 前記主記録層は、磁性粒子を非磁性材料内に分散させてなるグラニュラー構造を有することを特徴とする付記18に記載の磁気記録装置。
【0125】
(付記20) 前記書き込み補助層と前記磁性粒子は、Co(コバルト)、Cr(クロム)、及びPt(プラチナ)を含む合金で構成されることを特徴とする付記18に記載の磁気記録媒体。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1(a)〜(d)は、本発明の第1実施形態に係る磁気記録媒体の製造途中の断面図(その1)である。
【図2】図2(a)、(b)は、本発明の第1実施形態に係る磁気記録媒体の製造途中の断面図(その2)である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態に係る磁気記録媒体への書き込み動作を説明するための断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の第1実施形態において、書き込み補助層を形成しない場合の主記録層の磁化曲線であり、図4(b)は、主記録層を形成せずに書き込み補助層のみを非磁性層上に形成した場合における書き込み補助層の磁化曲線であり、図4(c)は、主記録層と書き込み補助層とを積層した記録層の磁化曲線である。
【図5】図5(a)は、書き込み補助層の飽和磁化(Ms)によって全S/N比がどのように変化するかを示すグラフであり、図5(b)は、書き込み補助層の飽和磁化によって書き込み層のオーバーライト特性がどのように変化するかを示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態に係る磁気記録媒体の断面図である。
【図7】図7は、本発明の第3実施形態に係る磁気記録媒体の断面図である。
【図8】図8は、本発明の第4実施形態に係る磁気記録装置の平面図である。
【符号の説明】
【0127】
1…基材、2…第1シード層、3a…下側軟磁性裏打層、3…裏打層、3b…磁区制御層、3c…上側軟磁性裏打層、4…第2シード層、5…配向制御層、6…非磁性層、7…主記録層、7a…非磁性材料、7b…磁性粒子、8…書き込み補助層、9…記録層、10…保護層、11、15…磁気記録媒体、12…下地層、13…磁気ヘッド、13a…リターンヨーク、13b…主磁極、14…キャリッジアーム、16…軸、17…筐体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上に形成された下地層と、
前記下地層の上に形成され、異方性磁界がHk1で磁化曲線の反転部の傾きがα1である垂直磁気異方性を有する主記録層と、
前記主記録層の上又は下に該主記録層に接して形成され、異方性磁界がHk2で磁化曲線の反転部の傾きがα2である書き込み補助層とを有し、
前記異方性磁界Hk1、Hk2と前記傾きα1、α2とが、それぞれHk2<Hk1及びα2>α1を満たすことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記主記録層は、磁性粒子を非磁性材料内に分散させてなるグラニュラー構造を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記書き込み補助層の飽和磁化(Ms)は、350emu/cc以上850emu/ccの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記書き込み補助層と前記磁性粒子は、Co(コバルト)、Cr(クロム)、及びPt(プラチナ)を含む合金で構成されることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記書き込み補助層と比較して、前記磁性粒子におけるCrの含有率を低くし、且つPtの含有率を高くすることを特徴とする請求項4に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記下地層は、軟磁性層を有する裏打層と、最上層に形成された非磁性層とを含む積層膜であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
前記非磁性層の上に前記主記録層が接して形成されると共に、該主記録層が、磁性粒子を非磁性材料内に分散させてなるグラニュラー構造を有し、
前記非磁性層の結晶構造と前記磁性粒子の結晶構造とが同じであることを特徴とする請求項6に記載の磁気記録媒体。
【請求項8】
前記結晶構造はhcp構造であることを特徴とする請求項7に記載の磁気記録媒体。
【請求項9】
基材と、
前記基材の上に形成された下地層と、
前記下地層の上に形成され、異方性磁界がHk1で磁化曲線の反転部の傾きがα1である垂直磁気異方性を有する主記録層と、
前記主記録層の上又は下に該主記録層に接して形成され、異方性磁界がHk2で磁化曲線の反転部の傾きがα2である書き込み補助層とを有する磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対向して設けられた磁気ヘッドとを有し、
前記異方性磁界Hk1、Hk2と前記傾きα1、α2とが、それぞれHk2<Hk1及びα2>α1を満たすことを特徴とする磁気記録装置。
【請求項10】
前記主記録層は、磁性粒子を非磁性材料内に分散させてなるグラニュラー構造を有することを特徴とする請求項9に記載の磁気記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−309922(P2006−309922A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53288(P2006−53288)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】