説明

磁気記録媒体用バインダー及び磁気記録媒体

【課題】 磁気テープ走行時に発生する100℃以上の高温度下でも引張り破断強度等の樹脂の機械的強度が維持され、耐久性(耐熱性や耐摩擦性等)に優れる磁気記録媒体用バインダーを提供する。
【解決手段】 活性水素成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させてなるポリウレタン樹脂(C)からなる磁気記録媒体用バインダーであって、前記(A)が1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(無水物)(x)と炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y)とを必須成分として反応させてなるポリエステルポリオール(a1)を、前記(A)と前記(B)の合計重量に対して0.2〜50重量%含有することを特徴とする磁気記録媒体用バインダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ、磁気カード、磁気ディスク等の磁気記録媒体の製造に用いられるバインダー及びそのバインダーを用いた磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気記録媒体用バインダーとしては、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂が用いられている。これらの樹脂の内ポリウレタン樹脂は、ウレタン結合による分子間水素結合により他の樹脂と比べて強靭性、耐磨耗性が優れているが、磁気記録媒体の高密度化によりさらなる高物性のポリウレタン樹脂が求められている。ポリウレタン樹脂の機械的強度を高くする最も一般的な方法としては、鎖延長剤とポリイソシアネートで構成されるハードセグメントの量を増やすことが知られていた。
上記方法以外にも芳香族ポリイソシアネート、鎖延長剤、芳香族二塩基酸及び側鎖を有する脂肪族系ジオールからなるポリエステルポリオール、脂肪族又は脂環族二塩基酸及び側鎖を有する脂肪族系ジオールからなるポリエステルポリオールから得られるポリエステルウレタンが、樹脂の機械的強度に優れるという報告がなされている(例えば、特許文献1参照)。
しかしこれらの方法で得られたポリウレタン樹脂は、100℃以上の環境で高い樹脂強度を維持することは困難であり、例えばフィルムに成型した際、100℃以上の温度では引張り破断強度が低下し、フィルム剥離や破れ等が発生しやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−256526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、磁気テープ走行時に発生する100℃以上の高温度下でも引張り破断強度等の樹脂の機械的強度が維持され、耐久性(耐熱性や耐摩擦性等)に優れる磁気記録媒体用バインダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、これらの課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、活性水素成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させてなるポリウレタン樹脂(C)からなる磁気記録媒体用バインダーであって、前記(A)が1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(無水物)(x)と炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y)とを必須成分として反応させてなるポリエステルポリオール(a1)を、前記(A)と前記(B)の合計重量に対して0.2〜50重量%含有することを特徴とする磁気記録媒体用バインダー、及び該バインダーを含有してなる磁気記録媒体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の磁気記録媒体用バインダーは、磁気テープ走行時に発生する100℃以上の高温度域でも樹脂の機械的強度が維持され、磁気テープの剥離及び破れ等が発生しにくく、耐久性(耐熱性や耐摩擦性等)に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の磁気記録媒体用バインダーは、活性水素成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させてなるポリウレタン樹脂(C)からなり、(A)が1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(無水物)(x)と炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y)とを必須成分として反応させてなるポリエステルポリオール(a1)を含有することを特徴とする。
本発明において記号(x)で表される1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(無水物)とは、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及び/又は1,2,4−ベンゼントリカルボン酸1,2−無水物を意味する。
【0008】
ポリエステルポリオール(a1)を構成する炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(y)としては、炭素数2〜10のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、及び1,10−デカンジオール等)並びに炭素数4〜10のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等)等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0009】
これら(y)の内、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(無水物)(x)との反応性の観点から、分子末端に1級炭素に結合する水酸基を有する分岐のない脂肪族ジオール(エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,10−デカンジオール等)が好ましく、更に好ましいのはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール及び1,4−ブタンジオール、特に好ましいのはエチレングリコール及び1,3−プロピレングリコールである。
【0010】
ポリエステルポリオール(a1)は1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(無水物)(x)と炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y)とを必須成分として反応させて得られるが、水酸基含有成分として、(y)の他に炭素数1〜30のモノアルコール及び/又は水酸基価が18〜600のポリエーテルポリオールを使用することができる。
【0011】
水酸基価が18〜600のポリエーテルポリオールとしては、上記炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y)、単環多価フェノール類(ピロガロール、ハイドロキノン及びフロログルシン等)及びビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等)等に炭素数2〜4のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記:例えば、エチレンオキサイド、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド、1,2−,1,3−又は2,3−ブチレンオキサイド及びテトラヒドロフラン(以下、THFと略記)等の単独又はこれら2種以上を併用)を付加させたもの等が挙げられる。
【0012】
水酸基価が18〜600のポリエーテルポリオールに用いられる炭素数2〜4のAOとしては、引張強度の観点からエチレンオキサイド、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド及びTHFが好ましい。AOは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、AOを2種以上併用する場合の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0013】
炭素数1〜30のモノアルコールとしては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(無水物)(x)とエステルを形成できるものであれば特に限定されないが、具体例としては、炭素数1〜30のアルカノール(メタノール、エタノール、プロパノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコール等)、炭素数2〜30のアルケノール(オレイルアルコール及びリノリルアルコール等)、炭素数7〜30の芳香脂肪族アルコール(ベンジルアルコール等)等が挙げられる。これらの内、生産性の観点から好ましいのは、炭素数10〜30のアルカノール、炭素数10〜30のアルケノール及びベンジルアルコールである。
【0014】
ポリエステルポリオール(a1)を構成する1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(無水物)(x)と、炭素数が2〜10の脂肪族ジオール(y)並びに必要により使用する炭素数1〜30のモノアルコール及び/又は水酸基価が18〜600のポリエーテルポリオールとのモル比は、1:1〜1:3であることが好ましく、更に好ましくは1:1.2〜1:3モル、特に好ましくは1:2〜1:3モルである。
【0015】
ポリエステルポリオール(a1)の合成は、副反応抑制の観点から100〜230℃で、5〜200mmHgの減圧下で行うことが好ましい。必要により、エステル化触媒を用いてもよい。エステル化触媒としては、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、特開2006−243715号公報に記載の触媒{チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)及びこれらの分子内重縮合物等}及び特開2007−11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)及び酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましいのはチタン含有触媒である。
【0016】
ポりエステルポリオール(a1)の数平均分子量(以下、Mnと略記)は、樹脂の強度の観点から、180〜2,000が好ましく、更に好ましくは200〜1500、最も好ましくは220〜1200である。
【0017】
本発明におけるMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定される。
装置 : 東ソー(株)製 HLC−8120(一例)
カラム : TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕(一例)
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
尚、測定に際しては、試料をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
【0018】
ポリエステルポリオール(a1)の酸価は、樹脂強度の観点から、300mgKOH/g以下が好ましく、更に好ましくは0〜280mgKOH/g、特に好ましくは0〜180mgKOH/gである。酸価が300mgKOH/g以上になると温度依存性が高くなり、100℃以上で樹脂強度が低下する傾向にある。
【0019】
(a1)の水酸基価は、ポリイソシアネート成分(B)との反応率の観点から、10〜1,000mgKOH/gが好ましく、更に好ましくは50〜800、特に好ましくは50〜700である。
本発明における酸価及び水酸基価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定される。
ポリエステルポリオール(a1)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明における活性水素成分(A)は、ポリエステルポリオール(a1)を必須成分として含有するが、その他の成分として、Mnが500以上の高分子量ポリオール(a2)、化学式量又はMnが500未満の低分子量ポリオール(a3)、ポリアミン(a4)及び水を含有することができる。
高分子量ポリオール(a2)、低分子量ポリオール(a3)及び/又はポリアミン(a4)を含有することにより、樹脂の耐磨耗性や耐衝撃性を向上させることができる。
尚、本発明における高分子量ポリオール(a2)及び低分子量ポリオール(a3)には、前記ポリエステルポリオール(a1)は含まれない。
【0021】
Mnが500以上の高分子量ポリオール(a2)としては、ポリエーテルポリオール、(a1)以外のポリエステルポリオール及びシリコーンポリオール等が挙げられる。高分子量ポリオール(a2)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
ポリエーテルポリオールとしては、脂肪族ポリエーテルポリオール[例えばポリオキシエチレンポリオール(ポリエチレングリコール等)、ポリオキシプロピレンポリオール(ポリプロピレングリコール等)、ポリオキシエチレン/プロピレンポリオール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール]及び芳香族ポリエーテルポリオール[ビスフェノール骨格を有するポリオール(例えばビスフェノールAのエチレオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物)及びレゾルシンのエチレオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物]等が挙げられる。
【0023】
ポリエーテルポリオールは、前記炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y)、単環多価フェノール類(ピロガロール、ハイドロキノン及びフロログルシン等)及びビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF及びビスフェノールS等)に、付加触媒(アルカリ金属水酸化物及びルイス酸等の公知の触媒)の存在下、上記炭素数2〜4のAOを開環付加反応させることで得られる。
【0024】
ポリエステルポリオールとしては、縮合型ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール及びポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
縮合型ポリエステルとしては、多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級(炭素数1〜4)アルキルエステル及び酸ハライド等]と後述の化学式量又はMnが500未満の低分子量ポリオール(a3)との縮重合により得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0025】
多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸及びマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等)及び3価又はそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等);前記酸の無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水トリメリット酸等);前記酸の酸ハライド(アジピン酸ジクロライド等);前記酸の低級(炭素数1〜4)アルキルエステル(コハク酸ジメチル及びフタル酸ジメチル等);等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
後述の低分子量ポリオール(a3)の内、縮合型ポリエステルに使用するものとして好ましいのはエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール及びビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド低モル付加物及びこれらの併用である。
【0027】
ポリラクトンポリオールとしては、前記炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y)又は後述の炭素数2〜10の3〜8価又はそれ以上の脂肪族ポリオール(a32)等へのラクトンの重付加物等が挙げられ、ラクトンとしては、炭素数4〜12のラクトン[例えば4−ブタノリド、5−ペンタノリド及び6−ヘキサノリド]等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールの具体例としては、ポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
【0028】
ポリカーボネートポリオールとしては、前記炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y)又は後述の炭素数2〜10の3〜8価又はそれ以上の脂肪族ポリオール(a32)等へのアルキレンカーボネートの重付加物等が挙げられ、アルキレンカーボネートとしては炭素数2〜8のアルキレンカーボネート(例えばエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート)等が挙げられる。アルキレンカーボネートは2種以上併用してもよい。
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられる。
【0029】
シリコーンポリオールとしては、例えばシリコーン樹脂の末端に水酸基を有するジオール等が挙げられる。
【0030】
これらの高分子量ポリオールの内、耐加水分解性の観点から好ましいのは、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びシリコーンポリオール、更に好ましいのはポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールである。
【0031】
高分子ポリオール(a2)のMnは、樹脂強度の観点から、500〜20,000が好ましく、更に好ましくは500〜10,000、特に好ましくは500〜9,000である。
【0032】
化学式量又はMnが500未満の低分子量ポリオール(a3)としては、前記炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y)、炭素数11〜24の脂肪族ジオール(a31)、炭素数炭素数3〜24の3〜8価又はそれ以上の脂肪族ポリオール(a32)、芳香環を有するポリオール(a33)、並びにカルボン酸(塩)基、スルフォン酸(塩)基及びスルファミン酸(塩)基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸(塩)基を有するポリオール(a34)等が挙げられる。
低分子量ポリオール(a3)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
炭素数11〜24の脂肪族ジオール(a31)としては、脂肪族ジオール(y)等への上記炭素数2〜4のAOの付加物等が挙げられる。
【0034】
炭素数3〜24の3〜8価又はそれ以上の脂肪族ポリオール(a32)としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ソルビトール及びシュークローズ等が挙げられる。
【0035】
芳香環を有するポリオール(a33)としては、ビスフェノール系ジオール(ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF及びビスフェノールS等)への上記炭素数2〜4のAOの付加物等が挙げられる。
【0036】
カルボン酸(塩)基、スルフォン酸(塩)基及びスルファミン酸(塩)基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸(塩)基を有するポリオール(a34)としては、カルボン酸基を有するポリオール{酒石酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸及び3−[ビス(2‐ヒドロキシエチル)アミノ]プロパン酸等};スルフォン酸基を有するポリオール{2,2−ビス(ヒドロキシメチル)エタンスルホン酸、2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エタンスルホン酸及び5−スルホ−イソフタル酸−1,3‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)エステル等};スルファミン酸基を有するポリオール{N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)スルファミン酸、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)スルファミン酸、N,N−ビス(4−ヒドロキシブチル)スルファミン酸及びN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)スルファミン酸等};及びこれらの塩[金属(カリウム、ナトリウム及びリチウム等)塩及びアミン(アルキルアミン及びアルカノールアミン等)等の塩]等が挙げられる。
【0037】
活性水素成分(A)にポリオール(a34)を使用することにより、ポリウレタン樹脂(C)の分子側鎖にカルボン酸(塩)基、スルフォン酸(塩)基及びスルファミン酸(塩)基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸(塩)基が導入され、バインダーに用いたときの磁性粉の分散性を更に向上させることができる。
これらの内好ましいものは、スルホン酸及びスルファミン酸の有機酸(塩)基であり、特に好ましいものはスルホン酸及びスルファミン酸の金属塩基である。
【0038】
ポリオール(a34)を使用する際、活性水素成分(A)として(a34)をそのまま使用してもよいし、(a34)をポリオール成分として製造したポリエステルポリオールや(a34)にAOを付加重合させて得られるポリエーテルポリオールとして使用することもできる。
【0039】
ポリウレタン樹脂(C)の分子側鎖に有機酸(塩)基を導入する場合の該有機酸(塩)基の含有量は、(C)106g当たり1〜1,000当量であることが好ましく、更に好ましくは5〜500当量、特に好ましくは10〜350当量である。有機酸(塩)基の含有量が1,000当量を超えると磁性塗料としたときの粘度が高くなり作業性が悪くなる傾向にある。
【0040】
ポリアミン(a4)としては、炭素数2〜18の脂肪族ジアミン、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジアミン、炭素数6〜20の芳香族ジアミン、ポリアミドポリアミン〔ジカルボン酸(ダイマー酸等)と過剰(酸1モル当り2モル以上)のアルキレンジアミン又はポリアルキレンポリアミン等との縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミン等〕及びポリエーテルポリアミン〔ポリエーテルポリオール(ポリアルキレングリコール等)のシアノエチル化物の水素化物等〕等が挙げられる。
【0041】
炭素数2〜18の脂肪族ポリアミンとしては、
〔1〕脂肪族ポリアミン[炭素数2〜6のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等)、ポリアルキレン(炭素数2〜6)ポリアミン{ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン等}];
〔2〕上記脂肪族ポリアミンのアルキル(炭素数1〜4)又はヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)置換体〔ジアルキル(炭素数1〜3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン及びメチルイミノビスプロピルアミン等〕;
〔3〕脂環又は複素環含有脂肪族ジアミン[炭素数4〜15の脂環式ジアミン{1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン及び4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)等}及び炭素数4〜15の複素環式ジアミン{ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン及び3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等}];等が挙げられる。
炭素数8〜15の芳香脂肪族ジアミンとしては、キシリレンジアミン及びテトラクロル−p−キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0042】
炭素数6〜20の芳香族ジアミン類としては、
〔1〕非置換芳香族ジアミン〔1,2−、1,3−又は1,4−フェニレンジアミン、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリアミン及びナフチレンジアミン等;
〔2〕核置換アルキル基(メチル,エチル、n−又はi−プロピル及びブチル等の炭素数1〜4アルキル基)を有する芳香族ジアミン、例えば2,4−又は2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン及び4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン等〕、及びこれらの異性体の種々の割合の混合物;
〔3〕核置換電子吸引基(Cl、Br、I及びF等のハロゲン;メトキシ及びエトキシ等のアルコキシ基;ニトロ基等)を有する芳香族ジアミン(メチレンビス−o−クロロアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、2−クロル−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノ−4−クロロアニリン、4−ブロモ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロル−1,4−フェニレンジアミン、5−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン及び3−ジメトキシ−4−アミノアニリン等);
〔4〕2級アミノ基を有する芳香族ジアミン[上記〔1〕〜〔3〕の芳香族ジアミンの−NH2の一部又は全部が−NH−R’(R’はアルキル基例えばメチル,エチル等の低級アルキル基)で置換されたもの、例えば4,4’−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン及び1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼン等]等が挙げられる。
ポリアミン(a4)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明におけるポリイソシアネート成分(B)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート及びこれらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。ポリイソシアネート成分(B)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
炭素数6〜20の芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、1,5−ナフチレンジイソシアネート及び4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート及びビス(2−イソシアナトエチル)フマレート等が挙げられる。
【0046】
炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、m−又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0048】
これらの内で好ましいのは、樹脂の強度の観点から、炭素数6〜15の芳香族ポリイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ポリイソシアネート及び炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネートであり、特に好ましいのはTDI、MDI、HDI、IPDI及び水添MDIである。
【0049】
ポリイソシアネート成分(B)の使用量は、樹脂の強度の観点から、活性水素成分(A)とポリイソシアネート成分(B)の合計重量に対して、70重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは3〜60重量%、特に好ましくは5〜50重量%である。
【0050】
ポリウレタン樹脂(C)を製造方法は特に限定されず、(1)活性水素成分(A)とポリイソシアネート成分(B)を一括して反応させる方法や(2)予め活性水素成分(A)に対して過剰のポリイソシアネート成分(B)を反応させて得られた末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを活性水素成分(A)で鎖伸長する方法等が挙げられる。
活性水素成分(A)としてポリアミン(a4)及び/又は水を用いる場合は、上記(2)の方法が好ましい。
これらの方法は、有機溶剤(S)の存在下又は非存在下に行うことができる。
【0051】
有機溶剤(S)としてはポリエステルポリオール(a1)を溶解可能であれば特に限定されず、エステル系溶剤(酢酸エチル及び酢酸ブチル等)、エーテル系溶剤(ジオキサン及THF等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等)、エーテル系溶剤(THF等)、芳香族炭化水素系溶剤(トルエン及びキシレン等)及びこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
こられらの溶剤の内、溶剤除去のしやすさの観点から、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、THF、トルエン及びキシレンが好ましい。
【0052】
上記製造方法(1)における反応温度は反応速度とアロファネート化抑制の観点から50〜120℃が好ましく、生産性の観点から反応時間は48時間以下が好ましい。活性水素成分(A)とポリイソシアネート成分(B)の反応比率は、活性水素基とイソシアネート基の当量比(活性水素/NCO)として、好ましくは1/1.5〜1/0.6、更に好ましくは1/1.4〜1/0.7、特に好ましくは1/1.2〜1/0.8である。
【0053】
上記製造方法(2)において、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造する際の活性水素成分(A)とポリイソシアネート成分(B)との反応比率は、活性水素基とイソシアネート基の当量比(活性水素/NCO)として、好ましくは1/1.5〜1/3、更に好ましくは1/1.6〜1/2.7、特に好ましくは1/1.8〜1/2.6である。
次いで、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーとポリアミン(a4)及び/又は水と反応させて、ポリウレタン樹脂(C)を製造する場合の反応温度は反応速度とビューレット化抑制の観点で10〜100℃が好ましく、生産性の観点で反応時間は48時間以下が好ましい。プレポリマーのイソシアネート基と、ポリアミン(a4)及び/又は水の活性水素基の当量比(NCO/活性水素)は、好ましくは0.5/1〜1.5/1、更に好ましくは0.7/1〜1.3/1、特に好ましくは0.75/1〜1.2/1である。
【0054】
反応後、必要により、有機溶剤(S)を取り除く工程を設けてもよい。有機溶剤(S)を取り除く方法は、一般的な公知の方法が用いられるが、生産性の観点から減圧脱溶剤が好ましい。
【0055】
本発明におけるポリウレタン樹脂(C)を合成する際のポリエステルポリオール(a1)の使用量は、(C)の樹脂強度の観点から、活性水素成分(A)とポリイソシアネート成分と(B)の合計重量に対して通常0.2〜50重量%、好ましくは0.2〜45重量%、更に好ましくは0.2〜40重量%である。
【0056】
本発明のポリウレタン樹脂(C)の酸価は、樹脂強度の観点から、好ましくは0〜210mgKOH/g、更に好ましくは0〜150mgKOH/g、特に好ましくは0〜100mgKOH/gである。
また、ポリウレタン樹脂(C)の水酸基価は、好ましくは0〜100mgKOH/g、更に好ましくは0〜80mgKOH/g、特に好ましくは0〜50mgKOH/gである。
【0057】
ポリウレタン樹脂(C)のガラス転移温度(Tg)は、樹脂のブロッキングの観点から、0〜125℃が好ましく、更に好ましくは30〜120℃、特に好ましくは40〜115℃である。
Tgが0℃未満では磁気テープの耐久性が低下する傾向にあり、125℃を超えると磁気テープ製造時のカレンダー性が悪くなる傾向にある。
尚、上記及び以下において、Tgはセイコー電子工業(株)製「DSC20、SSC/580」を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
【0058】
ポリウレタン樹脂(C)のMnは、5,000〜200,000であることが好ましく、更に好ましくは6,000〜1500,000である。Mnが5,000未満では樹脂強度が低下して磁気テープの耐久性が劣る傾向にあり、200,000を越えると塗料粘度が高くなり、磁性粉の分散性が低下する傾向にある。
【0059】
本発明の磁気記録媒体は、本発明のポリウレタン樹脂(C)からなるバインダー、磁性粉、溶剤並びに必要により(C)以外のバインダー樹脂(D)及び添加剤を混合・分散し、得られる磁性塗料を非磁性支持体上に塗布して磁性層を形成させることにより得られる。尚、本発明のバインダーは、磁性層とは反対側のバックコート層用のバインダーとしても使用することができる。
【0060】
磁性塗料に使用される磁性粉としては、酸化鉄[例えばγ−Fe23(γ−ヘマタイト)]、CrO2(二酸化クロム)、合金系の磁性体[例えばCo−γ−Fe23(コバルトフェライト又はコバルトドープγ−酸化鉄)、Fe−Co−Cr及びBaFe(バリウムフェライト)]、純鉄Fe(メタルパウダー)、窒化鉄及び炭化鉄等が挙げられる。
磁性粉の使用量は、磁性塗料中、通常20〜50重量%である。
【0061】
磁性塗料に用いられる溶剤としては、前記有機溶剤(S)と同様のものが挙げられ、好ましいのはケトン系溶剤と芳香族炭化水素系溶剤との混合溶剤である。溶剤の使用量は、磁性塗料中の固形分含量が通常20〜80重量%となる範囲である。
【0062】
ポリウレタン樹脂(C)以外のバインダー樹脂(D)としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール及びアクリロニトリル・ブタジエン共重合体等が挙げられる。また、上記樹脂はその側鎖にカルボシキル基、スルホン酸基及びスルファミン酸基等の有機酸(塩)基や水酸基を有していてもよい。
【0063】
磁性塗料に用いられる添加剤としては、分散剤、潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤、防錆剤及び架橋剤等が挙げられる。
【0064】
分散剤としては、炭素数12〜18の脂肪酸(カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸及びステアロール酸等)及び金属石鹸[前記脂肪酸のアルカリ金属(カリウム及びナトリウム等)塩及びアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム及びバリウム等)塩]等が挙げられる。
【0065】
潤滑剤としては、ジアルキルポリシロキサン(アルキル基の炭素数1〜5)、ジアルコキシポリシロキサン(アルコキシ基の炭素数1〜4)、モノアルキルモノアルコキシポリシロキサン(アルキル基の炭素数1〜5、アルコキシ基の炭素数1〜4)、フェニルポリシロキサン、フロロアルキルポリシロキサン、シリコンオイル、導電性微粉末(グラファイト等)、無機粉末(二硫化モリブデン及び二硫化タングステン等)、プラスチック微粉末、脂肪酸エステル類及びフルオロカーボン類等が挙げられる。
【0066】
研磨剤としては、アルミナ、炭化珪素、酸化クロム、コランダム、人造コランダム、ダイヤモンド及び人造ダイヤモンド等が挙げられる。
【0067】
帯電防止剤としては、導電性粉末(カーボンブラック及びカーボンブラックグラフトポリマー等)、天然界面活性剤(サポニン等)、ノニオン型界面活性剤(AO系、グリセリン系及びグリシドール系等)、カチオン型界面活性剤(高級アルキルアミン類、第四級アンモニウム塩類、ピリジンその他の複素環類及びホスホニウム類等)、アニオン型界面活性剤(アルボン酸型、スルホン酸型、リン酸型、硫酸エステル基型及び燐酸エステル基型等)、両性界面活性剤(アミノ酸類、アミノスルホン酸類及びアミノアルコールの硫酸又は燐酸エステル類等)等が挙げられる。
【0068】
防錆剤としては、燐酸、スルフィド、グアニジン、ピリジン、アミン、尿素、ジンククロメート、カルシウムクロメート及びストロンチウムクロメート等が挙げられる。また、特にジシクロヘキシルアミンナイトライト、シクロヘキシルアミンクロメート、ジイソプロピルアミンナイトライト、ジエタノールアミンホスフェート、シクロヘキシルアンモニウムカーボネート、プロピレンジアミンステアレート、グアニジンカーボネート、トリエタノールアミンナイトライト及びモルフォリンステアレート等の気化性防錆剤(アミン、アミド又はイミドの無機酸塩又は有機酸塩)を使用すると防錆効果が向上する。
【0069】
架橋剤としては、多官能ポリイソシアネート等が挙げられ、好ましいものとしては、例えば有機ポリイソシアネート(TDI及びMDI等)と活性水素化合物(低分子ポリオール、ポリアミン、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール等)とからのNCO基末端プレポリマー[例えば、「コロネートL」(日本ポリウレタン工業製)、「コロネートHL」(日本ポリウレタン工業製)等]等が挙げられる。架橋剤を使用することにより磁気記録媒体の磁性層の強度を向上させることができる。
【0070】
架橋剤の使用量は特に限定されないが、バインダーの重量に基づいて通常3〜80重量%である。また、架橋反応を促進するために用いられる触媒、例えば錫系触媒(トリメチルチンラウリレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジメチルチンジラウリレート、ジブチルチンジラウリレート及びスタナスオクトエート等)及びアミン系触媒(トリエチレンジアミン等)等を併用することもできる。
【0071】
磁気記録媒体を構成する非磁性体支持体の素材としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレン−2,6−ナフタレート等);ポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン等);セルロース誘導体(セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート、セルロースアセテートブチレート及びセロロースアセテートプロピオネート等);ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデン等);その他のプラスチック(ポリカーボネート、ポリイミド及びポリアミドイミド等);非磁性金属類(アルミニウム、銅、スズ、亜鉛又はこれらを含む非磁性合金等);セラミック類(ガラス、陶器及び磁器等);オレフィン類(バライタ、ポリエチレン及びエチレン−ブテン共重合体等);及び紙等が挙げられる。また、非磁性支持体の形態はフイルム、テープ、シート、ディスク、カード及びドラム等のいずれでもよい。
非磁性支持体上に磁性塗料を塗布して形成される磁性層の厚さは、乾燥膜厚で通常0.01〜30μmである。
【0072】
磁気記録媒体(磁気テープ等)を製造する方法としては、例えばバインダー、磁性粉、溶剤並びに必要によりバインダー樹脂(D)及び添加剤を予めプレミキサー等で混合したのち、混合分散機(ボールミル、ペイントコンディショナー、サンドグラインダー、サンドミル及びプラストミル等)で磁性粉を分散させて磁性塗料を作製し、つぎにこの磁性塗料を、ドクターブレード法、転写印刷法(グラビア法及びリバースロール法等)の方法により非磁性支持体に塗布後、配向、乾燥、表面加工、切断、巻き取り等の各工程を経て磁気記録媒体とする方法が例示できる。
【0073】
該磁気記録媒体は、非磁性支持体と磁性層(磁性粉及びバインダー等)からなるものが一般的であるが、非磁性支持体と磁性層の間に中間層(下塗層等)を有するもの、非磁性支持体の両面に磁性層を有するもの、磁気特性の異なる磁性層を重積したもの、磁性層の上に保護層を設けたもの及び非磁性支持体にバックコート層を設けたもの等であってもよい。
【実施例】
【0074】
以下実施例、比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下において、特に規定しない限り部は重量部を表す。
【0075】
製造例1
[ポリエステルポリオール(a1−1)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を備えた反応槽(以下の製造例で用いる反応槽も同様)中に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸1,2−無水物(無水トリメリット酸)384部(2.0モル部)、エチレングリコール409部(6.6モル部)及び重合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、140℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら48時間反応させてポリエステルポリオール(a1−1)を得た。回収されたエチレングリコールは37部(0.6モル部)であった。ポリエステルポリオール(a1−1)のMnは350、酸価は0、水酸基価は470であった。
【0076】
製造例2
[ポリエステルポリオール(a1−2)の合成]
反応槽中に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸1,2−無水物(無水トリメリット酸)384部(2.0モル部)、エチレングリコール285部(4.6モル部)及び重合触媒としてのテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、140℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら48時間反応させてポリエステルポリオール(a1−2)を得た。回収されたエチレングリコールは37部(0.6モル部)であった。ポリエステルポリオール(a1−2)のMnは300、酸価は170、水酸基価は350であった。
【0077】
製造例3
[ポリエステルポリオール(a1−3)の合成]
反応槽中に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸1,2−無水物(無水トリメリット酸)384部(2.0モル部)、エチレングリコール285部(4.3モル部)、ベンジルアルコール129部(1.2モル部)及び重合触媒としてのテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、140℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら48時間反応させてポリエステルポリオール(a1−3)を得た。回収されたエチレングリコールは19部(0.3モル部)、ベンジルアルコールは22部(0.2部)であった。ポリエステルポリオール(a1−3)のMnは390、酸価は8、水酸基価は360であった。
【0078】
製造例4
[ポリエステルポリオール(a1−4)の合成]
反応槽中に、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸1,2−無水物(無水トリメリット酸)384部(2.0モル部)、エチレングリコール223部(3.6モル部)及び重合触媒としてのテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、140℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら48時間反応させてポリエステルポリオール(a1−4)を得た。回収されたエチレングリコールは19部(0.6モル部)であった。ポリエステルポリオール(a1−4)のMnは270、酸価は271、水酸基価は180であった。
【0079】
製造例5
[ポリエステルポリオール(a1−5)の合成]
反応槽中に、プロピレングリコールの1,2−プロピレンオキサイド/エチレンオキサイドブロック付加物(三洋化成工業製「サンニックスPL−910」;Mn900、水酸基価125)424.5部(0.5モル部)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸1,2−無水物(無水トリメリット酸)181.1部(1.1モル部)、及びアルカリ触媒としてのN−エチルモルホリン1.0部を仕込み、窒素雰囲気下、0.20MPa、130±10℃で5時間反応させハーフエステル化を行った。ハーフエステル化後、エチレンオキサイド93.4部(2.1モル部)を100±10℃で、圧力が0.50MPa以下となるように制御しながら、5時間かけて滴下した後、100±10℃で1時間熟成して、ポリエステルポリオール(a1−5)を得た。酸価は2、水酸基価は151であった。
【0080】
製造例6
[ポリエステルポリオール(a2−1)の合成]
反応槽中に、テレフテル酸ジメチルエステル194部(0.3モル部)及び1,2−プロピレングリコール190部(モル部)を投入し、触媒としてテトラブトキシチタネート0.1部添加した。窒素気流下220℃で、生成するメタノールを溜去しながら約8時間反応させた。ついで同温度で20分間減圧し、重合反応を終了し、ポリエステルポリオール(a2−1)を得た。
ポリエステルポリオール(a2−1)のMnは2,100、酸価0、水酸基価は53であった。
【0081】
製造例7
[ポリエステルポリオール(a34−1)の合成]
反応槽中に、アジピン酸139部(0.3モル部)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル15部及び2,2−ジメチル−1,3−ヒドロキシプロパン208部を投入し、触媒としてのテトラブトキシチタネート0.1部添加した。窒素気流下220℃で、生成する水を溜去しながら約8時間反応させた。ついで同温度で20分間減圧し、重合反応を終了し、ポリエステルポリオール(a34−1)を得た。
ポリエステルポリオール(a34−1)のMnは330、酸価0、水酸基価は340、スルホン酸金属塩基の量は、(a34−1)106g当たり148当量であった。
【0082】
製造例8
[ポリエステルポリオール(a34−2)の合成]
反応槽中に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル888部及び2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート1836部を投入し、触媒としてテトラブトキシチタネート0.2部添加した。窒素気流下240℃で約5時間エステル交換し、ポリエステルポリオール(a34−2)を得た。
ポリエステルポリオール(a34−2)のMnは425、酸価0、水酸基価は265、スルホン酸金属塩基の量は、(a34−2)106g当たり1200当量であった。
【0083】
<実施例1〜10及び比較例1〜2>
反応槽を十分に窒素で置換後に、表1に示す種類及び量(重量部)の活性水素成分(A)を加え、温度を80℃にして、均一化した。そこへ表1に示す種類及び量(重量部)のポリイソシアネート成分(B)を攪拌下に加え、30分攪拌し、均一化した。その後、攪拌を停止し、24時間反応させ、冷却後取り出して粉砕することで、ポリウレタン樹脂(C−1)〜(C−10)及び比較用のポリウレタン樹脂(CR−1)〜(CR−2)を得た。
尚、表1におけるポリカーボネートポリオールとして旭化成ケミカルズ(株)製「PCDL T4671」を、シリコーンポリオールとして信越化学工業(株)製「KF−6001」を、ポリエーテルポリオールとして三洋化成工業(株)製「PEG−400」を用いた。
【0084】
<引張り破断強度の測定>
実施例1〜10及び比較例1〜2で得られたポリウレタン樹脂を250℃に温調したホットプレスで厚さ1mmになるように30秒プレスし、フィルムを得た。
フィルム化したポリウレタン樹脂から、JIS K 6251:2004の引裂試験片ダンベル3号形を3枚打ち抜いた。膜厚は標線間の5カ所の測定値の最小値をとった。これを恒温槽の設置されたオートグラフに取り付け、100℃に温調し、2時間静置した後、200mm/minの速さで引っ張り、試験片が破断にいたる最大強度を測定した。25℃での引張り破断強度についても同様に測定を行った。その結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
<実施例11〜20及び比較例3〜4>
実施例1〜10及び比較例1〜2で得られたポリウレタン樹脂[(C−1)〜(CR−2)]をバインダーとして使用し、下記組成物をペイントコンディショナーで混合、分散させて磁性塗料(E−1)〜(E−10)及び比較用の磁性塗料(ER−1)〜(ER−2)を作製した。
メタル粉(商品名「HIE−3」関東電化製) 100部
ポリウレタン樹脂[(C−1)〜(CR−2)] 10部
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 10部
(商品名「VAGH」;UCC社製)
レシチン 1部
メチルエチルケトン 75部
トルエン 75部
得られた磁性塗料に硬化剤[「コロネートL」:日本ポリウレタン工業(株)製トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート3モル付加物]を5部添加し、10分混合した。
この磁性塗料をポリエステルフイルムに塗布して乾燥させ(乾燥膜厚0.5ミクロン)、1,000eの磁場をかけて、配向させてテープを得た。更に、このテープをカレンダーで処理し、磁気テープ(F−1)〜(F−10)及び比較用の磁気テープ(FR−1)〜(FR−2)を得た。
【0087】
<粘度の測定>
得られた磁性塗料の粘度をBL型粘度計(東京計器製)を用いて25℃にて測定した。結果を表2に示す。粘度が低いほど、磁性塗料を塗布しやすい。
<光沢度の測定>
磁気テープの磁性粉の分散性をみるために表面光沢度を測定した。結果を表2に示す。光沢度が高いほど分散性が良好である。
尚、表面光沢度は、日本電子工業製デジタル変角光沢計を用いて、75°の正反射率を測定した。数値は標準板の反射率を95とした場合と比較し、相対値(%)で表示した。
【0088】
<耐久性の評価>
磁気テープの耐久性を、学振式摩耗堅牢度試験機(大栄化学精機製作所製)を用いて100gの荷重で30回摩耗後の粉落ち量(mg)を測定することにより評価した。結果を表2に示す。数値が小さいほど、磁気テープの耐久性が良好であることを示す。
【0089】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のバインダーは、高温下においても引張り破断強度等の樹脂の機械的強度が維持され、耐久性(耐熱性や耐摩擦性等)に優れるため、磁気記録媒体として特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させてなるポリウレタン樹脂(C)からなる磁気記録媒体用バインダーであって、前記(A)が1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(無水物)(x)と炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y)とを必須成分として反応させてなるポリエステルポリオール(a1)を、前記(A)と前記(B)の合計重量に対して0.2〜50重量%含有することを特徴とする磁気記録媒体用バインダー。
【請求項2】
前記活性水素成分(A)が更に必要により炭素数1〜30のモノアルコール及び/又は水酸基価が18〜600のポリエーテルポリオールを含有し、前記ポリエステルポリオール(a1)を構成する1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(無水物)(x)と、炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y)並びに必要により使用する炭素数1〜30のモノアルコール及び/又は水酸基価が18〜600のポリエーテルポリオールとのモル比が、1:1〜1:3である請求項1記載の磁気記録媒体用バインダー。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂(C)が、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基及びスルファミン酸(塩)基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸(塩)基を、前記(C)106g当たり1〜1,000当量有する請求項1又は2記載の磁気記録媒体用バインダー。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂(C)の数平均分子量が5,000〜200,000である請求項1〜3のいずれか記載の磁気記録媒体用バインダー。
【請求項5】
前記炭素数2〜10の脂肪族ジオール(y)が、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール及び/又は1,4−ブタンジオールである請求項1〜4のいずれか記載の磁気記録媒体用バインダー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載のバインダーを含有してなる磁性層を有する磁気記録媒体。

【公開番号】特開2012−89222(P2012−89222A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154921(P2011−154921)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】