説明

磁気記録媒体用基板、磁気記録媒体、磁気記録媒体用基板の製造方法及び表面検査方法

【課題】表面平滑性に優れた磁気記録媒体用基板、磁気記録媒体、磁気記録媒体用基板の製造方法及び表面検査方法を提供する。
【解決手段】中心孔を有する円盤状の磁気記録媒体用基板であって、その主面における表面粗さは、円周方向のうねりの空間周期(L)が10〜1000μmの範囲における二乗平均平方根粗さ(Rq)で1Å以下であり、且つ、表面粗さについてスペクトル解析を行い、その空間周期(L)を横軸[μm]とし、そのパワースペクトル密度(PSD)を縦軸[k・Å・μm](kは定数)とした両対数グラフ上に表される曲線Sにおいて、空間周期(L)が10μmとなる点Aと、空間周期(L)が1000μmとなる点Bとを結ぶ線分Zの縦軸方向の成分をHとし、この線分Zに対して曲線Sの縦軸方向の成分が最大となる変位をΔHとしたときに、ΔH/H×100[%]で表される値(P)が15%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体用基板、磁気記録媒体、磁気記録媒体用基板の製造方法及び表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブ(HDD)の需要の高まりを受け、HDDに内蔵される磁気記録媒体の製造が活発化している。ここで、磁気記録媒体用基板としては、アルミ基板とガラス基板とが広く用いられている。このうち、アルミ基板は、加工性が高く、安価である点に特長がある。一方、ガラス基板は、強度に優れている点に特長がある。特に、最近では磁気記録媒体の小型化と高密度化の要求が著しく高くなり、磁気記録媒体用基板を製造する際に、基板の表面粗さやうねりを低減することが求められている。
【0003】
このような磁気記録媒体用基板の表面を研磨する際は、例えば、基板(被研磨物)を狭持する上定盤及び下定盤と、下定盤を支持する下定盤支持部と、上定盤及び下定盤との間に研磨液を供給する研磨液供給部とを備え、太陽歯車が、下定盤の中央に形成された孔から突出する遊星歯車方式の研磨装置が用いられる(特許文献1を参照。)。なお、この特許文献1には、被研磨物の表面粗さの低減を図るため、下定盤の中心側と太陽歯車の上面の少なくとも一方に滞留した研磨液を外部に排出する排出手段を設けた構成が開示されている。
【0004】
また、磁気記録媒体の表面粗さについては、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した表面粗さのスペクトルにおいて、波長1〜5μmの粗さ強度PSD(Power Spectral Density)を0.5nm以下とし、波長0.5μm以上1μm未満のPSDを0.02〜0.5nmとすることが提案されている(特許文献2を参照。)。この特許文献2には、上記数値範囲を満足することで、磁気記録媒体の走行耐久性を良好にできることが開示されている。
【0005】
なお、パワースペクトル密度(PSD)は、基板の表面構造を空間周波数f(うねりの空間周期Lの逆数)毎の成分に分解し、各成分の密度として表したものである(特許文献3,4を参照。)。
【0006】
また、基板の表面構造であるPSDと二乗平均平方根粗さ(Rq、旧RMS)との関係については、下記式(1)で表すことができる。
【数1】

【0007】
また、磁気記録媒体の突起検査方法として、回転する磁気記録媒体上に突起検査用ヘッドを浮上させた状態で、温度変化により該検査用ヘッドの浮上量を変化させ、突起検査用ヘッドに設けた検出素子と突起との接触により生じる信号を検出する方法が提案されている(特許文献5を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−6423号公報
【特許文献2】特開2001−067650号公報
【特許文献3】特開H09−152324号公報
【特許文献4】特開2006−194764号公報
【特許文献5】特開2004−185783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したHDD等に用いられる磁気記録媒体では、市場からの記録密度の向上の要求に対して今まで以上に磁気記録媒体の表面と磁気ヘッドとの距離を近付けることが求められている。
【0010】
しかしながら、磁気記録媒体の表面と磁気ヘッドとの距離を近付けるためには、磁気記録媒体に用いられる基板の表面平滑性を高める必要があるものの、上述した研磨定盤の面精度を高め、研磨砥粒の粒度分布をシャープにし、研磨工程における研磨の段数を増やし、また研磨時間を増やした場合には、基板の製造コストが著しく増加することになる。
【0011】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、表面平滑性に優れた磁気記録媒体用基板、磁気記録媒体、並びに、そのような表面平滑性に優れた磁気記録媒体用基板を製造するための製造方法、及び、そのような表面平滑性に優れた磁気記録媒体用基板を得るための表面検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の手段を提供する。
(1) 中心孔を有する円盤状の磁気記録媒体用基板であって、
その主面における表面粗さは、円周方向のうねりの空間周期(L)が10〜1000μmの範囲における二乗平均平方根粗さ(Rq)で1Å以下であり、
且つ、前記表面粗さについてスペクトル解析を行い、その空間周期(L)を横軸[μm]とし、そのパワースペクトル密度(PSD)を縦軸[k・Å・μm](kは定数)とした両対数グラフ上に表される曲線Sにおいて、空間周期(L)が10μmとなる点Aと、空間周期(L)が1000μmとなる点Bとを結ぶ線分Zの縦軸方向の成分をHとし、この線分Zに対して曲線Sの縦軸方向の成分が最大となる変位をΔHとしたときに、ΔH/H×100[%]で表される値(P)が15%以下であることを特徴とする磁気記録媒体用基板。
(2) 前項(1)に記載の磁気記録媒体用基板の面上に、少なくとも磁性層を有する磁気記録媒体。
(3) 中心孔を有する円盤状の磁気記録媒体用基板の製造方法であって、
前記磁気記録媒体用基板の主面における表面粗さを、円周方向のうねりの空間周期(L)が10〜1000μmの範囲における二乗平均平方根粗さ(Rq)で1Å以下とし、
且つ、前記表面粗さについてスペクトル解析を行い、その空間周期(L)を横軸[μm]とし、そのパワースペクトル密度(PSD)を縦軸[k・Å・μm](kは定数)とした両対数グラフ上に表される曲線Sにおいて、空間周期(L)が10μmとなる点Aと、空間周期(L)が1000μmとなる点Bとを結ぶ線分Zの縦軸方向の成分をHとし、この線分Zに対して曲線Sの縦軸方向の成分が最大となる変位をΔHとしたときに、ΔH/H×100[%]で表される値(P)が15%以下となるように、
前記磁気記録媒体用基板の主面に対して研削加工及び研磨加工を施す工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法。
(4) 中心孔を有する円盤状の磁気記録媒体用基板の表面検査方法であって、
前記磁気記録媒体用基板の主面における表面粗さとして、円周方向のうねりの空間周期(L)が10〜1000μmの範囲における二乗平均平方根粗さ(Rq)を求めるステップと、
前記表面粗さについてスペクトル解析を行い、その空間周期(L)を横軸[μm]とし、そのパワースペクトル密度(PSD)を縦軸[k・Å・μm](kは定数)とした両対数グラフ上に表される曲線Sにおいて、空間周期(L)が10μmとなる点Aと、空間周期(L)が1000μmとなる点Bとを結ぶ線分Zの縦軸方向の成分をHとし、この線分Zに対して曲線Sの縦軸方向の成分が最大となる変位をΔHとしたときに、ΔH/H×100[%]で表される値(P)を求めるステップと、
前記Rq値が1Å以下、且つ、前記P値が15%以下となる磁気記録媒体用基板を良品と判定するステップとを含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の表面検査方法。
(5) 前項(4)に記載の表面検査方法を用いた検査工程を含む磁気記録媒体用基板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、表面平滑性に優れた磁気記録媒体用基板、磁気記録媒体、並びに、そのような表面平滑性に優れた磁気記録媒体用基板を製造するための製造方法、及び、そのような表面平滑性に優れた磁気記録媒体用基板を得るための表面検査方法を提供することが可能である。
【0014】
また、本発明によれば、磁気記録媒体の表面と磁気ヘッドとの距離を近付けることができるため、磁気記録媒体の記録密度の更なる向上を図ることが可能である。
【0015】
さらに、本発明によれば、高記録密度化に対応可能な磁気記録媒体用基板の良否を判別できるため、その製造コストの更なる低減を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】サンプル1〜3の磁気記録媒体について、ヘッドスライダに投入した電力と、磁気ヘッドから出力されるシグナルのグランドレベルとの関係を示すグラフである。
【図2】サンプル1〜3の磁気記録媒体について、うねりとPSDとの関係を示すグラフである。
【図3】表面粗さRqとPSDとの関係を説明するためのグラフである。
【図4】線分Zに対して曲線Sの縦軸方向の成分が最大となる変位ΔHを求めるためのグラフである。
【図5】本発明を適用した磁気記録媒体用基板の製造工程を説明するための図であり、1次主面研削工程を示す斜視図である。
【図6】本発明を適用した磁気記録媒体用基板の製造工程を説明するための図であり、内外周端面研削工程を示す斜視図である。
【図7】本発明を適用した磁気記録媒体用基板の製造工程を説明するための図であり、内周端面研磨工程を示す斜視図である。
【図8】本発明を適用した磁気記録媒体用基板の製造工程を説明するための図であり、外周端面研磨工程を示す斜視図である。
【図9】本発明を適用した磁気記録媒体用基板の製造工程を説明するための図であり、主面研磨工程を示す斜視図である。
【図10】本発明で用いられるラッピングマシーン又はポリッシングマシーンの別の構成例を示す斜視図である。
【図11】本発明を適用した磁気記録媒体の一例を示す断面図である。
【図12】磁気記録再生装置の一例を示す斜視図である。
【図13】実施例1,2及び比較例1の磁気記録媒体用基板について、表面粗さRq及びうねとPSDとの関係を測定したグラフである。
【図14】実施例1,2及び比較例1の磁気記録媒体について、ヘッドスライダに投入した電力と、磁気ヘッドから出力されるシグナルのグランドレベルとの関係を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した磁気記録媒体用基板、磁気記録媒体、磁気記録媒体用基板の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0018】
本発明者は、上記課題を解決するために、先ず、磁気記録媒体の表面粗さと磁気ヘッドの浮上高さ、並びに磁気ヘッドから出力されるシグナル強度の関係について検討を行った。具体的には、下記表1に示すように、ほぼ同等の二乗平均平方根粗さ(表面粗さ)Rqを有する磁気記録媒体(サンプル1〜3)を作製し、これらサンプル1〜3の磁気記録媒体に対して磁気ヘッドを用いたリードライト検査を行った。その評価結果を図1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
なお、このリードライト検査には、上記特許文献5に記載の磁気ヘッドと同様のもの、すなわち、スライダを有して回転する磁気記録媒体上に、浮上させた状態で磁気記録媒体の検査を行う磁気ヘッドであって、温度変化により磁気ヘッドの浮上量を変化させる熱式浮上量可変素子がヘッドのスライダに形成された磁気ヘッドを用いた。
【0021】
また、図1に示すグラフにおいて、横軸はヘッドスライダに投入した電力、縦軸は磁気ヘッドから出力されるシグナルのグランドレベルを表す。なお、本グラフでは、ヘッドスライダへの投入電力10mWが約1nmの変位に相当する。
【0022】
図1に示すグラフから、ヘッドスライダへの投入電力が大きくなるほど、ヘッドスライダが熱膨張し、磁気記録媒体の表面と磁気ヘッドとの距離が近くなり、更に磁気ヘッドが磁気記録媒体の表面に近づくと、その接触時に発生する摩擦熱により強いノイズシグナルが出力されることがわかる(図1中に示す領域Aを参照。)。
【0023】
また、本発明者は、上記サンプル1〜3磁気記録媒体について、その表面粗さRqと、ヘッドスライダへの投入電力を変えた場合のシグナルのグランドレベルとの関係を調べた。
【0024】
その結果、図1に示すように、表面粗さRqがほぼ同じであるサンプル1〜3の磁気記録媒体において、領域Aの投入電力量はほぼ等しいものの、領域Bのシグナルレベルに明確な差が生じていることがわかった。なお、図1中に示す領域Bは、磁気記録媒体がHDD内で実際に用いられる条件及びその近傍に相当する。
【0025】
さらに、本発明者は、この原因について検討を行ったところ、ヘッドスライダや、このヘッドスライダを支えるサスペンションアームの共振に因ることを明らかにした。
【0026】
すなわち、図1中に示す領域Bでは、磁気記録媒体の表面と磁気ヘッドとが非接触の状態にあることから、表面粗さRqが等しい磁気記録媒体においては、磁気ヘッドから出力されるシグナルのグランドレベルも等しくなるはずである。一方、磁気ヘッドが共振等により僅かに振動すると、磁気記録媒体の表面と磁気ヘッドとの距離が僅かに変化する。その結果、磁気ヘッドから出力されるシグナルのグランドレベルに変動が生じ、この変動が磁気記録媒体の表面と磁気ヘッドとの距離が近くなるほど顕著となることを解明した。
【0027】
次に、本発明者は、上記知見に基づいて、ヘッドスライダや、このスライダを支えるサスペンションアームの共振を防止できる磁気記録媒体用基板の表面粗さとうねりについて検討を行った。
【0028】
図2は、上記表1に示すサンプル1〜3の磁気記録媒体の表面粗さについてスペクトル解析を行い、そのうねりの空間周期L[μm]と、PSD[k・Å・μm]との関係を両対数グラフ上に表したものである。なお、kは定数であり、PSDを測定する際の装置ファクターによって定められるが、理想的には1である。
【0029】
この図2に示すグラフは、例えば磁気記録媒体の表面にレーザー光を入射させ、その反射光のスペクトル解析を行うことで求めることができる。すなわち、平滑に研磨加工された基板の表面であっても、僅かなうねり(空間周期1μm〜1mmの構造)や、粗さ(空間周期1μm未満の構造)を有する。この表面にレーザー光を入射させた場合、その反射光は表面の僅かなうねり等によって散乱される。そして、これら多数の散乱光は重畳され、散乱光同士の位相差による緩衝を発生させる。
【0030】
また、基板の表面構造を反映した表面粗さRqとPSDとの関係は、下記式(2)及び図3で表すことができる。
【数2】

【0031】
なお、fは、空間周波数であり、うねり等の空間周期Lの逆数(1/L)に相当する。PSDは、基板の表面構造を空間周波数毎の成分に分解し、各成分の密度を求めたものである。さらに、上記式(2)の空間周波数fを空間周期Lに置き換えることで、上記図2に示すグラフを得ることができる。
【0032】
上記図2に示すうねりとPSDとの関係を、上述したレーザー光の散乱を用いて測定すると、散乱光が全く生じない場合(例えば、基板が無い場合。)は、図2中に示す直線Xが得られる。
【0033】
一方、何らかの散乱光が生じた場合は、検出器の持つノイズフロアにより、図2中に示す曲線Yが得られる。すなわち、理想的な平滑表面での散乱スペクトルは、この曲線Yに限りなく近づくことになる。
【0034】
これに対して、本発明では、基板の表面粗さやうねりを極限まで低減して理想的な平滑表面に近づけるのではなく、ある程度の表面粗さやうねりを許容しながら、図2に示す線分Zになるべく近づけることを特徴とする。
【0035】
すなわち、本発明では、基板の表面粗さやうねりを広い波長範囲で均一とする。これにより、高速で回転する磁気記録媒体の面上を浮上走行する磁気ヘッドにおいて発生する様々な周波数での振動が互いにキャンセルされる。その結果として、上記図1に示す領域Aにおけるシグナルのグランドレベルの変化率を低減できることを見出した。
【0036】
本発明は、以上のような知見に基づいて完成に至ったものである。すなわち、本発明は、中心孔を有する円盤状の磁気記録媒体用基板であって、その主面における表面粗さは、円周方向のうねりの空間周期(L)が10〜1000μmの範囲における二乗平均平方根粗さ(Rq)で1Å以下であり、且つ、表面粗さについてスペクトル解析を行い、その空間周期(L)を横軸[μm]とし、そのパワースペクトル密度(PSD)を縦軸[k・Å・μm](kは定数)とした両対数グラフ上に表される曲線Sにおいて、空間周期(L)が10μmとなる点Aと、空間周期(L)が1000μmとなる点Bとを結ぶ線分Zの縦軸方向の成分をHとし、この線分Zに対して曲線Sの縦軸方向の成分が最大となる変位をΔHとしたときに、ΔH/H×100[%]で表される値(P)が15%以下であることを特徴とする。
【0037】
具体的に、本発明では、磁気記録媒体用基板の主面における表面粗さRqを1Å以下、より好ましくは0.7Å以下とする。この表面粗さRqが1Åより高くなると、上記図1に示す領域Aに示すシグナルのグランドレベルの立ち上がりが左側にシフトしてしまい、磁気記録媒体の表面と磁気ヘッドとの間の物理的なスペーシングを確保することが困難となる。また、磁気記録媒体の表面に磁気ヘッドが接触し易くなり、磁気記録媒体の高密度化への対応が困難となる。
【0038】
また、本発明では、図4に示すように、うねりとPSDとの関係を示すグラフにおいて、曲線Sのうねりの空間周期Lが10μmとなる点Aと、1000μmとなる点Bとを結ぶ線分Zを引き、この線分Zに対して曲線Sの縦軸方向の成分が最大となる変位ΔHを求める。
【0039】
なお、ΔHは、線分Zに対して曲線Sが上に凸となる場合と、下に凸となる場合と、上に凸と下に凸が混在する場合があるが、この線分Zに対して曲線Sの変位の絶対値が最大となる値を算出すればよい。
【0040】
そして、本発明では、上述した算出結果に基づいて、線分Zの縦軸方向の成分Hに対するΔHの比率、すなわち、ΔH/H×100[%]の値Pを15%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは0%、すなわち線分Zに一致させる。
【0041】
これにより、7000回転/分以上の高速で回転する磁気記録媒体の面上を浮上走行する磁気ヘッドの振動を低減することか可能となる。また、上記図1に示す領域Bにおけるグランドレベルの上昇率を低減できる。これにより、磁気記録媒体のSN比が高まると共に、磁気記録媒体の表面と磁気ヘッドとの間の物理的なスペーシングを狭くすることが可能となる。
【0042】
さらに、本発明は、上記本発明の数値範囲を満足する磁気記録媒体用基板の面上に、少なくとも磁性層を有する磁気記録媒体を提供する。この磁気記録媒体は、上記本発明の数値範囲を満足する磁気記録媒体用基板の面上に、磁性層等の多層膜を形成したものである。また、これらの多層膜は、主にスパッタリング法で形成されるものの、その膜の厚さは均一であるため、磁気記録媒体の表面は、上記磁気記録媒体用基板の表面形状をそのまま反映したものとなる。
【0043】
したがって、本発明を適用した磁気記録媒体では、その媒体表面と磁気ヘッドとの間の距離を近付けることができ、その結果として、上記図1に示す領域Aにおけるシグナルのグランドレベルの変化率を低減できるため、更なる高記録密度化に対応することが可能となる。
【0044】
(磁気記録媒体用基板の製造方法)
次に、本発明を適用した磁気記録媒体用基板の製造方法について詳細に説明する。
本発明を適用して製造される磁気記録媒体用基板は、中心孔を有する円盤状の基板であり、磁気記録媒体は、この基板の面上に、磁性層、保護層及び潤滑膜等を順次積層した磁気ディスクからなる。また、HDD(磁気記録再生装置)では、この磁気記録媒体の中心部をスピンドルモータの回転軸に取り付けて、スピンドルモータにより回転駆動される磁気記録媒体の面上を磁気ヘッドが浮上走行しながら、磁気記録媒体に対して情報の書き込み又は読み出しを行う。
【0045】
なお、上記磁気記録媒体用基板としては、主にアルミ基板やガラス基板などの非磁性基板を挙げることができるが、本実施形態の例では、ガラス基板を用いた場合を挙げて説明する。
【0046】
上記磁気記録媒体用基板を製造する際は、先ず、大きな板状のガラス板からガラス基板を切り出す、又は、溶融ガラスから成形型を用いてガラス基板を直接プレス成形することにより、中心孔を有する円盤状のガラス基板を得る。
【0047】
次に、得られたガラス基板の端面を除く表面(主面)に対して、研削(ラップ)加工と研磨(ポリッシュ)加工とを施す。なお、本発明では、ガラス基板の内外周端面に対する面取り加工を上記研削加工と同一工程で行うこともできる。また、ガラス基板の内外周端面に対する研削加工は、1段階に限らず2段階(1次及び2次研削加工)とすることも可能である。
【0048】
本実施形態の例では、1次主面研削工程と、内外周端面研削工程と、内周端面研磨工程と、2次主面研削工程と、外周端面研磨工程と、1次主面研磨工程と、2次主面研磨工程とをこの順で行う。
【0049】
(1次主面研削工程)
このうち、1次主面研削工程では、図5に示すようなラッピングマシーン10を用いて、ガラス基板Wの両主面(最終的に磁気記録媒体の記録面となる面)に研削加工を施す。すなわち、このラッピングマシーン10は、上下一対の定盤11,12を備え、互いに逆向きに回転する定盤11,12の間で複数枚のガラス基板Wを挟み込みながら、これらガラス基板Wの両主面を定盤11,12に設けられた研削パッドにより平滑に研削する。
【0050】
また、研削パッドには、研削砥石を用いることができる。そして、この研削砥石に含有させる研削材としては、特に限定されないものの、例えば、アルミナ、セリア(酸化セリウム)、シリカ、ダイヤモンド、又はこれらの混合物を用いることができる。
【0051】
(内外周研削工程)
内外周端面研削工程では、図6に示すような研削加工装置30を用いて、ガラス基板Wの中心孔の内周端面及びガラス基板Wの外周端面に対して研削加工を施す。すなわち、この研削加工装置30は、内周砥石31及び外周砥石32を備え、互いの中心孔を一致させた状態でスペーサを挟んで複数枚のガラス基板Wを積層した積層体を軸回りに回転させながら、各ガラス基板Wの中心孔に挿入された内周砥石31と、各ガラス基板Wの外周に配置された外周砥石32とで各ガラス基板Wを径方向に挟み込み、これら内周砥石31及び外周砥石32を積層体とは逆向きに回転させる。これにより、ガラス基板Wの内径と外径の同心度を確保しながら、内周砥石31により各ガラス基板Wの内周端面を研削すると同時に、外周砥石32により各ガラス基板Wの外周端面を研削する。
【0052】
また、内周砥石31及び外周砥石32の表面は、軸方向に凸部と凹部とが交互に並ぶ波形形状を有しているため、各ガラス基板Wの内周端面及び外周端面を研削すると共に、各ガラス基板Wの両主面と内周端面及び外周端面との間のエッヂ部分(チャンファー面)に対して面取り加工を施すことが可能である。
【0053】
内周砥石31及び外周砥石32には、例えばダイヤモンド砥粒が結合剤で固定されたものを用いることができる。また、結合剤としては、例えば、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、炭化タングステンなどの金属を挙げることができる。
【0054】
(内周研磨工程)
内周端面研磨工程では、図7に示すようなポリッシングマシーン40を用いて、ガラス基板Wの中心孔の内周端面に対して研磨加工を施す。すなわち、このポリッシングマシーン40は、内周研磨ブラシ41を備え、上記積層体を軸回りに回転させると共に、各ガラス基板Wの中心孔に挿入された内周研磨ブラシ41をガラス基板Wとは逆向きに回転させながら上下方向に移動操作する。このとき、内周研磨ブラシ41に研磨液を滴下する。そして、この内周研磨ブラシ41により各ガラス基板Wの内周端面を研磨する。同時に、上記内外周端面研削工程において面取り加工が施された内周端面のエッヂ部分(チャンファー面)も研磨される。なお、研磨液については、例えば酸化ケイ素(コロイダルシリカ)砥粒や酸化セリウム砥粒を水に分散してスラリー化したものなどを用いることができる。
【0055】
(2次主面研削工程)
2次主面研削工程では、上記1次主面研削工程と同様に、上記図1に示すようなラッピングマシーン10及び研削パッドを用いて、ガラス基板Wの両主面に研削加工を施す。すなわち、互いに逆向きに回転する上下一対の定盤11,12の間で複数枚のガラス基板Wを挟み込みながら、これらガラス基板Wの両主面を定盤11,12に設けられた研削パッドにより平滑に研削する。
【0056】
なお、本発明では、上記1次及び2次主面研削工程による2段の主面研削工程に限らず、生産性の観点から、これらをまとめて1段の主面研削工程とすることも可能である。
【0057】
(外周研磨工程)
外周端面研磨工程では、上記図8に示すようなポリッシングマシーン50を用いて、ガラス基板Wの外周端面に対して研磨加工を施す。すなわち、このポリッシングマシーン50は、回転シャフト51及び外周研磨ブラシ52を備え、互いの中心孔を一致させた状態でスペーサを挟んで複数枚のガラス基板Wを積層した積層体を、各ガラス基板Wの中心孔に挿入された回転シャフト51によって軸回りに回転させると共に、各ガラス基板Wの外周端面に接触させた外周研磨ブラシ52を積層体とは逆向きに回転させながら上下方向に移動操作する。このとき、外周研磨ブラシ52に研磨液を滴下する。そして、この外周研磨ブラシ52により各ガラス基板Wの外周端面を研磨する。同時に、上記内外周研削工程において面取り加工が施された外周端面のエッヂ部分(チャンファー面)も研磨される。なお、研磨液については、例えば酸化セリウム砥粒を水に分散してスラリー化したものなどを用いることができる。
【0058】
(1次主面研磨工程)
1次主面研磨工程では、図9に示すようなポリッシングマシーン60を用いて、ガラス基板Wの両主面に研磨加工を施す。すなわち、このポリッシングマシーン60は、上下一対の定盤61,62を備え、互いに逆向きに回転する定盤61,62の間で複数枚のガラス基板Wを挟み込みながら、これらガラス基板Wの両主面を定盤61,62に設けられた研磨パッドにより研磨し、更に平滑度を上げていく。
【0059】
また、研磨パッドには、例えばウレタンにより形成された硬質研磨布を用いることができる。そして、この研磨パッドによりガラス基板Wの両主面を研磨する際は、ガラス基板Wに研磨液を滴下する。研磨液については、例えばセリア、シリカ、ダイヤモンド、又はこれらの混合物の砥粒等を水に分散してスラリー化したものなどを用いることができる。
【0060】
(2次主面研磨工程)
2次主面研磨工程では、上記1次主面研磨工程と同様に、上記図9に示すようなポリッシングマシーン60を用いて、ガラス基板Wの両主面に研磨加工を施す。すなわち、互いに逆向きに回転する定盤61,62の間で複数枚のガラス基板Wを挟み込みながら、これらガラス基板Wの両主面を定盤61,62に設けられた研磨パッドにより研磨し、表面の最終的な仕上げを行う。
【0061】
また、研磨パッドには、例えばスエード状の軟質研磨布を用いることができる。そして、この研磨パッドによりガラス基板Wの両主面を研磨する際は、例えば酸化セリウム、コロイダルシリカ、ダイヤモンド、又はこれらの混合物を水等の分散媒に分散してスラリー化した研磨液を使用して行う。
【0062】
なお、本発明では、上記1次及び2次主面研磨工程による2段の主面研磨工程に限らず、生産性の観点から、これらをまとめて1段の主面研磨工程とすることも可能である。
【0063】
また、上記図5に示すにラッピングマシーン10及び図9に示すポリッシングマシーン60については、例えば図10に示すように、上下一対の下定盤71及び上定盤72と、下定盤71の上定盤72と対向する面に配置された複数のキャリア73とを備え、各キャリア73に設けられた複数(本実施形態では35つ。)の開口部74にガラス基板(図示せず。)をセットし、これら複数のガラス基板の両主面を下定盤71及び上定盤72に設けられた研削パッドにより研削する又は研磨パッドにより研磨する構成とすることも可能である。
【0064】
具体的に、下定盤71及び上定盤72は、それぞれの中心部に設けられた回転軸71a,72aを駆動モータ(図示せず。)により回転駆動することで、互いの中心軸を一致させた状態で互いに逆向きに回転可能となっている。また、下定盤71の上定盤72と対向する面には、複数(本実施形態では5つ。)のキャリア73を配置するための凹部75が設けられている。
【0065】
複数のキャリア73は、例えばアラミド繊維やガラス繊維を混入することで強化されたエポキシ樹脂などを円盤状に形成したものからなる。そして、これら複数のキャリア73は、凹部75の内側において回転軸71aの周囲に並んで配置されている。また、各キャリア73の外周部には、全周に亘って遊星ギア部76が設けられている。一方、凹部75の内周部には、各キャリア73の遊星ギア部76と噛合された状態で、回転軸71aと共に回転する太陽ギア部77と、凹部75の外周部には、各キャリア73の遊星ギア部76と噛合される固定ギア部78とが、それぞれ設けられている。
【0066】
これにより、複数のキャリア73は、回転軸71aと共に太陽ギア部77が回転すると、太陽ギア部77及び固定ギア部78と遊星ギア部76との噛合によって、凹部75内で回転軸71aの周囲を当該回転軸71aと同一方向に回転(公転)しながら、互いの中心軸回りに回転軸71aとは逆方向に回転(自転)する、いわゆる遊星運動を行う。
【0067】
したがって、上記構成を採用することにより、各キャリア73の開口部75に保持された複数のガラス基板Wを遊星運動させながら、その両主面を下定盤71及び上定盤72に設けられた研削パッドにより研削する又は研磨パッドにより研磨することが可能である。また、この構成の場合、ガラス基板Wに対する研削又は研磨をより精度良く、また迅速に行うことが可能である。
【0068】
(最終洗浄・検査工程)
以上のような研削加工及び研磨加工が施されたガラス基板Wは、最終洗浄工程及び検査工程に送られる。そして、最終洗浄工程では、例えば超音波を併用した洗剤(薬品)による化学的洗浄などの方法を用いて、ガラス基板Wを洗浄し、上記工程において使用した研磨剤等の除去を行う。
【0069】
一方、検査工程では、例えばレーザを用いた光学式検査器により、ガラス基板Wの表面(主面、端面及びチャンファー面)の傷やひずみの有無等の検査を行う。
【0070】
本発明では、この検査工程において、上記本発明の数値範囲、すなわち上記Rq値が1Å以下、且つ、上記P値が15%以下となる磁気記録媒体用基板を良品と判定する。一方、検査結果が本発明の数値範囲から外れた場合には、直ちに製造工程にフィードバックし、上記本発明の数値範囲を満たすための調整を行う。
【0071】
また、本検査工程では、製造されたガラス基板の全数検査に加え、一定枚数毎の抜き取り検査を行ってもよい。この場合、上記本発明の数値範囲を更に狭くして安全率を加味することが望ましい。
【0072】
なお、本発明において、上記検査結果をフィードバックする製造工程とは、具体的には、上述したガラス基板Wの主面に対して研削及び研磨を施す、1次及び2次主面研削工程、並びに1次及び2次主面研磨工程である。特に、本発明では、極微小の表面形態が重要であるため、2次主面研削工程及び2次主面研磨工程の影響が大きく、その中で最も影響を受けるのは2次主面研磨工程である。また、各工程で管理されるのは、定盤の面精度、研磨パッドの面精度、摩耗状況、研磨材の品質、研磨材の供給量、研磨盤に加える加重、研磨盤の回転速度、研磨時間、研磨温度等の多岐にわたる。
【0073】
(磁気記録媒体)
次に、本発明の実施形態として図11に示す磁気記録媒体について説明する。
なお、図11は、本発明を適用した磁気記録媒体の一例を示す断面図である。
この磁気記録媒体は、図11に示すように、上記本発明の数値範囲を満足する磁気記録媒体用基板(非磁性基板)1の上に、軟磁性下地層2と、第1の配向制御層3と、第2の配向制御層8と、垂直磁性層4と、保護層5とを順次積層し、その上に潤滑膜6を設けた構造を有している。
【0074】
また、垂直磁性層4は、非磁性基板1側から順に、下層の磁性層4aと、中層の磁性層4bと、上層の磁性層4cとの3層を含み、磁性層4aと磁性層4bとの間に非磁性層7aと、磁性層4bと磁性層4cとの間に非磁性層7bを含むことで、これら磁性層4a〜4cと非磁性層7a,7bとが交互に積層された構造を有している。
【0075】
さらに、図示を省略するものの、各磁性層4a〜4c及び非磁性層7a,7bを構成する結晶粒子は、第1の配向制御層3を構成する結晶粒子と共に、厚み方向に連続した柱状晶を形成している。
【0076】
また、非磁性基板1は、Co又はFeが主成分となる軟磁性下地層2と接することで、表面の吸着ガスや、水分の影響、基板成分の拡散などにより、腐食が進行する可能性がある。この場合、非磁性基板1と軟磁性下地層2の間に密着層を設けることが好ましく、これにより、これらを抑制することが可能となる。なお、密着層の材料としては、例えば、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金など適宜選択することが可能である。また、密着層の厚みは2nm(20Å)以上であることが好ましい。
【0077】
軟磁性下地層2は、磁気ヘッドから発生する磁束の基板面に対する垂直方向成分を大きくするために、また情報が記録される垂直磁性層4の磁化の方向をより強固に非磁性基板1と垂直な方向に固定するために設けられている。この作用は、特に記録再生用の磁気ヘッドとして垂直記録用の単磁極ヘッドを用いる場合に、より顕著なものとなる。
【0078】
軟磁性下地層2としては、例えば、Feや、Ni、Coなどを含む軟磁性材料を用いることができる。具体的な軟磁性材料としては、例えば、CoFe系合金(CoFeTaZr、CoFeZrNbなど。)、FeCo系合金(FeCo、FeCoVなど。)、FeNi系合金(FeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど。)、FeAl系合金(FeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど。)、FeCr系合金(FeCr、FeCrTi、FeCrCuなど。)、FeTa系合金(FeTa、FeTaC、FeTaNなど。)、FeMg系合金(FeMgOなど。)、FeZr系合金(FeZrNなど。)、FeC系合金、FeN系合金、FeSi系合金、FeP系合金、FeNb系合金、FeHf系合金、FeB系合金などを挙げることができる。
【0079】
軟磁性下地層2は、2層の軟磁性膜から構成されており、2層の軟磁性膜の間にはRu膜を設けることが好ましい。Ru膜の膜厚を0.4〜1.0nm、又は1.6〜2.6nmの範囲で調整することで、2層の軟磁性膜がAFC構造となり、このようなAFC構造を採用することで、いわゆるスパイクノイズを抑制することができる。
【0080】
また、第1の配向制御層3と垂直磁性層4の間には、第2の配向制御層8を設けることが好ましい。この場合、第1の配向制御層3の直上にある垂直磁性層4の初期部には、結晶成長の乱れが生じ易く、これがノイズの原因となる。この初期部の乱れた部分を第2の配向制御層8で置き換えることによって、ノイズの発生を抑制することが可能である。
【0081】
このような第2の配向制御層8には、その材料について特に限定されないものの、hcp構造、fcc構造、アモルファス構造を有するものを用いることが好ましい。特に、Ru系合金、Ni系合金、Co系合金、Pt系合金、Cu系合金を用いることが好ましく、特に、Ru又はRuを主成分とする合金を用いることが好ましい。また、第2の配向制御層8の厚みは、5nm以上30nm以下とすることが好ましい。
【0082】
垂直磁性層4を構成する層のうち、下層及び中層の磁性層4a,4bは、Coを主成分とし、更に酸化物41を含んだ材料からなり、この酸化物41としては、例えばCr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Coなどの酸化物を用いることが好ましい。その中でも特に、TiO、Cr、SiOなどを好適に用いることができる。また、上層の磁性層4aは、酸化物を2種類以上添加した複合酸化物からなることが好ましい。その中でも特に、Cr−SiO、Cr−TiO、Cr−SiO−TiOなどを好適に用いることができる。
【0083】
各磁性層4a,4bに適した材料としては、例えば、90(Co14Cr18Pt)−10(SiO){Cr含有量14原子%、Pt含有量18原子%、残部Coからなる磁性粒子を1つの化合物として算出したモル濃度が90mol%、SiOからなる酸化物組成が10mol%、以下同様。}、92(Co10Cr16Pt)−8(SiO)、94(Co8Cr14Pt4Nb)−6(Cr)の他、(CoCrPt)−(Ta)、(CoCrPt)−(Cr)−(TiO)、(CoCrPt)−(Cr)−(SiO)、(CoCrPt)−(Cr)−(SiO)−(TiO)、(CoCrPtMo)−(TiO)、(CoCrPtW)−(TiO)、(CoCrPtB)−(Al)、(CoCrPtTaNd)−(MgO)、(CoCrPtBCu)−(Y)、(CoCrPtRu)−(SiO)などの合金系を挙げることができる。
【0084】
上層の磁性層4cは、Coを主成分とすると共に酸化物を含まない材料から構成することが好ましく、層中の磁性粒子42が磁性層4a中の磁性粒子42から柱状にエピタキシャル成長している構造であることが好ましい。この場合、各磁性層4a〜4cの磁性粒子42が、各層において1対1に対応して、柱状にエピタキシャル成長することが好ましい。また、中層の磁性層4bの磁性粒子42が下層の磁性層4a中の磁性粒子42からエピタキシャル成長していることで、中層の磁性層4bの磁性粒子42が微細化され、更に結晶性及び配向性がより向上したものとなる。
【0085】
磁性層4cに適した材料としては、特に、CoCrPt系、CoCrPtB系を挙げることできる。CoCrPtB系の場合、CrとBの合計の含有量は、18原子%以上28原子%以下であることが好ましい。
【0086】
垂直磁性層4の厚みは、5〜20nmとすることが好ましい。垂直磁性層4の厚みが上記未満であると、十分な再生出力が得られず、熱揺らぎ特性も低下する。また、垂直磁性層4の厚さが上記範囲を超えた場合には、垂直磁性層4中の磁性粒子の肥大化が生じ、記録再生時におけるノイズが増大し、信号/ノイズ比(S/N比)や記録特性(OW)に代表される記録再生特性が悪化するため好ましくない。
【0087】
また、垂直磁性層4を構成する磁性層4a〜4c間に設ける非磁性層7a,7bとしては、上記合金の金属粒子が酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物中に分散した構造のものを用いることが好ましい。さらに、この金属粒子が非磁性層7a,7bを上下に貫いた柱状構造を有することがより好ましい。このような構造とするためには、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物を含んだ合金材料を使用することが好ましい。具体的には、酸化物として、例えば、SiO、Al、Ta、Cr、MgO、Y、TiOなど、金属窒化物として、例えば、AlN、Si、TaN、CrNなど、金属炭化物として、例えば、TaC、BC、SiCなどをそれぞれ用いることができる。さらに、例えば、CoCr−SiO、CoCr−TiO、CoCr−Cr、CoCrPt−Ta、Ru−SiO、Ru−Si、Pd−TaCなどを用いることができる。
【0088】
保護層5は、垂直磁性層4の腐食を防ぐと共に、磁気ヘッドが磁気記録媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐためのもので、従来公知の材料を使用することができ、例えばC、SiO、ZrOを含むものを使用することが可能である。保護層5の厚みは、1〜10nmとすることが磁気ヘッドと磁気記録媒体との距離を小さくできるので高記録密度の点から好ましい。
【0089】
潤滑膜6には、例えば、パーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸などの潤滑剤を用いることが好ましい。
【0090】
(磁気記録再生装置)
図12は、上記本発明の磁気記録媒体を用いたHDD(磁気記録再生装置)の一例を示すものである。
このHDDは、上記図11に示す本発明の磁気記録媒体80と、磁気記録媒体80を回転駆動させる媒体駆動部81と、磁気記録媒体80に情報を記録再生する磁気ヘッド82と、磁気ヘッド82を磁気記録媒体80に対して相対運動させるヘッド駆動部83と、記録再生信号処理系84とを備えている。
【0091】
また、記録再生信号処理系84は、外部から入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド82に送り、磁気ヘッド82からの再生信号を処理してデータを外部に送ることが可能となっている。
【0092】
また、磁気ヘッド82には、再生素子として巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子などを有した、より高記録密度に適した磁気ヘッドを用いることができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0094】
(実施例1)
実施例1では、先ず、外径65mm、中央孔20mm、厚さ0.80mmの円盤状ガラス基板(オハラ社製、TS−10SX)を用いた。
【0095】
そして、この円盤状ガラス基板に対して、1次主面研削工程と、内外周端面研削工程と、内周端面研磨工程と、2次主面研削工程と、外周端面研磨工程と、1次主面研磨工程、2次主面研磨工程とをこの順で行った。
【0096】
具体的に、1次主面研削工程では、上下一対の定盤を備えるラッピングマシーンを用いて、互いに逆向きに回転する定盤の間で複数枚の円盤状ガラス基板を挟み込みながら、これら円盤状ガラス基板の両主面を定盤に設けられた研削パッドにより研削した。
【0097】
このとき、研削パッドには、ダイヤモンドパッド(住友3M社製トライザクト(商品名))を使用した。このダイヤモンドパッドは、凸部の外形寸法が2.6mm角、高さが2mm、隣接する凸部の間の間隔が1mm、ダイヤモンド砥粒の平均粒径が9μmであり、凸部におけるダイヤモンド砥粒の含有量が約20体積%であり、結合剤としてアクリル系樹脂を用いている。また、ラッピングマシーンには、4ウエイタイプ両面研磨機(浜井産業株式会社製16B型)を用い、定盤の回転数を25rpm、加工圧力を120g/cmとして、15分間研削を行った。研削液には、COOLANT D3(ネオス社製)を水で10倍に希釈して使用し、円盤状ガラス基板の片面当たりの研削量は約100μmとした。
【0098】
内外周端面研削工程では、内周砥石及び外周砥石を備える研削加工装置を用いて、互いの中心孔を一致させた状態でスペーサを挟んで複数枚の円盤状ガラス基板を積層した積層体を軸回りに回転させながら、各円盤状ガラス基板の中心孔に挿入された内周砥石と、各円盤状ガラス基板Wの外周に配置された外周砥石とで各円盤状ガラス基板を径方向に挟み込み、これら内周砥石及び外周砥石を積層体とは逆向きに回転させながら、内周砥石により各円盤状ガラス基板の内周端面を研削すると同時に、外周砥石により各円盤状ガラス基板の外周端面を研削した。このとき、内周砥石及び外周砥石には、平均粒径10μmのダイヤモンド砥粒を80体積%含有し、結合剤としてニッケル合金を用いた砥石を使用した。そして、内周砥石の回転数を1200rpm、外周砥石の回転数を600rpmとして、30秒間研削を行った。
【0099】
内周端面研磨工程では、内周研磨ブラシを備えるポリッシングマシーンを用いて、内周研磨ブラシに研磨液を滴下しながら、上記積層体を軸回りに回転させると共に、各円盤状ガラス基板の中心孔に挿入された内周研磨ブラシを円盤状ガラス基板とは逆向きに回転させながら上下方向に移動操作することにより、各円盤状ガラス基板の内周端面を研磨した。このとき、内周研磨ブラシには、ナイロンブラシを用い、研磨液には、固形分含有率40質量%のセリア研磨材溶液(平均粒子径0.5μm、昭和電工製)を水に加えセリア含有率が1質量%となるように調製して用いた。そして、内周研磨ブラシの回転数を300rpmとして、10分間研磨を行った。
【0100】
2次主面研削工程では、上下一対の定盤を備えるラッピングマシーンを用いて、互いに逆向きに回転する定盤の間で複数枚の円盤状ガラス基板を挟み込みながら、これら円盤状ガラス基板の両主面を定盤に設けられた研削パッドにより研削した。このとき、研削パッドには、ダイヤモンドパッド(住友3M社製トライザクト(商品名))を使用した。このダイヤモンドパッドは、凸部の外形寸法が2.6mm角、高さが2mm、隣接する凸部の間の間隔が1mm、ダイヤモンド砥粒の平均粒径が0.5μmであり、凸部におけるダイヤモンド砥粒の含有量が約60体積%であり、結合剤としてアクリル系樹脂を用いている。また、ラッピングマシーンには、4ウエイタイプ両面研磨機(浜井産業株式会社製16B型)を用い、定盤の回転数を30rpm、加工圧力を100g/cmとして、10分間研削を行った。研削液には、COOLANT D3(ネオス社製)を水で10倍に希釈して使用し、円盤状ガラス基板の片面当たりの研削量は約9μmとした。
【0101】
外周端面研磨工程では、外周研磨ブラシを備えるポリッシングマシーンを用いて、外周研磨ブラシに研磨液を滴下しながら、再び互いの中心孔を一致させた状態でスペーサを挟んで複数枚の円盤状ガラス基板を積層した積層体を、各円盤状ガラス基板の中心孔に挿入された回転シャフトによって軸回りに回転させると共に、各円盤状ガラス基板の外周端面に接触させた外周研磨ブラシを積層体とは逆向きに回転させながら上下方向に移動操作することにより、各円盤状ガラス基板の外周端面を研磨した。このとき、外周研磨ブラシには、ナイロンブラシを用い、研磨液には、固形分含有率40質量%のセリア研磨材溶液(平均粒子径0.5μm、昭和電工製)を水に加えセリア含有率が1質量%となるように調製して用いた。そして、研磨ブラシの回転数を300rpmとして、10分間研磨を行った。
【0102】
第1の主面研磨工程では、上下一対の定盤を備えるポリッシングマシーンを用いて、互いに逆向きに回転する定盤の間で複数枚の円盤状ガラス基板を挟み込み、円盤状ガラス基板に研磨液を滴下しながら、これら円盤状ガラス基板の両主面を定盤に設けられた研磨パッドにより研磨した。このとき、研磨パッドには、スウエードタイプ(Filwel製)を用い、研磨液には、固形分含有率40質量%のセリア研磨材溶液(平均粒子径0.2μm、昭和電工製)に水に加えセリア含有率が0.5質量%となるように調製して用いた。また、ポリッシングマシーンには、4ウエイタイプ両面研磨機(浜井産業株式会社製16B型)を用い、研磨液を7リットル/分で供給しながら、定盤の回転数を25rpm、加工圧力を110g/cmとして、20分間研磨を行った。円盤状ガラス基板の片面当たりの研磨量は約3μmとした。
【0103】
第2の主面研磨工程では、上下一対の定盤を備えるポリッシングマシーンを用いて、互いに逆向きに回転する定盤の間で複数枚の円盤状ガラス基板を挟み込み、円盤状ガラス基板に研磨液を滴下しながら、これら円盤状ガラス基板の両主面を定盤に設けられた研磨パッドにより研磨した。このとき、研磨パッドには、スウエードタイプ(Filwel製)を用い、研磨液には、固形分含有率40質量%のセリア研磨材溶液(平均粒子径0.08μm、昭和電工製)に水に加え、セリア含有率が0.5質量%となるように調製した研磨スラリーを用いた。また、ポリッシングマシーンには、4ウエイタイプ両面研磨機(浜井産業株式会社製16B型)を用い、研磨液を7リットル/分で供給しながら、定盤の回転数を27rpm、加工圧力を100g/cmとして、30分間研磨を行った。円盤状ガラス基板の片面当たりの研磨量は約2μmとした。
【0104】
そして、得られた円盤状ガラス基板に対して超音波を併用したアニオン性界面活性剤による化学的洗浄と、純水による洗浄を行い、実施例1の円盤状ガラス基板を製造した。
【0105】
(実施例2)
実施例2では、上記第2主面研削工程において、定盤の回転数を27rpm、加工圧力を90g/cmとして30分間研磨を行い、円盤状ガラス基板の片面当たりの研磨量は約1.5μmとした。それ以外は、上記実施例1と同様の条件で実施例2の円盤状ガラス基板を製造した。
【0106】
(比較例1)
比較例1では、上記2次主面研削工程において、定盤の回転数を25rpm、加工圧力を120g/cmとして10分間研削を行い、円盤状ガラス基板の片面当たりの研削量を約10μmとした。また、上記第2主面研磨工程において、定盤の回転数を25rpm、加工圧力を110g/cmとした。それ以外は、上記実施例1と同様の条件で比較例1の円盤状ガラス基板を製造した。
【0107】
(基板表面の評価)
そして、これら実施例1,2及び比較例1で製造した円盤状ガラス基板の表面について、表面粗さRq及びうねりとPSDとの関係を測定した。また、測定には、Candela OSA6300(米国、KLA−Tencor社製)を用い、測定条件は以下のとおりとした。その測定結果を表2及び図13に示す。
基板回転数:10000回転/分
測定範囲:半径19〜25mm、回転角0〜360°
測定ステップ:4μm
サンプリング頻度:5.46°
レーザー走査方法:スパイラル
【0108】
【表2】

【0109】
(磁気記録媒体の製造)
次に、実施例1,2比較例1の各円盤状ガラス基板を用いて磁気記録媒体を製造した。
具体的には、先ず、各円盤状ガラス基板を、DCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C−3040)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバ内を排気した後、このガラス基板の上に、Crターゲットを用いて層厚10nmの密着層を成膜した。また、この密着層の上に、Co−20Fe−5Zr−5Ta{Fe含有量20原子%、Zr含有量5原子%、Ta含有量5原子%、残部Co}のターゲットを用いて100℃以下の基板温度で、層厚25nmの軟磁性層を成膜し、この上に層厚0.7nmのRu層を成膜した後、更にこの上に層厚25nmのCo−20Fe−5Zr−5Taからなる軟磁性層を成膜して、これを軟磁性下地層とした。
【0110】
次に、軟磁性下地層の上に、Ni−6W{W含有量6原子%、残部Ni}ターゲットを用いて、層厚5nmのシード層を成膜した後、このシード層の上に、第1の配向制御層として、スパッタ圧力を0.8Paとして層厚10nmのRu層を成膜した。
【0111】
次に、第2の配向制御層として、スパッタ圧力を1.5Paとして層厚10nmのRu層を成膜した。そして、この第2の配向制御層の上に、91(Co15Cr16Pt)−6(SiO)−3(TiO){Cr含有量15原子%、Pt含有量16原子%、残部Coの合金を91mol%、SiOからなる酸化物を6mol%、TiOからなる酸化物を3mol%}からなる磁性層を、スパッタ圧力を2Paとして層厚9nmで成膜した。
【0112】
次に、磁性層の上に、88(Co30Cr)−12(TiO){Cr含有量30原子%、残部Coの合金を88mol%、TiOからなる酸化物を12mol%}からなる非磁性層を層厚0.3nmで成膜した後、この上に、92(Co11Cr18Pt)−5(SiO)−3(TiO){Cr含有量11原子%、Pt含有量18原子%、残部Coの合金を92mol%、SiOからなる酸化物を5mol%、TiOからなる酸化物を3mol%}からなる磁性層を、スパッタ圧力を2Paとして層厚6nmで成膜した。その後、磁性層の上に、Ruからなる非磁性層を層厚0.3nmで成膜し、この上に、Co−20Cr−14Pt−3B{Cr含有量20原子%、Pt含有量14原子%、B含有量3原子%、残部Co}からなるターゲットを用いて、スパッタ圧力を0.6Paとして磁性層を層厚7nmで成膜した。
【0113】
次に、CVD法により層厚3nmの保護層を成膜し、最後に、ディッピング法によりパーフルオロポリエーテルからなる潤滑膜を成膜することによって、磁気記録媒体を作製した。
【0114】
(磁気記録媒体の評価)
そして、作製した実施例1,2及び比較例1の磁気記録媒体について、熱式浮上量可変素子がヘッドのスライダに形成された磁気ヘッドを用いて、シグナルのグランドレベル強度の評価を行った。評価条件は以下のとおりである。その評価結果を図14に示す。
基板回転数:7200回転/分
測定位置:半径22.4mm
評価ヘッド:熱式浮上量可変素子内蔵型MRヘッド
ヘッド浮上高さの可変量:1nm/10mW
【0115】
図14に示すように、実施例1,2の磁気記録媒体では、磁気ヘッドが磁気記録媒体の表面に接触する直前まで磁気ヘッドからのシグナルのグランドレベルが低く、S/N比高く、電磁変換特性に優れていることがわかる。一方、比較例1の磁気記録媒体では、磁気ヘッドが磁気記録媒体表面に接触する直前において、シグナルのグランドレベル強度が2倍以上に高まり電磁変換特性が悪かった。
【符号の説明】
【0116】
1…非磁性基板 2…軟磁性下地層 3…第1の配向制御層 4…垂直磁性層 4a…下層の磁性層 4b…中層の磁性層 4c…上層の磁性層 5…保護層 6…潤滑膜 7…非磁性層 7a…下層の非磁性層 7b…上層の非磁性層 8…第2の配向制御層
10…ラッピングマシーン 11,12…定盤 20A,20B…ダイヤモンドパッド 20a…ラップ面 21…凸部 22…基材 30…研削加工装置 31…内周砥石 32…外周砥石 40…ポリッシングマシーン 41…内周研磨ブラシ 50…ポリッシングマシーン 51…回転シャフト 52…外周研磨ブラシ 60…ポリッシングマシーン 61,62…定盤 71…下定盤 72…上定盤 73…キャリア 74…開口部 75…凹部 76…遊星ギア部 77…太陽ギア部 78…固定ギア部 W…ガラス基板
80…磁気記録媒体 81…媒体駆動部 82…磁気ヘッド 83…ヘッド駆動部 84…記録再生信号処理系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心孔を有する円盤状の磁気記録媒体用基板であって、
その主面における表面粗さは、円周方向のうねりの空間周期(L)が10〜1000μmの範囲における二乗平均平方根粗さ(Rq)で1Å以下であり、
且つ、前記表面粗さについてスペクトル解析を行い、その空間周期(L)を横軸[μm]とし、そのパワースペクトル密度(PSD)を縦軸[k・Å・μm](kは定数)とした両対数グラフ上に表される曲線Sにおいて、空間周期(L)が10μmとなる点Aと、空間周期(L)が1000μmとなる点Bとを結ぶ線分Zの縦軸方向の成分をHとし、この線分Zに対して曲線Sの縦軸方向の成分が最大となる変位をΔHとしたときに、ΔH/H×100[%]で表される値(P)が15%以下であることを特徴とする磁気記録媒体用基板。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気記録媒体用基板の面上に、少なくとも磁性層を有する磁気記録媒体。
【請求項3】
中心孔を有する円盤状の磁気記録媒体用基板の製造方法であって、
前記磁気記録媒体用基板の主面における表面粗さを、円周方向のうねりの空間周期(L)が10〜1000μmの範囲における二乗平均平方根粗さ(Rq)で1Å以下とし、
且つ、前記表面粗さについてスペクトル解析を行い、その空間周期(L)を横軸[μm]とし、そのパワースペクトル密度(PSD)を縦軸[k・Å・μm](kは定数)とした両対数グラフ上に表される曲線Sにおいて、空間周期(L)が10μmとなる点Aと、空間周期(L)が1000μmとなる点Bとを結ぶ線分Zの縦軸方向の成分をHとし、この線分Zに対して曲線Sの縦軸方向の成分が最大となる変位をΔHとしたときに、ΔH/H×100[%]で表される値(P)が15%以下となるように、
前記磁気記録媒体用基板の主面に対して研削加工及び研磨加工を施す工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の製造方法。
【請求項4】
中心孔を有する円盤状の磁気記録媒体用基板の表面検査方法であって、
前記磁気記録媒体用基板の主面における表面粗さとして、円周方向のうねりの空間周期(L)が10〜1000μmの範囲における二乗平均平方根粗さ(Rq)を求めるステップと、
前記表面粗さについてスペクトル解析を行い、その空間周期(L)を横軸[μm]とし、そのパワースペクトル密度(PSD)を縦軸[k・Å・μm](kは定数)とした両対数グラフ上に表される曲線Sにおいて、空間周期(L)が10μmとなる点Aと、空間周期(L)が1000μmとなる点Bとを結ぶ線分Zの縦軸方向の成分をHとし、この線分Zに対して曲線Sの縦軸方向の成分が最大となる変位をΔHとしたときに、ΔH/H×100[%]で表される値(P)を求めるステップと、
前記Rq値が1Å以下、且つ、前記P値が15%以下となる磁気記録媒体用基板を良品と判定するステップとを含むことを特徴とする磁気記録媒体用基板の表面検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載の表面検査方法を用いた検査工程を含む磁気記録媒体用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−114730(P2013−114730A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262611(P2011−262611)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】