説明

磁気記録媒体用塗料組成物及びそれを用いてなる磁気記録媒体

【課題】磁気テープの高品位化に伴い、磁気記録媒体の高強度化、高平滑化が図られる一方、磁気記録媒体のとして要求される表面電気抵抗を同時に確保する事は困難であった。かかる困難を解決することを課題とする。
【解決手段】少なくとも粉体と結合剤と分散剤と溶剤を含有する磁気記録媒体用塗料組成物において、少なくとも用いる粉体が平均板面径0.1〜2.0μm且つ板面径/板の厚みで表される板状比が3から100である平板状無機粉体と平均一次粒子径10〜50nm且つBET比表面積が500m/g以上のカーボンブラック1種類以上とを含有し、該平板状無機粉体100重量部に対する該カーボンブラック含有量が2から200重量部であることを特徴とする磁気記録媒体用塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体用塗料に関して、機械的強度、表面平滑性に優れ、薄膜磁気記録媒体に適した磁気記録媒体用塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオ用磁気テープの高画質化および記録時間の長時間化、データストレージ用磁気テープの高記録容量化に伴い、磁性粉の改良等により記録密度を高めると同時にテープ厚を出来る限り薄くし、テープ長を長くする必要性が高まっている。しかし、テープ厚を単に薄くするだけでは媒体の機械的強度が低下するため、媒体の破損、折れ、変形等の問題が発生する。これらの問題を解決するため、媒体の支持体、磁性層、バック層および重層塗布型磁気記録媒体における非磁性下層の機械的強度を高める検討が行われている。
【0003】
一般に磁性面と反対面に形成されるバック層には走行安定性、静電気防止のための導電性、テープ終端検知のための遮光性が必要とされ、これら各特性を満足させるため、カーボンブラックを主体とした無機微粒子粉体を結合剤溶液中に分散した塗料組成物を用いることによりバック層が形成されている。しかし、従来のカーボンブラックを主体としたバック層では、機械的強度の指標である塗膜ヤング率が500kg/mm程度であり、上記薄膜化の課題を十分に解決することができない。そこでバック層の機械的強度を改善するため、特許文献1、2では支持体とバック層の間に平板状無機粉体とカーボンブラックを充填剤とした層を形成した磁気記録媒体が、また特許文献3では平板状無機粉体とカーボンブラックの配合比を特定したバック層を形成した磁気記録媒体が提案されている。更に特許文献4にはバック層にカーボンブラックと板状マグネタイトの組み合わせにより機械強度と導電性の両立を図ることが提案されている。
【0004】
データストレージ用磁気テープに求められる導電性、すなわち塗膜の表面電気抵抗は特許文献5によれば、磁性面側で10〜1011Ω/sq、バック面側で10〜10Ω/sqであるとされている。
【0005】
重層塗布型磁気記録媒体の非磁性下層においてもバック層以上の表面平滑性と媒体製造時の切断屑や粉塵等が付着するのを防止するための導電性が求められる。上記の特性を満たすため、従来カーボンブラックと針状または粒状の無機粉体を充填剤として配合した塗料組成物を使用することで非磁性下層を形成することが提案されてきた。しかしながら、カーボンブラックと針状または粒状の無機粉体を充填剤として使用するのみでは、近年から将来に向けての薄膜磁気記録媒体において十分な機械的強度を得ることが困難となる。
【0006】
すなわち今後、磁気記録媒体が薄膜化になるにつれ、バック層および非磁性下層用塗料組成物には表面平滑性、導電性及び機械強度の3つの特性を同時に満足する事が求められる。そしてこの3つの特性を同時に満足させるためには平板状無機粉体とカーボンブラックの配合比が重要である。導電性を確保するためにカーボンブラックを過剰に添加すると機械的強度低下、表面粗さの劣化を起こし、塗膜の機械強度確保のため平板状無機粉体を過剰に添加した場合は十分な導電性が得られない。
【0007】
また、磁気記録媒体において表面平滑性等の要求が年々厳しくなってきており、特に平板状無機粉体とカーボンブラックを用いてバック層を形成する場合、各々の素材を適切に選定しないと表面平滑性は確保されず、形成された非磁性下層またはバック層が磁性層薄膜の平滑性を粗す原因となり、電磁変換特性等の記録特性の低下をもたらす。
【特許文献1】特開昭64−60819号公報
【特許文献2】特開平4−285725号公報
【特許文献3】特開平8−129742号公報
【特許文献4】特開平9−198650号公報
【特許文献5】特開2006−331557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、高強度で高平滑でありながら必要とされる導電性を有する磁気記録媒体用塗料組成物を得る事にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、少なくとも粉体と結合剤と分散剤と溶剤を含有する磁気記録媒体用塗料組成物において、少なくとも用いる粉体が平均板面径0.1〜2.0μm且つ板面径/板の厚みで表される板状比が3から100である平板状無機粉体と平均一次粒子径10〜50nm且つBET比表面積が500m/g以上のカーボンブラック1種類以上とを含有し、該平板状無機粉体100重量部に対する該カーボンブラック含有量が2から200重量部であることを特徴とする磁気記録媒体用塗料組成物に関する。
に関する。
【0010】
更には平板状無機粉体が平板状酸化鉄である上記磁気記録媒体用塗料組成物に関する。
【0011】
更にはこれら磁気記録媒体用塗料組成物を用いてなる層を少なくとも一層以上有することを特徴とする磁気記録媒体に関する。
更にはこれら磁気記録媒体用塗料組成物により形成された層の表面電気抵抗が1×10Ω/sqから1×1010Ω/sqであることを特徴とする磁気記録媒体に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、機械的強度と表面平滑性を同時に満足し、且つ磁気記録媒体として必要とされる導電性を有する磁気記録媒体用塗料組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の磁気記録媒体用塗料組成物は少なくとも平板状無機粉体、カーボンブラック、結合剤、分散剤そして溶剤からなる。
【0014】
本発明において使用する平板状無機粉体は特に限定されるものではないが、α酸化鉄、酸化チタン、グラファイト、カオリン、雲母、酸化亜鉛、およびバリウムフェライト等を用いることができる。但し、塗膜強度の観点からはα酸化鉄、グラファイト、および雲母が好ましく、α酸化鉄が特に好ましい。これらの無機粉体は単独または複数で用いてよい。
【0015】
さらに平板状無機粉体は板面径0.1〜2.0μm且つ板面径/板の厚みで表される板状比が3から100である。板面径は0.1μm未満であると機械的強度が十分に得られず、2.0μmを超えると、塗膜の表面平滑性が著しく低下する。板状比は3未満であると機械的強度が十分に得られず、100を超えると塗膜の表面平滑性が著しく低下し、磁気記録特性の低下を引き起こす。
【0016】
本発明ではカーボンブラックとして市販のファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、また、通常行われている酸化処理カーボンや、中空(高導電性)カーボンブラック等を単独または走行耐久性確保の観点から複数組み合わせて使用することができるが、平均一次粒子径10〜50nm且つBET比表面積が500m/g以上のカーボンブラックを1種類以上含有するものとする。平均一次粒子径が10nm以下では微細かつ均一な分散が非常に困難となり、平滑な塗膜表面を得られず、また平均粒子径が50nm以上では平板状無機物との組み合わせで塗膜の表面平滑性を確保することが難しくなり、何れも磁気記録特性の低下を引き起こす。BET比表面積が500m/g以上のカーボンブラックを全く含まない場合には十分な導電性を確保することが難しい。
【0017】
平板状無機粉体とカーボンブラックの配合比は、平板状無機粉体100重量部に対して2〜200重量部が好ましく、2〜70重量部がさらに好ましい。2重量部未満では導電性が不十分となり、200重量部を越えると塗膜強度の低下を招く。
【0018】
また、カーボンブラックの分散性を向上させる目的で従来公知の分散剤が塗料組成物中に添加されていてもよい。分散剤としては特に限定されるものではないが、例えば樹脂型分散剤、界面活性剤あるいは特開昭61−224136号公報や特許第2602273号公報などに開示されている有機色素誘導体やトリアジン誘導体を単独または複数組み合わせて使用されていてもよく、本発明の任意の製造工程中で添加することができる。
【0019】
本発明に用いられる結合剤については特に限定されるものではないが、磁気記録媒体に用いられる従来公知の樹脂を結合剤として組み合わせて使用できる。例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルビチラール、ビニルアセタール等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、硝化綿等の繊維素系樹脂が挙げられる。
【0020】
本発明における溶剤としては、特に限定されるものではないが、具体例としては磁気記録媒体用塗料に通常使用されているメチルエチルケトン、トルエン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン等を単独あるいは複数組み合わせて使用することができる。これらの有機溶剤は必ずしも100%純粋である必要はなく、主成分以外にも異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純物が微量含まれていてもかまわない。
【0021】
本発明の磁気記録媒体用塗料組成物は、従来公知の方法で製造することができる。即ち、メチルエチルケトン、トルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等の有機溶剤中に結合剤の一部あるいは全量を溶解した溶液に、少なくとも平板状無機粉体を混合し、2本ロールミル、3本ロールミル、サンドミル、アトライター、ニーダー、ディゾルバー等の各種分散機で分散する。このとき、好ましくは、少なくとも平板状無機粉体、結合剤の一部あるいは全量、さらに有機溶剤の一部を予め2本ロールミルで分散処理した後、得られた固形分散体を残りの有機溶剤に溶解し、さらにはメディア攪拌型分散機によって分散することである。2本ロールミルでの分散における大きなせん断力は板面に対して垂直に凝集しやすい平板状無機粉体を微細分散するのに特に有効な手段であり、分散が難しい平板状無機粉体を使用しても、平滑性に優れる塗料を提供することができる。2本ロールミルによる分散における平板状無機粉体と結合剤の比率(平板状無機粉体の重量/結合剤の重量)は、平板状無機粉体および結合剤の諸物性によっても最適比率が変動するため特に限定されるものではないが、95/5〜70/30が好ましく、さらに好ましくは90/10〜75/25である。95/5以上では結合剤の量が不十分になりがちであり、十分な安定性が得られず、表面平滑性が低下するばかりでなく、平板状無機粉体の破砕により板状比が低下し、機械的強度の低下を招く。70/30以下では、2本ロールミルでの混練時のせん断力が低下するため十分な分散効果が得られず、表面平滑性が低下する。
【0022】
2本ロールミルで分散処理して得られた固形分散体はディゾルバー等の高速攪拌機により有機溶剤中に溶解することで液状分散体が得られる。その後、アトライター、サンドミル、ボールミル等のメディア攪拌型分散機でさらに分散処理することで微細かつ均一に分散された塗料組成物を得ることができる。メディア攪拌型分散機に用いられるメディアとしては、特に限定されるものではないが、ガラスビーズ、スチールビーズ、アルミナビーズ、チタニアビーズ、ジルコニアビーズ等を使用することができる。
【0023】
本発明により得られる磁気記録媒体用塗料組成物をバック層または非磁性下層に用いたことを特徴とする磁気記録媒体も本発明の態様である。
【0024】
本発明における非磁性支持体は、現在磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリカーボネート等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等の金属フィルム、各種紙が使用でき、厚みは1.0〜200μm、好ましくは1.0〜20μであり、さらに好ましくは1.0〜5.0μmである。非磁性支持体に非磁性下層および磁性層を積層する方法としては、非磁性下層および磁性層を湿潤状態のうちに同時または非磁性下層を塗布後、非磁性下層が湿潤状態のうちに磁性層を設ける逐次湿潤塗布であるいわゆるウェット・オン・ウェット方式、非磁性下層が乾燥した後に磁性層を設けるウェット・オン・ドライ方式がある。
【0025】
本発明により得られる磁気記録媒体用塗料組成物を用いてなる磁気記録媒体において、磁性層は、強磁性粉末をバインダーに分散させた磁性塗料を塗布、乾燥するか、蒸着やスパッタリングにより金属薄膜を形成する方法により得られる。強磁性粉末としては、金属磁性粉末、酸化鉄、炭化鉄、バリウムフェライト等の磁性を有する材料であれば特に制限はなく、形状も球状、針状、板状等任意に選択して使用できる。これらの強磁性粉末は必要に応じて無機化合物、有機化合物で表面処理されていてもよい。また磁性層にはカーボンブラックや従来公知の潤滑剤、研磨剤、分散剤等の添加剤を含有させることができる。また蒸着またはスパッタリングにより形成される金属薄膜としては鉄、コバルトおよびニッケル等の強磁性金属ならびにこれらの合金からなるものがあり、単層であっても多層であってもよい。また蒸着層の上層にスパッタリング、CVD法等による保護膜を形成してもよく、従来公知の潤滑層を形成してもよい。
【0026】
また、媒体形成時に樹脂架橋剤として、ポリイソシアネートを組み合わせてもよい。ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、オルトトルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、またいわゆるブロック剤でブロックされたイソシアネート類またこれらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、またイソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用できる。これらのイソシアネート類は結合剤中の極性基と反応することによって3次元的に架橋し、塗膜の強度、耐久性を高める効果がある。
【0027】
[実施例]
次に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。各例において、特に指定しない限り「部」とは重量部を、「%」とは重量%をそれぞれ表す。
【0028】
また、実施例においては得られる塗膜の表面平滑性、表面電気抵抗及び強度を評価するために、磁性層の形成を行わなかった。なお、比較例についても同様である。
【0029】
[実施例1]
下記組成物を2本ロールミルで分散し固形分散体を得た。
平板状酸化鉄A(板面径0.2μm 板状比5) 100部
70%湿潤硝化綿(HIG−1/2 SNPE JAPAN株式会社製) 9部
ポリウレタン溶液(バイロンUR−8200 東洋紡績株式会社製)9部
上記固形分散体の120℃1時間加熱での固形分は95%であった。
【0030】
次に下記組成で配合を行った。

メチルエチルケトン167部
トルエン167部
シクロヘキサノン44部
カーボンブラックA(平均一次粒径35nm、BET比表面積1300m/g)5部
カーボンブラックB(平均一次粒径24nm、BET比表面積120m/g)5部
【0031】
有機色素誘導体A(化1)0.5部を予め混合した溶液中に上記固形分散体126部をディゾルバーで攪拌しながら加え、2時間攪拌した。次に得られた組成物を0.5mm径のジルコニアビーズを充填したアニュラー構造を有するメディア攪拌型分散機を用いて分散し、10μmのフィルターで濾過して磁気記録媒体用塗料組成物を得た。
【0032】
塗膜強度測定用試料として上記組成物に、ポリイソシアネート(コロネートL、日本ポリウレタン製)を5部加え、9μm厚のポリエチレンテレフタラート支持体上に塗布、乾燥後、カレンダー処理による鏡面加工を行い、3μm塗膜厚の磁気記録媒体を得た。
【0033】
また、塗膜の平滑性および表面電気抵抗の測定用に上記組成物を塗布厚1ミル(=25.4μm)ドクターブレードを用いて1mm厚の平滑なガラス板に塗布し、常温で乾燥した塗工物を得た。
一般式(1)
【0034】
【化1】

【0035】
[実施例2]
実施例1における平板状酸化鉄Aを平板状酸化鉄B(板面径2.0μm 板状比80)に変更した以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を得た。
【0036】
[実施例3]
実施例1において70%湿潤硝化綿(HIG−1/2 SNPE JAPAN株式会社製)を塩化ビニル樹脂(MR110、日本ゼオン株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を得た。
【0037】
[実施例4]
実施例3において平板状酸化鉄Aを平板状酸化鉄B(板面径2.0μm 板状比80)に変更した以外は実施例3と同様の方法で磁気記録媒体を得た。
【0038】
[比較例1]
実施例1におけるカーボンブラックAをカーボンブラックC(平均一次粒径14nm、BET比表面積240m/g)に変更した以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を得た。
【0039】
[比較例2]
実施例1におけるカーボンブラックBを5部から215部に変更した以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を得た。
【0040】
[比較例3]
実施例1におけるカーボンブラックBをカーボンブラックD(平均一次粒径75nm、BET比表面積25m/g)に変更した以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を得た。
【0041】
[比較例4]
実施例1におけるカーボンブラックBをカーボンブラックE(平均一次粒径8nm、BET比表面積590m/g)に変更した以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を得た。
【0042】
[比較例5]
実施例1におけるカーボンブラックAを5部から1部に変更した以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を得た。
【0043】
[比較例6]
実施例1における平板状酸化鉄Aを平板状酸化鉄D(板面径2.0μm 板状比120)に変更した以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を得た。
【0044】
[参考例]
実施例1における平板状酸化鉄Aを硫酸バリウムE(板面径8.5μm 板状比19)に変更した以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を得た。
【0045】
以上の実施例、比較例、参考例で作成した媒体について下記に示す方法で評価した。
【0046】
[中心線平均粗さ]
ガラスに塗工した塗膜の表面を触針式表面粗さ計(触針径1ミクロン)によりJIS−B−0601−1982に基づきカットオフ値0.08で測定し、表面粗さの評価指標である中心線平均粗さRaを求めた。Raは小さいほど平滑であることを示す。
【0047】
[表面電気抵抗]
同じ塗工物の塗膜の1.0Vの定電圧下での表面電気抵抗を、デジタル・エレクトロメーターを使い求めた。値が高いほど高抵抗であることを示す。
【0048】
[塗膜ヤング率]
ポリエチレンテレフタラート支持体上に塗布した媒体および塗布していない支持体それぞれについて、引っ張り試験機によって応力伸び特性を測定し、初期立ち上がりの傾き及び膜厚よりそれぞれの塗膜ヤング率を求めた。ヤング率は高い値ほど塗膜強度が高いことを示す。
以上の評価結果を表1にまとめた。表1からも明らかなように、本発明によって磁気記録媒体の表面電気抵抗の要求品位を満足しつつ、媒体の表面平滑性と強度を大きく向上させることが出来た。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
高密度記録が要求されるデータストレージテープやデジタル放送用VTRテープ等の磁気記録媒体に限らずカーボンブラックを含有する他の記録メディア、表示材料、機能性材料等あらゆる分野に利用可能である。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも粉体と結合剤と分散剤と溶剤を含有する磁気記録媒体用塗料組成物において、少なくとも用いる粉体が平均板面径0.1〜2.0μm且つ板面径/板の厚みで表される板状比が3から100である平板状無機粉体と平均一次粒子径10〜50nm且つBET比表面積が500m/g以上のカーボンブラック1種類以上とを含有し、該平板状無機粉体100重量部に対する該カーボンブラック含有量が2から200重量部であることを特徴とする磁気記録媒体用塗料組成物。
【請求項2】
平板状無機粉体が平板状酸化鉄である請求項1記載の磁気記録媒体用塗料組成物。
【請求項3】
請求項1乃至2記載の磁気記録媒体用塗料組成物を用いてなる層を少なくとも一層以上有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の磁気記録媒体用塗料組成物により形成された層の表面電気抵抗が1×10Ω/sqから1×1010Ω/sqであることを特徴とする磁気記録媒体。






【公開番号】特開2008−234790(P2008−234790A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75702(P2007−75702)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】