説明

磁気記録媒体用積層二軸配向ポリエステルフイルム

【目的】 表面粗さ、滑り性、耐削れ性、耐スクラッチ性、等の表面特性を維持しつつ、安価にかつ省資源に役立つ磁気記録媒体用積層二軸配向ポリエステルフイルムを提供する。
【構成】 3層からなる積層二軸配向ポリエステルフイルムであって、芯層が平均粒径1.0μm以下の不活性微粒子を含有し、表層が平均粒径0.3〜1.0μmの不活性微粒子Aの1種以上、及び比表面積50m2 /g以上120m2 /g以下、全細孔容積0.5ml/g以上1.0ml/g以下かつ平均粒径0.02μm以上0.3μm以下の不活性微粒子Bを0.05〜1.0重量%含有し、そして表層の厚みが芯層に含まれる不活性微粒子の平均粒径以上であることを特徴とする磁気記録媒体用積層二軸配向ポリエステルフイルム。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁気記録媒体用積層二軸配向ポリエステルフイルムに関し、更に詳しくは3層からなる積層二軸配向ポリエステルフイルムであって、フイルムに添加された微細な不活性粒子によって形成されるフイルム表面の微細突起によって付与される表面粗さ、滑り性、耐削れ性、耐スクラッチ性等の表面特性を維持しつつ、安価にかつ省資源に役立つ磁気記録媒体用積層二軸配向ポリエステルフイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレンテレフタレートフイルムに代表される二軸配向ポリエステルフイルムは、その優れた物理的、化学的特性の故に、磁気記録媒体例えば磁気テープ、フロッピーディスク等のベースフイルムとして広く用いられている。
【0003】かかる二軸配向ポリエステルフイルムにおいては、その滑り性や耐削れ性がフイルムの製造工程および各種用途における加工工程の作業性の良否、さらにはその製品品質の良否を左右する大きな要因となっている。これらが不足すると、例えばポリエステルフイルム表面に磁性層を塗布し、磁気テープとして用いる場合には、磁性層塗布時におけるコーティングロールとフイルム表面との摩擦が激しく、またこれによるフイルム表面の摩耗も激しく、極端な場合にはフイルム表面へのしわ、擦り傷等が発生する。また磁性層塗布後のフイルムをスリットしてオーディオ、ビデオまたはコンピューター用テープ等に加工した後でも、リールやカセット等からの引き出し、巻き上げその他の操作の際に多くのガイド部、再生ヘッド等との間で摩耗が著しく生じ、擦り傷、歪の発生、さらにはポリエステルフイルム表面削れ等による白粉発生の結果、磁気記録信号の欠落、即ちドロップアウトの大きな原因となることが多い。
【0004】一般に、ポリエステルフイルムの滑り性の改良には、(i) 原料ポリマー中にその製造過程で触媒残渣から不活性の微粒子を析出せしめる方法や、(ii)不活性の微粒子を添加せしめる方法等によってフイルム表面に凹凸を付与し、ガイドロール等との間の接触面積を減少せしめる方法が採用されている。これらフイルム中の微粒子は、その大きさが大きい程、滑り性の改良が大きいのが一般的である。
【0005】一方、磁気記録媒体用のベースフイルムにおいては、電磁変換特性向上の点より、ベースフイルムの表面はできるだけ平坦であることが求められている。
【0006】この滑り性の改良と電磁変換特性の向上という相反する要求に対しては、例えば添加する微粒子中に存在する粗大粒子に起因するフイルム上の粗大突起が削れ粉の原因になったり、磁性層塗布後にも磁性面に突き出して電磁変換特性の悪化要因になっている点に着眼し、微粒子の分級強化や、もともと粒径分布のシャープな合成粒子を用いる等の改良が種々提案されている。
【0007】しかるに、かかる方法はフイルムに優れた特性を付与しているが、コストを著しく高める要因にもなっている。即ち、微粒子の分級強化では分級カットされた部分は使用不可となり総コストをあげる。また、もともと粒径分布のシャープな合成粒子の場合は、その合成出発原料の純度が高いがゆえに粒径がそろってくるのが一般的であり、極めて高価な粒子であることが多い。
【0008】この対策としてフイルムの表面に突起を形成させる添加粒子をフイルムの表面にのみ偏在させる方法、即ち積層フイルムが提案されている。この方法は粒子を含まない芯層の外側に粒子を含有する薄層を形成することにより、単層と同様のフイルム表面形成を達成しつつ、フイルム全体としては添加粒子の量を減少させることができ、この点ではフイルム製造コストの削減につながるものである。しかるに、一般に二軸配向ポリエステルフイルムの製造方法では、シート状に押出された溶融ポリエステルを冷却固化し未延伸フイルムを得、しかる後同時二軸延伸や逐次二軸延伸を実施することによって所望の機械的特性を得ている。この時フイルムを横方向に延伸するためにはフイルムのエッジ部をチャックでつかみ所定温度下で逐次幅が拡大するように設置されたレール上を動かして実施するのが普通であり、延伸中にチャック部での破断を防止するために中央部分の厚みに比べエッジ部の厚みを厚くして実施するのが通例である。このエッジ部は最終製品にはなりえず廃棄され、省資源の点より問題となっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、前述の問題、即ち、フイルム表面の滑り性改良と電磁変換特性の向上という相反する要求を満足し、安価に且つ省資源に役立つようにするためにはいかにすべきかについて研究を進めた結果、芯層中に粒子が含まれていても、その粒子の粒径と表層の厚み及び表層中に含まれる粒子の粒径及び添加量を適正範囲にすれば、安価に且つ省資源に役立つ形で滑り性、耐削れ性に優れ、磁気記録媒体用として用いた時電磁変換特性に優れ、ドロップアウトの少ない製品を作ることができる積層二軸配向ポリエステルフイルムの得られることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、3層からなる積層二軸配向ポリエステルフイルムであって、芯層が平均粒径1.0μm以下の不活性微粒子を含有し、表層が平均粒径0.3〜1.0μmの不活性微粒子Aの1種以上、及び比表面積50〜120m2/g、全細孔容積0.5〜1.0ml/gかつ平均粒径0.02〜0.3μmの不活性微粒子Bを0.05〜1.0重量%含有し、そして表層の厚みが芯層に含まれる不活性微粒子の平均粒径以上であることを特徴とするる磁気記録媒体用積層二軸配向ポリエステルフイルムである。
【0011】本発明におけるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。かかるポリエステルは実質的に線状であり、そしてフイルム形成性特に溶融成形によるフイルム形成性を有する。芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール等の如き炭素数2〜10のポリメチレングリコールあるいはシクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等を挙げることができる。
【0012】本発明において、ポリエステルとしてはアルキレンテレフタレートおよび/又はアルキレンナフタレートを主たる構成成分とするものが好ましく用いられる。
【0013】かかるポリエステルのうちでも特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン―2,6―ナフタレートをはじめとして、例えば全ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸および/又は2,6―ナフタレンジカルボン酸であり、全グリコール成分の80モル%以上がエチレングリコールである共重合体が好ましい。その際全酸成分の20モル%以下はテレフタル酸および/又は2,6―ナフタレンジカルボン酸以外の前記芳香族ジカルボン酸であることができ、また例えばアジピン酸、セバチン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサン―1,4―ジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等であることができる。そして、全グリコール成分の20モル%以下は、エチレングリコール以外の前記グリコールであることができ、また例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,2―ビス(4―ヒドロキシフェニル)プロパン等の如き芳香族ジオール;1,4―ジヒドロキシジメチルベンゼンの如き芳香環を有する脂肪族ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の如きポリアルキレングリコール(ポリオキシアルキレングリコール)等であることもできる。
【0014】また、本発明におけるポリエステルには、例えばヒドロキシ安息香酸の如き芳香族オキシ酸、ω―ヒドロキシカプロン酸の如き脂肪族オキシ酸等のオキシカルボン酸に由来する成分を、ジカルボン酸成分およびオキシカルボン酸成分の総量に対し20モル%以下で共重合あるいは結合するものも包含される。
【0015】さらに本発明におけるポリエステルには、実質的に線状である範囲の量、例えば全酸成分に対し2モル%以下の量で、3官能以上のポリカルボン酸又はポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット酸、ペンタエリスリトール等を共重合したものも包含される。
【0016】前記ポリエステルは、それ自体公知であり、かつそれ自体公知の方法で製造することができる。前記ポリエステルとしては、o―クロロフェノール中の溶液として35℃で測定して求めた固有粘度が約0.4〜約0.9のものが好ましい。
【0017】本発明の積層二軸配向ポリエステルフイルムにおいて各層を構成するポリエステルは上記ポリエステルからなるが、各層のポリマーは同じものであっても、異なったものでもよい。その中同じものであるのが好ましい。
【0018】本発明の積層二軸配向ポリエステルフイルムは3層からなり、各層すなわち芯層及び両表層は不活性微粒子を含有する。この不活性微粒子としては、例えば(1)二酸化ケイ素(水和物、ケイ砂、石英等を含む);(2)各種結晶形態のアルミナ;(3)SiO2 分を30重量%以上含有するケイ酸塩(例えば非晶質あるいは結晶質の粘土鉱物、アルミノシリケート(焼成物や水和物を含む)、温石綿、フライアッシュ等);(4)Mg、Zn、Zr、及びTiの酸化物;(5)Ca、及びBaの硫酸塩;(6)Li、Ba、及びCaのリン酸塩(1水素塩や2水素塩を含む):(7)Li、Na、及びKの安息香酸塩;(8)Ca、Ba、Zn、及びMnのテレフタル酸塩;(9)Mg、Ca、Ba、Zn、Cd、Pb、Sr、Mn、Fe、Co、及びNiのチタン酸塩;(10)Ba、及びPbのクロム酸塩;(11)炭素(例えばカーボンブラック、グラファイト等);(12)ガラス(例えばガラス粉、ガラスビーズ等);(13)Ca、及びMgの炭酸塩;(14)ホタル石;(15)ZnS;(16)耐熱性高分子粒子(例えばシリコーン樹脂粒子、架橋アクリル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋スチレン―アクリル粒子、架橋ポリエステル粒子、テフロン粒子、ポリイミド粒子、ポリイミド―アミド粒子、メラミン樹脂粒子等)などが好ましく挙げられる。
【0019】本発明において前記芯層に含有させる不活性微粒子は平均粒径が1.0μm以下の微粒子である。この平均粒径が1.0μmをこえると、該微粒子によるフイルム表面への突出しが表層を通して大きく出現し、フイルム表面の均質性を得ることが困難になり、好ましくない。
【0020】本発明において前記表層は、平均粒径が0.3〜1.0μmの不活性微粒子Aの1種以上、及び比表面積が50〜120m2 /gであり、全細孔容積が0.5〜1.0ml/gであり、さらに平均粒径が0.02〜0.3μmである不活性微粒子Bを0.05〜1.0重量%含有し、且つ表層の厚みが芯層に含まれる不活性微粒子の平均粒径以上であることが肝要である。
【0021】表層に含有される不活性微粒子A,Bはフイルム表面の突起を主に構成し、磁気記録媒体としたときの電磁変換特性にかかわるフイルムの平坦性、滑り性、削れ性、耐スクラッチ性等に大きく関係する。
【0022】表層に含有される不活性微粒子のうち、大突起を形成する不活性微粒子Aは主にフイルムの滑り性に寄与するが、この平均粒径が0.3μm未満では、その効果が不十分で好ましくない。また、不活性微粒子Aの平均粒径が1.0μmを越えると、フイルム表面に形成される突起が大きくなりすぎ、磁気記録媒体としたとき電磁変換特性が劣り、好ましくない。
【0023】表層に含有される不活性微粒子Bは前記不活性微粒子Aによって形成される突起の間に微細な突起を形成し、主にフイルムの削れ性や耐スクラッチ性に寄与する。この不活性微粒子Bはその比表面積が50m2 /g以上120m2 /g以下であり、全細孔容積が0.5ml/g以上1.0ml/g以下であり、さらに平均粒径が0.02μm以上0.3μm以下であるものを0.05〜1.0重量%含有させる必要があり、このときフイルムの削れ性や耐スクラッチ性が優れたものとなる。不活性微粒子Bの比表面積が50m2 /g未満であったり、全細孔容積が0.5ml/g未満のときには、粒子が硬くなりすぎ、削れ性が低下する。また比表面積が120m2 /gを越えたり、全細孔容積が1.0ml/gを越えたりすると、粒子がもろくなり耐スクラッチ性が低下する。そして不活性微粒子Bの含有量が0.05重量%未満では、形成される突起数が少なく、削れ性や耐スクラッチ性の改良効果がない。またこの含有量が1.0重量%を越えると、フイルム表面性を悪化させ、磁気記録媒体としたとき電磁変換特性が劣り、好ましくない。
【0024】また表層の厚みが芯層に含まれる不活性微粒子の平均粒径未満では芯層に含有される粒子による突起が表層に影響し、フイルム表面を粗くしてしまい、好ましくない。
【0025】本発明において表層に含まれる不活性微粒子A及びBの合計の含有量は、芯層に含まれる不活性微粒子の含有量より多く、且つ、0.1〜1.5重量%であることが好ましい。表層に含まれる不活性微粒子の含有量が芯層に含まれる不活性微粒子の含有量以下の場合には、表層の厚みにもよるが、芯層粒子によるフイルム表面の粗面化が生じたり、本発明の安価に且つ省資源に役立つ形で優れた特性を有するフイルムを提供するという目的の達成が難しくなる。
【0026】本発明において表層に含まれる不活性微粒子Bとしては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタンが好ましく、特に酸化アルミニウムで結晶形態がα,θ,γ型のものが好ましい。この中でもθ型結晶形態の酸化アルミニウムが特に好ましい。
【0027】本発明の積層二軸配向ポリエステルフイルムは、その厚みが10〜25μmであることが好ましい。
【0028】本発明の積層二軸配向ポリエステルフイルムは、従来から知られている、あるいは当業界に蓄積されている方法で得ることができる。例えば、先ず積層未延伸フイルムを製造し、次いで該フイルムを二軸配向させることで得ることができる。この積層未延伸フイルムは、従来から蓄積された積層フイルムの製造法で製造することができる。例えば、表面を形成するフイルム層と、芯層を形成するフイルム層とを、溶融状態または冷却固化された状態で積層する方法を用いることができる。さらに具体的には、例えば共押出、エクストルージョンラミネート等の方法で製造できる。
【0029】上述の方法で積層された未延伸フイルムは、更に従来から蓄積された二軸配向フイルムの製造法に準じて、二軸配向フイルムとすることができる。例えば、積層未延伸フイルムを一軸方向(縦方向又は横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(但し、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜5.0倍の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向と直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)にTg(℃)−(Tg+70)℃の温度で2.5〜5.0倍の倍率で延伸することで製造できる。この場合、面積延伸倍率は9〜22倍、更には12〜22倍にするのが好ましい。延伸手段は同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれでも良い。更に、二軸配向フイルムは、(Tg+70)℃〜Tm(℃)の温度で熱固定することができる。例えば積層ポリエチレンテレフタレートフイルムについては190〜230℃で熱固定することが好ましい。熱固定時間は例えば1〜60秒である。
【0030】本発明の積層二軸配向ポリエステルフイルムは、前述した条件を満足さえすれば従来最終製品となりえず廃棄されていた二軸延伸フイルムのエッジ部分等を簡単な装置で芯層用ポリマーとして再利用することを可能とし、結果として優れた表面性即ち、滑り性と耐削れ性に優れかつ磁気テープとしたとき優れた電磁変換特性を有しうる積層二軸配向ポリエステルフイルムを安価に供給することができるという特徴をもっている。
【0031】なお、本発明における種々の物性値および特性は、以下の如く測定されたものであり、かつ定義される。
【0032】(1)粒子の平均粒径(DP)
島津製作所製CP―50型セントリフュグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)を用いて測定する。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径を読み取り、この値を上記平均粒径とする(Book「粒度測定技術」日刊工業新聞社発行、1975年、頁242 〜247 参照)。
【0033】(2)粉体の比表面積、全細孔容積カンタクローム社製、オートソーブ―1を使用し、BET法により比表面積および全細孔容積を測定する。
【0034】(3)フイルムの走行摩擦係数(μk)
図1に示した装置を用いて下記のようにして測定する。図1中、1は巻出しリール、2はテンションコントローラ、3,5,6,8,9及び11はフリーローラー、4はテンション検出機(入口)、7はステンレス鋼SUS304製の固定棒(外径5mmφ、表面粗Ra=0.02μm)、10はテンション検出機(出口)、12はガイドローラー、13は巻取りリールをそれぞれ示す。
【0035】温度20℃、湿度60%の環境で、巾1/2インチに裁断したフイルムを7の固定棒に角度θ=(152/180)πラジアン(152°)で接触させて毎分200cmの速さで移動(摩擦)させる。入口テンションT1 が35gとなるようにテンションコントローラー2を調整した時の出口テンション(T2 :g)をフイルムが90m走行したのちに出口テンション検出機で検出し、次式で走行摩擦係数μkを算出する。
【0036】
【数1】
μk=(2.303/θ)log(T2 /T1
=0.868log(T2 /35)
【0037】(4)フイルム表面の平坦性Ra(中心線平均粗さ)をJIS B 0601に準じて測定する。東京精密社(株)製の触針式表面粗さ計(SURFCOM3B )を用いて、針の半径2μm、荷重0.07gの条件下にチャート(フイルム表面粗さ曲線)をかかせ、得られるフイルム表面粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸とし、縦倍率の方向をY軸として、粗さ曲線Y=f(x)で表わしたとき、次の式で与えられる値(Ra:μm)をフイルム表面の平坦性として定義する。
【0038】
【数2】


【0039】本発明では、基準長を0.25mmとして8個測定し、値の大きい方から3個除いた5個の平均値としてRaを表わす。
【0040】(5)高速スクラッチ性、削れ性走行摩擦係数μkの測定に使用した図1と同様の装置において固定棒7をSUS焼結板を円柱形に曲げた表面粗さRaが0.15μmのテープガイドに替え、巻き付け角度を30度として毎分300mの速さで入口張力が50gとなるようにして200m走行させる。走行後にテープガイドに付着した削れ粉および走行後テープのスクラッチを評価する。
【0041】<削れ粉判定>◎ 削れ粉が全く見られない。
○ うっすらと削れ粉が見られる。
△ 削れ粉の存在が一見して判る。
× 削れ粉がひどく付着している。
【0042】<スクラッチ判定>◎ スクラッチが全く見られない。
○ 1〜5本のスクラッチが見られる。
△ 6〜15本のスクラッチが見られる。
× 16本以上のスクラッチが見られる。
【0043】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明をさらに説明する。
【0044】
【比較例1】ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとを、エステル交換触媒として酢酸マンガンを、重合触媒として三酸化アンチモンを、安定剤として亜燐酸を、更に滑剤として平均粒径0.60μmの炭酸カルシウム微粒子を添加して常法により重合し、固有粘度(オルソクロロフェノール、35℃)0.62のポリエチレンテレフタレートを得た。なお、炭酸カルシウム微粒子の添加量は0.3重量%になるよう調整した。
【0045】得られたポリエチレンテレフタレートを170℃で3時間乾燥後、押出し機に供給し、ダイからシート状に押出し、冷却して未延伸フイルムを得た。
【0046】このようにして得られた未延伸フイルムを75℃にて予熱し、更に低速、高速のロール間で15mm上方より900℃の表面温度のIRヒーター1本にて加熱して3.6倍に延伸し、急冷し、続いてステンターに供給し、105℃にて横方向に3.9倍に延伸した。得られた二軸配向フイルムを205℃の温度で5秒間熱固定し、中央部分で厚み15μmの熱固定二軸配向フイルムを得た。
【0047】次いでステンタークリップでつかまれた厚みの異なる部分(両端部分)をレザー刃で切り取り、中央部分は製品フイルムとして巻き取り、両端部は未使用部分として別に巻き取った。未使用部分の重量は、製品フイルムの重量に対して、32%であった。中央部分の製品フイルムの特性を表1に示す。
【0048】
【比較例2】滑剤として平均粒径0.60μmの炭酸カルシウム微粒子0.3重量%に加えて、比表面積80m2 /gで全細孔容積が0.75ml/gのθ型結晶酸化アルミニウムでサンドグラインダー処理により平均粒径を0.15μmに調整したものを0.25重量%添加した以外は、比較例1と同様にして重合してポリエチレンテレフタレートを得た。
【0049】更に比較例1と同様にして乾燥、押出し、延伸を行ない厚み15μmの熱固定二軸配向フイルムを得た。得られた製品フイルムの特性を表1に併せて示す。
【0050】
【実施例1及び比較例3】比較例1で未使用部分として巻取った両端部を粉砕機を用いてフレークス化した。得られたフレークスを押出し機にて溶融し、ストランド状に押出した後、ペレット状にカットして回収ペレットを作った。
【0051】3層の積層二軸配向ポリエステルフイルムを作るにあたって、芯層用ポリエステルとしては前述の回収ペレットと不活性微粒子を全く含まないポリエチレンテレフタレートを半々に混合したものを用い、表層用ポリエステルとしては比較例2で重合したポリエチレンテレフタレートを使用した。
【0052】芯層用ポリエステル、表層用ポリエステルとも比較例1と同様に170℃で3時間乾燥後、共押出し製膜機の別々の押出し機に供給し、表層/芯層/表層の厚み比が実施例1では1.0/13/1.0、比較例3では0.5/14/0.5となるように3層ダイから押出し、冷却して積層未延伸フイルムを得た。続いて比較例1と同様にして延伸、巻取りをして製品フイルムを得た。得られた中央部の製品フイルムの特性を表1に併せて示す。
【0053】
【表1】


【0054】表1から明らかなように、本発明によるものは芯層に従来未使用であった二軸延伸工程での両端部のフイルムを簡単な工程を通すことにより芯層成分として使用しているにもかかわらず、単層フイルムと同等の表面特性を示している(比較例2と実施例1の比較)。また表層の厚みが本発明の条件を満さない比較例3のフイルムは、芯層成分によって積層二軸配向ポリエステルフイルムの表面が粗面化して磁気記録媒体として用いたとき、電磁変換特性の低下が懸念されるものとなっている。
【0055】
【発明の効果】本発明によれば、表面性、滑り性、耐削れ性及び耐スクラッチ性に優れた積層二軸配向ポリエステルフイルムを安価にかつ省資源に役立つ形で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フイルム走行性を評価するため動摩擦係数を測定する装置の模式図である。
【符号の説明】
1 繰出しリール
2 テンションコントローラー
3,5,6,8,9,11 フリーローラー
4 テンション検出器(入口)
7 固定ピン
10 テンション検出器(出側)
12 ガイドローラー
13 巻取りリール

【特許請求の範囲】
【請求項1】 3層からなる積層二軸配向ポリエステルフイルムであって、芯層が平均粒径1.0μm以下の不活性微粒子を含有し、表層が平均粒径0.3〜1.0μmの不活性微粒子Aの1種以上、及び比表面積50〜120m2 /g、全細孔容積0.5〜1.0ml/gかつ平均粒径0.02〜0.3μmの不活性微粒子Bを0.05〜1.0重量%含有し、そして表層の厚みが芯層に含まれる不活性微粒子の平均粒径以上であることを特徴とする磁気記録媒体用積層二軸配向ポリエステルフイルム。
【請求項2】 表層に含まれる不活性微粒子A,Bの合計量が、芯層に含まれる不活性微粒子の量より多く、かつ0.1〜1.5重量%である請求項1記載の磁気記録媒体用積層二軸配向ポリエステルフイルム。
【請求項3】 不活性微粒子Bが酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び酸化チタンから選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の磁気記録媒体用積層二軸配向ポリエステルフイルム。
【請求項4】 酸化アルミニウムが結晶形態としてα,θ,γ型から選ばれる少なくとも1種の結晶形態をとっている請求項3記載の磁気記録媒体用積層二軸配向ポリエステルフイルム。

【図1】
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