説明

磁気記録媒体用結合剤、磁気記録媒体および新規ポリウレタン樹脂

【課題】各種粉末が高度に分散された、高密度記録に適した磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表される環状アセタール構造とイオン性極性基とを有するポリウレタン樹脂であることを特徴とする磁気記録媒体用結合剤。


[一般式(I)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子もしくはアルキル基を表すか、または互いに連結して環構造を形成する。R3〜R6は、少なくとも1つがポリウレタン樹脂の主鎖との結合部位であるか、または2つ以上が連結して形成される環構造中に結合部位を有し、他はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、またはアルコキシル基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体用結合剤およびこれを含む磁気記録媒体に関するものであり、詳しくは強磁性粉末、非磁性粉末等の各種粉末が高度に分散された磁気記録媒体を作製するために好適な磁気記録媒体用結合剤ならびにこれを含む磁気記録媒体に関するものである。
更に本発明は、新規ポリウレタン樹脂に関するものであり、詳しくは磁気記録媒体用結合剤として好適な新規ポリウレタン樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報を高速に伝達するための手段が著しく発達し、莫大な情報をもつ画像およびデータ転送が可能となった。このデータ転送技術の向上とともに、情報を記録、再生および保存するための記録再生装置および記録媒体には更なる高密度記録化が要求されている。
【0003】
高密度記録領域において良好な電磁変換特性を得るためには、微粒子磁性体を使用するとともに、微粒子磁性体を高度に分散させ、磁性層表面の平滑性を高めることが有効であることが知られている。また、磁性体の分散性を高めることにより、高い光沢度を有する磁気記録媒体を得ることもできる。更に、磁性層表面の平滑性を高める手段としては、磁性層の下層に位置する非磁性層に含まれる非磁性粉末の分散性を高めることも有効である。
【0004】
磁性粉末等の磁気記録媒体に使用される粉末の分散性を高める方法としては、例えば、SO3Na基のようなイオン性極性基(吸着官能基)を結合剤に含有させる方法(特許文献1参照)が知られている。また、磁気記録媒体用結合剤としては、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の各種樹脂が使用されているが、中でもポリウレタン樹脂は、ウレタン結合による分子間水素結合により塗膜強度を高めることができるため広く用いられている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−132531号公報
【特許文献2】特公平7−85305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし本願発明者らが、SO3Na基のようなイオン性極性基を導入したポリウレタン樹脂を結合剤として含む磁気記録媒体について検討した結果、高密度記録媒体に求められる高度な分散性を達成するには不十分であることが判明した。
【0007】
そこで本発明の目的は、強磁性粉末、非磁性粉末等の各種粉末が高度に分散された、高密度記録に適した磁気記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得るに至った。
SO3Na基のようなイオン性極性基は、分散性向上のためにその導入量を増量するほどポリウレタン樹脂が親水化されるため、媒体製造のために使用される有機溶剤に対する溶解性は低下する。塗布液中の結合剤樹脂の溶剤溶解性が低下するほど塗布液が高粘度となるため、例えば上記特許文献1、2に記載されているようなボールミル、サンドミル等の分散機による処理によっては塗布液中で磁気記録媒体用粉末(強磁性粉末、非磁性粉末等)を十分に分散させることが困難となり、結果的に、得られる磁気記録媒体の表面平滑性は低下してしまう。
これに対し本願発明者らは、イオン性極性基とともに下記部分構造のような環状アセタール構造を側鎖に有するポリウレタン樹脂であれば、結合剤樹脂の溶剤溶解性を損なうことなく、高い分散性を実現できることを新たに見出した。
【0009】
【化1】

【0010】
これは、以下の理由によるものと推察される。
【0011】
環状アセタール構造は環で縛られた酸素原子を有するためにルイス塩基性が一般のエーテル結合と比べて高い。しかし、主鎖にアセタール環を有するポリウレタン樹脂(例えば特開昭62−212485号公報に開示のスピログリコールをジオール成分として得られたポリウレタン樹脂)ではアセタール環がポリマーの中心部に存在するためにアセタール環の自由度が小さく効率的に磁気記録媒体用粉末表面と接触することができない。
【0012】
これに対し、上記のように環状アセタール構造を側鎖に有するポリウレタン樹脂は、自由度の高いアセタール環を有することで効率的に粉末に吸着することができる。また、アセタールはエーテルの1種であるため、上記特許文献1に記載されているようなイオン性極性基と比較して極性が小さく、溶剤溶解性に優れる。しかも上記環状アセタール構造は、非イオン性の極性基であるためイオン性極性基の吸着を阻害することなく分散性を高めることができる。
【0013】
以上の通り、イオン性極性基とともに、非イオン性であり高いルイス塩基性をもつ環状アセタール構造を有するポリウレタン樹脂であれば、有機溶剤に対する溶解性を損なうことなく、磁気記録媒体用粉末に高度に吸着することにより、高度な分散性を実現することができると考えられる。
本願発明者らは、以上の知見に基づき更に検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]下記一般式(I)で表される環状アセタール構造とイオン性極性基とを有するポリウレタン樹脂であることを特徴とする磁気記録媒体用結合剤。
【化2】

[一般式(I)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子もしくはアルキル基を表すか、または互いに連結して環構造を形成する。R3〜R6は、少なくとも1つがポリウレタン樹脂の主鎖との結合部位であるか、または2つ以上が連結して形成される環構造中に結合部位を有し、他はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、またはアルコキシル基を表す。]
[2]前記イオン性極性基はスルホン酸(塩)基である[1]に記載の磁気記録媒体用結合剤。
[3]10〜1000μeq/gのスルホン酸(塩)基を含有する[2]に記載の磁気記録媒体用結合剤。
[4]一般式(I)で表される環状アセタール構造を10〜2000μeq/g含有する[1]〜[3]のいずれかに記載の磁気記録媒体用結合剤。
[5]ウレタン基濃度が1.0〜3.5mmol/gの範囲である[1]〜[4]のいずれかに記載の磁気記録媒体用結合剤。
[6]ガラス転移温度が50〜150℃の範囲である[1]〜[5]のいずれかに記載の磁気記録媒体用結合剤。
[7]非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
前記結合剤は、[1]〜[6]のいずれかに記載の結合剤を構成成分として含むことを特徴とする磁気記録媒体。
[8]非磁性支持体上に非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末および結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
前記磁性層に含まれる結合剤および/または前記非磁性層に含まれる結合剤は、[1]〜[6]のいずれかに記載の結合剤を構成成分として含むことを特徴とする磁気記録媒体。
[9]下記一般式(I)で表される環状アセタール構造とスルホン酸(塩)基とを有することを特徴とするポリウレタン樹脂。
【化3】

[一般式(I)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子もしくはアルキル基を表すか、または互いに連結して環構造を形成する。R3〜R6は、少なくとも1つがポリウレタン樹脂の主鎖との結合部位であるか、または2つ以上が連結して形成される環構造中に結合部位を有し、他はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、またはアルコキシル基を表す。]
[10]10〜1000μeq/gのスルホン酸(塩)基を含有する[9]に記載のポリウレタン樹脂。
[11]一般式(I)で表される環状アセタール構造を10〜2000μeq/g含有する[9]または[10]に記載のポリウレタン樹脂。
[12]ウレタン基濃度が1.0〜3.5mmol/gの範囲である[9]〜[11]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
[13]ガラス転移温度が50〜150℃の範囲である[9]〜[12]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、強磁性粉末、非磁性粉末等の各種粉末が高度に分散された、高密度記録に適した磁気記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[磁気記録媒体用結合剤]
本発明の磁気記録媒体用結合剤(以下、「本発明の結合剤」ともいう)は、 下記一般式(I)で表される環状アセタール構造とイオン性極性基とを有するポリウレタン樹脂である。
【0017】
【化4】

[一般式(I)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子もしくはアルキル基を表すか、または互いに連結して環構造を形成する。R3〜R6は、少なくとも1つがポリウレタン樹脂の主鎖との結合部位であるか、または2つ以上が連結して形成される環構造中に結合部位を有し、他はそれぞれ独立に水素原子、水酸基、アルキル基、またはアルコキシル基を表す。]
【0018】
上記ポリウレタン樹脂は、R3〜R6のいずれかにポリウレタン樹脂の主鎖との結合部位を有するため、先に説明したようにアセタール環の自由度が高く、磁気記録媒体用粉末に効率的に吸着することができる。また、アセタール環は、従来分散性向上のために結合剤樹脂に導入されていたイオン性極性基と比べて極性が低く溶剤溶解性に優れるため、イオン性極性基と併用することにより、粘度上昇を起こすことなく更なる分散性向上を達成することができる。また、非イオン性極性基であるため、イオン性極性基の吸着を阻害することなく分散性を高めることができる。これにより本発明の結合剤によれば、各種粉末が高度に分散された、磁気記録媒体を得ることができる。
以下、本発明の結合剤について更に詳細に説明する。
【0019】
一般式(I)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子もしくはアルキル基を表すか、または互いに連結して環構造を形成する。一般式(I)で表されるポリウレタン樹脂は、R1およびR2にはポリウレタン樹脂の主鎖との結合部位を含まないものとする。R1、R2に主鎖との結合部位が含まれると、アセタール環の自由度が低下するため良好な吸着性が得られないからである。
【0020】
なお、本発明における「アルキル基」は、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基等の環状アルキル基を含むものとする。また、以下に記載のアルキル基等の基が置換基を有する場合、置換基としては、アルキル基(例えば炭素数1〜6のアルキル基)、水酸基、アルコキシル基(例えば炭素数1〜6のアルコキシル基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、カルボキシル基等を挙げることができる。また、アルキル基等の基について「炭素数」とは、該基が置換基を有する場合は置換基を含まない部分の炭素数を有するものとする。
【0021】
1、R2で表されるアルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられる。アセタール環の周辺に大きな立体障害が発生すると磁気記録媒体への吸着が疎外される場合があることから、好ましくは炭素数1〜30の直鎖アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、プロピル基、ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、を挙げることができる。
【0022】
一般式(I)中、R1、R2は同一であっても異なっていてもよい。また、R1およびR2が互いに連結して環構造を形成することもできる。この場合、形成される環構造は飽和であっても不飽和であってもよく、炭素環であっても複素環であってもよく、単環であっても縮合環であってもよい。炭素環としては、例えば、シクロヘキシル環、シクロペンチル環、シクロヘキセン環、およびベンゼン環などの飽和または不飽和の4〜7員の炭素環を挙げることができる。また複素環としては、例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロフラン環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、およびピラジン環などの飽和または不飽和の4〜7員の複素環を挙げることができる。これらの環構造は置換基を有することもできる。
【0023】
一般式(I)中、R3〜R6は、少なくとも1つがポリウレタン樹脂の主鎖との結合部位であるか、または2つ以上が連結して形成される環構造中に結合部位を有し、他はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、またはアルコキシル基を表す。
【0024】
一般式(I)で表される環状アセタール構造は、R3〜R6の少なくとも1つに、主鎖(複数のウレタン結合を含むポリマー鎖)との結合部位を有することにより、自由度の高いアセタール環をポリウレタン樹脂の側鎖上に存在させることができる。R3〜R6中に含まれる結合部位数は、好ましくは1〜3であり、その数はポリウレタン合成時に使用する原料化合物の構造によって制御することができる。例えば、下記ジオール成分(1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンニトール):
【0025】
【化5】

を使用しポリイソシアネートとのウレタン化反応により得られるポリウレタン樹脂では、点線で囲んだ2つの水酸基がイソシアネート基と反応しウレタン結合を形成し主鎖との結合部位となる。したがって、この場合1つの環状アセタール構造あたり1つの結合部位が含まれることになる。
【0026】
上記結合部位は、アセタール環に直接連結していてもよいが、アセタール環が2価の連結基を介して主鎖と結合してもよい。この場合の連結基としては、−O−、−CO−、−NR11−R11は、水素原子またはアルキル基を表す)、アルキレン基、アリーレン基またはこれらの組み合わせを挙げることができる。アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、よりさらに好ましくは1〜6である。好ましいアルキレン基の具体例として、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラブチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。アリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12である。好ましいアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ナフタレン基等が挙げられる。これらの基は置換基を有することもできる。
【0027】
上記主鎖との結合部位は、R3〜R6の2つ以上が連結して形成される環構造中に含まれていてもよい。この場合の環構造の詳細は、R1およびR2が互いに連結して形成する環構造について述べた通りである。
【0028】
3〜R6中、主鎖との結合部位を含まないものは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、またはアルコキシル基を表す。R3〜R6で表されるアルキル基の詳細は、先にR1、R2で表されるアルキル基について述べた通りである。アルコキシル基としては、好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基を挙げることができる。
【0029】
以下に、一般式(I)で表される環状アセタール構造の具体例を示す。ただし本発明は下記具体例に限定されるものではない。以下において波線は、ポリウレタン樹脂の主鎖との結合部位を示す。
【0030】
【化6】

【0031】
一般式(I)で表される環状アセタール構造を有するポリウレタン樹脂は、(1)ポリウレタン樹脂の側鎖に一般式(I)で表される環状アセタール構造を付加反応により導入する方法、(2)ポリウレタン樹脂の原料化合物であるポリオールおよび/またはポリイソシアネートとして、一般式(I)中のアセタール環を有する化合物を使用する方法、のいずれかにより合成することができる。原料の入手容易性および合成反応の容易性の点からは方法(2)が好ましく、方法(2)において一般式(I)中のアセタール環を有するポリオールを使用することがより好ましい。
【0032】
上記アセタール環を有するポリオールは、公知の方法で合成することができ、また市販品として入手可能なものもある。具体例としては、以下のポリオールを挙げることができる。
【0033】
【化7】

【0034】
ポリウレタン合成の原料化合物としてのポリイソシアネートは、2官能以上のイソシアネート化合物であればよく、その具体例としては、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、2,4−TDI(トリレンジイソシアネート)、2,6−TDI、1,5−NDI(ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、p−フェニレンジイソシアネート、XDI(キシリレンジイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、H6XDI(水素添加キシリレンジイソシアネート)、H12MDI(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)などの脂肪族、脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0035】
ポリウレタン合成の原料化合物としては、上記環状アセタール構造を有するポリオールおよびポリイソシアネートとともに、上記環状アセタール構造を持たないポリオールを含むことができる。併用されるポリオールは、鎖延長剤としての役割を果たすことができる。併用するポリオールとしては、一般にポリウレタン原料として使用されている各種ポリオール、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、モノオレイン、モノアセチン、ペンタエリスリトールジステアラート、ペンタエリスリトールジオレエートなどの直鎖脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、トリシクロデカンジメタノール等の脂環式構造の繰り返し単位を持つジオール、ビスフェノールA、キシリレンジオール等の芳香族ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の(ポリ)エーテルグリコール、ポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。
【0036】
本発明の結合剤(ポリウレタン樹脂)における環状アセタール構造の含有量は、原料化合物の配合比によって制御することができる。一般式(I)で表される環状アセタール構造を環を10〜2000μeq含有するポリウレタン樹脂であれば、各種粉末に効率的に吸着し、分散性を向上させることができるため好ましい。本発明の結合剤中の一般式(I)で表される環状アセタール構造の含有量は、より好ましくは20〜1200μeq/g、更に好ましくは30〜1000μeq/gの範囲である。原料化合物として併用するポリオールとポリイソシアネートの含有量は適宜設定すればよいが、例えば原料中の併用するポリオールの含有量は45.0〜70.0質量%、ポリイソシアネートの含有量は23.0〜49.0質量%とすることができる。
【0037】
本発明の結合剤は、イオン性極性基とともに吸着官能基として一般式(I)で表される環状アセタール構造を有する。これより、イオン性極性基の導入のみでは十分な分散性向上効果を得ることが困難な系において吸着性を付与する役割を、一般式(I)で表される環状アセタール構造が担うことができる。また、一般式(I)で表される環状アセタール構造は非イオン性の極性基であるため、イオン性極性基の吸着を阻害することなく分散性を高めることができる。ここでイオン性極性基とは、強磁性粉末や非磁性粉末の表面とイオン性の相互作用を形成し得るものであり、−SO3M、−SO4M、−PO(OM)2、−OPO(OM)2、−COOM、>NSO3M、>NRSO3M、−NR2122、−N+212223-などがある。ここでMは水素またはNa、K等のアルカリ金属、Rはアルキレン基、R21、R22、R23はアルキル基、ヒドロキシアルキル基または水素原子、XはCl、Br等のハロゲン原子を表す。本発明の結合剤中のイオン性極性基の量は、一般式(I)で表される環状アセタール構造と併用することにより分散性向上を達成する観点から、10〜2000μeq/gが好ましく、30〜1200μeq/gが更に好ましい。
【0038】
本発明の結合剤に導入することが好ましいイオン性官能基としては、スルホン酸基(−SO3H)、およびSO3Na基、SO3K基、SO3Li等のスルホン酸塩基(本発明における「スルホン酸(塩)基」とは、スルホン酸基とスルホン酸塩基とを含むものとする)を挙げることができる。これにより本発明の結合剤と粉末との吸着性をさらに高めることができる。本発明の結合剤に官能基としてスルホン酸(塩)基を導入する場合、分散性向上の観点から、その導入量は10〜1000μeq/gとすることが好ましく、10〜100μeq/gとすることがより好ましい。
【0039】
上記イオン性極性基は、前記ポリウレタン樹脂に公知の方法で導入することができる。導入方法としては、例えば原料ポリオールの一部として上記官能基を有するポリオールを用いる方法、ポリウレタンを重合した後、高分子反応で上記極性基を導入する方法などがある。例えば併用するポリオールとしてスルホン酸(塩)基含有ポリオールを使用することにより、スルホン酸(塩)基を含有するポリウレタン樹脂を得ることができる。スルホン酸(塩)基含有ポリオールとしては、特開2009−96798号公報段落[0015]〜[0043]に記載されているスルホン酸(塩)基含有ジオールを用いることが好ましい。通常、ポリウレタン合成反応は有機溶媒中で行われるが、スルホン酸(塩)基含有ポリオール化合物は一般的に有機溶媒への溶解性に乏しいため反応性に乏しい点が課題であった。これに対し特開2009−96798号公報に記載のスルホン酸(塩)基ジオールは、有機溶媒への溶解性に優れるためポリウレタンの原料化合物として好適である。上記スルホン酸(塩)基含有ジオールの合成方法については、特開2009−96798号公報段落[0028]、[0029]および[0045]ならびに同公報の実施例を参照できる。また、上記スルホン酸(塩)基含有ジオールの具体例としては、同公報記載の例示化合物(S−1)〜(S−70)を挙げることができる。
【0040】
本発明の結合剤であるポリウレタン樹脂は、前述の原料を公知の方法で反応させることにより得ることができる。合成方法については、後述の実施例も参照できる。
【0041】
次に、本発明の結合剤(ポリウレタン樹脂)の各種物性について説明する。
【0042】
本発明の結合剤の分子量は、質量平均分子量として、15,000〜200,000の範囲であることが好ましく、ヘッド汚れ抑制の観点から好ましくは30,000以上、分散性の観点から180,000以下であることが好ましく、更に好ましくは50,000〜150,000である。質量平均分子量が上記範囲内のポリウレタン樹脂は、溶剤溶解性が高く分散性が良好であるとともに、高い塗膜強度を有する磁気記録媒体を形成することができる。また、質量平均分子量/数平均分子量の比(Mw/Mn)は、好ましくは5以下であり、より好ましくは1.4〜4.0の範囲である。本発明における平均分子量は、標準ポリスチレン換算で求められる値をいうものとする。本発明の結合剤の分子量は、原料組成、反応条件等により制御することができる。
【0043】
本発明の結合剤のウレタン基濃度は1.0mmol/g〜3.5mmol/gであることが好ましく、1.0mmol/g〜3.0mmol/gであることがさらに好ましい。ウレタン基濃度が1.0mmol/g以上であれば、ガラス転移温度(Tg)が高く良好な耐久性を有する塗膜を形成することができ、また、分散性も良好であり好ましい。また、ウレタン基濃度が3.5mmol/g以下であれば、良好な溶剤溶解性が得られるため好ましい。
【0044】
本発明の結合剤のガラス転移温度(Tg)は、50℃〜150℃であることが好ましく、60℃〜130℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が50℃以上であれば、耐久性、保存性に優れた塗膜を得ることができるため好ましい。また、ポリウレタン樹脂のガラス転移温度が150℃以下であれば、カレンダー成形性が良好であり、電磁変換特性が良好な磁気記録媒体が得られるため好ましい。本発明におけるガラス転移温度は、動的粘弾性測定により求められる値とする。具体的な測定方法については、後述の実施例の記載を参照できる。
【0045】
本発明の結合剤は、ポリイソシアネート硬化剤と併用することが好ましい。これにより高い塗膜強度を有する磁気記録媒体を得ることができる。ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等の2官能以上のポリイソシアネートを使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL、等がありこれらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで各層とも用いることができる。
【0046】
塗膜強度向上の観点からは、ポリイソシアネートとして3官能以上のポリイソシアネートを使用することが好ましい。3官能以上のポリイソシアネートの具体例としては、トリメチロールプロパン(TMP)にTDI(トリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにIPDI(イソホロンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにXDI(キシリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、などアダクト型ポリイソシアネート化合物、TDIの縮合イソシアヌレート型3量体、TDIの縮合イソシアヌレート5量体、TDIの縮合イソシアヌレート7量体、およびこれらの混合物、HDIのイソシアヌレート型縮合物、IPDIのイソシアヌレート型縮合物、さらにクルードMDIなどを挙げることができる。ポリイソシアネートの使用量は、本発明の結合剤100質量部に対して、例えば0〜80質量部とすることができ、塗膜強度向上の点から、10〜50質量部とすることが好ましい。
【0047】
[磁気記録媒体]
本発明の磁気記録媒体は、下記態様1および態様2を含む。
態様1:非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、前記結合剤が、本発明の結合剤を構成成分として含む磁気記録媒体。
態様2:非磁性支持体上に非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末および結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
前記磁性層に含まれる結合剤および/または前記非磁性層に含まれる結合剤が、本発明の結合剤を構成成分として含む磁気記録媒体。
【0048】
本発明の磁気記録媒体は、磁性層および/または非磁性層に結合剤の構成成分として、本発明の結合剤を含む。本発明の結合剤を「結合剤の構成成分として含む」とは、本発明の結合剤そのもの、または本発明の結合剤と他の結合剤成分との反応生成物が結合剤に含まれていることをいう。
【0049】
本発明の磁気記録媒体は、磁性層および/または非磁性層の結合剤の構成成分として公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応性樹脂を含むこともできる。この場合、磁性層および/または非磁性層の結合剤の構成成分としては、本発明の結合剤と上記樹脂とがポリイソシアネートによって架橋した反応生成物を含むことができる。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、各種ゴム系樹脂が挙げられる。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等が挙げられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独または組合せて使用することができる。
【0050】
非磁性層、磁性層には、強磁性粉末または非磁性粉末100質量部に対し、例えば5〜50質量部の範囲、好ましくは10〜30質量部の範囲で結合剤を用いることができる。また、本発明の結合剤(ポリウレタン樹脂)の使用量は、分散性向上の点から、強磁性粉末または非磁性粉末100質量部に対して、5〜30質量部とすることが好ましく、10〜20質量部とすることが更に好ましい。
【0051】
次に、本発明の磁気記録媒体について、更に詳細に説明する。
【0052】
(磁性層)
本発明の磁気記録媒体において、磁性層に含まれる強磁性粉末としては、六方晶フェライト粉末および強磁性金属粉末を挙げることができる。
【0053】
六方晶フェライトの平均板径は、10〜100nmであることが好ましく、より好ましくは10〜60nmであり、特に好ましくは10〜50nmである。特にトラック密度を上げるためMRヘッドで再生する場合、低ノイズにする必要があるため、平均板径は60nm以下、更には50nm以下であることが好ましい。10nmより小さいと熱揺らぎのため安定な磁化が望めない。100nmを越えるとノイズが高く、いずれも高密度磁気記録には向かない。平均板状比(板径/板厚)は1〜15であることが好ましい。より好ましくは1〜7である。板状比が小さいと磁性層中の充填性は高くなり好ましいが、十分な配向性を得ることが困難となる。15より大きいと粒子間のスタッキングによりノイズが大きくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は10〜100m2/gを示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。数値化は困難であるが粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定する事で比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。例えば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。結合剤の種類によって六方晶フェライト粉末の含水率は最適化することが好ましい。
【0054】
一般に、抗磁力Hcが500〜5000エルステッド(40〜398kA/m)程度の六方晶フェライト粉末は作製可能である。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。本発明で使用される六方晶フェライトのHcは2000〜4000Oe(160〜320kA/m)程度であることが好ましく、より好ましくは2200〜3500Oe(176〜280kA/m)である。ヘッドの飽和磁化が1.4テスラを越える場合は、2200Oe(176kA/m)以上にすることが好ましい。Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは40〜80A・m2/kgであることが好ましい。σsは高い方が好ましいが微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。六方晶フェライトを分散する際に六方晶フェライト粉末表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理剤としては、無機化合物、有機化合物を使用することができる。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物または水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は六方晶フェライト粉末に対して0.1〜10質量%とすることができる。六方晶フェライト粉末のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。
【0055】
磁性層に使用される強磁性金属粉末のBET法による比表面積は、45〜100m2/gであることが好ましく、より好ましくは50〜80m2/gである。45m2/g以上であれば低ノイズであり、100m2/g以下であれば良好な表面性を得ることができる。強磁性金属粉末の結晶子サイズは80〜180Åであることが好ましく、より好ましくは100〜180Å、更に好ましくは110〜175Åである。強磁性金属粉末の平均長軸長は0.01μm以上0.15μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.02μm以上0.15μm以下であり、さらに好ましくは0.03μm以上0.12μm以下である。強磁性金属粉末の平均針状比は3以上15以下であることが好ましく、さらには5以上12以下であることが好ましい。強磁性金属粉末のσsは100〜180A・m2/kgであることが好ましく、より好ましくは110〜170A・m2/kg、更に好ましくは125〜160A・m2/kgである。強磁性金属粉末の抗磁力は2000〜3500Oe(160〜280kA/m)であることが好ましく、更に好ましくは2200〜3000Oe(176〜240kA/m)である。
【0056】
結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化することが好ましい。強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12とすることができ、好ましくは6〜10である。強磁性金属粉末は必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性金属粉末に対し0.1〜10%とすることができ、表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着量が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性金属粉末は可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特性に影響を与えることは少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は空孔が少ないほうが好ましく、その値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。また形状については先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、米粒状、紡錘状のいずれでもかまわない。
【0057】
上記強磁性粉末の平均粒子サイズは、以下の方法により測定することができる。
強磁性粉末を、日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて粒子を撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粒子写真を得る。粒子写真から目的の磁性体を選びデジタイザーで粉体の輪郭をトレースしカールツァイス製画像解析ソフトKS−400で粒子のサイズを測定する。500個の粒子のサイズを測定する。上記方法により測定される粒子サイズの平均値を強磁性粉末の平均粒子サイズとする。
【0058】
なお、本発明において、磁性体等の粉体のサイズ(以下、「粉体サイズ」と言う)は、(1)粉体の形状が針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粉体を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、(2)粉体の形状が板状乃至柱状(ただし、厚さ乃至高さが板面乃至底面の最大長径より小さい)場合は、その板面乃至底面の最大長径で表され、(3)粉体の形状が球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粉体を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉体サイズの算術平均であり、500個の一次粒子について上記の如く測定を実施して求めたものである。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。
【0059】
また、該粉体の平均針状比は、上記測定において粉体の短軸の長さ、即ち短軸長を測定し、各粉体の(長軸長/短軸長)の値の算術平均を指す。ここで、短軸長とは、上記粉体サイズの定義で(1)の場合は、粉体を構成する短軸の長さを、同じく(2)の場合は、厚さ乃至高さを各々指し、(3)の場合は、長軸と短軸の区別がないから、(長軸長/短軸長)は、便宜上1とみなす。
そして、粉体の形状が特定の場合、例えば、上記粉体サイズの定義(1)の場合は、平均粉体サイズを平均長軸長と言い、同定義(2)の場合は平均粉体サイズを平均板径と言い、(最大長径/厚さ乃至高さ)の算術平均を平均板状比という。同定義(3)の場合は平均粉体サイズを平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)という。
【0060】
以上説明した強磁性粉末については、例えば特開2009−88293号公報段落[0024]、[0028]〜[0030]に詳細に記載されている。
【0061】
(非磁性層)
前記態様2の磁気記録媒体は、非磁性支持体と磁性層との間に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有し、磁性層および/または非磁性層の結合剤が、本発明の結合剤を構成成分として含む。
非磁性層は、実質的に非磁性であれば、特に制限されるものではなく、実質的に非磁性である範囲で磁性粉末を含むこともできる。「実質的に非磁性である」とは、磁性層の電磁変換特性を実質的に低下させない範囲で非磁性層が磁性を有することを許容するということであり、例えば残留磁束密度が0.01T以下または抗磁力が7.96kA/m(100Oe以下)であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力をもたないことを示す。
【0062】
非磁性層に用いられる非磁性粉末は、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としては、例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどを単独または組合せで使用することができる。特に好ましいものは、粒度分布が小さく、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいものは二酸化チタン、α−酸化鉄である。これら非磁性粉末の平均粒子サイズは0.005〜2μmであることが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。非磁性粉末の平均粒子サイズは0.01μm〜0.2μmであることが特に好ましい。特に、非磁性粉末が粒状金属酸化物である場合は、平均粒子径0.08μm以下であることが好ましく、針状金属酸化物である場合は、平均長軸長が0.3μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。タップ密度は0.05〜2g/mlであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5g/mlである。非磁性粉末のpHは2〜11であることができ、5.5〜10の間が特に好ましい。
【0063】
非磁性粉末の比表面積は1〜100m2/gであることが好ましく、より好ましくは5〜80m2/g、更に好ましくは10〜70m2/gである。非磁性粉末の結晶子サイズは0.004μm〜1μmであることが好ましく、0.04μm〜0.1μmであることが更に好ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は5〜100ml/100gであることが好ましく、より好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12であることが好ましく、より好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。モース硬度は4以上10以下のものが好ましい。これらの非磁性粉末の表面には表面処理を施すことによりAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnO、Y23を存在させることが好ましい。特に分散性に好ましいものはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であり、更に好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナを存在させた後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。前記非磁性粉末の具体例としては、特開2009−99240号公報段落[0066]に記載されているもの等を挙げることができる。
【0064】
(添加剤)
磁性層および非磁性層には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などをもつ化合物を使用することができる。具体的には、二硫化モリブデン、二硫化タングステングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、αナフチル燐酸、フェニル燐酸、ジフェニル燐酸、p−エチルベンゼンホスホン酸、フェニルホスフィン酸等のリン系化合物、安息香酸、ケイ皮酸、オレイン酸などのカルボン酸化合物、フェノール、カテコールなどのフェノール類、アミノキノン類、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、および、これらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)または、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール、(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、などが使用できる。これら添加剤の具体例については、例えば特開2009−96798号公報段落[0113]を参照できる。また、添加剤としては、例えば特開2009−96798号公報段落[0112]に記載の界面活性剤を使用することもできる。
【0065】
(有機溶媒)
有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等の公知の有機溶媒を任意の比率で使用することができる。本発明の結合剤は、これら有機溶剤に対する溶解性に優れるため、効率よく粉末を分散させ得る低粘度の塗布液を得ることができる。
【0066】
(カーボンブラック)
本発明の磁気記録媒体は、磁性層および/または非磁性層にカーボンブラックを含むことができる。使用可能なカーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、平均粒子径は5〜300nm、好ましくは10〜250nm、更に好ましくは20〜200nmであることがそれぞれ好ましい。pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/ccであることがそれぞれ好ましい。カーボンブラックを使用する場合は強磁性粉末または非磁性粉末に対して0.1〜30質量%で用いることが好ましい。本発明において使用可能なカーボンブラックについては、例えば、「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0067】
(非磁性支持体)
非磁性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、芳香族ポリアミド、ポリベンゾオキサゾールなどの公知のフィルムが使用できる。ガラス転移温度が100℃以上の支持体を用いることが好ましく、ポリエチレンナフタレート、アラミドなどの高強度支持体を用いることが特に好ましい。また、非磁性支持体としては、WYKO社製光干渉式表面粗さ計HD−2000で測定した中心面平均表面粗さ(Ra)が8.0nm以下、好ましくは4.0nm以下、さらに好ましくは2.0nm以下のものを使用することが好ましい。非磁性支持体の詳細については、例えば特開2009−99240号公報段落[0073]〜[0075]を参照できる。
【0068】
(層構成)
本発明の磁気記録媒体において、非磁性支持体の厚さは、例えば2〜100μm、好ましくは2〜80μmである。コンピューターテープの場合、非磁性支持体の厚さは、3.0〜6.5μmが好ましく、更に好ましくは、3.0〜6.0μm、特に好ましくは、4.0〜5.5μmである。
【0069】
非磁性支持体と非磁性層または磁性層の間に密着性向上のための下塗り層を設けてもかまわない。下塗り層の厚みは、例えば0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.5μmである。本発明の磁気記録媒体は、支持体両面に非磁性層と磁性層を設けてなるディスク状媒体であっても、片面のみに設けたテープ状媒体またはディスク状媒体でもよい。この場合、帯電防止やカール補正などの効果を出すために非磁性層、磁性層側と反対側にバックコ−ト層を設けてもかまわない。この厚みは、例えば0.1〜4μm、好ましくは0.3〜2.0μmである。これらの下塗層、バックコート層は公知のものが使用できる。例えばバックコート層については、特開2009−96798号公報段落 [0139]を参照できる。本発明の磁気記録媒体は、これらの層にも本発明の結合剤を含むことができる。
【0070】
非磁性層の厚みは通常、0.2〜5.0μm、好ましくは0.3〜3.0μm、さらに好ましくは0.4〜2.0μmである。
【0071】
磁性層の厚みは、好ましくは30〜150nm、より好ましくは50〜120nm、更に好ましくは60〜100nmであり、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化することが好ましい。また、磁性層の厚み変動率は±50%以内が好ましく、さらに好ましくは±30%以内である。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
【0072】
(塗布液の製造)
磁性層塗布液、更には非磁性層塗布液、バックコート層塗布液等の各層形成用塗布液を製造する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。本発明に使用する強磁性粉末、非磁性粉体、結合剤、カ−ボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合は、強磁性粉末または非磁性粉末100質量部に対して15〜500質量部の結合剤(但し、全結合剤の30質量%以上が好ましい)を使用して混練処理することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、各層形成用塗布液を分散させるためにはガラスビーズを用いることができ、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズを用いることが好ましい。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
【0073】
磁気記録媒体の製造方法では、例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に磁性層塗布液を所定の膜厚となるようにして磁性層を塗布して形成する。ここで複数の磁性層塗布液を逐次または同時に重層塗布してもよく、非磁性層塗布液と磁性層塗布液とを逐次または同時に重層塗布してもよい。各層形成用塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
【0074】
塗布工程後の媒体には、必要に応じて後処理を行った後、裁断機、打抜機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0075】
後処理としては、磁性層の配向処理、表面平滑化処理(カレンダー処理)、サーモ処理等を挙げることができる。磁性層の配向処理については、例えば特開2009−96798号公報段落[0146]を参照できる。カレンダー処理条件としては、カレンダーロールの温度を、例えば60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲とすることができ、圧力は、例えば100〜500kg/cm(98〜490kN/m)の範囲であり、好ましくは200〜450kg/cm(196〜441kN/m)の範囲で、特に好ましくは300〜400kg/cm(294〜392kN/m)の範囲とすることができる。また、磁性層表面の平滑性を高めるため、非磁性層表面にカレンダー処理をすることもできる。非磁性層に対するカレンダー処理も、上記条件で行うことが好ましい。これとは別に、カレンダー処理工程後に得られた磁気記録媒体を、サーモ処理して熱硬化を進行させることもできる。このようなサーモ処理は、例えば35〜100℃、好ましくは50〜80℃の温度で、例えば12〜72時間、好ましくは24〜48時間行うことができる。これらの後処理の詳細については、特開2009−99240号公報段落[0091]、[0092]、[0094]を参照できる。
【0076】
物理特性
本発明の磁気記録媒体の表面平滑性は、磁性層表面の中心面平均粗さにおいて、好ましくは0.1〜4nm、より好ましくは1〜3nmの範囲である。磁性層表面の十点平均粗さRzは30nm以下が好ましい。磁性層の表面性は、支持体のフィラーによる表面性のコントロールやカレンダ処理のロール表面形状などでコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
【0077】
磁性層の飽和磁束密度は100〜400mTが好ましい。また磁性層の抗磁力(Hc)は、143.2〜318.3kA/m(1800〜4000Oe)が好ましく、159.2〜278.5kA/m(2000〜3500Oe)が更に好ましい。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFDおよびSFDrは好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.3以下である。
【0078】
本発明の磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において、例えば0.50以下であり、好ましくは0.3以下である。また、表面固有抵抗は、磁性面104〜108Ω/sqが好ましく、帯電位は−500V〜+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa(100〜2000kg/mm2)、破断強度は、好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm2)、磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa(100〜1500kg/mm2)、残留のびは、好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
【0079】
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜180℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜180℃が好ましい。損失弾性率は1×107〜8×108Pa(1×108〜8×109dyne/cm2)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向において10%以内でほぼ等しいことが好ましい。
【0080】
磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
【0081】
本発明の磁気記録媒体が非磁性層と磁性層を有する場合、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができる。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くすることができる。
【0082】
[ポリウレタン樹脂]
本発明のポリウレタン樹脂は、前記一般式(I)で表される環状アセタール構造とスルホン酸(塩)基とを有する。その詳細は、先に説明した通りである。本発明のポリウレタン樹脂は、吸着官能基としてスルホン酸(塩)基とともに一般式(I)で表される環状アセタール構造を有するため、分散性向上をスルホン酸(塩)基のみが担うポリウレタン樹脂と比べて低粘度の塗布液を調製することができ、これにより各種粉末が高度に分散された磁気記録媒体を得ることができる。
【実施例】
【0083】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、ここに示す成分、割合、操作、順序等は本発明の精神から逸脱しない範囲で変更し得るものであり、下記の実施例に制限されるべきものではない。また、実施例中の「部」は、特に示さない限り質量部を示す。
【0084】
1.ポリウレタン樹脂の合成例
【0085】
[実施例1]
スルホン酸塩基およびアセタール環を含有するポリウレタン樹脂の合成(1)
(1)スルホン酸塩基含有ジオールの合成
タウリン100部(和光純薬製)、水酸化カリウム(和光純薬製)44.8部をメタノール500部に添加し、25℃、30分攪拌した。得られたメタノール溶液に、ブチルグリシジルエーテル(東京化成製)207部を添加し、30℃でさらに2時間攪拌した。反応液を真空蒸留装置に導入し濃縮、乾固し、下記スルホン酸塩基含有ジオールを得た。
【0086】
【化8】

【0087】
(2)ポリウレタン樹脂の合成
1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンニトール1.0部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX−1000)3.23部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)1.85部、上記(1)で合成したスルホン酸塩基含有ジオール0.28部、架橋触媒(日東化成製ネオスタンU-600)0.01部をシクロヘキサノン15.8部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッシャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を70℃に設定した後、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)4.16部を添加した。内温70℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。得られたポリウレタンの質量平均分子量および質量平均分子量/数平均分子量比(Mw/Mn)を0.3質量%の臭化リチウムを含有するDMF溶媒を用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で求めた。質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。また、得られたポリウレタンのガラス転移温度(Tg)およびスルホン酸(塩)基含有量を、それぞれ以下の方法により求めたところ、Tg=83℃、−SO3K=60μeq/gであった。上記GPC分析により仕込み量で原料モノマーが導入されているこが確認されたため(残存モノマー:0.5%未満)、後述するように仕込み量から環状アセタール構造含有量およびウレタン基濃度を求めたところ、環状アセタール構造=360μeq/g、ウレタン基濃度=3.1mmol/gであった。
【0088】
(a)ガラス転移温度(Tg)
得られたポリウレタンを、メチルエチルケトン:シクロヘキサノンの比率が50:50(質量比)の溶液で希釈して22質量%の濃度になるように調製した。その後、乾燥後の厚さが20μmになるようにアラミドベース上に塗布、乾燥させてクリア膜を得た。得られたクリア膜を、幅3.35mm、長さ5cmに切断し、動的粘弾性測定装置(TOYO BALDWIN製レオバイブロン、昇温速度2℃/分、測定周波数110Hz)で30〜140℃までの損失弾性率(E”)のピーク温度をポリウレタンのガラス転移温度(Tg)とした。
【0089】
(b)蛍光X線によるポリウレタン中のスルホン酸(塩)基含有量の測定
合成例1で得たポリウレタン溶液をメチルエチルケトン(MEK)で1.5質量%に希釈した。希釈した液200μlをサークル付き濾紙(島津製作所製)に滴下し、真空条件下で10時間乾燥させた。乾燥後、サークル付き濾紙中に含まれる硫黄含量を蛍光X線分析装置によって定量した。スルホン酸(塩)基の定量は、島津製作所社製蛍光X線測定装置LAB CENTER XRF−1700を使用して硫黄含量測定を行い、硫酸銅5水和物による検量線を用いて行った。
【0090】
(c)環状アセタール構造の含有量
得られたポリウレタンを重DMSO溶媒に溶かして1H NMRの測定を行った。測定には、400MHzのNMR(BRUKER社製AVANCEII−400)を使用した。この測定により以下に示す4.7ppmのアセタール環ピークが検出されたことから、ポリウレタン中にアセタール環が保持されていることを確認した。そこでアセタール環含有化合物の仕込み量からポリウレタン中の環状アセタール構造の含有量を算出した。
【0091】
【化9】

【0092】
(d)ウレタン基濃度
ジフェニルメタンジイソシアネートの仕込み量からウレタン基濃度を算出した。
【0093】
[実施例2]
スルホン酸塩基およびアセタール環を含有するポリウレタン樹脂の合成(2)
(1)スルホン酸塩基含有ポリエステルの合成
5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム(東京化成製)159.7部、エステルグリコール(三菱化学製)275.2部、酢酸亜鉛2水和物(和光純薬製)2.4部を245℃で加熱した。得られてくる蒸留物をディーンスターク管を用いて蒸留留去しながら、6時間攪拌した。得られた固体を取り出した。得られたスルホン酸塩基含有ポリエステルの質量平均分子量および質量平均分子量/数平均分子量比(Mw/Mn)をTHF溶媒を用いてGPCにより標準ポリスチレン換算で求めた。質量平均分子量は1000、Mw/Mn=1.85であった。
【0094】
【化10】

【0095】
(2)ポリウレタン樹脂の合成
1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンニトール1.0部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX−1000)3.23部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)1.85部、上記(1)で合成したスルホン酸塩基含有ポリエステル0.28部、架橋触媒(日東化成製ネオスタンU-600)0.01部をシクロヘキサノン15.6質量部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッシャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を70℃に設定した後、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)4.06部を添加した。内温70℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。得られたポリウレタンの質量平均分子量および質量平均分子量/数平均分子量比(Mw/Mn)を0.3質量%の臭化リチウムを含有するDMF溶媒を用いてGPCにより標準ポリスチレン換算で求めた。質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。上記GPC分析により仕込み量で原料モノマーが導入されているこが確認された(残存モノマー:0.5%未満)。
得られたポリウレタンについて実施例1と同様の方法で各種物性を測定、算出したところ、ガラス転移温度Tg=85℃、−SO3Na=60μeq/g、環状アセタール構造=360μeq/g、ウレタン基濃度=3.0mmol/gであった。
【0096】
[実施例3]
スルホン酸塩基およびアセタール環含有ポリウレタン樹脂の合成(3)
2,3−O−イソプロピリデン−D−トレイトール1.0部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX−1000)3.23部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)1.85部、実施例1と同様のスルホン酸塩基含有ジオール0.28部、架橋触媒(日東化成製ネオスタンU-600)0.01部をシクロヘキサノン6.5部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッシャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を70℃に設定した後、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)4.63部を添加した。内温70℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。得られたポリウレタンの質量平均分子量および質量平均分子量/数平均分子量比(Mw/Mn)を0.3質量%の臭化リチウムを含有するDMF溶媒を用いてGPCにより標準ポリスチレン換算で求めた。質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。上記GPC分析により仕込み量で原料モノマーが導入されているこが確認された(残存モノマー:0.5%未満)。
得られたポリウレタンについて実施例1と同様の方法で各種物性を測定、算出したところ、ガラス転移温度Tg=90℃、−SO3K=60μeq/g、環状アセタール構造=560μeq/g、ウレタン基濃度=3.3mmol/gであった。
【0097】
[実施例4]
スルホン酸塩基およびアセタール環含有ポリウレタン樹脂の合成(4)
1,2−O−イソプロピリデン−α−D−キシロフラノース(東京化成)1.0部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX−1000)3.23部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)1.85部、実施例1と同様のスルホン酸塩基含有ジオール0.28部、架橋触媒(日東化成製ネオスタンU-600)0.01部をシクロヘキサノン16.3部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッシャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を70℃に設定した後、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)4.50部を添加した。内温70℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。得られたポリウレタンの質量平均分子量および質量平均分子量/数平均分子量比(Mw/Mn)を0.3質量%の臭化リチウムを含有するDMF溶媒を用いてGPCにより標準ポリスチレン換算で求めた。質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。実施例1と同様の方法で各種物性を測定、算出したところ、ガラス転移温度Tg=89℃、−SO3K=60μeq/g、環状アセタール構造=560μeq/g、ウレタン基濃度=3.2mmol/gであった。
【0098】
[比較例1]
スルホン酸(塩)基、アセタール環非含有ポリウレタン樹脂の合成
ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX−1000)3.23部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)1.85部、架橋触媒(日東化成製ネオスタンU-600)0.01部をシクロヘキサノン11.2部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッシャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を70℃に設定した後、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)3.06部を添加した。内温70℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。得られたポリウレタンの質量平均分子量および質量平均分子量/数平均分子量比(Mw/Mn)を0.3質量%の臭化リチウムを含有するDMF溶媒を用いて標準ポリスチレン換算で求めた。質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。上記GPC分析により仕込み量で原料モノマーが導入されているこが確認された(残存モノマー:0.5%未満)。
得られたポリウレタンについて実施例1と同様の方法で各種物性を測定、算出したところ、ガラス転移温度Tg=81℃、ウレタン基濃度=3.1mmol/gである。
【0099】
[比較例2]
スルホン酸塩基含有、アセタール環非含有ポリウレタン樹脂の合成
ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX−1000)3.23部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)1.85部、実施例1と同様のスルホン酸塩基含有ジオール0.46部、架橋触媒(日東化成製ネオスタンU-600)0.01部をシクロヘキサノン12.2部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッシャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を70℃に設定した後、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)3.32部を添加した。内温70℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。得られたポリウレタンの質量平均分子量および質量平均分子量/数平均分子量比(Mw/Mn)を0.3質量%の臭化リチウムを含有するDMF溶媒を用いてGPCにより標準ポリスチレン換算で求めた。質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。上記GPC分析により仕込み量で原料モノマーが導入されているこが確認された(残存モノマー:0.5%未満)。
得られたポリウレタンについて実施例1と同様の方法で各種物性を測定、算出したところ、ガラス転移温度Tg=83℃、−SO3K=60μeq/g、環状アセタール構造=0μeq/g、ウレタン基濃度=3.1mmol/gであった。
【0100】
[比較例3]
スルホン酸塩基、主鎖型アセタール環含有ポリウレタン樹脂の合成
下記スピログリコール(日本ファインケム製)1.0部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX−1000)3.23部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)1.85質量部、実施例2(1)で得たスルホン酸塩基含有ポリエステル0.28質量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.01部をシクロヘキサノン14.5部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッシャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を70℃に設定した後、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)4.14部を添加した。内温70℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。得られたポリウレタンの質量平均分子量および質量平均分子量/数平均分子量比(Mw/Mn)を0.3質量%の臭化リチウムを含有するDMF溶媒を用いてGPCにより標準ポリスチレン換算で求めた。質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。上記GPC分析により仕込み量で原料モノマーが導入されているこが確認された(残存モノマー:0.5%未満)。
得られたポリウレタンについて実施例1と同様の方法で各種物性を測定、算出したところ、ガラス転移温度Tg=73℃、−SO3Na=60μeq/g、主鎖型アセタール環=400μeq/g、ウレタン基濃度=2.4mmol/gであった。
【0101】
【化11】

【0102】
[比較例4]
スルホン酸(塩)基非含有、アセタール環含有ポリウレタン樹脂の合成
1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンニトール1.0部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX−1000)3.23部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)1.85部、ジラウリン酸ジブチルすず0.01部をシクロヘキサノン15.1部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッシャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を70℃に設定した後、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)3.98部を添加した。内温70℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。得られたポリウレタンの質量平均分子量および質量平均分子量/数平均分子量比(Mw/Mn)を0.3質量%の臭化リチウムを含有するDMF溶媒を用いてGPCにより標準ポリスチレン換算で求めた。質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。上記GPC分析により仕込み量で原料モノマーが導入されているこが確認された(残存モノマー:0.5%未満)。
得られたポリウレタンについて実施例1と同様の方法で各種物性を測定、算出したところ、ガラス転移温度Tg=82℃、スルホン酸(塩)基=0μeq/g、環状アセタール構造=380μeq/g、ウレタン基濃度=3.1mmol/gであった。
【0103】
評価方法
1.磁性粉末への吸着性評価
実施例、比較例で合成したポリウレタン樹脂1部を下記バリウムフェライト粉末7.3部とともにシクロヘキサノン11.9部および2−ブタノン17.7部からなる溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)90部を添加し、6時間分散させた。得られた分散液中のバリウムフェライト粉末表面/溶液中の結合剤の存在比を下記の方法で測定した。
強磁性六方晶バリウムフェライト粉末
酸素を除く組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9/0.2/1
Hc:176kA/m(2200Oe)、平均板径:25nm、平均板状比:3
BET比表面積:65m2/g
σs:49A・m2/kg(49emu/g)
pH:7
結合剤の存在比率
日立製分離用小型超遠心機CS150GXLにて100,000rpm, 80分の条件でバリウムフェライト粉末と溶液を遠心分離した。上澄み液3mlをはかりとり質量を測定した。40℃、18時間の条件で乾燥させた後、140℃、3時間真空条件下で乾燥した。乾燥したものの質量を結合剤非吸着固形分とし、バリウムフェライト粉末表面/溶液中の結合剤の存在比を計算した。
【0104】
2.分散性の評価
上記1.と同様の方法で調製した懸濁液を、25μmブレードを用い、厚さ6μmで中心面平均粗さが0.003μmのポリエチレンナフタレート樹脂支持体上に塗布し、室温2時間の条件で乾燥させることにより磁気テープを得た。得られた磁気テープの磁性層表面粗さを下記の方法で測定した。
磁性層の表面粗さ
磁性層の中心面平均粗さRaを、ZYGO社製汎用三次元表面構造解析装置NewView5022による走査型白色光干渉法にてScan Lengthを5μmとし、対物レンズ:20倍、ズームレンズ:1.0倍、測定視野:260μm×350μmとし、測定した表面をHPF:1.65μm、LPF:50μmのフィルター処理して求めた。
【0105】
以上の評価結果を、下記表1に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
評価結果
表1に示す結果から、一般式(I)で表される環状アセタール構造とともにイオン性極性基(スルホン酸(塩)基を有するポリウレタン樹脂を使用した実施例1〜4では、比較例と比べて磁性粉末への結合剤の吸着性が高いことが確認できる。塗料中での粉末への結合剤吸着量が高いことは、粉末の分散性改善につながるため、実施例で使用したポリウレタンが分散性向上に寄与することが確認できた。これらポリウレタンを使用した結果、比較例と比べてRaが低く高い平滑性を有する磁性層が形成できたことは、この点を裏付けるものである。
これに対し比較例1〜4では、上記実施例と比べて粉末への結合剤吸着量が低く分散性に劣るものであった。この結果、比較例3では形成された磁性層の表面平滑性は実施例と比べて大きく劣っていた。更に、比較例1、2、4では塗料の分散性が著しく低いためRaを評価可能なサンプルを得ることすらできなかった。
以上の結果から、実施例1〜4で使用したポリウレタンが、優れた分散性向上効果を示し、これにより高い平滑性を有する磁気記録媒体が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、強磁性粉末、非磁性粉末等の各種粉末が高度に分散された、高密度記録に好適な磁気記録媒体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される環状アセタール構造とイオン性極性基とを有するポリウレタン樹脂であることを特徴とする磁気記録媒体用結合剤。
【化1】

[一般式(I)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子もしくはアルキル基を表すか、または互いに連結して環構造を形成する。R3〜R6は、少なくとも1つがポリウレタン樹脂の主鎖との結合部位であるか、または2つ以上が連結して形成される環構造中に結合部位を有し、他はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、またはアルコキシル基を表す。]
【請求項2】
前記イオン性極性基はスルホン酸(塩)基である請求項1に記載の磁気記録媒体用結合剤。
【請求項3】
10〜1000μeq/gのスルホン酸(塩)基を含有する請求項2に記載の磁気記録媒体用結合剤。
【請求項4】
一般式(I)で表される環状アセタール構造を10〜2000μeq/g含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用結合剤。
【請求項5】
ウレタン基濃度が1.0〜3.5mmol/gの範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用結合剤。
【請求項6】
ガラス転移温度が50〜150℃の範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用結合剤。
【請求項7】
非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
前記結合剤は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の結合剤を構成成分として含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項8】
非磁性支持体上に非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末および結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
前記磁性層に含まれる結合剤および/または前記非磁性層に含まれる結合剤は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の結合剤を構成成分として含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項9】
下記一般式(I)で表される環状アセタール構造とスルホン酸(塩)基とを有することを特徴とするポリウレタン樹脂。
【化2】

[一般式(I)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子もしくはアルキル基を表すか、または互いに連結して環構造を形成する。R3〜R6は、少なくとも1つがポリウレタン樹脂の主鎖との結合部位であるか、または2つ以上が連結して形成される環構造中に結合部位を有し、他はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、またはアルコキシル基を表す。]
【請求項10】
10〜1000μeq/gのスルホン酸(塩)基を含有する請求項9に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項11】
一般式(I)で表される環状アセタール構造を10〜2000μeq/g含有する請求項9または10に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項12】
ウレタン基濃度が1.0〜3.5mmol/gの範囲である請求項9〜11のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項13】
ガラス転移温度が50〜150℃の範囲である請求項9〜12のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂。

【公開番号】特開2011−216156(P2011−216156A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83608(P2010−83608)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】