説明

磁気記録媒体用結合剤、磁気記録媒体用組成物、および磁気記録媒体

【課題】優れた電磁変換特性と走行耐久性とを兼ね備えた磁気記録媒体の作製可能な、ビニル系ポリマーからなる磁気記録媒体用結合剤を提供する。
【解決手段】一般式[1]で表される構造単位等を含むビニル系共重合体であることを特徴とする磁気記録媒体用結合剤。


[一般式[1]中、R1は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、Yは脂環式の環状基、炭素数8以上50以下の炭化水素基または水酸基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体用結合剤および磁気記録媒体用組成物に関するものであり、詳しくは、優れた電磁変換特性と走行耐久性とを兼ね備えた磁気記録媒体の作製に好適な磁気記録媒体用結合剤および磁気記録媒体用組成物に関するものである。
更に本発明は、上記結合剤を含む磁気記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗布型磁気記録媒体では、電磁変換特性、走行耐久性等に結合剤が重要な役割を果たしている。
【0003】
磁気記録媒体用結合剤としては、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の各種樹脂が使用されている。中でも塩化ビニル系樹脂、アクリル樹脂等のビニル系ポリマーは、ユニットの自由度の高さ、合成反応の容易性等の点から広く用いられている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−67855号公報
【特許文献2】特開2004−295926号公報
【特許文献3】特開平6−111277号公報
【特許文献4】特開2005−310332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし本願発明者らの検討の結果、上記特許文献1〜4に記載のポリマーをはじめとする従来のビニル系ポリマーは、以下の理由から高密度記録用磁気記録媒体において結合剤として十分な特性を有さないことが判明した。
(1)高密度記録化のためには、微粒子磁性体を使用するとともに、微粒子磁性体を高度に分散させ、磁性層表面の平滑性を高めることが有効である。更に、磁性層表面の平滑性を高める手段としては、磁性層の下層に位置する非磁性層に含まれる非磁性粉末の分散性を高めることも有効である。そこで磁気記録媒体用結合剤にSO3Na基のような吸着官能基(極性基)を導入することが広く行われている。しかし近年、磁性体、非磁性粉末とも更なる微粒子化が進められているが、微粒子粉末の分散性を高めるために結合剤の極性基導入量を高めると、極性基同士の会合により逆に分散性が低下するおそれがある。したがって、単なる極性基の導入では十分な分散性を確保することが困難になってきている。
(2)磁気記録媒体に求められる特性の1つとして繰り返し使用が可能な優れた走行耐久性を有することが挙げられる。しかし従来のビニル系ポリマーは、単独では高強度な塗膜を形成することは困難であり、ポリウレタン樹脂を併用することにより塗膜強度が確保されていた(例えば特許文献2〜4参照)。
【0006】
以上説明したように、ビニル系ポリマーは、ユニットの自由度の高さ、合成反応の容易性等の利点を有するものの、従来、高密度記録用磁気記録媒体において優れた電磁変換特性と走行耐久性とを両立することは困難であった。
【0007】
そこで本発明の目的は、優れた電磁変換特性と走行耐久性とを兼ね備えた磁気記録媒体を作製可能な、ビニル系ポリマーからなる磁気記録媒体用結合剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記一般式[1]で表される構造単位、下記一般式[2]で表される構造単位、および下記一般式[3]で表される構造単位を有するビニル系ポリマーが、微粒子粉末を高度に分散することができるとともに、高強度の塗膜を形成可能であることを新たに見出した。これは主に、一般式[1]に含まれる脂環式の環状基、一般式[2]に含まれる長鎖ないしは多環員数の炭化水素基、および一般式[3]に含まれる水酸基が分散に寄与すること、一般式[3]に含まれる水酸基がポリイソシアネートと架橋することにより塗膜強度が向上すること、に起因すると考えられる。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
【0009】
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
<1>一般式[1]で表される構造単位、一般式[2]で表される構造単位、および一般式[3]で表される構造単位を含むビニル系共重合体であることを特徴とする磁気記録媒体用結合剤。
【化1】

[一般式[1]中、R1は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、Yは脂環式の環状基を表す。]
【化2】

[一般式[2]中、R2は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、L2は単結合または2価の連結基を表し、Zは炭素数8以上50以下の炭化水素基を表す。]
【化3】

[一般式[3]中、R3は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、L3は単結合または2価の連結基を表す。]
<2>一般式[3]で表される構造単位は、下記一般式[6]で表される構造単位を含む<1>に記載の磁気記録媒体用結合剤。
【化4】

[一般式[6]中、R31は水素原子またはメチル基を表し、X3は−O−、−S−または−N(R33)−で表される2価の連結基を表し、R33は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1以上8以下のアルキル基を表し、R32は置換基を有してもよい炭素数2以上8以下のアルキレン基または該アルキレン基が連結基を介して複数連結した2価の基を表す。]
<3>一般式[1]で表される構造単位は、下記一般式[4]で表される構造単位を含む<1>または<2>に記載の磁気記録媒体用結合剤。
【化5】

[一般式[4]中、R11は水素原子またはメチル基を表し、X1は−O−、−S−または−N(R12)−で表される2価の連結基を表し、R12は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1以上8以下のアルキル基を表し、Y1は脂環式の縮合環基を表す。]
<4>一般式[2]で表される構造単位は、下記一般式[5]で表される構造単位を含む<1>〜<3>のいずれかに記載の磁気記録媒体用結合剤。
【化6】

[一般式[5]中、R21は水素原子またはメチル基を表し、X2は−(O)m1−、−(S)m2−または−{N(R22)}m3−で表される2価の連結基を表し、m1、m2およびm3は、それぞれ独立に1以上の整数を表し、R22は置換基を有してもよい炭素数1以上8以下のアルキル基を表し、nは12以上30以下の整数を表す。]
<5>前記ビニル系共重合体は、スルホン酸(塩)基、カルボン酸(塩)基、およびリン酸(塩)基からなる群から選択される少なくとも一種の極性基を含む<1>〜<4>のいずれかに記載の磁気記録媒体用結合剤。
<6>前記ビニル系共重合体は、一般式[1]で表される構造単位を5モル%以上75モル%以下、一般式[2]で表される構造単位を5モル%以上75モル%以下、一般式[3]で表される構造単位を5モル%以上80モル%以下含む<1>〜<5>のいずれかに記載の磁気記録媒体用結合剤。
<7><1>〜<6>のいずれかに記載の結合剤を含むことを特徴とする磁気記録媒体用組成物。
<8>ポリイソシアネートを更に含む<7>に記載の磁気記録媒体用組成物。
<9>非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
前記結合剤は、<1>〜<6>のいずれかに記載の結合剤を構成成分として含むことを特徴とする磁気記録媒体。
<10>非磁性支持体上に非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末および結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
前記磁性層に含まれる結合剤および/または前記非磁性層に含まれる結合剤は、<1>〜<6>のいずれかに記載の結合剤を構成成分として含むことを特徴とする磁気記録媒体。
<11>前記結合剤は、<1>〜<6>のいずれかに記載の結合剤とポリイソシアネートとの反応生成物を含む<9>または<10>に記載の磁気記録媒体。
<12>前記強磁性粉末は、平均板径が10nm以上50nm以下の六方晶フェライト粉末である<9>〜<11>のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
<13>前記強磁性粉末は、平均長軸長が20nm以上50nm以下の強磁性金属粉末である<9>〜<11>のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた電磁変換特性を有する磁気記録媒体であって、繰り返し走行での磁性層表面の削れによるヘッド汚れが少なく走行耐久性が良好な磁気記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[磁気記録媒体用結合剤]
本発明の磁気記録媒体用結合剤(以下、「本発明の結合剤」ともいう)は、一般式[1]で表される構造単位、一般式[2]で表される構造単位、および一般式[3]で表される構造単位を含むビニル系共重合体である。これら3種の構造単位を含むビニル系共重合体である本発明の結合剤によれば、先に説明したように、微粒子粉末を高度に分散し磁性層の表面平滑性を向上することができるとともに高強度の塗膜を形成することができるため、これにより優れた電磁変換特性と走行耐久性とを兼ね備えた磁気記録媒体を作製することができる。
以下、本発明の結合剤について、更に詳細に説明する。なお、以下において、一般式[1]で表される構造単位を、構造単位[1]ともいう。他の一般式で表される構造単位についても同様である。また、本発明の結合剤に含まれる構造単位[1]は、同一種のものであってもよく、2種以上の異なる種類のものであってもよい。他の構造単位についても同様である。
【0012】
構造単位[1]
【0013】
【化7】

【0014】
一般式[1]中、R1は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
1は水素原子またはメチル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。
【0015】
一般式[1]中、L1は単結合または2価の連結基を表す。L1で表される2価の連結基は、ヘテロ原子を含むことが好ましく、ヘテロ原子によりYで表される脂環式の環状基と結合することが好ましい。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、イオウ原子を挙げることができる。L1としては、単結合または主鎖の炭素原子と−C(O)−基を介して結合する2価の連結基が好ましく、後述の一般式[4]中の−C(O)X1−で表される2価の連結基がより好ましい。
【0016】
一般式[1]中、Yは脂環式の環状基を表す。脂環式の環状基は、飽和であっても不飽和であってもよく、単環、多環、縮合環のいずれであってもよい。また、置換基を有していてもよい。
なお、本発明において、ある基が置換基を有する場合、該置換基としては、アルキル基(例えば炭素数1〜6のアルキル基)、水酸基、アルコキシル基(例えば炭素数1〜6のアルコキシル基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アシル基、カルボキシル基等を挙げることができる。また、置換基を有する基について「炭素数」とは、置換基を含まない部分の炭素数を意味するものとする。また、本発明において、「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0017】
Yで表される単環式の脂環式環状基としては、5〜6員のものが好ましく、具体例としては、シクロへキシル基、シクロペンチル基を挙げることができ、多環式の脂環式環状基としては、7〜10員のものが好ましく、具体例としては、ビシクロアルキル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基を挙げることができる。分散性向上の点からは、Yは脂環式の縮合環基であることが好ましい。脂環式の縮合環としては、後述の一般式[4]中のY1で表される脂環式の縮合環が好ましい。
【0018】
分散性向上の観点からは、構造単位[1]は下記一般式[4]で表される構造単位(構造単位[4])であることが好ましい。
【0019】
【化8】

【0020】
一般式[4]中、R11は水素原子またはメチル基を表し、メチル基を表すことが好ましい。
【0021】
1は−O−、−S−、または−N(R12)−で表される2価の連結基を表し、−O−であることが好ましい。
【0022】
上記R12は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1以上8以下のアルキル基を表す。R12で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上4以下である。R12で表されるアルキル基の炭素数が上記範囲であることにより、溶解性を維持しつつ分散性をよりいっそう向上することができる。
【0023】
1は脂環式の縮合環基を表す。Y1で表される脂環式の縮合環基は、7〜10員のものが好ましい。好ましい縮合環基の具体例としては、アダマンチル基、ノルボルニル基、ジシクロペンタニル基を挙げることができる。
【0024】
以上説明した構造単位[1]は下記一般式[1’]で表されるビニルモノマーから誘導することができ、構造単位[4]は下記一般式[4’]で表されるアクリルモノマーから誘導することができる。
【0025】
【化9】

[一般式[1’]中のR1、L1、Yはそれぞれ一般式[1]と同義である。]
【0026】
【化10】

[一般式[4’]中のR11、X1、Y1はそれぞれ一般式[4]と同義である。]
【0027】
以下に、一般式[1’]または一般式[4’]で表されるモノマーの具体例を示す。ただし、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0028】
【化11】

【0029】
【化12】

【0030】
【化13】

【0031】
【化14】

【0032】
【化15】

【0033】
構造単位[2]
【0034】
【化16】

【0035】
一般式[2]中、R2は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。その詳細は、先に一般式[1]中のR1について述べた通りである。
【0036】
一般式[2]中、L2は単結合または2価の連結基を表し、酸素原子、窒素原子またはイオウ原子のいずれかを含む連結基が好ましい。L2としては、単結合または主鎖の炭素原子と−C(O)−基を介して結合する2価の連結基が好ましく、後述の一般式[5]中の−C(O)X2−で表される2価の連結基がより好ましい。
【0037】
一般式[2]中、Zは、炭素数8以上50以下の炭化水素基を表す。上記炭化水素基は、置換または無置換の直鎖、分岐、または環状の飽和または不飽和の炭化水素基であり、直鎖または分岐の炭化水素基であることが好ましい。炭素数が8以上であることにより分散性向上に寄与することができ、炭素数50以下であることにより溶解性を確保することができる。上記炭化水素基の炭素数は、分散性および溶解性の観点から、12以上30以下であることが好ましい。Zで表される炭化水素基は、炭素数12以上30以下のアルキル基であることがより好ましく、炭素数12以上18以下のアルキル基であることが更に好ましい。
【0038】
分散性向上の観点からは、構造単位[2]は下記一般式[5]で表される構造単位(構造単位[5])であることが好ましい。
【0039】
【化17】

【0040】
一般式[5]中、R21は水素原子またはメチル基を表し、メチル基であることが好ましい。
【0041】
nは12以上30以下の整数を表し、12以上18以下の整数であることがより好ましい。
【0042】
2は−(O)m1−、−(S)m2−または−{N(R22)}m3−で表される2価の連結基を表し、−(O)m1−で表される2価の連結基を表すことが好ましい。ここでm1、m2、およびm3は、それぞれ独立に1以上の整数を表す。
【0043】
上記R22は、置換基を有してもよい炭素数1以上8以下のアルキル基を表す。R22で表されるアルキル基の炭素数は1以上4以下であることが好ましい。R22で表されるアルキル基の炭素数が上記範囲であることにより、溶解性を維持しつつ分散性をよりいっそう向上することができる。
また、上記m1、m2、およびm3は、溶解性維持の観点から、5以下の整数であることが好ましい。
【0044】
以上説明した構造単位[2]は下記一般式[2’]で表されるビニルモノマーから誘導することができ、構造単位[5]は下記一般式[5’]で表されるアクリルモノマーから誘導することができる。
【0045】
【化18】

[一般式[2’]中のR2、L2、Zはそれぞれ一般式[2]と同義である。]
【0046】
【化19】

[一般式[5’]中のR21、X2、nはそれぞれ一般式[5]と同義である。]
【0047】
以下に、一般式[2’]または一般式[5’]で表されるモノマーの具体例を示す。ただし、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0048】
【化20】

【0049】
【化21】

【0050】
【化22】

【0051】
構造単位[3]
【0052】
【化23】

【0053】
一般式[3]中、R3は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表す。その詳細は、先に一般式[1]中のR1について述べた通りである。
【0054】
一般式[3]中、L3は単結合または2価の連結基を表し、酸素原子、窒素原子またはイオウ原子のいずれかを含む連結基が好ましい。なお、構造単位[1]、構造単位[2]、構造単位[3]はそれぞれ異なる構造であるため、一般式[3]中のL3は前記Y、Zに該当する基を含まないものとする。L3で表される2価の連結基としては、主鎖の炭素原子と−C(O)−基を介して結合するものが好ましく、後述の一般式[6]中の−C(O)X332−で表される2価の連結基がより好ましい。
【0055】
分散性向上の観点からは、構造単位[3]は下記一般式[6]で表される構造単位(構造単位[6])であることが好ましい。
【0056】
【化24】

【0057】
一般式[6]中、R31は水素原子またはメチル基を表し、メチル基を表すことが好ましい。
【0058】
1は−O−、−S−、または−N(R33)−で表される2価の連結基を表し、−O−であることが好ましい。
【0059】
上記R33は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1以上8以下のアルキル基を表す。R33で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上4以下である。R33で表されるアルキル基の炭素数が上記範囲であることにより、溶解性を維持しつつ分散性をよりいっそう向上することができる。
【0060】
32は置換基を有してもよい炭素数2以上8以下のアルキレン基または該アルキレン基が連結基を介して複数連結した2価の基を表す。R32で表される基に含まれるアルキレン基の炭素数が上記範囲であることにより、溶解性を維持しつつ分散性をよりいっそう向上することができる。上記アルキレン基を連結する連結基としては、溶解性の点からエステル結合が好ましい。R32で表される基に含まれる炭素数2以上8以下のアルキレン基の数は、好ましくは1以上3以下である。
【0061】
以上説明した構造単位[3]は下記一般式[3’]で表されるビニルモノマーから誘導することができ、構造単位[6]は下記一般式[6’]で表されるアクリルモノマーから誘導することができる。
【0062】
【化25】

[一般式[2’]中のR3、L3はそれぞれ一般式[3]と同義である。]
【0063】
【化26】

[一般式[6’]中のR31、R32、X4はそれぞれ一般式[6]と同義である。]
【0064】
一般式[3’]または一般式[6’]で表されるモノマーの具体例としては、以下のモノマーを挙げることができる。ただし、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、ヒドロキシエチルモノ(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシプロピルモノ(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシブチルモノ(メタ)アリルエーテル、ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル等の(メタ)アリルエーテル類、(メタ)アリルアルコール。
【0065】
優れた分散性と高い塗膜強度を両立する観点から、本発明の結合剤であるビニル系共重合体は、該共重合体を構成する全重合単位に基づいて、構造単位[1](好ましくは構造単位[4])を5モル%以上75モル%以下含むことが好ましく、15モル%以上60モル%以下含むことがより好ましく、30モル%以上50モル%以下含むことが更に好ましい。
同様に優れた分散性と高い塗膜強度を両立する観点から、全重合単位に基づいて、構造単位[2](好ましくは構造単位[5])を、5モル%以上75モル%以下含むことが好ましく、5モル%以上50モル%以下含むことがより好ましく、10モル%以上30モル%以下含むことが更に好ましく、構造単位[3](好ましくは構造単位[6])を5モル%以上80モル%以下含むことが好ましく、15モル%以上70モル%以下含むことがより好ましく、30モル%以上60モル%以下含むことが更に好ましい。したがって重合反応時の各モノマーの配合比は、上記好ましい組成を有する共重合体が得られるように設定することが好ましい。
【0066】
本発明の結合剤は、塗布型磁気記録媒体において磁性粉末、非磁性粉末の表面に吸着する官能基(極性基)を有することが好ましい。これにより塗料中の粉末の分散性を高めることができる。本発明の結合剤に導入することが好ましい極性基としては、スルホン酸(塩)基、カルボン酸(塩)基、リン酸(塩)基を挙げることができる。なお、本発明においてスルホン酸(塩)基とは、スルホン酸基(−SO3H)、SO3Na基、SO3K基、SO3Li等のスルホン酸塩基、およびそれらの塩を含むものとする。カルボン酸(塩)基、リン酸(塩)基についても同様である。
【0067】
上記極性基を有するモノマーを用いて重合反応を行うか、または重合反応後、得られた共重合体を上記極性基を有するモノマーとの付加反応に付すことにより、本発明の結合剤に上記極性基を導入することができる。
【0068】
スルホン酸(塩)基を導入するためのモノマーとしては、以下の化合物を用いることができる。
【0069】
【化27】

[上記において、Mは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム塩を表し、Rはアルキル基を表す。]
【0070】
カルボン酸(塩)基を導入するためのモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物およびこれらの半エステルなどが挙げられる。
【0071】
リン酸(塩)基を有するモノマーの例として、モノリン酸(塩)基を有するモノマーの例としては、モノ[(メタ)アクリロイルオキシエチル]アシッドホスフェート、モノ[(メタ)アクリロイルオキシプロピル]アシッドホスフェート、モノ[(メタ)アクリロイルオキシブチル]アシッドホスフェート、モノ[(メタ)アクリロイルオキシエトキシノエチル]アシッドホスフェート、モノ[(メタ)アクリロイルオキシポリオキシエチレングリコール]アシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルブチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルエチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシポリオキシエチレングリコールブチルアシッドホスフェート、ビニルアシッドホスフェートおよびそれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。なお、上記(メタ)アクリル酸はメタクリル酸とアクリル酸を含み、(メタ)アクリロイルとはメタクリロイルとアクリロイルを含むものとする。また、下記(メタ)アクリレートには、メタクリレートとアクリレートが含まれる。
【0072】
分散性をよりいっそう向上するためには、本発明の結合剤への上記極性基の導入量は10〜1000μeq/gとすることが好ましい。このためには、上記極性基を有するモノマーは、一般式[1’]〜一般式[6’]で表されるビニルモノマーないしはアクリルモノマーの合計量に対して0.1〜10モル%使用することが好ましく、0.5〜6モル%使用することが好ましい。
【0073】
共重合可能なモノマー
本発明の結合剤を得るために一般式[1’]〜一般式[6’]で表されるビニルモノマーないしはアクリルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸エステル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、エチレン性不飽和ニトリル系モノマー、エチレン性不飽和酸系モノマー、アルキルビニルエーテル系モノマー、ビニルエステル系モノマー、エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物などが挙げられる。
【0074】
エチレン性不飽和カルボン酸エステル系モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート系モノマー、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。
【0075】
アルキル(メタ)アクリレート系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でもメチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0076】
また、アルキル(メタ)アクリレート系モノマーのアルキル基は置換基を有するアルキル基でもよく、アラルキル基が好ましい。このような化合物の具体例としてはベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート等が挙げられる。この中でも、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0077】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレート系モノマーとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、エチレン性不飽和カルボン酸エステル系モノマーとして、グリシジル(メタ)アクリレートなども挙げられる。
【0078】
芳香族ビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、モノクロルスチレン、p−メチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等が挙げられる。
【0079】
エチレン性不飽和ニトリル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−エチルプロペンニトリル、2−プロピルプロペンニトリル、2−クロロプロペンニトリル、2−ブテンニトリルなどが挙げられる。
【0080】
アルキルビニルエーテル系モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0081】
ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどを挙げることができる。
【0082】
エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0083】
上記共重合可能なモノマーは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用することもできる。
これらの中でも、エチレン性不飽和カルボン酸系モノマーが好ましく、アルキル(メタ)アクリレート系モノマーが更に好ましい。
【0084】
本発明の結合剤を得るために、上記共重合可能な化合物類を任意に含む重合反応系を重合させるには、溶液重合等の公知の重合方法を用いることが好ましい。
【0085】
溶液重合に使用する溶媒としては、反応性の観点から水混和性極性溶媒を用いることが好ましい。本発明において、「水混和性極性溶媒」とは、20℃において水を5質量%以上溶解するものを指す。このような溶媒の具体例としては、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリドン(NMP)が挙げられる。重合反応は、公知の重合開始剤、連鎖移動剤等の存在下で行うことができる。重合条件は、用いる重合可能な化合物類や重合開始剤、連鎖移動剤の種類等により異なるが、一般にオートクレーブ中にて、温度は50〜80℃程度、ゲージ圧力は4.0〜1.0MPa程度、時間は5〜30時間程度とすることが好ましい。重合は、反応に不活性な気体の雰囲気下で行うことが反応制御のしやすさの点で好ましい。そのような気体としては、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられ、好ましくはコスト面から窒素が用いられる。重合に際しては、上記重合反応系に上述の成分以外に一般に重合反応に添加される他の成分を添加してもよい。
【0086】
本発明の結合剤であるビニル系共重合体の質量平均分子量は、高強度の塗膜を得る観点から1,000以上であることが好ましく、作業性を良好に維持するために所定濃度における塗料粘度を適切な範囲とする観点から200,000以下であることが好ましい。上記観点から、本発明の結合剤であるビニル系共重合体の質量平均分子量は、10,000〜100,000であることがより好ましい。本発明における平均分子量は、標準ポリスチレン換算で求められる値をいうものとする。本発明の結合剤の分子量は、原料組成、反応条件等により制御することができる。
【0087】
以下、本発明の結合剤の具体例を示す。ただし本発明は下記具体例に限定されるものではない。以下において、Mwは質量平均分子量を表し、各構造単位の右側に付した数値は、共重合体中の全重合単位に対する各構造単位のモル比率を表す。
【0088】
【化28】


【0089】
【化29】

【0090】
【化30】

【0091】
本発明の結合剤は、構造単位[3]に含まれる水酸基により、磁気記録媒体において硬化剤として使用されるポリイソシアネートと架橋構造を形成することができる。これにより、高い塗膜強度を有する磁気記録媒体を得ることができる。併用するポリイソシアネート硬化剤の詳細は後述する。
【0092】
[磁気記録媒体用組成物]
本発明の磁気記録媒体用組成物は、本発明の結合剤を含むものであり、好ましくは塗布型磁気記録媒体形成用組成物であり、具体的には、塗布型磁気記録媒体の粉末含有層、例えば強磁性粉末を含有する磁性層、非磁性粉末を含有する非磁性層を形成するための塗布液作製に使用される結合剤樹脂組成物である。本発明の結合剤によれば、各種粉末を高度に分散することにより高い表面平滑性を有する粉末含有層を形成することができる。したがって本発明の結合剤を含有する本発明の磁気記録媒体用組成物によれば、高い表面平滑性を有することにより優れた電磁変換特性を発揮し得る磁気記録媒体を形成することができる。
【0093】
先に説明したように、本発明の結合剤とポリイソシアネートとを併用することにより高い塗膜強度を有する磁気記録媒体を得ることができる。したがって本発明の磁気記録媒体用組成物はポリイソシアネートを含むことが好ましい。ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等の2官能以上のポリイソシアネートを使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL、等がありこれらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで各層とも用いることができる。
【0094】
塗膜強度向上の観点からは、ポリイソシアネートとして3官能以上のポリイソシアネートを使用することが好ましい。3官能以上のポリイソシアネートの具体例としては、トリメチロールプロパン(TMP)にTDI(トリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにIPDI(イソホロンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにXDI(キシリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、などアダクト型ポリイソシアネート化合物、TDIの縮合イソシアヌレート型3量体、TDIの縮合イソシアヌレート5量体、TDIの縮合イソシアヌレート7量体、およびこれらの混合物、HDIのイソシアヌレート型縮合物、IPDIのイソシアヌレート型縮合物、さらにクルードMDIなどを挙げることができる。ポリイソシアネートの使用量は、本発明の結合剤100質量部に対して、例えば0〜80質量部とすることができ、塗膜強度向上の点から、50〜80質量部とすることが好ましい。
【0095】
本発明の磁気記録媒体用組成物は、本発明の結合剤およびポリイソシアネートとともに、磁気記録媒体形成用塗布液に通常使用される各種添加剤等を含むことができる。また、本発明の磁気記録媒体用組成物は、磁性粉末、非磁性粉末等を含むか、またはこれら粉末と混合して使用することができる。
以上説明した各成分の詳細は、本発明の磁気記録媒体について後述する通りである。
【0096】
[磁気記録媒体]
本発明の磁気記録媒体は、下記態様1および態様2を含む。
態様1:非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、前記結合剤が、本発明の結合剤を構成成分として含む磁気記録媒体。
態様2:非磁性支持体上に非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末および結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
前記磁性層に含まれる結合剤および/または前記非磁性層に含まれる結合剤が、本発明の結合剤を構成成分として含む磁気記録媒体。
【0097】
本発明の磁気記録媒体は、磁性層および/または非磁性層に結合剤の構成成分として、本発明の結合剤を含む。本発明の結合剤を「結合剤の構成成分として含む」とは、本発明の結合剤そのもの、または本発明の結合剤と他の結合剤成分との反応生成物が結合剤に含まれていることをいう。上記反応生成物としては、前述のように、本発明の結合剤(ビニル系共重合体)とポリイソシアネートとの反応生成物が含まれることが好ましい。このような反応生成物を含むことにより、塗膜強度をよりいっそう高めることができる。
【0098】
本発明の磁気記録媒体は、磁性層および/または非磁性層の結合剤の構成成分として、本発明の結合剤とともに、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応性樹脂およびこれらの混合物を含むこともできるが、ポリウレタン樹脂などの本発明の結合剤(ビニル系共重合体)以外の樹脂成分を使用することなく、繰り返し走行に耐え得る高い走行耐久性を実現することができる。
【0099】
本発明の結合剤以外の樹脂成分としては、熱可塑性樹脂としては、例えば、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000ものを挙げることができる。具体的には、ポリウレタン樹脂、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を構成単位として含む共重合体、各種ゴム系樹脂を挙げられる。また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂としては、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物等が挙げられる。本発明の磁気記録媒体において、本発明の結合剤を含まない層においては、上記の公知の樹脂を任意にポリイソシアネートと組み合わせて結合剤として用いることができる。本発明の結合剤を、他の樹脂およびポリイソシアネートとともに含む層は、結合剤の構成成分として、本発明の結合剤と他の樹脂とがポリイソシアネートによって架橋した反応生成物を含むことができる。
【0100】
本発明の結合剤と他の樹脂成分とを併用する場合、他の樹脂成分の使用量は、本発明の結合剤100質量部に対し、1〜100質量部とすることが好ましく、10〜100質量部とすることがより好ましい。ただし前述の通り、本発明の結合剤によれば他の樹脂成分が含まれない場合であっても高い塗膜強度を有する磁気記録媒体を得ることができる。
【0101】
本発明の結合剤は、強磁性粉末、非磁性粉末等の粉末100質量部に対して5〜50質量部の範囲で使用することが好ましく、7〜45質量部の範囲で使用することがより好ましい。本発明の結合剤を、各種粉末に対して上記範囲の量で使用することにより粉末の分散性を高めることができる。磁気記録媒体において粉末の分散状態が良好であることは、磁気記録媒体の表面平滑性が高くなることにより確認することができる。また、磁性層または非磁性層表面の光沢度が高くなる現象が見られることにより、強磁性粉末または非磁性粉末の分散状態が良好であることが確認できる。更に、本発明の結合剤を粉末100質量部に対して10〜40質量部の範囲内で使用することにより、電磁変換特性を顕著に改善することができる。本発明の結合剤の含有量が粉末100質量部あたり5質量部以上であれば、強磁性粉末または非磁性粉末が結合されずに粉落ち等が発生することがなく好ましい。磁性層中の結合剤量が多くなるほど強磁性粉末の充填度は低下し電磁変換特性も低下することとなるが、磁性層において強磁性粉末100質量部に対する本発明の結合剤の含有量が50質量部以下であれば、磁性層における強磁性粉末の充填度の低下が少なく好ましい。
【0102】
次に、本発明の磁気記録媒体について、更に詳細に説明する。
【0103】
(磁性層)
本発明の磁気記録媒体において、磁性層に含まれる強磁性粉末としては、六方晶フェライト粉末を挙げることができる。六方晶フェライト粉末のサイズについては、特にトラック密度を上げるため磁気抵抗ヘッドで再生する場合、低ノイズにする必要があるため、平均板径が50nm以下であることが好ましいが、10nm未満では熱揺らぎのため安定な磁化が望めない。200nmより大きいとノイズが高く、いずれも高密度磁気記録には向かない。したがって六方晶フェライト粉末の平均板径は、10nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上50nm以下であることがより好ましい。本発明の結合剤によれば、上記範囲の平均板径を有する微粒子状の六方晶フェライト粉末を高度に分散させることができる。六方晶フェライト粉末の板状比(板径/板厚)は1〜15が望ましい。好ましくは1〜7である。板状比が小さいと磁性層中の充填性は高くなり好ましいが、十分な配向性を得ることが困難となる。15より大きいと粒子間のスタッキングによりノイズが大きくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は10〜200m2/gを示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符合する。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。数値化は困難であるが、粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定する事で比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すと、例えばσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
【0104】
一般に、抗磁力Hcが500〜5000エルステッド(≒40〜398kA/m)程度の六方晶フェライト粉末は作製可能である。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。本発明で使用される六方晶フェライトのHcは2000〜4000Oe(≒160〜320kA/m)程度であることが好ましく、より好ましくは2200〜3500Oe(≒176〜280kA/m)である。ヘッドの飽和磁化が1.4テスラを越える場合は、2200Oe(≒176kA/m)以上にすることが好ましい。Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは40〜80A・m2/kgであることが好ましい。σsは高い方が好ましいが微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
【0105】
以上説明した六方晶フェライト粉末の詳細については、特開2004−295926号公報段落[0042]、[0043]も参照できる。
【0106】
本発明の磁性層に含まれる強磁性粉末としては、強磁性金属粉末を挙げることもできる。強磁性金属粉末のサイズについては、磁化の安定性とノイズ低減の観点から、平均長軸長が10nm以上100nm以下であることが好ましく、20nm以上50nm以下であることがより好ましい。本発明の結合剤によれば、上記範囲の平均長軸長を有する微粒子状の強磁性金属粉末を高度に分散させることができる。
【0107】
強磁性金属粉末のBET法による比表面積(SBET)は、良好な表面性と低いノイズを両立する観点から、30m2/g以上80m2/g未満であることが好ましく、40m2/g以上70m2/gであることがさらに好ましい。
【0108】
強磁性金属粉末の抗磁力Hcは好ましくは1,500〜7,000Oe(≒119〜557kA/m)であり、更に好ましくは2,000〜6,000Oe(≒159〜478kA/m)であり、σsは、好ましくは80〜170emu/g(≒80〜170A・m2/kg)、更に好ましくは90〜160emu/g(≒90〜160A・m2/kg)である。
【0109】
強磁性金属粉末のpHは用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12であることが好ましく、より好ましくは7〜10である。強磁性粉末は必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性粉末に対し0.1〜10質量%とすることが好ましい。表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性金属粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は空孔が少ないほうが好ましくその値は好ましくは20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。また形状については先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、粒状、米粒状あるいは板状いずれでもかまわないが、特に針状の強磁性粉末を使用することが好ましい。針状強磁性金属粉末の場合、針状比は4以上12以下が好ましく、更に好ましくは5以上12以下である。
【0110】
その他の強磁性金属粉末の詳細については、特開2004−295926号公報段落[0033]〜[0035]を参照できる。
【0111】
上記強磁性粉末の平均粒子サイズは、以下の方法により測定することができる。
強磁性粉末を、日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて粒子を撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粒子写真を得る。粒子写真から目的の磁性体を選びデジタイザーで粉体の輪郭をトレースしカールツァイス製画像解析ソフトKS−400で粒子のサイズを測定する。500個の粒子のサイズを測定する。上記方法により測定される粒子サイズの平均値を強磁性粉末の平均粒子サイズとする。
【0112】
なお、本発明において、磁性体等の粉体のサイズ(以下、「粉体サイズ」と言う)は、(1)粉体の形状が針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粉体を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、(2)粉体の形状が板状乃至柱状(ただし、厚さ乃至高さが板面乃至底面の最大長径より小さい)場合は、その板面乃至底面の最大長径で表され、(3)粉体の形状が球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粉体を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉体サイズの算術平均であり、500個の一次粒子について上記の如く測定を実施して求めたものである。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。
【0113】
また、該粉体の平均針状比は、上記測定において粉体の短軸の長さ、即ち短軸長を測定し、各粉体の(長軸長/短軸長)の値の算術平均を指す。ここで、短軸長とは、上記粉体サイズの定義で(1)の場合は、粉体を構成する短軸の長さを、同じく(2)の場合は、厚さ乃至高さを各々指し、(3)の場合は、長軸と短軸の区別がないから、(長軸長/短軸長)は、便宜上1とみなす。
そして、粉体の形状が特定の場合、例えば、上記粉体サイズの定義(1)の場合は、平均粉体サイズを平均長軸長と言い、同定義(2)の場合は平均粉体サイズを平均板径と言い、(最大長径/厚さ乃至高さ)の算術平均を平均板状比という。同定義(3)の場合は平均粉体サイズを平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)という。
【0114】
(非磁性層)
前記態様2の磁気記録媒体は、非磁性支持体と磁性層との間に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有し、磁性層および/または非磁性層の結合剤が、本発明の結合剤を構成成分として含む。本発明の結合剤は、磁性層と同様に非磁性層においても塗膜強度向上および非磁性粉末の分散性向上に寄与することができる。
【0115】
非磁性層に使用される非磁性粉末は無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等が挙げられる。具体的には二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr23、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタン等を単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。好ましい非磁性粉末は、α−酸化鉄、酸化チタンである。
【0116】
非磁性粉末の形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでもよい。これら非磁性粉末の平均粒径は0.005〜2μmであることが好ましく、0.01〜0.2μmであることが更に好ましい。必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組合せたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。非磁性粉末の結晶子サイズは0.004μm〜1μmであることが好ましく、0.04μm〜0.1μmであることが更に好ましい。非磁性粉末の比表面積は1〜100m2/gであることが好ましく、より好ましくは5〜70m2/g、更に好ましくは10〜65m2/gである。本発明の結合剤によれば、上記サイズの微粒子状の非磁性粉末を高度に分散することができる。
【0117】
非磁性粉末のジブチルフタレート(DBP)を用いた吸油量は5〜100ml/100gであることが好ましく、より好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12であることが好ましく、より好ましくは3〜6である。タップ密度は0.05〜2g/mlであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5g/mlである。0.05g/mlよりも小さいと飛散する粒子が多く操作が困難となる傾向がある。2g/mlよりも大きいと装置に固着し易くなり操作が困難となる傾向がある。非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましく、6〜9がであることがより好ましい。pHが上記範囲内であれば摩擦係数増大を抑制することができる。
【0118】
これらの非磁性粉末の表面には表面処理を施すことによりAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnOを存在させることが好ましい。特に分散性に好ましいものはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であり、更に好ましいものはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナを存在させた後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい
【0119】
その他の非磁性粉末の詳細については、特開2004−295926号公報段落[0047]〜[0048]、[0050]を参照できる。
【0120】
(添加剤)
磁性層および非磁性層には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、分散効果、潤滑効果、帯電防止効果、可塑効果などを付与するための化合物を使用することができる。添加剤として使用可能な化合物の詳細については、特開2004−295926号公報段落[0055]〜[0060]を参照できる。
【0121】
本発明の磁気記録媒体は、磁性層および/または非磁性層にカーボンブラックを含むことができる。使用可能なカーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、平均粒子径は5〜300nm、好ましくは10〜250nm、更に好ましくは20〜200nmであることがそれぞれ好ましい。pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/ccであることがそれぞれ好ましい。カーボンブラックを使用する場合は強磁性粉末または非磁性粉末に対して0.1〜30質量%で用いることが好ましい。本発明において使用可能なカーボンブラックについては、例えば、「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0122】
(有機溶媒)
有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等の公知の有機溶媒を任意の比率で使用することができる。
【0123】
本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性層または非磁性層用塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
【0124】
(非磁性支持体)
非磁性支持体としては二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンズオキシダゾール等の公知のフィルムが使用できる。好ましくはポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミドである。これらの非磁性支持体には、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。
【0125】
また、本発明に用いることのできる非磁性支持体は中心線平均表面粗さがカットオフ値0.25mmにおいて、好ましくは0.1〜20nm、より好ましくは1〜10nmの優れた平滑性を有することが好ましい。また、これらの非磁性支持体は中心線平均表面粗さが小さいだけでなく1μ以上の粗大突起がないことが好ましい。得られた支持体の算術平均粗さは、JIS B0660−1998、ISO 4287−1997に規定されたRaとして0.1μm以下であることが、ノイズ低減のために好ましい。
【0126】
(層構成)
本発明の磁気記録媒体において、非磁性支持体の厚さは、例えば2〜100μm、好ましくは3〜80μmである。非磁性支持体と非磁性層または磁性層の間に密着性向上のための下塗り層または平滑性向上のための平滑化を設けてもかまわない。下塗り層および平滑化層の厚みは、例えば0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.5μmである。本発明の磁気記録媒体は、支持体両面に非磁性層と磁性層を設けてなるディスク状媒体であっても、片面のみに設けたテープ状媒体またはディスク状媒体でもよい。この場合、帯電防止やカール補正などの効果を出すために非磁性層、磁性層側と反対側にバックコ−ト層を設けてもかまわない。この厚みは、例えば0.1〜4μm、好ましくは0.3〜2.0μmである。これらの下塗層、平滑化層、バックコート層は公知のものが使用でき、詳細については特開2004−295926号公報段落[0064]〜[0066]を参照できる。本発明の磁気記録媒体は、これらの層にも本発明の結合剤を含むことができる。
【0127】
非磁性層の厚みは通常、0.2〜5.0μm、好ましくは0.3〜3.0μm、さらに好ましくは0.4〜2.0μmである。
【0128】
磁性層の厚みは、好ましくは0.01〜0.10μm以下であり、より好ましくは0.02μm〜0.08μmであり、更に好ましくは0.03μm〜0.08μmであり、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化することが好ましい。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。一般に、磁性層が薄くなるほど塗膜耐久性が低下し走行耐久性を良好に維持することが困難となるが、本発明の結合剤を磁性層に含むことにより磁性層の塗膜強度を高めることができるため、上記範囲の厚さを有する薄層磁性層を有する磁気記録媒体において、優れた走行耐久性を実現できる。
【0129】
(塗布液の製造)
磁性層塗布液、更には非磁性層塗布液、バックコート層塗布液等の各層形成用塗布液を製造する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。本発明に使用する強磁性粉末、非磁性粉体、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。また、各層形成用塗布液を分散させるためにはガラスビーズを用いることができ、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズを用いることが好ましい。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
【0130】
磁気記録媒体の製造方法では、例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に磁性層塗布液を所定の膜厚となるようにして磁性層を塗布して形成する。ここで複数の磁性層塗布液を逐次または同時に重層塗布してもよく、非磁性層塗布液と磁性層塗布液とを逐次または同時に重層塗布してもよい。各層形成用塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。塗布工程の詳細については、特開2004−295926号公報段落[0067]、[0068]も参照できる。
【0131】
また、塗布工程後の媒体には、磁性層の配向処理、表面平滑化処理(カレンダー処理)等の各種の後処理を施すことができる。それらの処理の詳細については、例えば特開2004−295926号公報段落[0070]〜[0073]を参照できる。得られた磁気記録媒体は、裁断機、打抜機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【実施例】
【0132】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例中の「部」は、特に示さない限り質量部を示す。なお、ここに示す成分、割合、操作、順序等は本発明の精神から逸脱しない範囲で変更し得るものであり、下記の実施例に制限されるべきものではない。また、以下に記載の質量平均分子量は、0.3質量%の臭化リチウムを含有するDMF溶媒を用いて標準ポリスチレン換算で求めた値である。
【0133】
[合成例1]
構造単位[1]、[2]、[3]を有するアクリル系共重合体の合成
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、例示モノマーA−1 37.3g、例示モノマーB−1 14.2g、2−ヒドロキシエチルアクリレート 27.9g、ジメチル2,2'−アゾビスイソブチレート 1.6g、N−メチルピロリドン(NMP) 74.5gを加え窒素雰囲気下で9時間79℃に加熱して反応を完結させた。質量平均分子量は、7.0×105であった。反応後にGPC分析を行った結果、残存モノマーおよび残存オリゴマーのピークが観測されなかったことから、各構造単位が仕込み比で導入された共重合体が得られたことを確認した。
【0134】
【化31】

【0135】
[合成例2〜9]
構造単位[1]、[2]、[3]を有するアクリル系共重合体の合成
使用するモノマーの種類・量比(モル%)を変更して合成例1と同様の方法で、アクリル系共重合体AP−3、AP−15、AP−16、AP−20、AP−21、AP−23、AP−26、AP−28、AP−30を得た。各共重合体の質量平均分子量を測定し、先に示した値であることを確認した。また、反応後にGPC分析を行った結果、残存モノマーおよび残存オリゴマーのピークが観測されなかったことから、各構造単位が仕込み比で導入された共重合体が得られたことを確認した。
【0136】
[比較合成例1]
構造単位[1]のみを有するアクリル系共重合体BP−1の合成
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、例示モノマーA−1 79.4g、ジメチル2,2'−アゾビスイソブチレート 1.6g、N−メチルピロリジノン 74.5gを加え窒素雰囲気下で9時間79℃に加熱して反応を完結させて以下に示す構造単位を有するアクリル系共重合体BP−1を得た。質量平均分子量は6.0×105であった。
【0137】
【化32】

【0138】
[比較合成例2]
構造単位[2]のみを有するアクリル系共重合体BP−2の合成
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、例示モノマーB−1 79.4g、ジメチル2,2'−アゾビスイソブチレート 1.6g、N−メチルピロリジノン 74.5gを加え窒素雰囲気下で9時間79℃に加熱して反応を完結させて以下に示す構造単位を有するアクリル系共重合体BP−2を得た。質量平均分子量は8.0×105であった。
【0139】
【化33】

【0140】
[比較合成例3]
構造単位[1]、[3]を有するアクリル系共重合体BP−3の合成
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、A−1 51.5g、2−ヒドロキシエチルアクリレート 27.9g、N−メチルピロリジノン 74.5gを加え窒素雰囲気下で9時間79℃に加熱して反応を完結させて以下に示す構造単位を有するアクリル系共重合体BP−3を得た。
質量平均分子量は6.0×105であった。また、反応後にGPC分析を行った結果、残存モノマーおよび残存オリゴマーのピークが観測されなかったことから、各構造単位が仕込み比で導入された共重合体が得られたことを確認した。下記構造単位の右側に付した数値は、共重合体中の全重合単位に対する各構造単位のモル比率を表す。
【0141】
【化34】

【0142】
[実施例1−1]
(1)磁性層塗布液の調製
強磁性金属粉末:100部
組成 Fe/Co=100/25
Hc 2450Oe(≒195kA/m)
BET法による比表面積 65m2/g
表面処理剤 Al23、SiO2、Y23
粒子サイズ(平均長軸長) 45nm
針状比 5
σs 110emu/g(≒110A・m2/kg)
フェニルホスホン酸:3部
アクリル系共重合体AP−1:15部
メチルエチルケトン:150部
シクロヘキサノン:150部
α−Al23 モース硬度9(平均粒径0.1μm):15部
カーボンブラック(平均粒径0.08μm):0.5部
【0143】
上記成分をオープンニーダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液に下記の成分を加え撹拌した後、超音波処理し、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性層塗布液を調製した。
ブチルステアレート:1.5部
ステアリン酸:0.5部
メチルエチルケトン:50部
シクロヘキサノン:50部
トルエン:3部
ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製コロネート3041):5部
【0144】
(2)非磁性層塗布液の調製
非磁性粉体(αFe23 ヘマタイト):80部
平均長軸長 0.15μm
BET法による比表面積 52m2/g
pH 6
タップ密度 0.8
DBP吸油量 27〜38g/100g、
表面処理剤 Al23、SiO2
カーボンブラック:20部
平均一次粒子径 0.020μm
DBP吸油量 80ml/100g
pH 8.0
BET法による比表面積:250m2/g
揮発分:1.5%
アクリル系共重合体AP−1:19部
メチルエチルケトン:150部
シクロヘキサノン:150部
【0145】
上記成分をオープンニーダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液に下記の成分を加え撹拌した後、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、下層塗布層(非磁性層)用の塗布液を調製した。
ブチルステアレート:1.5部
ステアリン酸:1部
メチルエチルケトン:50部
シクロヘキサノン:50部
トルエン:3部
ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製コロネート3041):5部
【0146】
(3)バックコート層塗布液の調製
カーボンブラック(平均粒径40nm):85部
カーボンブラック(平均粒径100nm):3部
ニトロセルロース:28部
ポリウレタン樹脂:58部
銅フタロシアニン系分散剤:2.5部
ニッポラン2301(日本ポリウレタン工業社製):0.5部
メチルイソブチルケトン:0.3部
メチルエチルケトン:860部
トルエン:240部
【0147】
上記成分をロールミルで予備混練した後サンドミルで分散し、ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製バイロン500)4部、ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製コロネート3041)14部、α−Al23(住友化学社製)5部を添加、攪拌濾過してバックコート層塗布液を調製した。
【0148】
(4)磁気テープの作製
上記の非磁性層塗布液を、乾燥後の厚さが1.0μmになるように、さらにその直後にその上に磁性層の厚さが0.1μmになるように、厚さ5μmで磁性層塗布面の中心線表面粗さが0.001μmの、予めコロナ処理を施してベース表面を親水性にしたポリエチレンナフタレート樹脂支持体上に同時重層塗布を行い、両層がまだ湿潤状態にあるうちに0.5T(5000G)の磁力をもつコバルト磁石と0.4T(4000G)の磁力をもつソレノイドにより配向させ乾燥させた。その後、予めコロナ処理を施した、上記ベース表面とは反対の面に上記のバックコート層用塗布液を乾燥後の厚さが0.5μmとなるように塗布した後、金属ロールから構成される7段のカレンダーで温度100℃にて分速80m/minで処理を行い、1/2mm幅にスリットして磁気テープを作製した。
【0149】
(実施例1−2〜1−10)
磁性層および非磁性層に使用するアクリル系共重合体の種類を表1に示したものに代えたほかは、実施例1−1と同様にして実施例1−2〜1−10の磁気テープを作製した。
【0150】
(比較例1−1)
磁性層および非磁性層に使用するアクリル系共重合体の種類を特開平8−67855号公報の実施例1に記載のものに代えたほかは、実施例1−1と同様にして比較例1−1の磁気テープを作製した。
【0151】
(比較例1−2)
磁性層および非磁性層に使用するアクリル系共重合体の種類を特開2004−295926号公報の実施例1に記載のものに代えたほかは、実施例1−1と同様にして比較例1−2の磁気テープを作製した。
【0152】
(比較例1−3)
磁性層および非磁性層に使用するアクリル系共重合体の種類を特開平6−111277号公報の実施例1に記載のもの代えたほかは、実施例1−1と同様にして比較例1−3の磁気テープを作製した。
【0153】
(比較例1−4)
磁性層および非磁性層に使用するアクリル系共重合体の種類を特開2005−310332号公報の実施例1に記載のものに代えたほかは、実施例1−1と同様にして比較例1−4の磁気テープを作製した。
【0154】
(比較例1−5〜1−7)
磁性層および非磁性層に使用するアクリル系共重合体の種類を表1に示したものに代えたほかは、実施例1−1と同様にして比較例1−5〜1−7の磁気テープを作製した。
【0155】
(実施例2−1)
(1)強磁性六方晶フェライト磁性層塗布液の調製
強磁性板状六方晶フェライト粉末:100部
酸素を除く組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9/0.2/1
Hc:160kA/m(2000Oe)
平均板径:20nm
平均板状比:2.7
BET比表面積:60m2/g
σs:46A・m2/kg(46emu/g)
アクリル系共重合体AP−1:12部
α−Al23(粒子サイズ0.1μm):8部
カーボンブラック(平均粒径:20nm):0.5部
シクロヘキサノン:110部
【0156】
上記成分をオープンニーダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液に下記の成分を加え撹拌した後、超音波処理し、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性層塗布液を調製した。
ブチルステアレート:2部
ステアリン酸:0.5部
メチルエチルケトン:50部
シクロヘキサノン:50部
トルエン:3部
ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製コロネート3041):5部
【0157】
実施例1−1と同様の方法で調製した非磁性層塗布液を、乾燥後の厚さが1.0μmになるように、さらにその直後にその上に上記磁性層塗布液を磁性層の厚さが0.1μmになるように、厚さ5μmで磁性層塗布面の中心線表面粗さが0.001μmの、予めコロナ処理を施してベース表面を親水性にしたポリエチレンナフタレート樹脂支持体上に同時重層塗布を行い、両層がまだ湿潤状態にあるうちに0.5T(5000G)の磁力をもつコバルト磁石と0.4T(4000G)の磁力をもつソレノイドにより配向させた。その後、予めコロナ処理を施した、上記ベース表面とは反対の面に実施例1−1と同様の方法で調製したバックコート層用塗布液を乾燥後の厚さが0.5μmとなるように塗布し、その後金属ロールから構成される7段のカレンダーで温度100℃にて分速80m/minで処理を行い、1/2mm幅にスリットして実施例2−1の磁気テープを作製した。
【0158】
(実施例2−2〜2−10)
磁性層および非磁性層に使用するアクリル系共重合体の種類を表2に示したものに代えたほかは、実施例2−1と同様にして実施例2−2〜2−10の磁気テープを作製した。
【0159】
(比較例2−1)
磁性層および非磁性層に使用するアクリル系共重合体の種類を特開平8−67855号公報の実施例1に記載のものに代えたほかは、実施例1−1と同様にして比較例1−1の磁気テープを作製した。
【0160】
(比較例2−2)
磁性層および非磁性層に使用するアクリル系共重合体の種類を特開2004−295926号公報の実施例1に記載のものに代えたほかは、実施例2−1と同様にして比較例2−2の磁気テープを作製した。
【0161】
(比較例2−3)
磁性層および非磁性層に使用するアクリル系共重合体の種類を特開平6−111277号公報の実施例1に記載のもの代えたほかは、実施例2−1と同様にして比較例2−3の磁気テープを作製した。
【0162】
(比較例2−4)
磁性層および非磁性層に使用するアクリル系共重合体の種類を特開2005−310332号公報の実施例1に記載のものに代えたほかは、実施例2−1と同様にして比較例2−4の磁気テープを作製した。
【0163】
(比較例2−5〜2−7)
磁性層および非磁性層に使用するアクリル系共重合体の種類を表2に示したものに代えたほかは、実施例2−1と同様にして比較例2−5〜2−7の磁気テープを作製した。
【0164】
[測定方法]
<テープの平均表面粗さ>
原子間力顕微鏡(AFM:DIGITAL INSTRUMENT社製のNANOSCOPE III)を用い、コンタクトモードで磁性層面について40μm×40μmの面積を測定し、中心線平均表面粗さ(Ra)を測定した。
【0165】
<電磁変換特性:SN比>
LTO−Gen4ドライブを用いて、記録トラック11.5μm、再生トラック幅5.3μm、線記録密度172kfciと86kfciの信号を記録し、再生信号をスペクトラムアナライザーで周波数分析し、172kfci信号記録時のキャリア信号の出力と、86kfci信号記録時のスペクトル全帯域の積分ノイズとの比をSN比とした。レファレンステープとして富士フイルム製LTO−Gen4テープを用いた。レファレンステープのS/N比を0dBとし、各テープのS/N比を相対値として求めた。S/N比が0dB以上であれば高密度記録用磁気記録媒体として優れた電磁変換特性を有すると判断することができる。
【0166】
<テープ表面にある汚れ量>
Al23/TiC製の7mm×7mmの断面を有する角柱バーのエッジに磁性層面を接触させるように150度の角度でテープを渡し、荷重100g、秒速6mの条件で100mの長さを1パス摺動させて、角柱バーのエッジ部分を顕微鏡にて観察し、汚れの付着状態を評価した。評価は官能評価とし、10段階評価した。10は汚れが少なく、1は最も汚れが多い。
上記方法により評価される汚れは、主に磁性層表面の削れに起因して発生し、評価結果の値が小さいほど磁性層表面が削れ走行耐久性に乏しい。評価値8以上であれば、汚れ(磁性層表面の削れ)が少なく走行耐久性が良好と判定することができる。
【0167】
【表1】

【0168】
【表2】

【0169】
評価結果
表1および表2に示す結果から、以下の点が確認できる。
(1)本発明の結合剤を用いて形成した実施例の磁気テープは、高い表面平滑性を有していた。これにより、本発明の結合剤によって微粒子粉末を高度に分散できたことが確認できる。この結果、実施例の磁気テープは優れた電磁変換特性を示した。
(2)実施例の磁気テープは、ビニル系共重合体(本発明の結合剤)により、ポリウレタン樹脂を併用することなく優れた走行耐久性を実現することができた。
(3)これに対し、従来、磁気記録媒体用結合剤として使用されていたビニル系共重合体を使用した比較例1−1〜1−4、比較例2−1〜2−4の磁気テープは、表面平滑性、電磁変換特性、走行耐久性のすべての評価項目において、実施例の磁気テープより劣る結果を示した。
(4)構造単位[1]のみを有する共重合体を使用した比較例1−5および比較例2−5、構造単位[2]のみを有する共重合体を使用した比較例1−6および比較例2−6の磁気テープが、表面平滑性、電磁変換特性、走行耐久性のすべての評価項目において、実施例の磁気テープより劣る結果を示したこと、ならびに、構造単位[1]、[3]を含むが構造単位[2]を含まない項重合体を使用した比較例1−7および比較例2−7の磁気テープが、走行耐久性は実施例と同等の結果を示したものの実施例と比べて表面平滑性および電磁変換特性が劣っていたことから、構造単位[1]〜[3]を組み合わせることにより、電磁変換特性と走行耐久性の両立が可能となることが確認できる。
以上の結果から、本発明の結合剤は、優れた電磁変換特性と走行耐久性とを兼ね備えた磁気記録媒体を作製なビニル系共重合体であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の磁気記録媒体は、優れた電磁変換特性と走行耐久性を両立することができるため、高い信頼性が求められるバックアップテープ等として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[1]で表される構造単位、一般式[2]で表される構造単位、および一般式[3]で表される構造単位を含むビニル系共重合体であることを特徴とする磁気記録媒体用結合剤。
【化1】

[一般式[1]中、R1は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、Yは脂環式の環状基を表す。]
【化2】

[一般式[2]中、R2は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、L2は単結合または2価の連結基を表し、Zは炭素数8以上50以下の炭化水素基を表す。]
【化3】

[一般式[3]中、R3は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、L3は単結合または2価の連結基を表す。]
【請求項2】
一般式[3]で表される構造単位は、下記一般式[6]で表される構造単位を含む請求項1に記載の磁気記録媒体用結合剤。
【化4】

[一般式[6]中、R31は水素原子またはメチル基を表し、X3は−O−、−S−または−N(R33)−で表される2価の連結基を表し、R33は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1以上8以下のアルキル基を表し、R32は置換基を有してもよい炭素数2以上8以下のアルキレン基または該アルキレン基が連結基を介して複数連結した2価の基を表す。]
【請求項3】
一般式[1]で表される構造単位は、下記一般式[4]で表される構造単位を含む請求項1または2に記載の磁気記録媒体用結合剤。
【化5】

[一般式[4]中、R11は水素原子またはメチル基を表し、X1は−O−、−S−または−N(R12)−で表される2価の連結基を表し、R12は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1以上8以下のアルキル基を表し、Y1は脂環式の縮合環基を表す。]
【請求項4】
一般式[2]で表される構造単位は、下記一般式[5]で表される構造単位を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用結合剤。
【化6】

[一般式[5]中、R21は水素原子またはメチル基を表し、X2は−(O)m1−、−(S)m2−または−{N(R22)}m3−で表される2価の連結基を表し、m1、m2およびm3は、それぞれ独立に1以上の整数を表し、R22は置換基を有してもよい炭素数1以上8以下のアルキル基を表し、nは12以上30以下の整数を表す。]
【請求項5】
前記ビニル系共重合体は、スルホン酸(塩)基、カルボン酸(塩)基、およびリン酸(塩)基からなる群から選択される少なくとも一種の極性基を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用結合剤。
【請求項6】
前記ビニル系共重合体は、一般式[1]で表される構造単位を5モル%以上75モル%以下、一般式[2]で表される構造単位を5モル%以上75モル%以下、一般式[3]で表される構造単位を5モル%以上80モル%以下含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用結合剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の結合剤を含むことを特徴とする磁気記録媒体用組成物。
【請求項8】
ポリイソシアネートを更に含む請求項7に記載の磁気記録媒体用組成物。
【請求項9】
非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
前記結合剤は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の結合剤を構成成分として含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項10】
非磁性支持体上に非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末および結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
前記磁性層に含まれる結合剤および/または前記非磁性層に含まれる結合剤は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の結合剤を構成成分として含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項11】
前記結合剤は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の結合剤とポリイソシアネートとの反応生成物を含む請求項9または10に記載の磁気記録媒体。
【請求項12】
前記強磁性粉末は、平均板径が10nm以上50nm以下の六方晶フェライト粉末である請求項9〜11のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項13】
前記強磁性粉末は、平均長軸長が20nm以上50nm以下の強磁性金属粉末である請求項9〜11のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。

【公開番号】特開2011−76644(P2011−76644A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223628(P2009−223628)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】