説明

磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末及び磁気記録媒体

【課題】 本発明は、粒子同士のスタッキングが抑制されていることにより、ビヒクル中への分散性に優れると共に、低い体積固有抵抗値を有する磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末を提供する。
【解決手段】 マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆粒子表面にカーボンブラックが付着している複合磁性微粒子粉末であって、前記カーボンブラックの付着量が前記マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末100重量部に対して10重量部を超えて25重量部以下である磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子同士のスタッキングが抑制されていることにより、ビヒクル中への分散性に優れると共に、低い体積固有抵抗値を有する磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末を提供する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録技術は、従来、オーディオ用、ビデオ用、コンピューター用等をはじめとしてさまざまな分野で幅広く用いられている。近年、機器の小型軽量化、記録の長時間化及び記録容量の増大等が求められており、記録媒体に対しては、記録密度のより一層の向上が望まれている。
【0003】
従来の磁気記録媒体に対してより高密度記録を行うためには、高いC/N比が必要であり、ノイズ(N)が低く、再生出力(C)が高いことが求められている。近年では、これまで用いられていた誘導型磁気ヘッドに替わり、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)や巨大磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)等の高感度ヘッドが開発されており、これらは誘導型磁気ヘッドに比べて再生出力が得られやすいことから、高いC/N比を得るためには、出力を上げるよりもノイズを低減する方が重要となってきている。
【0004】
磁気記録媒体のノイズは、粒子性ノイズと磁気記録媒体の表面性に起因して発生する表面性ノイズに大別される。粒子性ノイズの場合、粒子サイズの影響が大きく、微粒子であるほどノイズ低減に有利であることから、磁気記録媒体に用いる磁性粒子粉末の粒子サイズはできるだけ小さいことが必要となる。
【0005】
一般に、微粒子、且つ、高保磁力値を有する磁性粒子粉末としては、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末及びマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末等が知られており、マグネトプランバイト型フェライトは針状の金属磁性粒子粉末に比べ短波長領域で高い出力が得られるという特徴があり、再生にMRヘッドやGMRヘッドを用いた高密度記録の磁気記録媒体用磁性粉末として非常に有望である。
【0006】
しかしながら、マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末は一般に板状構造を有しているため、面と面が重なり合うスタッキングを起こしやすいことが知られており、粒子の微粒子化による表面エネルギーの増加によってスタッキングはより顕著に起こるため、微粒子のマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末はビヒク中への分散が難しく、良好な表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることが困難である。
【0007】
一方、表面性ノイズの場合、磁気記録媒体の表面平滑性を改良することが重要であり、磁性粒子粉末の磁性塗料中における分散性や磁気記録層中における配向性及び充填性の向上が必要不可欠である。しかしながら、上述した通り、マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末は板状構造を有しているため、スタッキングを起こしやすく、良好な表面平滑性を有する磁気記録媒体を得ることは困難である。
【0008】
また、マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末は安定な酸化物であることに起因して粒子内部の電子移動が少ないため、1.0×10Ω・cm以上の高い体積固有抵抗値を有することが知られており、これを磁性粒子粉末として用いた磁気記録媒体は、表面電気抵抗値が1.0×1012Ω/cmを超えて高くなるという欠点を有している。
【0009】
表面電気抵抗値が高い磁気記録媒体は、静電的な帯電量の増加を招来することともあいまって、磁気記録媒体の製造時や使用時に、磁気記録媒体の切断くずや塵埃等が磁気記録媒体表面に付着し、その結果、ドロップアウトが増加するという問題がある。そこで、磁気記録媒体の表面電気抵抗値を、1010Ω/cm以下、殊に、10Ω/cm以下に低下させるために体積固有抵抗値ができるだけ低いマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末が強く要求されている。
【0010】
マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末を用いた磁気記録媒体の表面電気抵抗値を低くする方法として、板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末の粒子表面にポリシロキサンを被覆し、該ポリシロキサン被覆の少なくとも1部に前記板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末100重量部に対してカーボンブラックが0.5〜10重量部付着している板状黒色複合マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末(特許文献1)が開示されている。
【0011】
また、ビヒクル中への分散性に優れた磁気記録媒体の非磁性下地層用複合非磁性粒子粉末として、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末の粒子表面に顔料誘導体によってあらかじめ処理されたカーボンブラックが付着していることを特徴とする複合非磁性粒子粉末(特許文献2)が開示されている。
【0012】
【特許文献1】特開2001−15317号公報
【特許文献2】特開2004−288325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
体積固有抵抗値が低く、且つ、粒子同士のスタッキングが抑制されたマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、このような諸特性を十分満たすマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末は未だ得られていない。
【0014】
即ち、前出特許文献1には、板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末の粒子表面にカーボンブラックが該板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末100重量部に対して0.5〜10重量部付着している板状黒色複合マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末が記載されているが、カーボンブラックの付着量が10重量部以下では微細なマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末のスタッキングを抑制するには不十分であり、ビヒクル中への分散が困難であると共に、十分に体積固有抵抗値を低減することもできない。また、マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末のBET比表面積値が65m/g未満の場合、顔料誘導体によって処理されていないカーボンブラックをマグネトプランバイト型フェライト粒子表面に10重量部を超えて付着させることは困難である。
【0015】
また、特許文献2には、ヘマタイト粒子粉末又は含水酸化鉄粒子粉末の粒子表面に顔料誘導体があらかじめ処理されたカーボンブラックが付着している複合非磁性粒子粉末が記載されているが、顔料誘導体の効果でビヒクル中への分散性改善効果は期待できるが、板状ではないためスタッキング抑制効果を想定できるものではない。
【0016】
そこで、本発明は、体積固有抵抗値が低いと共に、粒子同士のスタッキングが抑制されていることにより、ビヒクル中への分散性に優れたマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末を得ることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0018】
即ち、本発明は、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆粒子表面に顔料誘導体によって処理されているカーボンブラックが付着している複合磁性微粒子粉末であって、前記カーボンブラックの付着量が前記マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末100重量部に対して10重量部を超えて25重量部以下であることを特徴とする磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末である(本発明1)。
【0019】
また、本発明は、BET比表面積値が65m/g以上であるマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆粒子表面にカーボンブラックが付着している複合磁性微粒子粉末であって、前記カーボンブラックの付着量が前記マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末100重量部に対して10重量部を超えて25重量部以下であることを特徴とする磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末である(本発明2)。
【0020】
また、本発明は、BET比表面積値が65m/g以上であるマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆粒子表面に顔料誘導体によって処理されているカーボンブラックが付着している複合磁性微粒子粉末であって、前記カーボンブラックの付着量が前記マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末100重量部に対して10重量部を超えて25重量部以下であることを特徴とする磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末である(本発明3)。
【0021】
また、本発明は、マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末の粒子表面が、あらかじめアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも一種からなる中間被覆物によって被覆されていることを特徴とする本発明1乃至3のいずれかに記載の磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末である(本発明4)。
【0022】
また、本発明は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む非磁性下地層及び該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記磁性粒子粉末が本発明1乃至4のいずれかに記載の複合磁性微粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体である(本発明5)。
【0023】
また、本発明は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む非磁性下地層及び該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層及び、前記非磁性支持体の他方の面に形成されるバックコート層からなる磁気記録媒体において、前記磁性粒子粉末が本発明1乃至4のいずれかに記載の複合磁性微粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体である(本発明6)。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末は、粒子同士のスタッキングが抑制されていることによりビヒクル中への分散性に優れていると共に、体積固有抵抗値が低いため、高密度磁気記録媒体の磁性粒子粉末として好適である。
【0025】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、上述の複合磁性微粒子粉末を磁気記録媒体の磁性粒子粉末として用いることにより、良好な表面平滑性が得られると共に、表面電気抵抗値を低減することができるため、高密度磁気記録媒体として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の構成をより詳しく説明すれば、次の通りである。
【0027】
先ず、本発明に係る磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末について述べる。
【0028】
本発明に係る磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末は、芯粒子であるマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に、該表面改質剤被覆粒子表面に、カーボンブラックが前記マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末100重量部に対して10重量部を超えて25重量部以下付着している複合磁性微粒子からなる。
【0029】
本発明における芯粒子粉末であるマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末は、Ba、Sr又はBa及びSrを含有するマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末並びにこれらにCo、Ni、Zn、Mn、Mg、Ti、Sn、Zr、Cu、Mo、La、V、Si、S、Sc、Sb、Y、Rh、Pd、Nd、Nb、B、P、Ge、Al、Ag、Au、Ru、Pr、Bi、W、Re、Te等の元素を1種又は2種以上を含有させたマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末等である。
【0030】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の平均粒子径(板面径)は、5〜150nmが好ましく、より好ましくは7〜120nm、更により好ましくは10〜100nmである。
【0031】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の平均粒子径が150nmを超える場合には、得られる複合磁性微粒子粉末もまた粗大粒子となり、これを用いて磁気記録層を形成した場合には、塗膜の表面平滑性が損なわれやすい。5nm未満の場合には、粒子の微粒子化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による均一な被覆処理及びカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックによる均一な付着処理が困難となる。
【0032】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の平均厚みは0.3〜20nmが好ましく、より好ましくは0.5〜17nm、更により好ましくは0.7〜15nmである。
【0033】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の板状比(平均粒子径と平均厚みとの比)(以下、「板状比」という。)は1.5〜20.0が好ましく、より好ましくは1.75〜15.0、更により好ましくは2.0〜10.0である。板状比が20.0を超える場合には、粒子間のスタッキングが多くなり、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による均一な被覆処理及びカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックによる均一な付着処理が困難となる。1.5未満の場合には、得られる磁気記録媒体の塗膜強度が小さくなる。
【0034】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末のBET比表面積値は45〜200m/gが好ましく、より好ましくは50〜150m/gであり、更により好ましくは55〜100m/gである。
【0035】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の体積固有抵抗値は、前述した通り、通常1.0×10Ω・cm以上である。
【0036】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の磁気特性は、保磁力値が39.8〜318.3kA/mが好ましく、より好ましくは51.7〜318.3kA/mであり、飽和磁化値が40〜70Am/kgが好ましく、より好ましくは45〜70Am/kgである。
【0037】
本発明における表面改質剤としては、芯粒子であるマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末へカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックを付着できるものであれば何を用いてもよく、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、シラン系カップリング剤及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系などのカップリング剤、低分子あるいは高分子界面活性剤等が好適に用いられる。
【0038】
有機ケイ素化合物としては、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン及びデシルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トルフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン及びトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等のフ
ルオロアルキルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、変性ポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0039】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェートチタネート、テトラ(2,2ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0040】
アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0041】
ジルコネート系カップリング剤としては、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリボトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0042】
低分子系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホンコハク酸塩、アルキルアミン酢酸塩、アルキル脂肪酸塩等が挙げられる。高分子系界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸− マレイン酸塩コポリマー、オレフィン− マレイン酸塩コポリマー等が挙げられる。
【0043】
カーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの脱離率及び付着効果を考慮すれば、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤を用いることが好ましい。
【0044】
表面改質剤による被覆量は、表面改質剤被覆芯粒子粉末に対してC換算で0.01〜20.0重量%が好ましい。表面改質剤を0.01〜20.0重量%の範囲で処理することにより、カーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの脱離率が10%以下である複合磁性微粒子粉末を得ることができる。より好ましくは0.02〜15.0重量%であり、更に好ましくは0.03〜10.0重量%である。
【0045】
本発明における顔料誘導体としては、有機顔料の顔料骨格中に置換基を導入して得られた化合物を用いることができる。
【0046】
主骨格となる有機顔料としては、フタロシアニン系顔料、キクリドン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、インジゴ系、ジオキサジン系、キノフタロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系等の縮合多環系顔料及びアゾ系顔料等が挙げられる。
【0047】
顔料誘導体の置換基としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、アルキルアミノ基、フタルイミド基等が挙げられる。具体的には、−SOM、−OSOM、−COOM、−P=O(OM)(式中、Mは水素原子あるいはリチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属を示す)、−NR、−NRの末端基を有する側鎖型アミン、>NRで表される主鎖型アミン(式中、R、R、Rは水素原子あるいは炭化水素基を表し、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン元素イオンあるいは無機・有機イオンを表す)等である。
【0048】
本発明における顔料誘導体としては、銅フタロシアニン系誘導体及びアゾ系顔料誘導体である、Solsperse 5000(商品名)、Solsperse 12000(商品名)、Solsperse 22000(商品名)(以上、日本ルーブリゾルブ株式会社製)、EFKA 6745(商品名)、EFKA 6750(商品名)(以上、エフカ アディティブズ製)、BYK2100(以上、ビックケミー株式会社製)等の市販品を好適に使用することができる。
【0049】
カーボンブラックは、市販のファーネスブラック、チャンネルブラック等を使用することができる。
【0050】
カーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの付着量は、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末100重量部に対して10重量部を超えて25重量部以下である。
【0051】
カーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの付着量が10重量部以下の場合には、カーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの付着量が少ないため、十分に体積固有抵抗値を低減することができないと共に、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末のスタッキングを抑制するには不十分であり、ビヒクル中への分散性が低下するため、表面が平滑な磁気記録媒体を得ることが困難となる。
【0052】
25重量部を超える場合には、得られる複合磁性微粒子粉末は低い体積固有抵抗値を有しているが、カーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの付着量が多いため、カーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックが複合磁性微粒子粉末の粒子表面から脱離しやすくなり、その結果、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が低下する場合がある。
【0053】
なお、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末のBET比表面積値が65m/g未満の場合、顔料誘導体によって処理されていないカーボンブラックを、マグネトプランバイト型フェライト微粒子表面に10重量部を超えて付着させることが困難である。
【0054】
本発明に係る複合磁性微粒子粉末の粒子形状や粒子サイズは、芯粒子であるマグネトプランバイト型フェライト微粒子の粒子形状や粒子サイズに大きく依存し、芯粒子に相似する粒子形態を有している。
【0055】
即ち、本発明に係る複合磁性微粒子粉末の平均粒子径は5〜150nmであり、より好ましくは7〜120nm、更に好ましくは10〜100nmである。
【0056】
複合磁性微粒子粉末の平均粒子径が150nmを超える場合には、これを用いて磁気記録層を形成した場合には、塗膜の表面平滑性が損なわれやすい。5nm未満の場合には、粒子の微粒子化による分子間力の増大により凝集を起こしやすく、その結果、粗大粒子が生成し磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への均一な分散が困難となる。
【0057】
本発明に係る複合磁性微粒子粉末の平均厚みは0.3〜20nmが好ましく、より好ましくは0.5〜17nm、更により好ましくは0.7〜15nmである。
【0058】
複合磁性微粒子粉末の平均厚が20nmを超える場合には、得られる複合磁性微粒子粉末もまた粗大粒子となり、これを用いて磁気記録層を形成した場合には、塗膜の表面平滑性が損なわれやすい。0.3nm未満の場合には、粒子の微粒子化による分子間力の増大により凝集を起こしやすく、その結果、粗大粒子が生成し磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への均一な分散が困難となる。
【0059】
本発明に係る複合磁性微粒子粉末の板状比は1.5〜20.0が好ましく、より好ましくは1.75〜15.0、更により好ましくは2.0〜10.0である。板状比が20.0を超える場合には、粒子間のスタッキングが多くなり、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が低下すると共に、粘度が増加する場合があるため好ましくない。板状比が1.5未満の場合には、得られる磁気記録媒体の塗膜強度が小さくなる。
【0060】
本発明に係る複合磁性微粒子粉末のBET比表面積値は45〜200m/gが好ましく、より好ましくは50〜150m/g、更により好ましくは55〜100m/gである。BET比表面積値が45m/g未満の場合には、複合磁性微粒子粉末が粗大であるため、これを用いて得られた磁気記録媒体の表面平滑性が低下し、それに起因して出力も向上し難くなる。また、短波長領域における飽和磁化値や保磁力値が低下すると共に粒子性ノイズが増大するため好ましくない。BET比表面積値が200m/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が低下する。
【0061】
本発明に係る複合磁性微粒子粉末の体積固有抵抗値は、1.0×10Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは5.0×10Ω・cm以下、更により好ましくは1.0×10Ω・cm以下である。体積固有抵抗値が1.0×10Ω・cmを超える場合は、これを用いて得られる磁気記録媒体の表面電気抵抗値を十分に低減することが困難となる。
【0062】
本発明に係る複合磁性微粒子粉末のカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの脱離率は20%以下が好ましく、より好ましくは10%以下である。カーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの脱離率が20%を超える場合には、磁性塗料の製造時において、脱離した顔料誘導体処理カーボンブラックによりビヒクル中での均一な分散が阻害される場合がある。
【0063】
本発明に係る複合磁性微粒子粉末の樹脂吸着強度は、70%以上であることが好ましく、より好ましくは72%以上であり、更により好ましくは74%以上である。樹脂吸着強度が70%未満の場合、分散性が低下し、塗膜の表面平滑性に悪影響を与えるために好ましくない。
【0064】
本発明に係る複合磁性微粒子粉末の磁気特性は、保磁力値が39.8〜318.3kA/mが好ましく、より好ましくは51.7〜318.3kA/mであって、飽和磁化値は40〜70Am/kgが好ましく、より好ましくは45〜70Am/kgである。
【0065】
本発明に係る複合磁性微粒子粉末は、必要により、芯粒子であるマグネトプランバイト型フェライト粒子粉末の粒子表面をあらかじめ、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上の化合物(以下、「中間被覆物」という。)で被覆しておいてもよく、中間被覆物で被覆しない場合に比べ、顔料誘導体処理カーボンブラックの脱離率をより低減することができるため、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性がより向上する。
【0066】
中間被覆物による被覆量は、中間被覆物が被覆された複合磁性微粒子粉末に対してAl換算、SiO換算又はAl換算量とSiO換算量との総和で0.01〜20重量%が好ましい。
【0067】
中間被覆物による被覆量が0.01重量%未満である場合には、中間被覆物を被覆したことによるカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの脱離率低減効果が得られないため、製造時におけるビヒクルへの分散性改良効果が得られない。
【0068】
20重量%を超える場合には、中間被覆物を被覆したことによるカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの脱離率低減効果により、複合磁性微粒子粉末の磁性塗料の製造時におけるビヒクルへの分散性改良効果が十分に得られるため、必要以上に被覆する意味がない。また、非磁性成分である中間被覆物の増加により複合磁性微粒子粉末の磁気特性が損なわれる。
【0069】
本発明に係る中間被覆物で被覆されている複合磁性微粒子粉末は、中間被覆物で被覆されていない本発明に係る複合磁性微粒子粉末の場合とほぼ同程度の粒子サイズ、幾何標準偏差値、BET比表面積値、体積固有抵抗値、及び磁気特性を有しているとともに、より改善されたカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの脱離率を有している。
【0070】
次に、本発明に係る磁気記録媒体について述べる。
【0071】
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層及び該非磁性下地層上に形成された複合磁性微粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層とからなる。また、必要に応じて、非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面にバックコート層を形成させてもよい。殊に、コンピューター記録用のバックアップテープの場合には、巻き乱れの防止や走行耐久性向上の点から、バックコート層を設けることが好ましい。
【0072】
本発明における非磁性支持体としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリスルフォン、セルローストリアセテート、ポリベンゾオキサゾール等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等金属の箔や板及び各種の紙を使用することができる。
【0073】
本発明における非磁性下地層は、非磁性粒子粉末及び結合剤樹脂とからなる。また、必要に応じて、磁気記録媒体の製造に通常用いられている潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
【0074】
非磁性下地層に用いられる非磁性粒子粉末としては、アルミナ、ヘマタイト、ゲータイト、酸化チタン、シリカ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化亜鉛、チッ化珪素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等を、単独又は組合せて用いることができる。好ましくはヘマタイト、ゲータイト、酸化チタンであり、より好ましくはヘマタイトである。
【0075】
前記非磁性粒子粉末の粒子形状は、針状、紡錘状、米粒状、球状、粒状、多面体状、フレーク状、鱗片状及び板状等のいずれの形状であってもよい。粒子サイズは、好ましくは0.005〜0.30μmであり、より好ましくは0.010〜0.25μmである。また、必要により、粒子表面をアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上の化合物で被覆してもよく、化合物で被覆しない場合に比べ、非磁性塗料中での分散性を改善することができる。
【0076】
結合剤樹脂としては、磁気記録媒体の製造にあたって汎用されている熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化型樹脂等を単独又は組み合わせて用いることができる。
【0077】
帯電防止剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化スズ、酸化チタン−酸化スズ−酸化アンチモン等の導電性粉末及び界面活性剤等を用いることができる。帯電防止の他に、摩擦係数低減、磁気記録媒体の強度向上といった効果が期待できることから、帯電防止剤としては、カーボンブラックを用いることが好ましい。
【0078】
本発明における磁気記録層は、本発明に係る複合磁性微粒子粉末と結合剤樹脂とを含んでいる。また、必要に応じて、磁気記録媒体の製造に通常用いられている潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
【0079】
結合剤樹脂としては、前記非磁性下地層を作製するために用いた結合剤樹脂を使用することができる。
【0080】
本発明におけるバックコート層中には、結合剤樹脂と共に、バックコート層の表面電気抵抗値及び光透過率低減、並びに強度向上を目的として、帯電防止剤及び無機粒子粉末を含有させることが好ましい。また、必要に応じて、通常の磁気記録媒体の製造に用いられる潤滑剤、研磨剤等が含まれていてもよい。
【0081】
結合剤樹脂及び帯電防止剤としては、前記非磁性下地層、及び磁気記録層を作製するために用いた結合剤樹脂及び帯電防止剤を使用することができる。
【0082】
無機粉末としては、アルミナ、ヘマタイト、ゲータイト、酸化チタン、シリカ、酸化クロム、酸化セリウム、酸化亜鉛、チッ化珪素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。粒子サイズは、好ましくは0.005〜1.0μmであり、より好ましくは0.010〜0.5μmである。
【0083】
本発明に係る磁気記録媒体は、磁性粒子粉末として、中間被覆物によって被覆されていないマグネトプランバイト型フェライト粒子を芯粒子として用いた本発明に係る複合磁性微粒子粉末を用いた場合には、保磁力値が39.8〜318.3kA/m、好ましくは51.7〜318.3kA/m、保磁力分布SFD(Switching Field Distribution)が、0.70以下、好ましくは0.67以下、より好ましくは0.65以下であって、塗膜の光沢度が165〜300%、好ましくは170〜300%、の表面粗度Raが12.0nm以下、好ましくは2.0〜11.0nm、より好ましくは2.0〜10.0nm、表面電気抵抗値が1×10Ω/cm以下、好ましくは7.5×10Ω/cm以下、より好ましくは5.0×10Ω/cm以下である。
【0084】
本発明に係る磁気記録媒体は、磁性粒子粉末として、中間被覆物によって被覆されているマグネトプランバイト型フェライト微粒子を芯粒子として用いた本発明に係る複合磁性微粒子粉末を用いた場合には、保磁力値が39.8〜318.3kA/m、好ましくは51.7〜318.3kA/m、保磁力分布SFDが、0.70以下、好ましくは0.67以下、より好ましくは0.65以下であって、塗膜の光沢度が170〜300%、好ましくは175〜300%、塗膜の表面粗度Raが11.5nm以下、好ましくは2.0〜10.5nm、より好ましくは2.0〜9.5nm、表面電気抵抗値が1×10Ω/cm以下、好ましくは7.5×10Ω/cm以下、より好ましくは5.0×10Ω/cm以下である。
【0085】
次に、本発明に係る複合磁性微粒子粉末の製造法について述べる。
【0086】
本発明に係る磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末は、芯粒子であるマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末と表面改質剤とを混合し、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面を表面改質剤によって被覆し、次いで表面改質剤によって被覆されたマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末とカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックとを混合することによって得ることができる。
【0087】
本発明における芯粒子であるマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末は、従来公知の製造方法によって得ることができる。
【0088】
カーボンブラックへの顔料誘導体の処理方法としては、二次凝集したカーボンブラックをほぐしながら顔料誘導体をカーボンブラックに表面処理できればいずれの方法でもよく、例えば、超音波処理法などの湿式法や、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機等を用いた乾式法が挙げられる。
【0089】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による被覆は、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末と表面改質剤又は表面改質剤の溶液とを機械的に混合攪拌したり、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末に表面改質剤の溶液又は表面改質剤を噴霧したりしながら機械的に混合攪拌すればよい。
【0090】
尚、表面改質剤を均一にマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面に被覆するためには、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の凝集をあらかじめ粉砕機を用いて解きほぐしておくことが好ましい。
【0091】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末と表面改質剤との混合攪拌やカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックと粒子表面に表面改質剤が被覆されているマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末との混合攪拌をするための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール形混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることができる。本発明の実施にあたっては、ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
【0092】
上記ホイール型混練機としては、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。上記ボール型混練機としては、振動ミル等がある。上記ブレード型混練機としては、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウターミキサー等がある。上記ロール型混練機としては、エクストルーダー等がある。
【0093】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面に表面改質剤を被覆した後、カーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックを添加し、混合攪拌して表面改質剤被覆マグネトプランバイト型フェライト微粒子表面にカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックを付着させる。
【0094】
表面改質剤被覆マグネトプランバイト型フェライト微粒子表面にカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックを付着させた後、必要により更に、乾燥乃至加熱処理を行ってもよい。乾燥乃至加熱処理を行う場合の加熱温度は、通常40〜80℃が好ましく、より好ましくは50〜70℃であり、加熱時間は、10分〜6時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
【0095】
尚、表面改質剤としてアルコキシシラン又はフルオロアルキルシランを用いた場合、これらの工程を経ることにより、最終的にはアルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物又はフルオロアルキルシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物となって被覆されている。
【0096】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末は、必要により、表面改質剤との混合攪拌に先立って、あらかじめ、マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末の粒子表面をアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる1種又は2種以上の化合物からなる中間被覆物で被覆しておいてもよい。
【0097】
中間被覆物による被覆は、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末を分散して得られる水懸濁液に、アルミニウム化合物、ケイ素化合物又は当該両化合物を添加して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面に、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる1種又は2種以上の化合物からなる中間被覆物を被着し、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を施してもよい。
【0098】
アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩等が使用できる。
【0099】
ケイ素化合物としては、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等が使用できる。
【0100】
次に、本発明に係る磁気記録媒体の製造法について述べる。
【0101】
非磁性下地層、磁気記録層、及びバックコート層の形成にあたって用いる溶剤としては、磁気記録媒体に汎用されているアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びテトラヒドロフラン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル及び酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル及びジオキサン等のグリコールエーテル類及びその混合物等を使用することができる。
【0102】
非磁性下地層、磁気記録層、バックコート層は、各層を構成する成分及び溶剤を一般に使用される混練機及び分散機により混練・分散処理を行い、各塗料を作製する。該各塗料を用いて、非磁性支持体上の一面に非磁性下地層、磁気記録層の順に塗布、乾燥後、カレンダー処理を行う。その際の塗布方法としては、磁性層と非磁性層をほぼ同時に塗布するWet on Wet法でも、非磁性下地層を塗布・乾燥後、その上に磁気記録層を塗布するWet on Dry法のどちらでもよい。また、必要により、バックコート層を設ける場合には、非磁性下地層及び磁気記録層とは反対面の非磁性支持体上にバックコート層用塗料を塗布、乾燥後、カレンダー処理を行い、磁気記録媒体を得る。
【0103】
<作用>
本発明において最も重要な点は、本発明に係る複合磁性微粒子粉末は、体積固有抵抗値が低く、且つ、ビヒクル中での分散性に優れているという事実である。
【0104】
本発明に係る複合磁性微粒子粉末の体積固有抵抗値が低く、且つ、ビヒクル中での分散性に優れている理由について、本発明者は、カーボンブラックをマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末に対して10重量部を超える量処理できたことにより、スタッキングしやすい板状粒子相互間の接触が効果的に抑制されると共に、樹脂−磁性粒子間に化学結合が強固に形成され、樹脂吸着強度が高くなったために、機械的応力による樹脂の脱離量が低減されたためと考えている。
【0105】
本発明に係る複合磁性微粒子粉末が低い体積固有抵抗値を有する理由について、本発明者は、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面に、導電性に優れたカーボンブラックを10重量部を超えて均一且つ緻密に付着することができたことによるものと考えている。
【0106】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、表面電気抵抗値をより低減することができると共に、良好な表面平滑性を有している。
【0107】
本発明に係る磁気記録媒体が、低い表面電気抵抗値を有すると共に、良好な表面平滑性を有している理由として、本発明者は、上述の低い体積固有抵抗値を有する複合磁性微粒子粉末を磁気記録媒体の磁性粒子粉末として用いることにより、磁性塗料中へのカーボンブラックの添加量を従来に比べて低減しても磁気記録媒体の表面電気抵抗値を低減できたと共に、磁性塗料中における分散性が悪いカーボンブラックの添加量を低減することができたため、表面平滑性に優れた磁気記録媒体を得ることができたものと考えている。
【実施例】
【0108】
以下に、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0109】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末及び複合磁性微粒子粉末の平均粒子径及び平均厚さ、並びにカーボンブラックの平均粒子径は、電子顕微鏡写真に示される粒子約500個について粒子径、厚さをそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0110】
板状比は、平均粒子径と平均厚さとの比で示した。
【0111】
比表面積はBET法により測定した値で示した。
【0112】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末及び複合磁性微粒子粉末の粒子内部や粒子表面に存在するAl量、Si量、各種置換元素量並びに有機ケイ素化合物に含有されるSi量のそれぞれは「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0113】
複合磁性微粒子粉末に付着しているカーボンブラック量もしくは顔料誘導体処理カーボンブラック量は、「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定することにより求めた。
【0114】
カーボンブラック粒子表面への顔料誘導体処理の確認は、「フーリエ変換赤外分光光度計 FTIR−8700」(株式会社島津製作所)を用い拡散反射法によって行った。通常、未処理のカーボンブラックは赤外光を吸収してしまうために赤外領域では吸収スペクトルをもたないが、粒子表面に有機物を処理することにより、該有機物の骨格及び官能基由来の吸収スペクトルを示すことから、顔料誘導体処理を行うことにより、顔料誘導体とほぼ同じ吸収スペクトルを観察できるかどうかによって判定を行った。
【0115】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末及び複合磁性微粒子粉末の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM SSM−5−15」(東英工業株式会社製)を用いて外部磁場1193.7kA/m(15kOe)の条件で測定した。
【0116】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末及び複合磁性微粒子粉末の体積固有抵抗値は、まず、測定試料0.5gを測り取り、成形器の中に入れて電極の間にセットし、低抵抗の粉体は「抵抗器 3541」(日置電機株式会社製)を用いて、高抵抗の粉体は「ハイレジスタンスメータ 4339B」(ヒューレット・パッカード株式会社製)を用いて、2.94×10Pa(30Kg/cm)まで加圧しながら抵抗値R(Ω)を測定した。
【0117】
次いで、被測定(円柱状)試料の上面の面積A(cm)と厚みt(cm)を測定し、下記数1にそれぞれの測定値を挿入して、体積固有抵抗値(Ω・cm)を求めた。
【0118】
<数1>
体積固有抵抗値(Ω・cm)=R×(A/t)
【0119】
複合磁性微粒子粉末に付着しているカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの脱離率(%)は、下記の方法により求めた値で示した。カーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの脱離率が0%に近いほど、複合磁性微粒子粉末の粒子表面からのカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの脱離量が少ないことを示す。
【0120】
複合磁性微粒子粉末3gとエタノール40mlを50mlの沈降管に入れ、20分間超音波分散を行った後、120分静置し、比重差によって複合磁性微粒子粉末と脱離したカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックを分離した。次いで、この複合磁性微粒子粉末に再度エタノール40mlを加え、更に20分間超音波分散を行った後120分静置し、複合磁性微粒子粉末と脱離したカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックを分離した。この複合磁性微粒子粉末を100℃で1時間乾燥させ、前述の「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定し、下記数2に従って求めた値をカーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの脱離率(%)とした。
【0121】
<数2>
カーボンブラックもしくは顔料誘導体処理カーボンブラックの脱離率(%)=[(Wa−We)/Wa]×100
Wa:複合磁性微粒子粉末のカーボンブラックもしくは誘導体処理カーボンブラック付着量
We:脱離テスト後の複合磁性微粒子粉末のカーボンブラックもしくは誘導体処理カーボンブラック付着量
【0122】
樹脂吸着強度は、樹脂が複合磁性微粒子粉末に吸着される程度を示すものであり、下記の方法により求めた樹脂吸着強度100%に近いほど、樹脂が粒子表面に強く吸着されていることを示す。
【0123】
先ず、樹脂吸着量Yaを求める。
【0124】
被測定粒子粉末20gとスルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂2gを溶解させた混合溶剤(メチルエチルケトン27.0g、トルエン16.2g、シクロヘキサノン10.8g)56gとを3mmφスチールビーズ120gと共に100mlポリ瓶に入れ、60分間ペイントシェーカーで混合分散する。
【0125】
次に、この塗料組成物50gを取り出し、50mlの沈降管に入れ、回転数10,000rpmで遠心分離を行い、固形部分と溶剤部分とを分離する。そして、溶剤部分に含まれる樹脂固形分濃度を重量法によって定量し、仕込みの樹脂量との差し引きにより、固形部分に存在する樹脂量を求め、これを粒子粉末に対する樹脂吸着量Ya(mg/g)とする。
【0126】
次に、先に分離した固形部分のみを100mlトールビーカーに全量取り出し、これに混合溶剤(メチルエチルケトン25.0g、トルエン15.0g、シクロヘキサノン10.0g)50gを加え、15分間超音波分散を行って懸濁状態とした後、50ml沈降管に入れ回転数10,000rpmで15分間遠心分離を行い、固形部分と溶剤部分とを分離する。そして、溶剤部分の樹脂固形分濃度を測定することによって、粒子表面に吸着していた樹脂のうち溶剤相に抽出された樹脂量を定量する。
【0127】
更に、上記固形部分のみの100mlトールビーカーへの全量取り出しから溶剤相に溶け出した樹脂量の定量までの操作を2回繰り返し、合計3回の溶剤相中における樹脂の抽出量の総和Yc(mg/g)を求め、下記数3に従って求めた値を樹脂吸着強度(%)とした。
【0128】
<数3>
樹脂吸着強度(%)=[(Ya―Ye)/Ya]×100
【0129】
塗料粘度は、得られた塗料の25℃における塗料粘度を、「E型粘度計EMD−R」(株式会社東京計器製)を用いて測定し、ずり速度=1.92sec−1における値で示した。
【0130】
磁気記録媒体を構成する非磁性支持体、非磁性下地層及び磁気記録層の各層の厚みは、下記のようにして測定した。
【0131】
デジタル電子マイクロメーターK351C(安立電気株式会社製)を用いて、先ず、非磁性支持体の膜厚(A)を測定する。次に、非磁性支持体と該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層との厚み(B)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みとの総和)を同様にして測定する。更に、非磁性下地層上に磁気記録層を形成することにより得られた磁気記録媒体の厚み(C)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みと磁気記録層の厚みとの総和)を同様にして測定する。そして、非磁性下地層の厚みは(B)−(A)で示し、磁気記録層の厚みは(C)−(B)で示した。
【0132】
磁気記録媒体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM SSM−5−15」(東英工業株式会社製)を用いて、印加磁場が0〜397.9kA/mの範囲ではスイープ速度を79.6(kA/m)/分とし、397.9〜1,193.7kA/mの範囲ではスイープ速度を397.9(kA/m)/分として測定した。
【0133】
磁気記録層の塗膜表面の光沢度は、「グロスメーターUGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて塗膜の45°光沢度を測定して求めた。
【0134】
表面粗度Raは、「ZYGO NewView600S」(ZYGO株式会社製)を用いて塗膜の中心線平均粗さを測定した。
【0135】
塗膜の表面電気抵抗値は、被測定塗膜を温度25℃、相対湿度60%環境下に12時間以上暴露した後、幅6.5mmの金属製の電極に、幅6mmにスリットした塗膜を、塗布面が金属製電極に接触するように置き、その両端に各170gのおもりを付け、電極に塗布を密着させた後、電極間に500Vの直流電圧をかけて表面電気抵抗値を測定した。
【0136】
<実施例1−1:複合磁性微粒子粉末の製造>
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末(Ti/Fe=1.5mol%、Ni/Fe=2.8mol%、平均粒子径30nm、平均厚さ9nm、板状比3.3、BET比表面積65.9m/g、保磁力値165.4kA/m、飽和磁化値53.2Am/kg、体積固有抵抗値6.9×10Ω・cm)20kgを、凝集を解きほぐすために、純水150lに攪拌機を用いて邂逅し、更に、「TKパイプラインホモミクサー」(製品名、特殊機化工業株式会社製)を3回通してマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末を含むスラリーを得た。
【0137】
次いで、このマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末を含むスラリーを横型サンドグラインダー「マイティーミルMHG−1.5L」(製品名、井上製作所株式会社製)を用いて、軸回転数2000rpmにおいて5回パスさせて、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末を含む分散スラリーを得た。
【0138】
得られた分散スラリーは、325mesh(目開き44μm)における篩残分は0%であった。この分散スラリーを濾別、水洗して、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末のケーキを得た。このマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末のケーキを120℃で乾燥した後、乾燥粉末11.0kgをエッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入して、294N/cmの線荷重で15分間混合攪拌を行い、粒子粉末の凝集を軽く解きほぐした。
【0139】
次に、フェニルトリエトキシシラン(商品名:TSL8178:東芝シリコーン(株)製)110gを、エッジランナーを稼動させながら粒子粉末の凝集を解きほぐした上記マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末に添加し、588N/cmの線荷重で30分間混合攪拌を行い、マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面に被覆物を形成させた。なお、この時の攪拌速度は22rpmで行った。
【0140】
次に、あらかじめ顔料誘導体(フタロシアニン誘導体(官能基:スルホン酸基))を処理したカーボンブラック(粒子形状:粒状、粒子径26nm、幾何標準偏差値1.74、BET比表面積値85.6m/g、顔料誘導体が処理されていることは、前述のフーリエ変換赤外分光光度計を用いて確認した)1650gを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に588N/cmの線荷重で90分間混合攪拌を行い、フェニルトリエトキシシラン被覆に顔料誘導体処理カーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて80℃で120分間加熱処理を行い、複合磁性微粒子粉末を得た。なお、この時の攪拌速度は22rpmで行った。
【0141】
得られた複合磁性微粒子粉末の平均粒子径は30nm、平均厚さは10nm、板状比は3.0であった。BET比表面積は63.3m/gであり、保磁力値は166.9kA/m、飽和磁化値は51.9Am/kg、体積固有抵抗値は5.8×10Ω・cm、カーボンブラック脱離率は4.7%、樹脂吸着強度は、81.6%であり、フェニルトリエトキシシランから生成するオルガノシラン化合物の被覆量はSi換算で0.44重量%であった。付着している顔料誘導体処理カーボンブラック量はC換算で14.75重量%(マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末100重量部に対して15重量部に相当する)であった。電子顕微鏡観察の結果、顔料誘導体処理カーボンブラックがほとんど認められないことから、顔料誘導体処理カーボンブラックのほぼ全量がフェニルトリエトキシシランから生成するオルガノシラン化合物の被覆に付着していることが認められた。
【0142】
<実施例2−1:磁気記録媒体の製造>
上記で得られた複合磁性微粒子粉末12g、研磨剤(商品名:AKP−50、住友化学株式会社製)1.2g、結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合して混合物(固形分率78%)を得、この混合物を更にプラストミルで30分間混練して混練物を得た。
【0143】
この混練物を140mlガラス瓶に1.5mmφガラスビーズ95g、追加結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンとともに添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って磁性塗料を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、さらに、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した。
【0144】
得られた磁性塗料の組成は下記の通りであった。
複合磁性微粒子粉末 100.0重量部
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂
10.0重量部
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 10.0重量部
研磨剤(AKP−50) 10.0重量部
潤滑剤(ミリスチン酸:ステアリン酸ブチル=1:2) 3.0重量部
硬化剤(ポリイソシアネート) 5.0重量部
シクロヘキサノン 64.9重量部
メチルエチルケトン 162.2重量部
トルエン 98.3重量部
【0145】
得られた磁性塗料の塗料粘度は1016cPであった。
【0146】
得られた磁性塗料を厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にアプリケーターを用いて45μmの厚さに塗布した後、磁場中において配向・乾燥し、次いで、カレンダー処理を行った後、60℃で24時間硬化反応を行い1.27cm幅にスリットして磁気テープを得た。磁気記録層の厚みは3.5μmであった。
【0147】
得られた磁気テープは、保磁力値が170.0kA/m、角型比(Br/Bm)が0.86、SFDが0.62、光沢度が184%、表面粗度Raが6.6nm、表面電気抵抗値が3.5×10Ω/cmであった。
【0148】
前記実施例1−1及び実施例2−1に従って複合磁性微粒子粉末及び磁気記録媒体を作製した。各製造条件及び得られた複合磁性微粒子粉末及び磁気記録媒体の諸特性を示す。
【0149】
芯粒子1〜3:
各種のマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末を準備し、上記発明の実施の形態と同様にして凝集が解きほぐされたマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末を得た。
【0150】
これらマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の諸特性を表1に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
芯粒子4:
芯粒子1の凝集が解きほぐされたマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末20kgと水150lとを用いて、前記発明の実施の形態と同様にして得られたマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末を含むスラリーに、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH値を10.5に調整した後、該スラリーに水を加えスラリー濃度を98g/lとした。このスラリー150lを加熱して60℃とし、このスラリー中に1.0mol/lのアルミン酸ナトリウム溶液5444ml(マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末に対してAl換算で1.2重量%に相当する)を加え、30分間保持した後、酢酸を用いてpH値を7.5に調整した。この状態で30分間保持した後、濾過、水洗、乾燥、粉砕し、粒子表面が中間被覆物により被覆されている芯粒子4のマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末を得た。
【0153】
このときの製造条件を表2に、得られた粒子表面が中間被覆物により被覆されているマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の諸特性を表3に示す。
【0154】
【表2】

【0155】
【表3】

【0156】
芯粒子5〜7:
マグネトプランバイト型フェライト微粒子の種類、表面処理工程における表面被覆物の種類及び量を種々変えた以外は芯粒子4と同様にして表面処理済マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末を得た。
【0157】
このときの製造条件を表2に、得られた表面処理済マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の諸特性を表3に示す。
【0158】
実施例1−2〜1−7及び比較例1−1〜1−2:
芯粒子の種類、表面改質剤による被覆工程における表面改質剤の有無、種類及び添加量、エッジランナーによる処理条件、カーボンブラックの付着工程におけるカーボンブラック微粒子粉末の種類及び添加量、エッジランナーによる処理条件を種々変えた以外は、前記実施例1−1と同様にして複合磁性微粒子粉末を得た。実施例1−2〜1−6の各実施例で得られた複合磁性微粒子粉末は、電子顕微鏡観察の結果、カーボンブラックがほとんど認められないことから、カーボンブラックのほぼ全量が表面改質剤被覆に付着していることが確認された。
【0159】
使用したカーボンブッラク及び顔料誘導体処理カーボンブラックA乃至Dの諸特性を表4に示す。尚、カーボンブッラクBは顔料誘導体で処理をしていないカーボンブラックである。
【0160】
このときの処理条件を表5に、得られた複合磁性微粒子粉末の諸特性を表6に示す。
【0161】
【表4】

【0162】
【表5】

【0163】
【表6】

【0164】
<磁気記録媒体の製造>
実施例2−1〜2−8及び比較例2−1〜2−7:
磁性粒子の種類及びカーボンブラックの添加量(磁性粒子粉末対比)を種々変化させた以外は、前記実施例2−1と同様にして磁気記録媒体を製造した。
【0165】
このときの製造条件及び諸特性を表7に示す。
【0166】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明に係る磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末は、粒子同士のスタッキングが抑制されていることによりビヒクル中への分散性に優れていると共に、体積固有抵抗値が低いため、高密度磁気記録媒体の磁性粒子粉末として好適である。
【0168】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、上述の複合磁性微粒子粉末を磁気記録媒体の磁性粒子粉末として用いることにより、良好な表面平滑性が得られると共に、表面電気抵抗値を低減することができるため、高密度磁気記録媒体として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆粒子表面に顔料誘導体によって処理されているカーボンブラックが付着している複合磁性微粒子粉末であって、前記カーボンブラックの付着量が前記マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末100重量部に対して10重量部を超えて25重量部以下であることを特徴とする磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末。
【請求項2】
BET比表面積値が65m/g以上であるマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆粒子表面にカーボンブラックが付着している複合磁性微粒子粉末であって、前記カーボンブラックの付着量が前記マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末100重量部に対して10重量部を超えて25重量部以下であることを特徴とする磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末。
【請求項3】
BET比表面積値が65m/g以上であるマグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆粒子表面に顔料誘導体によって処理されているカーボンブラックが付着している複合磁性微粒子粉末であって、前記カーボンブラックの付着量が前記マグネトプランバイト型フェライト微粒子粉末100重量部に対して10重量部を超えて25重量部以下であることを特徴とする磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末。
【請求項4】
マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末の粒子表面が、あらかじめアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも一種からなる中間被覆物によって被覆されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気記録媒体用複合磁性微粒子粉末。
【請求項5】
非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む非磁性下地層及び該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層からなる磁気記録媒体において、前記磁性粒子粉末が請求項1乃至4のいずれかに記載の複合磁性微粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項6】
非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成される非磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む非磁性下地層及び該非磁性下地層の上に形成される磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含む磁気記録層及び、前記非磁性支持体の他方の面に形成されるバックコート層からなる磁気記録媒体において、前記磁性粒子粉末が請求項1乃至4のいずれかに記載の複合磁性微粒子粉末であることを特徴とする磁気記録媒体。

【公開番号】特開2010−157282(P2010−157282A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334301(P2008−334301)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】