説明

磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法

【課題】 PTFを改善することができる磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 非磁性酸化物、CrおよびPtを含有し、残部:Coおよび不可避不純物からなる成分組成を有するスパッタリングターゲットであって、その組織が、CoとCrとPtとを含むCo−Cr−Pt粒相4と、PtとCoとCrと非磁性酸化物とを含む結合相であるマトリックス相3との複合組織からなり、マトリックス相3のCo濃度が、25質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度磁気記録媒体に適用される磁気記録膜、特に垂直磁気記録媒体に適用される磁気記録膜を形成するためのスパッタリングターゲットおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク等の磁気記録媒体は、一般にコンピューターやデジタル家電等の外部記録装置として用いられており、記録密度の一層の向上が求められている。そのため、近年、高密度の記録を実現できる垂直磁気記録方式が採用されている。この垂直磁気記録方式は、以前の面内記録方式と比べ、原理的に高密度化しても記録磁化が安定すると言われている。
【0003】
この垂直磁気記録方式の磁気記録媒体の記録層に適用する材料の有力な候補として、CoCrPt−SiOグラニュラ磁気記録膜が提案されており、このCoCrPt−SiOグラニュラ磁気記録膜はCrおよびPtを含むCo基焼結合金相と二酸化珪素相との混合相を有するスパッタリングターゲットを用いてマグネトロンスパッタ法により作製することが知られている(非特許文献1参照)。
【0004】
このマグネトロンスパッタリングを行う場合、例えば特許文献1に示すように、スパッタ時の異常放電抑制のため、ターゲット組織は微細であることが好ましいが、混合粉末の一つであるCo−Cr粒が混合中に粉砕され微細になると、PTF(磁束透過率)が低下するため、Co−Cr粒を後混合して作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−291512号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「富士時報」Vol.75No.3 2002(169〜172ページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
上記従来の技術では、Co−Cr粒を粒度のみで管理していたため、ターゲット組織の粒子形状が変形、扁平化することで、PTFが低下したり、ターゲットの面内でばらついてしまう場合があった。これは、図1の(b)に示すように、Co−Cr粒1の表面部が焼結後には、焼結中の相互拡散によりCo−Cr−Pt磁性相2となるが、長尺なCo−Cr粒1がターゲット面内に沿うようにして分布すると、表面部のCo−Cr−Pt磁性相2が面内方向に重なるようになり、PTFが低下してしまうと考えられる。すなわち、原料のCo−Cr粒は、非磁性あるいは弱磁性であるが、焼結後にPtと反応し、特にCo−Cr粒1の表面部は、Co−Cr−Pt磁性相2となると共に、長尺なCo−Cr粒1がターゲット面内に沿う傾向がある。このため、Co−Cr粒1の長軸方向の透磁率μ`は、短軸方向の透磁率μに対して大きくなるために、相対的にターゲット面直方向の透磁率が下がり、PTFが低下してしまう。
【0008】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、PTFを改善することができる磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットは、非磁性酸化物、CrおよびPtを含有し、残部:Coおよび不可避不純物からなる成分組成を有するスパッタリングターゲットであって、その組織が、CoとCrとPtとを含むCo−Cr−Pt粒相と、PtとCoとCrと非磁性酸化物とを含む結合相であるマトリックス相との複合組織からなり、前記マトリックス相のCo濃度が、25質量%以下であることを特徴とする。
【0010】
この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットでは、組織が、CoとCrとPtとを含むCo−Cr−Pt粒相と、PtとCoとCrと非磁性酸化物とを含む結合相であるマトリックス相との複合組織からなり、マトリックス相のCo濃度が、25質量%以下であるので、透磁率の上昇を抑制することができ、PTFを改善することができる。
なお、マトリックス相のCo濃度を、25質量%以下に設定した理由は、25質量%を超えると、マトリックス相の磁性がより強くなり、透磁率値が上昇してPTFが低下してしまうためである。
【0011】
また、本発明の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットは、アスペクト比(粒の長軸長さ/粒の短軸長さ)3以下の前記Co−Cr−Pt粒相が、80%以上の比率で含有されていることを特徴とする。
すなわち、この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットでは、アスペクト比3以下のCo−Cr−Pt粒相が、80%以上の比率で含有されているので、Co−Cr粒の扁平化を減らしてPTFを改善することができる。
なお、アスペクト比3以下のCo−Cr−Pt粒相を80%以上の比率とした理由は、アスペクト比が3を超えると、PTFが低下する、またはばらつきが大きくなるためであると共に、アスペクト比3以下の粒子が80%未満であると、PTFが不十分となるためである。
【0012】
本発明の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法は、上記本発明の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法であって、単体金属粉および/または合金粉と、非磁性酸化物粉末と、を予め粉砕混合してCoとCrとPtと非磁性酸化物とを含む予備混合粉末を作製する工程と、前記予備混合粉末に、予め粒径45μm以下の微粉を除いたCo−Cr合金粉末をさらに添加して混合し、Co−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を作製する工程と、前記Co−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を加圧焼結する工程と、を有していることを特徴とする。
【0013】
従来のように、原料中に粒径45μm以下のCo−Cr粒の微粉があると、図1の(b)に示すように、Co−Cr粒1の微粉5がCo(Cr)−Pt化して磁性化され、Coがマトリックス相3に拡散して濃化することで、透磁率が上昇し、ターゲットのPTFを低下させてしまう。これに対して、上記本発明の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法では、予備混合粉末に、予め粒径45μm以下の微粉を除いたCo−Cr合金粉末をさらに添加して混合し、Co−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を作製するので、Co−Cr粒の微粉が原料からカットされており、PTFの低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法によれば、組織が、CoとCrとPtとを含むCo−Cr−Pt粒相と、PtとCoとCrと非磁性酸化物とを含む結合相であるマトリックス相との複合組織からなり、マトリックス相のCo濃度が、25質量%以下であるので、透磁率の上昇を抑制することができ、PTFを改善することができる。これにより、安定なスパッタリングが可能になると共にスパッタ効率を高めることができ、生産性を向上させることができる。
したがって、本発明の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットを用いてマグネトロンスパッタリングにより磁気記録媒体膜を成膜することで、HDD用の高密度磁気記録媒体に適用される磁気記録膜、特に垂直磁気記録媒体に適用される良好な磁気記録膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法の一実施形態において、ターゲット組織の状態およびCo−Cr−Pt粒相の長軸方向と短軸方向との透磁率について説明するための本実施形態(a)および従来例(b)での模式図である。
【図2】本発明に係る磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法の従来例を示すターゲット組織の光学顕微鏡画像である。
【図3】本発明に係る磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法の実施例を示すターゲット組織の光学顕微鏡画像である。
【図4】本実施例を示すターゲット組織の光学顕微鏡画像例である。
【図5】図4の画像を元にした画像解析ソフトによる解析画像例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットおよびその製造方法の一実施形態を、図1を参照して説明する。
【0017】
本実施形態の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットは、非磁性酸化物、CrおよびPtを含有し、残部:Coおよび不可避不純物からなる成分組成を有するスパッタリングターゲットであって、図1の(a)に示すように、その組織が、CoとCrとPtとを含むCo−Cr−Pt粒相4と、PtとCoとCrと非磁性酸化物とを含む結合相であるマトリックス相3との複合組織からなり、マトリックス相3のCo濃度が、25質量%以下である。
【0018】
また、アスペクト比3以下のCo−Cr−Pt粒相4が、80%以上の比率で含有されている。
なお、本実施形態のスパッタリングターゲットは、例えば非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%、残部:Coを含有した成分組成を有している。
【0019】
上記非磁性酸化物としては、例えば酸化珪素、酸化チタン、酸化コバルトおよび酸化クロムなどの一種または二種以上からなり、具体的には、SiO、SiO、TiO、Ta、Al、MgO、CaO、Cr、ZrO、B、Sm、HfO、Gdが挙げられ、なかでもSi、Cr、Ti、Taより選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であるのが好ましい。
上記Co−Cr−Pt粒相4は、加圧焼結の際に、原料のCo−Cr粒1の表面部がCo−Cr−Pt磁性相2となったものである。
【0020】
この磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法は、単体金属粉および/または合金粉と、非磁性酸化物粉末と、を予め粉砕混合してCoとCrとPtとを含む予備混合粉末を作製する工程(粉砕工程)と、予備混合粉末に、予め粒径45μm以下の微粉を除いたCo−Cr合金粉末をさらに添加して混合し、Co−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を作製する工程(混合工程)と、Co−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を加圧焼結する工程(加圧焼結工程)と、を有している。
【0021】
例えば、粒度範囲約100〜45μmのCo−Cr合金粉末と、Pt、Coおよび非磁性酸化物からなる予備混合粉末であるマトリックス粉末と、を用意し、マトリックス粉末を回転ボールミルやアトライタボールミルにて、アルゴンまたは窒素中雰囲気で適宜混合粉砕を行う。なお、粒度範囲約100〜45μmのCo−Cr合金粉末は、例えばガスアトマイズ法で作製したCo−Cr合金粉末を篩い分けして、粒径45μm以下の微粉を取り除くことで用意する。
【0022】
次に、作製したマトリックス粉末とCo−Cr合金粉末とを小さい粉砕ボール(例えば、直径2〜4mm)を用いたボールミル、より好ましくは粉砕メディアを使わない混合機であるヘンシェルミキサーで混合し、Co−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末とする。
このように作製したCo−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を真空中にて900〜1100℃でホットプレスし、固化することで、本実施形態の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットを作製する。
【0023】
この本実施形態の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットでは、その組織が、CoとCrとPtとを含むCo−Cr−Pt粒相4と、PtとCoとCrと非磁性酸化物とを含む結合相であるマトリックス相3との複合組織からなり、マトリックス相3のCo濃度が、25質量%以下であるので、透磁率の上昇を抑制することができ、PTFを改善することができる。
【0024】
また、アスペクト比3以下のCo−Cr−Pt粒相4が、80%以上の比率で含有されているので、Co−Cr粒の扁平化を減らしてPTFを改善することができる。すなわち、図1の(a)に示すように、アスペクト比3以下のCo−Cr−Pt粒相4では、その短軸方向の透磁率μと短軸方向の透磁率μ`とがほぼ同じになり、PTFの低下が抑えられる。
【0025】
さらに、予備混合粉末に、予め粒径45μm以下の微粉を除いたCo−Cr合金粉末をさらに添加して混合し、Co−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を作製するので、Co−Cr粒(Co−Cr合金粉末)の微粉が原料からカットされており、PTFの低下を抑制することができる。すなわち、粒径が大きく設定されたCo−Cr粒は、Co(Cr)−Pt化による磁性化が生じ難く、Coのマトリックス相3への拡散が抑制されることで、透磁率の上昇を抑えることができる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明に係る磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットを、実際に上記製法で作製した実施例について評価した結果を、図2〜図3を参照して具体的に説明する。
【0027】
<実施例1>
1)粉砕工程
Pt粉末および非磁性酸化物としてSiO粉を用意し、粉砕媒体としてφ5mmZrOボールと共に10Lのポリ容器に投入した。このポリ容器は、予めアルゴンガスを充填させてあり、アルゴンガス雰囲気で密閉した。そして、このポリ容器をボールミルで16時間粉砕して、予備混合粉末を作製した。
【0028】
2)混合工程
ガスアトマイズ法で作製したCo−Cr粉末であって、予め45μm以下の微粉を篩い分けして除いたものを用意し、これを粉砕工程で作製した予備混合粉末と共にヘンシェル混合機にて1時間混合して、Co−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を作製した。
3)加圧焼結工程
作製したCo−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を、真空雰囲気中、温度900〜1100℃、圧力35MPa、3時間保持の条件でホットプレスすることで、磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットとなる円板状ホットプレス体を作成した。
【0029】
<実施例2>
1)粉砕工程
Pt粉末および非磁性酸化物としてTi粉を用意し、粉砕媒体としてφ5mmZrOボールと共に10Lのポリ容器に投入した。このポリ容器は、予めアルゴンガスを充填させてあり、アルゴンガス雰囲気で密閉した。そして、このポリ容器をボールミルで16時間粉砕して、予備混合粉末を作製した。
【0030】
2)混合工程
ガスアトマイズ法で作製したCo−Cr粉末であって、予め45μm以下の微粉を篩い分けして除いたものを用意し、これを粉砕工程で作製した予備混合粉末およびφ3mmZrOボールと共に10Lのポリ容器に投入した。そして、このポリ容器をボールミルで1時間混合して、Co−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を作製した。
3)加圧焼結工程
作製したCo−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を、真空雰囲気中、温度900〜1100℃、圧力35MPa、3時間保持の条件でホットプレスすることで、磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットとなる円板状ホットプレス体を作製した。
【0031】
<比較例>
1)粉砕工程
Pt粉末および非磁性酸化物としてSiO粉を用意し、粉砕媒体としてφ5mmZrOボールと共に10Lのポリ容器に投入した。このポリ容器は、予めアルゴンガスを充填させてあり、アルゴンガス雰囲気で密閉した。そして、このポリ容器をボールミルで16時間粉砕して、予備混合粉末を作製した。
【0032】
2)混合工程
ガスアトマイズ法で作製したCo−Cr粉末であって、微粉を篩い分けしないものを用意し、これを粉砕工程で作製した予備混合粉末と共にヘンシェル混合機にて1時間混合して、Co−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を作製した。
3)加圧焼結工程
作製したCo−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を、真空雰囲気中、温度950〜1000℃、圧力35MPa、3時間保持の条件でホットプレスすることで、磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットとなる円板状ホットプレス体を作成した。
【0033】
<従来例>
1)粉砕工程
Pt粉末および非磁性酸化物としてTi粉を用意し、粉砕媒体としてφ5mmZrOボールと共に10Lのポリ容器に投入した。このポリ容器は、予めアルゴンガスを充填させてあり、アルゴンガス雰囲気で密閉した。そして、このポリ容器をボールミルで16時間粉砕して、予備混合粉末を作製した。
【0034】
2)混合工程
ガスアトマイズ法で作製したCo−Cr粉末であって、微粉を篩い分けしないものを用意し、これを粉砕工程で作製した予備混合粉末およびφ5mmZrOボールと共に10Lのポリ容器に投入した。そして、このポリ容器をボールミルで1時間混合して、Co−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を作製した。
3)加圧焼結工程
作製したCo−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を、真空雰囲気中、温度900〜1100℃、圧力35MPa、3時間保持の条件でホットプレスすることで、磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットとなる円板状ホットプレス体を作成した。
【0035】
このように作製した本発明の実施例1,2、比較例および従来例について、ホットプレス温度、マトリックス相のCo濃度、Co−Cr粒のアスペクト比、PTFおよび相対密度を測定した結果を、表1に示す。
【表1】

【0036】
なお、マトリックス相の組成分析(Co濃度測定)は、電子線マイクロプロ−ブアナライザー(EPMA)にて異なる6箇所の組成分析を行い、Co濃度はこの平均値とした。また、Co−Cr粒(組織中のCo−Cr−Pt粒相)のアスペクト比は、ターゲット組織の光学顕微鏡画像を倍率500倍、視野面積約0.3mm2にて画像解析ソフトImageJを使用して解析し、Co−Cr粒の長軸長さと短軸長さとを数値化し、そのアスペクト比を計算した。
図2に比較例におけるターゲット組織の光学顕微鏡画像を示すと共に、図3に実施例1におけるターゲット組織の光学顕微鏡画像を示す。また、図4に実施例1のターゲット組織の光学顕微鏡画像例を示すと共に、図4の画像を元にした上記画像解析ソフトにおける解析画像例を図5に示す。
【0037】
また、PTFはASTM F2086−1の規格に基づき行った。作製したタ−ゲットの一方の面側に測定専用冶具にてDexer製アルニコ磁石5K215をセットし、ターゲットの反対面でガウスメ−タで計測した最大磁束平均値をタ−ゲットを介さない場合の前記アルニコ磁石の磁束値で割ることにより算出した。
次に、相対密度は、焼結体の嵩密度を理論密度で割り、算出したものである。このうち理論密度は、各元素が均一に分散し、反応、拡散が起こらないものと仮定したもので、例えば構成元素や化合物a、b、cの3種からなる場合、各比重ρと配合比W(重量%)をそれぞれρaとWa、ρbとWbおよびρcとWcとすると、これらで構成されるタ−ゲットの理論密度は、理論密度=100/(Wa/ρa+Wb/ρb+Wc/ρc)で算出したものとした。
【0038】
これらの分析結果から、本発明の実施例1および2は、いずれもマトリックス相のCo濃度が25質量%以下であると共に、80%以上の比率でアスペクト比3以下のCo−Cr粒(Co−Cr−Pt粒相)が含有されており、PTFが比較例および従来例に比べて改善されていた。
【0039】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態および上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…Co−Cr粒、2…Co−Cr−Pt磁性相、3…マトリックス相、4…Co−Cr−Pt粒相、5…微粉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性酸化物、CrおよびPtを含有し、残部:Coおよび不可避不純物からなる成分組成を有するスパッタリングターゲットであって、
その組織が、CoとCrとPtとを含むCo−Cr−Pt粒相と、PtとCoとCrと非磁性酸化物とを含む結合相であるマトリックス相との複合組織からなり、
前記マトリックス相のCo濃度が、25質量%以下であることを特徴とする磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲット。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットにおいて、
アスペクト比3以下の前記Co−Cr−Pt粒相が、80%以上の比率で含有されていることを特徴とする磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法であって、
単体金属粉および/または合金粉と、非磁性酸化物粉末と、を予め粉砕混合してCoとCrとPtと非磁性酸化物とを含む予備混合粉末を作製する工程と、
前記予備混合粉末に、予め粒径45μm以下の微粉を除いたCo−Cr合金粉末をさらに添加して混合し、Co−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を作製する工程と、
前記Co−Cr−Pt−非磁性酸化物混合粉末を加圧焼結する工程と、を有していることを特徴とする磁気記録媒体膜形成用スパッタリングターゲットの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−216135(P2011−216135A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80586(P2010−80586)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】