説明

磁気記録媒体

【課題】 優れた分散性、塗膜平滑性、電磁変換特性を有し、長期保存性に優れた磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】 支持体上に非磁性粉末または強磁性粉末と結合剤とを分散させてなる下層の上に少なくとも一層の強磁性粉末と結合剤を分散した磁性層を有する磁気記録媒体において、該結合剤が特定のジオールを含むポリエステルポリオールと鎖延長剤と有機ジイソシアネートから得られるポリウレタン樹脂を含み、かつ磁性層表面のC/Feのピーク比が7〜11であることを特徴とする磁気記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】強磁性粉末と結合剤とを分散させてなる磁性層を支持体上に設けた磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気記録媒体は、録音用テープ、ビデオテープあるいはフロッピー(登録商標)ディスクなどとして広く用いられている。磁気記録媒体は、強磁性粉末が結合剤(バインダ)中に分散された磁性層を支持体上に積層している。
【0003】磁気記録媒体は、電磁変換特性、走行耐久性および走行性能などの諸特性において高いレベルにあることが必要とされる。すなわち、音楽録音再生用のオーディオテープにおいては、より高度の原音再生能力が要求されている。また、ビデオテープについては、原画再生能力が優れているなど電磁変換特性が優れていることが要求されている。このような優れた電磁変換特性を有すると同時に、磁気記録媒体は前述のように良好な走行耐久性を持つことが要求されている。そして、良好な走行耐久性を得るためにのアプローチの一つとして結合剤の分散性を改善する方法が取られている。
【0004】特開平11−39639号公報(以下、「文献A」という)には、脂肪族二塩基酸及び特定な分岐脂肪族ジオールからなるポリエステルポリオールからなるポリエステルポリウレタンを開示、粉体の分散安定性の向上、出力の向上、ヘッド汚れの防止、ドロップアウト(DO)増加の抑制、長期保存性(60℃、dry1週間後のμ値(摩擦係数)の改善)の向上が図れる旨の記載がある。上述の文献Aは、本出願人によるものであり、高強度、高分散性のポリウレタンを結合剤として用いることを特徴とするが、高温高湿条件下の長期保存性については十分な性能を発揮できないなどの問題があった。
【0005】特に高温高湿度下において長期にテープを保存した場合に塩酸ガス等によるテープ中の素材の変質、例えばエステル潤滑剤の加水分解によって発生する脂肪酸が、磁性層表面に移動析出、結晶化することがあり、従来よりも記録密度が向上しているため、より微小な異物もその影響が大きくなってきているという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、次の磁気記録媒体を提供することを課題とするものである。
■優れた分散性、塗膜平滑性、電磁変換特性を有する磁気記録媒体を提供する。
■長期保存性に優れた磁気記録媒体を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、支持体上に非磁性粉末または強磁性粉末と結合剤とを分散させてなる下層の上に少なくとも一層の強磁性粉末と結合剤を分散した磁性層を有する磁気記録媒体において、該結合剤がポリエステルポリオールと鎖延長剤と有機ジイソシアネートから得られるポリウレタン樹脂を含み、且つオージェ電子分光法で磁性層表面を測定した際のC/Feのピーク比が7〜11であり、前記ポリウレタンはそのポリエステルポリオール中の二塩基酸が脂肪族二塩基酸を含み、ジオール成分の70モル%以上が炭素数2以上のアルキル分岐側鎖を持ち環構造をもたないジオールからなるポリウレタン(1)、又はポリエステルポリオール中の二塩基酸が脂肪族二塩基酸を含みジオール成分の70モル%以上が1分子中の分岐側鎖炭素数の合計が2以上のアルキル分岐脂肪族ジオールであり、鎖延長剤が1分子中の分岐側鎖炭素数の合計が3以上のアルキル分岐脂肪族ジオールを含むポリウレタン(2)であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0008】本発明の好ましい態様は以下の通りである。
(1) 前記磁性層及び/又は下層は、エステル系潤滑剤を含有することを特徴とする上記磁気記録媒体。
(2)磁性層の厚みが好ましくは0.1〜0.5μm、更に好ましくは0.1〜0.3μmであることを特徴とする上記磁気記録媒体。
(3)前記エステル系潤滑剤の融点が10℃以下であることを特徴とする上記磁気記録媒体。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の磁気記録媒体は、特定の結合剤と特定の表面潤滑性を有した磁性層を有することを特徴とする。本発明で用いる結合剤は、特定構造のポリウレタン樹脂(以下、「本発明のポリウレタン樹脂」ともいう)を少なくとも含有する。本発明のポリウレタン樹脂は、従来、磁気記録媒体を高温高湿環境で保存するとポリウレタン分子中の比較的低分子量であり、且つ柔らかい成分が塗膜表面に析出しやすい欠点が改善され、また溶剤への溶解性が改良されるので、高い分散性を維持しながら通常よりも高いウレタン基濃度を有することによりTgが高く、耐久性が向上する。これにより磁気記録媒体を高温保存しても摩擦係数の上昇が抑えられる。また、本発明は、磁性層表面をオージェ電子分光法で表面を測定した際のC(炭素)/Fe(鉄)のピーク比を7〜11とする。このオージェ電子分光法によるC/Feのピーク比の測定条件は、以下の通りである。
装置:Φ社製PHI−660型測定条件:1次電子線加速電圧3KV試料電流130nA倍率250倍傾斜角度30°上記条件で、運動エネルギ−(Kinetic Energy)130〜730eVの範囲を3回積算し、炭素のKLLピークと鉄のLMMピークの強度を微分形で求め、C/Feの比をとることでピーク比を求める。本発明は、このC/Feのピーク比を7以上とすることにより、良好な表面の潤滑性能を発揮して、磁気ヘッドの走行に対する耐久性を向上できる。また、11以下とすることにより、エステル系潤滑剤等の加水分解が抑制され、脂肪酸発生量が低下し、磁性層表面に移動析出、結晶化する量が低減され、保存性が改善される。即ち、本発明のポリウレタン樹脂を用い、かつC/Feのピーク比を7〜11とすることにより保存性及び電磁変換特性が改善される。
【0010】C/Feのピーク比を本発明範囲に制御する手段としては、潤滑剤、界面活性剤等の種類、量、それらを複数用いる場合の併用比率等を選定することが挙げられる。本発明に好ましく使用することができる潤滑剤としては、ジアルコキシポリシロキサン(アルコキシは炭素数1〜4個)、モノアルキルモノアルコキシポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個、アルコキシは炭素数1〜4個)などのシリコンオイル;炭素数12〜20個の一塩基性脂肪酸と炭素数3〜12個の一価または多価のアルコールから成る脂肪酸エステル類、アルキル燐酸エステル類、炭素数10〜22の飽和脂肪酸類、不飽和脂肪酸類や脂肪酸アミド類等が挙げられる。
【0011】上記の中でも脂肪酸エステルが好ましい。脂肪酸エステルの原料となるアルコールとしてはエタノール、ブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、2−メチルブチルアルコール、2−ヘキシルデシルアルコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、sec−ブチルアルコール等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ソルビタン誘導体等の多価アルコールが挙げられる。脂肪酸エステルの原料となる脂肪酸としては酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、アラキン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、パルミトレイン酸等の脂肪族カルボン酸またはこれらの混合物が挙げられる。脂肪酸エステルとしての具体例は、ブチルステアレート、sec−ブチルステアレート、イソプロピルステアレート、ブチルオレエート、アミルステアレート、3−メチルブチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレート、ブチルパルミテート、2−エチルヘキシルミリステート、ブチルステアレートとブチルパルミテートの混合物、ブトキシエチルステアレート、2−ブトキシ−1−プロピルステアレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルをステアリン酸でエステル化したもの、ジエチレングリコールジパルミテート、ヘキサメチレンジオールをミリスチン酸でアシル化してジオールとしたもの、グリセリンのオレエート等の種々のエステル化合物を挙げることができる。
【0012】本発明では、脂肪酸エステル等のエステル系潤滑剤を磁性層及び/又は下層に用いることが好ましい。
【0013】ここで、本発明の磁気記録媒体の層構成について説明する。本発明では、下層の上に磁性層を設ける構成であれば、特に制限はない。下層は、非磁性粉末または強磁性粉末と結合剤とを分散させてなるものであり、非磁性粉末のものを主体に選択した場合には非磁性層が、強磁性粉末を主体に選択した場合には磁性層が下層として構成され得る。下層が非磁性層の場合を下層非磁性層、下層が磁性層の場合を下層磁性層ともいうが、両者を総称する場合は、単に下層ともいう。また、下層及び下層上に設けられる磁性層(「上層磁性層」ともいう)は、各々単層でも複層でもよい。
【0014】本発明では、磁性層及び/又は下層には、特にエステル系潤滑剤として融点が10℃以下、更に好ましくは7〜1℃である脂肪酸エステルを用いることが好ましい。融点が10℃以下の脂肪酸エステルとしては、2−エチルヘキシルステアレート、イソヘキサデシルステアレート、オレイン酸オレイル、ネオペンチルグリコールジデカノエート等が挙げられる。脂肪酸エステルは、脂肪酸エステル原料の脂肪酸及びアルコール由来の分岐/直鎖、シス/トランス等の異性構造、分岐位置を選択することにより加水分解しにくいものを選択することができる。また、潤滑剤組成としては、脂肪酸エステルと脂肪酸及び脂肪酸アミドを併用することがより好ましく、脂肪酸としては、例えば、常温で固体の飽和脂肪酸(炭素数10から22)が挙げられ、脂肪酸アミドとしては炭素数8〜22の脂肪酸アミド、例えば、ステアリン酸アミドが挙げられる。
【0015】これらの潤滑剤総量は結合剤100質量部に対して1〜30質量部の範囲で添加される。特に、脂肪酸エステルは、強磁性粉末(上層磁性層または下層磁性層)または非磁性粉末(下層非磁性層の主体となる粉体)100質量部に対し、通常、0.5〜3.0質量部、好ましくは、0.7〜2.5質量部用いられ、脂肪酸は、強磁性粉末(上層磁性層または下層磁性層)または非磁性粉末(下層非磁性層の主体となる粉体)100質量部に対し、通常、0.1〜2.0質量部、好ましくは、0.3〜1.5質量部用いられ、脂肪酸アミドは、強磁性粉末(上層磁性層または下層磁性層)または非磁性粉末(下層非磁性層の主体となる粉体)100質量部に対し、通常、0.1〜2.0質量部、好ましくは、0.2〜1.0質量部用いられる。これら潤滑剤は下層及び磁性層の各々に含有させることが好ましいが、下層と磁性層とでその添加量を適宜変更することは、各潤滑剤の磁性層表面への滲み出し量を調整する手段となり得る。
【0016】本発明のポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールと鎖延長剤と有機ジイソシアネートから得られる。そのポリエステルポリオールは、その構成成分として(1)脂肪族二塩基酸及びジオールを含み、該ジオール成分の70モル%以上が炭素数2以上のアルキル分岐側鎖を持ち環構造をもたないものか、又は(2)脂肪族二塩基酸及びジオールを含み、該ジオール成分の70モル%以上が1分子中の分岐側鎖炭素数の合計が2以上のアルキル分岐脂肪族ジオールであるものである。
【0017】そして、上記(1)のポリエステルポリオールを少なくとも成分とするポリウレタン樹脂をポリウレタン樹脂(1)と称し、上記(2)のポリエステルポリオールと鎖延長剤として1分子中の分岐側鎖炭素数の合計が3以上のアルキル分岐脂肪族ジオールを含むポリウレタン樹脂をポリウレタン樹脂(2)と称する。本発明のポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂(1)及び/又はポリウレタン樹脂(2)を含むものである。
【0018】上記(1)のポリエステルポリオール成分の炭素数2以上のアルキル分岐側鎖を持ち環構造をもたないジオールを以下、ジオールAとも言う。ジオールAは、アルキル分岐側鎖として少なくとも1個は、炭素数2以上のものを有する必要があるが、メチル基、更には他の基、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基等を有していてもよい。このアルキル分岐側鎖としては、好ましくは炭素数2〜4のものが挙げられ、ジオールAは、好ましくは1〜2個有したものである。ジオールAの主鎖の炭素数は、好ましくは3〜6である。また、ジオールAは、該ポリエステルポリオールのジオール成分中70モル%以上、好ましくは80〜100モル%含む。このジオールA以外のジオール成分としては、例えば、炭素数2〜9の直鎖ジオール、炭素数6〜24の環状ジオール等が例示される。
【0019】上記(2)のポリエステルポリオール成分の1分子中の分岐側鎖炭素数の合計が2以上のアルキル分岐脂肪族ジオールを以下、ジオールBとも言う。ジオールBは、アルキル分岐側鎖の炭素数の合計が2以上となる必要があるが、必ずしもアルキル分岐側鎖以外の基を全く排除するものではなく、必要により環状構造の基、例えば、脂環族基、更には他の基、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基等を有していてもよい。このアルキル分岐側鎖としては、好ましくはメチル基が挙げられ、ジオールBは、好ましくはメチル基を2〜3個有したものである。ジオールBの主鎖の炭素数は、好ましくは3〜6である。また、ジオールBは、該ポリエステルポリオールのジオール成分中70モル%以上、好ましくは80〜100モル%含む。このジオールB以外のジオール成分としては、例えば、炭素数2〜9の直鎖ジオール、炭素数6〜24の環状ジオール等が例示される。
【0020】ポリウレタン樹脂(2)の鎖延長剤として用いられる1分子中の分岐側鎖炭素数の合計が3以上のアルキル分岐脂肪族ジオールを以下、ジオールCとも言う。ジオールCは、アルキル分岐側鎖の炭素数の合計が3以上となる必要があるが、必ずしもアルキル分岐側鎖以外の基を全く排除するものではなく、ジオールBと同様に必要により環状構造の基、例えば、脂環族基、更には他の基、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基等を有していてもよい。このアルキル分岐側鎖としては、好ましくはエチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、ジオールCは、好ましくはこれらの基を2〜3個有したものである。ジオールCの主鎖の炭素数は、好ましくは3〜6である。
【0021】本発明において用いることができるジオールAまたはジオールBとしては、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−ブチル1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジプロピル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジプロピル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−ブチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、3ブチル−1,5−ペンタンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール、3−ミリスチル−1,5−ペンタンジオール、3−ステアリル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−プロピル−1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−1,6−ヘキサンジオール、5−エチル−1,9−ノナンジオール、5−プロピル−1,9−ノナンジオール、5−ブチル−1,9−ノナンジオール等を挙げることができる。
【0022】なかでもジオールAとして好ましいものは、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールを挙げることができる。
【0023】また、ジオールBとして好ましいものは、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,5−ペンタンジオールを挙げることができる。
【0024】また、ジオールCとしては、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジプロピル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジプロピル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−ブチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール、3−ミリスチル−1,5−ペンタンジオール、3−ステアリル−1,5−ペンタンジオール、2−プロピル−1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−1,6−ヘキサンジオール、5−プロピル−1,9−ノナンジオール、5−ブチル−1,9−ノナンジオール等を挙げることができる。これらのなかでも好ましいものは、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールを挙げることができる。
【0025】本発明のポリウレタン樹脂成分のポリエステルポリオールに用いることのできる脂肪族二塩基酸としては、好ましくは炭素数4〜10のものが挙げられる。この脂肪族二塩基酸の脂肪族とは、鎖状構造のものを指し、酸素、イオウなどのヘテロ原子が主鎖に包含されてもよい。具体的には、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸等を挙げることができる。これらのなかでも好ましいものは、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸である。
【0026】ポリエステルポリオールの全二塩基酸成分のうち脂肪族二塩基酸の含量は、70モル%以上が好ましく、更に80〜100モル%が好ましい。70モル%よりも少ないと実質的に芳香族二塩基酸などの環状構造を有する二塩基酸成分が増えるので溶剤溶解性が低下し、分散性が低下する傾向がある。
【0027】次に本発明のポリウレタン樹脂の構成成分ある有機ジイソシアネートについて記す。有機ジイソシアネートには、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4.4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。好ましくは芳香族ジイソシアネートであり、さらにこのましくは4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートである。
【0028】ポリウレタンの分子量は、質量平均分子量(Mw)が30000〜70000が好ましい。さらに好ましくは40000〜60000である。30000未満であると、塗膜強度が低下し、耐久性が低下する。70000以上であると、溶剤への溶解性が低下し、分散性が低下する。
【0029】ポリウレタンのガラス転移温度(Tg)は、50℃〜150℃であることが好ましく、より好ましくは70℃〜120℃であり、更に好ましくは80℃〜100℃である。50℃未満では、高温での塗膜強度が低下するので耐久性、保存性が低下する。150℃以上ではカレンダー成型性が低下し、電磁変換特性が低下することとなる。
【0030】本発明のポリウレタン樹脂は、極性基を有するものが好ましい。極性基としては、−SO3M、−OSO3M、−COOM、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2、−NR2、−N+2R’COO-(ここでMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、R、R’は炭素数1〜12のアルキル基を示す)から選ばれるものが用いられる。極性基は、本発明のポリウレタン樹脂に使用されるジオール成分、二塩基酸成分或いは本発明のポリエステルポリオール以外のポリオール等に導入したモノマーを用いて重合して本発明のポリウレタン樹脂としてもよいし、生成した樹脂に極性基を導入してもよい。
【0031】併用できるポリオール成分としてはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが用いられる。上記極性基を有したモノマーとしては、具体的には、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムイソフタル酸、ナトリウムスルホテレフタル酸、カリウムテレフタル酸、2−ナトリウムスルホ−1,4−ブタンジオール、2−カリウムスルホ−1,4−ブタンジオール、ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールプロピオン酸ナトリウム、ナトリウムスルホコハク酸など、または他のグリコール、ジカルボン酸とともに脱水縮合して得られる極性基含有ポリエステルポリオール、上記極性基含有ジオールを開始剤としてε−カプロラクトンなどのラクトンを開環重合して得られる極性基含有ポリエステルポリオールや極性基含有ジオールにエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した極性基含有ポリエーテルジオールなどがある。
【0032】本発明のポリウレタン樹脂の極性基としては、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−COOMが好ましい。 更に好ましくは−SO3M、−OSO3Mである。極性基の含有量は、1×10-5eq/g〜2×10-4eq/gであることが好ましく、1×10-5eq/g未満であると磁性体への吸着が不十分となるので分散性が低下する傾向がある。2×10-4eq/g以上であると溶剤への溶解性が低下するので分散性が低下する傾向がある。
【0033】本発明のポリウレタン樹脂中のウレタン基濃度は、3.0mmol/g〜4.0mmol/gであることが好ましく、より好ましくは3.3mmol/g〜3.7mmol/gである。3.0mmol/gよりも少ないと塗膜のガラス転移温度(Tg)が低下し、耐久性が低下する。4.0mmol/gよりも多いと溶剤への溶解性が低下し、分散性が低下するとともに、必然的にポリオールを含有できなくなるために分子量の調整を行うことが困難となる等の合成上の不都合が生じやすい。
【0034】本発明のポリウレタン樹脂中のOH基含有量は、1分子当たり3個〜20個であることが好ましく、更に好ましくは1分子当たり3個〜15個である。1分子当たり3個未満では、イソシアネート硬化剤との反応性が低下するために塗膜強度が低下し、耐久性が低下する。一方、1分子当たり15個以上では、溶剤への溶解性が低下するので分散性が低下する。
【0035】本発明のポリウレタン樹脂は、下層及び磁性層に少なくとも結合剤成分として含有されるものである。下層及び磁性層に使用される該結合剤は、本発明のポリウレタン樹脂のみでもよいが、他の樹脂を併用してもよく、また、通常、ポリイソシアネートなどの硬化剤が含まれる組成物である。
【0036】併用される樹脂としては、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。塩化ビニル系樹脂の重合度は100〜500が好ましく、150〜400が更に好ましく、200〜300が特に好ましい。塩化ビニル系樹脂はビニル系モノマー、例えば酢酸ビニル、ビニルアルコール、塩化ビニリデン、アクリロニトリルなどを共重合させたものでもよい。
【0037】中でも塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルとを含む共重合体が好ましい。酢酸ビニルは、この共重合体に好ましくは1〜15質量%含有されると本発明のポリウレタン樹脂との相溶性が高く、且つ塗布液の高剪断速度における粘度が低くなり極めて平滑な磁性層が得られるという効果を奏する。
【0038】塩化ビニル系樹脂は、本発明のポリウレタン樹脂と同様な極性基を有していることが好ましく、極性基の含有量は、1×10-5〜1×10-3eq/gが好ましい。この範囲より多いと粘度が高く分散性が低下する傾向がある。この範囲より少なくとも分散性が低下する傾向がある。また、塩化ビニル系樹脂はエポキシ基を有していることが好ましく、含有されるエポキシ基量は、好ましくは1×10-4〜1×10-2eq/g、更に好ましくは、5×10-4〜2×10-3eq/gである。
【0039】更に、塩化ビニル系樹脂は、OH基を有していることが好ましい。塩化ビニル系樹脂にOH基を導入するとイソシアネート硬化剤と反応し架橋構造を形成し、力学強度が向上するので好ましい。OH基の導入法としては、ビニルアルコールのようにポリマー主鎖に直結するよりも主鎖から炭化水素鎖、ポリアルキレングリコール鎖を介して結合したものの方が硬化性が高く好ましい。また、OH基は2級、1級が好ましい。塩化ビニル系樹脂へのOH基の導入は、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアリルエーテルなどのビニルモノマーの共重合で行うことができる。
【0040】塩化ビニル系樹脂のOH基含量は、好ましくは1×10-4〜5×10-3eq/g、更に好ましくは、2×10-4〜2×10-3eq/gである。塩化ビニル系樹脂は、通常、0〜15質量%の範囲で他の共重合可能なモノマーを含有することができる。このような共重合可能なモノマ−としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボン酸ビニルエステル、アリルエーテル、スチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、その他のビニルモノマ−が挙げられる。
【0041】本発明において、併用される結合剤成分としては、その他、ニトロセルロース樹脂などのセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられ、これらは、単独でも組み合わせでも使用することができる。通常、本発明のポリウレタン樹脂は結合剤中に50〜100質量%を含有されていることが好ましく、さらに好ましくは70〜100質量%の量である。特に好ましくは80〜100質量%の量である。50質量%未満では、分散性が低下する。
【0042】上記併用される樹脂は、極性基を有しているものが好ましく、極性基及びその使用量は、言及のないものについては本発明のポリウレタン樹脂と同程度である。また塩化ビニル系樹脂と併用する場合は、該結合剤として本発明のポリウレタン樹脂と極性基含有塩化ビニル系樹脂との質量比は、好ましくは85/15〜100/0、更に好ましくは90/10〜100/0、特に好ましくは95/5〜100/0の範囲の樹脂を含む組成物が挙げられる。
【0043】結合剤成分となる硬化剤としてはポリイソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤などがあるがポリイソシアネート硬化剤が好ましい。ポリイソシアネート硬化剤の例としては、本発明のポリウレタン樹脂の構成成分となる前記有機ジイソシアネート化合物、前記ジイソシアネートとトリメチロールプロパン、グリセリンなど多価アルコールとの反応物、たとえばトリレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの反応生成物(例、デスモジュールL−75(バイエル社製))、キシリレンジイソシアネートあるいは、ヘキサメチレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの反応生成物、ヘキサメチレンジイソシアネート3モルとのビューレット付加化合物などがある。またジイソシアネート化合物を重合したイソシアヌレート型のポリイソシアネートとしてトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの3、5、7量体がある。またMDI(4,4−ジフェニルメタンジジイソシアネート)の多量体であるポリメリックMDIなどがある。磁性層に含まれるポリイソシアネート化合物は、結合剤中に10〜50質量%の範囲で含有されていることが好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%の範囲である。
【0044】また、電子線照射による硬化処理を行う場合には、ウレタンアクリレート等のような反応性二重結合を有する化合物を使用することができる。樹脂成分と硬化剤との合計(すなわち結合剤)の質量は、強磁性粉末100質量部に対して、通常15〜40質量部の範囲内にあることが好ましく、さらに好ましくは20〜30質量部である。
【0045】本発明は、磁気記録媒体中の塩素含有量が同媒体1m2当たり好ましくは35mg以下、更に好ましくは20mg以下、特に好ましくは10mg以下とすることができる。
【0046】本発明の磁気記録媒体に使用される強磁性粉末は、強磁性酸化鉄、コバルト含有強磁性酸化鉄又は強磁性合金粉末でBET法による比表面積(SBET)が通常、40〜80m2/g 、好ましくは50〜70m2/g である。結晶子サイズは通常、12〜25nm、好ましくは13〜22nmであり、特に好ましくは14〜20nmである。
【0047】強磁性金属粉末としてはFe、Ni、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni、Co−Ni−Fe等が挙げられ、本発明においては、高記録密度媒体に使用されるFeを主体とするものが好ましく、通常、Feが強磁性金属粉末の50原子%以上、好ましくは、55〜90原子%であり、併用され得る元素としては、Y、Co等が好ましい。本発明において、それら元素は飽和磁化σsを大きくしかつ緻密で薄い酸化膜を形成することができるので特に好ましい。強磁性粉末中のイットリウム含有量は、鉄原子に対してイットリウム原子の比、Y/Feが0.5原子%〜20原子%が好ましく、更に好ましくは、5〜10原子%である。0.5原子%よりも少ないと強磁性粉末の高σs化できないために磁気特性が低下し、電磁変換特性が低下する。20原子%よりも大きいと鉄の含有量が少なくなるので磁気特性が低下し、電磁変換特性が低下する。さらに、鉄100原子%に対して総和で通常、20原子%以下、好ましくは、7〜20原子%の割合で、アルミニウム、ケイ素、硫黄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ロジウム、パラジウム、金、錫、アンチモン、ホウ素、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、金、鉛、リン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、テルル、ビスマス等を含むことができる。
【0048】Yを含む強磁性金属粉末は、同粒子間の磁気的エネルギーが強く分散しにくいのであるが、本発明のポリウレタン樹脂を含む結合剤を用いて分散することによって、電磁変換特性、走行耐久性に優れた磁気記録媒体を得ることができる。
【0049】これらの強磁性粉末の製法は既に公知であり、本発明で用いる強磁性粉末についても公知の方法に従って製造することができる。強磁性粉末の形状には、針状、粒状、サイコロ状、米粒状および板状のものなどが使用される。とくに針状の強磁性粉末を使用することが好ましい。
【0050】例えば、本発明で好適に用いられるコバルト、イットリウムを導入した強磁性金属粉末の製造方法の一例を示す。第一鉄塩とアルカリを混合した水性懸濁液に、酸化性気体を吹き込むことによって得られるオキシ水酸化鉄を出発原料とする例を挙げることができる。このオキシ水酸化鉄の種類としては、α一FeOOHが好ましく、その製法としては、第一鉄塩を水酸化アルカリで中和してFe(OH)2 の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性ガスを吹き込んで針状のα一FeOOHとする第一の製法がある。一方、第一鉄塩を炭酸アルカリで中和してFeCO3 の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性気体を吹き込んで紡錘状のα一FeOOHとする第二の製法がある。このようなオキシ水酸化鉄は第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応させて水酸化第一鉄を含有する水溶液を得て、これを空気酸化等により酸化して得られたものであることが好ましい。この際、第一鉄塩水溶液にNi塩や、Ca塩、Ba塩、Sr塩等のアルカリ土類元素の塩、Cr塩、Zn塩などを共存させても良く、このような塩を適宣選択して用いることによって粒子形状(軸比)などを調製することができる。第一鉄塩としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等が好ましい。またアルカリとしては水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が好ましい。また、共存させることができる塩としては、塩化ニッケル、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化クロム、塩化亜鉛等の塩化物が好ましい。
【0051】次いで、鉄にコバルトを導入する場合は、イットリウムを導入する前に、硫酸コバルト、塩化コバルト等のコバルト化合物の水溶液を前記のオキシ水酸化鉄のスラリーに攪拌混合する。コバルトを含有するオキシ水酸化鉄のスラリーを調製した後、このスラリーにイットリウムの化合物を含有する水溶液を添加し、攪拌混合することによって導入することができる。これら強磁性粉末には、イットリウム以外にもネオジム、サマリウム、プラセオジウム、ランタン等を導入することができる。これらは、塩化イットリウム、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化プラセオジウム、塩化ランタン等の塩化物、硝酸ネオジム、硝酸ガドリニウム等の硝酸塩などを用いて導入することができ、これらは、二種以上を併用しても良い。
【0052】また、よく知られているように強磁性金属粉末は徐酸化処理により、化学的に安定にするためにその粒子表面に酸化被膜が形成せしめられる。強磁性金属粉末は、少量の水酸化物、または酸化物を含んでもよい。徐酸化の時に使用するガス中に炭酸ガスが含有されていると、強磁性金属粉末表面の塩基性点に吸着するので、このような炭酸ガスが含まれていてもよい。
【0053】磁気記録媒体の表面粗さを小さくするために、強磁性金属粉末の平均長軸長は通常、0.04〜0.15μm、より好ましくは0.05〜0.12μm、平均針状比は通常、4〜10であって、好ましくは4〜8であることが望ましい。
【0054】強磁性金属粉末粒子中の結晶を観察した時、単結晶で形成された粒子の全粒子に対する割合を結晶率と定義すると結晶率が30〜100%が好ましく、より好ましくは35〜100%である。本発明の強磁性金属粉末の飽和磁化σsは100A・m2/kg以上が好ましく、さらに好ましくは110〜160A・m2/kgである。強磁性金属粉末の抗磁力Hcは1800〜3000エルステッド(143〜239kA/m)が好ましく、更に好ましくは1900〜2800エルステッド(151〜223kA/m)である。
【0055】また、強磁性金属粉末には、後述する分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行うこともできる。具体的には、特公昭44−14090号公報、特公昭45−18372号公報、特公昭47−22062号公報、特公昭47−22513号公報、特公昭46−28466号公報、特公昭46−38755号公報、特公昭47−4286号公報、特公昭47−12422号公報、特公昭47−17284号公報、特公昭47−18509号公報、特公昭47−18573号公報、特公昭39−10307号公報、特公昭48−39639号公報、米国特許3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号などに記載されている。
【0056】強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2質量%とするのが望ましい。後述する結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化するのが望ましい。強磁性金属粉末は、タップ密度は0.2〜0.8g/ccが望ましい。0.8g/ccを越えると強磁性金属粉末を徐酸化するときに均一に徐酸化されないので強磁性金属粉末を安全にハンドリングのすることが困難であったり、得られたテープ等の磁化が経時で減少する傾向がある。0.2cc/g未満では分散が不十分になりやすい傾向がある。
【0057】上記の樹脂成分、硬化剤および強磁性粉末を、磁性塗料の調製の際に通常使用されているメチルエチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等の溶剤と共に混練分散して磁性塗料とする。混練分散は通常の方法に従って行うことができる。なお、通常、磁性塗料中には、上記成分以外に、α−Al23、Cr23等の研磨剤、カーボンブラック等の帯電防止剤などの通常使用されている添加剤あるいは充填剤を含む。
【0058】下層非磁性層に用いる非磁性粉末は、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機質化合物から選択することができる。具体的には、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化すず、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独または組合せて使用される。特に好ましいのは二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいのは二酸化チタンである。これら非磁性粉末の平均粒子径は0.005〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒子径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは非磁性粉末の平均粒子径は0.01μm〜0.2μmである。非磁性粉末のpHは6〜9の間が特に好ましい。非磁性粉末の比表面積は通常、1〜100m2/g、好ましくは5〜50m2/g、更に好ましくは7〜40m2/g である。非磁性粉末の結晶子サイズは0.01μm〜2μmが好ましい。DBPによる吸油量は通常、5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は通常、1〜12、好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。これらの非磁性粉末の表面は表面処理により表面にAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnOを存在させることが好ましい。特に分散性の向上に好ましいものはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、更に好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2 である。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナを存在させた後にその表層にシリカを存在させる処理をする方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は多孔質層にしても良いが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0059】下層にカーボンブラックを混合させて公知の効果であるRsを下げることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。このためにはゴム用ファーネスブラック、ゴム用サーマルブラック、カラー用カーボンブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。カーボンブラックの比表面積は100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの平均粒子径は5〜80nm、好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800,880,700、VULCAN XC−72、三菱化学社製、#3050B,3150B,3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B,#970B、#850B、MA−600、コロンビアカーボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN 8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。
【0060】下層磁性層である場合には、強磁性粉末としては、γ−Fe23、Co変性γ−Fe23、α−Feを主成分とする合金、CrO2 等が用いられる。特に、Co変性γ−Fe23が好ましい。本発明の下層磁性層に用いられる強磁性粉末は上層磁性層に用いられる強磁性粉末と組成及び/又は磁気特性が異なるものが選択される。例えば、長波長記録特性を向上させるためには、下層磁性層の抗磁力Hcは上層磁性層のそれより低く設定することが望ましく、下層に強磁性酸化鉄粉末を上層磁性層に強磁性金属粉末を適用することができる。また下層磁性層の残留磁束密度Brを上層磁性層のそれより高くする事が有効である。下層磁性層または下層非磁性層の製造に使用する結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤あるいは分散方法等は、上層磁性層に使用のものと同様のものを適用することができる。
【0061】本発明に用いることのできる支持体としては二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンズオキシダゾール等の公知のものが使用できる。好ましくはポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミドである。これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行っても良い。また本発明に用いることのできる支持体は中心面平均表面粗さがカットオフ値0.25mmにおいて0.1〜20nm、好ましくは1〜10nmの範囲という優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。また、これらの支持体は中心面平均表面粗さが小さいだけでなく1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。
【0062】本発明の磁気記録媒体の製造方法は例えば、走行下にある支持体の表面に下層塗布液及び上層磁性層塗布液を、上層磁性層の乾燥厚みが好ましくは0.1〜0.5μmの範囲内、より好ましくは0.1〜0.3μm、下層の乾燥厚みが0.05〜5μmの範囲内、より好ましくは0.07〜3μmになるように塗布する。ここで下層塗布液及び上層磁性層塗布液を逐次あるいは同時に重層塗布してもよい。
【0063】上記磁性塗料を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。 これらについては例えば株式会社総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
【0064】本発明の磁気記録媒体の製造に適用する塗布装置、方法の例として以下のものを提案できる。
(1)磁性塗料の塗布で一般的に適用されるグラビア、ロール、ブレード、エクストルージョン等の塗布装置により、まず下層を塗布し、下層が未乾燥の状態のうちに特公平1−46186号公報、特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報等に開示されているような支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により、上層磁性層を塗布する。
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを2個有する一つの塗布ヘッドにより上層磁性層及び下層をほぼ同時に塗布する。
(3)特開平2−174965号公報に開示されているようなバックアップロール付きのエクストルージョン塗布装置により、上層磁性層及び下層をほぼ同時に塗布する。
【0065】本発明で用いる支持体の磁性塗料が塗布されていない面にバックコート層(バッキング層)が設けられていてもよい。バックコート層は、支持体の磁性塗料が塗布されていない面に、研磨剤、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤とを有機溶剤に分散したバックコート層形成塗料を塗布して設けられた層である。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができ、また結合剤としてはニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独またはこれらを混合して使用することができる。なお、支持体の磁性塗料およびバックコート層形成塗料の塗布面に接着剤層が設けられてもよい。
【0066】これら塗布層は、塗布層中に含まれる強磁性粉末を磁場配向処理を施した後に乾燥される。このようにして乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施す。表面平滑化処理には、たとえばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダー処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。
【0067】本発明の磁気記録媒体は、表面の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて0.1〜4nm、好ましくは1〜3nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダー処理を施すことにより行われる。カレンダー処理条件としては、カレンダーロールの温度を60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は通常、100〜500Kg/cm(980〜4900N/cm)の範囲であり、好ましくは200〜450Kg/cm(1960〜4410N/cm)の範囲であり、特に好ましくは300〜400Kg/cm(2940〜3920N/cm)の範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。このようにして硬化処理された積層体を次に所望の形状にする。得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0068】以上のように、本発明のポリウレタンは、ポリオール成分として、脂肪族の二塩基酸と従来よりも分枝脂肪族ジオールを多く含有しているので溶剤への溶解性が高く、強磁性粉末の分散性にも優れる。更にウレタン基濃度が高いので従来の脂肪族系ウレタンに比べて高Tgが得られるので走行耐久性にも優れる。
【0069】また、水素結合成分であるウレタン基濃度を増加させることは、乾燥塗膜中での分子間相互作用の向上によりにTgなどの塗膜強度が向上する一方、溶剤溶解性が低下し塗布液粘度が増加する為に分散性が低下してしまうが、本発明のポリウレタンはウレタン基濃度が大であるとともにポリエステルポリオール成分として脂肪族の二塩基酸と分枝脂肪族ジオールを用いているので溶剤溶解性が低下しない特徴を合わせもつ。これは分岐をもつことで塗布液中でのポリウレタン分子間の会合を防止できているためと考えられる。
【0070】また、本発明のポリウレタン樹脂を含む結合剤は、エステル系潤滑剤等の潤滑剤と相互作用し、磁性層のC/Feのピーク比を7〜11に調整するために寄与するものと考えられる。
【0071】
【実施例】以下に、本発明の実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。以下に記載の「部」は「質量部」を示し、%は質量%を示す。
(ポリウレタン樹脂:本発明のポリウレタン樹脂A、B、C及び本発明外のポリウレタン樹脂D、Eの合成例)還流式冷却器、攪拌機を具備し、予め窒素置換した容器に表1に示したポリエステルポリオールと、表2に示した鎖延長剤のジオールとDEIS(スルホイソフタル酸ジメチルエステル)をシクロヘキサノン中にて窒素気流下で60℃で溶解した。表1において、配合量はモル%で示す。また分子量は水酸基価で求めた。 次いで、触媒として、ジ−n−ジブチルスズジラウレート60ppmを加え15分間溶解した。さらに表2に示した量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を加え90℃にて6時間加熱反応し、ポリウレタン溶液を得た。表2に得られたポリウレタンの重量平均分子量、ガラス転移温度を示す。
【0072】
【表1】


【0073】
【表2】


【0074】〔実施例1〕
(上層磁性層用塗料)
強磁性合金粉末(組成:Fe 89原子%,Co 5原子%,Y 6原子%、Hc:2000エルステッド(159kA/m),結晶子サイズ:15nm,SBET:59m2/g,平均長軸長:0.12μm,平均針状比:7,σs:150A・m2/kg)100部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いで ポリウレタン樹脂A 10部(固形分)
塩化ビニル系樹脂 1.7部(塩化ビニル/酢酸ビニル/グリシジルメタクリレート=86/9/5の共重合体にヒドロキシエチルスルフォネートナトリウム塩を付加した化合物、SO3Na=6×10-5eq/g,エポキシ=10-3eq/g,Mw:30,000)
シクロヘキサノン 60部を加え60分間混練し、次いで 研磨剤(Al23)(平均粒子径:0.3μm) 2部 カーボンブラック(平均粒子径:40nm) 2部 メチルエチルケトン/トルエン=1/1 200部を加えてサンドミルで120分間分散した。これに ポリイソシアネート 5部(固形分)
(日本ポリウレタン製コロネート3041)
2−エチルヘキシルステアレート 0.5部 ステアリン酸 0.5部 ステアリン酸アミド 0.3部 メチルエチルケトン 50部を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、上層用磁性塗料を調製した。
【0075】
(下層非磁性用塗料)
α−Fe23 85部(平均粒子径:0.15μm、SBET:52m2/g、表面処理Al23、SiO2、pH:6.5〜8.0)
カーボンブラック(平均粒子径:40nm) 15部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いで ポリウレタン樹脂A 10部(固形分) 塩化ビニル系樹脂 1.7部(塩化ビニル/酢酸ビニル/グリシジルメタクリレート=86/9/5の共重合体にヒドロキシエチルスルフォネートナトリウム塩を付加した化合物、SO3Na=6×10-5eq/g,エポキシ=10-3eq/g,Mw:30,000)
シクロヘキサノン 60部を加え60分間混練し、次いで メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=6/4 200部を加えてサンドミルで120分間分散した。これに 2−エチルヘキシルステアレート 0.5部 ステアリン酸 1.2部 ステアリン酸アミド 0.3部 メチルエチルケトン 50部を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、下層用塗料を調製した。
【0076】接着層としてスルホン酸含有ポリエステル樹脂を乾燥後の厚さが0.1μmになるようにコイルバーを用いて厚さ4μmのアラミド支持体の表面に塗布した。次いで得られた下層用塗料を1.0μmに、さらにその直後に上層磁性塗料を乾燥後の厚さが0.1μmになるように、リバースロールを用いて同時重層塗布した。磁性塗料塗布された非磁性支持体を、磁性塗料が未乾燥の状態で0.5T(テスラ)のCo磁石と0.5Tのソレノイド磁石で磁場配向を行ない、塗布したものを金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロールの組み合せによるカレンダー処理を(速度100m/min、線圧300Kg/cm(線圧2840N/cm)、温度90゜C)で行なった後3.8mm幅にスリットした。
【0077】(実施例2〜8及び比較例1〜5)ポリウレタン樹脂種、エステル系潤滑剤(2−エチルヘキシルステアレート)添加量、磁性層の塗布厚み(乾燥後)を表2のように変更して実施例1と同様の方法で作成した。得られた試料を以下により測定、評価し、その結果を表3に示す。
【0078】測定方法■C/Feのピーク比:前記によった。
■長期保存性:テープを60℃、90%RH環境下に8週間保存し、磁性層表面を微分干渉顕微鏡200倍で観察した。微細な結晶が発生していたものを×、結晶の発生には至らないが変色していたものを△、変化がなかったものを○とした。
■出力:試料テープにドラムテスター(交洋製作所製)を用いて記録波長0.5μm、ヘッド速度10m/秒の条件で記録し、再生した。比較例3のテープの再生出力を100%としたときの各試料テープの相対的な再生出力を評価した。
【0079】
【表3】


【0080】上表より、本発明のポリウレタン樹脂を用いるが、C/Feのピーク比が本発明の範囲外である比較例1、2及び5は、再生出力は、実施例と同程度であるが、長期保存性が劣る。また、本発明のポリウレタン樹脂ではないポリウレタン樹脂を用いると共にC/Feのピーク比が本発明の範囲内である比較例3、4は、長期保存性と再生出力が、実施例に比べて劣る。
【0081】
【発明の効果】本発明のポリウレタン樹脂を含有する磁気記録媒体は、次の効果を奏する。
■電磁変換特性が向上する。
■長期保存性が向上する。
■塩酸発生が抑制され、ヘッド等の走行系の腐食が改良される。
■塩化ビニル系樹脂の使用が抑制できるので、環境保全に有用な磁気記録媒体を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上に非磁性粉末または強磁性粉末と結合剤とを分散させてなる下層の上に少なくとも一層の強磁性粉末と結合剤を分散した磁性層を有する磁気記録媒体において、該結合剤がポリエステルポリオールと鎖延長剤と有機ジイソシアネートから得られるポリウレタン樹脂を含み、且つオージェ電子分光法で磁性層表面を測定した際のC/Feのピーク比が7〜11であり、前記ポリウレタンはそのポリエステルポリオール中の二塩基酸が脂肪族二塩基酸を含み、ジオール成分の70モル%以上が炭素数2以上のアルキル分岐側鎖を持ち環構造をもたないジオールからなるポリウレタン(1)、又はポリエステルポリオール中の二塩基酸が脂肪族二塩基酸を含みジオール成分の70モル%以上が1分子中の分岐側鎖炭素数の合計が2以上のアルキル分岐脂肪族ジオールであり、鎖延長剤が1分子中の分岐側鎖炭素数の合計が3以上のアルキル分岐脂肪族ジオールを含むポリウレタン(2)であることを特徴とする磁気記録媒体。

【公開番号】特開2003−30814(P2003−30814A)
【公開日】平成15年1月31日(2003.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−216757(P2001−216757)
【出願日】平成13年7月17日(2001.7.17)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】