説明

磁気記録媒体

【課題】 優れた走行耐久性および磁性体の結合剤に対する分散性を有し、なおかつ廃棄時の燃焼焼却により塩素ガスやダイオキシンのような有害ガスを発生させない磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】 非磁性支持体の少なくとも一方の面に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を設けてなる磁気記録媒体において、前記磁性層が、前記強磁性粉末100質量部に対し、モース硬度8〜10であり且つ平均粒径0.010〜0.3μmの研磨剤を3〜30質量部含み、前記結合剤が、少なくともポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリイソシアネートを含有することを特徴とする磁気記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体に関するものであり、詳しくは、優れた走行耐久性および磁性体の結合剤に対する分散性を有し、なおかつ廃棄時の燃焼焼却により塩素ガスやダイオキシンを発生させる懸念の少ない磁気記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、テラバイト級の情報を高速に伝達するための手段が著しく発達し、莫大な情報をもつ画像およびデータ転送が可能となる一方、それらを記録、再生および保存するための高度な技術が要求されるようになってきた。記録、再生媒体には、フレキシブルディスク、磁気ドラム、ハードディスクおよび磁気テープが挙げられるが、特に、磁気テープは1巻あたりの記録容量が大きく、データバックアップ用をはじめとしてその役割を担うところが大きい。
【0003】
一般的に、磁気テープや磁気ディスク等の磁気記録媒体では、表面に優れた平滑性を付与できるという観点から、結合剤として塩化ビニル系樹脂が用いられている。しかし一方で、塩化ビニル系樹脂を焼却すると塩素ガスやダイオキシン等の有害ガスが排出される懸念のあることが知られ、昨今の環境保全意識の高まりから、磁気記録媒体の結合剤においても、塩化ビニル系樹脂を使用しない事を想定し、模索する動きが早まりつつある。
【0004】
例えば特許文献1には、電磁変換特性、走行耐久性を向上し、廃棄処理時に有害ガスを発生しない磁気記録媒体を提供することを目的として、磁性層と非磁性支持体を有し、磁性層の結合バインダ樹脂がポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、アクリルから選ばれた1種以上とポリウレタンの混合物からなり、磁性粉100重量部に対して15〜60重量部のモース硬度5〜7の非磁性無機粉体を含有する磁気記録媒体が開示されている。
また特許文献2には、前記特許文献1と同様の目的で、非磁性支持体上にコバルト−γ−酸化鉄を含有する第1の磁性層、板状六方晶系フェライト磁性粉を含有する第2の磁性層を順次積層し、第1の磁性層の結合剤としてポリウレタン樹脂を用い、第2の磁性層の結合剤として、ポリウレタンの他にポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、フェノキシ、アクリルの少なくとも1種を使用する磁気記録媒体が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記の従来技術は、結合剤として塩化ビニル系樹脂を使用する従来の磁気記録媒体と比較して、走行耐久性および磁性体の結合剤に対する分散性に劣り、改善の余地があった。
【0006】
【特許文献1】特開平6−290448号公報
【特許文献2】特開平7−57244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の目的は、優れた走行耐久性および磁性体の結合剤に対する分散性を有し、なおかつ廃棄時の燃焼焼却により塩素ガスやダイオキシンのような有害ガスを発生させる懸念の少ない磁気記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のとおりである。
1)非磁性支持体の少なくとも一方の面に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を設けてなる磁気記録媒体において、
前記磁性層が、前記強磁性粉末100質量部に対し、モース硬度8〜10であり且つ平均粒径0.010〜0.3μmの研磨剤を3〜30質量部含み、
前記結合剤が、少なくともポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリイソシアネートを含有することを特徴とする磁気記録媒体。
2)前記ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度(Tg)が60〜110℃であることを特徴とする上記1)に記載の磁気記録媒体。
3)前記ポリビニルアセタール樹脂の曲げ強度が700〜1200kg/cm(68.6〜117.6MPa)であることを特徴とする上記1)または2)に記載の磁気記録媒体。
4)前記ポリビニルアセタール樹脂の抗張力が600〜900kg/cm(58.8〜88.2MPa)であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
5)前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を設けてなることを特徴とする上記1)〜4)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
6)前記非磁性支持体の他方の面にバック層を設けたことを特徴とする上記1)〜5)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた走行耐久性および磁性体の結合剤に対する分散性を有し、なおかつ廃棄時の燃焼焼却により塩素ガスやダイオキシンのような有害ガスを発生させる懸念の少ない磁気記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
[非磁性支持体]
本発明における非磁性支持体は、ポリエステル支持体、芳香族ポリアミド支持体、芳香族ポリイミド支持体等が挙げられる。
中でもポリエステル支持体(以下、単にポリエステルという)が好ましい。このようなポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどジカルボン酸およびジオールからなるポリエステルである。
主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。
これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸及び/または2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコール及び/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
中でも、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。特に好ましくはポリエチレン−2,6−ナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルである。
なお、本発明に用いられるポリエステルは、二軸延伸されていてもよいし、2層以上の積層体であってもよい。
また、ポリエステルは、さらに他の共重合成分が共重合されていても良いし、他のポリエステルが混合されていても良い。これらの例としては、先に挙げたジカルボン酸成分やジオール成分、またはそれらから成るポリエステルを挙げることができる。
本発明に用いられるポリエステルには、フィルム時におけるデラミネーションを起こし難くするため、スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、ポリオキシアルキレン基を有するジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、ポリオキシアルキレン基を有するジオールなどを共重合してもよい。
中でもポリエステルの重合反応性やフィルムの透明性の点で、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、4−ナトリウムスルホフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸およびこれらのナトリウムを他の金属(例えばカリウム、リチウムなど)やアンモニウム塩、ホスホニウム塩などで置換した化合物またはそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体およびこれらの両端のヒドロキシ基を酸化するなどしてカルボキシル基とした化合物などが好ましい。この目的で共重合される割合としては、ポリエステルを構成するジカルボン酸を基準として、0.1〜10モル%が好ましい。
また、耐熱性を向上する目的では、ビスフェノール系化合物、ナフタレン環またはシクロヘキサン環を有する化合物を共重合することができる。これらの共重合割合としては、ポリエステルを構成するジカルボン酸を基準として、1〜20モル%が好ましい。
【0011】
本発明において、ポリエステルの合成方法は、特に限定があるわけではなく、従来公知のポリエステルの製造方法に従って製造できる。例えば、ジカルボン酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させる直接エステル化法、初めにジカルボン酸成分としてジアルキルエステルを用いて、これとジオール成分とでエステル交換反応させ、これを減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去することにより重合させるエステル交換法を用いることができる。この際、必要に応じてエステル交換触媒あるいは重合反応触媒を用い、あるいは耐熱安定剤を添加することができる。
また、合成時の各過程で着色防止剤、酸化防止剤、結晶核剤、すべり剤、安定剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、粘度調節剤、消泡透明化剤、帯電防止剤、pH調整剤、染料、顔料、反応停止剤などの各種添加剤の1種又は2種以上を添加させてもよい。
【0012】
また、ポリエステルにはフィラーが添加されてもよい。フィラーの種類としては、球形シリカ、コロイダルシリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機粉体、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂等の有機フィラー等が挙げられる。
また、支持体を高剛性化するために、これらの材料を高延伸したり、表面に金属や半金属または、これらの酸化物の層を設けることもできる。
【0013】
本発明において、非磁性支持体であるポリエステルの厚みは、好ましくは3〜80μm、より好ましくは3〜50μm、とくに好ましくは3〜10μmである。また支持体表面の中心線平均粗さ(Ra)は、磁性層を設ける側が8nm以下、より好ましくは6nm以下である。このRaは、WYKO社製TOPO−3Dで測定した。
また、非磁性支持体の長手方向のヤング率は、6.0GPa以上が好ましく、7.0GPa以上がさらに好ましい。
【0014】
本発明の磁気記録媒体は、前記の非磁性支持体の少なくとも一方の面に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を設けたものであり、非磁性支持体と磁性層との間に実質的に非磁性である非磁性層(下層)を設けたものが好ましい。
【0015】
[磁性層]
磁性層に含まれる強磁性粉末として、その体積が(0.1〜8)×10−18mlであることが好ましく、(0.5〜5)×10−18mlであることが更に好ましい。この範囲とすることにより、熱揺らぎにより磁気特性の低下を有効に抑えることができると共に低ノイズを維持したまま良好なC/N(S/N)を得ることができる。強磁性粉末としては、特に制限はないが、強磁性金属粉末または六方晶系フェライト粉末が好ましい。
針状粉末の体積は、形状を円柱と想定して長軸長、短軸長から求める。
板状粉末の場合は、形状を角柱(六方晶系フェライト粉末の場合は6角柱)と想定して板径、軸長(板厚)から体積を求める。
磁性体のサイズは、磁性層を適当量剥ぎ取る。剥ぎ取った磁性層30〜70mgにn−ブチルアミンを加え、ガラス管中に封かんし熱分解装置にセットして140℃で約1日加熱する。冷却後にガラス管から内容物を取り出し、遠心分離し、液と固形分を分離する。分離した固形分をアセトンで洗浄し、TEM用の粉末試料を得る。この試料を日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて粒子を撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粒子写真を得る。粒子写真から目的の磁性体を選びkontron製画像解析装置KS−400デジタイザー上に載せ、粉体の輪郭をトレースしてそれぞれの粒子のサイズを測定する。500個の粒子のサイズを測定し、測定値を平均して平均サイズとする。
【0016】
<強磁性金属粉末>
本発明の磁気記録媒体における磁性層に用いられる強磁性金属粉末としては、Feを主成分とするもの(合金も含む)であれば、特に限定されないが、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末が好ましい。これらの強磁性粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つがα−Fe以外に含まれるものが好ましく、特に、Co,Al,Yが含まれるのが好ましい。さらに具体的には、CoがFeに対して10〜40原子%、Alが2〜20原子%、Yが0.1〜15原子%含まれるのが好ましい。
【0017】
上記強磁性金属粉末には後述する分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。また、強磁性金属粉末は、少量の水、水酸化物又は酸化物を含むものであってもよい。強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化するのが好ましい。強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は通常、6〜12であるが、好ましくは7〜11である。また強磁性金属粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Sr、NH、SO、Cl、NO、NOなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましい。各イオンの総和が300ppm以下程度であれば、特性には影響しない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は空孔が少ないほうが好ましくその値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。
【0018】
強磁性金属粉末の平均長軸長は、5〜200nmが好ましく、10〜100nmが更に好ましく、30〜80nmがとくに好ましい。また強磁性金属粉末の結晶子サイズは8〜20nmであることが好ましく、10〜18nmであることが更に好ましく、12〜16nmであることが特に好ましい。この結晶子サイズは、X線回折装置(理学電機製RINT2000シリーズ)を使用し、線源CuKα1、管電圧50kV、管電流300mAの条件で回折ピークの半値幅からScherrer法により求めた平均値である。
【0019】
強磁性金属粉末のBET法による比表面積(SBET)は、50m/g以上が好ましく、55〜100m/gであることがさらに好ましく、60〜80m/gであることが最も好ましい。この範囲であれば良好な表面性と低いノイズの両立が可能となる。強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12であるが、好ましくは7〜10である。強磁性金属粉末は必要に応じ、Al、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性金属粉末に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m以下になり好ましい。強磁性金属粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが200ppm以下であれば特に特性に影響を与える事は少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は、空孔が少ないほうが好ましく、その値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。
【0020】
また強磁性金属粉末の形状については、先に示した粒子体積を満足すれば針状、粒状、米粒状又は板状いずれでもかまわないが、特に針状の強磁性粉末を使用することが好ましい。針状強磁性金属粉末の場合、針状比は4〜12が好ましく、さらに好ましくは5〜12である。強磁性金属粉末の抗磁力(Hc)は、好ましくは159.2〜238.8kA/m(2000〜3000Oe)であり、さらに好ましくは167.2〜230.8kA/m(2100〜2900Oe)である。また、飽和磁束密度は、好ましくは150〜300mT(1500〜3000G)であり、さらに好ましくは160〜290mTである。また飽和磁化(σs)は、好ましくは140〜170A・m/kg(140〜170emu/g)であり、さらに好ましくは145〜160A・m/kgである。磁性体自体のSFD(switching field distribution)は小さい方が好ましく、0.8以下であることが好ましい。SFDが0.8以下であると、電磁変換特性が良好で、出力が高く、また磁化反転がシャープでピークシフトが小さくなり、高密度デジタル磁気記録に好適である。Hc分布を小さくするためには、強磁性金属粉末においてはゲータイトの粒度分布を良くする、単分散αFeを使用する、粒子間の焼結を防止するなどの方法がある。
【0021】
強磁性金属粉末は、公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。焼結防止処理を行った含水酸化鉄、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFe又はFe−Co粒子などを得る方法、複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性金属粉末は公知の徐酸化処理が施される。含水酸化鉄、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元し、酸素含有ガスと不活性ガスの分圧、温度、時間を制御して表面に酸化皮膜を形成する方法が、減磁量が少なく好ましい。
【0022】
<六方晶フェライト粉末>
六方晶フェライト粉末には、例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、それらのCo等の置換体等がある。より具体的には、マグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、さらに一部にスピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられる。その他、所定の原子以外にAl、Si、S,Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般には、Co−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用できる。また原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。好ましいその他の原子およびその含有率は、前記の強磁性金属粉末の場合と同様である。
【0023】
六方晶フェライト粉末の粒子サイズは、上述の体積を満足するサイズであることが好ましいが、平均板径は、10〜100nmであり、12〜50nmが好ましく、20〜40nmがさらに好ましい。
平均板状比{(板径/板厚)の平均}は1〜15であり、さらに1〜7であることが好ましい。平均板状比が1〜15であれば、磁性層で高充填性を保持しながら充分な配向性が得られ、かつ、粒子間のスタッキングによりノイズ増大を抑えることができる。また、上記粒子サイズの範囲内におけるBET法による比表面積(SBET)は、40m/g以上が好ましく、40〜200m/gであることがさらに好ましく、60〜100m/gであることが最も好ましい。
【0024】
六方晶フェライト粉末の粒子板径・板厚の分布は、通常狭いほど好ましい。粒子板径・板厚を数値化することは、粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定することで比較できる。粒子板径・板厚の分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すと、σ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには、粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。例えば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
【0025】
六方晶フェライト粉末の抗磁力(Hc)は、159.2〜238.8kA/m(2000〜3000Oe)の範囲とすることができるが、好ましくは175.1〜222.9kA/m(2200〜2800Oe)であり、さらに好ましくは183.1〜214.9kA/m(2300〜2700Oe)である。但し、ヘッドの飽和磁化(σs)が1.4Tを越える場合には159.2kA/m以下にすることが好ましい。抗磁力(Hc)は、粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。
【0026】
六方晶フェライト粉末の飽和磁化(σs)は40〜80A・m/kg(emu/g)である。飽和磁化(σs)は高い方が好ましいが、微粒子になるほど小さくなる傾向がある。飽和磁化(σs)の改良のため、マグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合することや、含有元素の種類と添加量の選択等がよく知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理剤としては、無機化合物及び有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P等の酸化物又は水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。添加量は磁性体の質量に対して0.1〜10質量%である。磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。
【0027】
六方晶フェライト粉末の製法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得ガラス結晶化法、(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。六方晶フェライト粉末は、必要に応じ、Al、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性粉末に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m以下になり好ましい。強磁性粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。
【0028】
<結合剤>
本発明の磁性層に用いられる結合剤(バインダー)は、少なくともポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリイソシアネートを含有することを特徴としている。
【0029】
ポリビニルアセタール樹脂は、公知のように、ポリビニルアルコールをアルデヒドと反応させ水酸基の一部または大部分をアセタール化したポリマーであり、下記構造単位を有する。
【0030】
【化1】

【0031】
上記式中、Rはアルキル基を表し、好ましくはRはブチル基である。nは重合度を表す。
【0032】
またポリビニルアセタール樹脂の製造においては、ポリビニルアルコールの水酸基のすべてをアセタール化することはできず、例えばポリビニルブチラールの場合は、アセチル基および水酸基が残存する。このアセチル基および水酸基の割合を制御することによって、所望の物理的および化学的特性を得ることができる。このようなポリビニルアセタール樹脂に残存するアセチル基は、0.1〜10モル%、好ましくは0.5〜5モル%、さらに好ましくは1〜3モル%である。水酸基は、15〜50モル%、好ましくは20〜40モル%、さらに好ましくは20〜38モル%である。
【0033】
ポリビニルアセタール樹脂は、次の特性を有するものが、得られる磁気記録媒体の走行耐久性および磁性体の分散性が一層向上し、好ましい。
(1)ガラス転移温度(Tg)が60〜110℃、好ましくは60〜90℃、さらに好ましくは60〜75℃である。
(2)曲げ強度が700〜1200kg/cm(68.6〜117.6MPa)である。
(3)抗張力が600〜1200kg/cm(58.8〜117.6MPa)、好ましくは650〜1000kg/cm(63.7〜98.0MPa)、さらに好ましくは700〜800kg/cm(68.6〜78.4MPa)である。
なお、前記のTgは、DSC測定により、曲げ強度は、JIS K7203、抗張力はJIS K7113に準じて測定した値である。
また、重合度nは、100〜1000、好ましくは150〜800、さらに好ましくは200〜500である。
【0034】
本発明におけるポリビニルアセタール樹脂は、市販されているものを利用することができ、例えば積水化学工業社製、商品名エスレックBシリーズ、Kシリーズが挙げられる。
【0035】
本発明で使用されるポリウレタン樹脂は、とくに制限されないが、次のような樹脂が好ましい。すなわち、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのポリプロピレンオキサイド付加物などの環状構造体と、アルキレンオキサイド鎖を有する分子量500〜5000のポリオールと、鎖延長剤として環状構造を有する分子量200〜500のポリオールと、有機ジイソシアネートとを反応させ、かつ極性基を導入したポリウレタン樹脂、又はコハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族二塩基酸と、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等のアルキル分岐側鎖を有する環状構造を持たない脂肪族ジオールからなるポリエステルポリオールと、鎖延長剤として2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の炭素数が3以上の分岐アルキル側鎖をもつ脂肪族ジオールと、有機ジイソシアネート化合物とを反応させ、かつ極性基を導入したポリウレタン樹脂、又はダイマージオール等の環状構造体と、長鎖アルキル鎖を有するポリオール化合物と、有機ジイソシアネートとを反応させ、かつ極性基を導入したポリウレタン樹脂を使用することが好ましい。
【0036】
本発明で使用される極性基含有ポリウレタン系樹脂の平均分子量は、5,000〜100,000であることが好ましく、さらには10,000〜50,000であることが好ましい。平均分子量が5,000以上であれば、得られる磁性塗膜が脆い等といった物理的強度の低下もなく、磁気記録媒体の耐久性に影響を与えることはないため好ましい。また、分子量が100,000以下であれば、溶剤への溶解性が低下することもないため、分散性も良好である。また、所定濃度における塗料粘度も高くなることはないので、作業性が良好で取り扱いも容易となる。
【0037】
上記ポリウレタン系樹脂に含まれる極性基としては、例えば、−COOM、−SOM、−OSOM、−P=O(OM)、−O−P=O(OM)(以上につき、Mは水素原子又はアルカリ金属塩基)、−OH、−NR、−N(Rは炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−CNなどが挙げられ、これらの極性基の少なくとも1つ以上を共重合又は付加反応で導入したものを用いることができる。また、この極性基含有ポリウレタン系樹脂がOH基を有する場合、分岐OH基を有することが硬化性、耐久性の面から好ましく、1分子当たり2〜40個の分岐OH基を有することが好ましく、1分子当たり3〜20個有することがさらに好ましい。また、このような極性基の量は10−1〜10−8モル/gであり、好ましくは10−2〜10−6モル/gである。
【0038】
本発明で使用されるポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を挙げることができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMRミリオネートMTL、武田薬品社製タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住化バイエル社製デスモジュールL,デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL等があり、これらを単独又は硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組み合せで用いることができる。
【0039】
結合剤において、上記ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリイソシアネートの使用割合は、ポリビニルアセタール樹脂1〜40質量%、好ましくは、3〜25質量%、さらに好ましくは5〜20質量%、ポリウレタン樹脂40〜90質量%、好ましくは、40〜85質量%、さらに好ましくは50〜80質量%、およびポリイソシアネート3〜40質量%、好ましくは、5〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。
【0040】
なお本発明によれば、上記以外の結合剤も必要に応じて用いることができるが、本発明の主旨から、塩化ビニル樹脂は使用しないか、あるいは使用しても極めて少量であることが望ましい。併用できる他の結合剤としては、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物である。熱可塑性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルエーテル等を構成単位として含む重合体又は共重合体、各種ゴム系樹脂を挙げることができる。また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂等を挙げることができる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び反応型樹脂については、いずれも朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、電子線硬化型樹脂を磁性層に使用してもよい。電子線硬化型樹脂の例とその製造方法については、特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。
【0041】
併用可能な結合剤の具体例としては(塩化ビニル系樹脂を含む)、例えば、ユニオンカーバイト社製VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、100FD、日本ゼオン社製MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110A、日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製バイロンUR8200、UR8300、UR−8700、RV530、RV280、大日精化社製ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化学社製MX5004、三洋化成社製サンプレンSP−150、旭化成社製サランF310、F210などを挙げることができる。
【0042】
本発明の磁性層に用いられる結合剤の添加量は、強磁性金属粉末の質量に対して5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲である。
【0043】
本発明で用いる磁気記録媒体は、例えばフレキシブルディスクである場合、非磁性支持体の両面に2層以上から構成できる。したがって、結合剤量、結合剤中に占める樹脂量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ非磁性層、各磁性層とで変えることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきであり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、各層で結合剤量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層の結合剤量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、非磁性層の結合剤量を多くして柔軟性を持たせることができる。
【0044】
本発明における磁性層には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、分散剤・分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤、カーボンブラックなどを挙げることができる。これら添加剤としては、例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、フェネチルホスホン酸、α−メチルベンジルホスホン酸、1−メチル−1−フェネチルホスホン酸、ジフェニルメチルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ベンジルフェニルホスホン酸、α−クミルホスホン酸、トルイルホスホン酸、キシリルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、クメニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ヘプチルフェニルホスホン酸、オクチルフェニルホスホン酸、ノニルフェニルホスホン酸等の芳香族環含有有機ホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、オクチルホスホン酸、2−エチルヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、イソノニルホスホン酸、イソデシルホスホン酸、イソウンデシルホスホン酸、イソドデシルホスホン酸、イソヘキサデシルホスホン酸、イソオクタデシルホスホン酸、イソエイコシルホスホン酸等のアルキルホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、リン酸フェニル、リン酸ベンジル、リン酸フェネチル、リン酸α−メチルベンジル、リン酸1−メチル−1−フェネチル、リン酸ジフェニルメチル、リン酸ビフェニル、リン酸ベンジルフェニル、リン酸α−クミル、リン酸トルイル、リン酸キシリル、リン酸エチルフェニル、リン酸クメニル、リン酸プロピルフェニル、リン酸ブチルフェニル、リン酸ヘプチルフェニル、リン酸オクチルフェニル、リン酸ノニルフェニル等の芳香族リン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、リン酸オクチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソオクチル、リン酸イソノニル、リン酸イソデシル、リン酸イソウンデシル、リン酸イソドデシル、リン酸イソヘキサデシル、リン酸イソオクタデシル、リン酸イソエイコシル等のリン酸アルキルエステル及びそのアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していても良い一塩基性脂肪酸及びこれらの金属塩、又はステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していても良い一塩基性脂肪酸と、炭素数2〜22の不飽和結合を含んでも分岐していても良い1〜6価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも分岐していても良いアルコキシアルコールまたはアルキレンオキサイド重合物のモノアルキルエーテルのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル又は多価脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。また、上記炭化水素基以外にもニトロ基およびF、Cl、Br、CF、CCl、CBr等の含ハロゲン炭化水素等炭化水素基以外の基が置換したアルキル基、アリール基、アラルキル基を持つものでもよい。
なお本発明は、磁性層中に下記条件を満たす研磨剤を含有させる必要がある。
(1)研磨剤のモース硬度が8〜10である。
(2)研磨剤の平均粒径が0.010〜0.3μmである。
(3)研磨剤の添加量が、強磁性粉末100質量部に対し、3〜30質量部である。
モース硬度が8〜10の研磨剤としては、例えば、α−アルミナ、酸化クロム、SiC、ZrO、Si、BC、cBN、ダイヤモンド、AlN等が挙げられる。研磨剤の平均粒径は、0.01〜0.15μmが更に好ましく、0.02〜0.15μmが特に好ましい。研磨剤の添加量が、強磁性粉末100質量部に対し、5〜30質量部が更に好ましく、5〜20質量部が特に好ましい。
本発明は、上記条件を満たすことにより、金属粉末、微粒子研磨剤の存在下でも燃焼時にこれらの触媒活性が発現しても、塩素系に係る有害ガス発生の懸念を下げ、テープに有効な強度を与えるという効果を奏することができる。
【0045】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又はリン酸エステル類、アルキルベタイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。
【0046】
上記潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも純粋ではなく主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0047】
これらの添加物の具体例としては、例えば、日本油脂社製:NAA−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NAA−42、カチオンSA、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、竹本油脂社製:FAL−205、FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブOL、信越化学社製:TA−3、ライオン社製:アーマイドP、ライオン社製:デュオミンTDO、日清オイリオ社製:BA−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400等が挙げられる。
【0048】
また、本発明における磁性層には、必要に応じてカーボンブラックを添加することができる。磁性層で使用可能なカーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。比表面積は5〜500m/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5〜300nm、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
【0049】
本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、905、800、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製#80、#60、#55、#50、#35、三菱化学社製#2400B、#2300、#900、#1000、#30、#40、#10B、コロンビアンカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN150、50、40、15、RAVEN−MT−P、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用したりしてもかまわない。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独又は組み合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合、磁性体の質量に対して0.1〜30質量%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。したがって本発明で使用されるこれらのカーボンブラックは、磁性層及び非磁性層でその種類、量、組み合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性を基に目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。本発明の磁性層で使用できるカーボンブラックは、例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編、を参考にすることができる。
【0050】
本発明で用いられる有機溶剤は公知のものが使用できる。本発明で用いられる有機溶媒は、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を使用することができる。
【0051】
これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は磁性層と非磁性層でその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性を上げる、具体的には上層溶剤組成の算術平均値が非磁性層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
【0052】
本発明で使用されるこれらの分散剤、潤滑剤、界面活性剤は、磁性層、さらに後述する非磁性層でその種類、量を必要に応じて使い分けることができる。例えば、無論ここに示した例のみに限られるものではないが、分散剤は極性基で吸着又は結合する性質を有しており、磁性層では主に強磁性金属粉末の表面に、また非磁性層では主に非磁性粉末の表面に前記の極性基で吸着又は結合し、例えば、一度吸着した有機リン化合物は、金属又は金属化合物等の表面から脱着し難いと推察される。したがって、本発明の強磁性金属粉末表面又は非磁性粉末表面は、アルキル基、芳香族基等で被覆されたような状態になるので、該強磁性金属粉末又は非磁性粉末の結合剤樹脂成分に対する親和性が向上し、さらに強磁性金属粉末あるいは非磁性粉末の分散安定性も改善される。また、潤滑剤としては遊離の状態で存在するため非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い、表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられる。また本発明で用いられる添加剤のすべて又はその一部は、磁性層又は非磁性層用の塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
【0053】
[非磁性層]
次に非磁性層に関する詳細な内容について説明する。本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層を有することができる。非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。
【0054】
具体的には二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO、SiO、Cr、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO、CaCO、BaCO、SrCO、BaSO、炭化珪素、炭化チタンなどが単独又は2種類以上を組み合わせて使用される。好ましいのは、α−酸化鉄、酸化チタンである。
【0055】
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもあってもよい。非磁性粉末の結晶子サイズは、4nm〜1μmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。結晶子サイズが4nm〜1μmの範囲であれば、分散が困難になることもなく、また好適な表面粗さを有するため好ましい。これら非磁性粉末の平均粒径は、5nm〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くしたりして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の平均粒径は、10〜200nmである。5nm〜2μmの範囲であれば、分散も良好で、かつ好適な表面粗さを有するため好ましい。
【0056】
非磁性粉末の比表面積は、1〜100m/gであり、好ましくは5〜70m/gであり、さらに好ましくは10〜65m/gである。比表面積が1〜100m/gの範囲内にあれば、好適な表面粗さを有し、かつ、所望の結合剤量で分散できるため好ましい。ジブチルフタレート(DBP)を用いた吸油量は、5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、さらに好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12、好ましくは3〜6である。タップ密度は0.05〜2g/ml、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。タップ密度が0.05〜2g/mlの範囲であれば、飛散する粒子が少なく操作が容易であり、また装置にも固着しにくくなる傾向がある。非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましいが、pHは6〜9の間が特に好ましい。pHが2〜11の範囲にあれば、高温、高湿下又は脂肪酸の遊離により摩擦係数が大きくなることはない。非磁性粉末の含水率は、0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、さらに好ましくは0.3〜1.5質量%である。含水量が0.1〜5質量%の範囲であれば、分散も良好で、分散後の塗料粘度も安定するため好ましい。強熱減量は、20質量%以下であることが好ましく、強熱減量が小さいものが好ましい。
【0057】
また、非磁性粉末が無機粉体である場合には、モース硬度は4〜10のものが好ましい。モース硬度が4〜10の範囲であれば耐久性を確保することができる。非磁性粉末のステアリン酸吸着量は、1〜20μmol/mであり、さらに好ましくは2〜15μmol/mである。非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は、200〜600erg/cm(200〜600mJ/m)の範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åが適当である。水中での等電点のpHは、3〜9の間にあることが好ましい。これらの非磁性粉末の表面には表面処理が施されることによりAl、SiO、TiO、ZrO、SnO、Sb、ZnOが存在することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl、SiO、TiO、ZrOであるが、さらに好ましいのはAl、SiO、ZrOである。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0058】
本発明の非磁性層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、例えば、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPB−550BX、DPN−550RX、石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、MJ−7、α−酸化鉄E270、E271、E300、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、T−600B、T−100F、T−500HDなどが挙げられる。堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOP及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
【0059】
非磁性層には非磁性粉末と共に、カーボンブラックを混合し表面電気抵抗を下げ、光透過率を小さくすると共に、所望のマイクロビッカース硬度を得ることができる。非磁性層のマイクロビッカース硬度は、通常25〜60kg/mm(245〜588MPa)、好ましくはヘッド当りを調整するために、30〜50kg/mm(294〜490MPa)であり、薄膜硬度計(日本電気製HMA−400)を用いて、稜角80度、先端半径0.1μmのダイヤモンド製三角錐針を圧子先端に用いて測定することができる。光透過率は一般に波長900nm程度の赤外線の吸収が3%以下、たとえばVHS用磁気テープでは0.8%以下であることが規格化されている。このためにはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
【0060】
本発明の非磁性層に用いられるカーボンブラックの比表面積は100〜500m/g、好ましくは150〜400m/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの粒子径は5〜80nm、好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
【0061】
本発明の非磁性層に用いることができるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化学社製#3050B、#3150B、#3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、コロンビアカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。
【0062】
また、カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記無機粉末に対して50質量%を越えない範囲、非磁性層総質量の40%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、または組み合せで使用することができる。本発明の非磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編、を参考にすることができる。
【0063】
また非磁性層には目的に応じて有機質粉末を添加することもできる。このような有機質粉末としては、例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は、特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
【0064】
非磁性層の結合剤樹脂、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は、磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤樹脂量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0065】
また、本発明の磁気記録媒体は、下塗り層を設けてもよい。下塗り層を設けることによって支持体と磁性層又は非磁性層との接着力を向上させることができる。下塗り層としては、溶剤への可溶性のポリエステル樹脂が使用される。
【0066】
[層構成]
本発明で用いられる磁気記録媒体の厚み構成は、非磁性支持体の厚みが前述のように3〜80μm、より好ましくは3〜50μm、とくに好ましくは3〜10μmである。また、非磁性支持体と非磁性層又は磁性層の間に下塗り層を設けた場合、下塗り層の厚みは、0.01〜0.8μm、好ましくは0.02〜0.6μmである。
【0067】
磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、一般には10〜150nmであり、好ましくは20〜120nmであり、さらに好ましくは30〜100nmであり、とくに好ましくは30〜80nmである。また、磁性層の厚み変動率は±50%以内が好ましく、さらに好ましくは±40%以内である。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
【0068】
本発明の非磁性層の厚みは、0.5〜2.0μmであり、0.8〜1.5μmであることが好ましく、0.8〜1.2μmであることが更に好ましい。なお、本発明の磁気記録媒体の非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば不純物として、あるいは意図的に少量の磁性体を含んでいても、本発明の効果を示すものであり、本発明の磁気記録媒体と実質的に同一の構成とみなすことができる。なお、実質的に同一とは、非磁性層の残留磁束密度が10mT以下又は抗磁力が7.96kA/m(100Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
【0069】
[バック層]
本発明の磁気記録媒体には、非磁性支持体の他方の面にバック層を設けるのが好ましい。バック層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。結合剤、各種添加剤は、磁性層や非磁性層の処方が適用される。バック層の厚みは、0.9μm以下が好ましく、0.1〜0.7μmが更に好ましい。
【0070】
[製造方法]
本発明で用いられる磁気記録媒体の磁性層塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性金属粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨材、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用液及び非磁性層用液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
【0071】
本発明の磁気記録媒体の製造方法では、例えば、走行下にある支持体の表面に磁性塗布液を所定の膜厚となるようにして磁性層を塗布して形成する。ここで複数の磁性層塗布液を逐次又は同時に重層塗布してもよく、非磁性層塗布液と磁性層塗布液とを逐次又は同時に重層塗布してもよい。上記磁性塗布液又は非磁性層塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
【0072】
磁性層塗布液の塗布層は、磁気テープの場合、磁性層塗布液の塗布層中に含まれる強磁性金属粉末にコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に磁場配向処理を施す。ディスクの場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは強磁性金属粉末の場合、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。また異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用いて円周配向することもできる。
【0073】
乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できる様にすることが好ましく、塗布速度は20m/分〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい、また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
【0074】
乾燥された後、通常、塗布層に表面平滑化処理が施される。表面平滑化処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性金属粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダ処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。
本発明の磁気記録媒体は、表面の中心面平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて0.1〜4nm、好ましくは1〜3nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性金属粉末と結合剤とを選んで形成した磁性層を上記カレンダ処理を施すことにより行われる。カレンダ処理条件としては、カレンダーロールの温度を60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は100〜500kg/cm(98〜490kN/m)の範囲であり、好ましくは200〜450kg/cm(196〜441kN/m)の範囲であり、特に好ましくは300〜400kg/cm(294〜392kN/m)の範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。
【0075】
得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。裁断機としては、特に制限はないが、回転する上刃(雄刃)と下刃(雌刃)の組が複数設けられたものが好ましく、適宜、スリット速度、噛み合い深さ、上刃(雄刃)と下刃(雌刃)の周速比(上刃周速/下刃周速)、スリット刃の連続使用時間等が選定される。
【0076】
[物理特性]
本発明に用いられる磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は100〜300mTが好ましい。また磁性層の抗磁力(Hr)は、143.3〜318.4kA/m(1800〜4000Oe)が好ましく、159.2〜278.6kA/m(2000〜3500Oe)が更に好ましい。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFD及びSFDrは0.6以下、さらに好ましくは0.2以下である。
【0077】
本発明で用いられる磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において0.50以下であり、好ましくは0.3以下である。また、表面固有抵抗は、好ましくは磁性面10〜1012Ω/sq、帯電位は−500V〜+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa(100〜2000kg/mm)、破断強度は、好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm)、磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa(100〜1500kg/mm)、残留のびは、好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
【0078】
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜180℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜180℃が好ましい。損失弾性率は1×10〜8×10Pa(1×10〜8×10dyne/cm)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向において10%以内でほぼ等しいことが好ましい。
【0079】
磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m以下、さらに好ましくは10mg/m以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
【0080】
磁性層の最大高さSRmaxは、0.5μm以下、十点平均粗さSRzは0.3μm以下、中心面山高さSRpは0.3μm以下、中心面谷深さSRvは0.3μm以下、中心面面積率SSrは20〜80%、平均波長Sλaは5〜300μmが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールやカレンダ処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
【0081】
本発明の磁気記録媒体として非磁性層と磁性層で構成した場合、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができる。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くすることができる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
なお実施例中の「部」の表示は「質量部」を示す。
【0083】
(実施例1)
《非磁性層用塗料成分》
(1)
酸化鉄粉末(平均粒径:0.06×0.01μm) 72部
α−アルミナ(平均粒径:0.05μm) 8部
カーボンブラック 20部
(平均粒径:20nm、DBP吸油量:200ml/100g)
ステアリン酸/パルミチン酸(1/1) 5部
塩化ビニル共重合体(含有−SONa基:1.2×10−4当量/g)12部
ポリビニルアセタール 12部
(積水化学工業社製BL1:Tg67℃、分子量19000)
ポリエステルポリウレタン樹脂 5部
(Tg:40℃、含有−SONa基:1×10−4当量/g)
シクロヘキサノン 30部
メチルエチルケトン 60部
トルエン 5部
(2)
ステアリン酸イソオクチル 3部
オレイン酸オレート 2部
シクロヘキサノン 40部
メチルエチルケトン 80部
トルエン 20部
(3)
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネートL) 5部
シクロヘキサノン 8部
メチルエチルケトン 18部
トルエン 5部
【0084】
《磁性層用塗料成分》
(1)
強磁性鉄系金属粉 100部
(Co/Fe:21at%,Y/(Fe+Co):8at%,Al/(Fe+Co):5wt%、Ca/Fe:0wt%、σs:155A・m/kg、Hc:149.6kA/m、pH:9.4、平均長軸長:0.10μm)
ポリビニルブチラール 5部
(積水化学工業社製BL1:Tg67℃、分子量19000)
ポリエステルポリウレタン樹脂 5部
(含有−SONa基:1.0×10−4当量/g)
α−アルミナ(平均粒径:0.12μm) 8部
α−アルミナ(平均粒径:0.07μm) 2部
カーボンブラック 1部
(平均粒径:75nm、DBP吸油量:72ml/100g)
メチルアシッドホスフェート 2部
パルミチン酸アミド 1.5部
ステアリン酸イソオクチル 2部
ステアリン酸 0.5部
ジエチレングリコール 1部
テトラヒドロフラン 65部
メチルエチルケトン 245部
トルエン 85部
(2)
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネートL) 2部
シクロヘキサノン 167部
【0085】
なお、上記メチルアシッドホスフェートは以下のものを用いた。
【0086】
【化2】

【0087】
上記式中、nは1または2、m.w:119、SG:1.43、酸価:KOHmg/g 650<、リン:26.1%である。
【0088】
《バック層用塗料成分》
カーボンブラック(平均粒径:19nm) 90部
カーボンブラック(平均粒径:350nm) 5部
酸化鉄(平均長軸長:0.1μm、軸比:約10) 5部
ニトロセルロース 40部
ポリウレタン樹脂(SONa基含有) 30部
シクロヘキサノン 250部
トルエン 220部
メチルエチルケトン 600部
【0089】
上記の非磁性層用塗料成分において(1)をニーダで混練したのち、(2)を加えて攪拌の後サンドミルで滞留時間を90分として分散処理を行い、これに(3)を加え攪拌・濾過した後、非磁性塗料とした。これとは別に、上記の磁性層用塗料成分(1)をニーダで混練したのち、サンドミルで滞留時間を60分として分散し、これに磁性層用塗料成分(2)を加え攪拌・濾過後、磁性塗料とした。上記の非磁性塗料を、ポリエチレンテレタレートフイルム(厚さ6.0μm、MD方向のヤング率=7.0GPa、MD方向のヤング率/TD方向のヤング率=1.3)に乾燥後の厚さが0.8μmになるように塗布した。
この非磁性層上に、上記の磁性塗料を乾燥後の厚さが0.2μmになるように塗布し、磁場配向処理し、乾燥し、磁気シートを得た。なお、前記磁場配向処理は、ドライヤ前にN−N対抗磁石500mT(5kG)を設置し、ドライヤ内で塗膜の指蝕乾燥位置の手前側75cmからN−N対抗磁石500mT(5kG)を2基50cm間隔で設置して行った。磁性塗料の塗布速度は300m/分とした。
続いて、上記バック層用塗料成分をサンドミルで滞留時間60分として分散した後、ポリイソシアネート15部を加えてバック層用塗料を調製し濾過した後、上記で作製した磁気シートの磁性層の反対面に、乾燥・カレンダー後の厚みが0.3μmとなるように塗布し、乾燥した。
このようにして得られた磁気シートを、金属ロールからなる7段カレンダーで温度110℃、線圧330kg/cm(323kN/m)の条件で鏡面化処理後、12.65mm幅に裁断し、磁気テープを得た。
【0090】
得られた磁気テープに対し、下記のLDWT(ラッピング/ダイヤモンドホイール/ティッシュ)処理を順次行った。
(1)ラッピング処理:研磨テープ(富士写真フイルム社製ラッピングテープKX20000S)を、回転ロールによってテープ送り(7m/sec)と反対方向に0.2cm/secの速さで移動させ、上部からガイドブロックによって押さえることによってテープ磁性層表面と接触させる。この時の磁気テープ巻き出しテンションを100g及びラッピングテープのテンションを200gとして磁気テープに対する研磨処理を行った。
(2)ロータリーダイヤモンドホイール処理: 幅1インチ(25.4mm)、直径60mmで2mm幅の空気抜き用溝付きのホイール(溝の角度45度)と磁性層とを接触角度90度でテープと反対方向に回転速度1200rpmで接触させて磁気テープに対する処理を行った。
(3)ティッシュ処理: 東レ株式会社製の超極細繊維トレシーを回転棒で各々バック層及び磁気層面をテープ送りと反対方向に0.2mm/secの速度で送り、磁気テープ表裏面に対するクリーニング処理を行った。
【0091】
サーボライターを用いて、磁気テープの磁性層に4m/sec(4000mm/sec)の速度で磁気サーボ信号を書き込み、この磁気テープをリールに巻装してケース本体内に組み込むことにより、コンピュータ用の磁気テープカートリッジを作製した。
【0092】
このような磁気テープに対し、磁性層の中心線表面粗さRaおよび1000パス繰り返し走行後のエラーレートを調べた。RaはWYKO社製3Dミローにより、エラーレートはHP社製モデルultrium203iを用いることにより測定した。
結果を表1に示す。
【0093】
(実施例2〜3)
実施例1において、磁性層用塗料成分に用いたポリビニルブチラール(積水化学工業社製BL1)の使用量を10部(実施例2)または20部(実施例3)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0094】
(実施例4)
実施例1において、磁性層用塗料成分に用いたポリビニルブチラール(積水化学工業社製BL1)を、ポリビニルブチラール(積水化学工業社製BM2(Tg68℃、分子量52000、曲げ強度740kg/cm(72.5MPa)、抗張力750kg/cm(73.5MPa))に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0095】
(実施例5〜6)
実施例4において、ポリビニルブチラール(積水化学工業社製BM2)の使用量を10部(実施例5)または20部(実施例6)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0096】
(実施例7)
実施例1において、磁性層用塗料成分に用いたポリビニルブチラール(積水化学工業社製BL1)を、ポリビニルブチラール(積水化学工業社製BH3(Tg70℃、分子量110000、曲げ強度760kg/cm(74.5MPa)、抗張力800kg/cm(78.4MPa))に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0097】
(実施例8〜9)
実施例7において、ポリビニルブチラール(積水化学工業社製BH3)の使用量を10部(実施例8)または20部(実施例9)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0098】
(参考例1)
実施例1において、磁性層用塗料成分に用いたポリビニルブチラール(積水化学工業社製BL1)を、塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体(含有-SO3Na基:0.7×10-4当量/g)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0099】
(参考例2〜3)
参考例1において、塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体の使用量を10部(参考例2)または20部(参考例3)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0100】
(比較例1)
実施例1において、磁性層用塗料成分に用いたポリビニルブチラール(積水化学工業社製BL1)を、ポリウレタン(東洋紡社製商品名UR8300)に変更し、使用量を10部に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
(比較例2)
実施例1において、磁性層用塗料成分に用いたα−アルミナ(平均粒径:0.12μm)に変えて平均粒径0.4μmのα−アルミナ8部に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
(比較例3)
比較例2において、平均粒径0.4μmのα−アルミナの添加量を3部に変更したこと以外は、比較例2を繰り返した。
(比較例4)
比較例2において、平均粒径0.4μmのα−アルミナの添加量を1部に変更したこと以外は、比較例2を繰り返した。
(比較例5)
実施例1において、磁性層用塗料成分に用いたα−アルミナ(平均粒径:0.12μm)に変えて平均粒径0.005μmのα−アルミナ28部に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
(比較例6)
比較例5において、平均粒径0.005μmのα−アルミナの添加量を18部に変更したこと以外は、比較例5を繰り返した。
(比較例7)
比較例5において、平均粒径0.005μmのα−アルミナの添加量を8部に変更したこと以外は、比較例5を繰り返した。
(比較例8)
実施例1において、磁性層用塗料成分に用いたα−アルミナ(平均粒径:0.12μm)の添加量を8部から48部に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
(比較例9)
実施例1において、磁性層用塗料成分に用いたα−アルミナ(平均粒径:0.12μm)の添加量を8部から38部に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
(比較例10)
実施例1において、磁性層用塗料成分に用いたα−アルミナ(平均粒径:0.12μm)の添加量を8部から0部に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
結果を表1に示す。なお参考までに結合剤樹脂の塩素含有量(質量%)も併せて記載した。
【0101】
【表1】

【0102】
表1の結果から、本発明の磁気記録媒体は、磁性層の結合剤として塩化ビニル系樹脂を用いた従来の磁気記録媒体と比較しても遜色のない走行耐久性を示したことが分かる。また、磁性層の結合剤としてポリウレタンを用いた磁気記録媒体と比較しても、走行耐久性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体の少なくとも一方の面に強磁性粉末と結合剤とを含む磁性層を設けてなる磁気記録媒体において、
前記磁性層が、前記強磁性粉末100質量部に対し、モース硬度8〜10であり且つ平均粒径0.010〜0.3μmの研磨剤を3〜30質量部含み、
前記結合剤が、少なくともポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリイソシアネートを含有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度(Tg)が60〜110℃であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記ポリビニルアセタール樹脂の曲げ強度が700〜1200kg/cm(68.6〜117.6MPa)であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記ポリビニルアセタール樹脂の抗張力が600〜900kg/cm(58.8〜88.2MPa)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記非磁性支持体の他方の面にバック層を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁気記録媒体。

【公開番号】特開2007−4937(P2007−4937A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186764(P2005−186764)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】