説明

磁気記録媒体

【課題】 磁性層表面が平滑で出力が大きく、寸法安定性も良好な磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】
非磁性支持体の一方の主面に、水溶性樹脂を含む樹脂層と、非磁性粉末と結合剤とを含む下塗層と、この下塗層の上に、磁性粉末と結合剤とを含む磁性層、他方の主面に非磁性粉末と結合剤とを含むバックコート層を有する磁気記録媒体であって、
前記樹脂層に含まれる水溶性樹脂が架橋硬化されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
非磁性支持体の一方の主面上に非磁性粉末と結合剤とを含む少なくとも一層の下塗層と、該下塗層上に磁性粉末と結合剤とを含む磁性層とを設け、非磁性支持体の他方の主面上にバックコート層を有する磁気記録媒体に関し、更に詳しくは、特にデジタルビデオテープ、コンピュータ用のバックアップテープなどの超高密度記録に最適な塗布型の磁気記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体のひとつである磁気テープには、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピユータテープなどの種々の用途があるが、特にデータバックアップ用のコンピュータテープの分野では、バックアップ対象となるハードディスクの大容量化に伴い、1巻あたり数100GB以上の記憶容量のものが商品化されており、今後ハードディスクのさらなる大容量化に対応するため、バックアップテープの高容量化は不可欠である。
【0003】
上記高容量化を達成するためには、記録信号の短波長化や記録トラック幅の狭幅化が必要とされる。これらに対応するため、磁気記録媒体に対して磁性粉末の微粒子化、高充填化、磁性層表面の平滑化等に加えて、体積密度向上のために磁気記録媒体の全厚さを薄くすることが要求されている。
【0004】
一般に非磁性支持体の一方の主面上に非磁性層、さらにその上に磁性層を設け、他方の主面上にバック層を設けた高容量タイプの塗布型磁気記録媒体の全厚さを薄くするために、従来は非磁性支持体を薄くしたり、非磁性層を薄くすることが行われていた。
しかし、非磁性支持体を薄くすると、磁気記録媒体の剛性が低下して、磁気ヘッドへの磁性層の当り状態(ヘッドコンタクト)が変化して、再生出力が低下したり、磁気記録媒体の寸法安定性が低下する問題が生じてきたり、非磁性層を薄くすると、非磁性層中に含ませている潤滑剤の量が不足して、耐久性が低下したり、非磁性支持体の表面突起を十分に被覆することができず、磁性層表面にまで非磁性支持体の突起の影響が表れ、再生時にエラーが発生する問題があった。
【0005】
磁性層表面の平滑化に対しては、表面の平滑な非磁性支持体を用いることが有効であるが、製造コストおよびその取り扱い上、極端に突起が小さく、少ない非磁性支持体を得るのは困難であった。
【0006】
非磁性支持体の表面突起を被覆する方法としては、非磁性支持体と非磁性層との間に比較的厚さの薄い樹脂層を設ける方法が提案されている。この場合、樹脂層の上に非磁性層を設ける際に樹脂層が溶解すると樹脂層と非磁性層との界面が乱れてひいては磁性層表面の平滑性が低下するので、樹脂層の樹脂に放射線硬化性樹脂を用いたり(特許文献1)、水溶性樹脂を用いること(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−132522号公報
【特許文献2】特開2003−263728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術では、硬化のための大掛かりな放射線照射設備が必要であったり(特許文献1)、架橋硬化していないために、ヤング率が小さく、磁気記録媒体全体の剛性が低下するために、ヘッドコンタクトが変わって、出力が低下したり、寸法安定性が低下する問題があった(特許文献2)。
【0009】
本発明では、上記従来技術の問題点を解決し、磁性層表面が平滑で出力が大きく、寸法安定性も良好な磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、非磁性支持体上に設ける樹脂層について鋭意検討した結果、樹脂層の構成を下記のようにすることにより、上気目的が達成できることを見いだし、本発明をなすに至った。
【0011】
すなわち、非磁性支持体の一方の主面に、水溶性樹脂を含む樹脂層と、非磁性粉末と結合剤とを含む下塗層と、この下塗層の上に、磁性粉末と結合剤とを含む磁性層、他方の主面に非磁性粉末と結合剤とを含むバックコート層を有する磁気記録媒体であって、
前記樹脂層に含まれる水溶性樹脂が架橋硬化されていることを特徴とする。
【0012】
前記架橋硬化が、有機チタン系化合物またはジルコニウム系化合物により行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
非磁性支持体と非磁性層との間に設ける樹脂層が水溶性であるために、磁性層を塗布する際に樹脂層が溶解することがないので、樹脂層と非磁性層との界面が乱れることがなく、また、樹脂層の水溶性樹脂は最終的に架橋硬化するので、ヤング率が大きくなり、磁気記録媒体の剛性を低下させることがない。その結果、表面が平滑な磁性層が得られ、寸法安定性の優れた磁気記録媒体が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明においては、非磁性支持体の上に、水溶性樹脂を含む樹脂層を設ける。本発明に用いられる水溶性樹脂としては、分子内に、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基などの架橋可能な反応基を有しているものであれば、特に制限はなく、例えば、天然高分子および半合成高分子として、デンプン、酸化デンプン、エーテル化デンプン、ジアルデヒド化デンプン、エステル化デンプンなどの変性デンプン化合物、アルギン酸ソーダ、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸化合物、カゼイン、ゼラチン、プルラン、デキストラン、キチン、キトサン、ゴムラッテクス、アラビアゴム、フノリ、天然ガム、デキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの変性セルロース化合物などが挙げられる。
【0015】
また、水溶性樹脂として合成高分子を用いることもでき、例えば、完全ケン化又は部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールと多価カルボン酸とのエステル化物、カルボキシ変性化ポリビニルアルコール、スルホン酸変性化ポリビニルアルコール、オレフィン変性化ポリビニルアルコール、ニトリル変性化ポリビニルアルコール、アミド変性化ポリビニルアルコール、ピロリドン変性化ポリビニルアルコールなどの変性化ポリビニルアルコール化合物、ポリエチレンオキサイドグリシジル付加物、ポリアクリル酸化合物、ポリビニルピロリドン、ポリマレイン酸共重合体、水溶性アルキド樹脂などを用いることができる。上記樹脂の中で、完全ケン化又は部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールと多価カルボン酸とのエステル化物、カルボキシ変性化ポリビニルアルコール、スルホン酸変性化ポリビニルアルコール、オレフィン変性化ポリビニルアルコール、ニトリル変性化ポリビニルアルコール、アミド変性化ポリビニルアルコール、ピロリドン変性化ポリビニルアルコール等の変性化ポリビニルアルコールが、ガラス転移温度、溶解性等の物性面で優れているため好ましく、特に、完全ケン化又は部分ケン化ポリビニルアルコール及びポリエチレンオキサイドグリシジル付加物が好ましい。
【0016】
完全ケン化又は部分ケン化ポリビニルアルコールを用いる場合、そのケン化度は、溶解性の観点から80〜100mol%であることが好ましく、更には85〜100mol%、特に90〜100mol%であることが好ましい。完全ケン化又は部分ケン化ポリビニルアルコールとしては、重合度500〜5000の範囲内にあるものが好ましい。重合度が500以上であれば、端面でのブロッキング等を生じることもなく、5000以下であれば、溶解時の粘度も良好であり、樹脂層を塗布することも充分可能である。
ポリエチレンオキサイドグリシジル付加物としては、分子量が10000〜10000000の範囲内にあるものを使用することができ、分子量50000〜500000のものを用いることが好ましく、分子量80000〜300000のものを用いることが特に好ましい。分子量が10000以上であれば、端面でのブロッキング等を生じることもなく、10000000以下であれば、水への溶解時の粘度も良好であり、樹脂層を塗布することも充分可能である。
【0017】
上記水溶性樹脂のガラス転移温度は、30〜120℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましい.ガラス転移温度が30℃以上であれば、端面でのブロッキング等を生じることもなく、120℃以下であれば、樹脂層内の内部応力を緩和することができ、密着力にも優れている。
【0018】
上記水溶性樹脂とそれぞれに好適な架橋剤を組み合わせて、上記水溶性樹脂を架橋させて樹脂層を形成することが好ましい、架橋剤としては特に制限なく、従来公知の架橋剤が用いられる。例えば、ポリビニルアルコール類のような水酸基を有する水溶性樹脂に対しては、グリオキザール、グルタールアルデヒドあるいはジアルデヒドデンプン、水溶性エポキシ化合物、メチロール化合物を用いることができるが、特に有機チタン化合物またはジルコニウム化合物が好ましく、これらの中で乳酸チタン、チタンラクテート、チタンアルコキシドのような有機チタン系化合物や塩基性塩化ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、硫酸ジルコニル、硝酸ジルコニルなどのジルコニウム系化合物がより架橋性に優れていて好ましい。
ポリアクリル酸類のようなカルボキシル基を有する水溶性樹脂に対しては、例えば各種金属酸化物が架橋剤として用いられる。
【0019】
ポリエチレンオキサイドグリシジル付加物のようなグリシジル基を有する水溶性樹脂に対しては、例えば各種ジアミン類が架橋剤として用いられる。
【0020】
本発明において、樹脂層は、上記水溶性樹脂と上記架橋剤とで、あるいは必要に応じて消泡剤、分散剤、防黴剤、防腐剤、防錆剤等の添加剤と混合して水に溶解させて得られる水溶液として調製した樹脂層塗布液を、常法により、非磁性支持体表面に、塗布することにより形成される。
【0021】
上記樹脂層の厚さは、0.1〜2.0μmであり、好ましくは0.2〜1.5μmであり、更に好ましくは0.3〜1.0μmである。樹脂層の厚さが0.1μm未満では、樹脂層を設けることにより非磁性支持体表面に存在する突起を遮断することができず、2.0μmを超えると、樹脂層の厚さの磁気記録媒体厚さに及ぼす影響が大きくなり、磁気記録媒体の剛性、ひいてはヘッドコンタクトに影響を及ぼす場合がある。
本発明において、樹脂層表面に存在する突起の最大高さは150nm以下、好ましくは10〜100nm、更に好ましくは20〜80nmである。樹脂層表面に存在する突起の高さが150nmを超えると、磁性層の表面性に大きく影響し、エラーの原因となり、ドロップアウトの増加を引き起こす。
【0022】
本発明において、樹脂層表面の最大突起高さが150nm以下という、高い平滑性を実現できるのは、支持体表面に存在する表面突起を、樹脂層を塗布して遮断することにより、支持体表面突起の樹脂層表面への影響を抑制できるためである。また、本発明では、上記平滑性を達成するために、樹脂層に粒子径100nm以下のフィラーを分散し、支持体表面の突起を遮断すると共に、新たに最大高さ100nm以下の突起を形成する方法を、更に行うこともできる。
【0023】
非磁性支持体表面に樹脂層を形成する方法としては、従来公知の塗布機をもちいて樹脂液を非磁性支持体表面に塗布して形成することが好ましい。塗布機としては、エアードクターコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、押出しコータ、エアナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、リバースロールコータ、トランスファーロールコータ、グラビヤコータ、キスコータ、キャストコータ、カーテンコータ、スプレイコータ、スピンコータ等が挙げられる。
【0024】
樹脂液の粘度としては、0.02〜0.85Pa・sが好ましい。この範囲が好ましいのは塗布適性が良好になるからである。
【0025】
必要に応じて非磁性支持体と樹脂層との間に易接着層を設けてもよい。易接着層を設けることによって、樹脂層の平滑性を高めると共に、支持体と樹脂層との接着力を向上させることができる。樹脂層の表面平滑性を高めるためには、易接着層の厚さは0.5μm以下であることが好ましく、0.001〜0.3μmであることがより好ましい。易接着層において使用される易接着層樹脂としては、従来公知の樹脂を使用することができ、例えば、塩化ビニル、塩素化塩化ビニル、酢酸ビニル、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を構成単位として含む重合体又は共重合体等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタン−ウレア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーとの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートとの混合物等の熱硬化性樹脂、反応性樹脂やこれらの混合物等を使用することができる。なかでも、ポリエステル樹脂が、密着性、ガラス転移温度、溶解性等の物性面で優れているため好ましく、特に、カルボン酸及びその塩、スルホン酸及びその塩等の極性基を有するポリエステル樹脂が好ましい。
【0026】
記録容量が数100GB以上のコンピュータ用磁気テープは、面記録密度を大きくするために、記録トラックのトラック幅を小さくして磁気テープの幅方向の記録密度を大きくし、記録波長を小さくして磁気テープの長手方向の記録密度を大きくしている。そのため、記録容量が数100GB以上のコンピュータ用磁気テープでは、記録波長が0.5μm以下と極めて小さくなっており、自己減磁作用による記録再生時の厚み損失を小さくするために磁性層厚さは記録波長の1/3以下とすることが好ましく1/4以下とすることが、より好ましい。よって、本発明の磁気記録媒体の磁性層厚さは、10〜150nmの範囲が好ましく、20〜100nmの範囲がより好ましく、30〜70nmの範囲が最も好ましい。この範囲が好ましいのは、10nm未満だと均一な磁性層を形成するのが困難であったり、十分な出力が得られない場合があり、150nmを超えると、自己減磁作用による記録再生時の厚み損失が大きくなるからである。
【0027】
このような磁性層を形成するためには、非磁性支持体上に樹脂層を形成し、この上に非磁性粉末、結合剤を含む下塗層を設け、表面の平滑な下塗層を形成した上で、その上に磁性層を設けることが好ましい。各層は前記の順序で形成される限り、各層の間に他の層を設けても良い。
【0028】
以下、本発明の構成要素について詳述する。
<磁性粉末>
本発明において磁性塗料の製造に使用される磁性粉末は、従来公知の磁性粉末を用いることができるが、例えば、強磁性鉄系金属磁性粉末、窒化鉄磁性粉末、板状の六方晶フェライト磁性粉末などが好ましく用いられる。磁性粉末の平均粒子径は50nm以下が好ましく、平均粒子径が10nm以上のものが好ましい。平均粒子径が15〜40nmの範囲のものがより好ましい。この範囲が好ましいのは、平均粒子径が50nmを超えると、粒子の大きさに基づく粒子ノイズが大きくなり、また平均粒子径が10nm未満では、保磁力の低下や粒子の表面エネルギーが増大し、塗料中での分散が困難になるためである。
【0029】
本願でいう粒子径とは、粒子が針状の場合は平均長軸径を指し、板状の場合は板径の大きい方の長さを指し、長軸長と短軸長の比が1〜3.5である球状ないし楕円状の場合は最大差し渡し径を指す。平均粒子径とは透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影した写真の粒子サイズを実測し、300個の数平均値により求められる。
【0030】
<結合剤>
磁性層、下塗層及びバックコート層に用いられる結合剤としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種と、ポリウレタン樹脂とを組み合わせたものなどが挙げられる。
【0031】
これらの樹脂の中でも、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合体樹脂とポリウレタン樹脂を併用するのが好ましい。
ポリウレタン樹脂には、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン樹脂などがある。
【0032】
このような結合剤は、官能基として、−COOH、−SOM、−OSOM、−P=O(OM)、−O−P=O(OM)〔これらの式中、Mは水素原子、アルカリ金属塩基またはアミン塩を示す〕、−OH、−NR、−N〔これらの式中、R、R、R、R、Rは水素または炭化水素基を示す〕、エポキシ基などを有しているものが、好ましく用いられる。
【0033】
このような結合剤を使用すると、磁性粉末などの分散性が向上するためである。2種以上の樹脂を併用する場合には、官能基の極性を一致させるのが好ましく、中でも、−SOM基同士の組み合わせが好ましい。
【0034】
これらの結合剤は、磁性粉末や非磁性粉末100重量部に対して、通常は、7〜50重量部、好ましくは10〜35重量部の範囲で使用するのがよい。とくに、塩化ビニル系樹脂とポリウレタン樹脂を併用する場合は、塩化ビニル系樹脂5〜30重量部とポリウレタン樹脂2〜20重量部とを併用するのが好ましい。
【0035】
また、これらの結合剤とともに、結合剤中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのが好ましい。
このような架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましく用いられる。
【0036】
これらの架橋剤は、結合剤100重量部に対して、通常1〜50重量部の割合で用いられる。より好ましくは15〜35重量部である。
【0037】
また、上記のような熱硬化性の架橋剤の代わりに、放射線硬化性樹脂を用いてもよい。放射線硬化性樹脂としては、アクリルモノマー、アクリルオリゴマーが用いられる。放射線硬化性樹脂は、分子内に2個以上の二重結合を有し、且つ二重結合1個当りの重量平均分子量が50〜300でありことが好ましい。下塗層に放射線硬化性樹脂を用いる場合は、下塗層に含まれる放射線硬化性樹脂の割合は、結合剤と放射線硬化性樹脂の合計量に対して5〜30wt%であることが好ましい。
【0038】
二重結合1個当りの重量平均分子量が50〜300の放射線硬化性樹脂としては、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ノボラックジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグルコールジアクリレートなどの二官能アクリレートおよび上記アクリレートと同様の二官能メタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレートなどの三官能アクリレートおよび上記アクリレートと同様の三官能メタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの四官能以上のアクリレートおよび上記アクリレートと同様の四官能以上のメタクリレートなどのモノマーアクリレート(メタクリレート)や上記モノマーをポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタンなどの骨格で分子鎖延長してオリゴマー化したものなどが利用できる。
【0039】
<有機溶剤>
本発明において、磁性塗料の製造に使用される有機溶剤としては、たとえば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤、などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でまたは混合して使用され、またトルエンなどと混合して使用される。
【0040】
本発明において、磁性塗料の製造に使用される添加剤には、研磨剤、潤滑剤、分散剤が使用できる。
【0041】
<研磨剤他>
磁性層に含ませる研磨剤としては、α−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素など、主としてモース硬度6以上のものが単独または組み合わせて使用できる。これらの研磨剤の粒子サイズとしては、通常、平均粒子径で10〜200nmであるのが好ましい。
【0042】
また、磁性塗料には、必要により、導電性と表面潤滑性の向上を目的に、従来公知のカーボンブラックを添加してもよい。カーボンブラックには、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどを使用できる。平均粒子径が10〜100nmのものが好ましい。この範囲が好ましいのは、平均粒子径が10nm未満になると、カーボンブラックの分散が難しく、100nmを超えると、多量のカーボンブラックを添加する必要があり、いずれも表面が粗くなり、出力低下の原因になるためである。また、必要により、平均粒子径の異なるカーボンブラックを2種以上用いてもよい。研磨材の含有量は、磁性粉末100重量部に対して、5〜20重量部であると好ましく、8〜18重量部であるとより好ましい。
【0043】
<潤滑剤>
磁性塗料には、塗料中に含まれる全粉体に対して、0.5〜5重量%の脂肪酸、0.2〜3重量%の脂肪酸のエステル、0.5〜5.0重量%の脂肪酸アミドを含有させることが好ましい。上記範囲の脂肪酸の添加が好ましいのは、0.5重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、5重量%を超えると、強靭性が失われるおそれがあるからである。
【0044】
上記範囲の脂肪酸のエステル添加が好ましいのは、0.2重量%未満では、摩擦係数低減効果が小さく、3重量%を超えると、磁性層への移入量が多すぎるため、テープとヘッドが貼り付くなどの副作用を生じるおそれがあるためである。上記の範囲の脂肪酸アミド添加が好ましいのは、0.5重量%未満ではヘッド/磁性層界面での直接接触が起こり焼き付き防止効果が小さく、5.0重量%を超えるとブリードアウトしてドロップアウトなどの欠陥が発生する恐れがあるからである。脂肪酸としては、炭素数10以上の脂肪酸を用いるのが好ましい。炭素数10以上の脂肪酸は、直鎖、分岐、シス・トランスなどの異性体のいずれでもよいが、潤滑性能にすぐれる直鎖型が好ましい。この脂肪酸には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸などがある。これらの中でも、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などが好ましい。
【0045】
脂肪酸エステルとしては、前記脂肪酸のエステルを用いるのが好ましい。脂肪酸アミドとしては、パルミチン酸、ステアリン酸などの炭素数が10以上の脂肪酸アミドが使用可能である。
【0046】
<分散剤>
磁性粉末、研磨材やカーボンブラックなどの添加剤を良好に分散させるために分散剤を使用することができる。このような分散剤としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸などの炭素数12〜18個の脂肪酸〔RCOOH(Rは炭素数11〜17個のアルキル基またはアルケニル基)〕、上記脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる金属石けん、上記脂肪酸エステルのフッ素を含有した化合物、上記脂肪酸のアミド、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンはエチレン、プロピレンなど)、硫酸塩、スルホン酸塩、りん酸塩、銅フタロシアニンなどの従来公知の各種の分散剤を、いずれも使用することができる。これらは、単独でも組み合わせて使用してもよい。分散剤は、いずれの層でも、結合剤樹脂100重量部に対し、通常0.5〜20重量部の範囲で添加される。
【0047】
本発明においては、上記した磁性粉末および結合剤とともに、有機溶剤や上記の添加剤成分などを使用して、前記方法で分散処理して磁性塗料を製造したのち、この磁性塗料を使用して、常法に準じて、非磁性支持体上に塗布し、乾燥して、磁性層を形成し、所要の処理工程を経ることにより、磁気記録媒体を製造する。
【0048】
本発明において、上記の磁性層は、下塗り層を介して形成するのが好ましい。また、この磁性層の上に、必要により、磁性層の保護などのため、トップコート層(最上層非磁性層)を設けてもよい。さらに、上記の磁性層は、磁気記録媒体の容量を大きくするために、非磁性支持体の両面側に形成してもよい。一方、非磁性支持体の片面にのみ磁性層を形成する場合は、通常は、その背面側にバックコート層を形成するのが好ましい。
【0049】
<非磁性支持体>
非磁性支持体の厚さは、用途によって異なるが、通常は、1.5〜11μmのものが使用される。非磁性支持体の厚さは、より好ましくは2〜7μmである。この範囲の厚さの非磁性支持体が使用されるのは、1.5μm未満となると、製膜が難しくなり、またテープ強度が小さくなるためであり、11μmを超えると、テープ全厚が厚くなり、テープ1巻あたりの記録容量が小さくなるためである。
【0050】
非磁性支持体の長手方向のヤング率としては、5.8GPa(590kg/mm)以上が好ましく、7.1GPa(720kg/mm )以上がより好ましい。非磁性支持体の長手方向のヤング率が5.8GPa以上がよいのは、長手方向のヤング率が5.8GPa未満では、テープ走行が不安定になるためである。
【0051】
ヘリキャルスキャンタイプでは、長手方向のヤング率(MD)/幅方向のヤング率(TD)は、0.6〜0.8の範囲が好ましく、0.65〜0.75の範囲がより好ましい。長手方向のヤング率/幅方向のヤング率が、上記範囲がよいのは、0.6未満または0.8を超えると、メカニズムは現在のところ不明であるが、磁気ヘッドのトラックの入り側から出側間の出力のばらつき(フラットネス)が大きくなるためである。このばらつきは、長手方向のヤング率/幅方向のヤング率が0.7付近で最小になる。
【0052】
また、リニアレコーディングタイプでは、長手方向のヤング率/幅方向のヤング率は、理由は明らかではないが、0.7〜1.3が好ましい。
【0053】
非磁性支持体の幅方向の温度膨張係数は、−10〜10×10−6、湿度膨張係数は、0〜10×10−6が好ましい。この範囲が好ましいのは、この範囲をはずれると、温度・湿度の変化によりオフトラックが生じエラーレートが大きくなるからである。
【0054】
以上のような特性を満足する非磁性支持体としては、たとえば、二軸延伸のポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム、芳香族ポリアミドフィルム、芳香族ポリイミドフィルムなどが挙げられる。
【0055】
<下塗層>
下塗層の厚さは、0.2μm以上1.0μm未満が好ましく、0.9μm以下がより好ましい。この範囲が好ましいのは、0.2μm未満では、非磁性支持体の表面突起を隠蔽する効果、耐久性の向上効果が小さくなり、また1.0μm以上になると、磁気テープの全厚が厚くなりすぎ、テープ1巻当りの記録容量が小さくなるためである。
【0056】
下塗層に使用する非磁性粉末には、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウムなどがあるが、酸化鉄単独または酸化鉄と酸化アルミニウムの混合系が好ましく使用される。非磁性粉末の粒子形状は、球状、板状、針状、紡錘状のいずれでもよいが、針状、紡錘状の場合は、通常、長軸長50〜200nm、短軸長5〜100nmのものが好ましい。また、粒状の場合は粒径5〜200nm、より好ましくは5〜100nmのものが使用される。
【0057】
さらに、導電性改良の目的で、粒子径0.01〜0.1μmのカーボンブラックを添加することが好ましい。下塗層を平滑にかつ厚みムラを少なく塗布するには、上記の非磁性粉末およびカーボンブラックは粒度分布がシャープなものを用いるのがとくに好ましい。カーボンブラックの代わりに、平均粒子径10〜100nmの板状ITO(インジウム、スズ複合酸化物)粉末を用いてもよい。
【0058】
カレンダ加工ロールとしてはエポキシ、ポリエステル、ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロール(カーボン、金属やその他の無機化合物を練り込んで有るものでもよい)と金属ロールの組合わせ(3ないし7段の組合せ)、または金属ロールどうしで処理することもできる。処理温度は、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、その線圧力は好ましくは200kg/cm(196kN/m)以上、さらに好ましくは300kg/cm(294kN/m)以上であり、その速度は20〜700m/分の範囲である。カレンダ加工処理を行うことにより、下塗層の空隙率を制御し、磁性層を形成する際の磁性塗料中に含まれる溶媒の下塗層への染み込みを制御することができ、均一で平滑な磁性層を制御することができる。
【0059】
<磁性層>
磁性層の厚さは、10〜150nmの範囲が好ましく、また短波長記録特性をさらに向上させるには、20〜100nmの範囲がより好ましく、30〜70nmの範囲が最も好ましい。この範囲が好ましいのは、10nm未満では均一な磁性層を形成するのが困難になり、十分な出力が得られず、150nmを超えると、自己減磁作用による記録再生時の厚み損失が大きくなるからである。
【0060】
磁性層のテープ長手方向の残留磁束密度と磁性層厚さの積は、0.0018〜0.05μTmであると好ましく、0.0036〜0.05μTmであるとより好ましく、0.004〜0.05μTmであるとさらに好ましい。残留磁束密度と磁性層の厚さとの積が小さすぎると、MRヘッドによる再生出力が小さくなり、大きすぎるとMRヘッドによる再生出力が歪みやすくなるからである。上記積がこの範囲内にある磁性層有する磁気記録媒体は、短波長記録が可能である。加えて、MRヘッドで再生した時の再生出力が大きく、しかも再生出力の歪が小さく、出力対ノイズ比を大きくできるので、好ましい。
【0061】
カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等が挙げられる。
カーボンブラックの平均粒子径は、10nm〜100nmであると好ましい。平均粒子径が小さすぎるとカーボンブラックの分散が難しく、平均粒子径が大きすぎると多量のカーボンブラックが必要になる。よって、平均粒子径が小さすぎても大きすぎても、磁性層13の表面が粗くなり、出力を低下させる恐れがあるので好ましくない。カーボンブラックの含有量は、磁性粉末100重量部に対して、0.2〜5重量部であると好ましく、0.5〜4重量部であるとより好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は、重量部である。また、実施例および比較例中の平均粒子径は、数平均粒子径である。
【実施例1】
【0063】
《樹脂液成分》
・ポバール(重合度 500,ケン化度 88mol%) 100部
・架橋剤(有機チタン系化合物)(松本交商社製 オルガチックスTC−310)
17部
・水 1320部
《下塗塗料成分》
(1)成分
・針状酸化鉄 68部
・カーボンブラック 20部
・粒状アルミナ粉末 12部
・メチルアシッドフォスフェート 1部
・塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 9部
(含有−SO Na基:0.7×10−4当量/g)
・ポリエステルポリウレタン樹脂 5部
(ガラス転移温度:40℃、含有−SO Na基:1×10−4当量/g)
・テトラヒドロフラン 13部
・シクロヘキサノン 63部
・メチルエチルケトン 137部
(2)成分
・ステアリン酸ブチル 2部
・シクロヘキサノン 50部
・トルエン 50部
(3)成分
・ポリイソシアネート 2.5部
・シクロヘキサノン 9部
・トルエン 9部
《磁性塗料成分》
(1)混練工程成分
・磁性粉末 (メタル磁性粉) 100部
Co/Fe:24at%、
Al/(Fe+Co):4.7at%
Y/(Fe+Co):7.9at%
σs:116A・m2/kg(116emu/g)、
Hc:165kA/m(2070Oe)、
平均粒子径:45nm、軸比:4
・塩化ビニル系共重合体 13部
(日本ゼオン社製MR−110)
・ポリエステルポリウレタン樹脂(PU) 4.5部
(含有−SO3 Na基:1.0×10-4当量/g)
・粒状アルミナ粉末(平均粒子径:80nm) 10部
・メチルアシッドホスフェート(MAP) 2部
・テトラヒドロフラン(THF) 20部
・メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 9部
(2)希釈工程成分
・パルミチン酸アミド(PA) 1.5部
・ステアリン酸n−ブチル(SB) 1部
・メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 350部
(3)配合工程成分
・ポリイソシアネート 1.5部
・メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(MEK/A) 29部
【0064】
上記の下塗塗料成分において(1)成分を回分式ニーダで混練したのち、(2)成分を加えて攪拌の後サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行い、これに(3)を加え攪拌・濾過した後、下塗塗料とした。
【0065】
これとは別に、上記の磁性塗料の成分において(1)の混連工程成分を予め高速混合しておき、その混合粉末を連続式2軸混練機で混練し、さらに(2)の希釈工程成分を加え連続式2軸混練機で少なくとも2段階以上に分けて希釈を行い、サンドミルで滞留時間を45分として分散し、これに(3)の配合工程成分を加え攪拌・ろ過後、磁性塗料とした。
【0066】
ポリエチレンナフタレート支持体(厚さ6.1μm、)からなるベースフィルム上に、上記樹脂液を乾燥後の厚さが0.1μmになるように塗布乾燥後、その上に上記の下塗塗料を、カレンダ後の厚さが1.2μmとなるようにエクストルージョン型コータにて塗布した後乾燥、処理温度70℃、線圧力200kg/cm(196kN/m)の条件にて金属ロールからなる7段カレンダ装置にて平滑化処理を行った。この下塗層上に、磁性塗料を塗布、乾燥、カレンダ処理後の磁性層の厚さが0.09μmとなるようにエクストルージョン型コータにて塗布し(逐次塗布)、ソレノイド磁石にて塗布走行方向に磁性体を配向させた。このときの支持体上に磁性塗料が塗布される場の磁界強度は400KA/mに調節した。その後乾燥、金属ロールからなる7段カレンダで、処理温度100℃、線圧力200kg/cm(196kN/m)の条件で平滑化処理を行い、さらに、磁気シートをえた。
【0067】
《バックコート層用塗料成分》
・カーボンブラック(平均粒子径:25nm) 87部
・カーボンブラック(平均粒子径:350nm) 10部
・粒状アルミナ粉末(平均粒子径:80nm) 3部
・ニトロセルロース 45部
・ポリウレタン樹脂(−SO3 Na基含有) 30部
・シクロヘキサノン 260部
・トルエン 260部
・メチルエチルケトン 525部
【0068】
上記バックコート層用塗料成分をサンドミルで滞留時間45分として分散した後、ポリイソシアネート15部を加えてバックコート層用塗料を調整してろ過後、上記で作製した磁気シートの磁性層の反対面に、乾燥、カレンダ後の厚みが0.5μmとなるように塗布し、乾燥した。
【0069】
このようにして得られた磁気シートを金属ロールからなる7段カレンダで、処理温度100℃、線圧力200kg/cm(196kN/m)の条件で平滑化処理し、磁気シートをコアに巻いた状態で70℃にて72時間エージングし、バック層付き評価用の磁気シートを得た。
【0070】
このバック層付き評価用の磁気シートを1/2インチ幅に裁断し、サーボライターにて、サーボ信号を書き込み、評価用の磁気テープを得た。
(実施例2〜5)
乾燥後の樹脂層厚さを、表1示したように変更した以外は、実施例1と同様にして、評価用の磁気テープを得た。
(実施例6)
樹脂液成分の架橋剤を、ジルコニウム系化合物の、松本交商社製 オルガチックスZBC−126に変更した以外は、実施例1と同様にして、評価用の磁気テープを得た。
(比較例1)
樹脂層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、評価用の磁気テープを得た。
(比較例2)
樹脂液成分中の架橋剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、評価用の磁気テープを得た。
【0071】
〈支持体の突起高さ〉
樹脂層を設けなかったものおよび樹脂層を設けた支持体表面を光学顕微鏡で観察(倍率100倍)し、突起のある部分を5箇所マーキングし、マーキングした箇所をZYGO社製の汎用三次元表面構造解析装置「NewView5000」で、走査型白色光干渉法により、Scan Lengthを5μmで測定し、5箇所の平均値で表した。なお、測定視野は350μm×280μmとした。
【0072】
〈エラー回数〉
LTO2用のヘッドを用いて、評価用の磁気テープを速度1.83m/sで走行させながら波長0.39umの矩形波を記録再生し、再生信号振幅のベース対ピーク値が直前に書込まれた平均に対して35%より小さく、且つその時間が1μsec以上連続して続いた場合を1個とカウントして測定した。磁気テープ100m当りの個数として表した。
【0073】
〈寸法安定性〉
ヒューレットパッカード社製、LTO2のドライブを用いて、(1)10℃、10%RHの温湿度下で評価用の磁気テープを10hr往復走行させた後、信号を記録し、(2)30℃、80%RHの温湿度下で再度10hr往復走行させた後、信号を再生し、(1)から(2)への温湿度変化による磁気テープの磁気ヘッドに対するトラックずれ幅を測定し磁気テープの幅方向の膨張率を下式により求めた。
膨張率(ppm)=(10℃、10%RHから30℃、80%RHへの温湿度下温湿度変化におけるトラックズレ量)/(10℃、10%RHにおける基準位置から測定トラックまでの寸法)×10
【0074】
表1に評価結果を示した。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から分るように、本発明に係る、実施例1〜6の評価用磁気テープは、非磁性支持体の突起高さが抑えられるため、エラーが少なく、膨張率も小さい。これに対して、樹脂層を設けない、比較例1は、エラーが多く、膨張率が大きい。また、樹脂層を設けても、架橋させていない比較例2は、エラーは少ないものの、膨張率が大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体の一方の主面に、水溶性樹脂を含む樹脂層と、非磁性粉末と結合剤とを含む下塗層と、この下塗層の上に、磁性粉末と結合剤とを含む磁性層、他方の主面に非磁性粉末と結合剤とを含むバックコート層を有する磁気記録媒体であって、
前記樹脂層に含まれる水溶性樹脂が架橋硬化されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記架橋硬化が、有機チタン系化合物またはジルコニウム系化合物により行われることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記樹脂層の厚さが0.1〜2.0μmであることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。

【公開番号】特開2010−218653(P2010−218653A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66490(P2009−66490)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】