説明

磁気記録媒体

【課題】
媒体の保磁力が高くなるほど高密度記録時の減磁が少なくなり、高密度記録特性が向上する。しかしながら書き込みヘッドの能力に限界があり、保磁力が高すぎると飽和記録が困難になり、高出力が得られにくくなる。
【解決手段】
本発明では、六方晶系フェライト磁性粉末が組成によって大きな保磁力の温度依存性を示すことを利用して、再生時に比べて保磁力が小さくなる高温で記録し、保磁力が大きくなる室温付近で再生することにより、優れた高密度記録特性を得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体に関し、さらに詳しくは、磁性粉末として六方晶フェライト粉末を用いたデジタルビデオテープ、コンピユータ用のバックアップテープなどの超高密度記録に最適な磁気記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗布型磁気記録媒体、つまり非磁性支持体上に磁性粉末と結合剤を含有する磁性層を有する磁気記録媒体は、記録再生方式がアナログ方式からデジタル方式への移行に伴い、一層の記録密度の向上が要求されている。とくに、高記録密度用のビデオテープやコンピュータ用のバックアップテープなどにおいては、この要求が、年々、高まってきている。
【0003】
記録密度の向上に不可欠な短波長記録に対応するためには、記録時の厚み損失を小さくするため、磁性層の厚さを200nm以下、特に100nm以下に薄膜化するのが効果的である。このような高記録密度媒体に用いられる再生用磁気ヘッドとしては、高出力が得られるMRヘッドが一般に用いられているが、将来はさらに高感度なGMRヘッドが使用されると考えられる。
【0004】
また、ノイズ低減のため、磁性粉末においては、年々、微粒子化がはかられ、現在、粒子径が45nm程度の針状のメタル磁性粉末が実用化されている。さらに短波長記録時の減磁による出力低下を防止するために、年々、高保磁力化がはかられ、鉄−コバルト合金化により238.9kA/m(3,000エルステッド)程度の保磁力が実現されている(特許文献1−3参照)。しかしながら針状磁性粒子を用いる磁気記録媒体においては、保磁力が粒子の針状形状に基づく形状磁気異方性に依存することから、上記粒子径からのさらに大幅な微粒子化は困難になってきている。
【0005】
即ち針状メタル磁性粉末は、針状形状にすることによる形状磁気異方性により保磁力を発現しているが、微粒子化に伴い必然的に針状比(粒子長さ/幅)が小さくなり、保磁力が低下する。この保磁力の低下は、高記録密度化する上で、致命的な問題となる。このように針状メタル磁性粉末は、微粒子化に伴い保磁力が低下する本質的な問題があり微粒子化に限界がある。
【0006】
そこで、上記針状の磁性粉末とは全く異なる磁性粉末として、板状で、かつ板面に垂直な方向に磁化容易軸を有する六方晶系フェライト磁性粉末が提案されている(特許文献4〜6)。この六方晶系フェライト磁性粉末は、保磁力を結晶磁気異方性に基づいているため、微粒子になっても高い保磁力を維持できるため、高密度記録領域において高い出力と同時にノイズが低く、その結果高いノイズ対出力比(SNR)が得られ高密度記録媒体に適した磁性粉末であることが示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平3−49026号公報
【特許文献2】特開平10−83906号公報
【特許文献3】特開平10−34085号公報
【特許文献4】特開平6−290924号公報
【特許文献5】特開2005−340690号公報
【特許文献6】特開2002−298331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常磁気記録媒体は、保磁力が高くなるほど反磁界による減磁が小さくなり、高密度記録特性は向上する。しかし磁気記録媒体にデータを書き込むための記録ヘッドの能力には限界があり、保磁力が高すぎると、飽和記録が困難になる。
【0009】
さらに記録密度を向上させるためには、使用される磁性粉末の粒子サイズは、さらに小さくする必要があるが、粒子サイズがちいさくなるに伴い、熱ゆらぎによる自然減磁が顕著になる。この熱減磁を防止するためにも、磁気記録媒体の保磁力を高くすることが好ましいが、上述した記録ヘッドの能力の問題で、高保磁力化に限界があるのが現状である。
【0010】
本発明は、六方晶系フェライト磁性粉末の保磁力の温度依存性を適度に制御することにより、書き込み時の記録ヘッドの能力に左右されずに、高密度記録を実現できる磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、従来使用されてきた針状のメタル磁性粉末や、針状の鉄―コバルト合金磁性粉末の保磁力が、形状磁気異方性に依存しているため、本質的に保磁力の温度依存性が小さいのに対して、保磁力を結晶磁気異方性に依存する六方晶系フェライト磁性粉末では、添加元素当により、適度な保磁力の温度依存性を付与できることを見出した。即ち、従来、磁気記録媒体において欠点と考えられてきた保磁力の温度依存性を逆に利用することにより、優れた高密度記録特性を有する磁気記録媒体が得られることを見出したものである。
【0012】
本発明に用いる磁性粉末としては、平均粒子サイズが10〜20nmの範囲に、保磁力が79.6〜318.4kA/m(1,000〜4,000エルステッド)の範囲に、飽和磁化量が20〜60Am/kg(20〜60emu/g)の範囲にある六方晶系フェライト磁性粉末が好ましい。この磁性粉末を含有させた磁気記録媒体の磁気特性としては、再生は通常室温近辺で行うため、例えば長手配向媒体とする場合には、室温において、長手方向の保磁力(Hc)が79.6〜398.0kA/m(1,000〜5,000エルステッド)で、角形比(Br/Bm)は0.65〜0.92で、残留磁化(Mr)と磁性層厚さ(t)の積であるMr・tが0.1〜2.0memu/cmの範囲になるように磁性層厚さと充填度合いを設定すること好ましい。また垂直配向媒体とする場合には、同様に室温において、垂直方向の保磁力(Hc)が79.6〜318.358.2kA/m(1,000〜4,500エルステッド)で、角形比(Br/Bm)は0.60〜0.85で、Mr・tが0.05〜1.5memu/cm2の範囲になるように磁性層厚さと充填度合いを設定することが好ましい。さらに無配向媒体とする場合には、室温における長手方向の保磁力(Hc)が79.6〜398.0kA/m(1,000〜5,000エルステッド)で、角形比(Br/Bm)は0.40〜0.65で、Mr・tが0.08〜1.8memu/cmの範囲になるように設定することが好ましい。
【0013】
本発明において最も重要な保磁力の温度依存性としては、−50℃から100℃の温度範囲において、保磁力が−159〜−796A/m(−2〜−10Oe)/℃の温度依存性を示すことが好ましい。即ち、温度が高くなると保磁力が低下する性質を利用して、通常の再生時の温度に比べて高い温度で信号を記録することにより、高記録密度に優れた媒体を得るものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、六方晶系フェライト磁性粉末を含有させて、−50℃から100℃の温度範囲において、保磁力が−159〜−796A/m(−2〜−10Oe)/℃の温度依存性を示す磁気記録媒体として、再生時の温度に比べて高い温度で信号を記録することにより、優れた高密度記録特性を示す媒体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本実施の形態における磁性層は、磁性粉末として、平均粒子サイズが10〜20nmの範囲に、保磁力が79.6〜318.4kA/m(1,000〜4,000エルステッド)の範囲に、飽和磁化量が20〜60Am/kg(20〜60emu/g)の範囲にある六方晶系フェライト磁性粉末を使用し、磁気記録媒体としたときに、−50℃から100℃の温度範囲において、保磁力が−159〜−796A/m(−2〜−10Oe)/℃の温度依存性を示すことにより、優れた高密度記録特性を示す。
【0016】
なおここで言う保磁力の温度依存性とは、−50℃から100℃の温度範囲において、温度が高くなるに従い保磁力が低下し、この低下割合が、1℃当たり−159〜−796A/m(2〜10Oe)であることを示す。
【0017】
保磁力の温度依存性が−159A/mより大きいと、保磁力が温度依存性により小さくなる高温においても依然保磁力が高いため、書き込み特性が悪くなる。一方保磁力の温度依存性が−796A/mより小さいと、長期保存により記録データが熱減磁により消失するなどの問題が生じやすくなる。
【0018】
また使用する六方晶系フェライト磁性粉末の平均粒子サイズは、10nmより小さいと均一に分散することが困難になり、凝集等により却ってノイズが高くなりやすい。また平均粒子サイズが20nmより大きいと、均一に分散できても、1個の磁性粉末そのもの粒子サイズが大きすぎるため、ノイズが高くなる。
【0019】
また本発明の磁気記録媒体は再生は通常室温近辺で行うことが好ましいが、磁気特性としては、室温において、例えば長手配向媒体とする場合には、長手方向の保磁力(Hc)が119.4〜398.0kA/m(1,500〜5,000エルステッド)で、角形比(Br/Bm)は0.65〜0.92で、残留磁化(Mr)と磁性層厚さ(t)の積であるMr・tが0.1〜2.0memu/cmの範囲になるように磁性層厚さと充填度合いを設定すること好ましい。また垂直配向媒体とする場合には、同様に室温において、垂直方向の保磁力(Hc)が79.6〜358.2kA/m(1,000〜4,500エルステッド)で、角形比(Br/Bm)は0.60〜0.85で、Mr・tが0.05〜1.5memu/cm2の範囲になるように磁性層厚さと充填度合いを設定することが好ましい。さらに無配向媒体とする場合には、室温における長手方向の保磁力(Hc)が79.6〜398.0kA/m(1,000〜5,000エルステッド)で、角形比(Br/Bm)は0.40〜0.65で、Mr・tが0.08〜1.8memu/cmの範囲になるように磁性層厚さと充填度合いを設定することが好ましい。
【0020】
いずれの配向状態の磁気記録媒体においても、本発明の六方晶系フェライト磁性粉末を用い、磁気記録媒体としたときの長手方向保磁力の温度依存性を、−50℃から100℃の温度範囲において、−159〜−796A/m(−2〜−10Oe)/℃とすることにより、優れた高記録密度特性を有する磁気記録媒体が得られる。
【0021】
また本発明は、六方晶系フェライト磁性粉末を用いた磁気記録媒体の保磁力の温度依存性を利用して記録再生を行うことを特徴としているが、その記録再生の温度としては特に限定されるものではないが、通常再生時に比べ20〜40℃高い温度で記録することは好ましい。例えば、本発明の磁気記録媒体は、データのバックアップ等がその主要用途と考えられるため、通常、記録の再生は、温度がコントロールされた室内で行われると考えられるため、再生時の温度は20℃近辺とすると、記録は、40〜60℃近辺で行うことが好ましい。この記録時の温度は、高い方が保磁力の低下量も大きいため飽和記録しやすくなり好ましいが、あまり温度が高すぎるとテープ変形等のダメージを受けやすくなるため、テープがダメージを受けない範囲の温度で行うことが好ましい。
【0022】
本発明に使用する六方晶系フェライト磁性粉末としては、バリウムフェライト磁性粉末、及びストロンチウムフェライト磁性粉末の内の少なくとも1種が好ましく、特にバリウムフェライト磁性粉末が好ましい。これらの六方晶系フェライト磁性粉末は、大きな磁気異方性を有するため、特に短波長領域で出力の低下を抑えられる特徴がある。上記六方晶系フェライト系磁性粉末は、所定の元素以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ta、W、Re、Au、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、B、Ge、Nbなどの元素を含有させる。これらの元素添加は、本発明の六方晶系フェライト磁性粉末の保磁力の温度依存性を任意の値に調整する上で必要で、さらに粒子サイズを高密度記録に適した10〜20nmに調整する上で、必要である。
【0023】
次に本発明の六方晶系フェライト磁性粉末の製造方法について説明する。
まず六方晶系フェライト磁性粉末の構成元素であるバリウム(Ba)塩かストロンチウム(Sr)塩のいずれか一種以上の金属塩と鉄塩、さらに本発明の特徴である保磁力の温度依存性を付与するための各種の添加元素の金属塩を含む水溶液にアルカリ水溶液を添加して共沈物を作る。次にこの共沈物を水熱処理することによって、六方晶系フェライト磁性粉末のプリカーサを合成する。バリウム塩、ストロンチウム塩、鉄塩としては、これらの金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩が好適に使用される。
【0024】
保磁力の温度依存性を付与するための金属塩としては、コバルト(Co)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)などが適しており、これらの金属イオンを適度に組み合わせて添加することにより、−50℃から100℃の温度範囲において、−159〜−796A/m(−2〜−10Oe)/℃の保磁力の温度依存性を付与することができる。またこれらの添加元素は、粒子サイズを任意に制御するためにも必要である。
【0025】
またアルカリとしては通常水酸化ナトリウムが使用され、添加する金属塩のモル等量以上で、過剰アルカリ濃度が0.01モル/L以上とするのが好ましい。このアルカリ濃度は、添加金属イオンの種類、添加量とともに、保磁力の温度依存性を任意の範囲のものとする上で重要である。アルカリ濃度が高過ぎても特に問題となることはないが、アルカリ濃度が低く過ぎると、添加元素が均一に六方晶系フェライト磁性粉末中に取り込まれにくくなり、その結果、目的とする保磁力の温度依存性を示すものが得られにくくなる。特に金属塩に対して等量モル以下になると、六方晶系フェライト磁性粉末以外のものが生成しやすくなる。
【0026】
したがって、目的とする保磁力の温度依存性を示す六方晶系フェライト磁性粉末を得るためには、まず適度なアルカリ濃度で、六方晶系フェライト磁性粉末のプリカーサを合成し、その後の熱処理条件により、粒子形状を維持しながら結晶性を高めて、目的とする保磁力の温度依存性を示す磁性粉末に仕上げることが有効である。
【0027】
水熱処理は、通常オートクレーブを用いて行われ、オートクレーブ中での加熱処理は、200〜350℃で1〜6時間処理することが好ましい。この水熱処理温度が低過ぎると、最終的に目的とする保磁力の温度依存性および形状を有する六方晶系フェライト磁性粉末が得られず、また高過ぎても特に問題となることはないが、エネルギー効率が悪くなるだけであまり意味がない。また処理時間についても処理温度と同様の傾向で、この処理時間が短か過ぎると、最終的に目的とする保磁力の温度依存性および形状を有する六方晶系フェライト磁性粉末が得られず、また長過ぎても特に問題となることはないが、エネルギー効率が悪くなるだけであまり意味がない。
【0028】
このようにして作製された六方晶系フェライト磁性粉末のプリカーサは、次に融剤を用いて、融剤の融点以上の温度で加熱処理することにより、溶融した融剤中で六方晶系フェライト磁性粉末が結晶成長して生成する。融剤は六方晶系フェライト磁性粉末を結晶成長させるための母材であると同時に、六方晶系フェライト磁性粉末同士の焼結を防止する。その結果、目的とする保磁力と保磁力の温度依存性、および形状を有する六方晶系フェライト磁性粉末が得られる。
【0029】
ここで使用される融剤としては、500〜1,000℃で溶融し、かつ六方晶系フェライト粒子と固溶しないものが好ましく使用され、溶融温度がこれより低いものでは六方晶系フェライト粒子の熱処理が不充分となり、六方晶系フェライト粒子の結晶性が不を充分になるため、目的とする特性を有する六方晶系フェライト磁性粉末が得られない。一方溶融温度が高いものでは融剤中での六方晶系フェライト粒子の結晶成長が顕著になり過ぎて、粒子が粗大化する傾向になる。また六力晶系糸フエライト粒子と固溶するものは、飽和磁化量を低下しやすいため好ましくない。このような融剤としては、例えば、ナットリウム(Na)やカリウム(K)、リチウム(Li)の硫酸塩、塩化物、臭化物、沃化物やホウ酸などが好適なものとして使用され、特にNaClやKCl、KBrは水によく溶解するため、加熱処理後、水洗することによりこれらの融剤を除去しやすく、磁性粉末中に不純物として残らないため好ましい。
【0030】
この融剤による加熱処理は、750〜900℃の範囲内の温度で1〜4時間行うのが好ましく、処理温度が低すぎたり、処理時間が短かすぎると、熱処理が不充分となり、六方晶系フェライト磁性粉末の結晶性が充分に向上せず磁気特性の向上も不充分になる。また、処理温度が高すぎたり、処理時間が長すぎると、融剤が粒子表面固着して磁気特性の中でも飽和磁化量をかえって低下させる傾向がある。
【0031】
また他の製造方法として、上述した六方晶系フェライト構成元素と融剤を混合した溶解物を急冷することにより、六方晶系フェライト粒子の成長を抑制し、この急冷物を400〜700℃で加熱処理することにより、融剤中で適度な大きさに六方晶系フェライト粒子に結晶成長させ、その後融剤を溶解除去することにより六方晶系フェライト粒子を得ることもできる。このような方法によっても、目的とする保磁力と保磁力の温度依存性および形状を示す六方晶系フェライト磁性粉末を得ることができる。この際、前述した製造方法と同様、六方晶系フェライト磁性粉末の基本構成元素であるバリウム(Ba)塩かストロンチウム(Sr)塩や鉄塩の他に、本発明の特徴である保磁力の温度依存性を付与するための各種の金属塩も添加することは言うまでもない。
【0032】
以下に、本発明の磁気記録媒体について説明する。
【0033】
本発明に使用する非磁性支持体としては、従来から使用されている磁気記録媒体用の非磁性支持体をいずれも使用できる。たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフオン、アラミド、芳香族ポリアミドなどからなる厚さが通常2〜15μm、特に2〜7μmのプラスチツクフイルムが好ましく用いられる。
【0034】
磁性層の厚さは、長手記録の本質的な課題である減磁による出力低下の問題を解決するため、300nm以下とすることが好ましい。磁性層厚さが300nm以上では、厚さ損失により再生出力が低下したり、残留磁化(Mr)と磁性層厚さ(t)の積であるMr・tが大きくなりすぎて、特に再生ヘッドにGMRヘッドを使用する場合には、再生出力の飽和による再生出力の歪が起こりやすい。一方磁性層厚さが10nm未満では、均一な磁性層が得られにくい。
【0035】
また磁気特性としては、例えば長手配向媒体とする場合には、室温における長手方向の保磁力(Hc)が119.4〜398.0kA/m(1,500〜5,000エルステッド)で、角形比(Br/Bm)は0.65〜0.92で、残留磁化(Mr)と磁性層厚さ(t)の積であるMr・tが0.1〜2.0memu/cmの範囲になるように磁性層厚さと充填度合いを設定すること好ましい。また垂直配向媒体とする場合には、同様に室温において、垂直方向の保磁力(Hc)が79.6〜358.2kA/m(1,000〜4,500エルステッド)で、角形比(Br/Bm)は0.60〜0.85で、Mr・tが0.05〜1.5memu/cm2の範囲になるように磁性層厚さと充填度合いを設定することが好ましい。さらに無配向媒体とする場合には、室温における長手方向の保磁力(Hc)が79.6〜398.0kA/m(1,000〜5,000エルステッド)で、角形比(Br/Bm)は0.40〜0.65で、Mr・tが0.08〜1.8memu/cmの範囲になるように設定することが好ましい。これらの保磁力範囲が好ましいのは、保磁力が低過ぎると、短波長領域で反磁界による減磁により出力低下が起こりやすくなり、また保磁力が高過ぎると、磁気ヘッドによる記録が困難になるためである。またMr・tは、上記の範囲より小さいと、GMRヘッドのような高感度ヘッドを使用した場合でも再生出力が小さく、また上記の範囲より大きいと、GMRヘッドのような高感度ヘッドを使用した場合に、出力が飽和して歪みやすくなるためである。
【0036】
本発明において最も重要な保磁力の温度依存性としては、−50℃から100℃の温度範囲において、保磁力が−159〜−796A/m(−2〜−10Oe)/℃の温度依存性を示すことが好ましく、通常の再生時の温度に比べて保磁力が低くなる高温で信号を記録することにより、高記録密度に優れた媒体を得ることができる。
【0037】
また、磁性層の平均面粗さとしては、Raが1.0〜3.2nmの範囲が好ましく、この範囲のときにヘッドとのコンタクトがよくなり、高いSNRが得られる。一方Raがこの範囲以下になると、ヘッドの張り付きなどにより摺動性が低下する傾向があり、またこの範囲以上では、ヘッドのコンタクトが悪くなり出力が低下しやすくなる。
また磁性層には、導電性向上と表面潤滑性向上を目的にカーボンブラックや、研磨性向上を目的にアルミナ等を含ませることが好ましい。このカーボンブラックやアルミナとしては従来公知のものを使用できる。
【0038】
下塗層は必須の構成要素ではないが、耐久性の向上を目的として、非磁性支持体と磁性層との間に設けることが好ましい。下塗層の厚さとしては、0.1〜3.0μmが好ましく、0.1μm以下では、磁気テープの耐久性が悪くなる場合があり、3.0μm以上では、磁気テープの耐久性の向上効果が飽和するばかりでなく、テープ全厚が厚くなって、1巻当りのテープ長さが短くなり、記憶容量が小さくなる。
【0039】
下塗層に含ませる無機粒子としては特に限定されるものではないが、例えば非磁性の酸化鉄を用いる場合には、針状のものでは平均長さが50〜200nmのものが好ましく、粒状または無定形のものでは平均粒径5〜200nmのものが好ましく用いられる。また、磁性層を垂直配向して垂直記録媒体として使用する場合には、下塗層には磁性粒子を使用することが好ましい。この際、磁性粒子の種類に特に限定はなく酸化鉄、金属あるいは合金が使用できるが、磁性層からの磁束を下塗層で閉じて、表面からのみ強い磁束を発生させることが目的であるため、下塗層に使用する磁性粒子はできるだけ保磁力が小さく、かつ飽和磁化の大きいものが好ましい。
【0040】
垂直記録媒体として使用する場合には、下塗層の磁性層と、信号記録するための上層の磁性層との間に、さらに中間層を形成することもできる。この中間層は、上層と下塗層間の磁気的相互作用を制御し、垂直磁化成分をより有効に活用するために有効である。
【0041】
下塗層、磁性層に使用する結合剤は特に限定されるものではなく、通常磁気記録媒体に使用されているものが使用できる。例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂などの塩化ビニル系樹脂、ニトロセルロース、エポキシ樹脂などの中から選ばれる少なくとも1種と、ポリウレタン樹脂との組み合わせがある。とくに、塩化ビニル系樹脂とポリウレタン樹脂とを併用するのが好ましい。
【0042】
これらの結合剤とともに、結合剤中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのが望ましい。この架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましい。
【0043】
磁性層、下塗層に含ませる潤滑剤には、従来公知の脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどがいずれも用いられる。その中でも、炭素数10以上、好ましくは12〜30の脂肪酸と、融点35℃以下、好ましくは10℃以下の脂肪酸エステルとを併用するのが、特に好ましい。
【0044】
バックコート層は、必須の構成要素ではないが、磁気テープの場合、非磁性支持体の磁性層形成面の反対面にバックコート層を形成するのが望ましい。バックコート層の厚さは、0.2〜0.8μmが好ましく、0.3〜0.8μmがより好ましい。この範囲が好ましいのは、0.2μm未満では走行性の向上効果が不十分で、0.8μmを超えるとテープ全厚が厚くなり、1巻当たりの記憶容量が小さくなるためである。
【0045】
磁性塗料、下塗塗料、バックコート塗料の調製にあたり、溶剤としては、従来から使用されている有機溶剤をすべて使用することができる。たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの炭酸エステル系溶剤、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤などを使用でき、その他、ヘキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどの各種の有機溶剤が用いられる。
【0046】
磁性塗料、下塗塗料、バックコート塗料の調製にあたり、従来から公知の塗料製造工程を使用でき、とくにニーダなどによる混練工程や一次分散工程を併用するのが好ましい。一次分散工程では、サンドミルを使用することにより、磁性粉末などの分散性の改善とともに、表面性状を制御できるので、望ましい。
【0047】
非磁性支持体上に、磁性塗料、下塗塗料、バックコート塗料を塗布する際には、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージヨン塗布などの従来から公知の塗布方法が用いられる。とくに、下塗塗料および磁性塗料の塗布方法は、非磁性支持体上に下塗塗料を塗布し乾燥したのちに磁性塗料を塗布する、逐次重層塗布方法か、下塗塗料と磁性塗料とを同時に塗布する、同時重層塗布方法(ウェットオンウェット)かのいずれを採用してもよい。塗布時における薄層磁性層のレベリングを考えると、下塗塗料が湿潤状態のうちに磁性塗料を塗布する、同時重層塗布方式を採用するのがとくに好ましい。
【0048】
以下、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。なお、以下において部とあるのは重量部を意味するものとする。また磁性粉末として使用する六方晶系フェライト磁性粉末として、一般式BaO・6FeOで表される基本構成のバリウムフェライト磁性粉末に、保磁力の温度依存性および粒子形状を制御することを目的に、各種の元素を添加した例について説明するが、バリウムフェライト磁性粉末に限定されるものではないことは、言うまでもない。
【実施例1】
【0049】
<バリウムフェライト磁性粉末の作製>
1モルの塩化第二鉄と、1/8モルの塩化バリウムおよび塩化コバルト、塩化チタンおよび塩化ニッケルを、それぞれ1/40モルを1Lの水に溶解した混合溶液を作製した。この混合溶液を10℃に冷却し、3.0モルの水酸化ナトリウムを溶解した1Lの水酸化ナトリウム水溶液に加えて攪拌した。この時、水酸化ナトリウム水溶液も10℃に冷却しておき、混合攪拌時の温度も10℃に保ちながら、共沈反応を行った。次いでこの一懸濁液を室温で1日間熟成した後、沈機物をオートクレーブ中に入れ、220℃で4時間、加熱反応させてバリウムフェライトのプリカーサを得た。
【0050】
このバリウムフェライトプリカーサをpHが8以下になるまで十分に水洗した後、バリウムフェライトプリカーサを含む全体の容量が1Lになるように沈降させて懸濁液を作り、上澄液を除去した後、この懸濁液中に融剤として500gのNaClを添加して攪拌し、溶解した。次に、このNaClを溶解したバリウムフェライトプリカーサの懸濁液を面積の広いハツトに入れ、乾燥機で100℃に加熱して、水を蒸発させた。
【0051】
このようにして得られたバリウムフェライトプリカーサとNaClの混合物を解砕し、十分混合したものを坩堝に入れ、まず850℃で20分間加熱して融剤であるNaClを溶解し、次に温度を780℃まで下げ、780℃で約10時間加熱処理し、その後、室温まで冷却した。次に、水洗によりNaClを溶解して除去し、バリウムフェライト磁性粉末を取り出した。
【0052】
このバリウムフェライト磁性粉末について、1,270kA/m(16,000エルステッド)の磁界を印加して測定した飽和磁化は48.2Am2/kg(48.2emu/g)、保磁力は180.00kA/m(2,260エルステッド)であった。また粒子形状は、平均粒子サイズが約20nmで、板状形を有していた。
【0053】
<磁性塗料の作製>
磁性粉末として上記のバリウムフェライト磁性粉末を使用し、以下の組成の磁性塗料成分をニーダで混練したのち、サンドミルで滞留時間を60分とした分散処理を行い、これにポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製の「コロネートL」)5重量部を加え、撹拌ろ過して磁性塗料を調製した。
【0054】
バリウムフェライト磁性粉末 74重量部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合樹脂 13重量部
(含有-SONa基:0.7×10-4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 8重量部
(含有-SONa基:1.0×10-4当量/g)
α−アルミナ(平均粒径:80nm) 4重量部
シクロヘキサノン 156重量部
トルエン 156重量部
【0055】
<下層用塗料の作製>
下記の下層用塗料成分をニーダで混練したのち、サンドミルで滞留時間を45分として分散し、下層用塗料を調整した。
【0056】
酸化鉄粉末(平均粒径:55nm) 70重量部
アルミナ粉末(平均粒径:80nm) 10重量部
カーボンブラツク(平均粒径:25nm) 20重量部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルメタクリレート共重合樹脂 10重量部
(含有-SONa基:0.7×10-4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 5重量部
(含有-SONa基:1.0×10-4当量/g)
メチルエチルケトン 130重量部
トルエン 80重量部
ミリスチン酸 1重量部
ステアリン酸ブチル 1.5重量部
シクロヘキサノン 65重量部
【0057】
<磁気テープの作製>
上記下層用塗料を、非磁性支持体であるポリエチレンテレフタレートフイルムに、乾燥およびカレンダ処理後の下層厚さが2μmとなるように塗布し、この上にさらに、上記の磁性塗料を、テープの走行方向に磁場配向処理、乾燥およびカレンダ処理後の磁性層厚さが120nmとなるように塗布厚さを調整しながら塗布した。
【0058】
つぎに、この非磁性支持体の下塗層および磁性層の形成面とは反対面側に、バツクコート層用塗料を、乾燥およびカレンダ処理後のバツクコート層の厚さが700nmとなるように塗布し、乾燥した。バツクコート層用塗料は、下記のバツクコート塗料成分を、サンドミルで滞留時間45分分散したのち、ポリイソシアネート8.5部を加え、撹拌ろ過して調製したものである。
【0059】
カーボンブラツク(平均粒径:25nm) 40重量部
カーボンブラツク(平均粒径:370nm) 1重量部
硫酸バリウム 4重量部
ニトロセルロース 28重量部
ポリウレタン樹脂(-SONa基含有) 20重量部
シクロヘキサノン 100重量部
トルエン 100重量部
メチルエチルケトン 100重量部
【0060】
このようにして得た磁気シートを、5段カレンダ(温度70℃、線圧150kg/cm)で鏡面化処理し、これをシートコアに巻いた状態で、60℃,40%RH下、48時間エージングした。その後、1/2インチ幅に裁断した。
【実施例2】
【0061】
実施例1におけるバリウムフェライト磁性粉末の作製において、塩化コバルト、塩化チタンおよび塩化ニッケルの添加量を1/40モルから塩化コバルト、塩化チタンをそれぞれ1/30モルに、塩化ニッケルの添加量を1/40モルから1/45に、さらに水酸化ナトリウムの添加量を3.0モルから4.0モルに変更した以外は、実施例1と同じ条件でバリウムフェライト磁性粉末のプリカーサを作製した。このプリカーサを実施例1と同条件で融剤中熱処理を行い、バリウムフェライト磁性粉末を作製した。
【0062】
このバリウムフェライト磁性粉末について、実施例1と同条件で測定した飽和磁化は43.1Am2/kg(43.1emu/g)、保磁力は149.6kA/m(1,880エルステッド)であった。また粒子形状は、平均粒子サイズが約20nmで、板状形を有していた。このバリウムフェライト磁性粉末を用いて、実施例1と同様にして、磁気テープを作製した。
【実施例3】
【0063】
実施例1におけるバリウムフェライト磁性粉末の作製において、水酸化ナトリウムの添加量を3.0モルから、3.5モルに、さらに水熱処理温度を220℃で4時間から、200℃で4時間に変更してバリウムフェライト磁性粉末のプリカーサを作製した。このプリカーサの融剤中での処理条件を、まず850℃で20分間加熱して融剤であるNaClを溶解した後、次に温度を800℃まで下げ、800℃で約10時間加熱処理に変更した。その他は、実施例1と同条件でバリウムフェライト磁性粉末を作製した。
【0064】
このバリウムフェライト磁性粉末について、実施例1と同条件で測定した飽和磁化は49.3Am2/kg(49.3emu/g)、保磁力は195.0kA/m(2,450エルステッド)であった。また粒子形状は、平均粒子サイズが約22nmで、板状形を有していた。このバリウムフェライト磁性粉末を用いて、実施例1と同様にして、磁気テープを作製した。
【0065】
(比較例1)
実施例1におけるバリウムフェライト磁性粉末の作製において、塩化ニッケルを添加せず、かつ塩化コバルトと塩化チタンの添加量を1/40モルから1/20モルに変更した。さらに水酸化ナトリウムの添加量を3.0モルから4.0モルに変更し、水熱処理温度を220℃で4時間から、250℃で4時間に変更してバリウムフェライト磁性粉末のプリカーサを作製した。さらにプリカーサの融剤中での処理条件を、実施例3と同条件でバリウムフェライト磁性粉末を作製した。
【0066】
このバリウムフェライト磁性粉末について、実施例1と同様に磁気測定を行った結果、飽和磁化は45.8Am2/kg(45.8emu/g)、保磁力は132.1kA/m(1,660エルステッド)であった。また粒子形状は、平均粒子サイズが約21nmで、板状形を有していた。このバリウムフェライト磁性粉末を用いて、実施例1と同様にして、磁気テープを作製した。
【0067】
上記の実施例1〜3および比較例1の各磁気テープについて、下記の要領で磁気特性として20℃で長手方向の保磁力(Hc)、角形比(Br/Bm)、−50℃から100℃の温度範囲における保磁力の温度依存性と、および電磁変換特性を測定した。これらの結果は、表1にまとめて示す。なお保磁力の温度依存性は、−50℃および100℃で測定したテープの保磁力をれぞれHc(-50)およびHc(100)としたときに、[Hc(-50)- Hc(100)]/150から求めた。
【0068】
<電磁変換特性の測定>
電磁変換特性は回転ドラム装置を用いて測定した。測定条件は、記録ヘッドとして、トラック幅:12μm、ギャップ長:0.15μm、Bs:1.2TのMIGヘッドを使用し、再生ヘッドとして、トラック幅が2.5μmでSH−SH幅が0.15μmのスピンバルブタイプのGMRヘッドを使用した。テープとヘッドの相対速度は3.4m/秒であり、スペクトルアナライザーを使用して169kfciの記録密度における再生出力(S)とブロードバンドノイズ(N)を測定し、SNRを求めた。なお再生出力とSNRは、比較例1のテープの値を0dBとして、相対値として示した。本評価に置いては、記録時の温度を50℃、再生時の温度を20℃とした。記録は、装置を恒温室に入れて、恒温室内で記録を行った。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例1〜3の各磁気テープは、−50℃から100℃の温度範囲において、保磁力が−159〜−796A/m(−2〜−10Oe)/℃の範囲の保磁力の温度依存性を示し、再生時の温度である20℃では高い保磁力を示すが、記録時の50℃では保磁力が低下するため、十分な書き込み特性を示す。その結果、再生時の温度ではその高い保磁力のため、減磁が少なく、高い出力を示す。
【0071】
一方保磁力が本発明の範囲の温度依存性を示さない比較例1の磁気テープでは、記録ヘッドの書き込み能力に限界があり、再生時に減磁の少ない高い保磁力にすることはできず、その結果、本発明の磁気テープに比べ出力は低くなる。
【0072】
以上のように本発明は、磁性粉末として六方晶系フェライト磁性粉末を用い、磁気テープとしたときに保磁力の温度依存性を特定の範囲とすることにより、優れた高密度記録特性を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体上に磁性粉末と結合剤を含有する磁性層を有する磁気記録媒体において、
磁性粉末として、六方晶系フェライト磁性粉末を用い、かつ
この六方晶系フェライト磁性粉末を用いた磁気記録媒体の保磁力が信号再生時の温度において79.6〜398.0kA/m(1,000〜5,000エルステッド)の範囲にあり、
−50℃から100℃の温度範囲において、保磁力が−159〜−796A/m(−2〜−10Oe)/℃の温度依存性を示すことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気記録媒体において、前記六方晶系フェライト磁性粉末がバリウムフェライトあるいはストロンチウムフェライトの中から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の磁気記録媒体において、前記非磁性支持体と前記磁性層の間に、少なくとも一層の無機粉末および結合剤を含有する下塗り層有し、前記磁性層の厚さが0.3μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。

【公開番号】特開2011−100503(P2011−100503A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252744(P2009−252744)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】