説明

磁気記録媒体

【構成】非磁性支持体上に、イオウ又はリンを含む塩型強酸基や第四級アンモニウム塩基とエポキシ基とを含有するスチレン系共重合体又はアクリル系共重合体の結合剤中に強磁性粉末を分散させて成る磁性層を有する磁気記録媒体。
【効果】優れた記録密度とS/N比が得られ、かつ使用済後焼却しても塩化水素ガスの発生がなく、環境汚染をもたらすことがないなどの特徴を有し、磁気テープ、磁気シート、磁気ディスクなどとして好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規な磁気記録媒体、さらに詳しくは、優れた記録密度とS/N比が得られ、かつ使用済後焼却しても塩化水素ガスの発生がなく、環境汚染をもたらすことがないなどの特徴を有し、例えば磁気テープ、磁気シート、磁気ディスクなどとして好適に用いられる磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録媒体は、例えばオーディオ機器、ビデオ機器、コンピュターなどに用いられ、その需要は著しく伸びてきている。この磁気記録媒体は、一般に、ポリエステルフイルムなどの非磁性支持体上に、磁性粉末と結合剤とから成る磁性層が設けられた構造を有しており、そして、この磁性層は、通常磁性粉末を、結合剤を含有する媒体中に分散させた磁性塗料を該非磁性支持体に塗布したり、あるいは転写したりすることによって形成されている。従来、該結合剤としては、例えばポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、アクリル系樹脂、電子線硬化型樹脂などの有機高分子化合物が用いられている。これらの結合剤はそれぞれ長所及び短所を有しており、単独使用では望ましい性質を有する磁気層が得られにくいため、通常2種以上を組み合わせて用いている。例えば、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール、ニトロセルロースなどの比較的硬い樹脂と、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などの軟質樹脂とが組み合わされて使用されることが多く、また、磁性層の耐久性を向上させる目的で、硬化性成分としてポリイソシアネート化合物を使用する例も多い。近年、磁気記録媒体の記録密度の向上やS/N比の改良要求に伴い、強磁性粉末は、より微細化、高磁力化、高抗磁力化してきており、したがって、該磁性粉末を均質に磁性塗料中に分散させ、平滑で充てん度の高い磁性層を形成させて、前記の記録媒体としての性能の向上を達成させるためには、結合剤の分散性能が極めて重要な要因となる。これまで、強磁性粉末の分散性を向上させる方法としては、通常低分子量の界面活性剤などの分散剤を用いる方法がとられているが、この方法においては、該分散剤を多量に用いると磁気記録媒体の耐久性やヘッド汚れなど、好ましくない事態を招来するため、その使用量が制限されるのを免れず、十分な分散性が得られない上、磁気記録媒体の信頼性の向上の点からも、結合剤自体に高度の分散能を有することが要求されている。一方、磁気記録媒体の耐久性や信頼性を高めるために、ポリイソシアネート化合物などの硬化性化合物を磁性塗料中に含有させ、磁性層を架橋塗膜化することが、特に録画用磁気テープの分野において慣用されている。この場合、結合剤としては、ポリイソシアネート化合物などの架橋剤と適当な反応性を有することが要求される。このような要求にこたえる結合剤として、SO3M、SO4M、PO42、PO32(Mはアルカリ金属又はアンモニウム基)などのイオウやリンを含む塩型強酸基や第四級アンモニウム塩基などの親水性基を含む塩化ビニル系樹脂が、強磁性粉末の分散能や分散安定性に優れ、かつ分子間力の強さに基づく高い強度などの点から、広く用いられている。一方、磁気記録媒体の普及に伴い、使用済記録媒体の発生量も増加の一途をたどっている。このような使用済記録媒体は、記録の秘密保持の点からは焼却処理が好ましいが、この際結合剤として塩化ビニル系樹脂を用いていると、焼却時に塩化水素ガスが発生し、排煙処理設備の付加されていない焼却炉では酸性ミストが発生するおそれがある。もちろん、石灰粉の添加焼却などの方法による対応も可能であるが、この場合、灰の発生の増加を免れない。このような焼却時の塩化水素ガスの発生をなくすには、結合剤として塩素を含まないものを使用すればよく、塩素を含まない結合剤としては、これまでニトロセルロース系樹脂、アクリレート系樹脂、スチレン系樹脂などが知られている。しかしながら、ニトロセルロース系樹脂は、本質的に脱硝や爆発の危険を有している上、磁性塗料が高粘度となり、高密度記録を目指す磁気記録媒体の結合剤としての能力が不十分である。また、アクリレート系樹脂やスチレン系樹脂にスルホン酸(塩)基やリン酸基を導入して、分散性を改善できることも提案されているが(特開昭57−138050号公報、同57−138051号公報、同57−141020号公報、特開昭58−108032号公報、特公昭62−7606号公報)、アクリル系樹脂においては、分散性を高めるためには幹ポリマーの疎水性を高めるのにアルキル基を大きくする必要があり、その結果、軟化点が低下し、磁気記録媒体の走行性や耐久性に好ましくない影響を及ぼす。一方、スチレン系樹脂では、元来塩化ビニル系樹脂に比べて分子間力が小さいため、得られる磁性層が脆くなるという欠点を有しており、そのため、スチレンモノマーと水酸基含有モノマーを共重合させたり、ポリウレタン樹脂と混合したりし、さらにこれらにポリイソシアネート化合物を加え、架橋することにより、脆さを改善することが試みられているものの、塩化ビニル系結合剤を用いたものに比べて走行性や耐久性が不十分であるという問題を有している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような従来の磁気記録媒体に用いられている結合剤が有する欠点を克服し、使用済後焼却しても塩化水素ガスが発生することがなく、かつ強磁性粉末の分散性に優れ、磁気記録媒体の高性能化が可能な結合剤を用いて成る優れた記録密度とS/N比が得られる磁気記録媒体を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の好ましい性質を有する磁気記録媒体を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、本質的に疎水性のスチレン系樹脂又はアクリル系樹脂に強親水性基を導入して強磁性粉末の分散性能を高めるとともに、エポキシ基を導入して耐久性を高めたもの、特にこれにポリウレタン樹脂及び/又はポリイソシアネート化合物を組み合わせたものを結合剤として用いた磁気記録媒体により、その目的を達成しうることを見い出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち、本発明は、非磁性支持体上に、強磁性粉末を結合剤中に分散させて成る磁性層を有する磁気記録媒体において、該結合剤として、イオウ又はリンを含む塩型強酸基及び第四級アンモニウム塩基の中から選ばれた少なくとも1種の親水性基とエポキシ基とを含有するスチレン系共重合体又はアクリル系共重合体、好ましくはこのスチレン系共重合体又はアクリル系共重合体とポリウレタン樹脂及び/又はポリイソシアネート化合物とを用いたことを特徴とする磁気記録媒体を提供するものである。
【0006】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、強磁性粉末を結合剤中に分散させて成る磁性層を有するものである。該非磁性支持体については特に制限はなく、従来磁気記録媒体に慣用されているもの、例えば厚さ5〜50μm程度のポリエステルフイルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフテートなど)、ポリプロピレンフイルム、セルローストリアセテートフイルム、セルロースジアセテートフイルム、ポリカーボネートフイルムなどの中から選ばれた任意のものを用いることができる。
【0007】本発明の磁気記録媒体においては、強磁性粉末の結合剤として、イオウ又はリンを含む塩型強酸基及び第四級アンモニウム塩基の中から選ばれた少なくとも1種の親水性基とエポキシ基とを含有するスチレン系共重合体又はアクリル系共重合体が用いられる。前記イオウ又はリンを含む塩型強酸基としては、例えば−SO3M、−SO4M、−PO42、−PO32などが挙げられ(ただし、Mはアルカリ金属又はアンモニウム基である)、また第四級アンモニウム塩基としては、例えば一般式−N+123-[式中のR1、R2及びR3はそれぞれ同一又は異なるアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアリール基などの有機残基、X-はCl-、OH-、SO34-、−SO45-又は−PO467-(R4、R5、R6及びR7は有機残基)である]
で表される基を挙げることができる。
【0008】前記塩型強酸基及びエポキシ基を含有するスチレン系共重合体又はアクリル系共重合体の製造方法としては、例えば(1)該塩型強酸基含有単量体とエポキシ基含有単量体とスチレン系単量体又はアクリル系単量体とを共重合させる方法、(2)エポキシ基含有単量体とスチレン系単量体又はアクリル系単量体とから得られたエポキシ基含有共重合体に該塩型強酸基含有化合物を付加させる方法、(3)該塩型強酸基含有ラジカル開始剤を用い、スチレン系単量体又はアクリル系単量体とエポキシ基含有単量体とを共重合させる方法などが挙げられる。
【0009】前記(1)の方法において用いられる該塩型強酸基を有する単量体としては、例えばビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などの有機スルホン酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩、(メタ)アクリル酸−2−硫酸エチル、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパン硫酸などの有機硫酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩、(メタ)アクリル酸−3−クロロ−2−リン酸プロピル、(メタ)アクリル酸−2−リン酸エチル、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンリン酸などの有機リン酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩、ビニルホスホン酸、アクリルアミドメタンホスホン酸、2−ホスホン酸エチル−(メタ)アクリレート、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンホスホン酸などの有機ホスホン酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩が挙げられる。
【0010】また、前記(1)、(2)及び(3)の方法で用いられるエポキシ基含有単量体としては、例えばアリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテルなどの不飽和アルコールのグリシジルエーテル類、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジル−p−ビニルベンゾエート、メチルグリシジルイタコネート、グリシジルエチルマレート、グリシジルビニルスルホネート、グリシジル(メタ)アリルスルホネートなどの不飽和酸のグリシジルエステル類、ブタジエンモノオキシド、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、2−メチル−5,6−エポキシヘキセンなどのエポキシドオレフィン類などが挙げられる。
【0011】一方、前記(1)、(2)及び(3)の方法で用いられるスチレン系単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどが挙げられる。また、アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチルをはじめ、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。また、前記(1)、(2)及び(3)の方法においては、必要に応じ共重合可能な他の単量体を併用することができる。この共重合可能な他の単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル、メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ブチルベンジル、マレイン酸−ジ−2−ヒドロキシエチル、イタコン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン、アリルアルコール、3−ブテン−1−オールなどの不飽和アルコール、(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、さらにはシアン化ビニリデンや水酸基含有単量体などを用いることができる。また、該水酸基含有単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルエステルなどのα、β−不飽和酸の炭素数2ないし8のアルカノールエステル類、下式で表されるポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類
【0012】
【化1】


【0013】(mは2ないし9の整数、nは2ないし4の整数、Rは水素またはメチル基)、2−ヒドロキシエチル−2'−(メタ)アクリロイルオキシフタレート、2−ヒドロキシエチル−2'−(メタ)アクリロイルオキシサクシネートなどのジカルボン酸のジヒドロキシエステルのモノ(メタ)アクリル酸エステル類、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、マレイン酸ジ−2−ヒドロキシエチルエステル、マレイン酸ジ−4−ヒドロキシプチルエステル、イタコン酸ジ−2−ヒドロキシプロピルエステルなどの不飽和ジカルボン酸のアルキレングリコールエステル類、3−ブテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オールなどのオレフィンアルコール類、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−4−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−6−ヒドロキシヘキシルエーテルなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アリルエーテル類、ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレングリコール(メタ)モノアリルエーテル類、グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリル−2−クロロ−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルエーテルなどの、(ポリ)アルキレングリコールのハロゲン及びヒドロキシ置換体のモノ(メタ)アリルエーテル、オイゲノール、イソオイゲノールなどの多価フェノールのモノ(メタ)アリルエーテル及びそのハロゲン置換体、(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルチオエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルチオエーテルなどのアルキレングリコールの(メタ)アリルチオエーテル類、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコールなどが挙げられる。
【0014】これらの共重合可能な単量体は、本発明に係わる共重合体と他の樹脂とを混合した際、両者の相溶性及び軟化点を調節して均質なブレンド物を得る目的で適宜選ばれる。これらの共重合可能な単量体の中で、アクリロニトリルは分子間力を増して磁性層の強度を高める成分として、また、通常よく併用されるポリウレタン樹脂との相溶性を高める上で有用である。
【0015】前記(1)の方法においては、前記した塩型強酸基含有単量体とエポキシ基含有単量体とスチレン系単量体又はアクリル系単量体と所望に応じて用いられる共重合可能な他の単量体とを共重合させることにより、目的の共重合体が得られるが、この重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などいずれの方法も用いることができる。該重合に用いられる重合開始剤としては、例えば過酸化ラウロイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシドなどの有機過酸化物、α,α'−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、あるいは過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどが挙げられる
【0016】また、懸濁重合において用いられる懸濁剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリルアミドなどの合成高分子物質、及びデンプン、ゼラチンなどの天然高分子物質などが挙げられる。さらに、乳化重合において用いられる乳化剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性乳化剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステルなどの非イオン性乳化剤などが挙げられる。また必要に応じてトリクロロエチレン、チオグリコール、ドデシルメルカプタンなどの分子量調整剤を用いることもできる。前記した重合開始剤、単量体、懸濁剤又は乳化剤、分子量調整剤などは重合開始時に一括して重合系に添加してもよいし、重合中に分割して添加することもできる。重合は通常35〜80℃の温度で撹拌下にて行われる。
【0017】前記(2)の方法においては、まずエポキシ基含有単量体とスチレン系単量体又はアクリル系単量体と所望に応じて用いられる共重合可能な他の単量体とを共重合させて、エポキシ基含有共重合体を形成させたのち、これに該塩型強酸基含有化合物を付加させる。この場合、重合方法としては、前記と同様に、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法のいずれも用いることができるが、後の付加反応の条件や共重合体の特性に応じて最適な製造方法を選択すればよい。例えば付加反応を水系で行う場合には、乳化重合により微細な水性分散粒子として共重合体を得るのが有利であるし、溶剤系で付加反応を行う場合には、溶液重合法又はメタノールなどの低級アルコールを重合媒体とする懸濁重合法が好ましいが、通常の懸濁重合法も用いることができる。
【0018】このようにして得られたエポキシ基含有共重合体に付加させる該塩型強酸基含有化合物としては、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アンモニウム亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素アンモニウムなどの硫酸水素塩類、リン酸水素ニカリウム、リン酸水素ニナトリウムなどのリン酸水素塩類、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素アンモニウムなどの亜リン酸水素塩類、タウリンナトリウム、スルファミン酸ナトリウム、スルファニル酸カリウムなどのアミノスルホン酸塩類、さらにはチオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0019】付加反応は、水系及び非水系のいずれにおいても可能であるが、付加反応に用いられる前記塩類は水溶性であるので、水系あるいは水を含んだ有機媒体系で行うのが有利である。反応は、通常40〜120℃程度の温度において、2〜24時間加熱することにより行われるが、反応温度が高すぎると共重合体の劣化を招く。この付加反応には、触媒を用いることができる。該触媒としては、例えばテトラブチルアンモニウムビサルフェート、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリメチルラウリルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドなどの四級アンモニウム塩、四フッ化ホウ素亜鉛などのフッ化ホウ素類などが挙げられる。また、付加反応は、エポキシ基含有共重合体を調製する際に、付加反応に必要な塩類や触媒を重合系に存在させることにより重合と同時に進行させることもできる。
【0020】前記(3)の方法においては、前記したスチレン系単量体又はアクリル系単量体とエポキシ基含有単量体と所望に応じて用いられる共重合可能な他の単量体とを、該塩型強酸基含有ラジカル開始剤を用いて共重合させることにより、目的の共重合体が得られる。この際用いられる該塩型強酸基含有ラジカル開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム、過リン酸アンモニウム、過リン酸ナトリウムなどが挙げられ、好ましくはが挙げられる。
【0021】一方、前記第四級アンモニウム塩基及びエポキシ基を含有するスチレン系共重合体又はアクリル系共重合体の製造方法としては、例えば(イ)該第四級アンモニウム塩基含有単量体とエポキシ基含有単量体とスチレン系単量体又はアクリル系単量体と所望に応じて用いられる共重合可能な他の単量体とを共重合させる方法や、(ロ)エポキシ基含有単量体とスチレン系単量体又はアクリル系単量体と所望に応じて用いられる共重合可能な他の単量体とを共重合させてエポキシ基含有スチレン系共重合体又はアクリル系共重合体を得たのち、このものと第三級アミンとを酸の存在又は不存在下で反応させる方法などを用いることができる。
【0022】前記(イ)の方法で用いられる第四級アンモニウム塩を有する単量体としては、例えばジアリルメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムステアレート、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルベンジルクロリド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0023】前記(イ)及び(ロ)の方法で用いられるエポキシ基含有単量体、スチレン系単量体又はアクリル系単量体及び所望に応じて用いられる共重合可能な他の単量体としては、前記の塩型強酸基及びエポキシ基を含有するスチレン系共重合体又はアクリル系単量体の説明において例示したものを挙げることができるし、また、重合方法については特に制限はなく、前記(1)の方法で例示した重合方法を用いることができる。
【0024】このようにして得られたスチレン系共重合体又はアクリル系共重合体中の該塩型強酸基や第四級アンモニウム塩基から成る親水性基の含有量については、該親水性基1つ当たりの共重合体の分子量が4,000〜40,000の範囲にあるような量が好ましい。該親水性基の含有量がこれより多いと記録媒体の耐湿性が低下するし、これより少ないと強磁性粉末の分散性が低下する傾向がみられ、好ましくない。
【0025】一方、エポキシ基は、該共重合体中に0.5〜10重量%の割合で含有させるのが望ましい。この量が0.5重量%未満では耐久性が不十分であるし、10重量%を超えると架橋が進みすぎ脆くなるおそれが生じる。また、該スチレン系共重合体は、数平均分子量10,000〜100,000、ガラス転移温度が60℃以上のものが好適である。数平均分子量が10,000未満では耐久性が不十分であるし、100,000を超えると磁性塗料の粘度が高くなりすぎて強磁性粉末の分散性が低下し、好ましくない。また、ガラス転移温度が60℃未満では、得られる記録媒体の高温(40〜50℃)における走行性が劣り、好ましくない。
【0026】本発明の磁気記録媒体においては、結合剤として、前記のようにして得られた親水性基とエポキシ基とを含有するスチレン系共重合体又はアクリル系共重合体と共に、ポリウレタン樹脂及び/又はポリイソシアネート化合物を用いるのが好ましい。該ポリウレタン樹脂としては、例えばポリエステルポリオール類又はポリエーテルポリオール類とポリイソシアネート化合物との反応によって得られたものなどが挙げられるが、特に水酸基を残存するもの、あるいはスルホン酸塩やリン酸塩、又はベタイン型を含む第四級アンモニウム塩などを有するものは、強磁性粉末の分散性を向上させる点から好適である。さらに、本発明の目的が損なわれない範囲で、繊維素系樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、アクリル系樹脂及びアクリロニトリル−ブタジエンゴムなどを併用してもよい。
【0027】一方、ポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロロ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネート−ジフェニルエーテル、メシチレンジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、ジュリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4'−ジイソシアネートジベンジル、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートやこれらとポリオールとのアダクト・二量体・三量体などのほか、さらにはこれらのジイソシアネートとポリオールとの反応により生成するウレタン結合を有する樹脂であって、1分子内に平均2.3個以上のイソシアネート基をもち、数平均分子量が2,000以上で10,000以下であり、かつ分子量1,000以下の成分が20重量%未満であるポリウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中で、特に1分子内に平均2.3個以上のイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂は、得られる記録媒体の耐久性をさらに向上させる点から好適である。
【0028】本発明の磁気記録媒体において用いられる強磁性粉末としては、例えば鉄やコバルトなどの金属磁性粉末や、鉄、コバルトを主体とするニッケルなどとの合金鉄磁性粉末、γ−Fe23、Fe34、γ−FeOx(1.33<x≦1.5)及びこれらにコバルトを含浸させたり、被着させたりした酸化鉄磁性粉末、バリウムフェライト、Fe52などの炭化鉄磁性粉末、窒素鉄磁性粉末、酸化クロム磁性粉末などが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の組合わせのとき磁性層を2層として第一層、第二層の磁性粉末を異なるものとすることも可能である。
【0029】本発明において、非磁性支持体上に磁性層を設けるには、まず、適当な有機溶剤中に、結合剤として、前記スチレン系共重合体又はアクリル系共重合体及び所望に応じて用いられるポリウレタン樹脂やポリイソシアネート化合物、さらには他の樹脂を溶解させたのち、これに前記強磁性粉末を分散させて磁性塗料を調製する。該有機溶剤の好ましいものとしては、例えばメチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ミネラルスピリット、石油エーテル、ガソリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、パークロロエチレン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】この磁性塗料は、その全重量に基づき、通常有機溶剤が50〜90重量%、結合剤が5〜20重量%及び強磁性粉末が10〜50重量%の割合になるように調製される。結合剤は、強磁性粉末100重量部当たり、通常5〜25重量部、好ましくは7〜20重量部の割合で用いられる。また、この磁性塗料は、所望に応じ本発明の目的を損なわない範囲で、公知の添加成分、例えば潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤、架橋調節剤、分散剤、顔料、体質顔料、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、安定剤、消泡剤などを添加することができる。
【0031】該潤滑剤としては、炭素数8〜18の高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルなど、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ステアロール酸、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ラウリルアミド、ジメチルステアリルアミド、ブチルラウリルアミド、ブチルステアレート、オクチルステアレートなどが挙げられる。また、シリコーンオイルやポリパーフルオロアルキレンオキシド、パーフルオロアルカンなどのフッ素系油、パラフィンワックス、酸化ポリエチレンなども使用可能である。さらにカーボンブラック、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステンなどの固体の潤滑剤も使用できる。これらの潤滑剤は、通常、強磁性粉末100重量部に対し、1〜6重量部の割合で用いられる。
【0032】また、研磨剤としては、例えばアルミナ、炭化ケイ素、酸化クロムコランダムなどが一般的に用いられる。さらに帯電防止剤としては、例えばグラファイト、カーボンブラックなどの導電性粉末の他、ポリアルキレンオキシド系を中心とするノニオン性界面活性剤、四級アンモニウム塩系を中心とするカチオン性界面活性剤などの界面活性剤系帯電防止剤が用いられる。ところで、本発明の記録媒体が優れた耐久性を有する理由については必ずしも明確ではないが、おそらく、強磁性粉末などの表面結合水分や製造工程中の雰囲気水分により、結合剤中の強親水性基の部分解離が生じ、分子中のエポキシ基と架橋反応をするためと思われる。
【0033】前記架橋調節剤は、このような架橋反応を促進するためのものであって、該架橋調節剤としては、例えば(1)酸性リン酸エステル、(2)酸性硫酸エステル、(3)カルボン酸、(4)ポリチオール化合物、(5)アミノシラン化合物などが用いられる。前記(1)酸性リン酸エステルとしては、一般式(R8O)mPO(OH)3-m …[1]
[R8O(A1O)n]mPO(OH)3-m …[2]
及び[R8COO(A1O)n]mPO(OH)3-m …[3]
(式中のR8は炭素数1〜22のアルキル基若しくはアルケニル基、フェニル基、アルキルフェニル基又はアルケニルフェニル基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、mは1〜3の整数、nは1〜30の整数である)
で表される化合物が挙げられる。
【0034】前記一般式[1]で表される化合物はリン酸と炭素数1〜22のアルカノール若しくはアルケノール、フェノール、アルキルフェノール又はアルケニルフェノールとから誘導されるリン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸セスキエステル又はリン酸トリエステルであって、このようなものの代表例としては、モノドデシルホスフェート、セスキドデシルホスフェート、ジノニルフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0035】前記一般式[2]で表される化合物は、リン酸と炭素数1〜22のアルカノール若しくはアルケノール、フェノール、アルキルフェノール又はアルケニルフェノールの低級アルキレンオキシド付加物とから誘導されるリン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸セスキエステル又はリン酸トリエステルであって、このようなものの代表例としてはセスキドデシルポリオキシエチレン(n=3)ホスフェート、ジノニルフェニルポリオキシエチレン(n=4)ホスフェート、トリオレイルポリオキシエチレン(n=4)ホスフェートなどが挙げられる。
【0036】前記一般式[3]で表される化合物は、リン酸と炭素数2〜23の脂肪酸の低級アルキレンオキシドとから誘導されるリン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸セスキエステル又はリン酸トリエステルであって、その具体例としては、[C1735COO(CH2CH2O)15PO(OH)2]、[CH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)]1.5PO(OH)1.5などが挙げられる。
【0037】前記(2)酸性硫酸モノエステルとしては、例えば、一般式R9OSO2OH …[4]
9O(A2O)kSO2OH …[5]
及びR9COO(A2O)kSO2OH …[6]
(式中のR9は炭素数1〜22のアルキル基若しくはアルケニル基、フェニル基、アルキルフェニル基又はアルケニルフェニル基、A2は炭素数2〜4のアルキレン基、kは1〜30の整数である)
で表される化合物が挙げられる。
【0038】前記一般式[4]で表される化合物は、硫酸と炭素数1〜22のアルカノール若しくはアルケノール、フェノール、アルキルフェノール又はアルケニルフェノールとから誘導された硫酸モノエステルであって、このようなものの具体例としては、ブチル硫酸モノエステル、オレイル硫酸モノエステルなどが挙げられる前記一般式[5]で表される化合物は、硫酸と炭素数1〜22のアルカノール若しくはアルケノール、フェノール、アルキルフェノール又はアルケニルフェノールの低級アルキレンオキシド付加物とから誘導された硫酸モノエステルであって、このようなものの具体例としては、ポリオキシエチレン(k=4)ドデシルエーテル硫酸モノエステル、ポリオキシプロピレン(k=6)ノニルフェニルエーテル硫酸モノエステルなどが挙げられる。
【0039】前記一般式[6]で表される化合物は、硫酸と炭酸数2〜23の脂肪酸の低級アルキレンオキシドエステルとから誘導された硫酸モノエステルであって、このようなものの具体例としては、C511COO(CH2CH2O)2SO2OHCH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)SO2OHなどが挙げられる。
【0040】前記(3)カルボン酸は、飽和又は不飽和の脂肪族一価及び多価のカルボン酸、芳香族の一価及び多価のカルボン酸であり、その具体例としては、ギ酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、α−クロロ酪酸、モノフルオロ酢酸、モノブロモ酢酸、モノヨード酢酸、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、o−クロロ安息香酸、o−トルイル酸、3,5−ジニトロ安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、プレニト酸、メロフアン酸、ピロメリト酸、ベンゼンペンタカルボン酸、メリト酸、フェニルプロピオン酸、o−フェニレン二酢酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、アセト酢酸、グリコール酸、(±)−乳酸、(±)−マンデル酸、(−)−リンゴ酸、(±)−リンゴ酸、(+)−酒石酸、(−)−酒石酸、(±)−酒石酸、メソ酒石酸、クエン酸などが挙げられる。前記(4)ポリチオール化合物としては、一般式
【0041】
【化2】


【0042】(式中のR10は置換基、M1は水素原子又はアルカリ金属である)
で表されるトリアジンチオール又はそのモノアルカリ金属塩が好ましく挙げられる。前記一般式[7]における置換基R10としては、例えば−SH、−N(CH3)2、−NHC65、−N(C49)2、−N(C817)2、−N(C1225)2、−N(CH2CH=CH2)2、−NHC816CH=CHC817などがある。
【0043】前記(5)アミノシラン化合物としては、例えばN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメトキシシラン、p−[N−(2−アミノエチル)]アミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、1−(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−[N−アリル−N−(2−アミノエチル)]アミノプロピルトリメトキシシラン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ジエチレントリアミン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]トリエチレンテトラミン、3−トリメトキシシリルプロピル−m−フェニレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、N,N−ビス[(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。これらの架橋調節剤の中で、ポリオキシエチレンアルキルエーテルアシッドホスフェートやアミノシラン化合物は、磁性塗料の粘度調節剤としても有効である。
【0044】本発明において、該磁性塗料の調製方法については特に制限はなく、従来磁性塗料の製造において慣用されている方法、例えば使用する各成分を同時に又は順次加えながら、ボールミル、ミキサー、ロールミル、ビーズミル、グラベルミル、サンドミル、高速インペラーなどを用いて、均質に混合分散処理する方法などを用いることができる。また、分散条件については、使用する強磁性粉末の種類やサイズ、あるいは用途によって異なるが、一般的には常温ないし100℃の範囲の温度において、5分ないし20時間程度処理すればよい。
【0045】本発明の磁気記録媒体における磁性層は、例えば前記のようにして調製された磁性塗料を非磁性支持体上の少なくとも一方の面に、その乾燥時の厚さが通常0.5〜20μmの範囲になるように任意の方法によって塗布し、次いで乾燥させることによって形成することができるし、また、該磁性塗料を離型紙などの基体シート上に塗布及び乾燥させて磁性層を形成し、次いで支持体上に転写させる方法によって形成することもできる。この際の塗布方法、乾燥方法、転写方法などは、いずれも公知の中から任意の方法を選択して用いればよい。
【0046】
【実施例】次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、磁性塗料の評価は次のようにして行った。
(1)光沢度磁性塗料をポリエステルフイルム上に塗膜厚さ4μmとなるように塗布し、磁場配向処理したのち、乾燥し、その塗膜の表面光沢を光沢度計を用い、60°入射、60°反射角で反射率を測定した。
(2)分散安定性光沢度の評価に使用した塗料を6時間静置したのち、ポリエステルフイルム上に塗膜厚4μmとなるように塗布し、磁場配向処理したのち乾燥し、その磁性塗膜を光沢度計を用いて60°反射角の反射率を測定し、(1)の光沢度からその保持率を算定した。
【0047】(3)角型比(Br/Bm)
光沢度の評価に使用した磁性塗膜を12.5mm×50mmに切出して、磁気特性測定機により測定した。
(4)耐久性光沢度評価に用いた磁性塗膜をカレンダーロールで平滑化処理してから65℃で65時間加熱処理したのち、12.5mm巾に裁断し、荷重100gをかけ、研磨紙を張付けた回転ドラムに接触させて、150rpmで30分間回転させ、磁性塗料が研磨紙に付着した程度を目視して、A、B、Cの3段階で評価した。
A:汚れなしB:汚れ少しありC:汚れが多い
【0048】(5)耐溶剤性光沢度評価に用いた同じ塗膜を、巾12.5mm、長さ50mmに細断し、これを20枚、テトラヒドロフラン100mlとともに150mlフタ付ガラスびんに入れて、50℃で1時間超音波処理をした後の状態とテトラヒドロフランの汚れ具合とで、耐溶剤性を、次の判定基準に従って評価した。
A:塗膜変形及び汚れなしB:塗膜形状を保持するが、汚れありC:塗膜が消失し、かつ汚れがひどい(6)燃焼時の発生塩化水素量光沢度評価に用いたのと同じ塗膜を、3mm×3mmに裁断し、JIS K-7217に従って、空気中での燃焼ガス中の塩化水素を水酸化ナトリウム水溶液で吸収し、吸収液中の塩素イオンを硝酸銀/硫酸第二鉄アンモニウム/チオシアン酸アンモニウム法で定量した。ブランクには磁性塗膜の塗布していないポリエステルフイルムを用いた。
【0049】製造例1スチレン20重量部、アクリロニトリル10重量部、アリルグリシジルエーテル15重量部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート1重量部、ラウリル硫酸ナトリウム2重量部、炭酸水素ナトリウム1重量部、過硫酸カリウム4重量部及び脱イオン水200重量部を、撹拌機付重合器に仕込み、減圧脱気後、80℃に昇温して重合を開始した。重合開始直後から、スチレン36重量部、アクリロニトリル15重量部及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレート4重量部の混合液を連続して8時間を要して重合器に注入した。10時間後、重合の転化率が96%になったので冷却して、水性分散液を得た。この水性分散液にメチルエチルケトン10重量部を加え、−30℃で凍結、解凍して樹脂分を回収したのち、水で洗浄、乾燥して樹脂Aを得た。樹脂A中のエポキシ基含有量は3.2wt%、水酸基含有量は0.4wt%、スチレン単位含有量は58wt%、結合酸量はSO4として0.8wt%であり、その重量平均分子量は30,100、結合酸1つ当たりの分子量は12,000、ガラス転移温度は76℃であった。
【0050】製造例2スチレン30重量部、アクリロニトリル20重量部、スチレンスルホン酸ナトリウム5重量部、メチルメタクリレート30重量部、グリシジルメタクリレート15重量部、炭酸水素ナトリウム0.5重量部、亜硫酸ナトリウム1重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.1重量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.5重量部、アゾビスイソブチロニトリル2重量部、メタノール200重量部及び水20重量部を重合器に仕込み、減圧脱気後、60℃で重合を開始し、5時間後に冷却したのち、内容物を10倍量の水に投入し、ろ過、洗浄、乾燥して樹脂Bを得た。樹脂B中のエポキシ基含有量は2.8wt%、スチレン及びメチルメタクリレート単位の合計含有量は62wt%、結合酸量はSO4として1.0wt%であり、その重量平均分子量は19,000、結合酸1つ当たりの分子量は9600、ガラス転移温度は79℃であった。
【0051】製造例3スチレン20重量部、アクリロニトリル10重量部、アリルグリシジルエーテル12重量部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート1重量部、メチルセルロース0.1重量部、アゾイソブチロニトリル3重量部及び脱イオン水200重量部を重合器に仕込み、撹拌しながら減圧脱気したのち、80℃に昇温して重合を開始した。重合開始直後から、4時間を要してスチレン36重量部、アクリロニトリル18重量部及び2−ヒドロキシプロピルメタクリレート4重量部の混合物を連続的に重合器内に注入し、4.5時間目にさらにN,N−ジメチルステアリルアミン4重量部と乳酸2重量部を注入して90℃で1時間撹拌した。冷却後、脱水洗浄し、乾燥して樹脂Cを得た。樹脂C中のエポキシ基含有量は1.5wt%、水酸基含有量は0.6wt%、スチレン単位含有量は56wt%、結合四級アンモニウム塩含有量はジメチルステアリルアミノ基として2.8wt%であり、その重量平均分子量は42,000、結合四級アンモニウム塩1つ当たりの分子量は10,400、ガラス転移温度は76℃であった。
【0052】製造例4製造例2において、スチレンスルホン酸ナトリウムの代わりに2−アシッドホスホキシエチルメタクリレートの二ナトリウム塩を用いた以外は、製造例2と同様な操作を行い、樹脂Dを得た。この樹脂D中のエポキシ基含有量は2.7wt%、スチレン及びメチルメタクリレート単位の合計含有量は63wt%、結合酸量はPO4として1.4wt%であり、その重量平均分子量は21,000、結合酸1つ当たりの分子量は6,800、ガラス転移温度は77℃であった。
【0053】製造例5製造例2において、スチレンの代わりにシクロヘキシルメタクリレートを用いた以外は、製造例2と同様に操作して樹脂B’を得た。樹脂B’は、エポキシ基含有量2.9wt%、シクロヘキシルメタクリレート及びメチルメタクリレートの合計量は61wt%、結合酸量はSO4として1.0wt%であり、その平均分子量は21,000、結合酸1つ当たり分子量は9,600、ガラス転移温度は67℃であった。
【0054】製造例6製造例2において、スチレンスルホン酸ナトリウムの代わりにスチレンを用いた以外は、製造例2と同様に操作して樹脂Eを得た。樹脂Eは結合酸がなく、スチレン及びメチルメタクリレート単位の合計含有量66wt%、エポキシ基含有量3.0wt%、重量平均分子量29,000、ガラス転移温度80℃であった。
【0055】製造例7製造例2においてグリシジルメタクリレートの代わりにメチルメタクリレートを用いた以外は、製造例2と同様に操作して樹脂Fを得た。樹脂F中のスチレン含有量は31wt%、結合酸量はSO4として1.0wt%であり、その重量平均分子量は17,000、結合酸1つ当たりの分子量は9,600、ガラス転移温度は81℃であった。
【0056】製造例8メチルメタクリレート75重量部、ブチルアクリレート20重量部、2−アシッドホスホキシエチルメタクリレート5重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.6重量部、トルエン75重量部、メチルイソブチルケトン75重量部を重合器に入れ、窒素置換したのち、80℃で8時間反応して共重合体溶液を得、これを乾燥して樹脂Gを得た。この樹脂Gを再沈殿精製したのち、分析したところ、結合酸量はPO4として1.8wt%、重量平均分子量は19,000、結合酸1つ当たりの分子量は5,300、ガラス転移温度は70℃であった。
【0057】実施例1〜7、比較例1〜4コバルト被着磁性酸化鉄粉末(比表面積42m2/g)100重量部、第1表に示す種類の硬い結合剤10重量部、第1表に示す種類のポリウレタン樹脂10重量部、メチルエチルケトン/シクロヘキサノン/トルエン混合溶剤(重量比1/1/1)150重量部、カーボンブラック2重量部、アルミナ4重量部、ミリスチン酸2重量部、ブチルステアレート1重量部から成る混合物を、サンドミルにて90分間高速分散したのち、これに混合溶剤60重量部及び第1表に示す種類のポリイソシアネート13重量部を加え、さらに15分間分散後、第1表に示す種類の架橋調節剤7重量部を加えて5分間混合して磁性塗料を調製し、評価した。その結果を第1表に示す。
【0058】なお、表中の各成分の記号又は商品名は次を意味する。
MR−110:日本ゼオン(株)製、商品名、塩化ビニル系結合剤H:1,4−ブタンジオールアジペート−MDI系ポリウレタン樹脂、分子量70,000、水酸基含有量0.3wt%M:末端イソシアネート型ポリウレタン、数平均分子量4,000、1分子当たりNCO量2.8個L:日本ポリウレタン(株)製、トリメチロールプロパン−TDIアダクトa:東邦化学(株)製、ポリオキシエチレンノニルフェニルアシッドホスフェートb:N,N−ジブチルアミノチオール−S−トリアジンc:γ−アミノプロピルトリエトキシシランA〜G:それぞれ製造例1〜7で得た樹脂
【0059】
【表1】


【0060】(注)ND:0.010mg/g以下
【0061】
【発明の効果】本発明によると、従来の塩化ビニル系結合剤を用いた場合に匹敵する高密度に強磁性粉末が配向、充填された磁性層を形成することができ、優れたS/N比、耐久性及び走行性を有する磁気記録媒体が得られ、しかもこの磁気記録媒体を焼却処理しても塩化水素が発生することがなく、環境汚染をもたらすことがない

【特許請求の範囲】
【請求項1】非磁性支持体上に、強磁性粉末を結合剤中に分散させて成る磁性層を有する磁気記録媒体において、該結合剤として、イオウ又はリンを含む塩型強酸基及び第四級アンモニウム塩基の中から選ばれた少なくとも1種の親水性基とエポキシ基とを含有するスチレン系共重合体又はアクリル系共重合体を用いたことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】結合剤がスチレン系共重合体又はアクリル系共重合体とともに、ポリウレタン樹脂及び/又はポリイソシアネート化合物を含有するものである請求項1記載の磁気記録媒体。