説明

磁気読み取り装置、磁気読み取り方法およびプログラム

【課題】周波数変調方式で記録された磁気媒体から磁気データを読み取る磁気読み取り装置が、ピークリードを行った際の読み取り誤りを減少させ、かつ、読み取り率向上させる。
【解決手段】磁気読み取り装置が、順方向の読み取りと逆方向の読み取りを行い、これらの読み取り結果に対して、ピーク間隔と論理インターバル値の比較により読み取りエラーの有無を判定するピーク間隔検査部115と、奇偶検査を行う奇偶検査部116と、読み取り結果から生成されるキャラクタに基づいて読み取りエラーの有無を判定するキャラク検査部117と、これらの判定結果に基づいてキャラクタまたはエラーを出力する結果出力部118とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気読み取り装置、磁気読み取り方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
F2F(Two-Frequency-Coherent-Phase)などのFM(Frequency Modulation;周波数変調)方式で磁気媒体に記憶されたデータを磁気ヘッドが読み取って得られる電気信号から元のデータを復元する方法の1つにピークリード(Peak Read)がある。ピークリードは、読み取った電気信号のピーク間隔を検出し、検出したピーク間隔から元の信号を復元する方法で、磁気媒体の磁気が弱い場合にも有効な方法である。
しかし、一般に、磁気媒体から読み取る電気信号には、磁気ヘッド取り付け部分のメカ機構の遊び等によるピーク間隔のずれがある。このピーク間隔のずれによって、ピークリードを行う際に1ビット単位のビットずれが発生しやすい。
【0003】
図9は、一般的な磁気カード読み取り装置の磁気ヘッド駆動部の概略構成を示す構成図である。同図の、歯付きプーリ1002と歯付きベルト1003との遊びや、歯付きベルト1003と磁気ヘッド台座1005との遊びにより、ピーク間隔にずれが生じる。
ピークリードを行った際のビットずれに対して誤りを検出する方法として、実測されたピーク間隔と、規格から算出される論理インターバル時間との比較により読み取り結果の良否を判定する方法や、JIS2規格で規定される水平方向奇偶検査を用いて読み取り結果の良否を判定する方法が考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実測されたピーク間隔と、規格から算出される論理インターバル時間との比較により読み取り結果の良否を判定する方法では、読み取りエラーを検出できるものの、誤りを訂正することが出来ず、読み取り率を向上させることは出来ない。
また、水平方向奇偶検査でも、ピーク間隔に基づいて検出した読み取りエラーを修正することはできず、この読み取りエラーに対して読み取り率を向上させることができない。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、ピークリードを行った際の読み取り誤りを減少させ、読み取り率を向上させることができる磁気読み取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様による磁気読み取り装置は、周波数変調方式でデータが記録された磁気記録媒体からデータを読み取る磁気読み取り装置であって、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して順方向および逆方向に相対移動させ、前記順方向および逆方向それぞれに磁気データを読み取って電気信号を出力する磁気ヘッド部と、前記電気信号の各々についてキャラクタを生成するキャラクタデータ生成部と、前記電気信号の各々について読み取りエラーの有無を判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記順方向のデータ読み取りで出力された電気信号から生成されたキャラクタ、または、前記逆方向のデータ読み取りで出力された電気信号から生成されたキャラクタ、または、エラーのいずれかを出力する結果出力部と、を具備することを特徴とする。
【0007】
[2]また、本発明の一態様による磁気読み取り装置は上述の磁気読み取り装置であって、前記磁気ヘッド部から出力される電気信号のピーク間隔を検出するピーク間隔検出部と、前記ピーク間隔と磁気データの規格から定まる論理インターバル時間との比較により異常の有無を判定するピーク間隔検査部と、前記ピーク間隔からビット列のディジタルデータを生成するディジタルデータ生成部と、をさらに具備し、前記キャラクタデータ生成部は、前記ディジタルデータからキャラクタを生成し、前記判定部は、前記ディジタルデータに対して奇偶検査を行って、前記順方向の読み取りと前記逆方向の読み取りとの各々について異常の有無を判定する奇偶検査部と、前記ディジタルデータから前記キャラクタへの変換可否に基づいて、前記順方向の読み取りと前記逆方向の読み取りとの各々について異常の有無を判定するキャラクタ検査部と、を具備し、前記結果出力部は、前記ピーク間隔検査部の判定結果と、前記奇偶検査部の判定結果と、前記キャラクタ検査部との判定結果とに基づいて、前記順方向の読み取り結果から前記キャラクタデータ生成部が生成したキャラクタ、または、前記逆方向の読み取り結果から前記キャラクタデータ生成部が生成したキャラクタ、または、エラーのいずれかを出力する、ことを特徴とする
【0008】
[3]また、本発明の一態様による磁気読み取り方法は、周波数変調方式でデータが記録された磁気記録媒体からデータを読み取る磁気読み取り装置の磁気読み取り方法であって、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して順方向および逆方向に相対移動させ、前記順方向および逆方向それぞれに磁気データを読み取って電気信号を出力する読み取りステップと、前記電気信号の各々についてキャラクタを生成するキャラクタデータ生成ステップと、前記電気信号の各々について読み取りエラーの有無を判定する判定ステップと、前記判定部の判定結果に基づいて、前記順方向のデータ読み取りで出力された電気信号から生成されたキャラクタ、または、前記逆方向のデータ読み取りで出力された電気信号から生成されたキャラクタ、または、エラーのいずれかを出力する結果出力ステップと、を具備することを特徴とする。
【0009】
[4]また、本発明の一態様によるプログラムは、周波数変調方式でデータが記録された磁気記録媒体に対して磁気ヘッドを順方向および逆方向に相対移動させ、前記順方向および逆方向それぞれに磁気データを読み出して生成された電気信号から、コンピュータにキャラクタを生成させるプログラムであって、前記コンピュータが、前記電気信号の各々についてキャラクタを生成するキャラクタデータ生成ステップと、前記コンピュータが、前記電気信号の各々について読み取りエラーの有無を判定する判定ステップと、前記コンピュータが、前記判定部の判定結果に基づいて、前記順方向のデータ読み取りで出力された電気信号から生成されたキャラクタ、または、前記逆方向のデータ読み取りで出力された電気信号から生成されたキャラクタ、または、エラーのいずれかを出力する結果出力ステップと、を前記コンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ピークリードを行った際の読み取り誤りを減少させ、読み取り率向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態における磁気読み取り装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施形態における中央演算部11の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】同実施形態においてピーク間隔検出部が検出するピーク間隔がずれる例を示す図である。
【図4】同実施形態においてピーク間隔検査部115が行うピーク間隔の判定基準を示す図である。
【図5】同実施形態においてディジタルデータ生成部113が生成するディジタルデータの例を示す図である。
【図6】同実施形態において奇偶検査部116が行う水平方向奇偶検査の例を示す図である。
【図7】同実施形態においてキャラクタ検査部117が行うキャラクタ検査の例を示す図である。
【図8】同実施形態において磁気読み取り装置1が磁気データを読み取って、読み取り結果のキャラクタまたはエラーを出力する処理手順を示すフローチャートである。
【図9】一般的な磁気カード読み取り装置の磁気ヘッド駆動部の概略構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態では、磁気カードの読み取り装置に本発明を適用した場合について説明するが、本発明は磁気カードに限らず、FM方式で記録され、双方向に読み取り可能な様々な磁気記憶媒体に適用できる。
図1は、本発明の一実施形態における磁気読み取り装置の構成を示す概略ブロック図である。
同図において、磁気読み取り装置1は、中央演算部11とJIS2(「JIS2」の「2」はローマ数字大文字。以下同様。)磁気ヘッド部21とISO磁気ヘッド部31とメモリ部41とを具備する。
【0013】
JIS2磁気ヘッド部21は、磁気データを読み取って電気信号を出力する磁気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気カードに対して順逆双方向に相対移動させる駆動機構とを具備する。JIS2磁気ヘッド部21は、JIS2規格に従って記録された磁気データを電気信号にて読み取る。
ISO磁気ヘッド部31は、JIS2磁気ヘッド部21と同様、磁気データを読み取って電気信号を出力する磁気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気カードに対して順逆双方向に相対移動させる駆動機構とを具備する。ISO磁気ヘッド部31は、JIS1(「JIS1」の「1」はローマ数字大文字。以下同様。)規格に従って記録された磁気データを電気信号にて読み取る。なお、以下ではJIS2磁気ヘッド部21が読み取った電気信号からデータを復元する場合について説明し、ISO磁気ヘッド部31の説明は省略する。
中央演算部11は、JIS2磁気ヘッド部21やISO磁気ヘッド部31が磁気媒体から読み取った電気信号の誤り検出およびデータ復元を行う。また、中央演算部11は、JIS2磁気ヘッド部21やISO磁気ヘッド部31を制御する。中央演算部11は、磁気読み取り装置1が具備する中央演算装置(Central Processing Unit;CPU)がプログラムを実行することにより実現される。
メモリ部41は、中央演算部11が実行するプログラムを記憶する。また、中央演算部11がデータを一時保存するワーキングメモリとして機能する。メモリ部41は、磁気読み取り装置1が具備する記憶媒体上に実現される。
【0014】
図2は、中央演算部11の構成を示す概略ブロック図である。
同図において、中央演算部11は、読み取り結果入力部111とピーク間隔検出部112とディジタルデータ生成部113とキャラクタデータ生成部114とピーク間隔検査部115と奇偶検査部116とキャラクタ検査部117と結果出力部118とを具備する。
読み取り結果入力部111は、JIS2磁気ヘッド部21(図1)が読み取った電気信号を受け付け、ピーク間隔検出部112に出力する。
ピーク間隔検出部112は、読み取り結果入力部111から出力される、順方向の読み取り結果の電気信号と逆方向の読み取り結果の電気信号との各々からピーク位置を検出し、検出したピーク位置からピーク間隔を検出する。ピーク間隔検出部は、検出したピーク間隔をディジタルデータ生成部113とピーク間隔検査部115に出力する。
【0015】
ディジタルデータ生成部113は、ピーク間隔検出部112から出力される順方向のピーク間隔と逆方向のピーク間隔との各々からディジタルデータを生成する。ディジタルデータ生成部113は、生成したディジタルデータをキャラクタデータ生成部114と奇偶検査部116とに出力する。
キャラクタデータ生成部114は、ディジタルデータ生成部113から出力される順方向のディジタルデータと逆方向のディジタルデータの各々からキャラクタを生成する。キャラクタデータ生成部114は、生成したキャラクタをキャラクタ検査部117と結果出力部118とに出力する。
ピーク間隔検査部115は、ピーク間隔検出部112から出力される順方向のピーク間隔と逆方向のピーク間隔との各々を論理インターバル時間と比較して、読み取りエラーの有無を判定する。ピーク間隔検査部115は、判定結果を結果出力部118に出力する。
【0016】
奇偶検査部116は、ディジタルデータ生成部113から出力される順方向のディジタルデータと逆方向のディジタルデータとの各々に対して水平方向奇偶検査を行い、読み取りエラーの有無を判定する。奇偶検査部116は、判定結果を結果出力部118に出力する。
キャラクタ検査部117は、キャラクタデータ生成部114から出力される順方向のキャラクタと逆方向のキャラクタとの各々に対してキャラクタ検査を行い、読み取りエラーの有無を判定する。キャラクタ検査部117は、判定結果を結果出力部118に出力する。
奇偶検査部116とキャラクタ検査部117とがそれぞれ検査部に相当し、後述するように、奇偶検査部116とキャラクタ検査部117とは、順方向の読み取り結果と逆方向の読み取り結果の各々について読み取りエラーの有無の判定結果を結果出力部118に出力し、結果出力部118は、これらの判定結果に基づいて、順方向の読み取り結果から得られるキャラクタまたは逆方向の読み取り結果から得られる読み取りデータ、あるいは、エラーを磁気読み取り装置1の外部に出力する。
なお、中央演算部11は、JIS2磁気ヘッド部21の動作やISO磁気ヘッド部31の動作を制御する磁気ヘッド部制御部など、他の機能部も含むが、図示および説明を省略する。
【0017】
次に、磁気読み取り装置1が行うエラー検出について説明する。磁気読み取り装置1は、ピーク間隔検査と水平方向奇偶検査とキャラクタ検査とを行う。
まず、ピーク間隔検査について説明する。
図3は、ピーク間隔検出部112が検出するピーク間隔がずれる例を示す図である。
同図において、実線L3は、磁気データを読み取って得られる電気信号の理想値を示す。また、点P31〜P37は、実線L3のピーク点を示す。例えば、点P32と点P33との間のピーク間隔の理想値(論理インターバル時間)は時間t3で示される。これに対して、一般に、磁気読み取り装置は磁気ヘッド取り付け部分のメカ機構に遊があり、この遊び等により、読み取る電気信号のピーク間隔に理想値とのずれが生じる。このピーク間隔のずれは、順方向の読み取りと逆方向の読み取りとで異なることが多い。図3の例では、JIS2磁気ヘッド部21が出力する電気信号のピーク間隔は、順方向のピーク間隔が時間t1となり、理想値t3とずれている。また、逆方向のピーク間隔は時間t2となり、論理値t3とずれている。
【0018】
図4は、ピーク間隔検査部115が行うピーク間隔の判定基準を示す図である。
ピーク間隔検査部115は、JIS2規格によって規定される、論理インターバル時間と規格範囲(読みとったピーク間隔と論理インターバル時間とのずれの閾値)とを、予め記憶しておく。
ピーク間隔検出部112から順方向のピーク間隔と逆方向のピーク間隔とが入力されると、ピーク間隔検査部115は、まず、順方向と逆方向との各々について、各ピーク間隔と論理インターバル時間とのずれを算出する。次に、ピーク間隔検査部115は、図4が示す基準に従って、ピーク間隔毎に読み取りエラーの有無を判定する。
【0019】
順方向のずれと逆方向のずれとの両方またはいずれか一方が規格範囲内にある場合、規格範囲内にあるピーク間隔は正しく検出されていると期待でき、このピーク間隔を用いて正しくデータが復元されることが期待できる。そこで、この場合、ピーク間隔検査部115は、ピーク間隔の測定結果を正常と判定する。
一方、順方向のずれと逆方向のずれとの両方が規格範囲外である場合、順方向と逆方向とのいずれの読み取りでもピーク間隔の検出に失敗しており、このピーク間隔を用いて復元されるデータは誤りを含む可能性が高い。そこで、ピーク間隔検査部115は、ピーク間隔の測定結果を異常と判定する。
ピーク間隔検査部115は、全てのピーク間隔で測定結果を正常と判定した場合は、ピーク間隔検査結果を正常と判定する。一方、いずれかのピーク間隔で測定結果を異常と判定した場合は、ピーク間隔検査部115は、ピーク間隔検査結果を異常と判定する。ピーク間隔検査部115は、ピーク間隔検査結果を結果出力部118に出力する。
このように、ピーク間隔検査部115が読み取りエラーの有無を判定することにより、読み取り誤りを減少させることができる。
【0020】
なお、ピーク間隔検査部115が行うピーク間隔の判定基準は、図4が示すものに限らない。例えば、順方向の全てのピーク間隔で測定結果を正常と判定した場合、または、逆方向の全てのピーク間隔で測定結果を正常と判定した場合に、ピーク間隔検査結果を正常と判定し、全てのピーク間隔が正常と判断した方向を示す情報を、結果出力部118に出力するようにしてもよい。この場合、結果出力部118は、順方向と逆方向とで生成されるキャラクタが異なる場合に、ピーク間隔検査部115から出力される方向のキャラクタを正しい読み取り結果として出力することができ、読み取り率の向上が図れる。
【0021】
次に、水平方向奇偶検査について説明する。
図5は、ディジタルデータ生成部113が生成するディジタルデータの例を示す図である。
同図の実線L51は、JIS2磁気ヘッド部21が正常に読み取りを行って出力する電気信号の例を示す。また、点P511〜P517は、ピーク間隔検出部112が実線L51の電気信号から検出するピーク点を示す。ピーク間隔検出部112は、ピーク点の時間間隔を出力する。
ディジタルデータ生成部113は、ピーク間隔検出部112から出力されるピーク間隔をデータ順に処理する。ここでいう「データ順」とは、順方向では磁気記憶媒体からデータを読み取った時間順であり、逆方向では磁気記憶媒体からデータを読み取った時間順と逆順である。ディジタルデータ生成部113は、各ピーク間隔について、1つのピーク間隔で1ビット分の時間を占める場合は「0」と判定し、2つのピーク間隔で1ビット分の時間を占める場合は「1」と判定する。
図5の実線L51の例では、ディジタルデータ生成部113は、点P511とP512とのピーク間隔と点P512とP513とのピーク間隔とを、それぞれに「0」と判定し、点P513〜P515のピーク間隔2つ分と点P515〜P517のピーク間隔2つ分とを、それぞれ「1」と判定する。その結果、ディジタルデータ生成部113は、ビット列「0011」を出力する。
【0022】
一方、図5の破線L52は、JIS2磁気ヘッド部21が出力する電気信号に、ヘッド取り付け部分のメカ機構の遊び等によるずれが生じた例を示す。また、点P521〜P527は、ピーク間隔検出部112が破線L52の電気信号から検出するピーク点を示す。
この場合、ディジタルデータ生成部113は、点P521とP522とのピーク間隔を「0」と判定するが、点P522〜P524のピーク間隔2つ分を「1」と誤判定する。続いて、点P524〜P526のピーク間隔を「1」と判定し、点P526とP527とのピーク間隔を「0」と誤判定する。その結果、ディジタルデータ生成部113はビット列「0110」を出力する。
【0023】
図6は、奇偶検査部116が行う水平方向奇偶検査の例を示す図である。
同図の実線L61は、JIS2磁気ヘッド部21が正常に読み取りを行って出力する電気信号の例を示す。また、点P611〜P623は、ピーク間隔検出部112が実線L51の電気信号から検出するピーク点を示す。ディジタルデータ生成部113は、これらのピーク点のピーク間隔から、ビット列「00110011」を生成する。
奇偶検査部116は、ディジタルデータ生成部113から出力されるビット列を4ビット毎に1ブロックとして、ブロック1「0011」とブロック2「0011」とについて水平方向奇偶検査を行う。その結果、奇偶検査部116は、パリティ値「0000」を算出して奇偶検査結果を正常と判定する。
【0024】
奇偶検査部116は、順方向のビット列と逆方向のビット列との各々について水平方向奇偶検査を行い、各方向について水平方向奇偶検査結果を結果出力部118に出力する。このように、奇遇検査部116が、順方向の読み取り結果と逆方向の読み取り結果との各々に対して水平方向奇偶検査結果を行い、エラーなしと判定した方向の読み取り結果から生成したキャラクタコードを結果出力部118が出力することにより、片方向で読み取りを行う場合よりも読み取り率を向上させることができる。
【0025】
また、磁気読み取り装置1は、読み取りエラー検出率を向上させるために、水平方向奇偶検査と合わせてピーク間隔検査やキャラクタ検査部を行う。
図6の破線L63は、JIS2磁気ヘッド部21が出力する電気信号にずれが生じた例を示す。また、点P631〜P643は、ピーク間隔検出部112が破線L63の電気信号から検出するピーク点を示す。この場合、ディジタルデータ生成部113は、ビット列「01100110」を生成する。このビット列は、点P632〜P637で生じたビットずれにより、ブロック1の2ビット目の値と4ビット目の値とを誤って生成している。また、点P638〜P643で生じたビットずれにより、ブロック2でも2ビット目の値と4ビット目の値とを誤って生成している。
これにより、奇偶検査部116は、ブロック1「0110」とブロック2「0110」とについて水平方向奇偶検査を行い、パリティ値「0000」を算出して奇偶検査結果を正常と判定する。
このように、ビット列に誤りが含まれていても水平方向奇偶検査で誤りを検出できない可能性がある。そこで、磁気読み取り装置1は、水平方向奇偶検査の他にピーク間隔検査やキャラクタ検査を行って、エラー検出の精度を高める。
【0026】
次にキャラクタ検査について説明する。図7は、キャラクタ検査部117が行うキャラクタ検査の例を示す図である。
同図において、実線L7は、JIS2磁気ヘッド部21が順方向の読み取りで読み取った電気信号の例を示す。また、点P71〜P77は、実線L7のピーク点を示す。
キャラクタデータ生成部114は、ディジタルデータ生成部113から出力されるビット列から、例えば、数値のキャラクタ「03H」を生成する。
このように、ディジタルデータ生成部113が順方向の読み取り結果から生成したビット列に対応するキャラクタが存在し、キャラクタデータ生成部114がキャラクタを生成できた場合、キャラクタ検査部117は、順方向の読み取り結果について、キャラクタ検査結果を正常と判定する。一方、キャラクタデータ生成部114がキャラクタを生成できなかった場合、キャラクタ検査部117は、順方向の読み取り結果について、キャラクタ検査結果を異常と判定する。
同様に、ディジタルデータ生成部113が逆方向の読み取り結果から生成したビット列に対応するキャラクタが存在し、キャラクタデータ生成部114がキャラクタを生成できた場合、キャラクタ検査部117は、逆方向の読み取り結果について、キャラクタ検査結果を正常と判定する。一方、キャラクタデータ生成部114がキャラクタを生成できなかった場合、キャラクタ検査部117は、逆方向の読み取り結果について、キャラクタ検査結果を異常と判定する。
このように、キャラクタ判定部が、順方向の読み取り結果と逆方向の読み取り結果との各々についてビット列に対応するキャラクタが存在するか否かを判定し、存在すると判定した方向の読み取り結果から生成したキャラクタコードを結果出力部118が出力することにより、片方向で読み取りを行う場合よりも読み取り率を向上させることができる。
【0027】
なお、キャラクタ検査部117が行うキャラクタ検査の方法はこれに限らない。例えば、順方向の読み取り結果に対してキャラクタデータ生成部114が生成するキャラクタと、逆方向の読み取り結果に対してキャラクタデータ生成部114が生成するキャラクタとが一致する場合は、キャラクタ検査結果を正常と判定し、キャラクタデータ生成部114が生成するキャラクタが読み取り方向により異なる場合や、いずれかの方向の読み取り結果からキャラクタが生成できない場合は、キャラクタ検査結果を異常と判定するようにしてもよい。図7の例の場合、キャラクタ生成部114が、順方向の読み取り結果から生成するキャラクタと、逆方向の読み取り結果から生成するキャラクタとは、共に「03H」なので、キャラクタ検査部117は、キャラクタ検査結果を正常と判定する。
このように、順方向の読み取り結果から生成されるキャラクタと逆方向の読み取り結果から生成されるキャラクタとの同一性を判定することにより、読み取り誤りをさらに減少させることができる。
【0028】
次に、磁気読み取り装置1の動作について説明する。
図8は、磁気読み取り装置1が磁気データを読み取って、読み取り結果のキャラクタまたはエラーを出力する処理手順を示すフローチャートである。磁気読み取り装置1は磁気カードの挿入などにより読み取り処理開始を指示されると、当該処理を開始する。
ステップS1において、JIS2磁気ヘッド部21は、順方向の読み取りを行って、磁気カードに記録された磁気データを電気信号にて読み取る。JIS2磁気ヘッド部21は読み取った電気信号を、読み取り結果入力部111に出力する。
ステップS1において、JIS2磁気ヘッド部21は、逆方向の読み取りを行って、磁気カードに記録された磁気データを電気信号にて読み取る。JIS2磁気ヘッド部21は読み取った電気信号を、読み取り結果入力部111に出力する。
【0029】
ステップS3において、ピーク間隔検出部112は、読み取り結果入力部111が入力を受けた、順方向の読み取り結果の電気信号と逆方向の読み取り結果の電気信号との各々からピーク位置を検出し、検出したピーク位置からピーク間隔を検出する。ピーク間隔検出部は、検出したピーク間隔をディジタルデータ生成部113とピーク間隔検査部115に出力する。また、ピーク間隔検査部115は、ピーク間隔検出部112から出力される順方向のピーク間隔と逆方向のピーク間隔との各々を論理インターバル時間と比較し、ピーク間隔と論理インターバル時間との差が規格範囲内にあるか否かに基づいて、読み取りエラーの有無を判定する。
ステップS4において、ステップS3の判定でピーク間隔検出部112が何れの方向の読み取り結果についても異常ありと判定した場合(ステップS4:YES)はステップS21に進み、何れかの方向の読み取り結果について異常なしと判定した場合(ステップS4:NO)はステップS5に進む。
【0030】
ステップS5において、ディジタルデータ生成部113は、ピーク間隔検出部112から出力される順方向のピーク間隔と逆方向のピーク間隔との各々からディジタルデータを生成する。ディジタルデータ生成部113は、生成したディジタルデータをキャラクタデータ生成部114と奇偶検査部116とに出力する。
ステップS6において、奇偶検査部116は、ディジタルデータ生成部113から出力される順方向のディジタルデータと逆方向のディジタルデータとの各々に対して水平方向奇偶検査を行い、読み取りエラーの有無を判定する。
ステップS7において、ステップS6の判定で奇偶検査部116が何れの方向の読み取り結果から生成されたディジタルデータについても異常ありと判定した場合(ステップS7:YES)はステップS21に進み、何れかの方向の読み取り結果から生成されたディジタルデータについて異常なしと判定した場合(ステップS7:NO)はステップS8に進む。
【0031】
ステップS8において、キャラクタデータ生成部114は、ディジタルデータ生成部113から出力される順方向のディジタルデータと逆方向のディジタルデータの各々からキャラクタを生成する。キャラクタデータ生成部114は、生成したキャラクタをキャラクタ検査部117と結果出力部118とに出力する。また、キャラクタ検査部117は、キャラクタデータ生成部114から出力される順方向のキャラクタと逆方向のキャラクタとの各々に対してキャラクタ生成可否を判定するキャラクタ検査を行い、読み取りエラーの有無を判定する。
ステップS9において、ステップS8でキャラクタ検査部117が何れの方向の読み取り結果からもキャラクタを生成不可と判定した場合(ステップS9:YES)はステップS21に進み、何れかの方向の読み取り結果からキャラクタを生成可能と判定した場合(ステップS9:NO)はステップS10に進む。
【0032】
ステップS10において、結果出力部118は、キャラクタデータ生成部114から出力されるキャラクタのうち、奇偶検査部116が異常なしと判定し、かつ、キャラクタ検査部117がキャラクタを生成可能と判定した方向の読み取り結果から生成された、いずれかのキャラクタを磁気読み取り装置1の外部に出力する。その後、読み取り結果のキャラクタまたはエラーを出力する処理を終了する。
ステップS21において、結果出力部118は、読み取り結果としてエラーを磁気読み取り装置1の外部に出力する。その後、読み取り結果のキャラクタまたはエラーを出力する処理を終了する。
なお、磁気読み取り装置1が行う処理手順は図8が示すものに限らない。例えば、磁気読み取り装置1が、ステップS3のピーク間隔検査とステップS6の奇偶検査とステップS8のキャラクタ検査とを並列に実行するようにしてもよい。あるいは、ディジタルデータ生成部113がステップS5で生成するビット列に基づいて、ピーク間隔検査部115がJIS2磁気ヘッド部21から出力される電気信号を4ビット分のブロック毎に分割し、ブロック毎にステップS3のピーク間隔検査を行うようにしてもよい。
【0033】
以上のように、磁気読み取り装置1は、順方向の読み取りと逆方向の読み取りとの各々についてピーク間隔検査と水平方向奇偶検査とキャラクタ検査とを行うので、順方向の読み取りと逆方向の読み取りとのどちらか一方についてのみ誤りを検出した場合に、正常と判定した方向の読み取り結果を用いることにより、読み取り誤りを低減させ、読み取り率を高めることができる。また、順方向の読み取りでの結果と逆方向の読み取りでの結果とを比較することにより、誤り検出率を高めることができる。
【0034】
なお、中央演算部11の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0035】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、磁気データを読み取った電気信号のピーク間隔に基づいてデータを復元する磁気読み取り装置、磁気読み取り方法およびプログラムに用いて好適である。例えばATM(Automated Teller Machine)等、磁気カードからデータを読み取る装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 磁気読み取り装置
11 中央演算部
21 JIS2磁気ヘッド部
31 ISO磁気ヘッド部
41 メモリ部
111 読み取り結果入力部
112 ピーク間隔検出部
113 ディジタルデータ生成部
114 キャラクタデータ生成部
115 ピーク間隔検査部
116 奇偶検査部
117 キャラクタ検査部
118 結果出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調方式でデータが記録された磁気記録媒体からデータを読み取る磁気読み取り装置であって、
磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して順方向および逆方向に相対移動させ、前記順方向および逆方向それぞれに磁気データを読み取って電気信号を出力する磁気ヘッド部と、
前記電気信号の各々についてキャラクタを生成するキャラクタデータ生成部と、
前記電気信号の各々について読み取りエラーの有無を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記順方向のデータ読み取りで出力された電気信号から生成されたキャラクタ、または、前記逆方向のデータ読み取りで出力された電気信号から生成されたキャラクタ、または、エラーのいずれかを出力する結果出力部と、
を具備することを特徴とする磁気読み取り装置。
【請求項2】
前記磁気ヘッド部から出力される電気信号のピーク間隔を検出するピーク間隔検出部と、
前記ピーク間隔と磁気データの規格から定まる論理インターバル時間との比較により異常の有無を判定するピーク間隔検査部と、
前記ピーク間隔からビット列のディジタルデータを生成するディジタルデータ生成部と、
をさらに具備し、
前記キャラクタデータ生成部は、前記ディジタルデータからキャラクタを生成し、
前記判定部は、
前記ディジタルデータに対して奇偶検査を行って、前記順方向の読み取りと前記逆方向の読み取りとの各々について異常の有無を判定する奇偶検査部と、
前記ディジタルデータから前記キャラクタへの変換可否に基づいて、前記順方向の読み取りと前記逆方向の読み取りとの各々について異常の有無を判定するキャラクタ検査部と、
を具備し、
前記結果出力部は、前記ピーク間隔検査部の判定結果と、前記奇偶検査部の判定結果と、前記キャラクタ検査部との判定結果とに基づいて、前記順方向の読み取り結果から前記キャラクタデータ生成部が生成したキャラクタ、または、前記逆方向の読み取り結果から前記キャラクタデータ生成部が生成したキャラクタ、または、エラーのいずれかを出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気読み取り装置。
【請求項3】
周波数変調方式でデータが記録された磁気記録媒体からデータを読み取る磁気読み取り装置の磁気読み取り方法であって、
磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して順方向および逆方向に相対移動させ、前記順方向および逆方向それぞれに磁気データを読み取って電気信号を出力する読み取りステップと、
前記電気信号の各々についてキャラクタを生成するキャラクタデータ生成ステップと、
前記電気信号の各々について読み取りエラーの有無を判定する判定ステップと、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記順方向のデータ読み取りで出力された電気信号から生成されたキャラクタ、または、前記逆方向のデータ読み取りで出力された電気信号から生成されたキャラクタ、または、エラーのいずれかを出力する結果出力ステップと、
を具備することを特徴とする磁気読み取り方法。
【請求項4】
周波数変調方式でデータが記録された磁気記録媒体に対して磁気ヘッドを順方向および逆方向に相対移動させ、前記順方向および逆方向それぞれに磁気データを読み出して生成された電気信号から、コンピュータにキャラクタを生成させるプログラムであって、
前記コンピュータが、前記電気信号の各々についてキャラクタを生成するキャラクタデータ生成ステップと、
前記コンピュータが、前記電気信号の各々について読み取りエラーの有無を判定する判定ステップと、
前記コンピュータが、前記判定部の判定結果に基づいて、前記順方向のデータ読み取りで出力された電気信号から生成されたキャラクタ、または、前記逆方向のデータ読み取りで出力された電気信号から生成されたキャラクタ、または、エラーのいずれかを出力する結果出力ステップと、
を前記コンピュータに実行させるプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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