説明

磁気転写シート及びそれを用いた磁気記録媒体

【課題】本発明は、偽造防止効果も高い磁気転写シート及びそれを用いた磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】支持体(2)上の片面に剥離保護層(4)と、温度によって透明度が可逆的に変化する書き換え可能な感熱記録層(6)と、観察する角度に応じて異なる色彩や画像パターンを見ることができるホログラム等の回折格子や多層薄膜である光学多層干渉膜、またはコレステリック液晶の層等が形成されてなるOVD形成層(7)、及び、前記OVD形成層(7)への入射光を反射する光反射層(8)とからなるOVD層(5)とを有し、支持体(2)側から見て、剥離保護層(4)、感熱記録層(6)、OVD形成層(7)、光反射層(8)、磁気記録層(9)、接着層(10)の順に積層したことを特徴とする磁気転写シート及びそれを用いた磁気記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気転写シートに関する。本発明の磁気転写シートを使用してプラスチックや紙からなるカードやチケット等に転写することにより磁気カードや磁気券等の磁気記録媒体を製造することができる。この磁気記録媒体には磁気情報を記録することができ、例えば、クレジットカードや有価証券、証明書、入場券などに利用することができる。
【0002】
さらに、磁気記録媒体の製造と同時に、偽造や改竄が困難でその磁気記録媒体の真贋と感熱記録層に記録された文字や画像情報を目視にて同時に確認することができる機能を付与した磁気転写シートに関するものである。また、この磁気転写シートを使用して製造された磁気記録媒体にも関連するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、秘密情報を磁気的に記録する磁気記録媒体としては、例えば、クレジットカードやキャッシュカード等が広く知られている。これらクレジットカードやキャッシュカード等にはそのカードが真正のカードであることを目視にて判別出来るようにするため、観察する角度によって色彩や画像パターンが変化するOVDである回折構造物が多く用いられている。この回折構造物は美麗で装飾性が高く、また、その製造が複雑で特殊な設備が必要であることから偽造防止効果にも優れている。
【0004】
このようなOVD付き磁気カードは、カード基材上に磁気部を設けて磁気カードとしたものに、カード上の磁気部とは別の部位に、OVDを有する転写シートのOVD層を転写して作製されるのが一般的である。すなわち、転写シートの支持体上に、剥離保護層、OVD層、接着層をこの順に積層してなる転写シートを使用して、磁気転写シートとは別にカード上に転写される。また、磁気記録層を備えていないカードに、OVD層を有する磁気転写シートを使用して、OVD層と磁気層とが積層されて一体となったOVD付き磁気記録媒体としたものもある。これは支持体上に、剥離保護層、OVD層、磁気記録層及び接着層をこの順に積層してOVD層と磁気テープを一体化した転写シートを用いて磁気記録媒体としたものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
一方、スペース的に制約の多いクレジットカードやキャッシュカード、会員カードなどのプラスチック磁気カードにおいて、別途感熱記録層を貼付すること無く、可視情報と磁気情報とを同じスペースに両立させた磁気転写シートとして、温度によって透明度が可逆的に変化する感熱記録層を磁気記録層上に積層して一体化した転写シートを用いて感熱・磁気記録媒体としたものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
近年、可視情報をプラスチック磁気カードやICカードに表示したいという要望が増加している。しかしながら、従来、それらのカード上に磁気記録(磁気情報)、感熱記録(目視情報)、OVD(偽造防止)の全てをカード上に設ける場合には、それぞれ別途に設けるか、磁気記録層上に感熱記録層もしくはOVD層のどちらか1つを組み合わせて積層した磁気転写シートを用いていたが、デザインの多様化とキャッシュカードとクレジットカード、クレジットカードと会員カード等のように複合化したプラスチックカードでは表示しなければならない情報も増加している。このため、スペース効率が高く、且つ偽造防止効果が高いOVDと感熱記録層とを積層した磁気転写シートの開発が求められるようになった。
【0007】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2000−33789号公報
【特許文献2】特開平9−254573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、磁気転写シート上にOVD層と感熱記録層を形成することにより、従来の磁気記録媒体では別々に貼付加工しなければならなかったOVD層と感熱記録層とを同時に転写することを可能とし、また、デザインスペースの狭い磁気記録媒体においてはそのスペースを有効に使用することができ、且つ偽造防止効果も高い磁気転写シート及びそれを用いた磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、支持体(2)上の片面に少なくとも磁気記録層(9)を含む転写層(3)を有し、この転写層(3)を被転写基材(11)に転写すると共に支持体(2)を剥離除去してなる磁気記録媒体(12)を製造する磁気転写シート(1)であり、この転写層(3)には支持体(2)から転写層(3)を剥離させ剥離後には、転写層(3)を保護する剥離保護層(4)と、温度によって透明度が可逆的に変化する書き換え可能な感熱記録層(6)と、観察する角度に応じて異なる色彩や画像パターンを見ることができるホログラム等の回折格子や多層薄膜である光学多層干渉膜、またはコレステリック液晶の層等が形成されてなるOVD形成層(7)、及び、前記OVD形成層(7)への入射光を反射する光反射層(8)とからなるOVD層(5)とを有しており、支持体(2)側から見て、剥離保護層(4)、感熱記録層(6)、OVD形成層(7)、光反射層(8)、磁気記録層(9)、接着層(10)の順に積層したことを特徴とする磁気転写シートである。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の磁気転写シートにおいて、前記光反射層(8)が金属単体及びその酸化物や窒化物からなり、厚さが1nm〜50nmの薄膜で形成されたことを特徴とする磁気転写シートである。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1記載の磁気転写シートにおいて、前記光反射層(8)がOVD形成層(7)と屈折率が異なる透明な無機化合物の薄膜で形成されたことを特徴とする磁気転写シートである。
【0012】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の磁気転写シートにおいて、前記光反射層(8)と磁気記録層(9)との間にあって、光反射層(8)に重ねて耐薬品保護層(13)を備えたことを特徴とする磁気転写シートである。
【0013】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の磁気転写シートにおいて、前記光反射層(8)が磁気記録可能な金属薄膜から構成された金属反射層からなり、支持体(2)側から見て、剥離保護層(4)、感熱記録層(6)、OVD形成層(7)、金属反射層、接着層(10)の順に積層したことを特徴とする磁気転写シートである。
【0014】
本発明の請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の磁気転写シートにおいて、前記光反射層(8)もしくは金属反射層が磁気転写シート(1)の全体ではなく、部分的に設けられたことを特徴とする磁気転写シートである。
【0015】
本発明の請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載の磁気転写シートにおいて、転写後に観察可能な位置に印刷層を備えたことを特徴とする磁気転写シートである。
【0016】
本発明の請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれか1項記載の磁気転写シートを、紙やフィルム、カード等に転写したことを特徴とする磁気記録媒体である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、磁気転写シートに回折構造層と光反射層を積層していることから、磁気記情報の書き込みや読み出しができると同時に、感熱記録層を積層していることから、目視によって確認できる文字や画像を書き換えることが可能となり、更には感熱記録層において透明度が高い部分からは、転写後に感熱記録層の下層に位置するOVD層と光反射層により、観察する角度に応じて異なる色彩や画像を観察することができる。
【0018】
このような画像パターン状に光反射層を形成する技術は、OVDを形成する技術とは異なる技術であるため、これら両方の技術を併用した磁気記録媒体は、その改竄や偽造が極めて困難である。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、前記光反射層が金属単体及びその酸化物や窒化物から構成されており、その膜厚を1nm〜50nmとすることにより透明性と反射性を両立させることができ、OVD効果とOVD層より下層の印刷等との両方を見ることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、前記光反射層がOVD形成層と屈折率が異なる透明な無機化合物の薄膜で形成されていることから、透明性と反射性を両立させることができ、OVD効果とOVD層より下層の印刷等との両方を見ることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、光反射層に重ねて耐薬品保護層を備えていることから、光反射層の腐食を防止してOVD層の耐久性を向上させることが可能となる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、前記光反射層が磁気記録可能な金属薄膜で構成されているため、別途磁気記録層を設けた構成と同等の機能を有することが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、前記光反射層もしくは金属反射層が磁気転写シートの全体ではなく部分的に設けられているため、改竄・偽造が更に困難となる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、剥離保護層と感熱記録層の間、または感熱記録層とOVD形成層の間、OVD形成層と光反射層の間等、少なくとも転写後に観察可能な位置に印刷層を備えることにより、文字や絵柄等の可視情報やOVDの着色や固定情報の表示、意匠性を向上させること等が可能となる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1乃至7のいずれか1項記載の磁気転写シートを用いた磁気記録媒体とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態を図1〜図6に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は本発明に係る磁気転写シートの層構成の1実施例を示す側断面図であり、図2は本発明に係る磁気転写シートの層構成のその他の実施例を示す側断面図であり、図3は本発明に係る磁気記録媒体の層構成の1実施例を示す側断面図であり、図4は本発明に係る磁気記録媒体の層構成のその他の実施例を示す側断面図であり、図5は本発明に係る磁気記録媒体の1実施例を示す平面図であり、図6は本発明に係る磁気記録媒体のその他の実施例を示す平面図である。
【0028】
本発明に係る1実施例の磁気転写シートは、図1に示すように、支持体(2)上の片面に少なくとも磁気記録層(9)を含む転写層(3)を有し、図3に示すように、この転写層(3)を被転写基材(11)に転写すると共に支持体(2)を剥離除去してなる磁気記録媒体(12)を製造する磁気転写シート(1)であり、この転写層(3)には支持体(2)から転写層(3)を剥離させ剥離後には、転写層(3)を保護する剥離保護層(4)と、温度によって透明度が可逆的に変化する書き換え可能な感熱記録層(6)と、観察する角度に応じて異なる色彩や画像パターンを見ることができるホログラム等の回折格子や多層薄膜である光学多層干渉膜、またはコレステリック液晶の層等が形成されてなるOVD形成層(7)、及び、前記OVD形成層(7)への入射光を反射する光反射層(8)とからなるOVD層(5)とを有しており、支持体(2)側から見て、剥離保護層(4)、感熱記録層(6)、OVD形成層(7)、光反射層(8)、磁気記録層(9)、接着層(10)の順に積層したことを特徴とする磁気転写シートである。
【0029】
すなわち、本発明に係る磁気転写シート(1)は、該転写シートの支持体(2)と転写層(3)から構成される。転写層(3)は少なくとも磁気記録層(9)を含み、図3に示すように、被転写基材(11)に転写されて磁気記録媒体(12)の一部を構成する。また、支持体(2)は転写時まで転写層(3)を保持し、転写の後に剥離除去されるものである。
【0030】
転写層(3)は、磁気記録層(9)の他に少なくとも接着層(10)、OVD層(5)、感熱記録層(6)、剥離保護層(4)を有している。
【0031】
前記感熱記録層(6)は、温度によって透明度が可逆的に変化することにより、文字や絵柄などを自由に書き換えることが可能である。この感熱記録層(6)は、透明/白濁のコントラストによって表示を行う透明白濁高分子/低分子タイプと、透明/青、もしくは透明/赤、もしくは透明/黒等、透明と有色とのコントラストによって表示を行うロイコタイプ等があり、この感熱記録層(6)が磁気記録媒体(12)上で剥離保護層(4)のすぐ下層に位置することから、感熱記録層(6)における白濁部や有色部の可視情報は全て読み取ることができ、且つ、透明な部分は感熱記録層(6)の下層に位置するOVD層(5)によって地紋のように別の絵柄や文字を観察することができる。
【0032】
また、OVD層(5)は、波長を分散させたり、回折光を生じさせたりするためのOVD形成層(7)とOVD形成層(7)を透過した光を反射するための光反射層(8)とを有しており、観察する角度に応じて異なる色彩や画像パターンを見ることができる。このOVD層(5)は、転写層(3)を転写して磁気記録媒体(12)を製造した際に、全体もしくはその一部分が目視で観察できる位置に配置されていることが必要である。このため、一般に磁気記録層(9)は黒色や茶色に着色した不透明な層であるから、OVD層(5)は磁気記録媒体(12)上で磁気記録層(9)の上に配置される必要がある。これは、転写シート(1)上では磁気記録層(9)より支持体(2)側に近い位置となり、また、可視情報である感熱記録を遮らないように感熱記録層(6)の下層に位置するものである。
【0033】
このような観察する角度に応じて異なる色彩や画像パターンを見ることができるOVDには種々のものが知られているが、本発明のOVDにおいては、OVD形成層(7)と光反射層(8)とで構成される。本発明に用いられるOVDとしては、磁気記録媒体(12)上で、室内光もしくは太陽光等の外光は光反射層(8)で反射され、この反射光がOVD形成層(7)で回折されることにより、見る角度によって異なった色彩や画像が見えるホログラムや、OVD層(5)を屈折率の異なる材料を交互に積層した多層薄膜で構成し、外光の一部をその薄膜各層で反射し、残りの入射光を光反射層(8)で反射させることによって波長分散が生じ、見る角度に応じて異なる色彩が観察される多層薄膜等がある。尚、磁気記録媒体(12)上では、基材(11)側から光反射層(8)、OVD形成層(7)の順に積層されている必要があり、磁気転写シート(1)上においては、支持体(2)側からOVD形成層(7)、光反射層(8)の順となる。
【0034】
本発明の磁気転写シート(1)に使用されるOVDの光反射層(8)は、該転写シート(1)の全体、もしくは画像パターン状、すなわち部分的に設けられていても良い。部分的に設けられている場合、前記回折光は、この画像パターン状に発生する。また、この光反射層(8)の存在しない部位では、光反射層(8)の上下の層が直接接触している。
【0035】
本発明の磁気転写シート(1)は、その転写層(3)中に感熱記録層(6)やOVD形成層(7)、光反射層(8)、磁気記録層(9)の他に、別の層を有しても良い。例えば、転写後の支持体(2)の剥離を容易にしつつ、転写後には携帯時の擦れなどの外部損傷や生活物質などによる化学的な損傷等からOVD層(5)や磁気記録層(9)を保護するための剥離保護層(4)や、被転写基材(11)に磁気転写シート(1)を接着するための接着層(10)等が挙げられる。
【0036】
また、磁気転写シート(1)は、光反射層(8)が金属薄膜で構成されている場合、光反射層(8)を酸やアルカリから保護するためにこの光反射層(8)に重ねて耐薬品保護層を設け、その耐久性を向上させることもできる。
【0037】
また、磁気記録媒体(12)の意匠性を向上させたり、感熱記録層(6)やOVD層(5)を着色したり文字や絵柄を印刷するための印刷層(図示せず)を設けることも可能である。この印刷層は、転写後に観察可能な位置にあれば良いが、例えば、剥離保護層(4)と感熱記録層(6)の間に位置する部位である。すなわち、磁気転写シート(1)上では、OVD層(5)もしくは感熱記録層(6)より支持体(2)に近い側に位置することとなる。
【0038】
(磁気転写シートの構造)
次に、本発明に係る磁気転写シートの構造について、図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0039】
図1は、本発明に係る磁気転写シート(1)の層構成の1実施例を示す側断面図である。この転写シート(1)は、支持体(2)と、この支持体(2)の片面に積層された転写層(3)とで構成されている。該転写層(3)は、その層構成中に少なくとも磁気記録層(9)を有している。
【0040】
また、該転写層(3)は、その層構成中に感熱記録層(6)とOVD層(5)とを有しており、この感熱記録層(6)は、OVD層(5)と支持体(2)の間の位置に積層される。
【0041】
このOVD層(5)はOVD形成層(7)と光反射層(8)で構成される。光反射層(8)は、図5の転写後の平面図では転写部の全面に設けられているが、図6の転写後の平面図では全体より一回り小さな長方形形状と更にその周囲に複数の微細な星型の画像「☆」が取り囲むような形状に設けられている。尚、複数の大きな星型の画像「☆」や複数の微細な星型の画像「☆」は観察する角度によってその明るさが変化するOVDの画像であり、図5や図6の色の濃淡は、その明るさの度合いを示したものである。
【0042】
尚、転写層(3)はこの他に、転写後の支持体(2)からの剥離を容易にすると共に転写後にOVD層(5)や磁気記録層(9)を摩耗などから保護する剥離保護層(4)と、
転写層(3)を磁気記録媒体(12)の被転写基材(11)に接着するための接着層(10)とを備えている。
【0043】
これら各層の積層順序は、支持体(2)側から順に、剥離保護層(4)、感熱記録層(6)、OVD形成層(7)、光反射層(8)、磁気記録層(9)、接着層(10)の順である。
【0044】
また、転写層(3)は前記の各層の他、図には示さないが、必要に応じて各層の密着力をより一層強固とするためのアンカー層や、OVDの画像や感熱記録層(6)に書かれた情報を着色したり文字を印刷したりするための印刷層を積層しても良い。
【0045】
次に、図2は本発明に係る磁気転写シートのその他の実施例を示す側断面図で、磁気転写シート(1A)に部分的に設けられている光反射層(8)に重ねて、この光反射層(8)と同一形状の耐薬品保護層(13)を備えるものであり、その他は図1に示す磁気転写シート(1)と同様である。尚、この耐薬品保護層(13)は、光反射層(8)と磁気記録層(9)との間に設けられている。
【0046】
(支持体)
この磁気転写シートを構成する各層の材質と形成方法について説明する。
【0047】
まず、支持体(2)としては樹脂フィルムが使用できる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、耐熱塩化ビニルフィルム等が使用できる。これらの樹脂の中で、耐熱性が高く厚みが安定していることから、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが好ましく使用できる。
【0048】
また、これら樹脂フィルムに剥離層を設けたり、易接着処理を行ったりして剥離保護層(4)の剥離強度を調整したフィルムを支持体(2)として利用することもできる。また、帯電防止処理、マット加工、エンボス処理等の加工を施したフィルムも使用することができる。
【0049】
(剥離保護層)
剥離保護層(4)としては、樹脂に滑剤を添加したものが使用できる。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が使用できる。例えば、アクリル樹脂やポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂である。また、滑剤としてはポリエチレンパウダーや、カルナバロウ等のワックスを使用することができ、20重量部まで添加することが可能である。これらは剥離保護層(4)として、支持体(2)上にグラビア印刷法やマイクログラビア法等、公知の塗布方法によって形成される。
【0050】
(感熱記録層)
感熱記録層(6)としては、樹脂母材のマトリックス中に分散された有機低分子物質の結晶状態の変化によって白濁、透明化が可逆的に変化するもので、公知の印刷法または塗布方法によって形成される。
【0051】
可逆性感熱記録層中に分散される有機低分子物質としては脂肪酸もしくは脂肪酸誘導体または脂環式有機酸が挙げられ、更に詳しくは、飽和もしくは不飽和のものあるいはジカルボン酸、またはこれらのエステル、アミド等を含むものである。前記飽和脂肪酸の具体例としては、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチル酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられ、また、不飽和脂肪酸の具体例としては、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、ソルビン酸、ステアロール酸等が挙げられる。尚、脂肪酸もしくは脂肪酸誘導体または脂環式有機酸はこれらのものに限定されるものではなく、これらの内の一種類または二種類以上を混合して使用することもできる。
【0052】
また、感熱記録層(6)に使用される樹脂母材としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂の単独、混合、あるいは共重合物が用いられる。一方、可逆性感熱記録部の透明化温度範囲を制御するために、必要に応じて樹脂の可塑剤、高沸点溶剤等を樹脂母材に対して0.1〜20.0%重量部添加することができる。
【0053】
更に、感熱記録層(6)として、前記有機低分子タイプの他にロイコ化合物を用いたロイコタイプを用いることもできる。ロイコタイプとはロイコ化合物を使用したもので、このロイコ化合物は弊社発明の特許番号第2503762号に記載されている「フェノール性水酸基及びカルボキシル基の少なくとも一つを有し、かつアミノ基を官能基として又は塩化化合物の一部として有する両性化合物と、ロイコ化合物を含む可逆性感熱記録媒体用組成物」を用いたもの等であるが、本発明における感熱記録層は、温度によって透明度や色濃度が変化する可逆性感熱記録材料であれば、特にこれらに限定するものではない。
【0054】
(OVD層)
OVD層(5)は、OVD形成層(7)と光反射層(8)の少なくとも2層を含んで構成されるものであるが、後述するように、OVD層(5)にはこの他の層を含むこともできる。
【0055】
(OVD形成層)
OVD形成層(7)としては、レリーフ型回折格子や体積型回折格子等の他、屈折率がおよそ2.0以上の高屈折率の薄膜と屈折率がおよそ1.5程度の低屈折率材料の薄膜とをそれぞれ光学的に適当な膜厚で適宜積層した多層薄膜等が利用できる。
【0056】
前記レリーフ型回折格子は、その表面に微細な凹凸パターンの形態で回折格子を記録したものである。
【0057】
このような凹凸パターンは、例えば、二光束干渉法を使用して感光性樹脂の表面に互いに可干渉の2本の光線を照射してこの感光性樹脂表面に干渉縞を生成させ、この干渉縞を凹凸の形態で感光性樹脂に記録することで形成することができる。尚、この二光束性干渉法によって形成された干渉縞をホログラムと呼び、前記2本の光線の選択によって任意の立体画像を記録することが可能である。また、観察する角度に応じて異なる画像(以下チェンジング画像と言う)を見ることができるように記録することも可能である。
【0058】
また、レリーフ型回折格子の凹凸パターンは、電子線硬化型樹脂の表面に電子線を照射して、回折格子を構成する縞状に露光することによって形成することも可能である。この場合には、その干渉縞を1本ごとに制御することができるため、ホログラムと同様に任意の立体画像やチェンジング画像を記録することができる。また、画像をドット状の画素領域に分割し、この画素領域ごとに異なる回折格子を記録し、これら画祖の集合で全体の画像を表現することも可能である。画素は円形のドットの他、星形のドットでも良い。
【0059】
また、誘起表面レリーフ形成法によって、前記凹凸パターンを形成することも可能である。すなわち、アゾベンゼンを鎖側に持つポリマーのアモルファス薄膜に対して、青色〜緑色に渡る範囲の或る波長を有した数十mW/cm2度の比較的弱い光を照射することに
よって、数μmスケールでポリマー分子の移動を起こし、結果、薄膜表面に凹凸によるレリーフを形成することができる。
【0060】
そして、このように形成された凹凸パターンを有するレリーフ型のマスター版の表面に電気メッキ法で金属膜を形成することによって、レリーフ型マスター版の凹凸パターンを複製し、これをプレス版とする。そして、前記剥離保護層(4)上に塗布された樹脂層にこのプレス版を熱圧着し、この樹脂層の表面に微細な凹凸パターンを転写することにより、OVD形成層(7)とすることができる。
【0061】
前記レリーフ型回折格子によるOVD形成層(7)に適用される樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂等が使用できる。例えば、熱可塑性樹脂では、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。また、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加して架橋させたウレタン樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等が使用できる。また、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂としては、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等が使用できる。
【0062】
また、OVD形成層(7)として、多層薄膜である光学多層干渉膜、コレステリック液晶の層、観察する角度に応じて異なる色彩を見ることができる粉末を含有するインキ等が利用可能である。
【0063】
前記光学多層干渉膜は、金属薄膜、セラミックス薄膜、又は、それらを併設してなる複合薄膜として、各層の光学特性と層の組み合わせの関係による適当な数の層が積層されていれば良い。例えば、屈折率の異なる薄膜を積層する場合、高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜とを組み合わせても良く、また特定の組み合わせを交互に積層するようにしても、いずれでもよい。それらの層による光学的条件を満たす適当な組み合わせにより、所望の光学的効果(ここでは構造色)を発現する光学多層干渉薄膜を得ることができる。
【0064】
このような光学多層干渉膜に用いられる材料の例を以下に挙げる。尚、化学式の後ろに続くカッコ内の数値は、それぞれの屈折率nを示す。まず、セラミックスとしては、Sb23(3.0)、Fe23(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb23(2.0)、WO3(2.0)、SiO(2.0)、Si23(2.5)、In23(2.0)、PbO(2.6)、Ta23(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(2.0)、MgO(1.6)、Si22(1.5)、MgF2(1.4)、CeF3(1.6)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1.6)、Al23(1.6)、GaO(1.7)、等があり、また、金属系の材料としては、Al、Fe、Mg、Zn、Au、Ag、Cr、Ni、Cu、Si、等の金属単体もしくは合金が挙げられる。
【0065】
また、低屈折率の材料としては、例えば有機ポリマーのうち、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフロロエチレン(1.35)、ポリメチルメタアクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)等がある。但し、ここでカッコ内の数値はそれぞれの屈折率nを示す。これらの高屈折率材料もしくは20〜70%の光透過率とした金属薄膜より少なくとも一種、低屈折率材料より少なくとも一種をそれぞれ選択し、所定の厚さで交互に積層させることにより、可視光における特定の波長だけを吸収あるいは反射するようになる。
【0066】
前記の各材料から屈折率、反射率、透過率等の光学特性や耐候性、層間密着性などに基づき適宜選択され、薄膜として積層されることによって光学的な波長干渉を発生させる多層薄膜を形成する。形成方法は、膜厚、成膜速度、積層数、あるいは光学膜厚等の制御が
可能な公知の方法が使用できる。例えば真空蒸着法やスパッタリング法、CVD法等である。尚、前記光学膜厚とはn・dで与えられる量であり、nは屈折率、またdは膜厚である。
【0067】
また、コレステリック液晶の層は、その構成分子が光学活性を有し、薄層内ではネマッティック一軸配向しているが、隣接層間では相互に一定方向に一定角のねじれを起こしている螺旋構造を有している。そのピッチは数百nmから無限大まで分布する。この螺旋構造のため、コレステリック液晶は螺旋ピッチに相応した波長の光を選択的に反射し、青から赤まで煌びやかな色彩を持つ。
【0068】
次に、観察する角度に応じて異なる色彩を見ることができる粉末としては、例えば、雲母などの層状物質が挙げられる。この雲母を還元二酸化チタンや酸化鉄で被覆した粉末を利用することができる。これらは、いわゆるフリップフロップ効果によって、波長分散性能を発揮する。これら粉末をインキ化して公知の印刷法または塗布法により、波長分散性能を有する層を形成することができる。
【0069】
(光反射層)
光反射層(8)は、OVD形成層(7)に直接接触して設ける必要はないが、OVD形成層(7)がレリーフ型回折格子の場合には、その凹凸パターンに光反射層(8)を直接接触して設ける必要がある。この場合には、この光反射層(8)によって反射した光がそのまま回折光となる。
【0070】
光反射層(8)としては、反射輝度が高い点で金属薄膜が好ましく利用できる。この金属としては、例えば、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、真鍮等が挙げられる。そして、真空製膜法を利用してこの金属薄膜を形成する事ができる。真空製膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用でき、厚みは1〜1000nm程度、好ましくは1〜50nm程度に制御できれば良い。
【0071】
また、光反射層(8)として高屈折率の透明薄膜を利用することもできる。この透明薄膜は、OVD形成層(7)の屈折率より0.2以上大きい屈折率を有するものが望ましく、例えば、屈折率2.0以上の透明材料から構成される薄膜である。
【0072】
このような透明材料としては、例えば、Sb2O3(屈折率n=3.0)、Fe23(n=2.7)、TiO2(n=2.6)、Cds(n=2.6)、CeO2(n=2.3)、ZnS(n=2.3)、PbCl2(n=2.3)、CdO(n=2.2)、Sb23(n=2.0)、WO3(n=2.0)、SiO(n=2.0)、Si23(n=2.5)、In2O3(n=2.0)、PbO(n=2.6)、Ta23(n=2.4)、ZnO(n=2.1)、ZrO2(n=2.0)、等が挙げられる。そして、真空製膜法を利用してその薄膜を形成することができる。厚みは1〜1000nm程度、好ましくは1〜50nm程度に制御できれば良い。
【0073】
また、金属粉末や透明材料の粉末を含むインキを印刷して薄膜としても良い。この場合、粉末としては粒子径500nm以下のものが好ましい。薄膜の厚みは0.1〜20μmが好ましく、印刷方式として、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等、公知の印刷方法が利用できる。
【0074】
そして、この光反射層(8)は、次のような方法で画像パターンに加工することができる。
【0075】
すなわち、その第1の方法は、前述の印刷方式を利用する方法である。また、第2の方
法は、OVD形成層(7)に画像パターン状の開口部を有するマスクを重ねて光反射層(8)を真空製膜することにより、画像パターン状に光反射層(8)を製膜する方法である。
【0076】
また、その第3の方法は、まず、溶剤溶解性の樹脂層をネガパターン状に設け、この溶剤溶解性樹脂層を被覆して全面一様に光反射層(8)を形成した後、溶剤で前記の溶剤溶解性樹脂層を溶解して除去すると同時に、この溶剤溶解性樹脂層上に重ねられた光反射層(8)を除去することによって、残存する光反射層(8)が画像パターン状に形成される方法である。
【0077】
また、その第4の方法は、まず、OVD形成層(7)上に、このOVD形成層(7)から剥離しやすい樹脂層をネガパターン状に設け、この樹脂層を被覆して全面一様に光反射層(8)を形成した後、粘着ロールや粘着紙等に押し当てることによって粘着ロールや粘着紙等にネガパターン状に転写させて除去し、結果、光反射層(8)が画像パターン状に残存される方法である。
【0078】
また、その第5の方法は、全面一様に光反射層(8)を形成し、この光反射層(8)上に耐薬品性の樹脂層を画像パターン状に設け、アルカリ性または酸性のエッチング液を適用して露出している光反射層(8)を溶解して除去する方法である。この場合、光反射層(8)を画像パターン状に加工したした後、前記耐薬品性樹脂層を除去しても良いが、そのまま残存させて、耐薬品保護層(13)として利用することもできる。
【0079】
また、その第6の方法は、全面一様に形成された光反射層(8)上に感光性樹脂層を形成し、画像パターン状に露光・現像した後、アルカリ性または酸性のエッチング液を適用して露出した光反射層(8)を溶解して除去する方法である。この場合も、残存する感光性樹脂層をそのまま残存させて、耐薬品保護層(13)として利用する事ができる。
【0080】
また、その第7の方法は、全面一様に形成された光反射層(8)にレーザー光を照射して除去することにより、残存する光反射層(8)が画像パターン状となる方法である。
【0081】
この画像パターンとしては、明確な意味を持たないランダムなパターンでも良いが、絵柄、図形、模様、文字、数字、記号等のパターンとして、この画像パターンに認知可能な情報を付与させることも可能である。
【0082】
(磁気記録層)
磁気記録層(9)としては、通常の磁気カードや磁気テープ等に使用されている磁気記録層と同じものが使用できる。例えば、γ−Fe23、コバルト被着γ−Fe23、バリウムフェライト等の磁性粉をバインダー中に分散して製造した磁性塗料を、公知の方法で均一に塗布して形成することができる。
【0083】
(接着層)
接着層(10)としては、熱及び圧力によって被転写基材(11)に接着するものであれば良く、公知の感熱性接着材料を使用することができる。
【0084】
(耐薬品保護層)
耐薬品保護層(13)としては、40〜50℃の1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液中に60秒間浸漬して、塗膜に変化の生じないものが望ましい。この場合には、全面均一に形成した光反射層(8)上に耐薬品保護層(13)を形成し、前記水酸化ナトリウム水溶液をエッチング液として使用し、このエッチング液中に5〜30秒間浸漬することにより、光反射層(8)を画像パターン状に加工することができる。
【0085】
また、耐薬品保護層(13)は、ガラス転移温度150℃以上の樹脂を使用することが望ましい。この場合には、酸やアルカリから保護するだけでなく、高温から光反射層(8)の変形を守ることも可能となる。このような、耐薬品・耐熱性の樹脂としては、ポリカーボネート樹脂(Tg.140〜150℃)、ポリアリレート樹脂(Tg.193℃)、ポリスルホン樹脂(Tg.190℃)、ポリエーテルスルホン樹脂(Tg.225℃)、ポリエーテルイミド樹脂(Tg.200℃以上)、環状ポリオレフィン共重合体(Tg.171℃)、変性ノルボルネン系樹脂(Tg.171℃)、ポリアミドイミド樹脂(Tg.200℃以上)、ポリイミド樹脂(Tg.250℃以上)等が挙げられる。この他、熱硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、紫外線硬化性または電子線硬化性の樹脂を使用しても良い。尚、これら樹脂の比重を1とした場合の40重量%を上限として、フィラーや充填剤、着色剤等を添加することができる。40重量%を超えて添加した場合には、分散性が悪くなって塗膜強度が低下して耐熱性が劣ることがある。また、塗液の流動性が低くなって版上で乾燥してしまって印刷適性が悪化することや、塗液中のそれら添加剤が、保存中または塗工中に沈降または凝集してしまうこと等がある。
【0086】
(その他の層)
その他の層としては、各層間の密着性をより強固なものとするためにアンカー層を設けたり、OVDに着色したり文字や絵柄を印刷するために印刷層を追加することができ、これらのインキも周知の密着向上剤や接着剤、印刷インキがそれぞれ使用することができる。
【0087】
(磁気記録媒体)
本発明に係る磁気転写シート(1)を被転写基材(11)に重ね、熱圧着により接着した後、支持体(2)を剥離除去することにより、転写層(3)を転写して磁気記録媒体(12)を製造することができる。被転写基材(11)としては、任意のものが利用できるが、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂やポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂を材質とするプラスチックカード基材等が挙げられる。また、紙や合成紙等も基材として使用できる。
【0088】
こうして製造された磁気記録媒体(12)は、該基材(11)上に、温度によって透明度や色濃度が変化する感熱記録層(6)と、観察する角度に応じて異なる色彩を見ることができるOVD層(5)と、磁気情報を読み書きすることができる磁気記録層(9)とを有しており、このOVD層(5)はOVD形成層(7)と光反射層(8)からなり、該基材(11)側から見て、接着層(10)、磁気記録層(9)、光反射層(8)、OVD形成層(7)、感熱記録層(6)、剥離保護層(4)の順に積層されたものである。
【0089】
図3は、本発明に係る1実施例の磁気転写シート(1)を用いて磁気記録媒体(12)としたものの側断面図である。すなわち、該基材(11)上に、接着層(10)、磁気記録層(9)、光反射層(8)、OVD形成層(7)、感熱記録層(6)、剥離保護層(4)の順に積層されており、光反射層(8)は磁気転写シート(1)の全面に構成されている。
【0090】
また、図4は、本発明に係るその他の実施例の磁気転写シート(1A)を用いて磁気記録媒体(12A)としたものの側断面図である。すなわち、光反射層(8)と磁気記録層(9)との間に、光反射層(8)に重ねて、この光反射層(8)と同大同形状の耐薬品保護層(13)を備えており、その他は、図3に示す磁気記録媒体(12)と同様である。
【0091】
また、図5は、本発明に係る1実施例の磁気転写シート(1)を使用して製造された磁気記録媒体(12)の平面図で、磁気記録媒体(12)上に磁気転写シート(1)の転写
層(3)がストライプ状に積層され、磁気ストライプ部(3)を形成している。この例では、磁気記録層(9)は露出せず光反射層(8)が磁気ストライプ部(3)全面を覆っており、OVD層(5)に形成された星形の画像を見ることが出来る。この星型のOVD画像は見る角度によってその輝度を変えるように製造されており、図5では正面付近から見た時に下段の輝度が高くなっていることを示している。更に、OVD層(5)の上に感熱記録層(6)が全面に積層されていることから、磁気ストライプ部(3)の全面に任意の文字や画像を印字することが可能であり、図5では1行の印字を行った場合を示しているが、これについては自由に設定、書き換えが可能である。
【0092】
また、図6は、本発明に係るその他の実施例の磁気転写シート(1A)を使用して製造された磁気記録媒体(12A)の平面図で、磁気記録媒体(12A)上に磁気転写シート(1A)の転写層(3A)がストライプ状に積層され、磁気ストライプ部(3A)を形成している。この例では、光反射層(8)が磁気ストライプ部(3A)の全体ではなく部分的に形成されていることから、磁気記録層(9)も部分的に露出しており、光反射層(8)が形成された形状と同じ形状にOVD形成層(7)も形成される。OVD画像である星型は、見る角度によってその輝度を変えるように製造されており、図6では正面付近から見た時に下段の輝度が高くなっていることを示している。更に、OVD層(5)の上に感熱記録層(6)が全面に積層されていることから、磁気ストライプ部(3A)の全面に任意の文字や画像を印字することが可能であり、図6では1行の印字を行った場合を示しているが、これについては自由に設定、書き換えが可能である。
【実施例】
【0093】
本発明を、具体的な実施例をあげて詳細に説明する。
【0094】
<実施例1>
図1に示すように、支持体(2)には、厚さ25μmの透明なポリエチレンテレフタレート(通称PET)フィルムを使用した。
【0095】
この支持体(2)の片面に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥し、膜厚2μmの剥離保護層(4)を形成した。
【0096】
次に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥して膜厚4μmの感熱記録層(6)を形成した。
【0097】
次に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥して膜厚1μmの層を形成した後、ロールエンボス法によりOVD形成用のプレス版を熱圧してその表面に微細な凹凸を形成し、OVD形成層(7)とした。
【0098】
次に、このOVD形成層(7)の全面に、真空蒸着法にてアルミニウム蒸着膜を膜厚45nmにて均一に形成し、光反射層(8)とした。
【0099】
次に、その全面に下記組成物からなる磁性インキを塗布・乾燥して厚さ8μmの磁気記録層(9)を形成し、最後に下記組成物からなるインキを塗布・乾燥させて厚さ3μmの接着層(10)を形成して、所望の転写層(3)を有する磁気転写シート(1)を製造した。
【0100】
「剥離保護層インキ組成物」
ポリアミドイミド樹脂(Tg.250℃) 19.2重量部
ポリエチレンパウダー 0.8重量部
ジメチルアセトアミド 45.0重量部
トルエン 35.0重量部
【0101】
「感熱記録層インキ組成物」
2−(2−クロロフェニルアミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン
(ロイコ化合物) 20.0重量部
ビスフェノール酢酸−ラウリルアミン塩(顕減色剤) 40.0重量部
メタクリル樹脂(バインダー樹脂) 30.0重量部
N−ステアリルステアリン酸アマイド(増感剤)(mp.94℃)
40.0重量部
トルエン 500.0重量部 。
【0102】
「OVD形成層インキ組成物」
ウレタン樹脂 20.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
【0103】
「磁気記録層インキ組成物」
γFe2 O3磁性粉 30.0重量部
塩酢ビ共重合体 3.0重量部
ポリウレタンエラストマー 20.0重量部
メチルエチルケトン 15.0重量部
トルエン 15.0重量部
【0104】
「接着層インキ組成物」
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 15.0重量部
アクリル樹脂(Tg.20℃) 10.0重量部
シリカ 1.0重量部
メチルエチルケトン 44.0重量部
トルエン 30.0重量部
【0105】
次に、この磁気転写シート(1)をストライプ形状に切断してプラスチックカードからなる被転写基材(11)に重ね、温度120℃の熱ロール転写機にて該基材(11)に転写してから支持体(2)を剥離除去し、磁気記録媒体(12)である磁気カードを製造した。
【0106】
次に、この磁気カードの磁気ストライプ部(3)には感熱記録層(6)が全面に形成されていることから、サーマルヘッドと消去用のイレーズバーを用いた印字・消去機により、感熱記録層(6)に印字を行った。
【0107】
得られた磁気カードの磁気ストライプ部(3)を見ると、OVD画像である星型が観察する角度に応じて輝度が変化した。また印字消去機によって書かれた文字も全て読み取ることができ、更には、磁気リーダライターにて磁気情報の読み書きができた。
【0108】
よって、本発明の磁気転写シート及び磁気記録媒体は、偽造防止効果が高いOVDと、可視情報を記録する感熱記録層とを兼ね備えたものであることが分かった。
【0109】
<実施例2>
図2に示すように、支持体(2)には、厚さ25μmの透明なポリエチレンテレフタレート(通称PET)フィルムを使用した。
【0110】
この支持体(2)の片面に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥し、膜厚2μmの剥離保護層(4)を形成した。
【0111】
次に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥して膜厚4μmの感熱記録層(6)を形成した。
【0112】
次に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥して膜厚1μmの層を形成した後、ロールエンボス法によりOVD形成用のプレス版を熱圧してその表面に微細な凹凸を形成し、OVD形成層(7)とした。
【0113】
次に、このOVD形成層(7)の全面に、真空蒸着法にてアルミニウム蒸着膜を膜厚45nmにて均一に形成し、更に、以下の組成物からなるインキを画像パターン状に印刷して、アルミニウム蒸着膜上に厚さ1μmの耐薬品保護層(13)を形成した。そして、50℃に保温された1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液が入った浴槽に10秒間浸し、前記耐薬品保護層(13)がマスクとなり、耐薬品保護層(13)が存在せずにアルミニウム蒸着膜が露出している部位をエッチングで除去した。更に、0.1Nの塩酸水溶液に浸して中和処理を行い、その後、水洗、乾燥した。こうして、画像パターン状にアルミニウム蒸着膜から構成される光反射層(8)と、この光反射層(8)に重ねられ、且つ、この光反射層(8)と同一形状を有する耐薬品保護層(13)を形成した。
【0114】
次に、その全面に下記組成物からなる磁性インキを塗布・乾燥して厚さ8μmの磁気記録層(9)を形成し、最後に下記組成物からなるインキを塗布・乾燥させて厚さ3μmの接着層(10)を形成して所望の転写層(3A)を有する磁気転写シート(1A)を製造した。
【0115】
「剥離保護層インキ組成物」
ポリアミドイミド樹脂(Tg.250℃) 19.2重量部
ポリエチレンパウダー 0.8重量部
ジメチルアセトアミド 45.0重量部
トルエン 35.0重量部
【0116】
「感熱記録層インキ組成物」
2−(2−クロロフェニルアミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン
(ロイコ化合物) 20.0重量部
ビスフェノール酢酸−ラウリルアミン塩(顕減色剤) 40.0重量部
メタクリル樹脂(バインダー樹脂) 30.0重量部
N−ステアリルステアリン酸アマイド(増感剤)(mp.94℃)
40.0重量部
トルエン 500.0重量部 。
【0117】
「OVD形成層インキ組成物」
ウレタン樹脂 20.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
【0118】
「耐薬品保護層インキ組成物」
変性ノルボルネン樹脂(Tg.171℃) 20.0重量部
沈降性硫酸バリウム(比重5.5) 10.0重量部
メチルエチルケトン 40.0重量部
トルエン 30.0重量部
【0119】
「磁気記録層インキ組成物」
γFe2 O3磁性粉 30.0重量部
塩酢ビ共重合体 3.0重量部
ポリウレタンエラストマー 20.0重量部
メチルエチルケトン 15.0重量部
トルエン 15.0重量部
【0120】
「接着層インキ組成物」
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 15.0重量部
アクリル樹脂(Tg.20℃) 10.0重量部
シリカ 1.0重量部
メチルエチルケトン 44.0重量部
トルエン 30.0重量部
【0121】
次に、この磁気転写シート(1A)をストライプ形状に切断してプラスチックカードからなる被転写基材(11)に重ね、温度120℃の熱ロール転写機にて該基材(11)に転写してから支持体(2)を剥離除去し、磁気記録媒体(12A)である磁気カードを製造した。
【0122】
次に、この磁気カードの磁気ストライプ部(3A)には感熱記録層(6)が全面に形成されていることから、サーマルヘッドと消去用のイレーズバーを用いた印字・消去機により、感熱記録層(6)に印字を行った。
【0123】
得られた磁気カードの磁気ストライプ部(3A)を見ると、OVD画像である星型が観察する角度に応じて輝度が変化し、光反射層(8)が磁気ストライプ部(3A)の全面ではなく部分的に形成されており、例えば、星型の形状をしたマイクロ図形を観察することができた。また印字消去機によって書かれた文字も全て読み取ることができ、更には、磁気リーダライターにて磁気情報の読み書きができた。
【0124】
よって、本発明の磁気転写シート及び磁気記録媒体は、部分的に光反射層が形成された偽造防止効果が更に高まったOVDと、可視情報を記録する感熱記録層とを兼ね備えたものであることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明に係る磁気転写シートの層構成の1実施例を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る磁気転写シートの層構成のその他の実施例を示す側断面図である。
【図3】本発明に係る磁気記録媒体の層構成の1実施例を示す側断面図である。
【図4】本発明に係る磁気記録媒体の層構成のその他の実施例を示す側断面図である。
【図5】本発明に係る磁気記録媒体の1実施例を示す平面図である。
【図6】本発明に係る磁気記録媒体のその他の実施例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0126】
1・・・磁気転写シート
1A・・・磁気転写シート
2・・・支持体
3・・・転写層(磁気ストライプ部)
3A・・・転写層(磁気ストライプ部)
4・・・剥離保護層
5・・・OVD層
6・・・感熱記録層
7・・・OVD形成層
8・・・光反射層
9・・・磁気記録層
10・・・接着層
11・・・被転写基材
12・・・磁気記録媒体
12A・・・磁気記録媒体
13・・・耐薬品保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上の片面に少なくとも磁気記録層を含む転写層を有し、この転写層を被転写基材に転写すると共に支持体を剥離除去してなる磁気記録媒体を製造する磁気転写シートであり、この転写層には支持体から転写層を剥離させ剥離後には、転写層を保護する剥離保護層と、温度によって透明度が可逆的に変化する書き換え可能な感熱記録層と、観察する角度に応じて異なる色彩や画像パターンを見ることができるホログラム等の回折格子や多層薄膜である光学多層干渉膜、またはコレステリック液晶の層等が形成されてなるOVD形成層、及び、前記OVD形成層への入射光を反射する光反射層とからなるOVD層とを有しており、支持体側から見て、剥離保護層、感熱記録層、OVD形成層、光反射層、磁気記録層、接着層の順に積層したことを特徴とする磁気転写シート。
【請求項2】
前記光反射層が金属単体及びその酸化物や窒化物からなり、厚さが1nm〜50nmの薄膜で形成されたことを特徴とする請求項1記載の磁気転写シート。
【請求項3】
前記光反射層がOVD形成層と屈折率が異なる透明な無機化合物の薄膜で形成されたことを特徴とする請求項1記載の磁気転写シート。
【請求項4】
前記光反射層と磁気記録層との間にあって、光反射層に重ねて耐薬品保護層を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の磁気転写シート。
【請求項5】
前記光反射層が磁気記録可能な金属薄膜から構成された金属反射層からなり、支持体側から見て、剥離保護層、感熱記録層、OVD形成層、金属反射層、接着層の順に積層したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の磁気転写シート。
【請求項6】
前記光反射層もしくは金属反射層が磁気転写シートの全体ではなく、部分的に設けられたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の磁気転写シート。
【請求項7】
転写後に観察可能な位置に印刷層を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の磁気転写シート。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載の磁気転写シートを、紙やフィルム、カード等に転写したことを特徴とする磁気記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−73006(P2009−73006A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243679(P2007−243679)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】