説明

磁気転写フィルム

【課題】封筒や葉書などの被転写基材上に表示された磁気情報を隠蔽できる磁気転写フィルムを提供する。
【解決手段】可撓性フィルム11上に、剥離層12と、被転写基材K上に熱転写される磁気情報を隠蔽する隠蔽層13と、磁気情報を被転写基材K上に熱転写する磁性体層14と、被転写基材K上に接着される粘着層15とを順次積層したことを特徴とする磁気転写フィルム10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気情報を被転写基材上に熱転写するための磁性体層と、この磁性体層によって熱転写された磁気情報を隠蔽する隠蔽層とを少なくとも可撓性フィルム上に有する磁気転写フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、封筒や葉書などの郵便物には、受取人の属性に合わせた個人情報として宛先情報や通知情報などが磁気情報の形態で表示されている場合がある。
【0003】
この場合の一例として、証券会社などから送られる封筒の表面には、受取人の属性に合わせて黒色の磁気文字列による磁気情報が印刷されており、この磁気文字列による磁気情報は文字画像として目視で読み取ることができると共に、磁気ヘッドにより電気的に読み取り可能になっている。
【0004】
また、他例として、封筒や葉書などに表示された磁気情報がコード化されている場合には、磁気情報が印刷されていることは目視できるが、磁気情報の内容は目視では読み取り不能になっている。
【0005】
この際、被転写基材となる封筒や葉書などの郵便物上に磁気情報を熱転写するための熱転写磁気記録媒体が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に開示された従来の熱転写磁気記録媒体では、支持体上に、Tg(ガラス転移温度)が90〜170°Cである樹脂と融点が90〜150°Cであるワックス粒子が含まれる耐熱透明層と、磁性体顔料とバインダーからなる熱転写性磁気インク層とがこの順で積層されている。
【0007】
そして、この熱転写磁気記録媒体の支持体の裏面をサーマルヘッドにより加熱し、加熱した部分の熱転写性磁気インク層のインクが被転写基材上に熱転写されることで、熱転写化に伴う印字の耐熱性などの向上を図りながら、被転写基材上に磁気情報が表示(印刷)できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−6656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図5に示した如く、特許文献1に開示された従来の熱転写磁気記録媒体を用いてサーマルヘッドにより封筒や葉書などの被転写基材K上に熱転写性磁気インク層のインクを熱転写して磁気情報MJを表示できるが、被転写基材K上に露出表示された磁気情報MJが前述したような磁気文字列を用いた場合に、磁気情報MJが表示されている黒色部位は被転写基材Kの周囲に対して色が異なるためにデザイン的に見苦しいものである。
【0010】
また、被転写基材K上に表示された磁気情報MJがコード化されている場合に、磁気情報MJが印刷されているということを目視できてしまうために、心無い人間が故意に被転写基材K上に表示された磁気情報MJを不図示の磁気インク文字読出装置を介して不正に読み出すことが可能になるので、磁気情報MJに関する個人情報の秘密漏洩が問題となると共に、この場合でも被転写基材K上に表示された磁気情報MJはデザイン的に見苦しいものである。
【0011】
そこで、磁気転写フィルムを用いてサーマルヘッドにより封筒や葉書などの被転写基材上に磁気情報を熱転写する際に、被転写基材に表示された磁気情報を隠蔽でき、且つ、磁気情報を隠蔽した時にこの隠蔽箇所に対して装飾性を併せ持たせることができる磁気転写フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、可撓性フィルム上に、剥離層と、被転写基材上に熱転写される磁気情報を隠蔽する隠蔽層と、前記磁気情報を前記被転写基材上に熱転写する磁性体層と、前記被転写基材上に接着される粘着層とを順次積層したことを特徴とする磁気転写フィルムである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の磁気転写フィルムにおいて、
前記隠蔽層は印刷可能な不透明材料を用いたことを特徴とする磁気転写フィルムである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の磁気転写フィルムによると、この磁気転写フィルムを用いて封筒や葉書などの被転写基材上に磁気文字列による磁気情報を表示した際に、磁気情報が隠蔽層によって隠蔽されるので、隠蔽された部位に磁気情報が熱転写されていることを目視できなくなるために、デザイン的な見苦しさが生じない。
【0015】
また、被転写基材上に表示された磁気情報がコード化されている場合には、磁気情報が隠蔽層によって隠蔽されることにより、磁気情報に関する個人情報の秘密漏洩を防止できると共に、隠蔽された磁気情報は目視できないのでデザイン的な見苦しさが生じない。
【0016】
また、請求項2記載の磁気転写フィルムによると、隠蔽層上に適宜な図柄を白黒印刷又はカラー印刷できるので、隠蔽層に装飾性を併せ持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a),(b)は本発明に係る磁気転写フィルムを示した構成図,外観斜視図である。
【図2】本発明に係る磁気転写フィルムを用いてサーマルヘッドにより封筒や葉書などの被転写基材上に磁気情報を熱転写する状態を説明するための図である。
【図3】本発明に係る磁気転写フィルムを熱転写された後の被転写基材を示した構成図である。
【図4】本発明に係る磁気転写フィルムを熱転写された後の被転写基材において、磁気情報を不透明な隠蔽層で隠蔽した状態を示した図である。
【図5】従来の熱転写磁気記録媒体を用いてサーマルヘッドにより封筒や葉書などの被転写基材上に熱転写性磁気インク層のインクを熱転写した後に、磁気情報が露出表示された状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明に係る磁気転写フィルムの一実施例について図1〜図4を参照して詳細に説明する。
【0019】
本発明に係る磁気転写フィルムは、封筒や葉書などの被転写基材上に磁気情報を例えばサーマルヘッドにより熱転写する際に、被転写基材に表示された磁気情報の部位に対して装飾性を併せ持たせて遮蔽できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
この際、本発明に係る磁気転写フィルムを用いて被転写基材上に表示される磁気情報は、前述したように磁気文字列を用いて文字画像として目視により読み取り可能で且つ磁気ヘッドにより電気的に読み取り可能である一例の形態と、コード化されて磁気ヘッドのみにより電気的に読み取り可能である他例の形態のいずれでも良いものである。
【0021】
尚、被転写基材上に表示された磁気文字列による磁気情報は、例えば、JIS X 9002−1980 磁気インキ文字読取用字体及び印字仕様(E13B)などによって規格が定められているので、この磁気情報(磁気文字列)を電気的に読み出す場合には磁気インク文字読出装置(MICR:Magnetic Ink Character Recognition)内に設けた磁気ヘッドを用いれば良いものである
【実施例】
【0022】
図1(a)に示した如く、本発明に係る磁気転写フィルム10では、可撓性フィルム11の一方の面11a上に、剥離層12と、被転写基材K上に熱転写される磁気情報MJ(図4)を隠蔽する隠蔽層13と、磁気情報MJを例えばサーマルヘッド32の加熱により被転写基材K上に熱転写する磁性体層14と、被転写基材K上に接着される粘着層15とがこの順で積層されている。
【0023】
この際、可撓性フィルム11の一方の面11aとは反対側の他方の面11b側が後述するようにサーマルヘッド32を当接させる側となっており、且つ、粘着層15側が封筒や葉書などの被転写基材K上に接着される側になっている。
【0024】
尚、サーマルヘッド32を用いずに不図示の熱プレスなどにより磁気転写フィルム10を被転写基材K上に熱転写する方法も可能であり、この場合には熱転写後に不図示の磁気ヘッドにより磁性体層14を磁化する方法である。
【0025】
そして、図1(b)に示した如く、上記構成による磁気転写フィルム10は、長尺且つ帯状に形成された後に、供給リール16に巻回された状態でユーザに提供されている。
【0026】
ここで、本発明に係る磁気転写フィルム10の各構成部材について順を追って説明する。
【0027】
まず、磁気転写フィルム10の基台となる可撓性フィルム11は、PP(ポリプロピレン)や、PET(ポリエチレンテレフタノール)とか、PE(ポリエステル)などの樹脂フィルム材を用いている。この際、樹脂フィルム材は、後述する被転写基材Kへの熱転写時にサーマルヘッド32が当接しても破損しない厚みに設定されており、例えば、厚みが10〜50μm、幅が6mm程度で長尺且つ帯状に裁断されているが、樹脂フィルム材の幅は被転写基材K上に熱転写する磁気情報MJの面積に応じて適宜設定すれば良いものである。
【0028】
次に、可撓性フィルム11上に設けられる剥離層12は、透明なバインダー樹脂を用いており、このバインダー樹脂は1種単独又は2種以上混合して使用しても良く、透明なバインダー樹脂の中でも、アクリル系樹脂が好ましい。この際、剥離層12の膜厚は0.5〜3.0μm程度に薄く膜付けされている。この剥離層12は被転写基材Kへの熱転写時に可撓性フィルム11側に残り、隠蔽層13との間で剥離されることが望ましいが、膜厚が薄いので可撓性フィルム11から離れて隠蔽層13に付着しても何らの支障も生じない。
【0029】
次に、剥離層12上に設けられる隠蔽層13は、被転写基材K上に熱転写される磁性体層14による磁気情報MJ(図4)を隠蔽するために不透明材料を用いている。
【0030】
上記した隠蔽層13の不透明材料は、隠蔽剤とバインダー樹脂とからなり、隠蔽剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛などの隠蔽性の高い顔料を用いているが、特に酸化チタンが良好である。
【0031】
この際、市販されている隠蔽剤としては、TITONESR−1、同650、同R62N、同R3L、同R7E{以上、堺化学工業(株)製}、
クロノスKR−310、同KR−380、同480{以上、チタン工業(株)製}、
タイピュアR−900、同R−602、同R−960、同R−931{以上、デュポン・ジャパン、リミテッド製}」、
TITANIXJR301、同JR805、同JR602、同JR701、同JR800{以上、テイカ(株)製}などの酸化チタンが挙げられる。
【0032】
また、隠蔽剤の使用量は、隠蔽剤組成物全体に対して30〜80重量%が好ましく、隠蔽剤以外の残りはバインダーとしてのアクリル樹脂である。
【0033】
そして、隠蔽層13は、隠蔽剤として酸化チタンなどの白色顔料を使用して膜厚を30〜50μm程度に膜付けすれば、白色隠蔽層が形成されるので、後述するように、この白色隠蔽層上に白黒印刷やカラー印刷などが可能となる。
【0034】
次に、隠蔽層13上に設けられる磁性体層14は、Baフェライトなどの磁性粉をバインダーに溶かして塗布しており、膜厚は1〜10μm程度であり、後述するようにサーマルヘッド32を加熱することで、磁性体層14により磁気情報(磁気文字列)MJが熱転写される。
【0035】
次に、磁性体層14上に設けられる粘着層15は、被転写基材Kへの熱転写時にサーマルヘッド32の加熱によって被転写基材K上に接着できるものであれば良く、ゴム系またはアクリル樹脂系の粘着剤を用いて薄く塗布している。
【0036】
ここで、上記のように構成した本発明に係る磁気転写フィルム10を用いて、封筒や葉書などの被転写基材K上に磁気情報MJを熱転写する動作について、先に用いた図1と、新たな図2〜図4とを用いて説明する。
【0037】
図2に示した如く、ユーザは、封筒や葉書などの郵便物に宛先情報や通知情報などに表示するために、宛先情報や通知情報などに対応して磁気文字列による磁気情報MJをパソコン20により作成する。
【0038】
この後、パソコン20で作成した磁気情報(磁気文字列)MJを、熱転写印刷装置30内に設けたヘッド駆動回路31に供給して、このヘッド駆動回路31でサーマルヘッド32内に設けた複数の発熱素子(図示せず)に適したヘッド駆動信号31aを生成し、このヘッド駆動信号31aをサーマルヘッド32内に設けた複数の発熱素子に選択的に印加している。
【0039】
一方、熱転写印刷装置30内には、サーマルヘッド32と対向してプラテンローラ33がプラテン駆動モータ34により時計方向に回転自在に設けられていると共に、第1,第2搬送ローラ対35,36によって封筒や葉書などの被転写基材Kがサーマルヘッド32とプラテンローラ33との間に送り込まれて、右方に向かって搬送されている。
【0040】
また、供給リール16に巻回された磁気転写フィルム10は、粘着層15側を被転写基材Kに向け、且つ、可撓性フィルム11の他方の面11b側をサーマルヘッド32に向けて、サーマルヘッド32とプラテンローラ33との間で被転写基材K上に重ね合わされた後に巻取リール17に巻き取られている。
【0041】
この状態でサーマルヘッド32を、磁気転写フィルム10と被転写基材Kとを重ね合わせてプラテンローラ33側に不図示の押圧手段を介して押圧しながら被転写基材Kをプラテンローラ33の回転に伴って右方に搬送させ、且つ、ヘッド駆動回路31からのヘッド駆動信号31aに応じてサーマルヘッド32内に設けた複数の発熱素子を選択的に加熱することで、被転写基材K上に磁性体層14によって磁気情報(磁気文字列)MJが熱転写される。
【0042】
そして、図3に拡大して示した如く、熱転写された後の被転写基材K上には、粘着層15と、磁性体層14と、不透明な隠蔽層13とがこの順で積層される。
【0043】
尚、図3は、図1に示した熱転写前の磁気転写フィルム10と比較して熱転写後の状態を模式的に示したものであり、実際にはサーマルヘッド32内に設けた複数の発熱素子により印刷されたドット状の磁気文字に応じて各層13〜15が積層されているものである。
【0044】
尚また、剥離層12は可撓性フィルム11(図1)側に残されて巻取リール17(図2)に巻き取られるか、又は、隠蔽層13側に付着されるので剥離層12の図示を省略しているが、いずれの場合でも剥離層12の膜厚は薄いので何等の影響も生じない。
【0045】
更に、図4に示した如く、本発明に係る磁気転写フィルム10(図1)を用いて封筒や葉書などの被転写基材K上に磁気文字列による磁気情報MJを表示した際に、磁気情報MJが不透明な隠蔽層13によって隠蔽されるので、隠蔽された部位に磁気情報MJが熱転写されていることを目視できなくなるために、デザイン的な見苦しさが生じない。
【0046】
また、被転写基材K上に表示された磁気情報MJがコード化されている場合には、磁気情報MJが隠蔽層13によって隠蔽されることにより、磁気情報MJに関する個人情報の秘密漏洩を防止できると共に、隠蔽された磁気情報MJは目視できないのでデザイン的な見苦しさが生じない。
【0047】
更に、印刷可能な隠蔽層13の一例として、例えば酸化チタンなどの白色顔料を用いて白色隠蔽層とすれば、この白色隠蔽層上に適宜な図柄を白黒印刷又はカラー印刷できるので、白色隠蔽層に装飾性を併せ持たせることができる。この際、白色隠蔽層上に図柄を印刷する場合には、周知のインクジェット印刷装置や、レーザー印刷装置とか、熱転写印刷装置などを適用して白黒印刷又はカラー印刷すれば、デザイン的な効果が顕著に得られる。
【符号の説明】
【0048】
10…磁気転写フィルム、
11…可撓性フィルム、11a…一方の面、11b…他方の面、
12…剥離層、13…隠蔽層、14…磁性体層、15…粘着層、
16…供給リール、17…巻取リール、
20…パソコン、
30…熱転写印刷装置、31…ヘッド駆動回路、32…サーマルヘッド、
33…プラテンローラ、34…プラテン駆動モータ
35…第1の搬送ローラ対、36…第2の搬送ローラ対、
K…被転写基材、MG…磁気情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性フィルム上に、剥離層と、被転写基材上に熱転写される磁気情報を隠蔽する隠蔽層と、前記磁気情報を前記被転写基材上に熱転写する磁性体層と、前記被転写基材上に接着される粘着層とを順次積層したことを特徴とする磁気転写フィルム。
【請求項2】
前記隠蔽層は印刷可能な不透明材料を用いたことを特徴とする請求項1に記載の磁気転写フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−48781(P2012−48781A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189256(P2010−189256)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】