説明

磁気転写用マスターおよびその製造方法並びにそれを用いた磁気転写方法

【課題】短ビット長を有する磁気信号の磁気転写においても、充分な磁気転写信号のSNRを得ることを可能とする。
【解決手段】微細な凹凸パターンPを表面に有し、上記凹凸パターンPで表現された磁気信号を垂直磁気記録媒体に磁気転写する際に用いられるマスター10であって、微細な凹凸パターンPaを表面に有するマスター基板11と、このマスター基板11の凹凸パターンPaに沿って少なくともこの凹凸パターンPaの凸部上面St上に形成された軟磁性層12と、マスター基板11の凹凸パターンPaに沿って少なくとも軟磁性層12上の上記凸部上面Stに対応する領域に形成された下地層13と、マスター基板11の凹凸パターンPaに沿って少なくとも下地層13上の上記凸部上面Stに対応する領域に形成された垂直磁化膜層24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録媒体に所定の磁気信号を一括記録する磁気転写の際に使用される、上記磁気信号に対応した凹凸パターンを表面に有するマスター、およびその製造方法並びにそれを用いた磁気転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報を高密度で記録可能な磁気記録媒体として垂直磁気記録方式の記録媒体(垂直磁気記録媒体)が知られている。この垂直磁気記録媒体の情報記録領域は、トラック幅が狭い狭トラックで構成されている。そのため、垂直磁気記録媒体では、狭いトラック幅で正確に磁気ヘッドを走査し、高いS/N比(SNR)で信号を再生するためのトラッキングサーボ技術が重要となる。このトラッキングサーボを行うためには、トラッキング用のサーボ信号、アドレス情報信号、再生クロック信号等のサーボ情報を、所定間隔で垂直磁気記録媒体に、いわゆるプリフォーマットとして記録しておく必要がある。
【0003】
垂直磁気記録媒体に、サーボ情報をプリフォーマットとして記憶する方法としては、例えば、サーボ情報に対応した凹凸形状でありかつ磁性層を含む凹凸パターンを表面に有する磁気転写用マスター(一般に、マスター担体、モールドおよびスタンパ等とも言われる。)を用いた磁気転写方法がある。この磁気転写方法は、上記凹凸パターンを垂直磁気記録媒体に向けてマスターと垂直磁気記録媒体とを密着させ、その状態で外部から磁界(転写磁界)を印加し、マスターの凹凸パターンで表現された磁気信号を垂直磁気記録媒体に転写する方法である。
【0004】
この磁気転写方法は、転写磁界が印加されると、マスターの凹凸パターンにおける凸部の磁性層に転写磁界が集中し(磁界集中)、凹凸パターンに対応した磁界の強度分布がマスターの表面近傍に発生する現象を利用している。上記凸部の上面では上記磁界集中により増強された磁界(記録磁界)が発生する。そして、この記録磁界により垂直磁気記録媒体の上記凸部の上面と密着した所定箇所のみが記録磁界と同一方向に磁化される。したがって、垂直磁気記録媒体中の記録層の磁化の向きを転写磁界の方向と反対の方向に予め揃えた後、この垂直磁気記録媒体に対して磁気転写方法を実施することにより、マスターの凹凸パターンで表現された磁気信号を垂直磁気記録媒体に記録することが可能となる。
【0005】
従来、マスターの上記磁性層の材料としては、凹凸パターンにおける凸部の上面において強い記録磁界は発生させるために、例えば特許文献1に示されるように、高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料が使用されていた。しかし、磁性層の材料として単純に高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料を使用しただけでは、転写磁界の印加時に磁性層内部に発生する大きな反磁界の影響により、その高飽和磁束密度が有効に活かされないという問題があった。このような場合、記録磁界の強度が減少してしまう。
【0006】
そこで、上記のような反磁界の問題を解決するべく、膜として形成された際に垂直磁気異方性を示す磁性材料(垂直磁気異方性材料)が磁性層の材料として有効であることが提案されている。垂直磁気異方性材料を磁性層の材料として使用した場合、反磁界の強度が減少する効果が得られる。そしてこの結果、軟磁性材料に比べ飽和磁束密度が低い傾向にある垂直磁気異方性材料を磁性層の材料として使用した場合でも、軟磁性材料に比較してより強い記録磁界を発生させることができる。
【0007】
例えば特許文献2では、垂直磁気異方性材料からなる磁性層の磁気特性の改良(主に、飽和磁界強度、飽和磁束密度、残留磁化、保磁力、異方性エネルギーの調整など)を行うことで、記録磁界の強度を増大させることが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−40544号公報
【特許文献2】特開2003−203325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで近年、ハードディスクドライブ(HDD)の記録容量の更なる増大の要請に伴い、垂直磁気記録媒体に記録される磁気信号の信号幅(ビット長)に対して要求される長さは年々減少傾向にあるため、HDDの記録密度の更なる向上が望まれている。そのような背景の中、本発明者らは、短ビット長(特に、その長さが60nm以下のビット長)を有する磁気信号の磁気転写においては、従来有効とされていた垂直磁気異方性材料からなる磁性層をマスターに適用しても、磁気転写信号(垂直磁気記録媒体に記録された磁気信号)のSNRが充分に得られない場合があることを見出した。
【0010】
そこで、短ビット長を有する磁気信号の磁気転写においても、充分な磁気転写信号のSNRを得ることを可能とする磁気転写用マスターおよび磁気転写方法の開発が望まれる。
【0011】
本発明は上記要望に応えてなされたものであり、短ビット長を有する磁気信号の磁気転写においても、充分な磁気転写信号のSNRを得ることを可能とする磁気転写用マスターおよびその製造方法並びにそれを用いた磁気転写方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記要望に応えるために、本発明に係る磁気転写用マスターは、
微細な凹凸パターンを表面に有し、上記凹凸パターンで表現された磁気信号を垂直磁気記録媒体に磁気転写する際に用いられるマスターであって、
微細な凹凸パターンを表面に有するマスター基板と、
このマスター基板の凹凸パターンに沿って少なくともこの凹凸パターンの凸部上面上に形成された、厚さが5〜50nmの軟磁性層と、
マスター基板の凹凸パターンに沿って少なくとも軟磁性層上の上記凸部上面に対応する領域に形成された、厚さが1〜20nmの下地層と、
マスター基板の凹凸パターンに沿って少なくとも下地層上の上記凸部上面に対応する領域に形成された、厚さが10〜40nmの垂直磁化膜層とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明に係る磁気転写用マスターにおいて、軟磁性層は、多結晶構造をとる材料から構成されることが好ましく、アモルファス構造をとる材料から構成されることがより好ましい。
【0014】
また、本発明に係る磁気転写用マスターを、マスター基板の表面にある凹凸パターンに沿って該凹凸パターン上に、厚さが5〜50nmの軟磁性層を成膜し、前記マスター基板の前記凹凸パターンに沿って前記軟磁性層上に、厚さが1〜20nmの下地層を成膜し、前記マスター基板の前記凹凸パターンに沿って前記下地層上に、厚さが10〜40nmの垂直磁化膜層を成膜することにより製造されたものとすることができる。
【0015】
本発明に係る第1のマスターの製造方法は、
微小な凹凸パターンを表面に有し、上記凹凸パターンで表現された磁気信号を垂直磁気記録媒体に磁気転写する際に用いられるマスターの製造方法であって、
マスター基板の表面にある凹凸パターンに沿ってこの凹凸パターン上に、厚さが5〜50nmの軟磁性層を成膜し、
マスター基板の凹凸パターンに沿って軟磁性層上に、厚さが1〜20nmの下地層を成膜し、
マスター基板の凹凸パターンに沿って下地層上に、厚さが10〜40nmの垂直磁化膜層を成膜することを特徴とするものである。
【0016】
一方、本発明に係る第2のマスターの製造方法は、
微小な凹凸パターンを表面に有し、上記凹凸パターンで表現された磁気信号を垂直磁気記録媒体に磁気転写する際に用いられるマスターの製造方法であって、
平坦な表面を有するマスター基板のその表面上に、マスター基板側から順次、厚さが5〜50nmの軟磁性層、厚さが1〜20nmの下地層および厚さが10〜40nmの垂直磁化膜層を含むマスター磁性層を成膜し、
上記凹凸パターンに対応したレジストパターンのレジスト膜をマスター磁性層上に形成し、
レジスト膜をマスクとして、マスター基板がエッチングされるまでエッチング処理を行い、
その後、レジスト膜を除去することを特徴とするものである。
【0017】
そして、本発明に係る第1および第2のマスターの製造方法において、軟磁性層を、アモルファス構造をとる材料を用いて成膜することが好ましい。
【0018】
本発明に係る磁気転写方法は、
上記に記載の磁気転写用のマスターの凹凸パターンを、垂直磁気記録方式のスレーブ媒体の磁気転写面であって予め磁化の向きが一方向に初期化された磁気転写面に向けながら、マスターおよびスレーブ媒体を近接配置し、
上記一方向と逆の方向に外部磁界を印加することにより、上記凹凸パターンで表現された磁気信号を磁気転写面に磁気転写することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る磁気転写用マスターは、微細な凹凸パターンを表面に有するマスター基板と、このマスター基板の凹凸パターンに沿って少なくともこの凹凸パターンの凸部上面上に形成された、厚さが5〜50nmの軟磁性層と、マスター基板の凹凸パターンに沿って少なくとも軟磁性層上の上記凸部上面に対応する領域に形成された、厚さが1〜20nmの下地層と、マスター基板の凹凸パターンに沿って少なくとも下地層上の上記凸部上面に対応する領域に形成された、厚さが10〜40nmの垂直磁化膜層とを備えることを特徴とするものである。このような構成の本発明においては、転写磁界の印加時に、垂直磁化膜層の下部に発生した磁極と異なる磁極が軟磁性層の上部に発生することとなる。これにより、垂直磁化膜層の下部に発生した磁極と軟磁性層の上部に発生した磁極とが相殺し合うため、凹凸パターンの凸部内部に発生する反磁界を低減することができる。つまり、転写磁界の印加時に、上記凸部の上面に発生する記録磁界の実効的な強度を増大することが可能となる。その結果、短ビット長を有する磁気信号の磁気転写においても、充分な磁気転写信号のSNRを得ることが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る第1のマスターの製造方法は、マスター基板の表面にある凹凸パターンに沿ってこの凹凸パターン上に、厚さが5〜50nmの軟磁性層を成膜し、マスター基板の凹凸パターンに沿って軟磁性層上に、厚さが1〜20nmの下地層を成膜し、マスター基板の凹凸パターンに沿って下地層上に、厚さが10〜40nmの垂直磁化膜層を成膜するものであるから、本発明のマスターを製造することができる。その結果、本発明のマスターを用いた磁気転写方法を実施することにより、短ビット長を有する磁気信号の磁気転写においても、充分な磁気転写信号のSNRを得ることが可能となる。
【0021】
また、本発明に係る第2のマスターの製造方法は、平坦な表面を有するマスター基板のその表面上に、マスター基板側から順次、厚さが5〜50nmの軟磁性層、厚さが1〜20nmの下地層および厚さが10〜40nmの垂直磁化膜層を含むマスター磁性層を成膜し、上記凹凸パターンに対応したレジストパターンのレジスト膜をマスター磁性層上に形成し、レジスト膜をマスクとして、マスター基板がエッチングされるまでエッチング処理を行い、その後、レジスト膜を除去するものであるから、本発明のマスターを製造することができる。その結果、本発明のマスターを用いた磁気転写方法を実施することにより、短ビット長を有する磁気信号の磁気転写においても、充分な磁気転写信号のSNRを得ることが可能となる。
【0022】
また、本発明に係る磁気転写方法は、上記に記載の磁気転写用のマスターの凹凸パターンを、磁気記録用のスレーブ媒体の磁気転写面であって予め磁気の向きが一方向に初期化された垂直異方性を有する磁気転写面に向けながら、マスターおよびスレーブ媒体を近接配置し、上記一方向と逆の方向に外部磁界を印加することにより、上記凹凸パターンのパターン情報を磁気転写面に磁気転写するものであるから、本発明のマスターにおける硬化と同様に、短ビット長を有する磁気信号の磁気転写においても、充分な磁気転写信号のSNRを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態のマスターの構造を示す概略断面図である。
【図2】第1の実施形態のマスターの製造方法の工程を示す概略断面図である。
【図3】従来技術のマスターにおける転写磁界を印加したときの記録磁界および反磁界の発生の様子を示す概略断面図である。
【図4】第1の実施形態のマスターにおける転写磁界を印加したときの磁極の発生の様子を示す概略断面図である。
【図5】第1の実施形態のマスターにおける転写磁界を印加したときの記録磁界および反磁界の発生の様子を示す概略断面図である。
【図6】下地層が厚いマスターにおける転写磁界を印加したときの磁極の発生の様子を示す概略断面図である。
【図7】従来技術の垂直磁気記録媒体の構造を示す概略断面図である。
【図8】従来技術の垂直磁気記録媒体に磁気信号の書き込みを行う様子を示す概略断面図である。
【図9】第2の実施形態のマスターの構造を示す概略断面図である。
【図10】第2の実施形態のマスターの製造方法の工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0025】
「第1の実施形態の磁気転写用マスターおよびその製造方法」
まず、第1の実施形態の磁気転写用マスター10およびその製造方法について説明する。図1は、第1の実施形態のマスター10の構造を示す概略断面図である。また、図2は、第1の実施形態のマスター10の製造方法の工程を示す概略断面図である。
【0026】
第1の実施形態のマスター10は、図1に示されるように、微細な凹凸パターンPを表面に有し、上記凹凸パターンPで表現された磁気信号を垂直磁気記録媒体に磁気転写する際に用いられるマスター10であって、微細な凹凸パターンPaを表面に有するマスター基板11と、このマスター基板11の凹凸パターンPaに沿ってこの凹凸パターンPa上に形成された軟磁性層12と、マスター基板11の凹凸パターンPaに沿って軟磁性層12上に形成された下地層13と、マスター基板11の凹凸パターンPaに沿って下地層13上に形成された垂直磁化膜層14と、マスター基板11の凹凸パターンPaに沿って垂直磁化膜層14上に形成された保護層15とを備えるものである。なお、マスター基板11上の積層体全体(本実施形態においては、軟磁性層12、下地層13、垂直磁化膜層14および保護層15の積層体)をマスター磁性層16と称する。
【0027】
そして、マスター10の表面には微細な凹凸パターンPが形成されている。微細な凹凸パターンPの凸部は、平面視で例えば長方形であり、トラック方向(ディスクの円周方向であり、図1のT方向)の長さAと、トラック幅方向(ディスクの半径方向)の長さL、並びに凸部の高さH(凹部の深さ)の値は、記録密度や記録信号波形等により適宜設計される。例えば、長さAが80nmに、長さLが200nmに設定される。ハードディスク装置に用いられる磁気ディスクのサーボ信号の場合、この微細な凹凸パターンPは、トラック方向の長さAに比べてトラック幅方向の長さLの方が長く形成される。例えば、トラック幅方向の長さLが0.05〜20μm、トラック方向の長さAが0.05〜5μmであることが好ましい。この範囲でトラック幅方向の方が長いパターンを選ぶことが、サーボ信号の情報を担持するパターンとしては好ましい。凸部の高さHは、20〜800nmの範囲が好ましく、30〜600nmの範囲がより好ましい。なお、凹凸パターンPは、上記の例に限定されるものではなく、例えば前述した平面視で長方形の凸部を基本単位として、複数の凸部が頂点で結合したり一部の辺を共有したりした形状となる場合もある。
【0028】
また、第1の実施形態のマスター10の製造方法は、マスター基板11の表面にある凹凸パターンPaに沿ってこの凹凸パターンPa上に軟磁性層12を成膜し(図2aおよび図2b)、マスター基板11の凹凸パターンPaに沿って軟磁性層12上に下地層13を成膜し(図2c)、マスター基板11の凹凸パターンPaに沿って下地層13上に垂直磁化膜層14を成膜し(図2d)、マスター基板11の凹凸パターンPaに沿って垂直磁化膜層14上に保護層15を成膜する(図2e)ものである。
【0029】
上記製造方法によれば、凹凸パターンPa上の全体にわたって層が形成される。したがって、軟磁性層12、下地層13、垂直磁化膜層14および保護層15は、凹凸パターンの凸部上面のみならず、その側面上や凹部の底面Sb上にも成膜される。本明細書において、「凹凸パターンPaに沿って」層を形成(成膜)するとは、当該層が形成(成膜)される凹凸パターンの凹部を完全に埋めない程度に薄く当該層を形成(成膜)することを意味する。
【0030】
(マスター基板)
マスター基板11の材料は、例えばシリコン、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、タンタルおよびタングステン等の金属材料、並びにそれらの酸化物、窒化物および炭化物とすることができる。具体的には、マスター基板11の材料としては、酸化シリコン、酸化アルミニウム、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラスおよびソーダガラス等を挙げることができる。また、マスター基板11は、ポリカーボネート等の合成樹脂から構成されてもよい。マスター基板11の凹凸パターンPaの形状は、特に限定されず、マスター10の所望の凹凸パターンPが得られるように、凹凸パターンPaの上に形成される積層構造が考慮されながら適宜決定される。マスター基板11の全体形状は、特に限定されず、例えばHDDのサーボ情報の磁気転写に使用される場合にはディスク状である。マスター基板11は、例えば、平板にエッチングを施して凹凸パターンPaを形成する方法や、凹凸パターンPaに相補的な凹凸パターンを有する原盤を用いて電鋳により複版を形成する方法等により、製造することができる。
【0031】
(軟磁性層)
軟磁性層12は、後述するようにマスター10の凹凸パターンPの凸部に発生する反磁界を低減する機能を果たす。軟磁性層12は、軟磁性材料から構成される。そして、軟磁性層12は高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料から構成されることが好ましく、Fe、Ni、Co、Bを含む軟磁性材料から構成されることが好ましい。このような材料として具体的には、例えば、CoFe系合金(CoFeTaZr、CoFeZrNb等)、CoZr系合金(CoZr、CoZrNb、CoZrTa、CoZrCr、CoZrMo等)、FeCo系合金(FeCo、FeCoV等)、FeNi系合金(FeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSi等)、FeCoNi系合金、FePt系合金(FeCoPt等)、FeAl系合金(FeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlO等)、FeCr系合金(FeCr、FeCrTi、FeCrCu等)、FeTa系合金(FeTa、FeTaC、FeTaN等)、FeMg系合金(FeMgO等)、FeZr系合金(FeZrN等)、FeC系合金、FeN系合金、FeSi系合金、FeP系合金、FeNb系合金、FeHf系合金およびFeB系合金等を挙げることができる。本明細書において、例えば「FeCo系合金」とは、FeCoを主成分とする合金を意味し、他の合金についても同様である。また「主成分」とは、重量比で50%以上の成分を意味する。
【0032】
特に軟磁性層12は、多結晶構造をとる材料から構成されることが好ましく、アモルファス構造をとる材料から構成されることがより好ましい。アモルファス構造をとる材料として具体的には、例えば上記の軟磁性材料にアモルファス構造を促進させるAl、Mg、Ti、CrおよびB等の添加物を添加させたものを挙げることができる。さらに、アモルファス構造をとる軟磁性材料としてはFeCoB系合金から構成されることが特に好ましい。軟磁性層12が多結晶構造またはアモルファス構造を取る場合には、軟磁性層12が垂直磁化膜層14を形成するための下地層としての機能も有することになる。その結果、下地層13の厚さを少なくすることができて、反磁界を低減するという軟磁性層12の本来の機能をより有効に発揮させることができるようになる。
【0033】
軟磁性層12の飽和磁束密度は1.8T以上であることが好ましく、2.0T以上であることがより好ましい。軟磁性層12の飽和磁束密度が高いほど、転写磁界の印加時における垂直磁化膜層14に発生する磁極の強度を減じる効果が強くなるためである。そして、軟磁性層12の飽和磁束密度は、垂直磁化膜層14の飽和磁束密度よりも高いことが好ましい。
【0034】
軟磁性層12の厚さは5〜50nmであることが好ましく、20〜40nmであることがより好ましい。本明細書において「厚さ」とは平均膜厚を意味する。上記下限の理由は、軟磁性層12の厚さが5nmより小さい場合、垂直磁化膜層14に誘起される磁極の強度を相殺する効果が小さく、結果として実効的な記録磁界の強度が増大しないためである。一方、上記上限の理由は、軟磁性層12の厚さが50nmより大きい場合、マスター磁性層16がマスター基板11上に成膜された後の凹凸パターンPの凸部の形状が丸みを帯びるようになる(ラウンド化してしまう)ためである。このような状態は、当該凸部に発生する記録磁界の強度が減少したり磁気転写の際にマスターと垂直磁気記録媒体との密着が取り辛くなったりするため好ましくない。
【0035】
軟磁性層12の成膜は、真空蒸着、PVD(Physical Vapor Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング、イオンプレーティングおよび無電解メッキ等の金属成膜法により実施することができる。
【0036】
(下地層)
下地層13は、垂直磁化膜層14の垂直配向性、磁気異方性エネルギー(Ku)、飽和磁化(Ms)および核生成磁界(Hn)を調整するため、垂直磁化膜層14の下に形成されるものである。この下地層13の存在により、垂直磁化膜層14中の膜の結晶成長を調整でき、垂直磁化膜層14に垂直磁気異方性を付与することができる。
【0037】
下地層13の材料としては、Pt、Ru、Pd、Co、Ni、W、Al、P、Si、Ti、Ta、W、Cr、Mgのうち、少なくとも1つを含む金属もしくは合金、またはこれらの酸化物もしくは窒化物等の化合物を用いることができる。また、下地層13の材料としては、PtおよびRuのうち少なくとも1つを含む金属もしくは合金を用いることが特に好ましい。下地層13は、単層でもよく、多層でもよい。
【0038】
下地層13の厚さは一般的には5〜20nmであることが好ましく、10〜15nmであることがより好ましい。ただし、軟磁性層12がアモルファス構造を取る場合には、下地層13の厚さを1〜20nmとすることができる。これは、軟磁性層12がアモルファス構造を取る場合には、軟磁性層12が垂直磁化膜層14を形成するための下地層としての機能も有することになるため、下地層13の厚さが少々薄くても垂直磁化膜層14の垂直配向性等を調整することが可能なためである。上記下限の理由は、下地層13の厚さが5nm(軟磁性層12がアモルファス構造を取る場合には1nm)よりも小さい場合、下地層13上に設ける垂直磁化膜層14の垂直磁気異方性が得られにくくなるためである。一方、上記上限の理由は、下地層13の厚さが20nmよりも大きい場合、垂直磁化膜層14中に誘起される磁極と軟磁性層12中に誘起される磁極の間の距離が離れるため、垂直磁化膜層14に誘起される磁極の強度を相殺するという軟磁性層12の効果が小さくなり、結果として記録磁界の強度が増大しないためである。
【0039】
下地層13の成膜は、真空蒸着、PVD(Physical Vapor Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング、イオンプレーティングおよび無電解メッキ等の金属成膜法により実施することができる。
【0040】
(垂直磁化膜層)
垂直磁化膜層14は、記録磁界を実質的に発生させるものである。
【0041】
垂直磁化膜層14は、垂直磁気異方性材料から構成される。具体的には、垂直磁化膜層14は、Fe、Co、Niのうち少なくとも1つの強磁性金属と、Cr、Pt、Ru、Pd、Si、Ti、B、Ta、Oのうち少なくとも1つの非磁性物質とから構成される合金または化合物から構成される。特に、垂直磁化膜層14の材料としては、飽和磁束密度等の観点から、CoおよびPtから構成されるCoPt系合金が好ましい。
【0042】
垂直磁化膜層14の飽和磁束密度は、1.2T以上であることが好ましく、1.5T以上であることがより好ましい。垂直磁気異方性が得られる範囲であれば、垂直磁化膜層14の飽和磁束密度が高いほど、転写磁界の印加時に発生する記録磁界の強度が高くなるためである。
【0043】
垂直磁化膜層14の厚さは、10〜40nmであることが好ましく、15〜30nmであることがより好ましい。上記下限の理由は、垂直磁化膜層14の厚さが10nmより小さい場合、凹凸パターンに応じた磁界集中が生じづらくなり、その結果として充分な記録磁界強度が得られないためである。一方、上記上限の理由は、垂直磁化膜層14の厚さが40nmより大きい場合、マスター磁性層16がマスター基板11上に成膜された後の凹凸パターンPの凸部の形状が丸みを帯びるようになる(ラウンド化してしまう)ためである。
【0044】
垂直磁化膜層14の成膜は、真空蒸着、PVD(Physical Vapor Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング、イオンプレーティングおよび無電解メッキ等の金属成膜法により実施することができる。
【0045】
(保護層)
保護層15は、マスター10の表面を保護し、機械的耐久性、摩擦特性および耐候性を改善するためのものである。この保護層15の材料としては、硬質な炭素膜が好ましい。具体的には保護層15の材料としては、スパッタリングにより形成した無機カーボン、ダイヤモンドライクカーボン、Pt、SiO、ZrO等を用いることができる。保護層15の厚さは1〜10nmであることが好ましい。
【0046】
保護層15の成膜は、真空蒸着、PVD(Physical Vapor Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング、イオンプレーティングおよび無電解メッキ等の金属成膜法により実施することができる。
【0047】
その他、この保護層15上には、更に、潤滑剤からなる層(潤滑剤層)を形成してもよい。潤滑剤層を設けた場合には、磁気転写におけるマスターと垂直磁気記録媒体との接触の際に生じる摩擦により、マスター10に傷が発生すること等を防止することができる。この種の潤滑剤としては、パーフルオロポリエーテル(PFPE)等のフッ素系樹脂を用いることができる。
【0048】
(作用効果)
以下、図3から図5を用いて本発明の作用効果を説明する。図3は、従来技術のマスターにおける転写磁界を印加したときの記録磁界および反磁界の発生の様子を示す概略断面図である。図4は、第1の実施形態のマスターにおける転写磁界を印加したときの磁極の発生の様子を示す概略断面図である。図5は、第1の実施形態のマスターにおける転写磁界を印加したときの記録磁界および反磁界の発生の様子を示す概略断面図である。
【0049】
例えば特許文献2に示されるように、従来のマスター50は、図3に示されるように、微細な凹凸パターンを表面に有し、上記凹凸パターンで表現された磁気信号を垂直磁気記録媒体に磁気転写する際に用いられるマスターであって、微細な凹凸パターンを表面に有するマスター基板51と、このマスター基板51の凹凸パターンに沿ってこの凹凸パターン上に形成された下地層53と、マスター基板51の凹凸パターンに沿って下地層53上に形成された垂直磁化膜層54と、マスター基板51の凹凸パターンに沿って垂直磁化膜層54上に形成された保護層55とを備えるものである。つまり、従来のマスター50は、軟磁性層がマスター基板51および下地層13の間に挿入されていない点で本発明のマスターと異なる。このマスター50では、マスター50に垂直磁化膜層54を設けることにより、転写磁界MF1を印加した時に垂直磁化膜層54中に発生する反磁界MF3を減少させ、凹凸パターンの凸部近傍に発生する記録磁界MF2の実効的な強度を増大させていた。なお、反磁界MF3は、垂直磁化膜層中に発生するものであるが、図では便宜上マスターの外部の矢印で表示している。
【0050】
しかしながら、マスター50に設ける垂直磁化膜層54は20nm前後の薄膜であるため、依然反磁界MF3は一定の強度を有している。その結果、従来のマスター50のような構造では、記録磁界MF2の実効的な強度が減少するという問題がある。具体的には、転写磁界MF1の印加時には、例えば図3に示されるように、垂直磁化膜層54の上端にプラスの磁極MP5(S極またはN極)が、下端にマイナスの磁極MP5(S極またはN極のうちプラスの磁極とは反対の磁極)が誘起される。その結果、記録磁界MF2が垂直磁化膜層54の凸部付近に発生しているが、同時に上記プラスの磁極MP5およびマイナスの磁極MP5の間には反磁界MF3も発生している。この反磁界MF3の存在により記録磁界MF2の実効的な強度が減じられることとなる。そして、このような問題は、短ビット長を有する磁気信号の磁気転写においては大きく影響し、場合によっては充分な磁気転写信号のSNRを得ることができないという問題を引き起こす。
【0051】
本発明では、下地層13を挟んで垂直磁化膜層14の近傍に軟磁性層12を配している(図4)。本発明のマスター10に転写磁界MF1を印加した場合、従来どおり垂直磁化膜層14の上端にプラスの磁極MP1が、下端にマイナスの磁極MP1が誘起され、これと同時に、軟磁性層12の上端にプラスの磁極MP2が、下端にマイナスの磁極MP2が誘起される(図4)。この際、垂直磁化膜層14の下端に誘起されたマイナスの磁極MP1と軟磁性層12の上端に誘起されたプラスの磁極MP2とが、互いの磁極を相殺し合い、互いに磁極の強度を弱めあう現象が起こる。
【0052】
仮に、図5に示されるように、垂直磁化膜層14の下端に誘起されたマイナスの磁極MP1と軟磁性層12の上端に誘起されたプラスの磁極MP2とが完全に互いの磁極を相殺し合った場合を考える。このような場合、垂直磁化膜層14の上端にプラスの磁極MP1が残り、軟磁性層12の下端にマイナスの磁極MP2が残る(図5)。反磁界MF3は、磁極間の距離に反比例する性質があるため、これらの磁極間に発生する反磁界MF3の強度は、軟磁性層12がない場合に垂直磁化膜層14中に発生する反磁界MF3の強度よりも小さくなる。したがって、本発明のマスター10においては、転写磁界MF1を印加した際に発生する記録磁界MF2の実効的な強度が従来のマスター50よりも強くなり、短ビット長を有する磁気信号の磁気転写においても、充分な磁気転写信号のSNRを得ることが可能となる。
【0053】
このように、従来、マスターの開発は垂直磁化膜層自身の磁気特性向上が主な観点であり、垂直磁化膜層14の近傍に軟磁性層12を設けることで磁気転写に適した磁気特性をマスターに付与することは容易に思いつくものではでない。
【0054】
なお、上記のような反磁界MF3の強度を低減するメカニズムを考慮すると、図6に示されるように、下地層13が厚すぎると垂直磁化膜層14の下端に誘起されたマイナスの磁極MP1と軟磁性層12の上端に誘起されたプラスの磁極MP2とが互いの磁極を相殺し合うことができない。つまり、このような場合、軟磁性層12を設けたとしても反磁界MF3の強度を低減することができない。このような観点から、下地層13の厚さの上限が規定される。
【0055】
(類似の構造を有する垂直磁気記録媒体との差異)
例えば特開2004−265498号公報には、図7に示されるような基盤61、軟磁性層62、下地層63、垂直磁化膜層64および保護層65を順に備える垂直磁気記録媒体60が開示されている。この構成は垂直磁化膜層64部分への磁気記録を目的としたものであり、その目的および作用効果は、本発明のマスター10における目的および作用効果とは全く異なるものである。
【0056】
具体的には、垂直磁気記録媒体60自身は全面平坦面からなる。また、垂直磁化膜層64の下に設けられている軟磁性層62は、図8に示されるように、磁気記録ヘッド66から流出している磁気信号書込み時の発生磁界MF6を軟磁性層62に導き、磁気記録ヘッド66のシールド部分66aに磁界MF6を還流させる作用を得るために設けられている。また、垂直磁化膜層64に磁化を残存させることが垂直磁気記録媒体のそもそもの目的とし、磁気記録ヘッド66による書込み性、熱安定性等を確保するため、2000Oe(エルステッド)から6000Oeの保磁力が垂直磁化膜層64の磁気特性として付与されている。また、磁気再生ヘッドによる読み取り性を確保するため、垂直磁化膜層64の磁気特性として保磁力の角型比が0.5から1.0の間で調整されている。さらに、低ノイズ化を図りかつ熱安定性を確保する観点から、垂直磁化膜層64には磁性体を非磁性部材で分断する磁性体のグラニュラー化が施されている磁気記録媒体も見られる。
【0057】
それに対し、本発明で対象としているのは、凹凸パターンをその表面に有する磁気転写用のマスター10である。マスター10上に垂直磁化膜層14を設ける目的は、凹凸パターンに応じて磁界集中を発生させ、凸部付近に強い記録磁界を発生させることである。したがって、注目している磁気作用および磁気現象が垂直磁気記録媒体とは本質的に異なる。マスター10における垂直磁化膜層14では、低保磁力、低残留磁化の磁気特性が好ましく、この点においても、垂直磁気記録媒体60での垂直磁化膜層64とは大きく磁気特性が異なる。本発明のマスター10に設けられる軟磁性層12の役割は、前述の通り、磁気転写時に垂直磁化膜層14の内部に発生する反磁界(記録磁界の強度を減じる成分)の抑制することであり、垂直磁気記録媒体60に設けられる軟磁性層62とは本質的に働きが異なる。
【0058】
このように、垂直磁気記録媒体60に求められる軟磁性層62および垂直磁化膜層64の磁気特性と、磁気転写用のマスター10に求められる軟磁性層12および垂直磁化膜層14の磁気特性は本質的に異なる。特に、磁気転写用のマスターは、磁気転写で目標としている効率的な磁界集中を実現する観点から凹凸パターンを有しているから、平坦な積層体を成膜して成る垂直磁気記録媒体60における知見を磁気転写用のマスターに適用することは容易ではない。
【0059】
「第2の実施形態の磁気転写用マスターおよびその製造方法」
次に、第2の実施形態の磁気転写用マスター20およびその製造方法について説明する。図9は、第2の実施形態のマスター20の構造を示す概略断面図である。また、図10は、第2の実施形態のマスター20の製造方法の工程を示す概略断面図である。
【0060】
第2の実施形態のマスター20は、軟磁性層22、下地層23、垂直磁化膜層24および保護層25が凹凸パターンの凸部上面にのみ形成されている点で、第1の実施形態のマスター10と異なる。したがって、第1の実施形態のマスター10と同様の構成要件についての詳細な説明は、特に必要がない限り省略する。
【0061】
第2の実施形態のマスター20は、図9に示されるように、微細な凹凸パターンPを表面に有し、上記凹凸パターンPで表現された磁気信号を垂直磁気記録媒体に磁気転写する際に用いられるマスター20であって、微細な凹凸パターンPaを表面に有するマスター基板21と、このマスター基板21の凹凸パターンPaの凸部上面St上にのみ形成された軟磁性層22と、マスター基板21の凹凸パターンPaの凸部上面Stに対応する軟磁性層22の領域上にのみ形成された下地層23と、マスター基板21の凹凸パターンPaの凸部上面Stに対応する下地層23の領域上にのみ形成された垂直磁化膜層24と、マスター基板21の凹凸パターンPaの凸部上面Stに対応する垂直磁化膜層24の領域上にのみ形成された保護層25とを備えるものである。なお、マスター基板21上の積層体全体(本実施形態においては、軟磁性層22、下地層23、垂直磁化膜層24および保護層25の積層体)をマスター磁性層26と称する。
【0062】
また、第2の実施形態のマスター20の製造方法は、平坦な表面を有するマスター基板21のその表面上に、マスター基板21側から順次軟磁性層22、下地層23、垂直磁化膜層24および保護層25から構成されるマスター磁性層26を成膜し(図10a)、光硬化性のレジスト70を塗布し(図10b)、上記凹凸パターンPに対応した凹凸パターンを有する石英モールド72をレジスト70が塗布されたマスター磁性層26の面に押し付け(図10c)、石英モールド72の裏面から紫外光を照射してレジスト70を硬化させ、石英モールド72をレジスト70から離型することにより、上記凹凸パターンPに対応したレジストパターンのレジスト膜70をマスター磁性層26上に形成し(図10d)、このレジスト膜70をマスクとして、マスター基板21がエッチングされるまでエッチング処理を行い、その後、レジスト膜70を除去するものである。
【0063】
上記製造方法によれば、マスター基板21の全体にわたってマスター磁性層26を形成した後、凹凸パターンPの凹部に相当する部分が除去される。したがって、軟磁性層12、下地層13、垂直磁化膜層14および保護層15は、凹凸パターンの凸部上面のみに形成される。
【0064】
(マスター基板)
マスター基板21は平坦なものが使用される。マスター基板21の材料は、第1の実施形態と同様である。
【0065】
(軟磁性層)
軟磁性層22は、その材料、飽和磁束密度および成膜方法については、第1の実施形態と同様である。
【0066】
ただし、マスター磁性層26がマスター基板21上に成膜された後の凹凸パターンPの凸部の形状のラウンド化が問題とならないため、軟磁性層22の厚さの上限が現実的な範囲内でなくなることになる。
【0067】
(下地層)
下地層23は、第1の実施形態と同様である。
【0068】
(垂直磁化膜層)
垂直磁化膜層24は、その材料、飽和磁束密度および成膜方法については、第1の実施形態と同様である。
【0069】
ただし、マスター磁性層26がマスター基板21上に成膜された後の凹凸パターンPの凸部の形状のラウンド化が問題とならないため、垂直磁化膜層24の厚さの上限が現実的な範囲内でなくなることになる。
【0070】
(保護層)
保護層25は、第1の実施形態と同様である。
【0071】
(レジストおよび露光方法)
レジストは、特に限定されず、公知のものを使用することができる。露光方法も、特に限定されず、公知の方法により実施することができる。
【0072】
(エッチング処理)
エッチング処理は、マスター基板21およびマスター磁性層26からなる構造体にたいして凹凸パターンを形成できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。したがって、エッチング処理としては、例えば、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、などが挙げられる。これらの中でも、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)が特に好ましい。マスター基板21がエッチングされかつマスター基板21が所定の深さに達したところでエッチングを終了することにより、所定の凹凸パターンPaを表面に有するマスター基板21、軟磁性層22、下地層23、垂直磁化膜層24および保護層25から構成されるマスター20が製造される。
【0073】
以上のように、本実施形態に係る磁気転写用マスターも、第1の実施形態と同様に、微細な凹凸パターンを表面に有するマスター基板と、このマスター基板の凹凸パターンに沿って少なくともこの凹凸パターンの凸部上面上に形成された軟磁性層と、マスター基板の凹凸パターンに沿って少なくとも軟磁性層上の上記凸部上面に対応する領域に形成された下地層と、マスター基板の凹凸パターンに沿って少なくとも下地層上の上記凸部上面に対応する領域に形成された垂直磁化膜層とを備えることを特徴とするものである。これにより、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0074】
また、本実施形態に係るマスターの製造方法は、平坦な表面を有するマスター基板のその表面上に、マスター基板側から順次軟磁性層、下地層および垂直磁化膜層を含むマスター磁性層を成膜し、上記凹凸パターンに対応したレジストパターンのレジスト膜をマスター磁性層上に形成し、レジスト膜をマスクとして、マスター基板がエッチングされるまでエッチング処理を行い、その後、レジスト膜を除去するものであるから、本実施形態のマスターを製造することができる。その結果、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0075】
「磁気転写方法」
次に、本発明における磁気転写方法について説明する。磁気転写方法は、少なくとも、スレーブ媒体の磁気信号が転写される面(磁気転写面)に対し、垂直の方向から直流磁界を印加してスレーブ媒体を初期磁化する初期磁化工程、初期磁化を行った後、初期磁化後のスレーブ媒体とマスター(例えば第1の実施形態に係るマスター)とを密着させる密着工程、スレーブ媒体およびマスターを密着させた後、初期磁化の際に印加される磁界とは逆向きの磁界を印加してスレーブ媒体に磁気転写する磁気転写工程の3つの工程を含む。さらに磁気転写方法は、必要に応じて、その他の工程を含んでもよい。
【0076】
(初期磁化工程)
初期磁化工程は、垂直磁気記録媒体を、垂直方向に初期磁化させる工程である。スレーブ媒体の初期磁化は、スレーブ媒体の表面に対し垂直に直流磁界を印加することができる装置により初期化磁界を発生させることにより行う。具体的には、初期化磁界としてスレーブ媒体の保磁力以上の強度の磁界を発生させることにより行う。この初期磁化工程により、スレーブ媒体の磁性層について、磁気転写面と垂直な一方向に初期磁化が発生する。この初期磁化工程は、スレーブ媒体を磁界印加手段に対し相対的に回転させることにより行ってもよい。
【0077】
(密着工程)
密着工程は、初期磁化工程後の垂直磁気記録媒体に対してマスターを密着させる工程である。例えば、マスターと初期磁化工程後のスレーブ媒体とを重ね合わせて位置合わせを行った後、両者を密着させる。この密着工程では、マスターの凹凸パターンが形成されている面と、スレーブ媒体の磁気転写面とを所定の押圧力で密着させる。
【0078】
密着工程は、スレーブ媒体の片面のみにマスターを密着させる場合と、両面に磁気転写面が形成されたスレーブ媒体について、両面からマスターを密着させる場合とがありうる。後者の場合では、両面を同時転写することができる利点がある。
【0079】
(磁気転写工程)
磁気転写工程は、垂直磁気記録媒体とマスターとを密着させた状態で、初期磁化と逆方向の転写磁界を印加し、垂直磁気記録媒体に磁気信号を転写する工程である。磁気転写工程では、密着工程によりスレーブ媒体とマスターとを密着させたものに対して、初期化磁界の向きと反対方向に転写磁界が印加される。転写磁界を発生させることにより生じた磁束がスレーブ媒体とマスターに進入することにより磁気転写が行われる。
【0080】
磁気転写は、スレーブ媒体及びマスターを密着させたものを回転させつつ、転写磁界を印加し、マスターの凹凸パターンで表現された磁気信号をスレーブ媒体の磁気転写面に転写する。
【0081】
以上のように、本発明に係る磁気転写方法は、本発明の磁気転写用のマスターの凹凸パターンを、磁気記録用のスレーブ媒体の磁気転写面であって予め磁気の向きが一方向に初期化された垂直異方性を有する磁気転写面に向けながら、マスターおよびスレーブ媒体を近接配置し、上記一方向と逆の方向に外部磁界を印加することにより、上記凹凸パターンのパターン情報を磁気転写面に磁気転写するものであるから、本発明のマスターにおける硬化と同様に、短ビット長を有する磁気信号の磁気転写においても、充分な磁気転写信号のSNRを得ることが可能となる。
【実施例】
【0082】
本発明に係るマスターモールドの製造方法の実施例を以下に示す。
【0083】
<マスター作製用Si原盤の作製>
8インチのSi基板上に、電子線レジストを、スピンコート法により、100nmの厚さで塗布した。塗布後、基板上の該レジストを、回転式電子線露光装置を用いて露光し、露光後の該レジストを現像して、凹凸パターンを有するレジストSi基板を作製した。
【0084】
その後、該レジストをマスクとして用い、該Si基板に対して反応性イオンエッチング処理を行い、凹凸パターンの凹部を掘り下げた。該エッチング処理後、該Si基板上に残存するレジストを可溶溶剤で洗浄し、除去した。除去後、該Si基板を乾燥したものを、マスターを調製するためのSi原盤とした。
【0085】
なお、本試験で用いたパターンは、大別すると、データ部と、サーボ部からなる。該データ部は、凸巾:90nm、凹巾:30nm(TP=120nm)のパターンで構成されている。該サーボ部は、基準信号長:80nm、総セクタ数:120、プリアンブル(40bit)/SAM(6bit)/Sectorcode(8bit)/CylinderCode(32bit)/Burstパターンで構成されている。該SAM部は、“001010”であり、SectorがBinary、CylinderはGray変換を用いている。Burst部は一般的な4バースト(各バーストは16bit)である。符号化方式としてはマンチェスター変換を採用した。
【0086】
<メッキ法による磁気転写用マスター基板の作製>
上記Si原盤上に、スパッタ法を用いてNi導電性膜を9nm形成した。該Ni導電性膜を形成した後のSi原盤を、スルファミン酸Ni浴に浸漬し、電解メッキにより、150μmの厚さのNi膜を形成した。その後、Si原盤よりNi膜を引き剥がし、Ni膜を洗浄して、Ni製のマスター基板を得た。
【0087】
<マスター磁性層の形成>
上記マスター基板に、アルゴン圧力0.3Pa条件下で、スパッタリング法により、軟磁性層、下地層、垂直磁化膜層、保護層の成膜を実施した。軟磁性層の材料としてはFe70Co30を使用した。下地層はTa層およびPt層をこの順に積層することにより形成した。また、垂直磁化膜層の材料としてはCo90Pt10を、保護層の材料としてはPt(一律3nmの厚さ)を使用した。そして、表1の成膜厚さに従って成膜して、比較例1から比較例13および実施例1から実施例20のマスターをそれぞれ作成した。実施例8と実施例9のマスターの作成に関しては、軟磁性層の材料としてアモルファス構造をとるFe40Co4020を用いた。このマスターは前述した第1の実施形態に対応するものである。
【0088】
<垂直磁気記録媒体の作製>
2.5インチのガラス基板上に、スパッタリング法を用いて、軟磁性層、第1非磁性配向層、第2非磁性配向層、磁気記録層及び保護層を、この順に形成した。更に、該保護層の上に、ディップ法により潤滑剤層を形成した。軟磁性層の材料として、CoZrNbを用いた。該軟磁性層の厚さは、100nmであった。ガラス基板をCoZrNbターゲットと対向させて配置し、Arガスを0.6Pa圧になるように流入させ、DC1500Wで成膜した。第1非磁性配向層としてTi:5nm、第2非磁性配向層としてRu:6nmを形成した。第1非磁性配向層は、Tiターゲットと対向配置し、Arガスを0.5Pa圧になるように流入し、DC1000Wで放電し、5nmの厚さになるように、Tiシード層を成膜した。第1非磁性配向層形成後にRuターゲットと対向させて配置し、Arガスを0.8Pa圧になるように流入させ、DC900Wで放電し、6nmの厚さになるように第2非磁性配向層を成膜した。磁気記録層として、CoCrPtO:18nmを形成した。CoCrPtOターゲットと対向させて配置し、Oを0.06%含むArガスを14Pa圧になるように流入させ、DC290Wで放電し磁気記録層を作製した。磁気記録層を形成した後に、C(カーボン)ターゲットと対向させて配置し、Arガスを0.5Pa圧になるように流入させ、DC1000Wで放電し、C保護層(4nm)を形成した。この記録媒体の保磁力は、334kA/m(4.2kOe)であった。更に、該媒体にディップ法により、PFPE潤滑剤を2nmの厚さで塗布した。以上のようにして、垂直磁気記録媒体を調製した。
【0089】
<磁気転写>
上記垂直磁気記録媒体に対して、初期化を行った。初期化の際に印加する磁界の強度(初期磁界強度)は10kOeであった。初期化済み垂直磁気記録媒体に対して、上記マスターを対向して配置し、これらを0.7MPaの圧力にて密着させた。互いに密着した状態で、転写磁界を印加して磁気転写を行った。転写磁界強度は4.0kOeから6.0kOeの間であり、それぞれのマスターに対し、後述する磁気転写信号の品質が最も高い転写磁界強度に調整した。磁界印加終了後、マスターを、垂直磁気記録媒体から剥離した。
【0090】
<磁気転写信号の品位評価>
上記磁気転写により垂直磁気記録媒体に記録された磁気転写信号の品位を評価した。評価としては、プリアンブル部のTAA(Track Average Amplitude)再生出力を、半径15mm位置の全セクタに対してそのSNR(シグナル/ノイズ比)を算出た。そして、SNRが、比較例1で得られる値、つまり12.0dBを超えた形態を、本発明の効果があるものと判断した。半径15mm位置における磁気信号のビット長は55nmであった。
【0091】
【表1】

【0092】
表1の結果から、実施例1から実施例20の磁気転写マスターによる磁気転写にて、磁気転写信号のSNR向上効果が見られた。
【0093】
さらに、以下に示すように、前述した第2の実施形態に対応するマスターも作成した。
【0094】
<マスターの作成>
まず、平坦な表面を有するマスター基板のその表面上に、マスター基板側から順次軟磁性層、下地層、垂直磁化膜層および保護層から構成されるマスター磁性層を成膜した。軟磁性層の厚さ、軟磁性層の材料、下地層の厚さおよび垂直磁化膜層の厚さは表2(比較例21〜33および実施例21〜40)の通りである。また、下地層の材料、垂直磁化膜層の材料並びに保護層の材料およびその厚さは、第1の実施形態に対応するマスターの場合と同様である。次に、光硬化性のレジストをマスター磁性層上に塗布し、マスターに形成すべき凹凸パターンに対応した凹凸パターンを有する石英モールドをマスター磁性層の面に押し付けた。次に、石英モールドの裏面から紫外光を照射してレジストを硬化させ、石英モールドをレジストから離型することにより、マスターに形成すべき凹凸パターンに対応したレジストパターンのレジスト膜をマスター磁性層上に形成した。そして、このレジスト膜をマスクとして、マスター基板の一部がエッチングされるまでエッチング処理を行い、その後レジスト膜を除去した。
【0095】
<磁気転写信号の品位評価>
上記磁気転写により垂直磁気記録媒体に記録された磁気転写信号の品位を評価した。評価としては、プリアンブル部のTAA(Track Average Amplitude)再生出力を、半径15mm位置の全セクタに対してそのSNR(シグナル/ノイズ比)を算出した。そして、SNRが、比較例21で得られる値、つまり14.1dBを超えた形態を、本発明の効果があるものと判断した。半径15mm位置における磁気信号のビット長は55nmであった。
【0096】
【表2】

【0097】
表2の結果から、実施例21から実施例40の磁気転写用マスターによる磁気転写にて、磁気転写信号のSNR向上効果が見られた。
【符号の説明】
【0098】
10、20 磁気転写用マスター
11、21 マスター基板
12、22 軟磁性層
13、23 下地層
14、24 垂直磁化膜層
15、25 保護層
16、26 マスター磁性層
70 レジスト
72 石英モールド
MF1 転写磁界
MF2 記録磁界
MF3 反磁界
MP1 垂直磁化膜層に発生した磁極
MP2 軟磁性層に発生した磁極
P 磁気転写用マスターの凹凸パターン
Pa マスター基板の凹凸パターン
Sb 凹凸パターンの凹部底面
St 凹凸パターンの凸部上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な凹凸パターンを表面に有し、前記凹凸パターンで表現された磁気信号を垂直磁気記録媒体に磁気転写する際に用いられるマスターであって、
微細な凹凸パターンを表面に有するマスター基板と、
該マスター基板の前記凹凸パターンに沿って少なくとも該凹凸パターンの凸部上面上に形成された、厚さが5〜50nmの軟磁性層と、
前記マスター基板の前記凹凸パターンに沿って少なくとも前記軟磁性層上の前記凸部上面に対応する領域に形成された、厚さが1〜20nmの下地層と、
前記マスター基板の前記凹凸パターンに沿って少なくとも前記下地層上の前記凸部上面に対応する領域に形成された、厚さが10〜40nmの垂直磁化膜層とを備えることを特徴とするマスター。
【請求項2】
前記軟磁性層が、多結晶構造をとる材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載のマスター。
【請求項3】
前記軟磁性層が、アモルファス構造をとる材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載のマスター。
【請求項4】
マスター基板の表面にある凹凸パターンに沿って該凹凸パターン上に、厚さが5〜50nmの軟磁性層を成膜し、前記マスター基板の前記凹凸パターンに沿って前記軟磁性層上に、厚さが1〜20nmの下地層を成膜し、前記マスター基板の前記凹凸パターンに沿って前記下地層上に、厚さが10〜40nmの垂直磁化膜層を成膜することにより製造されたことを特徴とする請求項1から3いずれかに記載のマスター。
【請求項5】
微小な凹凸パターンを表面に有し、前記凹凸パターンで表現された磁気信号を垂直磁気記録媒体に磁気転写する際に用いられるマスターの製造方法であって、
マスター基板の表面にある凹凸パターンに沿って該凹凸パターン上に、厚さが5〜50nmの軟磁性層を成膜し、
前記マスター基板の前記凹凸パターンに沿って前記軟磁性層上に、厚さが1〜20nmの下地層を成膜し、
前記マスター基板の前記凹凸パターンに沿って前記下地層上に、厚さが10〜40nmの垂直磁化膜層を成膜することを特徴とするマスターの製造方法。
【請求項6】
微小な凹凸パターンを表面に有し、前記凹凸パターンで表現された磁気信号を垂直磁気記録媒体に磁気転写する際に用いられるマスターの製造方法であって、
平坦な表面を有するマスター基板の該表面上に、該マスター基板側から順次、厚さが5〜50nmの軟磁性層、厚さが1〜20nmの下地層および厚さが10〜40nmの垂直磁化膜層を含むマスター磁性層を成膜し、
前記凹凸パターンに対応したレジストパターンのレジスト膜を前記マスター磁性層上に形成し、
前記レジスト膜をマスクとして、前記マスター基板がエッチングされるまでエッチング処理を行い、
その後、前記レジスト膜を除去することを特徴とするマスターの製造方法。
【請求項7】
前記軟磁性層を、アモルファス構造をとる材料を用いて成膜することを特徴とする請求項5または6に記載のマスターの製造方法。
【請求項8】
請求項1から4いずれかに記載の磁気転写用のマスターの凹凸パターンを、垂直磁気記録方式のスレーブ媒体の磁気転写面であって予め磁化の向きが一方向に初期化された磁気転写面に向けながら、前記マスターおよび前記スレーブ媒体を近接配置し、
前記一方向と逆の方向に外部磁界を印加することにより、前記凹凸パターンで表現された磁気信号を前記磁気転写面に磁気転写することを特徴とする磁気転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−69394(P2013−69394A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209048(P2011−209048)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)