説明

磁界センサを有する流量制御バルブ

磁界センサを含むソレノイド装置、および該装置を操作する方法を記述する。装置は、少なくとも一部は強磁性体で形成され、あらゆる強磁性体から実質的に独立しているギャップを定義する、磁束回路部を介して延びる磁束を生成する磁界生成器を含む。ギャップを横切って延びる磁束を感知するために、磁束センサが配置されている。装置は、流体の流量制御バルブとして実行され得る。磁束回路部は、ハウジングと、移動可能なようにハウジングに対して装着されているプランジャとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してソレノイド装置に関し、特に、ソレノイドの流量調整バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
流動する気体や液体を制御し、測定することは、たとえば半導体の製造や光学的被覆堆積、フラットパネルディスプレイの製造等、産業上の製造の応用方法の多くにおいて重要である。たとえば、これらの応用方法は、所望の厚みおよび組成を有する膜を形成するために、厳密な流量を導入することが必要である可能性がある。これらの応用方法のために用いられる道具を支援するにあたって、流量の制御および/または測定のために、マスフロー制御装置が一般的に用いられる。
【0003】
マスフロー制御装置は、一般的にソレノイドバルブを含む。ソレノイドバルブは、バルブの開口部を介する流体の媒体となる。一般的なソレノイドバルブは絶縁コイルを有する。絶縁コイルは、プランジャの芯部を囲み、ハウジングに覆われている。電流を供給することによって、プランジャの芯部はバルブシート内の開口部に面するか、または接触する位置に置かれ、流量を制御する。芯部は、たとえば、鉄の合金等の透磁率の高い素材で作ることができる。結果として芯部において得られる磁束は、磁力を発生し、この磁力は、バルブのスプリング要素によって加えられる力と逆方向に作用する。
【0004】
バルブを介する流量は、バルブシートに対するプランジャの位置を制御することによって制御され得る。ある操作方式において、プランジャ位置はコイルに対し供給される電流を選択することによって選択される。プランジャに供給される電磁力は、電流の変化に伴って変動する。そのため、芯部は、電流の変化に応じ、バルブ側へ移動したり、バルブから離れたりする。プランジャ位置は、プランジャにおける力、すなわち弾性と、磁力と、流れに関する力との作用のバランスによって決定する。
【0005】
一部の流量測定装置の制御システムは、ソレノイドコイルに入力し与えられた電流が、プランジャおよび関連する流量の設定における適切な力を発生するという仮定に基づいている。しかし、バルブの測定については、機械的な許容誤差および電気的な許容誤差によって、入力し与えられた電流に応じて得られた流量の正確度や継続性を制限することができる。この誤差は、バイアス成分とランダム成分とを含むことが多い。バイアス成分およびランダム成分は、どちらも供給される電流に応じて変動する。
【0006】
特に、磁性体は、残留磁気の誘導(すなわち電流ゼロにおいて残留している磁化)を起こす。それによってプランジャ位置にヒステリシスが生じるため、印加された電流の関数として流れにヒステリシスが生じる。また、磁性体の透磁率における温度効果によってバルブの反応が予測しにくくなる可能性がある。さらに、ソレノイド電流設定をバルブの流量を設定するのに用いることは困難であるため、使用可能な制御範囲またはバルブのダイナミックレンジが制限される可能性がある。
【0007】
流量の割合の変動を補正するために、流量制御バルブは誤差の補正を試行する制御システムを含むことが多い。ただし、制御システム上の補正要求によってバルブの反応時間が増し、バルブの性能が低下する可能性がある。
【0008】
これらの難点に対応するべく、一部の応用は、広い値域にわたる流量を制御するために流量制御バルブの集合を駆使している。ここで、集合の中の各バルブは異なる流量制御範囲を規定する。ただし、この解決策では流量制御装置のコストが増大する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、改善された、ソレノイドバルブやソレノイドスイッチ等のソレノイド装置を特徴とする。一局面において、本発明は、より正確であり、かつ/または再生可能であり、かつ/または安定した、流量制御と、広範囲のダイナミックレンジとを有するソレノイド流量制御バルブを提供する装置および方法を特徴とする。本発明の原理に基づいたバルブは、1つ以上の部分を有する強磁性体を含む。強磁性部材は、部材から強磁性体を実質的に分離する少なくとも1つのギャップを定義する。ギャップおよび強磁性部材は、磁束回路を定義する。磁界センサは、回路のギャップに及ぶ磁界を検出するために配置される。
【0010】
ギャップは、ギャップによって分離された強磁性体を連結する強磁性ブリッジ等のあらゆる磁束分路から実質的に独立(effectively free)している。そのため、磁界センサはギャップに及ぶ磁界を有効にモニターできる。換言すれば、ギャップに介在するあらゆる分路は、ギャップを横切って延びる磁束に対する効果を制限されており、そのため、検出用センサに利用することができる。
【0011】
センサは磁気回路内の磁界の強度を直接測定する。この測定によって、バルブプランジャにおける磁力を正確かつ反復可能に決定することができる。また、測定は、所望の磁界に対応する磁界を得るためのフィードバックループ内で利用され得る。代替方法として、フィードバックループを選択されたソレノイドコイルの電流バルブへの修正のために実行することができる。このようにして、ヒステリシスや、バルブの流量制御の速度および正確さを損なうその他の要因が低減される。
【0012】
本発明の原理に基づいて実行されるバルブは、たとえば、プラズマ加工、薄膜堆積およびエッチングシステム等の半導体製造装置と共に、マスフロー制御装置の一部として、使用することができる。バルブは、たとえばフッ素、塩素、臭素、水素、窒素、酸素または半導体プロセスにおいて使用される他のガスを含む、様々なガスの流量を制御することができる。バルブ制御ユニットはあらかじめ選択した流量を測定した流量と比較し、磁気回路内で感知された磁束を、あらかじめ選択した流量と測定した流量とが一致するように調節することができる。
【0013】
したがって、第1の局面において、本発明はソレノイド装置を特徴とする。本装置は、たとえばスイッチまたはバルブであり得る。本装置は、少なくとも一部は強磁性体で形成され、あらゆる強磁性体から実質的に独立しているギャップを定義する、磁束回路部を含む。また、本装置は、ギャップを横切って延びる磁束を感知する磁束センサを含み、たとえばコイル等の、磁束を生成するための磁界生成器を含む。
【0014】
磁束回路部は、1つ以上ギャップによって離間され得る1つ以上の部分を含むことができる。たとえば、磁束回路部は磁界生成器に隣接するハウジングと、移動可能であるようにハウジングに対して装着されたプランジャを含み得る。また、磁束回路部は、たとえば、プランジャの移動方向に装着された戻り止めを含み得る。ハウジング、プランジャおよび戻り止めのうちの2つはギャップによって分離される。ギャップは、ギャップのいずれか一方の側にある強磁性体を実質的に分離する境界領域を定義する。
【0015】
ギャップは、ギャップのいずれか一方の側にある強磁性体部分を分路する強磁性体から実質的に独立している。すなわち、好ましくは、ギャップに接する2つの強磁性体部分を連結する磁束分路、つまり実質的な磁束の経路は存在しない。ギャップは強磁性体から完全に独立し得るが、ギャップによって分離された2つの部分間に間接の物理的連結部を提供するその他の材料を含み得る。したがって、ギャップに及ぶ材料またはギャップを結合する任意の材料は、強磁性体から実質的に独立している。
【0016】
装置は、ギャップを横切って延びる磁束を感知する磁束センサを含む。このセンサは、全体的または部分的にギャップ内またはギャップ近傍に配置され得る。ギャップ内に一様な磁束を生成させるため、ギャップは対称的に形成され得、また、一様な幅を有し得る。磁束センサはたとえばホール(Hall)タイプまたは磁気抵抗タイプまたは磁気ひずみタイプのセンサであり得る。
【0017】
ギャップは、ハウジングの透磁率より低く、戻り止めの透磁率より低い透磁率を有する材料を含むことができる。材料は、気体および/または液体および/または固体であり得る。センサは、ギャップ内の材料の透磁率と同様の透磁率を有し得る。
【0018】
第2の局面において、本発明は、ソレノイド装置を操作する方法を特徴とする。本方法は、測定したバルブの流量をあらかじめ選択した流量と比較することと、バルブの磁束回路内の磁束を感知することと、感知した磁束を、測定した流量があらかじめ選択した流量と一致するまで変化させることとを包含する。
【0019】
本発明を、添付の請求項において詳細に説明する。本発明の、上記した利点およびさらなる利点は、添付の図面に関連する以下の説明を参照することによってよりよく理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本明細書中の「ヒステリシス」という用語は、磁力を変化させることによって磁気材料において結果的におこる磁化の値における遅延を指す。
【0021】
本明細書中の「残留磁気」という用語は、もはや外部からの磁気作用下にはない磁化物質中に残留している磁気誘導のことを指す。たとえば、ソレノイドの強磁性プランジャは、ソレノイドコイルに電流が全く印加されない場合に残留磁性を示す。
【0022】
本明細書中の「リラクタンス」という用語は、磁気回路内に見られる、磁束に対する抵抗を指し、対応する磁束に対する磁位差の比率として定義され得る。磁束回路内の素子のリラクタンスは、電流回路内の素子の抵抗と類似している。
【0023】
本明細書中に使用する、「強磁性体」という用語は、約10倍を超える率で磁束を集中する材料を指す。強磁性体の、真空中の透磁率に対する比率としての比透磁率は、最高で約1,000,000である。強磁性体はたとえば、軟鉄や、一部の鋼とニッケルの合金を含む。本発明の好ましい実施形態には、磁束回路における永久磁性材料を含まないものとする。
【0024】
本明細書中の「磁界センサ」および「磁束センサ」という用語は、磁界を検出でき、磁界特性の測定を支援するセンサを互換的に指す。たとえば、センサは、磁界の強さまたは磁束密度等、磁界に関連する値の測定を支援する。
【0025】
図1aは、ソレノイド装置100の実施形態の断面図である。装置100は、磁束回路部のうちの1つ以上の強磁性部分110と、磁界生成源120と、少なくとも1つの磁界センサ150とを含む。図示されるように、強磁性部分110は、他の強磁性部分110に連動させることが可能なプランジャ部分114を選択的に含む。また、図示されるように、プランジャ部分114は、回路部のうち他の強磁性部分110からは物理的に分離されている。装置100の代替的な実施において、プランジャ部分114は、他の強磁性部分110のうち1つ以上に付属しているか、または他の強磁性部分110のうち1つ以上の延長である。
【0026】
装置100の代替的な実施において、強磁性部分110のうち1つ以上は磁界生成源120と連動できる。たとえば、磁界生成源120を可動に配置し強磁性部分110を固定して配置するか、または、磁界生成源120を固定して配置し強磁性部分110を可動に配置することができる。ソレノイド技術の当業者にとっては自明であろうが、装置100が、たとえば流量制御バルブまたはスイッチまたはボイスコイルとして実施可能である。
【0027】
磁束回路部の強磁性部分110は、1つ以上の強磁性体から形成され、1つ以上のギャップG1、G2、G3、G4を決定する。磁界生成源120は、磁束回路部と、1つ以上のギャップG1、G2、G3、G4とによって定義される磁束回路のうち、磁束を生成する。ギャップG1、G2、G3、G4は、磁束回路内の磁気抵抗素子として作用する。
【0028】
1つ以上の磁界センサ150は、ギャップG1、G2、G3、G4のうちの少なくとも1つを介して延びる磁束を感知するように配置される。好ましくは、関連するセンサ150を有するギャップG1、G2、G3、G4は、あらゆる強磁性体から完全に、または実質的に固定されない状態である。あらゆる強磁性体から実質的に固定されていないギャップG1、G2、G3、G4は、センサ150が効果的に磁束を感知できるような方法で磁束を強制的にギャップG1、G2、G3、G4へ延びさせる。
【0029】
ギャップを横切って延びる任意の強磁性体を実質的に有さないギャップG1、G2、G3、G4は、磁束がギャップG1、G2、G3、G4を分路するのには不十分な強磁性体を有している。したがって、ギャップG1、G2、G3、G4を横切って延びる磁束は、たとえば空気あるいは真空の場合に示される比較的高い抵抗を有するギャップG1、G2、G3、G4の部分を横切って延びる。さらに、ギャップ内に一様な磁束を与えるために、対称な形状の、一定のギャップ間隔を有するギャップが所望される。
【0030】
装置100は、センサ150が認識した磁界を制御することによって操作できる。装置の動作中に生じるヒステリシスは、このように、上記特徴を有さない先行技術のソレノイド装置中で生じたヒステリシス未満であり得る。
【0031】
図1bは、図1a中に示す面1bに沿ったソレノイド装置100の横断平面図である。ギャップG1は、磁束回路部の強磁性の部分110を他から分離する境界を決める。ギャップG1は環状であり、有効にギャップG1を分路するのに不十分な薄い強磁性体の残りの部分によって測定される。ギャップG1は、このように比較的高い抵抗を有する磁束回路中の素子を提供する。
【0032】
図1cは、図1a中に示す面1cに沿ったソレノイド装置100の横断平面図である。ギャップG2の構造の特徴は、ギャップG1の構造の特徴に類似している。他のギャップG3、G4は、図示のように、両者間に延在する強磁性体を有さない。上記のように、G1、G2、G3、G4のうち任意の1つ以上のギャップは、磁束回路中の磁束をモニターするための関連磁界センサ150を有し得る。
【0033】
図2aは、図1中に図示されたソレノイド装置の特徴を含むソレノイド装置100Aの実施形態の断面図である。装置100Aは、ハウジング111と、プランジャ114Aと、戻り止め113とを含む磁束回路部を有する。装置100Aは、磁界生成源120Aおよび1つ以上の磁界センサ150A、150B、150Cを含む。装置100Aは、制御回路200を有し得る。プランジャ114Aは、少なくとも一部がハウジング111によって規定される空隙内に属し得る。プランジャ114Aは、ハウジング111によって規定される軸に沿って移動することができる。
【0034】
装置100Aは、バルブとして実施され得る。バルブは、戻り止め113の対面に位置するプランジャ114Aの側面に配置されるバルブシート116を含み得る。バルブシート116は、流動性の穴を含み得る。プランジャ114Aおよびバルブシート116の連携した相互作用によって、バルブを通って流動の流れを制御する機能を果たすことができる。
【0035】
図2bは、面2bに沿って区切られた、ソレノイド装置100Aの横断平面図である。図2cは、面2cに沿って区切られた、ソレノイド装置100Aの横断平面図である。一定の幅を有する対称な環状のギャップが、ハウジング111と戻り止め114Aとを分離する。対称なギャップおよび/または一定の幅を有するギャップは、ギャップ間に延びる磁束の均一性を改善し得る。
【0036】
磁界生成源120Aは磁界を生成する。磁界生成源120Aは、たとえば、ハウジング111および/または戻り止め113上に実装され得る。磁界生成源120Aは、電流がコイルを流れる場合、磁界を誘導するコイルを含み得る。コイルは、プランジャ114Aの上部を戻り止め113へまたは戻り止め113に沿って延在し得る。これに対して、プランジャ114Aは、コイルを超えて逆方向へ延在する。ソレノイド技術の一般的な知識に通じていれば自明であるように、プランジャ114A上の磁界によって生成した磁力は、プランジャをコイル側、すなわちバルブシート116から離れた側へ引くことができる。プランジャ114Aおよびコイルの相対位置は、たとえば、生成源120Aによって生成した磁界によってプランジャ114Aがバルブシート116に向かって伸びているようになる。
【0037】
磁界から発生するプランジャ114A上の力に逆らうために、装置100は、たとえばプランジャ114Aをたとえばバルブシート116側等、コイル外へ促すための1つ以上のスプリング等の、スプリング手段を含むことができる。スプリング手段と磁界とから発生しプランジャ114A上で平衡している力は、プランジャ114Aとバルブシート116との間の分離を制御する。プランジャ114Aがバルブシート116と接触する場合、スプリング手段と磁界との連動作用によってバルブシート116に加えられた力が制御される。
【0038】
ハウジング111、プランジャ114Aおよび戻り止め113は、磁束回路部の素子を定義する。磁界生成源120Aによって磁束が誘導された際、磁束はこの磁束回路部を通過する。ハウジング111、プランジャ114A、および戻り止め113は、磁束を集中させる材料で形成される。そのような材料には磁束回路部の周辺環境よりも大きな透磁率を有する材料を含む。周辺環境とは、たとえば空気であり得る。このように、材料は強磁性体であり得る。
【0039】
強磁性体は高い透磁率を有するため、磁束回路の素子内の磁束をよりよく制限するために好適である。磁束回路の素子は、単一の材料または材料の組み合わせを含むことができる。磁束を集中する材料(たとえば強磁性体)は、たとえばコイルのインダクタンスを増大し、その値は本来なら同一の空芯コイルから得ることのできる値をはるかに上回る。強磁性体は、磁束の実質的な集中を得るのに好適である。
【0040】
図示したセンサ150A、150B、150Cのような1つ以上の磁界センサは、全体的または部分的にギャップ内または関連するギャップに隣接して配置される。センサ150A、150B、150Cは、ギャップを横切って延びる磁界を有効に検出できる限り、ギャップ内に完全にまたは部分的に属する必要はない。磁界センサ150A、150B、150Cには、たとえば、ホール(Hall)要素または磁気抵抗要素または磁気ひずみ要素を含むことができる。1つ以上のセンサ150A、150B、150Cによって、1つ以上のギャップに関連した磁束の1つ以上の値(たとえば磁束密度)を検出することにより磁束回路部内の磁束をモニターできる。したがって、センサ150A、150B、150Cによって、たとえばソレノイドコイルに供給される電流を知ることによって行うよりも正確にプランジャに供給される磁力をモニターできる。
【0041】
センサは磁束を検出するための代替的な位置に存在し得る。たとえば、センサは、装置100Aの構成要素によって定義される磁束回路内の任意の適切なギャップ内に存在することができる。また、たとえば、図2aに示すように、センサ150Bがハウジング111とプランジャ114Aとの間のギャップ内に存在するか、センサ150Cが戻り止め113とプランジャ114Aとの間のギャップに存在することができる。代わりに、バルブシート116は、磁束回路の一部であり得る。また、センサ(図示せず)は、バルブシート116とハウジング111との間のギャップ内に存在することができる。装置100Aは、1つ以上の位置に存在する1つ以上のセンサを含むことができる。
【0042】
センサが付属するギャップは、好ましくは、強磁性体から完全に独立している。すなわち、好ましくは、ギャップに接する2つの構成要素を連結する実質的な磁束分路、つまり磁束の簡易経路が存在しない。
【0043】
磁束分路が実質的に存在しないギャップを提供することによって、相当量の磁束が強制的にセンサ150Aが存在するギャップの部分に延びるようになる。このように、ギャップは、磁束回路内の抵抗素子として作用する。したがって、センサ150Aはギャップに関連する磁束を有効に検出することができる。
【0044】
ハウジング111および戻り止め113は、たとえば、空気を充填することのできる環状ギャップによって完全に分離される。このギャップを定義する構造は対称である。また、ギャップ内に実質的に一様な磁界を与えて磁界の検出を正確にするために、ギャップの幅は一様である。
【0045】
ギャップは全ての材料から独立している必要はない。たとえば、実質的に低い透磁率を有する、固体および/または液体および/または気体の材料がギャップ内に存在し得る。ギャップを結合する固体材料は、たとえば、ハウジング111と戻り止め113との間に、機械的に支持するための間接の機械的連結部を提供することができる。上記のように、ギャップに延在する機械的支持構造体は、強磁性体および常磁性の部分から実質的に独立している。
【0046】
ここで、図3を参照すると、本発明の原理に基づくソレノイド装置は、感知した磁束を制御することによって、従来のコイル電流の制御よりも制御され得る。図3は、ソレノイド装置を操作する方法300の実施形態のフローチャートを示す。本方法は、上記の装置100、100Aと共に実行され得る。方法300は、ギャップと、磁束回路部(例えばハウジングおよび/またはプランジャおよび/または戻り止めを含む)とを含むこと(ステップ310)を包含する。また、方法300は、ギャップへ延びる磁束を感知すること(ステップ320)を包含する。
【0047】
磁束を含むというステップ(ステップ310)は、誘導された磁束を感知された磁束に応じて調整すること(ステップ311)を包含することができる。磁束は、選択された磁束の値を得るように調整され得る(ステップ311a)。値とはたとえば、流量、プランジャ位置、プランジャに加えられた力、磁束に基づいた力、および/またはプランジャによってバルブシートに加えられる力のうち、少なくとも1つを得るために選択され得る。
【0048】
選択された磁束の値は、測定された装置の値をあらかじめ選択された装置の値と比較することによって得られる。測定された装置の値は、たとえば測定された流量値であり得る。また、あらかじめ選択された装置の値は、所望の流量値であり得る。したがって、たとえば、測定された装置の値があらかじめ選択された装置の値から外れている場合、選択された磁束の値を調節することができる。したがって、方法300の一実行において、あらかじめ選択された値と測定値とが、所望のように一致するとき、選択された磁束の値の調節を終えることができる(ステップ370)。
【0049】
選択された磁束の値は、磁界の設定ポイントという形で電源に供給され得る。電源は、バルブ内の磁束生成器への電力の供給を制御し、感知された磁束を磁界の設定ポイントに対応するように調節する。
【0050】
方法300は、感知された磁束対ソレノイド装置の物理的パラメータ値の測定(calibration)を得ること(ステップ350)をさらに含み得る。物理的なパラメータはたとえば、流量、プランジャに加えられた電磁力、および/またはプランジャによってバルブシートに加えられた圧力を含むことができる。選択された磁束は、測定値を介して選択され得る。
【0051】
方法300のいくつかの実行において、回路内に磁束を誘導するために、コイルに電流が供給され、供給された電流値は回路の物理的なパラメータを制御するために選択される。次いで、方法300は、コイルに供給されるべき電流の実際の値を得るために、コイルに対し供給された電流の選択値を、感知された磁束の値に応じて訂正することをさらに包含する(ステップ360)。この方式において、たとえば、ユーザが選択した電流は、コイルに供給されるのに適切な電流を得るために調節され得る。したがって、たとえば、調整によって、供給された電流に応じて生じたヒステリシスを補正することができる。
【0052】
方法300は、このように、フィードバック特性を有し得る。感知された磁束は、このフィードバック特性を介して装置の制御を支援する。装置100および方法300は、このようにヒステリシスの影響を緩和することができ、それによって、特に低流量においてより正確かつ反復可能な流量制御を提供することができる。これらの利点は、装置100の手動か自動かのどちらかの操作を介して得ることができる。
【0053】
手動モードの操作において、装置100のオペレータは、たとえばセンサー150Aからの記録をモニターすることができる。オぺレータは、所望の磁界記録を得るため、または、選択された供給電流値の適切な補正を得てたとえば所望の流量等において所望する一致を得るために、生成源120Aに供給される電流を制御することができる。いくつかの代替操作方法は、ソレノイド装置の技術における一般的な知識を有する者にとって明白であろう。たとえば、オペレータは、磁束にプランジャ圧力または流体の流量を関連づける測定テーブルを参照し、所望の磁束の値が得られるまで、磁界生成器を調節することができる。
【0054】
代替方法として、制御回路200は、少なくとも一部分、装置100Aに対する制御機能を自動化することができる。図4は、制御回路200Aの実施形態の回路図を示す。制御回路200Aは、図1aに示す装置100に対して制御を行うことができるか、あるいは図2aに示す装置100Aの制御回路200として機能することができる。制御回路200Aは、測定されたMS信号と装置のオペレータからあらかじめ選択されたPV信号とを受信する演算増幅器210を含む。あらかじめ選択された値PVは、たとえば所望の流量あるいは所望の磁束であり得る。測定された信号は、たとえば、装置内の磁界センサによって提供される、測定された流量または感知された磁束であり得る。
【0055】
制御回路200Aは、増幅器210から受信した磁界設定ポイント信号に応じて磁界生成器に動力を供給する動力源220を含むことができる。たとえば、制御回路200Aは、感知された磁界をバルブのオペレータによって選択された値に維持するために、フィードバックループを実行することができる。動力源220は、電流源であり得る。また、磁界生成器は、コイルであり得る。
【0056】
記述のように、感知された磁界信号は、磁界のあらかじめ選択された値PVに相当するソレノイド内に磁界を得るためにフィードバックループを支持する、測定信号MSであり得る。代替方法として、磁界センサによって提供される、測定信号MSは、ソレノイドの電流を選択値へ補正するのを支援し、それによって、バルブ流量制御の速度および正確さを制限するヒステリシスあるいは他の影響を低減することができる。
【0057】
制御回路200Aの代替的な実行において、測定信号MSは、流量測定器等、装置のパラメータ測定器によって与えられ得る。したがって、あらかじめ選択された値PVは、所望の流量等、所望のパラメータ値になり得る。
【0058】
この実行において、磁界信号は動力源220へ向けられる。演算増幅器210は、次いで、測定信号MSをあらかじめ選択された値PVと比較する。たとえば、測定された流量をあらかじめ選択された流量と比較する。ここで、演算増幅器210は磁界設定ポイントの値を電流源220へ供給する。したがって、方法300のステップ370について上記したように、あらかじめ選択された値PVと測定信号MSとが所望するように一致するまで、演算増幅器210は磁界設定ポイントの値を更新する。磁気設定ポイントの値の各更新に対して、動力源220は、磁界設定ポイントの値と、感知された磁界とが一致するために磁界生成器に運ばれる力を更新する。
【0059】
図5Aおよび図5Bは、装置100、100Aによって示す、本発明の特徴に基づいて組立てられたサンプルバルブを介する空気の流量のグラフを示す。流量データは、供給された電流の関数(図5A参照)およびサンプルバルブに対する流量の測定値の関数(図5B参照)として集計された。センサによって与えられる、感知された磁界の信号の利用を通じて流量が制御される場合、選択された電流をコイルへ供給するのを通じて制御する場合に比べて、得られるヒステリシスの減少を示す。
【0060】
図5Aは、サンプルバルブのコイルに供給された電流の関数として得られる流量を示す。
相当量のヒステリシスが流量曲線に見られる。すなわち、同一の電流値を介して流れが循環されるとともに、著しく異なる流量が得られる。
【0061】
対照的に、バルブが、ホール効果センサによって感知された磁界の選択により制御される場合、流れのほとんどのヒステリシスは除去される。したがって、プランジャに加えられた力と感知された磁界との間には、印加された力と供給された電流との間よりも強い相関性がある。
【0062】
半導体の製造応用のためのマスフロー制御バルブは、上記の本発明の原理に基づいて実行され得る。バルブは、様々な気体を制御し、かつ広範囲の流量および圧力を得るために実行され得る。たとえば、気体は、0.001Torrから1000Torrの範囲内の圧力、および0.001sccmから200slmの範囲内の流量で供給され得る。気体には不活性ガス、反応ガスあるいは不活性ガスと反応ガスとの混合物を含むことができる。
【0063】
「不活性ガス」は、多くの状況で非反応性か、アルゴンおよび他の希ガスを含む、低い反応速度を有する気体である。「希ガス」は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよび場合によってはラドンを含み、化学的安定性および低い反応速度を示す一群の希ガスである。「反応ガス」は、1つ以上の、化学反応を起こしやすいある種の物質を含んでいる気体である。「活性ガス」は、イオン、遊離基、中立の反応的な原子および分子のうちのいずれかを含む。
【0064】
本発明を、特定の好適な実施形態に関して説明したが、様々な変更および修正が、添付の請求項によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく行なわれ得ることは当業者によって理解されよう。たとえば、本発明の原理に基づいて実行されたソレノイド装置は、電磁石、電子回路のインダクタ、受信アンテナおよびスイッチ等の応用範囲に機能することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1a】ソレノイド装置の一実施形態の側断面図である。
【図1b】図1aのソレノイド装置の面1bにおける横断平面図である。
【図1c】図1aのソレノイド装置の面1cにおける横断平面図である。
【図2a】ソレノイド装置の一実施形態の断面図である。
【図2b】図2aのソレノイド装置の面2bにおける断面図である。
【図2c】図2aのソレノイド装置の面2cにおける断面図である。
【図3】ソレノイド装置を操作する方法の一実施例ののフローチャートである。
【図4】制御回路の一実施形態の概略図である。
【図5a】流量を、本発明の原理に基づいて組み立てられたサンプルバルブに対し供給されたコイルの電流の関数として表したグラフである。
【図5b】流量を、本発明の原理に基づいて組立てられたサンプルバルブに対し測定された磁界の関数として表したグラフである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイド装置であって、
少なくとも一部は強磁性体で形成され、強磁性ブリッジから実質的に独立しているギャップを定義する磁束回路部と、
該磁束回路部と該ギャップとを含む回路内に磁束を生成する磁界生成器と、
該ギャップを横切って延びる該磁束の一部分を感知する磁束センサと
を備える、ソレノイド装置。
【請求項2】
前記磁束回路部がハウジングと、移動可能なように該ハウジングに対して装着されているプランジャとを備える、請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項3】
前記磁束回路部が、前記プランジャの移動方向と交差する戻り止めをさらに備え、前記ハウジングと、該プランジャと、該戻り止めとのうち2つが前記ギャップによって分離されている、請求項2に記載のソレノイド装置。
【請求項4】
前記プランジャと協働して流体流量を制御するバルブシートをさらに備える、請求項2に記載のソレノイド装置。
【請求項5】
前記センサが前記ギャップ内に配置されている、請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項6】
前記ギャップが対称であり、それによって該ギャップ内に一様な磁束を与える、請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項7】
前記ギャップが一様な幅を有する、請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項8】
前記ギャップが環状の形状を示す、請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項9】
前記ギャップ内に配置され、前記強磁性体の透磁率よりも低い透磁率を有する材料をさらに備える、請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項10】
前記ギャップ内に配置された前記材料が、気体、液体、固体のうち少なくとも1つを含む、請求項9に記載のソレノイド装置。
【請求項11】
前記磁界生成器がコイルを備える、請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項12】
前記磁束センサおよび前記磁界生成器と電気接続された制御回路であって、前記磁界生成器に対して適用する信号を前記感知された磁束の一部分に応じて制御することによって前記ギャップ内の該磁束の選択値を維持する制御回路をさらに備える、請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項13】
前記ソレノイド装置がスイッチである、請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項14】
ソレノイド装置であって、
少なくとも一部は強磁性体で形成され、強磁性ブリッジから実質的に独立しているギャップを定義する磁束回路部と、
該磁束回路部と該ギャップとを含む回路内に磁束を誘導する手段と、
該ギャップを横切って延びる該磁束の一部分を感知する手段と
を備える、ソレノイド装置。
【請求項15】
ソレノイド装置を操作する方法であって、
少なくとも一部は強磁性体で形成され、強磁性ブリッジから実質的に独立しているギャップを定義する磁束回路部を提供することと、
該磁束回路部と該ギャップとを含む回路内に磁束を誘導し、それによって該磁束を、該磁束回路部を介して該ギャップを横切って実質的に延びさせることと、
該ギャップを横切って延びる該磁束の一部分を感知することと
を包含する、方法。
【請求項16】
前記磁束を誘導することが、前記プランジャに加わる磁力を制御するために、感知された該磁束の一部分に応じて前記ギャップを横切って延びる該磁束の値を制御することを包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
材料が、前記ギャップ内に配置され、前記磁束回路部の透磁率よりも低い透磁率を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記磁束回路部がプランジャを備え、
該プランジャと協働して流体流量を制御するバルブシートを提供することと、
前記ギャップ内の前記磁束の値を感知された該磁束の一部分に応じて維持し、該磁束の該値に関連する該流体流量を提供することと
をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
流量制御バルブを操作する方法であって、
測定した該バルブの流量を、あらかじめ選択した流量と比較することと、
該バルブの磁束回路内における磁束の一部分を感知することと、
該感知された磁束を、該測定された流量が該あらかじめ選択した流量に一致するまで変化させることと
を包含する、方法。
【請求項20】
前記測定した流量を前記あらかじめ選択した流量と比較することが、該測定した流量が該あらかじめ選択した流量から外れている場合に磁界の設定ポイントを変化させることを包含し、該感知された磁束を変化させることが、該感知された磁束を該磁界設定ポイントに対応させることを包含する、請求項19に記載の方法。

【図2a】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2007−526619(P2007−526619A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515102(P2006−515102)
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/017382
【国際公開番号】WO2004/109418
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(592053963)エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド (114)
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】