磁界センサー、記録装置及び測定システム
【課題】構成を簡略化でき、幅広い範囲の磁界強度に対応可能な磁界センサー、記録装置及び測定システムを提供すること。
【解決手段】電磁波により電磁誘導タグとの間で情報を送受信する送受信装置の磁界強度を検出する磁界センサー6であって、磁界強度に応じた誘導電流を電磁誘導により生じさせるアンテナ61と、当該アンテナ61により生じた誘導電流を出力する出力部62と、を有する。これらのうち、アンテナ61には、電磁誘導タグが有する送受信用アンテナと同一の受信周波数が設定され、当該アンテナ61は、交換可能に設けられている。
【解決手段】電磁波により電磁誘導タグとの間で情報を送受信する送受信装置の磁界強度を検出する磁界センサー6であって、磁界強度に応じた誘導電流を電磁誘導により生じさせるアンテナ61と、当該アンテナ61により生じた誘導電流を出力する出力部62と、を有する。これらのうち、アンテナ61には、電磁誘導タグが有する送受信用アンテナと同一の受信周波数が設定され、当該アンテナ61は、交換可能に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界センサー、記録装置及び測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁界強度を検出する磁界センサーが知られている。このような磁界センサーには、コイル、ホール素子、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス素子、磁気光学素子及び超伝導量子干渉素子等、様々な種類があり、これらの中から、測定対象磁場の強さ、交流・直流の違い、測定環境の違い等を考慮し、目的に応じて適切なセンサーが選択される。これらのうち、磁気光学素子を用いた磁界センサーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−209396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電磁誘導タグの送受信時の磁界強度は、受信機の遠方と近傍とで磁界強度の差が大きいため、一般的な磁界センサーで全ての範囲を網羅することは難しい。このため、簡易な構成で、かつ、幅広い範囲の磁界強度に対応可能な磁界センサー及び磁界強度測定システムが望まれてきた。
【0005】
本発明の目的は、構成を簡略化でき、幅広い範囲の磁界強度に対応可能な磁界センサー、記録装置及び測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するために、本発明の磁界センサーは、電磁波により電磁誘導タグとの間で情報を送受信する送受信装置の磁界強度を検出する磁界センサーであって、前記磁界強度に応じた誘導電流を電磁誘導により生じさせるアンテナと、前記アンテナにより生じた誘導電流を出力する出力部と、を有し、前記アンテナには、前記電磁誘導タグが有する送受信用アンテナと同一の受信周波数が設定され、当該アンテナは、交換可能に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、アンテナが、磁界強度(電磁波の強度)に応じた誘導電流を電磁誘導により生じさせ、出力部が、例えば、磁界センサーが接続される装置に当該誘導電流を出力する。これによれば、当該誘導電流の電圧値は、磁界強度に応じて変化するので、当該電圧値と、予め定められた磁界強度に応じた誘導電流の電圧値とを比較するなどして、測定対象である送受信装置の磁界強度をセンシングできる。このような磁界センサーは、アンテナと、出力部とを有する簡易な構成であるので、磁界センサーを比較的簡易に構成できる。この他、アンテナには、当該送受信装置との間で電磁波により情報を送受信する電磁誘導タグの送受信用アンテナと同一の受信周波数が設定されているので、送受信装置の磁界強度をより正確にセンシングできる。また、当該アンテナは交換可能であるので、幅広い範囲の磁界強度に対応できる。
【0008】
また、本発明の記録装置は、前述の磁界センサーと、前記磁界センサーから出力された前記誘導電流の電圧値を記録する記録部とを有することを特徴とする。
本発明によれば、前述の磁界センサーと同様の効果を奏することができる。
また、磁界センサーから出力される誘導電流の電圧値を記録部が記録することにより、磁界強度を算出する装置が当該誘導電流の電圧値をリアルタイムで取得する必要がない。従って、所望のタイミングで、磁界センサーによるセンシング結果を取得できる。なお、電圧値の代わりに、電流値を記録する構成としてもよい。
【0009】
また、本発明の測定システムは、前述の記録装置と、前記記録装置による記録内容を解析する処理装置とを備え、前記記録装置は、前記誘導電流の電圧値を送信する送信部を有し、前記処理装置は、前記記録装置から送信された前記誘導電流の電圧値を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記誘導電流の電圧値を前記磁界強度に変換する変換部とを有することを特徴とする。
本発明によれば、前述の記録装置と同様の効果を奏することができる。この他、取得部により取得された誘導電流の電圧値を変換部が磁界強度に変換するので、当該電圧値を変換する構成を記録装置に含める必要がない。従って、記録装置の構成をより簡略化できる他、当該記録装置の小型化を図ることができる。なお、記録装置が誘導電流の電流値を記録する構成である場合には、処理装置の取得部が、当該記録装置から誘導電流の電流値を取得し、当該処理装置の変換部が、取得された電流値を磁界強度に変換する構成とすればよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、幅広い範囲の磁界強度を検出可能な磁界センサーの構成を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る測定システムの構成を示すブロック図。
【図2】前記実施形態における処理装置の構成を示すブロック図。
【図3】前記実施形態における磁界センサーの構成を示すブロック図。
【図4】前記実施形態における制御部の機能を示すブロック図。
【図5】前記実施形態における処理装置及び記録装置の処理を示すフローチャート。
【図6】前記実施形態における測定システムによる測定結果の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る測定システム1の構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る測定システム1は、図1に示すように、処理装置2と、送受信装置3と、磁界センサー6を有する記録装置4とを備える。そして、当該測定システム1では、記録装置4が、磁界センサー6から出力される誘導電流の電圧値を、当該磁界センサー6によるセンシング結果として記録するとともに、記録装置4から送信された当該電圧値を送受信装置3を介して処理装置2が取得して、磁界強度に変換する。
【0013】
[処理装置の構成]
図2は、処理装置2の構成を示すブロック図である。
処理装置2は、PC(Personal Computer)等により構成され、前述のように、送受信装置3を介して記録装置4から所定の測定対象(例えば、後述するリーダー/ライターにより生じる磁界)のセンシング結果を取得し、当該センシング結果を解析する。このような処理装置2は、図2に示すように、操作部21及び接続部22を有する。また、処理装置2は、HDD(Hard Disc Drive)等により構成される記憶部23を有する他、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有し、当該CPUがROM及び記憶部23に記憶された各種プログラム及びデータを処理することにより、制御部24として示される機能を有する。
【0014】
操作部21は、キーボードや、マウス等のポインティングデバイスにより構成され、当該操作部21は、使用者の入力操作に応じた操作信号を制御部24に出力する。
接続部22は、後述する送受信装置3が接続される端子を有する。このような端子として、USB(Universal Serial Bus)端子等を例示できる。
記憶部23は、処理装置2の動作に必要な各種プログラム及びデータを記憶している。例えば、記憶部23は、記録装置4から取得されたセンシング結果を記憶する他、当該センシング結果を解析するためのプログラム及びデータを記憶している。このようなデータとして、記憶部23は、誘導電流の電圧値と、磁界強度(例えば、強度レベルや磁束密度)とが関連付けられたテーブルを記憶している。
【0015】
制御部24は、操作部21から入力される操作信号に基づいて、或いは、自律的に装置全体の動作を制御する。この制御部24は、操作判定部241、計時部242、条件設定部243、条件情報送信部244、結果取得部245及び変換部246として示される機能部を有する。
操作判定部241は、操作部21から入力される操作信号の種別を判定する。すなわち、操作判定部241は、操作部21に対する使用者の入力操作を判定する。
計時部242は、現在時刻を計時する。
【0016】
条件設定部243は、操作部21からの操作信号に基づいて、記録装置4によるセンシング結果の取得条件を設定する。本実施形態では、条件設定部243は、当該取得条件として、サンプリングレートを設定する。
条件情報送信部244は、条件設定部243により設定された取得条件と、計時部242により計時されている現在時刻を示す時刻情報とを含む条件情報を生成する。そして、当該条件情報送信部244は、接続部22に接続された送受信装置3を介して記録装置4に、生成された条件情報を送信する。
【0017】
結果取得部245は、本発明の取得部に相当し、記録装置4からセンシング結果を取得する。具体的に、結果取得部245は、センシング結果(誘導電流の電圧値)を送信させるコマンドを、送受信装置3を介して記録装置4に送信する。そして、結果取得部245は、記録装置4からセンシング結果を取得して、当該センシング結果を記憶部23に記憶させる。
変換部246は、取得された誘導電流の電圧値を、測定対象の磁界強度に変換する。この際、変換部246は、記憶部23に記憶された前述のテーブルを参照して、取得された誘導電流の電圧値を、測定対象の磁界強度に変換する。
【0018】
[送受信装置の構成]
送受信装置3は、処理装置2と接続される他、当該処理装置2による制御の下、記録装置4との間で無線にて情報を送受信する。この送受信装置3は、処理装置2から入力される各種情報(例えば、コマンド及び条件情報)を記録装置4に送信するほか、当該記録装置4から受信された各種情報(例えば、センシング結果)を処理装置2に出力する。
このような送受信装置3は、本実施形態では、RFID(Radio Frequency Identification)タグの機能を有する記録装置4との間で情報を送受信可能なリーダー/ライターとして構成されている。なお、本実施形態では、送受信装置3と処理装置2とは、USB規格に準拠したプロトコルで接続される。
【0019】
[記録装置の構成]
図3は、磁界センサー6の構成を示すブロック図である。
記録装置4は、図1に示すように、装置本体5と、当該装置本体5に接続される磁界センサー6とを備える。
磁界センサー6は、測定対象の磁界強度をセンシングして、発生した誘導電流を装置本体5に出力する。この磁界センサー6は、図3に示すように、アンテナ61と、出力部62とを有する。
【0020】
アンテナ61は、測定対象のアンテナから放出される電磁波を受信して、電磁誘導により誘導電流を生じさせ、当該誘導電流を出力部62に出力する。本実施形態では、磁界センサー6は、本発明における電磁誘導タグであるパッシブ型のRFID(Radio Frequency Identification)タグと通信するリーダー/ライター(本発明における送受信装置)の磁界強度を検出することを目的に構成されているため、アンテナ61は、当該パッシブ型のRFIDタグに用いられるアンテナと同一形状(すなわち、同一の受信周波数特性)のアンテナが採用されている。このアンテナ61は、本実施形態においては、RFIDタグとリーダー/ライターとの通信に利用される周波数13.56MHzの電磁波を受信して、電磁誘導により誘導電流を生じさせる。なお、アンテナ61が受信する電磁波の周波数については特に制限はなく、当該周波数を変更する場合には、実際に測定対象のリーダー/ライターと通信するRFIDタグのアンテナに交換すればよい。すなわち、本実施形態では、アンテナ61は、磁界センサー6に対して交換可能である。
【0021】
出力部62は、アンテナ61にて生じた誘導電流を装置本体5に電圧値として出力する。この出力部62は、アンテナ接続端子63、交/直変換回路64及び端子部65を有する。
アンテナ接続端子63は、アンテナ61と接続される。
交/直変換回路64は、アンテナ接続端子63を介してアンテナ61から入力される交流の誘導電流を直流の誘導電流に変換するとともに整流して、端子部65に出力する。
端子部65は、装置本体5に接続され、交/直変換回路64から入力される誘導電流を当該装置本体5に出力する。
【0022】
[装置本体の構成]
装置本体5は、詳しい図示を省略するが、掌に収まる程度の寸法を有し、磁界センサー6によるセンシング結果(当該磁界センサー6から入力される誘導電流の電圧値)を取得して記録する他、送受信装置3を介して処理装置2に当該センシング結果を送信する。このセンシング結果の送信は、当該センシング結果が記録された後に実行する場合と、リアルタイムで実行する場合との双方を記録装置4により実施可能である。
このような装置本体5は、図1に示すように、操作部51、端子部52、調整部53、クロック発生部54、電源部55、送受信部56及び制御部57を有する。
【0023】
操作部51は、プッシュスイッチを備え、当該プッシュスイッチがオン状態である間、当該操作部51は制御部57に操作信号を出力する。このようなプッシュスイッチとして、本実施形態では、位置保持型スイッチが採用されている。この位置保持型スイッチは、スイッチが一度入力されるとオン状態が継続し、再度スイッチが入力されるとオフ状態に切り替わるスイッチである。なお、これに限らず、スイッチが入力されている間はオン状態となり、当該スイッチが入力されていない間はオフ状態となる自動復帰型スイッチを採用してもよい。
【0024】
端子部52には、磁界センサー6が挿抜される。
調整部53は、端子部52から制御部57に入力されるセンシング結果のキャリブレーションを行うためのものである。すなわち、調整部53は、既知の測定対象のセンシングをした際のセンシング結果が、端子部52から制御部57に適切に入力されるように、当該制御部57に入力される電圧を調整するためのものである。このような調整部53は、本実施形態では、可変抵抗により構成され、当該可変抵抗の抵抗値を使用者が調整することにより、キャリブレーションが実施される。
【0025】
クロック発生部54は、所定周波数のクロック信号を発生させる。なお、本実施形態では、クロック発生部54は、周波数32.768kHzのクロック信号を発生させるが、このクロック信号の周波数は、適宜変更可能である。
電源部55は、装置本体5の各部に駆動電力を供給する。このような電源部55は、本実施形態では電池により構成されているが、当該電池は二次電池でもよい。また、電源部55は、磁界センサー6と同様に、アンテナにより外部から受信される電磁波から誘導電流を生じさせ、当該誘導電流を駆動電力として供給する構成としてもよい。
【0026】
送受信部56は、送受信装置3と通信するアンテナを有し、当該送受信装置3と周波数13.56MHzの電波を用いて情報の送受信を実施する。ここで、送受信部56を介して装置本体5が送受信装置3と通信する際のプロトコルと、装置本体5が磁界センサー6を用いて磁界強度をセンシングする際のプロトコルとはそれぞれ異なる。このため、それぞれの通信が干渉することを抑制できる。
【0027】
図4は、制御部57の機能を示すブロック図である。
制御部57は、IC(Integrated Circuit)により構成され、記録装置4の動作を制御する。この制御部57は、図4に示すように、記憶部571、コマンド解析部572、条件取得部573、計時部574、条件設定部575、操作判定部576、結果記録部577及び結果送信部578により示される機能を有する。
【0028】
記憶部571は、フラッシュメモリーにより構成されており、制御部57が機能するためのプログラム及び各種データを記憶している。
コマンド解析部572は、送受信部56により受信された受信情報を解析し、当該受信情報に前述の条件情報が含まれているか否か、及び、当該受信情報に含まれるコマンドがセンシング結果を送信させるコマンドであるか否かを判定する。
【0029】
条件取得部573は、条件情報が含まれていると判定された場合に、当該条件情報を取得する。
計時部574は、条件情報に含まれる時刻情報に基づいて、現在時刻を計時する。
条件設定部575は、条件情報に含まれる取得条件に基づいて、磁界センサー6によるセンシング結果の取得条件を設定する。すなわち、条件設定部575は、少なくとも磁界センサー6によるセンシングのサンプリングレートを設定する。
【0030】
操作判定部576は、操作部51から入力される操作信号に基づいて、当該操作部51のスイッチがオン状態となったか否かを判定する。
結果記録部577は、操作判定部576により当該スイッチがオン状態となったと判定された場合に、磁界センサー6から入力される信号(誘導電流)をA/D変換し、変換後の信号の電圧値(誘導電流の電圧値)をセンシング結果として記憶部571に記憶させる。この際、結果記録部577は、設定された取得条件に基づいてセンシング結果を取得し、当該センシング結果と、計時部574により計時されている現在時刻を示す時刻情報とを、記憶部571に記憶させる。
【0031】
結果送信部578は、送受信部56とともに本発明の送信部を構成する。この結果送信部578は、コマンド解析部572により、センシング結果を送信させるコマンドが受信されたと判定された場合に、記憶部571に記憶されているセンシング結果を送受信部56により送信させる。なお、この結果送信部578によるセンシング結果の送信は、当該コマンドが受信された場合に実施されるため、前述のように、磁界センサー6によるセンシング中に当該コマンドが受信されたと判定されると、結果送信部578は、磁界センサー6によるセンシング結果をリアルタイムで送受信部56に送信させる。
【0032】
[測定システムの処理]
図5は、処理装置2及び記録装置4の処理を示すフローチャートである。
測定システム1では、処理装置2及び記録装置4が以下の処理を実行して、磁界センサー6によるセンシング結果を取得及び解析する。
すなわち、図5に示すように、まず、処理装置2が、操作部21に対する操作等により設定された取得条件及び時刻情報を含む条件情報を、送受信装置3を介して記録装置4に送信する(ステップSA1)。
【0033】
一方、記録装置4では、条件取得部573が、受信情報に含まれる条件情報を取得する(ステップSB1)。そして、当該条件情報に基づいて、計時部574が現在時刻を計時するとともに(ステップSB2)、条件設定部575がセンシング結果の取得条件を設定する(ステップSB3)。
この後、記録装置4では、操作判定部576が、記録を開始させる操作が操作部51に対して行われたか否か(スイッチがオン状態となったか否か)を判定する(ステップSB4)。このステップSB4の判定処理にて、当該操作が行われていないと判定されると、制御部57は、当該ステップSB4を繰り返し実行する。
【0034】
また、ステップSB4の判定処理にて、記録を開始させる操作が行われたと判定されると、結果記録部577が、磁界センサー6によるセンシング結果を、現在時刻とともに記憶部571に記憶させ、当該センシング結果を記録する(ステップSB5)。このステップSB5におけるセンシング結果の記録は、操作部51のスイッチがオン状態である間、設定された取得条件(例えば、上記サンプリングレート)で実施される。そして、当該スイッチがオフ状態となると、制御部57は、処理を終了する。なお、再度スイッチがオン状態となると、結果記録部577は、当該スイッチがオフ状態となるまでセンシング結果の記録を再度実行する。
【0035】
ここで、コマンド解析部572により、センシング結果を送信させるコマンドが受信されたと判定されると、結果送信部578が、記憶部571に記憶されているセンシング結果及び時刻情報を、送受信部56により送信させる(ステップSB6)。なお、前述のように、当該コマンドは、磁界センサー6によるセンシング中にも受信される場合があり、この場合には、センシング結果及び時刻情報をリアルタイムで送信させる。
【0036】
一方、処理装置2では、結果取得部245が、送受信装置3を介して記録装置4に、センシング結果を送信させるコマンドを送信し、これに応じて記録装置4からセンシング結果が受信されたか否かを判定する(ステップSA2)。ここで、センシング結果が受信されないと判定されると、結果取得部245は、当該センシング結果が受信されるまで、ステップSA2の判定処理を繰り返し実行する。
【0037】
一方、ステップSA2の判定処理にて、センシング結果が受信されたと判定されると、結果取得部245は、受信されたセンシング結果を取得する(ステップSA3)。このセンシング結果は、記憶部23に記憶される。
そして、変換部246は、当該センシング結果である誘導電流の電圧値を磁界強度に変換する(ステップSA4)。そして、変換部246は、例えば、変換された磁界強度をグラフ化する等の処理を実行する。
以上により、処理装置2及び記録装置4の処理が終了する。
【0038】
[測定システムによる測定例]
図6は、上記測定システム1による測定結果を示すグラフである。具体的に、図6は、等間隔に配置された3つのリーダー/ライターにより生じる磁界強度レベルを示すグラフである。なお、図6においては、磁界強度を256階調のレベルにより示している。
本実施形態に係る測定システム1は、例えば、以下に示す場合に好適に利用できる。
RFIDタグとの間で情報を送受信する複数のリーダー/ライターが配置される場合、各リーダー/ライターにより発生する磁界が、他のリーダー/ライターにより発生する磁界の干渉を受けると、当該リーダー/ライターとRFIDタグとの適切な通信ができなくなるおそれがある。しかしながら、このような磁界の干渉が生じているか否かは、各リーダー/ライターにより発生する磁界強度を測定してみないと分からない。
【0039】
このため、例えば、当該RFIDタグのアンテナと同一のアンテナに、磁界センサー6のアンテナ61を交換した上で、等間隔に配列された3つの測定対象であるリーダー/ライターの配列方向に沿って、記録装置4に接続された磁界センサー6を移動させ、各リーダー/ライターにより発生する磁界強度に応じて磁界センサー6にて発生する誘導電流の電圧値を、結果記録部577に記録させる。そして、処理装置2が当該電圧値を磁界の強度レベルに変換した結果をグラフ化したものが、図6に示されるグラフである。
この測定例では、図6に示すように、各リーダー/ライターによる磁界のメインローブMはそれぞれ独立しており、また、当該磁界のサイドローブSも、他の磁界のメインローブM及びサイドローブSに干渉していない。このため、上記3つのリーダー/ライターがそれぞれ個別にRFIDタグと通信可能であり、各リーダー/ライター間の距離が十分に離れていることが示される。
【0040】
[実施形態の効果]
以上説明した本実施形態に係る測定システム1によれば、以下の効果がある。
磁界センサー6においては、アンテナ61が、磁界強度に応じた誘導電流を電磁誘導により生じさせ、出力部62が、当該誘導電流を装置本体5に電圧値として出力する。これによれば、誘導電流の電圧値は、磁界強度に応じて変化するので、当該電圧値に基づいて、測定対象の磁界強度をセンシングできる。このような磁界センサー6は、アンテナ61と、出力部62とを有する構成であり、当該磁界センサー6を比較的簡易に構成できる。
また、アンテナ61には、前述のリーダー/ライターとの間で電磁波により情報を送受信するRFIDタグの送受信用アンテナと同一の受信周波数が設定されている。これによれば、当該リーダー/ライターの磁界強度をより正確にセンシングできる。更に、当該アンテナ61は、磁界センサー6に対して交換可能であるので、幅広い範囲の磁界強度に対応できる。
【0041】
記録装置4においては、装置本体5の結果記録部577が、磁界センサー6から入力される誘導電流の電圧値を記録することにより、磁界強度を算出する処理装置2が当該誘導電流の電圧値をリアルタイムで取得及び処理する必要がない。従って、所望のタイミングで、磁界センサー6によるセンシング結果を取得でき、測定システム1の利便性を向上できる。
【0042】
処理装置2においては、結果取得部245により取得された誘導電流の電圧値を変換部246が磁界強度に変換する。これによれば、当該電圧値を変換する構成を記録装置4に含める必要がない。従って、記録装置4の構成をより簡略化できる他、当該記録装置4の小型化を図ることができる。また、磁界強度への変換処理を処理装置2が行うことにより、記録装置4が実施する場合に比べ、当該処理の迅速化を図ることができる。
【0043】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、処理装置2が、送受信装置3を介して記録装置4から取得されたセンシング結果(誘導電流の電圧値)を磁界強度に変換するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、記録装置4の装置本体5が変換してもよく、送受信装置3が変換して、これらによる変換結果を処理装置2が受信する構成としてもよい。
また、記録装置4は、誘導電流の電圧値をセンシング結果として記録する構成に限らず、当該誘導電流の電流値を記録する構成としてもよい。この場合、処理装置2の結果取得部245(取得部)が、当該誘導電流の電流値を記録装置4から取得し、当該処理装置2の変換部が、取得された誘導電流の電流値を測定対象の磁界強度に変換すればよい。
【0044】
前記実施形態では、記録装置4は、操作部51のスイッチがオン状態である場合に、センシング結果を記録するとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、処理装置2が条件情報を送信する際に、磁界センサー6によるセンシングを開始する開始時刻及び終了時刻を送信し、計時部574による計時時刻が開始時刻に達した際に、結果記録部577がセンシング結果を記録し始め、終了時刻に達した際に、記録を終了する構成としてもよい。また、当該開始時刻は、装置本体5にて設定されてもよい。すなわち、記録装置4が、タイマー機能を有していてもよい。
【0045】
前記実施形態では、処理装置2から受信される条件情報に含まれる取得条件に基づいて、結果記録部577が、センシング結果を記録するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、予め設定された取得条件に基づいて、結果記録部577が、センシング結果の取得及び記録を実施してもよい。
【0046】
前記実施形態では、計時部574は、条件情報に含まれる現在時刻に基づいて、現在時刻を計時するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、計時部574は、必ずしも現在時刻を計時する構成に限らない。例えば、条件情報を取得した後で、操作部51のスイッチがオン状態に最初に切り替わってからの時間を計時するように構成してもよい。
【0047】
前記実施形態では、装置本体5の送受信部56と、送受信装置3とは、周波数13.56MHzの電波(搬送波)を用いて情報を送受信するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、送受信部56と送受信装置3との間で情報を送受信可能であれば、利用される電波の周波数は適宜変更可能である。また、記録装置4と送受信装置3とを有線で接続してもよく、更には、記録装置4と処理装置2とを直接接続してもよい。また、有線により記録装置4と処理装置2とが接続される場合には、処理装置2が、記録装置4の駆動電力を供給してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、磁界センサーに利用でき、当該磁界センサーによるセンシング結果を記録する記録装置、及び、当該記録装置を備える測定システムに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1…測定システム、2…処理装置、4…記録装置、6…磁界センサー、56…送受信部(送信部)、61…アンテナ、62…出力部、245…結果取得部(取得部)、246…変換部、577…結果記録部(記録部)、578…結果送信部(送信部)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界センサー、記録装置及び測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁界強度を検出する磁界センサーが知られている。このような磁界センサーには、コイル、ホール素子、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス素子、磁気光学素子及び超伝導量子干渉素子等、様々な種類があり、これらの中から、測定対象磁場の強さ、交流・直流の違い、測定環境の違い等を考慮し、目的に応じて適切なセンサーが選択される。これらのうち、磁気光学素子を用いた磁界センサーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−209396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電磁誘導タグの送受信時の磁界強度は、受信機の遠方と近傍とで磁界強度の差が大きいため、一般的な磁界センサーで全ての範囲を網羅することは難しい。このため、簡易な構成で、かつ、幅広い範囲の磁界強度に対応可能な磁界センサー及び磁界強度測定システムが望まれてきた。
【0005】
本発明の目的は、構成を簡略化でき、幅広い範囲の磁界強度に対応可能な磁界センサー、記録装置及び測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するために、本発明の磁界センサーは、電磁波により電磁誘導タグとの間で情報を送受信する送受信装置の磁界強度を検出する磁界センサーであって、前記磁界強度に応じた誘導電流を電磁誘導により生じさせるアンテナと、前記アンテナにより生じた誘導電流を出力する出力部と、を有し、前記アンテナには、前記電磁誘導タグが有する送受信用アンテナと同一の受信周波数が設定され、当該アンテナは、交換可能に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、アンテナが、磁界強度(電磁波の強度)に応じた誘導電流を電磁誘導により生じさせ、出力部が、例えば、磁界センサーが接続される装置に当該誘導電流を出力する。これによれば、当該誘導電流の電圧値は、磁界強度に応じて変化するので、当該電圧値と、予め定められた磁界強度に応じた誘導電流の電圧値とを比較するなどして、測定対象である送受信装置の磁界強度をセンシングできる。このような磁界センサーは、アンテナと、出力部とを有する簡易な構成であるので、磁界センサーを比較的簡易に構成できる。この他、アンテナには、当該送受信装置との間で電磁波により情報を送受信する電磁誘導タグの送受信用アンテナと同一の受信周波数が設定されているので、送受信装置の磁界強度をより正確にセンシングできる。また、当該アンテナは交換可能であるので、幅広い範囲の磁界強度に対応できる。
【0008】
また、本発明の記録装置は、前述の磁界センサーと、前記磁界センサーから出力された前記誘導電流の電圧値を記録する記録部とを有することを特徴とする。
本発明によれば、前述の磁界センサーと同様の効果を奏することができる。
また、磁界センサーから出力される誘導電流の電圧値を記録部が記録することにより、磁界強度を算出する装置が当該誘導電流の電圧値をリアルタイムで取得する必要がない。従って、所望のタイミングで、磁界センサーによるセンシング結果を取得できる。なお、電圧値の代わりに、電流値を記録する構成としてもよい。
【0009】
また、本発明の測定システムは、前述の記録装置と、前記記録装置による記録内容を解析する処理装置とを備え、前記記録装置は、前記誘導電流の電圧値を送信する送信部を有し、前記処理装置は、前記記録装置から送信された前記誘導電流の電圧値を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記誘導電流の電圧値を前記磁界強度に変換する変換部とを有することを特徴とする。
本発明によれば、前述の記録装置と同様の効果を奏することができる。この他、取得部により取得された誘導電流の電圧値を変換部が磁界強度に変換するので、当該電圧値を変換する構成を記録装置に含める必要がない。従って、記録装置の構成をより簡略化できる他、当該記録装置の小型化を図ることができる。なお、記録装置が誘導電流の電流値を記録する構成である場合には、処理装置の取得部が、当該記録装置から誘導電流の電流値を取得し、当該処理装置の変換部が、取得された電流値を磁界強度に変換する構成とすればよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、幅広い範囲の磁界強度を検出可能な磁界センサーの構成を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る測定システムの構成を示すブロック図。
【図2】前記実施形態における処理装置の構成を示すブロック図。
【図3】前記実施形態における磁界センサーの構成を示すブロック図。
【図4】前記実施形態における制御部の機能を示すブロック図。
【図5】前記実施形態における処理装置及び記録装置の処理を示すフローチャート。
【図6】前記実施形態における測定システムによる測定結果の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る測定システム1の構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る測定システム1は、図1に示すように、処理装置2と、送受信装置3と、磁界センサー6を有する記録装置4とを備える。そして、当該測定システム1では、記録装置4が、磁界センサー6から出力される誘導電流の電圧値を、当該磁界センサー6によるセンシング結果として記録するとともに、記録装置4から送信された当該電圧値を送受信装置3を介して処理装置2が取得して、磁界強度に変換する。
【0013】
[処理装置の構成]
図2は、処理装置2の構成を示すブロック図である。
処理装置2は、PC(Personal Computer)等により構成され、前述のように、送受信装置3を介して記録装置4から所定の測定対象(例えば、後述するリーダー/ライターにより生じる磁界)のセンシング結果を取得し、当該センシング結果を解析する。このような処理装置2は、図2に示すように、操作部21及び接続部22を有する。また、処理装置2は、HDD(Hard Disc Drive)等により構成される記憶部23を有する他、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有し、当該CPUがROM及び記憶部23に記憶された各種プログラム及びデータを処理することにより、制御部24として示される機能を有する。
【0014】
操作部21は、キーボードや、マウス等のポインティングデバイスにより構成され、当該操作部21は、使用者の入力操作に応じた操作信号を制御部24に出力する。
接続部22は、後述する送受信装置3が接続される端子を有する。このような端子として、USB(Universal Serial Bus)端子等を例示できる。
記憶部23は、処理装置2の動作に必要な各種プログラム及びデータを記憶している。例えば、記憶部23は、記録装置4から取得されたセンシング結果を記憶する他、当該センシング結果を解析するためのプログラム及びデータを記憶している。このようなデータとして、記憶部23は、誘導電流の電圧値と、磁界強度(例えば、強度レベルや磁束密度)とが関連付けられたテーブルを記憶している。
【0015】
制御部24は、操作部21から入力される操作信号に基づいて、或いは、自律的に装置全体の動作を制御する。この制御部24は、操作判定部241、計時部242、条件設定部243、条件情報送信部244、結果取得部245及び変換部246として示される機能部を有する。
操作判定部241は、操作部21から入力される操作信号の種別を判定する。すなわち、操作判定部241は、操作部21に対する使用者の入力操作を判定する。
計時部242は、現在時刻を計時する。
【0016】
条件設定部243は、操作部21からの操作信号に基づいて、記録装置4によるセンシング結果の取得条件を設定する。本実施形態では、条件設定部243は、当該取得条件として、サンプリングレートを設定する。
条件情報送信部244は、条件設定部243により設定された取得条件と、計時部242により計時されている現在時刻を示す時刻情報とを含む条件情報を生成する。そして、当該条件情報送信部244は、接続部22に接続された送受信装置3を介して記録装置4に、生成された条件情報を送信する。
【0017】
結果取得部245は、本発明の取得部に相当し、記録装置4からセンシング結果を取得する。具体的に、結果取得部245は、センシング結果(誘導電流の電圧値)を送信させるコマンドを、送受信装置3を介して記録装置4に送信する。そして、結果取得部245は、記録装置4からセンシング結果を取得して、当該センシング結果を記憶部23に記憶させる。
変換部246は、取得された誘導電流の電圧値を、測定対象の磁界強度に変換する。この際、変換部246は、記憶部23に記憶された前述のテーブルを参照して、取得された誘導電流の電圧値を、測定対象の磁界強度に変換する。
【0018】
[送受信装置の構成]
送受信装置3は、処理装置2と接続される他、当該処理装置2による制御の下、記録装置4との間で無線にて情報を送受信する。この送受信装置3は、処理装置2から入力される各種情報(例えば、コマンド及び条件情報)を記録装置4に送信するほか、当該記録装置4から受信された各種情報(例えば、センシング結果)を処理装置2に出力する。
このような送受信装置3は、本実施形態では、RFID(Radio Frequency Identification)タグの機能を有する記録装置4との間で情報を送受信可能なリーダー/ライターとして構成されている。なお、本実施形態では、送受信装置3と処理装置2とは、USB規格に準拠したプロトコルで接続される。
【0019】
[記録装置の構成]
図3は、磁界センサー6の構成を示すブロック図である。
記録装置4は、図1に示すように、装置本体5と、当該装置本体5に接続される磁界センサー6とを備える。
磁界センサー6は、測定対象の磁界強度をセンシングして、発生した誘導電流を装置本体5に出力する。この磁界センサー6は、図3に示すように、アンテナ61と、出力部62とを有する。
【0020】
アンテナ61は、測定対象のアンテナから放出される電磁波を受信して、電磁誘導により誘導電流を生じさせ、当該誘導電流を出力部62に出力する。本実施形態では、磁界センサー6は、本発明における電磁誘導タグであるパッシブ型のRFID(Radio Frequency Identification)タグと通信するリーダー/ライター(本発明における送受信装置)の磁界強度を検出することを目的に構成されているため、アンテナ61は、当該パッシブ型のRFIDタグに用いられるアンテナと同一形状(すなわち、同一の受信周波数特性)のアンテナが採用されている。このアンテナ61は、本実施形態においては、RFIDタグとリーダー/ライターとの通信に利用される周波数13.56MHzの電磁波を受信して、電磁誘導により誘導電流を生じさせる。なお、アンテナ61が受信する電磁波の周波数については特に制限はなく、当該周波数を変更する場合には、実際に測定対象のリーダー/ライターと通信するRFIDタグのアンテナに交換すればよい。すなわち、本実施形態では、アンテナ61は、磁界センサー6に対して交換可能である。
【0021】
出力部62は、アンテナ61にて生じた誘導電流を装置本体5に電圧値として出力する。この出力部62は、アンテナ接続端子63、交/直変換回路64及び端子部65を有する。
アンテナ接続端子63は、アンテナ61と接続される。
交/直変換回路64は、アンテナ接続端子63を介してアンテナ61から入力される交流の誘導電流を直流の誘導電流に変換するとともに整流して、端子部65に出力する。
端子部65は、装置本体5に接続され、交/直変換回路64から入力される誘導電流を当該装置本体5に出力する。
【0022】
[装置本体の構成]
装置本体5は、詳しい図示を省略するが、掌に収まる程度の寸法を有し、磁界センサー6によるセンシング結果(当該磁界センサー6から入力される誘導電流の電圧値)を取得して記録する他、送受信装置3を介して処理装置2に当該センシング結果を送信する。このセンシング結果の送信は、当該センシング結果が記録された後に実行する場合と、リアルタイムで実行する場合との双方を記録装置4により実施可能である。
このような装置本体5は、図1に示すように、操作部51、端子部52、調整部53、クロック発生部54、電源部55、送受信部56及び制御部57を有する。
【0023】
操作部51は、プッシュスイッチを備え、当該プッシュスイッチがオン状態である間、当該操作部51は制御部57に操作信号を出力する。このようなプッシュスイッチとして、本実施形態では、位置保持型スイッチが採用されている。この位置保持型スイッチは、スイッチが一度入力されるとオン状態が継続し、再度スイッチが入力されるとオフ状態に切り替わるスイッチである。なお、これに限らず、スイッチが入力されている間はオン状態となり、当該スイッチが入力されていない間はオフ状態となる自動復帰型スイッチを採用してもよい。
【0024】
端子部52には、磁界センサー6が挿抜される。
調整部53は、端子部52から制御部57に入力されるセンシング結果のキャリブレーションを行うためのものである。すなわち、調整部53は、既知の測定対象のセンシングをした際のセンシング結果が、端子部52から制御部57に適切に入力されるように、当該制御部57に入力される電圧を調整するためのものである。このような調整部53は、本実施形態では、可変抵抗により構成され、当該可変抵抗の抵抗値を使用者が調整することにより、キャリブレーションが実施される。
【0025】
クロック発生部54は、所定周波数のクロック信号を発生させる。なお、本実施形態では、クロック発生部54は、周波数32.768kHzのクロック信号を発生させるが、このクロック信号の周波数は、適宜変更可能である。
電源部55は、装置本体5の各部に駆動電力を供給する。このような電源部55は、本実施形態では電池により構成されているが、当該電池は二次電池でもよい。また、電源部55は、磁界センサー6と同様に、アンテナにより外部から受信される電磁波から誘導電流を生じさせ、当該誘導電流を駆動電力として供給する構成としてもよい。
【0026】
送受信部56は、送受信装置3と通信するアンテナを有し、当該送受信装置3と周波数13.56MHzの電波を用いて情報の送受信を実施する。ここで、送受信部56を介して装置本体5が送受信装置3と通信する際のプロトコルと、装置本体5が磁界センサー6を用いて磁界強度をセンシングする際のプロトコルとはそれぞれ異なる。このため、それぞれの通信が干渉することを抑制できる。
【0027】
図4は、制御部57の機能を示すブロック図である。
制御部57は、IC(Integrated Circuit)により構成され、記録装置4の動作を制御する。この制御部57は、図4に示すように、記憶部571、コマンド解析部572、条件取得部573、計時部574、条件設定部575、操作判定部576、結果記録部577及び結果送信部578により示される機能を有する。
【0028】
記憶部571は、フラッシュメモリーにより構成されており、制御部57が機能するためのプログラム及び各種データを記憶している。
コマンド解析部572は、送受信部56により受信された受信情報を解析し、当該受信情報に前述の条件情報が含まれているか否か、及び、当該受信情報に含まれるコマンドがセンシング結果を送信させるコマンドであるか否かを判定する。
【0029】
条件取得部573は、条件情報が含まれていると判定された場合に、当該条件情報を取得する。
計時部574は、条件情報に含まれる時刻情報に基づいて、現在時刻を計時する。
条件設定部575は、条件情報に含まれる取得条件に基づいて、磁界センサー6によるセンシング結果の取得条件を設定する。すなわち、条件設定部575は、少なくとも磁界センサー6によるセンシングのサンプリングレートを設定する。
【0030】
操作判定部576は、操作部51から入力される操作信号に基づいて、当該操作部51のスイッチがオン状態となったか否かを判定する。
結果記録部577は、操作判定部576により当該スイッチがオン状態となったと判定された場合に、磁界センサー6から入力される信号(誘導電流)をA/D変換し、変換後の信号の電圧値(誘導電流の電圧値)をセンシング結果として記憶部571に記憶させる。この際、結果記録部577は、設定された取得条件に基づいてセンシング結果を取得し、当該センシング結果と、計時部574により計時されている現在時刻を示す時刻情報とを、記憶部571に記憶させる。
【0031】
結果送信部578は、送受信部56とともに本発明の送信部を構成する。この結果送信部578は、コマンド解析部572により、センシング結果を送信させるコマンドが受信されたと判定された場合に、記憶部571に記憶されているセンシング結果を送受信部56により送信させる。なお、この結果送信部578によるセンシング結果の送信は、当該コマンドが受信された場合に実施されるため、前述のように、磁界センサー6によるセンシング中に当該コマンドが受信されたと判定されると、結果送信部578は、磁界センサー6によるセンシング結果をリアルタイムで送受信部56に送信させる。
【0032】
[測定システムの処理]
図5は、処理装置2及び記録装置4の処理を示すフローチャートである。
測定システム1では、処理装置2及び記録装置4が以下の処理を実行して、磁界センサー6によるセンシング結果を取得及び解析する。
すなわち、図5に示すように、まず、処理装置2が、操作部21に対する操作等により設定された取得条件及び時刻情報を含む条件情報を、送受信装置3を介して記録装置4に送信する(ステップSA1)。
【0033】
一方、記録装置4では、条件取得部573が、受信情報に含まれる条件情報を取得する(ステップSB1)。そして、当該条件情報に基づいて、計時部574が現在時刻を計時するとともに(ステップSB2)、条件設定部575がセンシング結果の取得条件を設定する(ステップSB3)。
この後、記録装置4では、操作判定部576が、記録を開始させる操作が操作部51に対して行われたか否か(スイッチがオン状態となったか否か)を判定する(ステップSB4)。このステップSB4の判定処理にて、当該操作が行われていないと判定されると、制御部57は、当該ステップSB4を繰り返し実行する。
【0034】
また、ステップSB4の判定処理にて、記録を開始させる操作が行われたと判定されると、結果記録部577が、磁界センサー6によるセンシング結果を、現在時刻とともに記憶部571に記憶させ、当該センシング結果を記録する(ステップSB5)。このステップSB5におけるセンシング結果の記録は、操作部51のスイッチがオン状態である間、設定された取得条件(例えば、上記サンプリングレート)で実施される。そして、当該スイッチがオフ状態となると、制御部57は、処理を終了する。なお、再度スイッチがオン状態となると、結果記録部577は、当該スイッチがオフ状態となるまでセンシング結果の記録を再度実行する。
【0035】
ここで、コマンド解析部572により、センシング結果を送信させるコマンドが受信されたと判定されると、結果送信部578が、記憶部571に記憶されているセンシング結果及び時刻情報を、送受信部56により送信させる(ステップSB6)。なお、前述のように、当該コマンドは、磁界センサー6によるセンシング中にも受信される場合があり、この場合には、センシング結果及び時刻情報をリアルタイムで送信させる。
【0036】
一方、処理装置2では、結果取得部245が、送受信装置3を介して記録装置4に、センシング結果を送信させるコマンドを送信し、これに応じて記録装置4からセンシング結果が受信されたか否かを判定する(ステップSA2)。ここで、センシング結果が受信されないと判定されると、結果取得部245は、当該センシング結果が受信されるまで、ステップSA2の判定処理を繰り返し実行する。
【0037】
一方、ステップSA2の判定処理にて、センシング結果が受信されたと判定されると、結果取得部245は、受信されたセンシング結果を取得する(ステップSA3)。このセンシング結果は、記憶部23に記憶される。
そして、変換部246は、当該センシング結果である誘導電流の電圧値を磁界強度に変換する(ステップSA4)。そして、変換部246は、例えば、変換された磁界強度をグラフ化する等の処理を実行する。
以上により、処理装置2及び記録装置4の処理が終了する。
【0038】
[測定システムによる測定例]
図6は、上記測定システム1による測定結果を示すグラフである。具体的に、図6は、等間隔に配置された3つのリーダー/ライターにより生じる磁界強度レベルを示すグラフである。なお、図6においては、磁界強度を256階調のレベルにより示している。
本実施形態に係る測定システム1は、例えば、以下に示す場合に好適に利用できる。
RFIDタグとの間で情報を送受信する複数のリーダー/ライターが配置される場合、各リーダー/ライターにより発生する磁界が、他のリーダー/ライターにより発生する磁界の干渉を受けると、当該リーダー/ライターとRFIDタグとの適切な通信ができなくなるおそれがある。しかしながら、このような磁界の干渉が生じているか否かは、各リーダー/ライターにより発生する磁界強度を測定してみないと分からない。
【0039】
このため、例えば、当該RFIDタグのアンテナと同一のアンテナに、磁界センサー6のアンテナ61を交換した上で、等間隔に配列された3つの測定対象であるリーダー/ライターの配列方向に沿って、記録装置4に接続された磁界センサー6を移動させ、各リーダー/ライターにより発生する磁界強度に応じて磁界センサー6にて発生する誘導電流の電圧値を、結果記録部577に記録させる。そして、処理装置2が当該電圧値を磁界の強度レベルに変換した結果をグラフ化したものが、図6に示されるグラフである。
この測定例では、図6に示すように、各リーダー/ライターによる磁界のメインローブMはそれぞれ独立しており、また、当該磁界のサイドローブSも、他の磁界のメインローブM及びサイドローブSに干渉していない。このため、上記3つのリーダー/ライターがそれぞれ個別にRFIDタグと通信可能であり、各リーダー/ライター間の距離が十分に離れていることが示される。
【0040】
[実施形態の効果]
以上説明した本実施形態に係る測定システム1によれば、以下の効果がある。
磁界センサー6においては、アンテナ61が、磁界強度に応じた誘導電流を電磁誘導により生じさせ、出力部62が、当該誘導電流を装置本体5に電圧値として出力する。これによれば、誘導電流の電圧値は、磁界強度に応じて変化するので、当該電圧値に基づいて、測定対象の磁界強度をセンシングできる。このような磁界センサー6は、アンテナ61と、出力部62とを有する構成であり、当該磁界センサー6を比較的簡易に構成できる。
また、アンテナ61には、前述のリーダー/ライターとの間で電磁波により情報を送受信するRFIDタグの送受信用アンテナと同一の受信周波数が設定されている。これによれば、当該リーダー/ライターの磁界強度をより正確にセンシングできる。更に、当該アンテナ61は、磁界センサー6に対して交換可能であるので、幅広い範囲の磁界強度に対応できる。
【0041】
記録装置4においては、装置本体5の結果記録部577が、磁界センサー6から入力される誘導電流の電圧値を記録することにより、磁界強度を算出する処理装置2が当該誘導電流の電圧値をリアルタイムで取得及び処理する必要がない。従って、所望のタイミングで、磁界センサー6によるセンシング結果を取得でき、測定システム1の利便性を向上できる。
【0042】
処理装置2においては、結果取得部245により取得された誘導電流の電圧値を変換部246が磁界強度に変換する。これによれば、当該電圧値を変換する構成を記録装置4に含める必要がない。従って、記録装置4の構成をより簡略化できる他、当該記録装置4の小型化を図ることができる。また、磁界強度への変換処理を処理装置2が行うことにより、記録装置4が実施する場合に比べ、当該処理の迅速化を図ることができる。
【0043】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、処理装置2が、送受信装置3を介して記録装置4から取得されたセンシング結果(誘導電流の電圧値)を磁界強度に変換するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、記録装置4の装置本体5が変換してもよく、送受信装置3が変換して、これらによる変換結果を処理装置2が受信する構成としてもよい。
また、記録装置4は、誘導電流の電圧値をセンシング結果として記録する構成に限らず、当該誘導電流の電流値を記録する構成としてもよい。この場合、処理装置2の結果取得部245(取得部)が、当該誘導電流の電流値を記録装置4から取得し、当該処理装置2の変換部が、取得された誘導電流の電流値を測定対象の磁界強度に変換すればよい。
【0044】
前記実施形態では、記録装置4は、操作部51のスイッチがオン状態である場合に、センシング結果を記録するとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、処理装置2が条件情報を送信する際に、磁界センサー6によるセンシングを開始する開始時刻及び終了時刻を送信し、計時部574による計時時刻が開始時刻に達した際に、結果記録部577がセンシング結果を記録し始め、終了時刻に達した際に、記録を終了する構成としてもよい。また、当該開始時刻は、装置本体5にて設定されてもよい。すなわち、記録装置4が、タイマー機能を有していてもよい。
【0045】
前記実施形態では、処理装置2から受信される条件情報に含まれる取得条件に基づいて、結果記録部577が、センシング結果を記録するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、予め設定された取得条件に基づいて、結果記録部577が、センシング結果の取得及び記録を実施してもよい。
【0046】
前記実施形態では、計時部574は、条件情報に含まれる現在時刻に基づいて、現在時刻を計時するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、計時部574は、必ずしも現在時刻を計時する構成に限らない。例えば、条件情報を取得した後で、操作部51のスイッチがオン状態に最初に切り替わってからの時間を計時するように構成してもよい。
【0047】
前記実施形態では、装置本体5の送受信部56と、送受信装置3とは、周波数13.56MHzの電波(搬送波)を用いて情報を送受信するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、送受信部56と送受信装置3との間で情報を送受信可能であれば、利用される電波の周波数は適宜変更可能である。また、記録装置4と送受信装置3とを有線で接続してもよく、更には、記録装置4と処理装置2とを直接接続してもよい。また、有線により記録装置4と処理装置2とが接続される場合には、処理装置2が、記録装置4の駆動電力を供給してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、磁界センサーに利用でき、当該磁界センサーによるセンシング結果を記録する記録装置、及び、当該記録装置を備える測定システムに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1…測定システム、2…処理装置、4…記録装置、6…磁界センサー、56…送受信部(送信部)、61…アンテナ、62…出力部、245…結果取得部(取得部)、246…変換部、577…結果記録部(記録部)、578…結果送信部(送信部)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波により電磁誘導タグとの間で情報を送受信する送受信装置の磁界強度を検出する磁界センサーであって、
前記磁界強度に応じた誘導電流を電磁誘導により生じさせるアンテナと、
前記アンテナにより生じた誘導電流を出力する出力部と、を有し、
前記アンテナには、前記電磁誘導タグが有する送受信用アンテナと同一の受信周波数が設定され、当該アンテナは、交換可能に設けられている
ことを特徴とする磁界センサー。
【請求項2】
請求項1に記載の磁界センサーと、
前記磁界センサーから出力された前記誘導電流の電圧値を記録する記録部とを有する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置と、
前記記録装置による記録内容を解析する処理装置とを備え、
前記記録装置は、前記誘導電流の電圧値を送信する送信部を有し、
前記処理装置は、
前記記録装置から送信された前記誘導電流の電圧値を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記誘導電流の電圧値を前記磁界強度に変換する変換部とを有する
ことを特徴とする測定システム。
【請求項1】
電磁波により電磁誘導タグとの間で情報を送受信する送受信装置の磁界強度を検出する磁界センサーであって、
前記磁界強度に応じた誘導電流を電磁誘導により生じさせるアンテナと、
前記アンテナにより生じた誘導電流を出力する出力部と、を有し、
前記アンテナには、前記電磁誘導タグが有する送受信用アンテナと同一の受信周波数が設定され、当該アンテナは、交換可能に設けられている
ことを特徴とする磁界センサー。
【請求項2】
請求項1に記載の磁界センサーと、
前記磁界センサーから出力された前記誘導電流の電圧値を記録する記録部とを有する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置と、
前記記録装置による記録内容を解析する処理装置とを備え、
前記記録装置は、前記誘導電流の電圧値を送信する送信部を有し、
前記処理装置は、
前記記録装置から送信された前記誘導電流の電圧値を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記誘導電流の電圧値を前記磁界強度に変換する変換部とを有する
ことを特徴とする測定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−109527(P2013−109527A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253183(P2011−253183)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(597019609)株式会社 シーディエヌ (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(597019609)株式会社 シーディエヌ (22)
【Fターム(参考)】
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