説明

磁界プローバ及び磁界印加方法

【課題】磁性体デバイスに均一に磁界を印加することができ、磁性体部分の面積が大きい磁性体デバイスを測定する際にも、所望の磁界を確実に精度良く印加させることが可能な、測定精度が高い磁界プローバを提供する。
【解決手段】本発明に係る磁界プローバ1A(1)は、磁界を発生する磁界印加手段2と、被測定物20を載置するステージ3と、を少なくとも備えた磁界プローバであって、前記磁界印加手段2は複数のコイルから構成されており、各々のコイルは前記ステージ3の内部にあって、かつ前記被測定物20が配されるステージ3上面から所定距離だけ離間した位置にある仮想面内に、二次元的に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界プローバ及び磁界印加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体デバイスをウエハレベルで測定するための装置として、磁界印加装置を搭載したウエハプローバ(磁界プローバ)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
従来の磁界プローバの構成例を図3に示す。この磁界プローバ100は、磁界印加手段101を有する磁界印加装置102の下側に、プローブピン103を有するプローブカード104が、ガイド105に保持されて設置されている。このような磁界プローバ100は、ステージ106上に載置された、磁性体デバイスが形成されたウエハ110(被測定物)に対して、磁界を印加する構造となる。またプローブカード104は、図4に示すように、一般的にプローブカードを保持するガイド105と、プローブカードエッジ104aで測定器との電気的導通を確保するカードエッジコネクタ107によって、プローバ本体に取り付けられている。
【0003】
図3に示したような漏れ磁界型の磁界印加装置102では、一般的に磁界の均一範囲が1〜数mmレベルと狭く、磁界均一範囲内に正確にプローブピン103を設置する必要がある。また、デバイスによっては印加する磁界の角度(スキュー)が特性に影響を及ぼすため、プローブカード104と磁界印加装置102のθ方向の精度も重要となる。ここで、θは、XY平面におけるX方向またはY方向となす角度を表す。
【0004】
磁界印加を行わないプローバでは、測定時にプローブカードとウエハの相対位置を補正可能であるため、プローバ本体とプローブカードのXYθ方向の位置決め精度は、重要とはならないが、磁界プローバでは、磁界印加装置(固定)、プローブカード(手動設置)、ウエハ(自動アライメント)の3つの位置関係がmm単位で整合が取れていることが必須となる。
【0005】
ところが従来の方法では、ガイド105と磁界印加装置102に測定誤差があること、ガイド105とプローブカード104、またプローブカードエッジ104aとプローブカード104に設置のための多少の遊びがあること、さらにはプローブカード自体の剛性が不足していること、から均一磁界範囲に正確にプローブピン103を設置できない虞があった。
【0006】
これを解決する方法として、従来、プローブカード上に磁界印加装置を設ける手法が提案されている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。しかし、この構成では、磁界印加装置をなすコイルがプローブカード毎に必要であり、また、kOe(キロエルステッド)レベルの強磁界を印加することは困難である。
一方、固定磁石を回転することにより磁界を印加する方法も提案されている(例えば特許文献4参照)。しかし、磁界の変更が困難であること、磁石特性のバラツキに測定結果が影響を受ける、等の問題がある。
【0007】
さらに、図3のような磁界印加装置102では、磁界印加手段101がウエハ110から離れた位置に設置されており、比較的大きなコイルが必要であった。また、印加磁界は磁界均一範囲から離れるに従い緩やかに減少するが、ウエハ110内に磁性体デバイスが多数面付けされていてチップに占める磁性体部分の面積が大きい場合、多数の磁性体デバイスが集磁構造となることにより想定した磁界が印加できない可能性もある。
そこで、特に磁性体部分の面積が大きい磁性体デバイスウエハを測定する際には、集磁効果を避けるために磁界均一範囲を狭くし、その範囲内に精度良く磁性体デバイスが設置されることが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−147568号公報
【特許文献2】特開2007−57547号公報
【特許文献3】特開2006−24845号公報
【特許文献4】特許第3054458号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】http://www.toei-tc.co.jp/top.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、磁性体デバイスに均一に磁界を印加することができ、磁性体部分の面積が大きい磁性体デバイスを測定する際にも、所望の磁界を確実に精度良く印加させることが可能な、測定精度が高い磁界プローバを提供することを第一の目的とする。
また、本発明は、磁性体デバイスの狭い範囲に対して確実に所望の磁界を印加することができ、精度の高い特性を得ることができる磁界印加方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る磁界プローバは、磁界を発生する磁界印加手段と、被測定物を載置するステージと、を少なくとも備えた磁界プローバであって、前記磁界印加手段は複数のコイルから構成されており、各々のコイルは前記ステージの内部にあって、かつ前記被測定物が配されるステージ上面から所定距離だけ離間した位置にある仮想面内に、二次元的に配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に係る磁界プローバは、請求項1において、前記ステージは、前記磁界印加手段を内在する第1部位、及び、該第1部位に重ねて配され、前記被測定物を載置するとともに、該載置する面内において回転可能に構成されている第2部位、から構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に係る磁界印加方法は、請求項1に記載の磁界プローバを用いた磁界印加方法であって、前記ステージ上面に被測定物を載置する工程と、前記被測定物のアライメント角度から前記ステージの回転角と前記被測定物の直交度を求め、前記磁界印加手段に通電する電流値を制御することにより、ステージ上面に載置された被測定物に任意の方向の磁界を印加する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に係る磁界印加方法は、請求項2に記載の磁界プローバを用いた磁界印加方法であって、前記第2部位上面に被測定物を載置する工程と、前記第2部位を回転させることにより前記被測定物の角度を調節する工程と、前記磁界印加手段に通電し、前記第2部位上面に載置された被測定物に磁界を印加する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の磁界プローバでは、被測定物を載置するステージ内部に磁界印加手段である複数のコイルを内在させたことにより、磁界印加手段と被測定物の距離を短くすることができるため、小型のコイルを用いても磁界を印加でき、さらに、狭い範囲に精度良く均一磁界を印加することが可能となる。これにより、磁性体部分の面積が大きい磁性体デバイスを測定する際にも、所望の磁界を確実に精度良く印加させることが可能となり、その結果、本発明では測定精度が高い磁界プローバの提供に寄与する。
【0016】
また、本発明の磁界印加方法では、磁界印加手段である複数の独立したコイルに通電する電流値を制御して被測定物に任意の方向の磁界を精度良く印加することができるため、磁界印加手段、プローバ、プローブカード間の位置決め精度を考慮することなく磁界の印加を行うことが可能となる。これにより、磁界印加装置からの磁界を磁性体デバイスに対して精度良く印加させることができる。その結果、本発明では、精度の高い特性を得ることができる磁界印加方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る磁界プローバの一構成例を示す断面図。
【図2】本発明に係る磁界プローバの他の一構成例を示す断面図。
【図3】従来の磁界プローバの構成例を示す断面図。
【図4】カードエッジコネクタを有するプローブカードの一例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る磁界プローバの一実施形態を図面に基づいて説明する。
<第一実施形態>
図1は、本発明の磁界プローバの一構成例を模式的に示す断面図である。
本実施形態に係る磁界プローバ1A(1)は、磁界を発生する磁界印加手段2と、ウエハ20(被測定物)を載置するステージ3と、を少なくとも備え、前記ステージ3の上側には、プローブピン4及びプローブピン基板5を有するプローブカード6が、磁界プローバ1A(1)の筐体(非図示)に固定されたガイド7により前記ステージ3の一面と略平行に保持されて設置されている。プローブピン基板5は、プローブピン部分の絶縁性を確保するため、プリント基板から構成される。プローブカード6の幅は、例えば4.5インチ(114.31ミリ)である。
このような磁界プローバ1A(1)は、ステージ3上に載置された被測定物であるウエハ20に対してある磁界を印加したときの出力を測定する。磁界プローバ1A(1)は、磁界印加手段2を除いて、外部磁界の影響を抑えるため適宜、非磁性材料で構成される。
【0019】
本発明の磁界プローバ1A(1)では、前記磁界印加手段2は、前記ステージ3内部にあって、かつ前記ステージ3上面から所定距離だけ離間した位置にある仮想面内に、二次元的に独立して複数個配置されていることを特徴とする。
ステージ3は、例えばAlや真鍮などの非磁性材料を用い、内部に空洞を設けて該空洞内に小型の磁界印加手段2を設置する。磁界印加手段2としては、例えば小型の平型巻き線コイルが用いられ、残留磁界低減のためにはコアレス(空芯)であることが望ましく、強磁界を印加する際にはコア付きであることが望ましい。個数は所望する印加磁界の大きさやコイルサイズなどに応じて適宜設定することが可能であり、各コイルの切り替えや複数コイルの並列動作は、マトリックススイッチによって行う。
また、図1に示す例では、磁界印加手段2であるコイルの巻き面はステージ3上面と平行に配されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ステージ3上面と垂直に配されていても良い。
【0020】
このように、磁界印加手段2がステージ3内部に配置されていることにより、磁界印加手段2とウエハ20間の距離を短くすることができるため、より小型のコイルを用いても充分な磁界を印加可能となる。また、ステージ3内に磁界印加手段2を組み込んであるため、別途磁界印加装置を設ける場合に比べて本体の小型化も可能である。さらに、磁気プローバ1台につき必要な磁界印加手段2は1セットのみで良いため、プローブカード上に磁界印加装置を設ける手法と比べ大幅な低コスト化も図れる。
また、複数の独立した小型の磁界印加手段2を配置し、測定場所近辺の磁界印加手段2のみを選択して磁界を印加することにより、狭い範囲に精度良く均一磁界を印加することが可能となる。これにより、磁性体部分の面積が大きい磁性体デバイスを測定する際にも、集磁効果を受けることなく所望の磁界を確実に精度良く印加させることが可能であり、さらに測定精度の高い磁界プローバが得られる。
【0021】
次に、このような磁界プローバ1A(1)を用いた磁界印加方法について説明する。
本発明の磁界印加方法は、ステージ3上面に被測定物(ウエハ20)を載置する工程と、前記ウエハ20のアライメント角度から前記ステージ3の回転角と前記ウエハ20の直交度を求め、前記磁界印加手段2に通電する電流値を制御することにより、ステージ3上面に載置されたウエハ20に任意の方向の磁界を印加する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【0022】
本発明の磁界印加方法では、磁界印加手段2である複数の独立したコイルに通電する電流値を制御することでウエハ20に任意の方向の磁界を印加することができる。よって、あらかじめプローバ本体に備えられたプローブピン用のアライメントカメラ(非図示)によるウエハ20のアライメント動作により、ステージ3に対するウエハ20の回転角を求めておき、磁界印加手段2とウエハ20の角度のズレ分を測定場所近辺のコイルの電流制御により磁界印加角度の補正を行うこととする。これにより、磁界印加手段2、磁界プローバ1A(1)、プローブカード6間のXYZθ方向の位置決め精度を考慮することなく磁界の印加を行うことが可能となり、磁界印加手段2からの磁界を磁性体デバイスに対して精度良く印加させることができる。その結果、本発明の磁界印加方法では、精度の高い特性を得ることができる。
【0023】
<第二実施形態>
次に、本発明の磁界プローバの第二実施形態について説明する。
図2は、本実施形態の磁界プローバ1B(1)の一例を示す断面図である。
なお、以下の説明では、上述した第一実施形態と異なる部分について主に説明し、同様の部分についてはその説明は省略する。
【0024】
本実施形態の磁界プローバ1B(1)では、ステージ3は、磁界印加手段2を内在する第1部位3a、及び、該第1部位3aに重ねて配され、被測定物(ウエハ)20を載置するとともに、該載置する面内において回転可能に構成されている第2部位3bから構成されていることを特徴とする。このとき、ウエハ20を載置する第2部位3bは回転機能を有するが、磁界印加手段2を内在する第1部位3aは固定されている。
また、図2に示す例では、磁界印加手段2であるコイルの巻き面は第1部位3a上面と平行に配されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1部位3a上面と垂直に配されていても良い。
【0025】
本実施形態では、ウエハ20を載置する第2部位3bが該載置する面内において回転可能な構成となっているため、予めステージ3とウエハ20との設置角度を補正することが可能となる。よって本実施形態では、第一実施形態の場合と比較して、磁界による角度補正が考慮不要という利点があり、簡便に所望の磁界を精度良く印加させることが可能である。その結果、本発明ではさらに測定精度の高い磁界プローバが得られる。
【0026】
以下、本実施形態の磁界プローバ1B(1)を用いた磁界印加方法について説明する。
本発明の磁界印加方法では、ウエハ20のアライメント角度からステージ3の回転角と前記ウエハ20の直交度を求めた後、ウエハ20の載置された第2部位3bを回転させることによりウエハ20の角度を調節する工程を有する。これにより、第一実施形態の場合と比較して、磁界による角度補正が考慮不要という利点がある。これにより、電流値による複雑な制御を行わなくても、磁界印加手段2、磁界プローバ1B(1)、プローブカード6間のXYZθ方向の位置決め精度を考慮することなく磁界の印加を行うことが可能となり、磁界印加手段2からの磁界を磁性体デバイスに対して簡便に精度良く印加させることができる。その結果、本発明の磁界印加方法では、精度の高い特性を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、磁界プローバ及び磁界印加方法に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1A,1B(1) 磁界プローバ、2 磁界印加手段、3 ステージ、3a 第1部位、3b 第2部位、4 プローブピン、5 プローブピン基板、6 プローブカード、7 ガイド、20 ウエハ(被測定物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界を発生する磁界印加手段と、被測定物を載置するステージと、を少なくとも備えた磁界プローバであって、
前記磁界印加手段は複数のコイルから構成されており、各々のコイルは前記ステージの内部にあって、かつ前記被測定物が配されるステージ上面から所定距離だけ離間した位置にある仮想面内に、二次元的に配置されていることを特徴とする磁界プローバ。
【請求項2】
前記ステージは、前記磁界印加手段を内在する第1部位、及び、該第1部位に重ねて配され、前記被測定物を載置するとともに、該載置する面内において回転可能に構成されている第2部位、から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁界プローバ。
【請求項3】
請求項1に記載の磁界プローバを用いた磁界印加方法であって、
前記ステージ上面に被測定物を載置する工程と、
前記被測定物のアライメント角度から前記ステージの回転角と前記被測定物の直交度を求め、前記磁界印加手段に通電する電流値を制御することにより、ステージ上面に載置された被測定物に任意の方向の磁界を印加する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする磁界印加方法。
【請求項4】
請求項2に記載の磁界プローバを用いた磁界印加方法であって、
前記第2部位上面に被測定物を載置する工程と、
前記第2部位を回転させることにより前記被測定物の角度を調節する工程と、
前記磁界印加手段に通電し、前記第2部位上面に載置された被測定物に磁界を印加する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする磁界印加方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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