説明

磁界分布測定装置、磁界分布測定システム、磁界分布測定方法および磁界分布測定プログラム

【課題】回路パターン設計情報にもとづき高速かつ容易に磁界強度分布測定を行うことができる磁界分布測定装置、磁界分布測定システム、磁界分布測定方法および磁界分布測定プログラムを提供する。
【解決手段】本発明に係る磁界分布測定システム10は、磁界分布測定装置20、CAD装置30および磁界プローブ40を有するものである。磁界分布測定装置20は、CPU21、RAM22、ROM23、磁界分布情報記憶部24、入力装置25および表示装置26を有する。磁界分布測定装置20は、CAD情報(回路パターン設計情報)にもとづいて磁界プローブ40を制御し、回路基板の発生する磁界分布を測定する。CPU21は、磁界分布測定プログラムにしたがって回路基板の発生する磁界分布を測定する処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路パターン設計情報にもとづきプリント基板周辺の磁界強度分布測定を行う磁界分布測定装置、磁界分布測定システム、磁界分布測定方法および磁界分布測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電気電子機器の高機能化および信号の高速化にともない、最近、電気電子回路の動作に応じて発生する電磁波が他の電気電子回路の動作に干渉する、いわゆる電磁妨害(EMI:Electromagnetic Interference、以下EMIという)が問題となっている。この、電気電子機器から放射される電磁波の強度を決定する要因として、ノイズ源の強度、ノイズの伝播経路およびアンテナパターンの三要素が考えられる。これら要素のうち、特に、電気電子機器の回路基板上のノイズ源に対する対策は、根本的な解決につながるため重要である。
【0003】
従来、この種のノイズ源を調査する技術に、特開2004−198232号公報(特許文献1)に開示された近傍電磁界測定システムがある。
【0004】
この近傍電磁界測定システムは、回路基板の発生する近傍電磁界分布を測定するシステムにおいて、磁界プローブなどの近傍電磁界を測定する装置の測定位置情報と、CAD(Computer Aided Design)情報などの回路基板の回路パターン設計情報との整合をとり、回路基板の発生する近傍電磁界分布の測定結果を回路パターン設計情報上に表示し、回路基板上のノイズ源の特定を容易に行うことができるようになっている。
【特許文献1】特開2004−198232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁界プローブを用いて回路基板上の磁界分布を測定する場合は、プローブの向きに注意する必要がある。これは、磁界プローブの向きによって、磁界プローブを貫く磁束の量が変化するためである。
【0006】
従来のノイズ源を調査する技術では、回路基板の発生する近傍電磁界の分布を測定するにあたり、磁界プローブの向きを回路パターン設計情報と対応付けることができない。このため、従来のノイズ源を調査する技術では、各測定位置において、最大の磁界強度を得ることのできる向きに磁界プローブを手動で向ける必要がある。したがって、磁界強度の最大値を得るために各測定位置で全方位的に磁界プローブの向きを変えて測定する必要が生じ、従来のノイズ源を調査する技術では、測定時間が大幅に膨らんでしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、回路パターン設計情報にもとづき高速かつ容易に磁界強度分布測定を行うことができる磁界分布測定装置、磁界分布測定システム、磁界分布測定方法および磁界分布測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る磁界分布測定装置は、上述した課題を解決するために、回路パターン設計情報にもとづき、回路基板上の回路要素および回路パターンの配置情報を抽出する設計情報解析手段と、前記配置情報に応じて磁界プローブの向きを制御し、磁界強度の測定を行う磁界プローブ制御手段と、を備え、前記磁界プローブの向きは、プローブループを貫く磁束が最大となる向きであることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明に係る磁界分布測定システムは、上述した課題を解決するために、回路パターン設計情報を保持する回路パターン情報記憶手段と、前記回路パターン設計情報を取得する設計情報取得手段と、前記回路パターン設計情報にもとづき、回路基板上の回路要素および回路パターンの配置情報を抽出する設計情報解析手段と、磁界強度を測定する磁界プローブと、前記配置情報に応じて前記磁界プローブの向きを制御する磁界プローブ制御手段と、を備え、前記磁界プローブの向きは、プローブループを貫く磁束が最大となる向きであることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る磁界分布測定方法は、上述した課題を解決するために、回路パターン設計情報にもとづき、回路基板上の回路要素および回路パターンの配置情報を抽出し、前記配置情報に応じて磁界プローブの向きを制御し、磁界強度を測定する、ステップを有し、前記磁界プローブの向きは、プローブループを貫く磁束が最大となる向きであることを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る磁界分布測定装置、磁界分布測定システム、磁界分布測定方法および磁界分布測定プログラムによれば、回路パターン設計情報にもとづき高速かつ容易に磁界強度分布測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る磁界分布測定装置、磁界分布測定システム、磁界分布測定方法および磁界分布測定プログラムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る磁界分布測定システムの第1実施形態を示す概略的な全体構成図である。
【0014】
磁界分布測定システム10は、磁界分布測定装置20、CAD装置30および磁界プローブ40を有する。
【0015】
磁界分布測定装置20は、CPU21、RAM22、ROM23、磁界分布情報記憶部24、入力装置25および表示装置26を有する。磁界分布測定装置20は、CAD情報(回路パターン設計情報)にもとづいて磁界プローブ40を制御し、回路基板の発生する磁界分布を測定する。
【0016】
CPU21は、ROM23内に記憶されたプログラムにしたがって、磁界分布測定装置20の処理動作を制御する。CPU21は、ROM23内に記憶された磁界分布測定プログラムおよびプログラムの実行のために必要なデータを、RAM22へロードし、磁界分布測定プログラムにしたがって回路基板の発生する磁界分布を測定する処理を実行する。
【0017】
RAM22は、CPU21が実行するプログラムおよびデータを一時的に格納するワークエリアを提供する。
【0018】
ROM23は、磁界分布測定装置20の起動プログラム、磁界分布測定プログラムや、これらのプログラムを実行するために必要な各種データを記憶する。
【0019】
なお、ROM23は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、CPU21により読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、ROM23内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。
【0020】
CAD装置30は、回路基板の回路パターン設計を行うための装置であり、プリント基板の回路パターン情報を記憶するCAD情報記憶部31を有する。
【0021】
図2は、プリント基板上の配線の周辺磁界を測定する場合の、磁界プローブ40の最適な向きを示す説明図である。
【0022】
磁界プローブ40は、プローブループを備えた形状を有する一般的な磁界プローブである。この磁界プローブ40は、プローブループを通過する磁束の時間変化を誘起電圧として検出する。このため、たとえばプリント基板上の配線に交流電流を流した場合に生じる周辺磁界を測定する場合、磁界プローブ40の検出する磁界強度は、磁界プローブ40(プローブループ)の向きによって大きく変化してしまう。たとえば配線の発生する最大磁界強度を正確に測定するためには、図2に示すように、磁界強度測定対象配線とプローブループが構成する面とを、平行にする必要があることに注意する必要がある。
【0023】
本発明の主眼の一つは、磁界プローブ40を、CAD情報にもとづいて、自動的に最適な向きになるよう制御することにある。
【0024】
図3は、図1に示すCPU21による機能実現部の構成例を示す概略的なブロック図である。
【0025】
CPU21は、磁界分布測定プログラムによって、少なくとも設計情報取得手段としてのCAD情報取得部21a、表示制御部21b、注目領域設定部21c、設計情報解析手段としてのCAD情報解析部21d、磁界プローブ制御部21e、未測定対象物判定部21f、最大磁界強度算出部21gおよび未測定領域判定部21hとして機能する。この各部21a〜21hは、RAM22の所要のワークエリアを、データの一時的な格納場所として利用する。
【0026】
次に、CPU21の各部21a〜21hについて説明する。
【0027】
CAD情報取得部21aは、CAD装置30のCAD情報記憶部31から、プリント基板の設計情報を取得する機能を有する。
【0028】
表示制御部21bは、プリント基板の設計情報にもとづき、プリント基板の回路素子および回路パターンを表示装置26に表示する機能を有する。また、表示制御部21bは、磁界分布情報記憶部24から次に説明する注目領域における最大磁界強度と測定位置座標の情報を読み出し、表示装置26に最大磁界強度の情報を表示させる。
【0029】
注目領域設定部21cは、ユーザによりキーボードやマウスなどの入力手段を介して指示された走査領域内の注目領域サイズを受け、走査領域の情報にもとづき、走査領域内の複数の注目領域の位置(座標)を設定する機能を有する。本発明に係る磁界分布測定システム10は、この注目領域単位で磁界分布測定を行う。
【0030】
CAD情報解析部21dは、プリント基板の設計情報にもとづき、現在磁界プローブ40が所属している注目領域内の測定対象物(配線など)の配置情報(少なくとも座標および対象物の種類を含む)を抽出する機能を有する。
【0031】
磁界プローブ制御部21eは、磁界プローブ40を所要の位置へ移動させる機能を有する。また、磁界プローブ制御部21eは、プリント基板の設計情報にもとづいて、磁界プローブ40の向きを決定する機能を有する。さらに、磁界プローブ制御部21eは、磁界プローブ40のプローブループの両端に誘起された電圧をスペクトラムアナライザで信号処理することにより、測定位置における磁界強度を測定する機能を有する。
【0032】
未測定対象物判定部21fは、注目領域内に未測定の測定対象物があるかどうか判定する機能を有する。
【0033】
最大磁界強度算出部21gは、RAM22の所要のワークエリアに記憶されているこの注目領域での1箇所または複数個所の磁界強度測定結果にもとづき、この注目領域における最大磁界強度を求める機能を有する。また、最大磁界強度算出部21gは、この注目領域における最大磁界強度と測定位置座標とを関連付けて、磁界分布情報記憶部24に記憶させる機能を有する。
【0034】
未測定領域判定部21hは、走査領域内で未測定の注目領域がないかどうか判定する機能を有する。
【0035】
次に、磁界分布測定システム10の作用について説明する。
【0036】
図4は、図1に示す磁界分布測定システム10により、CAD装置30のCAD情報記憶部31が記憶しているプリント基板設計(CAD形状)情報(回路パターン設計情報)にもとづき高速かつ容易に磁界強度分布測定を行う際の手順を示すフローチャートである。図3において、Sに数字を付した符号は、フローチャートの各ステップを示す。
【0037】
まず、ステップS1において、CAD情報取得部21aは、CAD装置30のCAD情報記憶部31から、回路要素(素子)および回路パターン(プリント基板配線)などのプリント基板の設計情報を取得する。
【0038】
次に、ステップS2において、表示制御部21bは、このプリント基板の設計情報にもとづき、プリント基板の回路素子および回路パターンを表示装置26に表示する。
【0039】
次に、ステップS3において、ユーザは、磁界プローブ40の現在の位置を初期設定位置として磁界分布測定システム10に通知する。たとえば、プリント基板から基板面垂直方向に適当な距離だけ離れた位置に実際に磁界プローブ40を移動させ、このときの磁界プローブ40の位置(座標)を、初期設定位置とする。
【0040】
この初期設定位置の調整は、磁界プローブ40の位置(座標)を、プリント基板上での位置(座標)に対して1対1に関連付けるために行う。あらかじめ互いの位置関係が1対1に対応している場合は、この調整を行う必要はない。
【0041】
次に、ステップS4において、ユーザは、キーボードやマウスなどの入力手段を介して、プリント基板上の走査領域を設定する。磁界分布測定システム10は、この走査領域の範囲内において、磁界分布測定を行う。このユーザによって設定された走査領域の情報は、RAM22の所要のワークエリアに記憶しておくとよい。
【0042】
次に、ステップS5において、注目領域設定部21cは、ユーザによりキーボードやマウスなどの入力手段を介して指示された走査領域内の注目領域サイズを受け、走査領域の情報にもとづき、走査領域内の複数の注目領域の位置(座標)を設定する。磁界分布測定システム10は、この注目領域単位で磁界分布測定を行う。なお、この注目領域は、あらかじめ設定しておいたものを用いてもよい。
【0043】
次に、ステップS6において、CAD情報解析部21dは、プリント基板の設計情報にもとづき、現在磁界プローブ40が所属している注目領域内の測定対象物(配線など)の配置情報(少なくとも座標および対象物の種類を含む)を抽出する。
【0044】
次に、ステップS7において、磁界プローブ制御部21eは、測定対象物の上のプリント基板から所要の位置だけ離れた位置(以下、測定位置という)へ磁界プローブ40を移動する。この測定位置は、測定対象物が発生する磁界の最大値を測定するため、基板面に対して対象物の直上(真上)であること好ましい。また、この測定位置は、注目領域における測定対象物の中心近傍の直上となる位置がさらに好ましい。たとえば、測定対象物が配線であり、この配線が注目領域を横切る場合、この測定位置を、注目領域端で切られた線分の中点の直上とするとよい。この位置で磁界強度の測定位置を行う。
【0045】
次に、ステップS8において、磁界プローブ制御部21eは、プリント基板の設計情報にもとづいて、磁界プローブ40の向きを決定する。たとえば、測定対象物が配線である場合は、配線と磁界プローブ40が図2に示した位置関係になるように、磁界プローブ40の向きを決定する。
【0046】
次に、ステップS9において、磁界プローブ制御部21eは、磁界プローブ40のプローブループの両端に誘起された電圧をスペクトラムアナライザで信号処理することにより、測定位置における磁界強度を測定する。この磁界強度は、測定位置座標と関連付けて、RAM22の所要のワークエリアに記憶しておく。
【0047】
次に、ステップS10において、未測定対象物判定部21fは、注目領域内に未測定の測定対象物があるかどうか判定する。ある場合はステップS7にもどる。ない場合は、ステップS11に進む。
【0048】
次に、ステップS11において、最大磁界強度算出部21gは、RAM22の所要のワークエリアに記憶されているこの注目領域での1箇所(1測定対象物)または複数個所(複数測定対象物)の磁界強度測定結果にもとづき、この注目領域における最大磁界強度を求める。また、最大磁界強度算出部21gは、この注目領域における最大磁界強度と測定位置座標とを関連付けて、磁界分布情報記憶部24に記憶させる。そして、最大磁界強度算出部21gは、この注目領域での測定が終了した旨を、表示制御装置21bおよび未測定領域判定部21hに知らせる。
【0049】
次に、ステップS12において、表示制御部21bは、磁界分布情報記憶部24からこの注目領域における最大磁界強度と測定位置座標の情報を読み出し、表示装置26に最大磁界強度の情報を表示させる。なお、最大磁界強度の情報の表示は、プリント基板の配線上に重畳して表示するようにしてもよいし、別画面(異なる表示装置26上や、同一表示装置26上の別ウィンドウなど)に表示するようにしてもよい。
【0050】
次に、ステップS13において、未測定領域判定部21hは、走査領域内で未測定の注目領域がないかどうか判定する。未測定注目領域がある場合は、ステップS6にもどる。一方、ない場合は、一連の磁界強度分布測定手順は終了となる。
【0051】
以上の手順により、CAD装置30のCAD情報記憶部31が記憶しているプリント基板設計(CAD形状)情報(回路パターン設計情報)にもとづき高速かつ容易に磁界強度分布測定を行うことができる。
【0052】
図1に示した磁界分布測定システム10は、CAD装置30のCAD情報記憶部31が記憶しているプリント基板設計(CAD形状)情報(回路パターン設計情報)にもとづき、磁界プローブ40の向きを自動的に決定する。このため、測定位置で磁界プローブ40の向きを変化させつつ測定を行い極大となる向きを探す手間を省略することができる。したがって、本実施形態に係る磁界分布測定システム10によれば、プリント基板が発生する磁界強度の分布測定を、高速かつ効率的に行うことができる。
【0053】
また、本実施形態に係る磁界分布測定システム10は、走査領域を設定し、さらに注目領域を設定したうえで、注目領域に所属する測定対象物の直上に測定位置を決定してから、磁界プローブ40の向きを自動的に決定する。したがって、この磁界分布測定システム10は、正確かつ容易に、プリント基板が発生する磁界強度分布測定を行うことができる。
【0054】
次に、本発明に係る磁界分布測定システムの第2実施形態を説明する。
【0055】
図5は、本発明に係る磁界分布測定システムの第2実施形態におけるCPU21による機能実現部の構成例を示す概略的なブロック図である。
【0056】
この第2実施形態に示す磁界分布測定システム10Aは、磁界プローブ40の走査対象が一本の配線である点が第1実施形態と異なる。本実施形態に係る磁界分布測定システム10Aは、CPU21による機能実現部の構成が図1に示す磁界分布測定システム10とことなる。他の構成および作用については図1に示す磁界分布測定システム10と実質的に異ならないため、同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
プリント基板上の磁界が強く発生している問題箇所がわからない段階では、プリント基板の広い範囲にわたって測定を行うことも重要である。しかし、測定対象配線を1本選び、この配線について始点から終点までの磁界強度分布を測定することに重要な意味がある場合もある。このような場合として、たとえば、おおまかに問題箇所が判明してきた場合に、この問題箇所を横断する配線を測定する場合や、高速通信を行う特定の配線について測定を行う場合などが挙げられる。いずれの場合においても、特定の配線のみを測定対象に指定することにより、現象を明確化することができる可能性が高くなる。
【0058】
この場合、ユーザにより選択された測定対象配線について、プリント基板設計情報にもとづき、この配線に沿って、磁界プローブ40の向きを自動的に最適な向きとし、適当な距離おきに磁界強度を測定すればよい。
【0059】
図5に示すように、CPU21は、磁界分布測定プログラムによって、少なくともCAD情報取得部21a、表示制御部21b、CAD情報解析部21d、磁界プローブ制御部21e、最大磁界強度算出部21g、終点判定部21iおよび未測定配線判定部21jとして機能する。
【0060】
終点判定部21iは、測定位置が測定対象配線の終点かどうかを判定する機能を有する。この判定において、測定位置と終点の距離が、あらかじめ設定された測定間隔(距離)よりも短い場合には、終点であるとみなすものとするとよい。
【0061】
未測定配線判定部21jは、未測定の選択配線がないかどうか判定する機能を有する。
【0062】
次に、磁界分布測定システム10Aの作用について説明する。
【0063】
図6は、第2実施形態に係る磁界分布測定システム10Aにより、CAD装置30のCAD情報記憶部31が記憶しているプリント基板設計(CAD形状)情報(回路パターン設計情報)にもとづき高速かつ容易に磁界強度分布測定を行う際の手順を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号は、フローチャートの各ステップを示す。また、図3と同等のステップには同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0064】
この手順は、あらかじめ、測定間隔(距離)を設定した上でスタートとなる。この設定は、たとえばユーザにより、入力手段を介して設定したものを、RAMの所要のワークエリアに記憶しておくことなどにより行う。
【0065】
ステップS21において、ユーザは、キーボードやマウスなどの入力手段を介して、プリント基板上の測定対象配線を指定する。この配線の指定は、複数本の指定でも構わない。磁界分布測定システム10Aは、この測定対象配線について、磁界分布測定を行う。このユーザによって設定された測定対象配線の情報は、RAM22の所要のワークエリアに記憶しておくとよい。
【0066】
次に、ステップS22において、CAD情報解析部21dは、プリント基板の設計情報にもとづき、測定対象配線の配置情報(少なくとも座標および対象物の種類を含む)を抽出する。
【0067】
次に、ステップS23において、磁界プローブ制御部21eは、測定対象配線の直上の測定位置へ磁界プローブ40を移動する。この測定位置は、測定対象配線のいずれかの端点とする。この端点からもう一方の端点(以下、終点という)まで、あらかじめ設定された測定間隔(距離)で磁界強度測定を行う。
【0068】
ステップS24において、最大磁界強度算出部21gは、RAM22の所要のワークエリアに記憶されているこの測定位置での磁界強度測定結果と測定位置座標とを関連付けて、磁界分布情報記憶部24に記憶させる。そして、最大磁界強度算出部21gは、この注目領域での測定が終了した旨を、表示制御装置21bおよび未測定領域判定部21hに知らせる。
【0069】
次に、ステップS25において、表示制御部21bは、磁界分布情報記憶部24からこの測定位置での磁界強度測定結果と測定位置座標の情報を読み出し、表示装置26に測定位置での磁界強度の情報を表示させる。なお、最大磁界強度の情報の表示は、プリント基板の配線上に重畳して表示するようにしてもよいし、別画面(異なる表示装置26上や、同一表示装置26上の別ウィンドウなど)に表示するようにしてもよい。
【0070】
次に、ステップS26において、終点判定部21iは、測定位置が測定対象配線の終点かどうかを判定する。終点でない場合には、ステップS27に進む。一方、終点である場合にはステップS28に進む。
【0071】
次に、ステップS27において、磁界プローブ制御部21eは、あらかじめ設定された測定間隔(距離)だけ、配線に沿って、測定位置から終点方向へと磁界プローブ40を移動し、ステップS8にもどる。
【0072】
他方、ステップS28において、未測定配線判定部21jは、未測定の選択配線がないかどうか判定する。未測定配線がある場合にはステップS22にもどる。一方、ない場合には、一連の磁界強度分布測定の手順は終了となる。
【0073】
本実施形態に係る磁界分布測定システム10Aは、第1実施形態に示した磁界分布計測システムと同様の作用効果を奏する。また、本実施形態に係る磁界分布測定システム10Aは、測定対象配線を1本選び、この配線について始点から終点までの磁界強度分布を測定する。したがって、本実施形態に係る磁界分布測定システム10Aによれば、プリント基板上の磁界分布発生原因を明確化するために必要な情報をより多く取得することができ、ノイズ源の特定が容易となり、その工業的価値は非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る磁界分布測定システム10の第1実施形態を示す概略的な全体構成図。
【図2】プリント基板上の配線の周辺磁界を測定する場合の、磁界プローブ40の最適な向きを示す説明図。
【図3】図1に示すCPU21による機能実現部の構成例を示す概略的なブロック図。
【図4】図1に示す磁界分布測定システム10により、CAD装置30のCAD情報記憶部31が記憶しているプリント基板設計(CAD形状)情報(回路パターン設計情報)にもとづき高速かつ容易に磁界強度分布測定を行う際の手順を示すフローチャート。
【図5】本発明に係る磁界分布測定システムの第2実施形態におけるCPU21による機能実現部の構成例を示す概略的なブロック図。
【図6】第2実施形態に係る磁界分布測定システム10Aにより、CAD装置30のCAD情報記憶部31が記憶しているプリント基板設計(CAD形状)情報(回路パターン設計情報)にもとづき高速かつ容易に磁界強度分布測定を行う際の手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0075】
10 磁界分布測定システム
20 磁界分布測定装置
21 CPU
21a CAD情報取得部
21b 表示制御部
21c 注目領域設定部
21d CAD情報解析部
21e 磁界プローブ制御部
21f 未測定対象物判定部
21g 最大磁界強度算出部
21h 未測定領域判定部
21i 終点判定部
21j 未測定配線判定部
22 RAM
23 ROM
24 磁界分布情報記憶部
25 入力装置
26 表示装置
30 CAD装置
31 CAD情報記憶部
40 磁界プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路パターン設計情報にもとづき、回路基板上の回路要素および回路パターンの配置情報を抽出する設計情報解析手段と、
前記配置情報に応じて磁界プローブの向きを制御し、磁界強度の測定を行う磁界プローブ制御手段と、
を備え、
前記磁界プローブの向きは、プローブループを貫く磁束が最大となる向きであることを特徴とする磁界分布測定装置。
【請求項2】
前記磁界プローブ制御手段により行われる磁界強度の測定の対象となる領域を複数に分割した注目領域を設定する注目領域設定手段と、
この注目領域内における最大磁界強度を算出する最大磁界強度算出手段とをさらに備え、
前記磁界プローブ制御手段は、この注目領域内における前記回路要素および回路パターンの配置情報に応じて磁界プローブの移動および向きを制御し、磁界強度の測定を行うよう構成された請求項1記載の磁界分布測定装置。
【請求項3】
前記複数に分割した注目領域のそれぞれについて、前記最大磁界強度とこの最大磁界強度を測定した測定位置とを関連付けて記憶する磁界分布情報記憶部と、
この磁界分布情報記憶部から前記最大磁界強度とこの最大磁界強度を測定した測定位置の情報を読み出し、表示装置に最大磁界強度分布の情報を表示させる表示制御手段とをさらに備えた請求項2記載の磁界分布測定装置。
【請求項4】
前記磁界プローブ制御手段は、特定の配線に沿って磁界プローブの移動および向きを制御し、磁界強度の測定を行うよう構成された請求項1記載の磁界分布測定装置。
【請求項5】
回路パターン設計情報を保持する回路パターン情報記憶手段と、
前記回路パターン設計情報を取得する設計情報取得手段と、
前記回路パターン設計情報にもとづき、回路基板上の回路要素および回路パターンの配置情報を抽出する設計情報解析手段と、
磁界強度を測定する磁界プローブと、
前記配置情報に応じて前記磁界プローブの向きを制御する磁界プローブ制御手段と、
を備え、
前記磁界プローブの向きは、プローブループを貫く磁束が最大となる向きであることを特徴とする磁界分布測定システム。
【請求項6】
回路パターン設計情報にもとづき、回路基板上の回路要素および回路パターンの配置情報を抽出し、
前記配置情報に応じて磁界プローブの向きを制御し、
磁界強度を測定する、
ステップを有し、
前記磁界プローブの向きは、プローブループを貫く磁束が最大となる向きであることを特徴とする磁界分布測定方法。
【請求項7】
前記磁界強度を測定する対象となる領域を複数に分割した注目領域を設定するステップと、
この注目領域内における最大磁界強度を算出するステップと、
をさらに有し、
前記磁界プローブの向きを制御するステップは、前記注目領域内における前記回路要素および回路パターンの配置情報に応じて磁界プローブの移動および向きを制御するステップである請求項6記載の磁界分布測定方法。
【請求項8】
前記複数に分割した注目領域のそれぞれについて、前記最大磁界強度とこの最大磁界強度を測定した測定位置とを関連付けて記憶するステップと、
この磁界分布情報記憶部から前記最大磁界強度とこの最大磁界強度を測定した測定位置の情報を読み出し、表示装置に最大磁界強度分布の情報を表示させるステップとをさらに有する請求項7記載の磁界分布測定方法。
【請求項9】
前記磁界プローブの向きを制御するステップは、特定の配線に沿って磁界プローブの移動および向きを制御するステップである請求項6記載の磁界分布測定方法。
【請求項10】
コンピュータを、
請求項5記載の回路パターン情報記憶手段と、設計情報取得手段と、設計情報解析手段と磁界プローブ制御手段
として機能させる磁界分布測定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−111741(P2008−111741A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295372(P2006−295372)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】