説明

磁界反射型センサ、包装箱内の添付書面有無検査装置、および、導電性膜の厚さ測定装置

【課題】距離を計測する場合に長い検出距離で精度が高く、導電性膜の厚さを計測する場合に出力電圧が高い小型の磁界反射型センサを提供する。
【解決手段】磁界反射型センサ1は、交番磁界である一次磁界を発信し導電性の被対象物に渦電流を生じさせる励磁器10と、渦電流によって発生した二次磁界を検出して受信信号を生成する受信器20と、励磁器10と受信器20とを保持する非導電性材製のケース40とを備え、励磁器10は、第1脚部111と第2脚部112とこの二つの脚部を連結する梁部113とからなる門型の励磁コア11と、梁部113に巻装した励磁コイル16とで構成するとともに、二つの脚部の端面側を検出方向に向けて配置し、受信器20は、棒状の受信コア21と、受信コア21に巻き回した受信コイル26とで構成するとともに、第1脚部111の近傍で励磁器10が発信した一次磁界をほとんど検出しない位置および角度に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交番磁界を発信し導電性の被対象物に渦電流を生じさせる励磁器と、渦電流によって発生した二次磁界を検出して受信信号を生成する受信器とを備えた磁界反射型センサに関するものであり、さらには、このセンサを用いた包装箱内の添付書面有無検査装置、および、導電性膜の厚さ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品業界においては、錠剤やカプセル剤等の包装について、アルミブリスターシート(PTP包装とも呼ばれる)が広く用いられている。アルミブリスターシートとは、錠剤やカプセル剤の形にへこませた硬質プラスチックに錠剤やカプセル剤を入れ、アルミニウムフィルムで封をしたものである。そして、市販薬においては使用上の注意が記載された添付書面とともに包装され販売されるのが一般的となっている。ところで、医薬品は使用上の注意に基づいて服用することが厳しく要求されており、包装箱に封をした後に使用上の注意を記載した添付書面の有無を検査する方法が強く求められてきた。
【0003】
このため、一部の医薬品製造工場では出荷前の最終工程の中で、封をした後の包装箱の質量を計測することによって添付書面の有無を検査する方法が行われている。しかし、包装箱および添付書面の質量が吸湿により変化することから、質量を計測することによって添付書面の有無を正確に検査するのは容易ではなかった。
【0004】
そこで、本発明者は、包装箱内の添付書面が図10に示すとおりアルミブリスターシートを挟み込むようにして配置されている点に着目し、包装箱の底面からアルミブリスターシートまでの距離を正確に計測することができれば添付書面の有無を検査できると考えた。
【0005】
そして、この距離を計測するためには、アルミブリスターシートに向かって交番磁界を発信しアルミブリスターシートに渦電流を生じさせる励磁器と、この渦電流によって発生した二次磁界を検出して受信信号を生成する受信器とを備えた磁界反射型センサを用いればよいと考えた。この方法によれば包装箱および添付書面の吸湿を考慮する必要がない。
【0006】
しかし、このセンサは既存の生産ラインに取り付けるものであるため、小型でなければならない。しかも、センサから包装箱内のアルミブリスターシートまでの距離は、図10に示すとおり最大で20mm程度にもなり、例えば特許文献1に記載のような従来の小型磁界反射型センサでは、これだけの長い距離を高精度に計測することはできなかった。
【0007】
また、目的は異なるが、磁界反射型センサを用いたものとして、導電性膜の厚さを測定する装置が種々提案されている(例えば、特許文献2)。しかし、特許文献2に記載の技術が受信器の出力電圧から導電性膜の厚さを算出するのではなく、出力電圧の位相角度から導電性膜の厚さを算出していることからもわかるとおり、従来の磁界反射型センサでは、導電性膜に対し受信器の出力電圧が十分ではなく、導電性膜の厚さを正確に測定することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−90105号公報
【特許文献2】特開2001−209930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、距離を計測する場合に長い検出距離で精度が高く、導電性膜の厚さを計測する場合に出力電圧が高い小型の磁界反射型センサを提供することである。また、さらにはこの磁界反射型センサを用いた包装箱内の添付書面有無検査装置、および、導電性膜の厚さ測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明では、交番磁界である一次磁界を発信し、導電性の被対象物に渦電流を生じさせる励磁器と、渦電流によって発生した二次磁界を検出して受信信号を生成する受信器と、励磁器と受信器とを保持する非導電性材製のケースとを備えた磁界反射型センサであって、励磁器は、第1脚部と第2脚部とこの二つの脚部を連結する梁部とで構成された門型の励磁コアと、梁部に巻装された励磁コイルとからなり、二つの脚部の端面側を検出方向に向けるように配置され、受信器は、棒状の受信コアと、この受信コアに巻き回された受信コイルとからなり、励磁器の第1脚部の近傍で励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない位置および角度に配置されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の磁界反射型センサにおいて、励磁コアは、第2脚部の幅が第1脚部の幅の2分の1以下であることを特徴としている。なお、ここでいう脚部の幅とは、門型コアを正面から見たときのそれぞれの脚部の左端から右端までの距離のことをいう。
【0012】
請求項3に係る発明では、交番磁界である一次磁界を発信し、導電性の被対象物に渦電流を生じさせる励磁器と、渦電流によって発生した二次磁界を検出して受信信号を生成する受信器と、励磁器と受信器とを保持する非導電性材製のケースとを備えた磁界反射型センサであって、励磁器は、第1脚部とこの脚部の上部に接続された梁部とで構成されたL字型の励磁コアと、梁部に巻装された励磁コイルとからなり、第1脚部の端面側を検出方向に向けるように配置され、受信器は、棒状の受信コアと、この受信コアに巻き回された受信コイルとからなり、励磁器の第1脚部の近傍で励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない位置および角度に配置されていることを特徴としている。
【0013】
請求項4に係る発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の磁界反射型センサにおいて、受信コアは、断面形状が円形または角丸長方形で、断面形状が円形の場合は直径、角丸長方形の場合は短手方向の長さが軸方向の長さの半分以下であり、受信コイルは、軸方向の長さが受信コアの軸方向の長さの半分以下で、受信コアの中央よりも検出方向側に寄って巻かれていることを特徴としている。
【0014】
請求項5に係る発明では、請求項4に記載の磁界反射型センサにおいて、受信コイルは、受信コアの検出方向側の端部に可能な限り寄って巻かれていることを特徴としている。
【0015】
請求項6に係る発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の磁界反射型センサにおいて、受信コアの軸方向の端から端までは、励磁コアの被対象物側の端部から被対象物側と反対側の端部までのラインを梁部の長手方向と同方向に平行移動した範囲内に収まっていることを特徴としている。
【0016】
請求項7に係る発明では、請求項1〜6のいずれかに記載の磁界反射型センサにおいて、励磁コアと同等の熱膨張率であるセラミック材製で楔形の受信器背面板をさらに備え、受信器と受信器背面板、受信器背面板と励磁コアは固定され、励磁器に対する受信器の位置と傾斜角度が保持されていることを特徴としている。
【0017】
請求項8に係る発明では、請求項7に記載の磁界反射型センサにおいて、受信器背面板を介して受信器と励磁器とを固定した後で、励磁コアの梁部に対する励磁コイルの傾斜角を調整し、受信器が励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない状態としていることを特徴としている。
【0018】
請求項9に係る発明では、請求項8に記載の磁界反射型センサにおいて、励磁コアの梁部に対する励磁コイルの傾斜角を調整し固定した後で、さらに励磁器周辺に励磁コアと同材料の小片を取り付け、受信器が励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない状態としていることを特徴としている。
【0019】
請求項10に係る発明では、請求項7〜9のいずれかに記載の磁界反射型センサにおいて、ケースの受信器側側面には凹みが設けられており、ケース完成後、さらに凹み内に励磁コアと同材料の小片を取り付け、受信器が励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない状態としていることを特徴としている。
【0020】
請求項11に係る発明の包装箱内の添付書面有無検査装置では、アルミブリスターシートと添付書面が包装箱に詰められた状態で搬送装置により搬送される際に、包装箱内の添付書面の有無を検査する装置であって、請求項1〜10のいずれかに記載の磁界反射型センサと、受信器によって生成された受信信号の変化に基づき、包装箱内の添付書面の有無を判定する判定手段とを備え、磁界反射型センサは、検出方向を上向きにして包装箱の下方に配置されていることを特徴としている。なお、ここでいうアルミブリスターシートには、錠剤やカプセル剤の形にへこませた硬質プラスチックに錠剤やカプセル剤を入れ、アルミニウムフィルムで封をしたものだけでなく、粉剤等の全面をアルミニウムフィルムで覆ったものも含まれる。
【0021】
請求項12に係る発明では、導電性膜の厚さ測定装置であって、請求項1〜10のいずれかに記載の磁界反射型センサと、受信器によって生成された受信信号の変化に基づき、導電性膜の厚さを算出する算出手段とを備え、磁界反射型センサと導電性膜との距離が一定にされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明の磁界反射型センサは、次の特徴を備えている。まず、第1に励磁コイルの向きを検出方向と略垂直に配置させていることである。一般に磁界反射型センサでは、励磁コイルの向きを検出方向と平行に配置する方式と垂直に配置する方式があるが、図2に示すとおり、一次磁界をより遠くまで広げさせるのは、垂直に配置する方式である。本発明では励磁コイルの向きを検出方向と略垂直に配置することで、平行に配置する場合と比較して一次磁界をより遠くまで広げさせることができる。
【0023】
第2に励磁器は、第1脚部と第2脚部とこの二つの脚部を連結する梁部とで構成された門型の励磁コアを有していることである。励磁コイルを梁部に巻装することで、一次磁界をより強く発生させることができる。また、コアの形状が門型になっていることで、図3(a)に示すように、検出方向での一次磁界の磁束密度が高まり、より遠くまで磁界を及ぼすことができる。また、一般にセンサは周囲金属に取り付けられるが、第2脚部は、センサ後方にある周囲金属から発生する二次磁界の影響を軽減させることができる。第1脚部の効果は後述する。
【0024】
第3に受信器は、一次磁界をほとんど検出しない位置および角度に配置されていることである。受信器が一次磁界を検出しないとは、受信コアに巻かれた受信コイルに一次磁界の磁束が鎖交していない状態のことである。磁界反射型センサにおいて、受信コイルに一次磁界の磁束が多く鎖交している状態では、二次磁界の僅かな変化は検出し難い。波の重ね合わせにより、位相の異なる二次磁界の僅かな変化は、強い一次磁界の位相差に置き換わってしまう。このような状態では、いくら一次磁界を強くしても二次磁界以上に一次磁界の鎖交成分が増加してしまい、受信器の感度は上がらない。また、このような状態では、増幅器によって受信ゲインを上げても強い一次磁界に対する感度も上がり、弱い二次磁界に対する感度を大きく上げられない。本発明では、受信器は、一次磁界の磁束がほとんど鎖交しない位置及び角度に配置されているため、一次磁界中にありながらも二次磁界のみを受信することができ、二次磁界の僅かな変化も検出することができる。
【0025】
第4に励磁器のコアが第1脚部を有していることである。センサを小型化するためには、受信器は、励磁コイルの近くに配置しなければならない。しかし、仮に第1脚部がない場合に、受信器を励磁コイルの近くに配置しようとすると、受信コアに巻かれた受信コイルが一次磁界と鎖交しないようにするためには、検出方向に対する受信器の傾斜角度が大きくなる。そして、おそらくそれが原因であると思われるが、次のような不都合が生じる。まず、図4に示すように、検出中心が受信器とは反対側のセンサからはみ出した位置になる。これでは、利用上の違和感がある。また、図6に示すように、検出中心に沿ってアルミ板を遠方から近づけていった場合の出力電圧が低い。また、ある一定距離離してアルミ板を受信器側から励磁器側に移動させた場合の出力電圧は、図7(a)に示すように、三つの山が生じ、センサとして望ましくない。
【0026】
しかし、第1脚部を有することで、これらの問題が解決される。検出中心は、図5に示すように、センサ内の受信器近傍に位置し、利用上違和感がない。また、図6に示すように、検出中心に沿ってアルミ板を遠方から近づけていった場合の出力電圧が高い。また、ある一定距離離してアルミ板を受信器側から励磁器側に移動させた場合の出力電圧は、図7(b)に示すように、山が一つであり、センサとして望ましい出力特性となる。第1脚部には、梁部と共に、第1脚部の横外側空間の一次磁界強度を弱め、第1脚部から漏れ出る一次磁界のベクトル方向を変える働きを持つ。これにより、検出方向に対する受信器の傾斜角度が小さくなる。
【0027】
第5に受信器が棒状の受信コアを有していることである。棒状の受信コアを有することで二次磁束を集め、鎖交磁束密度を高くすることができる。
【0028】
これらにより、請求項1に係る発明の磁界反射型センサによれば、距離を計測する場合に長い検出距離で精度を高くすることができる。また、導電性膜の厚さを計測する場合に出力電圧を高くすることができる。そして、さらにセンサ自体を小型化することができる。
【0029】
請求項2に係る発明の磁界反射型センサによれば、励磁コアは、第2脚部の幅が第1脚部の幅の2分の1以下である。第1脚部が一次磁界を遮る効果を発揮するためには、ある程度の幅を必要とする。しかし、第2脚部の役割はセンサ後方にある周囲金属からの影響を軽減させることと、検出方向での一次磁界の磁束密度を高めることであって、第1脚部ほど幅を必要としない。したがって、第2脚部の幅を第1脚部の幅の2分の1以下としても支障はない。これにより、センサをより小型化することができる。
【0030】
請求項3に係る発明の磁界反射型センサは、請求項1の構成とほぼ同様であるが、励磁コアが門型ではなく、L字型となっている。これによって、周囲金属からの影響を若干受けやすくなるものの、図3(b)に示すように、請求項1の磁界反射型センサと比較して、より遠方まで磁界を広げることができる。その他の効果は請求項1と同様である。
【0031】
請求項4に係る発明の磁界反射型センサは、次の特徴を備えている。まず、第1に受信コアは、断面形状が円形または角丸長方形で、断面形状が円形の場合は直径、角丸長方形の場合は短手方向の長さが軸方向の長さの半分以下の棒状であることである。コアの形状を細長くすることで反磁場係数を小さくすることができることから、二次磁界を受信する感度を上げることができる。
【0032】
第2に受信コアに巻き回された受信コイルは、軸方向の長さが受信コアの軸方向の長さの半分以下で、受信コアの中央よりも、検出方向に寄って巻かれていることである。励磁コイルから発せられる一次磁界の周波数が高いほど、被対象物に印加される起電力が高くなる。起電力が高ければ、被対象物に流れる渦電流密度が高い。渦電流密度が高ければ、二次磁界強度が強い。遠方にある被対象物までの距離を高精度に測定するには、返される二次磁界が強くなる高い動作周波数が有利である。また、周波数が高いほど、表皮効果により被対象物に浸み込む一次磁界の深さが浅くなる。非常に薄い導電性薄膜の厚さを測定するにも高い動作周波数が有利である。一方で、コイルは周波数が高くなると誘導性から容量性に変質し、インピーダンスも高くなる。本発明では、受信コイルの軸方向の長さを短くすることで巻き数を減らし、線間容量を低減させて並列共振周波数を高くしている。これにより、高い動作周波数まで誘導性を維持し、且つインピーダンスを低く抑えることができる。
【0033】
第3に受信コイルが受信コアの中央よりも端側に寄って巻かれていることである。これは、インダクタンスを低減させる効果があり、インピーダンスをさらに低く抑えることができる。また、受信コイルは、自己誘導性と浮遊容量によって自己発振を起こし、これは自己発生ノイズとして現れる。測定に悪影響を及ぼす自己発生ノイズは、できるだけ小さいことが望ましい。本発明では、受信コイルが受信コアの中央よりも端側に寄って巻かれていることで中央に巻いた場合と比較して自己発生ノイズを低減させることができる。これは、中央をずらして巻くことで発振に必要な条件である平衡状態が崩れ、結果、自己発振が抑制されるためであると推察する。これにより、安定した測定をすることができる。
【0034】
これらにより、請求項4係る発明の磁界反射型センサによれば、距離を計測する場合により長い検出距離でより精度を高くすることができる。また、導電性膜の厚さを計測する場合により出力電圧を高くすることができる。
【0035】
請求項5に係る発明の磁界反型センサによれば、受信コイルが受信コアの検出方向側の端部に可能な限り寄って巻かれている。検出方向遠方を発生源としセンサに到達する二次磁界の磁束は、受信コアに集められるが、検出方向側端で最も磁束密度が高くなり、反対側端で最も磁束密度が低くなる。磁束密度が最も高くなる検出軸方向側の端部に受信コイルを巻くことによって、少ない巻き数で受信起電力を高めることができる。
【0036】
請求項6に係る発明の磁界反射型センサによれば、受信コアの高さが励磁コアの高さの範囲内に収まっている。受信コアの高さが励磁コアの高さを超えてしまうと、受信コアが一次磁界を吸収してしまい、一次磁界の空間分布を大きく変えてしまう。そうすると、結果的に受信器は一次磁界の影響を大きく受けてしまう。本発明によれば、受信器が一次磁界の影響を大きく受けることがない。
【0037】
請求項7に係る発明の磁界反射型センサによれば、励磁コアと同等の熱膨張率であるセラミック材製で楔形の受信器背面板をさらに備えている。励磁コイルが門型の励磁コアの粱部に巻装された構成では、受信器が配置される第1脚部の横外側空間の一次磁界強度は、第1脚部によって弱められているものの、一次磁界の鎖交磁束をほぼゼロにする受信器の傾斜角度の設定は微妙となる。励磁コアの第1脚部に対する受信器の傾斜角度は、僅かな角度変動で大きく出力変化をもたらす。したがって、製造過程において、受信器と励磁器とを接着固定する際に、硬化収縮によって両者間の位置と角度が変動しないようにしなければならない。また、製造後においても、受信器は、励磁器が発信する一次磁界をほとんど検出しない位置および角度に完全固定されていなければならない。本発明では、受信器と励磁器とを楔形の受信器背面板を介し接着することでこれを実現している。また、受信器背面板の材料を励磁コアと同等の熱膨張率であるセラミックとすることで、熱によって励磁コアの第1脚部に対する受信器の傾斜角度が変動するのを極力抑えている。
【0038】
請求項8に係る発明の磁界反射型センサによれば、受信器背面板を介して受信器と励磁器とを固定した後で、励磁コアの梁部に対する励磁コイルの傾斜角を調整している。受信器の傾斜は、僅かな角度変動で大きな出力変動をもたらす。このため、受信器が励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない状態とするには、細かな角度設定と固定が求められる。しかし、製造過程において、設定と固定の両方を達成するのは現実的には容易でない。ところで、励磁コイルの傾斜調整は、受信器の傾斜調整に比べ調整範囲が狭いが、角度毎の出力変動が小さく微調整に向く。このため、製造過程において、受信器背面板を介して受信器と励磁器とを固定した後で、励磁コイルの傾斜角を調整することで、受信器が励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない状態を実現している。
【0039】
請求項9に係る発明の磁界反射型センサによれば、励磁コアの梁部に対する励磁コイルの傾斜角を調整し固定した後で、さらに励磁器周辺に励磁コアと同材料の小片を取り付けている。上述のように励磁コイルの傾斜角を調整し固定した場合であっても、接着剤の硬化収縮等により、受信器と励磁コイルとの位置関係が若干ずれ、さらに微調整が必要となる場合がある。このため、励磁器周辺に励磁コアと同材料の小片を取り付け、小片の大きさ、取り付け位置を調整することによって、一次磁界の空間分布を僅かに変更させ、受信器が励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない状態を実現している。
【0040】
請求項10に係る発明の磁界反射型センサによれば、ケースの受信器側側面には凹みが設けられており、ケース完成後、さらに凹み内に励磁コアと同材料の小片を取り付けている。受信器と励磁器とを樹脂ケーシングするにあたり、注型樹脂や充填樹脂の硬化収縮により、受信器と励磁コイルとの位置関係が若干ずれ、さらに微調整が必要となる場合がある。このため、ケース外部の受信器側側面に凹みを設け、凹み内に励磁コアと同材料の小片を取り付け、小片の大きさ、凹み内部での取り付け位置を調整することによって、一次磁界の空間分布を僅かに変更させ、受信器が励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない状態を実現している。
【0041】
請求項11に係る発明の包装箱内の添付書面有無検査装置によれば、高感度の磁界反射型センサを用い、センサは検出方向を上向きにして包装箱の下方に配置されている。これにより、包装箱の底面と一番下のアルミブリスターシートとの距離の違いを高精度に検出することができ、ひいては、包装箱内の添付書面の有無を正確に検査することができる。
【0042】
請求項12に係る発明の導電性膜の厚さ測定装置によれば、高感度の磁界反射型センサを用い、センサと導電性膜との距離が一定にされている。これにより、受信器によって生成された受信信号の変化に基づいて、導電性膜の厚さを正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】磁界反射型センサ(実施例1)を示した概略図である。
【図2】励磁コイルの向きを検出方向に対し平行に配置した場合と垂直に配置した場合の磁界の広がりを示した図である。
【図3】門型コア、およびL字型コアを採用した場合の一次磁界の広がりを示した図である。
【図4】第1脚部がない場合の検出中心を示した図である。
【図5】第1脚部がある場合の検出中心を示した図である。
【図6】検出中心に沿ってアルミ板を遠方から近づけていったときの出力電圧を示した図である。
【図7】一定距離離してアルミ板を受信器側から励磁器側に移動させたときの出力電圧を示した図である。
【図8】受信器を示した概略図である。
【図9】磁界反射型センサ(実施例2)を示した概略図である。
【図10】包装箱内の添付書面有無検査装置(実施例3)を示した概略図である。
【図11】包装箱内の添付書面有無検査装置の受信器の出力特性を示した図である。
【図12】導電性膜の厚さ測定装置(実施例4)を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明である磁界反射型センサ、包装箱内の添付書面有無検査装置、および、導電性膜の厚さ測定装置を具体化した実施例について図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0045】
(磁界反射型センサ1)
まず、実施例1の磁界反射型センサ1の構成について、主に図1を参照して説明する。磁界反射型センサ1は、主に、励磁器10と、受信器20と、受信器背面板30と、ケース40とで構成される。
【0046】
励磁器10は、励磁コア11と、励磁コイル16とで構成される。励磁コア11は、互いに平行に対向する第1脚部111と、第2脚部112と、これら第1脚部111と第2脚部112とを連結する梁部113とで一体化して構成された門型コアである。第2脚部112の幅L2は、第1脚部111の幅L1の3分の1である。励磁コア11の材質は、初透磁率が1500以上が好ましく、略2300がより好ましい。また、150kHz以上まで初透磁率が同じ数値を保つ高周波特性を持つものが好ましい。さらに、励磁コア11の抵抗率は6.0Ω・m以上が好ましく、略13Ω・mがより好ましい。本実施例では、励磁コア11の材料は、上記の条件を満たす軟磁性のフェライトを使用している。
【0047】
励磁コイル16は、粱部113に巻装され、製造段階において傾斜角αを調整できるようになっている。すなわち、励磁コイル16は、粱部113に直接巻き回しているわけではなく、予め成形したものを、第2脚部112側から粱部113に装着している。励磁器10は、第1脚部111と第2脚部112の粱部113が接続された側とは反対側の端面を検出方向に向けて配置されている。励磁器10は、励磁ケーブル17を介し図示しない外部の交流電源に接続され、外部の交流電源からの入力信号により交番磁界を発信し、導電性の被対象物に渦電流を生じさせる。
【0048】
受信器20は、受信コア21と、受信コイル26とで構成される。受信コア21は、図8(a)に示すとおり、断面形状が角丸長方形の棒状で、この角丸長方形の短手方向の長さL3が軸方向の長さL4の半分以下である。なお、コアの断面は円形でもよく、また、図8(b)に示すように、例えば2本でもよい。受信コア21の軸方向の端から端までは、励磁コア11の被対象物側の端部から粱部113側の端部までのラインを粱部113の長手方向に平行移動したE1の範囲内に収まっている。受信コア21の材質は、励磁コア11と同様の軟磁性のフェライトである。
【0049】
図8(a)に示すように、受信コイル26は、受信コア21の検出方向側の端部21a近傍に単層に巻き回されている。単層に巻き回されているのは、線間容量を低減させるためである。受信コイル26の軸方向の長さL5は、受信コア21の軸方向の長さL4の半分以下である。
【0050】
受信器20は、励磁コア11の第1脚部111の近傍で、励磁器10から発信される一次磁界をほとんど検出しない位置及び角度に配置されている。具体的には、受信コイル26側を検出方向に向け、第1脚部111の外側にほぼ密着させた状態から受信コイル26とは反対側を第1脚部111から離れる方向に傾斜させ、受信器背面板30を介し励磁コア 11に固定されている。受信器20は、被対象物に生じた渦電流によって発生した二次磁界を検出して受信信号を生成する。受信器20は、受信ケーブル27を介し、図示しない演算装置等に接続される。
【0051】
受信器背面板30は、受信器20が励磁器10から発信される一次磁界をほとんど検出しない角度に合わせて先端を楔形状としている。受信器背面板30は、励磁器10側が平面で、励磁コア11の第1脚部111外側面と面接合している。受信器20と受信器背面板30、受信器背面板30と励磁コア11とは低粘度で浸透性の高い接着剤で固着されている。受信器背面板30は、励磁コア11の高さと同等または若干超えた長さとしている。受信ケーブル27と受信コイル26の接合部、励磁ケーブル17と励磁コイル16の接合部は、受信器20や励磁器10から離れた位置に固定されている。熱や応力によるケース40の変形から接合部それぞれが形成するループに位置ずれが発生しても、検出への影響を小さくするためである。受信ケーブル27および励磁ケーブル17は、ツイスト二芯シールドケーブルを使用している。受信器背面板30は、励磁コア11と同等の熱膨張率であるセラミック材製である。この受信器背面板30によって、励磁コア11に対する受信器20の位置と傾斜角度を確実に保持している。
【0052】
励磁器10、受信器20、および、受信器背面板30は、検出面板31上に据え置かれ接着固定されている。そして、検出面板31上のこれら全てが非導電性の樹脂によって覆われ、この樹脂がケース40を形成している。ケース40は、略直方体形状であり、受信器20側側面には、ポケット41(請求項10における凹みに相当する。)が設けられている。
【0053】
つぎに、磁界反射型センサ1の製造過程について説明する。受信器20の傾斜は、僅かな角度変動で大きな出力変動をもたらすため、細かな角度設定と固定が求められる。しかし、設定と固定の両方を達成するのは容易でない。そこで、受信器20が励磁器10から発信される一次磁界をほとんど検出しない状態(以下、一次磁界無感状態という。)とするために次のように製造している。
【0054】
最初に、受信器20を受信器背面板30に固定、受信器背面板30を励磁コア11に固定する。受信器背面板30は、楔形の角度分受信器20を傾斜させるが、角度の微調整はできない。
【0055】
そこで、つぎに励磁コイル16の傾斜角αを調整して、受信器20を一次磁界無感状態とする。励磁コイル16の傾斜調整は、受信器20の傾斜調整に比べ、角度毎の出力変動が小さく、微調整に向いている。励磁コイル16は、傾斜設定された後、セラミック接着剤、または、歯科用グラスアイオノマーセメントで接着固定される。これらの接着剤は、熱膨張率がセラミック、フェライト材に近い。
【0056】
それでも、接着剤の硬化収縮等により、一次磁界無感状態が崩れてしまう場合がある。その場合は、励磁コア11より小さなフェライト小片50(請求項9における小片に相当する。)を、励磁コア11に接着することにより、さらに微調整を行う。具体的には、フェライト小片50の大きさ、取り付け位置を調整することにより一次磁界無感状態とする。
【0057】
その後、検出面板31上に据え置かれ接着固定された、励磁器10、受信器20、および、受信器背面板30を全て覆うように、注型により一体樹脂成型しケース40を形成する。樹脂製の外枠内に上記全てを入れ、内部へ樹脂充填することによってケース40を形成してもよい。ケース40は、略直方体形状に形成し、受信器20側側面には、ポケット41(請求項10における凹みに相当する。)を形成する。
【0058】
しかし、ここまで慎重に受信器20が一次磁界無感状態となるよう調整しても、ケース40が硬化する過程で、注型樹脂、または充填樹脂の収縮等によって、一次磁界無感状態が崩れてしまう場合がある。この場合は、ポケット41内にフェライト小片51(請求項10における小片に相当する。)を取り付けることにより、さらに微調整を行う。具体的には、フェライト小片51の大きさ、ポケット41内部での取り付け位置を調整することにより一次磁界無感状態とする。調整後、ポケット41を樹脂によって塞ぐ。
【0059】
なお、磁界反射型センサ1の使用方法等については、実施例3で具体的に説明する。
【実施例2】
【0060】
(磁界反射型センサ2)
実施例2の磁界反射型センサ2は、磁界反射型センサ1とほぼ同様の構成であるため、異なる点についてのみ説明する。なお、同様の構成については、磁界反射型センサ1と同一の符号を付している。
【0061】
図9に示すとおり、磁界反射型センサ2は、励磁コア12がL字型となっている。これにより、周囲金属から発生する二次磁界の影響を若干受けやすくなるものの、図3(b)に示すように、磁界反射型センサ1と比較して、より遠方まで磁界を広げることができる。なお、磁界反射型センサ2の使用方法等は、磁界反射型センサ1と同様である。
【実施例3】
【0062】
(包装箱内の添付書面有無検査装置)
つぎに、実施例3の包装箱内の添付書面有無検査装置3(以下、検査装置3という。)の構成について、主に図10を参照して説明する。検査装置3は、包装箱70が図示しない搬送装置によりベルト80上を搬送される際に、包装箱70内の添付書面71の有無を検査する装置である。
【0063】
添付書面71は、アルミブリスターシート72を挟み込むように、包装箱70に詰められている。したがって、最下層のアルミブリスターシート72は、添付書面71がある場合は高い位置にあり、添付書面71がない場合は地球の重力によって低い位置に下がる。検査装置3は、これを利用したもので、包装箱70の底面からアルミブリスターシート72までの距離の違いによって添付書面71の有無を検査する。
【0064】
アルミブリスターシート72に用いられる金属は、通常アルミニウムであるが、金属であれば特に材質は問わない。包装箱70は通常紙製であるが特に材質を問わず、包装箱70がさらにプラスチックフィルム等で覆われていてもよい。
【0065】
図示しない搬送装置は、包装箱70を包装箱70の短手方向に平行に移動させる(図10において奥から手前、または手前から奥)。また、検査装置3を設置する位置において、包装箱70の通過位置は一定となっている。
【0066】
検査装置3は、主に実施例1の磁界反射型センサ1と、制御部60(請求項11における判定手段に相当する。)とで構成される。磁界反射型センサ1は、検出方向を上向きにして、包装箱70の下方に配置されている。さらに具体的には、磁界反射型センサ1は、包装箱70の中心真下ではなく、添付書面があるほうにずれている。また、磁界反射型センサ1の向きは、受信器20側が包装箱70の中心側、励磁器10側が添付書面側になるように、励磁コア11の粱部113の長手方向が包装箱の長手方向と一致する向きとしている。正確な磁界反射型センサ1の取り付け位置は、包装箱70の搬送方向である短手方向の中心と磁界反射型センサ1の検出中心を一致させ、包装箱70の長手方向に磁界反射型センサ1を動かし、受信器20が生成する出力電圧が最大となる地点としている。すなわち、励磁器10から発信された交番磁界が、最下層のアルミブリスターシート72に渦電流を生じさせ、この渦電流によって発生した二次磁界を受信器20が検出して得られた受信信号が最大レベルとなるように配置されている。
【0067】
制御部60は、励磁ケーブル17を介し励磁器10に接続されている。制御部60は、交流電源部を備えており、励磁器10に交流電流を印加する。また、制御部60は、受信ケーブル27を介し受信器20に接続されている。制御部60は、受信器20が生成した信号を入力し、添付書面71の有無を判定する。
【0068】
磁界反射型センサ1と最下層のアルミブリスターシート72との距離は、最大検出距離以内であれば特に問わないが、できるだけ近づけたほうが、磁界反射型センサ1とアルミブリスターシート72との距離あたりによる出力電圧の差が大きくなり、搬送による振動や位置ずれに対し、より安定した検査結果をもたらす。
【0069】
添付書面の不足を判定する手順を示す。まず、包装箱70から添付書面71を抜き、磁界反射型センサ1の検出中心が包装箱70の短手方向のほぼ中心を貫く位置に包装箱70を置き、受信器20の出力電圧が飽和電圧である10Vをやや下回るように励磁器10に印加する電流を設定する。この時の出力電圧を不足値とし制御部60に記憶させる。つぎに、添付書面を入れて出力電圧のレベルを確認する。この時の出力値を正常値とし制御部60に記憶させる。そうすると、制御部60は、閾値を正常値と不足値のほぼ中間の値に設定する。なお、制御部60の上記の機能は、周知の技術を用いている。
【0070】
受信器20の出力電圧は、磁界反射型センサ1の上方に包装箱70がない状態では最低電圧レベルであり、包装箱70の通過によって出力電圧は上昇する。添付書面が入っていない場合は、出力電圧はレベルが高く、不足値となる。添付書面が入っている場合は、出力電圧はレベルが低く、正常値となる。実際の検査では包装箱70が搬送装置によりベルト80上を移動していることから、受信器20の出力電圧は図11のように推移する。時間t1とt2は、磁界反射型センサ1の検出中心を包装箱70の短手方向の中心が通過した時点である。このとき受信器20の出力電圧は最大値となる。したがって、制御部60は、出力電圧の最大値を計測し、閾値と比較することによって、包装箱70内の添付書面71の有無を判定している。なお、出力電圧の代わりに出力電流を用いても同様に添付書面の有無を判定することができる。
【0071】
具体的には、制御部60は、受信器20の出力電圧を取得し、最大値を計測する。そして、制御部60は、最大値と閾値とを比較し、閾値の範囲内であれば、最大値を記憶するとともに最大値が何回出現したかを記憶する。これにより、添付書面71が入っている正常の包装箱70がいくつ通過したかを把握することができる。また、最大値が閾値の範囲外である場合は、制御部60は、図示しない排出装置に信号を送って正常でない包装箱70を搬送装置から排出し、図示しないランプを点灯させ、ブザーを鳴らす。これにより、添付書面71が入っていない包装箱70が取り除かれたことを確認することができる。なお、制御部60の上記の機能は、周知の技術を用いている。
【0072】
本実施例では、添付書面71の有無によって、包装箱70の底面から最下層のアルミブリスターシート72までの距離が変わる点を利用している。そして、その距離の違いを高精度に検出するために、高感度な磁界反射型センサ1を用いている。しかし、同等かそれ以上の性能を有するセンサであれば、磁界反射型センサ1以外のセンサも使用することができる。
【実施例4】
【0073】
(導電性膜の厚さ測定装置)
つぎに、実施例4の導電性膜の厚さ測定装置4(以下、測定装置4という。)の構成について、主に図12を参照して説明する。測定装置4は、非導電性の基板上に形成された導電性膜の厚さを測定する装置である。
【0074】
本実施例においては、便宜上、被対象物をガラス基板90上に施された導電性のITO膜91であるとして説明するが、被対象物は、ITO膜以外のアルミ蒸着膜、その金属の蒸着膜でもよく、基板もガラスでなくても不導体であればよい。
【0075】
測定装置4は、実施例1の磁界反射型センサ1と、制御部61(請求項12における算出手段に相当する。)と、置き台81を備えている。磁界反射型センサ1は、検出方向を上向きにして、置き台81の下方に配置されている。すなわち、励磁器10から発信された交番磁界が、置き台81上に置かれたガラス基板90上のITO膜91に渦電流を生じさせ、この渦電流によって発生した二次磁界を受信器20が検出して受信信号を生成するように構成されている。
【0076】
制御部61は、励磁ケーブル17を介し励磁器10に接続されている。制御部61は、励磁器10に交流電流を印加するための、周波数を可変可能な交流電源部を備えており、被対象物である導電性膜の透磁率、導電率、測定する厚さの範囲に合わせて最適な動作周波数が選択できるようになっている。また、制御部61は、受信ケーブル27を介し受信器20に接続されている。制御部61は、受信器20が生成した信号を入力し、ITO膜91の厚さを算出する。
【0077】
磁界反射型センサ1とITO膜91との距離は、最大検出距離以内であれば特に問わないが、できるだけ近づけたほうが、ITO膜91の厚さあたりによる出力電圧の差が大きくなり、より安定した測定結果をもたらす。
【0078】
置き台81にガラス基板90上のITO膜91を置く際は、ITO膜91の面を上にしてもガラス基板90の面を上にしてもよいが、磁界反射型センサ1とITO膜91との距離を一定にするために、常に同じ面を上にしなければならない。また、ITO膜91との距離を一定に保てる以上、磁界反射型センサ1の検出方向を下向きにして、置き台81の上方に配置してもよい。
【0079】
つづいて、ITO膜91の厚さを測定する手順を示す。まず、測定したい範囲を網羅する所定間隔の厚さサンプルを用意する。そして、その中で最もITO膜91が厚いサンプルを置き台81に載せ、受信器20の出力電圧が飽和電圧である10Vをやや下回るように励磁コイル10に印加する電流を設定する。この時の出力電圧を厚さと関連付けて制御部61に記憶させる。つぎに、用意したサンプルを一つずつ置き台81に載せ、それぞれの出力電圧を厚さと関連付けて制御部61に記憶させる。そうすると、制御部61は、厚さと出力電圧の関係について近似式を算出する。なお、制御部61の上記の機能は、周知の技術を用いている。
【0080】
測定時は、ガラス基板90上のITO膜91を置き台81に置き、励磁器10に交流電流を印加し、受信器20が生成した出力電圧を制御部61に送る。制御部61は、出力電圧を近似式にあてはめ、ITO膜91の厚さを算出し図示しない表示部に表示する。なお、制御部61の上記の機能は、周知の技術を用いている。
【符号の説明】
【0081】
1:磁界反射型センサ
2:磁界反射型センサ
3:包装箱内の添付書面有無検査装置
4:導電性膜の厚さ測定装置
10:励磁器 11:励磁コア 12:励磁コア
16:励磁コイル 17:励磁ケーブル
20:受信器 21:受信コア
26:受信コイル 27:受信ケーブル
30:受信器背面板 31:検出面板
40:ケース 41:ポケット(凹みに相当)
50:フェライト小片(小片に相当) 51:フェライト小片(小片に相当)
60:制御部(判定手段に相当) 61:制御部(算出手段に相当)
70:包装箱 71:添付書面 72:アルミブリスターシート
80:ベルト 81:置き台
90:ガラス基板 91:ITO膜
111:第1脚部 112:第2脚部 113:粱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交番磁界である一次磁界を発信し、導電性の被対象物に渦電流を生じさせる励磁器と、
前記渦電流によって発生した二次磁界を検出して受信信号を生成する受信器と、
前記励磁器と前記受信器とを保持する非導電性材製のケースとを備えた磁界反射型センサであって、
前記励磁器は、第1脚部と第2脚部とこの二つの脚部を連結する梁部とで構成された門型の励磁コアと、前記梁部に巻装された励磁コイルとからなり、前記二つの脚部の端面側を検出方向に向けるように配置され、
前記受信器は、棒状の受信コアと、この受信コアに巻き回された受信コイルとからなり、
前記励磁器の第1脚部の近傍で前記励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない位置および角度に配置されていることを特徴とする磁界反射型センサ。
【請求項2】
前記励磁コアは、前記第2脚部の幅が前記第1脚部の幅の2分の1以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁界反射型センサ。
【請求項3】
交番磁界である一次磁界を発信し、導電性の被対象物に渦電流を生じさせる励磁器と、
前記渦電流によって発生した二次磁界を検出して受信信号を生成する受信器と、
前記励磁器と前記受信器とを保持する非導電性材製のケースとを備えた磁界反射型センサであって、
前記励磁器は、第1脚部とこの脚部の上部に接続された梁部とで構成されたL字型の励磁コアと、前記梁部に巻装された励磁コイルとからなり、前記第1脚部の端面側を検出方向に向けるように配置され、
前記受信器は、棒状の受信コアと、この受信コアに巻き回された受信コイルとからなり、 前記励磁器の第1脚部の近傍で前記励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない位置および角度に配置されていることを特徴とする磁界反射型センサ。
【請求項4】
前記受信コアは、断面形状が円形または角丸長方形で、断面形状が円形の場合は直径、角丸長方形の場合は短手方向の長さが軸方向の長さの半分以下であり、
前記受信コイルは、軸方向の長さが前記受信コアの軸方向の長さの半分以下で、前記受信コアの中央よりも検出方向側に寄って巻かれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁界反射型センサ。
【請求項5】
前記受信コイルは、前記受信コアの検出方向側の端部に可能な限り寄って巻かれていることを特徴とする請求項4に記載の磁界反射型センサ。
【請求項6】
前記受信コアの軸方向の端から端までは、前記励磁コアの前記被対象物側の端部から前記被対象物側と反対側の端部までのラインを前記梁部の長手方向と同方向に平行移動した範囲内に収まっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁界反射型センサ。
【請求項7】
前記励磁コアと同等の熱膨張率であるセラミック材製で楔形の受信器背面板をさらに備え、前記受信器と前記受信器背面板、前記受信器背面板と前記励磁コアは接着剤で固定され、前記励磁器に対する前記受信器の位置と傾斜角度が保持されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の磁界反射型センサ。
【請求項8】
前記受信器背面板を介して前記受信器と前記励磁器とを固定した後で、前記励磁コアの梁部に対する前記励磁コイルの傾斜角を調整し、前記受信器が前記励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない状態としていることを特徴とする請求項7に記載の磁界反射型センサ。
【請求項9】
前記励磁コアの梁部に対する前記励磁コイルの傾斜角を調整し固定した後で、さらに前記励磁器周辺に前記励磁コアと同材料の小片を取り付け、前記受信器が前記励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない状態としていることを特徴とする請求項8に記載の磁界反射型センサ。
【請求項10】
前記ケースの前記受信器側側面には凹みが設けられており、前記ケース完成後、さらに前記凹み内に前記励磁コアと同材料の小片を取り付け、前記受信器が前記励磁器から発信される一次磁界をほとんど検出しない状態としていることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の磁界反射型センサ。
【請求項11】
アルミブリスターシートと添付書面が包装箱に詰められた状態で搬送装置により搬送される際に、前記包装箱内の前記添付書面の有無を検査する装置であって、
請求項1〜10のいずれかに記載の磁界反射型センサと、
前記受信器によって生成された受信信号の変化に基づき、前記包装箱内の前記添付書面の有無を判定する判定手段とを備え、
前記磁界反射型センサは、検出方向を上向きにして前記包装箱の下方に配置されていることを特徴とする包装箱内の添付書面有無検査装置。
【請求項12】
導電性膜の厚さ測定装置であって、
請求項1〜10のいずれかに記載の磁界反射型センサと、
前記受信器によって生成された受信信号の変化に基づき、前記導電性膜の厚さを算出する算出手段とを備え、
前記磁界反射型センサと前記導電性膜との距離が一定にされていることを特徴とする導電性膜の厚さ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−163433(P2012−163433A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23937(P2011−23937)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(710007803)クーレヨン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】