磁界検出素子および信号伝達素子
【課題】線形性の高い磁界検出素子を提供する。
【解決手段】磁気抵抗効果材料からなる磁気抵抗効果部10aと、磁気抵抗効果部10aの両側に接続して配設され、磁気抵抗効果部10aに磁束を供給する、軟磁性材料からなる一対のヨーク部11a,12aとを有する磁界検出素子7aにおいて、ヨーク部11a,12aに発生した磁束の一部を誘導して磁気抵抗効果部10aを迂回させ、ヨーク部11a,12aよりも低い磁界強度で磁束が飽和する、軟磁性材料からなるバイパス部13aを設ける。
【解決手段】磁気抵抗効果材料からなる磁気抵抗効果部10aと、磁気抵抗効果部10aの両側に接続して配設され、磁気抵抗効果部10aに磁束を供給する、軟磁性材料からなる一対のヨーク部11a,12aとを有する磁界検出素子7aにおいて、ヨーク部11a,12aに発生した磁束の一部を誘導して磁気抵抗効果部10aを迂回させ、ヨーク部11a,12aよりも低い磁界強度で磁束が飽和する、軟磁性材料からなるバイパス部13aを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界強度を検出する磁界検出素子、および、磁気的結合により信号を伝達する信号伝達素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているように、入力信号に応じた磁界を発生させるコイルと、コイルが発生した磁界の強度を、磁気抵抗効果素子(磁界検出素子)を含むブリッジ回路で検出する磁気結合型の信号伝達素子が公知である。
【0003】
また、特許文献2に記載されているように、巨大磁気抵抗効果(外部磁界により数%以上の電気抵抗変化を示す物質の総称)を示すグラニュラー膜の電気抵抗の変化率感度を高めるために、巨大磁気抵抗効果を示すグラニュラー膜の両側に大きな磁束を供給する軟磁性材料からなるヨーク膜の対を配置するグラニュラーインギャップ(GIG)構造も周知である。
【0004】
そのようなGIG構造においては、外部磁界が印加されると、真っ先に大きな磁束密度を有する軟磁性材料からなるヨークが磁化し、その大きな磁化により発生した磁束が巨大磁気抵抗効果を示すグラニュラー膜に流入し、小さな外部磁界で大きな電気抵抗変化を実現できる。一方、GIG構造では、軟磁性材料ヨーク膜の磁化過程に伴う非線形的な磁束の増加特性と、グラニュラー膜の磁気抵抗効果における非線形的な抵抗値の変化特性とにより、磁界強度をリニアに検出できる線形範囲が著しく狭い範囲に限定されている。
【0005】
特許文献3には、微小な磁束変化を検出するために、磁路にバイパスを設けることで、検出コイルに印加される磁束を低減する技術が開示されている。この技術では、感度を低下させることで磁束変化を検出できる範囲を拡げているが、電気抵抗の値において線形性の高い範囲を拡げることはできず、磁気抵抗効果素子の線形性を改善することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2000−516714号公報
【特許文献2】特開2004−354181号公報
【特許文献3】特開平8−279112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記問題点に鑑みて、本発明は、線形性の高い磁界検出素子、および、線形性の高い信号伝達素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明による磁界検出素子は、磁気抵抗効果材料からなる磁気抵抗効果部と、前記磁気抵抗効果部の両側に電気的に接続して配設され、前記磁気抵抗効果部に磁束を供給する、軟磁性材料からなる一対のヨーク部と、前記ヨーク部に発生した磁束の一部を誘導して前記磁気抵抗効果部を迂回させ、前記ヨーク部よりも低い磁界強度で磁束が飽和する、軟磁性材料からなるバイパス部とを有するものとする。
【0009】
この構成によれば、外部磁界強度が低くバイパス部が未飽和状態では、外部磁界によりヨーク部に発生した磁束の一部がバイパス部を通過し、磁気抵抗効果部を通る磁束が減じられる。一方、外部磁界が増加するとバイパス部がヨーク部より先に飽和し、ヨーク部に発生した磁束の増加分はすべて磁気抵抗効果部を通過する。結果として、磁気抵抗効果部の電気抵抗変化曲線の形状を変形させて線形性を向上させる。
【0010】
また、本発明の磁界検出素子において、前記バイパス部は、前記磁気抵抗効果部および前記ヨーク部と電気的に絶縁されてもよい。
【0011】
この構成によれば、バイパス部が電気的に切り離されているので、磁気抵抗効果部の電気抵抗を正確に検出することができ、バイパス部が検出精度に与える影響を極力抑えて、磁気抵抗効果部の磁界強度に対する電気抵抗の変化の線形性を高くできる。
【0012】
また、本発明の磁界検出素子において、前記磁気抵抗効果部および前記ヨーク部は、同一平面上に膜状に形成され、前記バイパス部は、前記磁気抵抗効果部と少なくとも部分的に重なるように、前記ヨーク部との間に隙間を空けて膜状に形成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、基板上に微細加工技術によって薄膜材料を積層する一般的な半導体製造方法で製造できる。
【0014】
また、本発明の磁界検出素子は、前記バイパス部の磁束が飽和しない磁界強度において、前記ヨーク部の間の、前記バイパス部を介して前記磁気抵抗効果部を迂回する磁路のリラクタンスが、前記磁気抵抗効果部のリラクタンスより小さくてもよい。
【0015】
この構成によれば、磁界強度が低いときに多くの磁束が磁気抵抗効果部を迂回するので、バイパス部による磁気抵抗効果部の抵抗変化特性に与える影響が大きく、線形性を大きく改善できる。
【0016】
また、本発明の磁界検出素子において、前記バイパス部は、部分的に、異なる磁界強度で磁束が飽和してもよい。
【0017】
この構成によれば、バイパス部の一部が飽和する度に、外部磁界に対する磁気抵抗効果部の抵抗変化特性を線形にするように磁束のバイパスする割合を変化させられる。
【0018】
また、本発明の磁界検出素子において、前記バイパス部は、磁束を案内する方向の長さが異なる部分を含んでもよい。
【0019】
この構成によれば、バイパス部の平面的形状によって、磁束の飽和する磁界強度を部分的に異ならせることができる。
【0020】
また、本発明による信号伝達素子は、前記磁界検出素子のいずれかと、入力信号に応じて前記磁界検出素子に磁界を印加するコイルとを有するものとする。
【0021】
この構成によれば、入力と出力の伝達効率が良く、かつ、本発明によって線形性の良い入出力伝達も可能なため、結果的に高品位の信号伝達ができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、外部磁界強度が低くバイパス部が未飽和状態では、外部磁界によりヨーク部が発生した磁束の一部がバイパス部を通過し、磁気抵抗効果部を通る磁束が減じられる。一方、外部磁界が増加するとバイパス部が先に飽和し、ヨーク部に発生した磁束はすべて磁気抵抗効果部を通過する。結果として、磁気抵抗効果部の電気抵抗変化曲線の形状を変形させ線形性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の信号伝達素子の電気回路図である。
【図2】図1の信号伝達素子の平面図である。
【図3】図2の磁界検出素子の斜視図である。
【図4】図3の磁界検出素子の平面図である。
【図5】図3の磁界検出素子の磁路リラクタンス図である。
【図6】図3の磁界検出素子の磁界強度に対する電気抵抗変化を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態の磁界検出素子の側面図である。
【図8】図7の磁界検出素子の斜視図である。
【図9】図7の磁界検出素子のバイパス部の幅を変更したときの磁界強度に対する電気抵抗変化を示す図である。
【図10】図7の磁界検出素子のバイパス部の厚さを変更したときの磁界強度に対する電気抵抗変化を示す図である。
【図11】本発明の第3実施形態の磁界検出素子の斜視図である。
【図12】本発明の第4実施形態の磁界検出素子の斜視図である。
【図13】本発明の第5実施形態の磁界検出素子の斜視図である。
【図14】図11〜13の磁界検出素子の磁界強度に対する電気抵抗変化を示す図である。
【図15】本発明の第6実施形態の磁界検出素子の斜視図である。
【図16】本発明の第7実施形態の磁界検出素子の斜視図である。
【図17】本発明の第8実施形態の磁界検出素子の斜視図である。
【図18】図17の磁界検出素子のバイパス部を形成する材料のB−H線図である。
【図19】図17の磁界検出素子のバイパス部の材料の違いによる磁界強度に対する電気抵抗変化を示す図である。
【図20】本発明の第8実施形態の磁界検出素子の側面図である。
【図21】本発明の第9実施形態の磁界検出素子の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態の信号伝達素子(磁気結合型アイソレータ)1の回路構成を示す。信号伝達素子1は、入力端子2a,2bに入力された電流に応じて磁界を発生させる2つの励磁コイル3a,3bを有する1次側回路4と、1次側回路4と磁気的に結合し、出力端子5a,5bに入力電圧に応じた電圧を出力する2次側回路6とを有する。
【0025】
2次側回路6は、励磁コイル3a,3bが発生した磁界の強度に応じて電気抵抗の値が変化する2つの磁界検出素子7a,7bと、電気抵抗の値が変化しない2つの固定抵抗8a,8bとで構成され、電源Vccに接続されたブリッジ回路である。
【0026】
図2(平面図)に、信号伝達素子1の実際的形状を示す。信号伝達素子1は、表面に絶縁皮膜が形成されたシリコン基板9上に、各構成要素を積層して形成してなる。励磁コイル3a,3bは、磁界検出素子7a,7bをそれぞれ囲むように形成されている。
【0027】
磁界検出素子7a,7bは、さらに図3(斜視図)および図4(断面図)に詳しく示すように、巨大磁気抵抗効果材料からなる磁気抵抗効果部(以下、MR部と称する)10a,10bと、MR部10a,10bの両側にそれぞれ電気的な接触を保つよう配設されていて軟磁性材料からなるヨーク部11a,12aおよび11b,12bで構成されている。このヨーク部は前記巨大磁気抵抗効果材料よりも大幅に低い電気比抵抗を有しており、MR部へ電流を供給する電極も兼ねている(いわゆるGIG)。これに、ヨーク部11a,12aおよび11b,12bと、MR部10a,10bと部分的に重複し、MR部10a,10bおよびヨーク部11a,12a,11b,12bとの間に隙間dを空けて電気的に絶縁されて配置された軟磁性材料からなるバイパス部13a,13bとを有する。この磁界検出素子7a、7bの外側を巻くように励磁コイル3a、3bが配設されている。
【0028】
バイパス部13a,13bとMR部10a,10bおよびヨーク部11a,12a,11b,12bとの間の隙間dは、空気層であってもよいが、実際的には、バイパス部13a,13bとMR部10a,10bおよびヨーク部11a,12a,11b,12bとの間に形成した、非磁性の材料からなる絶縁膜(保護膜)である。
【0029】
MR部10a,10bを形成する巨大磁気抵抗効果材料としては、例えば、Co39Y14O47をはじめCo43Al24O33やCo35Mg20F45等のナノグラニュラー薄膜材料があり、それぞれの典型的な電気比抵抗は、3×106μΩm、0.4×103μΩm、1×106μΩmである。他にも、巨大磁気抵抗効果材料として、CoX−(Y2O3)(100−X)系ナノグラニュラー合金、CoX−(Al2O3)(100−X)系ナノグラニュラー合金、CoX−(Sm2O3)(100−X)系ナノグラニュラー合金、CoX−(Dy2O3)(100−X)系ナノグラニュラー合金、(FeCo)X−(Y2O3)(100−X)系ナノグラニュラー合金、Fe)X−(MgF2)(100−X)、(FeCo)X−(MgF2)(100−X)、FeX−(CaF2)(100−X)等のフッ化物系ナノグラニュラー合金等が使用できる。尚、本願の記載における組成比はat%である。
【0030】
また、ヨーク部11a,12a,11b,12bおよびバイパス部13a,13bを形成する軟磁性材料としては、例えば、Co77Fe5Si9B8やFe78.5Ni21.5があり、それぞれの典型的な電気比抵抗は1.15μΩm、0.16μΩmである。他にも、軟磁性材料として、パーマロイ(40〜90%Ni−Fe合金)、センダスト(Fe74Si9Al17)、ハードパーム(Fe12Ni82Nb6)、Co88Nb6Zr6アモルファス合金、(Co94Fe6)70Si15B15アモルファス合金、ファインメット(Fe75.6Si13.2B8.5Nb1.9Cu0.8)、ナノマックス(Fe83HF6C11)、Fe85Zr10B5合金、Fe93Si3N4合金、Fe71B11N18合金、Fe71.3Nd9.6O19.1ナノグラニュラー合金、Co70Al10O20ナノグラニュラー合金、Co65Fe5Al10O20合金等が使用できる。また、隙間dを形成する材料としては、例えば、SiO2やAl2O3などの無機材料がある。
【0031】
ヨーク部11a,11bおよび12a,12bは、例えば、コイルの長手方向(磁束の方向)の長さが250μm、幅が80μm、厚さが0.5μmの長方形に、各対の端部が1μmのギャップGを空けてそれぞれ対向し合うように、同一平面上に膜状に形成されている。MR部10a,10bは、ヨーク部11a,12aおよび11b,12bのギャップGの間に電気的に接続されて形成されている。
【0032】
バイパス部13a,13bは、例えば、長さが5μm、幅が5μm、厚さが0.1μmであり、MR部10a,10bおよびヨーク部11a,12a,11b,12bとの間に0.1μmの隙間dを空けて形成されている。
【0033】
図5に、磁界検出素子7a,7bの磁路リラクタンスとしての構成(磁気回路図)を示す。この磁路リラクタンスは、ヨーク部11a,11bのリラクタンスRYOKとヨーク部12a,12bのリラクタンスRYOKとの間に、ヨーク部11a,11bとバイパス部13a,13bとの間の空気または非磁性絶縁部のリラクタンスRGAP、バイパス部13a,13bのリラクタンスRBPS、および、バイパス部13a,13bとヨーク部12a,12bとの間の空気または非磁性絶縁部のリラクタンスRGAPが直列に接続されたものが、MR部10a,10bのリラクタンスRGMRと並列に接続されたものと考えることができる。
【0034】
これにより、磁界検出素子7a,7bでは、励磁コイル3a,3bが発生し、ヨーク部11a,11b,12a,12bによって発生した磁束は、当初、MR部10a,10bとバイパス部13a,13bとに分かれる。つまり、バイパス部13a,13bは、ヨーク部11a,11b,12a,12bによって発生した多数の磁束の一部を誘引して、MR部10a,10bを迂回させることにより、MR部10a,10bを通る磁束の数を低減する。
【0035】
但し、リラクタンスRYOK,RGMR,RBPSは、それぞれ、磁界強度によってその値が変化する。一般に、リラクタンスは、磁界強度の上昇に伴って通過する磁束数が増加すると、その値が上昇する。そして、ある磁界強度において磁束が飽和するため、リラクタンスの値は、磁界強度が低いときに比べて格段に大きな割合で増加するようになり、完全に飽和することで通過する磁束数がそれ以上増加しなくなる。特に、本発明においてバイパス部13a,13bのリラクタンスRBPSは他のリラクタンスよりも低い磁界で急増する。
【0036】
尚、MR部10a,10bのリラクタンスRGMRは、MR部10a,10bの磁束が印加される方向の長さ(磁路長さ)をGGMR、MR部10a,10bの透磁率をμGMR、MR部10a,10bの厚さをtGMR、MR部10a,10bの幅(磁路幅)をWGMRとして、次の式で表すことができる。
RGMR=GGMR/(μGMR×tGMR×WGMR)
【0037】
図6に、MR部10a,10bを含むヨーク部11a,11bとヨーク部12a,12bとの間の電気抵抗の、磁界検出素子7a,7bに印加される入力磁界の強さに対する変化のシミュレーション結果を、磁界強度がゼロのときの抵抗を100%として表したMR比で示す。尚、図中には、MR部10a,10bおよびヨーク部11a,11b,12a,12bのみからなり、バイパス部13a,13bのない従来の構成の磁界検出素子の電気抵抗と比較して示す。尚、バイパス部13a,13bは、MR部10a,10bおよびヨーク部11a,11b,12a,12bから電気的に絶縁されているので、MR部10a,10bを含む電路の電気抵抗に影響しない。
【0038】
このシミュレーションでは、MR部10として、10KOeにおけるMR比が14%である(FeCo)30−(MgF2)70からなるナノグラニュラー膜を、ヨーク部11,12として、10KOeにおける磁束密度が12KGであり、幅方向に20Oe程度の一軸誘導磁気異方性を有し、透磁率がゼロ磁界から飽和磁界まで略線形的に変化するアモルファスCo78Fe4Si9B9膜を用いた。また、バイパス部13は、ヨーク部11,12と同じ材質のアモルファス膜を用いた。
【0039】
MR部10a,10bは、通過する磁束数が増加すると、その電気抵抗が低下するが、入力磁界が小さく、バイパス部13a,13bが未飽和の場合、ヨーク部11a,11b,12a,12bによって発生した磁束の一部がバイパス部13a,13bに誘導されるので、従来に比べてその電気抵抗の低下率が低い。図においては、MR比の変化特性(線図の形状)が従来と比べて横方向に拡がったものになる。
【0040】
しかしながら、バイパス部13a,13bの断面積(厚さ×幅)は、ヨーク部11a,11b,12a,12bの断面積(厚さ×幅)と比べて十分に小さいため、入力磁界が強くなり、励磁コイル3a,3bが形成する磁束数が増加(励磁コイル3a,3bによって形成され、磁界検出素子7a,7bに印加される磁界強度が上昇)すると、バイパス部13a,13bは、磁束が飽和して、それ以上磁束を誘導できなくなる。このため、入力磁界の強度が高くなると、バイパス部13a,13bによる磁束のバイパス効果が低くなり、ヨーク部11a,11b,12a,12bに発生した磁束の増加分の多くがMR部10a,10bに誘導される。図においては、バイパス部13a,13bが飽和に近づくにつれ、グラフが従来に比べて横に拡がる度合いが小さくなり、結果的にMR比の変化特性の線形性が改善される。
【0041】
磁界検出素子7a,7bでは、入力磁界の強度がさらに高くなると、ヨーク部11a,11b,12a,12bよりも先にバイパス部13a,13bが完全に飽和する。結果として、バイパス部13a,13bが完全に飽和してからは、ヨーク部11a,11b,12a,12bに発生した磁束の増加分はすべてMR部10a,10bを通過する。以上の作用により、MR部10a,10bおよびヨーク部11a,11b,12a,12bのリラクタンスの増加による電気抵抗の変化率の低下を補い、線形性の高い電気抵抗(MR比)の変化特性を得ることができる。つまり、バイパス部13a,13bを備える磁界検出素子7a,7bは、従来のものよりも、入力磁界の変化に対する電気抵抗(MR比)の変化特性において、良好な線形性が得られる範囲が広い。
【0042】
ヨーク部11a,11b,12a,12bに発生した磁束の中でバイパス部13a,13bに誘導されてMR部10,10bを迂回する磁束の割合が低いと、MR部10a,10bのMR比の特性を変化させる余地が小さくなるので、磁界強度が低いときには、ヨーク部11a−12a間,11b−12b間の、12bバイパス部13a,13bを介した磁路のリラクタンス(2RYOK+2RGAP+RGMR)が、MR部10a,10bを介した磁路のリラクタンス(2RYOK+RGMR)に比べて小さいことが好ましい。
【0043】
しかしながら、バイパス部13a,13bを介した磁路のリラクタンス(2RYOK+2RGAP+RGMR)がMR部10a,10bを介した磁路のリラクタンス(2RYOK+RGMR)に比べて過度に低い場合、バイパス部13a,13bに多くの磁束が誘導され過ぎるため、図6のグラフにおいて、バイパス部13a,13bを有する場合のMR比変化特性の線図が横に拡がり過ぎて、MR部10a,10bの入力磁界に対する電気抵抗の変化率が小さくなるので、磁界強度の検出感度が低くなってしまう。また、バイパス部13a,13bを介した磁路のリラクタンスが高過ぎる場合、バイパス部13a,13bに磁束を誘導できず、MR部10a,10bをバイパスさせる効果がほとんどなくなるため、電気抵抗の変化特性を改善する効果が得られなくなる。このように、磁界検出素子7a,7bの好ましい特性を得るために、バイパス部13a,13bを介した磁路のリラクタンス(2RYOK+2RGAP+RGMR)と、MR部10a,10bを介した磁路のリラクタンス(2RYOK+RGMR)とのバランスを考慮する必要がある。
【0044】
図7および図8に、本発明の第2実施形態である磁界検出素子7cを示す。第2実施形態の磁界検出素子7cは、ギャップGを形成して対向する端部の厚みがテーパ状に小さくなったヨーク部11,12と、ヨーク部11,12の片側のテーパ部分からギャップGの半ばまでに磁気抵抗効果材料を充填して形成されたMR部10と、MR部10と不図示の絶縁膜を介して重なるように形成されたバイパス部13とからなる。
【0045】
ヨーク部11,12は、磁束を案内する方向(MR部10を挟み込む方向)の長さが250μm、幅が80μm、厚さが0.5μmで、1μmのギャップGを形成して対向している。また、ヨーク部11,12は、バイパス部13側の面が、磁束を案内する方向にMR部10側の端面からそれぞれ2μm長さに渡ってテーパ状に傾斜しており、ギャップGを形成する端部の厚みは0.3μmである。バイパス部13は、磁束を案内する方向の長さが5μm、つまり、MR部10のヨーク部11,12のテーパ部を覆う部分を含む全長と等しく、。MR部10とバイパス部13との隙間d(スパッタSiO2薄膜で形成された絶縁膜の厚み)は、0.05μmである。
【0046】
この磁界検出素子7cでは、MR部10として、10KOeにおけるMR比が14%である(FeCo)30−(MgF2)70からなるギャップGでの膜厚0.3μmのナノグラニュラー膜を、ヨーク部11,12として、10KOeにおける磁束密度が12KGであり、幅方向に20Oe程度の一軸誘導磁気異方性を有し、透磁率がゼロ磁界から飽和磁界まで略線形的に変化するアモルファスCo78Fe4Si9B9膜を用いた。また、バイパス部13は、ヨーク部11,12と同じ材質アモルファス膜を用いた。
【0047】
図9に、本実施形態の磁界検出素子7cのバイパス部13の厚みを0.2μmとし、バイパス部13の幅を、それぞれ、ヨーク部11,12と同じ80μm、半分の40μm、4分の1の20μm、8分の1の10μmとしたものにおける、MR部10を含むヨーク部11とヨーク部12との間の電気抵抗(MR比)の入力磁界の強度に対する変化の実測結果を示す。
【0048】
図示するように、磁界検出素子7cにおいても、第1実施形態と同様に、入力磁界が10(Oe)より弱い範囲では、バイパス部13によって、MR比の曲線が横軸方向に引き延ばされ、入力磁界が強くなってバイパス部13が完全に飽和した後は、バイパス部のない従来の磁界検出素子の曲線を横軸方向に並行移動したものと略一致するような曲線が描かれる。さらに、本実施形態では、ヨーク部11,12も、約20(Oe)の磁界強度において飽和している。このため、これ以上の磁界強度では、MR比の減少率が大きく低下している。
【0049】
さらに、バイパス部13の幅が広い程、バイパス部を迂回する磁束数が多くなり、その挙動が磁束数の増加により非線形的に大きく変化するため、入力磁界の強度がバイパス部13を飽和させる辺りにおける線形性を改善する効果が大きくなるので、MR比が線形となる範囲が広くなる。同時に、バイパス部13の幅が広い程、バイパス部を迂回する磁束数が多くなるため、入力磁界の変化に対するMR比の変化率は小さくなる。但し、ヨーク部11,12が飽和すると線形性が損なわれるので、バイパス部13によるMR比特性を改善する磁界強度の範囲は、ヨーク部11,12が飽和する磁界強度より低い範囲でなければならない。つまり、本実施形態において、線形範囲を最も広くした場合、その線形範囲は、バイパス部13が飽和し始めてから、ヨーク部11,12が飽和し始めるまでとなる。
【0050】
図10に、本実施形態の磁界検出素子7cのバイパス部13の幅を80μmとし、バイパス部13の厚みを0.2μmとしたものと0.1μmとしたもの、さらに、バイパス部のないものにおける、MR部10を含むヨーク部11とヨーク部12との間の電気抵抗(MR比)の入力磁界の強度に対する変化の実測結果を示す。
【0051】
図示するように、バイパス部13の厚みが大きい程、入力磁界の強度が低いときにMR比の曲線を横方向に拡げる度合いが大きくなるため、バイパス部13が飽和する入力磁界の強度が高くなる。さらに、図10において、バイパス部13の幅を80μm、厚みを0.1μmとした場合のMR比の曲線は、図9における、バイパス部13の幅を40μm、厚みを0.2μmとした場合MR比の曲線と略一致する。つまり、他の条件が一定の場合、バイパス部13の断面積が同じであればMR比の特性が略同じになる。
【0052】
また、ヨーク部11,12およびバイパス部13の磁束の飽和し易さも、それぞれの断面積に依存する。本実施形態では、ヨーク部11,12とバイパス部13とが同じ材質で形成されているので、バイパス部13の断面積をヨーク部11,12の断面積より小さくすべきである。尚、ここにいう断面積とは、それぞれを通過する磁束数を制限する実効的な断面積を指す。
【0053】
したがって、磁界検出素子7cにおいて、バイパス部13の断面積と、ヨーク部11,12の断面積との比を選択することによって、バイパス部13を介した磁路のリラクタンス(2RYOK+2RGAP+RGMR)と、MR部10を介した磁路のリラクタンス(2RYOK+RGMR)とのバランスを調整できる。
【0054】
本実施形態の磁界検出素子7cにおいて、上面から見た、バイパス部13とヨーク部11,12の重なる面積を変えることによっても、バイパス部13を介した磁路のリラクタンス(2RYOK+2RGAP+RGMR)と、MR部10を介した磁路のリラクタンス(2RYOK+RGMR)とのバランスを調整できる。
【0055】
また、本実施形態において、バイパス部13と、ヨーク部11,12との間の隙間dの大きさを変えることによっても、バイパス部13とヨーク部11,12との間のリラクタンスRGAPを変更できる。
【0056】
本実施形態では、バイパス部13を、MR部10の片側に重なるように配設しているが、バイパス部13は、ヨーク部11,12に発生した磁束を誘導して、MR部10を迂回させられるものであればいかなる形態であってもよい。例えば、バイパス部13を、MR部10(ヨーク部11,12のギャップG)の両側または側方に配設してもよい。また、MR部10がヨーク部11,12のギャップGの一部分のみを占有する場合、バイパス部13をヨーク部11,12のギャップGの中に配設してもよい。
【0057】
図11に、本発明の第3実施形態である磁界検出素子7dを示し、図12に、本発明の第4実施形態である磁界検出素子7eを示し、図13に、本発明の第5実施形態である磁界検出素子7fを示す。
【0058】
第3実施形態の磁界検出素子7dは、図11に示すように、バイパス部13が、MR部10のギャップGの部分のみと重なるように形成されている他は、第2実施形態の磁界検出素子7cと同じ構成である。
【0059】
第4実施形態の磁界検出素子7eは、図12に示すように、第3実施形態の磁界検出素子7dのバイパス部13を、ヨーク部11,12の長さ方向、つまり、バイパス部13が磁束を案内する方向に、不均一に拡張した形状を有する。具体的には、バイパス部13は、幅方向(磁束を案内する方向に直交する方向)の両端がギャップGの部分のみと重なるが、幅方向内側ほど磁束を案内する方向に長く、特に、幅方向中心部は、三角形状に突出し、先端がヨーク部11,12のテーパ開始部分に対向する位置まで延伸した、概略十字星形をなしている。
【0060】
第5実施形態の磁界検出素子7fは、図13に示すように、第4実施形態の磁界検出素子7eのバイパス部13の星形をより極端な形状にしたものであり、本実施形態のバイパス部13は、幅方向両端部が磁束を案内する方向の長さがゼロになるように尖っており、幅方向中心部の三角形の突出部も頂角が小さい尖鋭な形状になっている。つまり、バイパス部13が磁束を案内する方向の長さが極端に変化している。
【0061】
図14に、磁界検出素子7d,7e,7f、並びに、バイパス部13を設けないMR部10とヨーク部11,12のみからなる従来の磁界検出素子について、MR部10を含むヨーク部11とヨーク部12との間の電気抵抗(MR比)の入力磁界の強度に対する変化特性のシミュレーション結果を示す。
【0062】
第3実施形態の磁界検出素子7dは、第2実施形態の磁界検出素子7cと同様に、バイパス部13が飽和し始める(捕捉する磁束数が磁界強度に比例して上昇しなくなる)約10(Oe)までは、MR比の減少率が小さく、線形性が低い。しかしながら、第4実施形態の磁界検出素子7eおよび第5実施形態の磁界検出素子7fでは、磁界強度が低いときからヨーク部11,12が飽和し始める約20(Oe)までの広い範囲でMR比が直線的に減少しており、第3実施形態の磁界検出素子7dと比較して、線形性が大幅に改善されている。
【0063】
磁界検出素子7e,7fのバイパス部13は、幅方向の中央部が突出しているので、入力磁界が弱いときは、この部分に磁束が誘引され、幅方向中央部に磁束が集中する。このため、バイパス部13の幅方向中央部は、低い磁界強度で他の部分よりも先に飽和する。さらに、磁界強度が上昇すると、バイパス部13の飽和する範囲が中央部から幅方向両側および長さ方向に漸次拡がってゆく。これにより、バイパス部13の飽和によりMR比の線形性を改善する作用が、幅方向にタイミングをずらして部分的に発揮され、磁界強度が低いときから高いときまで、広い範囲でMR比を直線的に変化させられる。
【0064】
同様に、バイパス部13を部分的に異なる磁界強度において飽和させ、MR比の線形性を改善する効果を得るために、図15に示す本発明の第6実施形態の磁界検出素子7gのように、バイパス部13を、磁束を案内する方向に長さの異なる複数の分離された部分に分割して形成してもよい。また、図15に示す本発明の第7実施形態の磁界検出素子7hのように、バイパス部13の厚みを、幅方向に変化させてもよい。
【0065】
さらに、本発明では、バイパス部13の材質を異ならせることによっても、MR部10の磁界強度に対する電気抵抗変化の曲線の形状を変えることができる。ここでは、図17に示す本発明の第8実施形態である磁界検出素子7iのバイパス部13を、異なる軟磁性材料で形成して、MR比の変化特性の違いを検証する。
【0066】
磁界検出素子7iにおいて、MR部10およびヨーク部11,12の材質および形状は、上述の第2実施形態と同じである。また、磁界検出素子7iのバイパス部13は、長さがMR部10の全長と等しい5μm、厚みが0.2μm、幅がMR部10およびヨーク部11,12と等しい80μmであり、MR部10との間の隙間が0.05μmである。
【0067】
図18は、バイパス部13を形成する3種類の軟磁性材料のB−H曲線(磁界強度に対する磁束数の変化)を示す。通常材料は、上述の第2実施形態と同様に、ヨーク部11,12と同じく、金属材料を配向磁界下で形成した通常の軟磁性材料薄膜、例えばアモルファスCo78Fe4Si9B9膜であり、磁界強度の増加に正比例して磁束数が線形的に増加し、入力磁界がある強度に達すると、飽和して、入力磁界が強くなっても磁束数が増加しなくなる特性を有する。第1の代替材料は、ヨーク部11,12と同じ組成であるが、通常の磁性材料の製法と異なり、ランダムな配向磁界を与えつつ形成し、一軸誘導磁気異方性を除去したものである。これにより、第1の代替材料は、入力磁界の増加に対する磁束密度の増加率が徐々に低下するような非線形のB−H特性を有する。また、第2の代替材料は、例えばCo65Fe3Si15B17のように、ヨーク部11,12で使用した材料に、SiやB等の非磁性元素をより多く添加した材料を、ランダムな配向磁界中で形成したものである。これにより、第2の代替材料は、第1の代替材料のB−H特性を、入力磁界強度に対する磁束密度が半分になるように、縦軸方向に約2分の1に圧縮したたような特性となっている。
【0068】
図19に、バイパス部13を図18に示した磁気特性の異なる材料で形成した磁界検出素子7i、および、バイパス部のない従来の磁界検出素子について、MR部10を含むヨーク部11とヨーク部12との間の電気抵抗(MR比)の磁界強度に対する変化のシミュレーション結果を示す。図示するように、第1代替材料からなるバイパス部13は、通常材料からなるバイパス部13に比べて、MR比の線形性を高めることができる。第2の代替材料からなるバイパス部13は、第1の代替材料からなるバイパス部13の断面積を2分の1にしたものと略同様のMR比特性を与えていると考えられる。
【0069】
このように、B−H特性が非線形な軟磁性材料によってバイパス部13を形成することにより、MR部10およびヨーク部11,12の非線形性をより適切に相殺して、MR部10を含むヨーク部11とヨーク部12との間の電気抵抗(MR比)を、磁界強度に対して線形に変化させるようにできる。バイパス部13に非線形のB−H特性を付与する方法として、ランダムな配向磁界中で形成する他、熱処理による方法や、薄膜成形の速度、温度、雰囲気ガス等の条件によって結晶の大きさや配向性を調整する方法がある。また、材料組成についても、コバルト・鉄系のアモルファス、および、ニッケル・鉄系、鉄・シリコン系や鉄・シリコン・アルミ系等の材料が適用できる。
【0070】
さらに、図20に示す本発明の第9実施形態の磁界検出素子7jのように、バイパス部13を、磁束を案内する方向に、異なる磁気特性を有する複数の材料を並べて形成してもよい。これによって、バイパス部13全体として、より好ましいB−H特性、つまり、磁界強度変化に対して非線形にバイパス量を変化させて、MR部10およびヨーク部11,12の磁界強度に対する非線形性を補償できる特性を有し得る。
【0071】
さらに、図21に示す本発明の第10実施形態の磁界検出素子7kのように、MR部10およびヨーク部11,12と、バイパス部13とを絶縁する絶縁膜(絶縁層)14を、導電率が非常に小さく、小さな透磁率を有し、且つ、磁気特性(B−H曲線)が非線形な半導体的磁性材料で形成することによっても、バイパス部13にバイパスされる磁束数を非線形に変化させて、MR部10およびヨーク部11,12の非線形性を補償することができる。この絶縁膜14の材料としては、例えば、MnZnフェライト膜、NiZnフェライト膜、CuZnフェライト膜、CuZnMgフェライト膜、等が挙げられる。
【符号の説明】
【0072】
1…信号伝達素子
3a,3b…励磁コイル
7a〜7k…磁界検出素子
10,10a,10b…磁気抵抗効果部(MR部)
11,11a,11b,12,12a,12b…ヨーク部
13,13a,13b…バイパス部
14…絶縁膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界強度を検出する磁界検出素子、および、磁気的結合により信号を伝達する信号伝達素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているように、入力信号に応じた磁界を発生させるコイルと、コイルが発生した磁界の強度を、磁気抵抗効果素子(磁界検出素子)を含むブリッジ回路で検出する磁気結合型の信号伝達素子が公知である。
【0003】
また、特許文献2に記載されているように、巨大磁気抵抗効果(外部磁界により数%以上の電気抵抗変化を示す物質の総称)を示すグラニュラー膜の電気抵抗の変化率感度を高めるために、巨大磁気抵抗効果を示すグラニュラー膜の両側に大きな磁束を供給する軟磁性材料からなるヨーク膜の対を配置するグラニュラーインギャップ(GIG)構造も周知である。
【0004】
そのようなGIG構造においては、外部磁界が印加されると、真っ先に大きな磁束密度を有する軟磁性材料からなるヨークが磁化し、その大きな磁化により発生した磁束が巨大磁気抵抗効果を示すグラニュラー膜に流入し、小さな外部磁界で大きな電気抵抗変化を実現できる。一方、GIG構造では、軟磁性材料ヨーク膜の磁化過程に伴う非線形的な磁束の増加特性と、グラニュラー膜の磁気抵抗効果における非線形的な抵抗値の変化特性とにより、磁界強度をリニアに検出できる線形範囲が著しく狭い範囲に限定されている。
【0005】
特許文献3には、微小な磁束変化を検出するために、磁路にバイパスを設けることで、検出コイルに印加される磁束を低減する技術が開示されている。この技術では、感度を低下させることで磁束変化を検出できる範囲を拡げているが、電気抵抗の値において線形性の高い範囲を拡げることはできず、磁気抵抗効果素子の線形性を改善することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2000−516714号公報
【特許文献2】特開2004−354181号公報
【特許文献3】特開平8−279112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記問題点に鑑みて、本発明は、線形性の高い磁界検出素子、および、線形性の高い信号伝達素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明による磁界検出素子は、磁気抵抗効果材料からなる磁気抵抗効果部と、前記磁気抵抗効果部の両側に電気的に接続して配設され、前記磁気抵抗効果部に磁束を供給する、軟磁性材料からなる一対のヨーク部と、前記ヨーク部に発生した磁束の一部を誘導して前記磁気抵抗効果部を迂回させ、前記ヨーク部よりも低い磁界強度で磁束が飽和する、軟磁性材料からなるバイパス部とを有するものとする。
【0009】
この構成によれば、外部磁界強度が低くバイパス部が未飽和状態では、外部磁界によりヨーク部に発生した磁束の一部がバイパス部を通過し、磁気抵抗効果部を通る磁束が減じられる。一方、外部磁界が増加するとバイパス部がヨーク部より先に飽和し、ヨーク部に発生した磁束の増加分はすべて磁気抵抗効果部を通過する。結果として、磁気抵抗効果部の電気抵抗変化曲線の形状を変形させて線形性を向上させる。
【0010】
また、本発明の磁界検出素子において、前記バイパス部は、前記磁気抵抗効果部および前記ヨーク部と電気的に絶縁されてもよい。
【0011】
この構成によれば、バイパス部が電気的に切り離されているので、磁気抵抗効果部の電気抵抗を正確に検出することができ、バイパス部が検出精度に与える影響を極力抑えて、磁気抵抗効果部の磁界強度に対する電気抵抗の変化の線形性を高くできる。
【0012】
また、本発明の磁界検出素子において、前記磁気抵抗効果部および前記ヨーク部は、同一平面上に膜状に形成され、前記バイパス部は、前記磁気抵抗効果部と少なくとも部分的に重なるように、前記ヨーク部との間に隙間を空けて膜状に形成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、基板上に微細加工技術によって薄膜材料を積層する一般的な半導体製造方法で製造できる。
【0014】
また、本発明の磁界検出素子は、前記バイパス部の磁束が飽和しない磁界強度において、前記ヨーク部の間の、前記バイパス部を介して前記磁気抵抗効果部を迂回する磁路のリラクタンスが、前記磁気抵抗効果部のリラクタンスより小さくてもよい。
【0015】
この構成によれば、磁界強度が低いときに多くの磁束が磁気抵抗効果部を迂回するので、バイパス部による磁気抵抗効果部の抵抗変化特性に与える影響が大きく、線形性を大きく改善できる。
【0016】
また、本発明の磁界検出素子において、前記バイパス部は、部分的に、異なる磁界強度で磁束が飽和してもよい。
【0017】
この構成によれば、バイパス部の一部が飽和する度に、外部磁界に対する磁気抵抗効果部の抵抗変化特性を線形にするように磁束のバイパスする割合を変化させられる。
【0018】
また、本発明の磁界検出素子において、前記バイパス部は、磁束を案内する方向の長さが異なる部分を含んでもよい。
【0019】
この構成によれば、バイパス部の平面的形状によって、磁束の飽和する磁界強度を部分的に異ならせることができる。
【0020】
また、本発明による信号伝達素子は、前記磁界検出素子のいずれかと、入力信号に応じて前記磁界検出素子に磁界を印加するコイルとを有するものとする。
【0021】
この構成によれば、入力と出力の伝達効率が良く、かつ、本発明によって線形性の良い入出力伝達も可能なため、結果的に高品位の信号伝達ができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、外部磁界強度が低くバイパス部が未飽和状態では、外部磁界によりヨーク部が発生した磁束の一部がバイパス部を通過し、磁気抵抗効果部を通る磁束が減じられる。一方、外部磁界が増加するとバイパス部が先に飽和し、ヨーク部に発生した磁束はすべて磁気抵抗効果部を通過する。結果として、磁気抵抗効果部の電気抵抗変化曲線の形状を変形させ線形性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の信号伝達素子の電気回路図である。
【図2】図1の信号伝達素子の平面図である。
【図3】図2の磁界検出素子の斜視図である。
【図4】図3の磁界検出素子の平面図である。
【図5】図3の磁界検出素子の磁路リラクタンス図である。
【図6】図3の磁界検出素子の磁界強度に対する電気抵抗変化を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態の磁界検出素子の側面図である。
【図8】図7の磁界検出素子の斜視図である。
【図9】図7の磁界検出素子のバイパス部の幅を変更したときの磁界強度に対する電気抵抗変化を示す図である。
【図10】図7の磁界検出素子のバイパス部の厚さを変更したときの磁界強度に対する電気抵抗変化を示す図である。
【図11】本発明の第3実施形態の磁界検出素子の斜視図である。
【図12】本発明の第4実施形態の磁界検出素子の斜視図である。
【図13】本発明の第5実施形態の磁界検出素子の斜視図である。
【図14】図11〜13の磁界検出素子の磁界強度に対する電気抵抗変化を示す図である。
【図15】本発明の第6実施形態の磁界検出素子の斜視図である。
【図16】本発明の第7実施形態の磁界検出素子の斜視図である。
【図17】本発明の第8実施形態の磁界検出素子の斜視図である。
【図18】図17の磁界検出素子のバイパス部を形成する材料のB−H線図である。
【図19】図17の磁界検出素子のバイパス部の材料の違いによる磁界強度に対する電気抵抗変化を示す図である。
【図20】本発明の第8実施形態の磁界検出素子の側面図である。
【図21】本発明の第9実施形態の磁界検出素子の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態の信号伝達素子(磁気結合型アイソレータ)1の回路構成を示す。信号伝達素子1は、入力端子2a,2bに入力された電流に応じて磁界を発生させる2つの励磁コイル3a,3bを有する1次側回路4と、1次側回路4と磁気的に結合し、出力端子5a,5bに入力電圧に応じた電圧を出力する2次側回路6とを有する。
【0025】
2次側回路6は、励磁コイル3a,3bが発生した磁界の強度に応じて電気抵抗の値が変化する2つの磁界検出素子7a,7bと、電気抵抗の値が変化しない2つの固定抵抗8a,8bとで構成され、電源Vccに接続されたブリッジ回路である。
【0026】
図2(平面図)に、信号伝達素子1の実際的形状を示す。信号伝達素子1は、表面に絶縁皮膜が形成されたシリコン基板9上に、各構成要素を積層して形成してなる。励磁コイル3a,3bは、磁界検出素子7a,7bをそれぞれ囲むように形成されている。
【0027】
磁界検出素子7a,7bは、さらに図3(斜視図)および図4(断面図)に詳しく示すように、巨大磁気抵抗効果材料からなる磁気抵抗効果部(以下、MR部と称する)10a,10bと、MR部10a,10bの両側にそれぞれ電気的な接触を保つよう配設されていて軟磁性材料からなるヨーク部11a,12aおよび11b,12bで構成されている。このヨーク部は前記巨大磁気抵抗効果材料よりも大幅に低い電気比抵抗を有しており、MR部へ電流を供給する電極も兼ねている(いわゆるGIG)。これに、ヨーク部11a,12aおよび11b,12bと、MR部10a,10bと部分的に重複し、MR部10a,10bおよびヨーク部11a,12a,11b,12bとの間に隙間dを空けて電気的に絶縁されて配置された軟磁性材料からなるバイパス部13a,13bとを有する。この磁界検出素子7a、7bの外側を巻くように励磁コイル3a、3bが配設されている。
【0028】
バイパス部13a,13bとMR部10a,10bおよびヨーク部11a,12a,11b,12bとの間の隙間dは、空気層であってもよいが、実際的には、バイパス部13a,13bとMR部10a,10bおよびヨーク部11a,12a,11b,12bとの間に形成した、非磁性の材料からなる絶縁膜(保護膜)である。
【0029】
MR部10a,10bを形成する巨大磁気抵抗効果材料としては、例えば、Co39Y14O47をはじめCo43Al24O33やCo35Mg20F45等のナノグラニュラー薄膜材料があり、それぞれの典型的な電気比抵抗は、3×106μΩm、0.4×103μΩm、1×106μΩmである。他にも、巨大磁気抵抗効果材料として、CoX−(Y2O3)(100−X)系ナノグラニュラー合金、CoX−(Al2O3)(100−X)系ナノグラニュラー合金、CoX−(Sm2O3)(100−X)系ナノグラニュラー合金、CoX−(Dy2O3)(100−X)系ナノグラニュラー合金、(FeCo)X−(Y2O3)(100−X)系ナノグラニュラー合金、Fe)X−(MgF2)(100−X)、(FeCo)X−(MgF2)(100−X)、FeX−(CaF2)(100−X)等のフッ化物系ナノグラニュラー合金等が使用できる。尚、本願の記載における組成比はat%である。
【0030】
また、ヨーク部11a,12a,11b,12bおよびバイパス部13a,13bを形成する軟磁性材料としては、例えば、Co77Fe5Si9B8やFe78.5Ni21.5があり、それぞれの典型的な電気比抵抗は1.15μΩm、0.16μΩmである。他にも、軟磁性材料として、パーマロイ(40〜90%Ni−Fe合金)、センダスト(Fe74Si9Al17)、ハードパーム(Fe12Ni82Nb6)、Co88Nb6Zr6アモルファス合金、(Co94Fe6)70Si15B15アモルファス合金、ファインメット(Fe75.6Si13.2B8.5Nb1.9Cu0.8)、ナノマックス(Fe83HF6C11)、Fe85Zr10B5合金、Fe93Si3N4合金、Fe71B11N18合金、Fe71.3Nd9.6O19.1ナノグラニュラー合金、Co70Al10O20ナノグラニュラー合金、Co65Fe5Al10O20合金等が使用できる。また、隙間dを形成する材料としては、例えば、SiO2やAl2O3などの無機材料がある。
【0031】
ヨーク部11a,11bおよび12a,12bは、例えば、コイルの長手方向(磁束の方向)の長さが250μm、幅が80μm、厚さが0.5μmの長方形に、各対の端部が1μmのギャップGを空けてそれぞれ対向し合うように、同一平面上に膜状に形成されている。MR部10a,10bは、ヨーク部11a,12aおよび11b,12bのギャップGの間に電気的に接続されて形成されている。
【0032】
バイパス部13a,13bは、例えば、長さが5μm、幅が5μm、厚さが0.1μmであり、MR部10a,10bおよびヨーク部11a,12a,11b,12bとの間に0.1μmの隙間dを空けて形成されている。
【0033】
図5に、磁界検出素子7a,7bの磁路リラクタンスとしての構成(磁気回路図)を示す。この磁路リラクタンスは、ヨーク部11a,11bのリラクタンスRYOKとヨーク部12a,12bのリラクタンスRYOKとの間に、ヨーク部11a,11bとバイパス部13a,13bとの間の空気または非磁性絶縁部のリラクタンスRGAP、バイパス部13a,13bのリラクタンスRBPS、および、バイパス部13a,13bとヨーク部12a,12bとの間の空気または非磁性絶縁部のリラクタンスRGAPが直列に接続されたものが、MR部10a,10bのリラクタンスRGMRと並列に接続されたものと考えることができる。
【0034】
これにより、磁界検出素子7a,7bでは、励磁コイル3a,3bが発生し、ヨーク部11a,11b,12a,12bによって発生した磁束は、当初、MR部10a,10bとバイパス部13a,13bとに分かれる。つまり、バイパス部13a,13bは、ヨーク部11a,11b,12a,12bによって発生した多数の磁束の一部を誘引して、MR部10a,10bを迂回させることにより、MR部10a,10bを通る磁束の数を低減する。
【0035】
但し、リラクタンスRYOK,RGMR,RBPSは、それぞれ、磁界強度によってその値が変化する。一般に、リラクタンスは、磁界強度の上昇に伴って通過する磁束数が増加すると、その値が上昇する。そして、ある磁界強度において磁束が飽和するため、リラクタンスの値は、磁界強度が低いときに比べて格段に大きな割合で増加するようになり、完全に飽和することで通過する磁束数がそれ以上増加しなくなる。特に、本発明においてバイパス部13a,13bのリラクタンスRBPSは他のリラクタンスよりも低い磁界で急増する。
【0036】
尚、MR部10a,10bのリラクタンスRGMRは、MR部10a,10bの磁束が印加される方向の長さ(磁路長さ)をGGMR、MR部10a,10bの透磁率をμGMR、MR部10a,10bの厚さをtGMR、MR部10a,10bの幅(磁路幅)をWGMRとして、次の式で表すことができる。
RGMR=GGMR/(μGMR×tGMR×WGMR)
【0037】
図6に、MR部10a,10bを含むヨーク部11a,11bとヨーク部12a,12bとの間の電気抵抗の、磁界検出素子7a,7bに印加される入力磁界の強さに対する変化のシミュレーション結果を、磁界強度がゼロのときの抵抗を100%として表したMR比で示す。尚、図中には、MR部10a,10bおよびヨーク部11a,11b,12a,12bのみからなり、バイパス部13a,13bのない従来の構成の磁界検出素子の電気抵抗と比較して示す。尚、バイパス部13a,13bは、MR部10a,10bおよびヨーク部11a,11b,12a,12bから電気的に絶縁されているので、MR部10a,10bを含む電路の電気抵抗に影響しない。
【0038】
このシミュレーションでは、MR部10として、10KOeにおけるMR比が14%である(FeCo)30−(MgF2)70からなるナノグラニュラー膜を、ヨーク部11,12として、10KOeにおける磁束密度が12KGであり、幅方向に20Oe程度の一軸誘導磁気異方性を有し、透磁率がゼロ磁界から飽和磁界まで略線形的に変化するアモルファスCo78Fe4Si9B9膜を用いた。また、バイパス部13は、ヨーク部11,12と同じ材質のアモルファス膜を用いた。
【0039】
MR部10a,10bは、通過する磁束数が増加すると、その電気抵抗が低下するが、入力磁界が小さく、バイパス部13a,13bが未飽和の場合、ヨーク部11a,11b,12a,12bによって発生した磁束の一部がバイパス部13a,13bに誘導されるので、従来に比べてその電気抵抗の低下率が低い。図においては、MR比の変化特性(線図の形状)が従来と比べて横方向に拡がったものになる。
【0040】
しかしながら、バイパス部13a,13bの断面積(厚さ×幅)は、ヨーク部11a,11b,12a,12bの断面積(厚さ×幅)と比べて十分に小さいため、入力磁界が強くなり、励磁コイル3a,3bが形成する磁束数が増加(励磁コイル3a,3bによって形成され、磁界検出素子7a,7bに印加される磁界強度が上昇)すると、バイパス部13a,13bは、磁束が飽和して、それ以上磁束を誘導できなくなる。このため、入力磁界の強度が高くなると、バイパス部13a,13bによる磁束のバイパス効果が低くなり、ヨーク部11a,11b,12a,12bに発生した磁束の増加分の多くがMR部10a,10bに誘導される。図においては、バイパス部13a,13bが飽和に近づくにつれ、グラフが従来に比べて横に拡がる度合いが小さくなり、結果的にMR比の変化特性の線形性が改善される。
【0041】
磁界検出素子7a,7bでは、入力磁界の強度がさらに高くなると、ヨーク部11a,11b,12a,12bよりも先にバイパス部13a,13bが完全に飽和する。結果として、バイパス部13a,13bが完全に飽和してからは、ヨーク部11a,11b,12a,12bに発生した磁束の増加分はすべてMR部10a,10bを通過する。以上の作用により、MR部10a,10bおよびヨーク部11a,11b,12a,12bのリラクタンスの増加による電気抵抗の変化率の低下を補い、線形性の高い電気抵抗(MR比)の変化特性を得ることができる。つまり、バイパス部13a,13bを備える磁界検出素子7a,7bは、従来のものよりも、入力磁界の変化に対する電気抵抗(MR比)の変化特性において、良好な線形性が得られる範囲が広い。
【0042】
ヨーク部11a,11b,12a,12bに発生した磁束の中でバイパス部13a,13bに誘導されてMR部10,10bを迂回する磁束の割合が低いと、MR部10a,10bのMR比の特性を変化させる余地が小さくなるので、磁界強度が低いときには、ヨーク部11a−12a間,11b−12b間の、12bバイパス部13a,13bを介した磁路のリラクタンス(2RYOK+2RGAP+RGMR)が、MR部10a,10bを介した磁路のリラクタンス(2RYOK+RGMR)に比べて小さいことが好ましい。
【0043】
しかしながら、バイパス部13a,13bを介した磁路のリラクタンス(2RYOK+2RGAP+RGMR)がMR部10a,10bを介した磁路のリラクタンス(2RYOK+RGMR)に比べて過度に低い場合、バイパス部13a,13bに多くの磁束が誘導され過ぎるため、図6のグラフにおいて、バイパス部13a,13bを有する場合のMR比変化特性の線図が横に拡がり過ぎて、MR部10a,10bの入力磁界に対する電気抵抗の変化率が小さくなるので、磁界強度の検出感度が低くなってしまう。また、バイパス部13a,13bを介した磁路のリラクタンスが高過ぎる場合、バイパス部13a,13bに磁束を誘導できず、MR部10a,10bをバイパスさせる効果がほとんどなくなるため、電気抵抗の変化特性を改善する効果が得られなくなる。このように、磁界検出素子7a,7bの好ましい特性を得るために、バイパス部13a,13bを介した磁路のリラクタンス(2RYOK+2RGAP+RGMR)と、MR部10a,10bを介した磁路のリラクタンス(2RYOK+RGMR)とのバランスを考慮する必要がある。
【0044】
図7および図8に、本発明の第2実施形態である磁界検出素子7cを示す。第2実施形態の磁界検出素子7cは、ギャップGを形成して対向する端部の厚みがテーパ状に小さくなったヨーク部11,12と、ヨーク部11,12の片側のテーパ部分からギャップGの半ばまでに磁気抵抗効果材料を充填して形成されたMR部10と、MR部10と不図示の絶縁膜を介して重なるように形成されたバイパス部13とからなる。
【0045】
ヨーク部11,12は、磁束を案内する方向(MR部10を挟み込む方向)の長さが250μm、幅が80μm、厚さが0.5μmで、1μmのギャップGを形成して対向している。また、ヨーク部11,12は、バイパス部13側の面が、磁束を案内する方向にMR部10側の端面からそれぞれ2μm長さに渡ってテーパ状に傾斜しており、ギャップGを形成する端部の厚みは0.3μmである。バイパス部13は、磁束を案内する方向の長さが5μm、つまり、MR部10のヨーク部11,12のテーパ部を覆う部分を含む全長と等しく、。MR部10とバイパス部13との隙間d(スパッタSiO2薄膜で形成された絶縁膜の厚み)は、0.05μmである。
【0046】
この磁界検出素子7cでは、MR部10として、10KOeにおけるMR比が14%である(FeCo)30−(MgF2)70からなるギャップGでの膜厚0.3μmのナノグラニュラー膜を、ヨーク部11,12として、10KOeにおける磁束密度が12KGであり、幅方向に20Oe程度の一軸誘導磁気異方性を有し、透磁率がゼロ磁界から飽和磁界まで略線形的に変化するアモルファスCo78Fe4Si9B9膜を用いた。また、バイパス部13は、ヨーク部11,12と同じ材質アモルファス膜を用いた。
【0047】
図9に、本実施形態の磁界検出素子7cのバイパス部13の厚みを0.2μmとし、バイパス部13の幅を、それぞれ、ヨーク部11,12と同じ80μm、半分の40μm、4分の1の20μm、8分の1の10μmとしたものにおける、MR部10を含むヨーク部11とヨーク部12との間の電気抵抗(MR比)の入力磁界の強度に対する変化の実測結果を示す。
【0048】
図示するように、磁界検出素子7cにおいても、第1実施形態と同様に、入力磁界が10(Oe)より弱い範囲では、バイパス部13によって、MR比の曲線が横軸方向に引き延ばされ、入力磁界が強くなってバイパス部13が完全に飽和した後は、バイパス部のない従来の磁界検出素子の曲線を横軸方向に並行移動したものと略一致するような曲線が描かれる。さらに、本実施形態では、ヨーク部11,12も、約20(Oe)の磁界強度において飽和している。このため、これ以上の磁界強度では、MR比の減少率が大きく低下している。
【0049】
さらに、バイパス部13の幅が広い程、バイパス部を迂回する磁束数が多くなり、その挙動が磁束数の増加により非線形的に大きく変化するため、入力磁界の強度がバイパス部13を飽和させる辺りにおける線形性を改善する効果が大きくなるので、MR比が線形となる範囲が広くなる。同時に、バイパス部13の幅が広い程、バイパス部を迂回する磁束数が多くなるため、入力磁界の変化に対するMR比の変化率は小さくなる。但し、ヨーク部11,12が飽和すると線形性が損なわれるので、バイパス部13によるMR比特性を改善する磁界強度の範囲は、ヨーク部11,12が飽和する磁界強度より低い範囲でなければならない。つまり、本実施形態において、線形範囲を最も広くした場合、その線形範囲は、バイパス部13が飽和し始めてから、ヨーク部11,12が飽和し始めるまでとなる。
【0050】
図10に、本実施形態の磁界検出素子7cのバイパス部13の幅を80μmとし、バイパス部13の厚みを0.2μmとしたものと0.1μmとしたもの、さらに、バイパス部のないものにおける、MR部10を含むヨーク部11とヨーク部12との間の電気抵抗(MR比)の入力磁界の強度に対する変化の実測結果を示す。
【0051】
図示するように、バイパス部13の厚みが大きい程、入力磁界の強度が低いときにMR比の曲線を横方向に拡げる度合いが大きくなるため、バイパス部13が飽和する入力磁界の強度が高くなる。さらに、図10において、バイパス部13の幅を80μm、厚みを0.1μmとした場合のMR比の曲線は、図9における、バイパス部13の幅を40μm、厚みを0.2μmとした場合MR比の曲線と略一致する。つまり、他の条件が一定の場合、バイパス部13の断面積が同じであればMR比の特性が略同じになる。
【0052】
また、ヨーク部11,12およびバイパス部13の磁束の飽和し易さも、それぞれの断面積に依存する。本実施形態では、ヨーク部11,12とバイパス部13とが同じ材質で形成されているので、バイパス部13の断面積をヨーク部11,12の断面積より小さくすべきである。尚、ここにいう断面積とは、それぞれを通過する磁束数を制限する実効的な断面積を指す。
【0053】
したがって、磁界検出素子7cにおいて、バイパス部13の断面積と、ヨーク部11,12の断面積との比を選択することによって、バイパス部13を介した磁路のリラクタンス(2RYOK+2RGAP+RGMR)と、MR部10を介した磁路のリラクタンス(2RYOK+RGMR)とのバランスを調整できる。
【0054】
本実施形態の磁界検出素子7cにおいて、上面から見た、バイパス部13とヨーク部11,12の重なる面積を変えることによっても、バイパス部13を介した磁路のリラクタンス(2RYOK+2RGAP+RGMR)と、MR部10を介した磁路のリラクタンス(2RYOK+RGMR)とのバランスを調整できる。
【0055】
また、本実施形態において、バイパス部13と、ヨーク部11,12との間の隙間dの大きさを変えることによっても、バイパス部13とヨーク部11,12との間のリラクタンスRGAPを変更できる。
【0056】
本実施形態では、バイパス部13を、MR部10の片側に重なるように配設しているが、バイパス部13は、ヨーク部11,12に発生した磁束を誘導して、MR部10を迂回させられるものであればいかなる形態であってもよい。例えば、バイパス部13を、MR部10(ヨーク部11,12のギャップG)の両側または側方に配設してもよい。また、MR部10がヨーク部11,12のギャップGの一部分のみを占有する場合、バイパス部13をヨーク部11,12のギャップGの中に配設してもよい。
【0057】
図11に、本発明の第3実施形態である磁界検出素子7dを示し、図12に、本発明の第4実施形態である磁界検出素子7eを示し、図13に、本発明の第5実施形態である磁界検出素子7fを示す。
【0058】
第3実施形態の磁界検出素子7dは、図11に示すように、バイパス部13が、MR部10のギャップGの部分のみと重なるように形成されている他は、第2実施形態の磁界検出素子7cと同じ構成である。
【0059】
第4実施形態の磁界検出素子7eは、図12に示すように、第3実施形態の磁界検出素子7dのバイパス部13を、ヨーク部11,12の長さ方向、つまり、バイパス部13が磁束を案内する方向に、不均一に拡張した形状を有する。具体的には、バイパス部13は、幅方向(磁束を案内する方向に直交する方向)の両端がギャップGの部分のみと重なるが、幅方向内側ほど磁束を案内する方向に長く、特に、幅方向中心部は、三角形状に突出し、先端がヨーク部11,12のテーパ開始部分に対向する位置まで延伸した、概略十字星形をなしている。
【0060】
第5実施形態の磁界検出素子7fは、図13に示すように、第4実施形態の磁界検出素子7eのバイパス部13の星形をより極端な形状にしたものであり、本実施形態のバイパス部13は、幅方向両端部が磁束を案内する方向の長さがゼロになるように尖っており、幅方向中心部の三角形の突出部も頂角が小さい尖鋭な形状になっている。つまり、バイパス部13が磁束を案内する方向の長さが極端に変化している。
【0061】
図14に、磁界検出素子7d,7e,7f、並びに、バイパス部13を設けないMR部10とヨーク部11,12のみからなる従来の磁界検出素子について、MR部10を含むヨーク部11とヨーク部12との間の電気抵抗(MR比)の入力磁界の強度に対する変化特性のシミュレーション結果を示す。
【0062】
第3実施形態の磁界検出素子7dは、第2実施形態の磁界検出素子7cと同様に、バイパス部13が飽和し始める(捕捉する磁束数が磁界強度に比例して上昇しなくなる)約10(Oe)までは、MR比の減少率が小さく、線形性が低い。しかしながら、第4実施形態の磁界検出素子7eおよび第5実施形態の磁界検出素子7fでは、磁界強度が低いときからヨーク部11,12が飽和し始める約20(Oe)までの広い範囲でMR比が直線的に減少しており、第3実施形態の磁界検出素子7dと比較して、線形性が大幅に改善されている。
【0063】
磁界検出素子7e,7fのバイパス部13は、幅方向の中央部が突出しているので、入力磁界が弱いときは、この部分に磁束が誘引され、幅方向中央部に磁束が集中する。このため、バイパス部13の幅方向中央部は、低い磁界強度で他の部分よりも先に飽和する。さらに、磁界強度が上昇すると、バイパス部13の飽和する範囲が中央部から幅方向両側および長さ方向に漸次拡がってゆく。これにより、バイパス部13の飽和によりMR比の線形性を改善する作用が、幅方向にタイミングをずらして部分的に発揮され、磁界強度が低いときから高いときまで、広い範囲でMR比を直線的に変化させられる。
【0064】
同様に、バイパス部13を部分的に異なる磁界強度において飽和させ、MR比の線形性を改善する効果を得るために、図15に示す本発明の第6実施形態の磁界検出素子7gのように、バイパス部13を、磁束を案内する方向に長さの異なる複数の分離された部分に分割して形成してもよい。また、図15に示す本発明の第7実施形態の磁界検出素子7hのように、バイパス部13の厚みを、幅方向に変化させてもよい。
【0065】
さらに、本発明では、バイパス部13の材質を異ならせることによっても、MR部10の磁界強度に対する電気抵抗変化の曲線の形状を変えることができる。ここでは、図17に示す本発明の第8実施形態である磁界検出素子7iのバイパス部13を、異なる軟磁性材料で形成して、MR比の変化特性の違いを検証する。
【0066】
磁界検出素子7iにおいて、MR部10およびヨーク部11,12の材質および形状は、上述の第2実施形態と同じである。また、磁界検出素子7iのバイパス部13は、長さがMR部10の全長と等しい5μm、厚みが0.2μm、幅がMR部10およびヨーク部11,12と等しい80μmであり、MR部10との間の隙間が0.05μmである。
【0067】
図18は、バイパス部13を形成する3種類の軟磁性材料のB−H曲線(磁界強度に対する磁束数の変化)を示す。通常材料は、上述の第2実施形態と同様に、ヨーク部11,12と同じく、金属材料を配向磁界下で形成した通常の軟磁性材料薄膜、例えばアモルファスCo78Fe4Si9B9膜であり、磁界強度の増加に正比例して磁束数が線形的に増加し、入力磁界がある強度に達すると、飽和して、入力磁界が強くなっても磁束数が増加しなくなる特性を有する。第1の代替材料は、ヨーク部11,12と同じ組成であるが、通常の磁性材料の製法と異なり、ランダムな配向磁界を与えつつ形成し、一軸誘導磁気異方性を除去したものである。これにより、第1の代替材料は、入力磁界の増加に対する磁束密度の増加率が徐々に低下するような非線形のB−H特性を有する。また、第2の代替材料は、例えばCo65Fe3Si15B17のように、ヨーク部11,12で使用した材料に、SiやB等の非磁性元素をより多く添加した材料を、ランダムな配向磁界中で形成したものである。これにより、第2の代替材料は、第1の代替材料のB−H特性を、入力磁界強度に対する磁束密度が半分になるように、縦軸方向に約2分の1に圧縮したたような特性となっている。
【0068】
図19に、バイパス部13を図18に示した磁気特性の異なる材料で形成した磁界検出素子7i、および、バイパス部のない従来の磁界検出素子について、MR部10を含むヨーク部11とヨーク部12との間の電気抵抗(MR比)の磁界強度に対する変化のシミュレーション結果を示す。図示するように、第1代替材料からなるバイパス部13は、通常材料からなるバイパス部13に比べて、MR比の線形性を高めることができる。第2の代替材料からなるバイパス部13は、第1の代替材料からなるバイパス部13の断面積を2分の1にしたものと略同様のMR比特性を与えていると考えられる。
【0069】
このように、B−H特性が非線形な軟磁性材料によってバイパス部13を形成することにより、MR部10およびヨーク部11,12の非線形性をより適切に相殺して、MR部10を含むヨーク部11とヨーク部12との間の電気抵抗(MR比)を、磁界強度に対して線形に変化させるようにできる。バイパス部13に非線形のB−H特性を付与する方法として、ランダムな配向磁界中で形成する他、熱処理による方法や、薄膜成形の速度、温度、雰囲気ガス等の条件によって結晶の大きさや配向性を調整する方法がある。また、材料組成についても、コバルト・鉄系のアモルファス、および、ニッケル・鉄系、鉄・シリコン系や鉄・シリコン・アルミ系等の材料が適用できる。
【0070】
さらに、図20に示す本発明の第9実施形態の磁界検出素子7jのように、バイパス部13を、磁束を案内する方向に、異なる磁気特性を有する複数の材料を並べて形成してもよい。これによって、バイパス部13全体として、より好ましいB−H特性、つまり、磁界強度変化に対して非線形にバイパス量を変化させて、MR部10およびヨーク部11,12の磁界強度に対する非線形性を補償できる特性を有し得る。
【0071】
さらに、図21に示す本発明の第10実施形態の磁界検出素子7kのように、MR部10およびヨーク部11,12と、バイパス部13とを絶縁する絶縁膜(絶縁層)14を、導電率が非常に小さく、小さな透磁率を有し、且つ、磁気特性(B−H曲線)が非線形な半導体的磁性材料で形成することによっても、バイパス部13にバイパスされる磁束数を非線形に変化させて、MR部10およびヨーク部11,12の非線形性を補償することができる。この絶縁膜14の材料としては、例えば、MnZnフェライト膜、NiZnフェライト膜、CuZnフェライト膜、CuZnMgフェライト膜、等が挙げられる。
【符号の説明】
【0072】
1…信号伝達素子
3a,3b…励磁コイル
7a〜7k…磁界検出素子
10,10a,10b…磁気抵抗効果部(MR部)
11,11a,11b,12,12a,12b…ヨーク部
13,13a,13b…バイパス部
14…絶縁膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗効果材料からなる磁気抵抗効果部と、
前記磁気抵抗効果部の両側に電気的に接続して配設され、前記磁気抵抗効果部に磁束を供給する、軟磁性材料からなる一対のヨーク部と、
前記ヨーク部に発生した磁束の一部を誘導して前記磁気抵抗効果部を迂回させ、前記ヨーク部よりも低い磁界強度で磁束が飽和する、軟磁性材料からなるバイパス部とを有する磁界検出素子。
【請求項2】
前記バイパス部は、前記磁気抵抗効果部および前記ヨーク部と電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1に記載の磁界検出素子。
【請求項3】
前記磁気抵抗効果部および前記ヨーク部は、同一平面上に膜状に形成され、
前記バイパス部は、前記磁気抵抗効果部と少なくとも部分的に重なるように、且つ、前記ヨーク部との間に隙間を空けて膜状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の磁界検出素子。
【請求項4】
前記バイパス部の磁束が飽和しない磁界強度において、前記ヨーク部の間の、前記バイパス部を介して前記磁気抵抗効果部を迂回する磁路のリラクタンスが、前記磁気抵抗効果部のリラクタンスより小さいことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁界検出素子。
【請求項5】
前記バイパス部は、部分的に、異なる磁界強度で磁束が飽和することを特徴とすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の磁界検出素子。
【請求項6】
前記バイパス部は、磁束を案内する方向の長さが異なる部分を含むことを特徴とする請求項5に記載の磁界検出素子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の磁界検出素子と、入力信号に応じて前記磁界検出素子に磁界を印加するコイルとを有することを特徴とする信号伝達素子。
【請求項1】
磁気抵抗効果材料からなる磁気抵抗効果部と、
前記磁気抵抗効果部の両側に電気的に接続して配設され、前記磁気抵抗効果部に磁束を供給する、軟磁性材料からなる一対のヨーク部と、
前記ヨーク部に発生した磁束の一部を誘導して前記磁気抵抗効果部を迂回させ、前記ヨーク部よりも低い磁界強度で磁束が飽和する、軟磁性材料からなるバイパス部とを有する磁界検出素子。
【請求項2】
前記バイパス部は、前記磁気抵抗効果部および前記ヨーク部と電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1に記載の磁界検出素子。
【請求項3】
前記磁気抵抗効果部および前記ヨーク部は、同一平面上に膜状に形成され、
前記バイパス部は、前記磁気抵抗効果部と少なくとも部分的に重なるように、且つ、前記ヨーク部との間に隙間を空けて膜状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の磁界検出素子。
【請求項4】
前記バイパス部の磁束が飽和しない磁界強度において、前記ヨーク部の間の、前記バイパス部を介して前記磁気抵抗効果部を迂回する磁路のリラクタンスが、前記磁気抵抗効果部のリラクタンスより小さいことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁界検出素子。
【請求項5】
前記バイパス部は、部分的に、異なる磁界強度で磁束が飽和することを特徴とすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の磁界検出素子。
【請求項6】
前記バイパス部は、磁束を案内する方向の長さが異なる部分を含むことを特徴とする請求項5に記載の磁界検出素子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の磁界検出素子と、入力信号に応じて前記磁界検出素子に磁界を印加するコイルとを有することを特徴とする信号伝達素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−101882(P2010−101882A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223760(P2009−223760)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【出願人】(000173795)財団法人電気磁気材料研究所 (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【出願人】(000173795)財団法人電気磁気材料研究所 (28)
【Fターム(参考)】
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