説明

磁界角計測装置およびそれを用いた回転機

【課題】磁束発生体が高速に回転する場合であっても、磁束発生体または磁気センサの近傍に非磁性の導体(導電体)を配置した構成を用いて精度良く磁界角または回転角を計測すること。
【解決手段】磁界方向に感応する磁気センサ70と、非磁性の第1の導体240と、非磁性の第2の導体242とを備えた磁界角計測装置であって、前記磁気センサは、前記第1の導体と前記第2の導体との間に配置され、前記第1の導体中の渦電流が前記磁気センサに及ぼす磁界と、前記第2の導体中の渦電流が前記磁気センサに及ぼす磁界とが、互いに打ち消しあう構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサを用いた磁界角計測装置、回転角計測装置、回転機、および回転機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転体に磁束発生体(以下「センサ磁石」と呼ぶ)を設置し、その磁束発生体が生成する磁束が届く範囲の位置に磁気センサを設置する。回転体が回転するとセンサ磁石が生成する磁束の方向も回転するので、その磁束の方向を磁気センサで検出することで回転体の回転位置(回転角)が計測できることが知られている。
【0003】
ここで、磁気センサを大別すると、磁界の強度に応じた信号を出力する磁界強度計測センサと、磁界の方向に応じた信号を出力する磁界方向計測センサとに分けられる。磁界方向計測センサは、ベクトルとしての磁界方向を計測することから、ベクトル型磁気センサとも呼ばれる。
【0004】
磁界方向計測センサには、磁界感応素子としてホール効果素子(Hall-effect element)を用いたものや、磁気抵抗効果素子(Magneto-resistance element)を用いたものなどがある。
【0005】
ホール効果素子自体は磁界強度に応じた信号を出力する素子である。しかし、複数個のホール効果素子を用いて、磁界強度の空間的な差分を測定し、磁界方向の余弦成分(COS成分)と正弦成分(SIN成分)とを検出することで磁界の方向に応じた信号が出力できる。
【0006】
また、適切な形状の磁性体と複数個のホール効果素子を用いることで、磁界方向を計測する磁気センサがある。この型の磁気センサは、磁性体により磁界を集束させることにより磁界方向を磁界強度差に変換し、それを複数個のホール効果素子で計測する。
【0007】
このように、ホール効果素子で構成された、磁界方向に応じた信号を出力する磁界方向計測センサ型の磁気センサが各種知られている。
【0008】
磁気抵抗素子は磁界の強度や磁界の方向に応じて電気抵抗が変化する素子である。磁気抵抗素子には、異方性磁気抵抗素子(Anisotropic Magneto-resistance、以下「AMR素子」と呼ぶ)、巨大磁気抵抗素子(Giant Magneto-resistance、 以下「GMR素子」と呼ぶ)、トンネル磁気抵抗効果素子(Tunneling Magneto-resistance、以下「TMR素子」と呼ぶ)などがある。
【0009】
AMR素子は磁界の方向と電流の方向とがなす角度に応じて電気抵抗が変化する。電流方向を変えた素子を適切に組み合わせることで、磁界角度に応じた信号を出力する。GMR素子は、固定磁化層と自由磁化層とをスペーサ層を介して積層した構成である。固定磁化層のスピン方向(磁化方向)を変えた素子を適切に組み合わせることで、磁界角度に応じた信号を出力する。なお、固定磁化層を有するGMR素子は、スピン・バルブ(Spin-valve)型GMR素子とも呼ばれる。
【0010】
磁気センサを用いた回転角センサの利点のひとつは、非接触型であることである。非接触型とは、回転体と回転位置を検出する検出器であるセンサとが、機械的に接触していないことを指す。すなわち、機械的に接触していないので、回転体が高速回転しても、長期間にわたって使用しても、機械的摩耗が発生せず、信頼性が高いセンサが得られる。
【0011】
また、磁気センサを用いた回転角センサの別の利点は、回転体とセンサとの間の距離を長くできることである。これは、磁界が比較的遠距離にまで作用が及ぶことに起因する。例えば、GMR素子を用いた磁気センサとネオジム磁石のセンサ磁石(磁束発生体)とを組み合わせた場合、両者の距離は5〜15mm程度まで長くすることができる。これに対し、リラクタンスの変化により回転角を計測するレゾルバでは、回転体と検出器(センサ)との距離は数100μm程度に近接させる必要がある。回転体とセンサとの間の距離が長くできることは、回転体を構成要素とする回転機(例えばモータなど)の設計自由度を高めたり、製作公差を緩和したりするなどの利点がある。
【0012】
また、磁気センサを用いた回転角センサの別の利点は、回転体とセンサとの間に非磁性の物体があってもよいことである。非磁性体の磁化率χはほぼゼロ(|χ|<0.1)であるから、比透磁率μrはほぼ1であり、空気中の比透磁率とほぼ等しい。そのため、非磁性体があっても磁界の方向は無視できる程度にしか変化しないからである。このことは、回転体を構成要素とする回転機(例えばモータなど)の設計自由度を高める利点がある。
【0013】
従来の回転角センサでは、回転体に設置された磁束発生体(センサ磁石)と磁気センサとの間に非磁性の導体(導電体)を配置した場合、回転体が高速で回転したり移動したりする場合には、渦電流の発生により磁界角度を正しく計測できないという課題があった。すなわち、磁束発生体が高速で回転すると、導体位置での磁界が時間変化するため導体内に渦電流(eddy current)が発生する。渦電流の発生により、渦電流による磁界が発生するため、本来の元の磁束発生体が生成する磁界分布とは異なった磁界分布になってしまう。このため、磁気センサは磁束発生体自体が発生する磁界の方向を正しく検出できなくなる。
【0014】
この問題に対して、特許文献1では、磁束発生体(センサ磁石)が回転して渦電流の影響が出る場合には、回転体と磁気センサとの間に配置する非磁性体としてセラミックなどの非導体材料(非導電性材料)を用いることで、渦電流の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特表2008−533497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記特許文献1は、ハウジング内に密閉したアクチュエータを含む実施の形態(特許文献1の図6)において、ハウジングの非磁性の窓部を挟んで磁石と磁気センサを設けた例を示している。ところが、この窓部として非磁性の導電体を配置すると、渦電流が発生して反作用場による磁場減衰が起こるので、この影響を低減するために非導電性の素材を用いている。このように、使用材料が非導電性材料に限定されてしまうので、磁束発生体と磁気センサとの間に金属などの導電体を配置できない、という制限があった。
【0017】
また、渦電流は導電体が回転体と磁気センサとの間に配置された構成以外でも発生する。例えば、磁束発生体、磁気センサ、非磁性の導電体の順で配置された場合であっても、磁束発生体の回転に伴って導電体に渦電流が発生した場合に、磁気センサ地点での磁界方向に渦電流発生磁界が影響を与える場合がある。すなわち、渦電流によって発生する磁界は、磁束発生体または磁気センサの近傍に非磁性の導電体が配置された構成で磁束発生体が高速で回転・移動する場合に発生し、これにより、磁気センサで磁束発生体自体が発生する磁界の方向について検出する際にその検出精度が悪いといった課題がある。
【0018】
本発明の目的は、磁束発生体または磁気センサの近傍に非磁性の導体(導電体)を配置した構成において、磁束発生体が高速に回転する場合であっても、磁束発生体または磁気センサの近傍に非磁性の導体(導電体)を配置した構成を用いて精度良く磁界角または回転角を計測することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題は、下記の構成により解決することができる。
非磁性の第1の導体、非磁性の第2の導体、及び前記第1の導体と前記第1の導体の間に配置された、磁界方向に感応する磁気センサを備えた磁界角計測装置であって、前記磁界角計測装置はセンサ磁石とともに用いられ、前記磁界角計測装置が、前記センサ磁石に対して所定の位置に配置された際に、前記第1の導体中に流れる渦電流が前記磁気センサに及ぼす磁界、及び前記第2の導体中の渦電流が前記磁気センサに及ぼす磁界が、互いに打ち消し合う磁界角計測装置。
【0020】
磁界方向に感応する磁気センサと、非磁性の第1の導体と、非磁性の第2の導体とを備えた磁界角計測装置であって、前記磁気センサは、前記第1の導体と前記第2の導体との間に配置され、前記第1の導体のシート抵抗が、前記第2の導体のシート抵抗よりも大きいことを特徴とする磁界角計測装置。
【0021】
回転体と、前記回転体と連動して回転するセンサ磁石と、前記センサ磁石が発生する磁界の方向を計測する磁界角計測装置とを備えた回転機であって、前記磁界角計測装置は非磁性の第1の導体と、非磁性の第2の導体とを備えた磁界角計測装置であって、前記磁界角計測装置は、前記第1の導体中の渦電流が前記磁気センサに及ぼす磁界と、前記第2の導体中の渦電流が前記磁気センサに及ぼす磁界とが、互いに打ち消しあう磁界角計測装置であって、前記センサ磁石、前記第1の導体、前記磁気センサ、前記第2の導体の順序で配置される回転機。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、磁気センサを用いているので、非接触型であり、機械的磨耗が発生しないこと、回転体とセンサとの間の距離を長くできることから、製作公差を緩和して設計自由度を高めること、の利点に加えて、非磁性体であれば導電体を配置することにより、磁束発生体(センサ磁石)を備えた回転体が高速に回転する場合であっても、発生する渦電流の影響を相殺して、高精度に磁界角または回転角を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による実施例1の磁界角計測装置の構成を示す図である。
【図2】GMR素子の構成を示す図である。
【図3】GMR素子を用いた磁気センサの構成を示す図である。
【図4】磁界角計測装置の構成を示す図である。
【図5】磁界角計測装置の特性評価装置の構成を示す模式図である。
【図6】角度ズレと回転速度の関係の実験結果を示す図である。
【図7】導体の異なる位置について、回転体の回転速度に対する位相角の関係の実験結果を示す。
【図8】高速回転時の計測誤差発生の原因を説明するためのモデルで、非磁性の導体を前面導体として配置したモデルを示し、(A)が側面図を、(B)は平面図を示す。
【図9】高速回転時の計測誤差発生の原因を説明するためのモデルで、非磁性の導体を前面導体および背面導体とした場合のモデルを示す。
【図10】角度ズレと回転速度の関係の実験結果を示す図である。
【図11】前面導体としてアルミニウム板とステンレンス板(SUS304)とを用いた各場合について、比抵抗の逆数1/ρに対する位相角(角度ズレ量)θzの関係についての実験結果を示す。
【図12】本発明の実施例1の磁界角計測装置の構成を示す図である。
【図13】本発明の実施例2の磁界角計測装置の構成を示す図である。
【図14】本発明の実施例3の磁界角計測装置の構成を示す図である。
【図15】本発明の実施例4の磁界角計測装置の構成を示す図である。
【図16】本発明の実施例5の磁界角計測装置の構成を示す図である。
【図17】本発明の実施例6の磁界角計測装置の構成を示す図である。
【図18】本発明の実施例7の磁界角計測装置の構成を示す図である。
【図19】本発明の実施例8の磁界角計測装置の構成を示す図である。
【図20】本発明の実施例9の回転角計測装置の構成を示す図である。
【図21】本発明の実施例10の回転角計測装置の構成を示す図である。
【図22】本発明の実施例11の磁界角計測装置の構成を示す図である。
【図23】本発明の実施例12の回転機の構成を示す図である。
【図24】本発明の実施例13の回転機の構成を示す図である。
【図25】本発明の実施例14の回転機の構成を示す図である。
【図26】本発明の実施例15の回転機の構成を示す図である。
【図27】本発明の実施例16の回転機の構成を示す図である。
【図28】本発明の実施例17の回転機の構成を示す図である。
【図29】本発明の実施例18の回転機の構成を示す図である。
【図30】本発明の実施例19の回転機の構成を示す図である。
【図31】本発明の実施例20の回転機の構成を示す図である。
【図32】本発明の実施例21の電動パワー・ステアリング・システムの構成を示す図である。
【図33】本発明の実施例22の電動車両駆動装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
[実施例1]
磁界方向計測型の磁気センサとして、ここではGMR素子を用いた磁気センサを例に述べる。
GMR素子の基本構成を図2に示す。GMR素子は、第1の磁性層(固定磁性層、あるいはピン磁性層)13と第2の磁性層(自由磁性層)11とを有し、両者の磁性層の間に非磁性層(スペーサ層)12を挟み込んだ構成をとる。GMR素子に外部磁界を印加すると、固定磁性層13の磁化方向22は変化せず固定されたままであるのに対し、自由磁性層11の磁化方向20は外部磁界の方向30に応じて変化する。
【0026】
本明細書では、固定磁性層13の磁化方向22の角度をピン角(pin angle)と呼び、θpで表す。
【0027】
GMR素子の両端に電圧を印加すると素子抵抗に応じた電流が流れるが、その素子抵抗の大きさはピン角θpと自由磁性層11の磁化方向角度θf (20)との差Δθ=θf−θpに依存して変化する。したがって、ピン角θpが既知であれば、この性質を利用してGMR素子の抵抗値を測ることで自由磁性層11の磁化方向角度θf(20)、すなわち外部磁界の方向30を検出することができる。
【0028】
なお、GMR素子の抵抗値とΔθとの関係は(数1)で表されることが知られている。なお、GはGMR係数である。

【0029】
次に、図3にGMR素子を用いた磁気センサ(GMR型磁気センサ)の構成例を示す。GMR型磁気センサはCOSブリッジ60とSINブリッジ61とで構成される。COSブリッジ60は、4個のGMR素子R(51-1)〜R(51-4)を使ってホイートストン・ブリッジを構成する。ここで、R(51-1)、R(51-3)の固定磁性層13の磁化方向をθp=0とし、R(51−2)、R(51−4)の固定磁化層13の磁化方向をθp=180°と設定する。ここで、GMR素子R(51-1)、R(51-3)のΔθ(=θf−θp)とピン角θpをそれぞれΔθ1、θp1とし、GMR素子R(51−2)、R(51−4)のΔθとピン角をそれぞれΔθ2、θp2とする。自由磁性層11の磁化方向θfは外部磁界で決まるので4個のGMR素子で同一となるため、Δθ=θf−θp2=θf−θp1−π=Δθ+πの関係が成り立つ。ここで、GMR素子R(51-1)のピン角θpをθp=0として角度基準としているので、Δθ1=θfとなる。そこで、Δθ=θf=θと置き換える。すると、(数1)式からわかるように、R、 Rでは(n=1、 3)、

となり、R、 Rでは(n=2、 4):

となる。
【0030】
したがって、接地端子(図ではGNDと表記)を0Vとして励起端子75に励起電圧e0を印加すると、信号端子Vc1(71-1)とVc2(71-2)との電圧差は(数4)の通りになる。

【0031】
このように、信号電圧ΔVcはcosθに比例するので、このブリッジ回路をCOSブリッジと呼ぶ。
なお、本実施例では、励起電圧e0は5Vにした。
【0032】
次にSINブリッジ61の構成を述べる。SINブリッジ61は、4個のGMR素子R(52-1)〜R(52-4)を使ってホイートストン・ブリッジを構成する。ここでSINブリッジ61は、固定磁化層13の方向について、COSブリッジと互いに90度変えた構成とする。すなわち、R(52-1)、R(52−3)の固定磁性層13の磁化方向をθp=90°、R(52−2)、R(52−4)の固定磁化層13の磁化方向をθp=270°と設定し、2種類のGMR素子でブリッジを構成する。このとき、上記と同様に、接地端子(図ではGNDと表記)を0Vとして励起端子75に励起電圧e0を印加すると、信号端子Vs1(72-1)とVs2(72-2)との電圧差は(数5)の通りになる。

【0033】
このように信号電圧ΔVsはsinθに比例するので、このブリッジ61をSINブリッジと呼ぶ。COSブリッジ60とSINブリッジ61の2つの出力信号の比の逆正接を計算することで、磁界ベクトルの方向θ(磁界角度)が求まる。
【0034】

(数6)の代わりに(数7)を用いると、0〜360°(または、−180°〜+180°)の角度範囲が求まる。
【0035】
θ=atan2(ΔVs, −ΔVc) (数7)
ここで、θ=atan2(y, x)は、引数x、yが正か負かに応じて、θ=0〜360°(または−180〜180°)の値を適切に出力する関数である。例えば、x、yともに正の場合は、atan2(y,x)=ArcTan(y/x)であり、x、yともに負の場合は、atan2(y,x)=ArcTan(y/x)+180°である。
【0036】
このようにGMR素子で構成した磁気センサは、磁界方向を直接検出するという特徴がある。すなわち、磁界方向計測センサとなる。
【0037】
次に、回転角計測装置の基本構成を図4に示す。
磁界角計測装置80は、磁気センサ70と検出部302を有する。磁気センサ70は、GMR素子で構成されたCOSブリッジ60とSINブリッジ61を有する。各ブリッジの接地端子と励起端子75は図示を省略した。
【0038】
各ブリッジの信号端子の電圧信号(Vc1, Vc2)、 (Vs1, Vs2)は、検出部302に入力される。COSブリッジから出力される電圧信号対(Vc1,Vc2)は、差動増幅器351Aに入力され、信号Vx=Vc2−Vc1を出力する。SINブリッジから出力される電圧信号対(Vs1, Vs2)は、差動増幅器351Bに入力され、信号Vy=Vs2−Vs1を出力する。
【0039】
信号(Vx, Vy)は、信号処理部303に入力され、atan処理部383において(数7)に従う処理を行う。このようにして、角度信号θが出力される。
これが、回転角計測装置の基本構成である。
【0040】
図4に示した、回転角計測装置の基本構成を用いて、高速回転する回転角を計測した実験結果を次に示す。
【0041】
図5は、磁界角計測装置の特性評価装置の構成を示す。センサ磁石202が設置された回転体121を、回転中心線226を中心に回転させる構成である。センサ磁石202は磁束発生体としての機能を果たす。ここでは、2極に着磁した磁石を用いた。なお、回転により図5の矢印で記載したように磁界250が発生する。そして、センサ磁石202の近傍に図4の構成の磁界角計測装置80を配置した。磁界角計測装置80の設置場所は、回転中心線226上に配置し、センサ磁石202との距離は10mmとした。回転体121がθ°だけ回転すると、センサ磁石202が発生する磁界の方向もθ°だけ回転する。
【0042】
図示しないモータによって回転体121を回転させながら、磁界角計測装置80から出力される角度信号を測定した。回転体121にはZ相信号発生器230を設置した。Z相信号発生器230は、光を透過させるスリットを設けた円盤と、発光ダイオードと光検出器とを有するもので、回転体121の原点に位置する時に信号を発生する。すなわち、Z相信号発生器230から信号が発生した時点が、回転体121は原点位置に位置している時点である。
【0043】
このような実験構成において、Z相信号発生器230が信号を発生した時点、すなわち、回転体121が原点位置に位置する時点での、磁界角計測装置80の出力角度を読み取り、その角度を位相角θzとする。
【0044】
すなわち、位相角θzは、回転体の基準角度位置と、回転角計測装置の出力角度の基準角度とのズレ角である。位相角θzは回転体の静止時にθz=0とする。すなわち、回転に伴う基準角のズレが位相角である。位相角θzを「ズレ角」とも呼ぶ。
【0045】
後述の通り、本明細書において位相角θzがゼロにならない要因は、センサ磁石202が発生する磁界の方向と、磁気センサ70の地点での磁界の方向とにズレが生じるためである。
【0046】
図6は回転体121の回転速度 f [Hz]を変えたときの位相角θz[deg] (degはdegree (度)の略)の変化を測定した結果である。図中で○は、磁気センサ202の近傍に導体が無い場合の結果である。回転速度を0〜250[Hz]の範囲で変化させても位相角θzは一定である。すなわち、250[Hz]、すなわち、15000 [rpm](毎分当たりの回転数)の高速回転時においても、磁界角計測装置80は正しい回転角を出力している。
【0047】
次に、図5において、センサ磁石202と磁界角計測装置80との間に、非磁性の導体であるアルミニウム板(板厚1mm)を配置して同じ測定を行った。その結果を図6中の●で示す。
【0048】
回転体121が静止している場合、すなわち、0Hzにおいては、アルミニウムは非磁性体なので磁界分布には影響しないので、正しい回転角を出力する。しかし、回転速度fが速くなるにつれて位相角θzはゼロからずれていき、f=250[Hz] (15000 [rpm])においては、θz<−5°になる。すなわち、5°以上の角度ズレが発生している。この結果は、導体(導電体)を配置したことで、磁界角計測装置80が正しい回転角度を計測できなくなることを示している。
【0049】
ここで、非磁性とは常磁性体または反磁性体と定義する。また、非磁性の材料とは、磁化率χの絶対値が0.1以下の材料と定義する。
【0050】
非磁性の導体の材料は例えば、アルミニウム、銅、真鍮、ステンレスの一種であるSUS304などがある。
【0051】
非磁性の導体では、磁化率χの絶対値が0.1以下であるから、比透磁率μr(=1+χ)は0.9〜1.1である。したがって、これらの材料の透磁率は大気中や真空中の透磁率と概ね等しい。このため、静止磁界の場合には、非磁性の導体が配置されても静磁界の分布はほとんど変化しない。
【0052】
なお、非磁性の導体として、磁化率χの絶対値が0.01以下の材料を用いると、導体の有無による静磁界の分布の差が1%以下になるので、さらに好ましい。
【0053】
導体とは、電子やイオン、ホールなどの電荷キャリヤをその物質内に有し、電圧が印加されると電荷キャリヤの移動により電流が流れる物質である。導体の比抵抗(抵抗率)は概ね1Ωm以下である。後述の通り、渦電流の影響は比抵抗が低いほど大きくなる。導体の形状にもよるが、特に、比抵抗が1×10−4Ωm以下になると渦電流の影響が顕著に現れる。比抵抗が1×10−5Ωm以下になると、その影響はさらに顕著になる。
【0054】
後述の通り、渦電流の影響は形状や配置、磁石の回転速度にも依存する。その材料内に発生した渦電流が生成する誘起磁界が、磁気センサの計測値に影響を与える場合には、上記の抵抗値範囲を超える材料であっても、本発明の「導体」に含まれる。
【0055】
また、図6に示したような、角度ズレθzと回転速度fとの関係は、導体の材料、形状、配置される位置によって変化することを発明者は見出した。例えば、非磁性の導体の材料としてSUS304(板厚1mm)を用いた場合には、回転速度250Hzでの角度ズレは0.3°であった。また、アルミニウムの板厚を3mmにした場合には、角度ズレは1mm厚のアルミニウム板の場合よりも、さらに角度ズレが大きくなった。
【0056】
図7は、導体の位置を磁気センサ70の背面に配置して角度ズレθzを測定した結果である。すなわち、この配置では、センサ磁石202、磁気センサ70、導体の順序で配置した。
【0057】
本明細書では、磁気センサ70から見てセンサ磁石202側を「前面」と呼び、センサ磁石と反対側を「背面」と呼ぶと定義する。そして、前面に配置された導体を「前面導体」、背面に配置された導体を「背面導体」と呼ぶ。
【0058】
図7に示した中空の三角形(△)のデータは、非磁性の導体の材料としてアルミニウム板(板厚1mm)を背面導体として用いた場合、すなわち、センサ磁石202、磁気センサ70、導体の順に配置した場合の回転速度に対する位相角(角度ズレ)θzを示す。ここでは、回転速度が高速になると、角度ズレθzが正の方向に大きくなることが示されている。例えば、回転速度250Hzでの角度ズレは1.5°であった。 また、背面に配置する導体板の厚さを3mm厚に厚くすると、角度ズレθzの大きさ(誤差量)は1mm厚の場合よりも大きくなることも、図7からわかる。
【0059】
次に、この角度ズレの原因について、図8を用いて説明する。
図8(A)は、センサ磁石202と磁気センサ70との間に非磁性の導体240を配置した構成の側面図である。非磁性の導体240は、上記の実験ではアルミニウム板である。図8(B)は、同図(A)の配置を上から見た図である。センサ磁石202の回転方向は矢印260で示してある。
【0060】
図8(A)の側面図において、磁束発生体であるセンサ磁石202が矢印260の方向に移動すると、非磁性の導体240と鎖交する磁束が変化するため、非磁性の導体240中にはその磁束変化を打ち消す方向の渦電流が流れる。この渦電流は誘起磁界251を誘起する。誘起磁界251の方向は図8(A)に示した通り、導体に鎖交する磁束の変化を打ち消す方向である。
【0061】
渦電流の誘起磁界251が磁気センサ70の地点に及ぼす磁界の方向は図8(B)に図示したようになる。したがって、磁気センサ70は、センサ磁石202が生成する磁界250と渦電流の誘起磁界251との合成磁界252を検出することになる。図8(B)に図示したように、合成磁界252の向きは磁石の磁界250の向きからずれる。このために、回転体121の角度と磁気センサ70が検出する測定角度との間で角度ズレが生じる。
【0062】
合成磁界252の方向を検出するので、測定角度の位相は正しい磁界角度よりも遅れる。正しい磁界角度とは、センサ磁石202が生成する磁界250の角度を意味する。
【0063】
次に、導体を背面に配置した際に、測定角度の位相が進むメカニズムを図9を用いて述べる。図9において、背面にのみ導体を配置した場合を考える。センサ磁石の動きにより背面導体に渦電流が生じる。この渦電流が生成する誘起磁界は図に示した通りである。図9からわかるように、磁気センサ70の地点での誘起磁界の方向は、前面に配置した場合と背面に配置した場合とでは逆向きになる。このために、背面に導体を配置すると測定角度の位相が進むわけである。
【0064】
次に、渦電流による誘起磁界に起因する測定角度の角度ズレ(位相ズレ)を定量的に考察する。
導体板に鎖交する磁束をΦとする。磁束変化により導体板には誘導起電力Eeが誘起される。
【0065】

導体板のシート抵抗をRとすると、渦電流(eddy current)Jeは次式で表される。シート抵抗Rとは、単位面積当たりの抵抗値であり、Ω/square(Ohm per square)の単位を持つ。比抵抗ρと板厚tとの間にR=ρ/tの関係がある。
【0066】

ここでシート抵抗Rを、比抵抗(抵抗率)ρと有効板厚teの比で表した(R=ρ/te)。有効板厚とは、表皮効果を考慮した板厚であり、高速回転ほど実際の板厚より薄くなる。
【0067】
センサ磁石202が発生する磁界(磁界強度H0)の方向と合成磁界の方向とのズレ角が位相角θzになる。したがって、位相角θzは、図8(B)より

で表される。また、誘起磁界Hed251は渦電流の大きさJeに比例する。以上より、次式を得る。
【0068】

(数11)は、渦電流による測定角度の角度ズレ(位相角)θzが導体のシート抵抗に反比例することを示す。したがって、角度ズレは、導体の比抵抗(抵抗率)ρに反比例し、有効板厚teに比例する。
【0069】
次に、この点を実験データにより検証する。図11は、前面導体としてアルミニウムとステンレンス(SUS304)とを用いた場合の、回転速度200Hzでの角度ズレ量θzを比較したものである。横軸は、それぞれの材料の比抵抗ρの逆数を用いている。角度ズレ量は材料の比抵抗の逆数1/ρに比例している。すなわち、比抵抗ρに反比例している。これは、(数11)の妥当性を示す。
【0070】
磁束の時間変化dΦ/dtは、磁束発生体であるセンサ磁石が動くことによる空間的な変化により発生するので、センサ磁石の回転速度ωが大きいほど磁束の時間変化dΦ/dtも大きくなる。このため、(数11)により、測定角度の時間ズレ量もセンサ磁石の回転速度ωが大きいほど大きくなる。これは、図7に示した実験結果と一致している。
【0071】
次に、磁気センサ70の前面と背面とに導体を配置した場合を考える。この場合、図9に示したように、前面に配置した導体(前面導体、第1の導体)240で生じる渦電流の誘起磁界251Aと、背面に配置した導体(背面導体、第2の導体)242で生じる渦電流の誘起磁界251Bとは、磁気センサ70の地点では、図9に示したように互いに逆向きである。したがって、誘起磁界の影響が互いに相殺し、角度ズレが小さくなると予想される。
【0072】
図10は、実験の結果である。前面導体240として1mm厚のアルミニウム板、背面導体242として3mm厚のアルミニウム導体を用いた。前面導体240のみを配置した場合には、250Hzで−6°の角度ズレが生じていたが、背面導体242も合わせて設置すると、角度ズレは250Hzで−3°であり、角度ズレが半減している。
【0073】
さらに、前面導体240のみを配置したときの角度ズレ量をθz(Front)とし、背面導体242のみを配置した時の角度ズレ量をθz(Rear)とすると、2つの導体を配置した場合の角度ズレ量θz(Front+Rear)は、次式のようになっていることが図10からわかる。
【0074】
θz(Front+Rear)=θz(Front)+θz(Rear) (数12)
すなわち、角度ズレ量の加法性が概ねなりたつ。
【0075】
図10を詳細に見ると、θz(Front+Rear)の実測値は、計算値(θz(Front)+θz(Rear))よりもわずかに角度ズレが大きい。これは、前面導体240中での渦電流により、背面導体242に達する磁界強度が弱まるために、背面導体中での磁束変化量、すなわち(数11)でのdΦ/dtが減少するためである。このように、多少のずれはあるが、概ね(数12)の加法性が成り立つ。
【0076】
次に、前面導体240と背面導体242とを配置することで、渦電流による角度ズレを打ち消すための条件を述べる。前面導体240のシート抵抗をR、前面導体240を鎖交する磁束をΦとし、背面導体242のシート抵抗をR、背面導体242を鎖交する磁束をΦとする。
【0077】

(数13)において、背面導体242での渦電流が誘起する磁界は逆向きなので、マイナス符号を付けた。
【0078】
磁束発生体であるセンサ磁石202からの距離は、前面導体240の方が近いので、Φ>Φである。磁束の時間変化を発生せしめる回転速度ωは、前面導体240と背面導体242とで同じであるから、dΦ1/dt>dΦ2/dtとなる。したがって、(数13)がゼロとなるためには、R>Rである必要がある。すなわち、渦電流による角度ズレを打ち消すには、前面導体240のシート抵抗Rを背面導体242のシート抵抗Rよりも大きくする必要がある。
【0079】
したがって、渦電流による計測角度の角度ズレを除去する、または低減するためには、以下が条件になる。(1) 前面導体(第1の導体)240と背面導体(第2の導体)242とを配置する。(2) 前面導体(第1の導体)240のシート抵抗を背面導体(第2の導体)242のシート抵抗よりも大きくする。
【0080】
後述するように、ある特殊な配置においては、センサ磁石202−前面導体(第1の導体)240間距離と、センサ磁石202−背面導体(第2の導体)242間距離とが等しくなる構成(例えば、図30に示した実施例参照)がある。この場合には、Φ≒Φである。また、回転速度ωは、前面導体(第1の導体)240と背面導体(第2の導体)242とで同じであるから、dΦ1/dt≒dΦ2/dtとなる。したがって、(数13)をゼロにするためには、R≒Rとすれば良い。
【0081】
図1は、本発明の実施例1の構成を示す図である。
本発明の実施例1は、磁気センサ70と前面導体(第1の導体)240と背面導体(第2の導体)242とを備える。そして、前面導体(第1の導体)240は磁気センサの前面側、すなわち磁束発生体(センサ磁石)202が設置される側に配置し、背面導体(第2の導体)242は背面側に配置される。さらに、そして、前面導体(第1の導体)240のシート抵抗Rは背面導体(第2の導体)242のシート抵抗Rよりも大きくしている。
【0082】
上述の通り、この構成により、前面導体中の渦電流が磁気センサ70の位置に誘起する磁界と、背面導体中の渦電流が磁気センサ70の位置に誘起する磁界とが打ち消し合う。これにより、磁界角計測装置80による計測角度は角度誤差が減少し、正確な角度を計測できるようになった。
【0083】
なお、本明細書において、「打ち消しあう」とは、渦電流に起因する磁界を正確にゼロに相殺する状態のみではなく、角度計測誤差が実用的に許容できる範囲に収まるように、渦電流起因の磁界を弱めることを意味する。ここで、「実用的に許容できる範囲」は、磁界角計測装置が使用される応用機器や、磁界角計測装置に要求される計測精度、他の誤差補償手段の有無などに依存する。
【0084】
前面導体240のシート抵抗を背面導体242のシート抵抗より大きくする実現手段は複数ある。
【0085】
本実施例では、前面導体240、背面導体242ともアルミニウムを用い、前面導体240の板厚を背面導体242よりも薄くした。このようにして、前面導体のシート抵抗R1を背面導体のシート抵抗R2より大きくした。
【0086】
また、前面導体240の材料として、比抵抗(抵抗率)が背面導体242の材料の比抵抗よりも大きいものを用いてもよい。例えば、前面導体240をステンレスの一種であるSUS304(ρ=72×10−8Ωm)を用いて、背面導体242にアルミニウム(ρ=2.65×10−8Ωm)を用いればよい。
【0087】
また、別の材料の組みあわせでは、前面導体240にアルミニウムを用い、背面導体242に銅(ρ=1.68×10−8Ωm)を用いても良い。銅は比抵抗が低いため、電気的ノイズを低減するためのシールド板として有効である。この場合、銅板を背面導体242とし、比抵抗がより大きいアルミニウムを前面導体240とすればよい。
【0088】
本発明の実施例1の回転角計測装置80は、磁束発生体であるセンサ磁石202とともに用いられるものであるが、本発明の回転角計測装置80の構成にはセンサ磁石202は含まない。
【0089】
本発明のひとつのポイントは、磁気センサの両側の非磁性の導体のシート抵抗値を非対称にする(すなわち、異なる値にする)ことである。磁界角計測装置80をこのような構成にすることで、センサ磁石202と組み合わせて用いられる際、シート抵抗値が高い方の側にセンサ磁石を配置すると、上記の通り、渦電流による誘起磁界の影響を除去または低減することができる。
【0090】
すなわち、図12に示すように、第1の導体240と第2の導体242の間に磁気センサ70を配置し、第1の導体240のシート抵抗を第2の導体242のシート抵抗よりも高くした磁界角計測装置80を構成する。このような磁界角計測装置80では、第1の導体240の側をセンサ磁石202が配置された方向に向けて使用すると、センサ磁石202−第1の導体240−磁気センサ70−第2の導体242の順序で配置される。したがって、第1の導体240が前面導体に対応し、第2の導体242が背面導体に対応する。このため、上記の通り、渦電流による誘起磁界による計測誤差を除去または低減することができる。
【0091】
このメカニズムからわかるように、渦電流の誘起磁界251による計測角度ズレは、非磁性の導体を磁気センサ70の近傍に配置した場合に汎用的に発生する課題である。例えば、センサ磁石202、磁気センサ70、非磁性の導体の順番で配置した場合でも、非磁性の導体中に渦電流が誘起される条件であれば、角度ズレが発生する。この配置は、背面に導体を配置した場合に対応し、図7の実験結果にも示されている。
【0092】
発明者は、回転角計測装置80で計測された角度信号と回転体121の角度との関係を詳細に測定した結果、計測された角度の誤差は、角度原点のズレのみ、すなわち位相ズレのみであることを見出した。
【0093】
以上の発明者による実験結果をまとめると以下の通りである。
(1) 磁気センサの近傍に非磁性の導体(導電体)があると、高速回転時に計測誤差を生じる。
(2) 計測誤差は、角度原点のズレ、すなわち角度ズレである。
(3) 導体を前面に配置した場合と、背面に配置した場合とでは、計測誤差の正負が互いに逆向きであり、前面と背面とに導体を配置した場合は、計測誤差を打ち消しあう。
【0094】
本明細書において「磁気センサの近傍」とは、その導体の存在により回転角度の計測値に誤差が生じる範囲と定義し、具体的には、0.1°以上の計測誤差が生じる範囲とする。これは、通常の用途では、0.1°以上の誤差は有意な誤差であるためである。
【0095】
[実施例2]
本発明による実施例2の磁界角計測装置を図13に示す。本実施例では、前面導体240と背面導体242とがなす角φ(273)を45°以下に設定するものである。
【0096】
前面導体240中の渦電流による誘起磁界にcosφを乗じたものと、背面導体242中の渦電流による誘起磁界とが互いに打ち消しあう。したがって、φが90°に近づくにつれて、cosφが小さくなるので、それぞれの誘起磁界が互いに打ち消しあう効率が悪くなってしまう。本実施例では、φを45°以下にすることで、誘起磁界が互いに効果的に打ち消しあうようにした。
【0097】
図13において、φを0、すなわち、前面導体240と背面導体242とを平行にすると、cosφ=1となるので、より効果的に誘起磁界が打ち消し合い、さらに好ましい構成となる。
【0098】
[実施例3]
図14は、本発明の実施例3を示す図である。
説明を明確にするために、図中にxyz座標の方向を示す図を記した。座標系を表す図において、「×」を「○」で囲んだ記号は、紙面から奥側に伸びる矢印を示す。したがって、図14において、y軸は紙面から奥に向かって伸びる方向である。なお、このxyz座標軸は、方向を示すために図示したものであり、座標系の原点を示すものではない。
【0099】
本実施例では、センサ磁石202の外周の外方に配置する磁界角計測装置80の実施例である。この配置において、2極着磁のセンサ磁石を用いると、センサ磁石202が1回転すると、磁気センサ70の地点のxy面内方向磁界も1回転する。したがって、磁気センサ70でxy面内の磁界方向を計測することにより、センサ磁石202の回転角を計測することができる。
【0100】
なお、(2×p)極着磁のセンサ磁石を用いると、センサ磁石202が1回転すると、磁気センサ70の地点のxy面内方向磁界はp回転する。ここで、pは1以上の整数である。したがって、磁界角計測装置を設置する回転機の極数に合わせてセンサ磁石の着磁極数を選ぶと、電気角での回転角度を得ることができる。電気角での回転角度の情報があると回転機の制御が容易になるという効果がある。
【0101】
図14の配置において背面導体242を除いた場合を想定する。この場合、センサ磁石202の回転速度が高くなると、前面導体240を鎖交する磁束の変化も大きくなるので、渦電流が発生する。この誘起磁界により磁気センサ70での磁界が歪み、センサ磁石の正しい回転角が計測できなくなる。これに対し、本実施例では図14に示したように、板厚が前面導体240より厚い背面導体242を配置することで、渦電流が生成する誘起磁界を打ち消す。これにより、センサ磁石が高速に回転する場合でも、センサ磁石の回転角を精度良く計測できる。
【0102】
[実施例4]
図15は、本発明の実施例4を示す図である。
本実施例は、磁気センサ70と検出部302とをパッケージ218内に収めて一体化したものである。パッケージ218は樹脂などを用いてモールドしたり、セラミックス中に封止したりする。本実施例では、前面導体240と背面導体242とを合わせてパッケージ218に収めている。そして、背面導体242のシート抵抗を前面導体240のシート抵抗よりも小さくすることで、これらの導体中に発生する渦電流の誘起磁界を打ち消すようにしている。このため、センサ磁石が高速で回転する場合でも、センサ磁石の回転角を高精度で計測できる。
【0103】
本実施例では、背面導体242は電気的ノイズによる悪影響を除く役割もしている。このため、背面導体242を、検出部302を覆うように延ばして形成している。背面導体242の材料は、銅(比抵抗ρ=1.68×10−8Ωm)を用いている。銅は比抵抗が小さいため、電気的ノイズ対策のシールド板に好適な材料である。
【0104】
一方、前面導体240は、背面導体242中の渦電流による誘起磁界を打ち消すために導入されたものである。本実施例では、銅よりも比抵抗が高いアルミニウム(比抵抗ρ=2.65×10−8Ωm)を用いた。このように、前面導体240と背面導体242とで、比抵抗が異なる材料を用いることで、シート抵抗の大小を適切に設定している。
【0105】
[実施例5]
図16を用いて本発明の実施例5を説明する。
本実施例は、磁気センサ70と前面導体240および背面導体242とを一体化してパッケージ218に収めた磁界角計測装置80である。図16には検出部302も含めてパッケージ化した構成を示した。検出部302をパッケージ218に含めない構成でも良い。
【0106】
本実施例の特徴は、磁界角計測装置80からの信号端子90を背面導体242の方向に向けていることである。このような構成にすることで、回転角計測装置80をプリント基板などに実装して使用する際、前面導体240側にセンサ磁石202を配置することが容易になるという効果がある。
【0107】
なお、信号端子90には、磁界角度信号を出力する他、アース端子や検出回路部へ電源を供給する電源端子などが含まれる。
【0108】
[実施例6]
図17は、本実施例の実施例6を示すものである。図17(A)は横から見た断面図、図17(B)は平面図である。図17(B)は、パッケージ中を透視した形で描いた。
【0109】
本実施例は、磁気センサ70と前面導体240および背面導体242とを備えた磁界角計測装置80である。
【0110】
本実施例では、センサ磁石202の外周の外方に配置する磁界角計測装置80の実施例である。
本実施例の磁界角計測装置80は、磁気センサ70と前面導体240および背面導体242をパッケージ化したセンサ・パッケージ218Aと、検出部302をパッケージ化した検出部パッケージ218Bとの2つのパッケージを有する。センサ・パッケージ218Aと検出部パッケージ218Bとの間は中間信号端子92により信号の受け渡しが行われる。検出部パッケージ218Bからは信号端子90が出ている。信号端子には、磁界角度信号を出力する他、アース端子や検出部へ電源を供給する電源端子などが含まれる。
【0111】
本実施例の特徴は、信号端子90を検出部パッケージ218Bから取り出す方向が、磁気センサ70から見て背面導体242の方向にあることである。このようにすることで、前面導体240側にセンサ磁石202を配置することが容易になるという効果がある。
【0112】
なお、図17では、センサ・パッケージ218Aと検出部パッケージ218Bとの2つのパッケージで構成された例を示したが、1つのパッケージの中に磁気センサ70と検出部302とを含めても良い。この場合でも、磁気センサ70から見て背面導体242側から信号端子を取り出す構成にすることにより、本実施例の効果が得られる。
【0113】
[実施例7]
図18は、本発明の実施例7を示す図である。
本実施例では、背面導体242または前面導体240に開口部272を有する。
この構成にすると、磁気センサ70から、または検出部302(図示せず)から取り出した信号線を、背面導体242を横切って配線するのが容易になるという効果がある。
図18では開口部272を背面導体242に設けた例を示したが、前面導体240に開口部を設けても良い。また、前面導体240と背面導体242の両方に開口部を設けても良い。
【0114】
[実施例8]
図19は、本発明の実施例8である。
本実施例は、図18に示した、実施例7と同様の構成である。
ただし、本実施例では、開口部272の位置を磁気センサ70の中心と同軸線上に配置してある。このようにすると、磁気センサ70から見て背面導体242の対称性が図18の構成と比べて良くなるため、より効果的に渦電流の影響を除去できるという効果がある。
【0115】
[実施例9]
本発明の実施例9である回転角計測装置80を、図20を用いて述べる。
本実施例は、回転体121の回転に連動して回転するセンサ磁石202と、磁界角計測装置と備えた回転角計測装置80である。センサ磁石202が発生する磁界の方向を磁界角計測装置で計測することで、回転体の回転角度を計測する。
【0116】
磁界角計測装置は、磁気センサ70、前面導体240および背面導体242を有する。図20には図示しないが、検出部302を備えるようにしてもよい。
【0117】
本実施例の特徴は、センサ磁石202、前面導体240、磁気センサ70、背面導体242の順で配置されていること、および、前面導体240のシート抵抗を背面導体242のシート抵抗よりも大きくしているこということである。シート抵抗値の大小関係は、背面導体242として比抵抗が前面導体240よりも小さい材料を用いること、または板厚を前面導体よりも厚くすることで実現した。
【0118】
このように構成することで、前面導体240および背面導体242中に生成する渦電流の誘起磁界が互いに打ち消し合い、センサ磁石を高速で回転させた場合も、正確な回転速度を計測できる回転角計測装置80を実現できる。
【0119】
[実施例10]
本発明の実施例10である回転角計測装置を、図21を用いて述べる。
本実施例は、図20に記載の実施例9と同様の構成の回転角計測装置であるが、磁気センサ70を回転体の回転中心線上に配置している点に特徴がある。
このようにすると、回転体の回転角度、すなわちセンサ磁石の回転角度と、磁気センサ70の地点での磁界方向角度とのズレが小さくなる。このため、回転体の回転角度を精度良く計測できるという効果がある。
【0120】
[実施例11]
本発明の実施例11である磁界角計測装置を、図22を用いて述べる。
本実施例の磁界角計測装置80は、背面導体242を複数の非磁性の導体で構成したことを特徴とする。
【0121】
磁界角計測装置80は、前面導体240、磁気センサ70、第1の背面導体242-1、および第2の背面導体242-2と、を有する。この磁界角計測装置80は、センサ磁石202を前面導体240側に配置して用いるもので、センサ磁石が発生する磁界の方向を磁気センサ70で検出する。実施例11の磁界角計測装置80は、背面導体242を2枚の非磁性導体で構成しているが、3枚以上としてもよい。
【0122】
図22に示した本実施例では、検出部302も含めている。但し、検出部302を分離して構成してもよい。磁界に感応する磁気センサ70が前面導体240と背面導体242に挟まれていれば本発明の効果は得られるからである。検出部の設置位置は、その応用用途に適した設置方法を選択すれば良い。
【0123】
本実施例の効果を述べる。前面導体240中の渦電流による誘起磁界の影響を相殺するためには、背面導体242のシート抵抗を低くする必要がある。背面導体の配置位置や材料などによっては、1枚の背面導体(第1の背面導体)242-1のみでは誘起磁界を相殺できない場合がある。そのような場合に、第2の背面導体242-2を設置することで、2枚の背面導体全体でのシート抵抗値を下げて、誘起磁界を相殺することができる。これにより、センサ磁石202が高速で回転する場合でも、その回転角度を高精度に計測できる。
【0124】
また、本実施例の第2の効果は、前面導体240、磁気センサ70、第1の背面導体242-1とをパッケージに一体化した磁界角計測装置にておいて特に顕著に現れる。すなわち、パッケージ218内に一体化された第1の背面導体242-1のみでは誘起磁界が十分に相殺されない場合、パッケージ218の外側に第2の背面導体242-2を設置することで、渦電流による誘起磁界を相殺できる。このように、ある1つの仕様のパッケージを用いて、第2の背面導体242-2で微調整することにより、いろいろな条件の場所に適応させることが可能になる。
【0125】
[実施例12]
本発明の実施例12の回転機を、図23を用いて説明する。
なお、本明細書では、「回転機」とはモータのみでなく、「発電機」、すなわち機械的エネルギーを電気エネルギーに変換する機械も含む。
【0126】
図23は本実施例における回転機の断面図を示す。本実施例はモータ部100と回転角検出部200とで構成される。
【0127】
モータ部100は、複数の固定磁極と複数の回転磁極との磁気的作用により複数の回転磁極が回転することにより回転トルクを発生するものであって、複数の固定磁極を構成するステータ110及び複数の回転磁極を構成するロータ120を有する。ステータ110は、ステータコア111と、ステータコア111に装着されたステータコイル112から構成されている。ロータ120は、ステータ110の内周側に空隙を介して対向配置され、回転可能に支持されている。本実施例では、モータの構成として三相交流式の表面磁石型同期モータを用いている。
【0128】
筐体は、円筒状のフレーム101と、フレーム101の軸方向両端部に設けられた第1ブラケット102および第2ブラケット103を有する。第1ブラケット102の中空部には軸受106が、第2ブラケット103の中空部には軸受107がそれぞれ設けられている。これらの軸受は回転体121を回転可能なように支持している。
【0129】
フレーム101と第1ブラケット102との間にはシール部材(図示せず)が設けられている。シール部材は、環状に設けられたOリングであり、フレーム101と第1ブラケット102によって軸方向及び径方向から挟み込まれて圧縮する。これにより、フレーム101と第1ブラケット102との間を封止でき、フロント側を防水できる。また、フレーム101と第2ブラケット103との間もシール部材(図示せず)により防水されている。
【0130】
ステータ110は、ステータコア111と、ステータコア111に装着されたステータコイル112とを有し、フレーム101の内周面に設置されている。ステータコア111は、複数の珪素鋼板を軸方向に積層して形成した磁性体(磁路形成体)であり、円環状のバックコアと、バックコアの内周部から径方向内側に突出して、周方向に等間隔に配置された複数のティースを有している。
【0131】
複数のティースのそれぞれには、ステータコイル112を構成する巻線導体が集中的に巻回されている。複数の巻線導体は、ステータコイル112の一方のコイルエンド部(第2ブラケット103側)の軸方向端部に並置された結線部材によって相毎に電気的に接続され、さらには3相巻線として電気的に接続されている。3相巻線の結線方式にはΔ(デルタ)結線方式とY(スター)結線方式がある。本実施例では、Δ(デルタ)結線方式を採用している。
【0132】
ロータ120は、回転体121の外周面上に固定されたロータコアと、マグネットとで構成される(ロータコアとマグネットは図示せず)。表面磁石型永久磁石モータでは、複数のマグネットをロータコアの表面に配置する。埋込磁石型永久磁石モータではマグネットをロータコアの内部に埋め込む。本実施例では、埋込磁石型永久磁石モータを用いた。
【0133】
次に、回転角検出部200の構成を説明する。
回転角検出部200は、磁界角計測装置80(以下、「回転角センサ・モジュール」と呼ぶ。)とセンサ磁石202とを有している。なお、回転角センサ・モジュールは、例えば図15に示した磁界角計測装置80を用いる。回転角検出部200はハウジング203と第2ブラケット103とで囲まれた空間に設置されている。センサ磁石202は回転体121と連動して回転する軸に設置されており、回転体121が回転位置を変えると、それに応じて発生する磁界方向が変化する。この磁界方向を回転角センサ・モジュール80で検出することにより回転体121の回転角(回転位置)を計測できる。
【0134】
回転角センサ・モジュール80は、回転体121の回転中心線226上に回転角センサ・モジュール80の磁気センサ70が配置されるように設置すると、センサ磁石202が発生する磁界の空間分布に誤差が少なくなるので好ましい配置である。
【0135】
センサ磁石202は、2極着磁された2極磁石でよい。あるいは4極以上に着磁された多極磁石であってもよい。
【0136】
回転角センサ・モジュール80は、ハウジング203に設置されている。ハウジング203は樹脂で構成されており、磁束の変化があっても渦電流が生じない。
【0137】
回転角センサ・モジュール80は図15の構成であり、その内部に磁気センサ70と前面導体240と背面導体242とを備える。前面導体240と背面導体242のシート抵抗が適切に設定されており、それぞれの導体中の渦電流による誘起磁界が、磁気センサ70の地点で打ち消し合うように配置されている。このため、センサ磁石202が高速で回転して導体中の鎖交磁束の時間変化が大きくなっても、渦電流による計測誤差は軽微にとどまり、高精度に回転体121の回転角度を計測できる。
【0138】
なお、回転角センサ・モジュール80中に背面導体242を設けている主な目的は、電気的ノイズの除去である。低抵抗の導体板をシールド板として配置することで、磁気センサ70および検出部302の電気ノイズを除去する効果がある。
【0139】
一方、磁気センサ70の近傍に背面導体242を配置すると、前述の通り、渦電流による誘起磁界により磁界角の計測角度に誤差が生じる。この渦電流による誘起磁界を相殺するために、前面導体240を設けている。
【0140】
なお、回転角センサ・モジュール80はモータ部に対して固定されていればよく、ハウジング203以外の構成要素に固定してもよい。その理由は、モータ部100に対して固定されていれば、回転体121の回転角が変化してセンサ磁石202の方向が変化した場合、回転角センサ・モジュール80において磁界方向変化を検出し、回転体121の回転角を検出することができるからである。
【0141】
回転角センサ・モジュール80には信号出力配線208が接続されている。信号出力配線208により回転センサ・モジュール80の出力信号を伝送する。
【0142】
[実施例13]
本発明による実施例13の回転機を、図24を用いて説明する。
本実施例の回転機のモータ部100は、図23に示した回転機と同様な構成である。
【0143】
本実施例での回転角検出部200の構成は、センサ磁石202の外周の外方に磁界角計測装置80を配置したことに特徴がある。このような構成にすることで、回転体121は、図の左側と右側の両方を機械的負荷に接続可能になるため、回転機として設計の自由度が高まるという効果がある。
【0144】
磁界角計測装置80は、磁界角計測装置設置部132に固定する。磁界角計測装置設置部132は樹脂で構成し、渦電流が発生しないようにした。
【0145】
磁界角計測装置80は、図17の構成のものを用いた。図17に記載の通り、前面導体240と背面導体242とのシート抵抗が適切に設定されているため、磁気センサ70の地点では渦電流に起因する計測誤差が十分に小さくなっている。このため、回転体121が高速に回転する場合でも、高精度に回転角を計測できる。
【0146】
この配置において、2極着磁のセンサ磁石を用いると、センサ磁石202が1回転すると、磁気センサ70の地点のxy面内方向磁界も1回転する。したがって、磁気センサ70の磁界感応面はセンサ磁石202の回転面と平行にするのが好ましい。すなわち、磁気センサ70の磁界感応面をxy面と平行に設置するのが好ましい。このようにすると、磁気センサ70でxy面内の磁界方向を計測することにより、センサ磁石202の回転角を計測することができる。
【0147】
なお、(2×p)極着磁のセンサ磁石を用いると、センサ磁石202が1回転すると、磁気センサ70の地点のxy面内方向磁界はp回転する。ここで、pは1以上の整数である。したがって、磁界角計測装置を設置する回転機の極数に合わせてセンサ磁石の着磁極数を選ぶと、電気角での回転角度を得ることができる。電気角での回転角度の情報があると回転機の制御が容易になるという効果がある。
【0148】
なお、センサ磁石202の回転面とは、センサ磁石の回転中心線に垂直な平面で、センサ磁石202の設置点を通る平面を指す。
【0149】
[実施例14]
本発明による実施例14の回転機を、図25を用いて説明する。
本実施例では、回転機の構成物、例えば筐体などを前面導体240や背面導体242として利用する。
【0150】
ここで、回転機の「構成物」とは、回転機を構成する構成部品や構成体を指す。構成物の例としては、筐体や第2ブラケット103などがある。また、「筐体」とは、回転機の外周を構成する構成物であり、ハウジング203やフレーム101などを含む。
【0151】
本実施例の回転機のモータ部100は、図23に示した回転機と同様な構成である。
本実施例においては、ハウジング203を樹脂ではなく、アルミニウムや真鍮などの非磁性の導体を用いる。本実施例ではアルミニウムを用いた。
【0152】
磁気センサ70をハウジング203に設置した。このように磁気センサ70に近接して非磁性の導体がハウジング203として設置されているため、回転体121が高速で回転すると、渦電流による誘導磁界が発生する。すなわち、ハウジング203に渦電流が誘起され、それによる誘起磁界が発生する。このため、回転体121が高速回転すると、誘起磁界の影響で、回転角の計測精度が劣化するという問題が生じる。
【0153】
本実施例では、磁気センサ70とセンサ磁石202との間に前面導体240を設置することで、渦電流による誘起磁界を相殺し、高速回転時にも高精度で回転角を測定できる。
【0154】
すなわち、本実施例では、ハウジング203が背面導体242として機能しており、前面導体240と合わせて、互いに渦電流による誘起磁界を相殺するという作用がある。
【0155】
なお、本発明では、ハウジング203は、3mm厚のアルミニウム板を用い、前面板には0.5mm厚のアルミニウム板を用いた。このように、アルミニウム板の厚さを変えることにより、前面導体240のシート抵抗を背面導体242(本実施例ではハウジング203)のシート抵抗よりも大きくした。
【0156】
従来は、回転体121を高速で回転させる場合、渦電流の影響を避けるため、磁気センサ70を金属製の構成物の近傍に設置することを避けるか、またはハウジング203を樹脂やセラミクスなどの高抵抗材料で構成する必要があった。本発明により、磁気センサ70を設置するハウジング203を非磁性の導体材料で構成しても、回転体121を高速で回転させる場合でも、回転角を高精度に計測することができる。
【0157】
[実施例15]
本発明による実施例15の回転機を、図26を用いて説明する。
本実施例では、磁気センサ70をセンサ磁石202の外周の外方に配置している。
【0158】
磁気センサ70は、円筒状の形状のハウジング203の内側に設置してある。ハウジング203はアルミニウム板で構成してあるため、センサ磁石202が高速で回転すると、ハウジング203内に渦電流が生成し、磁気センサ70地点での磁界の方向に影響を与えてしまう。
【0159】
そこで実施例では、センサ磁石202と磁気センサ70との間に、円筒状の形状の前面導体240を設置した。前面導体は0.5mm厚のアルミニウム板で構成されており、背面導体242(ハウジング203)は3mm厚のアルミニウムで構成されている。このように前面導体240のシート抵抗の方が背面導体242のシート抵抗よりも高いので、磁気センサ70の地点では渦電流による誘起磁界が相殺される。このため、センサ磁石202が高速に回転する場合でも、精度良く回転角を計測できる。
【0160】
[実施例16]
本発明による実施例16の回転機を、図27を用いて説明する。
本実施例では磁気センサ70を回転機の筐体の外側に設置してある。具体的には、ハウジング203の外側に磁気センサ70を設置してある。
【0161】
本実施例では、ハウジング203は加工性、耐熱性に優れたアルミニウム(板厚1mm)を用いた。アルミニウムは非磁性の導体なので、回転体121が低速度で回転する場合には、正しい回転角を計測できる。しかし、回転速度が高くなると、ハウジング中に生じた渦電流による誘起磁界で、磁気センサ70の地点での磁界が乱れる。
【0162】
そこで、本実施例では、磁気センサ70の背面側に背面導体242を設置した。背面導体242は、厚さ2mmの銅板を用いた。このように、本実施例での背面導体242は、前面導体240と比較して、厚さが薄く、かつ比抵抗が高い。したがって、前面導体240のシート抵抗が背面導体242のシート抵抗よりも高い。このようにして、ハウジング203(前面導体)の中での渦電流の誘起磁界と、背面導体242中の渦電流の誘起磁界とが、磁気センサ70の地点では相殺される。このため、高速回転時でも精度良く、回転角度を計測できる。
【0163】
本実施例では、回転機の筐体の外側に磁気センサ70が設置されている。そのため、回転機を組立てた後に磁気センサを設置すればよいので、製作しやすいという利点がある。さらに、万一磁気センサが故障した場合などに、磁気センサの交換も容易である。
【0164】
また、磁気センサ70が回転機筐体の外側に設置されていることから、信号配線208の取り出し孔の加工が不要となる。これは、特に防水仕様の回転機を製作する際に、信号配線の取り出し処理が容易になるという利点がある。
【0165】
[実施例17]
本発明による実施例17の回転機を、図28を用いて説明する。
本実施例は複数の背面導体を用いたことを特徴とする。
【0166】
回転機の回転角検出部200にハウジング203が取り付けられている。ハウジング203はアルミニウムを用いた。ハウジング203の外側に、磁界角計測装置80が取り付けられている。したがって、本実施例では、ハウジング203が前面導体240の機能をしている。
【0167】
磁界角計測装置80は、磁気センサ70と検出部302、さらに第1の背面導体242-1を備えている。これらを一体化してモールドされたパッケージになっている。第1の背面導体242-1の材料には銅を用いた。本実施例において、第1の背面導体242-1の役割は2つある。第1に、磁気センサ70および検出部302から電気的ノイズを除去・低減するためのシールド板の役割である。第2は、前面導体(ハウジング203)で生じる渦電流の誘起磁界を打ち消すために、逆向きの誘起磁界を発生させることである。
【0168】
本実施例では、パッケージ218内に設置された第1の背面導体242-1だけでは前面導体240による誘起磁界を打ち消すのに不十分であったため、第2の背面導体242-2を設けることで、磁気センサ70の地点で渦電流による誘起磁界が十分に小さな値にまで相殺されるように調節した。
【0169】
このように、背面導体242を複数の導体で構成すると、いずれか一方の背面導体(本実施例の場合は、第2の背面導体242-2)の材料、形状、設置位置などを調整することで、回転機の仕様に合わせて微調整することが可能になる。この特徴は、第1の背面導体242-1を磁界角計測装置としてパッケージ化した構成の場合、特に有用な効果を生む。
【0170】
[実施例18]
本発明による実施例18の回転機を、図29を用いて説明する。図29(A)が、実施例18の縦断面図を、図29(B)は、実施例18の側面部を、磁界角計測装置80内については透視して示す。
【0171】
本実施例では、磁界角計測装置80を、センサ磁石202の外周の外方であって回転機筐体の外側に設置した形態である。
【0172】
回転機の回転角検出部200はセンサ磁石202とそれを覆うハウジング203、磁界角計測装置80を有する。
【0173】
ハウジング203は非磁性の導体であるアルミニウムで構成されている。このため、センサ磁石202が高速で回転すると、ハウジング203中に渦電流が発生し、その誘起磁界が発生し、ハウジング203近傍の磁界分布に影響する。
【0174】
本実施例では、磁界角計測装置80に背面導体242を設置することで、ハウジング203中の渦電流による誘起磁界を打ち消す。これにより、磁気センサ70の地点では渦電流による誘起磁界が相殺され、正しい回転角を計測できる。すなわち、ハウジング203が前面導体240として機能している。磁気センサ70から見て前面の位置にハウジング203(本実施例では前面導体として機能している)があり、背面の位置に背面導体242が配置されている。背面導体242は銅で形成されており、シート抵抗がハウジング203よりも小さくなっている。また、磁気センサ70と検出部302とは結線されており、磁気センサ70に励起電圧を給電したり、磁気センサ70からの信号電圧を検出する。検出部302からは信号端子208が引き出されている。
【0175】
[実施例19]
本発明による実施例19の回転機を、図30を用いて説明する。
本実施例は、磁界角計測装置80をセンサ磁石202の外周の外方に配置した構成(周外配置)である。この周外配置構成の場合には、図30に示したように、センサ磁石202−前面導体240間距離とセンサ磁石202−背面導体242間距離が概ね等しくなるような配置が可能である。これを「2導体等距離配置」と呼ぶことにする。
【0176】
図30に示したように、本実施例では、磁界角計測装置80は磁気センサ70と検出部302、および、第1の導体(前面導体)240と第2の導体(背面導体)242を有する。これらは一体化してパッケージ化されている。磁気センサ70と検出部302は互いに結線されている。検出部302からは信号端子208が取り出されている。
【0177】
図30に示したように、磁気センサ70と検出部302は、第1の導体(前面導体)240と第2の導体(背面導体)242とで挟まれた形で配置されている。
【0178】
周外配置では、先に述べたように、センサ磁石202が(p×2)極着磁の場合、センサ磁石が1回転すると磁気センサ70の地点での磁界方向は図中のxy面に平行な面内でp回回転する。したがって、前面導体240と背面導体242とに生じる渦電流の向き、および渦電流による誘起磁界の向きは、図9に示したものと同様な分布になる。このため、図9を参照してわかるように、磁気センサ70を2枚の非磁性の導体で挟み込むことにより、前面導体(第1の導体)240中の渦電流が磁気センサ70位置に及ぼす磁界と、背面導体(第2の導体)242中の渦電流が磁気センサ70の位置に及ぼす磁界とが、互いに打ち消しあう方向になる。このため、回転角の計測誤差が減少する。
【0179】
なお、本明細書において、「互いに打ち消しあう」とは、渦電流に起因する磁界を正確にゼロに相殺する状態のみではなく、角度計測誤差が実用的に許容できる範囲に収まるように、渦電流起因の磁界を弱めることを意味する。ここで、「実用的に許容できる範囲」は、磁界角計測装置が使用される応用機器や、磁界角計測装置に要求される計測精度、他の誤差補償手段の有無などに依存する。
【0180】
このように、周外配置において、非磁性の2枚の導体(第1の導体と第2の導体)との間に磁気センサ70を挟み込むことにより、渦電流による計測誤差を低減することができる。
【0181】
より好ましくは、周外配置において、磁気センサ70の磁界感応面をセンサ磁石202の回転面と平行に配置する。磁気センサの磁界感応面とは、磁界のうち、その面への射影成分を検知する面のことを意味する。図30の場合は、xy面に平行な面が磁気センサ70の磁界感応面である。
【0182】
また、周外配置において、より好ましくは、第1の導体(前面導体)240と第2の導体(背面導体)242は、磁気センサ70の磁界感応面と概ね平行な向きに配置する。図9からわかるように、この配置の時に最も有効に、渦電流による誘起磁界を互いに相殺するからである。また、「概ね平行」と記した意味は、図13のように平行から角度φだけずれていても、cosφ成分が打ち消しあうので、一定の効果はあるという意味である。
【0183】
図30では、センサ磁石202と磁気センサ70とを結ぶ仮想的直線の上に、導体が配置されていない。このようにすると、磁気センサ70の地点での磁界分布のさらなる歪みが防げるので、一層好ましい構成である。
【0184】
次に、2導体等距離配置の構成において、渦電流による誘起磁界を相殺する条件を、さらに定量的に述べる。各導体とセンサ磁石202までの距離は等しいので、各導体位置での磁束Φ、Φの大きさも等しい。したがって、(数13)において磁束Φ、Φの時間微分量は互いに等しい。したがって、(数13)がゼロになる条件は、R=Rである。すなわち、第1の導体(前面導体)240と第2の導体(背面導体)242とでシート抵抗を等しくすると、第1の導体(前面導体)240中の渦電流が磁気センサ70の位置に及ぼす磁界と、第2の導体(背面導体)242中の渦電流が磁気センサ70の位置に及ぼす磁界とが、互いに相殺する。このようにして、渦電流の影響を相殺できる。
【0185】
前述の通り、本実施例は2導体等距離配置の構成なので、第1の導体(前面導体)240と第2の導体(背面導体)242のシート抵抗を等しくした。本実施例では、それぞれ0.5mm厚の銅板を用いた。このようにすることにより、一層、計測誤差を低減し、高精度な回転角計測が可能になる。
【0186】
本実施例において、磁気センサ70の近傍に導体を配置する目的のひとつは、磁気センサ70と検出部302における電気的ノイズの除去のためである。従来のように、第1の導体240のみを設置した構成においては、センサ磁石202を高速に回転させると、渦電流による誘起磁界により、回転角の計測値に誤差が生じた。一方、本実施例のように、第1の導体240と第2の導体242とを配置することにより、渦電流による誘起磁界が互いに相殺し、高精度に回転角を計測できる。
【0187】
[実施例20]
本発明による実施例20である磁界角計測装置を、図31を用いて説明する。
本実施例の磁界角計測装置80は、磁気センサ70、検出部302、第1の導体240、第2の導体242を備える。検出部302から信号出力208が取り出される。
【0188】
この磁界角計測装置80は、回転体121と連動して回転するセンサ磁石202とともに用いられる。センサ磁石202が回転すると、磁気センサ70の地点での磁界の回転面と平行な面の成分(xy面内成分)も回転する。したがって、磁気センサ70で磁界の角度を測ることにより、回転体121の回転角度を計測することができる。
【0189】
このように、本実施例の磁界角計測装置80は、センサ磁石202の周の外側に配置されて用いられる。また、センサ磁石202の回転面(xy平面)と平行に磁気センサ70の磁界感応面を配置して用いられる。
【0190】
図31に示したように、本実施例では、第1の導体240と第2の導体242とは検出部302を挟むように配置されている。第1の導体240と第2の導体242とは、磁気センサ70は挟み込んでいない。しかし、第1の導体および第2の導体は、磁気センサ70の近傍に配置されているため、その導体中に生成した渦電流が発生する誘起磁界は、磁気センサ70の地点での磁界に影響を与える。例えば、第2の導体を設けず、第1の導体のみを設置した場合には、第1の導体中の渦電流が発生する誘起磁界により磁気センサ70の地点での磁界方向が乱れる。
【0191】
本実施例では、図31に記載の通り、センサ磁石202〜第1の導体240間距離とセンサ磁石202〜第2の導体242間距離とが互いに概ね等しい2導体等距離配置である。そして、第2の導体242の誘起磁界がセンサ70の地点に及ぼす磁界と、第1の導体240の誘起磁界がセンサ70の地点に及ぼす磁界の方向が逆向きなので、両者の影響は互いに打ち消しあう。このため、磁界角計測装置80は回転体121が高速回転する時も、回転角を精度よく計測できる。
【0192】
なお、本実施例において、第1の導体および第2の導体を検出部302の近傍に配置した理由は、検出部302は電気的ノイズの影響を受けやすいので、そのノイズの影響を防ぐためである。
【0193】
[実施例21]
本発明による実施例21として電動パワー・ステアリング・システム(Electric Power-Assisted Steering system)の例を、図32に示した。
【0194】
ハンドル501に機械的に連結したステアリング・シャフト503は、トルクセンサ502を経由して連結部504に接続される。減速ギアなどで構成された連結部504には、モータ100の回転体121が接続される。さらに、連結部504には連結シャフト505が接続される。連結シャフト505は、ギアボックス506に接続される。ギアボックス506にはタイロッド507が接続される。ギアボックス506は、連結シャフト505の回転運動をタイロッド507の直線運動に変換する。タイロッド507の両端にはタイヤ(図示せず)が配置されており、タイロッドの直線運動に応じてタイヤの向きが変化する。
【0195】
回転体121はモータ100の回転軸であり、一方の端にセンサ磁石202が設置されている。センサ磁石202の近傍には磁界角計測装置80が設置されており、回転体121の回転角を計測してECU411に送信する。
【0196】
本実施例において、モータ100と磁界角計測装置80との位置関係は、図28のようにした。
【0197】
運転者がハンドル501を回すと、その回転状態はトルクセンサ502で検出され、ECU411に電気信号として伝達される。ECU411は、トルクセンサ502からの信号と、磁界角計測装置80からの回転角信号θ、および車速信号などから、適切なモータ駆動量を算出し、モータ駆動部412に信号を送信する。これによりモータ100は回転体121を回転駆動し、連結シャフト505の回転をアシストする。このようにして、タイヤの向きを動かす運動をアシストする。
【0198】
本実施例において、磁界角計測装置80内の磁気センサ70は、前面導体(ハウジング203)と背面導体とで挟まる構成にし、それぞれの導体のシート抵抗値を適切に設定したので、回転体121が高速に回転しても精度良く回転角を計測できる。
【0199】
磁界角計測装置80をモータ100のハウジングの外側に設置すると、特に防水構造のモータ100を製作する際に、簡単な構成とすることができるという作用効果がある。
【0200】
[実施例22]
本発明の実施例22について図33を用いて説明する。本実施例は磁界角計測装置を用いたハイブリッド自動車駆動装置(電動車両駆動装置)の動力機構の基本構成を示すものである。
【0201】
図33は自動車の動力として内燃機関エンジンと電気モータとを組み合わせたハイブリッド自動車駆動装置(電動車両駆動装置)の模式図である。エンジン553の出力回転軸と発電機552、駆動モータ551とは同軸線上に配置されており、それぞれは動力分配機構554の働きで適切に動力が伝達される。動力分配の仕方は、車両の走行状態、加速指令状態、バッテリーの充電状態などの情報に基づいて適切に設定される。また、動力分配機構554から動力シャフト558に動力を伝達する動力結合機構557が設けられている。
【0202】
駆動モータ551には、図28に記載の回転機を用いた。駆動モータ551は図28に記載したように、モータ部100と回転角検出部200とで構成される。回転角検出部200はセンサ磁石202(磁束発生体)と磁界角計測装置80を有する。なお、磁界角計測装置80の構成は図28に示した構成である。
【0203】
センサ磁石202は、駆動モータ551の筐体の一部を形成するハウジング203の外側に設置されている。ハウジング203は、非磁性の導体を用いた。本実施例ではアルミニウムを用いる。
【0204】
発電機552には発電機回転角センサ562が設置されている。発電機の回転シャフトにはセンサ磁石563が設置されており、センサ磁石563が発生する磁界の方向を発電機回転角センサ562で計測する。発電機回転角センサ562には、図29に記載の磁界角計測装置80を用いた。
【0205】
電動車両駆動装置で用いられる回転機(駆動モータ551と発電機552)は、15000rpm(250Hz)程度の高速回転でも使用する。そのため、従来では、磁界角計測装置80の近傍に非磁性の導体を配置すると、高速回転時に回転角の計測精度が劣化するという問題があった。本実施例では、非磁性の導体中の渦電流の影響を除去することで、高速回転時でも回転角を精度良く計測できる。このように、本実施例は、250Hzという高速回転動作要求のある電動車両駆動装置においても、高速回転時でも精度良く回転角が計測できるという作用効果がある。
【0206】
本実施例では、図28に示したように、回転角計測装置80を、回転機筐体を構成するハウジング203の外側に設置した。回転機筐体の外側に配置すると、以下の2つの利点がある。
【0207】
第1に、電動車両駆動装置などのような高出力回転機においては、冷却などの目的で回転機筐体内にはオイル(油)を入れる。このため、筐体内部に磁界角計測装置80を入れる構成では、磁界角計測装置80として、オイルに耐えられる材料を用いなければならない、という制約がある。筐体の外側に設置すれば、このような制約が無くなるという効果がある。
【0208】
第2に、電動車両駆動装置などのような高出力回転機では、動作中に、銅損や鉄損などの要因で、回転機のステータやロータが発熱し回転機が高温になる。但し、発熱要因は主に回転機内部にあるので、回転機筐体の内側に比べて外側は温度が低い。この温度差は回転機の設計にもよるが、10℃〜50℃くらいの差がある。このため、回転角計測装置80を回転機筐体の外側に設置すると、内側に設置した場合に比べて低い温度で動作させることができるという効果がある。
【0209】
以上では、GMR素子を用いた磁気センサを使用した例を述べた。
本発明は、GMR素子の磁気センサに限定されるものではなく、他の磁界角計測型の磁気センサにも適用可能である。
【符号の説明】
【0210】
51, 52・・・GMR素子、70・・・磁気センサ、60・・・COSブリッジ、61・・・SINブリッジ、80・・・磁界角計測装置又は回転角計測装置、90・・・信号端子、
100・・・モータ部、110・・・ステータ、111・・・ステータコア、112・・・ステータコイル、120・・・ロータ、121・・・回転体、132・・・磁界角計測装置設置部、
200・・・回転角検出部、202・・・センサ磁石(磁束発生体)、218・・・パッケージ、218A・・・センサ・パッケージ、218B・・・検出部パッケージ、226・・・回転中心線、
240・・・前面導体(第1の導体)、242・・・背面導体(第2の導体)、242-1・・・第1の背面導体、242-2・・・第2の背面導体、240・・・第1の導体(前面導体)、242・・・第2の導体(背面導体)、250・・・センサ磁石の磁界、251・・・誘起磁界、252・・・合成磁界、272・・・開口部、
302・・・検出部、303・・・信号処理部、351・・・差動増幅器、383・・・atan処理部、
411・・・電子制御コントロールユニット、412・・・駆動部、
501・・・ハンドル、502・・・トルクセンサ、503・・・ステアリング・シャフト、504・・・連結部、505・・・連結シャフト、506・・・ギアボックス、507・・・タイロッド、
551・・・駆動モータ、552・・・発電機、553・・・エンジン、554・・・動力分配機構、557・・・動力結合機構、558・・・動力シャフト、562・・・発電機磁界角センサ、563・・・センサ磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性の第1の導体、非磁性の第2の導体、及び前記第1の導体と前記第1の導体の間に配置された、磁界方向に感応する磁気センサを備えた磁界角計測装置であって、
前記磁界角計測装置はセンサ磁石とともに用いられ、前記磁界角計測装置が、前記センサ磁石に対して所定の位置に配置された際に、
前記第1の導体中に流れる渦電流が前記磁気センサに及ぼす磁界、及び前記第2の導体中の渦電流が前記磁気センサに及ぼす磁界が、互いに打ち消し合う磁界角計測装置。
【請求項2】
磁界方向に感応する磁気センサと、
非磁性の第1の導体と、非磁性の第2の導体とを備えた磁界角計測装置であって、
前記磁気センサは、前記第1の導体と前記第2の導体との間に配置され、
前記第1の導体のシート抵抗が、前記第2の導体のシート抵抗よりも大きいことを特徴とする磁界角計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載された磁界角計測装置において、
前記磁気センサはセンサ磁石とともに用いられ、前記磁気センサが、前記センサ磁石に対して所定の位置に配置された際に、前記第1の導体を前記磁気センサの前面側に配置し、前記第2の導体を前記磁気センサの背面側に配置した磁界角計測装置。
【請求項4】
請求項2に記載された磁界角計測装置において、
前記第1の導体の厚さは、前記第2の導体の厚さよりも薄いことを特徴とする磁界角計測装置。
【請求項5】
請求項2に記載された磁界角計測装置において、
前記第1の導体の比抵抗は、前記第2の導体の比抵抗よりも大きいことを特徴とする磁界角計測装置。
【請求項6】
請求項2に記載された磁界角計測装置において、
前記第1の導体と前記第2の導体とのなす角が45度以下であることを特徴とする磁界角計測装置。
【請求項7】
請求項2に記載された磁界角計測装置において、
前記第1の導体及び前記第2の導体は、互いに平行であることを特徴とする磁界角計測装置。
【請求項8】
請求項2に記載された磁界角計測装置において、
前記第1の導体及び前記第2の導体並びに前記磁気センサを、パッケージ内に収めたことを特徴とする磁界角計測装置。
【請求項9】
請求項8に記載された磁界角計測装置において、
前記パッケージの信号端子は、前記磁気センサから前記第2の導体側に出ていることを特徴とする磁界角計測装置。
【請求項10】
請求項2に記載された磁界角計測装置において、
前記第1の導体若しくは前記第2の導体の少なくとも一方は、開口部を有することを特徴とする磁界角計測装置。
【請求項11】
請求項2に記載された磁界角計測装置において、
前記第2の導体は、複数の導体から構成されることを特徴とする磁界角計測装置。
【請求項12】
回転体と、
前記回転体と連動して回転するセンサ磁石と、
前記センサ磁石が発生する磁界の方向を計測する磁界角計測装置と、を備えた回転機であって、
前記磁界角計測装置は請求項2に記載の磁界角計測装置であり、
前記センサ磁石、前記第1の導体、前記磁気センサ、前記第2の導体の順序で配置される回転機。
【請求項13】
請求項12に記載された回転機において、
前記磁気センサを前記回転体の回転中心線上に配置したことを特徴とする回転機。
【請求項14】
請求項12に記載された回転機において、
前記磁気センサを前記センサ磁石の外周の外方に配置したことを特徴とする回転機。
【請求項15】
請求項12に記載された回転機において、
前記磁気センサの磁界感応面及び前記センサ磁石の回転面を、互いに平行に配置したことを特徴とする回転機。
【請求項16】
請求項12に記載された回転機において、
前記回転機を構成する部品を、前記第1の導体若しくは前記第2の導体に兼用することを特徴とする回転機。
【請求項17】
請求項12に記載された回転機において、
前記回転機の筐体の一部を、前記第1の導体又は前記第2の導体とすることを特徴とする回転機。
【請求項18】
請求項12に記載された回転機において、
前記第2の導体は、複数の導体で構成されることを特徴とする回転機。
【請求項19】
回転体と、
前記回転体と連動して回転するセンサ磁石と、
前記センサ磁石が発生する磁界の方向を計測する磁界角計測装置と、を備えた回転機であって、
前記磁界角計測装置は、請求項1に記載された磁界角計測装置であり、前記センサ磁石の外周の外方に、前記磁気センサの磁界感応面が前記センサ磁石の回転面と平行となる位置に配置されたことを特徴とする回転機。
【請求項20】
請求項19に記載された回転機おいて、
前記第1の導体と前記第2の導体は、前記磁気センサの磁界感応面と平行に配置されたことを特徴とする回転機。
【請求項21】
請求項19に記載された回転機において、
前記センサ磁石と前記第1の導体との間の直線距離と、前記センサ磁石と前記第2の導体との間の直線距離とが等しいことを特徴とする回転機。
【請求項22】
請求項19に記載の回転機において、
前記第1の導体のシート抵抗と前記第2の導体のシート抵抗とが等しいことを特徴とする回転機。
【請求項23】
請求項19に記載の回転機において、
前記磁気センサは、前記第1の導体と前記第2の導体から挟まれた領域外にあることを特徴とする回転機。
【請求項24】
請求項1又は2に記載された磁界角計測装置を備えた電動パワー・ステアリング・システム。
【請求項25】
請求項19に記載された回転機を備えた電動パワー・ステアリング・システム。
【請求項26】
請求項1又は2に記載された磁界角計測装置を備えた電動車両駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2013−104698(P2013−104698A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247015(P2011−247015)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】