説明

磁石式発電機

【課題】信号発電子にパルスを発生させるリラクタを回転子ヨークに備えた磁石式発電機において、回転子磁極から生じる磁束によりパルスの波形が歪むのを防止する。
【解決手段】リラクタr1,r2,…が設けられている領域を越えて回転子ヨーク100の軸線方向及び周方向に延びていて、各リラクタと各リラクタの内側の回転子磁極との間に存在する回転子ヨークの周壁部100aの肉厚部を径方向に分断するスリット110を、回転子ヨークの周壁部100aの肉厚部内に設け、スリット110により回転子磁極とリラクタとの間を磁気的に絶縁するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車、ATV(All Terrain Vehicle,全地形対応車) 等のエンジン駆動車両のエンジンに取り付けるのに好適な磁石式発電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や特許文献2に示されているように、磁石式発電機は、エンジンの回転軸(通常はクランク軸)に取り付けられる磁石回転子と、エンジンのケースやカバーなどに固定されて磁石回転子と協働して交流電圧を発生する固定子とにより構成される。
【0003】
磁石回転子は、エンジンの回転軸に取り付けられる回転子ヨークと、回転子ヨークに取り付けられた永久磁石からなる磁極構成体とにより構成される。エンジンに取り付けられる磁石式発電機においては、通常、鉄等の強磁性体からなるカップ状の回転子ヨークが用いられ、この回転子ヨークの周壁部の内周に磁極構成体が接着等により固定される。磁極構成体は、回転子ヨークの周方向に間隔をあけて配置される複数の円弧状の永久磁石や、回転子ヨークの周方向に連続的に延びるリング状の永久磁石により構成される。いずれの場合も、永久磁石の所定の着磁領域が回転子ヨークの径方向に着磁されることにより、回転子ヨークの周方向に一定の角度間隔をもって並ぶ所定の極数の回転子磁極が構成される。
【0004】
固定子は、回転子磁極にエアギャップを介して対向させられる磁極部(歯部)とコイル巻回用のスロットとを有する電機子鉄心と、該電機子鉄心のスロットに巻回されたコイル群とにより構成される。電機子鉄心に巻回されたコイル群は、所定の相数の電機子コイルを構成するように結線される。磁石回転子が回転すると、固定子のコイル群と鎖交する磁束に変化が生じるため、コイル群に交流電圧が誘起し、コイル群が結線されることにより構成された電機子コイルから所定の相数の交流電圧が出力される。
【0005】
エンジンを動作させるためには、エンジンの点火時期の制御や、エンジンに燃料を供給する燃料噴射装置の制御等、各種の制御を行う必要がある。これらの制御を行う際には、エンジンのクランク軸の回転角度位置や回転速度等の回転情報を得るために、クランク軸の回転と同期して、所定のクランク角位置でパルス信号を発生するパルス発生器を必要とする。エンジンの制御装置は、パルス発生器が発生するパルスがしきい値に達したときに該パルスを認識してクランク軸の回転角度位置情報を得るため、回転角度位置情報を正確に得るためには、パルス発生器から常に一定の波形のパルスを発生させる必要がある。このパルス発生器は、磁石式発電機とは別個に設けられることもあるが、特許文献1や特許文献2に示されているように、磁石式発電機にその機能を持たせることが多い。
【0006】
磁石式発電機に、交流発電機としての機能の他にパルス発生器としての機能をも持たせる場合には、磁石回転子の回転子ヨークの周方向及び軸線方向にそれぞれ所定の周方向長さ及び軸線方向長さを持って回転子ヨークの周壁部の外周から径方向の外側に突出した少なくとも一つのリラクタが回転子ヨークの外周に設けられ、前記固定子の他に、上記リラクタを検出してパルス信号を発生する信号発電子が更に設けられる。この信号発電子は、回転子ヨークの周壁部の外側に配置されて、エンジンのケースやカバーなどに設けられた発電子取付け部に固定される。
【0007】
交流発電機としての機能だけでなく、パルス発生器としての機能をも持たせた磁石式発電機の一例として、特許文献1に示された磁石式発電機の構成を図6及び図7に示した。これらの図において、1は磁石回転子、2は交流電圧を発生する固定子、3は磁石回転子1の回転に同期してパルスを発生する信号発電子である。
【0008】
図示の磁石回転子1は、周壁部100aと底壁部100bと回転軸取付け用のボス部100cとを一体に有するカップ状の回転子ヨーク100と、回転子ヨーク100の周壁部100aの内周に固定された永久磁石からなる磁極構成体101とからなっている。磁極構成体101を構成する永久磁石の所定の着磁領域が回転子ヨークの径方向に着磁されることにより、回転子ヨークの周方向に一定の角度間隔をもって並ぶ所定の極数の回転子磁極P1ないしPm(図示の例ではm=12)が形成されている。
【0009】
回転子ヨーク100の周壁部100aの外周には、回転子ヨークの周方向に所定の角度間隔をもって並ぶ所定個数のリラクタr1ないしrn(図示の例ではn=18)が形成されている。各リラクタは、回転子ヨークの周方向及び軸線方向にそれぞれ所定の周方向長さ及び軸線方向長さを有する突起からなっている。図示の例では、一連のリラクタr1ないしrn相互間の角度間隔θが等しく設定され、リラクタr1ないしrn-1の極弧角がすべて等しく設定されているが、他の一つのリラクタrnの極弧角は、他のリラクタr1ないしrn-1の極弧角よりも十分に大きく設定されている。即ち、この例では、多数のリラクタの内の一つのリラタが他のリラクタと異なる極弧角を有するように設けられている。
【0010】
固定子2は、環状の継鉄部Yから、該継鉄部の周方向に等角度間隔で並ぶ多数の(図示の例では18個の)歯部T,T,…を放射状に突出させて、一連の歯部相互間にコイル巻回用スロットを形成した環状の電機子鉄心200と、電機子鉄心200のコイル巻回用スロットにコイル導体を挿入して一連の歯部にそれぞれ巻回されたコイルW,W,…とからなり、コイルW,W,…が三相結線されることにより、三相交流電圧を発生する電機子コイル201が構成されている。電機子コイル201の三相の端末線は、結線部205にて三相のリード線Lに接続されている。また信号発電子3から引出された引出線L′が絶縁チューブ202内に挿されることによりワイヤハーネス203が構成されている。このワイヤハーネス203は、電機子鉄心の継鉄部Yに固定された支持金具204により支持された状態で結線部205の近傍に導かれて、結線部205とともに糸縛りにより固定子の一つのコイルに固定されている。またワイヤハーネス203から導出された引出し線L′と、三相のリード線Lとが一括して絶縁チューブ206内に挿入されることによりワイヤハーネス207が構成され、このワイヤーハーネス207は、糸縛りにより電機子コイル201に対して支持された状態で外部に導出されている。
【0011】
固定子2は、磁石回転子1の内側に配置されて、エンジンのケースやカバーに設けられた固定子取付け部(図示せず。)に固定され、電機子鉄心200の歯部T,T,…のそれぞれの先端に設けられた磁極部が回転子磁極P1ないしPmに所定のエアギャップを介して対向させられる。
【0012】
信号発電子3は、リラクタr1ないしrnに対向する磁極部300を先端に有する鉄心と、この鉄心に巻回された信号コイルと、鉄心に一方の磁極が磁気的に結合された信号発生用磁石(図示せず。)と、信号発生用磁石の他方の磁極に磁気結合されたヨークとをケーシング301内に収容して、ヨークに一体に設けられた取付け用腕部302をケーシング301から外部に導出させた構造を有する周知のものである。信号発電子3は、その磁極部300を回転子ヨーク100のリラクタr1ないしrnが設けられた領域に向けた状態で配置されて、エンジンのケースまたはカバーに設けられた取付け部に固定される。
【0013】
図示の磁石式発電機において、図示しないエンジンが回転して磁石回転子1が回転すると、電機子鉄心の歯部T,T,…に巻回されたコイルW,W,…に交流電圧が誘起し、これらのコイルが三相結線されることにより構成された電機子コイルから三相交流電圧が出力される。
【0014】
信号発電子3においては、リラクタr1ないしrnのそれぞれが磁極部300との対向を開始する際に信号コイルと鎖交する磁束が増大し、リラクタr1ないしrnのそれぞれが磁極部300との対向を終了する際に信号コイルと鎖交する磁束が減少する。これらの磁束変化により、信号発電子3内の信号コイルは、各リラクタが磁極部300との対向を開始する際及び各リラクタが磁極部300との対向を終了する際にそれぞれ極性が異なるパルスを発生する。即ち、信号発電子3は、各リラクタの回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出して極性が異なるパルスを発生する。
【0015】
図6及び図7に示された磁石式発電機においては、リラクタrnの極弧角が他のリラクタの極弧角よりも大きく設定されているため、信号発電子3が、リラクタrnの前端側エッジを検出してパルスを発生してから後端側エッジを検出してパルスを発生するまでの時間間隔が、信号発電子3が他のリラクタの前端側エッジを検出してパルスを発生してから後端側エッジを検出してパルスを発生するまでの時間間隔よりも長くなる。エンジンを制御する制御装置は、このパルスの発生間隔の不規則性を利用して、リラクタr1ないしrnのエッジを検出したときにそれぞれ発生するパルスを識別し、信号発電子が発生する一連のパルスとエンジンのクランク軸の回転角度位置との間の対応関係を特定する。
【0016】
図6に示されたように、一部のリラクタrnの極弧角を他のリラクタの極弧角と異ならせる代りに、等角度間隔で設けられるべきリラクタの一部を欠落させることにより、パルスの発生間隔に不規則性を持たせて、パルスの識別を可能にする場合もある。
【0017】
近年、エンジンの軽量化を図ることが重視される傾向にあり、それに伴って、磁石回転子の回転子ヨークの周壁部の肉厚を薄くする傾向がある。図6及び図7に示された磁石式発電機のように、回転子ヨーク100の周壁部100aの外周にリラクタr1,r2,…を一体に形成する場合に、回転子ヨークの周壁部の肉厚を薄くすると、回転子磁極とリラクタとの距離が短くなり、図8に示すように、回転子磁極からリラクタ側に磁束φr が流れ易くなる。回転子磁極からリラクタ側に磁束φr が流れると、リラクタが信号発電子の磁極部300に対向した際に信号コイルが巻回された鉄心に流れる磁束(信号コイルと鎖交する磁束)の波形が歪むため、信号コイルに誘起するパルスの波形が歪み、該パルスから得られる回転角度位置情報に誤差が生じるおそれがある。
【0018】
本出願人は先に、信号発電子から得られるパルスの波形歪みを減少させることができる磁石式発電機として、特許文献2に示されたものを提案した。この既提案の磁石式発電機においては、外周にリラクタが形成されたリング(リラクタ保持リング)を回転子ヨークの周壁部の外周に圧力嵌めする構造を採用して、リラクタ保持リングの内周側で該リングの幅方向の一端側の角部を斜めに切削することにより、リラクタ保持リングの内周の一部と回転子ヨークの周壁部の外周との間に隙間を形成している。
【0019】
このように構成すると、リラクタ保持リングの内周の一部と回転子ヨークの周壁部の外周との間に形成された隙間により、回転子ヨークの周壁部とリラクタ保持リングとの間の磁気抵抗を増大させることができるため、磁石回転子の回転子磁極からリラクタ側に流れる磁束の量を少なくすることができ、信号発電子が出力するパルスに波形歪みが生じるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平11−355989号公報
【特許文献2】特開2002−247785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
特許文献2に示された磁石式発電機によれば、リラクタ保持リングの内周面全体を回転子ヨークの周壁部に接触させた場合に比べて、回転子ヨークの周壁部とリラクタ保持リングとの間の磁気抵抗を増大させることができるため、磁石回転子の回転子磁極からリラクタ側に流れる磁束の量を少なくして、信号発電子が出力するパルスに波形歪みが生じるのを抑制することができる。しかしながら、特許文献2に示された磁石式発電機では、リラクタ保持リングを回転子ヨークの周壁部の外周に圧力嵌めすることを可能にするために、リラクタ保持リングの内周面の相当部分は、回転子ヨークの周壁部の外周に直接接触させる必要がある。そのため、特許文献2に示された磁石式発電機においても、回転子磁極から生じる磁束がある程度リラクタ側に流れるのを避けることができず、回転子磁極から生じる磁束がパルス波形に与える影響を実用上支障を来さない程度に抑えることは容易ではない。
【0022】
更に、特許文献2に示された磁石式発電機では、リラクタ保持リングの幅方向の一端側の角部が切削されているため、リラクタ保持リングの断面積が減少してその機械的強度が低下するだけでなく、当該リングと回転子ヨークの周壁部の外周との接触面積が減少して、リラクタ保持リングの取付け強度が低下し、磁石回転子の機械的強度が低下するのを避けられない。
【0023】
また特許文献2に示されているように、回転子ヨークとは別体のリラクタ保持リングにリラクタを形成する構造を採用した場合には、磁石回転子の外径が大きくなるのを避けられないため、磁石式発電機の小形軽量化が要請される場合にその要請に応えることが難しくなることがある。磁石式発電機の小形軽量化の要請に応えるためには、回転子ヨークの周壁部に一体にリラクタを形成する構造を採用して、しかも回転子ヨークの周壁部の肉厚を薄くした場合でも、回転子磁極から生じる磁束がリラクタ側に流れるのを効果的に防ぐための工夫をする必要がある。
【0024】
本発明の目的は、回転子ヨークの周壁部に一体にリラクタを形成して、しかも回転子ヨークの周壁部の肉厚を薄くした場合でも、回転子磁極から生じる磁束がリラクタ側に流れるのを効果的に抑制して、信号発電子から正常な波形のパルスを発生させることができるようにした磁石式発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、強磁性体からなるカップ状の回転子ヨークの周壁部の内周に永久磁石からなる磁極構成体が取り付けられて、磁極構成体を構成する永久磁石が回転子ヨークの径方向に着磁されることにより回転子ヨークの周方向に並ぶ所定の極数の回転子磁極が形成され、回転子ヨークの周壁部の周方向及び軸線方向にそれぞれ所定の周方向長さ及び軸線方向長さを持って周壁部の外周から径方向の外側に突出した少なくとも一つのリラクタが周壁部に一体に形成されている磁石回転子と、磁石回転子の内側に配置されて磁石回転子の回転に伴って交流電圧を発生する固定子と、回転子ヨークの周壁部の外側に配置されてリラクタを検出してパルスを発生する信号発電子とを備えた磁石式発電機を対象とする。
【0026】
本発明においては、各リラクタが設けられている領域を越えて回転子ヨークの軸線方向及び周方向に延びていて、各リラクタと各リラクタの内側の回転子磁極との間に存在する回転子ヨークの周壁部の肉厚部を径方向に分断するスリットが回転子ヨークの周壁部の肉厚部内に設けられる。上記スリットは、その軸線方向の一端を回転子ヨークの周壁部の一方の軸線方向端面に開口させ、軸線方向の他端を回転子ヨークの周壁部の他方の軸線方向端面の手前の位置で終端させた状態で設けられる。
【0027】
上記のように、各リラクタと各リラクタの内側の回転子磁極との間に存在する回転子ヨークの周壁部の肉厚部を径方向に分断するスリットを回転子ヨークの周壁部の肉厚部内に設けると、各リラクタとその内側の回転子磁極との間をスリットにより完全に分断することができるため、各リラクタとその内側の回転子磁極との間の磁気抵抗を十分に大きくして、回転子磁極から各リラクタに磁束が流れるのを抑制することができ、回転子磁極から生じる磁束により、信号発電子が発生するパルスの波形が歪むのを防ぐことができる。
【0028】
本発明の好ましい態様では、回転子ヨークの軸線方向に測ったスリットの軸線方向寸法が、回転子ヨークの軸線方向に測った磁極構成体の軸線方向寸法よりも長く設定され、磁極構成体は、その軸線方向の一端及び他端をスリットの軸線方向の一端及び他端にそれぞれ相応する位置よりも内側に位置させた状態で配置される。
【0029】
上記のように構成すると、磁極構成体を構成する永久磁石の着磁領域(回転子磁極)からリラクタ側に磁束が流れるのをより効果的に抑制することができるため、回転子磁極から生じる磁束によるパルス波形の歪みをより確実に防ぐことができる。
【0030】
本発明の好ましい態様では、スリットと回転子ヨークの周壁部の内周面との間に存在する周壁部の肉厚部の厚みを、スリットと周壁部の外周面との間に存在する周壁部の肉厚部の厚みよりも厚くするように、スリットが設けられる。
【0031】
上記のように構成すると、スリットと回転子ヨークの周壁部の内周面との間に存在する周壁部の肉厚部の磁気抵抗を、スリットと回転子ヨークの周壁部の外周面との間に存在する周壁部の肉厚部の磁気抵抗よりも小さくすることができるため、回転子磁極から回転子ヨークの周壁部に流れる磁束の大部分を、リラクタから側路させて流すことができる。従って、回転子磁極からリラクタ側に磁束が殆ど流れないようにして、パルスの波形が歪むのを防ぐことができる。
【0032】
本発明の好ましい態様では、上記スリットが、回転子ヨークの周壁部の周方向の全体に亘って延びるように設けられる。
【0033】
本発明の他の好ましい態様では、スリットが、回転子ヨークの周壁部の周方向に並ぶ複数の単位スリットに分割されて、各単位スリットが少なくとも一つのリラクタと、該リラクタの内側に設けられている回転子磁極との間に介在させられる。
【0034】
上記のように、スリットを複数の単位スリットに分割すると、スリットにより回転子ヨークの機械的強度が低下するのを防ぐことができる。
【0035】
本発明の好ましい態様では、上記スリット内に、回転子ヨークを構成する材料よりも透磁率が低い低透磁率材料からなる充填材が充填される。この充填材は金属からなっていてもよく、樹脂からなっていてもよい。
【0036】
回転子ヨークの周壁部の肉厚が薄い場合に、周壁部内にスリットが形成されていると、回転子ヨークの機械的強度が低下するおそれがある。上記のように、回転子ヨークを構成する材料よりも透磁率が低い低透磁率材料からなる充填材をスリット内に充填しておくと、回転子磁極から生じる磁束がリラクタ側に流れるのを抑制する効果を低減させることなく、スリットにより回転子ヨークの機械的強度が低下するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明では、各リラクタと各リラクタの内側の回転子磁極との間に存在する回転子ヨークの周壁部の肉厚部を径方向に分断するスリットを回転子ヨークの周壁部の肉厚部内に設けたので、各リラクタとその内側の回転子磁極との間をスリットにより完全に分断して、各リラクタとその内側の回転子磁極との間の磁気抵抗を十分に大きくすることができる。従って、本発明によれば、回転子磁極から各リラクタに磁束が流れるのを抑制して、回転子磁極から生じる磁束により、信号発電子が発生するパルスの波形が歪むのを防ぐことができる。
【0038】
本発明において、回転子ヨークの軸線方向に測ったスリットの軸線方向寸法を、回転子ヨークの軸線方向に測った磁極構成体の軸線方向寸法よりも長く設定して、磁極構成体の軸線方向の一端及び他端をスリットの軸線方向の一端及び他端にそれぞれ相応する位置よりも内側に位置させるように構成した場合には、回転子磁極からリラクタ側に磁束が流れるのをより効果的に抑制して、パルス波形の歪みをより確実に防ぐことができる。
【0039】
また本発明において、スリットと回転子ヨークの周壁部の内周面との間に存在する周壁部の肉厚部の厚みを、スリットと周壁部の外周面との間に存在する周壁部の肉厚部の厚みよりも厚くするようにスリットを設けた場合には、スリットと回転子ヨークの周壁部の内周面との間に存在する周壁部の肉厚部の磁気抵抗を、スリットと周壁部の外周面との間に存在する周壁部の肉厚部の磁気抵抗よりも小さくすることができるため、回転子磁極から回転子ヨークの周壁部に流れる磁束の大部分を、リラクタから側路させて流すことができ、回転子磁極からリラクタ側に磁束が殆ど流れないようにして、パルスの波形が歪むのを防ぐことができる。
【0040】
本発明において、スリット内に、回転子ヨークを構成する材料よりも透磁率が低い低透磁率材料からなる充填材を充填した場合には、スリットを設けたことにより回転子ヨークの機械的強度が低下するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係わる磁石式発電機の半部の正面図である。
【図2】図1のII−II 線に沿って断面して示した断面図である。
【図3】図1の実施形態において回転子ヨークの周壁部にスリットを形成した状態を示す要部の拡大断面図である。
【図4】図3に示されたスリット内に低透磁率材料を充填した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図5】図1の実施形態に係わる磁石式発電機における磁束の流れを説明するための要部の拡大正面図である。
【図6】従来の磁石式発電機の半部の正面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿って断面して示した断面図である。
【図8】従来の磁石式発電機における磁束の流れを説明するための要部の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下図1ないし図5を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1ないし図4は本発明の一実施形態に係わる磁石式発電機の構成を示したもので、これらの図において、1は磁石回転子、2は交流電圧を発生する固定子、3は磁石回転子の回転に同期してパルスを発生する信号発電子である。
【0043】
磁石回転子1は、周壁部100aと底壁部100bとを一体に有するカップ状の回転子ヨーク100と、回転子ヨーク100の周壁部100aの内周に固定された永久磁石からなるリング状の磁極構成体101とにより構成されている。回転子ヨーク100の底壁部100bの中央部には、回転軸取付け用のボス部100cが一体に設けられている。ボス部100cの内側には、テーパがつけられた孔100dが形成され、図示しないエンジンのクランク軸の先端に形成されたテーパ部が孔100dに嵌合されて、適宜の手段によりボス部100cがクランク軸の先端のテーパ部に対して締め付けられることにより、回転子ヨーク100がエンジンのクランク軸に取り付けられる。
【0044】
図示の磁極構成体101は、回転子ヨーク100の周壁部100aの内周面の円周長に等しい長さを有する帯板状の形状に形成されて、周壁部100aの内周面に添わせた状態で配置されることによりリング状に成形された希土類磁石等の永久磁石からなっている。磁極構成体101を構成する永久磁石は、周壁部100aに接着により固定されている。
【0045】
図2ないし図4において、102は、磁極構成体101を回転子ヨーク100の軸線方向に位置決めするために、回転子ヨークの周壁部100aの内周面に嵌合されて、周壁部100aの底壁部100b寄りの部分に形成された段部100a1に突き当てられた非磁性材料からなるスペーサである。磁極構成体101は、その一方の軸線方向端面がスペーサ102に突き当てられることにより、回転子ヨーク100の軸線方向に位置決めされている。
【0046】
磁極構成体101及びスペーサ102を覆うように、ステンレス鋼等の非磁性材料(強磁性材料以外の材料)からなる保護カバー103が設けられている。図3に示されているように、保護カバー103は、磁極構成体101の内周面に嵌合されて、磁極構成体101及びスペーサ102の内周面を覆う円筒部103aと、円筒部103aの軸線方向の一端から径方向の外側に張り出すように形成されて、回転子ヨーク100の開口部側に位置する磁極構成体101の他方の軸線方向端面を覆う外鍔部103bとを一体に有している。保護カバーの円筒部103aの軸線方向の他端にはテーパが付けられた裾部103cが設けられていて、該裾部103cの先端が回転子ヨーク100の底壁部100bの内面に当接されている。保護カバー103は、外鍔部103bが磁極構成体101を構成する永久磁石の端面に接着されることにより、磁極構成体101に対して固定されている。
【0047】
磁極構成体101の所定の着磁領域が回転子ヨーク100の径方向に着磁されることにより、回転子ヨークの周方向に一定の角度間隔をもって並ぶ所定の極数の(図示の例では12極の)回転子磁極P1ないしPm(図示の例ではm=12)が形成されている。
【0048】
なお磁極構成体101の構成は図示の例に限定されるものではなく、例えば、回転子ヨークの周壁部の周方向に並べて配置された複数の円弧状の永久磁石により磁極構成体101を構成してもよい。
【0049】
回転子ヨーク100の周壁部100aの外周には、回転子ヨーク100の周方向に所定の角度間隔をもって並ぶ所定の個数(図示の例では17個)のリラクタr1ないしrn-1(図示の例ではn=18)が一体に形成されている。各リラクタは、回転子ヨークの周方向及び軸線方向にそれぞれ所定の周方向長さ及び軸線方向長さを有する突起からなっていて、回転子ヨークの周壁部に切削加工を施すことにより、回転子ヨークと一体に形成されている。
【0050】
図示の例では、一連のリラクタr1ないしrn-1の周方向長さがすべてい等しく設定されている。またリラクタrn-1とリラクタr1との間の角度間隔は2θ(=4π/n)に設定されているが、他のリラクタr1ないしrn-1相互間の角度間隔はすべてθ(=2π/n)に設定されている。
【0051】
なお図2ないし図4において、100eは、回転子ヨーク100にリコイルスタータや冷却ファン等の外付け部品を取り付ける場合に、該外付け部品を位置決めするために回転子ヨーク100の底壁部100bの外面に形成された環状の突出壁であり、100fは外付け部品を回転子ヨークに締結するボルトを貫通させる孔である。
【0052】
固定子2は、環状の継鉄部Yから、該継鉄部の周方向に等角度間隔で並ぶ多数の(図示の例では18個の)歯部T,T,…を放射状に突出させて、一連の歯部相互間にコイル巻回用スロットを形成した環状の電機子鉄心200と、電機子鉄心200のコイル巻回用スロットにコイル導体を挿入して一連の歯部にそれぞれ巻回されたコイルW,W,…とからなり、コイルW,W,…が三相結線されることにより、三相交流電圧を発生する電機子コイル201が構成されている。電機子コイル201の三相の端末線は、結線部205にて三相のリード線Lに接続されている。また信号発電子3から引出された引出線L′が絶縁チューブ202内に挿されることによりワイヤハーネス203が構成されている。このワイヤハーネス203は、電機子鉄心の継鉄部Yに固定された支持金具204により支持された状態で結線部205の近傍に導かれて、結線部205とともに糸縛りにより固定子の一つのコイルに固定されている。またワイヤハーネス203から導出された引出し線L′と、三相のリード線Lとが一括して絶縁チューブ206内に挿入されることによりワイヤハーネス207が構成され、このワイヤーハーネス207は、電機子コイル201上で糸縛りにより支持された状態で外部に導出されている。
【0053】
固定子2は、磁石回転子1の内側に配置されて、電機子鉄心200の継鉄部に設けられた取り付け孔200aを貫通させたボルトにより、エンジンのケースやカバーに設けられた固定子取付け部(図示せず。)に固定され、電機子鉄心200の歯部T,T,…のそれぞれの先端に設けられた磁極部が回転子磁極P1ないしPmに所定のエアギャップを介して対向させられる。
【0054】
信号発電子3は、リラクタr1ないしrn-1に対向する磁極部300を先端に有する鉄心と、この鉄心に巻回された信号コイルと、該鉄心に一方の磁極が磁気的に結合された信号発生用磁石(図示せず。)と、該信号発生用磁石の他方の磁極に磁気結合されたヨークとをケーシング301内に収容して、ヨークに一体に設けられた取付け用腕部302,302をケーシング301から外部に導出させた構造を有する。信号発電子3は、その磁極部300を回転子ヨーク100のリラクタr1ないしrn-1が設けられた領域に向けた状態で配置されて、エンジンのケースまたはカバーに設けられた発電子取付け部に固定される。
【0055】
本発明においては、各リラクタが設けられている領域を越えて回転子ヨーク100の軸線方向及び周方向に延びていて、各リラクタと各リラクタの内側の回転子磁極との間に存在する回転子ヨークの周壁部の肉厚部を径方向に分断するスリット110(図2及び図3参照)が回転子ヨークの周壁部の肉厚部内に設けられ、このスリット110により、回転子磁極P1ないしPmとリラクタr1ないしrn-1との間が磁気的に絶縁される。スリット110は、その軸線方向の一端を回転子ヨーク100の周壁部100aの一方の軸線方向端面に開口させ、軸線方向の他端を回転子ヨークの周壁部100aの他方の軸線方向端面の手前の位置で終端させた状態で設けられる。
【0056】
上記のスリット110は、回転子ヨーク100を回転させながら、回転子ヨークの周壁部100aの端面側から周壁部100aの肉厚部内にエンドミルによりミリング加工を施すことにより形成することができる。またスリット110は、電子ビーム加工により形成することもできる。
【0057】
図示の例では、スリット110が回転子ヨーク100の周壁部100aの周方向の全体に亘って延びるように設けられていて、回転子ヨーク100の軸線方向に測ったスリット110の軸線方向寸法s(図3参照)が、回転子ヨーク100の軸線方向に測った磁極構成体101の軸線方向寸法a及びリラクタr1〜rn-1のそれぞれの軸線方向長さb(<a)よりも長く設定されている。磁石回転子1の磁極構成体101は、その軸線方向(回転子ヨーク100の軸線に沿う方向)の一端及び他端をスリット110の軸線方向の一端及び他端にそれぞれ相応する位置よりも内側に位置させた状態で配置されている。
【0058】
本実施形態では、スリット110と回転子ヨーク100の周壁部100aの内周面との間に存在する周壁部100aの肉厚部の厚みt1を、スリット110と周壁部100aの外周面との間に存在する周壁部の肉厚部の厚みt2よりも厚くするように、スリット110が設けられている。
【0059】
本実施形態ではまた、図4に太線で示されているように、スリット110内に、回転子ヨーク100を構成する材料(鉄)よりも透磁率が低い低透磁率材料からなる充填材111が充填されている。
【0060】
低透磁率材料としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン66等の樹脂や、アルミニュウム等の非磁性金属を用いることができる。
【0061】
本実施形態の磁石式発電機において、図示しないエンジンが回転して磁石回転子1が回転すると、電機子鉄心200の歯部T,T,…に巻回されたコイルW,W,…に交流電圧が誘起し、これらのコイルが三相結線されることにより構成された電機子コイル201から三相交流電圧が出力される。
【0062】
信号発電子3においては、リラクタr1ないしrn-1のそれぞれが磁極部300との対向を開始する際及びリラクタr1ないしrn-1のそれぞれが磁極部300との対向を終了する際に信号コイルと鎖交する磁束に変化が生じる。これらの磁束変化により、各リラクタが磁極部300との対向を開始する際及び各リラクタが磁極部300との対向を終了する際にそれぞれ信号コイルに極性が異なるパルスが誘起する。即ち、信号発電子3は、各リラクタの回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出して極性が異なるパルスを発生する。
【0063】
本実施形態においては、リラクタrn-1とリラクタr1との間の角度間隔が他のリラクタ相互間の角度間隔θよりも大きく設定されているため、図1において磁石回転子1が時計方向に回転するとすると、信号発電子3がリラクタrn-1の前端側エッジを検出してパルスを発生してからリラクタr1の前端側エッジを検出してパルスを発生するまでの時間が、他の隣り合うリラクタの前端側エッジを検出する時間間隔よりも長くなる。このことから、信号発電子3がリラクタr1ないしrn-1をそれぞれ検出した時に発生するパルスを識別することができ、信号発電子3が発生する一連のパルスと磁石回転子1の回転角度位置との対応関係を特定することができる。
【0064】
図5は、本実施形態の磁石式発電機において、回転子磁極から生じる磁束の流れを概略的に示したものである。本実施形態においては、リラクタr1ないしrn-1と各リラクタの内側の回転子磁極との間に存在する回転子ヨーク100の周壁部100aの肉厚部を径方向に分断するスリット110を回転子ヨークの周壁部の肉厚部内に設けたため、リラクタr1ないしrn-1とその内側の回転子磁極との間をスリット110により完全に分断することができる。従って、各リラクタとその内側の回転子磁極との間の磁気抵抗を十分に大きくすることができ、回転子磁極から生じる磁束φrの殆どをスリット110と回転子ヨークの周壁部100aの内周面との間の肉厚部内を通して流すことができる。これにより、図5に示されているように、回転子磁極から生じる磁束φrがリラクタ側に殆ど流れないようにすることができ、信号発電子3が発生するパルスの波形が歪むのを防ぐことができる。
【0065】
上記スリット110の厚み(回転子ヨークの径方向に測った隙間寸法)は、パルス波形の歪みを防ぐ効果を得るために必要な大きさと、スリットの加工性とを勘案して実験的に決定する。
【0066】
本実施形態のように、回転子ヨーク100の軸線方向に測ったスリット110の軸線方向寸法sを、回転子ヨークの軸線方向に測った磁極構成体101の軸線方向寸法aよりも長く設定して、磁極構成体101の軸線方向の一端及び他端をスリットの軸線方向の一端及び他端にそれぞれ相応する位置よりも内側に位置させておくと、回転子磁極から生じた磁束がリラクタ側に流れるのをより効果的に抑制することができる。
【0067】
また本実施形態のように、スリット110と回転子ヨーク100の周壁部100aの内周面との間に存在する周壁部の肉厚部の厚みt1を、スリット110と周壁部100aの外周面との間に存在する周壁部の肉厚部の厚みt2よりも厚くするように、スリット110を設けておくと、スリットと回転子ヨークの周壁部の内周面との間に存在する周壁部の肉厚部の磁気抵抗を、スリットと周壁部の外周面との間に存在する周壁部の肉厚部の磁気抵抗よりも小さくすることができるため、回転子磁極から回転子ヨークの周壁部に流れる磁束の大部分を、リラクタから側路させて流すことができ、回転子磁極からリラクタ側に磁束が殆ど流れないようにして、パルスの波形が歪むのを防ぐことができる。
【0068】
また本実施形態のように、スリット110内に、回転子ヨークを構成する材料よりも透磁率が低い低透磁率材料からなる充填材111を充填しておくと、回転子ヨークの周壁部の肉厚を薄くした場合に、回転子磁極から生じる磁束がリラクタ側に流れるのを抑制する効果を低減させることなく、スリット110により回転子ヨークの機械的強度が低下するのを防ぐことができる。
【0069】
上記の実施形態では、スリット110内に低透磁率材料111を充填したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、回転子ヨークの機械的強度に不安がない場合には、スリット110内に低透磁率材料を充填することなく、スリット110内を空隙のままにしておくようにしてもよい。
【0070】
上記の実施形態のように、スリット110を回転子ヨークの周壁部の全体に亘って延びるように設けると、回転子磁極からリラクタ側に磁束が流れるのを抑制する効果を高めることができるだけでなく、スリットの加工を容易にすることができるが、本発明は、スリット110を回転子ヨークの周壁部の全体に亘って延びるように設ける場合に限定されるものではなく、スリット110を、回転子ヨーク100の周壁部の周方向に並ぶ複数の単位スリットに分割することもできる。この場合は、各単位スリットを、少なくとも一つのリラクタと、該リラクタの内側に設けられている回転子磁極との間に介在させるように設ける。
【0071】
上記のように、スリット110を複数の単位スリットに分割すると、スリットを設けたことにより回転子ヨークの機械的強度が低下するのを防ぐことができる。
【0072】
上記の実施形態では、リラクタr1ないしrn-1を回転子ヨーク100の開口端寄りに設けているため、スリット110を回転子ヨーク100の開口端寄りに設けて、該スリットの一端を回転子ヨーク100の開口端面に開口させているが、リラクタr1ないしrn-1が回転子ヨーク100の底壁部100b寄りの位置に設けられる場合には、スリット110を回転子ヨークの底壁部100b寄りに設けて、該スリットの一端を回転子ヨークの周壁部100aの底壁部100b側の端面に開口させるのが好ましい。
【0073】
上記の実施形態では、回転子ヨークの周壁部の外周にリラクタr1ないしrn-1を設けてリラクタr1とrn-1との間の角度間隔を、他のリラクタ相互間の角度間隔θよりも大きくしているが、図6に示した従来の磁石式発電機と同様に、回転子ヨークの周壁部の外周に等角度間隔でリラクタr1ないしrnを設けて、一つのリラクタrnの極弧角を他のリラクタの極弧角よりも大きくするようにしてもよい。また本発明を適用する磁石式発電機において、リラクタの数は任意であり、例えばリラクタを一つだけ設ける場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 磁石回転子
100 回転子ヨーク
100a 回転子ヨークの周壁部
101 磁極構成部材
110 スリット
111 低透磁率材料
2 固定子
3 信号発電子
P1ないしPm 回転子磁極
r1ないしrn リラクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性体からなるカップ状の回転子ヨークの周壁部の内周に永久磁石からなる磁極構成体が取り付けられて、前記磁極構成体を構成する永久磁石が前記回転子ヨークの径方向に着磁されることにより前記回転子ヨークの周方向に並ぶ所定の極数の回転子磁極が形成され、前記回転子ヨークの周壁部の周方向及び軸線方向にそれぞれ所定の周方向長さ及び軸線方向長さを持って前記周壁部の外周から径方向の外側に突出した少なくとも一つのリラクタが前記周壁部に一体に形成されている磁石回転子と、前記磁石回転子の内側に配置されて前記磁石回転子の回転に伴って交流電圧を発生する固定子と、前記回転子ヨークの周壁部の外側に配置されて前記リラクタを検出してパルスを発生する信号発電子とを備えた磁石式発電機において、
各リラクタが設けられている領域を越えて前記回転子ヨークの軸線方向及び周方向に延びていて、各リラクタと各リラクタの内側の回転子磁極との間に存在する前記回転子ヨークの周壁部の肉厚部を径方向に分断するスリットが前記回転子ヨークの周壁部の肉厚部内に設けられ、
前記スリットは、その軸線方向の一端を前記回転子ヨークの周壁部の一方の軸線方向端面に開口させ、軸線方向の他端を前記回転子ヨークの周壁部の他方の軸線方向端面の手前の位置で終端させた状態で設けられていることを特徴とする磁石式発電機。
【請求項2】
前記回転子ヨークの軸線方向に測った前記スリットの軸線方向寸法は、前記回転子ヨークの軸線方向に測った前記磁極構成体の軸線方向寸法よりも長く設定され、
前記磁極構成体は、その軸線方向の一端及び他端を前記スリットの軸線方向の一端及び他端にそれぞれ相応する位置よりも内側に位置させた状態で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁石式発電機。
【請求項3】
前記スリットと前記回転子ヨークの周壁部の内周面との間に存在する前記周壁部の肉厚部の厚みを、前記スリットと前記周壁部の外周面との間に存在する前記周壁部の肉厚部の厚みよりも厚くするように、前記スリットが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の磁石式発電機。
【請求項4】
前記スリットは前記回転子ヨークの周壁部の周方向の全体に亘って延びるように設けられている請求項1,2または3に記載の磁石式発電機。
【請求項5】
前記スリットは、前記回転子ヨークの周壁部の周方向に並ぶ複数の単位スリットに分割されていて、各単位スリットが少なくとも一つのリラクタと、該リラクタの内側に設けられている回転子磁極との間に介在していることを特徴とする請求項1,2または3に記載の磁石式発電機。
【請求項6】
前記スリット内に、前記回転子ヨークを構成する材料よりも透磁率が低い低透磁率材料からなる充填材が充填されていることを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載の磁石式発電機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−165530(P2012−165530A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23062(P2011−23062)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】