説明

磁電変換素子及びこれを備える電流検出装置

【課題】コストを低減した磁電変換素子および電流検出装置を提供する。
【解決手段】本発明は、磁性体コア21で生じる磁束を検出する磁電変換素子31およびこれを備えた電流検出装置10に関するものである。磁電変換素子31には、外部機器と電気的に接続される雄端子部41を有するリード端子40が接続される。また、磁電変換素子31は、リード端子40に搭載される電子部品44と、リード端子40を保持する保持部材50と、を備える。雄端子部41はリード端子40を加工することにより形成されているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁電変換素子及びこれを備える電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される電気接続箱には、電流検出装置が取り付けられる場合がある。一般的な電流検出装置は、電流検出対象となるバスバーと、バスバーを挿通可能なリング状の磁性体コアと、磁性体コアのギャップ部に配されて磁界の強さを検出する磁電変換素子とを備える(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の電流検出装置は、磁電変換素子と外部機器とを電気的に接続するための端子部(ターミナルピン)と、磁電変換素子に接続されるリード線と、リード線に接続され静電気破壊防止用コンデンサなどの電子部品が搭載される板状のバスバーと、を備える[特許文献1の図2および図3(b)を参照]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−42003号公報(第5−7頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成のものでは、外部機器と磁電変換素子の接続のための部品として、リード線、バスバー、およびターミナルピンが必要であるうえに、これらの部品を接続する作業に手間がかかり、コスト高であるという問題があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コストを低減した磁電変換素子および電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するものとして、本発明は、磁性体コアで生じる磁束を検出する磁電変換素子であって、外部機器と電気的に接続される雄端子部を有するリード端子が接続されるとともに、前記リード端子に搭載される電子部品と、前記リード端子を保持する保持部材と、を備えることを特徴とする磁電変換素子である。
【0007】
また、本発明は、磁性体コアと、前記磁電変換素子と、を備える電流検出装置である。
【0008】
本発明の電流検出装置は、例えば、以下のような方法により組み立てられる。リード端子の雄端子部とは反対側の端部に磁電変換素子を接続した後、リード端子の雄端子部と磁電変換素子との間の部分を保持部材により保持し、電子部品を取り付けて本発明の磁電変換素子を作製する。このようにして得られた磁電変換素子を磁性体コアのギャップ部に配置すると本発明の電流検出装置が得られる。
【0009】
従って、本発明においては、磁電変換素子と外部機器とを接続する際に、雄端子部を有するリード端子を接続すれば足りるから、磁電変換素子と外部機器とを接続するための部品の点数を減らすことができ、これにより部品を接続する作業を省略することができる。その結果、本発明によればコストを低減することができる。また、本発明によれば、リード端子は保持部材により保持されているので、電流検出装置を組み立てる際にリード端子が曲がるなどの問題も生じ難い。
【0010】
本発明は以下の構成としてもよい。
前記雄端子部は、前記リード端子を加工することにより形成されていてもよい。このような構成とすると、磁電変換素子と外部機器とを電気的に接続するための部品は1つだけでよいので、確実に部品点数を減らし接続作業を簡略化できる。 前記保持部材は、前記リード端子を嵌め込んで保持する端子保持部を有していてもよい。このような構成とすると、リード端子と保持部材との固定が容易となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コストを低減した磁電変換素子および電流検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1の電流検出装置の一部断面図
【図2】電流検出装置の斜視図
【図3】実施形態1の電流検出装置に取り付けた磁電変換素子を模式的に示す模式図
【図4】リード端子の模式図
【図5】図4のリード端子に磁電変換素子と保持部材を取り付けた様子を示す模式図
【図6】図5のリード端子から不要な部分をカットした後の状態を模式的に示す模式図
【図7】実施形態2の電流検出装置の斜視図
【図8】実施形態2の電流検出装置に取り付けた磁電変換素子を模式的に示す模式図
【図9】他の実施形態で説明する磁電変換素子の模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6によって説明する。上下方向については図1を基準とする。
本実施形態の電流検出装置10は、図1に示すように、電気接続箱のケース15に収容されている。電流検出装置10は、磁性体コア21を収容してなるコアユニット20と、磁電変換素子31を収容してなる電子ユニット30と、を備える。
【0014】
コアユニット20は磁性体コア21と磁性体コア21を収容するハウジング25とを備える。ハウジング25の上面と図1に示す右側側面からは、銅などの導電性材料からなるバスバー11が突出している。
【0015】
バスバー11はハウジング25の側面から突出し、ケース15の底面に対して略平行に配されたバスバー本体部12と、バスバー本体部12から略垂直に立ち上げられた起立部14とを有し、略L字状をなしている。バスバー本体部12はケース15の底面に設けた台16に載置されている。バスバー11の起立部14の上端には、バッテリやインバータなどの他の部材(図示せず)と接続される端子部13が設けられている。
【0016】
磁性体コア21を収容するハウジング25の上面には、磁性体コア21のギャップ部22の直上に相当する位置に、磁電変換素子31を収容する素子収容部36(後述する)が嵌まり込んで位置決めされる素子収容孔26が形成されている。
【0017】
磁性体コア21は、詳細は図示しないが、略C字状をなしており、磁束を検出する磁電変換素子31が配置されるギャップ部22と、バスバー11が挿通されるバスバー挿通部23とが設けられている。
【0018】
次に、電子ユニット30について説明する。電子ユニット30は、磁性体コア21のギャップ部22に配置されて磁性体コア21で生じる磁束を検出する磁電変換素子31と、磁電変換素子31と外部機器(図示せず)に接続されるリード端子40と、リード端子40を保持する保持部材50と、これらを収容する収容ケース32とを備える。なお、電子ユニット30はコアユニット20に重なり合って配されており、コアユニット20の投影面積の範囲内に配置されている。
【0019】
収容ケース32は、図2に示すように、上下方向に大きさの相違する直方体が連なった筒状の形状をなしている。収容ケース32の上側の略直方体部分33は、リード端子40が収容される端子収容部33であり、下側の略直方体部分36は、磁電変換素子31を収容・保護するとともに磁性体コア21のギャップ部22に案内する素子収容部36である。素子収容部36は筒状をなして磁電変換素子31を覆うように形成されている。
【0020】
端子収容部33は、上下方向に分割可能となっている。詳しくは、端子収容部33はリード端子40の雄端子部41が配置される部分35(雄ハウジング35)と、保持部材50が収容される保持部材収容部37とに分割可能となっている。なお、保持部材収容部37は下側に設けられている素子収容部36と連なっている。
【0021】
雄ハウジング35の上部には、図2に示すように、雄ハウジング35と結合して外部機器と磁電変換素子31とを電気的に接続するコネクタ部材38が着脱可能とされる。コネクタ部材38の上面からは外部機器と接続される電線39が導出されている。
【0022】
雄ハウジング35の下側には保持部材50が連なっている(図3、図5、および図6を参照)。保持部材50は、図1および図3に示すように全体として平板状をなしており、リード端子40の上端40Aからリード端子40に取り付けられた磁電変換素子31に至る部分を保持可能に配されている。保持部材50の材料としては、樹脂製の板材または基板が用いられる。保持部材50には、図3に示すように、その長手方向に沿って、3本のリード端子40,40,40が突起状の保持部に嵌め込まれて保持されており、リード端子40の上には隣り合う端子40をまたぐように電子部品44が搭載されている。
保持部材50には、電子部品44が配置されるところ、ならびにリード端子40の磁電変換素子31と接続される部分40Bの近傍に、方形状のカット孔51が設けられている。保持部材50にカット孔51を設けることにより、並列する3本のリード端子40,40,40間における導通を防止している。なお、電子部品44としては、静電気破壊防止用コンデンサ等、必要に応じて任意の部品を用いることができる。
【0023】
さて、リード端子40の上端部40Aには、雄端子部41が設けられている。この雄端子部41は、コネクタ部材38により、外部機器と電気的に接続される。リード端子40の下端部40Bは磁電変換素子31に接続される。本実施形態では、図3および図4に示すように、リード端子40の電子部品44が配置される部分42よりも下側のところにくびれた部分(くびれ部43)が形成されている。また、リード端子40のくびれ部43よりも下側の部分は、3本のリード端子40の間隔が近づくように形成されている。
【0024】
次に、本実施形態の磁電変換素子31の作製方法について説明する。導電性の金属板から、所定形状のリード端子40を切り出して、プレス加工等を施すことにより図4に示す形状のものを作製する。具体的には、リード端子40の上端部40Aには雄端子形状の雄端子部41を形成し、電子部品44が配置される部分42では隣り合う2本のリード端子40が連なるように形成する。
【0025】
次に、リード端子40の下端部40Bと磁電変換素子31の内部にある磁気感応素子27とを接続し、モールド成形により一体化する。磁電変換素子31を接続したリード端子40の雄端子部41を、図5に示すように、雄ハウジング35に圧入し、リード端子40を保持部材50に設けた突起状の端子保持部52に嵌め込んで固定する。このとき、リード端子40の電子部品44が配置される部分42が保持部材50のカット孔51に重なるように配置する。
【0026】
次に、リード端子40の不要部分をカットする。具体的には、図6に示すように、隣り合う2本のリード端子40が連なっている部分45を、保持部材50のカット孔51に沿ってカットする。
【0027】
次に、電子部品44を保持部材50のカット孔51と重なるように配置して半田付けにより、リード端子40に接続すると、図3に示すような、本実施形態の磁電変換素子31が得られる。このようにして作製した本実施形態の磁電変換素子31を収容ケース32に収容すると電子ユニット30が得られる。
【0028】
次に、本実施形態の電流検出装置10の組立方法について説明する。
まず、導電性の金属板から、所定形状のバスバー11を切り出して曲げ加工などを施し、磁性体コア21のバスバー挿通部23に挿通させる。バスバー11を挿通させた状態の磁性体コア21とハウジング25とを、モールド成形により一体化することでコアユニット20が得られる。このようにして作製したコアユニット20を電気接続箱のケース15の所定位置に取り付ける。
【0029】
次に電子ユニット30をコアユニット20に組み付ける。電子ユニット30の素子収容部36をコアユニット20のハウジング25に設けた素子収容孔26に差し込んで挿入すると、磁電変換素子31は素子収容部36を介して磁性体コア21のギャップ部22に案内される。素子収容部36が所定位置まで挿入されると、すなわち、素子収容部36に収容されている磁電変換素子31がギャップ部22に配置される位置まで挿入されると、素子収容部36が素子収容孔26に嵌まり込んで位置決めされる。
【0030】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、磁電変換素子31と外部機器とを接続するための接続部品として、雄端子部41を有するリード端子40を接続すれば足りるから、磁電変換素子31と外部機器とを接続するための部品点数を減らすことができ、これにより部品を接続する作業を省略することができる。その結果、本実施形態によればコストを低減することができる。特に、本実施形態によれば、雄端子部41は、リード端子40を加工することにより形成されているから、磁電変換素子31と外部機器とを電気的に接続するための部品は1つだけでよいので、確実に部品点数を減らし接続作業を簡略化できる。
【0031】
また、本実施形態によれば、リード端子40は全域にわたって保持部材50により保持されているので、電流検出装置10を組み立てる際にリード端子40が曲がるなどの問題も生じ難い。
【0032】
また、本実施形態によれば、保持部材50は、リード端子40を嵌め込んで保持する端子保持部52を有しているから、リード端子40と保持部材50との固定が容易となる。
【0033】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図7および図8によって説明する。上下方向については図7を基準とする。
本実施形態は、雄端子部61が別体であるという点で実施形態1と相違する(図8を参照)。上記実施形態1と同様の構成部位については同一符号を付して重複する記載は省略する。
【0034】
本実施形態において、リード端子60は、扁平面状に加工された部分60Aとその部分60Aに重ねて接続された別体の雄端子部61とからなる。
本実施形態において、収容ケース82の端子収容部83は、図7に示すように、上下方向に分割しない一体的な構成である。従って本実施形態によれば、収容ケース82に磁電変換素子31とリード端子60を収容する作業は容易である。
なお、その他の構成や作用効果は実施形態1と概ね同様である。
【0035】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1では、リード端子の電子部品44が配置される部分よりも下側のところがくびれたものを示したが、リード端子40の形状はこれに限定されない。図9に示すように、雄端子部41のすぐ下側のところがくびれているものであってもよい。
(2)上記実施形態では、平板状をなしており、リード端子40の上端からリード端子40に取り付けられた磁電変換素子31に至る部分を保持可能に配される保持部材50を備えるものを示したが、保持部材50の形状はこれに限定されない。保持部材70は、図9に示すように、磁電変換素子31の配置されている部分を保持しないものであってもよい。
(3)上記実施形態では、突起状の端子保持部を52を備える保持部材50を示したが、端子保持部52の形状は突起状でなくてもよい。また、図9に示すように、リード端子40が嵌め込まれる端子保持部52を有していない保持部材70であってもよい。この場合、別の保持手段が設けられるかあるいはリード端子40と保持部材70とが接着剤などにより接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10…電流検出装置
21…磁性体コア
22…ギャップ部
31…磁電変換素子
32…収容ケース
33…端子収容部
35…雄ハウジング
36…素子収容部
37…保持部材収容部
38…コネクタ部材
39…電線
40…リード端子
41…雄端子部
44…電子部品
50…保持部材
60…リード端子
61…雄端子部
70…保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体コアで生じる磁束を検出する磁電変換素子であって、
外部機器と電気的に接続される雄端子部を有するリード端子が接続されるとともに、
前記リード端子に搭載される電子部品と、前記リード端子を保持する保持部材と、を備えることを特徴とする磁電変換素子。
【請求項2】
前記雄端子部は、前記リード端子を加工することにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁電変換素子。
【請求項3】
前記保持部材は、前記リード端子を嵌め込んで保持する端子保持部を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁電変換素子。
【請求項4】
磁性体コアと、前記請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の磁電変換素子と、を備える電流検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−185768(P2011−185768A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51758(P2010−51758)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】