示差屈折率計
【課題】 ブライス型示差屈折率計において、アパーチャの幅を必要以上に狭めることなく、かつフローセルの断面積を必要以上に大きくしない条件で、幅広い屈折率の溶媒に対応可能な示差屈折率計を提供すること。
【解決の手段】 ブライス型示差屈折率計のうち、アパーチャ及び/またはフローセルを、溶媒の屈折率に応じて、フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に回転させることで、前記課題を解決することができた。
【解決の手段】 ブライス型示差屈折率計のうち、アパーチャ及び/またはフローセルを、溶媒の屈折率に応じて、フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に回転させることで、前記課題を解決することができた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液体クロマトグラフ等に用い、屈折率の変化に基づき物質濃度を測定する示差屈折率計に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの物質は溶媒に溶け込むと、溶媒の屈折率が変化する。そのため、液体クロマトグラフではカラムから溶出される成分の汎用的な検出器として、溶媒(参照液という)と、成分が溶けた溶媒(試料液という)の屈折率の差を測定する示差屈折率計がよく用いられる。示差屈折率計としては屈折率による反射光強度の変化を検出するフレネル型示差屈折率計と屈折角の変化を検出するブライス型示差屈折率計がよく知られている。
【0003】
ブライス型示差屈折率計では、石英ガラスなどの透明体の内部に光軸に対して傾いた斜板で仕切られた二本の直角三角形断面をもつ液体流路を形成したフローセルに、試料液と、参照液を流通させた状態で、フローセルに概ね平行光線を照射し、該平行光線の進行方向の角度変化の大きさから、試料成分によって生じた屈折率の差を求めることができる。ブライス型示差屈折率計には、フローセルへの光通過のさせ方により、1回通過させるシングルパス方式と、2回通過させるダブルパス方式(特許文献1)がある。
【0004】
従来からある、シングルパス方式のブライス型示差屈折率計(100)を図1に示す。図1のうち、aは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率が等しいときの平行光線を模式的に示す平面図(上から見た図、以下同じ)、bは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率に差があるときの平行光線を模式的に示す平面図、cは各構成要素の配置の正面図(前から見た図、以下同じ)である。シングルパス方式のブライス型示差屈折計は光源(110)と位置検出光センサ(150)がフローセル(140)を挟んだ位置に配置され、かつ光源(110)、アパーチャ(130)、フローセル(140)、位置検出光センサ(105)が概ね直線状に配置される。ここで通常、位置検出光センサ(150)は複数の分割された受光面を有するセンサを用いる。
【0005】
図1の示差屈折計(100)において、試料液と参照液の屈折率が等しい時には平行光線を位置検出光センサ(150)の中央に当てるように各構成要素の位置や角度を調整することは比較的容易である。しかし、フローセル(140)を構成する材料の屈折率とフローセルに流れる溶媒との屈折率とが異なると、フローセル(140)に入射した平行光線はフローセル(140)を通過した後、入射平行光線に対して平行移動する。このことにより、位置検出光センサ(150)上の照射位置がシフトし、照射位置が位置検出光センサ(150)の中央から外れてしまう。また、圧力や温度の変動により溶媒の屈折率が変化し、試料液と参照液の屈折率が同じだけ変化した時でも位置検出光センサ(150)の照射位置がシフトするため、ポンプの脈動の影響や温度変動の影響が大きく出てしまう。そのため、照射位置のシフトの影響を除くことを目的とした、示差屈折率計の改良が行なわれた(特願2008−136382号)。
【0006】
改良されたシングルパス方式のブライス型示差屈折率計(200)の一例を図2に示す。図2のうち、aは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率が等しいときの平行光線を示す平面図、bは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率に差があるときの平行光線を示す平面図、cは各構成要素の配置の正面図である。光源(210)、フローセル(240)、アパーチャ(230)、位置検出光センサ(250)が概ね直線状に配置されている。フローセル(240)は、図2に示すように同じ断面積を有した中空部を2つ(241、242)有しており、光源側の中空部(242)に試料液を流し、位置検出光センサ側の中空部(241)に参照液を流す。アパーチャ(230)は図示していないフローセルホルダの位置検出光センサ側に固定し、フローセル(240)を流れる液体の流路の壁に触れずに試料液と参照液を透過した光だけを通過させるようにする。
【0007】
図2の示差屈折率計を用いることで、図1に示す従来の示差屈折率計と比較し、圧力や温度が変化したときの出力信号の変化を小さくすることができた。一方、フローセルを流れる溶媒の屈折率がフローセルを構成する材料の屈折率と大きく異なる場合は、光源側の流路を通過する光と位置検出光センサ側の流路を通過する光がシフトするため、幅広い屈折率の溶媒に対応するためには、アパーチャを通過する光が常にフローセルを流れる液体の流路の壁に触れずに試料液と参照液を透過するよう、フローセル中の少なくともアパーチャから遠い側の流路面積を広くする必要がある。しかしながら、流路面積を広くするとフローセルの容積が大きくなり、フローセルによる試料成分の広がりが大きくなる問題点があった。
【0008】
改良されたシングルパス方式のブライス型示差屈折率計(300)の別の一例を図3に示す。図3のうち、aは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率が等しいときの平行光線を示す平面図、bは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率に差があるときの平行光線を示す平面図、cは各構成要素の配置の正面図である。図2に示す示差屈折率計との違いは、フローセル(340)の形状であり、光源側に面した参照液を流すための中空部(341)の断面積が、位置検出光センサ側に面した試料液を流すための中空部(342)の断面積よりも大きくなっている。
【0009】
図3の示差屈折率計を用いることで、フローセルによる試料成分の広がりを抑え、かつフローセルを流れる溶媒の屈折率がフローセルを構成する材料の屈折率と大きく異なる場合でも圧力や温度が変化したときの出力信号の変化を小さくすることができた。しかしながら、中空部の断面積が異なるフローセルを作製するのは、中空部の断面積が等しい従来のフローセルと比較し困難である。また、中空部の断面積が異なると試料液と参照液との配管抵抗及び液体の流れのバランスがとれないという問題もあった。
【0010】
さらに、図2及び3の示差屈折率計を用いたときの共通の問題として、幅広い屈折率の溶媒に対応するためにフローセル中空部の断面積を大きくすると液体のよどみが発生しやすく、液体の置換に時間がかかるという問題があり、また、前記問題を解決するためにフローセルの断面積を変えずにアパーチャの幅を狭めると、アパーチャの幅に比例してフローセルを通過した透過光の量が減少し、ノイズが増えてしまう問題が新たに生じる。
【0011】
従来からある、ダブルパス方式のブライス型示差屈折率計(400)を図4に示す。図4のうち、aは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率が等しいときの平行光線を模式的に示す平面図、bは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率に差があるときの平行光線を模式的に示す平面図、cは各構成要素の配置の正面図である。ダブルパス方式のブライス型示差屈折率計は、光源(410)と位置検出光センサ(450)がフローセル(440)に対して同じ側に配置され、光源(410)から出た平行光線は1度フローセル(440)を通過した後、ミラー(460)で反射され、再度フローセル(440)を通過した光を、位置検出光センサ(450)に当てて検出する。
【0012】
図4の示差屈折率計(400)において、上から見た場合、試料液と参照液の屈折率が等しければ(図4a)、平行光線は往復で概ね同じ経路を通過する。したがって、圧力や温度の変動により溶媒の屈折率が変化し、試料液と参照液の屈折率が同じだけ変化した時でも位置検出光センサ(450)の照射位置が変化しないため、ポンプの脈動の影響や温度変動の影響が小さくなる。しかし図4cに示すように、光源(410)と位置検出光センサ(450)が上下に配置されるため、試料液と参照液との屈折率が等しい時に平行光線を位置検出光センサ(450)の中央に当てるように各構成要素の位置や角度を調整することは、シングルパス方式と比較し煩雑な作業を要する。
【0013】
【特許文献1】特開平3−218442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ブライス型示差屈折率計において、アパーチャの幅を必要以上に狭めることなく、かつフローセルの断面積を必要以上に大きくしない条件で、幅広い屈折率の溶媒に対応可能な示差屈折率計を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の発明を包含する。
【0016】
第一の発明は、概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを通過した透過光の偏向を検出するための位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置を含む、ブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させる、回転手段を設置していることを特徴とする、示差屈折率計である。
【0017】
第二の発明は、概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを透過した光の偏向を検出するためにフローセルと離して設けられる位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置から構成され、前記光源部と前記フローセルと前記位置検出光センサが当該順序で概ね直線的に配置されたブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの位置検出光センサ側の液体流路形状を投影した平行光線の範囲より小さい開口部を有した前記アパーチャを、前記フローセルの位置検出光センサ側に、フローセルに近接して設置し、
さらに、前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させる、回転手段を設置していることを特徴とする、示差屈折率計である。
【0018】
第三の発明は、前記回転手段における、前記フローセルのみを回転させる、または前記アパーチャ及び前記フローセルを回転させる軸の中心が前記アパーチャ面内にあることを特徴とする、第一または第二の発明に記載の示差屈折率計である。
【0019】
第四の発明は、前記回転手段が、前記アパーチャ及び前記フローセルを同一の回転軸で同一の方向に同時回転させる手段であることを特徴とする、第一から第三の発明に記載の示差屈折率計である。
【0020】
第五の発明は、概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを通過した透過光の偏向を検出するための位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置を含む、ブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させることを特徴とする、示差屈折率計である。
【0021】
第六の発明は、概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを透過した光の偏向を検出するためにフローセルと離して設けられる位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置から構成され、前記光源部と前記フローセルと前記位置検出光センサが当該順序で概ね直線的に配置されたブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの位置検出光センサ側の液体流路形状を投影した平行光線の範囲より小さい開口部を有した前記アパーチャを、前記フローセルの位置検出光センサ側に、フローセルに近接して設置し、
さらに、前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させることを特徴とする、示差屈折率計である。
【0022】
第七の発明は、前記フローセルのみを回転させる、または前記アパーチャ及び前記フローセルを回転させる軸の中心が前記アパーチャ面内にあることを特徴とする、第五または第六の発明に記載の示差屈折率計である。
【0023】
第八の発明は、前記アパーチャ及び前記フローセルを同一の回転軸で同一の方向に同時回転させることを特徴とする、第五から第七の発明に記載の示差屈折率計である。
【0024】
第九の発明は、前記フローセルの有する二つの中空部の断面積が等しいことを特徴とする、第一から第八の発明に記載の示差屈折率計である。
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明の示差屈折率計で用いる光源としては、タングステンランプ、ハロゲン封入タングステンランプ、発光ダイオードといった点光源、またはレーザー光源を例示できる。なお、レーザー光源としては小型が容易な半導体レーザーが好ましい。
【0027】
示差屈折率計において、フローセルを透過させる光は概ね平行光である必要がある。指向性の良いレーザー光源を使用するときはそのままでも良いが、点光源を使用するときは、前記光源からでた光を平行光に変換させる必要がある。平行光への変換方法としては、以下の方法が例示できる。
(1)レンズ付ランプやレンズ付発光ダイオードを用いる方法。
(2)輝度の高い光源と適正に選択されたレンズを組み合わせる方法。
(3)光源から十分離れた位置にフローセルを設置する方法。
【0028】
このうち、本発明の示差屈折率計における平行光への変換方法としては、良質な平行光が得られる(2)の方式が最も好ましい。さらに、レンズの口径はレンズの有効径がアパーチャの透過部をカバーするように選択し、光源が発した光を有効に利用するためにレンズと光源との距離を近づけ有効立体角を広げることが好ましく、レンズは球面収差を抑えるために非球面レンズからなるコリメータレンズ、あるいはアクロマティックレンズに代表される貼合せレンズを使うことができる。
【0029】
なお、タングステンランプなどフィラメントを使っている光源を使用する場合は、フィラメントの形状と見る方向により、発光部は点、線または面に見える。そのため、前記光源から平行光に変換させるには、点に見える方向に光を取り出してレンズを通して平行光に変換するか、線に見える方向に光を取り出してレンズを通し、光の進行方向とフローセルの高さ方向に直交する方向によって作られる面上で平行光になるように変換すればよい。
【0030】
平行光線断面内の光強度分布は、少なくともフローセルを流れる液体の流路の幅方向で概ね均一であればよい。また、光強度分布の均一性を改善するために、ビーム変換レンズを使ったり、平行光線の強度分布と逆の空間分布を示す吸収特性をもたせたフィルタなどを使うこともできる。
【0031】
本発明の示差屈折率計は、フローセルに流れる溶媒の屈折率に応じて、アパーチャを通過する、または通過した光が、フローセルの有する各中空部の内側を通過するように、アパーチャ及び/またはフローセルをフローセルの高さ方向に平行な軸を中心に回転させることを特徴としている。
【0032】
本発明はアパーチャをフローセルの光源側に設置した従来のブライス型示差屈折率計(図1及び4)、及びアパーチャをフローセルの位置検出光センサ側にフローセルに近接して設置した、特願2008−136382号で開示の改良されたシングルパス方式のブライス型示差屈折率計(図2及び3)、いずれに対しても採用することができるが、ダブルパス方式のブライス型示差屈折率計(図4)、または圧力や温度が変化したときの出力信号の変化が少ない改良されたシングルパス方式のブライス型示差屈折率計(図2及び3)に対して本発明を採用するのが好ましい。
【0033】
本発明の示差屈折率計では、アパーチャを固定してフローセルのみを回転させてもよいし、フローセルを固定してアパーチャのみを回転させてもよいし、アパーチャ及びフローセルを回転させてもよい。また、アパーチャ及びフローセルを回転させる方法としては、フローセルが回転する回転軸に対して直交する面上でアパーチャを直線方向または円周方向に移動させることで、フローセルを通過した透過光の中央にアパーチャを移動させる方法、アパーチャ及びフローセルを同一の回転軸で同一の方向に同時回転させる方法が例示できるが、後者の回転方法がフローセルに近接してアパーチャを設置できる点で好ましい。
【0034】
本発明の示差屈折率計におけるアパーチャ及び/またはフローセルを回転させる軸は、アパーチャまたはフローセルの近くを通過し、フローセルの高さ方向を向いておればよく、アパーチャ面内であってもよいし、フローセル内部であってもよいし、フローセルの入射面または出射面内であってもよい。
【0035】
本発明の示差屈折率計の一態様を図5に示す。図5ではアパーチャ(530)をフローセル(540)の位置検出光センサ側に、フローセルに近接した位置に固定して設置しており、回転軸(570)はフローセルの概ね中心を通っている。前記回転軸を中心にフローセル(540)を回転させ、フローセルの光源側の中空部(541)に参照液を、位置検出光センサ側の中空部(542)に試料液をそれぞれ流す。フローセルを構成する材料の屈折率がフローセルに流れる溶媒の屈折率よりも大きいときは、フローセルを構成する材料とフローセルに流れる溶媒との屈折率が等しいときのフローセルの位置(図5a)から反時計回りにフローセル(540)を回転させ(図5b)、フローセルを構成する材料の屈折率がフローセルに流れる溶媒の屈折率よりも小さいときは、フローセル(540)を逆に時計回りに回転させることで(図5c)、幅広い屈折率の溶媒に対応可能となる。なお、逆にフローセル(540)を固定し、アパーチャ(530)を、フローセルの概ね中心を通っている回転軸(570)を中心に回転させても概ね同様の効果が得られる。
【0036】
本発明の示差屈折率計の別の態様を図6に示す。図5との違いは、回転軸(670)がフローセルの出射面中心を通っていることである。図5のときと同様、フローセルを構成する材料の屈折率がフローセルに流れる溶媒の屈折率よりも大きいときは、フローセルを構成する材料とフローセルに流れる溶媒との屈折率が等しいときのフローセルの位置(図6a)から反時計回りにフローセル(640)を回転させ(図6b)、フローセルを構成する材料の屈折率がフローセルに流れる溶媒の屈折率よりも小さいときは、フローセル(640)を逆に時計回りに回転させることで(図6c)、幅広い屈折率の溶媒に対応可能となる。図6は図5と比較し、同じ角度回転させたときの、フローセル出射面における光軸方向の移動量が小さくなるため、アパーチャ(630)とフローセル(640)との間隔を図5よりも狭くすることができる。
【0037】
本発明の示差屈折率計の好ましい態様を図7に示す。図5との違いは、回転軸(770)がアパーチャ(730)の有するスリット(731)中心を通っていること、及びアパーチャ(730)及びフローセル(740)を同時に回転させていることである。図5と同様、フローセルを構成する材料の屈折率がフローセルに流れる溶媒の屈折率よりも大きいときは、フローセルを構成する材料とフローセルに流れる溶媒との屈折率が等しいときのフローセルの位置(図7a)から反時計回りにアパーチャ(730)及びフローセル(740)を回転させ(図7b)、フローセルを構成する材料の屈折率がフローセルに流れる溶媒の屈折率よりも小さいときは、アパーチャ(730)及びフローセル(740)を逆に時計回りに回転させることで(図7c)、幅広い屈折率の溶媒に対応可能となる。図7はアパーチャ(730)及びフローセル(740)を同一の回転軸で同一の方向に同時回転させるため、図5及び6と比較しアパーチャとフローセルとの間隔を狭くすることができる。
【0038】
本発明の示差屈折率計で設置する回転手段の一態様を図8に示す。パルスモータ(880)を用いて、回転板(890)上にあるフローセル(840)を、前記フローセル(840)の中心を回転軸(870)として回転させている。アパーチャ(830)はフローセルの位置検出光センサ側に固定して設置している。そして、フローセルが流れる溶媒の屈折率に応じて、図5に示すようにフローセル(840)を回転させることで、幅広い屈折率の溶媒に対応可能となる。
【0039】
本発明の示差屈折率計で設置する回転手段の好ましい態様を図9に示す。パルスモータ(980)を用いて、回転板(990)上にあるアパーチャ(930)及びフローセル(940)を、前記アパーチャ(930)の有するスリット(931)中心を回転軸(970)として回転させている。そして、フローセルが流れる溶媒の屈折率に応じて、図7のようにアパーチャ(930)及びフローセル(940)を回転させることで、幅広い屈折率の溶媒に対応可能となる。なお、図9の回転手段(900)は、図8と比較しアパーチャとフローセルとの間隔を狭くすることができる。
【0040】
本発明の示差屈折率計で用いるフローセルの一態様として、図10に示す、試料液と参照液をそれぞれ通過させるための、断面が同一の直角二等辺三角形からなる一対の中空部(1041、1042)をもつフローセル(1040)をあげることができる。フローセルの材質は光の透過性と液体に対する耐蝕性を考慮して選択すればよいが、多くの場合、透明な石英ガラスが好ましい。また、光が通過する部分以外の全て、あるいは一部を黒色石英ガラスといった不透明体材料で作ることもできる。なお、屈折率の差に対する平行光の角度変化を大きくするために、中空部の断面が直角不等辺三角形である、図11に示すフローセル(1140)にしても良い。
【0041】
フローセルの別の態様として、図12に示すフローセル(1240)のように中空部の断面が三角形の一部を切り取った形状(1241、1242)にすることもできる。
【0042】
フローセルのさらに別の態様として、図13に示す、試料液に溶解した目的成分の広がりを防ぐために、試料を流す中空部(1342)の断面積を参照液を流す中空部(1341)の断面積より小さくしたフローセル(1340)もあげることができる。図13のフローセルの場合は、アパーチャに近い側の中空部を小さくし、そこに試料液を流すのが好ましい。
【0043】
なお、図10から13のフローセルの有する2つの中空部の配置は、図14のように2つの中空部(1441、1442)の中心がフローセルの幅方向に一致するように配置してもよいし、図15及び16のように2つの中空部(1541、1542、1641、1642)の中心をフローセルの幅方向にずらして配置しても良い。
【0044】
本発明の示差屈折率計で用いるフローセルでは、フローセルの有する中空部の底辺を短くすると、回転角度を固定した時に使用可能な溶媒の屈折率範囲が狭くなり、底辺を長くすると、回転角度を固定した時に使用可能な溶媒の屈折率範囲が広くなる。一方、フローセルの有する中空部を仕切る斜板の厚さを薄くすると、回転角度を固定した時に使用可能な溶媒の屈折率範囲が狭くなり、斜板を厚くすると、回転角度を固定した時に使用可能な溶媒の屈折率範囲が広くなる。
【0045】
本発明の示差屈折率計で用いるアパーチャの形状は、正方形、円形、長方形、長円から選択することができるが、長方形、長円といったフローセルの流路の形状に合わせた形が好ましい。また、上記アパーチャの外に、追加のアパーチャを設けることによって、適宜不要な光を遮断することができる。
【0046】
本発明の示差屈折率計における位置検出光センサの一態様として、複数の分割された受光面からなるセンサがあげられる。前記センサの一例として、受光面が左右に2分割されたフォトダイオードからなる位置検出光センサ(1750)を図17に示す。図17のうち、aは試料液と参照液の屈折率が等しいときのフローセルを通過した透過光線の照射位置(1753)とセンサ(1750)との位置関係、bは試料液と参照液の屈折率に差があるときの透過光線の照射位置(1753)とセンサ(1750)との位置関係をそれぞれ示した図である。図17において縦横に2×2分割された受光面を有するフォトダイオードを使う場合には、縦の2つの受光面を並列接続して1つの受光面(1751)として使うことにより2分割フォトダイオードとして使用することができる。なお、位置検出光センサについては図17に示した、左右に2分割されたフォトダイオード及び2×2分割されたフォトダイオードの代わりに、さらに細かく分割されたフォトダイオードや1次元CCDセンサ、及び1次元CMOSセンサといった受光素子を用いることができる。
【0047】
本発明の示差屈折率計における位置検出光センサの別の態様として、特願2008−202607号で開示の、受光面が分割されていない位置検出素子をあげることができる。
【0048】
位置検出素子には、入射した光の位置を線で検出する1次元位置検出素子と、面で検出する2次元位置検出素子とがあるが、いずれの位置検出素子も本発明の示差屈折率計における位置検出光センサとして用いることができる。また、いずれの位置検出素子も、様々な受光面積、及び感度波長範囲を有した素子がある(例えば、浜松ホトニクス社カタログ参照)ため、使用する光源、及びフローセルを通過した透過光の移動量に応じて適切な位置検出素子を選択することができる。さらに、2次元位置検出素子として、位置検出型光電子増倍管(例えば、浜松ホトニクス社製R3292)を本発明の示差屈折率計における位置検出光センサとして採用してもよい。
【0049】
本発明の示差屈折率計のうち、フローセルのみを回転させるときのように、アパーチャがフローセルを通過した透過光に対して常に直交する場合は、透過光の強度がほとんど変化しないため、各受光面に生じる光電流を電流電圧変換回路等を用いて電圧信号に変換した後、差回路を使うことによって、出力として示差屈折率に比例した信号を得ることができる。
【0050】
一方、アパーチャ及びフローセルを同一の回転軸で同一の方向に同時回転させるときのように、アパーチャとフローセルを通過した透過光との角度の変化に伴い、透過光の強度も変化する場合は、差回路と和回路を使って各受光面の差信号と和信号を求め、さらに割算回路を使って差信号を和信号で割ることによって、出力として示差屈折率に比例した信号を得ることができる。なお、光強度が時間や周辺温度、回転角度などによって変化する場合も同様な方法で示差屈折率に比例した信号を得ることができる。
【0051】
なお、示差屈折率信号を得る際は、示差屈折率信号に混入したノイズ信号を抑制するために適宜、ローパスフィルタ回路が用いられる。電流電圧変換回路はノイズやドリフトを減らすため、オフセット電流やバイアス電流が小さい高精度Opアンプを使うことが好ましい。
【0052】
また、アナログ演算回路を用いる代わりに、各受光面から得られた電圧信号を、ΔΣ型AD変換器などのAD変換器でデジタル値に変換し、デジタル回路で差演算や割算演算を行ない、示差屈折率信号を得ることができる。デジタル値に変換する場合、エリアシングノイズを防ぐためにAD変換器の前には適宜アンチエリアスフィルタ回路を挿入することが好ましい。また、デジタル値に変換した後、デジタルフィルタを掛けてもよい。
【発明の効果】
【0053】
本発明の示差屈折率計は、ブライス型示差屈折率計において、前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心にアパーチャ及び/またはフローセルを回転させることを特徴としている。本発明により、フローセルの有する中空部の断面積を極端に大きくしたり、フローセルの有する中空部の断面積を参照液側と試料液側とで変えたり、アパーチャの有するスリットの幅を極端に狭くしたりすることなく、幅広い屈折率の溶媒に対応可能な示差屈折率計を提供することができる。特に、セミマイクロ液体クロマトグラフィー用示差屈折率計といった、フローセルの有する断面積を小さくする必要がある場合において、本発明の効果は大きい。
【0054】
本発明の示差屈折率計の一態様である、シングルパス方式のブライス型示差屈折率計において、前記フローセルの位置検出光センサ側の液体流路形状を投影した平行光線の範囲よりも小さい開口部を有したアパーチャを、フローセルの位置検出光センサ側に、フローセルに近接して設置し、さらに、前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させる示差屈折率計は、ポンプの脈動による圧力変動や温度変動で溶媒の屈折率が変化したときに生ずる、照射位置のシフトの問題もなく、かつ幅広い屈折率の溶媒に対応可能な示差屈折率計を提供することができる。
【実施例】
【0055】
以下に本発明を更に詳細に説明するために実施例を示すが、これら実施例は本発明の一例を示すものであり、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0056】
実施例1 本発明の示差屈折率計(その1)
図2の構成を有する示差屈折率計において、本発明を採用した時の例を以下に示す。
【0057】
光源(210)は860nmの近赤外光を放射する点発光ダイオードを用い、非球面レンズからなるコリメータレンズ(220)を用いて平行光に変換した。フローセル(240)のうち、試料液及び参照液を流すための中空部はともに底辺が1.0mmの二等辺直角三角形である、長さ8mmの三角柱の形状をしており、光源側の中空部(242)に試料液を流し、位置検出光センサ側の中空部(241)に参照液を流している。なお、フローセルにおける試料液及び参照液を流すための中空部の配置は、各中空部の中心がフローセルの幅方向で一致する、図14に示す配置(1440)となっている、そして、図示していないフローセルホルダの位置検出光センサ側にアパーチャ(230)を固定する。アパーチャ(230)には幅0.6mm、長さ4mmの長方形のスリットが設けられ、液体流路の壁に触れないで試料液と参照液を透過した光だけを通過させるようにする。また、アパーチャ(230)及びフローセル(240)は図9に示す回転手段により回転させることができる。前記示差屈折率計において、フローセルを回転しない状態では、溶媒の屈折率が1.3から1.578の範囲で示差屈折率を測定することができる。
【0058】
ここで、アパーチャ及びフローセルを正方向に3.44度回転(以降、反時計回りを正方向の回転、時計回りを逆方向の回転とする)させると、溶媒の屈折率が1.0から1.436の範囲で示差屈折率を測定することができる。一方、逆方向に6.36度回転させると、溶媒の屈折率が1.629から1.8の範囲で示差屈折率を測定することができる。よって、使用する溶媒の屈折率に応じて、−6.36度から3.44度の範囲で適宜フローセル及びアパーチャを回転させることで、中空部の断面積が同じフローセルであっても、溶媒の屈折率1.0から1.8の範囲で示差屈折率を測定することができる。
【0059】
実施例2 本発明の示差屈折率計(その2)
図2の構成を有する示差屈折率計において、本発明を採用した時の別の例を以下に示す。
【0060】
実施例1との違いは、フローセル(240)における試料液及び参照液を流すための中空部の配置であり、溶媒を水とした場合、光軸にフローセルを正対させた時に光が直進するように、各中空部の配置を、フローセルの幅方向に0.08mmずらした図15に示す配置(1540)となっている。前記示差屈折率計において、フローセルを回転しない状態では、溶媒の屈折率が1.135から1.485の範囲で示差屈折率を測定することができる。
【0061】
ここで、アパーチャ及びフローセルを正方向に1.4度回転させると、溶媒の屈折率が1.0から1.413の範囲で示差屈折率を測定することができる。一方、逆方向に8.34度逆回転させると、溶媒の屈折率が1.615から1.8の範囲で示差屈折率を測定することができる。よって、使用する溶媒の屈折率に応じて、−8.34度から1.4度の範囲で適宜フローセル及びアパーチャを回転させることで、中空部の断面積が同じフローセルであっても、溶媒の屈折率1.0から1.8の範囲で示差屈折率を測定することができる。
【0062】
実施例3 本発明の示差屈折率計(その3)
図2の構成を有する示差屈折率計において、本発明を採用した時のさらに別の例を以下に示す。
【0063】
実施例1との違いは、フローセル(240)における試料液及び参照液を流すための中空部の配置であり、各中空部の配置を、フローセルの幅方向に0.1mmずらした図16に示す配置(1640)となっている。前記示差屈折率計において、フローセルを回転しない状態では、溶媒の屈折率が1.458から1.668の範囲で示差屈折率を測定することができる。
【0064】
ここで、アパーチャ及びフローセルを正方向に5.72度回転させると、溶媒の屈折率が1.0から1.436の範囲で示差屈折率を測定することができる。一方、逆方向に4.13度回転させると、溶媒の屈折率が1.645から1.8の範囲で示差屈折率を測定することができる。よって、使用する溶媒の屈折率に応じて、−4.13度から5.72度の範囲で適宜フローセル及びアパーチャを回転させることで、中空部の断面積が同じフローセルであっても、溶媒の屈折率1.0から1.8の範囲で示差屈折率を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の示差屈折率計は、フローセルを流れる試料液及び参照液の屈折率と、フローセルを構成する材料の屈折率とに大きな差があっても、試料液及び参照液の屈折率に応じて、フローセル及び/またはアパーチャを回転させることによって、アパーチャを通過する光がフローセルの液体流路の内側を通過するように調整することができる。このため、液体クロマトグラフィーなどで使用する溶媒の自由度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】従来のシングルパス方式のブライス型示差屈折率計
【図2】改良されたシングルパス方式のブライス型示差屈折率計
【図3】改良されたシングルパス方式のブライス型示差屈折率計
【図4】従来のダブルパス方式のブライス型示差屈折率計
【図5】本発明の示差屈折率計におけるアパーチャ、フローセル及び平行光線の位置関係
【図6】本発明の示差屈折率計におけるアパーチャ、フローセル及び平行光線の位置関係
【図7】本発明の示差屈折率計におけるアパーチャ、フローセル及び平行光線の位置関係
【図8】本発明の示差屈折率計で設置される回転手段
【図9】本発明の示差屈折率計で設置される回転手段
【図10】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図11】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図12】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図13】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図14】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図15】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図16】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図17】本発明の示差屈折率計で用いる位置検出光センサ
【符号の説明】
【0067】
100、200、300、400:示差屈折率計
800、900:回転手段
110、210、310、410:光源
120、220、320、420:コリメータレンズ
130、230、330、430、530、630、730、830、930:アパーチャ
531、631、731、831、931:スリット
140、240、340、440、540、640、740、840、940、1040、1140、1240、1340、1440、1540、1640:フローセル
541、641、741、1041、1141、1241、1341、1441、1541、1641:参照液を流すための中空部
542、642、742、1042、1142、1242、1342、1442、1542、1642:試料液を流すための中空部
1043、1044、1143、1144、1243、1244、1343、1344:連通穴
150、250、350、450、1750:位置検出光センサ
1751:受光面
1752:受光面間ギャップ
1753:透過光線の照射位置
460:平面ミラー
570、670、770、870、970:回転軸
880、980:パルスモータ
890、990:回転板
【技術分野】
【0001】
液体クロマトグラフ等に用い、屈折率の変化に基づき物質濃度を測定する示差屈折率計に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの物質は溶媒に溶け込むと、溶媒の屈折率が変化する。そのため、液体クロマトグラフではカラムから溶出される成分の汎用的な検出器として、溶媒(参照液という)と、成分が溶けた溶媒(試料液という)の屈折率の差を測定する示差屈折率計がよく用いられる。示差屈折率計としては屈折率による反射光強度の変化を検出するフレネル型示差屈折率計と屈折角の変化を検出するブライス型示差屈折率計がよく知られている。
【0003】
ブライス型示差屈折率計では、石英ガラスなどの透明体の内部に光軸に対して傾いた斜板で仕切られた二本の直角三角形断面をもつ液体流路を形成したフローセルに、試料液と、参照液を流通させた状態で、フローセルに概ね平行光線を照射し、該平行光線の進行方向の角度変化の大きさから、試料成分によって生じた屈折率の差を求めることができる。ブライス型示差屈折率計には、フローセルへの光通過のさせ方により、1回通過させるシングルパス方式と、2回通過させるダブルパス方式(特許文献1)がある。
【0004】
従来からある、シングルパス方式のブライス型示差屈折率計(100)を図1に示す。図1のうち、aは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率が等しいときの平行光線を模式的に示す平面図(上から見た図、以下同じ)、bは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率に差があるときの平行光線を模式的に示す平面図、cは各構成要素の配置の正面図(前から見た図、以下同じ)である。シングルパス方式のブライス型示差屈折計は光源(110)と位置検出光センサ(150)がフローセル(140)を挟んだ位置に配置され、かつ光源(110)、アパーチャ(130)、フローセル(140)、位置検出光センサ(105)が概ね直線状に配置される。ここで通常、位置検出光センサ(150)は複数の分割された受光面を有するセンサを用いる。
【0005】
図1の示差屈折計(100)において、試料液と参照液の屈折率が等しい時には平行光線を位置検出光センサ(150)の中央に当てるように各構成要素の位置や角度を調整することは比較的容易である。しかし、フローセル(140)を構成する材料の屈折率とフローセルに流れる溶媒との屈折率とが異なると、フローセル(140)に入射した平行光線はフローセル(140)を通過した後、入射平行光線に対して平行移動する。このことにより、位置検出光センサ(150)上の照射位置がシフトし、照射位置が位置検出光センサ(150)の中央から外れてしまう。また、圧力や温度の変動により溶媒の屈折率が変化し、試料液と参照液の屈折率が同じだけ変化した時でも位置検出光センサ(150)の照射位置がシフトするため、ポンプの脈動の影響や温度変動の影響が大きく出てしまう。そのため、照射位置のシフトの影響を除くことを目的とした、示差屈折率計の改良が行なわれた(特願2008−136382号)。
【0006】
改良されたシングルパス方式のブライス型示差屈折率計(200)の一例を図2に示す。図2のうち、aは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率が等しいときの平行光線を示す平面図、bは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率に差があるときの平行光線を示す平面図、cは各構成要素の配置の正面図である。光源(210)、フローセル(240)、アパーチャ(230)、位置検出光センサ(250)が概ね直線状に配置されている。フローセル(240)は、図2に示すように同じ断面積を有した中空部を2つ(241、242)有しており、光源側の中空部(242)に試料液を流し、位置検出光センサ側の中空部(241)に参照液を流す。アパーチャ(230)は図示していないフローセルホルダの位置検出光センサ側に固定し、フローセル(240)を流れる液体の流路の壁に触れずに試料液と参照液を透過した光だけを通過させるようにする。
【0007】
図2の示差屈折率計を用いることで、図1に示す従来の示差屈折率計と比較し、圧力や温度が変化したときの出力信号の変化を小さくすることができた。一方、フローセルを流れる溶媒の屈折率がフローセルを構成する材料の屈折率と大きく異なる場合は、光源側の流路を通過する光と位置検出光センサ側の流路を通過する光がシフトするため、幅広い屈折率の溶媒に対応するためには、アパーチャを通過する光が常にフローセルを流れる液体の流路の壁に触れずに試料液と参照液を透過するよう、フローセル中の少なくともアパーチャから遠い側の流路面積を広くする必要がある。しかしながら、流路面積を広くするとフローセルの容積が大きくなり、フローセルによる試料成分の広がりが大きくなる問題点があった。
【0008】
改良されたシングルパス方式のブライス型示差屈折率計(300)の別の一例を図3に示す。図3のうち、aは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率が等しいときの平行光線を示す平面図、bは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率に差があるときの平行光線を示す平面図、cは各構成要素の配置の正面図である。図2に示す示差屈折率計との違いは、フローセル(340)の形状であり、光源側に面した参照液を流すための中空部(341)の断面積が、位置検出光センサ側に面した試料液を流すための中空部(342)の断面積よりも大きくなっている。
【0009】
図3の示差屈折率計を用いることで、フローセルによる試料成分の広がりを抑え、かつフローセルを流れる溶媒の屈折率がフローセルを構成する材料の屈折率と大きく異なる場合でも圧力や温度が変化したときの出力信号の変化を小さくすることができた。しかしながら、中空部の断面積が異なるフローセルを作製するのは、中空部の断面積が等しい従来のフローセルと比較し困難である。また、中空部の断面積が異なると試料液と参照液との配管抵抗及び液体の流れのバランスがとれないという問題もあった。
【0010】
さらに、図2及び3の示差屈折率計を用いたときの共通の問題として、幅広い屈折率の溶媒に対応するためにフローセル中空部の断面積を大きくすると液体のよどみが発生しやすく、液体の置換に時間がかかるという問題があり、また、前記問題を解決するためにフローセルの断面積を変えずにアパーチャの幅を狭めると、アパーチャの幅に比例してフローセルを通過した透過光の量が減少し、ノイズが増えてしまう問題が新たに生じる。
【0011】
従来からある、ダブルパス方式のブライス型示差屈折率計(400)を図4に示す。図4のうち、aは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率が等しいときの平行光線を模式的に示す平面図、bは各構成要素の配置及び試料液と参照液の屈折率に差があるときの平行光線を模式的に示す平面図、cは各構成要素の配置の正面図である。ダブルパス方式のブライス型示差屈折率計は、光源(410)と位置検出光センサ(450)がフローセル(440)に対して同じ側に配置され、光源(410)から出た平行光線は1度フローセル(440)を通過した後、ミラー(460)で反射され、再度フローセル(440)を通過した光を、位置検出光センサ(450)に当てて検出する。
【0012】
図4の示差屈折率計(400)において、上から見た場合、試料液と参照液の屈折率が等しければ(図4a)、平行光線は往復で概ね同じ経路を通過する。したがって、圧力や温度の変動により溶媒の屈折率が変化し、試料液と参照液の屈折率が同じだけ変化した時でも位置検出光センサ(450)の照射位置が変化しないため、ポンプの脈動の影響や温度変動の影響が小さくなる。しかし図4cに示すように、光源(410)と位置検出光センサ(450)が上下に配置されるため、試料液と参照液との屈折率が等しい時に平行光線を位置検出光センサ(450)の中央に当てるように各構成要素の位置や角度を調整することは、シングルパス方式と比較し煩雑な作業を要する。
【0013】
【特許文献1】特開平3−218442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ブライス型示差屈折率計において、アパーチャの幅を必要以上に狭めることなく、かつフローセルの断面積を必要以上に大きくしない条件で、幅広い屈折率の溶媒に対応可能な示差屈折率計を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の発明を包含する。
【0016】
第一の発明は、概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを通過した透過光の偏向を検出するための位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置を含む、ブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させる、回転手段を設置していることを特徴とする、示差屈折率計である。
【0017】
第二の発明は、概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを透過した光の偏向を検出するためにフローセルと離して設けられる位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置から構成され、前記光源部と前記フローセルと前記位置検出光センサが当該順序で概ね直線的に配置されたブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの位置検出光センサ側の液体流路形状を投影した平行光線の範囲より小さい開口部を有した前記アパーチャを、前記フローセルの位置検出光センサ側に、フローセルに近接して設置し、
さらに、前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させる、回転手段を設置していることを特徴とする、示差屈折率計である。
【0018】
第三の発明は、前記回転手段における、前記フローセルのみを回転させる、または前記アパーチャ及び前記フローセルを回転させる軸の中心が前記アパーチャ面内にあることを特徴とする、第一または第二の発明に記載の示差屈折率計である。
【0019】
第四の発明は、前記回転手段が、前記アパーチャ及び前記フローセルを同一の回転軸で同一の方向に同時回転させる手段であることを特徴とする、第一から第三の発明に記載の示差屈折率計である。
【0020】
第五の発明は、概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを通過した透過光の偏向を検出するための位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置を含む、ブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させることを特徴とする、示差屈折率計である。
【0021】
第六の発明は、概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを透過した光の偏向を検出するためにフローセルと離して設けられる位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置から構成され、前記光源部と前記フローセルと前記位置検出光センサが当該順序で概ね直線的に配置されたブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの位置検出光センサ側の液体流路形状を投影した平行光線の範囲より小さい開口部を有した前記アパーチャを、前記フローセルの位置検出光センサ側に、フローセルに近接して設置し、
さらに、前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させることを特徴とする、示差屈折率計である。
【0022】
第七の発明は、前記フローセルのみを回転させる、または前記アパーチャ及び前記フローセルを回転させる軸の中心が前記アパーチャ面内にあることを特徴とする、第五または第六の発明に記載の示差屈折率計である。
【0023】
第八の発明は、前記アパーチャ及び前記フローセルを同一の回転軸で同一の方向に同時回転させることを特徴とする、第五から第七の発明に記載の示差屈折率計である。
【0024】
第九の発明は、前記フローセルの有する二つの中空部の断面積が等しいことを特徴とする、第一から第八の発明に記載の示差屈折率計である。
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明の示差屈折率計で用いる光源としては、タングステンランプ、ハロゲン封入タングステンランプ、発光ダイオードといった点光源、またはレーザー光源を例示できる。なお、レーザー光源としては小型が容易な半導体レーザーが好ましい。
【0027】
示差屈折率計において、フローセルを透過させる光は概ね平行光である必要がある。指向性の良いレーザー光源を使用するときはそのままでも良いが、点光源を使用するときは、前記光源からでた光を平行光に変換させる必要がある。平行光への変換方法としては、以下の方法が例示できる。
(1)レンズ付ランプやレンズ付発光ダイオードを用いる方法。
(2)輝度の高い光源と適正に選択されたレンズを組み合わせる方法。
(3)光源から十分離れた位置にフローセルを設置する方法。
【0028】
このうち、本発明の示差屈折率計における平行光への変換方法としては、良質な平行光が得られる(2)の方式が最も好ましい。さらに、レンズの口径はレンズの有効径がアパーチャの透過部をカバーするように選択し、光源が発した光を有効に利用するためにレンズと光源との距離を近づけ有効立体角を広げることが好ましく、レンズは球面収差を抑えるために非球面レンズからなるコリメータレンズ、あるいはアクロマティックレンズに代表される貼合せレンズを使うことができる。
【0029】
なお、タングステンランプなどフィラメントを使っている光源を使用する場合は、フィラメントの形状と見る方向により、発光部は点、線または面に見える。そのため、前記光源から平行光に変換させるには、点に見える方向に光を取り出してレンズを通して平行光に変換するか、線に見える方向に光を取り出してレンズを通し、光の進行方向とフローセルの高さ方向に直交する方向によって作られる面上で平行光になるように変換すればよい。
【0030】
平行光線断面内の光強度分布は、少なくともフローセルを流れる液体の流路の幅方向で概ね均一であればよい。また、光強度分布の均一性を改善するために、ビーム変換レンズを使ったり、平行光線の強度分布と逆の空間分布を示す吸収特性をもたせたフィルタなどを使うこともできる。
【0031】
本発明の示差屈折率計は、フローセルに流れる溶媒の屈折率に応じて、アパーチャを通過する、または通過した光が、フローセルの有する各中空部の内側を通過するように、アパーチャ及び/またはフローセルをフローセルの高さ方向に平行な軸を中心に回転させることを特徴としている。
【0032】
本発明はアパーチャをフローセルの光源側に設置した従来のブライス型示差屈折率計(図1及び4)、及びアパーチャをフローセルの位置検出光センサ側にフローセルに近接して設置した、特願2008−136382号で開示の改良されたシングルパス方式のブライス型示差屈折率計(図2及び3)、いずれに対しても採用することができるが、ダブルパス方式のブライス型示差屈折率計(図4)、または圧力や温度が変化したときの出力信号の変化が少ない改良されたシングルパス方式のブライス型示差屈折率計(図2及び3)に対して本発明を採用するのが好ましい。
【0033】
本発明の示差屈折率計では、アパーチャを固定してフローセルのみを回転させてもよいし、フローセルを固定してアパーチャのみを回転させてもよいし、アパーチャ及びフローセルを回転させてもよい。また、アパーチャ及びフローセルを回転させる方法としては、フローセルが回転する回転軸に対して直交する面上でアパーチャを直線方向または円周方向に移動させることで、フローセルを通過した透過光の中央にアパーチャを移動させる方法、アパーチャ及びフローセルを同一の回転軸で同一の方向に同時回転させる方法が例示できるが、後者の回転方法がフローセルに近接してアパーチャを設置できる点で好ましい。
【0034】
本発明の示差屈折率計におけるアパーチャ及び/またはフローセルを回転させる軸は、アパーチャまたはフローセルの近くを通過し、フローセルの高さ方向を向いておればよく、アパーチャ面内であってもよいし、フローセル内部であってもよいし、フローセルの入射面または出射面内であってもよい。
【0035】
本発明の示差屈折率計の一態様を図5に示す。図5ではアパーチャ(530)をフローセル(540)の位置検出光センサ側に、フローセルに近接した位置に固定して設置しており、回転軸(570)はフローセルの概ね中心を通っている。前記回転軸を中心にフローセル(540)を回転させ、フローセルの光源側の中空部(541)に参照液を、位置検出光センサ側の中空部(542)に試料液をそれぞれ流す。フローセルを構成する材料の屈折率がフローセルに流れる溶媒の屈折率よりも大きいときは、フローセルを構成する材料とフローセルに流れる溶媒との屈折率が等しいときのフローセルの位置(図5a)から反時計回りにフローセル(540)を回転させ(図5b)、フローセルを構成する材料の屈折率がフローセルに流れる溶媒の屈折率よりも小さいときは、フローセル(540)を逆に時計回りに回転させることで(図5c)、幅広い屈折率の溶媒に対応可能となる。なお、逆にフローセル(540)を固定し、アパーチャ(530)を、フローセルの概ね中心を通っている回転軸(570)を中心に回転させても概ね同様の効果が得られる。
【0036】
本発明の示差屈折率計の別の態様を図6に示す。図5との違いは、回転軸(670)がフローセルの出射面中心を通っていることである。図5のときと同様、フローセルを構成する材料の屈折率がフローセルに流れる溶媒の屈折率よりも大きいときは、フローセルを構成する材料とフローセルに流れる溶媒との屈折率が等しいときのフローセルの位置(図6a)から反時計回りにフローセル(640)を回転させ(図6b)、フローセルを構成する材料の屈折率がフローセルに流れる溶媒の屈折率よりも小さいときは、フローセル(640)を逆に時計回りに回転させることで(図6c)、幅広い屈折率の溶媒に対応可能となる。図6は図5と比較し、同じ角度回転させたときの、フローセル出射面における光軸方向の移動量が小さくなるため、アパーチャ(630)とフローセル(640)との間隔を図5よりも狭くすることができる。
【0037】
本発明の示差屈折率計の好ましい態様を図7に示す。図5との違いは、回転軸(770)がアパーチャ(730)の有するスリット(731)中心を通っていること、及びアパーチャ(730)及びフローセル(740)を同時に回転させていることである。図5と同様、フローセルを構成する材料の屈折率がフローセルに流れる溶媒の屈折率よりも大きいときは、フローセルを構成する材料とフローセルに流れる溶媒との屈折率が等しいときのフローセルの位置(図7a)から反時計回りにアパーチャ(730)及びフローセル(740)を回転させ(図7b)、フローセルを構成する材料の屈折率がフローセルに流れる溶媒の屈折率よりも小さいときは、アパーチャ(730)及びフローセル(740)を逆に時計回りに回転させることで(図7c)、幅広い屈折率の溶媒に対応可能となる。図7はアパーチャ(730)及びフローセル(740)を同一の回転軸で同一の方向に同時回転させるため、図5及び6と比較しアパーチャとフローセルとの間隔を狭くすることができる。
【0038】
本発明の示差屈折率計で設置する回転手段の一態様を図8に示す。パルスモータ(880)を用いて、回転板(890)上にあるフローセル(840)を、前記フローセル(840)の中心を回転軸(870)として回転させている。アパーチャ(830)はフローセルの位置検出光センサ側に固定して設置している。そして、フローセルが流れる溶媒の屈折率に応じて、図5に示すようにフローセル(840)を回転させることで、幅広い屈折率の溶媒に対応可能となる。
【0039】
本発明の示差屈折率計で設置する回転手段の好ましい態様を図9に示す。パルスモータ(980)を用いて、回転板(990)上にあるアパーチャ(930)及びフローセル(940)を、前記アパーチャ(930)の有するスリット(931)中心を回転軸(970)として回転させている。そして、フローセルが流れる溶媒の屈折率に応じて、図7のようにアパーチャ(930)及びフローセル(940)を回転させることで、幅広い屈折率の溶媒に対応可能となる。なお、図9の回転手段(900)は、図8と比較しアパーチャとフローセルとの間隔を狭くすることができる。
【0040】
本発明の示差屈折率計で用いるフローセルの一態様として、図10に示す、試料液と参照液をそれぞれ通過させるための、断面が同一の直角二等辺三角形からなる一対の中空部(1041、1042)をもつフローセル(1040)をあげることができる。フローセルの材質は光の透過性と液体に対する耐蝕性を考慮して選択すればよいが、多くの場合、透明な石英ガラスが好ましい。また、光が通過する部分以外の全て、あるいは一部を黒色石英ガラスといった不透明体材料で作ることもできる。なお、屈折率の差に対する平行光の角度変化を大きくするために、中空部の断面が直角不等辺三角形である、図11に示すフローセル(1140)にしても良い。
【0041】
フローセルの別の態様として、図12に示すフローセル(1240)のように中空部の断面が三角形の一部を切り取った形状(1241、1242)にすることもできる。
【0042】
フローセルのさらに別の態様として、図13に示す、試料液に溶解した目的成分の広がりを防ぐために、試料を流す中空部(1342)の断面積を参照液を流す中空部(1341)の断面積より小さくしたフローセル(1340)もあげることができる。図13のフローセルの場合は、アパーチャに近い側の中空部を小さくし、そこに試料液を流すのが好ましい。
【0043】
なお、図10から13のフローセルの有する2つの中空部の配置は、図14のように2つの中空部(1441、1442)の中心がフローセルの幅方向に一致するように配置してもよいし、図15及び16のように2つの中空部(1541、1542、1641、1642)の中心をフローセルの幅方向にずらして配置しても良い。
【0044】
本発明の示差屈折率計で用いるフローセルでは、フローセルの有する中空部の底辺を短くすると、回転角度を固定した時に使用可能な溶媒の屈折率範囲が狭くなり、底辺を長くすると、回転角度を固定した時に使用可能な溶媒の屈折率範囲が広くなる。一方、フローセルの有する中空部を仕切る斜板の厚さを薄くすると、回転角度を固定した時に使用可能な溶媒の屈折率範囲が狭くなり、斜板を厚くすると、回転角度を固定した時に使用可能な溶媒の屈折率範囲が広くなる。
【0045】
本発明の示差屈折率計で用いるアパーチャの形状は、正方形、円形、長方形、長円から選択することができるが、長方形、長円といったフローセルの流路の形状に合わせた形が好ましい。また、上記アパーチャの外に、追加のアパーチャを設けることによって、適宜不要な光を遮断することができる。
【0046】
本発明の示差屈折率計における位置検出光センサの一態様として、複数の分割された受光面からなるセンサがあげられる。前記センサの一例として、受光面が左右に2分割されたフォトダイオードからなる位置検出光センサ(1750)を図17に示す。図17のうち、aは試料液と参照液の屈折率が等しいときのフローセルを通過した透過光線の照射位置(1753)とセンサ(1750)との位置関係、bは試料液と参照液の屈折率に差があるときの透過光線の照射位置(1753)とセンサ(1750)との位置関係をそれぞれ示した図である。図17において縦横に2×2分割された受光面を有するフォトダイオードを使う場合には、縦の2つの受光面を並列接続して1つの受光面(1751)として使うことにより2分割フォトダイオードとして使用することができる。なお、位置検出光センサについては図17に示した、左右に2分割されたフォトダイオード及び2×2分割されたフォトダイオードの代わりに、さらに細かく分割されたフォトダイオードや1次元CCDセンサ、及び1次元CMOSセンサといった受光素子を用いることができる。
【0047】
本発明の示差屈折率計における位置検出光センサの別の態様として、特願2008−202607号で開示の、受光面が分割されていない位置検出素子をあげることができる。
【0048】
位置検出素子には、入射した光の位置を線で検出する1次元位置検出素子と、面で検出する2次元位置検出素子とがあるが、いずれの位置検出素子も本発明の示差屈折率計における位置検出光センサとして用いることができる。また、いずれの位置検出素子も、様々な受光面積、及び感度波長範囲を有した素子がある(例えば、浜松ホトニクス社カタログ参照)ため、使用する光源、及びフローセルを通過した透過光の移動量に応じて適切な位置検出素子を選択することができる。さらに、2次元位置検出素子として、位置検出型光電子増倍管(例えば、浜松ホトニクス社製R3292)を本発明の示差屈折率計における位置検出光センサとして採用してもよい。
【0049】
本発明の示差屈折率計のうち、フローセルのみを回転させるときのように、アパーチャがフローセルを通過した透過光に対して常に直交する場合は、透過光の強度がほとんど変化しないため、各受光面に生じる光電流を電流電圧変換回路等を用いて電圧信号に変換した後、差回路を使うことによって、出力として示差屈折率に比例した信号を得ることができる。
【0050】
一方、アパーチャ及びフローセルを同一の回転軸で同一の方向に同時回転させるときのように、アパーチャとフローセルを通過した透過光との角度の変化に伴い、透過光の強度も変化する場合は、差回路と和回路を使って各受光面の差信号と和信号を求め、さらに割算回路を使って差信号を和信号で割ることによって、出力として示差屈折率に比例した信号を得ることができる。なお、光強度が時間や周辺温度、回転角度などによって変化する場合も同様な方法で示差屈折率に比例した信号を得ることができる。
【0051】
なお、示差屈折率信号を得る際は、示差屈折率信号に混入したノイズ信号を抑制するために適宜、ローパスフィルタ回路が用いられる。電流電圧変換回路はノイズやドリフトを減らすため、オフセット電流やバイアス電流が小さい高精度Opアンプを使うことが好ましい。
【0052】
また、アナログ演算回路を用いる代わりに、各受光面から得られた電圧信号を、ΔΣ型AD変換器などのAD変換器でデジタル値に変換し、デジタル回路で差演算や割算演算を行ない、示差屈折率信号を得ることができる。デジタル値に変換する場合、エリアシングノイズを防ぐためにAD変換器の前には適宜アンチエリアスフィルタ回路を挿入することが好ましい。また、デジタル値に変換した後、デジタルフィルタを掛けてもよい。
【発明の効果】
【0053】
本発明の示差屈折率計は、ブライス型示差屈折率計において、前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心にアパーチャ及び/またはフローセルを回転させることを特徴としている。本発明により、フローセルの有する中空部の断面積を極端に大きくしたり、フローセルの有する中空部の断面積を参照液側と試料液側とで変えたり、アパーチャの有するスリットの幅を極端に狭くしたりすることなく、幅広い屈折率の溶媒に対応可能な示差屈折率計を提供することができる。特に、セミマイクロ液体クロマトグラフィー用示差屈折率計といった、フローセルの有する断面積を小さくする必要がある場合において、本発明の効果は大きい。
【0054】
本発明の示差屈折率計の一態様である、シングルパス方式のブライス型示差屈折率計において、前記フローセルの位置検出光センサ側の液体流路形状を投影した平行光線の範囲よりも小さい開口部を有したアパーチャを、フローセルの位置検出光センサ側に、フローセルに近接して設置し、さらに、前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させる示差屈折率計は、ポンプの脈動による圧力変動や温度変動で溶媒の屈折率が変化したときに生ずる、照射位置のシフトの問題もなく、かつ幅広い屈折率の溶媒に対応可能な示差屈折率計を提供することができる。
【実施例】
【0055】
以下に本発明を更に詳細に説明するために実施例を示すが、これら実施例は本発明の一例を示すものであり、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0056】
実施例1 本発明の示差屈折率計(その1)
図2の構成を有する示差屈折率計において、本発明を採用した時の例を以下に示す。
【0057】
光源(210)は860nmの近赤外光を放射する点発光ダイオードを用い、非球面レンズからなるコリメータレンズ(220)を用いて平行光に変換した。フローセル(240)のうち、試料液及び参照液を流すための中空部はともに底辺が1.0mmの二等辺直角三角形である、長さ8mmの三角柱の形状をしており、光源側の中空部(242)に試料液を流し、位置検出光センサ側の中空部(241)に参照液を流している。なお、フローセルにおける試料液及び参照液を流すための中空部の配置は、各中空部の中心がフローセルの幅方向で一致する、図14に示す配置(1440)となっている、そして、図示していないフローセルホルダの位置検出光センサ側にアパーチャ(230)を固定する。アパーチャ(230)には幅0.6mm、長さ4mmの長方形のスリットが設けられ、液体流路の壁に触れないで試料液と参照液を透過した光だけを通過させるようにする。また、アパーチャ(230)及びフローセル(240)は図9に示す回転手段により回転させることができる。前記示差屈折率計において、フローセルを回転しない状態では、溶媒の屈折率が1.3から1.578の範囲で示差屈折率を測定することができる。
【0058】
ここで、アパーチャ及びフローセルを正方向に3.44度回転(以降、反時計回りを正方向の回転、時計回りを逆方向の回転とする)させると、溶媒の屈折率が1.0から1.436の範囲で示差屈折率を測定することができる。一方、逆方向に6.36度回転させると、溶媒の屈折率が1.629から1.8の範囲で示差屈折率を測定することができる。よって、使用する溶媒の屈折率に応じて、−6.36度から3.44度の範囲で適宜フローセル及びアパーチャを回転させることで、中空部の断面積が同じフローセルであっても、溶媒の屈折率1.0から1.8の範囲で示差屈折率を測定することができる。
【0059】
実施例2 本発明の示差屈折率計(その2)
図2の構成を有する示差屈折率計において、本発明を採用した時の別の例を以下に示す。
【0060】
実施例1との違いは、フローセル(240)における試料液及び参照液を流すための中空部の配置であり、溶媒を水とした場合、光軸にフローセルを正対させた時に光が直進するように、各中空部の配置を、フローセルの幅方向に0.08mmずらした図15に示す配置(1540)となっている。前記示差屈折率計において、フローセルを回転しない状態では、溶媒の屈折率が1.135から1.485の範囲で示差屈折率を測定することができる。
【0061】
ここで、アパーチャ及びフローセルを正方向に1.4度回転させると、溶媒の屈折率が1.0から1.413の範囲で示差屈折率を測定することができる。一方、逆方向に8.34度逆回転させると、溶媒の屈折率が1.615から1.8の範囲で示差屈折率を測定することができる。よって、使用する溶媒の屈折率に応じて、−8.34度から1.4度の範囲で適宜フローセル及びアパーチャを回転させることで、中空部の断面積が同じフローセルであっても、溶媒の屈折率1.0から1.8の範囲で示差屈折率を測定することができる。
【0062】
実施例3 本発明の示差屈折率計(その3)
図2の構成を有する示差屈折率計において、本発明を採用した時のさらに別の例を以下に示す。
【0063】
実施例1との違いは、フローセル(240)における試料液及び参照液を流すための中空部の配置であり、各中空部の配置を、フローセルの幅方向に0.1mmずらした図16に示す配置(1640)となっている。前記示差屈折率計において、フローセルを回転しない状態では、溶媒の屈折率が1.458から1.668の範囲で示差屈折率を測定することができる。
【0064】
ここで、アパーチャ及びフローセルを正方向に5.72度回転させると、溶媒の屈折率が1.0から1.436の範囲で示差屈折率を測定することができる。一方、逆方向に4.13度回転させると、溶媒の屈折率が1.645から1.8の範囲で示差屈折率を測定することができる。よって、使用する溶媒の屈折率に応じて、−4.13度から5.72度の範囲で適宜フローセル及びアパーチャを回転させることで、中空部の断面積が同じフローセルであっても、溶媒の屈折率1.0から1.8の範囲で示差屈折率を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の示差屈折率計は、フローセルを流れる試料液及び参照液の屈折率と、フローセルを構成する材料の屈折率とに大きな差があっても、試料液及び参照液の屈折率に応じて、フローセル及び/またはアパーチャを回転させることによって、アパーチャを通過する光がフローセルの液体流路の内側を通過するように調整することができる。このため、液体クロマトグラフィーなどで使用する溶媒の自由度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】従来のシングルパス方式のブライス型示差屈折率計
【図2】改良されたシングルパス方式のブライス型示差屈折率計
【図3】改良されたシングルパス方式のブライス型示差屈折率計
【図4】従来のダブルパス方式のブライス型示差屈折率計
【図5】本発明の示差屈折率計におけるアパーチャ、フローセル及び平行光線の位置関係
【図6】本発明の示差屈折率計におけるアパーチャ、フローセル及び平行光線の位置関係
【図7】本発明の示差屈折率計におけるアパーチャ、フローセル及び平行光線の位置関係
【図8】本発明の示差屈折率計で設置される回転手段
【図9】本発明の示差屈折率計で設置される回転手段
【図10】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図11】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図12】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図13】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図14】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図15】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図16】本発明の示差屈折率計で用いるフローセル
【図17】本発明の示差屈折率計で用いる位置検出光センサ
【符号の説明】
【0067】
100、200、300、400:示差屈折率計
800、900:回転手段
110、210、310、410:光源
120、220、320、420:コリメータレンズ
130、230、330、430、530、630、730、830、930:アパーチャ
531、631、731、831、931:スリット
140、240、340、440、540、640、740、840、940、1040、1140、1240、1340、1440、1540、1640:フローセル
541、641、741、1041、1141、1241、1341、1441、1541、1641:参照液を流すための中空部
542、642、742、1042、1142、1242、1342、1442、1542、1642:試料液を流すための中空部
1043、1044、1143、1144、1243、1244、1343、1344:連通穴
150、250、350、450、1750:位置検出光センサ
1751:受光面
1752:受光面間ギャップ
1753:透過光線の照射位置
460:平面ミラー
570、670、770、870、970:回転軸
880、980:パルスモータ
890、990:回転板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを通過した透過光の偏向を検出するための位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置を含む、ブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させる、回転手段を設置していることを特徴とする、示差屈折率計。
【請求項2】
概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを透過した光の偏向を検出するためにフローセルと離して設けられる位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置から構成され、前記光源部と前記フローセルと前記位置検出光センサが当該順序で概ね直線的に配置されたブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの位置検出光センサ側の液体流路形状を投影した平行光線の範囲より小さい開口部を有した前記アパーチャを、前記フローセルの位置検出光センサ側に、フローセルに近接して設置し、
さらに、前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させる、回転手段を設置していることを特徴とする、示差屈折率計。
【請求項3】
前記回転手段における、前記フローセルのみを回転させる、または前記アパーチャ及び前記フローセルを回転させる軸の中心が前記アパーチャ面内にあることを特徴とする、請求項1または2に記載の示差屈折率計。
【請求項4】
前記回転手段が、前記アパーチャ及び前記フローセルを同一の回転軸で同一の方向に同時回転させる手段であることを特徴とする、請求項1から3に記載の示差屈折率計。
【請求項5】
概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを通過した透過光の偏向を検出するための位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置を含む、ブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させることを特徴とする、示差屈折率計。
【請求項6】
概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを透過した光の偏向を検出するためにフローセルと離して設けられる位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置から構成され、前記光源部と前記フローセルと前記位置検出光センサが当該順序で概ね直線的に配置されたブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの位置検出光センサ側の液体流路形状を投影した平行光線の範囲より小さい開口部を有した前記アパーチャを、前記フローセルの位置検出光センサ側に、フローセルに近接して設置し、
さらに、前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させることを特徴とする、示差屈折率計。
【請求項7】
前記フローセルのみを回転させる、または前記アパーチャ及び前記フローセルを回転させる軸の中心が前記アパーチャ面内にあることを特徴とする、請求項5または6に記載の示差屈折率計。
【請求項8】
前記アパーチャ及び前記フローセルを同一の回転軸で同一の方向に同時回転させることを特徴とする、請求項5から7に記載の示差屈折率計。
【請求項9】
前記フローセルの有する二つの中空部の断面積が等しいことを特徴とする、請求項1から8に記載の示差屈折率計。
【請求項1】
概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを通過した透過光の偏向を検出するための位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置を含む、ブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させる、回転手段を設置していることを特徴とする、示差屈折率計。
【請求項2】
概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを透過した光の偏向を検出するためにフローセルと離して設けられる位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置から構成され、前記光源部と前記フローセルと前記位置検出光センサが当該順序で概ね直線的に配置されたブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの位置検出光センサ側の液体流路形状を投影した平行光線の範囲より小さい開口部を有した前記アパーチャを、前記フローセルの位置検出光センサ側に、フローセルに近接して設置し、
さらに、前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させる、回転手段を設置していることを特徴とする、示差屈折率計。
【請求項3】
前記回転手段における、前記フローセルのみを回転させる、または前記アパーチャ及び前記フローセルを回転させる軸の中心が前記アパーチャ面内にあることを特徴とする、請求項1または2に記載の示差屈折率計。
【請求項4】
前記回転手段が、前記アパーチャ及び前記フローセルを同一の回転軸で同一の方向に同時回転させる手段であることを特徴とする、請求項1から3に記載の示差屈折率計。
【請求項5】
概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを通過した透過光の偏向を検出するための位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置を含む、ブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させることを特徴とする、示差屈折率計。
【請求項6】
概ね平行光線を生成する光源部と、アパーチャと、内部が前記平行光線の軸に対して傾いた斜板で仕切られた、参照液と試料液を通過させるための二つの中空部を有するフローセルと、前記フローセルを透過した光の偏向を検出するためにフローセルと離して設けられる位置検出光センサと、前記位置検出光センサの出力信号から屈折率を演算する演算装置から構成され、前記光源部と前記フローセルと前記位置検出光センサが当該順序で概ね直線的に配置されたブライス型示差屈折率計において、
前記フローセルの位置検出光センサ側の液体流路形状を投影した平行光線の範囲より小さい開口部を有した前記アパーチャを、前記フローセルの位置検出光センサ側に、フローセルに近接して設置し、
さらに、前記フローセルの高さ方向に平行な軸を中心に、前記アパーチャ及び/または前記フローセルを回転させることを特徴とする、示差屈折率計。
【請求項7】
前記フローセルのみを回転させる、または前記アパーチャ及び前記フローセルを回転させる軸の中心が前記アパーチャ面内にあることを特徴とする、請求項5または6に記載の示差屈折率計。
【請求項8】
前記アパーチャ及び前記フローセルを同一の回転軸で同一の方向に同時回転させることを特徴とする、請求項5から7に記載の示差屈折率計。
【請求項9】
前記フローセルの有する二つの中空部の断面積が等しいことを特徴とする、請求項1から8に記載の示差屈折率計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−48642(P2010−48642A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212503(P2008−212503)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
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