Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
示差熱天秤質量分析によるアンモニアの発生温度および発生量の評価方法
説明

示差熱天秤質量分析によるアンモニアの発生温度および発生量の評価方法

【課題】 被検試料の重量変化とアンモニアの発生温度および発生量を同時に評価する方法を提供する。
【解決手段】 示差熱天秤質量分析法を用いたアンモニアの発生温度および発生量の両者を同時に評価する方法であって、測定した被検試料の質量数18の質量分析プロファイル、および質量数17の質量分析プロファイルを用いて求めた質量数18の強度I18、および質量数17の強度I17から、式[I17−I18×0.212]によって算出される強度プロファイルを用いてアンモニアの発生温度と発生量を評価することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、示差熱天秤質量分析を用いて被検試料から発生するアンモニアの発生温度および発生量を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
示差熱天秤(TG:Thermo Gravimetry)は、被検試料を炉内に入れて加熱したときの重量変化を評価する分析法である。加熱によって重量減少が見られた場合、被検試料から何らかの成分が脱離したことを示す。ここで、被検試料からの脱離成分としては、水分やアンモニアなどの吸着成分、カーボンや有機物の燃焼成分(二酸化炭素、一酸化炭素)、有機物や金属蒸気などの揮発成分などがある。
【0003】
TGは、被検試料の重量変化のみを評価する分析法であり、被検試料から発生した成分を評価することはできない。TG測定中に発生した成分を評価する分析法として、TG測定中の発生ガスを質量分析計(MS:Mass Spectrometer)に導入して評価する示差熱天秤質量分析(TG−MS)が広く用いられている(特許文献1)。
TG−MSによれば、所定の昇温速度で加熱したときに起こる被検試料の重量変化と被検試料から発生した成分の情報をリアルタイムに評価でき、MS結果で検出される質量数から発生した成分を同定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−34249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンモニアは水溶性であるため、被検試料から発生するアンモニアの多くは水分の発生と似た挙動を示すことが多い。一方、アンモニアの質量数17は水分のフラグメント17と重畳するため、両者が同時に発生するとアンモニアの発生温度や発生量を把握することが困難である。
そのため、アンモニアの発生温度や発生量だけを評価する分析法として昇温脱離分析(TPD)があるが、この分析法は発生ガスのみを評価する方法であり、被検試料の重量変化は把握できない。
【0006】
したがって、従来は、被検試料の重量変化とアンモニアの発生温度および発生量は別々に評価する必要があり、両者を同時に評価できる分析法はなかった。
そこで、本発明は、今まで困難であった被検試料の重量変化とアンモニアの発生温度および発生量を同時に評価する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の発明は、示差熱天秤質量分析によるアンモニアの発生温度および発生量の両者を同時に評価する方法であって、測定した被検試料の質量数18の質量分析プロファイル、および質量数17の質量分析プロファイルを用いて求めた質量数18のフラグメントイオンの強度I18、および質量数17のフラグメントイオンの強度I17から、式[I17−I18×0.212]によって算出される強度プロファイルを用いてアンモニアの発生温度と発生量を算出することを特徴とする。
また、本発明の第2の発明は、第1の発明における示差熱天秤質量分析によるアンモニアの発生温度および発生量の評価方法において、質量数17と質量数18の質量分析プロファイルが得られた温度範囲について、式[I17−I18×0.212]によって強度プロファイルの算出を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水分のフラグメント17と重畳するような場合においても、示差熱天秤質量分析法の結果から、簡便にかつ正確にアンモニアの発生温度および発生量を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1におけるTG−MS測定結果である。
【図2】図1に示したプロファイルのうち質量数18の強度をI18、質量数17の強度をI17としてI17−I18×0.212によって算出される強度プロファイルをプロットした結果である。
【図3】実施例2におけるTG−MS測定結果である。
【図4】図3に示したプロファイルのうち質量数18の強度をI18、質量数17の強度をI17としてI17−I18×0.212によって算出される強度プロファイルをプロットした結果である。
【図5】参考例におけるTG-MS測定結果である。
【図6】図5に示したプロファイルのうち質量数18の強度をI18、質量数17の強度をI17としてI17−I18×0.212によって算出される強度プロファイルをプロットした結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
被検試料から水分が発生すると、質量分析計(MS)では決まった比率でフラグメントイオンが検出され、一般的に用いられるイオン化電圧(70eV)でイオン化した場合には、水分が主となる質量数18の検出強度に対して、質量数17のフラグメントイオンの検出強度は、その21.2%の強度として検出される(NISTデータベース参照)。
この水分に由来する比率を超えて検出される質量数17のフラグメントは、アンモニアの発生によるものと考えられる。
【0011】
このように決まった比率で検出されることを利用してアンモニアの発生温度や発生量を求めるのが本発明の評価方法である。
本法では、アンモニアに由来する質量数17の検出強度:I17(NH)を下記(1)式で求める。
【0012】
【数1】

【0013】
(1)式で求めたアンモニアに由来する質量数17の検出強度:I17(NH)を用い、アンモニアの発生温度は、TG−MS測定を行った結果のうち、横軸を温度または時間、縦軸を「アンモニアに由来する質量数17の検出強度:I17(NH)」としてプロットすることにより、アンモニアの発生によるI17(NH)ピークの開始温度および終了温度を求めることができる。
【0014】
また、アンモニアの発生量は、I17(NH)ピークの面積強度を算出することにより求められ、そのピーク面積が大きいほどアンモニアの発生量が多いことを示す。なお、発生量を求める際のI17(NH)ピークの面積強度は、バックグラウンドを差し引いた強度を用いる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例を用いて本発明を詳細する。
なお、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
金属粉試料aのTG−MS測定を行った。
TG−DTA測定条件は、ヘリウムガスを流量150cc/分で気流した雰囲気中において、温度30〜500℃、昇温速度20℃/分、試料量約60mgで行った。
一方、MS測定条件は、質量数範囲を1〜100amuとして測定モードはスキャン法とした。
【0017】
図1にこの金属粉試料aの水分およびアンモニアに由来するTG−MS測定結果を示す。
ここで、図1のプロットのうち、TGは重量変化率(%)、数字は質量数を表し、プロットした質量数は被検試料からの発生ガスに由来する代表的な質量数である。
図1にプロットした質量数のうち、水分に由来するのは18、17、16、アンモニアに由来するのは17、16であり、質量数17および16は、両者の発生量が重なった強度として検出されている。
【0018】
本発明では、質量数17の検出強度のうち、アンモニアの発生による質量数17の検出強度I17(NH)を求めるもので、そのプロットした結果を図2に示す。
図2から、100〜500℃の間に2段階でアンモニアが発生していることがわかり、バックグラウンドを差し引いた面積強度(A)は7.79×10−9であった。
【実施例2】
【0019】
実施例1と異なる金属粉試料bについて、実施例1と同じ操作を行った。その結果を図3に示す。
図3から、アンモニアの発生温度は70〜500℃において4段階で発生しており、バックグラウンドを差し引いた面積強度(A)は2.02×10−8であった。
【0020】
[評価]
実施例1と実施例2において算出された強度を比較することによって、アンモニアの発生温度および発生量を試料間で相対比較することが可能となる。
【0021】
(参考例)
加熱によって水分のみが発生し、アンモニアが発生しない試料として水酸化アルミニウム粉末を試料として実施例1と同じ操作を実施した。
TG−MS測定結果を図5に示す。図5において、加熱によって質量数18、17が段階的に発生しているのがわかる。
この試料について、式(1)によりアンモニアに由来する質量数17の検出強度:I17(NH)を求めて、アンモニアの発生温度および発生量について評価した結果を図6に示す。図6からは、アンモニアの発生によるI17(NH)の上昇が見られないことから、アンモニアを発生しない試料におけるアンモニアの発生の有無について、本願発明によって評価できることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
示差熱天秤質量分析法を用いたアンモニアの発生温度および発生量の両者を同時に評価する方法であって、
測定した被検試料の質量数18の質量分析プロファイル、および質量数17の質量分析プロファイルを用いて求めた質量数18のフラグメントイオンの強度I18、および質量数17のフラグメントイオンの強度I17から、式[I17−I18×0.212]によって算出される強度プロファイルを用いてアンモニアの発生温度と発生量を求めることを特徴とする示差熱天秤質量分析によるアンモニアの発生温度および発生量の評価方法。
【請求項2】
質量数17と質量数18の質量分析プロファイルが得られた温度範囲について、式[I17−I18×0.212]によって強度プロファイルの算出を行うことを特徴とする請求項1に記載の示差熱天秤質量分析によるアンモニアの発生温度および発生量の評価方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−181159(P2012−181159A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45721(P2011−45721)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】