説明

神経保護化合物

本発明は、式(I)(ここで、RはCH3CH2CO-、(CH3)2CHCO-または(CH3)3CCO-である)の、場合によってプロパン酸のα位の炭素がモノ-またはジ-メチル化された、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体、そのヒドロキシ酸形態および上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩の神経変性疾患、または望ましくない酸化に関連した疾患、または年齢に関連した病理学的過程、または癲癇、癲癇発作または痙攣の予防および/または治療に潜在的に有用な神経保護化合物としての使用が開示されている。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、場合によってそのプロパン酸のα位の炭素がモノ-またはジ-メチル化された、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体の、神経変性疾患または望ましくない酸化に関連した疾患または年齢に関連した病理学的過程、または癲癇、痙攣発作または痙攣の予防および/または治療に潜在的に有用な神経保護化合物としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患および年齢に関連した疾患の発生率が高いことは、世界的規模で最も重要な問題である。従って、これら疾患を予防しまたは緩和する神経保護化合物を探索する必要がある。それら総ての疾患の中で、アルツハイマー病(AD)が最も一般的なものであり、2040年には81百万人がこの疾患に罹ると推定されている(Blennow et al., Lancet 2006; 368: 387-403)。50万人以上が、スペインだけでも現在ADに罹っていると推定されている。この疾患に関連する費用は比較的高く、アルツハイマー病患者の看護による総経費は、米国および英国でそれぞれ81,000および22,000百万ユーロであると計算されている。現在のところ、この疾患を予防しまたは遅らせる有効な薬剤はなく、神経損傷を防止する新規な神経保護化合物を探索しかつ検証する必要がある。
【0003】
現在用いられている薬剤は患者にとってほとんど利益にならず、その疾患のいくつかの症状を一時的に遅らせるが(せいぜい1年間)、その進行を妨げることはないことがわかっていることから、現在は、新たな化合物を得るために様々な方法が行われている。最新の治療方法は、ドネペジル、ガランタミンまたはリバスチグミンのような薬剤によるアセチルコリンエステラーゼの阻害に基づくか、またはメマンチンのグルタメート受容体であるNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)の拮抗作用に基づいている。
【0004】
これらの薬剤があまり成功しなかったため、新たな系列の研究が開始され、その中では、治療薬としての3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素Aレダクターゼ(HMG-CoA)酵素(スタチン類として一層よく知られている)の阻害薬に関する研究が、近年目立ってきている。これらの化合物は、一般に低密度リポタンパク質(LDL)に関連した高いコレステロールレベルを減少させる目的で用いられる。スタチン類の新たな特性は、最近トラウマによって引き起こされるまたは痴呆における脳損傷のレベルで報告されており、新たな酸化防止剤および抗炎症活性が提案され(Pahan, Cell Mol Life Sci.2006; 63[10]:1165-78)、ある種のスタチン類(例えば、シンバスタチン)はマウスにおける学習および記憶能力を高め(Ling et al., Ann Neurol. 2006; 60[6]:729-39)、あるいは癲癇現象に関連した痙攣発作から保護することが例示されている(Lee et al., Neurosci Lett. 2008; 440: 260-4)。更に、スタチン類は、脳血管痙攣の治療(Fandino et al., Neurocirugia. 2007; 18: 16-27)並びに網膜の虚血性損傷によって誘発される神経細胞死(Honjo et al., Arch. Ophthalmol. 2002; 120: 1707-13)に対して有効な結果を示唆する第II相臨床試験においてもまた、それらの有効性が立証されている。それにもかかわらず、様々な市販スタチン類(例えば、アトルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチンなど)の神経保護効果が脂質代謝に対する直接的効果によるものであるかどうか、または対照的に、それらは代替経路の結果であるのかどうかが、現在検討されている。
【発明の概要】
【0005】
スタチン類の潜在的神経保護効果についての文献はあるが、本発明者らは、商業利用されていないモナコリンJ誘導体、具体的には、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体であって、場合によってプロパン酸のα位の炭素がモノ-またはジ-メチル化されたものは、脂質代謝に対するそれらの活性には関わりなく、神経保護薬であることを見出した
【0006】
上記化合物の神経保護活性は、反応性酸素種(ROS)の生成および脂質代謝に対するそれらの活性に関わりなく酸化ストレスによる神経細胞死を引き起こす様々な攻撃(実施例1)、小胞体ストレス(実施例2)によって引き起こされる神経細胞死、アポトーシスによって引き起こされる神経細胞死(実施例3)、ゼブラフィッシュ胚の脳におけるアポトーシスによる死(実施例4)を引き起こす攻撃に対して明らかに示された。また、上記誘導体が血液脳関門を通過すること(実施例5)、およびそれらは海馬(実施例6)、または嗅内外側核または類扁桃核(実施例7)のようなアルツハイマー病に関わる脳の領域において神経保護効果を有することも明らかにされた。最後に、これらの化合物は、抗癲癇薬または抗痙攣薬として作用することが明らかにされた(実施例8)。
【0007】
上記実施例は、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、癲癇重積持続状態、ハンティングトン病など)に関連した神経細胞死、または望ましくない酸化に関連した疾患または年齢に関連した病理学的過程の予防および/または治療における上記化合物の使用の可能性を明らかに示している。
【0008】
従って、本発明は、場合によってそのプロパン酸のα位の炭素がモノ-またはジ-メチル化された、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体の神経保護薬としての使用、特に(i)神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、癲癇重積持続状態、ハンチントン病など)、更に具体的には、上記神経変性疾患に関連したアポトーシス、酸化ストレスまたは小胞体ストレスの過程に対する、または(ii)望ましくない酸化に関連した疾患に対する、または(iii)年齢に関連した病理学的過程、または癲癇、癲癇発作または痙攣に対する神経保護薬としての使用に関する。
【0009】
本発明で得られた結果は、リスクを有する個体群へ予防または治療目的のために適用することに当てはめることができる。
【0010】
従って、一つの態様において、本発明は、場合によってそのプロパン酸のα位の炭素がモノ-またはジ-メチル化された、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体の、神経変性疾患、または望ましくない酸化に関連した疾患、または年齢に関連した病理学的過程、または癲癇、癲癇発作または痙攣の予防および/または治療のための使用に関する。
【0011】
もう一つの態様において、場合によってそのプロパン酸のα位の炭素がモノ-またはジ-メチル化された、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体の、神経変性疾患、または望ましくない酸化に関連した疾患、または年齢に関連した病理学的過程、または癲癇、癲癇発作または痙攣の予防および/または治療のための医薬組成物の調製における使用に関する。ある特定の態様において、上記医薬組成物は上記化合物の1つを含んでなり、一方、もう一つの特定の態様において、上記医薬組成物は上記化合物の2以上を含んでなる。
【0012】
もう一つの態様において、本発明は、治療を必要とする患者において、1以上のこれらの化合物の治療上有効量を上記患者に投与することを含んでなる、神経変性疾患、または望ましくない酸化に関連した疾患、または年齢に関連した病理学的過程、または癲癇、癲癇発作または痙攣の予防および/または治療方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート(NST0003)により阻害されるキサンチン/キサンチンオキシダーゼ(XXO)による酸化ストレスによって誘発される反応性酸素種(ROS)の割合であって、特異的酸化防止剤であるアスコルビン酸(AA)と比較した細胞生存率として、細胞内ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)の倍数値によって正規化した棒グラフである。
【図2】キサンチン/キサンチンオキシダーゼ(XXO)による酸化ストレスによって誘発される神経細胞死の割合の(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)による減少を表すXY散乱チャート。
【図3】HMG-CoAレダクターゼ酵素の特異的阻害薬であるアトルバスタチンと比較して、様々な(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体(NST0003、NST0004およびNST0005)によるHMG-CoAレダクターゼ酵素の阻害を表すシグモイド表現。
【図4】ツニカマイシン(Tm)による小胞体ストレスによって誘発される神経細胞死の割合の(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロピオネート(NST0005)による減少を表すXY散乱チャート。
【図5】XY散乱チャート depicting the decrease by カンプトテシン(Campt)によるアポトーシスによって誘発される神経細胞死の割合の(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2-メチルプロパノエート(NST0004)による減少を表すXY散乱チャート。
【図6】特異的カスパーゼ阻害薬Z-VAD-fmkと比較して、カンプトテシン(Campt)によって誘発され、フローサイトメトリーによって測定されるアポトーシスの(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)による阻害を表す棒グラフ。
【図7】特異的カスパーゼ阻害薬Z-VAD-fmkと比較して、カンプトテシン(Campt)によって誘発され、カスパーゼ3/7活性化の測定によって決定されるアポトーシスの(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)による保護を表す棒グラフ。
【図8】ゼブラフィッシュ胚の脳における第三ブチルヒドロペルオキシド(TBH)によって誘発されるアポトーシスの(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート(NST0003)、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2-メチルプロパノエート(NST0004)および(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)による阻害を表す棒グラフ。
【図9】Pe (cm/s)対血液脳関門[BBB]の通過(%)として表される様々な(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体(NST0003、NST0004およびNST0005)の有効透過率を表すXY散乱チャート。これらのパラメーターの値は、行った実験回数(n)および理論的脂肪親和性指数(cLogP)と共に表に示されている。
【図10】マウス海馬における(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)の神経保護効果。下記の組成の顕微鏡写真を示す: (A)マウス海馬のCA1、CA2およびCA3領域であって、試料をFluoro-Jade Bで染色したもの(100X倍率);(B)マウス海馬のCA1領域であって、微小管結合タンパク質2(MAP2)が検出されるもの(100X);(C)マウス海馬のCA3領域であって、試料をアクリジンオレンジで染色したもの(200X);(D)マウス海馬のCA1、CA2およびCA3領域であって、試料をヘマトキシリンおよびエオシンで染色したもの(100X)。この図は、前処理(興奮毒性物質[カイニン酸またはカイネートまたはKA]の接種の24時間前(-24 h)および0.5時間前(-0.5 h))、興奮毒性物質の接種(接種後0日[d.p.i.])および後処理(7 d.p.i.まで)によるこれらの領域の神経変性、神経炎性ジストロフィー、アポトーシスおよび壊死の組織病理学的分析を表す。
【図11】マウス脳の嗅内外側核および類扁桃核における(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)の神経保護効果。マウス大脳皮質の嗅内外側核および類扁桃核における微小管結合タンパク質2(MAP2)の検出を示す顕微鏡写真の組成(100X倍率)。図は、前処理(興奮毒性物質[カイニン酸またはカイネートまたはKA]の接種の-24および-0.5時間)、興奮毒性物質の接種(接種後0日[d.p.i.])および後処理(7 d.p.i.まで)によるこれらの領域の神経炎性ジストロフィーの組織病理学的分析を表す。
【図12】マウス脳の嗅内外側核および類扁桃核におけるアストログリオーシスに対する(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)の効果。マウス大脳皮質の嗅内外側核および類扁桃核におけるグリア線維酸性タンパク質(GFAP)の検出を示す顕微鏡写真の組成(100X倍率)。この 図は、前処理(興奮毒性物質[カイニン酸またはカイネートまたはKA]の接種の-24および-0.5時間)、興奮毒性物質の接種(接種後0日[d.p.i.])および後処理(7 d.p.i.まで)によるこれらの領域の反応性アストログリオーシスの組織病理学的分析を表す。
【図13】受けた前処理(x-軸)によるKAの接種後の潜伏期(または最初の痙攣の開始時間)(時間(分)の平均値±SEM)(y-軸)に対する(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)の効果を示す棒グラフ。PBSによる前処理のグループを黒色で表し、50 mg/kg体重のNST0005を投与したグループを灰色で表す。
【図14】癲癇誘発物質(カイニン酸またはカイネートまたはKA)の接種後時間に対するRacineスケールによる癲癇誘発症状の重篤度のレベルについての(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)の抗癲癇効果を表すXY散乱チャート(Racine, Electroencephalogr Clin Neurophysiol 1972; 32[3]:281-94)。このチャートは、受け取った処理による癲癇誘発状態の進行を表し、PBSは黒四角および黒線で表され、50 mg/kg体重のNST0005を投与したグループを灰色丸および灰色点線で表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
本特許出願明細書の発明目的の理解を助けるために、本発明について用いられる用語および表現の意味を以下に説明する。
【0015】
本明細書において用いられる、「神経保護」という用語は、例えば、壊死、アポトーシス、自己消耗、酸化的損傷、小胞体損傷、副生成物の沈着、細胞構造の喪失など知られているまたは知られていない任意の機構による神経変性または死の効果の減衰または消失、またはそれらの副作用の減少または消失に関する。
【0016】
本明細書において用いられる、「神経変性疾患」という用語は、神経組織、特にニューロンの変性または劣化から生じ、経時的に機能不全または障害を生じる疾患を包含し、変性という用語は、細胞生育力の喪失、細胞機能の喪失および/または細胞(ニューロンなど)の数の喪失を包含する。神経変性疾患の説明用の非制限的例としては、アルツハイマー病、ハンティングトン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症などが挙げられる。特定の態様において、上記神経変性疾患は、例えば、一般に酸化ストレスまたは小胞体ストレスまたはアポトーシスまたは神経細胞死を引き起こす物質によって引き起こされる神経細胞死に関係した疾患である。
【0017】
本明細書において用いられる、「望ましくない酸化に関連した疾患」という用語は、望ましくない酸化(例えば、過剰酸化)によって引き起こされまたはこの望ましくない酸化が症状である疾患に関する。望ましくない酸化は、独立してターゲットに含まれるまたはに由来の特定のフリーラジカルに由来するタンパク質、DNAおよび/または脂質におけるフリーラジカルによって引き起こされる損傷の結果であることができる。望ましくない酸化は、細胞、組織または臓器の機能不全を引き起こす可能性があり、従って疾患の潜在的機構を形成する可能性があるフリーラジカルの過剰生成を伴う。特定の態様において、上記の望ましくない酸化は、年齢(老化)または神経変性過程によって引き起こされ、また単独でまたは他の因子と共同でいくつかの疾患を発症することもできる。特定の態様において、上記の望ましくない酸化は、酸化ストレスを引き起こす物質によって引き起こされる酸化的損傷に関する。
【0018】
本明細書において用いられる、「年齢に関連した病理学的過程」という用語は、細胞代謝機能不全、ストレス過程、病原体の感染、遺伝子変異、遺伝子感受性、外傷、虚血、癲癇など神経組織の細胞生育力または神経組織の細胞感作の喪失、細胞機能の喪失および/または細胞(ニューロンなど)の数の喪失を引き起こす任意の年齢に関係した事象または事象の組み合わせに関する。
【0019】
本明細書において用いられる、「癲癇」という用語は、場合によりいくつかの臨床的および臨床関連領域での兆候と関連した脳ニューロンによる神経インパルスの過剰な超共時的放出(hypersynchronic discharges)による頻発発作を特徴とする様々な原因を有する慢性的脳症候群に関する。発作は、痙攣性または非痙攣性のものがあり得る。癲癇は多くの原因を有することができ、いくつかの場合には、様々な種類の脳傷害(例えば、脳外傷、骨髄炎の後遺症、腫瘍など)による可能性があり、他の場合には、発作の遺伝学的素因以外には外傷はなく、他の場合には、癲癇の病因は、環境、薬理学的治療、興奮毒性、外傷、ストレス過程、老化、発生の問題、神経疾患、心理学的危機、妊娠中の問題、分娩中の問題などによる可能性がある。
【0020】
本明細書において用いられる、「癲癇または痙攣性」という用語は、例えば、遺伝子、環境、薬理学的治療、興奮毒性、外傷、ストレス過程、老化、発生問題、神経疾患、心理学的危機、妊娠中の問題、分娩中の問題など任意の病因の癲癇発作または痙攣に関する。癲癇発作は、脳の異常な電気活性が身体運動または機能、感情、警戒能力(capacity of being alert)または行動の不随意変化を引き起こすときに起こり、部分的または全身性(痙攣性または非痙攣性)であることができる。
【0021】
本明細書において用いられる、「患者」という用語は、哺乳動物種の一員に関し、家畜、霊長類およびヒトが挙げられるが、これらに限定されず、好ましくは、患者は任意の年齢または人種の男性または女性のヒトである。特定の態様において、上記患者は、老化のような年齢に関連した病理学的過程、または慢性的神経変性疾患のような神経変性疾患に罹っているまたは罹り易い哺乳類である。
【0022】
本明細書において用いられる、「薬学上許容可能な」という用語は、化合物が生理学的に許容可能であり、患者に投与したときに一般にアレルギー反応や胃障害、眩暈など同様の好ましくない反応を引き起こさないという事実に関し、「薬学上許容可能な」という上記用語は、好ましくは、政府の規制機関によって認可されまたは合衆国薬局方または動物での使用について別の一般に認められている薬局方(例えば、欧州薬局方など)に記載されていることを意味する。
【0023】
本明細書において用いられる、「薬学上許容可能な塩」という用語は、「薬学上許容可能な金属塩」ならびに「薬学上許容可能なアミン塩」を包含する。「薬学上許容可能な金属塩」という用語としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄または亜鉛イオンで形成される塩が考えられる。「薬学上許容可能なアミン塩」という用語は、アンモニアおよびカルボン酸と塩を形成するのに十分な強さの有機窒素塩基との塩が考えられる。上記薬学上許容可能な塩は、当業者に知られている通常の方法によって得ることができる。
【0024】
本明細書において用いられる、「スタチン」という用語は、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素Aレダクターゼ(HMG-CoA)酵素の阻害剤に関するものであり、コレステロール生合成の制限段階を触媒し、任意の天然、合成または半合成スタチンを包含する。
【0025】
場合によってそのプロパン酸のα位の炭素がモノ-またはジ-メチル化された、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体の治療的使用
一つの態様において、本発明は、式(I)で表される、場合によってそのプロパン酸のα位の炭素がモノ-またはジ-メチル化された、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-tetra-hydro-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体:
【化1】

(上記式中、
RはCH3CH2CO-、(CH3)2CHCO-または(CH3)3CCO-である)、
そのヒドロキシ酸形態および上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩の:
a)神経変性疾患、または
b)望ましくない酸化に関連した疾患、または
c)年齢に関連した病理学的過程、または
d)癲癇、痙攣発作または痙攣
の予防および/または治療のための使用に関する。
【0026】
一つの特定の態様において、上記式(I)の化合物は、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート[式(I)において、RがCH3CH2CO-である化合物であって、場合によって本明細書の説明においてNST0003として特定される]、そのヒドロキシ酸形態、または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩である。
【0027】
もう一つの特定の態様において、上記式(I)の化合物は、化合物(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2-メチルプロパノエート[式(I)において、Rが(CH3)2CHCO-である化合物であって、場合によって本明細書の説明においてNST0004として特定される]、そのヒドロキシ酸形態、または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩である。
【0028】
もう一つの特定の態様において、上記式(I)の化合物は、化合物 (1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート [式(I)において、Rは(CH3)3CCO-である)の化合物であって、場合によって本明細書の説明においてNST0005として特定される]、そのヒドロキシ酸形態、または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩である。
【0029】
本発明は、上記の1つの式(I)の化合物、そのヒドロキシ酸形態、または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩、および式(I)の2個以上の化合物の混合物、それらのヒドロキシ酸形態またはその薬学上許容可能な塩の使用をともに意図する。従って、一つの特定の態様において、上記式(I)の化合物は、
(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート、
(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2-メチルプロパノエート、
(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート、
それらのヒドロキシ酸形態および上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩、および
それらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
式(I)の化合物は既知の化合物であり、米国特許第4866090号明細書に記載の方法などの通常の半合成法によって、あるいは、生体内変化によってモナコリンJを産生する微生物から発酵によってモナコリンJを産生させた後、発酵培地に、一般式
R1COOH (II)
(式中、R1はCH3CH2-、(CH3)2CH-または(CH3)3C-である)
の酸、または式(II)の上記カルボン酸のハロゲン化物、エステル、アミド、無水物または塩から選択される誘導体などの式(I)の所望な化合物を得るのに適当なアシル化剤を加えることによってモナコリンJのC8位に存在するヒドロキシル基のアシル化を含んでなる方法によって得ることができる。式(II)の化合物の例としては、プロパン、2-メチルプロパン、および2,2-ジメチルプロパン酸が挙げられる。
【0031】
本発明者らが行った多数の試験により、酸化ストレスを引き起こす物質の作用に対する式(I)の化合物の神経保護効果、並びに小胞体ストレスを引き起こす物質の作用に対するその神経保護効果、さらにヒトコリン作動性ニューロンのアポトーシスを引き起こす物質の作用に対するその神経保護効果が明らかにされた。
【0032】
キサンチン/キサンチンオキシダーゼ(XXO)のような酸化ストレスを引き起こす物質の作用に対する神経保護効果が実施例1に記載されている。例としての化合物(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート(NST0003)は、細胞の生存に影響を及ぼすことなく反応性酸素種(ROS)の生成を有意に阻害することができることがこの実施例において観察され、これは式(I)の化合物の神経保護効果を明らかにしている。既知の天然酸化防止剤であるアスコルビン酸(AA)が、ROS生成の阻害のコントロールとして用いられる。
【0033】
式(I)の化合物の神経保護効果を一層良好に定義するために、本発明者らは、細胞死を誘発する酸化ストレスを引き起こす物質としてXXOを用いる酸化ストレスによって引き起こされる神経細胞死の分析によって神経変性過程を一層詳細に分析した。得られた結果(図2)は、例として化合物(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)を投与すると、酸化ストレスによって引き起こされる神経細胞死を定量的かつ有意に減少させることを明らかにしており、これは式(I)の化合物の神経保護能を明らかに示している。この神経保護作用は、図3に示されるようにHMG-CoAレダクターゼ酵素の阻害能(スタチン活性)と独立しており、式(I)の化合物のHMG-CoAレダクターゼ酵素の阻害活性は、既知のスタチンであるアトルバスタチンの上記 HMG-CoAレダクターゼ酵素の阻害活性とは全く異なっていることが分かり、事実、図3では、NST0003化合物のHMG-CoAレダクターゼ酵素阻害能はアトルバスタチンの170分の1未満であり、NST0004化合物の上記酵素阻害能はアトルバスタチンの100分の1未満であり、NST0005化合物のHMG-CoAレダクターゼ酵素阻害能は、アトルバスタチンの4分の1未満であることが分かる。
【0034】
小胞体ストレス を引き起こす物質(ツニカマイシン)の作用に対する神経保護効果は、実施例2に記載されている。この実施例では、化合物(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)が、例として小胞体ストレスによって引き起こされる神経細胞死を定量的かつ有意に減少させることができることが観察されており、これは式(I)の化合物の神経保護能を明らかに示している。
【0035】
アポトーシスを引き起こす物質(カンプトテシン)の作用に対する神経保護効果は、実施例3に記載されている。この実施例では、化合物(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2-メチルプロパノエート(NST0004)が、例としてアポトーシスによって引き起こされる神経細胞死を定量的かつ有意に減少させることができることが観察されており、これは式(I)の化合物の神経保護能を明らかに示している。同様に、式(I)の化合物の神経保護効果を一層良好に定義するために、本発明者らは、アポトーシスによって引き起こされる神経細胞死およびアポトーシスによる神経細胞死の特異的阻害薬であるZ-VAD-fmkと比較した式(I)の化合物によるその阻害をフローサイトメトリー分析することによって、神経変性過程を一層詳細に分析した。実施例3では、化合物(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)が例として、アポトーシスによって引き起こされる神経細胞死を定量的かつ有意に阻害することができることが観察された。
【0036】
動物モデル(ゼブラフィッシュ)における、アポトーシスによって引き起こされる細胞死に対する化合物(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート(NST0003)、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2-メチルプロパノエート(NST0004)および(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)の保護能を、実施例4に示す。上記NST0003、NST0004およびNST0005化合物は、血液脳関門(BBB)を通過することができる(実施例5)。海馬錐体ニューロンの変性、神経炎性ジストロフィー、壊死、アポトーシスおよび大脳皮質におけるアストログリオーシスに対するNST0005化合物の保護効果は、実施例6および7に示されている。
【0037】
更に、癲癇発作および痙攣に対する式(I)の化合物の保護効果は、実施例8に明確に示されている。この実施例では、上記NST0005化合物を例として、興奮毒性物質(カイネート)を上記マウスに投与した後に得られる、マウスの癲癇モデルにおける癲癇発作および痙攣に対する保護が観察され(実施例8、図13および14)、この実施例では、上記 NST0005化合物を投与することにより、コントロール群と比較して痙攣を示した動物数および癲癇重積持続状態に入った動物数が減少することが観察されており、これは、式(I)の化合物の抗癲癇および抗痙攣効果、および癲癇および痙攣発作または痙攣の予防および/または治療におけるそれらの使用の可能性を明らかに示している。
【0038】
神経変性疾患、または望ましくない酸化に関連した疾患、または年齢に関連した病理学的過程、または癲癇、痙攣発作または痙攣の予防および/または治療において投与するため、式(I)の化合物(そのヒドロキシ酸形態およびそれらの薬学上許容可能な塩)を、治療上有効量を1種類以上の薬学上許容可能なキャリヤーまたは賦形剤とともに医薬組成物に処方する。
【0039】
本発明によって提供される医薬組成物は、1種類以上の薬学上許容可能なキャリヤーまたは賦形剤と共に1種類以上の式(I)の化合物、またはそのヒドロキシ酸形態、または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩を含むことができる。特定の態様において、上記医薬組成物は、単一の式(I)の化合物、またはそのヒドロキシ酸形態、または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩を含んでなる。もう一つの特定の態様において、上記医薬組成物は、2種類以上の式(I)の化合物、それらのヒドロキシ酸形態または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩を含んでなる。上記医薬組成物は、神経変性疾患、または望ましくない酸化に関連した疾患、または年齢に関連した病理学的過程、または癲癇、痙攣発作または痙攣の治療に有用である。
【0040】
式(I)の化合物、またはそのヒドロキシ酸形態、または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩を含む医薬組成物は、選択された投与経路、例えば、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内経路など)、局所、直腸経路などによるその投与に適当な任意の医薬投薬形態に処方することができる。実例としては、本発明によって提供される医薬組成物は、経口経路によって投与される固形医薬投薬形態(例えば、顆粒、錠剤、カプセルなど)、経口経路によって投与される液体医薬投薬形態(例えば、溶液、懸濁液、エマルションなど)、非経口経路によって投与される医薬投薬形態(例えば、溶液、懸濁液、エマルションなど)に処方することができる。そのため、それぞれの場合において、適当な薬学上許容可能なキャリヤーおよび賦形剤は、選択された医薬投薬形態および投与経路について選択され、例えば、結合剤、希釈剤、崩壊剤、滑沢剤、湿潤剤などが固形医薬投薬形態の処方について選択され、また緩衝剤、界面活性剤などが液体医薬投薬形態の処方について選択される。上記キャリヤーおよび賦形剤は、薬学上許容可能でありかつ薬理学的に許容できるものでなければならず、投与される患者に何ら悪影響を及ぼすことなく処方物の他成分と組み合わせることができるものでなければならない。上記キャリヤーおよび賦形剤並びに上記活性成分の上記医薬投薬形態についての情報は、薬学論文に見出すことができる。一般に、薬剤の様々な医薬投薬形態およびそれらの調製方法の総説は、生薬学概説(Tratado de Farmacia Galenica), C. Fauli i Trillo著、第1版、1993年Luzan 5, S.A. de
Edicionesに見出すことができる。
【0041】
本発明によって提供される医薬組成物は、少なくとも1種類の式(I)の化合物、またはそのヒドロキシ酸形態、または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩を治療上有効量で含んでなる。本明細書の説明に用いられる方法では、「治療上有効量」という表現は、所望な効果を生じるように計算された化合物の量に関する。患者に投与される式(I)の化合物、またはそのヒドロキシ酸形態、または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩の用量は、用いられる化合物の特徴、例えば、その生物学的半減期および活性、医薬組成物中の化合物の濃度、患者の臨床的状況、病状の重篤度、選択された医薬投薬形態など多数の要因によって広範囲内で変化することができる。本発明によって提供される医薬組成物は、1日1回以上予防または治療目的で投与することができ、あるいは他の投与計画を、必ずしも毎日ではないが、正確な回数で、毎週などを行うことができる。
【0042】
所望ならば、本発明によって提供される医薬組成物は、他の薬剤、例えば、神経変性疾患、または望ましくない酸化に関連した疾患、または年齢に関連した病理学的過程、または癲癇、痙攣発作または痙攣の治療に有用な薬剤と共に用いて、本発明によって提供される医薬組成物の効果を増加させることによって、併用療法を生じることができる。上記の追加薬剤は、同一医薬組成物の部分を形成することができ、あるいは本発明によって提供される医薬組成物と同時に投与するための(同時投与)または本発明によって提供される医薬組成物の投与に関して異なる時間に投与するための(逐次投与)異なる医薬組成物として提供することができる。神経変性疾患、または望ましくない酸化に関連した疾患、または年齢に関連した病理学的過程、または癲癇、痙攣発作または痙攣の治療に有用な上記薬剤の実例となる非制限的実施例としては、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(例えば、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンなど)、NMDAグルタメート受容体拮抗薬(例えば、メマンチンなど)、酸化防止剤(例えば、ビタミン、トコフェロール、カロチノイド、ポリフェノールなど)、天然抽出物(例えば、クルクミン、イチョウ抽出物、メラトニン、バコパ・モンニエラ(Bacopa monniera)抽出物など)、抗癲癇薬(例えば、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、ブロミド、カルバメート、ヒダントイネート、ラモトリジン、ガバペンチンなど)、抗痙攣薬(例えば、フェニトイン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピンなどのような反復活性化したナトリウムチャンネル遮断薬;フェノバルビタール、ベンゾジアゼピンなどのGABA神経伝達物質の作用を増大する薬剤;トピラメート、ラモトリジン、フェルバメートなどのグルタメート調節因子;エトスキミド、バルプロ酸などのT型カルシウムチャンネル遮断薬;ラモトリジン、トピラメート、ゾニサミド、バルプロ酸などのNおよびL型カルシウムチャンネル遮断薬;Hフラックス調節因子、ガバペンチン、ラモトリジンなど;ガバペンチン、レベチラセタムなどの特異的結合部位遮断薬、トピラメートなどのカルボキシルアンヒドラーゼ阻害薬)が挙げられる。
【0043】
もう一つの態様において、本発明は、式(I)の化合物、またはそのヒドロキシ酸形態
または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩の:
神経変性疾患、または
望ましくない酸化に関連した疾患、または
年齢に関連した病理学的過程、または
癲癇、痙攣発作または痙攣
の予防および/または治療のための医薬組成物の調製における使用に関する。
【0044】
式(I)の化合物、そのヒドロキシ酸形態および上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩の特徴、並びに上記疾患の特徴は、既に上記で説明している。
【0045】
もう一つの態様において、本発明は、神経変性疾患、または望ましくない酸化に関連した疾患、または年齢に関連した病理学的過程、または癲癇、痙攣発作または痙攣の予防および/または治療方法であって、治療を必要とする患者に式(I)の化合物、そのヒドロキシ酸形態または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩、または式(I)の化合物、そのヒドロキシ酸形態、または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩を含んでなる本発明によって提供される医薬組成物の治療上有効量を投与することを含んでなる方法に関し、式(I)の化合物、そのヒドロキシ酸形態および上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩の特徴、並びに上記疾患および式(I)の化合物を含んでなる医薬組成物の特徴は、既に上記で説明している。
【0046】
下記の実施例は、本発明の説明のためのものであり、本発明はこれらに限定されると考えるべきではない。
【0047】
上記の例でNST0003、NST0004およびNST0005として特定された化合物は、Hoffman, et al.によって報告された方法に準じて調製した(J. Med. Chem., 1986, 29, 849-852)。
【0048】
実施例1
NST0003による反応性酸素種の生成の阻害およびスタチン活性とは関わりのない酸化ストレスによって誘発される神経細胞死に対するNST0005 による保護(HMG-CoAレダクターゼ酵素の阻害)
【0049】
1.1 NST0003による反応性酸素種(ROS)の生成の阻害
アッセイは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)由来の培養されているヒト神経芽細胞腫SK-N-MC細胞(HTB-10)で行い、総ての場合に、厳格な無菌規則に従い、操作は欧州標準EN 12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。細胞は、1 mMピルビン酸ナトリウム、2 mM L-グルタミン、0.1 mM非必須アミノ酸、0.05 mg/mlゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補足した最小必須イーグル培地(MEM)に保持した。
【0050】
SK-N-MC細胞での反応性酸素種(ROS)生成についてのNST0003化合物[(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート]による阻害を分析した。15継代を超過しないこれらの細胞を、5x104個の細胞/ウェルの細胞濃度で粘着細胞について処理した96ウェルプレートに播種し、プレートの3ウェルにはアッセイのそれぞれの条件について播種した。
【0051】
37℃および5% CO2で24時間細胞インキュベーションの後、細胞処理を、下記の条件:(i)コントロール(培地);(ii)キサンチン/キサンチンオキシダーゼ(XXO)[10μM -100 mU/ml]、細胞の酸化ストレスを生成するのに使用、(iii) XXO[10 μM -100 mU/ml]およびアスコルビン酸(AA)[100 μM]、ROS生成の阻害のポジティブコントロールとして;および(iv)XXO[10 μM -100 mU/ml]および様々な濃度のNST0003[4、10、20および40 μg/ml]について全容100 μlで行った。
【0052】
細胞をこれらの処理を行いながら3時間インキュベーション(37℃および5% CO2)した後、それらをHKRB緩衝液(20 mM HEPES、103 mM NaCl、4.77 mM KCl、0.5 mM CaCl2、1.2 mM MgCl2、1.2 mM KH2PO4、25 mM NaHCO3、15 mMグルコース;pH 7.3)で洗浄し、次いで、2',7'-ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(H2DCFDA)プローブをHKRB緩衝液で希釈して30 μMで加え、更に2時間同一条件でインキュベーションした。プレートの読みを、蛍光計で励起については485 nmおよび発光については538 nmの条件で読み取った。
【0053】
結果を補正(正規化)するため、条件のそれぞれの細胞内ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)測定を用いた。この測定を行うため、細胞をMEM 100 μlで凍結させることによってリーシスし、先のMEMによる洗浄を行った。細胞リーシスを行うため、-20℃で凍結したプレートを少なくとも4時間その温度に保持した。室温で融解した後、培地とリーシスした細胞を貯留し、96ウェルのV底プレートに移し、300xgで10分間遠心分離した。LDHアッセイは、LDH Cytotoxicity検出キット (Roche)によって製造業者の仕様に従って上清について行った。
【0054】
コントロールに関するそれぞれの条件の細胞生存率を計算し、この値をROS生成データーの補正に用いた。図1は、NST0003のアッセイ濃度のそれぞれのXXOによる生成に関する補正したROSの割合を示す。阻害は、NST0003の10および20 μg/mlで観察され、10 μg/mlで最大値33%となり(*p<0.05、Studentのt検定による)、これは細胞における機能的な酸化防止剤効果を示している。既知の酸化防止剤としてのAAは、このアッセイ条件ではROS生成を80%阻害する。
【0055】
式(I)の化合物[NST0003]によるROS生成の減少を示すこれらの結果に基づいて、本発明者らは次に、上記式(I)の化合物が酸化ストレスによって引き起こされる神経細胞死を減少させ、従って神経保護効果があるかどうかを検討した。
【0056】
1.2 スタチン活性とは関わりない酸化ストレスによって誘発される神経細胞死に対するNST0005による保護
このアッセイを行うため、既述のように、酸化的損傷を生じさせ(過酸化水素、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカルなどのフリーラジカルを生じる)、これにより細胞死を誘発するキサンチン/キサンチンオキシダーゼ(XXO)で処理することによって引き起こされる細胞死に対する、NST0005化合物[(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチル-プロパノエート]による阻害を分析した。15継代を超過しないこれらの細胞[SK-N-MC]を、粘着細胞について処理した96ウェルプレートに5x104個の細胞/ウェルの細胞濃度で播種し、プレートの3ウェルにはアッセイのそれぞれの条件について播種した。
【0057】
37℃および5% CO2で24時間細胞をインキュベーションした後、細胞処理を、下記の条件:(i)コントロール(培地)、(ii)キサンチン/キサンチンオキシダーゼ(XXO)[10 μM - 60 mU/ml]、および(iii) XXO[10 μM - 60 mU/ml]、そして様々な濃度のNST0005[4、10、20および40 μg/ml]について全容100 μlで行った。
【0058】
細胞をこれらの処理で22時間インキュベーションした後(37℃および5% CO2)、WST-1試薬(Roche)を加えた。WST-1試験は、代謝活性の測定に基づいている。細胞損傷は、その代謝機能および細胞成長の維持に必要なエネルギーを得る能力を喪失させるので、代謝活性(生)細胞は(ミトコンドリア呼吸鎖の)スクシネート-テトラゾリウムレダクターゼ系によってテトラゾリウム塩をホルマザンに還元する。形成されたホルマザンは440 nmに吸収を有するので、比色により検出することができる。試薬添加の2時間後に、プレートリーダーで440 nmの値を読み取った。
【0059】
得られた結果は、図2に示されるように、XXOによって引き起こされる細胞死に関し、それぞれの処理についての細胞死の割合の減少として表される。保護はNST0005の4、10および20 μg/mlで観察され(*p<0.05、Studentのt検定による)、10 μg/mlで最大値は50%となり、NST0005化合物は、酸化ストレスによって引き起こされるヒト神経細胞(SK-N-MC)の細胞死に対する保護効果を示す。
【0060】
これらの結果に基づき、本発明者らは、神経保護能がスタチン類の活性(すなわち、HMG-CoAレダクターゼ酵素の阻害)によって変化するかどうかを検討することにした。その目的のため、場合によってプロパン酸のα位の炭素がモノ-またはジ-メチル化された、様々な(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体(NST0003、NST0004およびNST0005)によるHMG-CoAレダクターゼ酵素の阻害度を検討した。これらの化合物の効果を、HMG-CoAレダクターゼ酵素に対する強い阻害効果が既に報告されている既知のスタチンであるアトルバスタチンの効果と比較した。
【0061】
反応の際に、HMG-CoAレダクターゼは、還元剤としてのNADPHおよび基質としての3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A(HMG-CoA)を用いた。コレステロール合成を継続するための下記の反応の基質としてのメバロン酸が反応生成物として得られる。検討を行う酵素反応の目的は、下記のように図解的に示される。
【化2】

【0062】
このイン・ビトロアッセイは、340 nmにおける吸光度の減少の分光光度法による測定に基づいており、HMG-CoAレダクターゼ基質の存在下でのHMG-CoAレダクターゼの触媒サブユニットによるNADPHの酸化を表している。このアッセイは、96ウェルプレートで全反応容積200 μlで行った。反応緩衝液(50 mM KH2PO4、1 M KCl、2 mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)、および5 mM DTT, pH=7.3)は、反応を行うときに調製し、37℃に保持した。アッセイは、(i)ブランク(酵素なし)、反応中のNADPHの安定性を報告; (ii)コントロール(試験化合物なし)、および(iii)試験化合物:様々な濃度のアトルバスタチン、NST0003、NST0004およびNST0005[0.01; 0.02; 0.04; 0.1; 0.2; 0.4; 1; 2; 4; 10; 20; 40 and 100
μg/ml]であって、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解したものを包含した。
【0063】
4種類の独立したアッセイを行った。試験化合物をプレートの反応緩衝液に加え、DMSOの濃度を10 μlでの反応によって規格化し、反応中のその不干渉は以前に説明されている。反応混合物に含まれる試薬の濃度は、下記の通りである:0.2 mM HMG-CoA、3 μU/反応HMG-CoAレダクターゼおよび0.2 mM NADPH。短時間の撹拌後、340 nm、37℃の条件で分光光度計でのプレートの値を読み取り、340 nmにおける吸光度の経時的減少を検出した。コントロールに対するHMG-CoAレダクターゼ酵素活性の割合を算出した。IC50は、トリムドSpearman-Karber法(Trimmed Spearman-Karber method)(第1.5版)によって得たデーターを用いて計算した。
【0064】
得られた結果から、図3に示されるようにHMG-CoAレダクターゼに対するアトルバスタチンの阻害効果(IC50=0.09±0.01 μg/ml)が確認されるが、NST0003、NST0004およびNST0005化合物は、既知のスタチンとは全く異なる阻害活性を示し:IC50 (NST0003)= 15.30±5.05 μg/ml、IC50 (NST0004)= 9.05±4.40 μg/ml、およびIC50 (NST0005) = 0.35±0.07 μg/ml、このことは、HMG-CoAレダクターゼの阻害力がアトルバスタチンのそれぞれ170、100および4分の1であることを示している。
【0065】
実施例2
小胞体ストレスによって誘発される神経細胞死のNST0005による阻害
上記で得られた結果に基づき、本発明者らは、場合によってプロパン酸のα位の炭素がモノ-またはジ-メチル化された、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体(NST0003、NST0004およびNST0005)が、小胞体ストレスによって引き起こされる細胞死から保護することができるかどうかを検討することにした。
【0066】
この目的のため、アッセイは、ATCC由来の培養されているヒト神経芽細胞腫SK-N-MC細胞(HTB-10)で行い、総ての場合に、厳格な無菌規則に従い、操作は欧州標準EN 12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。細胞は、1 mMピルビン酸ナトリウム、2 mM L-グルタミン、0.1 mM非必須アミノ酸、0.05 mg/mlゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補足したMEM培地に保持した。
【0067】
タンパク質のN-グリコシル化の阻害により小胞体ストレスを生じ、これにより細胞死を誘発するツニカマイシン(Tm)で処理することによって引き起こされる細胞死の化合物(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)によって引き起こされる阻害を分析した。15継代を超過しないこれらの細胞を、5x104個の細胞/ウェルの細胞濃度で粘着細胞について処理した96ウェルプレートに播種し、プレートの3ウェルにアッセイのそれぞれの条件について播種した。
【0068】
37℃および5% CO2で24時間細胞インキュベーションの後、細胞処理を、下記の条件:(i)コントロール(培地)、(ii)ツニカマイシン[20 μM(SIGMA)、細胞の50%の死を引き起こす]、および(iii)ツニカマイシン[20 μM -100 mU/ml]および様々な濃度のNST0005[4、10、20、20および100 μg/ml]について全容100 μlで行った。
【0069】
細胞をこれらの処理を行いながら22時間インキュベーション(37℃および5% CO2)した後、WST-1試薬(Roche)を加えた。WST-1試験は、上記のように、代謝活性の測定に基づいており、代謝活性(生)細胞は(ミトコンドリア呼吸鎖の)スクシネート-テトラゾリウムレダクターゼ系によってテトラゾリウム塩をホルマザンに還元し、形成されたホルマザンは440 nmに吸収を有するので、比色により検出することができる。試薬添加の2時間後に、プレートリーダーで440 nmの値を読み取った。
【0070】
得られた結果は、図4に示されるように、ツニカマイシン(Tm)によって引き起こされる死に関し、それぞれの処理による細胞死の割合の減少として表される。保護はNST0005の4、10、20および40 μg/mlで観察され(*p<0.05、Studentのt検定による)、20 μg/mlで最大値は38%となり、NST0005化合物は、小胞体ストレスによって引き起こされるヒト神経細胞の死に対する保護効果を示す。
【0071】
実施例3
アポトーシスによって誘発される神経細胞死のNST0004およびNST0005による阻害
上記で得られた結果に基づいて、本発明者らは、場合によってプロパン酸のα位の炭素がモノ-またはジ-メチル化された、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体(NST0003、NST0004およびNST0005)がアポトーシスによって引き起こされる細胞死から保護することができるかどうかを検討することにした。
【0072】
3.1 WST-1試験(Roche)による代謝活性細胞の測定[ホルマザンの形成]
この目的のため、アッセイは、ATCC由来の培養されているヒト神経芽細胞腫SK-N-MC細胞(HTB-10)で行い、総ての場合に、厳格な無菌規則に従い、操作は欧州標準EN 12469に従ってクラスIIの生物学的安全キャビネットで行った。細胞は、1 mMピルビン酸ナトリウム、2 mM L-グルタミン、0.1 mM非必須アミノ酸、0.05 mg/mlゲンタマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を補足したMEM培地に保持した。
【0073】
DNAの重複を防止することによってトポイソメラーゼI酵素を阻害し、これがアポトーシスによる細胞死を誘発するカンプトテシン(Campt)で処理することによって引き起こされる細胞死の化合物(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2-メチルプロパノエート(NST0004)によって引き起こされる阻害を分析した。15継代を超過しないこれらの細胞を、5x104個の細胞/ウェルの細胞濃度で粘着細胞について処理した96ウェルプレートに播種し、プレートの3ウェルにアッセイのそれぞれの条件について播種した。
【0074】
37℃および5% CO2で24時間細胞インキュベーションの後、細胞処理を、下記の条件:(i)コントロール(培地)、(ii)カンプトテシン[20 μM(SIGMA)、細胞の50%の死を引き起こす]、および(iii)カンプトテシン[20 μM]および様々な濃度のNST0004[4、10、20、40および100 μg/ml]について全容100 μlで行った。
【0075】
細胞をこれらの処理を行いながら22時間インキュベーション(37℃および5% CO2)した後、WST-1試薬(Roche)を加えた。WST-1試験は、代謝活性の測定に基づいている。代謝活性(生)細胞は、(ミトコンドリア呼吸鎖の)スクシネート-テトラゾリウムレダクターゼ系によってテトラゾリウム塩をホルマザンに還元し、形成されたホルマザンは440 nmに吸収を有するので、比色により検出することができる。試薬添加の2時間後に、プレートリーダーで440 nmの値を読み取った。
【0076】
得られた結果は、図5に示されるように、カンプトテシン(Campt)によって引き起こされる死に関し、それぞれの処理による細胞死の割合の減少として表される。保護はNST0004の4、10および40 μg/mlで観察され(*p<0.05、Studentのt検定による)、10 μg/mlで最大値は43%となり、NST0004化合物は、アポトーシスによって引き起こされるヒト神経細胞の死に対する保護効果を示す。
【0077】
これらの結果に基づいて、本発明者らは、NST0003、NST0004およびNST0005化合物が、アポトーシスによって引き起こされる細胞死に対し保護するか、フローサイトメトリーによって測定し、検討することにした。
【0078】
3.2 フローサイトメトリーによるアポトーシスの阻害の測定
この目的のため、カンプトテシン(Campt)で処理することによって引き起こされるアポトーシスのNST0005化合物によって引き起こされる阻害を分析した。15継代を超過しないSK-N-MC細胞を、粘着細胞について処理した6ウェルプレートに8x105個の細胞/ウェルの細胞濃度で播種し、プレートの2ウェルにはアッセイのそれぞれの条件について播種した。
【0079】
37℃および5% CO2で24時間細胞をインキュベーションした後、細胞処理を、下記の条件:(i)コントロール(培地)、(ii)カンプトテシン[50 μM]、(iii) カンプトテシン[50 μM]およびZ-VAD-fmk[50 μM](Alexis)、阻害のポジティブコントロールとして、(iv)カンプトテシン[50 μM]および様々な濃度のNST0005[4、10、40および100 μg/ml]について全容2 mlで行った。
【0080】
細胞をこれらの処理で6時間インキュベーションした後(37℃および5% CO2)、それらを培地と共に貯留し、300xgで5分間遠心分離した。培地を取り除き、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、70%エタノール500 μlで-20℃にて2分間固定した。固定し終わったならば、400xgで5分間遠心分離し、PBSで洗浄し、0.05 mg/mlのヨウ化プロピジウムを加え、サイクル緩衝液(0.1%クエン酸ナトリウム、0.3% Nonidet P-40および0.02 mg/ml RNAアーゼ)で希釈し、37℃で1時間インキュベーションした。その後、フローサイトメトリーによって分析し、DNAの量に対するヨウ化プロピジウムの蛍光を比較した。アポトーシスの割合を、それぞれの条件のサブ-G1領域で測定した。
【0081】
得られた結果は、図6に示されるように、カンプトテシンによって引き起こされるアポトーシスに関し、それぞれの処理のアポトーシスの阻害割合として表される。最大保護17%は、NST0005の4 μg/mlの濃度で観察され(*p<0.05、Studentのt検定による)、この化合物は、ヒト神経細胞のアポトーシスに対する保護効果を示す。特異的カスパーゼ阻害薬であるZ-VAD-fmkは、引き起こされたアポトーシスを30%阻害する。
【0082】
3.3 カスパーゼ3および7(カスパーゼ3/7)活性化の測定によるアポトーシスの阻害の測定
この目的のため、培養されているSK-N-MC細胞をカンプトテシン(Campt)で処理することによって引き起こされるアポトーシスに対する、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)によって引き起こされる阻害を、3.1節に記載の作業条件に従って分析した。アポトーシスは、エフェクターカスパーゼの活性化によって定量することができる。カスパーゼ(システイン-プロテアーゼグループに属するタンパク質)は、細胞にアポトーシスを生じるシグナルカスケードを誘発する一連のタンパク質の開裂を媒介する。活性の細胞性カスパーゼ3/7を測定するため、蛍光測定法による検出キット(Apo-ONE(商標)Homogeneous Caspase-3/7, Promega)を用いた。このキットは、培養されている細胞を溶解して浸透性にするリーシス緩衝液およびエフェクターカスパーゼ3および7の基質ローダミン110、ビス-(N-CBZL-アスパルチル-L-グルタミル-L-バリル-L-アスパラギン酸アミド; Z-DEVD-R110)によって形成されている。活性な細胞性カスパーゼ3または7は、基質の開裂を引き起こし、蛍光を放射し、これが蛍光計によって読み取られる。
【0083】
SK-N-MC細胞において50 μMカンプトテシン(Campt)によって引き起こされるカスパーゼ3/7活性化に対する40および100 μg/mlのNST0005化合物の前処理の効果は、このようにして分析した。15継代を超過しないこれらの細胞を、粘着細胞について処理した96ウェルプレートに5x104個の細胞/ウェルの細胞濃度で播種し、プレートの3ウェルにはアッセイのそれぞれの条件について播種した。37℃および5% CO2で24時間細胞をインキュベーションした後、前処理を、40 μg/mlおよび100 μg/mlのNST0005で行った。24時間の前処理の後、細胞処理を下記の条件:(i)コントロール(培地)、(ii)カンプトテシン[50 μM]、培地のみまたは40 μg/mlおよび100 μg/mlのNST0005で前処理したグループについて、および(iii)カンプトテシン[50 μM]およびZ-VAD-fmk[50 μM](Alexis)について行った。
【0084】
細胞をこれらの処理で6時間インキュベーションした後(37℃および5% CO2)、リーシス緩衝液および基質ローダミン110を製造業者によって指示された濃度で加え、それらを室温で30分間インキュベーションした後、細胞を-20℃で一晩凍結させた。それらを翌日解凍し、励起波長499 nmおよび発光波長521 nmの蛍光計でプレートの読みを記録した。
【0085】
図7は、標準的アッセイにおいてCamptによるアポトーシス促進処理で得られる活性に対するカスパーゼ3/7活性化の割合を示す。Z-VAD-fmkカスパーゼ阻害薬は、カスパーゼ3/7活性化を完全に阻害した。一方、NST0005は、100 μg/mlの濃度で33%のカスパーゼ3/7活性化の統計学的に有意な阻害を引き起こし(*p<0.05、Studentのt検定による)、この化合物は、ヒト神経細胞のアポトーシスに対する保護効果を示す。
【0086】
実施例4
ゼブラフィッシュ胚の脳におけるアポトーシスのNST0003、NST0004およびNST0005化合物による阻害
上記で得られた結果に基づいて、本発明者らは、場合によってプロパン酸のα位の炭素がモノ-またはジ-メチル化された、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体(NST0003、NST0004およびNST0005)が、動物モデルのゼブラフィッシュにおけるアポトーシスによって引き起こされる細胞死から保護することができるかどうかを検討することにした。
【0087】
この目的のため、アッセイは、ゼブラフィッシュ胚(受精後96時間)で行った。受精卵は、ゼブラフィッシュの本に記載の方法に準じて行った本発明者らの実験室における成体ゼブラフィッシュ(AB株)の自然出産によって得た[Westerfield, M. (1995)「ゼブラフィッシュの本。ゼブラフィッシュ (Danio rerio)の実験室使用指針(The Zebrafish Book. A Guide for the Laboratory Use of Zebrafish (Danio rerio)」、第3版, University of Oregon Press, Eugene]。卵を産卵後の最初の1時間に集め、洗浄し、「ゼブラフィッシュ。実際的方法(Zebrfafish. Practical approach)」という本に記載されている指針に従って調製した胚水(媒質)(4.9 mM NaCl、0.17 mM KCl、0.33 mM CaCl・2H2O、0.33.mM MgSO4・7H2O, pH 7.2)を含む清浄なペトリ皿に入れた[Nusslein-Volhard, C and Dahm, R (2002) Zebfrafish. Practical approach. Oxford: Oxford University Press]。
【0088】
酸化促進化合物であり、アポトーシスの機構によってゼブラフィッシュ幼生に特異的神経毒性を誘発する第三ブチルヒドロペルオキシド(TBH)化合物によって引き起こされる細胞死に対する、NST0003、NST0004およびNST0005化合物による阻害を分析した。
【0089】
幼生(受精後96時間[hpf])を、96ウェルプレート(3幼生/ウェル)に播種し、実験条件について3回(3ウェル)行うことによってアッセイ内三つ組を得た。幼生を、下記の条件:(i)コントロール(胚媒質)、(ii)TBH[0.45 mM]、最大耐量(MTD)と一致し、幼生の神経毒性を誘発するが、死は誘発しない、および(iii)TBH[0.45 mM]およびNST0003、NST0004およびNST0005(いずれも1 μg/mlの濃度)について100 μl/ウェルの胚媒質の全容で処理した。
【0090】
幼生を処理しながら24時間インキュベーションした後、アクリジンオレンジ(AO)[3,6-ビス(ジメチルアミノ)アクリジニウム塩酸・塩化亜鉛の複塩(Sigma-Aldrich)]で染色することによって加工し、神経毒素によって誘発されるアポトーシスの割合を測定した。動物全体では、AOは、アポトーシスを経験している細胞に主に形成される酸顆粒に蓄積する。AOによるこの染色は、アポトーシスをもたらす細胞とキイロショウジョウハエの生胚における壊死性細胞(それらを染色しない)を識別することができ、更にそれは、丸ごとのゼブラフィッシュにおけるアポトーシス細胞を同定するのに一般に用いられる手法であることが立証されている。
【0091】
従って、コントロール幼生および処理済幼生を、28.5℃の胚水中AO 1 μg/mli 60分間浸漬した。この後、AOを胚水で洗浄することによって除去し、それぞれ10分間ずつ全部で5回洗浄した。AOは蛍光化合物であり、蛍光計で容易に測定し、定量することができる。従って、幼生をトリカイン(3-アミノ安息香酸エチルエステル)で麻酔し、ホモジナイズした後、蛍光プレートリーダー(励起: 488 nm;発光: 530 nm)で蛍光を読み取った。
【0092】
得られた結果は、図8に示されるように、TBHによって引き起こされる死に関するそれぞれの処理についてのアポトーシスの割合として表される。神経保護が、1 μg/mlの濃度で試験した3化合物で観察され:NST0003化合物は神経毒によって誘発されたアポトーシスを50.7 ± 17.1%だけ減少させ、この保護は統計学的に有意であり(*p<0.05、Studentのt検定による)、NST0004化合物もTBHによって引き起こされたアポトーシスを減少させ、損傷誘発化合物(TBH)によって引き起こされるアポトーシスを45.3 ± 18.9%だけ減少させることができ、この減少も有意であり(*p<0.05、Studentのt検定による)、NST0005化合物もアポトーシスを高い割合で減少させ、TBHによって誘発されたアポトーシスを34.3 ± 17.3%阻害し、高い割合ではあったが、統計学的に有意ではなかった。
【0093】
実施例5
イン・ビトロアッセイ(PAMPA)および理論的脂肪親和性の計算によるNST0003、NST0004およびNST0005の血液脳関門の通過
このアッセイの目的は、場合によってプロパン酸のα位の炭素がモノ-またはジ-メチル化された、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート誘導体(NST0003、NST0004およびNST0005)が血液脳関門(BBB)を通過できるかどうかを予測することであった。この目的のため、能動輸送を防止する受動拡散によって化合物の通過を行うサンドイッチシステムを用いるPAMPA(並列人工膜透過アッセイ)アッセイを用いた。高BBB透過性化合物であるベラパミルをポジティブコントロールとして用い、一方、血液脳関門を通過しない化合物であるテオフィリンをネガティブコントロールとして用いた。
【0094】
ヒトBBBを形成しているリン脂質組成を有するブタ脳に由来し、PBL(ブタ極性脳脂質)と呼ばれる市販脂質の混合物を、BBBの代わりに用い、ガラスバイアル中100 μg/mlの濃度でドデカンに溶解して-20℃で保管した。ベラパミルおよびテオフィリンをDMSO中10 mMで調製し、NST0003、NST0004およびNST0005の酸形態を水中で調製し、0.1 N NaOHにより4℃で12時間活性化した。
【0095】
アッセイの時点では、100 μMで評価を行う化合物1.5 mlをリン酸緩衝液pH 7.4で調製し、1%のDMSOの一定濃度を保持した。20 μg/mlのPBL 5 μlを、96ウェルのポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜を有し細孔径が45 μm (MAIPN4550、Millipore)フィルタープレートに加えた。2分後、化合物の希釈に用いたリン酸緩衝液300 μlを加えた。このプレートを「アクセプター」プレートと考え、サンドイッチの上部に置いた。100 μMの化合物300 μlを、上記のもの(MATRNP550、Millipore)で組み立てたもう一つの96ウェルプレート(「ドナー」と呼ばれる)に3個ずつくわえた。更に、用いたリン酸緩衝液の1% DMSOを有するブランクを包含した。アクセプタープレートを、サンドイッチシステムを形成するドナープレート上に注意しながら置いた。検討の目的である化合物は、ドナープレートのウェルからアクセプタープレートの対応するウェルに18時間拡散し、系は完全なままであった。調製した残りの化合物を、プレートによって形成されたサンドイッチシステムと同じ湿度、温度および暗さの条件で保存した。その後、ドナープレートおよびアクセプタープレートのウェルの100 μlを、紫外部(UV)読み取り用の特殊な96ウェルプレートに移した。更に、アッセイを行う目的で調製して同じやり方で保管した化合物100 μlを、3個ずつプレート(基底ウェル)に移した。プレートを分光光度計に導入して、230-498 nmのUVで掃引し、4 nmごとに読み取った。分光光度計によって提供されたデーターから、障壁交差の割合並びに有効透過率(Pe)を下式:
【数1】

(上記式中、
【数2】

であり、
[Drug] acceptor =アクセプターウェルの吸光度
[Drug] equilibrium =基底ウェル/2の平均の吸光度
VA=アクセプターウェルの容積=0.3 cm3
VD=ドナーウェルの容積=0.3 cm3
面積=0.24 cm2
時間=64,000秒)
を適用することによって計算した。
【0096】
NST0003、NST0004およびNST0005化合物の脂肪親和性の理論的計算を、更にソフトウェアに化学構造を入れることによって、CLOGPプログラム(OSIRIS Property Explorer)により、オクタノール/水分配係数の対数(cLogP)を測定することによっても行った。
【0097】
図9は、PAMPA法によって計算したBBB通過の結果(Peと表される)を示し、BBB通過率と相関している。更に、添付表(図9)は、cLogP理論的脂肪親和性指数を示す。3種類の誘導体から、NST0005はBBBを通過する最も高い能力を有する化合物であり、その高い脂肪親和性と相関している。
【0098】
実施例6
マウス脳の海馬錐体ニューロンの変性、神経炎性ジストロフィー、壊死およびアポトーシスに対するNST0005による保護
【0099】
6.1 興奮毒性物質によって引き起こされるマウスの海馬における神経変性に対するNST0005の保護効果
上記結果に基づいて、本発明者らは、ヒトコリン作動性ニューロンで示される(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)の神経保護効果が、カイネート(KA)の投与によるマウスの散在性アルツハイマー病モデルで確かめられるかどうかを検討することにした。
【0100】
実験過程中に包含される総ての動物は、12週齢の雄のFVB/NHan株であった。実験は、「動物操作指針(Guidance on the Operation of Animals)」(Scientific Procedures, Act. 1986)に厳密に従って行った。動物には、それぞれの隔離期間を設け、また接種および取り扱いについて汚染の可能性を最小限にするため最大限の注意を払いながら処理した。
【0101】
16匹の動物をこのアッセイに用い、投与は、総て100 μlの容量で腹腔内(i.p.)経路によって下記の方式に従って行った。
i) PBS+PBS+PBS方式: 4匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物に新たな用量のPBSをおよび次の7日間に1日量のPBSを接種した。
ii) PBS+KA+PBS方式: 6匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物に25 mg/kgの用量のカイネートをおよび次の7日間に1日量のPBSを接種した。
iii) NST0005+KA+NST0005方式: 6匹の動物に最初にNST0005を50 mg/kgの1日量で2日間投与し、2日目に動物に25 mg/kgの用量のカイネートをおよび次の7日間に50 mg/kgの1日量のNST0005を接種した。
【0102】
7日間の投与期間の後、動物を犠牲死させ、脳を切開した。脳試料を加工し、パラフィンで包んだ。Fluoro-Jade B(商標) (FJB)蛍光染料を5 μmの厚さの切片に用いて、海馬の神経変性を分析した。
【0103】
図10に示されるように、列AのPBS+KA+PBS投与方式では、PBS+PBS+PBS投与方式と比較して、海馬のCA2およびCA3領域におけるFJBポジティブニューロンが増加した。しかしながら、NST0005+KA+NST0005グループの試料は、コントロール(PBS+PBS+PBSグループ)と同様の染色パターンを示し、CA2およびCA3領域における神経変性の証拠は見られなかった。
【0104】
要約すれば、NST0005による前処理(NST0005+KA+NST0005グループ)は、海馬においてKAによって引き起こされる神経変性から完全に保護した。
【0105】
6.2 興奮毒性物質によって引き起こされるマウスの海馬における神経炎性ジストロフィーに対するNST0005の保護効果
前節で示された神経保護結果に基づいて、本発明者らは、カイネート(KA)の投与に対するマウスの海馬におけるNST0005の神経保護効果に、神経炎性ジストロフィーなどの神経損傷の別の徴候の保護が伴うかどうかを検討することにした。この目的のため、6.1節と同じ実験計画を用いた。7日間の投与期間の後、動物を犠牲死し、脳を切開した。脳試料を加工し、パラフィンで包んだ。微小管結合タンパク質2(MAP2)の明視野免疫組織化学を5 μmの厚さの切片に用いて、海馬の神経炎性ジストロフィーを分析した。
【0106】
図10に示されるように、列BのPBS+KA+PBS投与方式では、PBS+PBS+PBS投与方式では均一なラベリングを示しているのに対して、特に海馬のCA1部分ではMAP2ラベリングが減少した。次に、NST0005+KA+NST0005グループの試料は、コントロール(PBS+PBS+PBSグループ)と同様な染色パターンを示し、CA2 and CA3領域における神経変性の証拠はなかった。
【0107】
要約すれば、NST0005による前処理(NST0005+KA+NST0005グループ)は神経変性から保護し、海馬におけるKAによって引き起こされる神経炎性ジストロフィーを有意に防止する。
【0108】
6.3 興奮毒性物質によって引き起こされるマウスの海馬におけるアポトーシスに対するNST0005の保護効果
前節に示された神経保護結果に基づいて、本発明者らは、カイネート(KA)の投与に対するマウスの海馬におけるNST0005の神経保護効果がアポトーシスによる神経細胞死の阻害を伴うかどうかを検討することにした。この目的のため、6.1節と同じ実験計画を用いた。7日間の投与期間の後、動物を犠牲死させ、脳を切開した。脳試料を加工し、パラフィンで包んだ。アクリジンオレンジ(AO)蛍光染料を5 μmの厚さの切片に用いて、海馬におけるアポトーシスを分析した。
【0109】
図10に示されるように、列CのPBS+KA+PBS投与方式では、PBS+PBS+PBS投与方式と比較して海馬のCA3領域におけるAOについてニューロンポジティブの数が増加した。驚くべきことには、NST0005+KA+NST0005グループの試料は、コントロール(PBS+PBS+PBSグループ)と同様の染色パターンを示し、CA3領域におけるAOについてのニューロンポジティブは劇的に減少した。
【0110】
要約すれば、NST0005による前処理(NST0005+KA+NST0005グループ)は、海馬におけるKAによって引き起こされるアポトーシスによる神経損傷、神経変性および神経細胞死をも防止する。
【0111】
6.4 マウスの海馬における興奮毒性物質によって引き起こされる壊死に対するNST0005の保護効果
前節で示された神経保護結果に基づいて、本発明者らは、カイネート(KA)の投与に対するマウスの海馬におけるNST0005の神経保護効果が、壊死による神経細胞死の阻害を伴うかどうかを検討することにした。その目的のため、6.1節と同じ実験計画を用いた。7日間の投与期間の後、動物を犠牲死させ、脳を切開した。脳試料を加工し、パラフィンで包んだ。ヘマトキシリンおよびエオシン染色を5 μmの厚さの切片に用いて、海馬の壊死を分析した。
【0112】
図10に示されるように、列DのPBS+KA+PBS投与方式では、海馬のCA3領域の錐体ニューロンの完全な構造を示すPBS+PBS+PBS投与方式と比較して、CA3領域における多数の濃縮核(pyknotic nuclei)による海馬の細胞構造の破壊を誘発する。NST0005+KA+NST0005グループの試料は、CA3領域の錐体ニューロンの構造を保持しているコントロール(PBS+PBS+PBSグループ)と同様の染色パターンを示す。
【0113】
要約すれば、NST0005による前処理(NST0005+KA+NST0005グループ)は、海馬のKAによって引き起こされる壊死による神経細胞死を実質的に防止する。
【0114】
実施例7
マウスの大脳皮質における神経炎性ジストロフィーおよびアストログリオーシスのNST0005による保護
【0115】
7.1 興奮毒性物質によって引き起こされるマウスの大脳皮質における神経炎性ジストロフィーによる神経損傷に対するNST0005の保護効果
実施例6の結果に基づいて、本発明者らは、カイネート(KA)の投与によるマウス海馬のニューロンで明らかにされた(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)の神経保護効果が、大脳皮質の嗅内外側(lateral entorhinal)および類扁桃核などのアルツハイマー病に関与する脳の他領域にも及ぶかどうかを検討することにした。
【0116】
実験過程中に包含される総ての動物は、12週齢の雄のFVB/NHan株であった。実験は、「動物操作指針(Guidance on the Operation of Animals)」(Scientific Procedures, Act. 1986)に厳密に従って行った。動物には、それぞれの隔離期間を設け、また接種および取り扱いについて汚染の可能性を最小限にするため最大限の注意を払いながら処理した。
【0117】
16匹の動物をこのアッセイに用い、投与は、総て100 μlの容量で腹腔内(i.p.)経路によって下記の方式に従って行った。
i) PBS+PBS+PBS方式: 4匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物に新たな用量のPBSをおよび次の7日間に1日量のPBSを接種した。
ii) PBS+KA+PBS方式: 6匹の動物に最初にPBSを1日量で2日間投与し、2日目に動物に25 mg/kgの用量のカイネートをおよび次の7日間に1日量のPBSを接種した。
iii) NST0005+KA+NST0005方式: 6匹の動物に最初にNST0005を50 mg/kgの1日量で2日間投与し、2日目に動物に25 mg/kgの用量のカイネートをおよび次の7日間に50 mg/kgの1日量のNST0005を接種した。
【0118】
7日間の投与期間の後、動物を犠牲死し、脳を切開した。脳試料を加工し、パラフィンで包んだ。微小管結合タンパク質2(MAP2)の明視野免疫組織化学を5 μmの厚さの切片に用いて、海馬の神経炎性ジストロフィーを分析した。
【0119】
図11に示されるように、PBS+KA+PBS投与方式は、均一なラベリングを示すPBS+PBS+PBS投与方式と比較して皮質の嗅内外側核および類扁桃核のいずれにおいてもMAP2ラベリングが減少する。しかしながら、NST0005+KA+NST0005グループの試料は、辺縁系のこれら2領域におけるPBS+KA+PBSグループよりもMAP2ラベリングの喪失はずっと低い。
【0120】
要約すると、NST0005による前処理(NST0005+KA+NST0005グループ)は、大脳皮質のKAによって引き起こされる神経炎性ジストロフィーによる神経損傷を有意に減少させる。
【0121】
7.2 興奮毒性物質によって引き起こされるマウス大脳皮質におけるアストログリオーシスに対するNST0005の保護効果
前節で示された神経保護結果に基づいて、本発明者らは、カイネート(KA)の投与に対するマウス大脳皮質におけるNST0005の神経保護効果が、神経損傷の結果として誘発される反応性アストログリオーシスの減少の阻害を伴うかどうかを検討することにした。この目的のため、7.1節と同じ実験計画をも用いた。7日間の投与期間の後、動物を犠牲死し、脳を切開した。脳試料を加工し、パラフィンで包んだ。グリア線維酸性タンパク質(GFAP)の明視野免疫組織化学を5 μmの厚さの切片に用いて、大脳皮質の反応性アストログリオーシスを分析した。
【0122】
図12に示されるように、PBS+KA+PBS投与方式は、大脳皮質の嗅内外側核および類扁桃核における星状細胞を活性化して増殖させるが、PBS+PBS+PBS投与方式は上記領域ではアストログリオーシスを示さない。しかしながら、NST0005+KA+NST0005グループの試料は、コントロール(PBS+PBS+PBSグループ)と同様にGFAPについてラベリングパターンを示したが、大脳皮質のこれらの領域においては星状細胞の活性化または増殖の証拠は見られなかった。
【0123】
要約すると、NST0005による前処理(NST0005+KA+NST0005グループ)は、神経損傷を有意に減少させ、大脳皮質のKAによって引き起こされる反応性アストログリオーシスを有意に防止する。
【0124】
実施例8
マウスに投与された興奮毒性物質の作用に対するNST0005の抗癲癇効果
興奮毒性物質を動物に投与すると、幾つかの場合には、癲癇発作および痙攣が誘発されることが知られている。従って、本発明者らは、(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート(NST0005)の神経保護効果が、興奮毒性物質によって引き起こされる抗癲癇効果を伴うかどうかを検討することにした。
【0125】
実験過程中に包含される総ての動物は、12週齢の雄のFVB/NHan株であった。実験は、「動物操作指針(Guidance on the Operation of Animals)」(Scientific Procedures, Act. 1986)に厳密に従って行った。動物には、それぞれの隔離期間を設け、また接種および取り扱いについて汚染の可能性を最小限にするため最大限の注意を払いながら処理した。
【0126】
総ての動物に、PBSに溶解したカイネート(KA)25 mg/kgを腹腔内に接種した。9匹の動物を、KA接種の24および0.5時間前にPBSの腹腔内投与によって前処理し(PBS+KA投与方式)、9匹はKA接種の24および0.5時間前にNST0005を50 mg/kgの用量で腹腔内投与によって前処理した(NST0005+KA投与方式)。接種後、動物を個別にトレーに収容して、観察した。Racine尺度による動物の最大癲癇レベルを、観察中に10分毎に接種後(m.p.i.)少なくとも120分間記録した。
【0127】
次に、PBS(PBS+KA)およびNST0005(NST0005+KA)の投与間の癲癇誘発現象の比較検討を行い、そのデーターは表1に示されるとおりであった。
【0128】
【表1】

【0129】
驚くべきことには、NST0005化合物が抗癲癇および抗痙攣薬であることを示しているPBS+KA投与方式グループでは66.7% (6/9)あったのと比較して、NST0005+KAグループで痙攣を示した動物の割合は33.3%(3/9)であり、動物の割合に差異が見られた。更に、癲癇重積持続状態(間断なしの少なくとも30分間の強直性-間代性発作として定義される)に入る動物の割合は、NST0005+KAグループでは22.2%(2/9)であったのに対して、PBS+KA投与方式グループでは66.7%(6/9)であり、差異が見られ、NST0005化合物は抗癲癇薬であることを示している。NST0005+KAグループでは死亡率が11.1%(1/9)であったのに対して、PBS+KAグループでは33.3%(3/9)であったので、この抗癲癇効果は、痙攣性エピソードによって誘発される死からも保護する。
【0130】
これらの結果を確かめるため、様々なグループでの潜伏期(最初の痙攣が現れる時間として定義される)を検討し、NST0005+KAグループの潜伏期(108.9±5.9分)は、図13に示されるように、NST0005化合物の抗癲癇および抗痙攣効果が確かめられているPBS+KA投与方式(60.6±15.6分)と比較して、統計学的に有意に大きい(*p<0.05、Studentのt検定による)ことが観察された。
【0131】
これらの結果に基づいて、本発明者らは、抗癲癇および抗痙攣効果が癲癇レベルおよび症状の重篤度と相関しているかどうかを検討することにした。このようにして、PBS+KA方式でのグループの動物は、Racine尺度で癲癇レベル4を上回ったのに対して、NST0005+KA方式でのマウスは、いずれの時間にも癲癇レベル3達しないことが観察された。従って、図14に示されるように、KAによって引き起こされる癲癇誘発症状の開始動態は、NST0005およびPBSの投与の間で統計学的に有意に異なっている(F(1,16) = 4.72; *p< 0.05;Newman-Keuls post-hoc検定を用いるANOVA検定による分散の一般的解析)。これらの結果により、興奮毒性物質の投与に対するNST0005化合物の抗癲癇および抗痙攣効果が確かめられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物:
【化1】

(上記式中、
RはCH3CH2CO-、(CH3)2CHCO-または(CH3)3CCO-である)、
そのヒドロキシ酸形態および上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩であって、
a)神経変性疾患、または
b)望ましくない酸化に関連した疾患、または
c)年齢に関連した病理学的過程、または
d)癲癇、痙攣発作または痙攣
の予防および/または治療に用いられる化合物。
【請求項2】
(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート、そのヒドロキシ酸形態、または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2-メチルプロパノエート、そのヒドロキシ酸形態、または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート、そのヒドロキシ酸形態、または上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニルプロパノエート、
(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2-メチルプロパノエート、
(1S,3R,7S,8S,8aR)-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-[(2R,4R)-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル]エチル-1-ナフタレニル2,2-ジメチルプロパノエート、
それらのヒドロキシ酸形態および上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩、および
それらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式(I)で表される化合物:
【化2】

(上記式中、
RはCH3CH2CO-、(CH3)2CHCO-または(CH3)3CCO-である)、
そのヒドロキシ酸形態および上記ヒドロキシ酸の薬学上許容可能な塩の:
a)神経変性疾患、または
b)望ましくない酸化に関連した疾患、または
c) 年齢に関連した病理学的過程、または
d)癲癇、痙攣発作または痙攣
の予防および/または治療用医薬組成物の調製のための、使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−519672(P2012−519672A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552478(P2011−552478)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070126
【国際公開番号】WO2010/100312
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(510255244)ニューロン ビオファルマ、ソシエダッド、アノニマ (3)
【氏名又は名称原語表記】NEURON BIOPHARMA, S.A.
【Fターム(参考)】