説明

神経保護鉄キレート剤及びそれを含む医薬組成物

【課題】本発明の課題は、神経保護特性及び良好な輸送特性を示す新規鉄キレート剤等を提供することにある。
【解決手段】神経保護特性及び良好な輸送特性を示す新規鉄キレート剤が、鉄過負荷及び酸化ストレスに関連する疾患、障害又は状態(例えば、神経変性疾患若しくは神経変性障害又は脳血管疾患若しくは脳血管障害、新生物疾患、血色素症、サラセミア、心血管疾患、糖尿病、炎症障害、アントラサイクリン心毒性、ウイルス感染、原生動物感染、酵母感染)の処置、加齢の遅延、並びに皮膚の加齢の予防及び/又は治療、並びに日光及び/又はUV光に対する皮膚の保護のための鉄キレート化治療において有用である。鉄キレート剤機能は、8−ヒドロキシキノリン部分、ヒドロキシピリジノン部分又はヒドロキサメート部分によって提供され、神経保護機能が、例えば神経保護ペプチドによってこの化合物に付与され、抗アポトーシス機能及び神経保護機能を合せた機能がプロパルギル基によってこの化合物に付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄に対する特異性を有し、かつ鉄キレート化治療による疾患、障害及び状態の治療に有用な両親媒性金属キレート剤に関する。1態様において、この鉄キレート剤は、所望の細胞膜、特に血液脳関門(BBB)に、親油性媒体における輸送特性を提供するように設計される。別の態様において、これらのキレート剤は、鉄キレート剤機能並びに神経保護機能を付与する残基及び/又は抗アポトーシス機能及び神経保護機能の両方を付与する残基を有する多機能性化合物の一部である。本発明はさらに、鉄過負荷及び酸化ストレスに関連する疾患、障害及び状態、特にパーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、フリードライヒ失調症、ハレルフォルデン−スパッツ病、癲癇及び神経外傷のような神経変性疾患、神経変性状態及び神経変性障害の治療及び/又は予防のための医薬組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄は、高度に反応性かつ毒性のヒドロキシル基の産生を増強し、従って酸化損傷を刺激することが知られている。ヒトは過剰の鉄を排除する生理学的手段を有さないので、鉄は多数の疾患、障害及び状態に関連している。
【0003】
身体が過剰量の鉄を蓄積する状態である遺伝性血色素症は、ヒトにおいて最も一般的な遺伝性疾患の1つである。米国において、百万人もの人々が血色素症の証拠を有しており、10人に1人までの人々が、この障害の遺伝子を有する可能性がある。血色素症は、生涯にわたる食餌からの鉄の過剰な吸収によって特徴付けられ、鉄が身体器官中に蓄積し、最終的に炎症及び損傷を引き起こす。重篤かつ致死的でさえある健康上の影響が生じ得、これには、肝硬変、肝臓癌、心臓の異常(心不全を引き起こす)、糖尿病、性的不能及び関節炎が含まれる。
【0004】
臨床的サラセミア(重症(マヨール)及び軽症(ミノール))は、ヘモグロビンの産生の欠損によって特徴付けられる遺伝性の障害であり、赤血球の産生の減少及び破壊の増大を引き起こす。鉄過負荷を生じる重篤なサラセミアでは、規則的な輸血及びフォレート補充が与えられる。通常、鉄は大量に摂取されるものではないので、身体は身体が受容した鉄を保持しかつそれ自体いずれの過剰な鉄を排除する手段も有さない。従って、鉄過負荷は、工業国においてサラセミア患者の間で主要な死亡原因である。
【0005】
頻繁又は規則的な赤血球輸血を受ける、不十分な赤血球造血に起因する鉄吸収の増大と合せてb重症サラセミア(TM)又は不応性貧血(骨髄異形成症候群と同義)を有する患者は、鉄過負荷を迅速に発症する。鉄の毒性は、その負荷が、血液中の可動性細胞内プール又は遊離の非トランスフェリン結合プールを結合する組織結合能力又は血液結合能力を超える場合に始まり、未結合の鉄はヒドロキシラジカルの形成を加速して細胞に対する過酸化損傷を生じる。キレート化治療の不在下では、慢性的に輸血された患者は、膵臓、肝臓及び心臓の機能における進行性の悪化を必然的に受け、かつ通常、鉄過負荷の結果として、生命を脅かす不整脈又は難治性の心不全に罹患する。これは通常、重症サラセミアを有する、あまりキレート化されていないか又はキレート化されていない患者において、人生の次の10年で生じる。
【0006】
天然に存在するシデロホアであり、保存プールからそれ自体が迅速に更新される不安定な細胞内プール中の鉄をキレート化するデフェロキサミン(DFO)は、1960年代初期に導入された。胃腸管からのDFOの最小の吸収及びその短い血中半減期は、有効なキレート化治療の主な目的としての正味のネガティブな鉄バランスを達成するために、この薬物の緩徐な延長された非経口投与を必要とする。DFOが高価かつ不便であることが、経口的に活性な鉄キレート剤についての研究を導いており、デフェリプロン(deferiprone)(L1)が重症サラセミア患者の経口処置のために過去数年間使用されているが、無顆粒球症の危険性は、この薬物の使用の注意深い評価を要求する。他の経口的に活性な鉄キレート剤は、過去十年間に臨床試験に達しているが、鉄キレート化治療におけるそれらの使用は、さらなる調査を必要とする。鉄過負荷の疾患、障害及び状態の処置のための、適切な、好ましくは経口的に有効な鉄キレート剤の同定は、なお未解決のままの問題である。
【0007】
神経変性疾患(例えば、パーキンソン病(PD)及びアルツハイマー病(AD))は、現時点で治癒が得られない神経変性症候群である。両疾患は、最も広範な神経変性障害である。それぞれ、50歳を超える年齢の集団の約0.5%及び4〜8%がこれらの疾患に罹患しており、それにより、より加齢した集団においてはさらに数が増えることを考慮すると、社会にとっての経済的負担の増大を形成する。従って、神経変性疾患を予防(神経保護)及び処置するのに有効な薬物の開発が、全社会にとって必須である。
【0008】
in vivo、in vitro及び関連の動物モデルを含む多数の研究により、フリーラジカル産生と神経変性疾患及び神経変性障害(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病及び脳卒中並びにALS、多発性硬化症、フリードライヒ失調症、ハレルフォルデン−スパッツ病、癲癇及び神経外傷)との間の関連性が示されている。
【0009】
この理由のために、8−ヒドロキシキノリン及びヒドロキシピリジノンが、抗酸化剤型の薬物として鉄結合のために提案されている。神経変性疾患における鉄蓄積は共通の特徴なので、本発明者らは、鉄蓄積が、神経変性のプロセスにおいて中心的な役割を有することを以前に示していた(Youdim、1988)。本発明者ら(非特許文献10)並びに他者(非特許文献8;非特許文献25)は、アルツハイマー病及びパーキンソン病のための治療剤としての鉄キレート剤の開発をたびたび示唆してきた。
【0010】
パーキンソン病では、酸素フリーラジカルの形成に対する脳の防御機構が欠損している。パーキンソン病の脳の黒質では、抗酸化酵素の活性が低下している。さらに、鉄濃度は、パーキンソン病の黒質緻密部中及び黒化したドパミンニューロン内で有意に上昇する。最近の研究はまた、脳中の白質路及び核における鉄の有意な蓄積が、神経変性障害及び運動障害の症状の発症に先行することを示している。実際、鉄はBBBを横切らないので、神経変性部位での鉄の蓄積は、神経変性疾患の不思議の1つである。鉄が何処に由来するか、なぜ蓄積するかは未知である。
【0011】
アルツハイマー病(AD)の病因及びコリン作用性ニューロン変性の機構は、不明のままである。それにもかかわらず、ADの化学的病理学は、パーキンソン病に対する以下の多数の類似性を示す:いくつか挙げると、増大した鉄の関与、シトクロムCの放出、α−シヌクレイン凝集の増大、酸化ストレス、過酸化水素の除去に必須の因子である組織還元型グルタチオン(GSH)の喪失、ミトコンドリア複合体I活性の低下、脂質の過酸化の増大及びカルシウム結合タンパク質である28kDaのカルビンジンの喪失。これらの類似性には、疾患の進行性の性質、死につつあるニューロンの周囲及び頂部での反応性ミクログリアの増殖、酸化ストレスの発生及び炎症プロセスもまた含まれる。
【0012】
酸素フリーラジカルは、タンパク質変性、酵素不活化及びDNA損傷に関連して、細胞膜の脂質の過酸化を生じ、最終的に神経変性疾患において細胞死を生じることが示されている。神経変性疾患の顕著な様相の1つは、神経変性部位での有意な量の鉄の蓄積及び沈着である。ADでは、ミクログリア内及びニューロン内並びにプラーク及び変化において、鉄が蓄積する。最近の報告は、ADの病原性が、鉄のような金属との異常な相互作用によって媒介され得る特徴的な新皮質のβアミロイド沈着に関連しているという証拠を提供している。実際、鉄は、βアミロイドタンパク質の凝集だけでなくα−シヌクレインの凝集をも引き起こし、より大きい神経毒性を促進すると考えられている。これは、キレート可能な遊離の鉄が、ニューロンのアポトーシスを引き起こす酸化ストレス及び炎症プロセスの誘導において中心的な役割を有し得るという概念を導いた。鉄及びラジカル酸素種は、AD脳におけるその増大がADの病理の1つの特徴である細胞傷害性炎症促進性サイトカインであるIL−1、IL−6及びTNF−αの促進を担うと考えられている炎症促進性転写因子であるNFκBを活性化する。遷移金属として、鉄は過酸化水素とのFenton化学に関与して、全てのラジカル酸素種のうちで最も反応性の高い反応性ヒドロキシル基を発生させるので、これは論理的であるとみなされる。このラジカルは、細胞死の病理並びに多数の毒素及び神経毒(6−ヒドロキシドパミン、MPTP、カイナイト(kainite)、ADのストレプトコジンモデル)の作用機構に関与している。さらに、このような毒素は、神経変性疾患(AD、パーキンソン病及びハンチントン舞踏病)の病理の多くを模倣し、その1つの特徴は、神経変性部位での鉄の蓄積であるが、他の金属の蓄積ではない。
【0013】
ラットにおいて鉄により誘導された「パーキンソニズム」及び鉄キレート剤デスフェリオキサミンの黒質内投与が、黒質線条体のドパミンニューロンの6−OHDAにより誘導された病変に対してラットを保護した、本発明者らの以前の研究(非特許文献2)において証明されたように、鉄単独又は神経毒(例えば、ドパミン作用性神経毒である6−ヒドロキシドパミン(6−OHDA))によりその結合部位から脱区画化された鉄は、酸化ストレス及び神経変性を誘導し得る。従って、黒質におけるドパミン作用性神経変性のプロセスの処置又は遅延が、ウィルソン病の処置において使用される銅キレート剤D−ペニシラミンと類似の様式で、血液脳関門を横切ることができる鉄キレート剤によって影響され得ることが示唆されている。パーキンソン病の処置のためのこの治療アプローチは、遅発性ジスキネジー、アルチハイマー病及びハレルフォルデン−スパッツ病のような他の金属関連の神経学的障害に適用され得る。
【0014】
脳卒中は、今日の西洋社会における3番目の主要死亡原因であり、心臓疾患及び癌だけがこれを上回っている。この疾患の全体的な罹患率は、集団の0.5%〜0.8%である。脳卒中は、脳血管損傷から生じる神経学的障害(例えば、四肢の麻痺、言語障害及び記憶障害、視覚及び聴覚の欠損など)の突然の出現によって特徴付けられる。
【0015】
出血及び虚血は、脳卒中の2つの主要原因である。脳への正常な血液供給の障害は、障害を受けた呼吸及びエネルギー代謝、ラクトアシドーシス(lactacidosis)、障害を受けた細胞カルシウムホメオスタシス、興奮性神経伝達物質の放出、上昇した酸化ストレス、フリーラジカルの形成などを含む、正常な細胞代謝への迅速な損傷と関連する。最終的に、これらの事象は、脳の細胞死及び神経学的機能不全を引き起こす。
【0016】
脳卒中の処置は主に外科的である。損傷した領域において正常な血液灌流を回復し得る薬物、並びに細胞損傷に関連する上記に列挙された損傷事象を克服するように設計された薬物についての研究において、侵襲性の低い治療的介入においてかなりの試みが投入されている。
【0017】
酸化ストレス及びフリーラジカル形成は、組織損傷及び細胞死において主要な役割を果たしている。これらのプロセスは、遷移金属イオン、主に鉄及び銅によって触媒される。脳卒中の場合、血管損傷が含まれるので、鉄は、鉄キレート剤によって予防され得るプロセスであるフリーラジカル形成のために利用可能である。実際、公知のフリーラジカルスカベンジャーであるラザロイド(lazaroide)(21−アミノステロイド)を用いると、動物において誘導された局所的及び全体的な虚血損傷の有意な改善が達成されている。
【0018】
鉄キレート剤及びラジカルスカベンジャーは、神経変性の動物モデルにおいて強力な神経保護活性を有することが示されている。しかし、このような化合物での主要な問題点は、このような化合物がBBBを横切らないことである。原型的な鉄キレート剤であるDesferal(デスフェリオキサミン)は、本発明者らによって、パーキンソン病の動物モデルにおいて高度に強力な神経保護剤であることが最初に示された(非特許文献2)。しかし、DesferalはBBBを横切らず、かつ中心に注射される必要がある。Desferalは、糖尿病のストレプトゾシンモデルに対しても保護する。
【0019】
生きた生物中のフリーラジカルは、反応性の低い種(例えば、H、[O]、チオール、過酸化脂質)との遷移金属イオン(特に銅及び鉄)の反応によって産生されると考えられている。抗酸化金属キレート剤は、遊離金属イオン(特に銅及び鉄)又は防御システムの酵素の活性中心由来の金属イオンを結合することによって、in vivoの酸化剤/抗酸化剤のバランスに影響を与え得、従って、ドパミン作用性及びコリン作用性の神経変性のプロセスに影響を与え得、神経変性疾患に対する大きな治療的可能性を有する。
【0020】
加齢における鉄の蓄積及び結果として生じる酸化ストレスは、加齢及び加齢関連の神経変性障害における可能な原因因子であることが示唆されている(非特許文献6)。反応性酸化種が加齢プロセスにおいて中心的な役割を果たし、皮膚が身体の最も外側の障壁として酸化ストレスの種々の外因性供給源(特にUV照射)へと曝露されるという証拠が増大している。これらは、光加齢と称される外来型の皮膚加齢を担うと考えられている(非特許文献21)。従って、鉄キレート剤は、一般に首尾よい加齢に有利であること、局所適用される場合、首尾よい皮膚の加齢に有利であることが示唆されている(非特許文献22)。
【0021】
鉄は、酸素ラジカル産生へのその関与によって明らかに、加齢においてだけではなく、皮膚の光加齢における要因である。特定の局所的鉄キレート剤は、光保護的であることが見出された(非特許文献3;非特許文献18)。皮膚線維芽細胞中の脂質及びタンパク質に対するUVA放射により誘導される酸化損傷は、鉄及び一重項酸素に依存することが示された(非特許文献27)。従って鉄キレート剤は、UV放射曝露に対する保護を提供するために、任意選択で日焼け止め組成物と共に、化粧品製剤及び非化粧品製剤において使用され得る。
【0022】
鉄過負荷に関連する他の疾患、障害又は状態には、以下が含まれる:(i)HIV感染及びAIDSを含むウイルス感染−酸化ストレス及び鉄は、HIV−1の活性化において重要であることが記載されており、鉄キレート化は、抗ウイルス剤と組み合わせて、ウイルス疾患、特にHIV疾患の処置を改善するために付加され得る(非特許文献26);(ii)原生動物(例えば、マラリア)感染;(iii)酵母(例えば、Candida albicans)感染;(iv)癌−いくつかの鉄キレート剤は抗腫瘍活性を示すことが示されており、単独でか又は他の抗癌治療と組み合わせてかのいずれかで、癌治療のために使用され得る(非特許文献5);(v)鉄キレート剤は、アントラサイクリン新生物薬物によって誘導された心毒性を予防し得る(非特許文献16);(vi)炎症障害−鉄及び酸化ストレスは、炎症性関節疾患(例えば、慢性関節リウマチ)に関連することが示されている(非特許文献1;非特許文献17;非特許文献20);(vii)糖尿病−鉄キレート剤は、糖尿病モデルラットにおいて糖尿病を遅延させることが示されている(非特許文献23);(viii)鉄キレート剤は、例えば再灌流損傷におけるフリーラジカル発生に関連する損傷を予防するための、心血管疾患の処置のための潜在的な候補であることが記載されている(非特許文献15;非特許文献9);(ix)鉄キレート剤は、心臓、肺又は腎臓のような移植が意図された器官の保存のためにex vivoで有用であり得る(非特許文献16)。
【0023】
抗酸化剤型薬物としてのキレート化剤の使用における主要な問題点の1つは、細胞膜又は他の生物学的障壁を介したこれらの配位子又はそれらの金属錯体の輸送が制限されていることである。
【0024】
脳を作用部位として有する薬物は、一般に、最大のin vivoの生物学的活性を得るために、血液脳関門(BBB)を横切ることができなければならない。神経変性疾患において最もよく確立された鉄キレート化薬物であるDesferalの有効性は、その効果のない輸送特性並びに高い脳毒性及び眼毒性によって制限される。
【0025】
8−ヒドロキシキノリンは、鉄に対する強力なキレート化剤であり、かつそれら自体によってフリーラジカルを除去し得る2つの芳香族環を含む。本発明者らの以前のPCT公開WO 00/74664号(特許文献1)において、種々の鉄キレート剤が開示されており、パーキンソン病の予防におけるそれらの作用が示されている。リード化合物である5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシキノリン(本明細書中でVK−28と称する)は、BBBを横切ることができ、かつパーキンソン病の動物モデルにおいて6−ヒドロキシドパミン(6−OHDA)に対して活性であることが示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】国際公開00/74664号
【非特許文献】
【0027】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
神経保護活性及び/又は血液脳関門を含む細胞膜を介した良好な輸送特性をも示す、新規の鉄キレート剤を提供することが、非常に所望される。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、鉄に対する特異性を有しかつ親油性媒体中で神経保護特性及び/又は良好な輸送特性を示す、両親媒性金属キレート剤に関する。
【0030】
1態様において、本発明は、鉄キレート剤機能、並びに化合物に神経保護機能を付与する残基、化合物に抗アポトーシス機能及び神経保護機能を合せた機能を付与する残基又はこれら両方の残基からなる群から選択される残基を含む化合物と、その薬学的に許容される塩とを提供する。
【0031】
この鉄キレート剤機能は好ましくは、8−ヒドロキシキノリン残基、ヒドロキサメート残基又はピリジノン残基によって提供され、この神経保護機能は、システイン残基若しくはアラニン残基、又は神経保護ペプチド、神経保護類似体若しくはそれらの神経保護フラグメントの残基によって提供され得、かつ抗アポトーシス機能及び神経保護機能を合せた機能は好ましくは、プロパルギル基によって提供される。
【0032】
別の態様において、本発明は、本明細書中以下の記載及び特許請求の範囲に規定されるような、式IからIVまでの化合物及びそれらの薬学的に許容される塩を提供する。
【0033】
鉄過負荷及び酸化ストレスに関連する疾患、障害及び状態(例えば、神経変性疾患及び神経変性障害並びに脳血管疾患及び脳血管障害、新生物疾患、血色素症、サラセミア、心血管疾患、糖尿病、炎症障害、アントラサイクリン心毒性、ウイルス感染、原生動物感染、酵母感染が含まれるが、これらに限定されない)の治療及び/又は予防のため、加齢を遅延させるため、加齢並びに/或いは日光及び/又はUV光への曝露に関連する皮膚の加齢並びに/或いは皮膚損傷の予防及び/又は治療のために有用である。
【0034】
さらなる態様において、本発明は、薬学的に許容される担体及び本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0035】
なお別の態様において、本発明は、本発明の化合物を含む化粧品組成物を提供する。
【0036】
なおさらなる態様において、本発明は、鉄キレート化治療のための医薬組成物の調製のための本発明の化合物の使用を提供する。
【0037】
なお別の態様において、本発明は、有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を、鉄キレート化治療を必要とする個体に投与するステップを含む、鉄キレート化治療のための方法を提供する。
【0038】
明細書の記載及び特許請求の範囲において使用される採用された呼称により規定される化合物の式は、本記載の末尾にて付録IからVIまでに示される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1A】鉄と予め錯体化したカルセイン(Fe−CAL)溶液を使用した、本発明のキレート剤HLM7、HLM8、HLM9、HLA16、HLA20;及び公知の鉄キレート剤デフェリプロン(L1)による鉄キレート化(溶液中)を示すグラフの図である。
【図1B】鉄と予め錯体化したカルセイン(Fe−CAL)溶液を使用した、本発明のキレート剤HLA16、HLA20、M9、M10;並びに公知の鉄キレート剤デフェリプロン(L1)及びVK−28による鉄キレート化(溶液中)を示すグラフの図である。
【図1C】鉄と予め錯体化したカルセイン(Fe−CAL)溶液を使用した、本発明のキレート剤M7、M11、M12;並びに公知の鉄キレート剤デフェリプロン(L1)及びVK−28による鉄キレート化(溶液中)を示すグラフの図である。
【図2A】本発明のキレート剤HLM7、HLM8、HLM9、HLA16、HLA20;並びに公知の鉄キレート剤デフェリプロン(L1)及びサリチルアルデヒドイソニコチノイルヒドラゾン(SIH)の、K562細胞への鉄透過を示す図である。
【図2B】本発明のキレート剤HLA16、HLA20、M9、M10;並びに公知の鉄キレート剤デフェリプロン(L1)及びVK−28の、K562細胞への鉄透過を示す図である。
【図2C】本発明のキレート剤M7、M11、M12;及び公知の鉄キレート剤サリチルアルデヒドイソニコチノイルヒドラゾン(SIH)及びVK−28の、K562細胞への鉄透過を示す図である。
【図2D】本発明のキレート剤HLM9、HLA16、HLA20;並びに公知の鉄キレート剤VK−28、デスフェリオキサミンB(DFO)及びサリチルアルデヒドイソニコチノイルヒドラゾン(SIH)の、K562細胞への鉄透過を示す図である。
【図3】6−OH−ドパミンで処理した分化したニューロンP19細胞に対する本発明のキレート剤HLM7、HLM8、HLM9、HLA16、M7、HLA20及びアポモルヒネ(Apo)の神経保護効果を示す図である。
【図4A】公知のキレート剤ラサジリンと比較した、本発明のキレート剤M32による、血清飢餓により誘導されたアポトーシスに対するPC12細胞の保護を示す図である。
【図4B】公知のキレート剤ラサジリン及びVK−28と比較した、本発明のキレート剤HLA20による、血清飢餓により誘導されたアポトーシスに対するPC12細胞の保護を示す図である。
【図5A】ラット脳MAO−Bに対するHLA20及びM32;及びVK−28のin vitroの阻害作用を示すグラフの図である。
【図5B】ラット脳MAO−Bに対するM30及びM31;及びプロパルギルアミン(P)のin vitroの阻害作用を示すグラフの図である。
【図5C】ラット脳MAO−Aに対するM30及びM31;及びプロパルギルアミン(P)のin vitroの阻害作用を示すグラフの図である。
【図5D】ラット脳MAO−Aに対するM32及びHLA20;及びVK−28のin vitroの阻害作用を示すグラフの図である。
【図6】5.0μMのFeSO/50μMのアスコルビン酸の存在下での、本発明のキレート剤HLM7、HLM8、HLM9、HLA16及びHLA20による脂質過酸化の阻害を示す図である。結果は、平均±SEM、n=3、p<0.05である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
1つの広い態様において、本発明は、鉄キレート剤機能、並びに化合物に神経保護機能を付与する残基、化合物に抗アポトーシス機能及び神経保護機能を合せた機能を付与する残基又はこれら両方の残基からなる群から選択される残基を含む化合物を提供する。
【0041】
1つの最も好ましい実施形態において、抗アポトーシス機能及び神経保護機能を合せた機能を付与する残基は、抗パーキンソン薬物であるラサジリン[N−プロパルギル−(1R)−アミノインダン]の抗アポトーシス効果及び神経保護効果において重要な役割を果たすとして最近記載されたプロパルギル部分である(非特許文献28)。
【0042】
本発明の化合物における鉄キレート剤機能は、8−ヒドロキシキノリン残基、ヒドロキサメート残基及びピリジノン残基からなる群から選択される残基によって提供される。
【0043】
1つの好ましい実施形態において、この鉄キレート剤機能は、神経保護機能並びに/又は抗アポトーシス機能及び神経保護機能を合せた機能を付与する残基がキノリン環の5位、6位又は7位を介して連結され得る8−ヒドロキシキノリン基によって提供される。より好ましい実施形態において、この鉄キレート化基は、次式の8−ヒドロキシ−5−キノリニル基であり、最も好ましくは、8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチレン基である。
【0044】
別の好ましい実施形態において、この鉄キレート剤機能は、次式:
【化1】


の3−ヒドロキシピリジン−4−オン又は1−ヒドロキシピリジン−2−オンによって提供される。
【0045】
上記の式において、Rは、キノリン環の位置5、位置6又は位置7、低級アルキル、好ましくはメチル基によってさらに置換され得る3−ヒドロキシ−4−ピリジノン環の位置1、位置2、位置5又は位置6、及び1−ヒドロキシ−2−ピリジノン環の位置4又は位置5において連結され得る、神経保護機能並びに/又は神経保護機能及び抗アポトーシス機能を合せた機能を有する基を示す。1つの好ましい実施形態において、この鉄キレート剤機能は、所望のさらなる官能基によって位置1にて置換された2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン基によって提供される。
【0046】
提唱されたN−ヒドロキシピリジン−2−オン及び3−ヒドロキシピリジン−4−オンは、以下の3つの理由のために、適切なタイプの候補鉄キレート剤である:(1)ヒドロキシピリジノンは、それらの特性及び生物学的試験の結果の両方を考慮すると、最も有望な経口鉄キレート剤である−1つのヒドロキシピリジノンであるデフェリプロン(CP20又はL1)は、サラセミア、癌、白血病、血液透析及び他の患者において世界中で使用される経口鉄キレート化剤である(非特許文献29);(2)いくつかのヒドロキシピリジノン(例えば、CP20、CP24、CP94)は、BBBを横切ることができることが証明されている(非特許文献7);及び(3)ヒドロキシピリジノン間には、DOPA構造における鉄キレート剤基であるカテコールとの多数の構造的類似性が存在する。
【0047】
別の実施形態において、鉄キレート化機能は、ヒドロキサメート基によって提供される。ヒドロキサメートは、鉄キレート剤として公知である。数十年にわたって、デスフェリオキサミンB(Desferal)は、その使用に関連する多くの問題点にもかかわらず、鉄過負荷処置のために選択される治療的鉄キレート剤であった。
【0048】
本発明の1実施形態において、本発明の化合物に神経保護機能を付与する残基は、神経保護ペプチド、神経保護類似体及びそれらの神経保護フラグメントからなる群から選択される。
【0049】
本発明の化合物において使用され得る神経保護ペプチドは、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、サブスタンスP及びエンケファリンであり得るが、これらに限定されない。
【0050】
1つの好ましい実施形態において、この神経保護機能は、1つのアミノ酸残基が、鉄キレート化残基がL−Cys残基又はD−Cys残基の−S−原子を介して連結されるL−システイン残基又はD−システイン残基によって置換されたVIP、GnRH、サブスタンスP若しくはエンケファリン又はそれらのフラグメントの残基によって提供される。
【0051】
本発明の1つの実施形態において、この神経保護ペプチドは、元々胃腸系から単離された塩基性の28アミノ酸のペプチドである血管作動性腸管ペプチド(VIP)であり、これは、HIV由来のエンベロープタンパク質、テトロドトキシン及びβアミロイドペプチドを含む種々の神経毒性物質から中枢神経系中のニューロンを保護することが示されている。βアミロイドペプチドは、アルツハイマー病における脳アミロイドプラークの主要成分であり、神経毒性であること及びアルツハイマー病の発症及び進行に関連することが示されている。VIPはBBBを横切らないので、それ自体可能性のある神経保護剤としての臨床的な使用にとっての限定を示す。VIPの親油性誘導体(例えば、ステアリル−VIP)はBBBを横切る。しかし、より効率的な透過のため及び経済的な観点から、生物学的障壁を介したよりよい透過を有しつつ、親ペプチド(VIP)の活性を模倣するかなり小さい分子を有することが所望される。本発明者らの1人の研究室において、VIPの4アミノ酸の脂質誘導体(ステアリル−Lys−Lys−Tyr−Leu−NH−配列番号1)が、そのレセプターの結合及び活性化を介して親ペプチド(VIP)の活性を超えること、及び神経変性疾患に対する薬物設計のためのリード化合物を提供することが見出された(非特許文献14)。
【0052】
従って、本発明の1実施形態において、この神経保護機能は、配列番号2:
Z−Lys−Lys−Cys−Leu−NH(式中、ZはH又はステアリル(St)若しくはFmocのような疎水性基である)のVIPフラグメントによって付与される。
【0053】
1実施形態において、この鉄キレート剤は、8−ヒドロキシキノリニルメチル基であり、かつこの化合物は、式:
【化2】


を有する。
【0054】
このモデルにおいて、ペプチドLys−Lys−Tyr−Leu−NH(配列番号1)は、神経保護効果のためのコア活性部位である。Tyrの芳香族フェノール部分は、抗酸化活性部位として働く鉄キレート剤8−ヒドロキシキノリンによって置換される。疎水性基Rは、BBBを介した輸送特性を制御するために、分子全体の親油性を調整するために使用され得る。
【0055】
8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチル残基(HQ)を含む上記式を含む化合物の例は、本明細書中で付録IIにおいてStKKC(HQ)L(M6)及びFmoc−KKC(HQ)L(M7)と称される化合物である。本明細書中で付録IにおいてStKKC(HQ−Pr)L(M6A)及びFmoc−KKC(HQ−Pr)L(M7A)と称される対応する化合物は、さらに、キノリン環の5位で−CH基に連結されたプロパルギルアミノ(Pr)基を有する。
【0056】
配列番号2のVIPフラグメント類似体を含む本発明のさらなる化合物の例は、アミノプロパルギル基もまた含む、本明細書中で付録VにおいてM6B及びM7Bと称されるヒドロキサメートである。
【0057】
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)は、ゴナドトロピンである黄体形成ホルモン(LH)及び卵胞刺激ホルモン(FSH)の下垂体前葉からの放出を制御する、視床下部の神経分泌細胞において産生される神経ホルモンである。このペプチドは後に、脳において神経伝達物質及び/又は神経調節物質として機能し、かつ良好な輸送特性を有することが見出された(GnRHはBBBを横切ることができる)。現在、いくつかのGnRH類似体が、避妊のため、並びに前立腺癌及び乳癌を含む種々のホルモン依存性の疾患の処置のために、臨床試験中であるか又は臨床的に使用されているかのいずれかである。抗酸化コアとしての鉄キレート剤(例えば、ヒドロキサメート、ピリジノン又は8−ヒドロキシキノリン)とのGnRH類似体の組み合わせは、神経変性疾患の処置において保護剤として特に想定される。
【0058】
GnRHは、以下の配列のデカペプチドである(アミノ末端の5−オキソプロリンはしばしば、ピログルタミン酸−pGluと示される):
5−オキソ−Pro−His−Trp−Ser−Tyr−Gly−Leu−Arg−Pro−Gly−NH(配列番号3)。
【0059】
位置5のアミノ酸残基(Tyr)又は位置6のアミノ酸残基(Gly)がそれぞれL−Cys又はD−Cysによって置換されたGnRHの2つの類似体を調製した。これらの改変は、GnRHの生物活性に有意に影響を与えないことが予測される。さらに、これらの変化は、スーパーアゴニスト(superagonist)を生じ得る。システイン位置(5又は6)でのこの類似体の遊離SH基は、これらの化合物を特定の化学的改変のための良好な候補にする。この変化(すなわち、位置6での変化)は、この類似体のタンパク質分解に対する安定性を改善するようにも働く。
【0060】
得られたGnRG類似体は、以下のような配列番号4及び配列番号5によって特定される配列を有する:

【0061】
L−Cys残基又はD−Cys残基のS原子に、鉄キレート剤機能が結合される。例えば、8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチル残基(HQ)を有する得られた化合物は、本明細書中で付録IIにおいてL−Cys(HQ)GnRH(M8)及びD−Cys(HQ)GnRH(M22)と称される化合物である。本明細書中で付録IにおいてL−Cys(HQ−Pr)GnRH(M8)及びD−Cys(HQ−Pr)GnRH(M22)と称される対応する化合物はさらに、キノリン環の5位で−CH基に連結されたプロパルギルアミノ(Pr)基を有する。
【0062】
配列番号4又は配列番号5のGnRH類似体を含む本発明のさらなる化合物の例は、プロパルギルアミノ基もまた含む、本明細書中で付録VにおいてM8B及びM22Bと称されるヒドロキサメートである。
【0063】
本発明によれば、類似のCys含有GnRH類似体が、GnRHの類似体(例えば、リュープロリド、ナファレリン、ゴセレリン、ヒストレリン(histrelin)及びD−LysGnRHであるがこれらに限定されない)から開始して、次いでこれらをHQ残基、ピリジノン残基又はヒドロキサメート残基に結合させ、任意選択でプロパルギルアミノ残基に結合させることにより、調製され得る。
【0064】
サブスタンスP(SP)は、脊椎動物の末梢神経系及び中枢神経系に広く分布するペプチド神経伝達物質である。SPは、交感神経系においてニューロンニコチン性アセチルコリンレセプター(nAChR)の調節に関与している。サブスタンスP類似体は、神経変性疾患の制御において薬物として有用であり得る。
【0065】
サブスタンスPは、配列:
Arg−Pro−Lys−Pro−Gln−Gln−Phe−Phe−Gly−Leu−Met−NH(配列番号6)
のウンデカペプチドである。
【0066】
位置7のアミノ酸残基(Phe)又は位置8のアミノ酸残基(Phe)がCysによって置換されたサブスタンスPの2つの類似体を調製し、以下の配列のペプチド:


を得た。
【0067】
Cys残基のS原子に、鉄キレート剤機能が結合される。例えば、8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチル残基(HQ)を有する得られた化合物は、本明細書中で付録IIにおいてCys(HQ)サブスタンスP(M27)及びCys(HQ)サブスタンスP(M28)と称される化合物である。本明細書中で付録IにおいてCys(HQ−Pr)サブスタンスP(M27A)及びCys(HQ−Pr)サブスタンスP(M28A)と称される対応する化合物はさらに、キノリン環の5位で−CH基に連結されたプロパルギルアミノ基(Pr)を有する。
【0068】
配列番号7又は配列番号8のサブスタンスP類似体を含む本発明のさらなる化合物の例は、プロパルギルアミノ基もまた含む、本明細書中で付録VにおいてM27B及びM28Bと称されるヒドロキサメートである。
【0069】
Met−エンケファリン及びLeu−エンケファリンは、それぞれ以下の配列:


の、エンドルフィンのクラスに属する2つの天然に存在するペンタペプチドである。
【0070】
位置4のPhe残基又は位置1のTyr残基のいずれかがCys残基で置換された、以下:


のような、Met−エンケファリン(配列番号9)及びLeu−エンケファリン(配列番号10)の各々の2つの類似体が調製されている。
【0071】
Cys残基のS原子に、鉄キレート剤機能が結合される。例えば、8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチル残基(HQ)を有する得られた化合物は、本明細書中で付録IIにおいて配列番号13についてYGGC(HQ)L(M18)、配列番号11についてYGGC(HQ)M(M19)、配列番号14についてC(HQ)GGFL(M20)及び配列番号12についてC(HQ)GGFM(M21)と称される化合物である。本明細書中で付録IにおいてYGGC(HQ−Pr)L(M18A)、YGGC(HQ−Pr)M(M19A)、C(HQ−Pr)GGFL(M20A)及びC(HQ−Pr)GGFM(M21A)と称される対応する化合物はさらに、キノリン環の5位で−CH基に連結されたプロパルギルアミノ(Pr)基を有する。
【0072】
配列番号11〜14のエンケファリン類似体を含む本発明のさらなる化合物の例は、プロパルギルアミノ基もまた含む、本明細書中で付録VにおいてM18BA、M19B、M20B及びM21Bと称されるヒドロキサメートである。
【0073】
本発明の別の実施形態において、本発明の化合物に神経保護機能を付与する残基は、L−システイン残基若しくはD−システイン残基又はL−アラニン残基若しくはD−アラニン残基からなる群から選択される。
【0074】
この神経保護機能がL−システイン又はD−システインである場合、鉄キレート剤機能は、Cys残基のS原子に結合される。例えば、8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチル残基(HQ)を有する得られた化合物は、本明細書中で付録IIにおいてD−HQ−CysOH(M11)及びL−HQ−CysOH(M12)と称される化合物、並びに本明細書中で付録IIIにおいてD−(HQ−Pr)−CysOH(M11a)及びL−(HQ−Pr)−CysOH(M12a)と称される対応する化合物である。システイン残基を含む本発明のさらなる化合物の例は、プロパルギルアミノ基を含む、本明細書中で付録VIにおいてM11b及びM12bと称されるヒドロピリジノン誘導体である。
【0075】
神経保護機能がL−アラニン又はD−アラニンである本発明の化合物の例は、本明細書中で付録IVにおいてD−HQ−Ala(M9)、L−HQ−Ala(M10)、内部塩HQAla(HLM8)及びエチルエステルHQAlaEt(HLM9)と称される8−ヒドロキシ−5−キノリニル残基(HQ)を有する化合物、並びに本明細書中で付録IIIにおいてD−(HQ−Pr)−Ala(M9a)、L−(HQ−Pr)−Ala(M10a)と称される対応する化合物である。さらなる例は、本明細書中で付録VIにおいてM9bと称されるヒドロキシピリジノン誘導体である。
【0076】
パーキンソン病は、脳におけるドパミン作用性機能の低下に関連し、この疾患の症状の多くがL−DOPA(L−ジヒドロキシフェニルアラニン)の経口投与によって緩和され得る。L−DOPAは、脳においてDOPAデカルボキシラーゼによってドパミンへと転換される。リード化合物DOPAの逆合成分析に基づいて、鉄キレート化基(カテコール)及びアミノ酸(アラニン)を含む上記の鉄キレート剤−ペプチド誘導体及び鉄キレート剤−アミノ酸誘導体は、別のクラスの抗パーキンソニズム剤を構成する抗酸化剤型薬物として有用な薬物候補であり得、また潜在的に他の神経変性疾患及び他の障害でも鉄キレート剤が有用である。
【0077】
上記のように、作用部位として脳を有する薬物は、一般に、最大のin vivoの生物学的活性を得るために、血液脳関門(BBB)を横切ることができなければならない。本発明が、いくつかの神経変性疾患において脳に鉄キレート剤をもたらして、脳中に蓄積する鉄を結合して除去する場合、可能な解決の1つは、両親媒性挙動を担う特定の基を有する鉄キレート化分子を設計することである。このような両親媒性基は、親油性中心及び親水性中心を有する。両方の中心のサイズ及び構造は、分子全体の全体的な親油性を制御し、従って、その輸送特性を制御する。
【0078】
本発明はさらに、鉄に対する特異性を有しかつ親油性媒体中で所望の血液脳関門(BBB)輸送特性を提供するように設計された両親媒性金属キレート剤を提供する。
【0079】
1実施形態において、本発明は、BBBを横切る鉄キレート化残基を含む化合物に関し、この鉄キレート化残基は、化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシ−キノリンを除く、以下に示されるようなエチレンジアミン部分又はピペラジン環若しくは1,3,5−ペルヒドロトリアジン環からなる群から選択されるリンカーを介して脂肪族鎖に連結された8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチル基である。
【0080】
この実施形態によれば、この分子の8−ヒドロキシキノリン部分は、鉄特異的キレート剤及びラジカルスカベンジャーの両方として働き、かつRは異なる長さの脂肪族鎖であるが、リンカーがピペラジン環である場合には2−ヒドロキシエチル基ではない。
【化3】


Rを変化させることによって、本発明者らは、分子全体のサイズ及び親油性を調整し得、従って、BBBを介した輸送特性を制御し得る。好ましい実施形態において、このリンカーはピペラジン環である。
【0081】
リンカーがピペラジンである場合、上記の鉄キレート剤は、以下のスキームに記載されるように、ピペラジンをジ(t−ブチル)ジカーボネート(BocO)と反応させ、その後Boc保護されたピペラジンをハライドR−X(Rはプロパルギル含有基であり、Xはハロゲンである)と反応させ、TFAを用いてBoc基を除去し、8−ヒドロキシ−5−クロロメチルキノリンと反応させることによって調製され得る:
【化4】

【0082】
BBBを介した薬物の輸送特性を制御することにおける重要な因子である分子全体の脂質可溶性は、nを変化させることによって調整され得る。脂肪族鎖はまた、O、S及びNから選択されるヘテロ原子を含み得る。本発明に従うこのような化合物の例は、本明細書中で付録IIIにおいてHLA16a、HLA20及びM17と称される化合物である。プロパルギル基を有さない付録IV中の化合物HLA16もまた、本発明により想定される。
【0083】
本発明は、化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシ−キノリンを除く、式I〜IVの化合物:
【化5】


を包含し、式中、
は、Cys残基の−S−原子を介してC原子に連結されたシステイン残基を含む神経保護ペプチド又はそのフラグメントの類似体の残基であり、かつこのペプチドのアミノ末端は、Fmoc又はステアリルのような疎水性基によって任意選択で置換され;
はH又は−NH−Xであり;
は、
【化6】


(ii)−CR;(iii)−N(CH)−X;(iv)−N(R)−CH(CHSH)COOC;(v)−N(R)−CH−COOCH及び(vi)−S−CH−CH(COOH)−NHR’からなる群から選択される基であり;
は、(i)X;(ii)COOC;(iii)(CH−O−R;及び(iv)−COO−(CH−NH−Rからなる群から選択され;
は、H、C〜C低級アルキル、好ましくはCH又はCOOCであり;
は、H、COOH、COO又はCOOCであり;
は、(i)−NH−R;(ii)−NH;(iii)−NH−COCH、(iv)−NH−NH−R及び(v)−NH−NH−CO−CH(CHOH)−NH−Rからなる群から選択され;
はH又はXであり;R’は、H、X又はFmocであり;
は、(i)H;(ii)−CO−CH−R;(iii)−CH−COOCH;(iv)−CH(CHSH)COOC
【化7】


からなる群から選択され;
10は、X;−CH−CH(SH)COOC又は
【化8】


であり;
nは1から6までの整数であり;
11は、


及び
【化9】


からなる群から選択される基であり;
12は、X、C〜C低級アルキル、好ましくはメチル、COOC又は−(CH−OHであり;
13は、X、−(CH−OX又は−COO−(CH−NH−Xであり;
Xはプロパルギル基である。
【0084】
1つの好ましい実施形態において、本発明の化合物は上記式Iの化合物:
【化10】


であり、
は、Cys残基の−S−原子を介してC原子に連結されたシステイン残基を含む神経保護ペプチド又はそのフラグメントの類似体の残基であり、かつこのペプチドのアミノ末端は、Fmoc又はステアリルのような疎水性基によって任意選択で置換され;
はH又は−NH−Xであり;
Xはプロパルギル基である。
【0085】
は好ましくは、1つのアミノ酸残基がシステイン残基によって置換されたVIP、GnRH、サブスタンスP若しくはエンケファリン又はそれらのフラグメントの類似体の残基であり、より好ましくは、アミノ末端にステアリル基又はFmoc基を有し得る配列番号2のVIPフラグメント類似体、配列番号4及び配列番号5のGnRH類似体、配列番号7及び配列番号8のサブスタンスP類似体、並びに配列番号11、配列番号12、配列番号13及び配列番号14のエンケファリン類似体の残基である。
【0086】
好ましい実施形態において、式Iの化合物は、RがHであり、かつRがアミノ末端にステアリル基を有する配列番号2のVIPフラグメント類似体(M6、付録II)又はFmoc基を有する配列番号2のVIPフラグメント類似体(M7、付録II)の残基、配列番号4のGnRH類似体(M8、付録II)又は配列番号5のGnRH類似体(M22、付録II)の残基、配列番号7のサブスタンスP類似体(M27、付録II)又は配列番号8のサブスタンスP類似体(M28、付録II)の残基、並びに配列番号11のエンケファリン類似体(M19、付録II)、配列番号12のエンケファリン類似体(M21、付録II)、配列番号13のエンケファリン類似体(M18、付録II)及び配列番号14のエンケファリン類似体(M20、付録II)の残基からなる群から選択される化合物である。
【0087】
より好ましい実施形態において、式Iの化合物は、Rがプロパルギルアミノ基であり、かつRがアミノ末端にステアリル基を有する配列番号2のVIPフラグメント類似体(M6A、付録I)又はFmoc基を有する配列番号2のVIPフラグメント類似体(M7A、付録I)の残基、配列番号4のGnRH類似体(M8A)又は配列番号5のGnRH類似体(M22A、付録I)の残基、配列番号7のサブスタンスP類似体(M27A、付録I)又は配列番号8のサブスタンスP類似体(M28A、付録I)の残基、並びに配列番号11のエンケファリン類似体(M19A、付録I)、配列番号12のエンケファリン類似体(M21A、付録I)、配列番号13のエンケファリン類似体(M18A、付録I)及び配列番号14のエンケファリン類似体(M20A、付録I)の残基からなる群から選択される化合物である。
【0088】
本発明の別の好ましい実施形態において、化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシ−キノリンを除く、式II:
【化11】


の化合物が提供され、
は、
【化12】


(ii)−CR;(iii)−N(CH)−X;(iv)−N(R)−CH(CHSH)COOC;(v)−N(R)−CH−COOCH及び(vi)−S−CH−CH(COOH)−NHR’からなる群から選択される基であり;
は、(i)X;(ii)COOC;(iii)(CH−O−R及び(iv)−COO−(CH−NH−Rからなる群から選択され;
はH、CH又はCOOCであり;
はH、COOH、COO又はCOOCであり;
は、(i)−NH−R;(ii)−NH;(iii)−NH−COCH;(iv)−NH−NH−R;及び(v)−NH−NH−CO−CH(CHOH)−NH−Rからなる群から選択され;
はH又はXであり、R’はH、X又はFmocであり;
Xはプロパルギル基である。
【0089】
より好ましい実施形態において、Rが−(CH−OHである化合物を除き、式IIの化合物中、Rは、脂肪族鎖Rが4位で窒素原子に連結されたピペラジン環である。この化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシ−キノリンは、本明細書中で付録IVにおいてVK−28と特定され、WO 00/74664号から公知である。1つの好ましい実施形態において、本発明の8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチルピペラジン化合物は、本明細書中でHLA16と称される化合物(付録IV)によって示されるように、プロパルギル基を含まない(Rが−COOCであるか、又はRがHである)。別の好ましい実施形態において、本発明の8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチルピペラジン化合物は、本明細書中でHLA16a、HLA20及びM17と称される化合物(付録III)によって示されるように、プロパルギル基を含む(RはXである)。
【0090】
別のより好ましい実施形態において、式IIの化合物中、Rは−S−CH−CH(COOH)−NHR’であり、式中、本明細書中でD−HQ−CysOHと称される化合物(M11、付録II)及びL−HQ−CysOHと称される化合物(M12、付録II)によって示されるように、R’はHである(すなわち、RはL−Cys又はD−Cysの残基である)か、又は本明細書中でD−(HQ−Pr)−CysOHと称される化合物(M11a、付録III)及びL−(HQ−Pr)−CysOHと称される化合物(M12a、付録III)によって示されるように、R’はプロパルギルであるか、又は本明細書中でM11B及びM12Bと称される化合物(付録IV)によって示されるように、R’はFmocである。
【0091】
別のより好ましい実施形態において、式IIの化合物中、Rは基−CRであり、式中RはHであり、RはCOOHであり、かつRは−NH−Rであり、式中、本明細書中でD−HQ−Alaと称される化合物(M9、付録IV)及びL−HQ−Alaと称される化合物(M10、付録IV)によって示されるように、RはHである(すなわち、RはL−Ala又はD−Alaの残基である)か、又は本明細書中でD−(HQ−Pr)−Alaと称される化合物(M9a、付録III)及びL−(HQ−Pr)−Alaと称される化合物(M10a、付録III)によって示されるように、Rはプロパルギルであるか;或いは本明細書中でHQ−Alaと称される化合物(HLM8、付録IV)によって示されるように、RはHであり、RはCOOであり、Rは−NHであるか;或いは本明細書中でHQ−AlaEtと称される化合物(HLM9、付録IV)によって示されるように、RはHであり、RはCOOCであり、Rは−NHであるか;或いは本明細書中でHLM7と称される化合物(付録IV)によって示されるように、R及びRは共にCOOCであり、Rは−NH−COCHであるか;或いは本明細書中でM31と称される化合物(付録III)によって示されるように、RはHであり、RはCOOCであり、Rは−NH−プロパルギルである。
【0092】
別のより好ましい実施形態において、式IIの化合物中、Rは基−NR−CH(CHSH)COOCであり、式中、それぞれ本明細書中でM32と称される化合物(付録IV)及びM33と称される化合物(付録III)によって示されるように、RはH又はプロパルギルである。
【0093】
別のより好ましい実施形態において、式IIの化合物中、本明細書中でM30と称される化合物(付録III)によって示されるように、Rは基−N(CH)−プロパルギルである。
【0094】
本発明のなお別の好ましい実施形態において、式III:
【化13】


の化合物が提供され、式中、
は、(i)H;(ii)−CO−CH−R;(iii)−CH−COOCH;(iv)−CH(CHSH)COOC
【化14】


からなる群から選択され;
10は、X;−CH−CH(SH)COOC又は
【化15】


であり;
nは、1から6までの整数、好ましくは1又は2であり;
12は、X、C〜C低級アルキル、好ましくはメチル、COOC又は−(CH−OH−であり;
Xはプロパルギル基である。
【0095】
1つの好ましい実施形態において、Rは−CO−CH−Rであり、式中、Rは、Cys残基を含む神経保護ペプチド又はそのフラグメントの類似体の残基である。より好ましい実施形態において、式IIIの化合物は、プロパルギルアミノ基、並びにアミノ末端にステアリル基を有する配列番号2のVIPフラグメント類似体(M6B、付録V)又はFmoc基を有する配列番号2のVIPフラグメント類似体(M7B、付録V)の残基、配列番号4のGnRH類似体(M8B、付録V)又は配列番号5のGnRH類似体(M22B、付録V)の残基、配列番号7のサブスタンスP類似体(M27B、付録V)又は配列番号8のサブスタンスP類似体(M28B、付録V)の残基、並びに配列番号11のエンケファリン類似体(M19B、付録V)、配列番号12のエンケファリン類似体(M21B、付録V)、配列番号13のエンケファリン類似体(M18B、付録V)及び配列番号14のエンケファリン類似体(M20B、付録V)の残基からなる群から選択されるRを含むヒドロキサメートである。
【0096】
他の好ましい実施形態において、R、R10及びR12は、本明細書中でM35、M36、M37、M38、M39、M40、M41、M42、M43、M44、M45及びM46と称される化合物(付録V)によって例示されるような、上記規定の通りのものである。
【0097】
なお別の好ましい実施形態において、式IV:
【化16】


の化合物が提供され、式中、
11は、


及び
【化17】


からなる群から選択され;
13は、X、−(CH−OX又は−COO−(CH−NH−Xであり;
Xはプロパルギル基である。
【0098】
好ましい実施形態において、ピリジノン誘導体は、本明細書中でM9b、M11b、M12b、M13b、M15b、HLA16b、M17a、HLA20a、M30a、M31a、M33a及びM34bと称される化合物によって例示され、それらの式は本明細書中で付録VI中に示される。Me基が異なるアルキル(例えば、エチル)によって置換されているか、又はこの環が任意選択で置換されるさらなるアルキル基を含み得る、ピリジノンの他の誘導体が使用され得る。
【0099】
以下のスキームA〜Dは、式I、II、III及びIVの化合物の調製のために使用され得る方法の例を示す。全ての出発物質は、これらのスキーム中に記載される手順、有機化学の当業者に周知の手順によって調製されるか、又は商業的に入手され得る。本発明の全ての最終化合物は、これらのスキーム中に記載される手順又は有機化学の当業者に周知の、その手順に類似の手順によって調製される。全ての改変ペプチドを、会社のプロトコルに従ってFmoc化学を使用した固相ペプチド合成によって、自動又は手動で調製した。
【0100】
式Iの化合物は、スキームAに示される方法若しくは実施例中に与えられた方法又は類似の方法によって調製され得る。
【0101】
以下のスキームAに示されるように、8−ヒドロキシキノリン(A1)を塩酸及びホルムアルデヒドで処理して、5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリン(A2)を生じる。A2のクロロ基をプロパルギルアミンで置換して、5−(1−プロパルギルアミノ)メチル−8−ヒドロキシキノリン(A3)を生じる。N−ブロモスクシンイミド(NBS)を使用したA3の臭素化は、臭化物A4を提供し、このA4を次いで、例えば、改変ペプチド[D−Cys]GnRHで処理して、標的化合物A5(これは、付録I中の化合物M22Aである)を生じる。
(スキームA)
【化18】

【0102】
式IIの化合物は、スキームBに示される方法若しくは実施例に示される方法又は類似の方法によって調製され得る。
【0103】
以下のスキームBに示されるように、5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンA2(スキームA中に記載されるように調製される)中のクロロ基のシステインによる置換は、中間体B1を提供する。臭化プロパルギルによる中間体B1のアルキル化は、標的化合物B2(これは、付録III中の化合物M11a又はM12aである)を生成する。
(スキームB)
【化19】

【0104】
スキームBに従う別の合成経路において、5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンA2のOH基は、そのアセチル誘導体B3として最初に保護される。ジエチルアセトアミドマロネートとの化合物B3の縮合は、塩基としてナトリウムエトキシドを用いてエタノール中で円滑に進行し、予測された縮合誘導体B4を生じる。化合物B4の脱炭酸により、アミノ酸誘導体B5を生じる。塩化チオニル及びエタノールの存在下でのB5のエステル化により、エチルエステル誘導体B6を生成する。化合物B6を、触媒としてα−キモトリプシンを使用して加水分解して、L−アミノ酸誘導体B6(α−キモトリプシンはL特異的であり、かつL形態のみを加水分解する)及びD−アミノ酸エステル誘導体B7の混合物を生じ、この混合物はHPLCによって分離され得る。臭化プロパルギルによるL−アミノ酸B8又はD−アミノ酸(エステルB7から得られる)の処理は、所望の化合物B9(これは、付録III中の化合物M9a又はM31である)を提供する。
【0105】
式IIIの化合物の生成のために、スキームCに示される方法若しくは類似の方法又は実施例に与えられる方法が使用され得る。
(スキームC)
【化20】

【0106】
ヒドロキサメート(C2)は、商業的供給元から購入され得るか、又は有機化学の当業者に周知の手順によって調製され得るかのいずれかである。ジイソプロピルエチルアミンのような適切な塩基の存在下での臭化プロパルギル(C1)によるヒドロキサメート(C2)のアルキル化は、化合物C3を提供する。窒素の存在下で約0℃での化合物C3の塩化クロロアセチルとの反応は、N−クロロアセチル誘導体(C4)を生じる。例えば改変ペプチド[D−Cys]GnRHによるC4の処理とその後のヒドロキサメートの脱保護により、標的化合物C6(これは、付録V中の化合物M22Bである)を生じる。
【0107】
式IVの化合物は、スキームD中に示される方法若しくは実施例中に与えられる方法又は類似の方法によって製造され得る。
(スキームD)
【化21】

【0108】
出発物質1−クロロエチル−2−メチル−3−ヒドロキシピリジノン(D1)は、公知の手順によって調製され得る。システインによるD1の処理は、硫化物D2の形成を生じ、この硫化物D2を次いで、プロパルギルアミンでアルキル化して所望の化合物D4(これは、付録VI中のM11bと称される化合物である)を生じる。
【0109】
スキームDに従う別の合成経路において、化合物D1をプロパルギルピペラジンD7と直接反応させて、所望のキレート剤化合物D4(これは、付録VI中のHLA20aと称される化合物である)を生じる。
【0110】
プロパルギルピペラジン(D7)を、N−Boc−ピペラジン(D5)のプロパルギルアミンとの反応によって化合物D6を生じ、その後トリフルオロ酢酸を使用してBoc保護基を除去することによって調製する。
【0111】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩、分子中に存在する任意のカルボキシ基及び塩基によって形成された両方の塩、並びに酸付加塩及び/又は塩基塩もまた本発明によって企図される。
【0112】
薬学的に許容される塩は、金属又はアミン(例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属又は有機アミン)を用いて形成され得る。カチオンとして使用される金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどである。適切なアミンの例は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン及びプロカインである(例えば、Berge S.M.ら、「薬学的塩(Pharmaceutical Salts)」、(1977)J.of Pharmaceutical Science、66:1−19を参照のこと)。これらの塩はまた、式−NRR’R”+Z’の第4級塩のような薬学的に許容される第4級塩であり得、式中、R、R’及びR”は各々独立して水素、アルキル又はベンジルであり、かつZは対イオンであり、これには、塩化物、臭化物、ヨウ化物、O−アルキル、トルエンスルホネート、メチルスルホネート、スルホネート、ホスフェート又はカルボキシレートが含まれる。
【0113】
これらの化合物の薬学的に許容される酸付加塩には、無機酸(例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸など)由来の塩、並びに有機酸(例えば、脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸、フェニル置換アルカノイック酸(alkanoic acid)、ヒドロキシアルカノイック酸、アルカンジオイック酸(alkanedioic acid)、芳香族酸、脂肪族スルホン酸及び芳香族スルホン酸など)由来の塩が含まれる。従って、このような塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが含まれる。アルギン酸塩などのようなアミノ酸の塩及びグルコン酸塩又はガラクツロン酸塩もまた企図される(例えば、Berge S.M.ら、「薬学的塩(Pharmaceutical Salts)」、(1977)J.of Pharmaceutical Science、66:1−19を参照のこと)。
【0114】
上記塩基性化合物の酸付加塩は、従来の様式で遊離塩基形態を充分量の所望の酸と接触させて、塩を生成することによって調製される。この遊離塩基形態は、従来の様式でこの塩形態を塩基と接触させて、遊離塩基を単離することによって再生され得る。この遊離塩基形態は、特定の物理的特性(例えば、極性溶媒中での可溶性)において、そのそれぞれの塩形態とはいくらか異なるが、他の点では、これらの塩は、本発明の目的についてそのそれぞれの遊離塩基と等価である。
【0115】
上記酸性化合物の塩基付加塩は、従来の様式で遊離酸形態を充分量の所望の塩基と接触させて、塩を生成することによって調製される。この遊離酸形態は、従来の様式でこの塩形態を酸と接触させて、遊離酸を単離することによって再生され得る。この遊離酸形態は、特定の物理的特性(例えば、極性溶媒中での可溶性)において、そのそれぞれの塩形態とはいくらか異なるが、他の点では、これらの塩は、本発明の目的についてそのそれぞれの遊離酸と等価である。
【0116】
本発明の化合物は、細胞内の未結合の鉄を結合するのに適切な特異的な鉄キレート剤である。トランスフェリンに結合していない鉄は、毒性形態の鉄である。本発明の鉄キレート剤は、良好な輸送特性を有しかつ細胞膜を横切り、従って、細胞内の過剰な未結合の鉄をキレート化する。それらの鉄との錯体は細胞を自由に離れて迅速に排泄されることが予測される。これらの化合物又はこれらの化合物の少なくとも大部分はBBBを横切ることができ、従って、神経変性疾患、神経変性障害及び神経変性状態の処置のための適切な候補であることがさらに予測される。
【0117】
別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物に関する。
【0118】
さらなる態様において、本発明は、鉄キレート化治療のための医薬組成物の調製のための、神経保護的な鉄キレート剤としての本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0119】
この医薬組成物は、鉄過負荷及び酸化ストレスに関連する疾患、障害及び状態の処置のための鉄キレート化治療における使用が意図されている。
【0120】
本発明の医薬組成物は、鉄過負荷及び酸化ストレスに関連する疾患、障害及び状態(例えば、神経変性疾患及び神経変性障害並びに脳血管疾患及び脳血管障害、新生物疾患、血色素症、サラセミア、心血管疾患、糖尿病、炎症障害、アントラサイクリン心毒性、ウイルス感染、原生動物感染及び酵母感染であるが、これらに限定されない)の治療及び/又は予防のため、加齢を遅延させるため、皮膚の加齢の予防及び/又は治療のため、並びに日光及び/又はUV光に対する皮膚の保護のためのものである。
【0121】
1つの好ましい実施形態において、この医薬組成物は、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、フリードライヒ失調症、ハレルフォルデン−スパッツ病、癲癇及び神経外傷のような神経変性疾患、神経変性状態及び神経変性障害並びに脳血管疾患、脳血管状態及び脳血管障害の予防及び/又は治療における鉄キレート化及び神経保護のための使用のためのものである。1つの好ましい実施形態において、この医薬組成物はパーキンソン病の処置のためのものである。別の好ましい実施形態において、この医薬組成物は、アルツハイマー病の処置のためのものである。さらなる好ましい実施形態において、この医薬組成物は、脳血管障害、特に脳卒中の処置のためのものである。
【0122】
パーキンソン病及びアルツハイマー病のような疾患における本発明の鉄キレート剤の使用の「予防」態様は、さらなる神経変性及びこの疾患のさらなる進行の予防を含む。
【0123】
なお別の好ましい実施形態において、この医薬組成物は、新生物疾患(全てのタイプの癌が本発明によって包含される)の処置における細胞増殖の阻害のためのものである。本発明の鉄キレート剤は、単独でか又は1種若しくは複数の細胞傷害性抗癌薬物と組み合わせて使用され得る。
【0124】
別の好ましい実施形態において、この医薬組成物は、血色素症及びサラセミアにおける鉄過負荷の予防及び/又は治療のためのものである。
【0125】
なお別の好ましい実施形態において、この医薬組成物は、心血管疾患の予防及び/又は治療のため、例えば、再灌流損傷におけるフリーラジカルの発生に関連する損傷を予防するためのものである。
【0126】
なお別の好ましい実施形態において、この医薬組成物は、糖尿病の予防及び/又は治療のためのものである。
【0127】
なお別の好ましい実施形態において、この医薬組成物は、炎症障害の予防及び/又は治療のためのものである。1つの好ましい実施形態において、この炎症障害は、関節の炎症障害、特に慢性関節リウマチである。別の好ましい実施形態において、この炎症障害は炎症性腸疾患(IBD)である。さらなる好ましい実施形態において、この炎症障害は乾癬である。
【0128】
なお別の好ましい実施形態において、この医薬組成物は、アントラサイクリン新生物薬物で処置される癌患者の場合の、アントラサイクリン心毒性の予防及び/又は治療のためのものである。
【0129】
なお別の好ましい実施形態において、この医薬組成物は、ウイルス感染、原生動物感染及び酵母感染の予防及び/又は治療のためのものである。1つの好ましい実施形態において、このウイルス感染はレトロウイルス感染(例えば、HIV−1)であり、この化合物は、任意選択で抗ウイルス剤と組み合わせて、AIDSの処置において使用される。別の好ましい実施形態において、この原生動物感染は、Plasmodium falciparumによって引き起こされるマラリアである。さらなる好ましい実施形態において、この酵母感染はCandida albicans感染である。
【0130】
なお別の好ましい実施形態において、この医薬組成物は、神経変性疾患、神経変性障害又は神経変性状態のような加齢関連の疾患、障害又は状態の予防によって、加齢を遅延させるため及び/又は加齢プロセスを改善するためのものである。
【0131】
なお別の好ましい実施形態において、この医薬組成物は、加齢並びに/或いは日光及び/又はUV光への曝露に関連する皮膚の加齢並びに/或いは皮膚損傷の予防及び/又は治療のためのものである。
【0132】
なお別の好ましい実施形態において、本発明は、加齢並びに/或いは日光及び/又はUV光への曝露に関連する皮膚の加齢並びに/或いは皮膚損傷の予防及び/又は治療のための局所適用のための化粧品組成物を提供する。この化粧品組成物は、ローション又はクリームの形態であってもよく、皮膚処置のための他の薬剤と共に投与されてもよい。
【0133】
別の実施形態において、この鉄キレート剤は、心臓、肺又は腎臓のような移植が意図された器官の保存のためのex vivoでの使用のためのものである。
【0134】
なお別の態様において、本発明は、有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を鉄キレート化治療を必要とする個体に投与するステップを含む、鉄キレート化治療のための方法を提供する。
【0135】
1実施形態において、本発明は、神経変性疾患、神経変性状態又は神経変性障害の予防及び/治療のための方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を、このような予防及び/又は治療を必要とする個体に投与するステップを含む。
【0136】
なお別の実施形態において、本発明は、癌の予防及び/又は治療のための方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を、癌の予防及び/又は治療を必要とする個体に投与するステップを含む。1つの好ましい実施形態において、本発明の鉄キレート剤は、1種又は複数の化学療法剤の投与の前か、投与と同時にか、又は投与の後に投与される。
【0137】
別の実施形態において、本発明は、血色素症患者又はサラセミア患者における鉄過負荷の予防及び/又は治療のための方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩をこの患者に投与するステップを含む。
【0138】
なお別の好ましい実施形態において、本発明は、心血管疾患の予防及び/又は治療のため、例えば再灌流損傷におけるフリーラジカルの発生に関連する損傷を予防するための方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を、心血管疾患の予防及び/又は治療を必要とする個体に投与するステップを含む。
【0139】
なお別の好ましい実施形態において、本発明は、糖尿病の予防及び/又は治療のための方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を、糖尿病の予防及び/又は治療を必要とする個体に投与するステップを含む。
【0140】
なお別の好ましい実施形態において、本発明は、炎症障害の予防及び/又は治療のための方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を、炎症障害の予防及び/又は治療を必要とする個体に投与するステップを含む。1つの好ましい実施形態において、この炎症障害は、関節の炎症障害、特に慢性関節リウマチである。別の好ましい実施形態において、この炎症障害は炎症性腸疾患(IBD)である。さらなる好ましい実施形態において、この炎症障害は乾癬である。
【0141】
なお別の好ましい実施形態において、本発明は、アントラサイクリン心毒性の予防及び/又は治療のための方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を、アントラサイクリン新生物薬物での処置を受ける個体に投与するステップを含む。
【0142】
なお別の好ましい実施形態において、本発明は、ウイルス感染、原生動物感染又は酵母感染の予防及び/又は治療のための方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を、そのような予防及び/又は治療を必要とする個体に投与するステップを含む。1つの好ましい実施形態において、このウイルス感染はレトロウイルス感染(例えば、HIV−1)であり、この化合物は、任意選択で抗ウイルス剤と組み合わせてAIDSの処置において使用される。別の好ましい実施形態において、この原生動物感染は、Plasmodium falciparumによって引き起こされるマラリアである。さらなる好ましい実施形態において、この酵母感染はCandida albicans感染である。
【0143】
なお別の好ましい実施形態において、本発明は、加齢関連の疾患、障害又は状態の予防によって、加齢を遅延させるため及び/又は加齢プロセスを改善するための方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする個体に投与するステップを含む。この個体は実際には、健康な個体又は神経変性疾患、神経変性障害若しくは神経変性状態のような加齢関連疾患に罹患した個体であり得る。
【0144】
なお別の好ましい実施形態において、本発明は、加齢並びに/或いは日光及び/又はUV光への曝露に関連する皮膚の加齢並びに/或いは皮膚損傷の予防及び/又は治療のための方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を、そのような予防及び/又は治療を必要とする個体に投与するステップを含む。この化合物は、最も好ましくは医薬製剤又は化粧品製剤中で局所投与される。
【0145】
本発明はまた、新生物疾患、血色素症、サラセミア、心血管疾患、糖尿病、炎症障害、アントラサイクリン心毒性、ウイルス感染、原生動物感染、酵母感染から選択される鉄過負荷及び酸化ストレスに関連する疾患、障害又は状態の治療及び/又は予防、加齢の遅延、並びに皮膚の加齢の予防及び/又は治療、並びに日光及び/又はUV光に対する皮膚の保護のための医薬組成物の調製のための、化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシキノリン(本明細書中でVK−28と特定される、付録IV)の使用を提供する。
【0146】
本発明はさらに、鉄キレート化治療を必要とする個体に、神経変性疾患、神経変性状態又は神経変性障害の予防及び/又は治療を除く、鉄過負荷及び酸化ストレスに関連する疾患、障害又は状態の治療及び/又は予防のために、有効量の化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシキノリン(本明細書中でVK−28と特定される、付録IV)を投与するステップを含む、鉄キレート化治療のための方法を提供する。
【0147】
本発明はなおさらに、加齢並びに/或いは日光及び/又はUV光への曝露に関連する皮膚の加齢並びに/或いは皮膚損傷の予防及び/又は治療のための局所適用のための化粧品組成物の調製のための、化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシキノリン(本明細書中でVK−28と特定される、付録IV)の使用を提供する。
【0148】
本発明はなおさらに、心臓、肺又は腎臓のような移植が意図された器官の保存のための、化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシキノリン(本明細書中でVK−28と特定される、付録IV)のex vivoでの使用を提供する。
【0149】
本発明の医薬組成物を調製するために、当該分野で周知の方法が使用され得る。固体又は液体のいずれかである不活性な薬学的に許容される担体が使用され得る。固体形態の調製物には、粉末、錠剤、分散性顆粒、カプセル剤、カシェ剤及び坐剤が含まれる。
【0150】
固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤又は錠剤崩壊剤としても作用し得る1種又は複数の物質であり得、カプセル化材料でもあり得る。
【0151】
液体の医薬組成物には、溶液、懸濁物及びエマルジョンが含まれる。例として、非経口注射のための水又は水−プロピレングリコール溶液が言及され得る。液体調製物はまた、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液で製剤化され得る。経口使用のための水溶液は、活性成分を水中に溶解し、適切な色素、香味剤、安定剤及び増粘剤を所望に応じて添加することによって調製され得る。経口使用のための水性懸濁物は、微細に分割された活性成分を、粘性材料(すなわち、天然ゴム又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び他の周知の懸濁剤)と共に水中に分散させることによって作製され得る。
【0152】
好ましくは、この医薬組成物は、単位投薬形態で存在する。このような形態において、この調製物は、適切な量の活性成分を含む単位用量に細分される。この単位投薬形態は、包装された調製物であり得、この包装は、バイアル又はアンプル中に別個の量の調製物包装(例えば、包装された錠剤、カプセル剤及び粉末)を含む。この単位投薬形態はまた、それ自体カプセル剤、サシェ剤又は錠剤であり得るか、或いは適切な数の任意のこれらの包装形態であり得る。
【0153】
パーキンソン病の処置のための治療的使用において、本発明の薬学的方法において利用される化合物は、1日当たり1mg/Kg〜20mg/Kgの投薬レベルで患者に投与され得る。
【0154】
脳卒中の処置のための治療的使用において、体重1Kg当たり約100mg〜約500mgの1つ又は複数の投薬が、脳卒中事象後可能な限り直ぐに患者に投与され得る。
【0155】
しかし、この投薬量は、患者の要求、処置される状態の重篤度及び使用される化合物に依存して変動し得る。特定の状況のために最適な投薬量の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0156】
以下の実施例は、本発明に従う化合物を調製するための特定の方法を示す。これらの実施例は、本発明の範囲の例示として意図されるのであって、限定として意図されるものではない。
【0157】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の化合物の合成(化学物質の項)及びそれらの生物学的活性(生物学の項)を記載する。
【0158】
(I.化学物質の項)
(i)付録I〜VII
本発明の化合物の構造式は、本明細書中で付録I〜VI中に示される。付録VIIは、いくつかの中間体化合物の式を含む。以下の実施例における化合物のよりよい特定のために、可能である場合、本明細書中で使用される化合物の呼称及びそれぞれの付録は、化合物の名称の近傍の括弧内に与えられる。適切な場合、上記スキームA〜D中に与えられる呼称は、出発化合物又は中間体について使用される。
【0159】
付録の内容は以下の通りである:
付録I−化合物M6A、M7A、M8A、M18A、M19A、M20A、M21A、M22A、M27A、M28A。
付録II−化合物M6、M7、M8、M11、M12、M18、M19、M20、M21、M22、M27、M28。
付録III−化合物HLA16a、HLA20、M9a、M10a、M11a、M12a、M13a、M15a、M17、M30、M31、M33、M34。
付録IV−化合物VK−28(公知)、HLA16、HLM7、HLM8、HLM9、M9、M10、M11B、M12B、M13、M15、M32。
付録V−化合物M6B、M7B、M8B、M18B、M19B、M20B、M21B、M22B、M27B、M28B、M35、M36、M36a、M37〜46。
付録VI−化合物M9b、M11b、M12b、M13b、M15b、HLA16b、M17a、HLA20a、M30a、M31a、M33a、M34b。
付録VII−中間体H1、H2、H3、H4、H5、H6。
【0160】
(ii)概説
化学合成のための出発物質を、以下の会社から得た:Aldrich(USA)、E.Merck(Germany)、Fluka(Switzerland)。
【0161】
陽子NMRスペクトルを、Bruker WH−270 NMR分光計、Bruker DPX−250 NMR分光計又はBruker AMX−400 NMR分光計で測定した。フラッシュカラムクロマトグラフィー分離を、シリカゲルMerck 60(230〜400メッシュのASTM)で実施した。UV/VISスペクトルを、Hewlett−Packard 8450Aダイオードアレイ分光光度計で測定した。TLCを、E.Merck Kieselgel 60F254プレートで実施した。TLCプレートの染色を、以下によって実施した:(i)塩基性水性1% KMnO;(ii)EtOHabs中0.3%のニンヒドリン。テトラヒドロフランをLiAlH上で蒸留し、Alカラムを通過させた。質量スペクトル(DI、EI−MS)を、VG−platform−IIエレクトロスプレー単一四極子質量分析計(Micro Mass、UK)で測定した。
【実施例1】
【0162】
D−N−プロパルギル−3−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル)アラニン(M9a、付録III)及びL−N−プロパルギル−3−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル)アラニン(M10a、付録III)の合成。
【0163】
本明細書中の式IIのこれらの鏡像異性体を、以下のステップによって、上記スキームB中に示される方法によって調製した:
(i)5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリノリン(hydroxyquinolinoline)(A2)の合成。
【0164】
14.6g(0.1mole)の8−ヒドロキシキノリノリン、16mlの32%塩酸及び16ml(0.1ml)の37%ホルムアルデヒドの混合物を、0℃で塩化水素ガスで6時間処理した。この溶液を、攪拌せずに室温で2時間静置させた。黄色固体をフィルタ上で収集して乾燥させて、粗製5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンヒドロクロリド(A2)を得た:2.16g;

【0165】
(ii)8−(5−クロロメチル)キノリルアセテート(B3)の合成。
【0166】
乾燥DMF(5ml)中の上記ステップ(i)で得た粗製A2(230mg、1mmole)の攪拌溶液に、0℃でピリジン(0.3ml、2.5mmol)及び塩化アセチル(0.6ml、8mmole)を、N下で同時にゆっくりと添加した。この反応混合物を0℃で1時間攪拌し、室温で1時間攪拌した。0℃に冷却した後、10mlの水を添加し、得られた混合物を0℃で20分間攪拌した。次いで、この混合物をクロロホルム(3×20ml)で抽出した。合せた有機層を、飽和NaHCO(2×20ml)、ブライン(2×20ml)で洗浄し、NaSOで乾燥させた。エバポレーションにより、化合物(B3)(粗製)(180mg、75%)を黄褐色固体として得た。m.p.=119〜120℃、R0.75(CHCl:MeOH:NH 9:1:0.25)。

【0167】
(iii)ジエチル8−ヒドロキシキノリン−5−イル−メチル−アセトアミドマロネート(HLM7、付録IV)の合成。
【0168】
エタノール(50ml)中のアセトアミドマロネート(183mg、0.842mmol)及び金属ナトリウム(34mg、0.842mmole)の溶液に、CHCl(5ml)中の8−(5−クロロメチル)キノリルアセテート(B3)(180mg、765mmole)を添加した。この混合物を還流下で5時間攪拌し、冷却し、減圧下でエバポレートした。水(20ml)を残渣に添加し、この混合物をCHCl:EtOAc(3×20ml、1:1)で抽出した。有機層をブライン(2×20ml)で洗浄し、NaSOで乾燥させた。エバポレーションにより、表題化合物(HLM7):(170mg、59%)を黄褐色固体(粗製)として得た。m.p.=153〜154℃、R0.25(CHCl:MeOH:NH 9:1:0.25)。

【0169】
(iv)DL−3−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル)アラニン(HLM8、付録IV)の合成。
【0170】
上記(iii)で得たジエチル(8−ヒドロキシキノリン−5−イル−メチル)−アセトアミドマロネート(HLM7)(8.9g、21.9mmol)を、6N HCl(150ml)中に溶解し、得られた混合物を10時間還流した。この反応混合物を乾燥するまでエバポレートし、溶媒を減圧下で除去した。残渣をHO中に再度溶解して濾過した。この溶液のpHを10%NaOHで5〜5.5の間に調整した。黄色沈殿物を濾過によって収集し、水で完全に洗浄し、水(pH=5.5)から再結晶化し、次いでアセトンで洗浄して表題化合物(HLM8)(3.8g、収率65%)、純度100%を得て、HPLC[(C18;溶媒A=水、0.1% v/v TFA;溶媒B=MeCN:水=3:1、0.1% v/v TFA;t=18.2分(55分間にわたり直線勾配0〜80%のB)]によってチェックした。m.p.=194℃(分解)。

【0171】
(v)DL−3−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル)アラニンエチルエステル(HLM9、付録IV)の合成。
【0172】
無水エタノール(26ml)中のDL−3−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル)アラニン(HLM8)(2.19g、7.04mmol)の攪拌スラリーに、0℃で、CaClチューブによってN中で大気の湿気から保護して、塩化チオニルを滴下した(1.1ml、14.1mmol)。この反応混合物を0℃で30分間攪拌し、室温で30分間攪拌し、次いで一晩還流した。この溶液を減圧下で乾燥するまでエバポレートした。その残渣を無水エタノール中に溶解し、乾燥するまで再度エバポレートした。エステル化の完了を確実にするために、全操作を反復した。エステルHLM9(黄色固体、1.67g、収率92%)(これは、HPLCによって約1%の遊離アミノ酸を含むことが示された)を、FC(CHCl:MeOH:AcOH 9:1.5:1.5)によってさらに精製した。

【0173】
(vi)L−3−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル)アラニン(M10、付録IV)及びD−3−(8−ヒドロキシ−キノリン−5−イル)アラニンエチルエステル(B7、スキームB)の合成。
【0174】
上記1(v)で得たDL−3−(8−ヒドロキシ−キノリン−5−イル)アラニンエチルエステル(HLM9)(89.2mg)を、5mlの水中に溶解し、この溶液のpHを、0.2MのNaOHで約6.4に調整し、α−キモトリプシン(0.9mg)を添加し、pHを0.2MのNaOHの添加によって一定に維持しながら、この混合物を室温で6時間インキュベートした。消化後、この混合物を乾燥するまで凍結乾燥し、半調製的HPLC[C18;溶媒A=水、0.1% v/v TFA;溶媒B=MeCN:水=3:1、0.1% v/v TFA;t=18.0分(55分間にわたり直線勾配0〜80%のB)]によって分離した。α−キモトリプシンはL形態に特異的なので、L−3−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル)アラニン(M10)が得られた:27.6mg、35%、純度100%、[α]20=+13.5(D−3−(8−ヒドロキシ−キノリン−5−イル)アラニンエチルエステル(B7)を回収した:39.2mg、88%の回収)。

【0175】
(vii)D−3−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル)アラニン(M9、付録IV)の合成。
【0176】
エチルエステルの加水分解のために、33.4mgのステップ1(vi)で回収したD−3−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル)アラニンエチルエステル(B7)を、11mlの0.2M NaOH中に溶解し、この溶液を室温で6時間攪拌した。その水を凍結乾燥によって除去し、生成物を半調製的HPLC[(C18;溶媒A=水、0.1% v/v TFA;溶媒B=MeCN:水=3:1、0.1% v/v TFA;t=18.4分(55分間にわたり直線勾配0〜80%のB)]によって精製して、表題化合物M9を得た:26.8mg、89%、純度99.1%。[α]20=−10.3。

【0177】
(viii)D−N−プロパルギル−3−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル)アラニン(M9a、付録III)の合成。
【化22】

【0178】
NaHCO(17mg、0.2mmol)及び上記ステップ(vii)からの化合物M9(23.2mg、0.1mmol)の混合物を、5mlのDMSO中に溶解し、この溶液を室温で2時間攪拌した。この溶液に、臭化プロパルギル(11.9mg、0.1mmol)をゆっくりと添加し、この溶液を室温で24時間攪拌した。溶媒を減圧によって除去し、粗製生成物を、半調製的HPLC[(C18;溶媒A=水、0.1% v/v TFA;溶媒B=MeCN:水=3:1、0.1% v/v TFA;t=22.4分(55分間にわたって直線勾配0〜80%のB)]によって精製して、表題化合物M9aを得た:19mg、収率70%。[α]20=−12.3。

【0179】
(ix)L−N−プロパルギル−3−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル)アラニン(M10a、付録III)の合成。
【化23】

【0180】
表題化合物を、上記ステップ(viii)の手順を使用して合成した。収率78%。[α]20=+15.3。

【実施例2】
【0181】
5−(4−プロパルギルピペラジン−1−イルメチル)−8−ヒドロキシ−キノリン(HLA20、付録III)の合成。
【0182】
表題化合物を、N−プロパルギルピペラジンとの5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリノリン(A2)の反応によって以下のように調製した:
(i)tert−ブチル1−ピペラジンカルボキシレート(D5、スキームD)の合成。
【0183】
MeOH(25ml)中のジ(tert−ブチル)ジカーボネート(2.93g、12.77mmole)の溶液を、MeOH(50ml)中のピペラジン(2.00g、23.22mmole)の攪拌溶液に0℃でゆっくりと添加した。次いでこの混合物を室温で2日間攪拌し、溶媒を減圧下で除去した。粗製固体を温めながらEtO(100ml)中に再度溶解し、白色沈殿物を濾過して除いた。その生成物を、1Mクエン酸溶液(3×50ml)を用いて母液から抽出し、その水層をEtOAc(3×50ml)で洗浄し、NaCO(pH11)で塩基性化し、EtOAc(3×50ml)で抽出した。その有機層をNaSOで乾燥させて、減圧下でエバポレートし、蝋状の白色固体としてtert−ブチル1−ピペラジンカルボキシレート(D5)を得た(粗製、1.57g、66%)、mp=53〜45℃。

【0184】
(ii)tert−ブチル4−プロパルギルピペラジン−1−カルボキシレート(D6、スキームD)の合成。
【0185】
臭化プロパルギル(356.9mg、3mmol)を、CHCl(25ml)中の上記ステップ2(i)で得たtert−ブチル1−ピペラジンカルボキシレート(558.8mg、3mmole)及びジイソプロピルエチルアミン(407.1mg、3.15mmol)の混合物に、0℃でゆっくりと添加した。この混合物を室温で24時間攪拌した。次いで50mlのCHClを添加し、この溶液を5% NaHCO(3×50ml)、ブライン(2×50ml)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。この溶液を濾過し、乾燥するまでエバポレートした。その残渣をベンゼン−ヘキサン(1:1)の混合物から結晶化して、tert−ブチル4−プロパルギルピペラジン−1−カルボキシレート(D6)(粗製337mg、86%)を得た。

【0186】
(iii)N−プロパルギルピペラジン(D7、スキームD)の合成。
【0187】
上記ステップ2(ii)のtert−ブチル4−プロパルギルピペラジン−1−カルボキシレート(570mg、2.545mmol)を、トリフルオロ酢酸(10ml)及び水(2.5ml)中に溶解した。次いでこの混合物を室温で一晩攪拌した。この溶液を、減圧下で乾燥するまでエバポレートした。その残渣を水(10ml)中に溶解し、次いでNaCO(pH11)で塩基性化し、EtOAc(3×50ml)で抽出した。その有機層をブライン(2×50ml)で洗浄し、NaSOで一晩乾燥させた。減圧下でのエバポレーションにより、白色固体としてN−プロパルギルピペラジン(D7)(粗製、193mg、収率62%)を得た。

【0188】
(iv)5−(4−プロパルギルピペラジン−1−イルメチル)−8−ヒドロキシキノリン(HLA20、付録III)の合成。
【0189】
6mlのCHCl中の5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンヒドロクロリド(A2)(323mg、1.407mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.26ml、1.477mmol、1.05当量)の混合物に、0℃で上記ステップ2(iii)で得たN−プロパルギルピペラジン(173mg、1.407mmol、1当量)を添加した。この混合物を室温で24時間攪拌した。次いで10mlのCHClを添加し、この溶液を5% NaHCO(3×50ml)、ブライン(2×50ml)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。粗製生成物をFCによって精製して、表題化合物(HLA20)を白色固体として得た(337mg、収率86%)。

【実施例3】
【0190】
5−(4−プロパルギルアミノエトキシカルボニル−ピペラジン−1−イルメチル)−8−ヒドロキシキノリン(HLA16a、付録III)の合成。
【0191】
(i)エチル4−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−1−ピペラジンカルボキシレート(HLA16、付録IV)の合成。
【0192】
50mlのCHCl中の5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンヒドロクロリド(A2)(2.36g、10.2mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(3.6ml、20.4mmol、2当量)の混合物に、0℃でエチル1−ピペラジンカルボキシレート(1.5ml、10.2mmol、1当量)を添加した。この混合物を室温で24時間攪拌し、次いで100mlのCHClを添加し、この溶液を5% NaHCO(3×50ml)、ブライン(2×50ml)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。この溶液を濾過し、乾燥するまでエバポレートした。その残渣をベンゼン−ヘキサン(1:1)の混合物から結晶化して、表題化合物HLA16を白色固体として得た(1.38g、収率42%、m.p.=92〜93℃)。

【0193】
(ii)代替的な方法において、表題化合物HLA16aを、N−プロパルギルアミノエトキシカルボニル−ピペラジンとの5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンの反応によって以下のように調製する:
(iia)N−プロパルギルアミノエトキシカルボニルピペラジン(H1、付録VII)の合成。
【化24】

【0194】
2−クロロエチルクロロホルメート(429mg、3mmol)を、CHCl(25ml)中の実施例2のステップ(ii)のように得たtert−ブチル1−ピペラジンカルボキシレート(559mg、3mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(407mg、3.15mmol)の混合物に0℃でゆっくりと添加した。この混合物を室温で24時間攪拌した。次いでCHCl(50ml)を添加し、この溶液を5% NaHCO(3×50ml)、ブライン(2×50ml)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。この溶液を濾過し、乾燥するまでエバポレートした。その残渣を室温でCHCl(25ml)中に溶解し、プロパルギルアミン(0.205ml、165mg、3mmol)を添加した。室温で24時間の攪拌後、溶媒を減圧によって除去し、その残渣に20mlのTFA:HO:TES:チオアニソール(85:5:5:5)の溶液を添加した。次いで、この混合物を室温で2時間攪拌した。この溶液を減圧下で乾燥するまでエバポレートした。得られた残渣を水(10ml)中に溶解し、次いでNaCO(pH11)で塩基性化し、EtOAc(3×50ml)で抽出した。その有機層をブライン(2×50ml)で洗浄し、NaSOで一晩乾燥させた。減圧下でのエバポレーションにより、表題化合物H1を得た:(251mg、総収率40%)。

【0195】
(iib)5−(4−プロパルギルアミノエトキシカルボニル−ピペラジン−1−イルメチル)−8−ヒドロキシキノリン(HLA16a、付録III)の合成。
【化25】

【0196】
5mlのCHCl中の5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンヒドロクロリド(A2)(194mg、1mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.348ml、2mmol、2当量)の混合物に、室温でH1(221mg、1mmol、1当量)を添加した。この混合物を室温で24時間攪拌した。次いで10mlのCHClを添加し、この溶液を5% NaHCO(3×10ml)、ブライン(2×10ml)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。この溶液を濾過し、乾燥するまでエバポレートした。その残渣をトルエン−ヘキサン(1:1)の混合物から結晶化して、表題化合物HLA16aを白色固体として得た(184mg、収率50%)。

【実施例4】
【0197】
N−プロパルギルS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−L−システイン(M12a、付録III)及びN−プロパルギルS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−D−システイン(M11a、付録III)の合成。
【0198】
これらの表題化合物を、本明細書中で上記したスキームB中に示される第一の経路に従って調製した。
【0199】
(i)S−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−L−システイン(M12、付録II)の合成。
【0200】
L−システインヒドロクロリド水和物(37mg、0.31mmol)を、DMSO(3ml)中に溶解した。この溶液に粉末化したKOH(36mg、0.34mmol)を添加し、この混合物を室温で30分間攪拌した。次いで、粉末化した5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンヒドロクロリド(A2)(65mg、0.34mmol)を添加した。この懸濁物を室温で12時間攪拌し、2N HClを添加し、pHを5に調整した。その沈殿物を水及びアセトンで洗浄した。粗製生成物を、半調製的HPLCによってさらに精製して、化合物M12を得た:53mg(61%)。HPLC(t):38.1分(直線勾配:最初の4分間にわたり50%のB、60分間にわたり100%のBまで直線的に増大)[α]20=+20.5°(c=1.0、HO);

【0201】
(ii)S−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−D−システイン(M11、付録II)の合成。
【0202】
化合物M11を、M12について上記した4(i)に記載される方法と同様に調製したが、出発物質としてL−システインの代わりにD−システインを使用した。

【0203】
(iii)N−プロパルギルS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−L−システイン(M12a、付録III)の合成。
【化26】

【0204】
5mlのDMSO中のNaHCO(34mg、0.4mmol)及び化合物M12(54mg、0.2mmol)の攪拌混合物に、臭化プロパルギル(24mg、0.2mmol)をゆっくりと添加し、この溶液を室温で24時間攪拌した。溶媒を減圧によって除去し、粗製生成物を結晶化し(pH5.5)、次いで半調製的HPLC[(C18;溶媒A=水、0.1% v/v TFA;溶媒B=CHCN:水=3:1、0.1% v/v TFA;t=24.4分(55分間にわたり直線勾配0〜80%のB)]によってさらに精製して、表題化合物M12aを得た:37mg、収率60%。[α]20=−16.3(c=1.0、0.1N HCl)。質量分析:C1616Sについて計算値m/z[M+H]=317.38、実測値[M+H]=317.30。

【0205】
(iv)N−プロパルギルS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−D−システイン(M11a、付録III)の合成。
【化27】

【0206】
表題化合物M11aを、M12aについての手順に従って調製したが、出発物質としてM12の代わりにM11を使用した。収率70%。[α]20=−18.3(c=1.0、0.1N HCl)。質量分析:C1616Sについて計算値m/z[M+H]=317.38、実測値[M+H]=317.31。

【実施例5】
【0207】
N−プロパルギルS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−L−システイン(M12a、付録III)及びN−プロパルギルS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−D−システイン(M11a、付録III)の合成−方法B。
【0208】
これらの表題化合物は、化合物M11及びM12のN−9−フルオレニルメトキシカルボニル(N−Fmoc)誘導体の調製、Fmoc保護基の除去及び臭化プロパルギルとの反応からなる別の方法によって調製し得る。
【0209】
(i)N−9−Fmoc−S−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−L−システイン(M11B、付録IV)の合成。
【0210】
実施例4(i)で得た粗製化合物M11(27.5mg、0.1mmol)を、10% NaCO(12ml)中に溶解した。この溶液を攪拌し、そのpHを小部分の10% NaCOを使用して約8に調整した。この溶液に、ジオキサン(2ml)中の(9−フルオレニルメチル)スクシンイミジルカーボネート(36.6mg、0.11mmol、1.1当量)を滴下した。この反応混合物を室温で12時間攪拌した。ジオキサンを室温で減圧下でエバポレートし、その水相をEtO(3×30ml)で抽出した。この水相を10% KHSOでpH2〜3に酸性化し、EtOAc(3×30ml)で抽出した。合せたEtOAc部分をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。その残渣を、半調製的HPLCによってさらに精製して、表題化合物を得た:26mg(50%)。HPLC(t):38.1分(直線勾配:最初の4分間にわたって50%のB、60分間で100%のBまで直線的に増大)。

【0211】
(ii)N−9−Fmoc−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−D−システイン(M12B、付録IV)の合成。
【0212】
化合物M12Bを、適切な出発物質を使用して、上記ステップ5(i)に記載されるような化合物M11Bを合成するための方法によって調製した。

【0213】
(iii)N−プロパルギルS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−L−システイン(M12a、付録III)の合成。
【0214】
表題化合物を、化合物M12BからのFmoc基の除去及び臭化プロパルギルとのその反応によって得る。
【0215】
(iv)N−プロパルギルS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−D−システイン(M11a、付録III)の合成。
【0216】
この化合物を、化合物M11BからのFmoc基の除去及び臭化プロパルギルとのその反応によって得る。
【実施例6】
【0217】
N−(4−プロパルギルピペラジン−1−イルエチル)−2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン(HLA20a、付録VI)の合成。
【0218】
表題化合物を、N−(2−クロロエチル)−2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン(H2、付録VII)(Bijaya L.Rai、Lotfollah Dekhordi、Hicham Khodr、Yi Jin、Zudong Liu及びRobert C.HiderのJ.Med.Chem.1998、41、3347−3359に記載されるように調製した)のN−プロパルギルピペラジン(実施例2のステップ(iii)と同様に得た)との反応によって、スキームDに記載されるように調製した:
【化28】

【0219】
6mlのCHCl中のH2(375mg、2mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.352ml、2mmol、1当量)の混合物に、0℃でN−プロパルギルピペラジン(245mg、2mmol、1当量)を添加した。次いで、この混合物を室温で24時間攪拌した。CHCl(10ml)を添加し、この溶液を5% NaHCO(3×50ml)、ブライン(2×50ml)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。粗製生成物をFCによって精製して、表題化合物HLA20aを得た:337mg、収率60%。

【実施例7】
【0220】
N−(N−メチル−プロパルギルアミノエチル))−2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン(M30a、付録VI)の合成。
【0221】
表題化合物を、H2と、出発物質としてのN−プロパルギルピペラジンの代わりのN−メチル−プロパルギルアミンとの反応によって、スキームDに記載されるように調製した:
【化29】

【0222】
CHCl(2ml)中のN−メチル−プロパルギルアミンヒドロクロリド(212mg、2mmole)の溶液を、6mlのCHCl中のH2(375mg、2mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.352ml、2mmol、1当量)の攪拌溶液に0℃でゆっくりと添加した。次いで、この混合物を室温で一晩攪拌し、その溶媒を減圧下で除去した。粗製固体を10mlのCHCl中に再度溶解し、次いで5% NaHCO(3×30ml)、ブライン(2×20ml)で洗浄した。その有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下でエバポレートして表題化合物M30aを得た。

【実施例8】
【0223】
N−(4−プロパルギルアミノエトキシカルボニル−ピペラジン−1−イルメチル))−2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン(HLA16b、付録VI)の合成。
【化30】

【0224】
表題化合物HLA16bを、実施例7中のM30aについての手順に従って合成したが、出発物質としてN−メチルプロパルギルアミンの代わりにN−プロパルギルアミノエトキシカルボニルピペラジン(H1)を使用した。収率64%。

【実施例9】
【0225】
N−プロパルギル−S−(2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン−1−イルエチル)−L−システイン(M12b、付録VI)及びN−プロパルギル−S−(2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン−1−イルエチル)−D−システイン(M11b、付録VI)の合成。
【0226】
表題化合物を、D1のシステインとの反応、及び得られたD2の臭化プロパルギルとのさらなる反応によって、本明細書中で上記したスキームD中に示された第一の経路に従って以下のように調製した:
【0227】
(i)S−(2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン−1−イルエチル)−L−システイン(L−H3、付録VII)の合成。
【化31】

【0228】
L−システインヒドロクロリド水和物(37mg、0.31mmol)を、DMSO(3ml)中に溶解した。この溶液に粉末化したKOH(36mg、0.34mmol)を添加し、この混合物を室温で30分間攪拌した。次いで、DMSO中のH2(64mg、0.34mmol)を添加した。室温で24時間の攪拌後、2N HClをこの反応混合物に添加し、そのpHを5.5に調整した。その沈殿物を水及びアセトンで洗浄した。粗製生成物を、半調製的HPLCによってさらに精製して、表題化合物L−H3を得た:64mg(70%)。HPLC(t):32.1分(直線勾配:最初の4分間にわたって50%のB、60分間で100%のBまで直線的に増大)[α]20=−20.5°(c=1.0、HO)。

【0229】
(ii)N−プロパルギル−S−(2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン−1−イルエチル)−L−システイン(M12b、付録VI)の合成。
【化32】

【0230】
NaHCO(34mg、0.4mmol)及びL−H3(75mg、0.34mmol)の混合物を、5mlのDMSO中に溶解し、この溶液を室温で2時間攪拌した。この溶液に、臭化プロパルギル(24mg、0.2mmol)をゆっくりと添加し、この溶液を室温で24時間攪拌した。溶媒を減圧によって除去し、粗製生成物を水(pH5.5)中で結晶化し、半調製的HPLC[(C18;溶媒A=水、0.1% v/v TFA;溶媒B=CHCN:水=3:1、0.1% v/v TFA;t=20.4分(55分間にわたり直線勾配0〜80%のB)]によってさらに精製して、表題化合物M12bを得た:37mg、収率60%。[α]20=−16.3。

【0231】
(iii)S−(2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン−1−イルエチル)−D−システイン(D−H3、付録VII)の合成。
【化33】

【0232】
表題化合物を、L−H3についての手順に従って調製したが、出発物質としてL−システインの代わりにD−システインを使用した。収率71%。HPLC(t):32.1分(直線勾配:最初の4分間にわたり50%のB、60分間で100%のBまで直線的に増大)[α]20=+19.5°(c=1.0、HO)。

【0233】
(iv)N−プロパルギルS−(2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン−1−イルエチル)−D−システイン(M11b、付録VI)の合成。
【化34】

【0234】
表題化合物M11bを、M12bについての手順に従って合成したが、出発化合物としてS−(2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン−1−イルエチル)−L−システインの代わりにS−(2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン−1−イルエチル)−D−システイン(D−H3)を使用した。収率70%、[α]20=+17.3。

【実施例10】
【0235】
N−プロパルギルグリシンヒドロキサメート(M37、付録V)の合成。
【化35】

【0236】
臭化プロパルギル(356.9mg、3mmol)を、CHCl(20ml)中のグリシンヒドロキサメート(270mg、3mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(407.1mg、3.15mmol)の混合物に0℃でゆっくりと添加した。この混合物を室温で24時間攪拌し、CHCl(50ml)を添加した。この溶液を5% NaHCO(3×50ml)、ブライン(2×50ml)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。この溶液を濾過し、乾燥するまでエバポレートして表題化合物M37を得た:192mg、収率50%。

【実施例11】
【0237】
N−(4−メチルピペラジン−1−イルメチルカルボニル),Nプロパルギルグリシンヒドロキサメート(M38、付録V)の合成。
【0238】
表題化合物を、N−t−ブトキシ2−(N−クロロアセチル,N−プロパルギル)アミノ−アセトアミド(H4、付録VII)のN−メチルピペラジンとの反応によって調製した。化合物H4を、N−t−ブトキシ2−アミノ−アセトアミドの塩化クロロアセチル及び臭化プロパルギルとの反応によって以下のように得た:
(i)N−t−ブトキシ2−(N−クロロアセチル−N−プロパルギル)アミノ−アセトアミド(H4)の合成。
【化36】

【0239】
臭化プロパルギル(356.9mg、3mmol)を、CHCl(20ml)中の2−アミノ−N−t−ブトキシ−アセトアミド(438.6mg、3mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(407.1mg、3.15mmol)の混合物に0℃でゆっくりと添加した。この混合物を室温で24時間攪拌し、CHCl(50ml)を添加した。この溶液を5% NaHCO(3×50ml)、ブライン(2×50ml)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。この溶液を濾過し、乾燥するまでエバポレートした。その残渣をCHCl(25ml)中のジイソプロピルエチルアミン(258mg、2mmol)に室温で溶解し、塩化クロロアセチル(0.239mL、339mg、3mmol)を30分間にわたって0℃でゆっくりと添加した。室温で2時間の攪拌後、溶媒を減圧によって除去した。得られた残渣をEtOAc(60ml)中に溶解し、飽和NaHCO(2×50ml)、ブライン(2×50ml)で洗浄し、NaSOで一晩乾燥させた。減圧下でのエバポレーションによって、表題化合物H4を得た:390mg、収率50%。

【0240】
(ii)N−(4−メチルピペラジン−1−イルメチルカルボニル)−N−プロパルギルグリシンヒドロキサメート(M38、付録V)の合成。
【化37】

【0241】
N−メチルピペラジン(100mg、1mmol、1当量)を、クロロホルム(5ml)、ジイソプロピルエチルアミン(0.348ml、2mmol、2当量)及び上記のステップ(i)で得たH4(261mg、1mmol)の攪拌溶液に室温で添加した。室温で24時間攪拌した後、10mlのCHClを添加し、この溶液を5% NaHCO(3×10ml)、ブライン(2×10ml)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。この溶液を濾過し、乾燥するまでエバポレートした。その残渣を、TFA:HO:TES:チオアニソール(85:5:5:5)の溶液(5ml)中に溶解し、室温で1時間攪拌した。減圧下での溶媒の除去後、その残渣をEtOAc(50ml)中に溶解し、飽和NaHCO(3×20ml)、ブライン(2×10ml)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。減圧下でのエバポレーションにより、表題化合物M38を得た:160mg、収率60%。

【実施例12】
【0242】
N−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチルカルボニル),N−プロパルギルグリシンヒドロキサメート(M39、付録V)の合成。
【化38】

【0243】
表題化合物M39を、上記実施例11中のM38についての手順に従って合成したが、出発物質としてN−メチルピペラジンの代わりに4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンを使用した。収率72%。質量分析:C1322について計算値m/z[M+H]=299.34、実測値[M+H]=299.40。

【実施例13】
【0244】
N−[4−エトキシカルボニルピペラジン−1−イルメチルカルボニル),N−プロパルギルグリシンヒドロキサメート(M40、付録V)の合成。
【化39】

【0245】
表題化合物M40を、上記実施例11に記載されるように調製したが、出発物質としてN−メチルピペラジンの代わりに4−エトキシカルボニルピペラジンを使用した。収率78%。質量分析:C1422について計算値m/z[M+H]=327.35、実測値[M+H]=327.28。

【実施例14】
【0246】
一般的ペプチド合成
付録Iに示されるような式Iの本発明の化合物の調製において使用されるペプチドを、以下に記載される一般的な方法によって調製する。
【0247】
他のように記述されない限り、全ての化学物質及び試薬は分析等級のものであった。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用のトリフルオロ酢酸(TFA)は、Merck(Darmstadt、Germany)から得た。N−9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護されたアミノ酸誘導体及びRinkアミド樹脂は、Novabiochem(Laufelfingen、Switzerland)から購入した。
【0248】
これらのペプチドを、会社のプロトコルに従ってFmoc化学を使用して固相ペプチド合成によって手動で調製した。N−α−Fmoc−アミノ酸誘導体をこの合成において使用した。N−メチルモルホリン(NMM)及びベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)並びに必要に応じて1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)の組み合わせを、カップリング剤として利用した。N−メチルピロリドン(NMP)及びDMFを溶媒として使用した。各カップリングの前に、α−アミノ基の脱保護を、20%ピペリジンとの反応によって達成した。全ての合成したペプチドを脱保護し、TFA:トリエチルシラン(TES):チオアニソール:水(85:5:5:5)の溶液を使用して樹脂から切断した。切断混合物を濾過し、ペプチドを、過酸化物を含まない乾燥エーテルで0℃でこの溶液から沈殿させた。沈殿したペプチドを、冷乾燥エーテルで洗浄し、水又は水/アセトニトリル溶液中に溶解し、凍結乾燥した。この粗製ペプチドを、2つのモデル510ポンプ、モデル680自動勾配制御装置及びモデル441吸光度検出器からなるWatersシステム(Waters、Milord、MA)で実施した半調製的HPLC精製に供した。カラム流出液を214/254nmでのUV吸光度によってモニタリングした。使用したHPLCの予めパックされたカラム(Merck、Darmstadt、Germany)は、半調製的精製についてはLichrosorb RP−18(7m)を含むLichroCART 250−10mm、分析的分離についてはLichrospher 100 RP−18、250−4 mm(5m)であった。0.1% TFAを含む水中のアセトニトリルの勾配を使用して分離を達成した。精製されたペプチドを含む溶液を一晩凍結乾燥した。全てのペプチドの分子量を、質量分析によって確認した。質量分析を、電子スプレーイオン化法を利用してMicromass Platform LCZ4000(Manchester、UK)で実施した。アミノ酸組成の分析のために、ペプチドを減圧下で24時間100℃で6N HCl中で加水分解し、その加水分解物をDionex Automatic Amino Asid Analyzerを用いて分析した。
【実施例15】
【0249】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基を含むVIP類似体誘導体−Fmoc−KKC(HQ)L−NH(M7、付録II)の合成。
【0250】
血管作動性腸管ペプチド(VIP)は、アルツハイマー病のモデルにおいてβアミロイド毒性に対する神経保護を提供することが知られる28マーのペプチドである。VIPの作用部位のマッピングは、4アミノ酸のペプチド(Lys−Lys−Tyr−Leu)を導く。このVIPフラグメントの類似体を、8−ヒドロキシキノリン(HQ)残基への連結のためにTyr残基をCys残基によって置換することによって調製し、このようにして本発明の化合物M7(付録II)及びM7A(付録I)を得た(以下の実施例16を参照のこと)。両方の化合物M7及びM7Aにはそれぞれ、付録II及びI中の同じ意味Fmoc−KKC(HQ)L−NHが与えられているが、M7Aの構造式から、これが8−ヒドロキシキノリニル(HQ)基の位置5においてメチレン基に連結されたプロパルギルアミノ基を有することが明らかである。
【0251】
Rinkアミド樹脂(71mg、33μmole)に、NMP中20%のピペリジン2mlを添加した。5分間の攪拌後、この溶液を排水し、この樹脂をDMFで3回洗浄した。この樹脂に、1mlのDMF中のFmoc−Leu−OH(47mg、132μmole、4当量)及びPyBOP(69mg、132μmole、4当量)、並びにNMM(29μl、264μmol、8当量)を添加した。次いで得られた混合物を1時間攪拌した。その液体を排出し、第二のカップリングを同量のFmoc−Leu−OH、PyBOP及びNMMを用いて実施した。第三のカップリングを、DCC/HOBt活性化を介して実施した。Fmoc−Leu−OH(47mg、132μmole、4当量)、HOBt(18mg、132μmol、4当量)及びDCC(132μmlの1N DMF、132μmol、4当量)を、1mlのDMF中に溶解した。1時間の冷却後、沈殿したジシクロヘキシルウレア(DCU)を除去し、この溶液を樹脂に添加した。一晩攪拌して溶液を排水した後、この樹脂を洗浄した(DMF×3、DCM×3)。ネガティブニンヒドリン試験が、カップリング反応の完了を示した。それぞれFmoc−Cys(Mmt)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OHを用いた次の3回のカップリングサイクルを、上記の手順(PyBOP及びDCCの両方)に従って実施した。全4回のカップリングサイクルの完了時に、得られた樹脂をTFA:TES:DCM(ジクロロメタン)(1:5:94 v/v)の溶液で処理して、Mmt(4−メトキシトリチル)保護基を除去した。
【0252】
DMF/DCM(1ml)中の5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリン(32mg、165μmol、5当量)及びNMP(17mg、20μl、5当量)の溶液をこの樹脂に添加し、この混合物を一晩攪拌した。ネガティブDTNB(5,5’−ジチオ−ビス−(2−ニトロベンゾエート))試験が、反応の完了を示した。得られたHQ改変ペプチドを、TFA:HO:TES:チオアニソール(85:5:5:5)の溶液を使用して樹脂から切断し、エーテルで沈殿させた。粗製HQ改変表題ペプチドM7を、上記のように半調製的HPLCによってさらに精製した。収率:4.8mg(5.5μmol;開始アミノ酸樹脂充填に基づいて16.7%)。質量分析:m/z 870.6(MH+)計算値870.1。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Leu 1.00、Lys 2.16。Cysは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。
【実施例16】
【0253】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基及びプロパルギルアミノ基を含むVIP類似体誘導体−Fmoc−KKC(HQ)L−NH(M7A、付録I)の合成。
【0254】
(i)5−(N−tert−ブトキシカルボニル,N−プロパルギル)アミノメチル−8−t−ブトキシ−キノリン(H5、付録VII)の合成。
【化40】

【0255】
5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンを5−クロロメチル−8−t−ブトキシ−キノリンとして保護し、プロパルギルアミンを公知の手順に従ってN−(tert−ブトキシカルボニル)−プロパルギルアミンへと転換した。
【0256】
N−(tert−ブトキシカルボニル)プロパルギルアミン(310mg、2mmol)を、窒素下で、DMF(5ml)中のNaH(88mgの油中60%分散物、2.2mmol)の攪拌溶液に30分間かけて一部ずつ添加した。Hガスエボリューションを停止させた後、DMF(2ml)中の5−クロロメチル−8−O−t−ブチル−キノリン(600mg、2.4mmol)を、30℃を下回る温度(冷水浴)で滴下した。攪拌を3時間続け、反応混合物をEtOAc(3×30ml)とHO(50ml)との間で分配した。合せたEtOAc溶液を水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、淡黄色の固体になるまでエバポレートし、これをヘキサンで洗浄して減圧乾燥させ、表題化合物を得た:443mg(60%)、

【0257】
(ii)5−(プロパルギルアミノブロモメチル)−8−ヒドロキシキノリン(H6、付録VII)の合成。
【化41】

【0258】
上記ステップ(i)からの化合物H5(368mg、1mmol)及びN−ブロモスクシンイミド(231mg、1.3mmol)を、5mlのCCl中に溶解した。この溶液に過酸化ベンゾイル(2.5mg、0.01mmol)を添加し、この反応混合物を12時間還流で加熱した。還流後、この溶液を0℃まで冷却し、固体沈殿物を濾過した。濾液を1M NaCO水溶液、飽和NaS水溶液及びブラインで洗浄した。有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、減圧下で乾燥するまでエバポレートした。残渣をTFA:HO:TES:チオアニソール(85:5:5:5)の溶液(5ml)中に溶解した。1時間後、HPLCは、保護基の完全な除去を示した。この溶液を乾燥するまでエバポレートし、その残渣を水(10ml)中に溶解し、次いでNaCO(pH11)で塩基性化し、EtOAc(3×50ml)で抽出した。その有機層をブライン(2×50ml)で洗浄し、NaSOで一晩乾燥させた。減圧下でのエバポレーションにより、表題化合物H6を得た:218mg、収率75%。

【0259】
(iii)8−ヒドロキシキノリン(HQ)基及びプロパルギルアミノ基を含むVIP類似体誘導体−M7A(付録I、スキームA)の合成。
【0260】
DMF/CHCl(1ml)中の上記ステップ(ii)のH6(48mg、0.165mmol、5当量)及びNMP(17mg、0.020ml、5当量)の溶液を、上記実施例15で得た樹脂(0.033mmol、1当量)に添加し、この混合物を一晩攪拌した。ネガティブDTNB試験が、反応の完了を示した。得られたHQ改変ペプチドを、TFA:HO:TES:チオアニソール(85:5:5:5)の溶液を使用して樹脂から切断し、エーテルで沈殿させた。粗製HQ改変表題ペプチドM7Aを、半調製的HPLC(t):35.1分(直線勾配:最初の4分間にわたり50%のB、60分間で100%のBまで直線的に増大)によってさらに精製した。収率:6mg(5.5μmol;開始アミノ酸樹脂充填に基づいて16.7%)。質量分析:C4963Sについて計算値m/z[M+H]=923.68、実測値m/z[M+H]=923.91。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Leu 1.00、Lys 2.10。Cysは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。
【実施例17】
【0261】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基を含むVIP類似体誘導体−ステアリル−KKC(HQ)L−NH(M6、付録II)の合成。
【0262】
Fmoc−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Cys(Mmt)−Leu−[Rinkアミド樹脂]33molを、実施例15で上記されるように合成した。Fmoc基の除去後、上記の手順に従って遊離N末端官能基をステアリン酸(38mg、132μmol、4当量)とカップリングした。ネガティブニンヒドリン試験が、カップリング反応の完了を示した。このペプチドを、TFA:HO:TES:チオアニソール(85:5:5:5)の溶液を使用して樹脂から切断し、エーテルで沈殿させた。DMF/CHCl(1ml)中の5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリン(32mg、165μmol、5当量)及びNMP(17mg、20μl、5当量)の溶液をこの粗製ペプチドに添加した。この混合物を室温で一晩攪拌した。ネガティブDTNB試験が、反応の完了を示した。反応完了時にこの溶液を排水し、粗製ペプチドを半調製的HPLCによってさらに精製して4.6mg(5.0μmol;開始アミノ酸樹脂充填に基づいて15.3%)を得た。HPLC(t):38.1分(直線勾配:最初の4分間にわたり50%のB、60分間で100%のBまで直線的に増大)、同じ条件でSt−KKCLNHについてt=47.5分。質量分析:m/z 914.9(MH+)、(計算値914.3)。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Leu 1.00、Lys 2.21。Cysは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。
【実施例18】
【0263】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基及びプロパルギルアミノ基を含むVIP類似体誘導体−ステアリル−KKC(HQ)L−NH(M6A、付録I)の合成。
【0264】
上記の実施例17で得た樹脂(33μmol、1当量)に、DMF/CHCl(1ml)中の5−(プロパルギルアミノブロモメチル)−8−ヒドロキシキノリンH6(48mg、0.165mmol、5当量)及びNMP(17mg、0.020ml、5当量)の溶液を添加した。次いでこの混合物を一晩攪拌した。ネガティブDTNB試験が、この反応の完了を示した。得られたHQ改変ペプチドを、TFA:HO:TES:チオアニソール(85:5:5:5)の溶液を使用して樹脂から切断し、エーテルで沈殿させた。粗製HQ改変ペプチドM6Aを、半調製的HPLC(t):40.1分(直線勾配:最初の4分間にわたり50%のB、60分間で100%のBまで直線的に増大)によってさらに精製した。収率:5.8mg(6μmol;開始アミノ酸樹脂充填に基づいて18%)。質量分析:C5287Sについて計算値m/z[M+H]=967.37、実測値m/z[M+H]=967.21。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Leu 1.00、Lys 2.20。Cysは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。
【実施例19】
【0265】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基を含むサブスタンスP類似体誘導体−[Cys(HQ)]−サブスタンスP(M27、付録II)の合成。
【0266】
[Cys]−サブスタンスP(9.0mg、6.9μmol)を、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)(350μl)中に溶解し、NMM(7.6μl、69μmol、10当量)を添加した。室温で1時間攪拌した後、150μlの混合溶媒(DMF:DMSO:CHCN 3:3:1)中の5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンヒドロクロリド(1.5mg、7.6μmol、1.1当量)を滴下した。この反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応の進行を、分析的HPLCによってモニタリングした。必要に応じて、さらなる5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンヒドロクロリドを反応の完了のために添加した。反応の完了時に、この粗製ペプチドを氷冷tert−ブチルメチルエーテル/石油エーテルで沈殿させ、遠心分離によって収集し、次いで半調製的HPLCによって精製した。t=32.27分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;45分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)、(同じ条件で[Cys]−サブスタンスPについてt=32.28分)。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Lys 1.00、Arg 1.09、Glu 2.03、Gly 1.32、Pro 1.93、Leu 1.01、Phe 0.96、Cys 0.92。Cysを、標準参照としてS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−L−システインを使用して検出した。Metは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。質量分析:C671011914について計算値m/z[M+H]=1461.77、実測値[M+H]=1461.15。
【実施例20】
【0267】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基を含むサブスタンスP類似体誘導体−[Cys(HQ)]−サブスタンスP(M28、付録II)の合成。
【0268】
化合物M28を、標準的な出発物質を使用して、化合物M27について上記実施例19に記載された方法によって合成した。粗製ペプチドM28を、半調製的HPLCによってさらに精製した。t=32.10分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;45分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)、(同じ条件で[Cys]−サブスタンスPについてt=32.89分)。質量分析:C671011914について計算値m/z[M+H]=1461.77、実測値[M+H]=1461.17。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Lys 1.00、Arg 1.18、Glu 1.96、Gly 1.22、Pro 1.77、Leu 0.92、Phe 0.91、Cys 0.96。Cysを、標準参照としてS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−L−システインを使用して検出した。Metは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。
【実施例21】
【0269】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基及びプロパルギルアミノ基を含むサブスタンスP類似体誘導体−[Cys(HQ)]−サブスタンスP(M27A、付録I)の合成。
【0270】
DMF(350μl)中の[Cys]−サブスタンスP(9.0mg、6.9μmol、1当量)に、NMM(7.6μl、69μmol、10当量)を添加した。室温で1時間攪拌した後、150μlの混合溶媒(DMF:DMSO:CHCN 3:3:1)中の5−(プロパルギルアミノ−ブロモメチル)−8−ヒドロキシキノリンH6(2.2mg、76μmol、1.1当量)の溶液を滴下した。この反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応の進行を、分析的HPLCによってモニタリングした。必要に応じて、さらなる5−(プロパルギルアミノ−ブロモメチル)−8−ヒドロキシキノリンを反応の完了のために添加した。反応の完了時に、この粗製ペプチドを氷冷tert−ブチルメチルエーテル/石油エーテルで沈殿させ、遠心分離によって収集し、次いで半調製的HPLCによって精製した。t=35.27分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;45分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)、(同じ条件で[Cys]−サブスタンスPについてt=32.28分)。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Lys 1.00、Arg 1.10、Glu 2.01、Gly 1.32、Pro 1.93、Leu 1.03、Phe 0.96、Cys 0.99。Cysを、標準参照としてS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル−(プロパルギルアミノ−メチル)−L−システインを使用して検出した。Metは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。質量分析:C701042014について計算値m/z[M+H]=1514.78、実測値[M+H]=1514.25。
【実施例22】
【0271】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基及びプロパルギルアミノ基を含むサブスタンスP類似体誘導体−[Cys(HQ)]−サブスタンスP(M28A、付録I)の合成。
【0272】
表題化合物M28Aを、上記実施例21中のM27Aについての手順に従って合成したが、出発物質として[Cys]−サブスタンスPの代わりに[Cys]−サブスタンスPを使用した。収率75%。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Lys 1.00、Arg 1.08、Glu 2.11、Gly 1.22、Pro 1.93、Leu 1.01、Phe 1.04、Cys 0.99。Cysを、標準参照としてS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル−(プロパルギルアミノメチル)−L−システインを使用して検出した。Metは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。質量分析:C701042014について計算値m/z[M+H]=1514.78、実測値[M+H]=1514.88。
【実施例23】
【0273】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基を含むGnRH類似体誘導体−[L−Cys(HQ)]GnRH(M8、付録II)の合成。
【0274】
化合物M8を、適切な出発物質を使用して、上記実施例19に記載される化合物M27を合成するための方法に従って合成した。粗製ペプチドM8を、半調製的HPLCによってさらに精製した。t=26.02分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;45分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜75%)(同じ条件下で[Cys]GnRHについてt=27.54分)。質量分析:C59781813Sについて計算値m/z[M+H]=1279.43、実測値[M+H]=1279.86。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Arg 1.00、Ser 1.09、Glu 0.92、Gly 2.21、His 0.88、Pro 0.89、Leu 0.89、Cys 0.85。Cysを、標準参照としてS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イルメチル)−L−システインを使用して検出した。
【実施例24】
【0275】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基を含むGnRH類似体誘導体−[D−Cys(HQ)]GnRH(M22、付録II)の合成。
【0276】
化合物M22を、適切な出発物質を使用して、上記実施例19に記載される化合物M27を合成するための方法に従って合成した。反応の完了時に、粗製ペプチドM22を、氷冷tert−ブチルメチルエーテル(3ml)を用いて沈殿させた。遠心分離後、固体をDDW中に溶解し、調製的HPLCによって精製してmg(mmol;%)を得た。t=30.82分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;45分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)、(同じ条件下で[D−Cys]GnRHについてt=32.57分)。質量分析:C66841814Sについて計算値m/z[M+H]=1386.55、実測値[M+H]=1386.71。
【実施例25】
【0277】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基及びプロパルギルアミノ基を含むGnRH類似体誘導体−[L−Cys(HQ−Pr)]GnRH(M8A、付録I)の合成。
【0278】
[Cys]GnRH(7.7mg、6.9μmol)をDMF(350μl)中に溶解し、NMM(7.6μl、69μmol、10当量)を添加した。室温で1時間攪拌した後、150μlの混合溶媒(DMF:DMSO:CHCN 3:3:1)中の5−(プロパルギル−アミノブロモメチル)−8−ヒドロキシキノリンH6(2.2mg、76μmol、1.1当量)を滴下した。この反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応の進行を、分析的HPLCによってモニタリングした。必要に応じて、さらなるH6を反応の完了のために添加した。反応の完了時に、この粗製ペプチドを氷冷tert−ブチルメチルエーテル/石油エーテルで沈殿させ、遠心分離によって収集した。この粗製ペプチドM8Aを半調製的HPLCによってさらに精製した。t=30.12分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;B=45分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜75%)、(同じ条件下で[Cys]GnRHについてt=27.54分)。収率:7.2mg(5.4μmol;78%)。質量分析:C62811913Sについて計算値m/z[M+H]=1332.46、実測値[M+H]=1332.66。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Arg 1.00、Ser 1.09、Glu 0.99、Gly 2.21、His 0.98、Pro 0.89、Leu 0.89、Cys 0.85。Cysを、標準参照としてS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル−(プロパルギルアミノメチル)−L−システインを使用して検出した。
【実施例26】
【0279】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基及びプロパルギルアミノ基を含むGnRH類似体誘導体−[D−Cys(HQ−Pr)]GnRH(M22A、付録I)の合成。
【0280】
表題化合物M22Aを、上記実施例23中のM27Aについての手順に従って合成したが、出発物質として[Cys]GnRHの代わりに[D−Cys]GnRHを使用した。収率70%。質量分析:C69872013Sについて計算値m/z[M+H]=1439.56、実測値[M+H]=1439.66。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Arg 1.00、Ser 1.09、Glu 0.99、Tyr 1.03、Gly 1.11、His 0.98、Pro 0.99、Leu 0.89、Cys 0.85。Cysを、標準参照としてS−(8−ヒドロキシキノリン−5−イル−(プロパルギルアミノメチル)−L−システインを使用して検出した。
【実施例27】
【0281】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基を含むエンケファリン類似体誘導体−YGGC(HQ)L(M18)、YGGC(HQ)M(M19)、C(HQ)GGFL(M20)、C(HQ)GGFM(M21)(付録II)の合成。
【0282】
(i)化合物M18、M19、M20、M21の合成のための一般手順
DMF(150μl)中のCysMet−エンケファリン又はCysLeu−エンケファリン(25μmol)の溶液に、NMM(26μl、250μmol)を添加した。室温で1時間攪拌した後、250μlの混合溶媒(DMF:DMSO:CHCN 3:3:1)中の5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンヒドロクロリド(61mg、25μmol)を滴下した。この反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応の進行を、分析的HPLCによってモニタリングした。必要に応じて、さらなる5−クロロメチル−8−ヒドロキシキノリンヒドロクロリドを反応の完了のために添加した。反応の完了時に、この粗製ペプチドを氷冷tert−ブチルメチルエーテル/石油エーテルで沈殿させ、遠心分離によって収集し、次いで半調製的HPLC(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;55分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)によって精製した。
【0283】
(ii)[Cys(HQ)]−Leu−エンケファリン(M18、付録II)質量分析:C3240Sについて計算値m/z[M+H]=669.76、実測値[M+H]=669.62。
【0284】
(iii)[Cys(HQ)]−Met−エンケファリン(M19、付録II)HPLC。t=26.43分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;55分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)(同じ条件で[Cys]−Leu−エンケファリンについてt=23.87分)。質量分析:C3240Sについて計算値m/z[M+H]=687.80、実測値[M+H]=687.79。
【0285】
(iv)[Cys(HQ)]−Leu−エンケファリン(M20、付録II)HPLC。t=29.56分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;55分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)(同じ条件下で[Cys]−Leu−エンケファリンについてt=27.92分)。質量分析:C3240Sについて計算値m/Z[M+H]=653.76、実測値[M+H]=653.48。
【0286】
(v)[Cys(HQ)]−Met−エンケファリン(M21、付録II)質量分析:C3138について計算値m/z[M+H]=671.80、実測値[M+H]=671.43。
【実施例28】
【0287】
8−ヒドロキシキノリン(HQ)基及びプロパルギルアミノ基を含むエンケファリン類似体誘導体−YGGC(HQ)L(M18A)、YGGC(HQ)M(M19A)、C(HQ)GGFL(M20A)、C(HQ)GGFM(M21A)(付録I)の合成。
【0288】
(i)化合物M18A、M19A、M20A、M21A(付録I、スキームC)の合成のための一般手順
改変エンケファリンペプチド([Cys]−Leu−エンケファリン、[Cys]−Met−エンケファリン、[Cys]−Leu−エンケファリン又は[Cys]−Met−エンケファリン)(25μmol)を、DMF(150μl)中に溶解し、NMM(26μl、250μmol)を添加した。室温で1時間攪拌した後、250μlの混合溶媒(DMF:DMSO:CHCN 3:3:1)中の5−(プロパルギルアミノブロモメチル)−8−ヒドロキシ−キノリンH6(25μmol)を滴下した。この反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応の進行を、分析的HPLCによってモニタリングした。必要に応じて、さらなるH6を反応の完了のために添加した。反応の完了時に、この粗製ペプチドを氷冷tert−ブチルメチルエーテル/石油エーテルで沈殿させ、遠心分離によって収集し、次いで半調製的HPLC(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;55分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)によって精製した。
【0289】
(ii)[Cys(プロパルギル−HQ)]−Leu−エンケファリン(M18A、付録I)収率70%、HPLC。t=28.43分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;55分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)(同じ条件で[Cys]−Leu−エンケファリンについてt=25.87分)質量分析:C3543Sについて計算値m/z[M+H]=722.80、実測値[M+H]=722.62。
【0290】
(iii)[Cys(プロパルギル−HQ)]−Met−エンケファリン(M19A、付録I)収率60%、HPLC。t=27.83分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;55分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)(同じ条件で[Cys]−Met−エンケファリンについてt=23.87分)。質量分析:C3543Sについて計算値m/z[M+H]=740.84、実測値[M+H]=740.70。
【0291】
(iv)[Cys(プロパルギル−HQ)]−Leu−エンケファリン(M20A、付録I)収率72%、HPLC。t=30.16分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;55分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)(同じ条件下で[Cys]−Leu−エンケファリンについてt=27.92分)。質量分析:C3543Sについて計算値m/z[M+H]=706.80、実測値[M+H]=706.88。
【0292】
(v)[Cys(プロパルギル−HQ)]−Met−エンケファリン(M21A、付録I)収率78%、HPLC。t=27.26分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;55分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)(同じ条件下で[Cys]−Leu−エンケファリンについてt=25.90分)。質量分析:C3441について計算値m/z[M+H]=724.84、実測値[M+H]=724.94。
【実施例29】
【0293】
プロパルギルアミノ基及びヒドロキサメート基を含むVIP類似体誘導体、GnRH類似体誘導体及びサブスタンスP類似体誘導体−化合物M6B、M7B、M8B、M22B、M27B及びM28B(n=1)(付録V、スキームC)の合成。
【0294】
(i)ヒドロキサメート化合物M6B、M7B、M8B、M22B、M27B及びM28B(n=1)(付録V)の合成のための一般手順
改変ペプチド(7μmol、1当量)(上記のように合成したSt−KKCL−NH、Fmoc−KKCL−NH、[Cys]GnRH、[D−Cys]GnRH、[Cys]−サブスタンスP又は[Cys]−サブスタンスP)を、DMF(350μl)中に溶解し、NMM(7.6μl、70μmol、10当量)を添加した。室温で1時間攪拌した後、150μlのDMF中のN−t−ブトキシ2−(N−クロロアセチル−N−プロパルギル)−アミノ−アセトアミド(H4)(2mg、7.7μmol、1.1当量)を滴下した。この反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応の進行を、分析的HPLCによってモニタリングした。必要に応じて、さらなるH4を反応の完了のために添加した。反応の完了時に、溶媒を減圧下で除去した。その残渣にTFA:HO:TES:チオアニソール(85:5:5:5)の溶液(2mL)を添加した。この混合物を1時間攪拌し、次いで氷冷tert−ブチルメチルエーテル/石油エーテルで沈殿させ、遠心分離によって収集した。この粗製改変ペプチドを、半調製的HPLCによってさらに精製した。
【0295】
(ii)化合物M6B(n=1)(付録V)の合成
収率71%、HPLC(t):25.1分(直線勾配:最初の4分間にわたり50%のB、40分間で100%のBまで直線的に増大)。質量分析:C4685Sについて計算値m/z[M+H]=925.29、実測値m/z[M+H]=925.21。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Leu 1.00、Lys 2.20。Cysは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。
【0296】
(iii)化合物M7B(n=1)(付録V)の合成
収率:68%。HPLC(t):25.1分(直線勾配:最初の4分間にわたり50%のB、50分間で100%のBまで直線的に増大)。質量分析:C4361Sについて計算値m/z[M+H]=881.07、実測値m/z[M+H]=881.15。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Leu 1.00、Lys 2.15。Cysは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。
【0297】
(iv)化合物M8B(n=1)(付録V)の合成
収率:70%。HPLC t=29.1分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;45分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜75%)、(同じ条件下で[Cys]GnRHについてt=27.54分)。質量分析:C56791915Sについて計算値m/z[M+H]=1291.57、実測値[M+H]=1291.66。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Arg 1.00、Ser 1.12、Glu 0.95、Gly 2.16、His 0.98、Pro 0.89、Leu 0.99。Cysは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。
【0298】
(v)化合物M22B(n=1)(付録V)の合成
収率75%。HPLC t=25.1分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;45分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜100%)、(同じ条件下で[D−Cys]−GnRHについてt=23.54分)。質量分析:C63851916Sについて計算値m/z[M+H]=1397.53、実測値[M+H]=1397.61。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Arg 1.00、Ser 1.09、Glu 0.99、Tyr 1.03、Gly 1.11、His 0.98、Pro 0.99、Leu 0.89。Cysは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。
【0299】
(vi)化合物M27B(n=1)(付録V)の合成
収率60%。HPLC。t=33.27分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;45分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)、(同じ条件で[Cys]−サブスタンスPについてt=32.28分)。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Lys 1.00、Arg 1.10、Glu 2.01、Gly 1.32、Pro 1.93、Leu 1.03、Phe 0.96。Cys及びMetは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。質量分析:C641022016について計算値m/z[M+H]=1472.75、実測値[M+H]=1472.55。
【0300】
(vii)化合物M28B(n=1)(付録V)の合成
収率65%。HPLC。t=32.91分(直線勾配:t 5分間にわたり1.0ml/分でB=0%;45分間にわたり1.0ml/分でB=0%〜58%)、(同じ条件で[Cys]−サブスタンスPについてt=31.28分)。6M HClで110℃で22時間にわたる加水分解後のアミノ酸分析:Lys 1.00、Arg 1.08、Glu 2.11、Gly 1.22、Pro 1.93、Leu 1.01、Phe 1.04、Cys 0.99。Cys及びMetは、加水分解の酸性条件下でのその破壊に起因して、検出できなかった。質量分析:C631002016について計算値m/z[M+H]=1458.73、実測値[M+H]=1458.84。
【0301】
II 生物学の項
方法
(a)金属結合特性
8−ヒドロキシキノリンは、鉄に対する強力なキレート剤であり、銅よりも鉄に対して高い特異性を有することが知られている。神経変性疾患と関連すると考えられているのは、脳における過剰な鉄イオンの貯蔵及び鉄により媒介されるフリーラジカルの発生であるので、これは、抗酸化型薬物のための重要な前提条件である。従って、銅よりも鉄に対して高い特異性を有するキレート剤のみが銅の代わりに鉄をキレート化し、潜在的な神経保護効果を有することが予測される。8−ヒドロキシキノリンと抗酸化能力を有するその誘導体のキレート化特性との間の可能な相関、及びその誘導体と抗酸化特性を有する最もよく確立された鉄キレート化薬物であるデスフェラールとの間の相関を議論するために、新たに合成した化合物の安定定数の信頼性のある測定値が必要である。分光光度法を、これらの化合物の鉄錯体安定定数の測定のために使用した。
【0302】
(b)分配係数
オクタノールと水との間の分配係数(Pow)又は分布比(Dow)は、化合物の疎水性の最も一般的に使用される尺度である。Dowは、合理的に低い濃度でではあるが、溶質の濃度に依存し得る。この溶質が両方の相において同じ形態である場合、Dowは一定になり、分配係数Powと称される。Powは、物理−化学的特性及び生物学的系における多数の有機化合物の挙動を決定する際に重要な役割を果たす。Powは、疎水性の尺度として、定量的な構造−活性関係の研究に適用される。全ての分配測定を、1−オクタノール/水フラスコ攪拌手順を使用して(Leo,AJ.1991、「疎水性パラメータ:測定及び計算(Hydrophobic parameter:measurement and calculation)」、Methods Enzymol.202:544−91)、又は単にHPLCカラムからの溶質の溶出時間によって実施する。その後、鉄錯体の輸送特性を、オクタノール/水系よりもかなり良好に生体膜を模倣する水/脂質膜系(リポソーム)において試験する(非特許文献4)。
【0303】
1−オクタノール(Riedel−deHaen、合成等級(250〜270nm abs.<0.06)及びガラス蒸留脱イオン水を、分配溶液として使用した。Hewlett−Packard 8450Aダイオードアレイ分光光度計を、標準溶液及び分配した溶液中で、試験した化合物の定量的決定のために使用した。水相ストック溶液を、過剰の1−オクタノールと共に攪拌して予め飽和させ、次いで使用前に一晩静置させた。1−オクタノールストック溶液もまた、10mM NaOHで予め飽和させ、一晩静置した。10mlのストッパー付遠心管中で実験を実施した。これらの管を5分間穏やかに反転し、次いで完全な相分離を確実にするために、これらを1,000〜2,000gで20分間遠心分離した。水相及び有機相を別々に取り出し、UV分光光度法によって分析した。
【0304】
(c)抗酸化特性
生物学的系において発生したフリーラジカル及び反応性酸素種は、他の因子のなかでもとりわけ、神経変性疾患の原因であると考えられている。これらの化合物がFenton反応及びFenton型反応においてフリーラジカル及び反応性酸素種の形成速度を低下させる能力又はそれらの全体的な収率を低下させる能力は、抗酸化型薬物のための重要な前提条件である。従って、これらの化合物の抗酸化特性の信頼性のある測定値が必要である。フリーラジカルが長い寿命を有する場合、直接電子スピン共鳴(ESR)分光学が、この種を同定するための簡便な方法であり得る。しかし、不安定なフリーラジカルについて、スーパーオキシド(O)又はヒドロキシル基(OH)と同様、他の方法が使用されるべきである。Fenton反応及びFenton型反応に対するこれらの化合物の影響を、デオキシリボースアッセイ及びスピントラッピング法によって測定する。
【0305】
デオキシリボースアッセイ(非特許文献24)は、マロンジアルデヒド(MDA)(これは、加熱下で低いpHでチオバルビツール酸(TBA)と反応してピンク色の色素を生じる)の形成を引き起こす、ヒドロキシル基によるデオキシリボースの破壊に基づく。この色素の可視光吸収スペクトルは、532nmで最大の、非常に強く鋭い吸光度を示す。
【0306】
「スピントラッピング」法は、反応系中の低濃度のフリーラジカルを検出及び同定するために開発された。これは、EPR(電子常磁性共鳴)技術によって容易に観察可能であるより安定なラジカル生成物を形成するための、反磁性化合物とのフリーラジカルXの反応を含む。この方法は、開始フリーラジカルを「トラップ(捕捉)」するために、長寿命ニトロキシドとしてニトロン化合物又はニトロソ化合物を使用するステップからなる。
【0307】
(d)ミトコンドリア単離:
オスSprague−Dawleyラット(300〜350g)を断頭し、脳を直ぐに単離して氷冷等張10mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)(0.25Mのスクロース、2mM EDTA及び脂肪酸を含まない2%ウシ血清アルブミンを含む)(単離緩衝液)中で冷却し、モーター付の50mlのガラス−テフロン(登録商標)ホモジナイザー(Heidolf、Germany)で、1:10(w/v)の比の単離緩衝液中で200rpmでホモジナイズする。このホモジネートを1000gで10分間遠心分離し、次いで得られた上清を10,000gで10分間遠心分離する。そのペレットを10mM Tris−HCl(pH7.5)、0.25Mスクロースで洗浄し、再度10,000gで10分間遠心分離する。次いでこのステップをもう3回反復する。そのペレットを、1ml当たり50mg〜60mgのタンパク質の最終濃度で、10mM Tris−HCl(pH7.5)、0.25Mスクロース中に再懸濁する。これらのサンプルを使用するまで−18℃で保存する。
【0308】
(e)脂質過酸化の阻害
これらの化合物が鉄及びアスコルベートによって開始されるような脂質過酸化を阻害する能力を、マロンジアルデヒド手順を使用して脳ミトコンドリア調製物において試験する(非特許文献13;非特許文献2)。
【0309】
これらの実験を三連で実施する。7.5μMのミトコンドリア調製物(0.25mgのタンパク質)を、750μlの25mM Tris−HCl(pH7.4)(25pMアスコルビン酸を含む)中に懸濁する。試験すべき薬物サンプルを、水又はエタノール中に溶解し、この懸濁物に添加する。反応を2.5μM又は5μMのFeSO(1mMのストック溶液由来)の添加及び室温で2時間のインキュベーションによって開始する。この反応を、750μlの20%(w/v)トリクロロ酢酸の添加によって停止させる。これらのサンプルを12,000gで10分間遠心分離する。500μlの上清を、500μlの0.5%(w/v)チオバルビツール酸と混合し、30分間95℃に加熱する。チオバルビツール酸誘導体の吸収を、X=532nmで光度測定により測定する。ブランク分析は、ミトコンドリアの発光又はFeSOの発光、或いはインキュベーション後の薬物の添加に基づく。
【0310】
(f)神経保護効果
鉄キレート剤の神経保護効果を、in vivo及びin vitroの両方の系において決定する。
【0311】
in vitro実験について、ラット褐色細胞腫タイプ12(PC12)細胞及びヒト神経芽細胞腫SH−SY5Y細胞を使用して、鉄及びβアミロイドの毒性に応じたキレート剤の神経保護作用を試験する。これらの細胞はドパミンニューロン及びコリン作用性ニューロンのモデルとして使用されるので、細胞生存率を、MTT(臭化2,5−ジフェニルテトラゾリウム)試験及びLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)試験、並びにHPLCによるドパミン及びチロシンヒドロキシラーゼの測定及びウェスタンによるαアミロイド(可溶性)の放出の測定において試験する。
【0312】
in vivoの保護を、ドパミンニューロンのマーカーである線条体のドパミン及びチロシンヒドロキシラーゼを測定することによって、PD(パーキンソン病)のMPTP(1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン)動物モデル(神経変性の非常に生存力のある充分確立されたモデル)において試験する。
【0313】
(g)PC12細胞培養
ラット褐色細胞腫起源のラットPC12細胞を、5%CO、95%空気の加湿環境において、グルコース(1mg/1ml)、5%ウシ胎仔血清、10%ウマ血清及び1%のストレプトマイシン/ペニシリンの混合物を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、GIBCO、BRL)を含む増殖培地中で37℃で増殖させた。コンフルエントに達したところで培養液を除去し、細胞を激しい洗浄によって剥離させ、200gで5分間遠心分離し、完全血清内容物を含むDMEM中に再懸濁した。0.5×10細胞/ウェルを、コラーゲン(10μg/cmを、処置の前に24時間付着させた)で予め被覆したマイクロタイタープレート(96ウェル)中に配置した。
【0314】
(h)細胞生存率についてのMTT試験
(g)に記載されるようなPC12細胞の付着の24時間後、この培地を、0.1% BSAを含むDMEMで置換した。1時間のインキュベーション後に試験化合物を細胞に添加した。24時間のインキュベーション後、細胞を、以前に記載されたようなMTT試験に供した(非特許文献11)。吸収を、バックグラウンド読み取りの自動差し引き後に、λ=570/650nmでPerkin−Elmer Dual Wavelength Eliza−Readerにおいて決定した。結果を未処理の混合物の百分率として表す。
【実施例30】
【0315】
溶液中の鉄キレート化
鉄結合を、鉄によりクエンチされたカルセイン(CAL)(動的蛍光金属センサー(metallosensor)である)の蛍光を回復するキレート剤の能力によって決定した。これらのキレート剤の鉄除去特性を、鉄塩を遊離CALと混合することによって溶液中で評価した。
【0316】
鉄と予め錯体化したカルセイン(Fe−CAL)溶液(Hepes 20mM緩衝化生理食塩水(pH7.4)=HBS中)1μMを、室温で示された濃度の異なるキレート剤の存在下でインキュベートし、蛍光強度(475nm−>520nm)を、100μlの最終容量で96ウェルの培養プレート(Nunc)を使用して、Tecan蛍光プレートリーダーにおいて経時的に追跡した。キレート剤によるFe−CAL由来の鉄の時間依存的な錯体化を、蛍光デクエンチング(dequenching)によって追跡した。結果を図1A〜1Cに示す。1時間のインキュベーション後に得られた蛍光強度を、キレート剤濃度の関数として示す。
【0317】
対応するキレート剤についての、対応する最大半減のデクエンチングレベル(μM)は以下の通りであった(序列は、最も速い作用から最も遅い作用の順である):
図1A:DFO(0.5)(示さず)>>HLA16(3.5)=HLA20(3.5)>HLM7(5.0)>HLM8(6.0)>HLM9(7.2)>L1(8.3)。
図1B:DFO(0.5)(示さず)>>HLA16(4.4)>VK−28(5.2)>HLA20(5.4)>L1(8.4)>M9(9.7)>M10(9.85)
図1C:DFO(0.5)(示さず)>>VK−28(3.2)>M7(3.4)>M11(5.4)>M12(6)>L1(6.6)。
DFO=デスフェリオキサミンB
L1=1,2−ジメチル−3−ヒドロキシ−ピリジン−4−オン(デフェリプロン)
【実施例31】
【0318】
K562細胞へのキレート剤の鉄透過
キレート剤の鉄除去特性を、透過性CAL−AMプローブでの充填、遊離CALのインサイチュ形成及び細胞質ゾルの不安定な鉄の結合によって、ヒト赤白血病K562細胞において評価した。カルセイン−AMは、カルセインと比較して増強された疎水性に起因して、生存細胞の細胞膜を容易に通過する。カルセイン−AMが細胞質へと透過すると、細胞中のエステラーゼによって、細胞の内側に留まるpH非依存的な細胞質ゾル蛍光マーカーである親カルセインへと加水分解される。所定のキレート剤の存在下での蛍光の時間依存的な回復は、鉄/CAL含有区画を横切るキレート剤の能力についての連続的な測定を提供した。
【0319】
カルセイン取り込み及び細胞内蛍光を、以下のように決定した:K562赤白血病細胞に、37℃で5分間の0.25mMの蛍光プローブCAL−AMとのインキュベーションによってカルセイン(CAL)を予め充填し、微量の細胞外関連の蛍光をクエンチするために、抗CAL抗体を含むHBS培地で洗浄及びインキュベートした。これらの懸濁物を96ウェルプレート中に配置し(100μlの最終容量)、この系を37℃に維持しながら上記のように分析した。示された時間で、示されたキレート剤を、5μMの最終濃度に達するように添加した。
【0320】
結果を2A〜2Dに示す。最大半減時間の値(秒)及び蛍光回復の率は以下の通りであった:
図2A:SIH:(125、1)>HLA20(175、1)>HLA16(225、0.95)>HLM9(200、0.50)、HLM8(600、0.4)、L1(ND)DFO>>(示さず)
図2B:HLA16(220、1)>HLA20(390、1)>M10(1050)>VK−28(1250、)>>、L1及びM9(ND)>>>)>>DFO(示さず)
図2C:SIH:(100、1)>VK−28(1500、?)>>M11、M12、M7(ND)>>)>>DFO(示さず)
図2Dは、K562細胞における鉄キレート剤HLA20、HLA16、HLM9、VK−28の相対的な透過性を示す(値は、SIHで得られた値と比較して与えられる。1.0は0.005秒−1の見かけの速度定数を示す(5μMのキレート剤溶液について125秒の入来のt1/2と等しい))。
SIH=サリチルアルデヒドイソニコチノイルヒドラゾン。
【実施例32】
【0321】
分化したP19細胞の神経保護
この実験を、ニューロン細胞に分化したP19マウス胚性癌腫細胞で実施した。
【0322】
96ウェルの培養プレート中で増殖した分化したP19ニューロン細胞を、5μMの示されたキレート剤(HLM7、HLM8、HLM9、HLA16、HLA20、M7、VK−28、DFO)又は1mMのアポモルヒネ(Apo)のいずれかを含む完全培地中の50μMの6−OHDA(6−ヒドロキシドパミン)で6時間処理した。これらの細胞を、5%のAlamar blueを含む新たな培地で引き続いて洗浄及び再懸濁し、4時間インキュベートし、その蛍光を450nmの励起及び590nmの発光でモニタリングした(Tecan Safire蛍光プレートリーダー)。結果を図3に示す。データは、6−OHDAで処理していない系と比較した%活性と等しい%保護として与える。
【実施例33】
【0323】
血清飢餓により誘導されたアポトーシスに対するPC12細胞の神経保護
PC12細胞を、無血清培地単独中又は異なる濃度のキレート剤VK−28、M32、HLA20及びラサジリンを含む無血清培地中で増殖させた。24時間のインキュベーション後、これらの細胞をMTT試験に供した。
【0324】
結果を図4A〜4Bに示す。細胞生存率を、コントロール群として働きかつ100%とされる、血清を補充した培地中で培養した細胞の百分率として示した。無血清培地中で増殖したPC12細胞は、(24時間の時点で)38%の細胞生存率を有し、これをポジティブコントロールとして使用した。実験データは、平均±SD(r=6)として示す。
【0325】
図4A〜4B中に示されるように、キレート剤VK−28、HLA20及びM32は全て、血清を引き揚げた後のPC12細胞の死に対して保護した。24時間のインキュベーション後、0.1μMのVK−28、0.1μMのHLA20又は0.1μMのM32を含む無血清培地中で増殖したPC12細胞の生存率は、キレート剤を含まない無血清培地中で増殖したPC12細胞の生存率とは有意に異なった(P<0.01)。生存細胞の数は、無血清コントロール群(38%)と比較して、ぞれぞれ80%、65%及び59%まで上昇した。10倍又は100倍の濃度のキレート剤HLA20(1μM又は10μM)及びM32(1μM又は10μM)で、血清の引き揚げにより誘導されるPC12細胞の死に対する保護に有意な変化は存在しなかった。1μMの濃度でも、VK−28は、血清の引き揚げによって誘導されるPC12のアポトーシスに対する良好な阻害活性を示した。しかし、10μMの濃度で、VK28の毒性はますます優勢になった。この濃度は、無血清培地において約75%のPC12細胞の死を引き起こした。
【実施例34】
【0326】
ラット脳におけるMAO活性に対する阻害効果
モノアミンオキシダーゼ(MAO)(生体アミンの代謝的分解において重要な役割を果たす酵素)は、2つの機能的形態(MAO−A及びMAO−B)で存在する。2つの同位酵素は、異なる基質特異性及びインヒビター特異性を有する。
【0327】
i.脳MAOの調製
ラットを断頭し、その脳を計量した氷冷スクロース緩衝液(0.32M)中に迅速に採取し、それらの重量を決定した。全ての引き続く手順を0〜4℃で実施した。これらの脳を、Teflonガラスホモジナイザーで0.25Mスクロース(20部のスクロースに対して1部の組織)中でホモジナイズし、その後スクロース緩衝液を添加して10%ホモジネートの最終濃度にした。これらのホモジネートを600gで15分間遠心分離した。上清画分を取り出し、4500gで30分間遠心分離し、そのペレットを0.32Mスクロース緩衝液中に希釈し、後のMAOのアッセイのために凍結して保持した。タンパク質濃度を、標準としてウシ血清アルブミンを使用して、595nmでBradford試薬を用いて決定した。
【0328】
ii.in vitroでのMAO阻害活性の決定
MAO−A及びMAO−Bの活性を、Tipton及びYoudim(1983)の適合型方法によって決定した。試験化合物を、0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.4)中の適切な希釈の酵素調製物(MAO−Bアッセイについて70μgのタンパク質、MAO−Aアッセイについて150μgのタンパク質)に添加した。この混合物を、0.05Mデプレニル/セレジリン(MAO−Bの特異的インヒビター(MAO−Aの決定のため)又は0.05Mクロルジリン(clorgylin)(MAO−Aの特異的インヒビター(MAO−Bの決定のため)と共にインキュベートした。インキュベーションを37℃で1時間実施し、その後MAO−Aの決定のために14C−5−ヒドロキシトリプタミンビノキサレート(binoxalate)(100M)又はMAO−Bの決定のために14C−フェニルエチルアミン100Mを添加し、それぞれ30分間又は20分間インキュベーションを続けた。この反応を2Mの氷冷クエン酸で停止させ、代謝物を抽出し、cpm単位で液体シンチレーション計数によって決定した。
【0329】
iii.鉄キレート剤によるMAO−A及びMAO−Bの阻害
MAO−A及びMAO−Bの活性を、種々の濃度の試験化合物とのインキュベーション後に、in vitroでラット脳ホモジネートにおいて決定した。試験した化合物の阻害活性を図5A〜5Dに示す。
【0330】
1つの実験において、HLA20、M32、VK−28、M30、M31及びプロパルギルアミン(P)のin vitro阻害活性を、ラット脳MAO−Bに対して試験した。これらの試験化合物を、10−7Mのクロルジリンを含む緩衝液に添加し、組織ホモジネートと共に37℃で60分間インキュベートし、その後14C−β−フェニル−エチルアミンを添加した。結果を図5A〜5Bに示す。試験化合物の存在下でのMAO−B活性は、コントロールサンプル中のMAO−B活性の百分率として示した。平均値は、±s.e.平均で示される。
【0331】
別の実験において、HLA20、M32、VK−28、M30、M31及びプロパルギルアミン(P)のin vitro阻害活性を、ラット脳MAO−Aに対して試験した。これらの試験化合物を、10−7Mのデプレニルを含む緩衝液に添加し、組織ホモジネートと共に37℃で60分間インキュベートし、その後14C−5−ヒドロキシトリプタミンを添加した。結果を図5C〜5Dに示す。試験化合物の存在下でのMAO−A活性は、コントロールサンプル中のMAO−A活性の百分率として示した。平均値は、±s.e.平均で示される。
【0332】
これらの実験結果は、試験化合物間で阻害活性において明確な差異が存在することを示した。鉄キレート剤M30は、0.1μM未満のIC50値でMAO−A及びMAO−Bの両方の活性の有意な阻害を引き起こしたが、キレート剤M32及びM31は、MAO−Aに対してほとんど何の影響も有さず、かつMAO−B活性に対して乏しい阻害効果を有した(それぞれ、100μMで17.2%及び14.2%の阻害)。VK−28及びHLA20は、MAO−Aに対して類似の穏やかな阻害活性(それぞれ、100μMで15.1%及び26.1%の阻害)を示したが、MAO−B活性に対して、HLA20は、VK−28の阻害効果よりも強力な阻害効果を示した(HLA20について42.0%の阻害及びVK−28について13.3%の阻害)。プロパルギルアミン(P)は、それぞれ66.3μM及び10.1μMのIC50値で、濃度依存的な様式でMAO−A活性及びMAO−B活性の両方を優先的に阻害した。
【実施例35】
【0333】
キレート剤の輸送特性
親油性は、薬物の吸収及び分布において重要な役割を果たす。n−オクタノール/水分布係数の対数(logD)は、薬物候補の親油性の最も一般に使用される尺度である。本明細書中で、本発明者らはlogDを決定するためにn−オクタノール/水攪拌フラスコ手順を使用した。結果(表1)は、試験キレート剤の分布係数(logD)が、pH値及び試験した化合物によって大きく変動することを示した。酸性溶液及び塩基性溶液において、全ての試験化合物は、良好な親水性といわれる低いlogD値を有する。これは、塩化オキシニウム(oxinium chloride)誘導体の形成(酸中)及びナトリウムオキシネート(sodium oxinate)誘導体の形成(塩基中)によって説明され得る。表1は、水中でのキレート剤の親油性の順序を示す:HLM7(2.19)>HLA16(1.79)>HLA20(1.57)>HLM9(−1.70)>HLM8(<−2)。これらのデータは、HLM9及びHLM8が、それらの高い親水性に起因して生物学的膜を介した乏しい透過性を有し得、他方でHLM7、HLA16及びHLA20が、それらの脂質可溶性に起因して生物学的膜を横切ることができる可能性があることを示唆している。
【表1】

【実施例36】
【0334】
脳ミトコンドリア画分における脂質過酸化の阻害
新規キレート剤のラジカル除去特性/抗酸化剤特性を、脂質過酸化アッセイによって決定した。この系は、フリーラジカル損傷から生物学的脂質を保護する抗酸化剤の能力を測定するために使用されている。本研究において、ミトコンドリアにおけるMDAの形成を、50μMのアスコルビン酸及び5μMのFeSOで誘導した。図6に示されるように、試験した全てのキレート剤が脂質過酸化を阻害した。この阻害は用量依存的であった。顕著な阻害効果が25μMで全てのキレート剤で観察され、ラジカル損傷を90%〜97%低下させた。10μMほどの低い化合物濃度で、これらのキレート剤は、ラジカル形成を顕著に低下させた(約40%の阻害)。この阻害は、試験化合物のラジカル除去特性及び鉄キレート化特性に起因し得る。
【実施例37】
【0335】
局所的光保護
本発明の鉄キレート剤によって提供される局所的光保護のレベルを決定するために、モルモットを試験化合物で局所的に処置し、次いで異なる線量のUV放射に曝露させ、サンプロテクションファクター(SPF)を決定する。無毛マウスを、試験化合物で局所的に処置し、次いで紅斑を起こさない線量のUV放射への長期間の曝露に供する。マウスを、皮膚の皺形成及び皮膚の腫瘍について評価する。
【0336】
別の実験において、モルモットを試験化合物、日焼け止め及びこれら2つの組み合わせで局所的に処置し、次いで種々の線量のUV放射に曝露して、サンプロテクションファクター(SPF)を決定する。無毛マウスを、試験化合物、日焼け止め及びこれら2つの組み合わせで局所的に処置し、次いで紅斑未満の線量のUV放射への長期間の曝露に供する。マウスを、皮膚の皺形成及び皮膚の腫瘍について評価する。
(参考文献)








【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


【表7】


【表8】


【表9】


【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物であって、鉄キレート剤機能、並びに前記化合物に神経保護機能を付与する残基、前記化合物に抗アポトーシス機能及び神経保護機能を合せた機能を付与する残基又はこれら両方の残基からなる群から選択される残基を含む、化合物。
【請求項2】
抗アポトーシス機能及び神経保護機能を合せた機能を付与する前記残基が、プロパルギル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記鉄キレート剤機能が、8−ヒドロキシキノリン残基、ヒドロキサメート残基及びピリジノン残基からなる群から選択される残基によって提供される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記鉄キレート剤機能が、次式の8−ヒドロキシ−5−キノリン、3−ヒドロキシピリジン−4−オン又は1−ヒドロキシピリジン−2−オンの残基である、請求項3に記載の化合物:
【化1】


(式中、Rは、キノリン環の位置5、位置6又は位置7、3−ヒドロキシ−4−ピリジノン(式中、R’は、C〜C低級アルキル、好ましくはメチルである)の位置1、位置2、位置5又は位置6、及び1−ヒドロキシ−2−ピリジノン環の位置4又は位置5において連結され得る、前記神経保護機能及び/又は神経保護機能及び抗アポトーシス機能を合せた機能を有する基を示す。
【請求項5】
前記鉄キレート剤機能が、8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチレン基によって提供される、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記鉄キレート剤機能が、2−メチル−3−ヒドロキシ−4−ピリジノン基によって提供される、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物に神経保護機能を付与する前記残基が、神経保護ペプチド、神経保護類似体及びそれらの神経保護フラグメントからなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
前記神経保護ペプチドが、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、サブスタンスP又はエンケファリンである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記神経保護ペプチドが、1つのアミノ酸残基がL−システイン残基又はD−システイン残基によって置換されたVIP、GnRH、サブスタンスP若しくはエンケファリン又はそれらのフラグメントの類似体である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記類似体が、アミノ末端にステアリル基又はFmoc基を有し得る配列番号2のVIPフラグメント類似体、配列番号4及び配列番号5のGnRH類似体、配列番号7及び配列番号8のサブスタンスP類似体、並びに配列番号11、配列番号12、配列番号13及び配列番号14のエンケファリン類似体からなる群から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物に神経保護機能を付与する前記残基が、L−システイン残基若しくはD−システイン残基又はL−アラニン残基若しくはD−アラニン残基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
8−ヒドロキシ−5−キノリニルの鉄キレート剤機能、及び前記神経保護機能として神経保護ペプチド、神経保護類似体又はそれらの神経保護フラグメントの残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
前記神経保護ペプチドが、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、サブスタンスP又はエンケファリンである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記神経保護ペプチドが、1つのアミノ酸残基がL−システイン残基又はD−システイン残基によって置換されたVIP、GnRH、サブスタンスP若しくはエンケファリン又はそれらのフラグメントの類似体である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記類似体が、アミノ末端にステアリル基又はFmoc基を有し得る配列番号2のVIPフラグメント類似体、配列番号4及び配列番号5のGnRH類似体、配列番号7及び配列番号8のサブスタンスP類似体並びに配列番号11、配列番号12、配列番号13及び配列番号14のエンケファリン類似体からなる群から選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
プロパルギル基をさらに含む、請求項12から15までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
8−ヒドロキシ−5−キノリニルの鉄キレート剤機能及びL−システイン若しくはD−システイン又はL−アラニン若しくはD−アラニンの残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
プロパルギル基をさらに含む、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
8−ヒドロキシ−5−キノリニルの鉄キレート剤機能及びプロパルギル基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
前記8−ヒドロキシ−5−キノリニルが、−N−原子を介して前記プロパルギル基に連結された8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチレン基である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
前記8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチレン基が、エチレンジアミン残基、ピペラジン残基及び1,3,5−ペルヒドロトリアジン残基から選択されるリンカーを介して前記プロパルギル基に連結されている、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
前記8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチレン基が、ピペラジン残基を介して前記プロパルギル基に連結されている、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
前記8−ヒドロキシ−5−キノリニルメチレン基が、L−アラニン残基若しくはD−アラニン残基又はL−システイン残基若しくはD−システイン残基或いはそれらのエステルの−NH−基を介して前記プロパルギル基に連結されている、請求項20に記載の化合物。
【請求項24】
ヒドロキサメートの鉄キレート剤機能、及び前記神経保護機能として神経保護ペプチド、神経保護類似体又はそれらの神経保護フラグメントの残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項25】
前記神経保護ペプチドが、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、サブスタンスP又はエンケファリンである、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
前記神経保護ペプチドが、1つのアミノ酸残基がL−システイン残基又はD−システイン残基によって置換されたVIP、GnRH、サブスタンスP若しくはエンケファリン又はそれらのフラグメントの類似体である、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
前記類似体が、アミノ末端にステアリル基又はFmoc基を有し得る配列番号2のVIPフラグメント類似体、配列番号4及び配列番号5のGnRH類似体、配列番号7及び配列番号8のサブスタンスP類似体並びに配列番号11、配列番号12、配列番号13及び配列番号14のエンケファリン類似体からなる群から選択される、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
プロパルギル基をさらに含む、請求項24から27までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項29】
N−エチレン−2−ヒドロキシ−3−メチル−ピリジン−4−オンの鉄キレート剤機能、及び前記神経保護機能として神経保護ペプチド、神経保護類似体又はそれらの神経保護フラグメントの残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項30】
前記神経保護ペプチドが、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、サブスタンスP又はエンケファリンである、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
前記神経保護ペプチドが、1つのアミノ酸残基がL−システイン残基又はD−システイン残基によって置換されたVIP、GnRH、サブスタンスP若しくはエンケファリン又はそれらのフラグメントの類似体である、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
前記類似体が、アミノ末端にステアリル基又はFmoc基を有し得る配列番号2のVIPフラグメント類似体、配列番号4及び配列番号5のGnRH類似体、配列番号7及び配列番号8のサブスタンスP類似体並びに配列番号11、配列番号12、配列番号13及び配列番号14のエンケファリン類似体からなる群から選択される、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
プロパルギル基をさらに含む、請求項29から32までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項34】
N−エチレン−2−ヒドロキシ−3−メチル−ピリジン−4−オンの鉄キレート剤機能、L−システイン若しくはD−システイン又はL−アラニン若しくはD−アラニンの残基及びプロパルギル基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項35】
ヒドロキサメートの鉄キレート剤機能及びプロパルギル基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項36】
前記ヒドロキサメートが、−N−原子を介して前記プロパルギル基に連結されたCONHOH−(CH−基である、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
前記ヒドロキサメート基が、ピペラジン環を介して前記プロパルギル基に連結されている、請求項35又は36に記載の化合物。
【請求項38】
化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシキノリンを除く、次式IからIVまでの化合物又はそれらの薬学的に許容される塩:
【化2】


(式中、
は、L−Cys残基又はD−Cys残基の−S−原子を介してC原子に連結されたシステイン残基を含む神経保護ペプチドの類似体の残基であり、かつ前記ペプチドのアミノ末端は、Fmoc又はステアリルのような疎水性基によって任意選択で置換され;
はH又は−NH−Xであり;
は、
【化3】


(ii)−CR;(iii)−N(CH)−X;(iv)−N(R)−CH(CHSH)COOC;(v)−N(R)−CH−COOCH及び(vi)−S−CH−CH(COOH)−NHR’からなる群から選択される基であり;
は、(i)X;(ii)COOC;(iii)(CH−O−R;及び(iv)−COO−(CH−NH−Rからなる群から選択される基であり;
は、H、C〜C低級アルキル、好ましくはCH又はCOOCであり;
は、H、COOH、COO又はCOOCであり;
は、(i)−NH−R;(ii)−NH;(iii)−NH−COCH、(iv)−NH−NH−R及び(v)−NH−NH−CO−CH(CHOH)−NH−Rからなる群から選択され;
はH又はXであり;R’は、H、X又はFmocであり;
は、(i)H;(ii)−CO−CH−R;(iii)−CH−COOCH;(iv)−CH(CHSH)COOC
【化4】


からなる群から選択され;
10は、X;−CH(CHSH)COOC又は
【化5】


であり;
nは1から6までの整数であり;
11は、


及び
【化6】


からなる群から選択される基であり;
12は、X、C〜C低級アルキル、好ましくはCH、COOC又は−(CH−OH−であり;
13は、X、−(CH−OX−又は−COO−(CH−NH−Xであり;
Xはプロパルギル基である)。
【請求項39】
次式の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化7】


(式中、
は、Cys残基の−S−原子を介してC原子に連結されたL−システイン残基又はD−システイン残基を含む神経保護ペプチド又はそのフラグメントの類似体の残基であり、かつ前記ペプチドのアミノ末端は、Fmoc又はステアリルのような疎水性基によって任意選択で置換され;
はH又は−NH−Xであり;
Xはプロパルギル基である)。
【請求項40】
が、1つのアミノ酸残基がL−システイン残基又はD−システイン残基によって置換された血管作動性腸管ペプチド(VIP)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、サブスタンスP若しくはエンケファリン又はそれらのフラグメントからなる群から選択される神経保護ペプチドの類似体であり、かつRがHである、請求項39に記載の式Iの化合物。
【請求項41】
前記類似体が、アミノ末端にステアリル基を有する配列番号2のVIPフラグメント類似体(本明細書中で化合物M6と特定される、付録II)又はFmoc基を有する配列番号2のVIPフラグメント類似体(M7、付録II)、配列番号4のGnRH類似体(M8、付録II)又は配列番号5のGnRH類似体(M22、付録II)の残基、配列番号7のサブスタンスP類似体(M27、付録II)又は配列番号8のサブスタンスP類似体(M28、付録II)の残基、並びに配列番号11のエンケファリン類似体(M19、付録II)、配列番号12のエンケファリン類似体(M21、付録II)、配列番号13のエンケファリン類似体(M18、付録II)及び配列番号14のエンケファリン類似体(M20、付録II)の残基からなる群から選択される、請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
が、1つのアミノ酸残基がL−システイン残基又はD−システイン残基によって置換された血管作動性腸管ペプチド(VIP)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、サブスタンスP若しくはエンケファリン又はそれらのフラグメントからなる群から選択される神経保護ペプチドの類似体であり、かつRが−NH−プロパルギルである、請求項39に記載の式Iの化合物。
【請求項43】
前記類似体が、アミノ末端にステアリル基を有する配列番号2のVIPフラグメント類似体(M6A、付録I)又はFmoc基を有する配列番号2のVIPフラグメント類似体(M7A、付録I)の残基、配列番号4のGnRH類似体(M8A)又は配列番号5のGnRH類似体(M22A、付録I)の残基、配列番号7のサブスタンスP類似体(M27A、付録I)又は配列番号8のサブスタンスP類似体(M28A、付録I)の残基、並びに配列番号11のエンケファリン類似体(M19A、付録I)、配列番号12のエンケファリン類似体(M21A、付録I)、配列番号13のエンケファリン類似体(M18A、付録I)及び配列番号14のエンケファリン類似体(M20A、付録I)の残基からなる群から選択される、請求項42に記載の化合物。
【請求項44】
化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシ−キノリンを除く、次式の式IIの化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化8】


(式中、
は、
【化9】


(ii)−CR;(iii)−N(CH)−X;(iv)−N(R)−CH(CHSH)COOC;(v)−N(R)−CH−COOCH及び(vi)−S−CH−CH(COOH)−NHR’からなる群から選択される基であり;
は、(i)X;(ii)COOC;(iii)(CH−O−R及び(iv)−COO−(CH−NH−Rからなる群から選択され;
はH、CH又はCOOCであり;
はH、COOH、COO又はCOOCであり;
は、(i)−NH−R;(ii)−NH;(iii)−NH−COCH;(iv)−NH−NH−R;及び(v)−NH−NH−CO−CH(CHOH)−NH−Rからなる群から選択され;
はH又はXであり、R’はH、X又はFmocであり;
Xはプロパルギル基である)。
【請求項45】
が−(CH−OHである化合物を除く、Rがピペラジン環である請求項44に記載の式IIの化合物。
【請求項46】
本明細書中でHLA16と称される化合物(付録IV)によって示される、Rがピペラジン環であり、Rが−COOCである、請求項44に記載の式IIの化合物。
【請求項47】
本明細書中でHLA20と称される化合物(付録III)によって示される、Rがピペラジン環であり、Rがプロパルギル基である、請求項44に記載の式IIの化合物。
【請求項48】
本明細書中でHLA16a及びM17と称される化合物(付録III)によって示される、Rがピペラジン環である、請求項44に記載の式IIの化合物。
【請求項49】
が−S−CH−CH(COOH)−NHR’である請求項44に記載の式IIの化合物であって、本明細書中でD−HQ−CysOHと称される化合物(M11、付録II)及びL−HQ−CysOHと称される化合物(M12、付録II)によって示される、R’がHである化合物、又は本明細書中でD−(HQ−Pr)−CysOHと称される化合物(M11a、付録III)及びL−(HQ−Pr)−CysOHと称される化合物(M12a、付録III)によって示される、R’がプロパルギルである化合物、又は本明細書中でM11B及びM12Bと称される化合物(付録IV)によって示される、R’がFmocである化合物。
【請求項50】
が基−CRである請求項44に記載の式IIの化合物であって、RがHであり、RがCOOHであり、Rが−NH−Rである、本明細書中でD−HQ−Alaと称される化合物(M9、付録IV)及びL−HQ−Alaと称される化合物(M10、付録IV)によって示される、RがHである化合物、又は本明細書中でD−(HQ−Pr)−Alaと称される化合物(M9a、付録III)及びL−(HQ−Pr)−Alaと称される化合物(M10a、付録III)によって示される、Rがプロパルギルである化合物;或いは本明細書中でHQ−Alaと称される化合物(HLM8、付録IV)によって示される、RがHであり、HがCOOであり、Rが−NHである化合物;或いは本明細書中でHQ−AlaEtと称される化合物(HLM9、付録IV)によって示される、RがHであり、RがCOOCであり、Rが−NHである化合物;或いは本明細書中でHLM7と称される化合物(付録IV)によって示される、R及びRが共にCOOCであり、Rが−NH−COCHである化合物;或いは本明細書中でM31と称される化合物(付録III)によって示される、RがHであり、RがCOOCであり、Rが−NH−プロパルギルである化合物。
【請求項51】
が基−NR−CH(CHSH)COOCである請求項44に記載の式IIの化合物であって、本明細書中でM32と称される化合物(付録IV)によって示される、RがHである化合物、又は本明細書中でM33と称される化合物(付録III)によって示される、Rがプロパルギルである化合物。
【請求項52】
本明細書中でM30と称される化合物(付録III)によって示される、Rが基−N(CH)−プロパルギルである、請求項44に記載の式IIの化合物。
【請求項53】
次式の式IIIの化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化10】


(式中、
は、(i)H;(ii)−CO−CH−R;(iii)−CH−COOCH;(iv)−CH(CHSH)COOC
【化11】


からなる群から選択され;
10は、X;−CH−CH(SH)COOC又は
【化12】


であり;
nは、1から6までの整数、好ましくは1又は2であり;
12は、X、C〜C低級アルキル、好ましくはメチル、COOC又は−(CH−OH−であり;
Xはプロパルギル基である)。
【請求項54】
が−CO−CH−Rであり、式中、Rは、L−Cys残基又はD−Cys残基を含む、神経保護ペプチド又はそのフラグメントの類似体の残基である、請求項53に記載の式IIIの化合物。
【請求項55】
前記類似体が、アミノ末端にステアリル基を有する配列番号2のVIPフラグメント類似体(M6B、付録V)又はFmoc基を有する配列番号2のVIPフラグメント類似体(M7B、付録V)の残基、配列番号4のGnRH類似体(M8B、付録V)又は配列番号5のGnRH類似体(M22B、付録V)の残基、配列番号7のサブスタンスP類似体(M27B、付録V)又は配列番号8のサブスタンスP類似体(M28B、付録V)の残基、並びに配列番号11のエンケファリン類似体(M19B、付録V)、配列番号12のエンケファリン類似体(M21B、付録V)、配列番号13のエンケファリン類似体(M18B、付録V)及び配列番号14のエンケファリン類似体(M20B、付録V)の残基からなる群から選択される、請求項54に記載の式IIIの化合物。
【請求項56】
本明細書中でM35、M36、M37、M38、M39、M40、M41、M42、M43、M44、M45及びM46と称される化合物(付録V)によって示される、請求項53に記載の式IIIの化合物。
【請求項57】
次式の式IVの化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化13】


(式中、
11は、


及び
【化14】


からなる群から選択され;
13は、X、−(CH−OX又は−COO−(CH−NH−Xであり;
Xはプロパルギル基である)。
【請求項58】
本明細書中でM9b、M11b、M12b、M13b、M15b、HLA16b、M17a、HLA20a、M30a、M31a、M33a及びM34bと称される化合物(付録VI)によって示される、請求項57に記載の式IVの化合物。
【請求項59】
付録IV中のVK−28と称される化合物を除く、本明細書中で付録IからVIまでに示される、請求項38から57までのいずれか1項に記載の式I、II、III又はIVの化合物。
【請求項60】
請求項1から59までのいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項61】
鉄キレート化治療のための医薬組成物の調製のための、請求項1から59までのいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項62】
前記鉄キレート化治療が、鉄過負荷及び酸化ストレスに関連する疾患、障害及び状態の治療及び/又は予防のためのものである、請求項61に記載の使用。
【請求項63】
前記鉄過負荷及び酸化ストレスに関連する疾患、障害又は状態が、神経変性疾患若しくは神経変性障害又は脳血管疾患若しくは脳血管障害、新生物疾患、血色素症、サラセミア、心血管疾患、糖尿病、炎症障害、アントラサイクリン心毒性、ウイルス感染、原生動物感染、酵母感染、加齢の遅延、並びに皮膚の加齢の予防及び/又は治療、並びに日光及び/又はUV光に対する皮膚の保護である、請求項62に記載の使用。
【請求項64】
パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、フリードライヒ失調症、ハレルフォルデン−スパッツ病、癲癇及び神経外傷のような神経変性疾患、神経変性状態及び神経変性障害並びに脳血管疾患、脳血管状態及び脳血管障害の予防及び/又は治療における鉄キレート化及び神経保護ためのものである、請求項63に記載の使用。
【請求項65】
前記神経変性疾患が、パーキンソン病又はアルツハイマー病である、請求項64に記載の使用。
【請求項66】
前記脳血管障害が脳卒中である、請求項64に記載の使用。
【請求項67】
任意選択で1種又は複数の細胞傷害性抗癌薬物と組み合わせた、新生物疾患の処置における細胞増殖の阻害のためのものである、請求項63に記載の使用。
【請求項68】
血色素症及びサラセミアにおける鉄過負荷の予防及び/又は治療のためのものである、請求項63に記載の使用。
【請求項69】
心血管疾患の予防及び/又は治療のため、特に、再灌流損傷におけるフリーラジカルの発生に関連する損傷を予防するためのものである、請求項63に記載の使用。
【請求項70】
糖尿病の予防及び/又は治療のためのものである、請求項63に記載の使用。
【請求項71】
関節の炎症障害、特に慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)及び乾癬のような炎症障害の予防及び/又は治療のためのものである、請求項63に記載の使用。
【請求項72】
アントラサイクリン心毒性の予防及び/又は治療のためのものである、請求項63に記載の使用。
【請求項73】
抗ウイルス剤と任意選択で組み合わせた、レトロウイルス感染(例えば、HIV−1)のようなウイルス感染の予防及び/又は治療のためのものである、請求項63に記載の使用。
【請求項74】
マラリアのような原生動物感染又はCandida albicans感染のような酵母感染の予防及び/又は治療のためのものである、請求項63に記載の使用。
【請求項75】
神経変性疾患、神経変性障害又は神経変性状態のような加齢関連の疾患、障害又は状態の予防によって、加齢を遅延させるため及び/又は加齢プロセスを改善するためのものである、請求項63に記載の使用。
【請求項76】
加齢並びに/或いは日光及び/又はUV光への曝露に関連する皮膚の加齢並びに/或いは皮膚損傷の予防及び/又は治療のためのものである、請求項63に記載の使用。
【請求項77】
加齢並びに/或いは日光及び/又はUV光への曝露に関連する皮膚の加齢並びに/或いは皮膚損傷の予防及び/又は治療のための局所適用のための化粧品組成物の調製のための、請求項1から59までのいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項78】
心臓、肺又は腎臓のような移植が意図された器官の保存のための、請求項1から59までのいずれか1項に記載の化合物のex vivoでの使用。
【請求項79】
有効量の請求項1から59までのいずれか1項に記載の化合物又は請求項60に記載の医薬組成物を、鉄キレート化治療を必要とする個体に投与するステップを含む、鉄キレート化治療のための方法。
【請求項80】
鉄過負荷及び酸化ストレスに関連する疾患、障害又は状態の治療及び/又は予防のためのものである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
神経変性疾患、神経変性状態又は神経変性障害の予防及び/又は治療のためのものである、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
1種又は複数の化学療法剤と任意選択で組み合わせた、癌の予防及び/又は治療のためのものである、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
血色素症患者又はサラセミア患者における鉄過負荷の予防及び/又は治療のためのものである、請求項79に記載の方法。
【請求項84】
心血管疾患の予防及び/又は治療のため、例えば再灌流損傷におけるフリーラジカルの発生に関連する損傷を予防するためのものである、請求項79に記載の方法。
【請求項85】
糖尿病の予防及び/又は治療のためのものである、請求項79に記載の方法。
【請求項86】
炎症障害の予防及び/又は治療のためのものである、請求項79に記載の方法。
【請求項87】
前記炎症障害が、関節の炎症障害、特に慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)又は乾癬である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
アントラサイクリン新生物薬物での処置を受ける個体における、アントラサイクリン心毒性の予防及び/又は治療のためのものである、請求項79に記載の方法。
【請求項89】
ウイルス感染、原生動物感染又は酵母感染の予防及び/又は治療のためのものである、請求項79に記載の方法。
【請求項90】
前記ウイルス感染が、レトロウイルス感染(例えば、HIV−1)であり、かつ前記化合物が、任意選択で抗ウイルス剤と組み合わせてAIDS患者に投与される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記原生動物感染が、Plasmodium falciparumによって引き起こされるマラリアであり、前記酵母感染がCandida albicans感染である、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
健康な個体又は神経変性疾患、神経変性障害若しくは神経変性状態のような加齢関連疾患に罹患した個体において、加齢を遅延させるため及び/又は加齢プロセスを改善するための、請求項79に記載の方法。
【請求項93】
皮膚の加齢及び/又は加齢に関連する皮膚損傷の予防及び/又は治療のためのものである、請求項79に記載の方法。
【請求項94】
日光及び/又はUV光への曝露に関連する皮膚損傷の予防及び/又は治療のためのものである、請求項79に記載の方法。
【請求項95】
新生物疾患、血色素症、サラセミア、心血管疾患、糖尿病、炎症障害、アントラサイクリン心毒性、ウイルス感染、原生動物感染、酵母感染から選択される鉄過負荷及び酸化ストレスに関連する疾患、障害又は状態の治療及び/又は予防、並びに皮膚の加齢の予防及び/又は治療、加齢の遅延、並びに日光及び/又はUV光に対する皮膚の保護のための医薬組成物の調製のための、化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシキノリン(本明細書中でVK−28と特定される、付録IV)の使用。
【請求項96】
鉄キレート化治療を必要とする個体に、神経変性疾患、神経変性状態又は神経変性障害の予防及び/又は治療を除く、鉄過負荷及び酸化ストレスに関連する疾患、障害又は状態の治療及び/又は予防のために、有効量の化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシキノリン(本明細書中でVK−28と特定される、付録IV)を投与するステップを含む、鉄キレート化治療のための方法。
【請求項97】
加齢並びに/或いは日光及び/又はUV光への曝露に関連する皮膚の加齢並びに/或いは皮膚損傷の予防及び/又は治療のための局所適用のための化粧品組成物の調製のための、化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシキノリン(本明細書中でVK−28と特定される、付録IV)の使用。
【請求項98】
心臓、肺又は腎臓のような移植が意図された器官の保存のための、化合物5−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イルメチル]−8−ヒドロキシキノリン(本明細書中でVK−28と特定される、付録IV)のex vivoでの使用。

【図2D】
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【図3】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−79834(P2011−79834A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238156(P2010−238156)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【分割の表示】特願2005−502148(P2005−502148)の分割
【原出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(505165217)テクニオン リサーチ アンド ディベラップメント ファウンデイション リミテッド (2)
【出願人】(500370311)イエダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド (30)
【Fターム(参考)】