説明

神経再生のモジュレーター

本発明は、CNSの機能及び疾患に関連した組成物及び方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、一般的に神経発達及び神経疾患に関連する。本発明は、特に、CNS再生の新規なモジュレーターの同定及びそのように同定されたモジュレーターの様々な用途に関する。
【0002】
(発明の背景)
C1q及びTNFスーパーファミリー(C1q/TNF)
C1q及びTNFスーパーファミリー(C1q/TNF)は、共通の球状のTNFアルファ様ドメイン及びより保存されていないN末端コラーゲン様領域に特徴付けられる、新しく名付けられたタンパク質ファミリーである。Kishore等、Trends Immunol 25:551-61 (2004)。C1qは、先天性免疫系の補体活性化の古典経路の認識コンポーネント及び古典経路に由来する先天性免疫とIgG又はIgMに媒介される養子免疫との主要な接続リンクである。それは6つのA鎖、6つのB鎖及び6つのC鎖で構成されている462kDaの分子であり、それぞれの鎖は約225のアミノ酸を有している。C1q鎖のN末端コラーゲン様領域は三重ヘリックスを形成しており、分子のアミノ末端において「軸」を形成するように18の鎖の全てを包囲するが、コラーゲン様領域の中間においてA、B及びC鎖のそれぞれの組がコラーゲン様「幹」において分離している。それぞれの幹のC末端で、A、B及びC鎖の球状領域はgC1qと呼ばれる球状「頭部」を形成する。
【0003】
gC1qドメインは、種々の非補体タンパク質においても見られる。さらにまた、腫瘍壊死因子(TNF)とgC1qを含むタンパク質との間には、構造的及び進化的な関連があるようである。したがって、多くのC1q及びTNFファミリータンパク質は、C1q/TNFスーパーファミリーに属していると認識される。Kishore、上記。構造的に関連しているが、このスーパーファミリーのメンバーは機能的に多様である。さらに、このスーパーファミリー(例えばC1q及びTNF−アルファ)のメンバーの多くは、それ自身で多数の機能を発揮する。実際、研究によりC1qが多様な範囲の細胞型の細胞−表面タンパク質に対するリガンドであるように見えることが示唆され、細胞反応のアレイを作製した。Eggleton et al., Trends Cell Biol 8:428-431 (1998)。近年では、CTRPI−7を含むいくつかのC1qTNF関連タンパク質(CTRPs;C1QTNFsとも呼ばれる)が同定され、研究された。例えばLasser et al., Blood, 107:423-430 (2006); Hayward et al., Hum Mol Genet 12:2657-2667 (2003)参照。
【0004】
C1qは細胞反応のアレイを生じる細胞型の多様な範囲の細胞表面タンパク質に対するリガンドであるように見え、C1qが多機能タンパク質であることが示唆される。Eggleton et al., Trends Cell Bio 8:428-431 (1998)。さらに、C1qが中心的役割を担っている補体系は急性脳外傷(脳虚血及び外傷)及び慢性的な神経変性(アルツハイマー病)の発病学に関与することが示唆されたが、CNS系疾患における特定の役割はまだ知られていない。アルツハイマー病(AD)のトランスジェニック・マウスモデル研究において、C1qは、おそらく典型的な補体カスケードの活性化及び炎症の増強を介して、ニューロンの完全性に対して有害効果を行うことが示唆される。Fonesca et al., J Neurosci 24:6457-6465 (2004)。これまで、C1qが直接的にCNSの軸索及びニューロンの成長を変調するという証拠はなかった。
【0005】
C1qファミリーメンバーは、特にヒトC1QTNF5(CTRP5)(NP_05646;配列番号:4)、Cbln1、Cbln2、アディポネクチン、その様々な前駆体、アイソフォーム及び非ヒトホモログを含む。
【0006】
ミエリン及びミエリン関連タンパク質
成体哺乳類のCNSニューロンの軸索は損傷の後の限られた再生能力を有しているのに対し、末梢神経系(PNS)の軸索は急速に再生することは既知である。CNSニューロンの限られた再生能は、ある程度CNS軸索の本質的な性質であるが、許容できない環境によるものでもある。神経突起成長の阻害の原因となるの唯一の源ではないが、C活発に軸索成長をブロックすることによって再生を有意に障害する多数の阻害性分子を含む。このような3つのミエリン関連タンパク質(MAP)が同定された:Nogo(別名NogoA)は2つの膜貫通領域を有するReticulonファミリのタンパク質のメンバーであり;ミエリン関連糖タンパク質(MAG)はIgスーパーファミリの膜貫通タンパク質であり;そして、OMgpは、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを有するロイシン豊富な繰り返し(LRR)タンパク質である。Chen et al., Nature 403:434-39 (2000); GrandPre et al., Nature 417:439-444 (2000);Prinjha et al., Nature 403:383-384 (2000);McKerracher et al, Neuron 13:805-11 (1994);Wang et al, Nature 417:941-4 (2002);Kottis et al J. Neurochem 82:1566-9 (2002)。NogoAの一部であるNogo66は、Nogoの3つすべてのアイソフォームに見られる66-アミノ酸細胞外ポリペプチドとして記載されている。
【0007】
構造的相違にもかかわらず、全3つの抑制のタンパク質(Nogo66も同様)は、Nogo受容体を呼ばれる同じGPIアンカー受容体(NgR;Nogo受容体−1又はNgR1として知られる)に結合することが示されており、NgRはNogo、MAG及びOMgpの抑制作用を媒介するために必要とされることが提唱された。Fournier et al., Nature 409:34`-346 (2001)。2つのNgR1ホモログ(NgR2及びNgR3)もまた同定された。米国公開2005/0048520A1(Strittmatter et al.)(2005年3月3日に公開)。そのNgRがGPIアンカー細胞表面タンパク質であると仮定すると、それは直接的なシグナルトランスダクターではないだろう(Zheng et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:1205-1210 (2005))。他にも、ニューロトロフィン受容体p75NTRがNgRの共益受容体として作用し、受容体複合体におけるシグナル変換成分を提供することが示唆された(Wang et al., Nature 420:74-78 (2002); Wong et al., Nat. Neurosci. 5:1302-1308 (2002))。
【0008】
しかしながら、NgR/p75NTR受容体複合体の最近の研究により、ミエリン関連抑制系におけるNgRの役割についての疑問が提起された。Zheng等は、NgRの遺伝子欠損がインビトロで神経突起阻害を減少せず、インビボでの皮質脊髄路(CST)再生も促進しないことを示した。Zheng et al. (2005)、上記。これらの結果と一致して、他の研究でも、NgR変異マウスにおけるCSTの増強された再生を検出できなかった。Kim et al., Neuron 44:439-451 (2004)。これらの所見は、NgR/p75NTR受容体複合体が多数の抑制シグナルの主要な収束ポイントを表しているという仮説と矛盾する。NgR変異マウスにおけるCST再生の不全は、Nogo66/NgR相互作用のペプチド・アンタゴニストで処理された野生型動物で観察されたCST再生と対照的である(GrandPre et al. Nature 417:5470551 (2002) and Li and Strittmatter, Nature 23:4219-4227 (2002))。他の研究では、NgRのドミナントネガティブな断片の発現が条件付き損傷と相まって視覚神経軸索の増強された再生を導くことを示した。両方のアンタゴニスト・ペプチドが他の抑制のリガンド/受容体を干渉する可能性があるので、両方の実験はNgRの関与を直接に試験できなかった。
【0009】
実験結果を伴うこれらの不一致は、NgR、又は、NgR/p75NTR受容体複合体は中枢神経系再生のミエリン関連阻害において限られた役割を果たすかもしれないこと、及び付加的な受容体又は結合パートナなどの他の成分が抑制シグナルの伝達に関与するかもしれないことを強く示唆する。
【0010】
PirB及びヒトオルソログ
主組織適合性複合系(MHC)クラスIは、本来、免疫系に重要な分子のファミリーをコード化している領域として同定された。最近の証拠は、MHCクラスI分子が発達期及び成人のCNSにおいてさらなる機能を有することを示した。Boulanger and Shatz, Nature Rev Neurosci. 5:521-531 (2004); US 2003/0170690 (Shatz and Syken), published September 11, 2003。MHCクラスIメンバー及び結合パートナーの多くは、CNSニューロンにおいて発現されることが見いだされる。最近の遺伝子及び分子の研究は、CNS MHCクラスIの生理機能に集中し、初期の結果はMHCクラスI分子が活性依存性シナプス可塑性(既存のシナプスの接続の強さがニューロンの活性に応答して増減するプロセス)に関与し、回路への長期構造変化が続くかもしれないことを示唆した。さらに、MHCクラスIコード化領域は神経症状を伴う多種多様な疾患に遺伝子的に関連しており、MHCクラスI分子の異常な機能は正常な脳の発達及び可塑性の破壊に寄与することが考えられる。
【0011】
免疫環境における既知のMHCクラスI受容体の一つは、PirB(Kubagawa et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 94:5261-6 (1997)によって初めて記載されていたマウスのポリペプチド)である。マウスPirBはいくつかのヒトオルソログを有しており、それは白血球免疫グロブリン様受容体、サブファミリーB(LILRB)のメンバーであり、「免疫グロブリン様転写産物」(ILTs)とも称される。ヒト・オルソログは、以下の順でマウスの配列に有意な相同性を示す。(高い方から順に挙げる):LILRB3/ILT5、LILRB 1/ILT2、LILRB5/ILT3、LILRB2/ILT4、及びPirBのように、全ての阻害性受容体である。LILRB3/ILT5(NP_006855)及びLILRB1/ILT2(NP_006660)は、Samaridis and Colonna, Eur. J. Immunol. 27(3): 660-665 (1997)によって初めて記載されていた。LILRB5/ILT3(NP_006831)は、Borges et al., J. Immunol. 159(11): 5192-5196 (1997)によって同定された。LILRB2/ILT4(MIR10として知られる)は、Colonna et al., J. Exp. Med. 186: 1809-18 (1997)によって同定された。PirB及びそのヒト・オルソログは、大きな構造的多様性を示す。様々な選択的スプライス型の配列は、例えば、以下のヒトILT4 cDNAのためのアクセッションナンバーを含むEMBL/GenBankから入手可能である:ILT4−c11 AF009634; ILT4−c117 AF11566; ILT4−c126 AF11565。上記の如く、PirB/LILRBポリペプチドはMHCクラスI(MHCI)阻害性受容体であり、免疫細胞活性化を制御する役割が知られている(Kubagawa et al.(上記);Hayami et al., J. Bioi. Chem. 272:7320 (1997);Takai et al., Immunology 115:433 (2005);Takai et al., Immunol. Rev. 181: 215 (2001);Nakamura et al. Nat. Immunol. 5:623 (2004);Liang et al., Eur. J. Immunol. 32:2418 (2002))。
【0012】
Syken等(Science 313: 1795-800 (2006))による最近の研究は、PirBが脳全体にわたってニューロンのサブセットにおいて発現していることを報告した。機能的PirBを欠損している変異マウスにおいて、皮質の眼球優位性(OD)可塑性は全ての年齢で有意に増強され、視覚領皮質における活性依存的な可塑性を制限するPirBの機能を示唆する。
【0013】
(発明の開示)
本発明は、少なくとも部分的に、C1qが直接的にCNSの軸索成長を阻害可能である;C1q及びCTRPsがPirB/LILRB及びNgRに直接結合可能である;及びPirB/LILRBアンタゴニストが効果的にC1qの阻害活性を崩壊させ、神経再生を促進するという驚くべき所見に基づいている。
一態様において、本発明は、前記対象へC1qアンタゴニストの有効量を投与することを含む、減少したC1q活性を必要とする対象の中枢神経系(CNS)におけるC1q活性を抑制する方法を提供する。
一実施態様において、C1qアンタゴニストは、CNSにおけるその結合パートナー(例えばPirB/LILRB及びNgR)へのC1qの結合をブロックする。
別の態様においては、本発明は、PirB/LILRB及びC1q/TNFファミリーメンバー又はその断片を含む受容体複合体を候補薬剤と接触させ、候補薬剤のPirB/LILRBとC1q/TNFファミリーメンバー又はその断片との間の相互作用を抑制する能力を検出することを含むPirB/LILRBアンタゴニストを同定するための方法であって、相互作用が抑制される場合、候補薬剤はアンタゴニストとして同定される方法に関する。
一実施態様において、検出される相互作用は結合である。
もう一つの実施態様では、検出される相互作用は細胞シグナリングである。
さらなる態様において、細胞シグナリングは軸索伸長又は神経再生の阻害を引き起こす。
なお更なる実施態様において、C1q/TNFファミリーメンバーは、C1q、CTRPs及びその断片からなる群から選択される。
もう一つの実施態様では、PirB/LILRBは、LILRB1、LILRB2、LILRB3又はLILRB5などのヒトLILRBタンパク質である。
さらなる実施態様において、受容体複合体は、更にNgRを含む。
【0014】
異なる実施態様において、候補薬剤は、抗体、ポリペプチド、ペプチド、核酸、小有機分子、多糖類及びポリヌクレオチドからなる群から選択され、好ましくは抗体又は低分子干渉RNA(siRNA)である。抗体は、好ましくは特にPirB/LILRB(例えばLILRB2)に結合し、キメラ、ヒト化、ヒト抗体及び抗体断片を含むが、これに限定されるものではない。
特定の実施態様では、抗体断片は、Fv、Fab、Fab’及びF(ab’)断片からなる群から選択される。
更なる実施態様において、PirB/LILRB及びC1q/TNFファミリーメンバの少なくとも1つ又はその断片は、固定される。
なお更なる実施態様において、アッセイは細胞ベースアッセイである。
別の態様においては、本発明は、候補薬剤の存在及び不存在下でC1q又はその断片と神経細胞を培養し、前記神経細胞の神経突起の長さの変化を測定することを含むC1qアンタゴニストを同定するための方法であって、候補薬剤がある場合に神経突起の長さがより長い場合、候補薬剤はC1qアンタゴニストとして同定される方法を提供する。
上記の細胞ベースアッセイにおいて、神経細胞は一次ニューロン、又は、例えば胚性幹(ES)細胞などの幹細胞を含む細胞又は細胞株から誘導されてもよいが、これに限定されるものではない。他の実施態様において、ニューロンは、例えば小脳顆粒ニューロン、後根神経節ニューロン及び皮質ニューロンからなる群から選択されてもよい。
一実施態様において、上記した方法は、神経突起伸長を増強することが同定されたアンタゴニストを使用するステップ、及び/又は神経の成長、修復及び/又は再生を促進するステップをさらに含む。
もう一つの実施態様では、上記した方法は、神経突起伸長、神経の成長、修復又は再生の促進の増強から利益を得る疾患又は健康状態の対象に同定されたアンタゴニストを投与するステップをさらに含む。このような疾患又は健康状態は、例えば、神経疾患(物理的に損害を受けた神経によって特徴づけられてもよい)であってもよく、又は物理的負傷、糖尿病によって生じる末梢神経損傷;中枢神経系への物理的損傷;脳卒中と関連している脳損傷、三叉神経痛、舌咽神経痛、ベル麻痺、重症筋無力症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性筋萎縮症、進行性の延髄の遺伝する筋肉萎縮症、脱出性、破裂性及び脱出した無脊椎動物ディスク症候群、頸椎症、叢疾患、胸郭出口滅失症候群、末梢神経疾患、ポルフィリン症、ギラン・バレー症候群、アルツハイマー病、ハンチントン病及びパーキンソン病からなる群から選択されてもよい。
別の態様においては、本発明は、ここの方法のいずれかよって同定される薬剤に関する。
実施態様において、薬剤は、抗体;ポリペプチド、ペプチド、核酸、小有機分子、多糖及びポリヌクレオチドからなる群から選択され、好ましくは抗体又は低分子干渉RNA(siRNA)である。
更なる態様において、本発明は、神経再生の刺激のための方法によって同定される薬剤を含む組成物に関する。
なお更なる態様において、本発明は、ここの方法によって同定される薬剤及び神経再生のための説明書を含むキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、マウスPirB配列(配列番号:1)及びヒトLILRB2配列(配列番号:2)を示す。
【図2】図2は、PirB及びNgRタンパク質へのC1q/TNFスーパーファミリーメンバーの強い結合を示す結合アッセイを要約する。
【図3】図3は、トランスフェクションされたCOS7細胞上のPirB及びNgRへのC1qの結合を例示する。結合は、緑で示される抗C1q−FITC免疫蛍光染色によって表される。
【図4】図4は、小脳顆粒ニューロンの神経突起伸長を抑制するC1qの能力を表す。
【図5】図5は、後根神経節(DRG)ニューロンの神経突起伸長を抑制するC1qの能力を表す。
【図6】図6は、PirB細胞外ドメイン構築物(PirBFc又はPirBHis)が小脳顆粒ニューロンにおいてC1qによって神経突起伸長の阻害を救出することを示す。
【図7】図7は、PirB細胞外ドメイン構築物(PirBFc又はPirBHis)がDRGニューロンにおいてC1qによって神経突起伸長の阻害を救出することを示す。
【図8】図8は、PirB及びNgRの免疫共沈降を示す。NgRは、PirBで強く共沈降される(左パネル)。右パネルは、抗NgRで免疫ブロットされる全ての細胞可溶化物からの総タンパクを示す。複数のバンド(矢印)は、異なっている範囲へのグリコシル化によって処理されたNgRを表す。
【図9】図9は、C1QTNF5が小脳顆粒ニューロン(CGN)の成長を抑制することを示しており、この阻害はPirBの可溶性外部ドメインによって逆転する。
【図10】図10は、C1QTNF5が小脳顆粒ニューロン(CGN)の成長を抑制することを示しており、PirBが抗PirB抗体によってブロックされる場合、この阻害は減少する。
【図11】図11はC1QTNF5が後根神経節(DRG)ニューロンの神経突起伸長を抑制することを示しており、PirBがブロックされる場合、この阻害は減少する。
【図12】図12は、C1QTNF5のヌクレオチド配列を示す(配列番号:3)。
【図13】図13は、C1QTNF5のアミノ酸配列を示す(配列番号:4)。
【図14】図14は、抗体YW259.2重鎖のヌクレオチド配列を示す(配列番号:5)。
【図15】図15は、抗体YW259.2重鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号:6)。
【図16】図16は、抗体YW259.2軽鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号:7)。
【図17】図17は、ヒト抗体Fc領域に融合させた可溶性マウスPirB外部ドメイン配列のヌクレオチド配列を示す(配列番号:8)。
【0016】
(発明の詳細な説明)
A.定義
用語「対免疫グロブリン様受容体B」及び「PirB」は、ここにおいて交換可能に用いられ、天然配列(配列番号:1(NP_035225)の841アミノ酸のマウス抑制のタンパク質)及び全ての自然発生的な変異体(例えば、選択的スプライス及びアレル変異体及びアイソフォーム及びその可溶化形態)を含む、そのラット及び非ヒト哺乳動物の天然配列ホモログを意味する。
用語「LILRB」、「ILT」及び「MIR」はここにおいて交換可能に用いられ、選択的スプライス及びアレル変異体及びアイソフォーム及びその可溶化形態などの自然発生的な変異体を含むヒト「白血球免疫グロブリン様受容体、サブファミリーB」の全てのメンバーを意味する。このファミリーのそれぞれのメンバーは、例えばLILRB3/ILT5、LILRB1/ILT2、LILRB5/ILT3及びILIRB2/ILT4などのように頭文字に続く数字により称され、いずれのメンバーに対する言及も特に明記しない限り、選択的スプライス及びアレル変異体及びアイソフォーム及びその可溶化形態などの自然発生的な変異体を含む。したがって、例えば、「LILRB2」、「LIR2」及び「MIR10」は交換可能に用いられ、配列番号:2の598−アミノ酸ポリペプチド:2(NP_005865)及び選択的スプライス及びアレル変異体及びアイソフォーム及びその可溶化形態などの自然発生的な変異体をも意味する。
用語「PirB/LILRB」は、選択的スプライス及びアレル変異体及びアイソフォーム及びその可溶化形態などの自然発生的な変異体を含む、対応のマウス及びヒトタンパク質及び他のヒト以外の哺乳動物の天然の配列ホモログを共同で意味するように用いられる。
【0017】
ここに開示される様々なタンパク質を記載するために用いる場合、「単離する」は、同定及び分離され、及び/又はその自然環境の成分から回収されたタンパク質を意味する。その自然環境の汚染成分は、通常はタンパク質の診断、又は、治療上の用途に干渉する物質であって、酵素、ホルモン及び他のタンパク質又は非タンパク質の溶質を含んでもよい。好ましい実施態様において、タンパク質は、(1)スピニングカップシークエネーターを用いてN末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度、又は(2)クマシーブルー又は、好ましくは銀汚染を用いて、非還元又は還元条件下でSDS−PAGEによる均質性、又は(3)質量分光又はペプチドマッピング技術による均質性にまで生成される。問題のタンパク質の自然環境の少なくとも一つの成分がないので、単離されたタンパク質は組換え細胞中に存在するタンパク質を含む。通常、しかしながら、単離されたタンパク質は、少なくとも一つの精製ステップによって調製される。
「単離された」核酸分子は、同定され、通常問題の核酸の天然の供給源に関連する少なくとも一つの汚濁物核酸分子から分離された核酸分子である。単離された核酸分子は、本来見いだされる形又は状況以外に存在する。単離された核酸分子は、したがって、天然の細胞中に存在するような核酸分子から区別される。しかしながら、単離された核酸分子は、例えば、核酸分子が天然の細胞と異なる染色体位置に存在する場合には、このような核酸を通常発現する細胞に含まれる核酸分子を含む。
【0018】
ここで用いられるように、用語「PirB/LILRBアンタゴニスト」は、PirB/LILRB活性をブロック、中和、阻害、抑制、減少又は干渉することが可能な薬剤を意味するために用いる。特に、PirB/LILRBアンタゴニストはミエリン関連阻害活性と干渉し、それによって、神経突起伸長を増強、及び/又はニューロンの成長、修復及び/又は再生を促進する。好ましい実施態様において、PirB/LILRBアンタゴニストは、PirB/LILRBに結合することにより、PirB/LILRBのC1q/TNFファミリータンパク質への結合を阻害する。PirB/LILRBアンタゴニストは、例えば、PirB/LILRB抗体及びその抗原結合断片、PirB/LILRBの切断又は可溶性断片、PirB/LILRBとC1q又はPirB/LILRBとCTRPとの間の結合を隔絶することが可能なC1q又はCTRPs、PirB/LILRB関連阻害経路の小分子阻害剤を含む。PirB/LILRBアンタゴニストは、PirB/LILRB mRNAの発現を阻害又は減少することが可能な低分子干渉RNA(siRNA)分子を含む。
ここで用いられる用語「抗体」は、それらが所望の生物学的活性を示す限り、最も広い意味で用いられ、特に完全な抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの完全な抗体から形成される多重特異抗体(例えば二重特異性抗体)及び抗体断片を含む。
ここで用いられる用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、つまり集団を構成するそれぞれの抗体は、少量存在し得る自然発生的な変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、一つの抗原性部位に対している。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクロナール抗体試薬とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は抗原上の一つの決定基に対している。特異性に加えて、それらが他の抗体によって汚染されることなく合成され得る点で、モノクローナル抗体は有利である。修飾語句「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるような抗体の性質を示しており、特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈されない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)によって初めて記載されたハイブリードーマ法によって作られてもよく、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号を参照)によって作られてもよい。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離されてもよい。
本明細書のモノクロナール抗体としては、具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種から誘導されたか、特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同的であるが、この鎖(類)の残りの部分が、別の種から誘導されたか、別の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同的である「キメラ」抗体、並びに所望の生物学的活性を示すのであれば、このような抗体の断片を含む(米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))ここにおける対象のキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、類人猿、その他)及びヒト定常領域配列から誘導される可変ドメイン抗原結合配列を含む霊長類化された抗体を含む。
「抗体断片」は完全な抗体の一部を含み、好ましくはその抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディー;線状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体を含む。
「完全な」抗体は、抗原結合可変領域、軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を含むものである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えばヒト天然配列定常ドメイン)、又はそのアミノ酸配列変異体であってもよい。好ましくは、完全な抗体は一つ以上のエフェクター機能を有する。
非ヒト(例えば、齧歯類)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導される最小の配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域の残基がヒト以外の種(ドナー抗体)(例えば所望の特異性、アフィニティ及び能力を有しているマウス、ラット、ウサギ又はヒト以外の霊長類)の超可変領域の残基と交換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応するヒト以外の残基と交換される。さらにまた、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体において見いだされない残基を含んでもよい。これらの修飾は、更に抗体の能力を洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、実質的に少なくとも1つ、通常は2つの全ての可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)”、Fabc、Fv)を含み、超可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応するか、FRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、選択的に、少なくとも免疫グロブリン定常領域(Fe)の一部、通常はヒト免疫グロブリン定常領域の一部を含む。詳細は、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol.. 2:593-596 (1992)を参照。
【0019】
本願明細書において用いられる場合、用語「超可変領域」は、配列において超可変性の、及び/又は構造的に定義されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域を意味する。超可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」のアミノ酸残基(つまり、軽鎖可変ドメインの残基24−34、50−56及び89−97、及び重鎖可変ドメインの残基31−35、50−65及び95−102;Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)、及び/又は超可変ループの残基(つまり、軽鎖可変ドメインの残基26−32,50−52及び91−96、及び重鎖可変ドメインの残基26−32、53−55及び96−101; Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (198))を含む。いずれの場合においても、以下に更に詳細に検討されるように、可変ドメイン残基は、上記、Kabat et al.に従って番号付けされる。ここに定義されるように、「フレームワーク」又は「FR」残基は、超可変領域の残基以外の可変ドメイン残基である。
「親抗体」又は「野生型」抗体は、ここに開示されるような抗体変異体と比較して一つ以上のアミノ酸配列の変更を欠如しているアミノ酸配列を含む抗体である。したがって、親抗体は、一般に、ここに開示されるような抗体変異体に対応した超可変領域のアミノ酸配列とアミノ酸配列が異なる少なくとも一つの超可変領域を有する。親ポリペプチドは、天然配列(すなわち自然に発生する)抗体(自然に発生するアレル変異体を含む)、又は既存する自然に発生するアミノ酸配列の修飾(例えば挿入、欠失及び/又は他の変更)を有する抗体を含んでもよい。開示の全体にわたって、「野生型」、「WT」、「wt」及び「親」又は「親の」抗体は、交換可能に用いられる。
ここで用いられるように、「抗体変異体」又は「変異抗体」は、親抗体のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する抗体を意味する。好ましくは、抗体変異体は、天然では見いだされないアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインを含む。このような変異体は、親抗体と必然的に100%未満の配列同一性又は類似性を有する。好ましい実施態様において、抗体変異体は、親抗体の重鎖又は軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列と約75%から100%未満のアミノ酸配列同一性のアミノ酸配列を有し、より好ましくは約80%から100%未満、より好ましくは約85%から100%未満、より好ましくは約90%から100%未満、及び最も好ましくは約95%から100%未満の同一性又は類似性のアミノ酸配列を有する。抗体変異体は、一般に、その一つ以上の超可変領域内又は超可変領域に隣接して、一つ以上のアミノ酸の変更を含むものである。
「アミノ酸の変更」は、所定のアミノ酸配列のアミノ酸配列における変化を意味する。典型的な変更には、挿入、置換及び欠失が含まれる。「アミノ酸置換」は、所定のアミノ酸配列における既存のアミノ酸残基の、他の異なるアミノ酸残基との交換を意味する。
「交換」アミノ酸残基は、アミノ酸配列において他のアミノ酸残基に交換又は置換するアミノ酸残基を意味する。交換残基は、自然に発生する、又は自然に発生しないアミノ酸残基であってもよい。
「アミノ酸挿入」は、所定のアミノ酸配列への一つ以上のアミノ酸残基の導入を意味する。アミノ酸挿入は、ペプチド結合によって接続した二個以上アミノ酸残基を含むペプチドが所定のアミノ酸配列に導入される、「ペプチド挿入」を含んでもよい。アミノ酸挿入にペプチドの挿入が関与する場合には、挿入されたペプチドは、天然に存在しないアミノ酸配列を有するように、ランダムな突然変異生成によって作製されてもよい。「超可変領域に隣接する」アミノ酸変更は、挿入又は交換アミノ酸残基のうちの少なくとも1つが問題の超可変領域のN末端又はC末端アミノ酸残基とペプチド結合を形成するような、超可変領域のN末端及び/又はC末端への一つ以上のアミノ酸残基の導入又は置換を意味する。
【0020】
「自然に発生するアミノ酸残基」は、遺伝コードによってコード化されるものであって、一般に:アラニン(Ala);アルギニン(Arg);アスパラギン(Asn);アスパラギン酸(Asp);システイン(Cys);グルタミン(Gln);グルタミン酸(Glu);グリシン(Gly);ヒスチジン(His);イソロイシン(Ile):ロイシン(Leu);リジン(Lys);メチオニン(Met);フェニルアラニン(フェニルアラニン);プロリン(Pro);セリン(Ser);スレオニン(Thr);トリプトファン(Trp);チロシン(Tyr);及びバリン(Val)からなる群から選択される。
ここで用いられる「自然に発生しないアミノ酸残基」は、上記の自然に発生するアミノ酸残基以外のアミノ酸残基であり、共有結合してポリペプチド鎖の隣接したアミノ酸残基に結合しうる。自然に発生しないアミノ酸残基の例は、Ellman et al. Meth. Enzym. 202:301-336 (1991)に記載されているそれらのようなノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン及び他のアミノ酸残基類似体を含む。このような自然に発生しないアミノ酸残基を作製するために、Noren et al. Science 244:182 (1989)及びEllman et al.(上記)の手法を用いることができる。簡潔には、これらの手法は、サプレッサーtRNAの化学的な活性化を自然に発生しないアミノ酸残基に生じさせ、インビトロでのRNAの転写及び翻訳が続く。
【0021】
この開示の全体にわたって、Kabat, E. A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987) and (1991))の番号付けシステムが参照される。これらの解説において、Kabatは、それぞれのサブクラスについて抗体の多くのアミノ酸配列を記載し、そのサブクラスにおけるそれぞれの残基位置について最も共通して存在するアミノ酸を記載している。Kabatは、記載された配列のそれぞれのアミノ酸に残基番号を付与するための方法を使用し、この残基番号を付与する方法はその分野における標準となった。Kabat番号付け方式は、この記載において用いられる。本発明のために、Kabatの解説に含まれない候補抗体アミノ酸配列に残基番号を付与するために、以下の工程に従う。一般に、候補配列は、あらゆる免疫グロブリン配列又はKabatのあらゆる共通配列と整列配置される。アラインメントは、手又は一般に認められたコンピュータープログラムを使用したコンピューターによって行われてもよい;このようなプログラムの例は、アライン2プログラムである。アラインメントは、大部分のFab配列に共通するいくつかのアミノ酸残基を用いることで容易になり得る。例えば、軽鎖及び重鎖のそれぞれは、典型的に同じ残基番号を有する2つのシステインを有する;VLドメインにおいて、2つのシステインは通常は残基番号23及び88であり、VHドメインにおいては、2つのシステイン残基は通常は22及び92に番号付けられる。フレームワーク残基は、必ず出はないが一般的に、およそ同じ残基番号を有するが、CDRは大きさは異なる。例えば、整列配置されるカバットの配列のCDRより長い候補配列のCDRの場合、通常は、さらなる残基の挿入を示すために、接尾辞が残基番号に付加される(例えば図1Bの残基100abc参照)。例えば、残基34及び36についてカバット配列と整列配置するが残基35と整列配置させるための残基をこれらの間に持たない候補配列では、番号35は単に残基を割り当てない。
【0022】
本明細書中で用いる、「高い親和性」を有する抗体とは、ナノモル(nM)の範囲かそれより良好なKD又は解離定数を有する抗体である。「ナノモル範囲かそれより良好な」KDは、XnMで表してもよく、このXはおよそ10未満の数である。
「繊維状ファージ」なる用語は、その表面上に異種性のポリペプチドをディスプレイすることが可能なウイルス粒子を指し、f1、fd、Pf1およびM13が挙げられるが、これらに限定されるものではない。繊維状ファージは、テトラサイクリン(例えば「fdtet」)のような選択可能なマーカーを含んでもよい。様々な繊維状ファージ・ディスプレーシステムは当業者に周知である(Zacher et al. Gene 9: 127-140 (1980)、Smith et al. Science 228: 1315-1317 (1985);及びParmley and Smith Gene 73: 305-318 (1988))参照。
用語「パニング」用語は、標的に対して高親和性および特異性を有する、抗体などの化合物保持するファージの同定および単離におけるスクリーニング工程の複数のラウンドを指すために用いる。
用語「低分子干渉RNA(siRNA)」は、遺伝子発現を干渉する小さい二本鎖RNAを意味する。
siRNAは、二本鎖RNAが相同遺伝子を沈黙(サイレンシング)させる工程であるRNA干渉の中間生成物である。siRNAは典型的に、二本鎖を形成するおよそ15−25長のヌクレオチドの2つの一本鎖RNAからなり、一本鎖オーバーハングを含みうる。酵素複合体、例えばポリメラーゼによる二本鎖RNAのプロセシングにより、二本鎖RNAの切断が生じ、siRNAが生成される。siRNAのアンチセンス鎖はRNA干渉(RNAi)サイレンシング複合体に用いられ、mRNA切断が導かれ、これによってmRNA分解が促される。例えば哺乳動物細胞において特定の遺伝子をsiRNAを用いて沈黙させるために、塩基対領域を、無関係なmRNAに偶然に相補性を持たないように選択する。例えばFire et al., Nature 391:806-811 (1998)およびMcManus et al., Nat. Rev. Genet. 3(10): 737-47 (2002)にあるように、RNAiサイレンシング複合体は、当分野において同定されている。
「干渉RNA(RNAi)」なる用語は、特定のmRNAの触媒的分解をもたらす二本鎖RNAを指すために本明細書において用い、したがって特定の遺伝子の発現を阻害/低減するために用いられうる。
【0023】
「多型性」なる用語は、遺伝子ないしはその一部(例えばアレル変異体)の複数の形態を指すために本明細書において用いる。少なくとも2つの異なる形態があるものの遺伝子一部は遺伝子の「多型性領域」と呼ばれる。遺伝子の多型性領域のある遺伝子配列は「アレル」である。
多型性領域は、異なるアレルにおいて異なる単一のヌクレオチドであってもよいし、又は長くいくつかのヌクレオチドであってもよい。
本明細書中で用いる「疾患」なる用語は、通常は、PirB/LILRBのアンタゴニストの有効量によって治療されうる任意の疾患又は疾病を含む、本発明の化合物による治療により利益を得る任意の症状を意味する。本明細書において治療される疾患の非限定的例には、限定するものではないが、神経突起伸長の増強、ニューロンの成長、修復又は再生の促進から利益を得る疾患及び健康状態、例えば物理的に損傷を受けた神経および神経変性疾患などの神経学的疾患が含まれる。このような疾患は具体的には、糖尿病などの疾患状態又は物理的損傷に起因する末梢神経損傷;中枢神経系(脊髄索および脳)への物理的な損傷;脳卒中に関連した脳損傷;及び神経変性に関連する神経学的疾患、例えば、三叉神経痛、舌咽神経痛、ベルの麻痺、重症筋無力症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性筋萎縮、進行性延髄の遺伝性筋萎縮、ヘルニア状態、破裂性又は脱出性無脊椎ディスク症候群、頸部脊椎症、叢疾患、胸郭出口破壊症候群、鉛によるものなどの末梢性神経障害、ダプソン(dapsone)、チック、プロフィリア(prophyria)、ギラン-バレー症候群、アルツハイマー病、ハンチントン病又はパーキンソン病が含まれる。
【0024】
本明細書中で用いる用語「治療する」、「治療」及び「療法」は、治癒的な療法、予防的な療法および防止的な療法を意味する。連続的な治療又は投与は、治療を中断することなく一又は複数の日による、少なくとも1日を基準とした治療を意味する。
間欠的な治療ないしは投与、又は間欠的な様式の治療ないしは投与は、連続的でなく、むしろ実際上周期的である治療を指す。
本明細書中で用いる「神経変性を予防する」なる用語には、(1)新規に神経変性疾患を有すると診断された患者又は新たに神経変性疾患を発症するリスクにある患者の神経変性を阻害するないしは予防する能力、及び(2)神経変性疾患を既に患っている患者又は神経変性疾患の症状を有する患者の更なる神経変性を阻害する又は予防する能力が含まれる。
本明細書中で用いる「哺乳動物」なる用語は、ヒト、高次非ヒト霊長類、齧歯類、ウシ、ウマ、イヌ及びネコなどの愛玩動物及び家畜動物を含む、哺乳動物として分類される任意の哺乳動物を意味する。本発明の好適な実施態様では、哺乳動物はヒトである。
【0025】
一又は複数の更なる治療剤「と併用した」投与には、同時(並列)及びいずれかの順序での連続的な投与が含まれる。
「有効量」は、有益な又は所望の治療的(防止的なものを含む)結果を生じさせるために十分な量である。有効量は、一又は複数の投与で投与されてもよい。
本明細書中で用いる「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養物」なる表現は相互に交換可能に用いられ、かかる標記は子孫を含む。よって、「形質転換体」や「形質転換細胞」のような用語には、初代対象細胞と何世代移行したかを問わずそれから由来した培養物とを含む。全ての子孫が、意図的な突然変異あるいは意図せざる突然変異のため、正確に同一のDNA内容であるわけではないことも理解される。「子孫」なる用語は、最初に形質転換された細胞又は細胞株に続くすべての世代のいずれか及びすべての子孫を指す。最初に形質転換された細胞に対してスクリーニングされたものと同じ機能あるいは生物的活性を有する突然変異子孫も含まれる。区別しての標記を意図している場合は、文脈から明らかなはずである。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していてリーディングフェーズにあることを意味する。
しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
「小分子」とは、ここでは、約1000ダルトン未満、好ましくは約500ダルトン未満の分子量を持つと定義される。
【0026】
B.ニューロン(神経細胞)の再生の刺激因子を同定するためのスクリーニングアッセイ
本発明の一次アッセイは、少なくとも一部は、C1qがCNSニューロンの神経突起成長を阻害するという認識と、PirB/LILRBが相補的分子であるC1q又はCTRPsのレセプターであるという認識と、PirB/LILRBとC1q又はCTRPsとの関連に干渉するPirB/LILRBアンタゴニストが神経突起成長を亢進する、及び/又は神経細胞の成長、修復及び/又は再生を促すことができるという認識に基づく。簡単に言えば、このような薬剤は、本明細書において、神経再生の刺激因子と称される。
アンタゴニスト薬剤候補のためのスクリーニングアッセイは、PirB/LILRBを結合するか又は複合体化する化合物、又はC1q又はCTRPsないしは他のC1q/TNFファミリーメンバーとのPirB/LILRBの相互作用に干渉する化合物を同定するために設定されてもよい。本明細書中に示すスクリーニングアッセイには、それらを小分子薬剤候補を同定するために適する、化学的ライブラリのハイスループットスクリーニングに従うアッセイが含まれる。通常、結合アッセイおよび活性アッセイが提供される。
【0027】
アッセイは、種々の形式で実施でき、この分野で良く特徴付けられたタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ及び細胞ベースのアッセイを含む。
アンタゴニストのためのすべてのアッセイは、それらが候補薬をPirB/LILRBポリペプチドと、それら2成分が相互作用するのに十分な時間と条件で接触させる点において共通している。
結合アッセイにおいて、相互作用は結合であり、形成された複合体は単離されるか、又は反応混合物中で検出される。特別な実施態様では、PirB/LILRBポリペプチド又は薬剤候補のいずれかが、共有又は非共有結合により固相、例えばマイクロタイタープレートに固定化される。非共有結合は、一般的に、固体表面をPirB/LILRBポリペプチドの溶液でコーティングし乾燥させることにより達成される。あるいは、固定化すべきPirB/LILRBポリペプチドに特異的な固定化抗体、例えばモノクローナル抗体を、そのペプチドを固体表面に固着させるために用いることができる。アッセイは、検出可能な標識によってラベル化される非固定化成分を、固定化成分、例えば、固着成分を含むコーティング表面などに添加することにより実施される。反応が完了したとき、未反応成分を例えば洗浄により除去し、固体表面に固着した複合体を検出する。最初の非固定化成分が検出可能な標識を有している場合、表面に固定化された標識の検出は複合体形成が起こったことを示す。最初の非固定化成分が標識を持たない場合は、複合体形成は、例えば、固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体によって検出できる。
【0028】
候補化合物がPirB/LILRBと相互に作用するがPirB/LILRBに結合しないポリペプチドである場合、それぞれのポリペプチドとPirB/LILRBとの相互作用は、タンパク質−タンパク質相互作用を検出するための周知の方法によって検定されてもよい。このようなアッセイには、従来の手法、例えば、架橋結合、同時免疫沈降法、及び勾配ないしはクロマトカラムによる同時精製が含まれる。更に、Chevray and Nathans, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 5789-5793 (1991)によって開示されるように、タンパク質−タンパク質相互作用は、Fieldsと共同研究者によって記述される酵母に基づく遺伝システムを用いてモニターすることもできる(Fields and Song, Nature (London), 340:245-246 (1989);Chien et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:9578-9582 (1991))。酵母菌GAL4などの多くの転写活性化因子は、2つの物理的に別個のモジュラードメインからなり、一方はDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する。以前の文献に記載された酵母発現系(一般に「2−ハイブリッドシステム」と呼ばれる)は、この特性の長所を利用して、2つのハイブリッドタンパク質を用い、一方では標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合し、他方では、候補となる活性化タンパク質が活性化ドメインに融合している。GAL1−lacZリポーター遺伝子のGAL4活性化プロモーターの制御下での発現は、タンパク質-タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β-ガラクトシダーゼに対する色素生産性基質で検出される。2−ハイブリッド技術を用いた2つの特定のタンパク質間のタンパク質-タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKERTM)は、Clontechから購入できる。この系は、特定のタンパク質相互作用に含まれるタンパク質ドメインのマッピング、並びにこの相互作用にとって重要なアミノ酸残基の特定にも拡張することができる。
【0029】
PirB/LILRBと他の細胞内ないしは細胞外成分、特にC1q及びCTRPsとの相互作用を干渉する化合物は以下のように試験することができる。通常、2つの生成物の相互作用を可能にする条件及び時間の下で、PirB/LILRBおよび細胞内ないし細胞外成分を含む反応混合物を調製する。PirB/LILRB及びNogo又はMAGの相互作用を阻害する候補化合物の能力を試験するために、試験化合物の存在下及び非存在下にて反応を行った。さらに、第3の反応混合物にプラセボを加え、ポジティブコントロールとする。
本明細書において具体的に述べるスクリーニングアッセイは例示のみのためにであることを強調する。スクリーニングしたアンタゴニスト候補(例えば、ポリペプチド、ペプチド、非ペプチド小有機分子、核酸など)の種類に応じて選択されうる、当業者に周知な他のアッセイが多く存在し、本発明の目的に等しく適する。
【0030】
本明細書中のアッセイを用いて、限定するものではないが、化学ライブラリ、天然の生成物ライブラリ(例えば、微生物、動物、植物などの集積)、及びランダムペプチド、オリゴヌクレオチドないしは小有機分子を含む組み合わせライブラリなどの化合物のライブラリをスクリーニングしてもよい。特定の実施態様では、本明細書中のアッセイを用いて、限定するものではないが、ナイーブヒト抗体、組み換え抗体、合成抗体及び半合成抗体のライブラリをスクリーニングする。抗体ライブラリは、例えば、ウイルス粒子当たり平均1の単鎖抗体ないしは抗体断片をディスプレイする一価ライブラリ、及びウイルス粒子当たり平均2以上の抗体ないしは抗体断片をディスプレイする多価ライブラリを含むファージディスプレイライブラリであってもよい。しかしながら、本発明によってスクリーニングされる抗体ライブラリは、ファージディスプレイライブラリに限らない。他のディスプレイ技術には、例えば、リボソーム又はmRNAディスプレイ(Mattheakis et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9022-9026 (1994);Hanes and Pluckthun, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4937-4942 (1997))、微生物細胞ディスプレイ(例えば細菌ディスプレイ(Georgiou et al., Nature Biotech. 15:29-34 (1997))又は酵母菌ディスプレイ(Kieke et al., Protein Eng. 10: 1303-1310 (1997))、哺乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ、レトロウイルスディスプレイなどのウイルスディスプレイ(Urban et al., Nucleic Acids Res. 33: e35 (2005)、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ(Odegrip et al., Proc. Acad. Natl. Sci. USA 101:2806-2810 (2004);Reiersen et al., Nucleic Acids Res. 33: e10 (2005))、及びミクロビーズディスプレイ(Sepp et al., FEBS Lett. 532:455-458 (2002))が含まれる。
【0031】
本明細書中の一次結合/相互作用アッセイにおいて得られた結果は、ニューロン再生のインビトロおよび/またはインビボのアッセイにおいて確認されうる。あるいは、ニューロン再生のインビトロおよび/またはインビボのアッセイを、本明細書中のPirB/LILRBアンタゴニストを同定するために一次アッセイとして用いてもよい。
【0032】
神経突起成長のインビトロアッセイは当分野で周知であり、例えばJin and Strittmatter, J Neurosci 17:6256-6263 (1997);Fournier et al., Methods Enzymol. 325:473-482 (2000);Zheng et al., Neuron 38:213-224 (2003);Wang et al., Nature 417:941-944 (2002)、及びNeumann et al., Neuron 34:885-893 (2002)に記載されている。神経突起成長を測定し定量化するためのキットが市販されている。したがって、例えば、CHEMICONの神経突起成長アッセイキット(Catalog number NS200)は、神経突起形成及び反発作用に影響する化合物の定量的な試験のために細孔フィルター技術を用いる。このシステムについては、生物学的及び薬理学的な薬剤を同時にスクリーニングし、神経突起伸長及び反発作用に寄与する接着及び誘導レセプター機能を直接評価し、形質移入した細胞における遺伝子機能を分析することができる。細孔フィルターにより、タンパク質発現、シグナル伝達過程及び神経突起成長ないしは退縮過程を調節する薬剤標的の同定の詳細な分子的分析のための、神経突起と細胞体の生化学的な分離と精製が可能である。
【0033】
代表的なプロトコールでは、齧歯類の神経組織(小脳顆粒ニューロン、後根神経節ニューロンおよび皮質ニューロンを含む)から単離された一次ニューロンを、固定した総ミエリンないしはミエリン関連タンパク質(例えばNogo66、MAG及び/又はOMgp)にてコートした96ウェル組織培養ディッシュ上で培養する。一定期間、一般的に24〜48時間培養した後、ニューロンを、4%パラホルムアルデヒドにて固定し、ニューロンマーカー(抗クラスIII b-チューブリン、Covance)にて染色する。次いで、画像取込および分析を、ImageXpress自動化撮像システム(Molecular Devices)を使用して実行する。データは、ニューロン当たりの最大ないしは総神経突起長の変化について分析する。
インビボアッセイには、様々な神経変性疾患の動物モデル、例として、脊髄損傷モデル、視覚領皮質可塑性モデルの動物モデル、当分野で公知の他のモデルが含まれる。ゆえに、再生および可塑性は、片側の錐体路切断術後の可塑性のモデルおよび外傷性脳損傷のモデルにおいて調べられてもよい。他の神経変性のモデルには、実験的自己免疫性脳炎(EAE)などの多発性硬化症のマウスモデル、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデル、例えばSODI変異マウス、アルツハイマー病のトランスジェニック動物モデル、およびパーキンソン病の動物モデルが含まれる。
【0034】
C.ニューロン再生の刺激因子として作用する抗体の作製
本発明の結合および活性のアッセイによって同定される抗体は、組換えDNA技術の技術を含む公知の方法によって製造されうる。
(i)抗原調製
場合によって他の分子にコンジュゲートした可溶性抗原ないしはその断片は、抗体を生成するための免疫原として用いられうる。レセプターなどの膜貫通分子のために、その断片(例えばレセプターの細胞外ドメイン)が免疫原として用いられうる。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞を免疫源として用いてもよい。このような細胞は、天然の供与源(例えば癌細胞株)から得られてもよいし、膜貫通分子を発現するように組換え体技術によって形質転換されている細胞であってもよい。抗体を調製するために有用な他の抗原及びその形態は当分野の技術者に明らかであろう。
【0035】
(ii)ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、関連する抗原とアジュバントを複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより、動物に産生されることが好ましい。それは、免疫化されるべき種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターへ、二重官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介する抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する抱合)、グルタルアルデヒド、及び無水コハク酸、SOCl2、又はR及びR1が異なるアルキル基であるR1N=C=NRへ、関連する抗原をコンジュゲートさせるために有用である。
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物を、同じ抗原であるが異なるタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なる架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートにより追加免疫する。コンジュゲートはまた、タンパク融合として組換え細胞培養中で調製することができる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0036】
(iii)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作成することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスター又はマカクザルを上記のように免疫し、免疫化に用いられたタンパク質と特異的に結合する抗体を産生する、又は産生することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次いで、リンパ球をポリエチレングリコールのような適当な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT−欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
【0037】
好適な骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現を支援し、HAT培地などの培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫株化細胞は、マウス骨髄腫ライン、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、サンディエゴ、カリフォルニア、USAより入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及び、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックビル、メリーランド、USAより入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されるものである。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, 51-63頁、(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生について検定する。好ましくはハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
【0038】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性な抗体を産生するハイブリドーマ細胞が確定された後、そのクローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地は、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地を包含する。また、このハイブリドーマ細胞は、動物の腹水症腫瘍として、インビボで増殖させることができる。
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティクロマトグラフィーのような常套的なイムノグロブリン精製法によって、培地、腹水、又は血清から上手く分離される。モノクローナル抗体をコードするDNAは、常法を用いて(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に分離されて、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好適な供給源となる。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、この状況以外ではイムノグロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中に形質移入し、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を獲得することができる。抗体の組み換え産生を以下に詳細に記載する。
【0039】
更なる実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCafferty等, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリから分離することができる。Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marks等, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の分離を記述している。続く刊行物は、鎖シャフリングによる高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生成(Marks等, Bio/Technology, 10:779-783[1992])、並びに非常に大きなファージライブラリを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouse等, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266[1993])を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
また、DNAは、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメイン(CH及びCL)のコード配列を、相同的マウス配列に代えて置換することによって(米国特許第4816567号;Morrison等, Proc.Nat.Acad.Sci., USA, 81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることによって修飾することができる。
典型的には、前記の非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインと置き代わることができるか、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインが置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0040】
(iv)ヒト及びヒト化抗体
ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的にウィンター(Winter)及び共同研究者[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方のヒト可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のヒトフレームワーク(FR)として受け入れる(Sims等, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia等, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623(1993))。
【0041】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好適な方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
あるいは、現在では、免疫化することで、内因性免疫グロブリンの産生がなく、ヒト抗体の全レパートリーを産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合体欠失によって、結果として内因性抗体産生の完全な阻害が起こることが説明されてきた。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列の、このような生殖細胞系突然変異体マウスへの転移によって、結果として抗原投与時にヒト抗体の産生がおこる。Jakobovits等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993); Bruggeman等, Year in Immuno., 7:33 (1993);及びDuchosal等 Nature 355:258 (1992)を参照されたい。また、ヒト抗体はファージディスプレイライブラリからも得られる(Hoogenboom等, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991);Vaughan等 Nature Biotech 14:309 (1996))。抗体ファージディスプレイライブラリからのヒト抗体の生成は以下に更に記載する。
【0042】
(v)抗体断片
抗体断片を産生するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク分解性消化によって誘導された(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は、現在は組換え宿主細胞により直接産生することができる。例えば、抗体断片は、上で論じた抗体ファージライブラリから単離することができる。別法として、Fab’−SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合させてF(ab’)2断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。以下の実施例に記載のような他の実施態様では、F(ab’)2は、F(ab’)2分子のアセンブリを促すように、ロイシンジッパーGCN4を用いて形成される。他のアプローチ法では、F(ab’)2断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片を生成するのための他の方法は、当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択する抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。国際公開93/16185号を参照のこと。
【0043】
(vi)多重特異性抗体
多重特異性抗体は、通常異なる抗原に由来する少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する。このような分子は通常2つの異なるエピトープを結合するだけであるが(すなわち二重特異性抗体、BsAb)、本明細書中で用いられる場合には三重特異性抗体などの更なる特異性を有する抗体がこの表現に包含される。BsAbの例には、PirB/LILRBに対する一アームと、C1q又はCTRPに対する他のアームとを有するものが含まれる。BsABの更なる例には、PirB/LILRBに対する一アームとNgRに対する他のアームを有するものが含まれる。
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において既知である。完全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millstein等, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が国際公開第93/08829号及びTraunecker等, EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原-抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含むイムノグロブリン重鎖定常ドメインである。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時トランスフェクトする。これにより、組立に使用される3つのポリペプチド鎖の等しくない比率が抗体の最適な収率をもたらす態様において、3つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな(フレキシビリティ)が与えられる。しかし、少なくとも2つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率があまり影響がないときは、2又は3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0044】
この手法の好適な実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
国際公開第96/27011号に記載された他の手法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面は抗体の定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0045】
二重特異性抗体には、交差結合又は「ヘテロコンジュゲート」抗体が含まれる。例えば、ヘテロコンジュゲートの一抗体はアビジンにカップリングし、他方の抗体はビオチンにカップリングしていてもよい。例えば、このような抗体は、望ましくない細胞へ免疫系細胞を標的化するため(米国特許第4676980号)、そしてHIV感染の治療のため(国際公開91/00360、国際公開92/200373)に提唱されている。ヘテロコンジュゲート抗体は従来のいずれかの交差結合法を用いて作製されてもよい。好適な交差結合剤は当分野で周知であり、多くの交差結合技術と共に米国特許第4676980号に開示されている。
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab’)2断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤、亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に変換される。Fab’−TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再変換し、他のFab’−TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
【0046】
Fab’−SH断片は、大腸菌から直接回収することもできるし、化学的に結合して二重特異性抗体を形成させることもできる。Shalaby等,J.Exp.Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')2分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な技術もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生成されている。Kostelny等, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab’部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生成に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)を結合してなる。従って、一つの断片のVH及びVLドメインは他の断片の相補的VL及びVHドメインと強制的に対形成させられ、よって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等 J.Immunol. 147:60(1991)。
【0047】
(vii)エフェクター機能の加工
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、抗体の有効性を向上させることは望ましい。例えば、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成するようにしてもよい。そのようにして生成された同種二量体抗体は、向上したインターナリゼーション能力及び/又は増加した補体媒介細胞殺傷及び抗体−依存細胞性細胞障害性(ADCC)を有する可能性がある。Caron等, J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes, B. J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照。また、向上した抗腫瘍活性を持つ同種二量体抗体は、Wolff等, Cancer Research 53: 2560-2565 (1993)に記載されている異種二官能性架橋を用いて調製することができる。あるいは、抗体は、2つのFc領域を有するように加工して、それにより補体溶解及びADCC能力を向上させることもできる。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照。
【0048】
(viii)抗体−サルベージレセプター結合エピトープ融合
本発明のある実施態様では、例えば腫瘍浸透性を増大させるためにインタクト抗体よりも抗体断片を使用することが望ましい。この場合、その血清半減期を増大させるために抗体断片を改変することが望ましい。これは、例えば、抗体断片にサルベージレセプター結合エピトープを組み込むことにより(例えば、抗体断片中の適当な領域の突然変異により、あるいはついで抗体断片の何れかの末端又は中央に、例えばDNA又はペプチド合成により融合されるペプチドタグ内にエピトープを組み込むことにより)、達成しうる。
サルベージレセプター結合エピトープは、好ましくは、Fcドメインの一又は二のループ由来の一又は複数の任意のアミノ酸残基が抗体断片の類似位置に転移している領域を構成する。更により好ましくは、Fcドメインの一又は二のループ由来の3以上の残基が転移する。またより好ましくは、エピトープはFc領域の(例えばIgGの)CH2ドメインから得られ、抗体のCH1、CH3、又はVH領域、又はそのような領域の一より多くに転移する。あるいは、エピトープは、Fc領域のCH2ドメインから得られ、抗体断片のCL領域又はVL領域、又はその両方に転移する。
【0049】
(ix)抗体の他の共有的修飾
抗体の共有的修飾は本発明の範囲内にある。それらは、適当であれば、化学合成により、又は抗体の酵素的又は化学的切断によりなされうる。抗体の共有的修飾の他のタイプは、選択される側鎖又はNないしC末端の残基と反応できる有機誘導体化剤と抗体の標的とするアミノ酸領域を反応させることにより分子中に導入される。共有的修飾は米国特許第5534615号に記載されており、出典明記によって特別に本明細書中に援用される。抗体の共有結合的修飾の好適なタイプは、ポリペプチドを、種々の非タンパク質様ポリマーの一つ、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンへ、米国特許第4640835号;第4496689号;第4301144号;第4670417号;第4791192号又は第4179337号に記載された方法で結合させることを含む。
【0050】
(x)合成抗体ファージライブラリからの抗体の産生
ある好適な実施態様では、本発明は特有のファージディスプレイアプローチ法を使用して新規な抗体を産生し選択する方法を提供する。該アプローチ法は、単一フレームワーク鋳型に基づく合成抗体ファージライブラリの産生、可変ドメイン内の十分な多様性の設計、多様化した可変ドメインを有するポリペプチドのディスプレイ、抗原を標的とする高親和性を持つ候補抗体の選択、及び選択された抗体の単離を含む。
ファージディスプレイ法の詳細は例えば2003年12月11日公開の国際公開第03/102157号に見出すことができ、この開示内容の全体は出典明記によって特別に本明細書中に援用される。
【0051】
一態様では、本発明において使用される抗体ライブラリは抗体可変ドメインの少なくとも一のCDRにおいて溶媒接近可能な及び/又は高度に多様性の位置を変異させることによってつくることができる。CDRの幾らか又は全てをここに提供した方法を使用して変異させることができる。ある実施態様では、CDRH1、CDRH2及びCDRH3中の位置に変異を施して単一のライブラリを形成するか、又はCDRL3及びCDRH3中の位置に変異を施して単一のライブラリを形成するか、又はCDRL3及びCDRH1、CDRH2及びCDRH3中の位置に変異を施して単一のライブラリを形成することにより、多様な抗体ライブラリをつくることが好ましい。
例えばCDRH1、CDRH2及びCDRH3の溶媒接近可能な及び/又は高度に多様性の位置に変異を有する抗体可変ドメインのライブラリをつくることができる。CDRL1、CDRL2及びCDRL3に変異を有する他のライブラリをつくることができる。これらのライブラリは所望の親和性の結合体をつくるために互いに関連させて使用することもできる。例えば、標的抗原への結合についての重鎖ライブラリの一又は複数回の選択後に、軽鎖ライブラリを結合体の親和性を増加させるために更なる選択回数に対して重鎖結合体の集団中に置き換えることができる。
【0052】
好ましくは、ライブラリは重鎖配列の可変領域のCDRH3領域における変異アミノ酸での元のアミノ酸の置換によりつくられる。得られたライブラリは複数の抗体配列を含み得、ここで配列多様性は主として重鎖配列のCDRH3領域にある。
一態様では、ライブラリはヒト化抗体4D5配列、又はヒト化抗体4D5配列のフレームワークアミノ酸の配列の態様でつくり出す。好ましくは、ライブラリはDVKコドンセットによってコードされるアミノ酸で重鎖の少なくとも残基95−100aを置換することによりつくられ、ここでDVKコドンセットはこれらの位置の各一に対して変異アミノ酸セットをコードするために使用される。これらの置換をつくるのに有用なオリゴヌクレオチドセットの一例は配列(DVK)7を含む。ある実施態様では、ライブラリはDVKとNNKの双方のコドンセットによってコードされるアミノ酸で残基95−100aを置換することによりつくられる。これらの置換をつくるのに有用なオリゴヌクレオチドセットの例は配列(DVK)6(NNK)を含む。他の実施態様では、ライブラリはDVKとNNKの双方のコドンセットによってコードされるアミノ酸で少なくとも残基95−100aを置換することによりつくられる。これらの置換をつくるのに有用なオリゴヌクレオチドセットの例は配列(DVK)5(NNK)を含む。これらの置換をつくるのに有用なオリゴヌクレオチドセットの他の例は配列(NNK)6を含む。好適なオリゴヌクレオチド配列の他の例はここに記載された基準に従って当業者によって決定することができる。
【0053】
他の実施態様では、異なったCDRH3設計を使用して高親和性結合体を単離し様々なエピトープに対して結合体を単離する。このライブラリにおいて産生されたCDRH3の長さの範囲は11から13アミノ酸であるが、これとは異なった長さも産生することができる。H3多様性はNNK、DVK及びNVKコドンセットを使用し、並びにN及び/又はC末端での多様性をより制限して、拡張することができる。
多様性をCDRH1及びCDRH2においてまた生じさせることができる。CDR-H1及びH2多様性の設計は、過去の設計よりも天然の多様性により密に適合する多様性に焦点を当てる変更をした上で、上述の天然抗体レパートリーを模倣するターゲティング方策に従う。
【0054】
CDRH3での多様性に対しては、複数のライブラリを、異なった長さのH3と別個に構築し、ついで、標的抗原に対する結合体を選択するために組み合わせる。複数のライブラリをプールし、過去に記載され以下に記載されたような固体支持体選別及び溶液選別方法を使用して選別することができる。複数の選別方策を用いることができる。例えば、一つの変異は固体に結合した標的での選別を含み、融合ポリペプチド上に存在しうるタグ(例えば抗gDタグ)の選別が続く。別法として、ライブラリは固体表面に結合した標的で先ず選別することができ、溶出した結合体がついで標的抗原の濃度を減少させた溶液相結合を使用して選別される。異なった選別法を併用することにより高度に発現した配列のみの選択の最小化がもたらされ、多くの異なった高親和性クローンの選択をもたらす。
標的抗原に対する高親和性結合体はライブラリから単離することができる。H1/H2領域における多様性の制限は約104から105倍縮重を減少させ、より多くのH3多様性を許容することによりより多くの高親和性結合体をもたらす。CDRH3において異なったタイプの多様性を持つライブラリを利用することにより(例えばDVK又はNVTを利用して)標的抗原の異なったエピトープに結合しうる結合体の単離をもたらす。
【0055】
上述のプールされたライブラリから単離された結合体において、軽鎖において制限された多様性を提供することによって親和性を更に改善することができることが発見された。軽鎖多様性はこの実施態様では以下のように生成される。CDRL1においては:アミノ酸位置28がRDTによってコードされる;アミノ酸位置29がRKTによってコードされる;アミノ酸位置30がRVWによってコードされる;アミノ酸位置31がANWによってコードされる;アミノ酸位置32がTHTによってコードされる;場合によっては、アミノ酸位置33がCTGによってコードされる;CDRL2においては:アミノ酸位置50がKBGによってコードされる;アミノ酸位置53がAVCによってコードされる;場合によっては、アミノ酸位置55がGMAによってコードされる;CDRL3においては:アミノ酸位置91がTMT又はSRT又はその両方によってコードされる;アミノ酸位置92がDMCによってコードされる;アミノ酸位置93がRVTによってコードされる;アミノ酸位置94がNHTによってコードされる;アミノ酸位置96がTWT又はYKG又は両方によってコードされる。
【0056】
他の実施態様では、CDRH1、CDRH2及びCDRH3領域に多様性を持つライブラリ又はライブラリ群が作製される。この実施態様では、CDRH3における多様性は様々な長さのH3領域を用い、主にコドンセットXYZ及びNNK又はNNSを用いてつくり出される。ライブラリは個々のオリゴヌクレオチドを使用して形成しプールすることができ、又はオリゴヌクレオチドをプールしてライブラリのサブセットを形成することができる。この実施態様のライブラリは固体に結合した標的に対して選別することができる。多重選別から単離されたクローンをELISAアッセイを使用して特異性及び親和性についてスクリーニングすることができる。特異性については、クローンを所望の標的抗原並びに他の非標的抗原に対してスクリーニングすることができる。標的NRP1抗原に対する結合体をついで溶液結合競合ELISAアッセイ又はスポット競合アッセイでの親和性についてスクリーニングすることができる。高親和性結合体は上に記載したようにして調製されたXYZコドンセットを使用してライブラリから単離することができる。これらの結合体は抗体又は抗原結合断片として細胞培養物中に高収量で直ぐに産生されうる。
ある実施態様では、CDRH3領域の長さに大なる多様性を持つライブラリを作成することが望まれる場合がある。例えば、約7から19アミノ酸の範囲のCDRH3領域を持つライブラリを作成することが望ましい場合がある。
【0057】
これらの実施態様のライブラリから単離された高親和性結合体は細菌及び真核生物細胞培養で高収量で直ぐに産生される。ベクターはgDタグ、ウイルスコートタンパク質成分配列のような配列を直ぐに除去し、及び/又は定常領域配列に加えて完全長抗体又は抗原結合断片を高収量で生産するように設計することができる。
CDRH3での変異を持つライブラリを、例えばCDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1及び/又はCDRH2のような他のCDRの変異型を含むライブラリと組み合わせることができる。よって、例えば、一実施態様では、CDRH3ライブラリは予め定まったコドンセットを使用して位置28、29、30、31、及び/又は32に変異アミノ酸を持つヒト化4D5抗体配列の形態において作りだしたCDRL3ライブラリと組み合わせられる。他の実施態様では、CDRH3に対する変異のライブラリは変異CDRH1及び/又はCDRH2重鎖可変ドメインを含むライブラリと組み合わせることができる。一実施態様では、CDRH1ライブラリは位置28、30、31、32及び33に変異アミノ酸を持つヒト化抗体4D5配列を用いてつくり出される。CDRH2ライブラリは予め定まったコドンセットを使用して位置50、52、53、54、56及び58に変異アミノ酸を持つヒト化抗体4D5の配列を用いてつくり出すことができる。
【0058】
(xi)抗体変異体
ファージライブラリから生成される新規の抗体は、さらに修飾して、親抗体よりも改善した物理学的、化学的及び/又は生物学的特性を有する抗体変異体を生成することができる。使用するアッセイが生物学的活性アッセイである場合、抗体変異体は、選択したアッセイにおいて、該アッセイにおける親抗体の生物学的活性よりも少なくともおよそ10倍良好な、好ましくは少なくともおよそ20倍良好な、より好ましくは少なくともおよそ50倍良好な、時には少なくともおよそ100倍又は200倍良好な生物学的活性を有する。例えば、抗PirB/LILRB抗体変異体は、親抗体の結合親和性より、少なくともおよそ10倍強力な、好ましくは少なくともおよそ20倍強力な、より好ましくは少なくともおよそ50倍強力な、時には少なくともおよそ100倍又は200倍強力な、PirB/LILRBに対する結合親和性を有することが好ましい。
【0059】
抗体変異体を産生するためには、親抗体の高頻度可変領域の一又は複数中に一又は複数のアミノ酸修飾(例えば置換)が導入される。別法として、又は加えて、フレームワーク領域残基の一又は複数の修飾(例えば置換)を親抗体に導入することができ、これらにより第二の哺乳動物種由来の抗原に対する抗体変異体の結合親和性が改善される。修飾するためのフレームワーク領域残基の例には、抗原に非共有的に結合するもの(Amit等, Science 233:747-753 (1986));CDRと相互作用し/そのコンホメーションに影響を及ぼすもの(Chothia等 J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));及び/又はVL−VH界面に関与するもの(欧州特許第239400号B1)が含まれる。ある実施態様では、そのようなフレームワーク領域残基の一又は複数の修飾により第二の哺乳動物種由来の抗原に対する抗原の結合親和性が向上する。例えば、約1から約5のフレームワーク残基を本発明のこの実施態様において修飾することができる。しばしば、これは、高頻度可変領域が何ら改変されていない場合でさえ、前臨床試験に使用するのに適した抗体変異体を生じるのに十分でありうる。しかしながら、通常は、抗体は更なる高頻度可変領域の改変を含む。
【0060】
改変される高頻度可変領域残基は、特に親抗体の出発結合親和性が、無作為に生産された抗体変異体を直ぐにスクリーニングすることができるものである場合には、無作為に変化させることができる。
そのような抗体変異体を産生するための一つの有用な方法は、「アラニンスキャンニング突然変異誘発法」(Cunningham及びWells Science 244:1081-1085 (1989))と呼ばれる。ここで、高頻度可変領域残基の一又は複数が、第二の哺乳動物種由来の抗原とのアミノ酸の相互作用に影響を及ぼすためにアラニン又はポリアラニンによって置換される。ついで置換に対する機能的感受性を示す高頻度可変領域残基は、置換部位において又はそれに対して更なる又は他の置換を導入することにより洗練される。従って、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異の種類自体は予め決める必要はない。このようにして産生されるala変異体をここに記載したその生物活性についてスクリーニングされる。
通常は、「好ましい置換」の項目名で以下に示されているもののような保存的置換で始める。そのような置換が生物活性(例えば結合親和性)の変化を生じるならば、次の表において「例示的置換」と命名され、又はアミノ酸クラスを参照して以下に更に記載されるより実質的な変化が導入され、産物がスクリーニングされる。
【0061】
好適な置換:

【0062】
抗体の生物学的性質の更により実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋コンホメーション、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持して、それらの効果において有意に異なる置換基を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいてグループ分けすることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性の親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro;及び
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0063】
非保存的置換は、これらのクラスの一つのメンバーを他のクラスと交換することを必要とする。
他の実施態様では、修飾のために選択された部位がファージディスプレイを使用して亜親和性成熟される(上を参照)。
【0064】
アミノ酸配列変異体をコードしている核酸分子は当該分野で知られている様々な方法により調製される。これらの方法は、限定されるものではないが、親抗体の先に調製された変異体又は非変異体型のオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発を含む。変異体を作製するための好ましい方法は部位特異的突然変異誘発(例えばKunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488 (1985)を参照)である。
ある実施態様では、抗体変異体は単一の高頻度可変領域残基が置換されたものである。他の実施態様では、親抗体の高頻度可変領域残基の2又はそれ以上が置換され、例えば約2から約10の高頻度可変領域置換である。
【0065】
通常、改善された生物学的性質を有する抗体変異体は親抗体の重鎖又は軽鎖の何れかの可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性又は類似性を有するアミノ酸配列を有する。この配列に対する同一性又は類似性は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入し最大の配列同一性パーセントを達成した後に親抗体残基と同一(つまり同じ残基)又は類似(つまり共通の側鎖特性に基づく同じグループのアミノ酸残基、上を参照)である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセントとしてここで定義される。可変ドメインの外側の抗体配列中へのN末端、C末端、又は内部の伸展、欠失、又は挿入は何れも配列同一性又は類似性に影響を及ぼすものとはみなされない。
抗体変異体の産生後に、親抗体に対するその分子の生物活性が決定される。上に述べたように、これは抗体の結合親和性及び/又は他の生物活性を決定することを含みうる。本発明の好適な実施態様では、抗体変異体のパネルを調製し、抗原ないしその断片に対する結合親和性についてスクリーニングする。この最初のスクリーニングから選択される抗体変異体の一又は複数は場合によっては一又は複数の更なる生物活性アッセイにかけて、結合親和性が向上した抗体変異体が例えば前臨床研究に確かに有用であることが確認される。
【0066】
このように選択された抗体変異体は、しばしば抗体の意図される用途に応じて更なる修飾を受けることができる。そのような修飾は以下に詳細を記載したもののようなアミノ酸配列の更なる改変、異種ポリペプチドに対する融合及び/又は共有的修飾を含む。アミノ酸配列改変については例示的な修飾を上に詳細に説明した。例えば、抗体変異体の正しいコンホメーションを維持することに関与しない任意のシステイン残基はまた一般にはセリンで置換して、分子の酸化安定性を改善し異常な架橋を防止することができる。逆に、システイン結合を抗体に加えてその安定性を改善することができる(特に抗体がFv断片のような抗体断片である場合)。他のタイプのアミノ酸変異体は改変されたグリコシル化パターンを有する。これは抗体に見出される一又は複数の糖鎖部分を欠失させ、及び/又は抗体中に存在していない一又は複数のグリコシル化部位を加えることによって達成することができる。抗体のグリコシル化は典型的にはN結合又はO結合の何れかである。N結合とはアスパラギン残基の側鎖への糖鎖部分の付着を意味する。トリペプチド配列アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここで、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)がアスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的付着に対する認識配列である。よって、ポリペプチドにおいてこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると潜在的なグリコシル化部位をつくる。O結合グリコシル化はヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニン(但し5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた使用できる)への糖N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つの付着を意味する。抗体へのグリコシル化部位の付加は、それが上述のトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位に対する)の一又は複数を含むようにアミノ酸配列を改変することにより簡便に達成される。改変はまた元の抗体の配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加又は置換によって行うこともできる(O結合グリコシル化部位の場合)。
【0067】
(xii)抗体の組換え製造
抗体の組換え製造のために、それをコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター中に挿入される。モノクローナル抗体をコードするDNAは直ぐに単離され、従来の手法を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドを使用することによって)配列決定される。多くのベクターが公的に入手可能である。ベクター成分には、一般に、これらに制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列である(例えば米国特許第5534615号に記載されており、出典明記によって特別に本明細書中に援用される)。
【0068】
ここに記載のベクター中のDNAをクローニングあるいは発現させるために適切な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びに桿菌、例えば枯草菌及びバシリ・リチェフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開された DD266710に開示されたバシリ・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。一つの好適な大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC31446)であるが、他の大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31537)及び大腸菌W3110(ATCC27325)のような株も好適である。これらの例は限定するものではなく例示的なものである。
【0069】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、抗体をコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、多数の他の属、種及び菌株も、一般的に入手可能でここで使用できる、例えば、シゾサッカロマイセスポンベ;クルイベロマイセス宿主、例えばK.ラクティス、K.フラギリス(ATCC12424)、K.ブルガリカス(ATCC16045)、K.ウィッケラミイ(ATCC24178)、K.ワルチイ(ATCC56500)、K.ドロソフィラルム(ATCC36906)、K.サーモトレランス、及びK.マルキシアナス;ヤローウィア(EP402226);ピチアパストリス(EP183070);カンジダ;トリコデルマ・リーシア(EP244234);アカパンカビ;シュワニオマイセス、例えばシュワニオマイセスオクシデンタリス;及び糸状真菌、例えばパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム、及びコウジカビ属宿主、例えば偽巣性コウジ菌及びクロカビが使用できる。
【0070】
グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウィルス株及び変異体及び対応する許容可能な昆虫宿主細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエジプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドゥロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、及びボンビクス・モリが同定されている。トランスフェクションのための種々のウィルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL-1変異体とボンビクス・モリ NPVのBm-5株が公に利用でき、そのようなウィルスは本発明においてここに記載したウィルスとして使用でき、特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞の形質転換に使用できる。綿花、コーン、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコのような植物細胞培養を宿主として利用することができる。
【0071】
しかしながら、脊椎動物細胞におけるものが最も興味深く、培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞 (CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL2);イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞 (BRL3A, ATCC CRL1442);ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB8065);マウス乳房腫瘍細胞 (MMT060562, ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。
宿主細胞は、抗体生産のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適切に修飾された常套的栄養培地で培養される。
【0072】
本発明の抗体を産生するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(Sigma)、最小必須培地((MEM),(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)及びダルベッコの改良イーグル培地(DMEM,Sigma)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979)、Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980)、米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載された何れの培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地には何れもホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCINTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について過去に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0073】
組換え技術を用いる場合、抗体は細胞内、細胞膜周辺腔に生成され、又は培地内に直接分泌される。抗体が細胞内に生成された場合、第1の工程として、宿主細胞か溶解された細胞の何れにしても、粒子状の細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去される。抗体が培地に分泌された場合は、そのような発現系からの上清を、一般的には先ず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はPelliconの限外濾過装置を用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めて、タンパク質分解を阻害してもよく、また抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. immunol. Meth. 62: 1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 16571575 (1986))。アフィニティーリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂上でのSEPHAROSETMクロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿法も、回収される多価抗体に応じて利用可能である。
【0074】
D.ニューロン再生の刺激因子の使用
本発明のスクリーニングアッセイにおいて同定される分子は、神経細胞の生存を亢進するか又は成長を誘導するための薬剤としての使用を発見したと考えられる。したがって、神経系の変性疾患(「神経変性疾患」)、例えば、物理的な損傷(例えば熱傷、損傷)や糖尿病、腎臓機能不全のような疾患状態によって生じる末梢神経損傷、ないしは癌およびエイズを治療するために用いられる化学療法剤の毒作用によって生じる末梢神経損傷;中枢神経系(脊髄索および脳)への物理的な損傷;脳卒中と関係する脳損傷;及び神経変性に関連する神経学的疾患、例えば、三叉神経痛、舌咽神経痛、ベルの麻痺、重症筋無力症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性筋萎縮、進行性延髄の遺伝性筋萎縮、ヘルニア状態、破裂性又は脱出性無脊椎ディスク症候群、頸部脊椎症、叢疾患、胸郭出口破壊症候群、鉛によるものなどの末梢性神経障害、ダプソン(dapsone)、チック、prophyria(prophyria)、ギラン-バレー症候群、アルツハイマー病、ハンチントン病又はパーキンソン病の治療に有用である。
本明細書において同定される化合物は、インビトロで神経細胞を培養するための培養液の構成成分としても有用である。
【0075】
最後に、放射性ヨード、酵素、蛍光体、スピン標識などによって標識される場合、本明細書中のアッセイによって同定される化合物を含む調製物は、競合結合アッセイの標準物質として有用である。
本明細書中の化合物の治療用製剤は、所望の純度を有する同定された化合物(抗体など)を、任意の生理的に許容される担体、賦形剤又は安定剤(上掲のRemington's Pharmaceutical Sciences)と混合することによって、凍結乾燥されたケーキ又は水溶液の形で保存するために調製される。許容範囲内の担体、賦形剤又は安定剤は、使用する用量及び濃度においてレシピエントに非中毒性であり、これらには、バッファ、例えばリン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(およそ10未満の残基)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、アミノ酸、例として、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;単糖、二糖および他の炭水化物、例としてグルコース、マンノース又はデキストリン;EDTAなどのキレート剤;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;および/または非イオン性界面活性剤、例えばツイーン、プルロニック又はPEGが含まれる。
【0076】
インビボ投与のために使用される化合物は、無菌でなければならない。これは、凍結乾燥および還元の前又は後に、濾過滅菌メンブランによる濾過によって容易に達成される。
治療組成物は、無菌のアクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針によって突き刺し可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルに入れられてもよい。
【0077】
本発明のアッセイによって同定される化合物は、場合によって、NGF、NT−3及び/又はBDNFを含む神経栄養因子と組み合わされてもよいし、共に投与されてもよく、変性神経疾患のための他の従来の治療法と共に用いられうる。
投与経路は既知の方法、例えば静脈内、腹腔内、大脳内、筋肉内、眼球内、動脈内又は病巣内経路による注射又は注入、局所投与、又は後述する徐放系による。
脳内使用では、ボーラス注入が許容されるが、化合物はCNSの流体リザーバへの注入によって連続的に投与されてもよい。化合物は、脳の室に投与されるか、そうでなければCNS又は髄液内に導入されるのが好ましい。ポンプのような連続投与手段を用いた留置カテーテルによって投与されてもよいし、徐放性媒介物の移植、例えば脳内移植によって投与されてもよい。より詳しくは、化合物は、慢性的に植設されたカニューレにより注入されてもよいし、浸透圧性ミニポンプを活用して慢性的に注入されてもよい。小さい管を介してタンパク質を脳室に供給する皮下ポンプは有用である。非常に高性能のポンプが皮膚により補充されてもよく、それらの運搬速度は外科的介入なしで設置されうる。全体的に移植されたドラッグデリバリーシステムを介する皮下ポンプ装置又は連続的な脳室内注入を伴う好適な投与プロトコール又はデリバリーシステムの例は、ドーパミン、ドーパミンアゴニストおよびコリン作動性アゴニストのアルツハイマー患者及びパーキンソン病の動物モデルへの投与のために用いられるものである。これはHarbaugh, J. Neural Transm. Suppl., 24:271 (1987);及びDeYebenes, et al., Mov. Disord. 2:143 (1987)に記載されている。
【0078】
徐放性調製物の適切な例には、マイクロカプセル又はフィルム等の、成形品の形態である半透性ポリマーマトリックスが含まれる。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3773919号、欧州特許第58481号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー(Sidman等, Biopolymers 22:547 (1983))、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート(Langer, et al., 1981, J. Biomed. Mater. Res. 15: 167;Langer, 1982, Chem. Tech. 12:98)、エチレン酢酸ビニル(上掲のLanger等)又はポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133988号A)が含まれる。また、徐放性組成物には、当然知られている方法によって調製されうるリポソーマルに取り込まれた組成物が含まれる(Epstein, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 82: 3688 (1985);Hwang, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030 (1980);米国特許第4485045号および同第4544545号;及び欧州特許第102324号A)。通常、リポソームは、小さい(およそ200〜800オングストローム)単層タイプであり、その中の脂質内容物は最適な治療法のために調製された選択割合であるおよそ30mol%コレステロールより大きい。
【0079】
治療に使用される活性化合物の有効量は、例えば、治療の目的、投与の手段および患者の状態に依存するであろう。したがって、用量の力価を測定し、最適な治療効果を得るために必要とされるように投与経路を修飾することが治療者に必要であろう。代表的な1日の用量は、前述の因子に応じて、およそ1g/kgから最高100mg/kg以上まででありうる。典型的には、臨床医は、ニューロンの機能が修復、維持、場合によっては再構築される用量に達するまで、活性化合物を投与するであろう。この治療の進行は従来のアッセイによって容易にモニターされる。
本発明の更なる詳細は、以下の非限定的な実施例により例示される。
【実施例】
【0080】
実施例1
C1gは、栽培ニューロンの神経突起伸長を抑制する
この研究において、インビトロで試験される場合、C1qは様々な型のニューロンの神経突起伸長の阻害剤であることが見いだされた。
小脳顆粒ニューロン(CGN)は、P7CD1マウスから単離され、阻害アッセイのために固定された精製ヒトC1qタンパク質(US Biological)上で培養された。簡潔には、ポリ−D−リジンでプレコートされた96穴プレート(Biocoat, Becton Dickinson)は、精製されたC1q(300、600又は1000ng/3μlスポット)でスポットされた。スポットされたタンパク質は2時間付着させ、プレートは10μg/mlラミニン(Invitrogen)で2時間処理された。記載されているように、マウスP7小脳系細胞は調製され(Zheng et al., 2005)、2×10細胞/ウェルの密度で蒔かれた。培養は、22時間37℃でインキューベートされ、4%パラホルムアルデヒド/4%スクロースで固定され、抗チューブリン抗体(TuJ1, Covance)で染色された。像は、ImageXpressイメージングシステムで取り込まれた(Molecular Devices)。
図4に示すように、精製されたC1qは、用量依存的にP7小脳ニューロンの神経突起伸長を阻害する。
後根神経節(DRG)ニューロンは、6−7週間目のC57/B6マウスから単離され、阻害アッセイのために固定、精製されたヒトC1qタンパク質上で培養された(US Biological)。簡潔には、ポリ−D−リジンでプレコートされた96穴プレート(Biocoat, Becton Dickinson)は、精製されたC1q(500、1000又は2000ng/μlスポット)でスポットされた。スポットされたタンパク質は2時間付着させ、プレートは10μg/mlラミニン(Invitrogen)で4時間処理された。記載されているように、成体DRG細胞は調製され(Zheng et al., 2005)、−5 X 103細胞/ウェルの密度で蒔かれた。培養は、40時間37℃でインキューベートされ、4%パラホルムアルデヒド/4%スクロースで固定され、抗チューブリン抗体(TuJ1, Covance)で染色された。像は、ImageXpressイメージングシステムで取り込まれた(Molecular Devices)。
図5に示すように、精製されたC1qは、用量依存的にDRGニューロンの軸索伸長を強く阻害する。
【0081】
実施例2
C1q及び他のC1q/TNFスーパーファミリーメンバーは、PirB/LILRB2及びNgRに結合可能である
NgR、PirB及びLILRB2に対するC1q/TNFRスーパーファミリーメンバーの結合について試験するために、アルカリホスファターゼ(AP)融合タンパクを用いた結合試験が行われた。ベイトとして、異なるファミリーメンバーのC1q球状ドメインのC末端に融合した(AP)発現構築物が作製された。これらの構築物は、ベイトタンパク質を含む調整培地(DMEM/2% FBS)を製造するために、293T細胞にトランスフェクションした。COS7細胞は、NgR、PirB、LILRB2又はp75をコード化するcDNAでトランスフェクションされた。トランスフェクションの48時間後、細胞は、AP融合タンパクを含む293細胞−調整培地でRTで90分間インキューベートされた。細胞は広範囲に洗浄され、固定され、内因性のAP活性は熱失活によって中和された。細胞は、結合した融合タンパクを検出するために、発色性基質(Western Blue, Promega)で反応させた。
図2に要約されるように、陽性シグナルはNgR−、PirB−及びLILRB2−発現細胞に対してC1q/TNFRスーパーファミリーの多数のメンバーにおいて見いだされた。
C1qがそれ自体でNgR及びPirBに結合するかどうかを試験するために、結合アッセイは精製されたヒトC1q(MP Biomedicals)を用いて行われた。COS7細胞は、全長NgR又はPirBをコード化するcDNAでトランスフェクションされた。トランスフェクションの48時間後、細胞は精製ヒトC1qと共にRTで90分間インキューベートされた。細胞は、ハンクのBuffered Saline Solution(HBSS)で4回洗浄され、2%パラホルムアルデヒドで5分間固定され、HBSSで四回洗浄され、HBSS中で10%の熱失活されたヤギ血清(HIGS)15分間ブロッキングされた。細胞はFITC(1:500、MP Biomedicals)にコンジュゲートされた抗ヒトC1q抗体で1時間インキューベートされ、PBSで洗浄され、カバースリップされた。免疫蛍光は、Zeiss Axioskop蛍光顕微鏡を使用して検出された。
図3に示すように、コントロール細胞と比較すると、C1qはNgR−及びPirB発現細胞の両方に結合した。LILRB2への結合は、同様に確認された。
【0082】
実施例3
PirB/LILRBアンタゴニストは、培養されたニューロンにおいてC1qによる神経突起伸長の阻害を効果的に救出する
この実験は、PirB 細胞外ドメイン構築物がC1qの阻害活性を干渉し、それにより培養されたニューロンの神経突起伸長を促進することができるかどうかを試験する。
PirB細胞外ドメイン(ECD)タンパク質を作製するために、PirBのアミノ酸# 1−638は、pRK発現ベクターの8−Hisタグ又はヒトFcのいずれかの上流にクローニングされた。これらの発現構築物はCHO細胞に一過性にトランスフェクションされ、分泌されたタンパク質はアフィニティークロマトグラフィによって調整培地から精製された。
【0083】
PirE ECDによる小脳顆粒ニューロンにおけるC1q阻害の救出
小脳顆粒ニューロン(CGN)は、P7 CD1マウスから単離され、阻害アッセイのために固定された精製ヒトC1qタンパク質(US Biological)上で培養された。簡潔には、ポリ−D−リジンでプレコートされた96穴プレート(Biocoat, Becton Dickinson)は、精製されたC1q(600ng/3μlスポット)でスポットされた。C1qは、単独でコーティングされるか、又は過剰なPirBFc(1000ng/3ulスポット)又はPirBHis(1000ng/3ulスポット)のいずれかと混合された。これにより、PirB ECDの5−6倍モルの過剰を含むスポットが生じた。スポットされたタンパク質は2時間付着させ、プレートは10μg/mlラミニン(Invitrogen)で2時間処理された。記載されているように、マウスP7小脳系細胞は調製され(Zheng et al., 2005)、2×10細胞/ウェルの密度で蒔かれた。培養は、22時間37℃でインキューベートされ、4%パラホルムアルデヒド/4%スクロースで固定され、抗チューブリン抗体(TuJ1, Covance)で染色された。像は、ImageXpressイメージングシステムで取り込まれた(Molecular Devices)。
図6に示すように、C1qは、P7小脳ニューロンの軸索伸長を強く阻害する。過剰なPirBFc又はPirBHisの存在は、この阻害を部分的に減少させた。他のコントロールタンパク質(Fc又はRobo4Fc)のC1qとの混入は、C1qによる阻害において減少を示さなかった。
【0084】
PirB ECDによるDRGニューロンにおけるC1q阻害の救出
後根神経節(DRG)ニューロンは、6−7週齢のC57/B6マウスから単離され、阻害アッセイのために固定された精製ヒトC1qタンパク質(US Biological)上で培養された。簡潔には、ポリ−D−リジンでプレコートされた96穴プレート(Biocoat, Becton Dickinson)は、精製されたC1q(1000ng/10μlスポット)でスポットされた。C1qは、単独でコーティングされるか、又は過剰なPirBFc(3500ng/10ulスポット)又はPirBHis(3500ng/10ulスポット)のいずれかと混合された。これにより、PirB ECDの10倍モルの過剰を含むスポットが生じた。スポットされたタンパク質は2時間付着させ、プレートは10μg/mlラミニン(Invitrogen)で4時間処理された。記載されているように、成体DRG細胞は調製され(Zheng et al., 2005)、5 X 103 細胞/ウェルの密度で蒔かれた。培養は、40時間37℃でインキューベートされ、4%パラホルムアルデヒド/4%スクロースで固定され、抗チューブリン抗体(TuJ1, Covance)で染色された。像は、ImageXpressイメージングシステムで取り込まれた(Molecular Devices)。
図7に示すように、C1qは、成体DRGニューロンの軸索成長を強く阻害する。過剰なPirBFc又はPirBHisの存在は、この阻害を部分的に減少させた。他のコントロールタンパク質(Fc又はRobo4Fc)のC1qとの混入は、C1qによる阻害において減少を示さなかった。
【0085】
実施例4
PirB及びNgRの免疫共沈降
この実験は、インビトロにおいて宿主細胞で供発現した場合のPirB及びNgRの関連性及び潜在的相互作用を探究する。
COS7細胞は、コントロールベクター、全長PirB又は全長PirB及び全長NgRの混合物で一過性にトランスフェクションされた。トランスフェクションの48時間後、細胞はCell Lysis Buffer(Cell Signaling Technology)で溶解され、可溶化物は抗PirA/B(6Cl、Pharmingen)で免疫沈降された。試料は、SDS−PAGEによって分離され、ニトロセルロースへ転写され、抗NgR(Alpha Diagnostics International)で探索された。
図8に示すように、NgRはPirBで強く共沈降された(左パネル)。右パネルは、抗NgRで免疫プロットされた全ての細胞可溶化物からの総タンパクを示す。複数のバンド(矢印)は、異なった範囲へのグリコシル化によってプロセシングされたNgRを表している。
【0086】
実施例5
PirBアンタゴニストは、神経突起伸長のC1QTNF5−誘導性阻害をブロックする
神経突起伸長アッセイ
ポリ−D−リジン(Biocoat, BD)でプレコートした96穴プレートは、C1QTNF5一部組換えタンパク質(Novus Bio、300ng/スポット)で2時間コーティングされ、ラミニン(F−12中に10μg/m)で2時間(CGN培養)又は4時間(DRG培養)処理された。マウスP7小脳系ニューロンは前述したように培養され(B. Zheng et al., Proc Natl Acad Sci U S A 102, 1205 (2005))、1ウェルあたり−2×10の細胞が蒔かれた。マウスP10DRGニューロンは前述したように培養され(Zheng et al.、上記)、1ウェルあたり−5X103の細胞が蒔かれた。培養は、5%CO2、37℃で22時間行われ、4%パラホルムアルデヒド/10%スクロースで固定され、抗γIII−チューブリン抗体(TuJ1, Covance)で染色された。それぞれの実験について、全ての条件が6つの複製ウェルで行われ、それから神経突起最大長が測定され、平均は6つのウェルの間で決定された。それぞれの実験は、類似した結果について少なくとも3回行われた。
p値は、スチューデントt検定を使用して決定された。
【0087】
PirB機能−ブロッキング抗体
PirBに対する抗体は、PirB細胞外ドメインに対する合成ファージ抗体ライブラリーをパンニングすることによって作製された(W.C. Liang et al., J. Mol. Biol. 366, 815 (2007))。抗体クローン(10g/m)は、インビトロでPirB発現COS7細胞へのAP−Nogo66(50nM)の結合をブロックする能力を試験された。クローンYW259.2(a.k.a aPB1)は、AP−Nogo66−PirB結合を最も干渉し、PirBに対して5nMの解離定数を有した。抗体YW259.2重鎖のヌクレオチド配列は、図14(配列番号:5)に示される。抗体YW259.2重鎖のアミノ酸配列は、図15(配列番号:6)に示される。図16は、抗体YW259.2軽鎖のアミノ酸配列(配列番号:7)を示す。
【0088】
結果
図9に示すように、上記した神経突起伸長アッセイで、C1QTNF5が小脳顆粒ニューロン(CGN)の神経突起伸長を阻害し、この阻害はヒト抗体Fc領域(配列番号:8)へ融合されたマウスPirB外部ドメイン配列からなる構築物によって逆になったことが見いだされた。
図10に示すように、他の実験で、C1QTNF5は小脳顆粒ニューロン(CGN)の神経突起伸長を阻害し、この阻害はPirB機能ブロッキング抗体YW259.2により減少された。
図11はC1QTNF5が後根神経節(DRG)ニューロンの神経突起伸長を阻害し、この阻害はPirB機能ブロッキング抗体YW259.2により減少された。
開示の全体にわたる全ての引用文献は、その全体がここに明白に援用したものとする。本発明は、特定の実施態様とみなされるものによって記載されているが、本発明がこのような実施態様に限定されないことはよく理解されることろである。反対に、本発明は、添付の請求項の範囲内に含まれる様々な改良及び均等物を含むことを目的とされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
候補薬剤をPirB/LILRB及びC1q/TNFファミリーメンバー又はその断片を含む複合体と接触させること、及び前記候補薬剤のPirB/LILRBと前記C1q/TNFファミリーメンバー又はその断片との相互作用を阻害する能力を検出することを含む、PirB/LILRBアンタゴニストを同定する方法であって、相互作用が阻害された場合、前記候補薬剤がアンタゴニストとして同定される方法。
【請求項2】
相互作用が結合である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
相互作用が細胞シグナリングである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
細胞シグナリングが軸索伸長又は神経再生の阻害を引き起こす、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
C1q/TNFファミリーメンバーがC1q、CTRPs及びその断片からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
PirB/LILRBがLILRB1、LILRB2、LILRB3及びLILRB5からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
PirB/LILRBがLILRB2(配列番号:2)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
C1q/TNFファミリーメンバーがC1qである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
候補薬剤が抗体、ポリペプチド、ペプチド、核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、小有機分子、多糖類、ポリヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
候補薬剤が抗体である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抗体がPirB/LILRBに特異的に結合する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
抗体がLILRBに特異的に結合する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
抗体がキメラ抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
抗体がヒト化抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
抗体がヒト抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
抗体が抗原結合断片である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
抗体断片がFv、Fab、Fab’及びF(ab’)断片からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
候補薬剤が低分子干渉RNA(siRNA)である、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
PirB/LILRB及びC1q/TNFファミリーメンバー、又はその断片の少なくとも1つが固定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
細胞ベースアッセイである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
神経細胞を候補薬剤の存在下及び非存在下でC1q又はその断片と共に培養すること、及び神経突起の長さの変化を測定することを含むC1qアンタゴニストを同定する方法であって、前記候補薬剤の存在下で神経突起の長さがより長い場合、前記候補薬剤がC1qアンタゴニストとして同定される、方法。
【請求項23】
神経細胞が一次ニューロンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
神経細胞が胚性幹(ES)細胞又は細胞株に由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
神経細胞が神経芽細胞腫に由来する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
神経細胞が小脳顆粒ニューロン、後根神経節ニューロン及び皮質ニューロンからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
神経突起伸長を増強する、及び/又は神経の成長、修復及び/又は再生を促進することが同定されたアンタゴニストを使用するステップをさらに含む、請求項1ないし26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
神経突起伸長、神経の成長、修復又は再生の促進の増強から利益を得る疾患又は健康状態の対象に同定されたアンタゴニストを投与するステップをさらに含む、請求項1ないし26の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
疾患又は健康状態が神経疾患である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
神経疾患が物理的に損傷を受けた神経によって特徴付けられる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
神経疾患が物理的負傷、糖尿病によって生じる末梢神経損傷;中枢神経系への物理的損傷;脳卒中と関連している脳損傷、三叉神経痛、舌咽神経痛、ベル麻痺、重症筋無力症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性筋萎縮症、進行性の延髄の遺伝する筋肉萎縮症、脱出性、破裂性及び脱出した無脊椎動物ディスク症候群、頸椎症、叢疾患、胸郭出口滅失症候群、末梢神経疾患、ポルフィリン症、ギラン・バレー症候群、アルツハイマー病、ハンチントン病及びパーキンソン病からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
請求項1ないし29の何れか一項に記載の方法により同定された薬剤。
【請求項33】
抗体、ポリペプチド、ペプチド、核酸、小有機分子、多糖類、ポリヌクレオチドからなる群から選択される、請求項32に記載の薬剤。
【請求項34】
抗体である、請求項32に記載の薬剤。
【請求項35】
低分子干渉RNA(siRNA)である、請求項32に記載の薬剤。
【請求項36】
請求項32に記載の薬剤を含む、神経再生のための組成物。
【請求項37】
請求項32に記載の薬剤及び神経再生のための説明書を含む、キット。
【請求項38】
CNSのニューロンを請求項1ないし21により同定されたPirB/LILRBアンタゴニストと接触させることを含む、前記ニューロンにおける軸索伸長の阻害を減少させる方法。
【請求項39】
CNSのニューロンを請求項1ないし21により同定されたPirB/LILRBアンタゴニストと接触させることを含む、前記ニューロンにおける軸索伸長を促進する方法。
【請求項40】
対象に請求項1ないし21により同定されたPirB/LILRBアンタゴニストを投与することを含む、対象における神経損傷を治療するための方法。
【請求項41】
CNSのニューロンを請求項1ないし21により同定されたPirB/LILRBアンタゴニストと接触させることを含む、前記ニューロンの生存率を維持するための方法。
【請求項42】
CNSのニューロンを請求項22ないし26により同定されたC1qアンタゴニストと接触させることを含む、前記ニューロンにおける軸索伸長の阻害を減少させる方法。
【請求項43】
CNSのニューロンを請求項22ないし26により同定されたC1qアンタゴニストと接触させることを含む、前記ニューロンにおける軸索伸長を促進する方法。
【請求項44】
対象にを請求項22ないし26により同定されたC1qアンタゴニストを投与することを含む、対象における神経損傷を治療するための方法。
【請求項45】
CNSのニューロンを請求項22ないし26により同定されたC1qアンタゴニストと接触させることを含む、前記ニューロンの生存率を維持するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【公表番号】特表2011−507495(P2011−507495A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538094(P2010−538094)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/086075
【国際公開番号】WO2009/076359
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】