説明

神経刺激装置およびその制御方法

【課題】侵襲および煩わしさを低減することができる神経刺激装置を提供する。
【解決手段】神経刺激装置1は、複数の単位パルスからなる神経刺激信号を発生する刺激信号発生部12と、一対の電極を有する電極部20と、一対の電極の少なくとも一方を含む二つの電極から複数の取得タイミングで生体の電気的情報を取得し、電気的情報にもとづいて心拍数を算出する心拍数計測部11と、電極部と、刺激信号発生部および心拍数計測部とを接続するリード部30と、刺激信号発生部および心拍数計測部の動作を制御する制御部13とを備え、制御部は、取得タイミング間に、刺激信号発生部により単位パルスが発生され、かつ単位パルスの発生時と、単位パルス発生後初めての取得タイミングとの間隔が、単位パルスにより生じる生体の電位変化が消失するのに充分な所定値以上となるように、取得タイミングと単位パルスの発生タイミングとを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経刺激装置、より詳しくは、迷走神経を刺激して治療を行う神経刺激装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、迷走神経に接続された電極を介して迷走神経に電気的な刺激を与えることにより、心拍数の上昇や交感神経の興奮を抑制して不整脈を治療する神経刺激装置が知られている。
特許文献1には、このような神経刺激装置が記載されている。この神経刺激装置では、電気的刺激が伝達される電極リードをできるだけ生体内の刺激対象に近接させるため、生体に埋め込んで留置している。
【0003】
特許文献1に記載の神経刺激装置では、心拍計測手段により心拍数を計測し、心拍数が所定の閾値を超えた場合に迷走神経を刺激する。心拍検出手段としては、心臓内に設置される一般的な電極を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4563785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の神経刺激装置では、心拍検出手段が心内に留置されるので、患者に与える侵襲が小さいとは言えないという問題がある。
これに対して、体表面に心拍検出手段を設置することも考えられるが、侵襲は小さくなるものの、設置する電極の数が多くなった等の場合に煩わしさが生じる等の問題がある。
【0006】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであって、侵襲および煩わしさを低減することができる神経刺激装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、神経を刺激して治療を行う神経刺激装置であって、複数の単位パルスからなる神経刺激信号を発生する刺激信号発生部と、前記神経に前記神経刺激信号を印加する一対の電極を有する電極部と、前記一対の電極の少なくとも一方を含む二つの電極から複数の取得タイミングで生体の電気的情報を取得し、前記電気的情報にもとづいて心拍数を算出する心拍数計測部と、前記電極部と、前記刺激信号発生部および前記心拍数計測部とを接続するリード部と、前記刺激信号発生部および前記心拍数計測部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記取得タイミング間に、前記刺激信号発生部により前記単位パルスが発生され、かつ前記単位パルスの発生時と、前記単位パルス発生後初めての前記取得タイミングとの間隔が、前記単位パルスにより生じる前記生体の電位変化が消失するのに充分な所定値以上となるように、前記取得タイミングと前記単位パルスの発生タイミングとを設定することを特徴とする。
【0008】
前記制御部は、前記単位パルスの発生時と、前記単位パルス発生後初めての前記取得タイミングとの間隔が、前記単位パルスの発生時と、前記単位パルス発生直前の前記取得タイミングとの間隔よりも長くなるように前記取得タイミングと前記発生タイミングとを設定してもよい。
【0009】
本発明の神経刺激装置は、前記リード部と、前記前記刺激信号発生部および前記心拍数計測部との間に設けられ、前記リード部と、前記前記刺激信号発生部および前記心拍数計測部とを選択的かつ切替可能に接続する切替部をさらに備えてもよい。
【0010】
本発明の第二の態様は、複数の取得タイミングで生体の電気的情報を取得し、前記電気的情報にもとづいて心拍数を算出する心拍数計測部と、複数の単位パルスからなる神経刺激信号を発生する刺激信号発生部とを有する神経刺激装置の制御方法であって、前記単位パルスのパルス幅を、前記単位パルスの直前および直後の前記取得タイミング間の間隔よりも短く設定し、前記単位パルスの発生時と、前記単位パルス発生後初めての前記取得タイミングとの間隔が、前記単位パルスにより生じる前記生体の電位変化が消失するのに充分な所定値以上となるように、前記取得タイミングと前記単位パルスの発生タイミングとを設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の神経刺激装置およびその制御方法によれば、侵襲および煩わしさを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一実施形態に係る神経刺激装置を示す模式図である。
【図2】神経刺激信号と心電波形の取得タイミングとの関係を示すタイミングチャートである。
【図3】図2の一部を拡大して示す図である。
【図4】図3の一部を拡大して示す図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る神経刺激装置を示す模式図である。
【図6】同神経刺激装置が心電波形を取得している状態を示す模式図である。
【図7】神経刺激信号と心電波形の取得タイミングとの関係を示すタイミングチャートである。
【図8】図7の一部を拡大して示す図である。
【図9】本発明の変形例に係る神経刺激装置を示す模式図である。
【図10】本発明の変形例に係る神経刺激装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第一実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
図1は、本実施形態の神経刺激装置1を示す模式図である。神経刺激システム1は、迷走神経を刺激して頻脈等の不整脈等の治療を行うものであり、神経刺激信号を発生する刺激発生装置10と、刺激発生装置10に接続されて生体に留置される電極部20と、刺激発生装置10と電極部20とを接続するリード部30とを備えている。
【0014】
本実施形態における刺激発生装置10は、非植込み型の装置であり、心拍数計測部11と、刺激信号発生部12と、心拍数計測部11および刺激信号発生部12に接続された制御部13と、制御部13に接続されたインターフェース部14とを備えている。
【0015】
心拍数計測部11は、電極部20で取得された電気的情報を所定のタイミングで取得し、当該電気的情報に基づいて心拍数を計測する。刺激信号発生部12は、所定のパルス幅および電圧値の神経刺激信号を制御部13に指令された所定のタイミングで発生する。発生した神経刺激信号は、リード部30を通って電極部20に送られ、迷走神経Vnに印加される。
【0016】
制御部13は、CPU等の演算手段およびメモリ等の記憶手段を有し、記憶手段に記憶されたプログラム等に従って、心拍数計測部11が電気的情報を取得するタイミング(取得タイミング)と、刺激信号発生部12が神経刺激信号を発生するタイミングを所定の態様で設定し、心拍数計測部11および刺激信号発生部12に指令して制御する。この制御態様の詳細については後述する。
【0017】
インターフェース部14は、液晶画面(タッチパネルを含む。)やボタン等の公知の構成を有し、心拍数計測部11の計測した心拍数を表示するとともに、刺激発生装置10に対する使用者の操作入力を受け付けて制御部13に送る。
【0018】
電極部20は、プラス極とマイナス極との対をなす第一電極21および第二電極22を有する。電極部20は、迷走神経Vnに接触するように患者の体内に留置される。第一電極21および第二電極22には、刺激信号発生部12で発生された神経刺激信号が印加されるとともに、第一電極21と第二電極22との間の電位差が、心電波形(電気的情報)として心拍数計測部11に取得される。心拍数計測部11は、当該心電波形をA/D変換し、R−R間隔を算出することで心拍数を計測する。すなわち、電極部20は、患者の電気的情報を取得する機能と、神経刺激信号を印加する機能との2種類の機能を兼ね備えている。
電極部20の一対の電極の上述の2つの機能を好適に発揮させるためには、第一電極21と第二電極22との距離を5ミリメートル(mm)以上10mm以下に設定するのが好ましい。距離が5mm未満となると、一対の電極間の電位差が小さくなって、電気的情報として不充分となり、距離が10mmを超えると、神経刺激信号の印加に鑑みて好ましくない。
【0019】
リード部30は、内部に導線31を備えた公知の構成を有し、電極部20と,刺激発生装置10内の心拍数計測部11および刺激信号発生部12とを導線31により電気的に接続する。リード部30は、コネクタ15により刺激発生装置10に固定されている。
【0020】
図1に示すように、心拍数計測部11および刺激信号発生部12は、電極部20に対して並列に接続されている。心拍数計測部11に現れる電圧は数ミリボルト(mV)程度であり、刺激信号発生部では20ボルト(V)程度の大きさの信号を発生可能であるため、心拍数計測部11は図示しない公知の入力保護回路を備えている。また、入力信号に含まれるノイズ成分を除去するための公知のフィルター回路も備えている。
【0021】
上記のように構成された本実施形態の神経刺激装置1の使用時の動作について説明する。
患者が自覚症状を感じたり、神経刺激による治療が必要であると医師が判断したりしたときに、インターフェース部14に神経刺激を開始する操作が入力されると、制御部13において神経刺激実行フラグが1となり、神経刺激が実行される。制御部13は、刺激信号発生部12を制御して所定の態様で神経刺激信号を発生させるとともに、心拍数計測部11を制御して所定の態様で電極部20から心電波形を取得させる。その後、心拍数計測部11は取得した心電波形に基づいてR−R間隔を算出し、さらに当該R−R間隔から概算心拍数を算出して、逐次インターフェース部14に表示する。
【0022】
図2は、神経刺激信号と心電波形の取得タイミングとの関係を示すタイミングチャートである。図2に示すように、迷走神経Vnの刺激は、所定の長さ(本実施形態では1分)の時間を単位サイクルとし、当該単位サイクルを繰り返して行われる。神経刺激信号は複数の単位パルスPからなり、単位サイクルの一部(本実施形態では10秒(sec))において、設定された電圧、パルス幅、および周波数にもとづいて刺激信号発生部12で発生される。
その間、心拍数計測部11は、所定の周波数(本実施形態では250ヘルツ(Hz))で心電波形が取得される。図2には、心電波形の取得タイミングをTmで示している。
なお、実際の単位パルスPおよび取得タイミングTmは多数であり、正確に記載することが困難であるため、図2においては、単位パルスPおよび取得タイミングTmの数を実際の数よりも少なく示している。
【0023】
図3は、図2のうち、単位パルスP3個分の範囲を拡大して示したものであり、図4は、図3のうち、1つの単位パルスPとのその前後の取得タイミングTmをさらに拡大して示したものである。制御部13は、刺激信号発生部12にあらかじめ設定された周波数をベースとしつつ、単位パルスPとその前後の取得タイミングTmとの位置関係が固定されるように、単位パルス間の間隔を取得タイミング間の間隔の整数倍に設定する。
【0024】
本実施形態の場合、神経刺激信号の設定周波数が20Hz(単位パルス間の間隔50ミリ秒(ms))であり、取得タイミングTmの周波数が250Hz(取得タイミング間の間隔4ms)であるため、単位パルス間の間隔は取得タイミング間の間隔の整数倍ではない。したがって、それぞれを設定どおりの周波数で実行すると、単位パルスPと取得タイミングTmとの位置関係が一定に定まらず、個々の単位パルスで異なってしまう。このようになると、詳細は後述するが、算出される心拍数の精度が低下する恐れがある。
【0025】
そこで、制御部13は、単位パルス間の間隔と取得タイミング間の間隔との最小公倍数を算出し、当該最小公倍数の時間の中で、単位パルス間の間隔が取得タイミング間の間隔の整数倍となり、かつできるだけ単位パルスが均等に配置されるように単位パルスの発生タイミングを設定し、刺激信号発生部12に指令する。
本実施形態では、単位パルス間の間隔と取得タイミング間の間隔との最小公倍数は100msであるため、この100msを、単位パルスの標準間隔50msに近くかつ取得タイミング間の間隔の整数倍である52msと48msに分割し、100msのカウントの起点となる単位パルスP1の52ms後に次の単位パルスP2を発生させ、さらにその48ms後に次の単位パルスP3を発生させる。その後は、このサイクルを繰り返すように、単位パルス間の間隔を52msと48msとに交互に切り替えて単位パルスを発生させるように制御部13が刺激信号発生部12を制御する。
【0026】
52msは取得タイミング13個分の時間に相当し、48msは取得タイミング12個分の時間に相当するため、単位パルスP1、P2、P3のいずれにおいても、単位パルスPとその前後の取得タイミングTm1、Tm2との位置関係は図4に示すように同一であり、神経刺激中に変化することはない。また、単位パルス間の間隔が52msと48msとに交互に切り替えられるため、神経刺激中の任意の100msの間には少なくとも2回の単位パルスPが必ず存在することになる。したがって、単位パルス間の間隔は完全に均一ではないものの、その平均値は50msであり、概ね20Hzの周波数で単位パルスが発生される。
【0027】
図4に示すように、単位パルスPのパルス幅は取得タイミング間の間隔よりも短く、取得タイミングTm1、Tm2と重複しないように、取得タイミングTm1、Tm2間の所定の位置、すなわち所定のタイミングで発生される。単位パルスPとその直前の取得タイミングTm1との間隔t1は、単位パルスPとその直後の取得タイミングTm2との間隔t2よりも短く設定されている。これは、以下の理由による。
生体に単位パルスPが印加されると、心電波形等の生体の電気的情報は、その影響を受けて値が変化する。このため、単位パルスPの影響が残った状態で心拍数計測部11が心電波形を取得してしまうと、正しい心拍数計測が行えなくなる恐れがある。
図4には、単位パルスPにより生じる生体の電位変化pvをイメージとして示している。これは、単位パルスPにより生体組織が分極し、その後電位が開放されることにより生じるものであり、心電波形に対してはノイズとなる。図4に示すように、電位変化pvは、単位パルスPの印加後、若干のタイムラグをおいて発生し、その後一定時間で消失する。そこで、単位パルスのPの印加に伴う電位変化pvが完全に消失した後に、直後の取得タイミングTm2が配置されるように、間隔t1およびt2が設定されている。
なお、単位パルスPのパルス幅は、100マイクロ秒(μs)から1ms程度が好ましく、この範囲内で使用者により調節可能としてもよい。パルス幅を1msより大きくすると、取得タイミングの周波数によっては間隔t2を好適に設定しにくくなる。
【0028】
間隔t2の好適な長さは、単位パルスPの電圧値やパルス幅w1等により変化するが、多くの場合、2ms以上確保されるのが好ましい。一方、間隔t1については、単位パルスPの印加は取得タイミングTm1で取得される電気的情報に影響しないため、下限値は特になく、可能な限り短くされてよい。一例として本実施形態では、単位パルスPの電圧値およびパルス幅w1をそれぞれ5V、1msに設定し、間隔t1およびt2を、それぞれ0.4msおよび2.6msに設定している。
本実施形態において、これら間隔等の数値設定は、制御部13内に記録されて、設定されているが、これに代えて別途記憶部を設け、記憶部から設定を呼び出すようにしてもよい。
【0029】
患者または医師は、インターフェース部14に表示される心拍数を見ながら治療効果を確認し、治療を終了してもよいと判断したら、所定の停止操作を行う。これにより、制御部13において神経刺激実行フラグが0(ゼロ)となり、神経刺激装置1による治療が終了する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の神経刺激装置1によれば、刺激発生装置10が心拍数計測部11を備え、電極部20の一対の電極部21、22が心拍数計測部11に接続されているため、電極部20のみで神経刺激と心拍数計測のための心電波形取得の両方を行うことができる。したがって、心内や体表面に心電波形取得のための電極を取り付ける必要がなく、患者の侵襲やわずらわしさを低減して不整脈治療を行うことができる。
【0031】
また、制御部13が神経刺激信号の単位パルスPとその前後の取得タイミングTmとの位置関係が固定されるように単位パルス間の間隔を調節するため、単位パルスと取得タイミングとの位置関係を常に好適な状態に保持することができる。
【0032】
さらに、単位パルスPの直後の取得タイミングTm2との間隔t2は、電位変化pvが完全に消失するのに充分な長さに設定されているため、取得タイミングTm2で取得される心電波形が電位変化pvの影響を受けることはない。したがって、神経刺激信号の印加中も、電極部20で取得される電気的情報に基づいて、心拍数を正確に計測することができる。
【0033】
本実施形態においては、制御部が、取得タイミングを不変として単位パルスの発生タイミングを調節することによって取得タイミングと単位パルスとの位置関係の固定および間隔t1およびt2の調節を行う例を説明したが、これに代えて、単位パルスの発生タイミングを不変とし、取得タイミングを調節して同様の制御を行ってもよい。ただし、取得タイミングの数は単位パルスに比して著しく多いため、単位パルスの発生タイミングを調節する方が演算を簡易にすることができ、制御部に対する負荷も小さくなるというメリットがある。
さらに、間隔t2が充分確保されれば、心電波形は必ずしも所定の周波数で取得される必要はなく、例えば散発的に行われてもよい。
【0034】
次に、本発明の第二実施形態について、図5から図8を参照して説明する。本実施形態の神経刺激装置101と第一実施形態の神経刺激装置1との異なるところは、刺激発生装置の内部構造である。なお、以降の説明において、既に説明したものと共通する構成等については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0035】
図5は、神経刺激装置101を示す模式図である。その構成は、概ね神経刺激装置1と同様であるが、刺激発生装置10Aの内部に、入力保護回路に代えて切替部16が設けられている点で異なっている。切替部16としては、リレーや半導体スイッチ等の素子を用いることができ、心拍数計測部11および刺激信号発生部12は、切替部16によって選択的にリード部30と接続される。切替部16は制御部13に接続されており、制御部13によりリード部30と接続される部位が切り替えられる。このような構造により、神経刺激信号を印加するときは、図5に示すようにリード部30と刺激信号発生部12とが選択的に接続され、心電波形を取得するときは、図6に示すように、リード部30と心拍数計測部11とが選択的に接続される。
【0036】
図7および図8は、神経刺激装置101における神経刺激信号と心電波形の取得タイミングとの関係を示すタイミングチャートであり、概ね図3および図4に対応している。神経刺激装置101における単位パルスPおよび取得タイミングTmの制御態様は、単位パルスP1とP2との間隔が48msに設定され、単位パルスP2とP3との間隔が52msに設定されている点を除いて第一実施形態と同一である。
また、図8に示すように、切替部16の接続は、上記のタイミング制御に対応させるように、制御部13で切り替えられる。
【0037】
本実施形態の神経刺激装置101においても、第一実施形態同様、電極部のみで神経刺激信号の印加と心拍数計測のための心電波形取得の両方を行うことができ、患者の侵襲やわずらわしさを低減して不整脈治療を行うことができる。
また、入力保護回路に代えて切替部16を備えているため、回路構成を簡素にすることができると友に、より確実に心拍数計測部11を保護することができる。
【0038】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【0039】
例えば、図9に示す変形例のように、体表面に設置する第三電極41をさらに設け、電極部20の一対の電極の一方、例えば第一電極21との間で心電波形を取得する構成としてもよい。この場合、体表面に一つの電極が設置されるが、従来のように、心電波形取得のために複数の電極を体表面に設置する場合よりも患者の煩わしさは低減される。また、この変形例では、第一電極21と第三電極41とが心臓Htを挟むように第三電極41を設置すると、より鮮明な心電波形を取得することができ、算出される心拍数の精度を向上させることができる。
【0040】
図10は、第三電極42をリード部30に沿わせて配置した変形例である。この場合、電極部周辺の構成が若干複雑になるが、実質的には上述の各実施形態同様、電極部20を体内に留置するだけで心拍数の計測および神経刺激信号の印加の両方を行うことができる。また、神経刺激信号の印加に対する影響を考慮することなく、第一電極21と第三電極42との距離を充分に長く設定することができるので、第一電極21と第三電極42との電位差を充分に確保することができ、上述の各実施形態よりも鮮明な心電波形を取得しやすい。
【0041】
なお、図10の変形例では、第三電極42をリード部30に沿わせずに体内に留置しても、概ね同様の効果が得られる。
また、図9、図10に示した変形例においては、心拍数計測部11および刺激信号発生部12に共用される第一電極21を、切替部16と同様の切替手段により心拍数計測部11または刺激信号発生部12に選択的かつ切替可能に接続してもよい。
【0042】
さらに、単位パルスの周波数や、心電波形の取得タイミングの周波数は各実施形態の例に限定されないことはもちろんである。
また、インターフェース部14に単位パルスの周波数や心電波形の取得タイミングの周波数を入力することによりこれらの周波数を患者や医師等の使用者が設定可能としてもよい。ここで、入力された値に基づき、制御部13が好適な間隔t1およびt2を算出し、心拍数計測部および刺激信号発生部に設定してもよい。さらに、単位パルスのパルス幅が長すぎたり、取得タイミングの周波数が大きすぎたりする等により、間隔t2が好適に設定できない等の場合に刺激発生装置10がアラームを発し、周波数の再入力を促すように構成してもよい。
さらには、単位パルスの周波数、パルス幅、心電波形の取得タイミングのいずれかのパラメータを使用者が入力すると、間隔t2が好適化されるように制御部が演算を行い、残りのパラメータを自動設定するように構成してもよい。
【0043】
また、間隔t2は、単位パルスによる電位変化が完全に消失した後に取得タイミングTm2が配置される程度に長ければ、必ずしも間隔t1より長くなくてもよい。ただし、取得タイミングの周波数が大きいほど心拍数の算出精度が向上する。間隔t1を間隔t2よりも短くすることで、取得タイミングの周波数を大きくすることが可能になるというメリットがある。
【0044】
また、心拍数計測部が心拍数を算出する演算方法は、上記の方法に限られず、公知の各種手法が適用されてよいし、取得タイミングおよび単位パルス発生タイミングの設定においても、上述の最小公倍数を用いた演算方法以外の演算が用いられてもよい。
【0045】
また、上述の各実施形態においては非植込み型の刺激発生装置を用いていたが、これに限るものではなく、植え込み型の刺激発生装置が用いられてもよい。この場合は、インターフェース部を備えた別の装置を用意し、無線等により制御部とインターフェース部間の通信を行うこととしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1、101 神経刺激装置
11 心拍数計測部
12 刺激信号発生部
13 制御部
16 切替部
20 電極部
30 リード部
P、P1、P2、P3 単位パルス
Tm、Tm1、Tm2 取得タイミング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経を刺激して治療を行う神経刺激装置であって、
複数の単位パルスからなる神経刺激信号を発生する刺激信号発生部と、
前記神経に前記神経刺激信号を印加する一対の電極を有する電極部と、
前記一対の電極の少なくとも一方を含む二つの電極から複数の取得タイミングで生体の電気的情報を取得し、前記電気的情報にもとづいて心拍数を算出する心拍数計測部と、
前記電極部と、前記刺激信号発生部および前記心拍数計測部とを接続するリード部と、
前記刺激信号発生部および前記心拍数計測部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記取得タイミング間に、前記刺激信号発生部により前記単位パルスが発生され、
かつ前記単位パルスの発生時と、前記単位パルス発生後初めての前記取得タイミングとの間隔が、前記単位パルスにより生じる前記生体の電位変化が消失するのに充分な所定値以上となるように、
前記取得タイミングと前記単位パルスの発生タイミングとを設定することを特徴とする神経刺激装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記単位パルスの発生時と、前記単位パルス発生後初めての前記取得タイミングとの間隔が、前記単位パルスの発生時と、前記単位パルス発生直前の前記取得タイミングとの間隔よりも長くなるように前記取得タイミングと前記発生タイミングとを設定することを特徴とする請求項1に記載の神経刺激装置。
【請求項3】
前記リード部と、前記前記刺激信号発生部および前記心拍数計測部との間に設けられ、前記リード部と、前記前記刺激信号発生部および前記心拍数計測部とを選択的かつ切替可能に接続する切替部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の神経刺激装置。
【請求項4】
複数の取得タイミングで生体の電気的情報を取得し、前記電気的情報にもとづいて心拍数を算出する心拍数計測部と、複数の単位パルスからなる神経刺激信号を発生する刺激信号発生部とを有する神経刺激装置の制御方法であって、
前記単位パルスのパルス幅を、前記単位パルスの直前および直後の前記取得タイミング間の間隔よりも短く設定し、
前記単位パルスの発生時と、前記単位パルス発生後初めての前記取得タイミングとの間隔が、前記単位パルスにより生じる前記生体の電位変化が消失するのに充分な所定値以上となるように、前記取得タイミングと前記単位パルスの発生タイミングとを設定することを特徴とする神経刺激装置の制御方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−111357(P2013−111357A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261874(P2011−261874)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】