説明

神経原線維標識

【課題】神経原線維変性を有する対象におけるタウオパシーに伴う神経原線維変性のBraak病期を決定する方法の提供。
【解決手段】(i)対象に、凝集対螺旋フィラメント(PHF)タウタンパク質を標識可能なリガンドを導入するステップ、(ii)対象の脳の内側頭葉中の細胞外凝集PHFタウに結合したリガンドの存在および/または量を測定するステップ、(iii)(ii)で行った測定の結果を、対象における神経原線維変性の程度と相関させるステップを含む、方法。該方法は、アルツハイマー病などのタウオパシーの、死亡前診断および病期分類に使用することができる。好ましいリガンドとして、スルホン化ベンゾチアゾール様化合物およびジアミノフェノチアジンなどがあげられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、神経原線維のもつれの標識および検出に関係する物質、方法およびモデルに関する。更に、神経病理学的病期分類に適するリガンドの同定および開発、並びにアルツハイマー病(AD)などの疾患の診断、予後または治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
神経病理学的病期分類およびAD
Braak (Braak, H et al. (1991), Acta. Neuropathol. 82, 239-259)により提唱された神経病理学的病期分類は、ADの診断に用いる、比較的純粋なアルツハイマー型の神経原線維変性の進行の、最良の利用可能な定義を与える(Wischik et al. (2000), "Neurobiology of Alzheimer's Disease", Eds. Dawbarn et al., The Molecular and Cellular Neurobiology Series, Bios Scientific Publishers, Oxford)。この病期分類を、脳の領域について模式的に図2Bに示す。この病期分類は、神経原線維のもつれ(NFT)分布の規則的な領域的階層に基づいている。リスト中の後期の症例に比べ、階層のより早期に現れる脳の領域は、より多くのもつれを有するとともに重症度の低い症例において冒されている。
【0003】
AD、臨床的痴呆と神経病理学的病期分類の関係
Braak病期の効果的な死亡前評価を提供することは、ADの評価および治療において有用である。その鑑別には、レヴィー小体痴呆、パーキンソン病、様々な形態の前頭−側頭および皮質―基質変性、進行性核上麻痺および一連の希少な神経学的症候群を含む。
【0004】
Braakにより提唱された元々のモデルは、本質的には、事実上定性的であり、臨床的痴呆および症状の発現の閾値に関するいかなる意味あいにも結びついていなかった。
【0005】
DSM−IV基準による臨床的痴呆の出現については、これは、統計的には、Braak病期3と4の間の移行期に対応する(図2c)。痴呆の定義のためのDSM−IV基準(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th Edition, American Psychiatric Association, American Psychiatric Press, Washington DC (1994))は、MMSE(Mini Mental State Examination)の約18のカットオフポイントと同等であり、65歳を超える人口の約5%の痴呆罹患率に相当する(65歳以上は、総人口の約17%を占める)。
【0006】
Gertz et al. ( (1996) Eur. Arch. Psychiatry Clin. Neurosci. 246, 132-6))は、一般診療から検死までを追跡して症例を研究し、それをCAMDEXを用いて臨床レベルで厳密に特徴付けした(Roth et al, 1988, "The Cambridge Examination for Mental Disorders of the Elderly (CAMDEX) "Cambridge University Press)。Braakの基準により病期分類する検死を行ったが、検死でいかなる程度であれ血管病理が認められたすべての症例を除外した後、移行時点で症例の約3分の1において依然不明確であった。すなわち、ADと臨床診断された症例の約3分の1は、実際に早期Braak病期(病期1〜3)にあり、血管病変を有し、同時にLewy体病変を有する。したがって、最良の診療研究環境においてさえ、高度の不明確さが存在する。ADのルーチンの臨床診断をするときに、実際に存在する優勢な神経病理学的基質は、更に不明確である。
【0007】
最近、ある分子(FDDNP、2−(1−{6−[(2−[18F]フルオロエチル)(メチル)アミノ]−2−ナフチル}エチリデン)マロノニトリル)が、臨床的および神経放射学的にアルツハイマー病と診断された症例において、注射後、PETイメージングにおいて、内側頭葉脳領域(海馬、内側嗅領皮質および扁桃)における相対的保持時間(RRT; relative retention time)が増大することが明らかにされた(Shoghi-Jadid et al., Am. J. Geriatr. Psychiatr. 2002, 10:24-35)。
【0008】
NFTおよびアミロイド斑への結合が検討されているが、NFTへの結合は、明らかにされていない。ただし、化合物は、in vitroで合成βアミロイド原線維に高い親和性で結合する。
【0009】
症例を、MMSEスコアによる対応する疾患重症度について、血管病理を除いた一連の神経病理学的症例とマッチさせた場合、Shoghi-Jadid et al.により報告されたRRT値は、βアミロイド斑の数とは相関するが、以下に示すように、神経原線維のもつれの病理の測定値とは相関しないことが明らかにされた。
【0010】
Spearmanの順位相関係数:
MTL AP 全体AP MTL NFT 全体NFT
RRT 0.665** 0.654** 0.244 0.189
p <0.01 <0.01 >0.1 >0.1
【0011】
Pearson相関係数:
MTL AP 全体AP MTL NFT 全体NFT
RRT 0.602* 0.596* 0.266 0.275
p <0.05 <0.05 >0.3 >0.3
【0012】
ここで、パラメータを以下のように定義する。
MTL AP 内側頭葉アミロイド斑
全体AP 脳の12領域における平均アミロイド斑負荷
MTL NFT 内側頭葉神経原線維のもつれ
全体NFT 脳の12領域における平均NFT負荷
【0013】
しかし、βアミロイド沈着は、正常な加齢とアルツハイマー病との差別化に乏しいことが知られており(本明細書、図2dを参照)、βアミロイド病変は、神経病理学的な病期分類の信頼のおける根拠を与えない(Braak and Braak, 1991)。したがって、FDDNP−RRTは、アルツハイマー病のin vivo神経病理学的病期診断のための方法を与えない。
【0014】
より特異的な神経心理学的指標(例えば、分割注意課題(split attention tasks)、検体への遅延マッチング(delayed matching to sample)など)への具体的言及を伴う、臨床的方法の更なる改善は、臨床診断の正確さを向上させるかもしれないが、基本的な問題は、生存中に根底にある神経病理、具体的にはアルツハイマー型の神経原変性の程度を直接測定する方法を開発することである。
【0015】
神経原線維変性の進行およびタウ
上記のように、ADのタウに基づく病理は、表現型の主要な特徴である。それは、ニューロン破壊の程度に強く相関する(Wischik et al. (2000) loc cit中にて概観)。
【0016】
細胞レベルでは、タウからのNFTの形成は、以下のように進行すると考えられている。形成および蓄積の過程では、まず、対螺旋フィラメント(PHFs:paired helical filaments)が、おそらくPHFの集合の前および集合過程において切断された初期タウオリゴマーから、細胞質内でフィラメントとして集合する(参考文献26および27)。その後、従来の細胞内NFTを形成し続ける。この状態では、PHFは、切断されたタウのコアと、完全長タウを含有するファジーな外殻からなる(Wischik et al. (2000) loc. cit.)。集合プロセスは、対数的であり、正常な機能的タウの細胞内プールを消費しながら、新しいタウ合成を誘導して不足を補う(参考文献29)。最終的に、ニューロンの機能的障害が進行して細胞死にまでいたり、細胞外NFTを残す。細胞死は、細胞外NFTの数に強く相関する(Bondareff, W. et al. (1993) Arc. Gen. Psychiatry 50: 350-6)。外側ニューロン膜が損傷され、NFTが細胞外空間に出されるので、ニューロンのファジーな外殻が漸進的に喪失するとともにN末端タウの対応する免疫反応性が喪失するが、PHFコアを伴うタウ免疫反応性は保持される(図3;参考文献30)。
【0017】
凝集のプロセスにおいて、タウタンパク質は、半反復相シフト(half-repeat phase-shift)(参考文献32、33)を伴う反復ドメインにおいて立体構造を変化させる。これにより、ADに特徴的な神経原線維のもつれを構成する対螺旋フィラメント(PHF)のコアに見出されるものと同一の、タンパク分解的に安定なフラグメントが生じる。他のタンパク質凝集系と同様に、そのプロセスは、立体構造におけるα−へリックスからβ鎖への変化を含む可能性が高い(Wischik et al. (2000) loc. cit. 中にて概観)。
【0018】
したがって、一般的には、タウの凝集は、細胞内オリゴマー、細胞内フィラメント(図3の第1段階)、細胞外フィラメント(図3の第2および第3段階)の3段階であると考えることができる。
【0019】
しかし、これまでに、細胞レベルで起こり、おそらく脳内の異なる領域で異なる速度および確率で起こるこれらの段階と、比較的純粋な神経原線維変性の進行の最良の利用可能な定義である、先に検討したBraak and Braakの確定された階層システムによる病変の進行との間には、明確な相関性は確立されていない。
【0020】
AD評価のための浸襲的方法
腰椎穿刺CSF測定により、ADと対照、およびADと他の神経学的障害を鑑別することができるが、腰椎穿刺は、核医学に基づくアプローチに比べ、より侵襲的であり、高いリスクを伴う(参考文献17〜21)。EEGによる神経学的診断も開発されているが(参考文献22〜25)、この点で、臨床的接触のあった時点で使用し得る、安価な手段が依然必要とされている。
【0021】
脳萎縮を介する神経原線維変性−SPECTおよびPET
数多くの研究が、脳全体の萎縮および特異的な内側頭葉の萎縮、特に海馬の萎縮は、根底にあるアルツハイマー型の神経原線維変性に密接に結びついており、ADの早期診断において価値がある(参考文献1〜8)。
【0022】
しかし、脳全体の萎縮をモニターすることによるADの診断は、研究の場では実施する可能な方法論を象徴しているが、脳の特異的な領域において萎縮を確定し測定するうえで、そして同様に新皮質全体の萎縮を測定するうえでも困難がある。いかなる場合にも、検出可能な萎縮に基づく診断は、効果的な処置には遅きに失するかもしれない。
【0023】
SPECスキャン(参考文献9〜12;HMPAO SPECTにより検出される灌流欠損の特徴的パターン)、PETスキャン(参考文献13〜15;グルコース代謝プロフィールにより検出される代謝欠損)、およびMRIスキャン(参考文献16;脳全体の萎縮、葉萎縮の特異的パターン)における診断特性が確認されたことに続き、近年、診断方法が進歩している。これらの中でも、最も一般的に利用しやすいのが、MRIおよびSPECTである、というのも、PETは、現在のところ、地域に特化したサイクロトロン(local specialized cyclotron)、および半減期の短い注射可能な放射性リガンドを調製する放射化学の能力をもつセンターに限られているからである(Aberdeen, London, Cambridge in UK)。注目すべきは、AD患者においてHMPAO SPECTにより検出される特徴的な早期段階の側頭頭頂灌流欠損は、生化学的に検出され得るタウ病理のパターンに極めて密接に対応する(図1)。生化学的変化が、NFTの出現からわかるように、明らかな神経原線維変性に先立つ(図2;Mukaetova-Ladinska et al., 2000 Am. J. Pathol. Vol. 157, No. 2, 623-636)。
【0024】
しかし、MRIおよびSPECTスキャンは、ADに特徴的な灌流欠損の特異的パターンを検出するのに有用であるが、様々な神経病理学的病期の間での差別化、またはADと他の型の痴呆との差別化は困難である。
【0025】
例えば、SPECTは、ADに特徴的な両側側頭頭頂性灌流欠損の特異的なパターンの検出に有用で(参考文献9〜11)、極めて早期段階の疾患でさえ有用であり得る。しかし、SPECTの変化は、神経病理学的病期をよく鑑別しない(参考文献12)。更に、ADとレヴィー小体痴呆との鑑別は困難である。ともに両側の側頭頭頂灌流欠損を有するが、後者においてのみ、後頭灌流欠損が存在する傾向にある。同じ欠損のパターンは、グルコース代謝のPET測定を用いて示すことができるが(参考文献13〜15)、レヴィー小体痴呆を区別する問題は、この方法において根強く残る。
【0026】
したがって、参考文献12のデータから推論されるように、SPECT検出の成功の確率は、Braak病期1および2の症例では50%であり、病期3および4では60%である。症例の95%がSPECT陽性になるのは、病期5および6においてのみである。翻って、SEPCT陽性として検出される症例は、病期1および2(20%)、3および4(20%)または5および6(60%)であり得る。したがって、SEPCTでは、早期の診断および治療介入のための病期4より前の標的集団の40〜50%を検出することができないであろう。更なる研究において(データを示さず)、SPECT診断と臨床診断との総体的な一致はほぼ50%であった。
【0027】
したがって、特異的にアルツハイマー型の神経原線維変性の予防を目的とする処置の開発において、疾患進行の確定した再現性ある定義に従って、処置のために患者を選択するのと並行して、処置に対する患者の応答をモニターする非侵襲的手段を開発することが強く要請されている。
【0028】
発明の開示
発明の簡単な要旨
本発明者は、免疫化学的性質(参考文献26、27、30)を使用して、細胞外のもつれから細胞内のもつれを区別してきた。これらのカテゴリーにおけるもつれを有する症例の頻度(すなわち、確率)およびその量(すなわちカウント/mm2)の両方を、前向き症例集積において決定し、Braak and Braakのシステムに従って、病理進行における病期を示すとして知られている脳の領域にグループ分けした。
【0029】
以下に更に詳細に記載するように、これらの抗体研究は、確定された脳の領域において、細胞外と細胞内の特異性を用いることにより、PHF−タウの沈着がADの神経原線維変性の経験的病気分類の根拠を提供することを初めて明らかにした。
【0030】
したがって、一つの態様では、本発明は、その疾患に罹患していると考えられる対象におけるタウオパシー(tauopathy)を伴う神経原線維変性(例えばAD)の病期の決定法を提供する。その方法は、
(i) 対象に、凝集PHFタウを標識可能なリガンドを導入するステップ、
(ii)対象の脳の内側頭葉中の細胞外凝集PHFタウに結合したリガンドの存在および/または量を測定するステップ、
(iii)(ii)で行った測定の結果と、対象における神経原線維変性の程度を相関させるステップ
を含む。
【0031】
緒言において記載したように、神経原線維変性の進行は、Braakにより提唱された神経病理学的病期分類において最も信頼できるもので、それが今度はAD進行の神経病理学的定義の最良の利用可能な定義となっている。したがって、本発明の方法を用いて、実際のBraak病期の結果を提供することができる。好ましい実施態様においては、これらの方法を使用して、早期Braak病期の患者(例えばBraak病期2)を、臨床症状が容易に認められるに前にさえ、診断することが可能で、このような診断を用いて、時宜を得た治療と助言をすることができる。
【0032】
興味深いことに、NFTの免疫学的検出に基づいてはいるが、細胞外および細胞内のもつれを差別化していない、Gertz et al. (1996) loc citに記載の結果は、痴呆対象(一般にBraak病期4〜6)と非痴呆対象(一般にBraak病期1〜3)との間で、内側頭葉構造において検出される数の差がほとんどないことを示している(当該文献中、134ページの図1および表2を参照;重要な構造は、Pre alpha ent., CA1, Pri Ento.と標識されている)。したがって、本発明により示された相関性は、特に驚くべきものである。
【0033】
本発明は、更に、タウ凝集物を標識するのに使用するための新規リガンドを提供し、更にそのようなリガンドを見出すための新規スクリーニングを提供する。
【0034】
先に検討した本発明の態様のいくつかを、ここで更に詳細に論じる。
【0035】
対象の選択
本発明の方法に適した対象は、従来からの因子に基づき選択してよい。したがって、患者の初期選択は、経験豊富な臨床家による厳密な評価;補助的臨床検査および他の研究による非AD診断の可能な限りの除外;神経病理学的に実証されているバッテリーを用いた認知機能のレベルの客観的評価のいずれか1種またはそれ以上を含む。
【0036】
リガンド
リガンドは、上記で検討した構造の、凝集PHFタウを標識することができる。そのようなタウに特異的にまたは優先的に結合してもよい(脳の関連領域内に存在する結合部位の競合に関しては優先的)。適したリガンド(新規リガンドを含む)およびそれを同定する方法を、以下に検討する。
【0037】
より具体的には、Braak病期分類を、本明細書に記載の根拠に基づいて評価することができるとの開示は、診断標識に使用するためのリガンドの選択および/または開発において重要な意味をもつ。免疫学的方法は、抗体が血液−脳関門を定量的な様式で容易に通過しないという欠点を有し、更に、この目的のために体内に抗体を注射することによって、有害反応が誘発されるかもしれないため、この方法は臨床的には適していないかもしれない。その結果、生存対象における免疫反応性の差別化パターンに基づくタウ凝集の様々な病期同士を区別することは困難である。
【0038】
本発明者らは、したがって、神経原線維のもつれに結合する化合物の不可欠な化学的性質を検討してきた。彼らは、本明細書において、特に、神経原線維のもつれのリガンドとしての化合物の開発および使用において意味を有する結合に求められる最小の化学構造を提供し、そのようなプロセス、使用および化合物が、本発明の更なる態様を形成する。
【0039】
新規リガンドを含む、好ましいリガンドが、以下に更に詳細に開示されているが、特に、スルホン化ベンゾチアゾール様化合物(例えば、図4a参照)およびジアミノフェノチアジン(例えば、図8参照)、ならびにこれらのいずれかと適切な最小化学構造を共有する他の模倣化合物を含んでもよい。本明細書に開示されているリガンドの組合わせ(好ましくは、例えば標識などについて識別可能なリガンド)および/またはブロッキング物質(以下を参照)とリガンドの組合わせを含む、またはそのような組合わせからなる組成物は、本発明の様々な態様を形成する。
【0040】
細胞外タウへの結合
上記(ii)の測定は、細胞外凝集タウに基づき行われる。一般的な意味では、本発明の目的のために、これを細胞外のもつれから測定してもよい(例えば参考文献26、27ならびに実施例、方法および材料、表を参照)。
【0041】
組織学的研究から、凝集の経過中に、タウたんぱく質が、チアジンレッドおよびチオフラビン−Sなどの化合物の結合部位を獲得することが以前に明らかにされている(参考文献26、27)。結合部位が、もつれそれ自体の中に存在し、無関係なたんぱく質中には存在しないことを示し得る(参考文献34)。したがって、組織学的に判定されるように、細胞内および細胞外両方のもつれが、このようなリガンドで、ある程度標識される。
【0042】
一般的には、細胞外結合部位の確率または量(総結合部位または細胞内部位とは反対に)を、大きすぎて細胞内に容易に入ることができないリガンド、または細胞内で、細胞外作用が優先される所定の濃度(比較的低い)で作用し得るリガンドのいずれかを用いることにより測定してもよい。
【0043】
SPECTにより検出されやすいもののような、大きなキレート化リガンドが、適切な細胞外標的に、少なくとも到達し、結合すると予測することができる。PET用に直接標識した化合物は、潜在的に、細胞内または細胞外標的の両方を検出することができ、低濃度では後者が優先される。したがって、本発明者の研究は、適切なもつれ結合リガンドとともに用いられれば、これらの検出方法は両方ともBraak病期分類において可能性を有することを示す。それにもかかわらず、本開示に鑑み、NFT数によりBraak病期を都合よく評価するためには、血液脳関門を通過し、凝集タウの特定の細胞外または細胞内沈着を標識できるだけではなく、更なる化合物に共役化したときに、好ましくはこの性質を保持することもできるリガンドを用いることが重要であろうことは理解されるであろう。
【0044】
しかし、疑義を避けるため、適切な手段によりリガンドを可視化するか検出してもよく、当業者ならば、当分野で公知にされている任意の適切な検出手段を、これらの例に置き換えることが可能であることを理解するであろう。
【0045】
優先的タウ結合の増強
本発明の一実施態様において、本発明の方法のステップ(i)および/または(ii)は、第一リガンドに優先して、脳の関連領域内に存在する競合(すなわち、非凝集タウ)結合部位を標識する第二リガンドを対象に導入する更なるステップとともに(好ましくはこのステップの後に)、実施される。
【0046】
したがって、本発明の方法および本明細書中の実施態様は、
(iの2)凝集PHFタウを標識可能なリガンドに優先して、対象の脳内で非凝集タウ結合部位を標識するブロッキングリガンドを対象に導入するステップ
を含んでもよい。
【0047】
競合結合部位は、例えば、対象に存在するような、アミロイド斑により提供されるものであってよい。対象にそのような第二リガンドを導入することにより、凝集タウへの結合に供される第一リガンドの相対的または効果的濃度が高められる。適切な第二リガンド(または、本明細書に記載されているようなブロッキング化合物)を以下に記載するが、これらは、具体的には、図5に示される化合物1Bおよび2のようなベンゾチアゾールを含んでもよい。他の適切なブロッキングリガンドは、上記で検討したShoghi-Jadid et al., Am. J. Geriatr. Psychiatr. 2002, 10:24-35のFDDNPであってもよい。
【0048】
脳の領域
脳の、内側頭葉、すなわちE2/トランス(内側嗅領皮質層2/遷移内側嗅領皮質(transitional entorhinal cortex))およびE4/HC(内側嗅領皮質層4および海馬)領域、ならびに新皮質構造(F/T/P領域−前頭、側頭、頭頂)の有意性を、図25、27および29に示す。
【0049】
一実施態様においては、本発明の方法は、内側頭葉における細胞外NFTに基づいたデータの解析のみを含む。
【0050】
更なる実施態様においては、この領域および新皮質構造の両方のデータを評価する。後者の場合は、細胞内PHF沈着を評価するのが好ましいかもしれない。
【0051】
したがって、本発明の方法および本明細書中の他の実施態様は、更なるステップ:
(iib)対象の脳の新皮質構造内の細胞内凝集PHFタウに結合したリガンドの存在および/または量を更に測定するステップ
を含んでもよい。
【0052】
これには、
(iii)(ii)および場合により(iib)において測定した結果を、対象における神経原線維変性の程度、したがって対象のAD状態に相関させるステップ
が続いてもよい。
【0053】
細胞内標識に使用されるリガンドは、原則的には、細胞外標識に用いられるものと同じであってよいが、好ましくは、異なるもので、および/または差別的に標識されるものがよい(どのようなイメージングプロセスが使用されても区別することができるように)。
【0054】
更なるステップは、Braak病期2〜6の対象における神経原線維変性の評価または確認するうえで、特に好ましい。
【0055】
神経原線維変性の測定
この測定は、所定の区域における結合の存在でもよい。そして、この測定は、何ら病理のない症例(すなわち、Braak病期1と推定される症例)の正常値の範囲、または連続するBraak病期について測定されている基準値の範囲を関連させて、所定の測定に対応する神経病理学的病期を決定することができる。相関は、例えば、密度(density)について、本明細書の実施例1における図および表1に対応するデータに基づき、参照用の表またはグラフを手段とすることで行ってもよい。あるいは、所与の決定を、参考文献と関連させて、ある症例が病期1よりも進行した病気である確率(例えば、確率について本明細書の図に対応するデータに基づく)、それによりアルツルハイマー病の診断に正確に寄与する確率を与えるのに、所定の閾値を関連させてもよい。
【0056】
方法の使用
その測定は、診断方法または予後の方法の一貫であってもよい。処置のための患者の選択に用いてもよいし、または対象に与えられた処置または治療薬、例えば、タウ−タウ会合の阻害剤などの効果の評価のために用いてもよい。
【0057】
したがって、本発明の実施態様は以下を含む:
神経原線維変性に罹患していると考えられる対象におけるADの診断または予後方法において使用するための細胞外凝集PHFタウを標識可能なリガンドであって、
方法が、
(i) 対象に、凝集PHFタウを標識可能なリガンドを導入するステップ、
(ii)対象の脳の内側頭葉中の細胞外凝集PHFタウに結合したリガンドの存在および/または量を測定するステップ、
(iii)(ii)で行った測定の結果を、対象における神経原線維変性の程度、したがって対象のAD状態を相関させるステップ
を含む。
【0058】
神経原線維変性に罹患していると考えられる対象におけるADに伴う神経原線維変性の病期を決定する方法において使用するのに適した診断または予後試薬を調製する方法における、細胞外凝集PHFタウを標識可能なリガンドの使用であって、
方法が、
(i) 対象に、凝集PHFタウを標識可能なリガンドを導入するステップ、
(ii)対象の脳の内側頭葉中の細胞外凝集PHFタウに結合したリガンドの存在および/または量を測定するステップ、
(iii)(ii)で行った測定の結果を、対象における神経原線維変性の程度を相関させるステップ
を含む使用。
【0059】
更なる態様において、本発明は、上記使用および方法を実施するためのキットを提供し、そのキットは、本明細書に記載のあるように、凝集分子に結合可能な1つまたはそれ以上の、リガンドまたは誘導体を含む。キットは、例えば、テクネチウムキレート化基などの化合物の検出性を増大するための手段、および場合により、これをリガンドに共役させる手段、および場合によりテクネチウムを含んでもよい。このキットが、本明細書に開示されている化合物の誘導体を含む場合は、本記載の他の箇所で検討するように、例えば蛍光顕微鏡的に検出され得る。キットは、リガンドを検出または可視化する手段を含んでもよく、例えばリガンドが、組み込まれたビオチン基を有する場合には、抗ビオチン抗体を含むのが好ましい。同様に、キットは、化合物固有の蛍光を検出する手段、光活性化可能な基、更に標識された抗体を検出する手段などを含んでもよい。
【0060】
本発明の方法および他の実施態様における使用のための種々の好ましいリガンドを、更に詳細に検討する。それぞれの場合において、当業者は、直接リガンドを投与する代わりに、同じ対象中に存在するか、または投与される活性化物質による活性形態への変換のため、前駆体の形態で投与し得ることを理解するであろう。
【0061】
スルホン化ベンゾチアゾール様リガンド
本発明の本態様における使用に適切なリガンドは、式:
【0062】
【化1】

【0063】
(式中:
Wは、S、O、またはNHであり;
X、YおよびZの正確に一つは、CHまたはNであり;
その他のX、YおよびZは、CHであり;
1は、アルカリ金属カチオンであり;
RLは、堅いリンカー基であり;
Ar1は、C5-20アリール基であり;
nは、0〜3の整数であり;
各RBTは、コア置換基である)
で表される化合物である。
【0064】
一つの実施態様において、X、YおよびZのそれぞれがCHであり、化合物が、下記式:
【0065】
【化2】

【0066】
を有する。
【0067】
一つの実施態様において、XがNであり;YおよびZが、それぞれCHであり;化合物が下記式:
【0068】
【化3】

【0069】
を有する。
【0070】
一つの実施態様において、YがNであり;XおよびZが、それぞれCHであり;化合物が下記式:
【0071】
【化4】

【0072】
を有する。
【0073】
一つの実施態様において、ZがNであり;XおよびYが、それぞれCHであり;化合物が下記式:
【0074】
【化5】

【0075】
を有する。
【0076】
一つの実施態様において、WがSであり、化合物が下記式:
【0077】
【化6】

【0078】
を有する。
【0079】
一つの実施態様において、WがOであり、化合物が下記式:
【0080】
【化7】

【0081】
を有する。
【0082】
一つの実施態様において、WがNHであり、化合物が下記式:
【0083】
【化8】

【0084】
を有する。
【0085】
一つの実施態様において、X、YおよびZのそれぞれが、CHであり、WがSである。
一つの実施態様において、X、YおよびZのそれぞれが、CHであり、WがOである。
一つの実施態様において、X、YおよびZのそれぞれが、CHであり、WがNHである。
【0086】
一つの実施態様において、XがNであり;YおよびZがそれぞれCHであり;WがSである。
一つの実施態様において、XがNであり;YおよびZがそれぞれCHであり;WがOである。
一つの実施態様において、XがNであり;YおよびZがそれぞれCHであり;WがNHである。
【0087】
一つの実施態様において、YがNであり;XおよびZがそれぞれCHであり;WがSである。
一つの実施態様において、YがNであり;XおよびZがそれぞれCHであり;WがOである。
一つの実施態様において、YがNであり;XおよびZがそれぞれCHであり;WがNHである。
【0088】
一つの実施態様において、ZがNであり;XおよびYがそれぞれCHであり;WがSである。
一つの実施態様において、ZがNであり;XおよびYがそれぞれCHであり;WがOである。
一つの実施態様において、ZがNであり;XおよびYがそれぞれCHであり;WがNHである。
【0089】
W、X、YおよびZを含む、二環式基を「コア基」と表示してもよい。X、YおよびZのそれぞれが、CHであり、WがSである場合、化合物をベンゾチアゾール化合物を言及してもよく、コア基として、ベンゾチアゾール基を有すると考えてもよい。そして、「コア置換基」を「ベンゾチアゾール置換基」と言及してもよい。
【0090】
本発明のこの態様において使用するのに好ましいリガンドは、式(I):
【0091】
【化9】

【0092】
(式中:
1は、アルカリ金属カチオンであり;
RLは、堅いリンカー基であり;
Ar1は、C5-20アリール基であり;
nは、0〜3の整数であり;
各RBTは、独立して、ベンゾチアゾール置換基である)
のリガンド化合物である。
【0093】
堅いリンカー基RLおよびアリール基Ar1の両者が事実上平面状である。更に、堅いリンカー基RLおよびアリール基Ar1は、コア基(例えば、ベンゾチアゾール基)とともに、事実上平面状である化合物を形成する。「事実上平面状」は、部分/化合物が、標準的化学モデルおよび仮定を用いて定量化するとき、例えばコンポーネント間のねじれが5、4、3、2または1°未満という、高度な平面性を有することを意味する。そのねじれが、図16の化合物のもののねじれ以下であることが好ましい。
【0094】
一つの実施態様において、化合物は、約14.7AUから約15.3AUの化合物長を有する。
【0095】
本発明者らは、上記の特徴を有する化合物が、本発明の「Braak病期分類」に特に適し得ることを確認した。このような化合物は、当分野で公知であってもよく、以下に更に詳細に述べるように、新規であってもよい。
【0096】
「化合物長」は、2個の最も離れた芳香環原子(「基準原子」と表示する)の間の距離である。例えば、ベンゾチアゾール化合物については、分子のベンゾチアゾール「末端」において、基準原子は、2個の原子のうちの1個である。
【0097】
【化10】

【0098】
その分子のアリール「末端」では、Ar1がフェニルコア(下記参照)を有するアリール基の場合、基準原子は、3個の原子のうちの1個である。
【0099】
【化11】

【0100】
本明細書で用いる距離は、Chemical structure search and retrieval softwareを用いて、Chemical Database Service, Daresbury, and the Cambridge Structure Databaseを用いて算出してもよい。このデータおよびソフトウエアは、公開のドメインで入手可能である。
【0101】
一つの実施態様において、MはLi、Na、KまたはCsである。
一つの実施形態において、MはNaまたはKである。
【0102】
一つの実施形態において、nは0である。一つの実施形態において、nは1である。
一つの実施形態において、nは2である。一つの実施形態において、nは3である。
【0103】
一つの実施形態において、各RBTは、C1-4アルキル、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、およびアミノより独立して選択される。
【0104】
一つの実施態様において、各RBTは、−Me、−Et、−nPr、−iPr、−OH、−OMe、−OEt、−O(nPr)、−O(iPr)、−NO2、−CN、−F、−Cl、−Br、−I、−NH2、−NH2、−NHMe、−NHEt、−NH(iPr)、−NH(nPr)、−NMe2、−NEt2、N(iPr)2、および−N(nPr)2より独立して選択される。
【0105】
一つの実施態様において、各RBTは、C1-4アルキルより独立して選択される。一つの実施態様において、各RBTは、−Me、−Et、−nPrおよび−iPrより選択される。一つの実施態様において、各RBTは、−Meである。
【0106】
一つの実施態様において、nは1であり、RBTは、−Me、−Et、−nPr、または−iPrである。
一つの実施態様において、nは1であり、RBTは、−Meである。
【0107】
一つの実施態様において、化合物は、下記式:
【0108】
【化12】

【0109】
を有する。
【0110】
一つの実施態様において、化合物は下記式:
【0111】
【化13】

【0112】
を有する。
【0113】
一つの実施態様において、RLは、式:
【0114】
【化14】

【0115】
(式中、
mは、0〜4の整数であり、各RRLは、独立して堅いリンカーアリール置換基である)で示される基であり、そして化合物は、下記式:
【0116】
【化15】

【0117】
を有する。
【0118】
一つの実施態様において、mは0である。一つの実施態様において、mは1である。
一つの実施態様において、mは2である。一つの実施態様において、mは3である。
一つの実施態様において、mは4である。
【0119】
一つの実施態様において、各RRLは、C1-4アルキル、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、およびアミノより独立して選択される。
【0120】
一つの実施態様において、各RRLは、−Me、−Et、−nPr、−iPr、−OH、−OMe、−OEt、−O(nPr)、−O(iPr)、−NO2、−CN、−F、−Cl、−Br、−I、−NH2、−NH2、−NHMe、−NHEt、−NH(iPr)、−NH(nPr)、−NMe2、NEt2、N(iPr)2、および−N(nPr)2より独立して選択される。
【0121】
一つの実施態様において、各RRLは、C1-4アルキルより独立して選択される。
【0122】
一つの実施態様において、RLは式:
【0123】
【化16】

【0124】
で示される基である。
【0125】
一つの実施態様において、RLは式:
【0126】
【化17】

【0127】
(式中、
pは、0〜3までの整数であり、各RRLは、独立して堅いリンカーアリール置換基である)で示される基であり、そして化合物は、式:
【0128】
【化18】

【0129】
を有する。
【0130】
一つの実施態様において、pは0である。一つの実施態様において、pは1である。
一つの実施態様において、pは2である。一つの実施態様において、pは3である。
【0131】
一つの実施態様において、各RRLは、C1-4アルキル、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、およびアミノより独立して選択される。
【0132】
一つの実施態様において、各RRLは、−Me、−Et、−nPr、−iPr、−OH、−OMe、−OEt、−O(nPr)、−O(iPr)、−NO2、−CN、−F、−Cl、−Br、−I、−NH2、−NH2、−NHMe、−NHEt、−NH(iPr)、−NH(nPr)、−NMe2、−NEt2、N(iPr)2、および−N(nPr)2より独立して選択される。
【0133】
一つの実施態様において、各RRLは、C1-4アルキルより独立して選択される。
【0134】
一つの実施態様において、RLは、式:
【0135】
【化19】

【0136】
で示される基である。
【0137】
アリール基Ar1は、C5-20アリール基である。本明細書で用いる「C5-20アリール」は、C5-20芳香族化合物の芳香環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関するもので、そのような化合物は、1個の環、または2個もしくはそれ以上の環(例えば縮合環)を有し、5〜20個の環原子を有し、その環の少なくとも1つが芳香環である。好ましくは、各環は5〜7個の環原子を有する。「C5-20」は、炭素原子であろうとヘテロ原子であろうと、環原子を指す。
【0138】
環ヘテロ原子を有しないC5-20アリール基(すなわち、C5-20カルボアリール基)の例として、ベンゼン(すなわち、フェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)、およびピレン(C16)に由来するものがあげられるが、これらに限定されない。
【0139】
5-20ヘテロアリール基の例として、フラン(オキソール)、チオフェン(チオール)、ピロール(アゾール)、イミダゾール(1,3−ジアゾール)、ピラゾール(1,2−ジアゾール)、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾールおよびオキサトリアゾールに由来するC5ヘテロアリール基;並びにイソオキサジン、ピリジン(アジン)、ピリダジン(1,2−ジアジン)、ピリミジン(1,3−ジアジン;例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4−ジアジン)、トリアジン、テトラゾール、およびオキサジアゾール(フラザン)に由来するC6ヘテロアリール基などがあげられるが、これらに限定されない。
【0140】
縮合環を含むC5-20複素環基(C5-20ヘテロアリール基を含む)は、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、プリン(例えば、アデニン、グアニン)、ベンゾイミダゾールに由来するC9複素環基;キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン、ピリドピリジン、キノキサリンに由来するC10複素環基;カルバゾールに由来するCl3複素環基;並びにアクリジン、キサンテン、フェノキサチイン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジンに由来するCl4複素環基などがあげられるが、これらに限定されない。
【0141】
一つの実施態様において、Ar1は、フェニルコアを有するアリール基であり、式:
【0142】
【化20】

【0143】
(式中、
qは、0〜5の整数であり;各RAは、独立してアリール置換基であり;RCは、存在するとき、反応性共役化置換基であり、またはRCが検出可能な標識であるか、もしくは検出可能な標識を含む)を有し、そして化合物が、式:
【0144】
【化21】

【0145】
を有する。
【0146】
一つの実施態様において、RCは、存在するとき、反応性共役置換基であり、そして、別の分子または化学種に共役させるのに適する基である。
【0147】
一つの実施態様において、RCは、存在するとき、反応性共役置換基であり、そして、別の分子との化学反応によりその分子に共役させてその間に共有結合を形成するのに適する反応性官能基であるか、それを含有する。適切な反応性官能性基の例は、活性エステル(例えば、スクシンイミジルエステル)があげられる。
【0148】
一つの実施態様においては、RCは、存在するとき、反応性共役置換基であり、強い非共有性相互作用により別の分子に共役させるのに適する部分であるか、それを含有する。このような基の例として、ビオチンがあげられる(アビジンまたはストレプタビジンを有する分子との結合のため)。
【0149】
一つの実施態様においては、RCは、存在するとき、反応性共役置換基であり、錯体またはキレート形成による別の分子への共役に適する部分、例えばキレート化基であるか、またはそれを含有する。このような基の例として、テクネチウムイオンなどの金属イオンなどと錯体形成するまたはキレート化する基があげられる。そのような基の例として、ジエチレントリアミンペンタ酢酸があげられる。
【0150】
一つの実施態様において、RCは、存在するとき、検出可能な標識であるか、それを含有する。検出可能な標識の例は、例えば、染料、蛍光マーカー、抗原性基、安定および不安定放射性同位元素、およびポジトロン放出炭素原子などがあげられる。一つの実施態様において、RCは、存在するとき、安定な放射性同位元素を含む検出可能な標識であるか、それを含有する。一つの実施態様において、RCは、存在するとき、不安定な放射性同位元素を含む検出可能な標識であるか、それを含有する。一つの実施態様においては、RCは、存在するとき、18Fであるか、それを含有する。一つの実施態様においては、RCは、ポジトロン放射炭素原子を含む検出可能な標識であるか、それを含有する。
【0151】
更に、RC置換基を以下に検討する。
【0152】
一つの実施態様において、RCが存在し、上記定義のとおりである。
【0153】
一つの実施態様において、qは0である。一つの実施態様において、qは1である。
一つの実施態様において、qは2である。一つの実施態様において、qは3である。
一つの実施態様において、qは4である。一つの実施態様において、qは5である。
【0154】
一つの実施態様においては、各RAは、上記定義のとおりの、−OH、−NH2、−NHR1、−NR12、−SO32、C1-4アルキル(ここで、R1およびR2はそれぞれC1-4アルキルであり、M2は、アルカリ金属カチオンである)より独立して選択される。
【0155】
一つの実施態様において、少なくとも一つのRAは、−OHまたは−NH2である。
【0156】
一つの実施態様においては、Ar1は、アミノ基置換フェニルコアを有するアリール基であり、式:
【0157】
【化22】

【0158】
(式中、
rは、0〜4の整数であり、各RAは独立して、上記定義のとおりの、アリール置換基である)を有する。
【0159】
一つの実施態様において、rは0である。一つの実施態様において、rは1である。
一つの実施態様において、rは2である。一つの実施態様において、rは3である。
一つの実施態様において、rは4である。
【0160】
一つの実施態様において、rは1であり、Ar1は、式:
【0161】
【化23】

【0162】
で示される基である。
【0163】
一つの実施態様においては、化合物は、式:
【0164】
【化24】

【0165】
を有する。
【0166】
一つの実施態様においては、化合物は、式:
【化25】

【0167】
を有する。
【0168】
一つの実施態様においては、Ar1は、ヒドロキシ置換フェニルコアを有するアリール基であり、式:
【0169】
【化26】

【0170】
(式中、
sは、0〜4の整数であり、各RAは、独立して、上記定義のとおりのアリール置換基であり、RCは、存在するとき、反応性共役化置換基であり、RCは、上記定義のとおりの検出可能な標識であるか、それを含有する)
を有する。
【0171】
一つの実施態様において、sは0である。一つの実施態様において、sは1である。
一つの実施態様において、sは2である。一つの実施態様において、sは3である。
一つの実施態様において、sは4である。
【0172】
一つの実施態様において、Ar1は、式:
【0173】
【化27】

【0174】
で示される基である。
【0175】
一つの実施態様において、Ar1は、式:
【0176】
【化28】

【0177】
で示される基である。
【0178】
一つの実施態様においては、Ar1は、式:
【0179】
【化29】

【0180】
で示される基である。
【0181】
一つの実施態様においては、Ar1は、ナフチルコアを有するアリール基であり、式:
【0182】
【化30】

【0183】
(式中、
tは、0〜3の整数であり、uは、0〜4の整数であり、各RAは、独立して、上記定義のとおりのアリール置換基である)を有し、そして化合物は、式:
【0184】
【化31】

【0185】
を有する。
【0186】
一つの実施態様において、Ar1は、ヒドロキシ置換ナフチルコアを有するアリール基であり、式:
【0187】
【化32】

【0188】
(式中、
vは、0〜2の整数であり、uは、0〜4の整数であり、各RAは、独立して、アリール置換基である)を有する。
【0189】
一つの実施態様においては、Ar1は、式:
【0190】
【化33】

【0191】
を有する。
【0192】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0193】
【化34】

【0194】
を有する。
【0195】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0196】
【化35】

【0197】
を有する。
【0198】
一つの実施態様において、リガンドは、以下に「好ましいスルホン化ベンゾチアゾール様リガンド」の項で記載するような化合物である。
【0199】
本発明の診断方法において使用するための、上記のタイプの、例えば式(I)の化合物は、慣用の手段によって製造してもよい(例えば、参考文献31参照)。
【0200】
適切な式、大きさ、平面性および活性を有する、本明細書記載の化合物(またはその誘導体)はすべて、以下、「スルホン化ベンゾチアゾール様化合物」または「SBリガンド」と総称してもよいが、ただし限定的ではない。このような化合物は、一般には、例えば、対螺旋フィラメントまたは神経原線維もつれに見られるものなどの、凝集タウ分子のリガンドである。
【0201】
本明細書に記載のリガンドは、本明細書開示の化合物のメチル基の一つにポジトロン放出炭素を取り込み、ポジトロン放出断層撮影(PET)を当分野で知られているように使用して化合物を検出することにより、適切に検出することができる。あるいは、または更に、テクネチウムを含有するキレートを、細胞外変化の選択的検出が可能になるように、化合物に取り込ませることもできる(例えば、本明細書記載の化合物のRC基中のように)。好ましいキレート化基は、RC=ジエチレントリアミンペンタ酢酸である。
【0202】
リガンドは、他の化学基、染料、蛍光マーカー、抗原性基、治療的部分または予後、診断、または治療的応用において助けとなり得る他の任意の物質と、共役させてもよいし、キレート化させてもよいし、さもなければ会合させてもよい。例えば、リガンドが、染料または蛍光基に結合している場合、共役物を凝集タウまたはタウ様分子の標識として用いることができる。したがって、それを、ADに特徴的な細胞内または細胞外のもつれの標識に用いることができる。
【0203】
フェノチアジン
本発明者らは、そのメンバーがPHFの構造を分断し、PHFコアのタンパク分解に対する安定性を完全に変える、別のクラスの化合物を以前に同定してきた(WO 96/30766)。
【0204】
WO 96/30766に記載のジアミノフェノチアジン化合物を、図8aの構造で示す。図8aの式(IV)は、明確化のために含まれる様々な(II)の共鳴形態を示す。化合物(II)〜(IV)は、すべて酸化形態であり、一方、(I)は、還元形態である。このような化合物(以下「ジアミノフェノチアジン」または「フェノチアジン」と言及してもよい)は、例えば塩化トロニウムおよびメチレンブルーを含む。例を図8bに示す。これらのすべてを、酸化形態で示すが、チオニンは例外で安定化した塩の形態である(チオニンは、中性の酸化形態で示す)。
【0205】
本明細書記載の方法において用いることができる化合物は、図8aに示された式:
式中、R1、R3、R4、R6、R7およびR9のそれぞれが、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、置換もしくは非置換アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシであり;
5は、水素、ヒドロキシ、カルボキシ、置換もしくは非置換アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシであり;
10およびR11は、独立して、水素、ヒドロキシ、カルボキシ、置換もしくは非置換アルキル、ハロアルキルまたはアルコキシ;
を有するあらゆるもの、および
薬学的に許容され得るその塩であってよい。
【0206】
一つの実施態様においては、
1、R3、R4、R6、R7およびR9は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、置換もしくは非置換Cl-6アルキル、C1-4ハロアルキルまたはC1-6アルコキシであり;
5は、独立して、水素、ヒドロキシ、カルボキシ、置換もしくは非置換C1-6アルキル、Cl-4ハロアルキル、またはC1-6アルコキシであり;
10およびR11は、水素、ヒドロキシ、カルボキシ、置換もしくは非置換C1-6アルキル、C1-4ハロアルキル、またはCl-6アルコキシより独立して選択される。
【0207】
この点について使用する用語「アルキル」は、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖基を意味する。例えば、「アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどを意味し得る。本発明に使用する置換アルキル基に適切な置換基は、メルカプト、チオエーテル、ニトロ、アミノ、アリールオキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、およびカルボニル基ならびにアリール、シクロアルキルおよび非アリールヘテロ環基などがあげられる。
【0208】
用語「アルコキシ」は、本明細書上記にアルキル基として定義するとおりの基を意味し、その場合に、そのアルキル基が、それと、結合する基質残基との間に介在する酸素原子をも有する、アルキル基である。
【0209】
用語「ハロアルキル」は、それに結合する1、2または3個のハロゲン原子を有する1〜4個の炭素原子を有する直線または分岐アルキル鎖を示す。典型的なハロアルキル基として、クロロメチル、2−ブロメチル、1−クロロイソプロピル、3−フルオロプロピル、2,3−ジブロムブチル、3−クロロイソブチル、ヨード−t−ブチル、トリフルオロメチルなどがあげられる。
【0210】
「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを示す。
【0211】
これらのフェノチアジンのいくつかは、1個またはそれ以上の不斉置換炭素原子を有し、したがって、ラセミおよび光学的に活性な形態で存在する。本発明は、化合物のラセミ形態およびその任意の光学的活性形態を包含することを意図する。
【0212】
図8aまたは8bの塩基性化合物と、例えば、塩酸および臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのハロゲン化水素酸などの無機酸、または例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸との間で、酸付加塩を形成させてもよい。
【0213】
特に好ましい実施態様において、本発明は、
1、R3、R4、R6、R7およびR9が、独立して、−H、−CH3、−C25、または−C37であり;
10およびR11が、独立して、−H、−CH3、−C25または−C37であり;
5が、−H、−CH3、−C25、または−C37
であるフェノチアジン
または薬学的に許容され得るその塩を用いる。
【0214】
本発明者らは、ここで、この種のフェノチアジン化合物が、その結合特性に基づき、上記のスルホン化ベンゾチアゾール様化合物が結合できる部位とは明らかに異なっているらしい、特異的部位でPHFに結合できることを本明細書中で教示している。この部位へのフェノチアジン化合物の結合は、タウ凝集の阻害をもたらすと考えられる。
【0215】
フェノチアジン化合物を、適宜標識を取り入れて、本発明の方法および上記の他の実施態様において用いてもよい。ポジトロン放出官能基で適切に標識された場合(PETにより検出可能、図11、11b、12および13を参照)、そのような化合物は、すべてのタウ凝集体に対してリガンドとして機能し、血液―脳関門を通過し(参考文献36)、細胞に入ることができる。
【0216】
更なる実施態様においては、本明細書の開示に鑑み、タウ−タウ結合阻害剤による治療の効果、および特にその進捗度は、SBリガンドの使用によりモニターすることができる。
【0217】
ブロッキングリガンド
好ましくは、これらは、式:
【0218】
【化36】

【0219】
(式中、
nは、0〜4の整数であり;
各RBTは、独立して、ブロッキングリガンドベンゾチアゾール置換基であり;
mは、0〜4の整数であり、
各Rは、独立して、フェニレン置換基であり;
各Rは、独立して、−Hまたはアミノ置換基であり;
NおよびX-はともに、不存在であり、会合(3級)窒素原子は中性であり;または
Nはベンゾチアゾリノ置換基であり、会合(4級)窒素原子が陽電荷を有し、X-はカウンターイオンである)
で示されるベンゾチアゾールである。
【0220】
好ましいベンゾチアゾールは、チオフラビンTを含む。以下の実施例に示すように、そのような化合物(例えば、図5の1bまたは2)は、SB−リガンド(例えば、図5の1a)によりNFTから排除される。しかし、そのような化合物は、アミロイドに優先的に結合する。
【0221】
一つの実施態様において、nは0である。一つの実施態様において、nは1である。
一つの実施態様において、nは2である。一つの実施態様において、nは3である。
一つの実施態様において、nは4である。一つの実施態様において、nは0、1または2である。
【0222】
ブロッキングリガンドベンゾチアゾール置換基RBTの例として、Cl-4アルキル基、−SO3Hおよび−SO33、ここで、M3がカチオンである、があげられるが、これらに限定されない。一つの実施態様において、M3は、アルカリ金属カチオンである。一つの実施態様において、M3は、Li、Na、K、またはCsである。一つの実施態様において、M3は、NaまたはKである。Cl-4アルキル基の例として、−Me、−Et、−nPr、およびiPrがあげられるが、これらに限定されない。
【0223】
一つの実施態様において、各RBTは、独立してC1-4アルキル基である。
一つの実施態様において、各RBTは、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより選択される。一つの実施態様において、各RBTは、−Meである。一つの実施態様においては、nは1であり、RBTは、−Me、−Et、−nPr、または−iPrである。一つの実施態様において、nは1であり、RBTは、−Meである。
【0224】
一つの実施態様において、RBT基の一つは、−SO3Hまたは−SO33である。一つの実施態様においては、RBT基の一つは、−SO3Hまたは−SO33であり、別のRBT基の一つは、C1-4アルキル基である。一つの実施態様においては、nは2であり、一つのRBTは、C1-4アルキル基であり、RBTの一つは、−SO3Hまたは−SO33である。一つの実施態様において、nは2であり、一つのRBTが、−Meであり、一つのRBTが、−SO3Hまたは−SO33である。
【0225】
一つの実施態様において、RおよびXは、ともに存在せず、会合(3級)窒素原子が中性である。
【0226】
一つの実施態様においては、Rは、ベンゾチアゾリノ置換基であり、会合(4級)窒素原子は、陽電荷を有し、Xが、カウンターイオンである。ベンゾチアゾリノ置換基Rの例として、C1-4アルキル基があげられるが、それらに限定されない。一つの実施態様において、Rは、−Me、−Et、−nPrまたは−iPrである。一つの実施態様において、Rは−Meである。カウンターイオンの例として、Cl-、Br-、およびI-があげられるが、これらに限定されない。一つの実施態様において、RNは、−Meであり、X-は、Cl-である。
【0227】
一つの実施態様において、mは0である。一つの実施態様において、mは1である。
一つの実施態様において、mは2である。一つの実施態様において、mは3である。
一つの実施態様において、mは4である。
【0228】
フェニレン置換基Rの例として、C1-4アルキル基があげられるが、これらに限定されない。
【0229】
一つの実施態様においては、各Rは−Hであり、アミノ基は−NH2である。一つの実施態様においては、一つのRは−Hであり、一つのRはアミノ置換基である。一つの実施態様においては、各Rはアミノ置換基である。アミノ置換基の例として、C1-4アルキル基があげられるが、それらに限定されない。一つの実施態様において、アミノ基は、−NH2、−NHMe、−NHEt、−NH(iPr)、NH(nPr)、−NMe2、−NEt2、N(iPr)2、またはN(nPr)2である。
【0230】
ブロッキングリガンドの好ましい実施態様を、図5に化合物1bおよび2として示す。
【0231】
好ましいスルホン化ベンゾチアゾール様リガンド
本発明の一つの態様において、凝集タウ、好ましくはNFT中に存在する細胞外凝集タウを標識するために用いたリガンドは、式(II):
【0232】
【化37】

【0233】
(式中、
1は、アルカリ金属カチオンであり;
nは、0〜3の整数であり;
各RBTは、独立して、ベンゾチアゾール置換基であり;
mは、0〜4の整数であり:
各RRLは、独立して、堅いリンカーアリール置換基であり;
sは、0〜4の整数であり;
各RAは、独立して、アリール置換基であり;
Cは、存在するとき、反応性共役置換基であり、または
Cは、検出可能な標識であるか、またはそれを含有する。)
【0234】
様々な実施態様において、M1、n、各RBT、各RRL、s、各RAおよびRCは、本明細書に記載(例えば、上記「スルホン化ベンゾチアゾール様リガンド」の項)のとおりである。
【0235】
堅いリンカー基RLおよびアリール基Ar1は、ベンゾチアゾール基とともに、事実上平面状、すなわち高度の平面性を有する化合物を形成する。
【0236】
本明細書に示すように、このような化合物は、検出を容易にするために嵩高いRC基を取り込むことを所望する場合に、特に効果的である。
【0237】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0238】
【化38】

【0239】
を有する。
【0240】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0241】
【化39】

【0242】
を有する。
【0243】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0244】
【化40】

【0245】
を有する。
【0246】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0247】
【化41】

【0248】
を有する。
【0249】
様々な実施態様において、sは、上記検討のとおりであり得る。
【0250】
一つの実施態様において、各RAは、独立して、式(I)との関係において上記の置換基より選択される。
【0251】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0252】
【化42】

【0253】
を有する。
【0254】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0255】
【化43】

【0256】
を有する。
【0257】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0258】
【化44】

【0259】
を有する。
【0260】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0261】
【化45】

【0262】
を有する。
【0263】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0264】
【化46】

【0265】
を有する。
【0266】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0267】
【化47】

【0268】
を有する。
【0269】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0270】
【化48】

【0271】
を有する。
【0272】
様々なRC置換基が、本明細書の他の箇所で検討されている。
【0273】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0274】
【化49】

【0275】
を有する。
【0276】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0277】
【化50】

【0278】
を有する。
【0279】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0280】
【化51】

【0281】
を有する。
【0282】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0283】
【化52】

【0284】
を有する。
【0285】
一つの実施態様において、化合物は、式:
【0286】
【化53】

【0287】
を有する。
【0288】
これらの好ましい化合物のいくつか、およびその誘導体を、図4a−cに示す。
【0289】
したがって、一つの態様によれば、本発明は、図4aに示す式により示される化合物、または例えば、RCが上記のように共役基である、その誘導体を提供する。以下の実施例に示すように、そのような誘導体(例えば化合物4b)は、適切な結合活性を保持する。
【0290】
本明細書に開示された新規化合物(例えば式(II)のもの)は、ADに特徴的なものなどの神経原線維のもつれの合成リガンドとして特に有用である。したがって、これらのもつれに対する結合に要求される最小限界構造の発見は、もつれを標的とするのに使用することができ、したがって、ADなどの疾患の診断、予後または治療において使用することができる高親和性リガンドの設計の可能性を与える。
【0291】
そのような化合物は、以下好ましいSBリガンドと称する。
【0292】
好ましいSBリガンドの模倣物
一般に、所与の標的性(この場合には、好ましいSBタウ−タウ凝集リガンド)を有する化合物から模倣物を設計する上で広く取られるいくつかのステップがあり、その中でもっとも重要なのは、標的性を決定するうえで不可欠でありおよび/または重要である化合物の特定の部分が、決められていることである。本発明者らによって凝集タウ分子に高親和性結合するために要求される最小限界構造が得られたことにより、本ステップが回避されている。
【0293】
化合物4aの最小限界構造を、分光学的技術、X線回折データおよびNMRなどの様様な源からのデータを用いて、例えば、立体化学、結合、サイズおよび/または電荷などのその物理的性質に基づいて、モデル化することができる。コンピューターを利用した解析、相同性マッピング(原子間の結合よりもむしろリガンドの電荷および/または容積をモデル化する)および他の技術を、このモデル化プロセスに使用することができる。
【0294】
このアプローチの変法において、好ましいSBリガンドおよびその結合パートナーの三次元構造をモデル化する。これは、リガンドおよび/または結合パートナーが結合においてコンフォーメーションを変化させるときに特に有用であり、モデルに、模倣物の設計においてこれを考慮に入れることを可能にする。次いで、最小限界構造を模倣する化学基をそれに移植することができる鋳型分子を選択する。模倣物が容易に合成され、薬学的に許容可能であり、そしてin vivoで分解せず、必要な生物学的活性を保持しているように、鋳型分子およびそれに移植された化学基を便宜的に選択する。このアプローチにより見出される模倣物をその後スクリーニングし、標的性を有するか否か、またはその標的性をどの程度示すかを見ることができる。更に、最適化または修飾を行い、例えばin vivoまたは臨床試験などの更なる試験または最適化において1つまたはそれ以上の最終模倣物に到達することができる。最適化は、上記のような模倣物を選択するステップ(例えば、溶液中で予め凝集させたタウ、固相に結合させたもの、またはPHFから単離されたもの――WO96/30766および以下に記載のアッセイを参照)、凝集タウ分子の調製物とそれを接触させるステップ、および試験物質による凝集タウ分子に結合および/または分子からの化合物4aの排除の程度を測定するステップを含んでもよい。
【0295】
凝集タウを標識する方法
一つの態様において、したがって、本発明は、凝集タウ分子を、本明細書記載のように(例えば式(II)のもの)好ましいSB−リガンド化合物またはその誘導体と接触させるステップ、およびその化合物または誘導体の存在を検出するステップを含む、凝集タウまたはタウ様分子を標識する方法を提供する。使用の方法は、例えば参考文献26〜34に記載されたリガンドの使用に類似の方法により、実施していもよい。
【0296】
本明細書に使用する用語「タウタンパク質」は、タウタンパク質ファミリーの任意のタンパク質の総称である。タウたんぱく質の特徴は、重合および脱重合のサイクルを繰り返す間に微小管と共精製する、数多くのタンパク質ファミリーの中の一つであり(Shelanski et al. (1973) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 70., 765-768)、微小管結合タンパク質(MAP)として公知である。タウファミリーののメンバーは、特徴的なN末端セグメント、N末端セグメントに挿入されている約50個のアミノ酸の配列(これは、脳内で発達上制御される)、31〜32個のアミノ酸の3または4回の直列繰り返しからなる特徴的な直列繰り返し領域、およびC末端尾部を有するという共通の特徴を有する。
【0297】
「タウ様」分子として、例えば、細胞体樹状突起コンパートメント中に優勢な微小管結合タンパク質であるMAP2があげられる(Matus, A., in "Microtubules" [Hyams and Lloyd, eds.] pp 155-166, John Wiley and Sons, NY)。MAP2のイソフォームは、直列反復領域において、タウタンパク質とほぼ同一であるが、N末端ドメインの配列および広がりの両方が事実上異なる(Kindler and Garner (1994) Mol. Brain Res. 26, 218-224)。
それにもかかわらず、直列反復領域における凝集は、タウの反復ドメインに選択的ではない。したがって、本明細書におけるタウタンパク質またはタウ−タウ凝集に関するあらゆる検討は、タウ−MAP2凝集、MAP2−MAP2凝集などにも関するものとして捉えるべきであることが理解されるであろう。
【0298】
更なる基、または診断、予後もしくは治療目的もしくは作用を有するもの、例えば、リガンドが結合する神経原繊維のもつれの可視化を可能にする蛍光基に、好ましいSBリガンドを、共役化させてもよいし、キレートさせてもよいし、あるいはさもなければ会合させてもよい。
【0299】
診断用組成物および使用
一般に、本発明による好ましいSBリガンド(例えば、式(II)のもの)は、単離および/または精製された形態、すなわち実質的に純粋で提供され得る。これは、組成物中において、少なくとも活性成分の約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%を現す。しかし、そのような組成物は、不活性な担体物質または薬学的および生理学的に許容し得る他の賦形剤を含んでもよい。本発明の組成物は、本明細書に開示されているような好ましいSBリガンドに加えて、診断、予後または治療の使用の1つまたはそれ以上の他の分子を含んでもよい。
【0300】
本発明による好ましいSBリガンド物質、またはそのようなリガンドを含む組成物を、ヒトまたは動物の身体の診断、予後または処置の方法において、特に以下に記載するようにADなどの状態との関係において、使用するために提供してもよい。
【0301】
更なる態様においては、本発明は、診断または予後方法を提供するものであって、その方法は、哺乳類に、診断的または予後的に効果的な量の1またはそれ以上の、本明細書記載のような好ましいSBリガンドを投与するステップを含む。この態様は、診断または予後方法において使用するための、そのような化合物を包含する。In vitroおよびin vivoの両使用は、この態様によって包含される。In vitroの方法は、(i)対象からの適切な組織検体を得ること;(ii)検体を好ましいSBリガンドに接触させること;(iii)検体に結合する好ましいSBリガンドの量および/または局在個所を検出すること;(iv)(v)の結果を対象の疾患の病期または重症度と相関させることにより、実施してもよい。
【0302】
更なる態様において、本発明は、上記記載の疾患の診断、予後または治療のための組成物の製造における、本明細書記載のような好ましいSBリガンドまたは誘導体の使用を提供する。
【0303】
疾患または状態は、例えばADもしくはAD様状態、または凝集タンパク質分子が関わる任意の他の状態であってもよい。
【0304】
特に、タウタンパク質(およびその異常な機能またはプロセシング)が役割を果たすのはアルツハイマー病のみではない。Pick病および進行性核上麻痺(PSP)などの神経原線維障害の病因は、それぞれ歯状回(dentate gyrus)および新皮質の星状錐体細胞(stellate pyramidal cells)中の、異常な切断されたタウ凝集物の蓄積と相関するようである。他の痴呆として、前頭側頭痴呆(FTD);第17染色体にリンクしたパーキンソン病(FTDP−17);脱抑制−痴呆−パーキンソン病−筋萎縮(DDPAC);淡蒼球−橋−黒質変性(PPND);Guam−ALS症候群;淡蒼球−黒質−ルイス変性(PNLD);皮質−基底変性(CBD)など(Wischik et al. 2000, loc. cit、詳細な検討には特に表5.1を参照)などがあげられる。主としてまたは部分的に異常なタウ凝集を特徴とする、これらすべての疾患を、本明細書において「タウオパシー」と称する。
【0305】
診断用組成物は、上記SBリガンド誘導体の一つに加えて、診断的に許容し得る賦形剤、担体、緩衝液、安定化剤、または当業者に周知の他の物質を含んでもよい。そのような物質は、無毒性であるべきであり、物質の凝集タウへの結合活性、あるいはその物質に連結されたまたはさもなくばその物質と会合している任意の生物活性基の効力に干渉すべきではない。担体または他の物質の明確な性質は、投与経路、例えば経口、静脈内、皮内、皮下、鼻腔、筋肉内、腹腔内投与などにより決まる。
【0306】
経口投与用診断用組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液体の形態であってよい。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバントなどの固体担体を含んでもよい。液体診断用組成物は、一般に、水、石油系、動物または植物油、鉱物油または合成油などの液体担体を含んでもよい。生理食塩液、デキストロース、または他の糖溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールを含んでもよい。
【0307】
静脈内、皮内もしくは皮下注射、または病変部位での注射では、リガンドは、発熱物質を含まず、適切なpH、等張力および安定性を有し、非経口的に許容し得る水溶液の形態である。当業者は、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液などの、例えば等張性ビークルを用いて適切な溶液を調製することも十分できる。保存剤、安定化剤、緩衝液、抗酸化剤および/または他の添加剤を、必要に応じて含んでもよい。
【0308】
処置すべき状態により、上記のような組成物を、単独で、または他の処置と組み合わせて、同時にまたは逐次的に、投与してもよい。
【0309】
リガンドの同定
凝集タウのためのリガンドを同定する更なる方法は、必要な活性を有する化合物を同定するために、ケミカルライブラリーのハイスループットスクリーニングを可能にする形式で用いることができるスクリーニングアッセイを要する。これまでは、そのような方法は、容易には利用できなかった。標識化プロセスが化学探索能力を厳しく限定するため、好ましい方法は、前標識された化合物を必要としない。
【0310】
本発明の更なる態様において、ハイスループットスクリーニングアッセイとして使用し得る方法が提供されており、その方法は、前標識された試験物質を有する必要性によって限定されない。好ましい実施態様においては、その方法は、以下のステップを使用する。
1.製造の過程において部分的に凝集を経た形態でタウタンパク質を生成させる高い能力;
2.WO96/30766で提供されたタウ−タウ結合アッセイにおいて、推定リガンドを試験するためにこの方法で調製されたタウタンパク質を使用して、タウ凝集阻害剤として最小の活性しかないか、全く活性のない物質、または高濃度でタウ−タウ結合を増強する物質を同定する。
3.阻害的濃度のDMMBなどの、例示的な強力なタウ凝集阻害剤の存在下で、推定リガンドを試験すること;
4.反復ドメインを介するタウ−タウ結合のブロック能が欠如しているが、強力なタウ凝集阻害剤の阻害活性をブロックする性質により、推定リガンドを同定することができる。
【0311】
したがって、本発明は、凝集PHFタウタンパク質を標識可能なリガンドのin vitro同定方法を提供し、その方法は、
(i)凝集PHFタウタンパク質を標識可能と疑われる第一作用物質を提供するステップ、
(ii)(a)高親和性タウ捕獲部位を露出するように固相に結合させたタウコアフラグメントを含む、タウタンパク質またはその誘導体(例えば、コアフラグメントに相当し、Ala390−dGAで終結する、切断タウタンパク質)を、(b)固相タウタンパク質または誘導体(例えば、Glu-391で終結するdGAE)に結合可能な液相タウタンパク質またはその誘導体、ならびに(c)選択された第一作用物質および(d)タウ−タウ結合阻害剤であることが公知の第二作用物質と接触させるステップ、
(iii)(b)の液相タウタンパク質または誘導体の、(a)の固相タウタンパク質または誘導体への結合の阻害剤(d)による阻害を完全にまたは部分的に軽減する第一作用物質を選択するステップを含む。
【0312】
(iii)を満たす作用物質を、リガンドとして提供し得る。
【0313】
方法を、以下のステップ(前、その間、後)とともに実施するのが好ましい:
(iの2)(a)高親和性タウ捕獲部位を露出させるように固相に結合させたタウコアフラグメントを含有するタウタンパク質またはその誘導体、(b)固相タウタンパク質または誘導体に結合可能な液相タウタンパク質またはその誘導体を、(c)上記第一作用物質と接触させるステップ、および
(iの2.1)(b)の液相タウタンパク質または誘導体の(a)の固相タウタンパク質または誘導体への結合の阻害により示されるタウ−タウ結合の阻害を検出するステップ、
(iの2.2)タウ−タウ結合阻害剤として最小の活性しかないか、全く活性のない、および/またはタウ−タウ結合を増強する第一作用物質を選択するステップ。
【0314】
(iii)および(iの2.2)を満たす作用物質をリガンドとして提供し得る。
【0315】
阻害剤は、好ましくは上記のとおりのジアミノフェナチオジン(もっとも好ましくはDMMB)である。スクリーニングのために選択された化合物は、SBリガンドなど、いかなる化合物であり得る。
【0316】
好ましい形態において、液相タウタンパク質または誘導体は、固相への曝露の前に部分的凝集を経た形態で調製される。それに加えて、アッセイを、WO96/30766に記載されるように、そして更に詳細に以下の実施例にまとめられているように、広く実施してもよい。好ましくは、結合ステップには、アルカリ性または生理学的条件(例えばPBS)を使用し、結果を免疫学的に検出する。
【0317】
本発明のこれらおよび他の態様は、本発明の実施態様を例のみとして記載する、次の非限定的な実施例を読むにつれより明らかになるであろう。添付の図面には以下のように言及する。
【実施例】
【0318】
方法および材料
PHF結合化合物
本明細書で用いた化合物は、別途記載のない限り、ICI Pharmaceuticalsから供給された。チオフラビンTおよびチアジンイエローは、Fluka AGから購入した。
【0319】
蛍光の定量
臨床的および神経病理学的に確認されたADによる死亡症例の海馬から16μmの連続切片を切り取った。これらの切片を、濃度0.01%、0.001%、または0.0001%のチオフラビンS水溶液を用いて5〜10分間染色し、次いで水中で洗浄、Apathe水性溶媒中で標本にした。2組目の実験では、海馬、およびマイネルト基底核から切片を切り取った。これらの切片を、濃度0.1%、0.01%、0.001%、または0.00001%のプリムリン水溶液を用いて5〜10分間染色し、水中で洗浄、Apathe水性溶媒中で標本にした。
【0320】
光電子倍増管(モデル MPV−2)を備えたLeitz蛍光顕微鏡を用いて、蛍光発光を定量した。以下のとおり、3種のLeitzフィルターブロックを用いた。
1.フィルターブロック H2、コード513 417
励起範囲バンドパス390〜490nm
ミラー RKP510(すなわち、透過510nm未満)
抑制フィルター LP515(すなわち、反射515nm超)
3.フィルターブロック G、コード513 416
励起範囲バンドパス350〜460nm
ミラー RKP510(すなわち、透過510nm未満)
抑制フィルター LP515(すなわち、反射515nm超)
4.フィルターブロック A、コード513 410
励起範囲UVバンドパス340〜380nm
ミラー RKP400(すなわち、透過400nm未満)
抑制フィルター LP430(すなわち、反射430nm超)
【0321】
ifIおよびIIの調製
材料ifIを、Wischik et al (1985) Jj Cell Biol 100: 1905-1912に記載のとおり調製した。
【0322】
材料ifIIを、Wischik et al (1995) Neurobiol Aging 16, 409-431に記載のとおり調製した。非プロナーゼ消化ifIIを含む実験の場合、プロナーゼ消化ステップを省き、同一のプロトコルに従った。
【0323】
ifIIの分光蛍光分析
これらの測定は、Perkin-Elmer分光蛍光計(モデル MPF−3)で行った。すべての測定に関してリガンド濃度0.00001%をルーチンに用いた。プリムリンは、370nmに励起ピーク、515nmに発光ピークを有することが見出された。したがって、すべての測定は、標準的な励起波長370nm、固定スリット幅3mmで行った。
【0324】
競合結合アッセイ
材料ifIを、PBS中、0.2mlのガラスホモジナイザーでホモジナイズした。この懸濁液に、最終濃度0.1〜0.00001%の範囲で試験化合物を添加した。それを5分間インキュベートし、同等または低い濃度でプリムリンを添加した。懸濁液をスライドガラスに移し、380〜570nmの間の励起波長および発光波長を含めて、蛍光フィルターブロックの範囲に亘って蛍光顕微鏡法によって検査した。これらの観察で求められた終点は、もつれフラグメントからの典型的なプリムリンの蛍光の移動であった。
【0325】
リガンド電子顕微鏡検査
ifI画分から得られたPHFを、プロナーゼ消化後、炭素被覆グリッドに沈着させ、ビオチン化プリムリンの調製物とともに短時間インキュベートし、その後、Slot and Gueze(1981)の方法によって金コロイドと共役させた抗ビオチン抗体とともにインキュベートした。
【0326】
ifIIのスクシニル化およびクロマトグラフィー
洗浄したifII画分を、8M尿素/50mMホウ酸塩(1ml、pH9)に溶解し、超音波破砕し、1mlの無水コハク酸アセトン溶液を、最終濃度4ml中コハク酸塩250mMになるように添加し、水酸化ナトリウムを用いてpH8.5に維持した。その溶液を遠心分離によって清澄にし、重炭酸塩で平衡化したSephacryl S200カラムに添加した。カラム溶出液を230または280nmでモニターした。
【0327】
スクシニル化画分は、ゲルのクマシー染色または銀染色によって視覚化できなかったので、Bolton-Hunter試薬(Amersham)を用いてifII画分を特異化学標識した後、オートラジオグラフィーによってバンドを検出した。
【0328】
PHF由来ペプチドの光親和性標識化のために、ifIまたはifII画分をI125−標識光不安定性誘導体とプレインキュベートした。
【0329】
Kav0.21で流れる光標識画分を、Amicon YM2膜を通して限外濾過により濃縮し(10ml)、50mM重炭酸アンモニウム中キモトリプシン(0.01mg/ml)で消化した。配列解析用のキモトリプシンフラグメントは、C18カラム、0〜100%アセチルニトリル勾配、0.1%トリフルオロ酢酸を用いる逆相HPLCによって、Dr H. C. Thogersenにより単離された。キモトリプシンペプチドを配列決定した。
【0330】
フェノチアジン存在下PHFの形態学的研究
これらの実験のために、電子顕微鏡検査に関して上記のとおりにifII画分を調製した。この材料を、最終濃度0.1〜0.0001%の範囲のフェノチアジン調製物と直接インキュベートし、その後、炭素被覆グリッドに適用し、LiPTA染色後(1%)に直接検査した。あるいは、ifII懸濁液を炭素被覆グリッドに沈着させ、部分的に乾燥させ、フェノチアジン溶液で洗浄した。そのような調製物をLiPTAでそのまま染色するか、1次抗体として6.423を用いて免疫電子顕微鏡法のために更に処理した。25,000〜45,000の公称倍率で電子顕微鏡写真を記録した。
【0331】
脳組織g当たりμgで表される、Braak病期分類の関数としての細胞外間隙内の凝集タウタンパク質の算出
前に報告された臨床的および神経病理学的に病期分類されたコホートにおけるPHFタウレベルpmol/g(P)およびもつれのカウント/mm2(T)(R. Y. K. Lai et al., Neurobiol Aging 16, 433 (1995))を用いて、ヒト脳において同じELISAを用い、罹患錐体細胞(PC)当たりPHFタウレベルpg/細胞の推定値を導き出した。もつれのカウント/mm2は、容積1mm×1mm×0.1mm(0.0001cm3)内の罹患錐体細胞数の推定値を提供し、公称7μm切片においてカウントされた任意のもつれのプロファイルを、その切片に直交する〜45μmにどちらかの方向に拡大することを可能にする(S. M. Blinkov, I. I. Glezer, The human brain in figures and tables a quantitative handbook; Plenum Press, NY, 1968, Table 204)。PHFコアタウフラグメントは10kDであるので(C. M. Wischik, et al., Proc. Natl. Acad. Scie. USA 85, 4506 (1988))、コアPHFタウレベルpg/cm3は10×Pである。このことから、PC=(P×10)/(T/0.0001)である。Braak病期4〜6において(H. Braak, E. Braak, Acta Neuropathol. 82, 239 (1991))、灰白質の領域PC値は以下のとおりであった。前頭皮質0.13±0.05pg/細胞、海馬0.60±0.39pg/細胞、側頭皮質1.074±0.44pg/細胞、嗅内皮質1.56±0.63pg/細胞。これらの相違は、解剖学的相違、異なる疾患進行領域の割合(C. Bancher, H. Braak, P. Fischer, K. Jellinger, Neurosci. Lett. 162, 179 (1993), also Gertz et al., Acta Neuropathol. 95, 154 (1988))、もつれのカウントが病理学上のより進行した病期においてジストロフィー性神経炎で蓄積されるPHFを過小評価する程度(Lai et al., 1995, loc cit)を反映する。全平均は、ADに関連するであろう細胞当たりPHFレベルの近似値を提供する。その値は、Braak病期1〜3の症例で0.37±0.08pg/細胞、Braak病期4〜6の症例で1.08±0.28pg/細胞である。
【0332】
下記の表、ならびに図26、27、29、および31に示した細胞外凝集PHFタウを推定するために、ガラス上の切片を、5分間98%のギ酸で処理し、mAb423と1時間インキュベートした後に、mAb423の免疫反応性が示される場合、もつれを細胞外としてカウントした。疑いを排除するために述べると、この方法論は、浮遊ビブラトーム切片をギ酸と共に短時間インキュベートし、その後、mAb423と共に一晩インキュベートするMena et al.(1996)に報告されている方法とは異なる。その報告に示されているとおり、後者の一晩浮遊切片プロトコルは、細胞内のもつれにおいて最大mAb423免疫反応性を得て、PHFのファジーな外殻によって実質的に閉鎖されている状態にもかかわらず、すべての細胞内のもつれがmAb423免疫反応性を含有することを示した(図3を参照のこと)。本発明のプロトコルの目的は、図3に示した病期3および病期2のもつれが最大限に標識化されることを確保することであった。わずかな細胞内のもつれの標識化を完全に除外することはできず、カウントも試みられ、そこで主観的識別が試みられた。しかしながら、後者の推定値は、細胞内のみであるmAbAT8によるもつれの標識化密度または確率(図28、30、32)と一致せず、神経病理学的病期に関してmAb423を用いて示されたものと完全に異なるプロファイルを示す。したがって、本発明の算出の場合、mAb423免疫反応性のもつれのカウントは、図3に示した病期2および3における細胞外のもつれの病理学を実質的または完全に代表するものであって、図3の病期1を実質的に代表するものではないとみなされた。疑いを排除するために述べると、図3に示した病期はBraak病期ではなく、もつれを含有する単一ニューロン変性による病期である。
【0333】
表1に示した特定データは以下に基づいた。
【0334】
【表1】

【0335】
上記において、
BSTは、Braak病期
ME1T4は、細胞外のもつれカウント
PCは、細胞当たりPHFタウ濃度の推定値(上記のとおり算出)
PT4は、細胞外のもつれに起因するPHF含量(PC×MEIT4)
REG3Bは、図26および27のとおり脳部位を3グループに分けた分類で、SE1T4は、細胞外のもつれカウントの標準誤差である。
【0336】
実施例1−Braak病期分類における凝集タウ
免疫化学的性質(参考文献26、27、30)に基づいて、細胞内のもつれを細胞外のもつれと識別することが可能である。それらの分類におけるもつれを伴う症例の頻度(すなわち、確率)および量(すなわち、カウント/mm2)の両方を、前向き症例集積において求め、Braak and Braakのシステムに従って、病理進行において病期を示すとして知られている領域にグループ分けした。
【0337】
図25に示したように、E2/TransおよびE4/HCにおける細胞外のもつれの確率に基づいて、病期2〜4を病期1と明確に区別することができる。更に、F/T/P部位(新皮質領−前頭部、側頭部、頭頂部)に関する図も示される。
【0338】
逆に、細胞内のもつれは、これらの領域における初期の識別の根拠には不充分であるが、新皮質部位を用いる病期4および5の識別では良好な根拠を提供する。同様に、死亡の12カ月前にMMSEスコアが21を超える症例を選択したとき、類似の結果が得られた。更に、もつれの密度を求めたとき、類似の結果が得られた。
これらの結果は、上述の材料および方法に記載のとおり、脳組織g当たりμgで表される、細胞外間隙の凝集タウタンパク質の量の近似値に換算できる。これらの結果を表1に示す。もつれのカウントは凝集タウタンパク質の量を過小評価するので、これらは過小評価値である。
【0339】
【表2】

【0340】
表1は、脳g当たりμgで表される、Braak病期分類の関数としての細胞外間隙内の凝集タウタンパク質量を示す。データは、材料および方法に記載のとおり算出した。
【0341】
要約すると、これらの結果は、内側頭部構造におけるPHFタウの細胞外沈着物が、ADの神経原線維変性の実験的病期分類の根拠を提供することを示す。そのような病期分類は、適切なリガンドが生成できた場合に、放射性画像化法によってのみ達成することができた。
【0342】
実施例2−PHFコアタウタンパク質の凝集反復ドメイン内に結合する化合物の評価
分析薄層クロマトグラフィー、および分取クロマトグラフィーによって約20種の成分に分離したチオフラビンSの市販の粗製品の一成分として、プロトタイプ化合物を得た。試験は、これらのすべての成分が、有効なもつれのリガンドとして作用できるのではないことを示した。具体的には、純粋なプリムリン(図5、化合物1a)がもつれを標識することが判明したが、ベンゾチアゾールチオフラビンT(図5、化合物1b)はアミロイドを優先的に標識するものの、有効性がはるかに低かった。
【0343】
更に、化合物1aが、化合物1bがもつれの粗抽出物に10倍過剰で導入されたとき、もつれにおいて化合物1bを置き換えることが見出された。
【0344】
考えられる相違は、1位のスルホネート基であると仮定された(図5、化合物2[2−(4−アミノフェニル)−6−メチル−1−スルホネートベンゾチアゾール])。しかしながら、プリムリン(化合物1a)は、もつれから(アミロイドではないが)これを置き換えることが見出された。したがって、もつれの標識化は単にスルホン化ベンゾチアゾール構造のみによるものでなく、より長い芳香族構造を必要とすることが示唆される。
【0345】
精製チアジンレッド(図5、化合物3a)は、等濃度でプリムリンと競合することが判明したが、化合物3b(チアジンイエロー、図5)は競合しなかった。したがって、伸長芳香族ベンゾチアゾール構造は、それ自体では、もつれ内での高い結合親和性を決定しない。
【0346】
競合結合の最小限界要件を定義するために、ジアミノ結合を亘って単一フェニル基を添加することによってスルホン化ベンゾチアゾールを伸長した。この化合物(図4、化合物4a)は、蛍光性ではないが、等濃度でチアジンレッド、およびプリムリン蛍光と競合することが判明した。したがって、化合物4aは、もつれ内の高親和性結合に必要な最小限界構造を定義する。
【0347】
もつれ内の結合部位が実際はPHF自体であることを証明するために、ビオチン基を添加して化合物4aを更に伸長した(図4、化合物4b)。この化合物は依然としてプリムリンおよびチアジンレッドと競合することが判明したので、化合物4bは、もつれ内の高親和性結合を維持した。更に、免疫金コンジュゲート抗ビオチン抗体は、化合物4bとプレインキュベートされた単離PHFを標識することが見出され、プレインキュベートなし、またはビオチン単独(図31b)でのプレインキュベートでは標識化が示されなかった。最後に、化合物の光活性化コンジュゲートが調製されたとき、その標識タンパク質を同定し、配列決定することが可能であった。これはタウタンパク質の反復領域を含むPHFのコアから単離されたものと同じコアタウフラグメントであることが判明した。
【0348】
要約すると、これらの結果は、化合物4aおよび4bの結合部位が、PHFコアのタウタンパク質の凝集反復ドメイン内であることを明らかに示す。更に、これらの結果は、PHFコア内のリガンド活性を妨げることなく、官能基を添加するためのキレートとして化合物4aを用いることができることを示す。したがって、化合物4aは、テクネチウムまたは他の画像化成分を添加して、例えばADにおける細胞外のもつれを検出するのに適切なリガンドを生成するためのキレートとして用いることができた。
【0349】
実施例3−リガンド分子の最適寸法の決定
図14は、それらの寸法と共に、上記載の3つの構造を示している。例えば、プリムリン、ベンゾチアゾール類似体(「類似体」と示す)、および「チアジンイエロー」に関して、C11−C1距離、およびC10−C1距離を示す。
【0350】
図15および16は、プリムリン構造の「B」部分の結晶構造を示す(Soon-Beng Teoet al., 1995, Acta Crystallogr., Sect. C, 591)。側面図である図16からわかるように、この分子はわずかなねじれを有するが、本質的に平らである。プリムリンの「A」部分は、同じ分子から算出できる。その結果から、A+Bの寸法を導き出すことができ、これが本発明による活性種の1種の、実際の長さの指標となる。
【0351】
図14に示した「類似体」の大きさを算出するために、図15のデータから測定値Aを用い、図17および18に示したN2Aと表す分子から測定値Bを決定した(Gilardi, R. D., 1972, Acta Chrystallogr., Sect. B, 107)。図18の側面図からわかるように、分子のこの部分は完全に平らである。その寸法が「類似体」と同じであるチアジンレッドにも同一の測定値を適用した。
【0352】
チアジンイエロー(図14に示した)の大きさは、以下のように求めた。「A」部分は、プリムリンに関して用いた図15の分子に由来し、「B」部分は、図19および20に示した分子に由来する(Gladkova et al., 1972, Kristallografiya 41)。再び、この分子のB部分は完全に平らであり、図17に示した分子に関して唯一の相違は、芳香族基間の距離である。
【0353】
図21および22は、図15の分子が空間でどのように結晶しているのかを例示している。図からわかるように、この分子は交互の「ヘリンボン」パターンを形成し、積み重なっていない。対照的に、メチレンブルーの結晶構造は、この分子がπ結合の重なりの間に交互の水分子のシートを有する重なりを形成することを示している。
【0354】
表2は、プリムリン(「PRIM」)、類似体(「ANAL」)、チアジンイエロー、およびベンゾチアゾール単位単独(すなわち、図5に示した構造1bおよび2)の最小、最大、および平均寸法を表にしている。対応するメチレンブルーの寸法を、「MBCC」(炭素から炭素)、および「MBNN」(窒素から窒素)として示す。
【表3】

【0355】
図23は、活性リガンドである分子(プリムリン、および「類似体」)、およびチアジンイエロー(リガンドとして不活性である)の平均、最大、および最小値の広がりの比較を示す。寸法はオングストローム単位(AU)で示す。図24において、基本的なベンゾチアゾール核(すなわち、図5の分子1bおよび2)、およびジアミノフェノチアジンの同様の比較を行う。これらの距離は、炭素から炭素の距離である。
【0356】
上記結果は、本明細書に記載の分子が実質的に平らであることを例示している。しかしながら、本発明によるリガンドと先に検討した他の分子との間には活性に根本的な相違がある。図に示したように、本発明による適切なリガンドは、14.783から15.261AUの間の寸法の長く平らな分子を含む。他方、その寸法を超える(平均15.927AU)チアジンイエローなどの長い分子は、平らであっても有効なリガンドとして役立たない。しかしながら、ある種の短く平らな分子は、アミロイドに優先的に結合する。
【0357】
実施例4−リガンド分子および阻害剤を用いるPET
図11〜13は、ジアミノフェノチアジンまたは「類似体」をポジトロン放出種に転換するために用いることのできる典型的な合成方法を示す。
【0358】
図11bは特に、チオニンをNaHで処理し、次いで標識ヨウ化メチルで処理してメチレンブルーを得る方法を示している。アズールAおよびアズールBから開始するメチレンブルーの合成に、同様の手順を用いることができる。他の強塩基も用いることができる。
【0359】
用いることのできる他の方法は、HClおよび標識MeOH、標識リン酸トリメチル、標識ジメチルスルホキシドおよび標識ホルムアルデヒドなどを含んでもよい。これらの合成の化学および一般的方法論はすべて当分野の技術者によく知られている。これらの例は、根本的な方法に言外の制限を加えることなく提供される。
【0360】
実施例5−ブロッキングリガンド
チオフラビンTおよびチオフラビンSなどの化合物は、アミロイド沈着物を強力に染色する。しかしながら、図31は、そのような化合物がプリムリンによってもつれから置き換えられ得ることを示している。したがって、これらの化合物は、リガンドの凝集タウへの結合を阻害することなく、対象でない結合部位を飽和するブロッキング試薬として用いることができる。
【0361】
実施例6−リガンド分子および阻害剤の比較
有効なリガンドである分子の活性には、タウ−タウ結合の有効な阻害剤である分子と比較して、根本的な相違があるようである。ベンゾチアゾール分子はPHFを乱さず、更にはいずれのリガンドも乱さないが、一連のジアミノフェノチアジンはPHF解離物質およびタウ凝集阻害剤である。
【0362】
更に凝集依存タウリガンドとタウ凝集阻害剤との関係の研究をプリムリンを用いて行った。溶液中のプリムリンは520nmに蛍光ピークを有する。これは、プリムリンがPHFの純粋調製物内で結合しているとき、470nmにシフトする(図6)。PHFの構造を解離し、遊離タウを放出する(ならびに、リシンの電荷を逆転する)ことが既に知られている無水シトラコン酸によるPHFの処理は、470nmの蛍光ピークを消滅させることがわかった(図7)。したがって、そのような化合物による結合はPHFに見出されるタウの重合状態に依存するが、遊離タウには存在しない。
【0363】
PHFの構造を乱し、PHFコアのタンパク分解安定性を覆す化合物が同定されている(WO 96/30766参照)。そのような化合物の例を添付の図8に示す。本発明者等は、これらの化合物が、高親和性タウ−タウ結合ドメイン内の特定の結合部位でタウに結合することをここに確認した。しかしながら、そのような化合物は、アルシアンブルーの存在下で470nmのプリムリンの蛍光ピークが保持されていることによって示されているように(図9)、凝集タウ分子においてプリムリンのタウへの結合を乱さない可能性のあることが明らかにされている。
【0364】
したがって、アルシアンブルーは、タウ−タウ相互作用を阻害できるが、阻害の部位、またはおそらくそれが作用する結合相互作用の順序のいずれかは、SBリガンドの結合部位をそのまま残しておくようなものであると考えられる。したがって、凝集タウのリガンドとして作用する化合物は、タウ凝集阻害剤である化合物と同じ部位で結合しないが、それらの阻害剤の阻害性に影響を及ぼす可能性があると考えられる(下記の実施例7を参照)。
【0365】
この点に関しては、タウ凝集阻害剤としての典型的な凝集タウリガンドの効力を研究することによって更に調査した。タウ凝集阻害剤(例えば、ジアミノフェノチアジン)が固相アッセイにおいてタウ−タウ結合の阻害に基づいて同定され得ることが以前に示されている(WO96/30766)。同じアッセイで試験を行ったとき、プリムリンおよびチアジンレッドはタウ−タウ結合の弱い阻害剤であることが判明した(図10)。したがって、これらの化合物は、PHFコア内のタウの有効なリガンドであるが、タウ−タウ結合の阻害が必要とされる部位ではよく見ても弱い阻害剤である。
【0366】
ジアミノフェノチアジン様クラスの化合物が凝集状態においてタウに結合することは、充分に高濃度の、特にメチレンブルーなどの化合物の存在下での、PHF構造の解離を、直接実証することによって示される。したがって、タウ−タウ結合の阻害剤であるジアミノフェノチアジン様クラスの化合物は、低濃度で凝集タウリガンドとして機能することができる。
【0367】
要約すると、本発明者等は、コアPHFタウ凝集内に2種類の結合部位を定義できることを見出した。両者ともに放射線画像化リガンドの開発に潜在的に有用である。
【0368】
(i)スルホン化ベンゾチアゾール様部位:テクネチウムなどの適切なキレートに結合するこのタイプの化合物は、その大きさおよび電荷によって、細胞外のもつれのリガンドとして役立つ可能性がある。
【0369】
(ii)ジアミノフェノチアジン様部位:そのような化合物は、ポジトロン放出官能基で適切に標識されたとき、すべてのタウ凝集のリガンドとして役立ち、また血液脳関門を通過し(参考文献36)、細胞に入ることができるであろう。したがって、これらの化合物およびその誘導体は、細胞内のもつれ、例えばAD患者の脳に存在するもつれの標識化、または低濃度で用いられるときの細胞内のもつれの標識化に使用が見込まれる。
【0370】
実施例7−阻害の軽減に基づいて更なる診断用リガンドを同定するアッセイ例
(i)部分凝集が発生しているタウタンパク質の調製
この調製(「調製2」)は図32に図式的に示すが、以前に記載された方法(例えば、以下の(ii)に示すWO96/30766に記載の方法「調製1」)とは異なる。
【0371】
組換えcDNAプラスミドは、その開示を参照により本明細書の一部とするWO96/30766に記載のものである。
【0372】
簡潔に述べると、標準的なプロトコル(Sambrook, Fritsch & Maniatis “Molecular cloning. A Laboratory Manual” (1989) Cold Spring Harbor Laboratory, N. Y.)を用いて、死亡3時間後にその組織を得たアルツハイマー患者の脳組織から単離したmRNAから、タウcDNAを作製した。このcDNAライブラリーを、PHFコアタンパク質の一部の配列に由来する合成17merオリゴヌクレオチドプローブでスクリーニングした(Goedert et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 4051-4055)。完全長cDNAクローンを、M13mp19のEcoRI部位にサブクローニングし、部位特異的突然変異を用いて開始コドンに関連したNdeI部位を導入した。NdeIおよびEcoRIによる切断後、結果として生じたcDNAフラグメントを、NdeI/EcoRI切断発現プラスミドpRK172のT7RNAポリメラーゼプロモーターの下流にサブクローニングした(Mcleod et al. (1987) EMBO J., 6, 729-736)。pRK172は、pBR322コピー数制御領域の除去により、大腸菌で非常に多いコピー数で増殖するpBR322の誘導体である。このプラスミドは、組換えクローンを選択するためのアンピシリン耐性遺伝子を持つ。
【0373】
タウの短縮型をコードするcDNA構築物は、Novak et al. (1993) EMBO J., 12, 365-370に記載のとおりmRNAから調製した。このmRNAを、特定のオリゴヌクレオチドプライマを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の鋳型として用いた。センスプライマーはNdeI部位を含有し、アンチセンスはEcoRI部位を含有した。PCRフラグメントを、上記のとおりpRK172にサブクローニングした。dGAEの構築に用いたプライマーを図22に示す。発現に用いたすべてのDNAフラグメントの確実性は、両鎖の完全長配列決定によって確認した。
【0374】
hタウ40(「T40」)cDNAの構築に関する詳細は、(Goedert et al. (1989),Neuron 3: 519-526)に記載されている。この配列は、CNSにおいて見出されたタウの最長型であり、2つのN末端にそれぞれ29のアミノ酸挿入およびチューブリン結合ドメインに余分の31のアミノ酸繰り返しを含有するタウタンパク質をコードする。DNA配列およびその予想されるアミノ酸配列を図21に示す(配列番号4)。
【0375】
組換えプラスミドを用いて、E.coli BL21(DE3)株を形質転換したが、この株はlac UV5プロモーターの制御下にあるバクテリオファージT7RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを有し、原核生物の発現に用いられる(Studier and Moffat (1986), J. Mol. Biol. 189, 113-130)。IPTG(イソプロピルチオガラクトダイス)によって指数増殖培養を3時間誘導した。
【0376】
タウフラグメントの大量精製(1リットル細菌培養)を、若干の変更を加え、Goedertand Jakes(1990, EMBO J., 9, 4225-4230)に記載のとおり行った。液体窒素中で細胞ペレットを急速に凍結することによって、細胞を破壊した。その後、ペレットを50mMのPIPES、1mMのジチオトレイトール(DTT)を含有するバッファー(pH6.8)に懸濁した。上清中の熱安定性タンパク質をPIPES/DTTに対して透析し、次いで、同じバッファーで平衡化したホスホセルロースを含有するカラムに添加した。上記のバッファー中NaCl(0〜0.5M)勾配を用いて、タウタンパク質を溶出した。画分を、SDS−PAGE、ならびにクマシー染色および免疫ブロット法の両方によって分析した。タウを含有するそれらの画分をプールし、25mMのMES、1mMのDTT(pH6.25)に対して透析し、約5mg/ml、−20℃で保存した。タンパク質濃度は、ローリー法によって測定した(Hrrington CR (1990), “Lowry protein assay containing sodium dodecyl sulphate in microtitre plates for protein determinations on fractions from brain tissue”, Analytical Biochemistry 186: 285-287)。
【0377】
調製2は以下の点で調製1と異なる。(1)超音波破砕段階の細胞濃度を5倍増加する。(2)非タウタンパク質のDE52へのバッチ式吸収を含む。(3)タンパク質は熱処理に供しない。(4)最終ステップはポリエチレングリコールを用いる濃縮を含む。
【0378】
Escherichia coliを、アンピシリン(50μg/ml)を添加した2xTY培地(Oxoid)で対数期後期に増殖させた。5Lの培養から遠心分離によって細胞を集め、細胞ペレットを液体窒素で急速に凍結した。ペレットを、1mMのEDTA、1mMのジチオトレイトール、および1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を含有する50mMのPIPES(pH6.8)に溶解し、4℃で超音波破砕(2×3分)によって細菌溶解した。混合物を10000rpmで20分間遠心分離した。上清を1gのWhatman DE52と4℃で3時間回転した。混合物をカラムで分離し、DE52に結合しないフロースルー材料を、回転させながら、0.4gのWhatman P11(製造者の推奨に従って新しく再生)と共に4℃で3時間インキュベートする。カラムをカラム緩衝液(1mMのEGTA、5mMのEDTA、0.2mMのMgCl2、5mMのβ−メルカトエタノール、および1mMのPMSFを含有する50mMのPIPES、pH6.8)で洗浄した。タウタンパク質を、カラムバッファー中KClの0.1から1M勾配で段階的に溶出した。タウ含有画分(免疫検定によって判定)をプールし、阻止分子量1000の透析チューブを用いて、1mMのEGTA、1mMのMgCl2、および5mMのβ−メルカトエタノールを含有する80mMのPIPES(pH6.8)に対して透析した。袋の外側にポリエチレングリコール8000を2〜3時間適用することによって、透析物を濃縮した。タウの最終濃度は、3から10mg/mlであった。
【0379】
典型的な大量分取実験において、DE52に結合しない材料からタウの特定の免疫反応性はおおよそ30から40倍に精製される。最終生成物にタウの約60%が回収され、P11に結合しない材料に10%が回収され、残りはカラムを通過した画分に回収される。
【0380】
表3は、dGAの分取実験の詳細を示す。「精製倍数」は、各画分の特定の免疫反応性(すなわち、免疫反応性/タンパク質濃度)の、DEフロースルー中の特定の免疫反応性に対する比として表す。
【0381】
【表4】

【0382】
図33は、表3のデータをグラフにプロットしたものである。
【0383】
【表5】

【0384】
タンパク質は、室温で、PBSバッファーで平衡化した50×1cmセファロースCL−6Bゲル濾過カラムに流すことによって分離した。12,400から200,000の範囲の分子量マーカーをカラムに流して、そのカラムの分子量標準曲線を作成した。標準曲線は、各タンパク質標準についてVe/Voに対する分子量kDのlog10をプロットして作成したが、ここでVeは、標準の溶出量であり、Voはブルーデキストランで求めたカラムの排除容量である。
【0385】
5%グリセロールを含有するバッファー0.5mlにT40またはdGAEを負荷し、1mlの分画で採取した。画分におけるタンパク質の存在は、分光測光法で280nmの吸収によって判定した。dGAEまたはT40の存在は、それぞれモノクローナル抗体7/51または499を用いてELISAによって検出した。ELISAアッセイは、以下のとおり96ウェルPVCプレートで行った。
【0386】
各画分のサンプル50μlを、37℃で1時間インキュベートし、プレートを0.05%Tween20で洗浄、次いで、結合部位を、PBS200μl+2%無脂肪乳粉末によって37℃で1時間ブロックした。プレートを、0.05%Tween20で洗浄し、PBS+2%無脂肪乳粉末に1:10で希釈した1次抗体50μlと、37℃で1時間インキュベートした。プレートを、0.05%Tween20で洗浄し、PBS+2%無脂肪乳粉末に希釈した2次抗体(ヤギ抗マウスIgG:HRPコンジュゲート)50μlと、37℃で1時間インキュベートした。プレートを、0.05%Tween20で洗浄し、次いで、脱イオン水で洗い流し、新しく調製した基質(H22を含む酢酸ナトリウムバッファーpH5.0中TMB[テトラメチルベンジジン]、新しく調製)50μlを加え、2分間に亘ってOD650の変化率を読み取った。
【0387】
精製dGAEおよび精製T40の溶出プロファイルを、図34(dGAE)および35(hT40)に示す。これらのフラグメントは、典型的にそれぞれ約12kDおよび55kDに流出するが、約64%のmAb7.51免疫反応性(dGAE)が15kDを超えるサイズの種に対応する画分に溶出し、約50%のmAb499免疫反応性(hT40)が60kDを超えるサイズの種に対応する画分に溶出した。したがって、タウタンパク質は、少なくとも一部は、あらかじめ凝集した形態で存在する。
【0388】
(ii)タウタンパク質の異なる調製を用いて測定されたタウ凝集阻害剤の効果
タンパク質dGAおよびdGAEを上に示したとおりに調製した場合(「調製2」)、タウ−タウ結合アッセイの特性は、WO 96/30766に記載の調製方法(「調製1」)を用いて得られた特性と比べて変化していた。
【0389】
このアッセイは、96ウェルPVCプレート(Falconカタログ番号353912を用いた)を用い、および以下のステップによって行う。
1.炭酸塩バッファー中のdGA(〜10μg/ml)50μl、37℃で1時間インキュベートする。
(炭酸塩バッファー:50mMの炭酸塩/重炭酸塩、pH9.6(Na2CO3 1.59g/l、NaHCO3 2.93g/l))
2.プレートを0.05%Tween20で洗浄する。
3 200μl PBS+2%Marvelを、37℃で1時間インキュベートする。
4.プレートを脱イオン水で2回で洗い流し、次いで、0.05%Tween20で洗浄する。
5 PBS+1%魚皮ゼラチン+0.05%Tween20中dGAE(〜10μg/ml)および薬物の50μl、37℃で1時間インキュベートする。
6 プレートを0.05%Tween20で洗浄する。
7 50μlの抗体423(PBS+2%Marvelに1:10で希釈)、37℃で1時間インキュベートする。
8 プレートを脱イオン水で2回ですすぎ、次いで、0.05%Tween20で洗浄する。
9 50μlのHRP抗マウス(PBS+0.05%Tween20に1:1000で希釈)、37℃で1時間インキュベートする。
10 プレートを0.05%Tween20で洗浄し、次いで、脱イオン水で1回ですすぐ。
11 基質溶液50μl、プレートリーダにおいてOD650で直ちに2分間に亘って最初の率を読み取る。
【0390】
(基質溶液:50mM酢酸ナトリウム、pH5.0+TMB(DMSO中10mg/ml溶液100ml中に1ml)+H22(10μl/100ml))
【0391】
化合物チオニンおよび塩化トロニウムは、阻害効果を及ぼすには調製1に比べて調製2において高い濃度を要することが見出された。これは図36および37に示す。更に、化合物ジメチルメチレンブルー(DMMB)は、調製1に比べて調製2において高い阻害効力を有することが見出された。これを、図38に示す。
【0392】
調製1の方法によって調製されたタウタンパク質においても同様の相違が認められたが、これは経時的にin vitroで凝集させたものであり、この作用に関しては以下のように解釈される。タウ−タウ結合の最大の阻害を得るためには2つの効果が達成されなければならないので、チオニンおよび塩化トロニウムなどの化合物のより高い濃度が必要とされる。
1.水相においてあらかじめ存在する凝集の解離、
2.水相種の固相との結合の阻害である。
【0393】
調製2のアッセイにおけるDMMBの高い効力は、両方の阻害効果に必要とされる作用部位での高い結合親和性によって説明できる。
【0394】
調製2のプロトコルに従って調製された完全長タウタンパク質(hT40)は、固相中のdGAと共に水相中で用いられたとき、最小のタウ−タウ結合活性を示した。しかしながら、hT40が固相で用いられたとき、dGAEの結合は、固相のdGAとのdGAEの結合に関して得られたものと類似していた(図39a〜cを参照のこと)。これは、水相で形成されたhT40凝集において、固相のdGAとの結合相互作用に必要とされるドメイン内、またはドメインを貫いて既にタウ−タウ結合が生じているためであると解釈される。hT40が固相において最初にプレートされるとき、PVCとの結合は、必要なタウ−タウ結合部位が利用できるようなやり方でタンパク質/凝集を開く。
【0395】
(iii)タウタンパク質の異なる調製を用いて測定されたタウ凝集阻害剤の効果
調製2のアッセイ形式において、プリムリンおよびチアジンレッドに代表される類の有効なリガンドは、タウ−タウ結合に阻害活性を示さない。これを図40に示す(図10を参照)。更にはこのアッセイにおいて、これらの化合物は100μMを超える濃度で(すなわち、タウタンパク質に関して100倍のモル比)タウ−タウ結合を増強する。
【0396】
DMMBは典型的に、DMMBの不在下で認められるタウ−タウ結合に比べて、DMMB5μMで23%、DMMB15μMで17%のタウ−タウ結合(タウは典型的に1μMで存在)まで低下させる。
【0397】
予期せぬことに、この阻害効果は、増加濃度のプリムリンおよびチアジンレッドに代表される高親和性リガンドの存在下で共インキュベートすることによって完全に覆され得る。これを図41に示す。
【0398】
したがって、凝集タウリガンドは機能上、それ自体ではタウ−タウ結合を阻害しないが、タウ−タウ結合の有効な阻害剤の阻害効果をブロックする化合物として特徴づけることができる。
【0399】
図42からわかるように、DMMBによって生じるタウ−タウ結合の阻害は、増加する過剰モルのプリムリン存在下で、漸進的に減衰および逆転する。チアジンレッドに関しても同様の効果が示される。これは、DMMBの最大阻害効果はこれらの化合物によって低減され、したがってこれらの化合物はDMMBの非競合的阻害剤として作用していることを示唆している。これらのリガンドが、例えばDMMB活性に必要な臨界結合ドメインの外側の領域においてこのアッセイに用いたタウ凝集を安定させ、したがってDMMBのタウ−タウ結合への阻害効果を妨げるというのが、1つの考え得る説明であるかもしれない。
【0400】
図43〜45は、DMMBの任意の所与の濃度に関して、プリムリン(43、44)またはチアジンレッド(45)の存在下で、タウ−タウ結合に、標準的なミカエリス−メンテン式によってモデル化することのできる量的増加があることを示している。このことは、これらのリガンドのタウ凝集増強効果が、おそらくはアッセイの水相に導入されたタウ凝集内の、占領されたリガンド結合部位の割合に比例することを示唆している。両方のリガンドの平均BMax値は約1.6である。すなわち、最大リガンド効果は、薬物不在下で認められるタウ−タウ結合シグナルの1.6倍となる。この効果の平均Kd値は約15倍である。すなわち、DMMBの>4μMの任意の所与の濃度に関して、リガンドのモル過剰がDMMB濃度に比べて15倍であるとき、最大増加の50%のタウ−タウ結合を認めることができる。
【0401】
実施例8−本発明で提供されるリガンドに基づく更なる診断用リガンドを同定するためのアッセイ例
上記のようにADのPHFを標識するのに適した2種のリガンドが、既に定義されているので、スクリーニングアッセイでこれらの化合物/誘導体を用いて更なるリガンドを開発することができる。更に、モデル化の方法は、既に提示されたリガンドに基づくことができる。
【0402】
(i)スルホン化ベンゾチアゾール部位の新規リガンドの同定
凝集タウ分子(例えば、溶液中のあらかじめ凝集したタウ、固相との結合、またはADの脳から単離された高密度PHF、WO96/30766を参照)の調製物とインキュベートした公知のスルホン化ベンゾチアゾールの適切に標識された調製物を用いて、適切なリガンドであると思われる化合物を導入することができ、PHF内の結合を妨げるような方法で既知のリガンドと競合するそれらの化合物の能力を試験することができる。
(ii)フェノチアジン部位の新規リガンドの同定
タウ−タウ結合部位における潜在的阻害剤を同定するために、1次スクリーニングとして、WO96/30766に記載のタウ−タウ結合アッセイを用いることができる。同様に、上記の凝集タウと共にインキュベートした公知のジアミノフェノチアジンの適切に標識された調製物を用いて、このPHF結合部位の競合物であり、したがって潜在的に適切なPHFリガンドであると思われる他の物質をスクリーニングすることができる。
【0403】
競合アッセイの物理的手段は当分野においてよく知られている。そのなかには、PHFに結合していないスルホン化ベンゾチアゾール様化合物またはジアミノフェノチアジン様化合物、すなわち溶液に残存している化合物に由来する蛍光、放射能、または他の任意の適切なレポートシステムの測定を含むことができる。
【0404】
【表6】



【図面の簡単な説明】
【0405】
【図1】図1は、ADの18症例に関して、抗体mAb423(A)、またはPHF画分のギ酸処理後mAb7.51(B)を用いて測定したPHFタウの部位分布を示す図である。Mukaetova-Ladinska et al., (1993), Am. J. Pathol. 143, 565-578から引用。
【図2a】図2(a)は、(Mukaetova-Ladinska, E. B. et al., (2000), Am. J. Pathol. Vol.157, No. 2, 623-636)から引用した、ADの病理学的病期におけるタウ分子の凝集および神経原線維のもつれの出現を示す図である。
【図2b】図2(b)は、Braakによって提示された神経病理学的病期分類を示す図である。
【図2c】図2(c)は、DSM−IV判定基準による臨床痴呆の出現が病期IIIから病期IVの移行に統計的に一致すると考えられることを示す図である。
【図2d】図2(d)は、Harrington et al., (Am J Pathol 1994; 145: 1472-1484)に報告されている、対照症例およびアルツハイマー病を有する症例から単離されたSDS不溶性ベータアミロイドタンパク質のレベルを示す図である。ADの平均レベルは対照より高いが、AD症例の70%が対照例に見出されたベータアミロイドのレベルと重なっている。
【図3】図3は、神経原線維のもつれの概略図(上)、および疾患進行中に観察される免疫反応性変化(下)を示す図である。Bondareff et al., (1994), J. Neuropathol. Exp. Neurol. 53, 2, 158-164から引用。
【図4】図4は、凝集タウ分子に高親和性で結合できる最小限界構造(化合物4a)、化合物4aのビオチン化型(化合物4b)、およびRが任意の適切な置換基である化合物4aのR置換誘導体(化合物4c)の化学構造を示す図である。
【図5−1】図5は、プリムリン(化合物1a)、チオフラビンT(化合物1b)、2−(4−アミノフェニル)−6−メチル−7−スルホネートベンゾチアゾール(化合物2)、チアジンレッド(化合物3a)、およびチアジンイエロー(化合物3b)の化学構造を示す図である。
【図5−2】図5は、プリムリン(化合物1a)、チオフラビンT(化合物1b)、2−(4−アミノフェニル)−6−メチル−7−スルホネートベンゾチアゾール(化合物2)、チアジンレッド(化合物3a)、およびチアジンイエロー(化合物3b)の化学構造を示す図である。
【図6】図6は、溶液中プリムリン(左)、およびPHFの純粋調製物中結合時(右)の蛍光ピークを示す図である。
【図7】図7は、無水シトラコン酸の不在下(左)および存在下(右)でPHFに結合したプリムリンの蛍光ピークを示す図である。示されているように、無水シトラコン酸は、PHFの規則正しい構造を乱し、遊離タウおよび遊離非結合プリムリンを放出する作用を有する。無水シトラコン酸はまた、リシン残基の電荷を逆転する作用を有し、これもプリムリンの放出において役割を果たし得る。
【図8a】図8aは、WO 96/30766に開示されている、例示的タウ−タウ結合阻害剤を示す図である。
【図8b】図8bは、WO 96/30766に開示されている、例示的タウ−タウ結合阻害剤を示す図である。
【図9】図9は、アルシアンブルーの存在下でPHFに結合したプリムリンの蛍光を示す図である。この図は、PHF構造の攪乱物質である(参考文献33)アルシアンブルーの存在下、460nmの特徴的な結合プリムリン蛍光ピークに乱れのないことを示している。
【図10】図10は、WO 96/30766に記載され、本明細書において「調製1」と称する方法に従って調製されたタウタンパク質を用いる、タウ−タウ結合への種々の化合物(「MR」、化合物:タウのモル比)の効果を示す図である。
【図11a】図11aは、[11C]標識メチレンブルーの合成を概略的に示す図である。この反応は、[11C]ヨードメタンによるアミンのN−メチル化を経て進行する。HPLCを用いて、任意の副生成物から所望の生成物を精製することができる。
【図11b】図11bは、チオニン、NaH、およびCH3Iに基づく更なる合成を示す図である。
【図12】図12は、[11C]標識アズールBの合成を概略的に示す図である。この反応は、[11C]ヨードメタンによるアミンのN−メチル化を経て進行する。HPLCを用いて、任意の副生成物から所望の生成物を精製することができる。
【図13】図13は、図4の化合物4aの[18F]標識誘導体の合成を概略的に示す図である。この反応は、前駆体化合物のニトロ基を[18F]フルオロ基に置き換える求核芳香族置換を経て進行する。HPLCを用いて、任意の副生成物から所望の生成物を精製することができる。
【図14】図14は、プリムリン、ベンゾチアゾール類似体、およびチアジンイエローの構造を示す図である。これらの分子の大きさは、各分子についてAおよびBと示した、結晶構造からわかるC−C距離に基づいて決定された。C−C距離は以下のとおりである。 プリムリン 最小値 14.78AU 最大値 15.11AU 平均値 14.95AU 類似体 最小値 15.05AU 最大値 15.26AU 平均値 15.17AU チアジンイエロー 最小値 15.73AU 最大値 16.14AU 平均値 15.93AU
【図15】図15は、プリムリン構造の「B」部分の結晶構造を示す図である(Soon-Beng Teo et al., 1995, Acta Crystallogr., Sect. C, 591)。
【図16】図16は、プリムリン構造の「B」部分の結晶構造を示す図である(Soon-Beng Teo et al., 1995, Acta Crystallogr., Sect. C, 591)。
【図17】図17は、N2Aと示す化合物の結晶構造を示す図である(Gilardi, R.D.,1972, Acta Chrystallogr. Sect. B, 107)。
【図18】図18は、N2Aと示す化合物の結晶構造を示す図である(Gilardi, R.D.,1972, Acta Chrystallogr. Sect. B, 107)。
【図19】図19は、ジアゾアミノベンゼンの結晶構造を示す図である(Gldkova & Kondrashev, 1972, Kristallografiya (41) 17 33)。
【図20】図20は、ジアゾアミノベンゼンの結晶構造を示す図である(Gldkova & Kondrashev, 1972, Kristallografiya (41) 17 33)。
【図21】図21は、図15および16の分子が空間でどのように結晶化するのかを例示する図である。
【図22】図22は、図15および16の分子が空間でどのように結晶化するのかを例示する図である。
【図23】図23は、活性リガンドである分子(プリムリン、および「類似体」)、およびチアジンイエロー(リガンドとして不活性である)の平均、最大、および最小値の広がりを示す図である。寸法はオングストローム単位(AU)で示す。
【図24】図24は、基本的なベンゾチアゾール核(すなわち、図5の分子1bおよび2)、およびジアミノフェノチアジンの同様の比較を示す図である。これらの距離は、炭素から炭素の距離である。
【図25】図25は、Braakの病期分類の関数として、細胞外のもつれの可能性を示す図である。E2/TransおよびE4/HCにおける細胞外のもつれの確率に基づいて、病期2〜4は病期1と明確に区別することができる。
【図26】図26は、Braakの病期分類の関数として、細胞内のもつれの可能性を示す図である。細胞内のもつれは、これらの領域における初期の識別の根拠には不充分であるが、新皮質領域を用いる病期4および5の識別では良好な根拠を提供する。
【図27】図27は、図25に対応する図であるが、ここでは死亡の12カ月前にMMSEスコアが21を超える症例が選択された。類似の結果が得られる。
【図28】図28は、図26に対応する図であるが、死亡の12カ月前にMMSEスコアが21を超える症例の使用が選択された。類似の結果が得られる。
【図29】図29は、Braakの病期分類の関数として、細胞外のもつれの密度(mm2当たりのカウント)を示す図である。図25に示したものと類似の結果が得られる。
【図30】図30は、Braakの病期分類の関数として、細胞内のもつれの密度(mm2当たりのカウント)を示す図である。
【図31a】図31aは、0.001%のチオフラビンTによって視覚化した、かすかに認められるもつれを示す図である(矢印)。このようなifI懸濁液において、もつれは青色蛍光により見ることができるが、これは調製物内の不純物の結合に関連するものと区別されない。下のパネルは、0.001%のチオフラビンTにより生じた青色のもつれの蛍光が、0.001%のプリムリンにより生じた黄色のもつれの蛍光に置き換わっていることを示している。
【図31b】図31bは、プロナーゼ消化後、標識されたPHFの電子顕微鏡検査を示す図である。(a)図4に4bとして示したビオチン化ベンゾチアゾール類似体による化学標識。PHFを、プロナーゼ消化後、炭素被覆グリッドに沈着させ、化合物4bと共に短時間インキュベートし、その後、金コロイドと共役させた抗ビオチン抗体調製物と共にインキュベートした。単離PHFのラベル(decoration)は、化合物4bのタンパク質分解的に安定なPHF構造への結合を確証する。(b)Novak et al. 1993(Novak M, Kabat J, Wischik CM (1993) “Molecular characterization of the minimal protease-resistant tau unit of the Alzheimers’ disease paired helical filament”, EMBO J 12: 365-370)に記載の、プロナーゼ消化後単離PHFのmAb423免疫標識、それに続く、金共役ヤギ抗マウス2次抗体とのインキュベート。本明細書に示すように、mAb423は、細胞内のもつれ(ファジーな外殻内でN末端タウ免疫反応性を保護する)由来のPHFを不充分に標識するが、プロナーゼ消化PHFを強く標識する。同様に、Mena et al. (1996)(Mena R, Edwards PC, Harrington CR, Mukaetova-Ladinska EB, Wischick CM, “Staging the pathological assembly of truncated tau protein into paired helical filaments in Alzheimer's disease”, Acta Neuropathol 91: 633-641)は、細胞内のもつれにおいて、mAb423の免疫反応性は大幅に閉鎖されるが、切片のギ酸前処理によって露出され得ることを示している。
【図32】図32は、下の実施例7に記載する、精製タウタンパク質の「調製2」を示す図である。
【図33】図33は、dGAの調製実験の結果をグラフにプロットした図である。「精製倍数」は、各画分の特定の免疫反応性(すなわち、免疫反応性/タンパク質濃度)の、DEフロースルー中の特定の免疫反応性に対する比として表す。
【図34】図34は、精製dGAEのゲル濾過クロマトグラフィーを示す図である。非変性条件での外見上溶出サイズ:1〜約320kD、2〜約80kD、3〜約30kD、4〜約10kD。mAb7.51免疫反応性の約64%が、サイズ>15kDの種に対応する画分に溶出する。
【図35】図35は、精製T40のゲル濾過クロマトグラフィーを示す図である。非変性条件における外見上溶出サイズ:1〜約450kD、2〜約160kD、3〜約55kD。mAb499免疫反応性の約50%が、サイズ>60kDの種に対応する画分に溶出する。
【図36】図36は、調製1および2におけるタウ−タウ結合に対するチオニン活性を示す図である。
【図37】図37は、調製1および2におけるタウ−タウ結合に対する塩化トロニウム活性を示す図である。
【図38】図38は、調製1および2におけるタウ−タウ結合に対するDMMB活性を示す図である。
【図39a】図39a〜cは、調製2プロトコルに従って調製された完全長タウタンパク質(hT40)が、固相(b)中のdGAとともに水相で用いられた場合、最小のタウ−タウ結合活性を示したことを示す図である。しかしながら、hT40が固相(c)で用いられた場合、dGAEの結合は、固相(a)中のdGAへのdGAEの結合に関して得られたものと類似していた。
【図39b】図39a〜cは、調製2プロトコルに従って調製された完全長タウタンパク質(hT40)が、固相(b)中のdGAとともに水相で用いられた場合、最小のタウ−タウ結合活性を示したことを示す図である。しかしながら、hT40が固相(c)で用いられた場合、dGAEの結合は、固相(a)中のdGAへのdGAEの結合に関して得られたものと類似していた。
【図39c】図39a〜cは、調製2プロトコルに従って調製された完全長タウタンパク質(hT40)が、固相(b)中のdGAとともに水相で用いられた場合、最小のタウ−タウ結合活性を示したことを示す図である。しかしながら、hT40が固相(c)で用いられた場合、dGAEの結合は、固相(a)中のdGAへのdGAEの結合に関して得られたものと類似していた。
【図40】図40は、プリムリン、およびチアジンレッドが、調製2においてタウ−タウ結合に対して阻害活性を持たず、更には高濃度でそのような結合を増強することを示す図である。
【図41a】図41aは、DMMBに対する「モル過剰」と表した増加濃度のプリムリン(a)の存在下での、タウ−タウ結合に対する5μMのDMMBの阻害作用のブロッキングを示す図である。
【図41b】図41bは、DMMBに対する「モル過剰」と表した増加濃度のチアジンレッド(b)の存在下での、タウ−タウ結合に対する5μMのDMMBの阻害作用のブロッキングを示す図である。
【図41c】図41cは、DMMBに対する「モル過剰」と表した増加濃度のプリムリン(c)の存在下、15μM DMMBの阻害作用のブロッキングを示す図である。15μM DMMBに関しても類似の結果が示される。
【図41d】図41dは、DMMBに対する「モル過剰」と表した増加濃度のチアジンレッド(d)の存在下、15μMのDMMBの阻害作用のブロッキングを示す図である。15μM DMMBに関しても類似の結果が示される。
【図42】図42は、増加する過剰モルのプリムリン存在下での、DMMBによるタウ−タウ結合の阻害の減衰および逆転を示す図である。各グラフに関して、示したDMMB濃度の0×、1×、5×、10×、100×のプリムリンと共インキュベートされた一定濃度のDMMBの存在下でのタウ−タウ結合が示される。DMMBによって生じたタウ−タウ結合の阻害は、増加する過剰モルのプリムリンの存在下、漸進的に減衰および逆転する。
【図43】図43は、25μMのDMMB、および示したとおりの増加する過剰モルのプリムリンの存在下でのタウ−タウ結合曲線を示す図である。タウ−タウ結合は以下のようにモデル化できる。 結合=(BMax×[Prim])/(Kd+[Prim]) ここで、BMax= 1.67 Kd = 13.37 r = 0.977(実測値対予測値)
【図44】図44は、5μMのDMMB、および示したとおりの増加する過剰モルのプリムリンの存在下でのタウ−タウ結合曲線を示す図である。タウ−タウ結合は以下のようにモデル化できる。 結合=(BMax×[Prim])/(Kd+[Prim]) ここで、BMax= 1.38 Kd = 13.86 r = 0.927(実測値対予測値)
【図45】図45は、5μMのDMMB、および示したとおりの増加する過剰モルのチアジンレッドの存在下でのタウ−タウ結合曲線を示す図である。タウ−タウ結合は以下のようにモデル化することができる。 結合=(BMax×[TR])/(Kd+[TR]) ここで、BMax= 1.64 Kd = 17.45 r = 0.915(実測値対予測値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経原線維変性を有する対象におけるタウオパシーに伴う神経原線維変性のBraak病期を決定する方法であって、
(i)対象に、凝集対螺旋フィラメント(PHF)タウタンパク質を標識するリガンドを投与するステップであって、ここで前記リガンドは、血液脳関門を通過することができ、そして検出可能な化学基と、共役し、キレートしまたは会合している、ステップ、
(ii)対象の脳の内側頭葉中の細胞外凝集PHFタウに結合したリガンドの存在および/または量を測定するステップ、
(iii)(ii)で行った測定の結果を、対象における神経原線維変性の程度と相関させるステップ
を含む方法。
【請求項2】
リガンドが、式:
【化1】


(式中:
Wは、S、O、またはNHであり;
X、Y、およびZの正確に1つはCHまたはNであり;
その他のX、Y、およびZは、CHであり;
1は、Li、Na、K、またはCsから選択されるアルカリ金属カチオンであり、
RLは、堅いリンカー基であり;
Ar1は、C5-20アリール基であり;
nは、0〜3の整数であり;および、
各RBTが、独立して、C1-4アルキル、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、またはアミノから選択されるコア置換基である)
で示される化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
堅いリンカー基RL、およびアリール基Ar1のそれぞれが、事実上平面状であり、リガンドが図16の化合物のねじれ以下のねじれを有する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
nが1であり、そしてRBTが、独立して−Me、−Et、−nPr、または−iPrである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
RLが、式:
【化2】


(式中:
mは0〜4の整数であり、各RRLが、独立して、堅いリンカーアリール置換基である)
で示される基であり、リガンドが式:
【化3】


を有する、請求項2記載の方法。
【請求項6】
RLが、式:
【化4】


で示される基である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
RLが、式:
【化5】


(式中、
pは0〜3の整数であり、
各RRLが、独立して、堅いリンカーアリール置換基である)で示される基であり、
化合物が、式:
【化6】


を有する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
RLが、式:
【化7】


で示される基である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
Ar1が:
ベンゼン(C6)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)、およびピレン(C16)に由来する基;
フラン(オキソール)、チオフェン(チオール)、ピロール(アゾール)、イミダゾール(1,3−ジアゾール)、ピラゾール(1,2−ジアゾール)、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾールおよびオキサトリアゾールに由来するC5ヘテロアリール基;
イソオキサジン、ピリジン(アジン)、ピリダジン(1,2−ジアジン)、ピリミジン(1,3−ジアジン)、ピラジン(1,4−ジアジン)、トリアジン、テトラゾール、およびオキサジアゾール(フラザン)に由来するC6ヘテロアリール基;
ベンゾフラン、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、プリン、ベンゾイミダゾールに由来するC9複素環基;
キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン、ピリドピリジン、キノキサリンに由来するC10複素環基;
カルバゾールに由来するCl3複素環基;並びに
アクリジン、キサンテン、フェノキサチイン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジンに由来するCl4複素環基
から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項10】
Ar1が、フェニルコアを有するアリール基であり、式:
【化8】


(式中、
qは0〜5の整数であり;
各RAは、独立して、アリール置換基であり;
各RAが、独立して、−OH、−NH2、−NHR1、−NR12、−SO32、およびC1-4アルキルから選択され;
ここで、
1およびR2が、それぞれC1-4アルキルであり、
2が、Li、Na、K、またはCsから選択されるアルカリ金属カチオンであり、
Cは、存在するときは、反応性共役化置換基、または
Cは、検出可能な標識であるか、それを含有する)
を有し、
化合物が、式:
【化9】


を有する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
Cが、存在し、反応性共役化置換基であり、
別の分子との化学反応により共役化して、共有結合を形成するのに適した反応性官能基、
強い非共有相互作用により他の分子に共役させるのに適した部分、または
複合体またはキレート形成により別の分子と共役させるのに適した部分
であるか、またはそれを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
Cが、存在し、テクネチウムキレート化基であるか、それを含有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
Cが、存在し、染料、蛍光マーカー、抗原基、安定もしくは不安定放射性同位元素、およびポジトロン放出炭素原子から選択される検出可能な標識であるか、またはそれを含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
リガンドが、式:
【化10】


を有する、請求項8記載の方法。
【請求項15】
Ar1が、ヒドロキシ置換フェニルコアを有するアリール基であり、式:
【化11】


(式中、
sは0〜4の整数であり、
各RAは独立してアリール置換基であり、
は、存在するときは、反応性共役化置換基であるか、または
は、検出可能な標識であるか、またはそれを含有する)
を有する、請求項10記載の方法。
【請求項16】
リガンドが、式:
【化12】


(式中、
1は、Li、Na、K、またはCsから選択されるアルカリ金属カチオンであり;
nは、0〜3の整数であり;
各RBTは、独立して、ベンゾチアゾール置換基であり;
mは、0〜4の整数であり;
各RRLは、独立して、堅いリンカーアリール置換基であり;
sは、0〜4の整数であり;
各RAは、独立して、アリール置換基であり;および
Cは、存在するとき、反応性共役化置換基であり、または
Cが、検出可能な標識であるか、またはそれを含有する)
を有する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
リガンドが、式:
【化13】


を有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
リガンドが、式:
【化14】


を有する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
リガンドが、式:
【化15】


を有する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
Ar1 が、ナフチルコアを有するアリール基であり、式:
【化16】


(式中、
tは0〜3の整数であり、
uは0〜4の整数であり、
そして各RAは、独立して、アリール置換基である)
を有し、
化合物が、式:
【化17】


を有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
リガンドが、式:
【化18】


を有する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
脳の内側頭葉および新皮質構造に存在する競合非凝集タウ結合部位を標識するブロッキングリガンドを対象に投与するステップを更に含み、
ブロッキングリガンドが、式:
【化19】


で示されるベンゾチアゾールである、請求項1記載の方法。
【請求項23】
式:
【化20】


(式中、
1は、アルカリ金属カチオンであり;
nは、0〜3の整数であり;
各RBTは、独立して、ベンゾチアゾール置換基であり;
mは、0〜4の整数であり;
各RRLは、独立して、堅いリンカーアリール置換基であり;
sは、0〜4の整数であり;
各RAは、独立して、アリール置換基であり;および
Cは、存在するとき、反応性共役化置換基であり、または
Cが、検出可能な標識であるか、またはそれを含有する)
で示されるリガンド。
【請求項24】
1が、Li、Na、K、またはCsである、請求項23記載のリガンド。
【請求項25】
各RBTが、独立してC1-4アルキル、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、またはアミノである、請求項23記載のリガンド。
【請求項26】
各RBTが、独立して、−Me、−Et、−nPr、−iPr、−OH、−OMe、−OEt、−O(nPr)、−O(iPr)、−NO2、−CN、−F、−Cl、−Br、−I、−NH2、−NH2、−NHMe、−NHEt、−NH(iPr)、−NH(nPr)、−NMe2、−NEt2、N(iPr)2、または−N(nPr)2である、請求項25記載のリガンド。
【請求項27】
各RBTが、独立して、C1-4アルキルである、請求項25記載のリガンド。
【請求項28】
各RBTが、独立して、−Me、−Et、−nPr、または−iPrである、請求項27記載のリガンド。
【請求項29】
各RBTが−Meである、請求項28記載のリガンド。
【請求項30】
nが1であり、かつRBTが、独立して、−Me、−Et、−nPr、または−iPrである、請求項28記載のリガンド。
【請求項31】
nが1であり、RBTが−Meである、請求項30記載のリガンド。
【請求項32】
ベンゾチアゾール基が、下記式:
【化21】


を有する、請求項23記載のリガンド。
【請求項33】
リガンドが、下記式:
【化22】


を有する、請求項32記載のリガンド。
【請求項34】
各RRLが、独立してC1-4アルキル、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、またはアミノである、請求項23記載のリガンド。
【請求項35】
各RRLが、独立して、−Me、−Et、−nPr、−iPr、−OH、−OMe、−OEt、−O(nPr)、−O(iPr)、−NO2、−CN、−F、−Cl、−Br、−I、−NH2、−NHMe、−NHEt、−NH(iPr)、−NH(nPr)、−NMe2、−NEt2、N(iPr)2、または−N(nPr)2である、請求項34記載のリガンド。
【請求項36】
各RRLが、独立して、C1-4アルキルである、請求項35記載のリガンド。
【請求項37】
各RAが、独立して、−OH、−NH2、−NHR1、−NR12、−SO32、およびC1-4アルキルから選択され;
ここで、
1およびR2が、それぞれC1-4アルキルであり、
2が、アルカリ金属カチオンである、請求項23記載のリガンド。
【請求項38】
2が、Li、Na、K、またはCsである、請求項37記載のリガンド。
【請求項39】
Cが、存在し、反応性共役化置換基であり、別の分子との化学反応によってそれに共役させ、それと共有結合を形成するのに適した反応性官能基であるか、それを含有する、請求項23記載のリガンド。
【請求項40】
Cが、存在し、活性エステルであるか、それを含有する、請求項39記載のリガンド。
【請求項41】
Cが存在し、スクシンイミジルエステルであるか、またはそれを含有する、請求項40記載のリガンド。
【請求項42】
Cが存在し、反応性共役化置換基であり、強い非共有性相互作用により別の分子に共役させるのに適する部分であるか、またはそれを含有する、請求項39記載のリガンド。
【請求項43】
Cが存在し、ビオチンであるか、またはそれを含有する、請求項42記載のリガンド。
【請求項44】
Cが存在し、反応性共役化置換基であり、複合体またはキレート形成による別の分子への共役に適した部分であるか、またはそれを含有する、請求項39記載のリガンド。
【請求項45】
Cが存在し、テクネチウムキレート化基であるか、またはそれを含有する、請求項39記載のリガンド。
【請求項46】
Cが存在し、ジエチレントリアミンペンタ酢酸であるか、またはそれを含有する、請求項45記載のリガンド。
【請求項47】
Cが存在し、検出可能なラベルであるか、またはそれを含有する、請求項23記載のリガンド。
【請求項48】
Cが存在し、染料、蛍光マーカー、抗原基、安定または不安定放射性同位元素、またはポジトロン放出炭素原子であるか、それを含有する、請求項47記載のリガンド。
【請求項49】
Cが存在し、18Fであるか、またはそれを含有する、請求項48記載のリガンド。
【請求項50】
Cが存在し、ポジトロン放出炭素原子であるか、またはそれを含有する、請求項49記載のリガンド。
【請求項51】
リガンドが、式:
【化23】


を有する、請求項23記載のリガンド。
【請求項52】
リガンドが、式:
【化24】


を有する、請求項51記載のリガンド。
【請求項53】
リガンドが、式:
【化25】


を有する、請求項52記載のリガンド。
【請求項54】
リガンドが、式:
【化26】


を有する、請求項52記載のリガンド。
【請求項55】
リガンドが、式:
【化27】


を有する、請求項54記載のリガンド。
【請求項56】
リガンドが、式:
【化28】


を有する、請求項55記載のリガンド。
【請求項57】
リガンドが、式:
【化29】


を有する、請求項52記載のリガンド。
【請求項58】
リガンドが、式:
【化30】


を有する、請求項57記載のリガンド。
【請求項59】
リガンドが、式:
【化31】


を有する、請求項58記載のリガンド。
【請求項60】
リガンドが、式:
【化32】


を有する、請求項57記載のリガンド。
【請求項61】
リガンドが、式:
【化33】


を有する、請求項60記載のリガンド。
【請求項62】
リガンドが、式:
【化34】


を有する、請求項60記載のリガンド。
【請求項63】
リガンドが、式:
【化35】


を有する、請求項62記載のリガンド。
【請求項64】
リガンドが、式:
【化36】


を有する、請求項63記載のリガンド。
【請求項65】
検出可能な化学基と共役しているか、キレートしているか、さもなくばそれと会合している、請求項51記載のリガンド。
【請求項66】
活性成分として、少なくとも90%、95%または98%の請求項23記載のリガンドを含む、診断組成物。
【請求項67】
担体物質または薬学的におよび生理学的に許容し得る賦形剤を更に含む、請求項66記載の診断組成物。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31a】
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【図31b】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39a】
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【図39b】
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【図39c】
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【図40】
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【図41a】
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【図41b】
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【図41c】
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【図41d】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2009−35566(P2009−35566A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243567(P2008−243567)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【分割の表示】特願2002−573679(P2002−573679)の分割
【原出願日】平成14年3月20日(2002.3.20)
【出願人】(507092584)ウイスタ・ラボラトリーズ・リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】WISTA LABORATORIES LTD.
【Fターム(参考)】