説明

神経因性疼痛の予防及び/または治療剤

ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物、例えば式(II)


(式中、Wはイミダゾール環の4位または5位に結合したときにヒスタミンH3受容体拮抗活性及び/または作用活性を与える基であり、R及びRは同一または異なって、置換もしくは非置換の低級アルキル等を表す)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する神経因性疼痛の予防及び/または治療剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物を有効成分として含有する神経因性疼痛の予防及び/または治療剤に関する。
【背景技術】
神経因性疼痛は、末梢または中枢神経系の機能異常による病的な難治性の疼痛であり、傷害や危害から体を守る生体警告信号としての感覚や急性痛と対比される痛みである。神経因性疼痛は、外傷、手術、ヘルペスウイルスやエイズウイルス等の感染、癌、糖尿病等の代謝異常等によって引き起こされる神経障害により発症することが知られており、その発症メカニズムについては不明な点が多いが、末梢または中枢神経系の機能的・可塑的変化によって引き起こされると考えられている。神経因性疼痛の治療には、神経ブロック療法、電気刺激療法、抗てんかん薬、抗けいれん薬、非ステロイド性消炎鎮痛薬等による薬物療法等が使用されているが、三叉神経痛に対するカルマバゼピンの効果等を除き著効を示す例は殆ど無く、有効な神経因性疼痛治療剤の開発が望まれている。
一方、ヒスタミン受容体には、H1、H2、H3、H4受容体の4種類のサブタイプが存在することが知られている。ヒスタミンH3受容体は、1983年にArrangらによって発見され[ネイチャー(Nature)、1983年、302巻、832−837頁]、1999年にクローニングがなされた[モレキュラー・ファーマコロジー(Molecular Pharmacology)、1999年、55巻、1101−1107頁]。ヒスタミンH3受容体は、知覚神経、脊髄及び中枢神経系にその発現が認められ、オートレセプターまたはヘテロレセプターとして神経伝達物質の遊離を調節している。ヒスタミンH3受容体拮抗剤の適応対象疾患としてはアルツハイマー病、摂食障害、睡眠障害、注意欠陥過活動性障害等が想定されている(EP09832300)。またヒスタミンH3受容体拮抗薬と急性の侵害性の痛みとの関連が報告されているが[例えばブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)、1994年、第111巻、p.1269−1279;ファーマコロジー・バイオケミストリー・アンド・ビヘイビアー(Pharmacology,Biochemistry and Behavior)、2002年、第72巻、p.751−760参照]、ヒスタミンH3受容体拮抗薬と神経因性疼痛との関連についてはこれまで報告がない。
【発明の開示】
本発明の目的は、ヒスタミンH3拮抗作用を有する化合物を有効成分として含有する神経因性疼痛の予防及び/または治療剤を提供することにある。
本発明は、以下の(1)〜(24)に関する。
(1)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する神経因性疼痛の子防及び/または治療剤。
(2)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(I)

(式中、R及びRは同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換の環状アルキルを表すか、またはR及びRが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成し、
Xは酸素原子または硫黄原子を表す)で表される化合物である前記(1)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(3)R及びRの一方が水素原子であり、もう一方が置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換の環状アルキルであり、Xが硫黄原子である前記(2)記載の神経因性疼痛の子防及び/または治療剤。
(4)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物がチオペラミドである前記(1)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(5)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(II)

(式中、Wはイミダゾール環の4位または5位に結合したときにヒスタミンH3受容体拮抗活性及び/または作用活性を与える基であり、
及びRは同一または異なって、置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換の環状アルキルを表すか、またはR及びRが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩である前記(1)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(6)R及びRが同一または異なって、置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換の環状アルキルである前記(5)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(7)R及びRが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の含窒素複素環基を形成する前記(5)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(8)−NRが式(III)

(式中、Rは低級アルキル、環状アルキル、アリール、アラルキル、低級アルカノイル、環状アルカノイル、アロイル、低級アルコキシカルボニルまたはアミノアルキルカルボニルを表す)で表される基である前記(5)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(9)Wが式(IV)

(式中、R、R、R、R及びR10は同一または異なって、水素原子、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の環状アルカノイル、置換もしくは非置換のアロイルまたは置換もしくは非置換の低級アルカノイルアミノを表し、
n1は1〜7の整数を表す)で表される基である前記(5)〜(8)のいずれかに記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(10)Wが式(V)

(式中、R8aは前記Rと同義であり、n1aは前記n1と同義である)で表される基である前記(5)〜(8)のいずれかに記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(11)n1が1または2である前記(10)記載の神経因性疼痛の子防及び/または治療剤。
(12)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(VI)

[式中、Zは置換もしくは非置換の低級アルキレンを表し、
は硫黄原子、−NH−または−CH−を表し、
11、R13及びR15は同一または異なって水素原子、低級アルキル、環状アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表し、
12は水素原子、低級アルキル、環状アルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルまたは式(VII)

(式中、n2は1〜4の整数を表し、R16は低級アルキル、環状アルキルアルキルまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表す)で表される基を表し、
14は水素原子、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表す]で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩である前記(1)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(13)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物がクロベンプロピットである前記(1)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(14)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(VIII)

{式中、Aは結合またはカルボニルを表し、
は酸素原子または硫黄原子を表し、
はフッ素原子またはヒドロキシで置換されていてもよい低級アルキレンを表し、
及びPは水素原子を表すか、または一緒になって結合を表し、
17、R18、R19及びR20は同一または異なって水素原子、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、カルボキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイルオキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の環状アルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−NR24a24b(式中、R24a及びR24bは同一または異なって水素原子、低級アルキルまたは低級アルカノイルを表す)、
−C(=O)−NR24c24d(式中、R24c及びR24dはそれぞれ前記R24a及びR24bと同義である)、−SO−NR24e24f(式中、R24e及びR24fはそれぞれ前記R24a及びR24bと同義である)、−L−R25[式中、Lは酸素原子、硫黄原子、低級アルキレン、低級アルケニレン、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(=NOR26)−(式中、R26は水素原子または低級アルキルを表す)または−N(R27)−(式中、R27は水素原子、低級アルキルまたは低級アルカノイルを表す)を表し、R25は環状アルキル、アリールまたは複素環基を表す]または−L−L−R28[式中、Lは環状アルキレン、アリレン、脂環式複素環基から任意の水素原子を1つ除いてできる2価の基またはヘテロアリレンを表し、Lは結合、酸素原子、硫黄原子、低級アルキレン、低級アルケニレン、−C(O)−、−C(=NOR26a)−(式中、R26aは前記R26と同義である)または−N(R27a)−(式中、R27aは前記R27と同義である)を表し、R28は前記R25と同義である]を表し、R17、R18、R19及びR20のうち少なくとも一つは環状アルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−L−R25(式中、L及びR25はそれぞれ前記と同義である)または−L−L−R28(式中、L、L及びR28はそれぞれ前記と同義である)を表し、
21及びR22は同一または異なって水素原子、低級アルキル、ヒドロキシ低級アルキル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール、アラルキル、複素環基または複素環アルキルを表すか、R21とR22が隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の含窒素複素環基を形成し、
23は水素原子、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、低級アルカノイルオキシ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、低級アルキルチオ、アリール、複素環基、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、−NR29a29b(式中R29a及びR29bはそれぞれ前記R24a及びR24bと同義である)、C(=O)−NR29c29d(式中R29c及びR29dはそれぞれ前記R24a及びR24bと同義である)または−SO−NR29e29f(式中R29e及びR29fはそれぞれ前記R24a及びR24bと同義である)を表す}で表される化合物である前記(1)記載の神経因性疼痛の子防及び/または治療剤。
(15)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(VIIIa)

で表される化合物(ABT−239)である前記(1)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(16)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(IX)

{式中、Yは式(X)

[式中、n3aは1または2であり、
3aは結合、−C(O)−、−C(S)−、−CH−、−SO−または−C(=NR37)−(式中、R37は水素原子、ヒドロキシ、低級アルキル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、低級アルコキシ、アリールまたはアラルキルを表す)を表し、
33aは水素原子、アミノ、低級アルキル、低級アルコキシ、環状アルコキシ、置換もしくは非置換の環状アルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアリールオキシ、置換もしくは非置換の複素環基または−W−C(R38a)(R38b)−NR39a39b(式中、Wは結合または置換もしくは非置換の低級アルキレンを表し、R38a及びR38bは同一または異なって水素原子、アミノ、アラルキルまたは置換もしくは非置換の低級アルキルを表し、R39a及びR39bは同一または異なって水素原子、アミノスルホニル、低級アルキル、低級アルカノイル、低級アルキルスルホニル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、環状アルカノイル、環状アルキルスルホニル、アラルキル、アロイル、アリールスルホニル、複素環アルキル、複素環カルボニル、複素環アルカノイル、複素環スルホニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の芳香族複素環基または置換もしくは非置換の脂環式複素環基を表すか、R39a及びR39bが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の含窒素複素環基を形成するか、またはR38aもしくはR38b及びR39aもしくはR39bがそれぞれが隣接する炭素原子及び窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)を表し、
34a、R35a及びR36aは同一または異なって水素原子または低級アルキルを表す]で表される基、式(XI)

(式中、n3b、Q3b及びR33bはそれぞれ前記n3a、Q3a及びR33aと同義である)で表される基、式(XII)

(式中、n3c、Q3c及びR33cはそれぞれ前記n3a、Q3a及びR33aと同義である)で表される基または式(XIII)

(式中、Q3d及びR33dはそれぞれ前記Q3a及びR33aと同義である)で表される基を表し、
は結合、置換もしくは非置換のアリールで置換されていてもよい低級アルキレンを表し、
は結合、置換もしくは非置換の低級アルキレンまたは置換もしくは非置換の環状アルキレンを表すが、L及びLが同時に結合を表すことはなく、
は酸素原子、硫黄原子、−S(O)−、−S(O)−または−C≡C−を表し、
30はハロゲン、アミノ、シアノ、アミノカルボニル、環状アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイル、環状アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、モノもしくはジ低級アルキルアミノカルボニル、アラルキル、アロイル、アリールスルホニル、芳香族複素環カルボニル、芳香族複素環スルホニル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、−CHR40a−OR41a(式中、R40aは水素原子、低級アルキル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、R41aは水素原子、低級アルキル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、トリ低級アルキルシリル、アリールまたはアラルキルを表す)または−C(R40b)=N−OR41b(式中、R40b及びR41bはそれぞれ前記R40a及びR41aと同義である)を表し、
31及びR32は同一または異なって水素原子、ハロゲン、アミノ、ニトロ、アジド、ヒドロキシ、シアノ、ホルミル、カルボキシ、低級アルキル、パーフルオロ低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルコキシまたはパーフルオロ低級アルコキシを表すか、またはR31とR32が一緒になって−OCHC(O)−を表す}で表される化合物である前記(1)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(17)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(IXa)

で表される化合物(A−304121)である前記(1)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(18)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(IXb)

で表される化合物(A−317920)である前記(1)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(19)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(XIV)

{式中、n4は0〜4の整数を表し、
42a及びR42bは同一または異なって低級アルキル、低級アルケニル、環状アルキルまたは環状アルキルアルキルを表すか、R42a及びR42bが隣接する窒素原子と一緒になって含窒素複素環基を形成し、
43、R44及びR45のうち2つは同一または異なって水素原子またはハロゲンを表し、残る1つは置換もしくは非置換の複素環基、置換もしくは非置換の複素環アルキル、置換もしくは非置換の複素環アルケニル、置換もしくは非置換の複素環アルキニル、−L−L−Q[式中、Lは結合または酸素原子を表し、Lは置換もしくは非置換の低級アルキレン、環状アルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンを表し、Qは脂環式複素環基または−NR46a46b(式中、R46a及びR46bは同一または異なって水素原子、低級アルキル、低級アルケニル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、アリール、アラルキル、複素環基または複素環アルキルを表す]、−N(L8a−Q4a)R47(式中、L8a及びQ4aはそれぞれ前記L及びQと同義であり、R47は水素原子、低級アルキル、低級アルケニル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、複素環基または複素環アルキルを表す)または−L−C(L8b−Q4b)R4849(式中、L8b及びQ4bはそれぞれ前記L及びQと同義であり、Lは結合、置換もしくは非置換の低級アルキレン、環状アルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンを表し、R48は水素原子、低級アルキル、低級アルケニル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、複素環基または複素環アルキルを表し、R49は水素原子、ハロゲン、ヒドロキシまたは低級アルコキシを表す)を表す}で表される化合物である前記(1)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(20)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(XIVa)

で表される化合物(JNJ−5207852)である前記(1)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
(21)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物の有効量を投与する工程を含むことを特徴とする、神経因性疼痛の予防及び/または治療方法。
(22)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が前記(2)〜(20)のいずれかに記載の化合物である前記(21)記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療方法。
(23)神経因性疼痛の予防及び/または治療剤の製造のための、ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物の使用。
(24)ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が前記(2)〜(20)のいずれかに記載の化合物である前記(23)記載のヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物の使用。
以下、式(I)、(II)、(VI)、(VIII)、(IX)及び(XIV)で表される化合物を、それぞれ化合物(I)、(II)、(VI)、(VIII)、(IX)及び(XIV)という。他の式番号の化合物についても同様である。
式(I)〜式(XIV)の各基の定義において、以下の例示が挙げられる。
ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を表す。
低級アルキルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜10のアルキルが挙げられ、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。
低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、モノもしくはジ低級アルキルアミノカルボニル及びトリ低級アルキルシリルにおける低級アルキル部分は、前記低級アルキルと同義である。ジ低級アルキルアミノカルボニルにおける2つの低級アルキル部分及びトリ低級アルキルシリルにおける3つの低級アルキル部分はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
低級アルキレン、ヒドロキシ低級アルキル、環状アルキルアルキル、アミノアルキルカルボニル、アラルキル及び複素環アルキルにおけるアルキレン部分は、前記低級アルキルから水素原子を1つ除いたものと同義である。
環状アルキルとしては、例えば炭素数3〜8の環状アルキルが挙げられ、具体的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
環状アルキルアルキル、環状アルコキシ、環状アルカノイル及び環状アルキルスルホニルにおける環状アルキル部分は、前記環状アルキルと同義である。
環状アルキレンは前記環状アルキルから水素原子を1つ除いたものと同義である。
低級アルケニルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜6のアルケニルが挙げられ、より具体的にはビニル、アリル、1−プロペニル、メタクリル、クロチル、1−ブテニル、3−ブテニル、2−ペンテニル、4−ペンテニル、2−ヘキセニル、5−ヘキセニル等が挙げられる。
低級アルケニレン及び複素環アルケニルにおけるアルケニレン部分は前記低級アルケニルから水素原子を1つ除いたものと同義である。
低級アルキニルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜6のアルキニルが挙げられ、より具体的にはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等が挙げられる。
低級アルキニレン及び複素環アルキニルにおけるアルキニレン部分は、前記低級アルキニルから水素原子を1つ除いたものと同義である。
低級アルカノイル、低級アルカノイルアミノ及び低級アルカノイルオキシの低級アルカノイル部分としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜7のアルカノイルが挙げられ、より具体的にはホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル等が挙げられる。
複素環アルカノイルにおけるアルキレンカルボニル部分は、前記低級アルカノイルから水素原子を1つ除いたものと同義である。
アリールとしては、例えば炭素数6〜14のアリールが挙げられ、具体的にはフェニル、ナフチル、アントリル等が挙げられる。
アラルキル、アリールオキシ、アロイル及びアリールスルホニルにおけるアリール部分は、前記アリールと同義である。
アリレンは前記アリールから水素原子を1つ除いたものと同義である。
複素環基としては芳香族複素環基、脂環式複素環基等が挙げられる。
複素環アルキル、複素環アルケニル、複素環アルキニル、複素環カルボニル、複素環アルカノイル及び複素環スルホニルにおける複素環基部分は、前記複素環基と同義である。
芳香族複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性芳香族複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性芳香族複素環基等が挙げられ、より具体的にはピリジル、ピリドニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、シンノリニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チエニル、フリル、チアゾリル、オキサゾリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、プリニル等が挙げられる。
芳香族複素環カルボニル及び芳香族複素環スルホニルにおける芳香族複素環基部分は、前記芳香族複素環基と同義である。
ヘテロアリレンは前記芳香族複素環基から水素原子を1つ除いたものと同義である。
脂環式複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性脂環式複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性脂環式複素環基等が挙げられ、より具体的にはピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジノ、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリノ、モルホリニル、チオモルホリノ、チオモルホリニル、ホモピペリジノ、ホモピペリジル、ホモピペラジニル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロベンゾフラニル等が挙げられる。
脂環式複素環基から任意の水素原子を1つ除いてできる2価の基における脂環式複素環基部分は前記脂環式複素環基と同義である。
隣接する窒素原子と一緒になって形成される含窒素複素環基ならびに隣接する炭素原子及び窒素原子と一緒になって形成される複素環基としては、例えば少なくとも1個の窒素原子を含む3〜9員の単環式複素環基(該単環式複素環基は、他の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい)、3〜8員の環が縮合した二環または三環式で少なくとも1個の窒素原子を含む縮環式複素環基(該縮環式複素環基は、他の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい)等が挙げられ、具体的にはアジリジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、ホモピペリジノ、ホモピペラジニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、パーヒドロアゾシニル等が挙げられる。
置換低級アルキル、置換低級アルキレン、置換環状アルキル、置換環状アルキレン、置換低級アルコキシ、置換低級アルカノイル、置換環状アルカノイル、置換アリール、置換アラルキル、置換アリールオキシ、置換アロイル、置換低級アルカノイルアミノ、置換複素環基、置換複素環アルキル、置換複素環アルケニル、置換複素環アルキニル、置換芳香族複素環基、置換脂環式複素環基、隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換含窒素複素環基ならびに隣接する炭素原子及び窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基としては、同一または異なって、例えば置換数1〜8の、ハロゲン、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、カルボキシ、低級アルキル、環状アルキル、アリール、アラルキル、低級アルカノイル、環状アルカノイル、アロイル、低級アルコキシカルボニル、アミノアルキルカルボニル等が挙げられる。ここでハロゲン、低級アルキル、環状アルキル、アリール、低級アルカノイル及び低級アルコキシカルボニルはそれぞれ前記と同義である。環状アルカノイルにおける環状アルキル部分は前記と同義である。アラルキル及びアミノアルキルカルボニルにおけるアルキレン部分はそれぞれ前記と同義である。アラルキル及びアロイルにおけるアリール部分はそれぞれ前記と同義である。
パーフルオロ低級アルキル及びパーフルオロ低級アルコキシは、それぞれ水素原子が全てフッ素原子で置換された低級アルキル及び低級アルコキシである。
Wはイミダゾール環の4位または5位に結合したときにヒスタミンH3受容体拮抗活性及び/または作用活性を与える基であればいずれでもよいが、例えば式(IV)

(式中、R、R、R、R、R10及びn1はそれぞれ前記と同義である)で表される基が挙げられる。
化合物(I)、(II)、(VI)、(VIII)、(IX)及び(XIV)の薬理学的に許容される塩は、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。
化合物(I)、(II)、(VI)、(VIII)、(IX)及び(XIV)の薬理学的に許容される酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸等の有機酸塩等が挙げられ、薬理学的に許容される金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられ、薬理学的に許容されるアンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩が挙げられ、薬理学的に許容される有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の付加塩が挙げられ、薬理学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の付加塩が挙げられる。
本発明の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤の有効成分であるヒスタミンH3拮抗作用を有する化合物は、ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物であればその構造は問わず、例えばペプチド化合物であっても、非ペプチド化合物であってもよい。
神経因性疼痛は、外傷、圧迫、手術、ヘルペスウイルス、エイズウイルス等の感染、癌、糖尿病等の代謝異常等の疾病が原因となって、末梢または中枢神経系に障害が生じた結果、何らかの機能異常により生じる慢性で難治性の疼痛である。具体的には、例えば絞扼性神経障害、幻肢痛、術後神経痛、帯状疱疹後痛、脳卒中後の視床痛、神経性腰痛、脊髄損傷、三叉神経痛、舌咽神経痛、モルヒネ等の麻薬性鎮痛薬による鎮痛効果が不十分な癌性疼痛等がある。症状としては、例えば灼熱痛、アロデニア(非侵害性の刺激に対して激痛を感じる)、痛覚過敏等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物の例として、下記の化合物を挙げることができる。
チオペラミド(Thioperamide)、シプラリスト(Cipralist)、GT−2227、GT−2394、A−331440、A−317920、A−304121、A−320436、ABT−239、ABT−834、UCL−1972、UCL−1409、FUB−181、FUB−470、Sch−50971、インペンタミン(Impentamine)、シプロキシファン(Ciproxifan)、クロベンプロピット(Clobenpropit)、JNJ−5207852、VUF−5228以下の文献または特許に記載の化合物
日本薬理学雑誌、1999年、第114巻、第2号、p.89−106
バイオオーガニック・アンド・メディシナルケミストリー・レターズ(Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters)、2000年、第10巻、p.2379−2382;同、2002年、第12巻、p.3309−3312
ドラッグス・オブ・ザ・フューチャー(Drugs of the Future)、1996年、第21巻、p.507−520
EP0978512、EP0982300、US6008240、US6211199、US6297259、US6316475、US6329392、US2001/0049367、US2002/0035103、US2002/0111340、US2003/134835、WO92/15567、WO93/12093、WO93/14070、WO94/17058、WO95/14007、WO96/29315、WO96/38141、WO96/38142、WO97/29092、WO99/24405、WO99/31089、WO00/06254、WO00/06552、WO00/42023、WO00/63208、WO00/64884、WO01/66534、WO01/68651、WO01/68652、WO01/73023、WO01/74773、WO01/74810、WO01/74813、WO01/74814、WO01/74815、WO02/06223、WO02/12190、WO02/12214、WO02/12224、WO02/13821、WO02/15905、WO02/24657、WO02/24658、WO02/24659、WO02/24695、WO02/32893、WO02/40461、WO02/44141、WO02/056871、WO02/074758、WO02/076925、WO02/079168、WO03/040106、WO03/050099、WO03/059341、WO03/059342、WO03/064411、WO03/066604、WO03/104235
これらの化合物は、上記の文献または特許に記載の方法等によって合成することができる。
次に、代表的な化合物の薬理作用について試験例により具体的に説明する。
神経因性疼痛モデルには、神経損傷によってもたらされるラット神経因性疼痛モデルである絞扼性神経損傷ラット、糖尿病による神経障害によってもたらされる神経因性疼痛モデルであるストレプトゾトシン誘発糖尿病性疼痛ラット[ペイン(Pain)、1996年、第68巻、p.293−299]を用いた。なお欧州において、神経因性疼痛(ヘルペス後神経痛、神経性腰痛、糖尿病性神経痛)への適応を取得している抗けいれん薬のガバペンチンは絞扼性神経損傷ラット及びストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにおいて、疼痛反応改善作用を示すことが報告されている[ペイン(Pain)、1999年、第80巻、p.391−398;ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)、2000年、131巻、282−286頁]。
ヒスタミンH3受容体拮抗剤の神経因性疼痛抑制作用の評価における被験化合物には、チオペラミド、化合物A、A−304121、A−317920、ABT−239、JNJ−5027852及びクロベンプロピットを用いた。化合物AはEP0982300に記載の化合物43[N−{3−(4−cyanophenoxy)propyl}diethylamine hydrogen oxalate]である。
試験例1:絞扼性神経損傷ラットにおける薬物の神経因性疼痛抑制作用(1)
実験は、T.Mosconi、L.Krugerらの方法[ペイン(Pain)、1996年、第64巻、p.37−57]を改良したG.M.Pitcherらの方法[ペイン(Pain)、1999年、第83巻、p.37−46]に準じて行った。
雄性SD系ラット(Sprague−Dawley rat)を用い、ペントバルビタール麻酔下で、坐骨神経をできる限り中枢側で剥離し、剥離部分に長さ2mmのPE−60ポリエチレンチューブカフ(商品名:Intramedic、サイズ:PE−60、Becton Dickinson社製)を覆い被せ、絞扼性神経損傷ラットを作製した。作製後14〜21日目に以下の試験を実施した。なお薬物評価には、von Frey filament[商品名:touch test sensory evaluator、型番:model 58011、室町機械(株)製]にて測定した50%閾値が4g未満を示す動物を用いた。
神経因性疼痛で特徴的に認められるアロデニアまたは痛覚過敏の測定には前記のvon Frey filamentを用いた。痛覚閾値はW.J.Dixonのup down法[アニュアル・レビュー・オブ・ファーマコロジー・アンド・トキシコロジー(Annual Review of Pharmacology and Toxicology)、1980年、第20巻、p.441−462]にて算出した。ラットをステンレス製のケージ(幅750×奥行き210×高さ170mm)に入れ、少なくとも20分間環境に慣らした後に痛覚閾値を測定した。正常ラットの痛覚閾値は10g前後であり、絞扼性神経損傷ラットの手術側の足では痛覚閾値の低下が認められた。薬物投与前、投与30分後、1時間後、1.5時間後、2時間後に痛覚閾値を測定した。被験化合物は蒸留水に懸濁させて、2mL/kgの容量で腹腔内投与した。
図1、図2、図3、図4、図5及び図6に、絞扼性神経損傷ラットの痛覚閾値の低下(アロデニア)に対するチオペラミド、化合物A、A−304121、A−317920、ABT−239及びJNJ−5207852の結果を示す。チオペラミド、化合物A、A−304121、A−317920、ABT−239及びJNJ−5207852は、絞扼性神経損傷ラットで認められる手術足の痛覚閾値の低下を改善した。
試験例2:絞扼性神経損傷ラットにおける薬物の神経因性疼痛抑制作用(2)
試験例1と同様の方法にて絞扼性神経損傷ラットを作製し、作製後14〜21日目に以下の試験を実施した。
冷刺激性アロデニアの測定は、Choiらの方法[ペイン(Pain)、1994年、第59巻、p.369−376)に従って行った。絞扼性神経損傷ラットを、下部に金属メッシュをセットしたアクリル製ケージ(幅900×奥行き210×高さ140mm)に入れ、少なくとも20分間環境に慣らした後に、アセトン約30μLを左足後肢裏(かかとに近い所)に適用し、逃避反応(足を舐める、噛む、振る)を測定した。5分間隔で5回アセトンを適用し、4回以上逃避反応を示した個体を病態と見なし、薬物を投与した。なお投与条件は試験例1と同様に、被験化合物を蒸留水に懸濁させて、2mL/kgの容量で腹腔内投与した。
図7に絞扼性神経損傷ラットの冷刺激性アロデニアに対する化合物Aを投与した結果を示す。化合物Aは、逃避反応回数を低下させ、絞扼性神経損傷ラットで認められる冷刺激性アロデニアを改善した。
試験例3:ストレプトゾトシン誘発糖尿病性疼痛ラットにおける薬物の神経因性疼痛抑制作用
実験はN.A.Calcuttらの方法[ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(British Journal of Pharmacology)、1997年、第122巻、p.1478−1482]に準じて行った。雄性SDラットに対してストレプトゾトシンを60mg/kgの用量で腹腔内投与し、ストレプトゾトシン誘発糖尿病性疼痛ラットを作製した。投与6週間後の血糖値が250mg/dl以上で、前記のvon Frey filamentにて測定した50%反応閾値が4g以下の動物についてのみ実験に供した。痛覚閾値はラットをステンレス製のケージ(幅750×奥行き210×高さ170mm)に入れ、少なくとも20分間環境に慣らした後に測定した。なお、ストレプトゾトシンを投与していないラットの痛覚閾値は10g前後であり、ストレプトゾトシンを投与した糖尿病ラットにおいて明らかな痛覚閾値の低下が認められた。なお投与条件は試験例1と同様に、被験化合物を蒸留水に懸濁させて、2mL/kgの容量で腹腔内投与した。
図8、図9及び図10にストレプトゾトシン誘発糖尿病性疼痛ラットの痛覚閾値の低下に対するチオペラミド、化合物A及びA−304121の結果を示す。チオペラミド、化合物A及びA−304121は、ストレプトゾトシン誘発糖尿病性疼痛ラットで認められる痛覚閾値の低下を改善した。
試験例4:絞扼性神経損傷ラットにおける薬物の神経因性疼痛抑制作用(3)
試験例1と同様の方法にて絞扼性神経損傷ラットを作製し、作製後14〜21日目に以下の方法に従って、脳室内投与による試験を実施した。
ペントバルビタール麻酔下で、ラットの頭部を脳定位固定装置に固定した。ガイドカニューレとしては、長さ21mm、外径0.8mm及び内径0.5mmのステンレススチール管を用い、インナーカニューレとしては外径0.4mm及び内径0.3mmのステンレススチール製を用い、ガイドカニューレの先端から1mm突き出るよう調整した。ガイドカニューレは左側脳室に挿入し、歯科用アクリルセメントで頭蓋骨に固定した。ラットは手術後3日から1週間の回復期間をおいて実験に供した。インナーカニューレとマイクロシリンジ(50μL)をポリエチレンチューブで連結し、マイクロ・インフュージョンポンプ(商品名:CMA/100、CMA/Microdialysis社製)を用いて4μL/分の流速で薬物を注入した。被験化合物は生理食塩水に溶解して、10μLの容量にて脳室内投与した。
図11、図12及び図13に絞扼性神経損傷ラットの痛覚閾値の低下に対するクロベンプロピット、化合物A及びA−304121の作用を示す。クロベンプロピット、化合物A)及びA−304121は、絞扼性神経損傷ラットで認められる痛覚閾値の低下を改善した。
試験例5:絞扼性神経損傷ラットにおける薬物の神経因性疼痛抑制作用(4)
ヒスタミンH3受容体拮抗薬による疼痛改善作用が、ヒスタミンH3受容体を介した作用であるかを判定する目的で拮抗実験を行なった。試験例1と同様の方法にて絞扼性神経損傷ラットを作製し、試験例4と同様の方法にて脳室内投与にて試験を実施した。被験化合物は生理食塩水に溶解して、10μLの容量にて脳室内投与した。痛覚閾値を測定した後に、溶媒(生理食塩水)またはヒスタミンH3受容体作動薬である(R)−α−メチルヒスタミン[ネイチャー(Nature)、1987年、327巻、p.117−123]を投与し、その15分後に溶媒(生理食塩水)またはA−304121を投与した。薬物投与15、30分後の痛覚閾値を測定した。
図14に絞扼性神経損傷ラットの痛覚閾値の低下に対するA−304121と(R)−α−メチルヒスタミンの作用を示す。A−304121は、絞扼性神経損傷ラットで認められる痛覚閾値の低下を改善した。一方、ヒスタミンH3受容体作動薬である(R)−α−メチルヒスタミンを前処置した群においては、A−304121の作用が抑制された。
上記の結果から、ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が、種々の神経因性疼痛モデルで有効であることが示された。また、その作用はヒスタミンH3受容体作動薬によって抑制された。
本発明の医薬の投与経路は特に限定されず、経口投与または静脈内投与等の非経口投与のいずれかから予防及び/または治療のために最も効果的な投与経路を適宜選択することができる。経口投与に適する製剤の例としては、例えば、錠剤等を挙げることができ、非経口投与に適する製剤の例としては、例えば、注射剤等を挙げることができる。
錠剤等の固形製剤の製造には、例えば、乳糖、マンニット等の賦形剤、デンプン等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤を用いることができる。
非経口投与に適当な製剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製する。
また、これら非経口剤においても、希釈剤、防腐剤、フレーバー類、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤等から選択される1種またはそれ以上の補助成分を添加することもできる。
本発明の医薬の投与量及び投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質または重篤度により異なるが、通常経口の場合、成入一人当り0.01mg〜1g/kg、好ましくは0.05〜50mg/kgを一日一回ないし数回投与する。しかし、これら投与量及び投与回数は、前記の種々の条件により変動する。
以下に、本発明の態様を実施例により説明するが、本発明はこの実施例に限定されることはない
【図面の簡単な説明】
図1は、絞扼性神経損傷ラットの痛覚閾値の低下(アロデニア)に対するチオペラミドの効果を示す図である。縦軸は痛覚閾値(g)、横軸は投与後の時間(単位:分)を表す。
−◆−:チオペラミド100mg/kg投与群
−▲−:チオペラミド30mg/kg投与群
−●−:チオペラミド10mg/kg投与群
−△−:チオペラミド3mg/kg投与群
−〇−:コントロール
−□−:正常動物
*:P<0.05[コントロール群対比のダネット・テスト(Dunnett−test)]
**:P<0.01[コントロール群対比のダネット・テスト(Dunnett−test)]
図2は、絞扼性神経損傷ラットの痛覚閾値の低下(アロデニア)に対する化合物Aの効果を示す図である。縦軸は痛覚閾値(g)、横軸は投与後の時間(単位:分)を表す。
−◆−:化合物A 30mg/kg投与群
−▲−:化合物A 10mg/kg投与群
−●−:化合物A 3mg/kg投与群
−○−:コントロール
−□−:正常動物
*:P<0.05[コントロール群対比のスチール・テスト(Steel−test)
**:P<0.01[コントロール群対比のスチール・テスト(Steel−test)]
図3は、絞扼性神経損傷ラットの痛覚閾値の低下(アロデニア)に対するA−304121の効果を示す図である。縦軸は痛覚閾値(g)、横軸は投与後の時間(単位:分)を表す。
−◆−:A−304121 100mg/kg投与群
−▲−:A−304121 30mg/kg投与群
−●−:A−304121 10mg/kg投与群
−○−:コントロール
−□−:正常動物
*:P<0.05[コントロール群対比のスチール・テスト(Steel−test)]
図4は、絞扼性神経損傷ラットの痛覚閾値の低下(アロデニア)に対するA−317920の効果を示す。縦軸は痛覚閾値(g)、横軸は投与後の時間(単位:分)を表す。
−◆−:A−317920 100mg/kg投与群
−▲−:A−317920 30mg/kg投与群
−●−:A−317920 10mg/kg投与群
−〇−:コントロール
−□−:正常動物
*:P<0.05[コントロール群対比のスチール・テスト(Steel−test)]
図5は、絞扼性神経損傷ラットの痛覚閾値の低下(アロデニア)に対するABT−239の効果を示す。縦軸は痛覚閾値(g)、横軸は投与後の時間(単位:時間)を表す。
−◆−:ABT−239 10mg/kg投与群
−▲−:ABT−239 3mg/kg投与群
−●−:ABT−239 1mg/kg投与群
−〇−:コントロール
−□−:正常動物
*:P<0.05[コントロール群対比のスチール・テスト(Steel−test)]
図6は、絞扼性神経損傷ラットの痛覚閾値の低下(アロデニア)に対するJNJ−5207852の効果を示す。縦軸は痛覚閾値(g)、横軸は投与後の時間(単位:時間)を表す。
−◆−:JNJ−5207852 30mg/kg投与群
−▲−:JNJ−5207852 10mg/kg投与群
−●−:JNJ−5207852 3mg/kg投与群
−〇−:コントロール
−□−:正常動物
*:P<0.01[コントロール群対比のスチール・テスト(Steel−test)]
図7は、絞扼性神経損傷ラットの冷刺激性アロデニアに対する化合物Aの効果を示す図である。縦軸は逃避反応回数、横軸は投与後の時間(単位:分)を表す。
−◆−:化合物A30mg/kg投与群
−▲−:化合物A10mg/kg投与群
−●−:化合物A3mg/kg投与群
−〇−:コントロール
*:P<0.05[コントロール群対比のスチール・テスト(Steel−test)]
図8は、ストレプトゾトシン誘発糖尿病性疼痛ラットの痛覚閾値の低下に対するチオペラミドの効果を示す図である。縦軸は痛覚閾値(g)、横軸は投与後の時間(単位:分)を表す。
−◆−:チオペラミド100mg/kg投与群
−▲−:チオペラミド30mg/kg投与群
−〇−:コントロール
−□−:正常動物
*:P<0.05[コントロール群対比のダネット・テスト(Dunnett−test)]
**:P<0.01[コントロール群対比のダネット・テスト(Dunnett−test)]
図9は、ストレプトゾトシン誘発糖尿病性疼痛ラットの痛覚閾値の低下に対する化合物Aの効果を示す図である。縦軸は痛覚閾値(g)、横軸は投与後の時間(単位:分)を表す。
−◆−:化合物A30mg/kg投与群
−▲−:化合物A10mg/kg投与群
−●−:化合物A3mg/kg投与群
−〇−:コントロール
−□−:正常動物
*:P<0.05[コントロール群対比のスチール・テスト(Steel−test)]
**:P<0.01[コントロール群対比のスチール・テスト(Steel−test)
図10は、ストレプトゾトシン誘発糖尿病性疼痛ラットの痛覚閾値の低下に対するA−304121の効果を示す。縦軸は痛覚閾値(g)、横軸は投与後の時間(単位:分)を表す。
−◆−:A−304121 100mg/kg投与群
−▲−:A−304121 30mg/kg投与群
−●−:A−304121 10mg/kg投与群
−〇−:コントロール
−□−:正常動物
*:P<0.05[コントロール群対比のスチール・テスト(Steel−test)]
図11は、絞扼性神経損傷ラットの痛覚閾値の低下(アロデニア)に対するクロベンプロピットの効果を示す。縦軸は痛覚閾値(g)、横軸は投与後の時間(単位:分)を表す。
−◆−:クロベンプロピット100μg投与群
−▲−:クロベンプロピット30μg投与群
−●−:クロベンプロピット10μg投与群
−○−:コントロール
図12は、絞扼性神経損傷ラットの痛覚閾値の低下(アロデニア)に対する化合物Aの効果を示す。縦軸は痛覚閾値(g)、横軸は投与後の時間(単位:分)を表す。
−▲−:化合物A100μg投与群
−●−:化合物A30μg投与群
−○−:コントロール
*:P<0.05[コントロール群対比のスチール・テスト(Steel−test)]
図13は、絞扼性神経損傷ラットの痛覚閾値の低下(アロデニア)に対するA−304121の効果を示す。縦軸は痛覚閾値(g)、横軸は投与後の時間(単位:分)を表す。
−▲−:A−304121 100μg投与群
−〇−:コントロール
*:P<0.05[コントロール群対比のスチール・テスト(Steel−test)]
***:P<0.001[コントロール群対比のスチール・テスト(Steel−test)]
図14は、絞扼性神経損傷ラットの痛覚閾値の低下に対するA−304121とR−(−)−α−メチルヒスタミンの効果を示す。縦軸は痛覚閾値(g)、横軸は投与後の時間(単位:分)を表す。
−▲−:R−(−)−α−メチルヒスタミン10μg+A−304121 100μg投与群
−△−:R−(−)−α−メチルヒスタミン10μg+溶媒投与群
−●−:溶媒+A−304121 100μg投与群
−〇−:溶媒+溶媒投与群
−□−:正常動物
*:P<0.05[溶媒+溶媒投与群対比のスチール・テスト(Steel−test)]
【発明を実施するための最良の形態】
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。チオペラミド40g、乳糖286.8g及び馬鈴薯澱粉60gを混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液120gを加える。この混合物を常法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム1.2gを加えて混合し、径8mmの杵を持った打錠機(菊水社製RT−15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり活性成分20mgを含有する)を得る。
処方
チオペラミド 20 mg
乳糖 143.4mg
馬鈴薯澱粉 30 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
200 mg
【産業上の利用可能性】
本発明により、ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する神経因性疼痛の予防及び/または治療剤が提供される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項2】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(I)

(式中、R及びRは同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換の環状アルキルを表すか、R及びRが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の含窒素複素環基を形成し、Xは酸素原子または硫黄原子を表す)で表される化合物である請求の範囲1記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項3】
及びRの一方が水素原子であり、もう一方が置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換の環状アルキルであり、Xが硫黄原子である請求の範囲2記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項4】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物がチオペラミドである請求の範囲1記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項5】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(II)

(式中、Wはイミダゾール環の4位または5位に結合したときにヒスタミンH3受容体拮抗活性及び/または作用活性を与える基であり、R及びRは同一または異なって、置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換の環状アルキルを表すか、R及びRが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の含窒素複素環基を形成する)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩である請求の範囲1記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項6】
及びRが同一または異なって、置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換の環状アルキルである請求の範囲5記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項7】
及びRが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の含窒素複素環基を形成する請求の範囲5記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項8】
−NRが式(III)

(式中、Rは低級アルキル、環状アルキル、アリール、アラルキル、低級アルカノイル、環状アルカノイル、アロイル、低級アルコキシカルボニルまたはアミノアルキルカルボニルを表す)で表される基である請求の範囲5記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項9】
Wが式(IV)

(式中、R、R、R、R及びR10は同一または異なって、水素原子、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の環状アルカノイル、置換もしくは非置換のアロイルまたは置換もしくは非置換の低級アルカノイルアミノを表し、n1は1〜7の整数を表す)で表される基である請求の範囲5〜8のいずれかに記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項10】
Wが式(V)

(式中、R8aは前記Rと同義であり、n1aは前記n1と同義である)で表される基である請求の範囲5〜8のいずれかに記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項11】
n1が1または2である請求の範囲10記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項12】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(VI)

[式中、Zは置換もしくは非置換の低級アルキレンを表し、
は硫黄原子、−NH−または−CH−を表し、
11、R13及びR15は同一または異なって水素原子、低級アルキル、環状アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表し、
12は水素原子、低級アルキル、環状アルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルまたは式(VII)

(式中、n2は1〜4の整数を表し、R16は低級アルキル、環状アルキルアルキルまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表す)で表される基を表し、
14は水素原子、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表す]で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩である請求の範囲1記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項13】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物がクロベンプロピットである請求の範囲1記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項14】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(VIII)

{式中、Aは結合またはカルボニルを表し、
は酸素原子または硫黄原子を表し、
はフッ素原子またはヒドロキシで置換されていてもよい低級アルキレンを表し、
及びPは水素原子を表すか、または一緒になって結合を表し、
17、R18、R19及びR20は同一または異なって水素原子、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、カルボキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイルオキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の環状アルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−NR24a24b(式中、R24a及びR24bは同一または異なって水素原子、低級アルキルまたは低級アルカノイルを表す)、
−C(=O)−NR24c24d(式中、R24c及びR24dはそれぞれ前記R24a及びR24bと同義である)、−SO−NR24e24f(式中、R24e及びR24fはそれぞれ前記R24a及びR24bと同義である)、−L−R25[式中、Lは酸素原子、硫黄原子、低級アルキレン、低級アルケニレン、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、−C(=NOR26)−(式中、R26は水素原子または低級アルキルを表す)または−N(R27)−(式中、R27は水素原子、低級アルキルまたは低級アルカノイルを表す)を表し、R25は環状アルキル、アリールまたは複素環基を表す]または−L−L−R28[式中、Lは環状アルキレン、アリレン、脂環式複素環基から任意の水素原子を1つ除いてできる2価の基またはヘテロアリレンを表し、Lは結合、酸素原子、硫黄原子、低級アルキレン、低級アルケニレン、−C(O)−、−C(=NOR26a)−(式中、R26aは前記R26と同義である)または−N(R27a)−(式中、R27aは前記R27と同義である)を表し、R28は前記R25と同義である]を表し、R17、R18、R19及びR20のうち少なくとも一つは環状アルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基、−L−R25(式中、L及びR25はそれぞれ前記と同義である)または−L−L−R28(式中、L、L及びR28はそれぞれ前記と同義である)を表し、
21及びR22は同一または異なって水素原子、低級アルキル、ヒドロキシ低級アルキル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール、アラルキル、複素環基または複素環アルキルを表すか、R21とR22が隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の含窒素複素環基を形成し、
23は水素原子、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、低級アルカノイルオキシ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、低級アルキルチオ、アリール、複素環基、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、−NR29a29b(式中R29a及びR29bはそれぞれ前記R24a及びR24bと同義である)、C(=O)−NR29c29d(式中R29c及びR29dはそれぞれ前記R24a及びR24bと同義である)または−SO−NR29e29f(式中R29e及びR29fはそれぞれ前記R24a及びR24bと同義である)を表す}で表される化合物である請求の範囲1記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項15】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(VIIIa)

で表される化合物である請求の範囲1記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項16】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(IX)

{式中、Yは式(X)

[式中、n3aは1または2であり、
3aは結合、−C(O)−、−C(S)−、−CH−、−SO−または−C(=NR37)−(式中、R37は水素原子、ヒドロキシ、低級アルキル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、低級アルコキシ、アリールまたはアラルキルを表す)を表し、
33aは水素原子、アミノ、低級アルキル、低級アルコキシ、環状アルコキシ、置換もしくは非置換の環状アルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアリールオキシ、置換もしくは非置換の複素環基または−W−C(R38a)(R38b)−NR39a39b(式中、Wは結合または置換もしくは非置換の低級アルキレンを表し、R38a及びR38bは同一または異なって水素原子、アミノ、アラルキルまたは置換もしくは非置換の低級アルキルを表し、R39a及びR39bは同一または異なって水素原子、アミノスルホニル、低級アルキル、低級アルカノイル、低級アルキルスルホニル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、環状アルカノイル、環状アルキルスルホニル、アラルキル、アロイル、アリールスルホニル、複素環アルキル、複素環カルボニル、複素環アルカノイル、複素環スルホニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の芳香族複素環基または置換もしくは非置換の脂環式複素環基を表すか、R39a及びR39bが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の含窒素複素環基を形成するか、またはR38aもしくはR38b及びR39aもしくはR39bがそれぞれが隣接する炭素原子及び窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)を表し、
34a、R35a及びR36aは同一または異なって水素原子または低級アルキルを表す]で表される基、式(XI)

(式中、n3b、Q3b及びR33bはそれぞれ前記n3a、Q3a及びR33aと同義である)で表される基、式(XII)

(式中、n3c、Q3c及びR33cはそれぞれ前記n3a、Q3a及びR33aと同義である)で表される基または式(XIII)

(式中、Q3d及びR33dはそれぞれ前記Q3a及びR33aと同義である)で表される基を表し、Lは結合、置換もしくは非置換のアリールで置換されていてもよい低級アルキレンを表し、
は結合、置換もしくは非置換の低級アルキレンまたは置換もしくは非置換の環状アルキレンを表すが、L及びLが同時に結合を表すことはなく、
は酸素原子、硫黄原子、−S(O)−、−S(O)−または−C≡C−を表し、
30はハロゲン、アミノ、シアノ、アミノカルボニル、環状アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイル、環状アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、モノもしくはジ低級アルキルアミノカルボニル、アラルキル、アロイル、アリールスルホニル、芳香族複素環カルボニル、芳香族複素環スルホニル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、−CHR40a−OR41a(式中、R40aは水素原子、低級アルキル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、R41aは水素原子、低級アルキル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、トリ低級アルキルシリル、アリールまたはアラルキルを表す)または−C(R40b)=N−OR41b(式中、R40b及びR41bはそれぞれ前記R40a及びR41aと同義である)を表し、
31及びR32は同一または異なって水素原子、ハロゲン、アミノ、ニトロ、アジド、ヒドロキシ、シアノ、ホルミル、カルボキシ、低級アルキル、パーフルオロ低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルコキシまたはパーフルオロ低級アルコキシを表すか、またはR31とR32が一緒になって−OCHC(O)−を表す}で表される化合物である請求の範囲1記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項17】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(IXa)

で表される化合物である請求の範囲1記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項18】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(IXb)

で表される化合物である請求の範囲1記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項19】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(XIV)

{式中、n4は0〜4の整数を表し、
42a及びR42bは同一または異なって低級アルキル、低級アルケニル、環状アルキルまたは環状アルキルアルキルを表すか、R42a及びR42bが隣接する窒素原子と一緒になって含窒素複素環基を形成し、
43、R44及びR45のうち2つは同一または異なって水素原子またはハロゲンを表し、残る1つは置換もしくは非置換の複素環基、置換もしくは非置換の複素環アルキル、置換もしくは非置換の複素環アルケニル、置換もしくは非置換の複素環アルキニル、−L−L−Q[式中、Lは結合または酸素原子を表し、Lは置換もしくは非置換の低級アルキレン、環状アルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンを表し、Qは脂環式複素環基または−NR46a46b(式中、R46a及びR46bは同一または異なって水素原子、低級アルキル、低級アルケニル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、アリール、アラルキル、複素環基または複素環アルキルを表す]、−N(L8a−Q4a)R47(式中、L8a及びQ4aはそれぞれ前記L及びQと同義であり、R47は水素原子、低級アルキル、低級アルケニル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、複素環基または複素環アルキルを表す)または−L−C(L8b−Q4b)R4849(式中、L8b及びQ4はそれぞれ前記L及びQと同義であり、Lは結合、置換もしくは非置換の低級アルキレン、環状アルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンを表し、R48は水素原子、低級アルキル、低級アルケニル、環状アルキル、環状アルキルアルキル、複素環基または複素環アルキルを表し、R49は水素原子、ハロゲン、ヒドロキシまたは低級アルコキシを表す)を表す}で表される化合物である請求の範囲1記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項20】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が式(XIVa)

で表される化合物である請求の範囲1記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療剤。
【請求項21】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物の有効量を投与する工程を含むことを特徴とする、神経因性疼痛の予防及び/または治療方法。
【請求項22】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が請求の範囲2〜20のいずれかに記載の化合物である請求の範囲21記載の神経因性疼痛の予防及び/または治療方法。
【請求項23】
神経因性疼痛の予防及び/または治療剤の製造のための、ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物の使用。
【請求項24】
ヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物が請求の範囲2〜20のいずれかに記載の化合物である請求の範囲23記載のヒスタミンH3受容体拮抗作用を有する化合物の使用。

【国際公開番号】WO2004/089410
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505233(P2005−505233)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004758
【国際出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】