説明

神経変性疾患治療用のGSK3−ベータ阻害剤としての4−(ピリジン−4−イル)−1H−(1,3,5)トリアジン−2−オン誘導体

遊離塩基または酸との付加塩の形態である、式(I)により表されるトリアジノン誘導体[式中、Zは、結合、カルボニル基、C1−6アルキル基、ヒドロキシル基、Ci−βアルコキシ基から選択される1または2個の基により場合により置換されているメチレン基を表し、;R1は、4−ピリジン環を表し;R2は、水素原子、C1−6アルキルを表し;R3は、水素原子、C1−6アルキル基を表し;R2およびR3は、場合により置換されている、R2およびR3を担持する窒素を有する6員環を一緒になって形成していてよく;R4は:場合により置換されているフェニル環を表し;nは、0から2を表す。]。本発明の化合物は、GSK3β阻害活性を有し、GSK3βの異常活性により引き起こされる疾患、さらに特定すると、神経変性疾患の予防的および/または治療的処置用の医薬品の活性成分として有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GSK3βの異常活性により引き起こされる神経変性疾患の予防的および/または治療的処置用の医薬品の活性成分として有用である化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
GSK3β(グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β)は、代謝、分化および生存の制御において重要な役割を果たすプロリン指向性セリン、トレオニンキナーゼである。GSK3βは当初、リン酸化することができ、従ってグリコーゲンシンターゼを阻害することができる酵素として同定された。その後、GSK3βは、アルツハイマー病および幾つかのタウパチーにおいて過剰リン酸化されていることも見出されているエピトープ中のタウタンパク質をリン酸化する酵素であるタウプロテインキナーゼ1(TPK1)と同一であることが分かった。
【0003】
興味深いことに、GSK3βのプロテインキナーゼB(AKT)によるリン酸化は、GSK3βのキナーゼ活性の損失をもたらし、この阻害は、神経栄養因子の効果の幾つかを媒介し得ると想定されている。さらに、細胞生存に関与しているタンパク質であるβ−カテニンのGSK3βによるリン酸化は、ユビキチン化依存性プロテアソーム経路によるβ−カテニンの分解をもたらす。
【0004】
従って、GSK3β活性の阻害により、神経栄養活性をもたらすことができると考えられる。実際、GSK3βの非競合的阻害剤であるリチウムは、幾つかのモデルにおいて神経突起生成を向上させ、生存因子、例えばBcl−2の誘発、ならびにアポトーシス促進因子、例えばp53およびBaxの発現の阻害を介して、神経細胞の生存も増加させるという証拠がある。
【0005】
最近の研究により、β−アミロイドは、GSK3β活性およびタウタンパク質リン酸化を増加させることが実証されている。さらに、この過剰リン酸化およびβ−アミロイドの神経毒性効果は、塩化リチウムおよびGSK3βアンチセンスmRNAにより遮断される。これらの観察は、GSK3βが、アルツハイマー病の2つの主要な病理学的過程:異常なAPP(アミロイド前駆体タンパク質)のプロセシングとタウタンパク質の過剰リン酸化とを結びつけるものであり得ることを強く示唆している。
【0006】
タウの過剰リン酸化は神経細胞骨格の不安定化をもたらすが、異常なGSK3β活性の病理学的帰結は、タウタンパク質の病理的リン酸化のみに起因するものではない可能性が高い。それというのも、上記の通り、このキナーゼの過剰な活性は、アポトーシス因子および抗アポトーシス因子の発現の調節を介して生存に影響を及ぼし得るからである。さらに、β−アミロイド誘発性のGSK3β活性の増加はリン酸化をもたらし、従ってエネルギー産生およびアセチルコリン合成の中心的酵素であるピルビン酸デヒドロゲナーゼの阻害をもたらすことが示されている。
【0007】
これらの実験的観察は、神経病理学的帰結、ならびにアルツハイマー病に伴う認知欠損および注意欠損、ならびに他の急性および慢性の神経変性疾患、ならびにGSK3βが脱調節されている他の病変の治療にGSK3βの用途を見出すことができることを示している(Nature reviews Vol.3,June 2004,p.479−487;Trends in Pharmacological Sciences Vol.25 No.9,Sept.2004,p.471−480;Journal of neurochemistry 2004,89,1313−1317;Medicinal Research Reviews,Vol.22,No.4,373−384,2002)。
【0008】
神経変性疾患は、限定されるものではないが、パーキンソン病、タウオパチー(例えば、前頭側頭型認知症、皮質基底核変性症、ピック病、進行性核上性麻痺)、ウィルソン病、ハンチントン病(The Journal of biological chemistry Vol.277,No.37,Issue of September 13,pp.33791−33798,2002)、プリオン病(Biochem.J.372,p.129−136,2003)および血管性認知症を含む他の認知症;急性脳卒中および他の外傷性損傷;脳血管発作(例えば加齢性黄斑変性症);脳脊髄外傷;筋萎縮性側索硬化症(European Journal of Neuroscience,Vol.22,pp.301−309,2005)末梢神経障害;網膜症および緑内障を含む。最近の研究により、GSK3βの阻害は、胚性幹細胞(ESC)の神経細胞の分化をもたらし、ヒトおよびマウスのESCの再生およびこれらの多能性の維持を支持することも示されている。このことは、GSK3β阻害剤が再生医療における用途を有し得ることを示唆している(Nature Medicine 10,p.55−63,2004)。
【0009】
GSK3βの阻害剤は、他の神経系障害、例えば双極性障害(躁うつ病)の治療にも用途を見出すことができる。例えばリチウムは、気分安定剤として50年超も使用されており、双極性障害の主要な治療法である。リチウムの治療作用は、GSK3βの直接的な阻害剤になる用量(1−2mM)において観察される。リチウムの作用機序は不明確であるが、GSK3βの阻害剤は、リチウムの気分安定効果を模倣するために使用することもできる。Akt−GSK3βシグナル伝達の変化も、統合失調症の発症機序に関係している。
【0010】
さらに、GSK3βの阻害は、癌、例えば、結腸直腸癌、前立腺癌、乳癌、非小細胞性肺癌、甲状腺癌、T細胞白血病またはB細胞白血病および幾つかのウイルス誘発性腫瘍の治療に有用であり得る。例えば、GSK3βの活性型は直腸結腸癌患者の腫瘍において上昇していることが示されており、直腸結腸癌細胞内のGSK3βの阻害はp53依存性アポトーシスを活性化し、腫瘍増殖に拮抗する。GSK3βの阻害は、前立腺癌細胞株においてTRAIL誘発性アポトーシスも向上させる。GSK3βは紡錘体のダイナミクスにおいても役割を果たし、GSK3βの阻害剤は染色体運動を妨害し、微小管の安定化をもたらし、タキソールを低用量投与した場合に観察されるものと同様の、前中期様の停止をもたらす。GSK3β阻害剤についての他の可能な用途は、インスリン非依存性糖尿病(例えばII型糖尿病)、肥満症および脱毛症の治療を含む。
【0011】
ヒトGSK3βの阻害剤は、プラスモディウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)内で見出されたこの酵素のオルソログであるpfGSK3を阻害することもでき、その結果、マラリアの治療に使用することができる(Biochimica et Biophysica Acta 1697,181−196,2004)。
【0012】
最近、ヒト遺伝学および動物実験の両方により、骨量増加の主要な調節因子としてのWnt/LPR5経路の役割が指摘されている。GSK3βの阻害は、結果として正確なWntシグナル伝達の活性化をもたらす。不十分なWntシグナル伝達が骨量減少の障害に関係しているので、GSK3β阻害剤は、骨量減少の障害、骨関連病変、骨粗鬆症の治療にも使用することができる。
【0013】
最近のデータによれば、GSK3β阻害剤は、尋常性天疱瘡の治療または予防に使用することができる。
【0014】
最近の研究により、GSK3ベータ阻害剤による治療は、好中球および巨核球の回復を改善することが示されている。従って、GSK3ベータ阻害剤は、癌化学療法により誘発される好中球減少症の治療に有用である。
【0015】
これまでの研究により、GSK3活性は記憶固定の電気生理的相関物であるLTPを低下させることが示されており、このことは、この酵素の阻害剤が認知促進活性を有し得ることを示唆している。本化合物の認知促進効果は、アルツハイマー病、パーキンソン病、加齢に伴う記憶障害、軽度認知障害、脳外傷、統合失調症に特徴的な記憶欠損およびこのような欠損が観察されている他の病態の治療に用途を見出すことができる。
【0016】
GSK3βの阻害剤は、腎実質性疾患の治療(Nelson PJ,Kidney International Advance online publication 19 dec 2007)および筋萎縮の予防または治療(J.Biol.Chem.(283)2008,358−366)にも用途を見出すこともできる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Nature reviews Vol.3,June 2004,p.479−487
【非特許文献2】Trends in Pharmacological Sciences Vol.25 No.9,Sept.2004,p.471−480
【非特許文献3】Journal of neurochemistry 2004,89,1313−1317
【非特許文献4】Medicinal Research Reviews,Vol.22,No.4,373−384,2002
【非特許文献5】The Journal of biological chemistry Vol.277,No.37,Issue of September 13,pp.33791−33798,2002
【非特許文献6】Biochem.J.372,p.129−136,2003
【非特許文献7】European Journal of Neuroscience,Vol.22,pp.301−309,2005
【非特許文献8】Nature Medicine 10,p.55−63,2004
【非特許文献9】Biochimica et Biophysica Acta 1697,181−196,2004
【非特許文献10】Nelson PJ,Kidney International Advance online publication 19 dec 2007
【非特許文献11】J.Biol.Chem.(283)2008,358−366
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、異常なGSK3β活性により引き起こされる疾患、さらに特定すると、神経変性疾患の予防的および/または治療的処置用の医薬品の活性成分として有用である化合物を提供することである。より具体的には、本発明の目的は、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病の予防および/または治療を可能にする医薬品の活性成分として有用である新規化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従って、本発明の発明者らは、GSK3βに対する阻害活性を有する化合物を同定した。その結果、本発明者らは、以下の式(I)により表される化合物が所望の活性を有し、上記疾患の予防的および/または治療的処置用の医薬品の活性成分として有用であることを見出した。
【0020】
従って、本発明は、本発明の目的として、遊離塩基または酸との付加塩の形態である、式(I)により表されるトリアジノン誘導体またはこの塩、この溶媒和物またはこの水和物:
【0021】
【化1】

[式中、
Zは、結合、カルボニル基、C1−6アルキル基、ヒドロキシル基、C1−6アルコキシ基から選択される1または2個の基により場合により置換されているメチレン基を表し;
R1は、4−ピリジン環を表し;
R2は、水素原子、C1−6アルキルを表し;
R3は、水素原子、C1−6アルキル基を表し;
R2およびR3は、C1−6アルキル基から選択される1から4個の置換基により場合により置換されている、R2およびR3を担持する窒素を有する6員環を一緒になって形成していてよく;
R4は:
−フェニル環(この環は、C1−6アルキル基、ハロゲン原子、C1−2過ハロゲン化アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、C1−6アルコキシ基、C1−2過ハロゲン化アルコキシ基、C1−6アルキルスルホニル基、ニトロ、シアノ、アミノ、C1−6モノアルキルアミノ基またはC2−12ジアルキルアミノ基、アセトキシ基、アミノスルホニル基から選択される1から4個の置換基により場合により置換されている。)を表し;
nは、0から2を表す。]を提供する。
【0022】
本発明の別の態様によれば、式(I)により表されるトリアジノン誘導体および生理学的に許容されるこの塩、ならびにこの溶媒和物およびこの水和物からなる群から選択される物質を活性成分として含む医薬品が提供される。医薬品の好ましい実施形態として、異常なGSK3β活性により引き起こされる疾患の予防的および/または治療的処置に使用される上記医薬品、ならびに神経変性疾患、さらに他の疾患、例えば:インスリン非依存性糖尿病(例えばII型糖尿病)および肥満症;マラリア、双極性障害(躁うつ病);統合失調症;脱毛症または癌、例えば、結腸直腸癌、前立腺癌、乳癌、非小細胞性肺癌、甲状腺癌、T細胞白血病もしくはB細胞白血病、幾つかのウイルス誘発性腫瘍および骨関連病変の予防的および/または治療的処置;腎実質性疾患の治療、ならびに筋萎縮の予防または治療;認知欠損および記憶欠損の治療に使用される上記医薬品が提供される。本医薬品は、再生医療にも用途を見出すことができる。
【0023】
本発明のさらなる実施形態として、疾患が神経変性疾患であり、アルツハイマー病、パーキンソン病、タウオパチー(例えば、前頭側頭型認知症、皮質基底核変性症、ピック病、進行性核上性麻痺)、ウィルソン病、ハンチントン病、プリオン病および血管性認知症を含む他の認知症;急性脳卒中および他の外傷性損傷;脳血管発作(例えば、加齢性黄斑変性症);脳脊髄外傷;筋萎縮性側索硬化症;末梢神経障害;網膜症および緑内障からなる群から選択される上記医薬品、ならびに上記物質を活性成分として1種以上の医薬添加剤と一緒に含有する医薬組成物の形態である上記医薬品が提供される。
【0024】
本発明のさらなる実施形態として、骨関連病変が骨粗鬆症である上記医薬品が提供される。
【0025】
本発明は、式(I)のトリアジノン誘導体およびこの塩、ならびにこの溶媒和物およびこの水和物からなる群から選択される物質を活性成分として含むGSK3β活性の阻害剤をさらに提供する。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、式(I)のトリアジノン誘導体および生理学的に許容されるこの塩、ならびにこの溶媒和物およびこの水和物からなる群から選択される物質の予防有効量および/または治療有効量を患者に投与する工程を含む、異常なGSK3β活性により引き起こされる神経変性疾患を予防的および/または治療的に処置する方法;ならびに上記医薬品の製造のための、式(I)のトリアジノン誘導体および生理学的に許容されるこの塩、ならびにこの溶媒和物およびこの水和物からなる群から選択される物質の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において使用されるC1−6アルキル基は、直鎖または分枝鎖または環式のC1−6アルキル基により場合により置換されている1から6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖またはシクロアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロプロピルメチル基などを表す。
【0028】
1−6アルコキシ基は、1から4個の炭素原子を有するアルキルオキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などを表す;
ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の原子を表す;
1−2過ハロゲン化アルキル基は、すべての水素原子がハロゲンにより置き換えられているアルキル基、例えばCFまたはCを表す;
1−3ハロゲン化アルキル基は、少なくとも1個の水素がハロゲン原子により置換されていないアルキル基を表す;
1−6モノアルキルアミノ基は、1個のC1−6アルキル基により置換されているアミノ基、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基などを表す;
2−12ジアルキルアミノ基は、2個のC1−6アルキル基により置換されているアミノ基、例えば、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基およびジイソプロピルアミノ基などを表す;
脱離基Lは、容易に開裂および置換することができる基を表し;このような基は、例えば、トシル、メシル、ブロミドなどであってよい。
【0029】
上記式(I)により表される化合物は、塩を形成することができる。塩の例としては、酸性基が存在する場合、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムの塩;アンモニアおよびアミン、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、エタノールアミン、N−メチルグルカミンおよびL−グルカミンの塩;または塩基性アミノ酸、例えば、リジン、δ−ヒドロキシリジンおよびアルギニンとの塩を含む。酸性化合物の塩基付加塩は、当該分野において周知の標準的手順により調製される。
【0030】
塩基性基が存在する場合、例としては、鉱酸、例えば、塩酸、臭化水素酸との塩、有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸などとの塩を含む。
【0031】
塩基性化合物の酸付加塩は、限定されるものではないが、適切な酸を含有するアルコール水溶液中に遊離塩基を溶解させ、溶液を蒸発させることにより、または有機溶媒中で遊離塩基および酸を反応させることにより(この場合、塩は直接分離し、または塩は第2の有機溶媒により沈殿させ、または塩は溶液を濃縮することによって得ることができる。)、塩を単離することを含む、当該分野において周知の標準的手順により調製される。酸付加塩を調製するために使用することができる酸は、好ましくは、遊離塩基と組み合わせた場合、医薬的に許容される塩、即ち、遊離塩基に固有の有益な特性がこの塩のアニオンに起因する副作用により損なわれないように、この塩のアニオンがこの塩の医薬用量において動物体に対して比較的無害である塩を生成するものを含む。塩基性化合物の医学的に許容される塩が好ましいが、すべての酸付加塩が本発明の範囲内である。
【0032】
上記式(I)により表されるトリアジノン誘導体およびこの塩に加えて、この溶媒和物および水和物も本発明の範囲内に含まれる。
【0033】
上記式(I)により表されるトリアジノン誘導体は、1個以上の不斉炭素原子を有することができる。このような不斉炭素原子の立体化学に関して、これらは独立して(R)または(S)の立体配置のいずれかであってよく、誘導体は、立体異性体、例えば、光学異性体またはジアステレオ異性体として存在することができる。任意の純粋形態の立体異性体、立体異性体およびラセミ体などの任意の混合物が、本発明の範囲内に含まれる。
【0034】
本発明の第1の実施形態において、遊離塩基または酸との付加塩の形態である化合物
【0035】
【化2】

[式中、
Zは、結合、カルボニル基、C1−6アルキル基、ヒドロキシル基、C1−6アルコキシ基から選択される1または2個の基により場合により置換されているC1−6アルキル基を表し、
R1は、4−ピリジン環を表し、
R2は、水素、C1−6アルキル基であり、
R3は、水素、C1−6アルキル基を表し;
R2およびR3は、6員環(この環は、C1−6アルキル基により場合により置換されている。)を一緒になって形成していてよく;
R4は、ハロゲン、C1−6アルコキシ基から選択される1から4個の置換基により場合により置換されているフェニルを表し、ならびに
nは、0、1、2を表す。]が提供される。
【0036】
本発明の化合物の例を以下の表1に示す。しかしながら、本発明の範囲は、これらの化合物に限定されるものではない。IUPAC規則に従って命名する。
【0037】
本発明のさらなる目的は、以下に定義の式の表1の化合物の群を含む:
1.(+/−)−6−(2−ヒドロキシ−2−フェニル−エチルアミノ)−1−メチル−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
2.1−メチル−6−フェネチルアミノ−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
3.(+/−)−6−(2−ヒドロキシ−2−フェニル−エチルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
4.1−メチル−6−(2−オキソ−2−フェニル−エチルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
5.6−(2−フェニルエチル)アミノ−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6.1−メチル−6−(3−フェニル−プロピルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
7.6−(3−フェニル−プロピルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
8.6−フェニルアミノ−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
9.6−ベンジルアミノ−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
10.6−[2−(2−メトキシ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
11.6−[2−(3−フルオロ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
12.6−[2−(2,4−ジクロロ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
13.6−[2−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
14.6−[2−(2−フルオロ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
15.6−[2−(3−メトキシ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
16.(+/−)−6−(1−フェニル−エチルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
17.6−[2−(4−フルオロ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
18.6−[2−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
19.6−]メチル−2−(フェニルエチル)−アミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
20.6−((S)−2−フェニル−プロピルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
21.6−((R)−2−フェニル−プロピルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
22.7,7−ジメチル−9−(2−オキソ−2−フェニル−エチル)−2−ピリジン−4−イル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリミド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン
23.(−)−9−((S)−2−ヒドロキシ−2−フェニル−エチル)−7,7−ジメチル−2−ピリジン−4−イル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリミド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン
24.9−[2−(2−フルオロ−フェニル)−エチル]−7,7−ジメチル−2−ピリジン−4−イル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリミド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン
25.(+/−)−9−(2−ヒドロキシ−2−フェニル−プロピル)−7,7−ジメチル−2−ピリジン−4−イル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリミド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン
26.7,7−ジメチル−9−(3−フェニル−プロピル)−2−ピリジン−4−イル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリミド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン
さらなる目的として、本発明はまた、上記式(I)により表されるトリアジノン化合物を調製する方法に関する。
【0038】
これらの化合物は、例えば、以下に説明する方法に従って調製することができる。
【0039】
調製方法
上記式(I)により表されるトリアジノン化合物は、スキーム1に記載の方法に従って調製することができる。
【0040】
【化3】

スキーム1
(上記スキームにおいて、R1、R2、R3、R4、nおよびZの定義は、式(I)の化合物について既に記載した定義と同一である。)。
【0041】
この方法に従って、上記式(III)により表されるトリアジノン誘導体(式中、Rは、アルキル基、例えば、メチルまたはエチルなどであり、R1、R2は、式(I)の化合物について定義した通りである。)を中間体として使用する。または、式(III)の化合物を、式(II)の化合物(式中、R4、R3、Zおよびnは、式(I)の化合物について定義した通りである。)と、140℃から160℃の範囲の好適な温度において一般空気下で反応させて上記式(I)の化合物を得る。
【0042】
式(III)の化合物は、スキーム2に定義の方法に従って、式(IV)の化合物から出発して調製することができる。使用することができる条件は、化学実施例において挙げる。
【0043】
【化4】

スキーム2
さらなる目的として、本発明はまた、上記式(I)により表されるトリアジノン化合物を調製するための中間体(III)に関する。
(上記スキームにおいて、R、R1およびR2の定義は、既に記載した定義と同一である。)
【0044】
この方法によれば、式(IV)のアミジン(式中、R1は、式(I)の化合物について定義されている。)を、式(V)の化合物と反応させる。反応は、塩基、例えば水酸化ナトリウムの存在下で、溶媒の混合物、例えばトルエン/水中で、25°から140℃の範囲の好適な温度において、通常空気下で実施して中間体のトリアジノン化合物(IIIa)を得ることができる。
【0045】
式(IIIa)の化合物は、式(VI)の化合物(式中、Lは脱離基を表し、このような基は、例えば、トシル、メシル、ブロミドなどであってよい。)と反応させる。反応は、塩基、例えばナトリウムメトキシドの存在下で、アルコール性溶媒、例えばメタノール中で実施して式(IIIb)の化合物をもたらすことができる。
【0046】
式(IIIb)の化合物は、式(VII)の化合物と反応させて式(III)の化合物をもたらすことができる。
【0047】
R2およびR3が環を形成する場合、上記式(I)により表されるトリアジノン化合物は、スキーム3に記載の方法に従って調製することもできる。
【0048】
【化5】

スキーム3(式中、R4、R1およびRは、上記と同一の意味を有する。)
式(IV)、(V)、(Vl)、(VII)、(VIII)、(IX)および(XII)の化合物は、市販品であり、または当業者に周知の方法に従って合成することができる。
【0049】
本発明の化合物は、GSK3βに対する阻害活性を有する。従って、本発明の化合物は、異常なGSK3β活性により引き起こされる疾患、さらに特定すると、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病の予防的および/または治療的処置を可能にする医薬品の調製のための活性成分として有用である。さらに、本発明の化合物はまた、神経変性疾患、例えば、パーキンソン病、タウオパチー(例えば、前頭側頭型認知症、皮質基底核変性症、ピック病、進行性核上性麻痺)、ウィルソン病、ハンチントン病、プリオン病および血管性認知症を含む他の認知症;急性脳卒中および他の外傷性損傷;脳血管発作(例えば、加齢性黄斑変性症);脳脊髄外傷;筋萎縮性側索硬化症、末梢神経障害;網膜症および緑内障;ならびに他の疾患、例えばインスリン非依存性糖尿病(例えばII型糖尿病)および肥満症;マラリア、躁うつ病;統合失調症;脱毛症;癌、例えば、結腸直腸癌、前立腺癌 乳癌、非小細胞性肺癌、甲状腺癌、T細胞白血病またはB細胞白血病、幾つかのウイルス誘発性腫瘍、ならびに骨関連病変;腎実質性疾患または筋萎縮の予防的および/または治療的処置用の医薬品の調製のための活性成分として有用である。本医薬品は、再生医療にも用途を見出すことができる。本医薬品は、尋常性天疱瘡の治療または予防にも用途を見出すことができる。本医薬品は、癌化学療法により誘発される好中球減少症の治療にも用途を見出すことができる。本医薬品は、アルツハイマー病、パーキンソン病、加齢に伴う記憶障害、軽度認知障害、脳外傷、統合失調症におけるような認知欠損および記憶欠損を特徴とする疾患およびこのような欠損が観察される他の病態の治療的処置にも用途を見出すことができる。
【0050】
本発明はさらに、GSK3βの異常活性により引き起こされる神経変性疾患および上記疾患を治療する方法であって、該治療を必要とする哺乳動物体に式(I)の化合物の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0051】
本発明の医薬品の活性成分として、上記式(I)により表される化合物および薬理学的に許容されるこの塩、ならびにこの溶媒和物およびこの水和物からなる群から選択される物質を使用することができる。この物質自体は、本発明の医薬品として投与することができ;しかしながら、上記物質を活性成分として含み、1種以上の医薬添加剤を含む医薬組成物の形態である医薬品を投与することが望ましい。本発明の医薬品の活性成分として、上記物質を2種以上組み合わせて使用することができる。上記疾患治療用の別の医薬品の活性成分を上記医薬組成物に補充してよい。医薬組成物の種類は特に限定されるものではなく、組成物は、経口投与または非経口投与用の任意の配合物として提供することができる。例えば、医薬組成物は、例えば、経口投与用の医薬組成物の形態、例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、液剤など、または非経口投与用の医薬組成物の形態、例えば、静脈内投与、筋肉内投与または皮下投与用の注射剤、点滴剤、経皮製剤、経粘膜製剤、点鼻剤、吸入剤、坐剤などに配合することができる。注射剤または点滴剤は、粉末製剤、例えば、凍結乾燥製剤の形態として調製することができ、使用直前に適切な水性媒体、例えば生理食塩水中に溶解させることにより使用することができる。徐放性製剤、例えばポリマーにより被覆されているものは、直接脳内投与することができる。
【0052】
医薬組成物の製造に使用される医薬添加剤の種類、活性成分に対する医薬添加剤の含有比および医薬組成物を調製する方法は、当業者が適宜選択することができる。無機物質もしくは有機物質、または固体物質もしくは液体物質を医薬添加剤として使用することができる。一般に、医薬添加剤は、活性成分の重量に対して1重量%から90重量%の範囲の比で取り込むことができる。
【0053】
固体医薬組成物の調製に使用される賦形剤の例としては、例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、タルク、セルロース、デキストリン、カオリン、炭酸カルシウムなどを含む。経口投与用の液体組成物の調製には、慣用の不活性希釈剤、例えば、水または植物油を使用することができる。液体組成物は、不活性希釈剤に加えて、助剤、例えば、湿潤剤、懸濁助剤、甘味剤、芳香剤、着色剤および保存剤を含有することができる。液体組成物は、吸収性物質、例えばゼラチン製のカプセル剤中に充填することができる。非経口投与用の組成物、例えば注射剤、坐剤の調製に使用される溶媒または懸濁媒体の例としては、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、オレイン酸エチル、レシチンなどを含む。坐剤に使用される基剤の例としては、例えば、カカオ脂、乳化カカオ脂、ラウリン脂、ウィテプゾール(witepsol)を含む。
【0054】
本発明の医薬品の用量および投与頻度は、特に限定されるものではなく、予防的および/または治療的処置の目的、疾患の種類、患者の体重または年齢、疾患の重症度などの条件に応じて適宜選択することができる。一般に、成人に対する経口投与の1日量は、0.01から1000mg(活性成分の重量)であってよく、この用量を、1日1回もしくは1日数回に分割した分量で、または数日に1回投与することができる。本医薬品が注射剤として使用される場合、投与は、好ましくは、成人に対して1日量0.001から100mg(活性成分の重量)で連続的または断続的に実施することができる。
【0055】
化学実施例
【実施例1】
【0056】
(表1の化合物番号2)
1−メチル−6−[2−(フェニルエチル)アミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
1.1 1−メチル−6−メチルスルファニル−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
4g(18.16mmol)の6−メチルスルファニル−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン(US4406897に記載の通り合成)の30mLの無水ジメチルホルムアミド中懸濁液に、2.76g(19.97mmol)の炭酸カリウムを添加した。得られた混合物を室温において15分間撹拌させ、0℃において冷却し、1.13mL(18.16mmol)のヨウ化メチルを滴加した。
【0057】
混合物を室温において加温し、2時間撹拌した。冷却した水を添加し、混合物をジクロロメタンにより抽出し、硫酸ナトリウムにより脱水し、蒸発乾固させて0.8g(39%)の純粋生成物を白色粉末としてもたらした。
融点:216−218℃
RMN H(DMSO−d;200MHz)
δ(ppm):8.80(d,2H),8.20(d,2H)3.50(s,3H),2.80(s,3H)。
【0058】
1.2 1−メチル−6−[2−(フェニルエチル)アミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
0.1g(0.43mmol)の1−メチル−6−メチルスルファニル−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オンおよび54μl(0.43mmol)のフェネチルアミン(市販品)を含有する混合物を、140℃において2時間撹拌した。27μl(0.215mmol)のフェネチルアミンを添加し、混合物を120℃において1時間撹拌した。冷却した後、得られた混合物をメタノールおよびジエチルエーテルにより粉砕した。得られた固体を濾過し、ジエチルエーテルにより洗浄して0.06g(46%)の所望化合物を粉末としてもたらした。
融点:242−244℃
RMN H(DMSO−d;200MHz)
δ(ppm):8.90(d,2H),8.30(brs,1H),8.10(d,1H),7.60−7.20(m,5H),5.60(brs,1H),4.90(brt,1H),3.80(dd,1H),3.60(dd,1H),3.30(s,3H)。
【実施例2】
【0059】
(表1の化合物番号4)
メチル−6−(2−オキソ−2−フェニル−エチルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
2.1 1−メチル−6−メチルスルファニル−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
4g(18.16mmol)の6−メチルスルファニル−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン(US4406897に記載の通り合成)の30mLの無水ジメチルホルムアミド中懸濁液に、2.76g(19.97mmol)の炭酸カリウムを添加した。得られた混合物を室温において15分間撹拌させ、0℃において冷却し、1.13mL(18.16mmol)のヨウ化メチルを滴加した。
【0060】
混合物を室温において加温し、2時間撹拌した。冷却した水を添加し、混合物をジクロロメタンにより抽出し、硫酸ナトリウムにより脱水し、蒸発乾固させて0.8g(39%)の純粋生成物を白色粉末としてもたらした。
融点:216−218℃
RMN H(DMSO−d;200MHz)
δ(ppm):8.80(d,2H),8.20(d,2H),3.50(s,3H),2.80(s,3H)。
【0061】
2.2 1−メチル−6−(2−オキソ−2−フェニル−エチルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
0.12g(0.51mmol)の1−メチル−6−メチルスルファニル−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オンの1mLの3−メチル−1−ブタノール中懸濁液に、0.088g(0.51mmol)の2−アミノ−1−フェニル−エタノン塩酸塩(市販品)を添加した。得られた混合物に、7.1mg(0.051mmol)の炭酸カリウムを添加した。得られた混合物を120℃において1時間撹拌した。次いで、7.1mg(0.051mmol)の炭酸カリウムを2時間の間に1時間ごとに添加した。
【0062】
冷却した後、得られた混合物をメタノールおよびジエチルエーテルにより粉砕した。得られた固体を濾過し、メタノール中に溶解させ、分取薄層クロマトグラフィー上で精製し、比率が90/10/1のジクロロメタン/メタノール/アンモニア水溶液(29%)の混合物により溶出させて0.05g(30%)の所望化合物をもたらした。
融点:230−232℃。
RMN H(DMSO−d;200MHz)
δ(ppm):8.30(brs,1H),8.60(d,2H),8.10(d,2H),7.90(d,2H)7.70(d,1H),7.60(d,2H),5.00(d,2H),3.50(s,3H)。
【実施例3】
【0063】
(表1の化合物番号9)
6−ベンジルアミノ−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
実施例1(工程1.2)に記載の方法と同様に、フェネチルアミンに代えてベンジルアミン(市販品)を使用し、1−メチル−6−メチルスルファニル−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オンに代えて6−メチルスルファニル−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン(US4406897に記載の通り合成)を使用して生成物をもたらし、この生成物を通常の手法において塩酸塩に変換して0.15g(47%)の白色固体を生じさせた。
融点:198−200℃
RMN H(DMSO−d;200MHz[+DO])
δ(ppm):9.00(d,2H),8.50(d,2H),7.70(d,2H),7.50(t,2H),7.15(t,1H)。
【実施例4】
【0064】
(表1の化合物番号10)
4.6−[2−(2−メトキシ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
実施例1(工程1.2)に記載の方法と同様に、フェネチルアミンに代えて2−(2−メトキシ−フェニル)−エチルアミン(市販品)を使用し、1−メチル−6−メチルスルファニル−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オンに代えて6−メチルスルファニル−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン(US4406897に記載の通り合成)を使用して生成物をもたらし、この生成物を通常の手法において塩酸塩に変換して0.11g(51%)の白色固体を生じさせた。
融点:230−232℃。
RMN H(DMSO−d;200MHz)
δ(ppm):8.90(brd,2H),8.30(d,1H),8.00(d,1H),7.30−7.10(m,2H),6.90−6.70(m,2H),3.90(s,3H),3.70(t,2H),2.90(t,2H)。
【0065】
本発明を例示する、上記式(I)の化合物の化学構造および物理的データの一覧を表1に示す。これらの化合物は、実施例の方法に従って調製した。表において、Meはメチル基を表し、(Rot.)は、鏡像異性化合物の左旋性特性または右旋性特性を示し、(dec.)は化合物の分解を示す。
【0066】
【表1】




【0067】
試験実施例:GSK3βに対する本発明の医薬品の阻害活性:
4つの異なるプロトコルを使用することができる。
【0068】
第1のプロトコル:7.5μMの予めリン酸化したGS1ペプチドおよび10μMのATP(300000cpmの33P−ATPを含有)を、GSK3ベータ(総反応容量:100マイクロリットル)の存在下、室温において1時間、25mMのTris−HCl、pH7.5、0.6mMのDTT、6mMのMgCl、0.6mMのEGTA、0.05mg/mlのBSA緩衝液中で温置した。
【0069】
第2のプロトコル:4.1μMの予めリン酸化したGS1ペプチドおよび42μMのATP(260000cpmの33P−ATPを含有)を、GSK3ベータの存在下、室温において2時間、80mMのMes−NaOH、pH6.5、1mMの酢酸Mg、0.5mMのEGTA、5mMの2−メルカプトエタノール、0.02%のTween20、10%のグリセロール緩衝液中で温置した。
【0070】
第3のプロトコル:7.5μMの予めリン酸化したGS1ペプチドおよび10μMのATP(300000cpmの33P−ATPを含有)を、GSK3ベータ(総反応容量:100マイクロリットル)の存在下、室温において1時間、50mMのHepes、pH7.2、1mMのDTT、1mMのMgCl、1mMのEGTA、0.01%のTween20緩衝液中で温置した。
【0071】
第4のプロトコル:7.5μMの予めリン酸化したGS1ペプチドおよび10μMのATP(300000cpmの33P−ATPを含有)を、市販のGSK3ベータ(Millipore)(総反応容量:100マイクロリットル)の存在下、室温において90分間、50mMのHepes、pH7.2、1mMのDTT、1mMのMgCI、1mMのEGTA、0.01%のTween20緩衝液中で温置した。
【0072】
阻害剤をDMSO(反応媒体中の最終溶媒濃度、1%)中に可溶化させた。
【0073】
25gのポリリン酸(85%P)、126mlの85%HPO、HOにより500mlにした溶液100マイクロリットルにより反応を停止させ、次いで使用前に1:100に希釈した。次いで、反応混合物のアリコートをWhatman P81カチオン交換フィルターに移し、上記溶液によりすすいだ。取り込まれた33P放射活性を液体シンチレーション分光分析により求めた。
【0074】
リン酸化したGS−1ペプチドは、以下の配列を有した:
NH2−YRRAAVPPSPSLSRHSSPHQS(P)EDEE−COOH。(Woodgett,J.R.(1989)Analytical Biochemistry 180,237−241。
【0075】
本発明の化合物のGSK3β阻害活性はIC50で表され、例示の通り、表1の化合物のIC50の範囲は、0.1ナノモル濃度から3マイクロモル濃度の間である。
【0076】
例えば、プロトコル3について、表1の化合物番号1は0.372μMのIC50を示し、表1の化合物番号5は、0.050μMのIC50を示す。
【0077】
配合実施例
(1)錠剤
以下の成分を通常の方法により混合し、慣用の装置を使用することにより圧縮した。
実施例1の化合物 30mg
結晶性セルロース 60mg
トウモロコシデンプン 100mg
ラクトース 200mg
ステアリン酸マグネシウム 4mg
【0078】
(2)軟カプセル剤
以下の成分を通常の方法により混合し、軟カプセル剤中に充填した。
実施例1の化合物 30mg
オリーブ油 300mg
レシチン 20mg
【0079】
(3)非経口製剤
以下の成分を通常の方法により混合し、1mlアンプル中に含有される注射剤を調製した。
実施例1の化合物 3mg
塩化ナトリウム 4mg
注射用蒸留水 1ml
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の化合物は、GSK3β阻害活性を有し、GSK3βの異常活性により引き起こされる疾患、さらに特定すると、神経変性疾患の予防的および/または治療的処置用の医薬品の活性成分として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離塩基または酸との付加塩の形態である、式(I)により表されるトリアジノン誘導体またはこの塩
【化1】

[式中、
Zは、結合、カルボニル基、C1−6アルキル基、ヒドロキシル基、C1−6アルコキシ基から選択される1または2個の基により場合により置換されているメチレン基を表し;
R1は、4−ピリジン環を表し;
R2は、水素原子、C1−6アルキルを表し;
R3は、水素原子、C1−6アルキル基を表し;
R2およびR3は、C1−6アルキル基から選択される1から4個の置換基により場合により置換されている、R2およびR3を担持する窒素を有する6員環を一緒になって形成していてよく;
R4は:
−フェニル環(この環は、C1−6アルキル基、ハロゲン原子、C1−2過ハロゲン化アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、C1−6アルコキシ基、C1−2過ハロゲン化アルコキシ基、C1−6アルキルスルホニル基、ニトロ、シアノ、アミノ、C1−6モノアルキルアミノ基またはC2−12ジアルキルアミノ基、アセトキシ基、アミノスルホニル基から選択される1から4個の置換基により場合により置換されている。)を表し;
nは、0から2を表す。]。
【請求項2】
遊離塩基または酸との付加塩の形態である、式(I)のトリアジノン誘導体
【化2】

[式中、
Zは、結合、カルボニル基、C1−6アルキル基、ヒドロキシル基、C1−6アルコキシ基から選択される1または2個の基により場合により置換されているC1−6アルキル基を表し、
R1は、4−ピリジン環を表し、
R2は、水素、C1−6アルキル基であり、
R3は、水素、C1−6アルキル基を表し;
R2およびR3は、6員環(この環は、C1−6アルキル基により場合により置換されている。)を一緒になって形成していてよく;
R4は、ハロゲン、C1−6アルコキシ基から選択される1から4個の置換基により場合により置換されているフェニルを表し、ならびに
nは、0、1、2を表す。]。
【請求項3】
以下のものからなる群から選択される、請求項1および2に記載のトリアジノン誘導体またはこの塩:
(+/−)−6−(2−ヒドロキシ−2−フェニル−エチルアミノ)−1−メチル−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
1−メチル−6−(2−フェニルエチル)アミノ−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
(+/−)−6−(2−ヒドロキシ−2−フェニル−エチルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
1−メチル−6−(2−オキソ−2−フェニル−エチルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−フェネチルアミノ−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
1−メチル−6−(3−フェニル−プロピルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−(3−フェニル−プロピルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−フェニルアミノ−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−ベンジルアミノ−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−[2−(2−メトキシ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−[2−(3−フルオロ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−[2−(2,4−ジクロロ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−[2−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−[2−(2−フルオロ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−[2−(3−メトキシ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
(+/−)−6−(1−フェニル−エチルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−[2−(4−フルオロ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−[2−(2,5−ジメトキシ−フェニル)−エチルアミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−[メチル−2−(フェニルエチル)−アミノ]−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−((S)−2−フェニル−プロピルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
6−((R)−2−フェニル−プロピルアミノ)−4−ピリジン−4−イル−1H−[1,3,5]トリアジン−2−オン
7,7−ジメチル−9−(2−オキソ−2−フェニル−エチル)−2−ピリジン−4−イル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリミド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン
9−((S)−2−ヒドロキシ−2−フェニル−エチル)−7,7−ジメチル−2−ピリジン−4−イル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリミド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン
9−[2−(2−フルオロ−フェニル)−エチル]−7,7−ジメチル−2−ピリジン−4−イル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリミド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン
(+/−)−9−(2−ヒドロキシ−2−フェニル−プロピル)−7,7−ジメチル−2−ピリジン−4−イル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリミド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン
7,7−ジメチル−9−(3−フェニル−プロピル)−2−ピリジン−4−イル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリミド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−4−オン。
【請求項4】
式(X)および(XI)により表される化合物
【化3】

[式中、
R1、R2およびR3は、請求項1に記載の式(I)の化合物について定義した通りである]。
【請求項5】
請求項1から3に記載の式(I)により表されるトリアジノン誘導体またはこの塩からなる群から選択される物質を活性成分として含む医薬品。
【請求項6】
請求項1に記載の式(I)により表されるトリアジノン誘導体もしくはこの塩、またはこの溶媒和物もしくはこの水和物の群から選択されるGSK3β阻害剤。
【請求項7】
異常なGSK3β活性により引き起こされる疾患の予防的および/または治療的処置用の、請求項1から3に記載の化合物。
【請求項8】
神経変性疾患の予防的および/または治療的処置用の、請求項1から3に記載の化合物。
【請求項9】
神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、タウオパチー、血管性認知症;急性脳卒中、外傷性損傷;脳血管発作、脳外傷(brain cord trauma)、脊髄外傷;末梢神経障害;網膜症または緑内障からなる群から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
インスリン非依存性糖尿病;肥満症;躁うつ病;統合失調症;脱毛症;癌:腎実質性疾患または筋萎縮の予防的および/または治療的処置用の、請求項1から3に記載の化合物。
【請求項11】
癌が、乳癌、非小細胞性肺癌、甲状腺癌、T細胞白血病もしくはB細胞白血病、またはウイルス誘発性腫瘍である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
マラリアの予防的および/または治療的処置用の、請求項1から3に記載の化合物。
【請求項13】
骨疾患の予防的および/または治療的処置用の、請求項1から3に記載の化合物。
【請求項14】
尋常性天疱瘡の予防的および/または治療的処置用の、請求項1から3に記載の化合物。
【請求項15】
癌化学療法により誘発される好中球減少症の予防的および/または治療的処置用の、請求項1から3に記載の化合物。
【請求項16】
認知欠損および記憶欠損を特徴とする疾患の治療的処置用の、請求項1から3に記載の化合物。
【請求項17】
請求項1から3に記載の一般式(I)の化合物を、請求項4に記載の中間体を用いて合成する方法。

【公表番号】特表2011−525905(P2011−525905A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515667(P2011−515667)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006463
【国際公開番号】WO2009/156860
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】