説明

神経変性障害を治療するためのネラメキサンの新規組合せ

本発明は、ネラメキサンとグルタミン酸放出阻害剤(GRI)とを含む組合せ、及び神経変性障害の治療における前記組合せの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネラメキサンとグルタミン酸放出阻害剤(GRI)とを含む組合せ、及び神経変性障害の治療における前記組合せの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタミン酸はCNSにおける主要興奮性神経伝達物質であり、グルタミン酸作動系機能障害は急性神経変性(例えば脳卒中及び外傷)、慢性神経変性(例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ALS)に関与し、数多くの神経障害及び精神障害(例えばてんかん、パーキンソン病、薬物依存、うつ病、不安及び慢性疼痛)の総体症状に関与する。
【0003】
興奮毒性は、虚血、外傷、及びてんかんを含む多くのCNS疾患、並びにアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの慢性疾患におけるニューロン変性の一因となる。グルタミン酸は、イオンチャネル型N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体を含むシナプス後受容体を活性化する。NMDA受容体の過剰活性化は神経変性障害の発生に中枢的役割を果たすという仮説が立てられている[Kriegerら, C. Trends Pharmacol Sci, 1996, 17, 114-120 ; Danyszら, Neurotox Res, 2002, 4, 119-126; Arundine及びTymianski, Cell Calcium, 2004, 34, 325-337]。
【0004】
運動ニューロン疾患は、運動ニューロンの進行性消失が関わる神経変性障害である。運動ニューロン疾患の例には、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ウイルス性灰白髄炎、ラチリズム、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮、偽性球麻痺、進行性球麻痺、進行性核上性麻痺、ケネディ病、及び脊髄性筋萎縮症が含まれる。
【0005】
リルゾール、ラモトリジン、フォスフェニトイン、ガバペンチン、プレガバリン及びルベルゾールなどのグルタミン酸放出阻害剤(GRI)の使用が、神経変性疾患を治療するための有望なアプローチとして提案されている。GRIは、その作用様式(すなわちグルタミン酸が神経毒性になる前にグルタミン酸伝達を遮断すること、又は発作時のニューロン放電を妨害すること)ゆえに、神経変性疾患の治療に有効であると考えられる[Benismonら, N Engl J Med, 1994, 330, 585-591; Lacomblezら, Lancet, 1996, 347, 1425-1431]。
【0006】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)には上位及び下位運動ニューロンが関与する。この疾患には散発型と遺伝型があり、それらを臨床的に識別することはできない。この一般的な成人運動ニューロン疾患における特徴的な運動ニューロンの選択的変性及び死の基礎を成す機序はまだわかっていないが、選択的運動ニューロン死に関する主要な仮説の一つはグルタミン酸による興奮毒性である[Rothsteinら, Clin Neurosci, 1995, 3, 348-359]。
【0007】
2-アミノ-6-トリフルオロメトキシベンゾチアゾール又は6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール-2-アミンとも呼ばれるリルゾールは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するための唯一の承認薬であり、現在はSanofi AventisがRILUTEK(登録商標)として販売している。リルゾールは延髄機能及び肢機能の改善を示すが、生存期間の改善は統計的に有意ではあるもののわずか(すなわちプラセボと比較して最大90日)でしかない。したがってALSの改良された薬物治療法が必要とされている。
【0008】
ALS症例の約20%は単一遺伝子性且つ常染色体優性(家族性ALS:fALS)である。fALSの最も一般的な原因は、スーパーオキシドイオンの除去を担う酵素スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)をコードする遺伝子中の点突然変異である[Rosenら, Nature. 1993;362(6415):59-62]。
【0009】
ALSの病理学的特徴は、反応性グリオーシスを伴う、脳幹及び脊髄中の下位運動ニューロン、運動皮質中及び皮質脊髄路の上位運動ニューロンの変性である。ALSにおける選択的運動ニューロン死の基礎を成す正確な発症機序はまだ解明されていないが、散発性ALS及びSOD1連鎖ALSにおいて、考えうる機序がいくつか提案されている[Van Dammeら, Neurodegenerative Dis. 2005;2:147-159]。
【0010】
マウス及びラットにおけるSOD1遺伝子突然変異の過剰発現は、ヒトにおけるALSの臨床的及び病理学的特徴を模倣し、そこでは運動ニューロンが変性し、動物は発症後まもなく死亡する。マウスの短い寿命内でのALS様表現型の発生には、高レベルの突然変異体SOD1 RNAが要求される。ALSの実験モデルは、ALSの病理発生の理解、及び神経変性からの保護をめざす新しい治療的介入の試験において、中枢的役割を果たす[Gurney, N Engl J Med. 1994 Dec 22;331(25):1721-2; Dal Cantoら, Am J Pathol. 1994 Dec;145(6):1271-9]。トランスジェニックSOD1(G93A)マウスは、治療的介入に関して最も頻繁に使用されるモデルの一つに相当する[Julien, Drug Discovery Today: Dis. Models Winter 2006;3(4): 331-339)]。
【0011】
運動ニューロンの選択的消失を担う機序及びプロセスはまだわかっておらず、おそらく多因子性であるだろう。選択的運動ニューロン死に関する主要な仮説の一つはグルタミン酸による興奮毒性である[Rothsteinら, Ann. Neurol. 1990, 28, 18-25;Rothstein, Clinical Neuroscience, 1995, 3, 348-359;Shawら, Neurol, 1997, 244, S3-S14]。興奮毒性とは、シナプス前終末から放出される、グルタミン酸受容体の過剰刺激によって誘発されるニューロン変性を表す。興奮毒性機序の詳細な特徴及びそれらのALSとの関連性については、Van Dammeら, Neurodegenererative Dis, 2005, 2:147-159を参照されたい。
【0012】
近年、ALS研究は、興奮性神経伝達を妨害するリルゾールなどの抗興奮毒性化合物の開発を目指すようになっている[Ludolphら, J Neural Transm, 1999[Suppl] 55:79-95]。
【0013】
N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の過剰な活性化は、広範な神経障害におけるニューロン変性の主要機序であると思われる[Lipton,ら, N Engl J Med, 1994 Mar 3, 330(9):613-22]。
【0014】
非競合的NMDA受容体アンタゴニストであるメマンチンは、SOD1(G93A)ALSマウスモデルにおいて、疾患進行及び生存時間に関して、プラスの効果を示している[Wangら, Eur J Neurosci, 2005 Nov, 22(9):2376-80]。
【0015】
周知の非競合的NMDA受容体アンタゴニストであるデキストロメトルファンは、情動不安定及び制御不能情動の治療において、プラスの効果を示している[米国特許第5,206,248号明細書]。情動不安定(EL)は、患者が容易に惹起され迅速に消失しうる迅速且つかなり大きな気分変化を体験するという中枢神経系の疾患である。制御不能情動(pseudobulbar affect:PBA)は、情動不安定のより深刻な形態であり、ここでは、予測不可能な、現実の事象又はその個人の現実の感情とはほとんど関係がないか無関係であると思われる、笑い及び/又は泣きの制御不能なエピソードが起こる。EL及びPBAは、神経変性障害に関連し、その神経変性障害には、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、認知症、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、及び外傷性脳損傷が含まれうるが、これらに限るわけではない。PBAの詳細な説明はSchiffer及びPopeによってなされている[J. Neuropsychiatry Clin. Neurosci., 2005, 17(4), 447-454]。
【0016】
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサンとも呼ばれるネラメキサンは、経口活性型1-アミノシクロヘキサン類の一員であり、さまざまな疾患の治療において、特にアルツハイマー病及び神経因性疼痛を含む一定の神経学的疾患において役立ちうる。ネラメキサンの治療作用は、神経細胞のNMDA受容体における過剰なグルタミン酸の効果の阻害に関係すると考えられ、それゆえに、この化合物はNMDAアンタゴニスト又はNMDA受容体アンタゴニストとも分類される。より具体的に述べると、ネラメキサンは、グルタミン酸の異常伝達に関連する興奮毒性効果を選択的に遮断すると考えられる低〜中程度のアフィニティ非競合的NMDA受容体アンタゴニストであると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,206,248号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Kriegerら, C. Trends Pharmacol Sci, 1966, 17, 114-120
【非特許文献2】Danyszら, Neurotox Res, 2002, 4, 119-126
【非特許文献3】Arundine及びTymianski, Cell Calcium, 2004, 34, 325-337
【非特許文献4】Benismonら, N Engl J Med, 1994, 330, 585-591
【非特許文献5】Lacomblezら, Lancet, 1996, 347, 1425-1431
【非特許文献6】Rothsteinら, Clin Neurosci, 1995, 3, 348-359
【非特許文献7】Rosenら, Nature. 1993;362(6415):59-62
【非特許文献8】Van Dammeら, Neurodegenerative Dis. 2005;2:147-159
【非特許文献9】Gurney, N Engl J Med. 1994 Dec 22;331(25):1721-2
【非特許文献10】Dal Cantoら, Am J Pathol. 1994 Dec;145(6):1271-9
【非特許文献11】Julien, Drug Discovery Today: Dis. Models Winter 2006;3(4): 331-339)
【非特許文献12】Rothsteinら, Ann. Neurol. 1990, 28, 18-25
【非特許文献13】Shawら, Neurol, 1997, 244, S3-S14
【非特許文献14】Ludolphら, J Neural Transm, 1999[Suppl] 55:79-95
【非特許文献15】Lipton,ら, N Engl J Med, 1994 Mar 3, 330(9):613-22
【非特許文献16】Wangら, Eur J Neurosci, 2005 Nov, 22(9):2376-80
【非特許文献17】J. Neuropsychiatry Clin. Neurosci., 2005, 17(4), 447-454
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、ネラメキサンとグルタミン酸放出阻害剤(GRI)とを含む組合せ、及び神経変性障害の治療における前記組合せの使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のさらなる一態様は、ネラメキサンとグルタミン酸放出阻害剤(GRI)とを含む組合せ、及び神経変性障害に関連する情動不安定(EL)及び/又は制御不能情動(PBA)の治療における前記組合せの使用に関する。
【0021】
本発明のさらなる一態様は、神経変性障害に関連する情動不安定(EL)及び/又は制御不能情動(PBA)の治療におけるネラメキサンの使用に関する。
【0022】
本発明のさらなる一態様は、神経変性障害に関連する情動不安定(EL)及び/又は制御不能情動(PBA)の治療におけるグルタミン酸放出阻害剤(GRI)の使用に関する。
【0023】
本発明のさらなる一態様は、ネラメキサンとグルタミン酸放出阻害剤(GRI)とを含む組合せ、並びに筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ウイルス性灰白髄炎、ラチリズム、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮、偽性球麻痺、進行性球麻痺、進行性核上性麻痺、ケネディ病、及び脊髄性筋萎縮症を含む運動ニューロン疾患の治療における前記組合せの使用に関する。
【0024】
本発明のさらなる一態様は、ネラメキサンと、リルゾール、RP66055、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリジン、ルベルゾール、フォスフェニトイン、シパトリギン、MS-153、及びFP-0011から選ばれるグルタミン酸放出阻害剤(GRI)とを含む組合せ、並びに筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ウイルス性灰白髄炎、ラチリズム、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮、偽性球麻痺、進行性球麻痺、進行性核上性麻痺、ケネディ病、及び脊髄性筋萎縮症を含む運動ニューロン疾患の治療における前記組合せの使用に関する。
【0025】
本発明のさらなる一態様は、ネラメキサンと、リルゾール、RP66055、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリジン、ルベルゾール、フォスフェニトイン、シパトリギン、MS-153、及びFP-0011から選ばれるグルタミン酸放出阻害剤(GRI)とを含む組合せ、並びに筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療における前記組合せの使用に関する。
【0026】
本発明のさらなる一態様は、ネラメキサンとリルゾールとを含む組合せ、並びに筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された個体を治療する方法であって、ネラメキサンとリルゾールとの組合せの有効量をその個体に投与することを含む方法に関する。
【0027】
本発明のさらなる一態様は、神経変性障害を治療するための医薬を製造するための、ネラメキサンとグルタミン酸放出阻害剤(GRI)とを含む組合せの使用に関する。
【0028】
本発明のさらなる一態様は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ウイルス性灰白髄炎、ラチリズム、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮、偽性球麻痺、進行性球麻痺、進行性核上性麻痺、ケネディ病、及び脊髄性筋萎縮症を含む運動ニューロン疾患を治療するための医薬を製造するための、ネラメキサンとグルタミン酸放出阻害剤(GRI)とを含む組合せの使用に関する。
【0029】
本発明のさらなる一態様は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ウイルス性灰白髄炎、ラチリズム、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮、偽性球麻痺、進行性球麻痺、進行性核上性麻痺、ケネディ病、及び脊髄性筋萎縮症を含む運動ニューロン疾患を治療するための医薬を製造するための、ネラメキサンと、リルゾール、RP66055、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリジン、ルベルゾール、フォスフェニトイン、シパトリギン、MS-153、及びFP-0011から選ばれるグルタミン酸放出阻害剤(GRI)とを含む組合せの使用に関する。
【0030】
本発明のさらなる一態様は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するための医薬を製造するための、ネラメキサンと、リルゾール、RP66055、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリジン、ルベルゾール、フォスフェニトイン、シパトリギン、MS-153、及びFP-0011から選ばれるグルタミン酸放出阻害剤(GRI)とを含む組合せの使用に関する。
【0031】
本発明のさらなる一態様は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された個体を治療するための医薬を製造するための、ネラメキサンとリルゾールとを含む組合せの使用に関する。
【0032】
本発明のさらなる一態様は、当該治療を必要とする対象における神経変性障害を治療する方法であって、第1量のネラメキサンと第2量のグルタミン酸放出阻害剤とを投与することを含み、組み合わされた第1量及び第2量が神経変性障害の治療に有効である方法に関する。
【0033】
本発明のさらなる一態様は、グルタミン酸放出阻害剤がリルゾール、RP66055、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリジン、ルベルゾール、フォスフェニトイン、シパトリギン、MS-153、及びFP-0011から選ばれる、上記の方法に関する。
【0034】
本発明のさらなる一態様は、神経変性障害が運動ニューロン疾患である、上記の方法に関する。
【0035】
本発明のさらなる一態様は、運動ニューロン疾患が筋萎縮性側索硬化症である、上記の方法に関する。
【0036】
本発明のさらなる一態様は、当該治療を必要とする個体における筋萎縮性側索硬化症を治療する方法であって、第1量のネラメキサンと第2量のリルゾールとを投与することを含み、組み合わされた第1量及び第2量が筋萎縮性側索硬化症の治療に有効である方法に関する。
【0037】
本発明のさらなる一態様は、当該治療を必要とする対象における神経変性障害に関連する情動不安定(EL)及び/又は制御不能情動(PBA)を治療する方法であって、第1量のネラメキサンと第2量のグルタミン酸放出阻害剤(GRI)とを投与することを含み、組み合わされた第1量及び第2量が神経変性障害に関連する情動不安定(EL)及び/又は制御不能情動(PBA)の治療に有効である方法に関する。
【0038】
本発明のさらなる一態様は、当該治療を必要とする対象における神経変性障害に関連する情動不安定(EL)及び/又は制御不能情動(PBA)を治療する方法であって、治療有効量のネラメキサンを投与することを含む方法に関する。
【0039】
本発明のさらなる一態様は、当該治療を必要とする対象における神経変性障害に関連する情動不安定(EL)及び/又は制御不能情動(PBA)を治療する方法であって、治療有効量のグルタミン酸放出阻害剤(GRI)を投与することを含む方法に関する。
【0040】
本発明のもう一つの態様は、ネラメキサンとグルタミン酸放出阻害剤(GRI)との組合せの治療有効量、及び少なくとも一つの薬学的に許容できる賦形剤を含む、神経変性障害を治療するための医薬組成物に関する。
【0041】
本発明のさらなる一態様は、ネラメキサンと、リルゾール、RP66055、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリジン、ルベルゾール、フォスフェニトイン、シパトリギン、MS-153、及びFP-0011を含むグルタミン酸放出阻害剤(GRI)との組合せの治療有効量、並びに少なくとも一つの薬学的に許容できる賦形剤を含む、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ウイルス性灰白髄炎、ラチリズム、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮、偽性球麻痺、進行性球麻痺、進行性核上性麻痺、ケネディ病、及び脊髄性筋萎縮症を含む運動ニューロン疾患を治療するための医薬組成物に関する。
【0042】
本発明のさらなる一態様は、ネラメキサンとリルゾールとを含む組合せの治療有効量、及び少なくとも一つの薬学的に許容できる担体又は賦形剤を含む、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するための医薬組成物に関する。
【0043】
本発明のさらなる一態様は、即効型製剤又は放出調節製剤中にネラメキサンとリルゾールとを含む組合せの治療有効量を含む、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するための医薬組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
活性成分に適用される「組合せ」という用語は、本明細書においては、二つの活性剤を含む単一医薬組成物(製剤)(例えばネラメキサンとリルゾールとを含む医薬組成物)を定義するか、又はそれぞれが一つの活性剤を含む二つの別個の医薬組成物(例えばネラメキサン又はリルゾールを含む医薬組成物)であって、コンジョイント(conjointly)に投与されるものを定義するために用いられる。
【0045】
本発明に関して「コンジョイント投与(conjoint administration)」という用語は、ネラメキサンとGRI(例えばリルゾール)とを一つの組成物として同時に投与すること、又は異なる組成物として同時に投与すること、又は逐次的に投与することを指すために用いられる。ただし、逐次的投与が「コンジョイント」であるとみなされるには、ネラメキサンと第2の活性剤とが、哺乳動物における神経変性障害(筋萎縮性側索硬化症(ALS)など)の治療にとって有益な効果がまだ生じうるような時間間隔で投与されなければならない。
【0046】
本明細書で使用する用語「治療する」は、対象における疾患の少なくとも一つの症状を軽減又は緩和することを意味するものとする。本発明に関して、用語「治療する」は、発症を抑え、遅らせ(すなわち疾患の臨床症状発現前の期間)、且つ/又は疾患を発生若しくは悪化させるリスクを低減することも表す。
【0047】
本明細書で使用する運動ニューロン疾患という用語は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ウイルス性灰白髄炎、ラチリズム、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮、偽性球麻痺、進行性球麻痺、進行性核上性麻痺、ケネディ病、及び脊髄性筋萎縮症を包含する。
【0048】
ネラメキサン(1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン)は米国特許第6,034,134号明細書及び同第6,071,966号明細書に開示されており、これらの特許の内容は参照により本明細書に組み込まれる。ネラメキサンは、その薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体のいずれの形態でも、本発明に従って使用することができ、本明細書におけるネラメキサンへの言及はいずれも、そのような塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体への言及でもあると理解すべきである。
【0049】
本明細書で使用するグルタミン酸放出阻害剤(GRI)という用語は、リルゾール、RP66055、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリジン、ルベルゾール、フォスフェニトイン、シパトリギン、MS-153、及びFP-0011を包含する。
【0050】
リルゾール(2-アミノ-6-トリフルオロメトキシベンゾチアゾール又は6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール-2-アミン)は米国特許第4,370,338号明細書に開示されており、この特許の内容は参照により本明細書に組み込まれる。リルゾールは、その薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体のいずれの形態でも、本発明に従って使用することができ、本明細書におけるリルゾールへの言及はいずれも、そのような塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体への言及でもあると理解すべきである。
【0051】
RP66055(3-{2-[1-(4-フルオロフェニル-ピペラジニル)]エチル}-2-イミノ-6-トリフルオロメトキシベンゾチアゾリン)はJimonetら, Bioorg Med Chem, 1994 2:793-8に開示されている。RP66055は、その薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体のいずれの形態でも、本発明に従って使用することができ、本明細書におけるRP66055への言及はいずれも、そのような塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体への言及でもあると理解すべきである。
【0052】
ガバペンチン(2-[1-(アミノメチル)シクロヘキシル]酢酸)は、その薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体のいずれの形態でも、本発明に従って使用することができ、本明細書におけるガバペンチンへの言及はいずれも、そのような塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体への言及でもあると理解すべきである。
【0053】
プレガバリン((S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸)は、その薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体のいずれの形態でも、本発明に従って使用することができ、本明細書におけるプレガバリンへの言及はいずれも、そのような塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体への言及でもあると理解すべきである。
【0054】
ラモトリジン(6-(2,3-ジクロロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3,5-ジアミン)は、その薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体のいずれの形態でも、本発明に従って使用することができ、本明細書におけるラモトリジンへの言及はいずれも、そのような塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体への言及でもあると理解すべきである。
【0055】
ルベルゾール((S)-4-[(2-ベンゾチアゾリル)メチルアミノ]-α-[(3,4-ジフルオロ-フェノキシ)メチル]-1-ピペリジンエタノール)は米国特許第5,434,168号明細書に開示されている。ルベルゾールは、その薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体のいずれの形態でも、本発明に従って使用することができ、本明細書におけるルベルゾールへの言及は、そのような塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体への言及でもあると理解すべきである。
【0056】
フォスフェニトイン(2,5-ジオキソ-4,4-ジフェニル-イミダゾリジン-1-イル)メトキシホスホン酸)は、その薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体のいずれの形態でも、本発明に従って使用することができ、本明細書におけるフォスフェニトインへの言及はいずれも、そのような塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体への言及でもあると理解すべきである。
【0057】
シパトリギン(2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-5-(2,3,5-トリクロロフェニル)ピリミジン-4-アミン)は、その薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体のいずれの形態でも、本発明に従って使用することができ、本明細書におけるシパトリギンへの言及はいずれも、そのような塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体への言及でもあると理解すべきである。
【0058】
MS-153((R)-(-)-5-メチル-1-ニコチノイル-2-ピラゾリン)は、その薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体のいずれの形態でも、本発明に従って使用することができ、本明細書におけるMS-153への言及はいずれも、そのような塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、プロドラッグ、代謝産物、及び誘導体への言及でもあると理解すべきである。
【0059】
薬学的に許容し得る塩には、限定するわけではないが、酸付加塩、例えば塩酸、メチルスルホン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、炭酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、及び2-アセトキシ安息香酸を使って調製されるものが含まれる。これらの塩(又は他の類似する塩)は全て、従来の手段によって製造することができる。塩の性質は、それが無毒性であり、所望の薬学的活性を実質的に妨害しない限り、決定的な問題ではない。
【0060】
「類似体」又は「誘導体」という用語は、本明細書においては、従来の薬学的意味で、基準分子(例えばネラメキサン又はリルゾール)に構造的に似ているが、基準分子の一つ以上の特定置換基を代替置換基で置き換えることによって基準分子に構造的に類似する分子が生じるように、標的を絞った制御された方法で修飾されている分子を指すために用いられる。改良された特質又は偏った特質(例えば、特異的標的受容体タイプにおける、より高い力価及び/又は選択性、哺乳動物の血液脳関門を通り抜ける、より高い能力、より少ない副作用など)を持ちうる、既知化合物のわずかに修飾された異形を同定するために行われる、類似体の合成及びスクリーニング(例えば構造解析及び/又は生化学的解析を使用するもの)は、薬化学において周知のドラッグデザインアプローチである。
【0061】
用量又は量に適用される「治療(的に)有効」という用語は、それを必要とする哺乳動物への投与後に所望の活性をもたらすのに十分な、化合物又は医薬組成物の分量を指す。
【0062】
「閾値下」という用語は、応答を生じさせるには不十分な活性成分の量、すなわち活性成分を単剤療法として使用した場合の最少有効量未満の量を指す。
【0063】
同じ文脈において「最適下」という用語は、応答を生じさせるが、その量よりも高量で達成されるであろう最大限の応答には至らない活性成分の量を意味する。
【0064】
「相加的」という用語は、二つの化合物の投与の複合的効果であって、全応答が、それらの化合物を単剤療法として投与した場合の応答の和に等しいか、ほぼ等しい場合を指す。
【0065】
「相乗的」という用語は、二つの治療化合物の投与の複合的効果であって、全応答が、それら二つの個別の効果の和よりも大きい場合を指す。相乗作用という用語は、単剤療法として投与した場合には測定可能な応答を生じないが、もう一つの治療化合物と組み合わせて投与すると、第2の化合物のみによって生じる応答よりも大きい全応答を生じるような量で、ある化合物を投与した場合の複合的効果も指す。
【0066】
本発明の組成物との関連で使用される「薬学的に許容できる」という表現は、哺乳動物(例えばヒト)に投与された場合に生理学的に認容でき、不都合な反応を典型的には生じない、それら組成物の分子的実体及び他の成分を指す。「薬学的に許容できる」という用語は、哺乳動物(より具体的にはヒト)における使用に関して、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認されていること、又は米国薬局方若しくは他の広く認識されている薬局方に記載されていることも意味しうる。
【0067】
本発明の医薬組成物に適用される「担体」という用語は、活性化合物(例えばネラメキサン)と一緒に投与される希釈剤、賦形剤、又は溶剤を指す。そのような医薬担体は滅菌された液体、例えば水、食塩溶液、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液、及び油(石油、動物、植物又は合成由来のもの、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む)であることができる。適切な医薬担体はA.R. Gennaro「Remington's Pharmaceutical Sciences」(第20版)に記載されている。
【0068】
「約」又は「およそ」という用語は、通常、与えられた値又は範囲の20%以内、或いは10%以内(5%以内を含む)を意味する。或いは、とりわけ生物系においては、「約」という用語は、与えられた値の約1log(すなわち一桁)以内(2分の1〜2倍以内を含む)を意味する。
【0069】
本発明の方法と併せて、治療有効量のネラメキサン及び/又は治療的に許容できる量のGRI(例えばリルゾール)を含む医薬組成物も提供される。本発明の組成物は担体又は賦形剤(全て薬学的に許容できるもの)をさらに含みうる。本組成物は1日1回投与用、1日2回投与用、又は1日3回投与用に製剤することができる。
【0070】
本発明の組成物又は本発明の単一活性成分は、上述した障害の一つを治療するための医薬の製造に使用することができ、その場合、医薬は、本明細書に開示する特定の投与(例えば1日1回投与、1日2回投与、又は1日3回投与)に適合するか、そのような投与のために適当に調製される。この目的のために、添付文書及び/又は患者情報は、対応する情報を含有する。
【0071】
本発明によれば、組成物の剤形は、下記の固形、半固形、又は液状製剤であることができる。
【0072】
組成物は、従来の薬学的に許容できる無毒性の担体を含有する投薬単位製剤として、経口、局所外用、非経口、又は粘膜(例えば口腔粘膜、吸引、又は直腸)投与することができる。組成物は、カプセル剤、錠剤などの形態、又は半固形製剤、若しくは液状製剤として、経口投与することができる(A.R. Gennaro「Remington's Pharmaceutical Sciences」(第20版)参照)。
【0073】
錠剤又はカプセル剤の形態で経口投与するには、組成物を、無毒性の薬学的に許容できる賦形剤、例えば結合剤(例:アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール並びに他の還元糖及び非還元糖、微結晶セルロース、硫酸カルシウム、又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、又はシリカ、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウムなど);崩壊剤(例えばバレイショデンプン又はグリコール酸デンプンナトリウム);又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、着色及び着香剤、ゼラチン、甘味剤、天然及び合成ゴム(例えばアラビアゴム、トラガカント又はアルギナート)、緩衝塩、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウなどと混合することができる。
【0074】
錠剤は、濃縮糖溶液(これは例えばアラビアゴム、ゼラチン、滑石、二酸化チタンなどを含有しうる)でコーティングすることができる。或いは、易揮発性有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解するポリマーで、錠剤をコーティングすることもできる。特定の実施形態では、ネラメキサンが即放性(IR)又は放出調節(MR)錠剤に製剤される。即放性固形剤形は、短期間、例えば60分以下での、活性成分の大半又は全ての放出を許し、薬物の迅速な吸収を可能にする(例えば、ネラメキサンの即効型製剤は米国特許出願公開第2006/0002999号公報及び同第2006/0198884号公報に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。放出調節固形経口剤形は、治療的に有効な血漿レベルを長期間にわたって維持し、且つ/又は活性成分の他の薬物動態特性を変更するための努力として、同様に長い期間にわたる活性成分の徐放を可能にする(例えば、ネラメキサンの放出調節製剤は米国特許出願公開第2007/0141148号公報に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0075】
軟ゼラチンカプセル剤を製剤するには、活性物質を、例えば植物油又はポリエチレングリコールと混合することができる。硬ゼラチンカプセル剤は、上述した錠剤用賦形剤のいずれか、例えばラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン(例えばバレイショデンプン、トウモロコシデンプン又はアミロペクチン)、セルロース誘導体又はゼラチンを使った、活性物質の顆粒を含有しうる。液状又は半固形の薬物も硬ゼラチンカプセルに充填することができる。
【0076】
本発明の組成物は、ミクロスフェア又はマイクロカプセル(例えばポリグリコール酸/乳酸(PGLA)から製作されるもの)に導入することもできる(例えば米国特許第5,814,344号公報、同第5,100,669号公報及び同第4,849,222号公報、国際公開第95/11010号パンフレット及び国際公開第93/07861号パンフレットを参照されたい)。薬物の放出制御の達成には生体適合性ポリマーを使用することができ、これには、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマーが含まれる。
【0077】
半固形又は液状の本発明組成物の製剤も使用することができる。活性成分(すなわちネラメキサン及び/又は例えばリルゾール)は、注射用の製剤の場合は0.1〜99重量%、より具体的には0.5〜20重量%、経口投与に適した製剤の場合は0.2〜50重量%を構成しうる。
【0078】
本発明のある実施形態では、組成物が放出調節製剤として投与される。放出調節剤形は、服薬遵守を改善するための手段になり、有害薬物反応の発生を減少させることによって効果的且つ安全な治療を保証するための手段になる。即放性剤形と比較して、放出調節剤形は、投与後の薬理作用を引き延ばすために使用することができると共に、投薬間隔全体にわたる血漿中濃度の変動性を低減し、それによって急激なピークを排除又は低減するために使用することができる。
【0079】
放出調節剤形は薬物でコーティングされたコア又は薬物を含有するコアを含みうる。次に、コア部は放出調節ポリマーでコーティングされ、そのポリマー中に薬物が分散される。放出調節ポリマーは徐々に崩壊して、時間の経過と共に薬物を放出する。このようにして、組成物が水性環境、すなわち消化管にばく露された時の、コーティング層を横切る薬物の拡散を、組成物の最外層が効果的に減速し、その結果として調節する。薬物の正味の拡散速度は、主として、コーティング層又はコーティングマトリックスを通り抜ける胃液の能力及び薬物自体の溶解性に依存する。
【0080】
本発明のもう一つの実施形態では、組成物が経口液状製剤に製剤される。経口投与用の液状調製物は、例えば溶液剤、シロップ剤、乳剤又は懸濁剤の形態をとるか、又は使用前に水若しくは他の適切な溶剤で再構成するための乾燥品として提示することができる。経口投与用の調製物は、活性化合物の放出制御又は放出延期がもたらされるように、適切に製剤することができる。ネラメキサンの経口液状製剤は、例えば国際出願番号PCT/US2004/037026号明細書に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
液状での経口投与には、組成物を、無毒性の薬学的に許容できる不活性担体(例えばエタノール、グリセロール、水)、懸濁剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用脂)、乳化剤(例えばレシチン又はアラビアゴム)、非水性溶剤(例えばアーモンド油、油状エステル、エチルアルコール又は分画植物油)、保存剤(例えばメチル若しくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)などと混合することができる。剤形を安定化するために、酸化防止剤(BHA、BHT、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸)などの安定剤も加えることができる。例えば、溶液剤は約0.2重量%〜約20重量%のネラメキサンを含有し、残りは糖並びにエタノール、水、グリセロール及びプロピレングリコールの混合物とすることができる。場合により、そのような液状製剤は、着色剤、着香剤、サッカリン、及び増粘剤としてのカルボキシメチル-セルロース、又は他の賦形剤を含有してもよい。
【0082】
もう一つの実施形態では、治療有効量の活性物質が、保存剤、甘味剤、可溶化剤、及び溶媒を含有する経口溶液剤として投与される。経口溶液剤は、一つ以上の緩衝剤、着香剤、又は追加の賦形剤を含みうる。さらなる一実施形態では、ペパーミント又は他の香料が、経口液状製剤に加えられる。
【0083】
吸入による投与には、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切な気体を利用して、加圧容器又は噴霧器からのエアロゾル散布提示の形態で、組成物を都合よく送達することができる。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計測された量を送達するためのバルブを設けることによって決定することができる。化合物とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有する、吸入器又はインサフレータ用の、例えばゼラチン製のカプセル及びカートリッジを製剤することができる。
【0084】
注射による非経口適用のための溶液剤は、活性物質の薬学的に許容できる水溶性塩の水溶液(好ましくは濃度が約0.5重量%〜約10重量%であるもの)として、調製することができる。これらの溶液剤は、安定剤及び/又は緩衝剤も含有することができ、さまざまな投薬単位アンプルに入れて、都合よく提供することができる。
【0085】
直腸適用のための投薬単位は溶液剤又は懸濁剤であるか、中性脂肪基剤と混合されたネラメキサンを含む坐剤若しくは停留浣腸剤、又は植物油若しくはパラフィン油と混合された活性物質を含むゼラチン直腸カプセル剤として調製することができる。
【0086】
本発明の製剤は、非経口的に、すなわち静脈内(i.v.)、脳室内(i.c.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、真皮下(s.d.)、又は皮内(i.d.)投与により、例えばボーラス注射又は持続注入による直接注射で、送達することができる。注射用製剤は、保存剤を添加して、単位剤形で、例えばアンプルに入れて、又は多用量容器に入れて、提示することができる。或いは、活性成分は、使用前に適切な溶剤、例えば滅菌パイロジェンフリー水で再構成するための粉末状であってもよい。
【0087】
本発明は、活性物質(すなわちネラメキサン及び/又は例えばリルゾール)と、場合によっては、その他の製剤成分とを含有する一つ以上の容器を含む、医薬パック又は医薬キットも提供する。ある特定の実施形態では、組成物が、2ティスプーン容量(teaspoon capacity)のシリンジ(dosage KORC(登録商標))を使って投与するための経口溶液剤(2mg/ml)として提供される。各経口シリンジは測定用の青色ハッチマークを持ち、シリンジの右側(先端を下にした場合)にtsp単位を表す線、左側にml単位を表す線が引かれる。
【0088】
本発明の組成物の構成の最適な治療有効量は、薬物を投与する際の厳密な投与様式、その投与の目的である適応症、関与する対象(例えば体重、健康状態、年齢、性別など)、並びに担当する医師又は獣医師の好み及び経験を考慮して、実験的に決定することができる。
【0089】
本発明の組成物の毒性及び治療効力は、実験動物における標準的な薬学手法によって、例えばLD50(集団の50%にとって致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定することなどによって、決定することができる。治療効果と毒性効果の間の用量比が治療係数であり、これはLD50/ED50比として表すことができる。大きい治療係数を示す組成物は好ましい。
【0090】
ヒトの治療的治療における本発明の活性化合物の適切な1日量は、経口投与では約0.01〜10mg/kg体重、非経口投与では0.001〜10mg/kg体重である。ネラメキサン(例えばメシル酸ネラメキサン)の適切な1日量は、1日あたり約5mg〜約150mg、例えば1日あたり約5mg〜約120mg、約5mg〜約100mg、又は約5mg〜約50mgの範囲内にある。ネラメキサン(例えばメシル酸ネラメキサン)の適切な1日量は、1日あたり6.25mg、12.5mg、25mg、50mg、又は75mgである。リルゾールの適切な1日量は、1日あたり約5mg〜約150mg、例えば1日あたり約5mg〜約100mg、例えば1日あたり約50mg〜約100mgの範囲内にあり、例えば50mgを1日2回である。
【0091】
本明細書に示す1日量は、例えば1又は2投薬単位として、1日に1回、2回、又は3回、投与されることになる。したがって、1投与単位あたりの適切な用量は、1日に投与される投与単位の数で(例えば等しく)分けた1日量になり、したがって典型的には、1日量にほぼ等しいか、その2分の1、3分の1、4分の1又は6分の1になる。したがって、投与単位あたりの投薬量は、本明細書に示す各1日量から算出することができる。例えば5mgという1日量は、選択した投与レジメンに応じて、1投与単位あたり例えば約5mg、2.5mg、1.67mg、1.25mg及び0.83mgの用量になると見ることができる。同様に、1日あたり150mgの投薬量は、対応する投与レジメンに合わせて、1投薬単位あたりおよそ150mg、75mg、50mg、37.5mg、及び25mgの投薬量に相当する。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例を挙げて本発明を例示するが、これは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0093】
リルゾールと組み合わされたネラメキサンのALSマウスモデルにおける効果
マウス及びラットにおけるSOD1遺伝子突然変異の過剰発現は、ヒトにおけるALSの臨床的及び病理学的特徴を模倣し、そこでは運動ニューロンが変性し、動物は発症後まもなく死亡する。トランスジェニックSOD1(G93A)マウスは、治療的介入を評価するための、最も頻繁に使用されるモデルの一つに相当する。
【0094】
この試験で使用されるマウスモデルは、93位にグリシンからアラニンへのミスセンス突然変異(G93A)を持つヒト突然変異型酵素Cu/Zn SOD1の過剰発現を特徴とする。突然変異型SOD1のmRNAレベルは、内在性マウスSOD1の正常mRNAレベルの40倍である[Gurney M.E., J. Neurol. Sci., 1997, 152 Suppl 1, S67-73]。
【0095】
高コピー数のヒト突然変異型SOD1(G93A)を持つトランスジェニックマウスの寿命は約130日であり[Gurney M.E., J. Neurol. Sci., 1997, 152 Suppl 1, S67-73]、約90日齢で発病に至り、約110日齢でマウスは一方又は両方の後肢に不全麻痺を起こす[Wangら, Eur J Neurosci. 2005 Nov;22(9):2376-80]。
【0096】
ALSのSOD1(G93A)トランスジェニックマウスモデルにおけるALS病理発生を改善する目的で、ネラメキサンを試験する。ネラメキサンの効力を、ALSマウスモデルにおいてプラスの効果を示すことが明らかにされているリルゾール及びメマンチンの効力と比較する[Wangら, Eur J Neurosci. 2005 Nov;22(9):2376-80]。リルゾールとネラメキサンとによる併用治療も試験する。
【0097】
材料と方法
動物
この試験にはSOD1-G93Aマウスモデルを使用する。これは、運動ニューロン疾患(MND)に関する調査のための、確立されたモデルである。このマウスは、93位にグリシンからアラニンへのミスセンス突然変異(G93A)を示すヒト突然変異型酵素Cu/Zn SOD1の過剰発現を特徴とし、家族性型の筋萎縮性側索硬化症(ALS)のマウスモデルとして役立つ。この系統の具体的名称はB6SJL-TgN(SOD1-G93A)1 Gur/Jである。
【0098】
マウスを38日齢で個別のケージに入れて回し車を自由に利用させ、7日間順応させてから、試験を開始する。薬物治療は45日目に開始する。明暗周期、温度及び湿度の自動制御を行う。点灯時間は午前5:00〜午後6:30である。毎日の監視により、温度及び湿度はそれぞれ20℃±3℃及び80±10%の標的範囲内に留まっていることが示される。動物をポリプロピレンケージ(約26×20×14cm、メッシュフタ付、到着時から1ケージ1匹)に収容する。ケージ、床敷及び給水ビンは、定期的に、すなわち7日ごとに換える。動物は標準飼料(ssniff(登録商標)MZ Ereich)を自由に摂取できる。動物は国内品質の水道水を自由に摂取できる。活動レベルを監視するために、動物が回し車を利用できるようにする。
【0099】
薬物
ネラメキサンは、MERZ pharmaceuticalsにより、メシル酸ネラメキサンとして供給される。メマンチンはMERZ pharmaceuticalsによって供給される。リルゾールはSequoia Research Productsによって供給される。リルゾール及びネラメキサンは経口投与する。薬物を飲用水に溶解する。計算は6mL/24時間という平均消費量に基づいて行う。メマンチンは1日2回皮下注射する。全ての薬物調製物について、19g(雌マウス)及び24g(雄マウス)という平均成体体重を仮定する。
【0100】
治療
遺伝子型別の結果が利用可能になったら直ちに(約30日齢)、治療群がケージングシステム全体に均等に分布されるように、トランスジェニックマウスを治療群にランダムに割り当てる。
【0101】

用量はそれぞれの塩を表す。
【0102】
治療は45日齢で開始し、疾患末期に停止する。治療群3(メマンチン)の動物には、スチール製投与カニューレを使って、各100μlの定投与体積で1日2回、皮下投与する。溶液の濃度は雄動物(24g)及び雌動物(19g)の平均成体体重から決定される。治療群2、4及び5の動物には、飲用水に溶解した薬物(リルゾール、ネラメキサン及びネラメキサンとリルゾールとの組合せ)を投与する。溶液の濃度は、雄動物(24g)及び雌動物(19g)の平均成体体重と、6mlという飲用水の平均消費量とから決定される。飲用水の消費量はランダムにチェックする。
【0103】
データの評価
薬物の治療効力を測定するために、各治療群について四つのパラメータを解析した。
1.発病の日齢
2.最初の不全麻痺の日齢
3.疾患最終段階の日齢(生存時間)
4.回し車における運動能力
【0104】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0105】
結果
疾患進行の遅延を示す三つのパラメータ(発病日齢、最初の不全麻痺の日齢及び生存時間)に関して最も効果的な治療は、併用群(すなわちネラメキサン及びリルゾールの経口投与)に見出され、発病日齢及び最初の不全麻痺の日齢に関して、遅延は5〜7日で、統計的有意差がある。運動活性解析では、どの試験群においても、疾患進行遅延の証拠は示されない。
【実施例2】
【0106】
リルゾールと組み合わされたネラメキサンの筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に関する評価
このパイロットプロジェクトの目的は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療としての、ネラメキサンとリルゾールとを含む組合せの効力を評価するための臨床治験を行うことである。ネラメキサンとリルゾールとを含む組合せで治療されたALS患者は、リルゾール単剤療法がもたらす疾患進行の低減よりも実質的に大きい疾患進行の低減を示すと予想しうる。
【0107】
試験デザイン
この試験の主要目的は、ALSを罹患している患者における疾患進行(ALS-FRS-rで測定されるもの)に対するネラメキサンの効果並びにリルゾールと組み合わされたネラメキサンの効果を調べることである。
【0108】
この試験では適応デザインアプローチを使用する。公式症例数の見積もりは、合計150人の患者の治療完了後の非盲検中間解析に基づいて行う。この非盲検中間解析は独立データモニタリング委員会によって行われる。
【0109】
重要な共変量であることがわかっている発病部位が両治療群内に等しく分布していることを保証するために、この因子によって層別化したランダム化を行う。
【0110】
解析に用いる統計手法及び集団
患者は、試験への参加資格を持つために、次の基準を満たさなければならない:
・署名入りのインフォームドコンセント文書、
・家族性型又は散発性型ALSの改訂エル・エスコリアル(El Escorial)基準で、可能性大であり検査所見で裏付けられるALS、可能性大なALS、又は確実なALSの診断を受けた≧18歳且つ≦75歳の男性又は女性患者、
・スクリーニング時に>33且つ<43のALS-FRS-r、
・ALS-FRS-rスコアの個別月間低下で測定される疾患進行が>0.4且つ<1.2(不全麻痺及び延髄症状の最初の発生から始まる罹病期間並びにスクリーニングスコアから算出)、
・ベースラインの>9ヶ月前に不全麻痺及び延髄症状の最初の診断、
・肺活量(VC)が年齢別正常値の>70%、
・患者は、試験、潜在的リスク又は不快の性質を理解し、予定された来院及び投与スキームに従うと予想されること、
・リルゾール治療を受けている患者の場合:ベースライン前の少なくとも6週間は1日あたり100mgの安定用量、
・妊娠の可能性がある女性(スクリーニング前の1年未満に最終月経):ベースライン時に妊娠検査陰性、妥当な受胎調節法を使用しなければならない。
【0111】
次の基準のいずれかを満たす患者は試験から除外される:
・侵襲的人工呼吸又は気管切開の必要性、
・非侵襲的人工呼吸、
・スクリーニング時に経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)、
・他の神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病などの診断、
・血液学的悪性疾患に関連する単クローン性ガンマグロブリン血症、
・BMI<18、
・臨床上問題となる異常ECG所見を持つ患者、
・ALS以外の臨床上問題となる神経障害若しくは精神障害、又は治験を妨害するかもしれない他の重度の若しくは管理されていない全身性疾患(例えば心血管疾患(心拍障害を含む)、腎疾患、肺疾患、内分泌疾患、血液疾患、胃腸疾患)を持つ患者、
・前頭側頭型認知症を伴うALS、
・安定高血圧薬の有無にかかわらず、スクリーニング来院時又はベースライン来院時に、160mmHgより高いか90mmHgより低い収縮期血圧、又は100mgHgより高いか50mHgより低い拡張期血圧を持つ患者、
・深部静脈血栓症及び肺塞栓症、
・起立性調節障害を持つ患者、
・正常上限値の>2.5倍のAST又はALT、
・既知の腎機能不全、
・正常上限値の>1.5倍のクレアチニン、
・上部消化管における吸収の臨床的に有意な障害、
・NMDAアンタゴニスト(メマンチン、デキストロメトルファン、ケタミン)又はカンナビノイドの使用、
・ベースライン前の最後の6ヶ月間にアルコール、鎮痛薬、又は麻薬物質の乱用、
・何らかの禁止薬による並行治療を必要とする患者、
・ベースライン前、3ヶ月以内の、何らかの治験薬試験への参加、又は何らかの治験薬の使用、
・過去に本ネラメキサン治験又は他の任意のネラメキサン治験に参加した患者、
・ネラメキサン、アマンタジン、ケタミン、メマンチン、又はリルゾール及び他の試験薬成分に対してアレルギー、過敏症、又は不耐性を持つことがわかっている患者、
・授乳中の母親又は妊娠検査陽性によって証明される妊娠中の女性、
・患者が試験指示に従わない可能性があり、且つ/又は当てにすることができない又は信頼できないという証拠又は疑い、
・患者がインフォームドコンセントの一部として彼/彼女に与えられる情報(特に彼/彼女が曝されることに同意するリスク及び不快に関する情報)を理解しようとしない又は理解することができないという証拠又は疑い、
・CRO、試験施設又はMerz Pharmaceuticalsの従業員又は従業員の血縁者。
【0112】
各患者を評価するための予定された来院は次のとおりである:
【0113】
来院1(初回スクリーニング):同意書への署名後に、被験者は評価を受け、そこで一次パラメータ及び二次パラメータが評価される。試験に関する患者の適格性を、組み入れ/除外基準の点検によって評価する。
【0114】
来院2(ベースライン):組み入れ/除外基準の点検に基づいて被験者を試験適格性について評価する。試験手順並びに併用薬を被験者と共に点検する。被験者を試験に登録し、薬を後述のように分配する。
【0115】
来院3〜9:これらの来院はベースラインの1、2、3、6、9、12、及び15ヶ月後に行われる。併用薬並びに最後の来院以降の有害事象の発生の点検を被験者と共に行う。一次及び二次パラメータを評価する。薬を後述のように分配する。
【0116】
来院10:この来院は最終投与の31日後に行われる。ALS-FRS-rスコア並びに二次パラメータのベースラインにおける変化を評価する。
【0117】
ネラメキサン/リルゾール組合せの投与
ネラメキサン
メシル酸ネラメキサン25mg放出調節錠剤及び対応するプラセボ錠剤をフィルムコート錠として投与する。
【0118】
ネラメキサン(又はプラセボ)を、1週間にわたる25mgの1日量から開始し、1週間間隔で投薬量を25mg刻みで増加させて、75mgの最大1日量までアップタイトレーションする。
【0119】
試験薬は1日あたり3錠の錠剤(朝、正午、及び晩)として提示する。アップタイトレーション期間の1週目中は、1日あたり1錠のネラメキサン錠剤と2錠のプラセボ錠剤とを患者に与える。2週目中は、1日あたり2錠のネラメキサン錠剤と1錠のプラセボ錠剤とを患者に与える。3週目中(及び試験15月目まで継続)は、患者に1日あたり3錠のネラメキサン錠剤を与えるか、又は2錠のネラメキサン錠剤と1錠のプラセボ錠剤とを与える(個々の認容性に依存)。
【0120】
リルゾール
リルゾールは50mgのリルゾールを含有する市販の錠剤として1日あたり100mgの用量で投与する。
【0121】
効力
機能尺度並びに生活の質尺度(quality of life scale)を使って患者を評価する。
【0122】
主要評価項目
・ITTサブセットにおける15ヶ月間の二重盲治療後のALS-FRS-rスコアのベースラインからの変化。
【0123】
副次評価項目
・3ヶ月間及び9ヶ月間の二重盲治療後におけるALS-FRS-rスコアのベースラインからの変化。
・個々の疾患進行の傾きの変化(スクリーニング時の値と比較した、ベースラインから二重盲治療の15月目の最後までのALS-FRS-rの月間低下)。
・イベントまでの時間(イベントは、死亡、気管切開術、侵襲的人工呼吸、又は非侵襲的人工呼吸のいずれかの発生と定義され、一つ一つ全ての項目の発生とも定義される)。
・15ヶ月間の二重盲治療後に経皮内視鏡的胃瘻チューブ(PEG)を持つ患者の数。
・3、9、及び15ヶ月間の二重盲治療後における、1日あたりの非侵襲的人工呼吸の継続時間の、ベースラインからの変化。
・スクリーニング来院時と二重盲治療の15ヶ月目の最後との間の、年齢基準のパーセントとして表される肺活量(VC)の曲線下面積
・スクリーニング来院時と二重盲治療の15ヶ月目の最後との間の、年齢基準のパーセントして表される努力肺活量(FVC)の曲線下面積。
・3、9、及び15ヶ月間の二重盲治療後における、徒手筋力試験(MMT)で測定される筋力のベースラインからの変化。
・3、9、及び15ヶ月間の二重盲治療後における、神経学研究センター不安定尺度(Center for Neurologic Study-Lability Scale:CNS-LS)のベースラインからの変化。
・3、9、及び15ヶ月間の二重盲治療後における、病的泣き笑い尺度(Pathological Laughing and Crying Scale:PLACS)のベースラインからの変化。
・9及び15ヶ月間の二重盲治療後における、ショート・フォーム健康調査(short form health survey)(SF-36)のベースラインからの変化。
・非侵襲的人工呼吸の開始までの時間。
・経皮内視鏡的胃瘻チューブ(PEG)の開始までの時間。
【0124】
データ解析
15ヶ月間の二重盲治療後(主要効力解析)及び試験の過程(副次効力解析)におけるALS-FRS-rスコアのベースラインからの変化は、施設、治療群、及び発病部位(延髄又は脊髄)を要因とし、ベースライン値を共変量として、ANCOVAアプローチを使って、ITTサブセットについて解析する。主要効力解析は、ベースライン時に安定リルゾール用量を服用している患者だけに基づく。
【0125】
非侵襲的人工呼吸の継続時間のベースラインからの変化は、上記と同じANCOVAアプローチを使って、ただし要因の拡張を行わずに解析する。
【0126】
個々の疾患進行の傾き及び最終MMTスコアの変化は、施設、治療群、及び発病部位(延髄又は脊髄)を要因とし、ランダム化時の順位づけられた傾き又はベースライン時の順位づけられたMMTスコアをそれぞれ共変量として、順位づけられたデータに関して、ANCOVAアプローチを使って、ノンパラメトリックに解析する。
【0127】
イベントまでの時間は、ログランク検定で、及び発病部位(延髄又は脊髄)に関する調節後にコックス比例ハザードモデルで、治療によって比較する。
【0128】
経皮内視鏡的胃瘻チューブを持つ患者の数並びに肺活量(VC)及び努力肺活量(FVC)のAUCは、施設、治療群、及び発病部位(延髄又は脊髄)を要因として、ANCOVAアプローチで解析する。
【0129】
SF-36スコアは、施設、治療群、及び発病部位(延髄又は脊髄)を要因とし、対応するベースライン値を共変量として、ANCOVAアプローチで解析する。
【0130】
3、9、及び15ヶ月間の二重盲治療後における、神経学研究センター不安定尺度(CNS-LS)のベースラインからの変化は、施設、治療群、及び発病部位(延髄又は脊髄)を要因とし、ベースライン値を共変量として、ANCOVAアプローチを使って解析する。
【0131】
3、9、及び15ヶ月間の二重盲治療後における、病的泣き笑い尺度(PLACS)のベースラインからの変化は、施設、治療群、及び発病部位(延髄又は脊髄)を要因とし、ベースライン値を共変量として、ANCOVAアプローチを使って解析する。
【0132】
全ての効力解析にITT原則(intent to treat principle)を使用して、試験薬(ネラメキサン又はプラセボ)を少なくとも1回は摂取し、ALS-FRS-rスコアのベースライン後測定を少なくとも1回は受けた、全てのランダム化患者を考慮に入れる。
【0133】
考察
ネラメキサン/リルゾール組合せ治療群は、リルゾール及びプラセボによる治療がもたらす疾患進行の低減よりも実質的に大きな疾患進行の低減を示す。
【0134】
本発明は、本明細書に記載する具体的実施形態によってその範囲を限定されるものではない。実際、上述の説明から当業者には、本明細書に記載する実施形態の他に、本発明のさまざまな変更実施形態が明白になるだろう。そのような変更実施形態は添付の請求項の範囲に包含されるものとする。
【0135】
本明細書で言及する特許、特許出願、刊行物、検査方法、文献、及び他の材料は全て、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルタミン酸放出阻害剤と組み合わされた、神経変性障害の治療用医薬の製造へのネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩の使用。
【請求項2】
神経変性障害が運動ニューロン疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
運動ニューロン疾患が筋萎縮性側索硬化症、ウイルス性灰白髄炎、ラチリズム、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮、偽性球麻痺、進行性球麻痺、進行性核上性麻痺、ケネディ病、及び脊髄性筋萎縮症から選ばれる、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
運動ニューロン疾患が筋萎縮性側索硬化症である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
ネラメキサンの薬学的に許容し得る塩がメシル酸塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
グルタミン酸放出阻害剤がリルゾール、RP66055、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリジン、ルベルゾール、フォスフェニトイン、シパトリギン、MS-153、及びFP-0011、並びにそれらの薬学的に許容し得る塩から選ばれる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
グルタミン酸放出阻害剤がリルゾール及びその薬学的に許容し得る塩から選ばれる、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
医薬がグルタミン酸放出阻害剤との同時併用に製造される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
医薬がネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩とグルタミン酸放出阻害剤とを含む単一投与形(unitary dosage form)として製造される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
医薬がネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩に関して5〜150mg/日及びリルゾール又はその薬学的に許容し得る塩に関して5〜150mg/日の用量での投与のために製造される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
ネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が5mg〜100mg/日であり、リルゾール又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が5mg〜100mg/日である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
ネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が5mg〜75mg/日であり、リルゾール又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が5mg〜100mg/日である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
ネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が25mg/日であり、リルゾール又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が100mg/日である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
ネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が50mg/日であり、リルゾール又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が100mg/日である、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
ネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が75mg/日であり、リルゾール又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が100mg/日である、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
医薬が、グルタミン酸放出阻害剤と組み合わされたネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩の、1日1回、1日2回(b.i.d.)、又は1日3回投与のために製造される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
医薬が、即効型製剤中の、グルタミン酸放出阻害剤と組み合わされたネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩を提供するために製造される、請求項9〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
医薬が、放出調節製剤中の、グルタミン酸放出阻害剤と組み合わされたネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩を提供するために製造される、請求項9〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
グルタミン酸放出阻害剤と組み合わされた、情動不安定及び/又は制御不能情動の治療用医薬の製造へのネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩の使用。
【請求項20】
情動不安定及び/又は制御不能情動を治療するための、ネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩とグルタミン酸放出阻害剤とを含む組成物。
【請求項21】
情動不安定及び/又は制御不能情動を治療するための医薬の製造におけるグルタミン酸放出阻害剤の使用。
【請求項22】
情動不安定及び/又は制御不能情動を治療するための、グルタミン酸放出阻害剤を含む組成物。
【請求項23】
ネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩とグルタミン酸放出阻害剤とを含む医薬組成物。
【請求項24】
薬学的に許容できる担体をさらに含む、請求項23の医薬組成物。
【請求項25】
固形経口剤形である、請求項24の医薬組成物。
【請求項26】
ネラメキサンがそのメシル酸塩として使用される、請求項23〜25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
グルタミン酸放出阻害剤がリルゾール、RP66055、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリジン、ルベルゾール、フォスフェニトイン、シパトリギン、MS-153、及びFP-0011、並びにそれらの薬学的に許容し得る塩から選ばれる、請求項23〜26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
グルタミン酸放出阻害剤がリルゾール及びその薬学的に許容し得る塩から選ばれる、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
ネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩に関して5〜150mg/日及びリルゾール又はその薬学的に許容し得る塩に関して5〜150mg/日の用量で投与するために適当に包装される、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
ネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が5mg〜100mg/日であり、リルゾール又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が5mg〜100mg/日である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
ネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が5mg〜75mg/日であり、リルゾール又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が5mg〜100mg/日である、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
ネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が25mg/日であり、リルゾール又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が100mg/日である、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
ネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が50mg/日であり、リルゾール又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が100mg/日である、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項34】
ネラメキサン又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が75mg/日であり、リルゾール又はその薬学的に許容し得る塩に関する用量が100mg/日である、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項35】
1日1回、1日2回(b.i.d.)、又は1日3回の投与のために適当に包装される、請求項23〜34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
即効型製剤として提供される、請求項23〜35のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
放出調節製剤として提供される、請求項23〜35のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
神経変性障害を治療するための、請求項23〜37のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
神経変性障害が運動ニューロン疾患である、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
運動ニューロン疾患が筋萎縮性側索硬化症、ウイルス性灰白髄炎、ラチリズム、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮、偽性球麻痺、進行性球麻痺、進行性核上性麻痺、ケネディ病、及び脊髄性筋萎縮症から選ばれる、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
運動ニューロン疾患が筋萎縮性側索硬化症である、請求項40に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2010−534628(P2010−534628A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517327(P2010−517327)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006162
【国際公開番号】WO2009/015844
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(397045220)メルツ・ファルマ・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクティーン (31)
【Fターム(参考)】