説明

神経接続欠陥、例えば精神分裂病及び自閉症の治療においてエポチロン(epothilone)を使用する方法

【課題】神経接続欠陥、例えば精神分裂病及び自閉症を伴う疾病の治療において使用するための医薬品の提供。
【解決手段】活性成分として下記式で表されるエポチロン又はその誘導体の少なくとも一つを使用する方法。


式中、X、Yは、酸素含有置換基、Wは、複素芳香族残基をあらわす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、明らかな解剖学上の、退行性又は増殖性の異常の不存在下で、神経接続欠陥に関連付けられると考えられている精神異常の治療において使用するための医薬品を製造するためにエポチロンを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精神異常は、それが生命の通常の要求を満たすための個体の能力を大いに邪魔するという程度まで精神機能を害することによって主に特徴付けられる異常である。
【0003】
神経接続における異常に起因すると現在考えられている精神異常は、精神分裂病、分裂病様障害、分裂情動性障害又は妄想性障害、及び自閉症を含むが(Andreassen NC、Brain Res. Rev. 2000年;第31巻:第106〜12頁;Francke等、Neuron、2003年、第39巻、第205〜216頁;Jamain等、Nature Genetics、2003年、第34巻、第27〜28.1頁)これらに制限されない。
【0004】
精神分裂病(統合失調症)は、現実からの引きこもり、思考の非論理的なパターン、妄想及び幻覚によって通常特徴づけられる精神異常の何らかのグループであり、及び他の情緒的、行動的又は知的障害による程度を変化する際に伴われている。一生の慢性的精神病、精神分裂病は、青年期における兆候及び機能の以前のレベルからの低下とともに、陽性の及び陰性の症状を示す。陽性の症状は、通常の機能の歪曲又は過剰を反映する(例えば、まとまりのない会話、妄想及び幻覚)。他方では、陰性の症状は、正常な挙動及び感情の制限された範囲を反映する(例えば、無感動、会話の不足、及び情緒的応答の不調和又は平坦化)。精神分裂病は、症状及び徴候に依存する様々な形で示されうる。種々の精神分裂病は、妄想型精神分裂病、破瓜型分裂病、緊張型分裂病及び鑑別不能型精神分裂病、並びに精神分裂病後の憂鬱、残遺分裂病、単純型分裂病及び特定不能の精神分裂病を含む。
【0005】
抗精神薬又はメジャートランキライザーとも呼ばれる神経弛緩薬又は薬物(すなわち、「神経安定薬(neuroleptics)」)は今日、精神分裂病、ある器官の中枢神経系疾患、精神病、及び関連した精神病過程の選択の治療のままである。現在、精神分裂病患者の95%以上が神経安定薬で慢性的に維持されていると推定される。すべて既知の神経安定薬は、クロルプロマジン、チオラジンとしても知られている脂肪族のフェノチアンジン誘導体の作用に類似する薬理作用を有するドーパミン作用性遮断薬である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第98/22461号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/07692号パンフレット
【特許文献3】ドイツ特許公開第19821954号公報
【特許文献4】国際公開第99/02514号パンフレット
【特許文献5】国際公開第99/67252号パンフレット
【特許文献6】国際公開第00/50423号パンフレット
【特許文献7】国際公開第02/21712号パンフレット
【特許文献8】国際公開第00/66589号パンフレット
【特許文献9】国際公開第01/081341号パンフレット
【特許文献10】国際公開第00/49021号パンフレット
【特許文献11】米国特許公開第2003/0,203,929号公報
【特許文献12】国際公開第03/074053号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既知の抗精神病薬は、精神病の治療において明らかな効能を有するけれども、それらは全ての症状を治癒するわけではなく、且つ様々な副作用を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エポチロンがSTOP欠陥マウスと名付けられた動物モデル(Andrieux等:Genes Dev. 2002年9月15日;第16巻(第18号):第2350〜64頁)における精神分裂病に関連する行動障害を緩和しうるという発見に由来する。
【0009】
天然物エポチロンA及びB、並びにそれらの合成誘導体のうちの幾つかは、癌の治療に関連して最近関心を見出している。すなわち、国際公開第98/22461号パンフレット、国際公開第99/07692号パンフレット、ドイツ特許公開第19821954号公報、国際公開第99/02514号パンフレット、国際公開第99/67252号パンフレット、国際公開第00/50423号パンフレット、国際公開第02/21712号パンフレット、国際公開第00/66589号パンフレット、国際公開第01/081341号パンフレット、国際公開第00/49021号パンフレット、及び米国特許公開第2003/0,203,929号公報は、エポチロン誘導体の合成及びそれらの幾つかについて癌の治療におけるそれらの使用を取り扱う。国際公開第03/074053号パンフレットはより詳細には、変性又は過増殖性過程を伴う疾病、例えば脳腫瘍、アルツハイマー病、多発性硬化症及び原発性又は2次的脳腫瘍を治療するために、幾つかのエポチロン誘導体を使用する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、マウスの活動を報告するグラフである。
【図2】図2は、マウスの活動を報告するグラフである。
【図3】図3は、マウスの営巣能力を報告するグラフである。
【図4】図4は、マウスの営巣能力を報告するグラフである。
【図5】図5は、シナプス小胞密度の定量的分析を報告するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
エポチロンの有益な効果は、何らかの検出可能な解剖学上の、退行性又は増殖性の異常に関連付けられない神経接続欠陥を示すSTOP欠陥マウスにおいて今示された。
【0012】
STOP KOマウスへのエポチロンDの投与は、活動断片化の緩和を示し、治療されていないSTOP欠陥マウスを特徴付ける活動間のシフトの総数における減少を生じたことが著しく観察された。
【0013】
さらに、エポチロンDで治療されたSTOP欠陥メスマウスの母性行動は、それが子生存に適合された程度まで回復された。
【0014】
エポチロンD治療後に、シナプス小胞密度がSTOP KOマウスにおいて約20%だけ増加されたことが観察され、そのような効果は長期の神経安定薬治療後に得られるそれに類似する。
【0015】
従って、本発明は神経接続欠陥、特に精神分裂病及び自閉症に関連付けられた、幾つかの中枢神経系(CNS)疾患及び精神病を治療するための代替療法を提供し、該欠陥は、何らかの検出可能な解剖学上の、退行性又は増殖性の異常に関連付けられていない。
【0016】
第1の観点によれば、本発明は、神経接続欠陥を伴う疾病の治療において使用するための医薬品を製造するために、特に治療的に有効な量において活性成分としてエポチロン又はその誘導体の少なくとも一つを使用する方法に向けられる。
【0017】
特に、本発明は、精神分裂病及び/又は自閉症の治療において使用するための医薬品を製造するために、特に治療的に有効な量において活性成分としてエポチロン又はその誘導体の少なくとも一つを使用する方法に向けられる。
【0018】
第2の観点によれば、本発明は、神経接続欠陥を伴う疾病の治療方法であって、エポチロン又はその誘導体、特に本発明に従い定義されたものの少なくとも一つの治療的に有効な量をそれを必要とする個体に投与することを含む方法に向けられる。
【0019】
本発明の方法の態様は、少なくとも一つの医薬的に許容される担体を含む医薬品組成物においてエポチロン又はその誘導体、特に本発明に従い定義されたものの少なくとも一つの治療的に有効な量を個体に投与することを含む。
【0020】
本発明の方法の他の態様は、精神異常又は精神障害を予防し又は治療する際に有用である1以上の剤、特に例えば神経安定薬と一緒に、エポチロン又はその誘導体、特に本発明に従い定義されたもの或いはその医薬品組成物の少なくとも一つの治療的に有効な量を個体に投与することを含む。
【0021】
本明細書で使用される場合、語「神経接続欠陥に関連する疾病」とは、明らかな解剖学上の、退行性又は増殖性の異常の不存在下で、神経接続異常を伴うと現在考えられている神経疾病をいう。そのような異常の例は、特に精神分裂病及び自閉症を含む。特に、本発明に従うと考えられる該疾病は、神経変性を伴うアルツハイマー病のような進行性痴呆疾患と異なる。
【0022】
本明細書で使用される場合、語「精神分裂病」とは、次の少なくとも2つを含む精神異常をいう:妄想、幻覚、まとまりのない会話、ひどく混乱した又は緊張型行動又は陰性症状。患者は、DSM-IV基準(APA、1994年、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (第4版)、ワシントンD.C.)を使用して精神分裂病として診断されうる。
【0023】
精神分裂病の「陰性の」症状は、SANS(the Scales for the Assessment of Negative Symptoms;Andreasen、1983年、Scales for the Assessment of Negative Symptoms (SANS)、アイオワシティー、アイオワ州を参照)を使用して測定されうる、情動鈍化、アネルギー、失語症及び引きこもりを含む。
【0024】
精神分裂病の「陽性の」症状は妄想及び幻覚を含み、それはPANSS(the Positive and Negative Syndrome Scale;Kay等、1987年、Schizophrenia Bulletin 第13巻:第261〜276頁を参照)を使用して測定されうる。
【0025】
精神分裂病の「認知的な」症状は、知的知識を獲得し、組織化し及び使用する際の欠陥を含み、それはthe Positive and Negative Syndrome Scale-cognitive subscale(PANSS-cognitive subscale)(Lindenmayer等、1994年、J. Nerv. Ment. Dis. 第182巻:第631〜638巻)、又は認識タスク、例えばWisconsin Card Sorting Testによって測定されうるむ。
【0026】
本明細書で使用される場合、語「自閉症」とは、病的な自己陶酔、社会の落伍者、言語発達遅滞及び常同的行為によって特徴付けられる精神的内向の状態をいう。患者は、DSM-IV基準を使用することによって、自閉症を病むとして診断されうる。
【0027】
本明細書で使用される「治療する」又は「治療」とは、個体における疾病の治療をいい(ここで該疾病は神経接続欠陥に関連する)、且つ
(i)該疾病を阻害すること、すなわちその発生を阻むこと;又は
(ii)該疾病を緩和すること、すなわち該疾病によって引き起こされる症状を緩和すること、を含む。
【0028】
一つの態様に従うと、使用されるエポチロンは下記式(1)のエポチロンの誘導体、及びその医薬的に許容される塩でありうる。
【0029】
【化1】

【0030】
ここで、
−Rは、H、C〜Cのアルキル、アルケニル又はアルキニル、C〜C10のアリール、C〜C15のアラルキルを示し、
−R、Rは夫々Hを示し、又は一緒になってC=C二重結合を形成し、
−Rは、H、C〜C−アルキル、特にCH、フッ素で置換されたC〜Cアルキル、特にCF又はCFHを示し、
−R、Rは、C=C二重結合、又はO、S、NR、CRを含む3員環を形成し、RはC(O)R10、SO10であり、及びR、R、R10は独立に、H、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜C10アリール、C〜C15アルカリールであり、
−R11は、H、C〜Cアルキル、C〜C10アリール、C〜C15アルカリール、特にHであり、
−Wは、C(R12)=CH、C(R12)=C(CH)、C(R12)=CF、又は二環式芳香族/複素芳香族残基、好ましくは2−メチルベンゾチアゾール−5−イル残基、若しくは2−メチルベンゾキサゾール−5−イル残基、若しくはキノリン−7−イル残基を示し、R12は複素芳香族残基、好ましくは、2−ピリジニル残基、C〜Cアルキル、CN或いはNのようなシュードハロゲンにより、OH、アミノ、ハロゲン、シュードハロゲン、例えば−NCO、―NCS、−N、O−(C〜C)−アシル、O−(C〜C)−アルキル若しくはO−ベンゾイルによって置換されたS−C−C−アルキル、O−C〜C−アルキル又はC〜Cアルキルにより2位で置換された2位置換チアゾール−4−イル残基或いは2位置換オキサゾール−4−イル残基を示し、
−X−Yは、O−C(=O)、O−CH、CH−O、CH−C(=O)を示し、
−Zは、C=O、S、S=O、SOを示し、
13及びR14は、互いに独立して、H、C〜C−アルキル、(CO)R15、又はC−トリアルキルシリルを示し、R15は、H、C〜C−アルキル、フッ素で置換されたC〜C−アルキルを示す。
【0031】
一つの態様に従うと、使用されるエポチロンは下記式(II)のエポチロンの誘導体、及びその医薬的に許容される塩でありうる。
【0032】
【化2】

【0033】
ここで、
−R’は、C〜C−アルキル、又はF、Cl、Br若しくはI、シュードハロゲン、例えば−NCO、―NCS、−N、NH、OH、O−(C〜C)−アシル、O−(C〜C)−アルキル若しくはO−ベンゾイルのような置換基で置換されたC〜C−アルキルを示し、
−R’及びR’は、互いに独立して、H、C〜C−アルキル、(CO)R’であり、R’は、H、C〜C−アルキル、C〜C−フルオロアルキル又はC〜C−トリアルキルシリルであり、
−R’は、H、C〜C−アルキル、ハロゲンで置換されたC〜C−アルキルを示し、及び
−Y及びZは、C=C二重結合を形成し又は一緒になってエポキシドのO原子である。
【0034】
様々な置換基の性質に依存して、式(I)及び式(II)の化合物は、幾つかの不斉炭素原子を有しうる。特に言及され又は示されない限り、化合物の化学表示は、全てのありうる立体化学的異性体形の混合物を示し、該混合物は、基本的な分子構造の全てのジアステレオマー及びエナンチオマーを含む。
【0035】
本明細書の上記で使用された語 付加塩はまた、式(I)及び式(II)の化合物が形成しうる溶媒和物を含み、該溶媒和物は本発明の範囲内に含まれる。そのような溶媒和物の例は、例えば水和物、アルコラートなどである。
【0036】
本明細書で使用される場合、語「アルキル」は、炭素原子の示された数を含む直鎖及び分枝炭化水素基、典型的にメチル、エチル並びに直鎖及び分枝プロピル及びブチル基を含む。特に示されない限り、炭化水素基は、16個の炭素原子までを取りうる。語「アルキル」は、「架橋されたアルキル」を含む。アルキル基は、例えば水酸基(OH)、ハロゲン、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アミノ(N(R)、及びスルホニル(SO)で置換されることができ、ここでRは、水素、C〜Cアルキル、シクロアルキル、アリール及びSO〜C−アルキルからなる群から選択され、又は2つのR基は一緒になって5−又は6−員環を形成する。
【0037】
語「シクロアルキル」及び「シクロアルケニル」は、環状C3〜7炭化水素基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、シクロへキセニル、シクロペンテニル及びシクロペンチルとして定義される。「ヘテロシクロアルキル」及び「ヘテロシクロアルケニル」は、環が酸素、窒素及び硫黄からなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含むこと以外は、シクロアルキルと同様に定義される。シクロアルキル及びヘテロシクロアルキル基は飽和環系であり、シクロアルケニル及びヘテロシクロアルケニルは部分的に不飽和の環系であり、全ては、C1〜4−アルキル、C1〜3−アルキレン−OH、C1〜3−アルキレン−N(R、NH、オキソ(=O)、アリール及びOHから独立に選択される例えば1〜3個の基で任意的に置換される。
【0038】
語「ハロゲン」は、フッ素、臭素、塩素及びヨウ素を含むとして本明細書において定義される。
【0039】
語「アリール」は単独又は組み合わせで、単環式又は二環式芳香族基、例えばフェニル又はナフチルとして本明細書において定義される。特に示されない限り、「アリール」基は、置換されていない或いは置換されていてよい。例示的なアリール基は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、クロロフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ニトロフェニル、2,4−メトキシクロロフェニルなどを含む。
【0040】
語「ヘテロアリール」は、芳香環中に窒素、酸素又は硫黄原子の少なくとも一つを含み、置換されていない又は置換されていてよい単環式又は二環式系として本明細書において定義される。ヘテロアリール基の例は、チエニル、フリル、ピリジル、オキサゾリル、キノリル、イソキノリル、インドリル、トリアゾール、イソチアゾリル、イソキサゾリル、イミジゾリル、ベンゾチアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、チアゾリル、およびチアジアゾリルを含むが、これらに制限されない。
【0041】
語「アルコキシ」は−ORとして定義され、ここでRはアルキルであり、シクロアルキルを含む。
【0042】
語「アシル」は−CO−Rとして定義され、ここでRはアルキルであり、シクロアルキルを含む。
【0043】
式(I)及び(II)のエポチロンは、それらが精神分裂病の陽性の及び陰性の症状の両方の緩和を与えるようである故に、特に興味深い。さらに、本化合物はまた、自閉症対策のための有益な治療剤のように思われる。
【0044】
より詳細には、エポチロンは式IIの少なくとも一つの誘導体のであり、R’、R’、R’は、互いに独立して、H、C〜C−アルキル、特にCH、C〜Cペルフルオロアルキル、特にCFを示し、Y及びZは、一緒になってC=C二重結合を形成し或いは一緒になってエポキシドのO原子である。
【0045】
他の特定の実施態様に従えば、使用されるエポチロンは、下記式
【0046】
【化3】

【0047】
【化4】

の天然のエポチロンA又はB、及びその医薬的に許容される塩を少なくとも含む。
【0048】
他の特定の実施態様に従えば、エポチロンは、下記式
【0049】
【化5】

【0050】
【化6】

【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

の合成のエポチロンC、D、E若しくはF、特にエポチロンD、又はその誘導体若しくは塩でありうる。
【0053】
他の特定の実施態様に従えば、エポチロンは、下記式
【0054】
【化9】

【0055】
【化10】

【0056】
【化11】

【0057】
【化12】

【0058】
【化13】

【0059】
【化14】

の合成のエポチロンでありうる。
【0060】
本明細書で使用される語「治療的に有効な量」は、エポチロンを必要とする個体に投与されるときに、神経接続欠陥に関連する疾病のために下記に記載されたように有効な治療を提供するために十分であるエポチロンの量をいう。
【0061】
当然ながら、「治療的に有効な量」を構成する量は、化合物、疾病及びその重篤度、並びに治療されるべきヒトの年齢に依存して変化し、それは当業者の知識及び本開示に関する当業者によって日常的に決定されうる。
【0062】
例えば、エポチロンにおける及び特に式(I)又は(II)からなる群から選択される化合物の治療的に有効な量は、約0.01mg/Kg/一投与から約100mg/Kg/一投与でありうる。好ましくは、治療的に有効な量は、約0.01mg/Kg/一投与から約25mg/Kg/一投与でありうる。より好ましくは、治療的に有効な量は、約0.01mg/Kg/一投与から約10mg/Kg/一投与でありうる。もっとも好ましくは、治療的に有効な量は、約0.01mg/Kg/一投与から約5mg/Kg/一投与でありうる。それ故に、本明細書に記載された一投与量単位あたり(例えば、錠剤、カプセル、粉末、注射、座薬、茶さじなど)に含まれる活性成分の治療的に有効な量は、例えば70Kgの平均重量を有する対象について約1mg/日から約7000mg/日でありうる。
【0063】
本発明に従う使用について、エポチロンは、従来技術で知られている方法によって処方されうる。経口の、直腸の、非経口の又は局所の適用のための組成物は、錠剤、カプセル、顆粒、座薬、インプラント、無菌注射水性又は油性溶液、懸濁液又は乳液、エアロゾル、軟膏、クリーム又はゲル、遅延調製物又は遅延インプラントの形で調製されうる。エポチロンはまた、インプラント可能な投与システムによって投与されうる。特にエポチロンは、灌流について処方される。
【0064】
従って、医薬的に活性なエポチロンは、従来技術で知られているアジュバント、例えばアラビアゴム、滑石粉、デンプン、マンニトール、メチルセルロース、乳糖、表面活性剤、例えばTweens(商標)又はMyrj(商標)、ステアリン酸マグネシウム、水性又は非水性担体、パラフィン誘導体、湿潤剤、分散剤、乳化剤、保存剤及び香料と一緒に混合されうる。
【0065】
本発明に従うエポチロン又はその医薬品組成物は、経口、肺、腹腔(ip)、静脈(iv)、筋肉(im)、皮下(sc)、経皮、口腔、鼻腔、舌下、眼、直腸、膣を含むがこれらに限定されない任意の慣用の投与経路によって投与されうる。加えて、神経系への直接的投与は、ポンプ装置とともに又はポンプ装置無しで頭蓋内又は脊椎内針又はカテーテルを介した輸送による大脳内、心室内、脳室内、鞘内、嚢内、髄腔内、脊髄周囲の投与経路を含むが、これらに限定されない。本明細書で記載された治療効果を提供する任意の投与又は頻度が本発明における使用のために適切であることは当業者に容易に明らかであろう。
【0066】
本発明は、下記の実施例及び図によってさらに示される。
【0067】
図1は、エポチロンDの3mg/kg/週で治療された又はされなかったマウスの活動(睡眠、食餌、身繕い、歩行及び起きている間の残りの静止)を報告し、これは3時間の間ビデオ記録された。上のパネル(A)は、各夫々の活動に費やされた時間(各マウスについて計算され、そして平均化された)を報告する。下のパネル(B)は、各活動の発生の数(各マウスについて計算され、そして平均化された)を報告する。
p<=0.05、**p<=0.01、***p<=0.001、ANOVA。
【0068】
図2は、4mg/kg/週の投与量でエポチロンDで治療された又はされなかったマウスの活動(睡眠、食餌、身繕い、歩行及び起きている間の残りの静止)を報告する。該活動は、3時間の間ビデオ記録された。左側パネル:各活動の発生の数(各マウスについて計算され、そして平均化された、平均±s.e.m)。右側パネル:各夫々の活動に費やされた時間(各マウスについて計算され、そして平均化された、平均±s.e.m)。グループサイズは:WT プラセボ:n=9;WT エポチロン D:n=10;STOP KO プラセボ:n=10;STOP KO エポチロン D:n=10であった。
p<=0.05、**p<=0.025、***p<=0.01、ANOVA。
【0069】
図3は、0.3mg/kg/週から3mg/kg/週までの範囲であるエポチロンDの一投与量で治療された又はされなかったマウスの営巣能力を報告する。ティッシュペーパー使用スコア(T:0〜2)、営巣(nest building)スコア(N:0〜2)、獲得された子の数(R:1〜3)、及び全体的なスコア(T+N+R)は、各マウスについて計算され、そして平均化された(平均±s.e.m)。
p<=0.05、**p<=0.01、***p<=0.001、ANOVA。
【0070】
図4は、4mg/kg/週の投与量でエポチロンDの一投与量で治療された又はされなかったマウスの営巣能力を報告する。ティッシュペーパー使用スコア(T:0〜2)、営巣スコア(N:0〜2)、獲得された子の数(R:1〜3)、及び全体的なスコア(T+N+R)は、各マウスについて計算され、そして平均化された(平均±s.e.m)。グループサイズ:図2にあるとおり。
p<=0.05、**p<=0.025、***p<=0.01、ANOVA。
【0071】
図5は、エポチロンD 3mg/kg/週で治療された若しくはされなかった、又は神経安定薬(0.5mg/kg/日 ハロペリドール及び5mg/kg/日 クロルプロマジン、飲料水中、誕生から大人期まで)で治療されたマウスのCA1海馬シナプスにおけるシナプス小胞密度の定量的分析を報告する。小胞の数/神経終端表面(ミトコンドリアによって占められた表面積の差し引き後)の割合として計算されたシナプス小胞密度。結果(平均±s.e.m)が、エポチロンDで治療されなかった又は治療された5匹の野生種マウスからの及び5匹のSTOP KOマウスからのプールされた75個の測定について示されている。神経安定薬対照実験について、結果(平均±s.e.m)が、神経安定薬で治療されなかった又は治療された3匹のSTOP KOマウスからのプールされた75個の測定について示されている。
***p<=0.001、t−検定。
【0072】
材料及び方法
エポチロンDは、STOP欠陥マウスにおいて試験された。これらマウス(STOP KO)は、海馬シナプス内のシナプス小胞プールの大きい減少でシナプス可塑性に長く且つ短い期間の両方で影響を与えるシナプス欠陥とともに、神経接続欠陥を示す(WT:280個のシナプス小胞/μm;STOP KO:150個のシナプス小胞/μm)。シナプス欠陥は、幾つかの行動障害に関連付けられている。STOP KOマウスにおける行動障害は、神経安定薬での長期間治療によって緩和される。STOP KOマウスは、シナプスの疾病、例えば精神分裂病から生じると考えられている精神疾病の起源及び治療の研究のために価値ある動物モデルとして現在考えられている(Mirmics等、Trends Neurosci.、2001年、第24巻、第479〜486頁)。
【0073】
STOP KOマウスにおける行動学的欠陥は複雑である一方、これら欠陥は、
自発行動の目立つ変更を結局のところ生じ、断片化された活動は活動間の頻繁なシフトによって特徴付けられ、厳しい障害において、養育に関連付けられたタスク、例えば営巣及び子獲得に影響を与える(Andrieux等、Genes Dev. 2002年9月15日;第16巻(18)号:第2350〜64頁)。自発的な活動及び母性行動の両方は、エポチロン効果の試験のために検査された。
【0074】
自発的な活動(オス及びメス)は記録され、そしてAndrieux等、Genes Dev. 2002年9月15日、第16巻(第18号):第2350〜64頁に見られるように3時間の期間の間数値化された。5つの活動が考慮された:食餌、睡眠無しの残り静止、歩行、身繕い及び睡眠。各活動について、活動に費やされた総計時間及び活動のはっきりとした順序が決定された。
【0075】
母性行動について、STOP欠陥又は対照野生株(WT)メスマウス(未産婦(nulliparous)、8週齢)が、プラセボ(担体単独)で又はエポチロンDでのいずれかで治療された。
【0076】
治療された及び治療されなかったマウスの母性行動は、営巣し且つ子を獲得するためのマウス能力を評価することによって監視された。
【0077】
営巣能力の評価のために、該試験されたマウスは、床材を含み且つ4回たたまれたクリネックスティッシュペーパー(最終の大きさ、100×100mm)を備えられた240×240×120mmカゴ内におかれた。60時間後、ティッシュペーパーを使用し且つ営巣するためのマウス能力は下記のようにスコア付けされた:
ティッシュペーパー使用スコア: 0、クリネックスティッシュペーパーがたたまれたままである;1、ティッシュペーパーがたたまれていないがボロボロにされていない;2、ティッシュペーパーがボロボロにされた。
営巣スコア: 0、営巣することを試みない;1、制御されていない形の初期のフラットな巣;2、真の巣、紙が丸状の巣を形成するために床材とともに混ぜられる(直径で80mmよりも小さい)。
【0078】
獲得の評価のために、営巣試験に従って、マウスが訓練され、そしてAndrieux等(Genes Dev. 2002年9月15日;第16巻(第18号):第2350〜64頁)にあるように子獲得について評価された。獲得は、獲得された子の数としてスコア付けされた(0〜3)。
【0079】
最終的に、営巣及び獲得能力のための全体スコア(TNR)が、ティッシュペーパー使用、営巣及び子獲得スコアを追加することによって各マウスについて決定された(TNRについての最大スコアは7である)。
【0080】
エポチロン治療の効果はまた、シナプス小胞のプール上で解析された。
【0081】
海馬は、経心的に(transcardially)固定されたマウスから切り出され、スライスされ、そしてEpon内に埋め込まれた。シナプス小胞の表面密度を決定するために、海馬CA1領域で作成された75個のシナプスの総切断面が、ランダムに写真撮影され、そして各神経末端前におけるシナプス小胞の数が電子顕微鏡写真上で計測された。長期間の神経安定薬治療(0.5mg/kg/日 ハロペリドール及び5mg/kg/日 クロルプロマジン、飲料水中、誕生から大人まで)後のSTOP KOマウスのシナプス小胞密度がまた、同じプロトコルを使用して検査された。
【0082】
実験の第1の系では、エポチロンDが、少なくとも8週間の間、0.3mg/kg/週又は3mg/kg/週のいずれかで1週間に一度腹膜内に注射された。該薬剤は、DMSO中50mg/ml貯蔵溶液から、水中0.3mg/mlの終濃度で希釈された。
【0083】
実験の第2の系では、エポチロンDが、8週間の間、4mg/kg/週の総投与量で1週間に二度腹膜内に注射された。該薬剤は、DMSO中50mg/ml貯蔵溶液から、水中0.2mg/mlの終濃度で希釈された。
【実施例1】
【0084】
自発的な活動に対するエポチロンDの効果
61匹のSTOP KOマウスのうち、28匹がプラセボ注射で治療され、33匹がエポチロンDの3mg/kg/週で治療された。62匹のWTマウスのうち、29匹がプラセボ注射で治療され、33匹がエポチロンDの3mg/kg/週で治療された。
【0085】
STOP欠陥マウスでは、3mg/kg/週でのエポチロンD治療は、毛繕いに費やされる総時間の減少及び睡眠に費やされ総時間の増加を生じた(図1−A)。エポチロンD治療はまた、活動間のシフトの総数を減少させ、歩行及び起きている間の残りの静止の両方を減少させた。オス及びメスの両方を含む多くの数の動物上で得られたこれら結果は、治療されなかったSTOP KOマウスの特徴である活動断片化の緩和を示す(Andrieux等、Genes Dev. 2002年9月15日、第16巻(第18号):第2350〜64頁)。
【0086】
実験の他の系では、19匹のSTOP KOマウスのうち、9匹がプラセボ注射で治療され、10匹が4mg/kg/週 エポチロンDで治療された。20匹のWTマウスのうち、10匹がプラセボ注射で治療され、10匹が4mg/kg/週 エポチロンDで治療された。
【0087】
STOP欠陥マウスでは、8週間の間4mg/kg/週でのエポチロンD治療は、活動間のシフトの総数において著しい減少を生じた(図2を参照)。数におけるこの減少は、歩行及び身繕い列の数に関係し、一方睡眠及び食餌列の数は影響されなかった。身繕いに費やされる総時間はまた、エポチロン治療によって非常に有意に減少された。最終的に、エポチロン治療は、睡眠無しの残りの静止に費やされる時間を減少し、且つ睡眠に費やされる時間を増加させる傾向だった。さらに、これら結果は、治療されなかったSTOP欠陥マウスの特徴である活動断片化(Andrieux等、Genes Dev. 2002年9月15日、第16巻(第18号):第2350〜64頁)の明らかな緩和を示し、異常な活動、例えば睡眠無しの残りの静止、又は類型的でありうる活動、例えば身繕いを減少させるような、及び治療されなかったSTOP KOマウスに欠けている睡眠を増加させるような傾向を有した。
【実施例2】
【0088】
母性行動に対するエポチロンDの効果
治療されなかった及び治療されたマウスの母性行動は、営巣し且つ子を獲得するためのマウス能力を評価することによって監視された。実験は、エポチロンDの3濃度(4mg/kg/週、3mg/kg/週、及び0.3mg/kg/週)で実行された。
【0089】
69匹のSTOP KOマウスのうち、17匹の2グループがプラセボ注射で治療され、17匹がエポチロンの3mg/kg/週で治療され、及び18匹がエポチロンの0.3mg/kg/週で治療された。34匹のWTマウスのうち、17匹がプラセボ注射で治療され、17匹がエポチロンの3mg/kg/週で治療された。
【0090】
3mg/kg/週及び0.3mg/kg/週の両方でのエポチロン治療は、ティッシュペーパー使用スコア、営巣スコア、及び子獲得スコアを改善し、TNRスコアにおいて非常に有意な増加を誘発した(図3)。従って、3mg/kg/週及び0.3mg/kg/週の両方でのエポチロン治療は、治療されなかったSTOP KOマウスに強く欠けている養育に関連付けられたタスクに対する著しく有益な効果を有した。
【0091】
次に、エポチロン治療は、それがSTOP KO母における子生存を誘発しうるかどうかを試験された。0.3mg/kg/週でエポチロンDで治療された9匹のSTOP KOマウス及び8匹の治療されなかったメスが一緒にされ、子生存が出産後に解析された。意外なことに、エポチロンD治療にふされた9匹のSTOP KOメスのうちの3匹において、養育改善が、3匹のマウスについて、5/6、6/6、5/6の生きている子対新生児の割合で子生存を可能にするのに十分であった。従って、治療無しの以前の観察(Andrieux等、Genes Dev. 2002年9月15日;第16巻(第18号):第2350〜64巻)では、子生存は、STOP KO母からの子孫で生じなかった。エポチロンD治療後に観察された子生存は、子生存が7匹のSTOP KOメスのうちの4匹において観察された(4匹のマウスについて、3/11、4/8、2/4、1/5の生きている子対新生児の割合)ところの、長期間神経安定薬で治療されたSTOP KOマウスにおける子生存の発生と比較されうる。これらの結果は、STOP KOマウスにおける子生存と対応する母性能力を回復する際のエポチロンDの著しい能力を示す。
【0092】
実験の他の系では、19匹のSTOP KOマウスのうち、9匹がプラセボ注射で治療され、10匹が4mg/kg/週 エポチロンDで治療され、及び対照として、20匹のWTマウスのうち、10匹がプラセボ注射で治療され、及び10匹が4mg/kg/週 エポチロンDで治療された。
【0093】
STOP欠陥マウスでは、4mg/kg/週でのエポチロン治療は、ティッシュペーパー使用スコア、営巣スコアを強く改善し、及び子獲得スコアを改善する傾向だった(図4)。TNRスコアにおいて非常に有意な増加であり、それはエポチロン治療すると、STOP KOマウスにおいて1.16から4.4に上昇した(図4)。従って、該治療は、治療されなかったSTOP KOマウスに強く欠けている養育に関連付けられたタスクに対する著しく有益な効果を有した。
【0094】
実施例1及び2の両方で、エポチロン治療は、実施例2における静止の列の数における有意な増加以外は、記録された活動に対する又はWTマウスにおける養育に関連付けられた行動に対する有意な効果を有しなかった(図2)。しかしながら、複数の比較の間の唯一の有意な相違の観察は、ランダムな変動と対応する。要するに、結果は、エポチロンがWTマウスにほんの少しの向精神薬効果を有し又は向精神薬効果を有しないことを示す。
【0095】
総合すれば、これら結果は、エポチロン治療が接続疾患を伴う精神疾病の動物モデルにおける行動的な異常を緩和し、一方WTマウスに影響しないことを示す。
【実施例3】
【0096】
海馬シナプス小胞密度に対するエポチロンの効果
この研究のために、4mg/kg/週で、エポチロンDで治療されなかった又は治療された5匹のWT及び5匹のSTOP KOマウスからの海馬区域が使用された。
【0097】
エポチロンD治療後、シナプス小胞密度がSTOP KOマウスで増加した(図5)。この増加は、治療無しで観察された小胞密度の20%を示し、非常に有意であった(p<0.001)。エポチロン治療後の小胞数のこの増加は、神経安定薬で治療されなかった又は治療された3匹のSTOP KOマウスからの海馬区域を使用した平行実験において観察されたそれと同じ範囲内だった(図5)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経接続欠陥を伴う疾病の治療において使用するための医薬品を製造するために活性成分としてエポチロン又はその誘導体の少なくとも一つを使用する方法。
【請求項2】
精神分裂病又は自閉症の治療において使用するための医薬品を製造するために活性成分としてエポチロン又はその誘導体の少なくとも一つを使用する方法。
【請求項3】
エポチロンが下記式(I)の化合物、及びその医薬的に許容される塩であり、
【化1】

ここで、
−Rは、H、C〜Cのアルキル、アルケニル又はアルキニル、C〜C10のアリール、C〜C15のアラルキルを示し、
−R、Rは夫々Hを示し、又は一緒になってC=C二重結合を形成し、
−Rは、H、C〜C−アルキル、特にCH、フッ素で置換されたC〜Cアルキル、特にCF又はCFHを示し、
−R、Rは、C=C二重結合、又はO、S、NR、CRを含む3員環を形成し、RはC(O)R10、SO10であり、及びR、R、R10は独立に、H、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜C10アリール、C〜C15アルカリールであり、
−R11は、H、C〜Cアルキル、C〜C10アリール、C〜C15アルカリール、特にHであり、
−Wは、C(R12)=CH、C(R12)=C(CH)、C(R12)=CF、又は二環式芳香族/複素芳香族残基、好ましくは2−メチルベンゾチアゾール−5−イル残基、若しくは2−メチルベンゾキサゾール−5−イル残基、若しくはキノリン−7−イル残基を示し、R12は複素芳香族残基、好ましくは、2−ピリジニル残基、C〜Cアルキル、CN或いはNのようなシュードハロゲンにより、OH、アミノ、ハロゲン、シュードハロゲン、例えば−NCO、―NCS、−N、O−(C〜C)−アシル、O−(C〜C)−アルキル若しくはO−ベンゾイルによって置換されたS−C−C−アルキル、O−C〜C−アルキル又はC〜Cアルキルにより2位で置換された2位置換チアゾール−4−イル残基或いは2位置換オキサゾール−4−イル残基を示し、
−X−Yは、O−C(=O)、O−CH、CH−O、CH−C(=O)を示し、
−Zは、C=O、S、S=O、SOを示し、
13及びR14は、互いに独立して、H、C〜C−アルキル、(CO)R15、又はC−トリアルキルシリルを示し、R15は、H、C〜C−アルキル、フッ素で置換されたC〜C−アルキルを示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
エポチロンが下記式(II)の誘導体、及びその医薬的に許容される塩であり、
【化2】

ここで、
−R’は、C〜C−アルキル、又はF、Cl、Br若しくはI、シュードハロゲン、例えば−NCO、―NCS、−N、NH、OH、O−(C〜C)−アシル、O−(C〜C)−アルキル若しくはO−ベンゾイルのような置換基で置換されたC〜C−アルキルを示し、
−R’及びR’は、互いに独立して、H、C〜C−アルキル、(CO)R’であり、R’は、H、C〜C−アルキル、C〜C−フルオロアルキル又はC〜C−トリアルキルシリルであり、
−R’は、H、C〜C−アルキル、ハロゲンで置換されたC〜C−アルキルを示し、及び
−Y及びZは、C=C二重結合を形成し又は一緒になってエポキシドのO原子である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
エポチロンが式(II)の少なくとも一つの誘導体であり、R’、R’、R’は、互いに独立して、H、C〜C−アルキル、特にCH、C〜Cフルオロアルキル、特にCFを示し、Y及びZは、一緒になってC=C二重結合を形成し或いは一緒になってエポキシドのO原子であるのいずれである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
エポチロンが、下記式
【化3】

【化4】

の天然のエポチロンA若しくはB、又はその医薬的に許容される塩を少なくとも含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
エポチロンが、下記式
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

の合成のエポチロンC、D、E又はF、特にエポチロンD、及びその医薬的に許容される塩の少なくとも一つを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
エポチロンが、下記式
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

の合成のエポチロンを少なくとも一つを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
エポチロンが、約0.01/Kg/一投与〜約100mg/Kg/一投与の治療的に有効な量で使用される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
神経接続欠陥を伴う疾病の治療方法であって、エポチロン又はその誘導体の治療的に有効な量をそれを必要とする個体に投与することを含む、方法。
【請求項11】
神経接続欠陥を伴う疾病の治療方法であって、少なくとも一つの医薬的に許容される担体を含む医薬品組成物においてエポチロン又はその誘導体の少なくとも一つの治療的に有効な量を個体に投与することを含む、方法。
【請求項12】
疾病が精神異常又は精神障害を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
エポチロン又はその医薬品組成物が、精神異常又は精神障害を予防し又は治療する際に有用である1以上の剤と一緒に投与される、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
エポチロンが、請求項3〜9のいずれか一項に定義されているものである、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−121890(P2012−121890A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9166(P2012−9166)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【分割の表示】特願2006−550350(P2006−550350)の分割
【原出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(505386960)アンスティテュト ナショナル ド ラ サンテ エ ド ラ ルシェルシュ メディカル (アンセルム) (8)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【出願人】(500034790)ヘルムホルツ ツェントラム フュア インフェクションズフォルシュング ゲーエムベーハー(ハーツェットイー) (2)
【氏名又は名称原語表記】Gesellschaft fuer Biotechnologische Forschung mbh (GBF)
【Fターム(参考)】