説明

神経突起伸長剤

【課題】天然物由来の神経突起伸長剤の提供。
【解決手段】スギナ末、パフィアエキス、セイヨウエビラハギエキス、メグスリノキ抽出液、ラカンカエキス、センシンレンエキス、コショウソウエキス、ミカニア・グロメラータエキス、レッドビートエキス、マムシ抽出液の少なくとも1種類を含有する神経突起伸長剤、及び神経突起伸長剤を含有する神経変性疾患の予防・治療剤、アルツハイマー病及び痴呆症の予防・治療剤、及び食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動植物より抽出した神経細胞の分化を促進する神経突起伸長剤に関する。より詳細には、天然物由来の神経突起伸長剤、及びこれを含有する神経変性疾患の予防・治療剤、アルツハイマー及び痴呆症の予防・治療剤、及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
神経細胞は、生体においてほとんど分裂能を持たないため、成熟した脳や脊髄等の中枢神経系では再生能がなく、一度障害を受けると長期にわたってその障害が持続するものと考えられている。そのため、脊髄損傷等の外因性傷害、並びにアルツハイマー病又はパーキンソン病、痴呆等の神経変性疾患に対する有効な治療方法は未だ存在しない。
【0003】
人口に対する高齢者の比率が上昇するに従って、老年型痴呆症が増加する傾向にあり、社会問題となっている。老年型痴呆症の原因となる疾患は、脳器質性障害による痴呆、脳以外の臓器疾患に付随した痴呆およびストレスによる身体疾患に起因する痴呆に大別される。特に、その原因の大半を占める脳器質性障害による痴呆は、原因の違いにより脳血管性痴呆症およびアルツハイマー型痴呆症に分類される。前者の脳血管性痴呆症に対しては、脳血管拡張薬などがある程度の効果を示すことが知られている。しかし、後者のアルツハイマー型痴呆症に対しては、その発症原因が今なお不明であり、発症を含めその進行を阻止するのに適切な薬物療法も治療法も知られていない。
【0004】
近年、神経細胞から分泌される神経成長因子(NGF;nerve growthfactor以下、NGFと略す)は神経軸索の伸長及び神経伝達物質の合成促進、神経細胞の維持、細胞損傷時の修復、脳神経の機能回復を促し老化を防止する作用等を持ち合わせた重要なタンパク質であり、神経変性疾患に対して優れた効果を示すことが見出された。NGFは神経組織の成長および機能維持にとって重要かつ必要な因子である。NGFは、末梢神経における知覚および交感神経、ならびに中枢神経における大細胞性コリン作動性ニューロンの成熟、分化および生命維持に不可欠であり、脳損傷時の神経細胞の変性を防ぐという作用を示す。さらに、NGFは、パーキンソン病やハンチントン病等の神経変性疾患に対しても有効であることが示唆されている。生体内においてNGFが受容体であるTrKAに結合するとGrb2が活性化され、Ras等の下流のシグナルが活性化されることで神経分化が誘導され、アルツハイマー型痴呆症、脳血管性痴呆症、パーキンソン病、ハンチントン病のような中枢機能障害、脊髄損傷、末梢神経損傷、糖尿病性神経障害、ならびに筋萎縮性側索硬化症のような末梢機能障害の治療にも有用であると考えられている。
【0005】
NGFは、モノマーでは13000およびダイマーでは26000もの分子量を有するタンパク質であり、血管脳関門を通過することができない。そのため、例えば、中枢機能障害の治療を目的とした場合には、脳室内投与が必要となる。更に、NGFの大量調製も困難である。このようにNGF自体の使用には多くの問題がある。結果として、一般に、NGF自体を臨床で用いることは非常に困難である。
【0006】
一方、上記のような神経障害を伴う疾患の治療剤の開発において、神経細胞の伸長に着目したものがある。例えば、特許文献1には、メタリジュウム属に属するオバリシン及びクロバリシンを生産する能力を有する微生物を培養し、培養液中に生理活性物質オバリシン、クロバリシンを得て、新規神経分化促進剤とその製造法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、安全性が高く、かつ神経細胞に対して神経突起を伸長し得る、神経突起伸長剤が開示されている。本発明の第一の神経突起伸長剤はローズマリーおよびセージからなる群より選択される少なくとも1種の植物由来の抽出物を有効成分として含有する。また、本発明の第二の神経突起伸長剤はカルノシン酸を有効成分として含有する。老年型痴呆症等の原因の一つとして考えられている神経変性疾患の予防および/または治療に利用し得る、天然物由来の神経突起伸長剤が開示されている。
【0008】
特許文献3では、ローズマリー抽出物を有効成分とする高い神経保護活性を有し、安全性に優れる新規な神経細胞保護剤であって、当該神経細胞保護剤は、神経細胞に対する細胞突起伸長作用及びアセチルコリン放出促進作用を有し、加えて高い安全性を発揮し得るものである。さらに、当該神経細胞保護剤を薬理学的に許容され得る添加剤と混成した医薬品組成物及び化粧料組成物、並びに食品原料と混成した食品が開示されており、今後もこのような天然物由来の神経突起伸長剤のバリエーションが望まれる。
【特許文献1】特開2000−125894号公報
【特許文献2】特開2007−230945号公報
【特許文献3】特開2008−162927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、脳器質性障害である神経変性疾患の予防および/または治療に利用することができる天然物由来の神経突起伸長剤を提供することである。本発明の別の目的は、このような神経突起伸長剤を含有する神経変性疾患の予防・治療剤、アルツハイマー及び痴呆症の予防・治療剤、及び食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために鋭意研究を積み重ねた結果、スギナ末、パフィアエキス、セイヨウエビラハギエキス、メグスリノキ抽出液、ラカンカエキス、センシンレンエキス、コショウソウエキス、ミカニア・グロメラータエキス、レッドビートエキス等の植物、及びマムシ抽出液に神経突起伸長作用を有することを見出した。
【0011】
すなわち、本発明の特徴は、スギナ末、パフィアエキス、セイヨウエビラハギエキス、メグスリノキ抽出液、ラカンカエキス、センシンレンエキス、コショウソウエキス、ミカニア・グロメラータエキス、レッドビートエキス、マムシ抽出液の少なくとも何れかの1種のエキスを含有することを特徴とする神経突起伸長剤である。
【0012】
本発明の他の特徴は、神経突起伸長作用を有するスギナ末、パフィアエキス、セイヨウエビラハギエキス、メグスリノキ抽出液、ラカンカエキス、センシンレンエキス、コショウソウエキス、ミカニア・グロメラータエキス、レッドビートエキス、マムシ抽出液の少なくとも何れかの1種のエキスを含有する神経変性疾患の予防・治療剤である。
【0013】
本発明の他の特徴は、神経突起伸長作用を有するスギナ末、パフィアエキス、セイヨウエビラハギエキス、メグスリノキ抽出液、ラカンカエキス、センシンレンエキス、コショウソウエキス、ミカニア・グロメラータエキス、レッドビートエキス、マムシ抽出液の少なくとも何れかの1種のエキスを含有するアルツハイマー病および痴呆症の予防・治療剤である。
【0014】
本発明の別の特徴は、神経突起伸長作用を有するスギナ末、パフィアエキス、セイヨウエビラハギエキス、メグスリノキ抽出液、ラカンカエキス、センシンレンエキス、コショウソウエキス、ミカニア・グロメラータエキス、レッドビートエキス、マムシ抽出液の少なくとも何れかの1種のエキスを含有する食品である。
【発明の効果】
【0015】
本発明方法に従えば、スギナ末、パフィアエキス、セイヨウエビラハギエキス、メグスリノキ抽出液、ラカンカエキス、センシンレンエキス、コショウソウエキス、ミカニア・グロメラータエキス、レッドビートエキス、マムシ抽出液は神経突起伸長作用を有することから、神経突起伸長剤、アルツハイマー病、痴呆症、神経変性疾患の予防・治療剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1はラット褐色細胞腫株PC12細胞を用いて各種植物エキス、及びマムシ抽出液の神経突起の伸長作用を調べた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の神経突起伸長剤は、スギナ(Equisetum arvense)、パフィア(Pfaffia glomerata)、セイヨウエビラハギ(Melilotus officinalis)、メグスリノキ(Acer nikoense)、ラカンカ(Momordica grosvenori)、センシンレン(Andrographis paniculata)、コショウソウ(Lepidium sativum)、ミカニア・グロメラータ(Mikania Glomerata)、レッドビート(Beta vulgaris)から選ばれる植物から抽出したエキス、抽出液及びマムシ(Agkistrodon halys)から抽出した抽出液である。上記植物は、葉、茎、芽、花、木質部、木皮部(樹皮)などの地上部および根、塊茎などの地下部、種子、果実、樹脂など全ての部位(以下「原体」と称する)が使用可能である。また、マムシについても、全ての部位が使用可能である。
【0018】
動植物エキス及び抽出液の調製方法は、原体を乾燥又はそのままで裁断、又は粉砕して原体として用いる。前記原体から神経突起伸長作用を有するエキス及び抽出液の抽出は、溶剤を加えて常温又は加温下に、抽出するか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得ることができる。ここで、使用される溶剤は特に限定されず、例えば、水(精製水)、メチルアルコール、エチルアルコール等の1級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール、酢酸エチルエステル等の低級アルキルエステル、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素、エチルエーテル、アセトン等の公知の溶媒が挙げられ、これら溶媒は原液、又は水で適当に希釈されてもよく、あるいは、1種又は2種以上の溶媒を組み合せて使用することもできる。
【0019】
原体からの好ましい抽出方法の具体例としては、各植物又はマムシを裁断又は乾燥粉砕物等の原体0.01〜10kgに対して1〜100倍の割合で溶媒を加え、5〜121℃で0.5〜24時間抽出する。抽出後、濾過を行って固形物を取り除き抽出液を得ることができる。このように得られたエキスは、抽出された溶液のままで使用しても良いが、さらに必要により、抽出液は減圧濃縮を行った後、噴霧乾燥してエキス粉末として使用することもできる。
【0020】
本発明の神経突起伸長剤は、神経突起伸長作用を有することから神経系疾患〔例、神経変性疾患(例、アルツハイマー病、パーキンソン症候群など)、脊髄損傷、てんかん、脳虚血性障害、脳血管性痴呆など〕、精神系疾患(例、精神分裂病、うつ病など)などの予防・治療剤などの医薬品として使用することができる。好ましくは神経変性疾患、さらに好ましくはアルツハイマー病などの予防・治療剤などである。
【0021】
本発明の神経突起伸長剤は、賦形剤などの添加剤と混合して非経口投与,経口投与又は外部投与に適した、医薬品,医薬部外品,食品の形で使用することができる。食品においては、油脂製品や乳化製品、清涼飲料等に添加することができる。医薬品では経口剤,外用剤,注射剤,吸入剤,点鼻・点眼剤等に添加することができ、これらの使用方法に応じて、錠剤,液剤,注射剤,軟膏,クリーム,ローション,エアゾール剤,座剤等の所望の剤型にすることができる。また、必要に応じて賦形剤,基剤,乳化剤,安定剤,溶解助剤,矯味剤,保存剤,芳香剤,着色剤,コーティング剤などを適宜配合することができる。
【0022】
本発明の神経突起伸長剤を医薬品として利用する場合の投与量は、患者の年齢,症状等により大きく変動するが、一般には、経口投与の場合、乾燥重量として1〜2000mg/日の範囲であることが望ましい。食品に配合する場合は、その効果や添加した際の香り、色調の点から考え、0.01〜50重量%の濃度範囲とすることが望ましい。
【0023】
上記エキス及び抽出液の治療的有効量の1つまたは複数の上記エキスおよび抽出液が、1つまたは複数の薬学的に許容し得る担体(添加剤)および/または希釈剤とともに処方される。以下で詳細に説明するように、本発明の薬学的組成物は固体または液体での投与のために具体的に処方することができる。経口投与として、例えば、水薬(水溶液もしくは非水溶液または懸濁液)、錠剤、巨丸剤、粉末薬、顆粒剤、舌に塗布するためのペーストを例示することができる。非経口投与としては、例えば、滅菌溶液もしくは懸濁液として例えば皮下、筋内もしくは静脈内注射のための製剤、あるいは、局所用として、例えば皮膚に応用されるクリーム、軟膏またはスプレーとして、または、膣内または直腸内に、例えば膣座薬、クリームまたは発泡剤として製剤化することができる。
【0024】
治療的有効量とは、本明細書で使用される場合、いずれの医療にも適用可能な妥当な便益/リスク比で、何らかの所望の治療効果を生じるために有効な作用物質または組成物の量を意味する。例えば、本発明の動植物エキス及び抽出液の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、アルツハイマー病の治療目的で本発明の動植物エキス及び抽出液を経口投与する場合、容量は対象となる者の体重等の条件によって容易に変動し得るため、当業者によって適宜選択され得る。
【0025】
薬学的に許容し得るとは、本明細書では、正しい医学的判断の範囲内で、妥当な便益/リスク比に見合って、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応等の問題や合併症なしに、人間および動物の組織に接触しての使用に好適な、化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を指すために使用される。
【0026】
薬学的に許容し得る担体とは、本明細書で使用される場合、体の一器官または一部から体の別の器官または一部へ本発明の神経突起伸長剤を運搬または輸送することに関与する液体または固体の充填剤、希釈剤、補形薬、溶剤またはカプセル化材料のような、薬学的に許容し得る材料、組成物または賦形剤を意味する。各担体は、剤形の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味で「許容し得る」ものでなければならない。薬学的に許容し得る担体として働き得る材料のいくつかを以下に例示すると、ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖;トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンのようなデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのようなセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび座薬ワックスのような補形薬;落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油のような油;プロピレングリコールのようなグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのようなポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩液;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ならびに薬物処方で使用される他の非毒性の適合物質を含む。いくつかの実施形態では、薬物製剤は非発熱性である。すなわち、患者の体温を上昇させないものが望ましい。
【0027】
その他、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、被覆剤、甘味料、香味剤および香料、保存料および酸化防止剤もまた組成物中に存在してもよい。
【0028】
薬学的に許容し得る酸化防止剤の例には以下のものがある:アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性酸化防止剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロール等のような油溶性酸化防止剤;ならびにクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤も必要に応じて含有させることができる。
【0029】
本発明の剤形は、経口、経鼻、局所(口内および舌下を含む)、直腸、膣および/または非経口投与に好適なものを含む。剤形は、単位投薬形態で都合よく差し出されてもよく、薬学分野で周知のいかなる方法によって調製されてもよい。担体材料と組み合わせて単一投薬形態を作製することができる活性成分の量は、治療されるホスト、特定の投与方式に応じて変わるであろう。担体材料と組み合わせて単一投薬形態を作製することができる活性成分の量は一般に、治療効果を生じる化合物の量であろう。一般に、100パーセントのうち、この量は、約0.1%から約99%まで、好ましくは約1%から約70%まで、最も好ましくは約5%から約50%までの範囲の活性成分である。
【0030】
これらの剤形または組成物を調製する方法は、本発明の1つまたは複数の作用物質を担体と、随意に1つまたは複数の副成分と結びつけるステップを含む。一般に、剤形は本発明の1つまたは複数の作用物質を液体担体、もしくは微粉化した固体担体、またはその両方と均一かつ緊密に結びつけ、必要であれば製品を整形することによって調製される。
【0031】
経口投与に好適な本発明の剤形は、カプセル、カシェ、丸薬、錠剤、ロゼンジ(味付けされた主薬、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカント、を用いる)、粉末、顆粒、の形態でもよく、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油もしくは油中水液体乳剤として、またはエリキシルもしくはシロップとして、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴムのような不活性基剤を用いる)および/または含嗽剤等としてでもよく、それぞれ活性成分として所定量の本発明の神経突起伸長剤を含む。本発明の作用物質は、巨丸剤、舐剤、またはペーストとして投与されてもよい。
【0032】
経口投与のための本発明の固体投薬形態(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉末薬、顆粒剤等)では、活性成分は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムのような1つまたは複数の薬学的に許容し得る担体、および/または以下のもののいずれかと混合される:デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸のような充填剤または増量剤;例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアラビアゴムのような粘結剤;グリセロールのような保湿剤;寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤;パラフィンのような溶解遅延剤;4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤;カオリンおよびベントナイト粘土のような吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物のような潤滑剤;ならびに着色剤。カプセル、錠剤および丸薬の場合、薬物組成物は緩衝剤を含んでもよい。同様の種類の固体組成物が、ラクトースまたは乳糖のような補形薬と、高分子量ポリエチレングリコール等とを用いたソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル内の充填剤としても使用可能である。
【0033】
錠剤は、圧縮または成形によって、随意に1つまたは複数の副成分とともに、作製され得る。圧縮された錠剤は、粘結剤(例えば、ゼラチンもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、グリコール酸ナトリウムデンプンもしくは架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を用いて調製され得る。成形タブレットは、不活性液体希釈剤で湿潤化された粉末化合物の混合物を好適な機械で成形することによって作製され得る。
【0034】
糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒剤のような、本発明の薬物組成物の錠剤等の固体投薬形態は、随意に、刻み目を付けられ、または薬物調剤分野において周知の腸溶性被膜等の被膜および殻を用いて調製されてもよい。それらは、例えば、所望の放出プロファイルを提供するための種々の比率でのヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いて、内部の活性成分の緩徐なまたは制御された放出を提供するように調剤されてもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用直前に滅菌水等の滅菌注射可能媒質に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌してもよい。これらの組成物は、随意に乳白剤を含んでもよく、胃腸管のある特定の部分のみで、またはそこで優先的に、随意に遅延したやり方で、1つまたは複数の活性成分を放出する組成であってもよい。使用可能な埋込み組成物の例として、ポリマー物質およびワックスがある。活性成分は、適当であれば1つまたは複数の上記の補形薬とともに、マイクロカプセル化された形態であってもよい。
【0035】
本発明の神経突起伸長剤の経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に許容し得る乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルがある。液体投薬形態は、活性成分に加えて、例えば水や他の溶媒のような当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブタジエングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルのような可溶化剤および乳化剤、およびそれらの混合物を含んでもよい。
【0036】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味剤、着色剤、香料および保存剤のような補助薬を含んでもよい。
【0037】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物のような懸濁剤を含んでもよい。
【0038】
直腸または膣投与のための本発明の薬物組成物の剤形は、座薬として提示され得る。この座薬は、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、座薬ワックスまたはサリチル酸塩を含む1つまたは複数の好適な非刺激性補形薬または担体と、本発明の1つまたは複数の作用物質を混合することによって調製することが可能であり、室温で固体であるが、体温では液体であるため、直腸または膣腔で融解し、活性化合物を放出することになる。
【0039】
膣投与に好適な本発明の剤形はまた、当技術分野で適当であることが知られているような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡またはスプレー剤形も含む。
【0040】
本発明の1つまたは複数の神経突起伸長作用を有する物質の局所的または経皮的投与の投薬形態は、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入薬を含む。活性作用物質は、薬学的に許容し得る基材と、および必要であれば保存料、緩衝液、または推進剤と、滅菌条件下で混合してもよい。
【0041】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の神経突起伸長剤に加えて、動物脂または植物脂、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物のような補形薬を含んでもよい。
【0042】
粉末およびスプレーは、本発明の神経突起伸長剤に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物のような補形薬を含んでもよい。スプレーは、塩化フッ化炭化水素や、ブタンおよびプロパンのような揮発性非置換炭化水素のような通例の高圧ガスをさらに含んでもよい。
【0043】
経皮的パッチは、本発明の神経突起伸長作用を有する物質を、体に制御して配送するという更なる利点を有する。このような投薬形態は、適当な媒質に本発明の化合物を溶解または分散させることによってなされ得る。吸収増進剤を用いて、皮膚を横切る本発明の神経突起伸長作用を有する物質のフラックスを上昇させることも可能である。このようなフラックスの速さは、速さ制御膜を設けるか、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に化合物を分散させるかのいずれかによって制御することができる。
【0044】
非経口投与に好適な本発明の神経突起伸長作用を有する薬物組成物は、本発明の1つまたは複数のエキスとともに、1つまたは複数の薬学的に許容し得る滅菌等張水溶液または非水溶液、分散剤、懸濁液もしくは乳剤、または使用直前に滅菌注射可能溶液または分散剤中で戻すことが可能な滅菌粉末を含み、これは酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、調剤を目的レシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは濃縮剤を含み得る。
【0045】
本発明の神経突起伸長作用を有する薬物組成物で使用可能な好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびそれらの好適な混合物、オリーブ油のような植物油、ならびにオレイン酸エチルのような注射可能有機エステルがある。固有の流動性は、例えば、レシチンのような被覆材料の使用によって、分散剤の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0046】
これらの組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤のような補助薬を含んでもよい。微生物の活動の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノール等の種々の抗菌剤および抗真菌剤の含有によって確保し得る。糖、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に含めると望ましいかもしれない。さらに、注射可能薬物形態の持続性吸収が、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる作用物質の含有により引き起こされ得る。
【0047】
また、本発明の神経突起伸長剤は、食品組成物としても利用することができる。食品組成物としては、前述のようにして得られる本発明の神経突起伸長作用を有するスギナ末、パフィアエキス、セイヨウエビラハギエキス、メグスリノキ抽出液、ラカンカエキス、センシンレンエキス、コショウソウエキス、ミカニア・グロメラータエキス、レッドビートエキス、マムシ抽出液をそのまま用いてもよく、液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、茶、スープ、豆乳、サラダ油、ドレッシング、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、ケーキミックス、粉末状または液状の乳製品、パン、クッキー等に添加したり、必要に応じてデキストリン、乳糖、澱粉等の賦形剤や香料、色素等とともにペレット、錠剤、顆粒等に加工したり、またゼラチン等で被覆してカプセルに成形加工して健康食品や栄養補助食品等として利用できる。これらの食品類あるいは食用組成物における本発明の神経突起伸長剤の配合量は、当該食品や組成物の種類や状態等により一律に規定しがたいが、0.01〜90重量%、より好ましくは0.1〜80重量%である。
【0048】
以下の実施例では、本発明を実施するいくつかの好ましい形態を例示するが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定するものではなく、代替的な材料および方法を用いて、類似の結果を得ることが可能である。
【実施例1】
【0049】
[製造例1]スギナ末
スギナ(Equisetum arvense)の乾燥した地上部を1〜5mm程度に裁断し、粉末を得た。
【0050】
[製造例2]パフィアエキス
パフィア(Pfaffia glomerata)およびその同属植物の乾燥した根を1〜5mm程度に裁断し、その10gに対し50v/v%のエタノール100mlを加え、80℃で1時間加温し、還流下で抽出した。その後、濾過を行い、固形物を取り除き抽出液を得た。得られた抽出液を減圧濃縮した後、噴霧乾燥し、エキス1gを得た。
【0051】
[製造例3]セイヨウエビラハギ(メリロート)エキス
セイヨウエビラハギ(Melilotus officinalis)の乾燥した地上部を1〜5mm程度に裁断し、その10gに対し精製水100ml加え、80℃で1時間加温し抽出した。抽出後、濾過を行い、固形物を取り除き、抽出液を得た。得られた抽出液を減圧濃縮した後、デキストリンを加え噴霧乾燥し、各種エキス1.2gを得た。
【0052】
[製造例4]メグスリノキ抽出液
メグスリノキ(Acer nikoense)の乾燥物を1〜5mm程度に裁断し、その10gに対し50v/v%のエタノール100mlを加え、80℃で1時間加温し、還流下で抽出した。その後、濾過を行い、固形物を取り除き抽出液を得た。
【0053】
[製造例5]ラカンカエキス
ラカンカ(Momordica grosvenori)の乾燥した果実を1〜5mm程度に裁断し、に対し精製水100ml加え、80℃で1時間加温し抽出液を得た。その後、抽出液を減圧濃縮した後、噴霧乾燥し、エキス1.1gを得た。
【0054】
[製造例6]センシンレン(穿心連)エキス
センシンレン(Andrographis paniculata)の乾燥した幹枝を1〜5mm程度に裁断し、その10gに対し50v/v%のエタノール100mlを加え、80℃で2時間、還流下で抽出した。その後、ろ紙で濾過を行い、固形物を取り除き抽出液を得た。得られた抽出液を減圧濃縮し、−30℃で一晩凍結した後、凍結乾燥し、エキス1.7gを得た。
【0055】
[製造例7]コショウソウエキス
コショウソウ(Lepidium sativum)の乾燥した幹枝を1〜5mm程度に裁断し、その10gに対し50v/v%のエタノール100mlを加え、80℃で2時間、還流下で抽出した。その後、ろ紙で濾過を行い、固形物を取り除き抽出液を得た。得られた抽出液を減圧濃縮し、−30℃で一晩凍結した後、凍結乾燥しエキス1.1gを得た。
【0056】
[製造例8]ミカニア・グロメラータエキス
ミカニア・グロメラータ(Mikania Glomerata)の乾燥した葉を1〜5mm程度に裁断し、その10gに対し50v/v%のエタノール100mlを加え、80℃で2時間、還流下で抽出した。その後、ろ紙で濾過を行い、固形物を取り除き抽出液を得た。得られた抽出液を減圧濃縮し、−30℃で一晩凍結した後、凍結乾燥しエキス2.0gを得た。
【0057】
[製造例9]レッドビートエキス
レッドビート(Beta vulgaris)の原体を1〜5mm程度に裁断し、その10gに対し50v/v%のエタノール100mlを加え、80℃で2時間、還流下で抽出した。その後、ろ紙で濾過を行い、固形物を取り除き抽出液を得た。得られた抽出液を減圧濃縮し、−30℃で一晩凍結した後、凍結乾燥しエキス3.2gを得た。
【0058】
[製造例10]マムシ抽出液
マムシ(Agkistrodon halys)の内臓を取り出し、皮を剥いで乾燥したものを1〜5mm程度に裁断し、その10gに対し50v/v%のエタノール100mlを加え、80℃で1時間加温し、還流下で抽出し、減圧濃縮し、抽出液を得た。
【実施例2】
【0059】
[試験1]神経突起伸張作用の確認
5%牛胎児血清および10%馬血清添加DMEM培地を用いて培養したラット褐色細胞腫株PC12細胞を48ウェル培養プレート(Nunc社製、ポリD−リジンコーティング)に播種した。24時間培養後、細胞培養培地を0.5%牛胎児血清および1%馬血清添加DMEM培地に交換し、実施例1で得たエキス及び抽出液をそれぞれ100μg/mlの濃度で添加した。対照として溶媒の50%エタノールのみを添加した。72時間後、神経突起の伸張を倒立顕微鏡にて観察した。その結果を図1に、図1の結果を+−で表した結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

図1、表1に示すように、実施例1で得られた各エキス及び抽出液は、神経突起伸長作用を有することが確認できた。特に、センシンレンエキス、コショウソウエキス、レッドビートエキスの神経突起の伸張作用は顕著である。
【実施例3】
【0061】
[製剤例1] 散剤
処方 配合量
1.抽出物(製造例1) 10
2.乾燥コーンスターチ 30
3.微結晶セルロース 60
・成分1〜3を混合し、散剤とする。
【0062】
[製剤例2] 錠剤
処方 配合量
1.抽出物(製造例1) 4
2.乾燥コーンスターチ 25
3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 20
4.微結晶セルロース 41
5.ポリビニルピロリドン 7
6.タルク 3
・成分1〜4を混合し、次いで成分5の水溶液を結合剤として加えて顆粒成形する。成形した顆粒に成分6を加えて打錠する。
【0063】
[製剤例3] カプセル
1.抽出物(実施例1) 50mg
2.コーンスターチ 100mg
3.乳糖 100mg
4.ステアリン酸マグネシウム 2mg
錠剤は、慣用のゼラチン調製方法で上記成分割合で混合し、ゼラチンカプセルに充填することで調製した。
【実施例4】
【0064】
[食品例1]
実施例1のエキスもしくは抽出液 1000mg
クエン酸 1000mg
オリゴ糖 100g
アプリコット濃縮物 2g
タウリン 1g
蒸留水 900g
・食品の飲料は、慣用の健康飲料調製方法により有効成分を溶解、混合、85℃で1時間攪拌、濾過後、容器に充填・殺菌して調製した。
【0065】
[食品例2]
実施例1で得られた動植物抽出エキスもしくは抽出液50g、デキストリン76gおよびリン酸三カルシウム24gを混合し、造粒、乾燥および16〜80メッシュにて篩過した後、常法に従って顆粒化して顆粒剤形態の本発明の食品を得た。
【0066】
[食品例3]
実施例1で得られた動植物抽出エキスもしくは抽出液5.0gを100mlの蒸留水に再溶解し、スポイド付き30ml用ガラス製瓶に充填し、液剤化して液剤形態の本発明の食品を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スギナ末、パフィアエキス、セイヨウエビラハギエキス、メグスリノキ抽出液、ラカンカエキス、センシンレンエキス、コショウソウエキス、ミカニア・グロメラータエキス、レッドビートエキス、マムシ抽出液の少なくとも1種類を含有することを特徴とする神経突起伸長剤。
【請求項2】
請求項1記載の神経突起伸長剤の少なくとも1種類を含有することを特徴とする神経変性疾患の予防・治療剤。
【請求項3】
請求項1記載の神経突起伸長剤の少なくとも1種類を含有することを特徴とするアルツハイマー病および痴呆症の予防・治療剤。
【請求項4】
請求項1記載の神経突起伸長剤の少なくとも1種類を含有することを特徴とする食品。

【図1】
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【公開番号】特開2011−207814(P2011−207814A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77370(P2010−77370)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【出願人】(597112472)財団法人岐阜県研究開発財団 (25)
【Fターム(参考)】