説明

神経障害および神経心理学的障害の治療のための製剤学的薬剤

【課題】神経障害等の治療に有効な薬剤組成物の提供。
【解決手段】式I及びIIのうちの一つで表される化合物を含有する薬剤組成物及び上記化合物の製造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は置換された環状アミン類、薬剤学的組成物および神経障害および神経心理学的障害の治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
シナプス伝達は、シナプス前部および後部神経の両者において特殊構造の多量の配列を含む複雑な形態の細胞間伝導である。高親和性の神経伝達物質運搬体も上記成分の一つでありシナプス前部端末およびその周囲のグリア細胞上に位置している(KannerおよびSchuldiner,CRC Critical Reviews in Biochemistry22,1032(1987))。運搬体は神経伝達物質をシナプスから引き離し、それによってシナプス中の神経伝達物質濃度をその持続時間と共に調節するのであり、これによってシナプス伝達の大小に影響を与えるのである。伝達物質が隣接シナプスへ拡散することを避けることによって運搬体はシナプス伝達の適合度を維持しているのである。最後に、放出された伝達物質をシナプス前部末端中に導入することによって運搬体は伝達物質の再利用を可能としているのである。
神経伝達物質の運搬は膜をはさんでの細胞外ナトリウムと電圧の相違に依存し;強烈な神経発射が為された条件下、例えば急な発作の間、運搬体は逆に機能して神経伝達物質をカルシウムとは独立に非細胞外的(non−exocytotic)な方法で放出することもある(Attwell等、Neuron11,401−407(1993))。神経伝達物質運搬体の薬理学的変調はこのようにシナプス活性を改変する手段を提供し、これによって神経障害および心理学的障害の治療に有効な治療法を提供するものである。
アミノ酸のグリシンは哺乳動物の中枢神経系における主要な神経伝達物質であり、抑制および興奮性シナプスの両者で機能するものである。神経系とは、その神経系の中枢および末端部分の両者を意味するものである。グリシンのこのような明確に異なった機能は、その各々が異なったクラスのグリシン運搬体と結合する2つの異なったタイプの受容体によって媒介されている。グリシンの抑制作用は痙攣性(convulsant)アルカロイドストリキニーネに感受性のグリシン受容体により媒介されており、したがって“ストリキニーネ−感受性”と言われている。このような受容体は内在性クロライドチャンネルを有し、このものは受容体にグリシンが結合すると開き;クロライドコンダクタンスが増加することによって作用ポテンシャルの発射のための閾値が上がる。ストリキニーネ−感受性グリシン受容体は脊髄索および脳幹に主として見出され、このような受容体の活性化を増強する薬剤は上記域における神経伝達の抑制を増強するであろう。
中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸塩の作用を調節することによってグリシンは興奮性の伝達という機能をするのである。JohnsonおよびAscher,Nature325,529−531(1987);Fletcher等、Glyeine Transmission,(Otterson and Storm−Mathisen,eds.1990)、193−219頁を参照されたい。具体的にはグリシンはN−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体と呼ばれている種類のグルタミン酸エステル受容体において必須の共アゴニストである。NMDA受容体の活性化によりナトリウムおよびカルシウムコンダクタンスを増大させ、これにより神経の脱極性化が為され、それによって作用ポテンシャルを高める(fire)可能性を増大せしめるのである。NMDA受容体は脳に広く分布し、特に大脳皮質および海馬構造中に高濃度で分布している。
【0003】
モレキュラークローニングにより哺乳類の脳中にGly T−1およびGly T−2と呼ばれる2種類のグリシン運搬体が見出された。Gly T−1は主に前脳に見出され、その分布はグルタミン酸経路およびNMDA受容体の分布に相当する(Smith等、Neuron,927−935(1992))。モレキュラークローニングにより更に、Gly T−1a、Gly T−1bおよびGly T−1cと呼ばれるGly T−1の3つの変種の存在が明らかとなった(Kim等、Moleculer Pharmacology45,608−617(1994))が、それらは各々脳および末梢組織において独特の分布を見せている。これら変種は異なったスプライシングおよび異なったエクソンの利用によって生じ、そのN−末端領域が異なっている。それとは反対にGly T−2は脳幹および脊髄索に主に見出され、その分布はストリキニーネー感受性グリシン受容体の分布に非常に近い(Liu等、J.Biologycal Chemistry268,22802−22808(1993);JurskyおよびNelson、J.Neurochemistry64,1026−1033(1995))。これらのデータは、グリシンのシナプスレベルを調節することによってGly T−1およびGly T−2が各々選択的にNMDA受容体およびストリキニーネ−感受性グリシン受容体の活性に選択的に影響を与えるという観点と一致しているのである。
グリシン運搬体を抑制もしくは活性化する化合物は受容体機能を変えるものと考えられ、種々の病気の症状に治療的利益を与えるものである。例えば、Gly T−2の抑制はシナプスレベルのグリシンを増強させ、それによってストリキニーネ−感受性グリシン受容体を有する神経の活性を減少させるために用いることができ、すなわち脊髄索における痛み、これについてはこれらの受容体により媒介されることが示されていたが、に関連する(即ち痛覚(nociceptive))情報の伝達を減少させ、Yaksh、Pain37,111−123(1989)。更に、脊髄策におけるストリキニーネ−感受性グリシン受容体を通じてのグリシン性伝達の抑制を強化することにより筋機能亢進を減少させるために用いることができ、このことは痙直、筋クローヌスおよびてんかんのような増大された筋収縮と付随した病気や症状を治療するのに有効である(Truong等、Movement Disorders,77−87(1988);Becker,FASEB J.,2767−2774(1990))。グリシン受容体の調節により治療することのできる痙直はてんかん、卒中、脳外傷、多発性硬化症、脊髄索損傷、ジストニー、および神経系の他の病状および損傷と付随して生じるものである。
【0004】
NMDA受容体は記憶および学習に関係している(Rison and Stanton、Neurosci.Biobehav.Rev.19,533−552(1995);Danysz et al.,Behavioral Pharmacol.,455−474(1995))。そして更にNMDAに媒介された神経伝達の機能低下は精神分裂症の症状の底に潜むか、あるいは寄与しているようである(Olney and Farber、Archives General Psychiatry52,998−1007(1996))。このようにGly T−1を抑制しそれによってNMDA受容体のグリシンによる活性化する薬剤は新規な抗精神薬および抗痴呆剤として使用することができ、また注意欠損障害および器質性脳遺伝的症候群のような認識行程が損なわれている他の病気に用いることができる。逆にNMDA受容体の過剰な活性化は多くの病状と関連しており、特に卒中に付随して起こる神経死や、アルツハイマー病、多発梗塞性痴呆、AIDS症候群、ハンチングトンス氏病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症や卒中もしくは脳外傷のような神経細胞死が生じる他の症状のような神経変質が起きる病状と関連しているのであった。Coyle & Puttfarcken、Science262,,689−695(1993);Lipton and Rosenberg,New Engl.J.of Medicine330,613−622(1993);Choi,Neuron,623−634(1988)。即ちGly T−1の活性を増強させる薬剤はNMDA受容体のグリシン活性化を減少させることとなり、このような活性は上記およびそれと関連した症状を治療するために用いることができる。同様に、NMDA受容体上のグリシンサイトを直接ブロックする薬剤も上記およびそれと関連した症状を治療するために用いることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】KannerおよびSchuldiner,CRC Critical Reviews in Biochemistry,22,1032(1987)
【非特許文献2】Attwell等、Neuron,11,401−407(1993)
【非特許文献3】JohnsonおよびAscher,Nature,325,529−531(1987)
【非特許文献4】Fletcher等、Glyeine Transmission,(Otterson and Storm−Mathisen,eds.1990)、193−219頁
【非特許文献5】Smith等、Neuron,8,927−935(1992)
【非特許文献6】Kim等、Moleculer Pharmacology,45,608−617(1994)
【非特許文献7】Liu等、J.Biologycal Chemistry,268,22802−22808(1993)
【非特許文献8】JurskyおよびNelson、J.Neurochemistry,64,1026−1033(1995)
【非特許文献9】Yaksh、Pain,37,111−123(1989)
【非特許文献10】Truong等、Movement Disorders,3,77−87(1988)
【非特許文献11】Becker,FASEB J.,4,2767−2774(1990)
【非特許文献12】Rison and Stanton、Neurosci.Biobehav.Rev.,19,533−552(1995)
【非特許文献13】Danysz et al.,Behavioral Pharmacol.,6,455−474(1995)
【非特許文献14】Olney and Farber、Archives General Psychiatry,52,998−1007(1996)
【非特許文献15】Coyle & Puttfarcken、Science,262,,689−695(1993)
【非特許文献16】Lipton and Rosenberg,New Engl.J.of Medicine,330,613−622(1993)
【非特許文献17】Choi,Neuron,1,623−634(1988
【非特許文献18】Becker,FASEB Journal,4,2767−2774(1990)
【非特許文献19】Yaksh,Pain,37,111−123(1989)
【非特許文献20】Rison and Stanton,Neurosci.Biobehav.Rev.,19,533−552(1995)
【非特許文献21】Danysz et al.,Behavioral Pharmacol.,6,455−474(1995)
【非特許文献22】Pitkanen et al.,Eur.J.Pharmacol.,253,125−129(1994)
【非特許文献23】Thiels et al.,Neuroscience,46,501−509(1992)
【非特許文献24】Kretschmer and Schmidt,J.Neurosci.,16,1561−1569(1996)
【非特許文献25】Becker,FASEB J.,4,2767−2774(1990)
【非特許文献26】Yaksh,Pain,37,111−123(1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、神経障害および神経心理学的障害の治療に有効な化合物、その製造方法及び該化合物を含有する薬剤組成物を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明により、ある種の化合物がGly T−1もしくはGly T−2運搬体を経由するグリシン輸送を抑制することが判明し、プロドラッグを包含するこのような輸送を抑制する化合物のプリカーサーであり、またこのような輸送を抑制する化合物を製造するための中間体であることが判明した。
すなわち、本発明は
1.次の式IおよびIIの内の一つで表される化合物またはそれらの薬学的に許容し得る塩:


式中
(1)Xは窒素または炭素であり、Xが窒素であるときR2は存在しない;
(2)R2は(a)水素、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキン、シアノ、(C2−C7)アルカノイル、アミノカルボニル、(C1−C6)アルキルアミノカルボニルもしくはジアルキルアミノカルボニルであり、ここで各アルキルは個々に独立してC1ないしC6である;
(b)(R1が−O−R8または−S−R8*でないとき)ヒドロキシ、フルオロ、クロロ、ブロモもしくは(C2−C7)アルカノイルオキシを含有し、
(c)R1、RxbもしくはRybのいずれか一つからの隣接する炭素もしくは窒素と二重結合を形成し、
(d)R1とオキサ結合を形成するか環Eに融合している(例えば化合物C6を参照)酸素か、または
(e)R2bを介してXに結合しているR2aである;
(2i )RxはRxbを介してXに結合している環含有構造Rxaであり;
(2ii )RyはRybを介してXに結合している環含有構造Ryaであり;
(2iii )Rxa、RyaおよびR2aは各々独立してアリール、ヘテロアリール、アダマンチルまたは酸素、硫黄および窒素からなる群から選択される0ないし2個の異項原子を有する5ないし7員の非芳香族性環であり、式中
(a)アリールはフェニルもしくはナフチル、
(b)ヘテロアリールは5員環、6員環、5員環に融合した6員環、6員環に融合した5員環、または6員環に融合した6員環を含有し、該ヘテロアリールは芳香族であり酸素、硫黄および窒素からなる群から選択される異項原子を含有し他の環の原子は炭素である;(c)Rxa、RyaおよびR2aは各々独立してRq、RrO−もしくはRsS−で置換されていてもよく、式中Rq、RrおよびRsはそれらの構造がRxaで定義されているのと同様に各々独立してアリール、ヘテロアリール、アダマンチルまたは5ないし7員の非芳香族性環である、および
(d)Rxa、Rya、R2a、Rq、RrおよびRsは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、アミドスルホニルからなる群から選択される置換基で追加的に置換されていてもよく、これらは2個までの独立的な(C1−C6)N−アルキル置換基、アダマンチル、(C1−C12)アルキル、(C1−C12)アルケニル、アミノ、(C1−C6)アルキルアミノ、ジアルキルアミノ基(以上各アルキルは独立してC1〜C6である)、(C1−C6)アルコキシ、(C2−C7)アルカノイル、(C2−C7)アルカノイルオキシ、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシカルボニル、(C2−C7)アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニルであり、これらはその水素が2個まで独立的に(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキルスルホニル、アミジノ基で置換されていることができ、これらは独立して3個までの(C1−C6)アルキルまたはアリールもしくはヘテロアリール環構造に隣接する位置に結合した2つの酸素と共にメチレンジオキシもしくはエチレンジオキシで置換されていてよく、このメチレンジオキシもしくはエチレンジオキシは2個までの独立した(C1−C6)アルキルで置換することができる、式中、
(i)Rxa、RyaおよびR2aの置換基は組合わされてRxa、RyaおよびR2aの内の2個の間で第2の橋を形成してもよいが、これは次の(1)〜(10)を含有する:
(1)(C1−C2)アルキルもしくはアルケニル、これらは1もしくはそれ以上の(C1−C6)アルキルで独立して置換することができる、(2)硫黄、(3)酸素、(4)水素の部分に1個の(C1−C6)アルキルで置換されていてもよいアミノ、(5)カルボニル、(6)水素の部分が2個までの(C1−C6)アルキルで独立して置換されていてもよい−CH2C(=O)−、(7)−C(=O)−O、(8)水素の部分が2個までの(C1−C6)アルキルで独立して置換されていてもよい−CH2−O−、(9)−C(=O)−N(R24)−、式中R24は水素もしくは(C1−C6)アルキル、(10)水素の部分が2個までの(C1−C6)アルキルで独立して置換されていてもよい−CH2−NH−、または(11)水素の部分が2個までの(C1−C6)アルキルで独立して置換されていてもよい−CH=N−もしくはRxa、RyaおよびR2aの内の2個が単結合で直接結合されていてもよい。
(2iv )RxbおよびR2bは各々独立して単結合もしくは(C1−C2)アルキレン;
(2 v)Rybは単結合、オキサ(すなわち−O−)、(C1−C2)アルキレン、エチレンもしくは−CH=(該二重結合はXと共にある)、チア、メチレンオキシもしくはメチレンチオ、または−N(R6)−もしくは−CH2−N(R6*)−のいずれかであり、R6およびR6*は水素もしくは(C1−C6)アルキルであり、Xが窒素のときXは他の異項原子には結合されていない;
【0008】
(3)R1は単結合もしくは二重結合;直鎖の(C1−C3)脂肪族基;または(Xは炭素原子及びRybはXに結合している異項原子を含まない)−O−R8もしくは−S−R8*、このときR8もしくはR8*のいずれかは単結合、(C1−C3)アルキレンまたは(C2−C3)アルキレンであり、OもしくはSはXに結合している;
式中R1は1個までのヒドロキシ、1個までの(C1−C6)アルコキシもしくは1個までの(C2−C7)アルカノイルオキシ、2個までの独立した(C1−C6)アルキル、1個までのオキソ、1個までの(C1−C6)アルキリデンで置換されていてもよく、ただし、このヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、オキソ置換基は窒素もしくは酸素に結合している炭素原子には結合していないものである、または(R1が−O−R8でXが炭素原子のとき)Xへのオキサ結合が1,3−ジオキソランを形成してもよい、
式中R1のアルキルもしくはアルキリデン置換基は結合して3ないし7員の非芳香族環を形成してもよく、および式中Xが窒素のときXは単結合によりR1に結合し、R1をNに結合しているR1の末端炭素は飽和されているものである;
(4)nは0もしくは1であり、nが1のときR3*は(C1−C6)アルキル(正電荷を有する付属した窒素と共に)もしくは酸素(N−オキサイドを形成)そしてXは炭素である;
(5)環Dは3ないし8員環、3ないし6員のスピロ環で置換されている3ないし8員環、または5ないし6員環と融合している3ないし8員環であり、図示された第3級窒素を欠く融合環は芳香族もしくは異項芳香族であることができ、環Dの各構成環については酸素、硫黄もしくは図示された窒素を含めた窒素から選択された2個までの異項原子が存在し、残りは炭素原子であり、ただしこの環原子は4級窒素を含有せず、また飽和環においては環窒素原子は少なくとも2個の介在炭素原子によって他の環異項原子と分離されているものである;
ここで環Dの炭素および窒素環原子は(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニレン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C2−C7)アルキルオキシカルボニル、(C1−C6)アルキリデン、ヒドロキシル、(C1−C6)アルコキシ、オキソ、ヒドロキシカルボニル、Raで定義されたアリールまたはRaで定義されたヘテロアリールで置換されていることができ、ただしアルキリデン、ヒドロキシカルボニルもしくはオキソで置換された環原子は炭素であり、またヒドロキシルもしくはアルコキシで置換された環原子は少なくとも2個の介在炭素原子によって他の環異項原子と分離されているものである;および
1、R3およびGは少なくとも2個の原子がXと図示された環窒素とを分離しているようなものである;
(6)式中環Eは3ないし8員環、3ないし6員のスピロ環で置換されている3ないし8員環、または5ないし6員環と融合している3ないし8員環であり、図示された第3級窒素を欠く融合環は芳香族もしくは異項芳香族であることができ、環Eの各構成環については酸素、硫黄もしくは図示された窒素を含めた窒素から選択された2個までの異項原子が存在し、残りは炭素原子であり、ただしこの環原子は4級窒素を含有せず、また飽和環においては環窒素原子は少なくとも2個の介在炭素原子によって他の環異項原子と分離されているものである;
ここで環Eの炭素および窒素環原子は(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニレン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C2−C7)アルキルオキシカルボニル、(C1−C6)アルキリデン、ヒドロキシル、(C1−C6)アルコキシ、オキソ、ヒドロキシカルボニル、(C1−C6)アルコキシカルボニル、Raで定義されたアリールまたはRaで定義されたヘテロアリールで置換されていることができ、ただしアルキリデン、ヒドロキシカルボニルもしくはオキソで置換された環原子は炭素であり、またヒドロキシルもしくはアルコキシで置換された環原子は少なくとも2個の介在炭素原子によって他の環異項原子と分離されているものである;および
式中G*およびR18はRxおよびRyに結合している炭素から図示されている環の窒素と少なくとも2原子分分離している;
【0009】
(7)R19は(a)R1、R3もしくはGと二重結合を形成し、
(b)水素であり、
(c)(C1−C3)アルキルもしくはアルキレンであり、
または
(d)融合環中に導入されている;
(8)R4およびR4*は独立して水素もしくは(C1−C6)アルキル、またはR4およびR4*の内の一つは(C1−C6)ヒドロキシアルキル;および
(9)R5は(CO)NR1314、(CO)OR15、(CO)SR16、(SO2)NR1718、(PO)(OR19)(OR20)、(CR22)(OR23)(OR24)、CNまたはテトラゾール−5−イルであり、式中R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20は各々独立して水素、(C3−C8)シクロアルキルを包含した(C1−C8)アルキルであり、式中R15の酸素またはR16の硫黄に結合している炭素はそれ以上第2級分枝を持たず、(C2−C6)ヒドロキシアルキル、C2−C6のアルキルを有するアミノアルキルおよびアミノは2個までの独立した(C1−C6)アルキル、アルキルがC1−C6であるアリールアルキル、アルキルがC1−C6であるヘテロアリールアルキル、アリールもしくはヘテロアリールで置換されることができ、R22は水素またはOR25であり、R23、R24およびR25は(C1−C6)アルキル、フェニル、ベンジル、アセチル、またはR22が水素であるときR23およびR24のアルキルは結合されて1,3−ジオキシランもしくは1,3−ジオキサンを包含する;
式中、
アリールはフェニルもしくはナフチルであり、
ヘテロアリールは5員環、6員環、5員環に融合した6員環、6員環に融合した5員環、または6員環に融合した6員環であり、このヘテロアリールは芳香族であり酸素、硫黄および窒素からなる群から選択される異項原子を含有し他の環の原子は炭素である;
式中、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルのアリールまたはヘテロアリールアルキルのヘテロアリールは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、アミドスルホニルからなる群から選択される置換基で追加的に置換されていてもよく、これらは2個までの独立的な(C1−C6)N−アルキル置換基、(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキルアミン、各アルキルが独立してC1〜C6であるジアルキルアミン、アミノ、(C1−C6)アルコキシ、(C2−C7)アルカノイル、(C2−C7)アルカノイルオキシ、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシカルボニル、(C2−C7)アルコキシカルボニル、2個まで独立的に(C1−C6)アルキルで置換できるアミノカルボニル、(C1−C6)アルキルスルホニル、3個までの(C1−C6)アルキルで置換できるアミジノ、アリールもしくはヘテロアリール環構造に隣接する位置に結合した2個の酸素を有するメチレンジオキシもしくはエチレンジオキシからなる群から選択される置換基で置換されていてよく、このメチレンジオキシもしくはエチレンジオキシは2個までの独立した(C1−C6)アルキルで置換することができる、
式中、R13およびR14は窒素原子と共に酸素及び硫黄から選択されるもう一つ追加の異項原子を含有していてもよい5〜7員環を形成することもできる。
【0010】
本発明における好ましい実施態様としては、(A)Rxa、RyaおよびR2aの少なくとも一つはフルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、シアノ、(C3−C8)アルキル、Rq、RrO−、RsS−で置換されているか、(B)Rxa、RyaおよびR2aの環構造はそれらへの置換基を含めて、15〜20の環原子を共に有する少なくとも2個の芳香族環構造を含むものである。好ましくは、Rxa、RyaおよびR2aの少なくとも一つが、フルオロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、シアノまたは(C3−C8)アルキルで置換されている。好ましくは、Rxa、RyaおよびR2aの少なくとも一つが、Rq、RrO−又はRsS−で置換されているものである。好ましくは、Rxa、RyaおよびR2aの少なくとも一つのアリールもしくはヘテロアリールがフェニルである。好ましくは、Rybがオキサ、メチレンオキシ、チア、メチレンチアである。好ましくは、Rybがオキサもしくはチアである。好ましくは、R5が(CO)NR1314、(CO)OR15もしくは(CO)SR16である。好ましくは、R15が(C2−C6)アルキル、(C2−C4)ヒドロキシアルキル、フェニル、アルキルがC1−C3であるフェニルアルキル、またはアルキルがC2−C6でアミノが2個までの独立した(C1−C3)アルキルで置換されていてもよいアミノアルキルで、式中フェニルもしくはフェニルアルキルのフェニルは置換されていてもよいものである。好ましくはnがゼロである。好ましくは、R15が水素である。好ましくは、R4が水素、メチルもしくはヒドロキシメチルであリ、R4*が水素である。好ましくは、Rxa、RyaおよびR2aの少なくとも一つがヘテロアリールであり、このヘテロアリールとしてジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チオリル、ジアジニル、トリアジニル、ベンゾアゾリル、ベンゾジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキソリル、ベンゾチオリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾジアジニル、ベンゾトリアジニル、ピリジル、チエニル、フラニル、ピロリル、インドリル、イソインドイルもしくはピリミジルを包含するものである。好ましくは、R1が−O−R8もしくは−S−R8*である。
【0011】
好ましくは、Rxa、RyaおよびR2aの内の2者の間での第2の橋がLであり、次の式を満たすものである:


式中AおよびBは各々RxaおよびRyaのアリールもしくはヘテロアリール基である。好ましくは式中Rxa−Rxb、Rya−RybおよびXが次の式を形成するものである:


式中Yは単結合もしくは二重結合によりR1に結合している炭素またはR1に結合している窒素であって、式中R21は(i)RxおよびRyの2個のアリールもしくはヘテロアリール環を結合する単結合を完成する、(ii)(C1−C2)アルキレンもしくはアルケニレン、(iii)硫黄または(iv)酸素のいずれかであり、式中RxおよびRyは上記のように置換されていてもよい。好ましくはR21がCH2CH2もしくはCH=CHである。
【0012】
好ましくは、Rxa、RyaおよびR2aのアルキレンジオキシ置換基が次のものである:


式中アルキレンジオキシは2個までの独立した(C1−C3)アルキルで置換されていることができる。
好ましくは、環Dが式A′およびB′のものである:


式中Zは炭素もしくは窒素であり、式A′およびB′の各々は破線で表されている結合の2個までが2個の二重結合が隣り合わせていない限り二重結合であることができ、式A′およびB′の環は環Dにおけると同様の置換基を有することができる。好ましくは、G*を含有する環系が式C′およびD′の一つである:


式中Zは炭素もしくは窒素であり、式中式C′は破線で表されている結合の1個までが二重結合であることができ、式D′は破線で表されている結合の2個までが二重結合であることができ、そして式中の環は環Eにおけると同様の置換基を有することができる。好ましくは、環Dもしくは環Eが3個までの置換基で置換されている。好ましくは、RxaおよびRyaは一緒になって6個までの置換基で置換されていてよく、R2a、Rq、RrおよびRsは各々3個までの置換基で置換されていてよく、そしてRq、RrもしくはRsの各存在はRxa、RyaおよびR2aの各環構造への置換とみなされる。好ましくは、式中R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19もしくはR20のアリール、ヘテロアリール、アリールアルキルのアリールもしくはヘテロアリールアルキルのヘテロアリールが3個までの置換基で置換されている。好ましくは、該化合物が視覚的に純粋な鏡像異性体である。好ましくは、該化合物が視覚的に純粋な鏡像異性体である(即ち、少なくとも約80%ee、好ましくは少なくとも約90%ee、より好ましくは少なくとも約95%ee)。
【0013】
本発明では、好ましくは本発明の化合物および製剤学的に許容し得る賦形剤を含有する薬剤組成物を提供する。好ましくは、本発明の化合物が次のための有効量存在する薬剤組成物である:
(1)精神分裂症の治療もしくは予防、(2)痴呆症の治療もしくは予防強化剤、(3)てんかんの治療もしくは予防、(4)痙直の治療もしくは予防、(5)筋痙縮の治療もしくは予防、(6)痛みの治療もしくは予防、(7)卒中後の神経細胞死の予防、(8)神経変性症に罹っている動物における神経細胞死の予防、(9)うつ病のような情緒障害の治療もしくは予防、(10)記憶もしくは学習の強化、または、(11)学習障害の治療もしくは予防。
本発明では更に以下のような治療、予防もしくは強化のために有効な量の本発明化合物を投与する方法を提供するものである:
(1)精神分裂症の治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する精神分裂症の治療もしくは予防法、(2)痴呆症の治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する痴呆症の治療もしくは予防法、(3)てんかんの治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与するてんかんの治療もしくは予防法、(4)痙直の治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する痙直の治療もしくは予防法、(5)筋痙縮の治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する筋痙縮の治療もしくは予防法、(6)痛みの治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する痛みの治療もしくは予防法、(7)卒中後の神経細胞死の予防に有効な量の本発明化合物を投与する卒中後の神経細胞死の予防法、(8)神経変性症に罹っている動物における神経細胞死の予防に有効な量の本発明化合物を投与する神経変性症に罹っている動物における神経細胞死の予防法、(9)うつ病のような情緒障害の治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する情緒障害の治療もしくは予防法、(10)記憶もしくは学習の強化に有効な量の本発明化合物を投与する記憶もしくは学習の強化法、または、(11)学習障害の治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する学習障害の治療もしくは予防法。
好ましい態様としては、治療もしくは予防されるべき痙直はてんかん、卒中、脳外傷、多発性硬化症、脊髄索損傷、ジストニーと付随して生じている場合である。また好ましくは、治療もしくは予防されるべき神経変質症が、アルツハイマー病、多発梗塞性痴呆、AIDS症候群、ハンチングトンス氏病、筋萎縮性側索硬化症や神経細胞死が生じる卒中もしくは脳外傷のような場合である。
【0014】
本発明は又本発明の化合物の合成法を提供するものであり、その方法としては、
A)次の式の化合物を
1)


式中1Lは求核置換解離基である
次の式の化合物と反応させるか、または
2)

【0015】
B)次の式の化合物を
1)


次の式の化合物と
2)


式中2Lは求核置換解離基である、
反応させる本発明化合物の合成方法である。
本発明は又次式の化合物


式中、RcおよびRdは各々独立してRxの定義と同じであり、式中R1*は窒素、酸素または硫黄を含まないこと、上記の図示されたカルボニルと共役した二重結合は含まないことを除いてR1の定義と同じである。
を用いてRdNH2を還元的にアルキル化する本発明化合物の合成方法を提供する。
【0016】
本発明は又、RfOHもしくはRf*SHを次式の化合物


式中RfおよびRf*は各々独立してRxの定義と同じであり、式中R1*は窒素、酸素または硫黄を含まないこと、および上で図示したL6−置換炭素に結合している原子での二重結合は含まないことを除いてR1の定義と同じである。
と反応させて各々エーテルもしくはチオエーテルを形成する本発明化合物の合成方法を提供する。好ましくは、この方法は更に次式


のヒドロキシルを他の求核置換解離基で置き換えることにより次式


の化合物を合成することを更に含有するものである。好ましくは、この方法は次式


の化合物をホスフィン化合物の存在下アゾジカルボキシレートと反応させることを包含する。
【0017】
本発明は又、ReMと式


の化合物を反応させて次式


式中RcおよびReは独立してRxの定義と同じであり、Mは金属含有置換基で例えばReMは有機金属試薬であり、R1*は窒素、酸素または硫黄を含まないこと、上記の図示されたカルボニルと共役した二重結合は含まないことを除いてR1の定義と同じである。
の化合物を形成することを包含する、本発明の化合物を合成する方法を提供するものである。
【0018】
本発明は又、次式


の化合物を脱水して次式


式中C*は隣接する炭素と共に二重結合を有し、RcおよびReは独立してRxの定義と同じであり、R27およびR27*は窒素、酸素もしくは硫黄を含まないことを除いてR1の定義と同じである。
の化合物を形成することを包含する、本発明の化合物を合成する方法を提供するものである。
【0019】
本発明は又、次式


式中C*は隣接する炭素と共に二重結合を有す。
の化合物を還元して次式


式中RcおよびReは独立してRxの定義と同じであり、R27およびR27*は窒素、酸素もしくは硫黄を含まないことを除いてR1の定義と同じである。
の化合物を形成することを包含する、本発明の化合物を合成する方法を提供するものである。
【0020】
本発明は又、次式の化合物のいずれか一方を還元して


環C もしくは環C における二重結合を還元する、
式中R28は環への結合が二重結合でないことを除いてはR1と同様であり、環C は環形成炭素間で形成される二重結合と共に破線で示された1もしくはそれ以上の結合においてモノもしくはジ不飽和であり、2個の二重結合が隣接することはなく、環C もしくは環C は融合フェニルであってもよく、次のように置換されていることもできる。
環C もしくは環C の炭素および窒素環原子は(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニレン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチルおよび(C2−C7)アルキルオキシカルボニルから選択される2個までの置換基で置換されていてもよく、I-は負の対向イオンである。
の化合物を形成することを包含する、本発明の化合物を合成する方法を提供するものである。
還元される化合物が環C を含有することが好ましい。
【0021】
本発明は又、本発明の化合物を製造するために使用することのできる次式の化合物:


を提供するものである。本発明は又、次式の化合物と


次式の化合物


式中L4は求核置換解離基であり環Ci はフェニルと融合もしくは置換されていることができ環Cii の定義と同じ
を反応させる、上記化合物の製造方法をも提供するものである。
【0022】
本発明は又、次式


式中環Cix はフェニルと融合していてもよいし置換されていてもよく、環Cii で定義されたものと同様であり、環形成炭素間で形成される二重結合と共に破線で示された1もしくはそれ以上の結合においてモノもしくはジ不飽和であり、2個の二重結合が隣接することはない、
の本発明化合物を提供するものである。
【0023】
本発明は又、次式:


式中I-は負の対向イオンであり、R28*はR1で定義されたように置換基を有していてもよい(C1−C3)脂肪族基であり、環Cvii は融合フェニルであってもまた置換されていてもよく、環Cii で定義されたものと同様である、
で表わされる、本発明の化合物を合成するために使用することのできる化合物を提供するものである。本発明は又、次式の化合物と


次式の化合物


式中L5は求核置換解離基であり環Cvi はフェニルと融合もしくは置換されていることができ環Cii の定義と同じ
を反応させる、該化合物の製造方法を提供するものである。
【0024】
本発明は又、次式の化合物を提供するものであり、


この化合物は本発明の化合物を合成するために用いることができ、式中R28はR1と同様に置換されていることができる(C1−C3)脂肪族基であり、環Cviii はフェニルと融合していてもよくもしくは置換されていてもよく、環Cii の定義と同様である。本発明は又、次式の化合物を還元することを包含する、


環Cvii における二重結合を還元し、式中環Cvii はフェニルと融合していてももしくは置換されていてもよく、環Cii の定義と同様である、
上記化合物の合成法を提供するものである。
【0025】
本発明は又、次式の化合物:


を、次式の化合物


と反応させることからなる次式


の、本発明化合物を製造するために使用することのできる化合物の製造法を提供するものである。
【0026】
本発明は又、次式の化合物


をAr−Q
式中Arは電子回避基で置換されているアリールまたは電子回避基で置換されているヘテロアリールであり、式中Qはハライド(好ましくはフルオロもしくはクロロである)
と反応させて、次式


の化合物を形成することからなる、本発明化合物を合成する方法を提供するものである。
【0027】
本発明は又、次式の化合物


をRdNHSO2Ar
式中Arはアリールもしくはヘテロアリールである、
と反応させることからなる、本発明の化合物を合成するために使用することのできる式


の化合物の合成方法を提供するものである。好ましくは、この方法は式Xの化合物を次の化合物へと変換することを更に包含するものである:

【0028】
本発明は又、次式の化合物


を次式


式中L4は求核的置換解離基である、
と反応させることからなる、本発明の化合物を合成するために使用することのできる次式


の化合物の合成方法を提供するものである。
【0029】
本発明は又、次式の化合物


のケトンを還元することからなる、本発明の化合物を合成するために使用することのできる次式


の化合物の合成方法を提供するものである。
【0030】
本発明は又、次式の化合物:


この化合物は本発明の化合物を合成するために用いることができ、式中I-は負の対向イオンであり、式中R28は環への結合が二重結合でないことを除いてR1と同じであり、環Cx はフェニルと融合していてもよいし置換されていてもよく、環C の定義と同様である、
を提供するものである。本発明は又、次式の化合物


を次式の化合物


式中L5は求核的置換解離基であって、環Cxi はフェニルと融合していてもよくまた置換されていてもよく、Cii で定義したものと同様である、
と反応させることからなる、該化合物の合成方法を提供するものである。
【0031】
本発明は又、次式の化合物:


この化合物は本発明の化合物を合成するために用いることができ、式中R28は環への結合が二重結合でないことを除いてR1と同じであり、環Cxii はフェニルと融合していても、また置換されていてもよく、環Cii の定義と同様である、を提供するものである。本発明は又、次式


の化合物を還元して環Cx 中の二重結合を還元することを包含する該化合物の合成方法を提供するものである。
【0032】
定義
次の用語は以下に示す意味を有するものである:

・環の異項原子の計算
2つの環が結合して1個のバイサイクリック環系を形成している場合、その結合部の1箇所に位置する窒素は各構成環各々の異項原子と考える。

・賦形剤
賦形剤は、非経口、腸内(例えば経口もしくは吸入)もしくは局所投与に適した製薬学的に許容し得る有機もしくは無機担体物質で、これらは活性成分と有害に反応しないものである。好適な製薬学的に許容し得る担体としては水、食塩溶液、アルコール、アラビアゴム、ベンジルアルコール、ゼラチン、ラクトース、アミロースもしくはでん粉のような炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、ヒドロキシメチル、セルロース、ポリビニルピロリドンのようなものが挙げられるが、これらに限定されることはない。

・有効量
「有効量」の意味は臨床医には自明であろうが、次のような作用のため有効な量を指すものである:
(1)治療されるべき病気の症状の1もしくはそれ以上を軽減、改善もしくは除去すること、
(2)治療されるべき病気の症状の治療に対応して薬理学的な変化が導入されること、または
(3)病気の発症を抑えるか、頻度を少なくすること。

・神経細胞死抑制
本発明の化合物の投与がなければ起こっていたことが予測される量の細胞死が減少している場合、神経細胞死が「抑制」されているとする。

・オキソ置換
「置換基」としてオキソと言った場合、「=O」置換をいうものとする。
【0033】
本発明のさらに好ましい態様は以下の通りである。
1)次の式IおよびIIの内の一つで表される化合物またはそれらの薬学的に許容し得る塩、及び製剤学的に許容し得る賦形剤を含有する薬剤組成物。


式中
(1)Xは炭素であり;
(2)R2は(a)水素、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C2−C7)アルカノイルであり;
(b)(R1が−O−R8または−S−R8*でないとき)ヒドロキシ、フルオロ、クロロ、ブロモもしくは(C2−C7)アルカノイルオキシを含有し、
(2iii )Rx、Ryは各々独立してアリール、ヘテロアリール、アダマンチルまたは酸素、硫黄および窒素からなる群から選択される0ないし2個の異項原子を有する5ないし7員の非芳香族性環であり、式中
(a)アリールはフェニルもしくはナフチル
(b)ヘテロアリールは5員環、6員環、5員環に融合した6員環、6員環に融合した5員環、または6員環に融合した6員環を含有し、該ヘテロアリールは芳香族であり酸素、硫黄および窒素からなる群から選択される異項原子を含有し他の環の原子は炭素である、
(c)Rx、Ryの各々は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、アミドスルホニルからなる群から選択される置換基で追加的に置換されていてもよく、これらは2個までの独立的な(C1−C6)N−アルキル置換基、アダマンチル、(C1−C12)アルキル、(C1−C12)アルケニル、アミノ、(C1−C6)アルキルアミノ、ジアルキルアミノ基(以上各アルキルは独立してC1〜C6である)、(C1−C6)アルコキシ、(C2−C7)アルカノイル、(C2−C7)アルカノイルオキシ、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシカルボニル、(C2−C7)アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニルであり、これらはその水素が2個まで独立的に(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキルスルホニル、アミジノ基で置換されていることができ、これらは独立して3個までの(C1−C6)アルキルまたはアリールもしくはヘテロアリール環構造に隣接する位置に結合した2つの酸素と共にメチレンジオキシもしくはエチレンジオキシで置換されていてよく、このメチレンジオキシもしくはエチレンジオキシは2個までの独立した(C1−C6)アルキルで置換することができる、
(3)R1は単結合;直鎖の(C1−C3)脂肪族基;または−O−R8もしくは−S−R8*、このときR8もしくはR8*のいずれかは単結合、(C1−C3)アルキレンまたは(C2−C3)アルケニレンであり、OもしくはSはXに結合している;
式中R1は1個までのヒドロキシ、1個までの(C1−C6)アルコキシもしくは1個までの(C2−C7)アルカノイルオキシ、2個までの独立した(C1−C6)アルキル、1個までのオキソ、1個までの(C1−C6)アルキリデンで置換されていてもよく、ただし、このヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、オキソ置換基は窒素もしくは酸素に結合している炭素原子には結合していないものである、または(R1が−O−R8のとき)Xへのオキサ結合が1,3−ジオキソランを形成してもよい、
(4)環Dは3ないし8員環、3ないし6員のスピロ環で置換されている3ないし8員環、環Dの各構成環については酸素、硫黄もしくは図示された窒素を含めた窒素から選択された2個までの異項原子が存在し、残りは炭素原子であり、ただしこの環原子は4級窒素を含有せず、また飽和環においては環窒素原子は少なくとも2個の介在炭素原子によって他の環異項原子と分離されているものである;
ここで環Dの炭素および窒素環原子は(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニレン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C2−C7)アルキルオキシカルボニル、(C1−C6)アルキリデン、ヒドロキシル、(C1−C6)アルコキシ、オキソ、ヒドロキシカルボニル、RxおよびRyで定義されたアリールまたはRxおよびRyで定義されたヘテロアリールで置換されていることができ、ただしアルキリデン、ヒドロキシカルボニルもしくはオキソで置換された環原子は炭素であり、またヒドロキシルもしくはアルコキシで置換された環原子は少なくとも2個の介在炭素原子によって他の環異項原子と分離されているものである;および
1、R3およびGは少なくとも2個の原子がXと図示された環窒素とを分離しているようなものである;
(5)式中環Eは3ないし8員環、3ないし6員のスピロ環で置換されている3ないし8員環、または5ないし6員環と融合している3ないし8員環であり、図示された第3級窒素を欠く融合環は芳香族もしくは異項芳香族であることができ、環Eの各構成環については酸素、硫黄もしくは図示された窒素を含めた窒素から選択された2個までの異項原子が存在し、残りは炭素原子であり、ただしこの環原子は4級窒素を含有せず、また飽和環においては環窒素原子は少なくとも2個の介在炭素原子によって他の環異項原子と分離されているものである; ここで環Eの炭素および窒素環原子は(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニレン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C2−C7)アルキルオキシカルボニル、(C1−C6)アルキリデン、ヒドロキシル、(C1−C6)アルコキシ、オキソ、ヒドロキシカルボニル、(C1−C6)アルコキシカルボニル、RxおよびRyで定義されたアリールまたはRxおよびRyで定義されたヘテロアリールで置換されていることができ、ただしアルキリデン、ヒドロキシカルボニルもしくはオキソで置換された環原子は炭素であり、またヒドロキシルもしくはアルコキシで置換された環原子は少なくとも2個の介在炭素原子によって他の環異項原子と分離されているものである;および
式中G*およびR18はRxおよびRyに結合している炭素から図示されている環の窒素と少なくとも2原子分分離している;
(6)R19は(a)R1、R3もしくはGと二重結合を形成し、
(b)水素であり、
(c)(C1−C3)アルキルもしくはアルキレンであり、
または
(d)融合環中に導入されている;
(7)R4およびR4*は独立して水素もしくは(C1−C6)アルキル;および
(8)Rは(CO)OR15であり、式中R15は水素、(C3−C8)シクロアルキルを包含した(C1−C8)アルキルであり、式中R15の酸素に結合している炭素はそれ以上第2級分枝を持たず、(C2−C6)ヒドロキシアルキル、アルキルがC1−C6であるアリールアルキル、アルキルがC1−C6であるヘテロアリールアルキル、アリールもしくはヘテロアリールであり、
式中、
アリールはフェニルもしくはナフチルであり、
ヘテロアリールは5員環、6員環であり、このヘテロアリールは芳香族であり酸素、硫黄および窒素からなる群から選択される異項原子を含有し他の環の原子は炭素である;
式中、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルのアリールまたはヘテロアリールアルキルのヘテロアリールは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、アミドスルホニルからなる群から選択される置換基で追加的に置換されていてもよく、これらは2個までの独立的な(C1−C6)N−アルキル置換基、(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキルアミン、各アルキルが独立してC1〜C6であるジアルキルアミン、アミノ、(C1−C6)アルコキシ、(C2−C7)アルカノイル、(C2−C7)アルカノイルオキシ、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシカルボニル、(C2−C7)アルコキシカルボニル、2個まで独立的に(C1−C6)アルキルで置換できるアミノカルボニル、(C1−C6)アルキルスルホニル、3個までの(C1−C6)アルキルで置換できるアミジノ、アリールもしくはヘテロアリール環構造に隣接する位置に結合した2個の酸素を有するメチレンジオキシもしくはエチレンジオキシからなる群から選択される置換基で置換されていてよく、このメチレンジオキシもしくはエチレンジオキシは2個までの独立した(C1−C6)アルキルで置換することができる。
【0034】
2)式中、Rx、RyおよびR2の少なくとも一つはフルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、シアノ、(C3−C8)アルキルで置換されているものである1)記載の薬剤組成物。

3)式中、Rx、RyおよびR2の少なくとも一つが、フルオロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、シアノまたは(C3−C8)アルキルで置換されているものである2)記載の薬剤組成物。

4)式中、Rx、RyおよびR2の少なくとも一つのアリールもしくはヘテロアリールがフェニルである請求項1記載の薬剤組成物。

5)式中R5が(CO)OR15である1)記載の薬剤組成物。

6)式中R15が(C2−C6)アルキル、(C2−C4)ヒドロキシアルキル、フェニル、アルキルがC1−C3であるフェニルアルキルであり、式中フェニルもしくはフェニルアルキルのフェニルは置換されていてもよいものである5)記載の薬剤組成物。

7)式中R15が水素である5)記載の薬剤組成物。

8)式中R4が水素、メチルもしくはヒドロキシメチルであリ、R4*が水素である1)記載の薬剤組成物。

9)式中Rx、RyおよびR2の少なくとも一つがヘテロアリールであり、このヘテロアリールはジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チオリル、ジアジニル、トリアジニル、ベンゾアゾリル、ベンゾジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキソリル、ベンゾチオリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾジアジニル、ベンゾトリアジニル、ピリジル、チエニル、フラニル、ピロリル、インドリル、イソインドイルもしくはピリミジルを包含するものである1)記載の薬剤組成物。

10)式中R1が−O−R8もしくは−S−R8*である1)記載の薬剤組成物。
【0035】
11)式中Rx、RyおよびR2のアルキレンジオキシ置換基が次のものである1)記載の薬剤組成物:


式中アルキレンジオキシは2個までの独立した(C1−C3)アルキルで置換されていることができる。

12)環Dが式A′およびB′のものである1)記載の薬剤組成物。

式中Zは炭素もしくは窒素であり、式A′およびB′の各々は破線で表されている結合の2個までが2個の二重結合が隣り合わせていない限り二重結合であることができ、式A′およびB′の環は環Dにおけると同様の置換基を有することができる。

13)式中環Dもしくは環Eが3個までの置換基で置換されている1)記載の薬剤組成物。

14)式中R15のアリール、ヘテロアリール、アリールアルキルのアリールもしくはヘテロアリールアルキルのヘテロアリールが3個までの置換基で置換されている1)記載の薬剤組成物。

15)該化合物が光学的に純粋な鏡像異性体である1)記載の薬剤組成物。

16)1)記載の化合物が次のための有効量存在する1)から15)記載の薬剤組成物:
(1)精神分裂症の治療もしくは予防、
(2)痴呆症の治療もしくは予防の強化剤、
(3)てんかんの治療もしくは予防、
(4)痙直の治療もしくは予防、
(5)筋痙縮の治療もしくは予防、
(6)痛みの治療もしくは予防、
(7)卒中後の神経細胞死の予防、
(8)神経変性症に罹っている動物における神経細胞死の予防、
(9)情緒障害の治療もしくは予防、
(10)記憶もしくは学習の強化、または、
(11)学習障害の治療もしくは予防。
【0036】
17)
A)次の式の化合物を
1)

式中L1は求核置換解離基である
次の式の化合物と反応させるか、
2)



またはB)次の式の化合物を
1)

次の式の化合物と
2)

式中L2は求核置換解離基である。
反応させる1)記載の化合物の合成方法。

18)次式の化合物のいずれか一方を還元して

環Cii もしくは環Cixにおける二重結合を還元する、
式中R28は環への結合が二重結合でないことを除いてはR1と同様であり、環Cix は環形成炭素間で形成される二重結合と共に破線で示された1もしくはそれ以上の結合においてモノもしくはジ不飽和であり、2個の二重結合が隣接することはなく、環Cii もしくは環Cixは融合フェニルであってもよく、次のように置換されていることもできる:
環Cii もしくは環Cix の炭素および窒素環原子は(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニレン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチルおよび(C2−C7)アルキルオキシカルボニルから選択される2個までの置換基で置換されていてもよく、I-は負の対向イオンである、
1)記載の化合物の製造法。

19)還元される化合物が環Cii を含有する18)の化合物の製造方法。
【0037】
20)1)記載の化合物を製造するために使用することのできる次式の化合物:

式中I-は負の対向イオンであり、R28は環への結合が二重結合でないことを除いてR1と同じであり、環Cii は融合フェニルであってもよく、次のように置換されていることもできる。
環Cii の炭素および窒素環原子は(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニレン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチルおよび(C2−C7)アルキルオキシカルボニルから選択される2個までの置換基で置換されていてもよい。

21)次式の化合物と

次式の化合物

式中L4は求核置換解離基であり環Ci はフェニルと融合もしくは置換されていることができ環Cii の定義と同じ
を反応させる20)の化合物の製造方法。

22)次式の化合物

を次式

式中Lは求核的置換解離基であってRcは独立してRxの定義と同じであり、R27はR27が窒素、酸素または硫黄を含まないことを除いてR1の定義と同じである
と反応させることからなる、1)記載の化合物を合成するために使用することのできる次式

の化合物の合成方法。
【0038】
23)下記化合物(1),(2),(3),(4),(5),(6),(7),(8)または(9)を求核置換解離基Lを有するLCHCOORと反応させるものである化合物C5,C3,C4,C6,C10,C14,C15,C1またはC8の製造方法。

24)化合物C1,C8またはC14を水素化するものである化合物C2,C7またはC13の製造方法。

25)化合物C10,C2またはC1を加水分解するものである化合物C9,C11またはC12の製造方法。

【0039】
発明の詳細な説明
本発明の化合物は以下に示すいくつかの合成スキームの1つに従って一般には製造されるが、当業者によって認められている他のスキームも無論用いることができる。
反応1


反応2


反応1および反応2においてL1およびL2は十分に求核置換解離基で、ハライド殊にブロマイド、トシレート、ブロシレート(p−ブロモベンゼンスルホネート)等が挙げられる。この反応はカルボン酸カリウムのような塩基もしくはジイソプロピルエチルアミンのような3級アミンの存在下で行なわれるのが好ましい。この解離基がハライドであるとき、ヨードカリウムのようなヨード塩の存在下でこの反応は行なうことができる。好適な有機溶媒としては例えばメタノール、ジオキシサン、アセトニトリルもしくはジメチルホルムアルデヒドが挙げられる。この反応は好ましくは約15℃から40℃の温度で行なわれる。これ以上温度が高くなるのを回避することによって、ビスアルキル化によって生ずる4級アンモニウムの生成を避けることができる。
【0040】
反応3


反応4

【0041】
化合物Ii は更に還元されて例えば反応5によって次の化合物を製造する:


更に反応6を採用して環Cv を完全に還元することができる。上記の反応3〜6においてR1と環の間の結合は環の2、3、もしくは4位のいずれかで為されている。反応3のアルキル化においてL4はハライド、殊にブロマイドのような十分に求核性置換解離基である。上には示していないが、環Cは置換されていてもよい。好適な有機溶媒としては例えば原料物質を効率的に溶解しアルキル化試薬とは反応しないようなものが挙げられる。反応物によって、該溶媒としてベンゼン、アセトニトリル、テトラヒドロフランもしくはエタノールを挙げることができる。この反応は約20℃〜約100℃の温度範囲で行なわれるのが好ましい。
【0042】
反応4および5において、環Cは公知の幾つかの還元反応の一つによって還元されるが、この方法としては例えばボロハイドライドナトリウムのような金属ハイドライドとの反応が挙げられる。R.M.Acheson,G.Paglietti,J.Chem.Soc.,Perkin 、p.45,1976を参照されたい。上記のスキームは、Ii 、Iii およびIiii のような一部還元された種々の化合物の別個の生成法を記載しているが、これらの生成物の割合およびその単離が容易であるかどうかは使用される金属ハイドライドのタイプおよび使用される溶媒のようなファクターにより、各ケースによって変わってくる。反応6においては、環Cv は、例えば適当な水素化触媒の存在下での水素化のような、多くの公知の還元法の内の1方法により更に還元される。例えば、多くの場合水素化はアルコール溶媒中Pd/C触媒と接触させて行なうことができる。
反応7においては図に示されているようにRcおよびRdは各々独立にRxと同様に定義される。出発原料IIIは例えば反応15(反応1と類似している)の化学反応を用いて次のように合成することができる。
反応15


式中R1*は、窒素を含まないこと、上に図示されているカルボニルに結合した酸素は含まないこと、そして上に図示されているカルボニルに共役した二重結合を含まないことを除いてはR1と同様に定義され、L3はハライド殊にブロマイド、トシレート、ブロシレート(p−ブロモベンゼンスルホネート)等のような十分求核性置換解離基である。
反応7においては図に示されているように、還元的アルキル化を行なえる条件下でRd−NH2をIIIと反応させてIVを形成する。還元的アルキル化は、カーボン上のパラジウムのような触媒の存在下での水素との反応、触媒的水素化に不安定な基が存在するときのシアノボロハイドライドナトリウムとの反応、またはトリアセトキシボロハイドライドナトリウムとの反応を含むいくつかの公知の方法例えば、“Reductive Alkylation,”W.S.Emerson in Organic Reactions,Vol.4,John Wiley & Sons,1948,p.174 et seq.を参照されたい、によって行なうことができる。中間体のシッフ塩基がこの反応において形成されることが認められ、このシッフ塩基が還元されて結合を形成する。このシッフ塩基中間体は単離され、ついで別の反応で還元される。溶剤の選択は出発原料の溶解性、脱水反応によりシッフ塩基を形成するのにどの程度好ましいか、およびこの還元工程における溶媒の好適性のようなファクターによって変わってくる。シッフ塩基を還元するための触媒的水素化に用いる好適な溶媒としてはエタノールが挙げられる。シッフ塩基を還元するためのボロハイドライドを使用する方法に好適な溶媒としてはメタノールもしくはエタノールのようなアルコール性溶媒が挙げられる。ケースによっては還元されるシッフ塩基を形成する脱水反応を促進する反応の間、乾燥法を用いることができる。このような乾燥法は、共沸混合物として水を除けるように選択された条件下で還流する方法や、モレキュラーシーブや他の乾燥試薬を用いる方法がある。反応温度としては約20℃から使用溶媒の還流温度までの範囲が好ましいものとして挙げられる。
【0043】
また一方、IVは図に示されたように反応16により、Rd−NH2とXを反応1もしくは反応2に記載された条件下で反応させることにより合成することもできる。他の方法として、出発原料IIIi は次のように調製される。
反応17


反応18


これらの反応17および18は各々上記の反応3および6に記載された化学反応を用いる。化合物IIIi は図に示されているように反応7、8および12における IIIと置換することもできる。
反応8においては図に示されているようにReは独立してR1に定義されているものと同様である。反応8においては、IIIもしくはIIIiをアリールリチウムまたはアリールもしくはアリールアルキルグリニャー試薬のような有機金属試薬と反応させてVを形成するものであり、これについては例えばCary and Sundberg,Advanced Organic Chemistry,Part 2,Plenum,New York,1977,pp.170−180の5.1.2章やそこで言及されている文献中に記載されている。R5がエステルを含む場合は有機金属試薬がこのエステル基と反応する可能性があることを当業者であれば理解するであろう;目的生成物の収率があまりに低い場合には、溶媒、有機金属試薬もしくは置換エステルを変更することもできる。
反応9においては図に示されているように、Vは脱水に適した条件により二重結合を形成する。このような条件としては例えばH.Weiland,Ber.45:484 et seq.(1912)に記載されているようなものがあり、ここでは は酢酸無水物と共に還流する。この図の中では二重結合はR1*の隣接炭素原子と共に形成されている。この二重結合はRcおよびReがアリールもしくはヘテロアリールでR1*の隣接炭素が飽和で完全には置換されていないような方向で通常は形成されるが、Rc、ReおよびR1*の組成物によって他の方向も可能である。反応10では図に示されるように、炭素−炭素二重結合を還元するための種々の既知の方法のいずれかを用いて を還元するが、この還元法としては適当な触媒の存在下での水素化等が挙げられる。
【0044】
反応11では図に示されているように、Vは例えば4−ジメチルアミノピリジンのようなアシル化触媒の存在下、無水酢酸でアシル化する。
反応12では図に示されているように、IIIもしくはIIIiのケトン基を、例えばリチウムトリ−tert−ブトキシアルミノハイドライドとの反応のような公知のケトンの選択的還元法等多くの既知の方法の内の一つを選んで還元する。反応13については、図に示されているようにIXのヒドロキシルを解離基L6で置換するが、この解離基が例えばクロロもしくはブロモの場合には、例えばIXとチオニルクロリドもしくはチオニルブロミドと反応させる。反応14については図に示されているようにRfは独立してRxの定義を満たすものである。XはK2CO3もしくはソジウムハイドライドのような塩基の存在下RfOHと反応させる。さもなければ、XIのチオ含有類似体はXとRfSHと反応させることにより合成することできる。
反応19においては は、例えばMitzunobu反応の条件下RdNHSO2Arと反応させてXIIを得、次いでJ.R.Henry et al.,Tetrahedron Letters 30:5709−5712,1989に記載されているのと同様の反応20によりIVに変換させる。
【0045】
多数の他のよく知られている合成法が適用できる。例えば対応エステルの加水分解により酸を形成することができる。アミン誘導体は1級、2級もしくは3級アミンのアルキル化により形成することができる。多数の二重結合含有化合物は水素化により対応する単結合を形成することができる。
本発明の化合物はまた、上記で概要を述べた古典的化合物溶液を固相合成技術に適用することにより調製することもできる。例えばR13、R15、R16、R17およびR20は機能性樹脂を表わす水素以外の残基または機能性樹脂に結合した好適に選択されたリンカーであることができる。リンカーおよびR5で表わされる官能基は上述の反応で使用される条件下で安定でなければいけない。R13、R15、R16、R17およびR20が水素である本発明の化合物は次いで樹脂もしくはリンカーから切り離され、完全な形の分子の残部を残すのである。例えばロボット合成機を用いたペプチド[オリゴ(N−置換グリシン)]の固相合成がZuckermann et al.,J.Am.Chem.Soc.114,0646−10647(1992) and Spellmeyer et al.,WO 95/04072によって記載されている。同様の条件下で、Rinkアミドポリスチレン樹脂をブロム酢酸を用いN,N′−ジイソプロピルカルボジイミドの存在下アシル化反応させ、次いでこのブロミンを反応1および反応2のアミン成分を用いて分離し、この分離によりN−置換グリシンアミド(R13およびR14は水素)を提供することができる。
【0046】
いくつかの場合には、上記の化学反応は改変しなければならない。例えば保護基を用いて、置換基として異項環に導入されたり結合された反応性基による副反応を回避する。ここで記載された反応、エステルの加水分解アミンのアルキル化もしくは水素化反応を用いて次のような本発明の化合物が合成される。


【0047】
ここに記載されている化合物の多数の塩形態が本発明において使用又は本発明化合物の合成の途中に利用し得るし、好適である。一つの異性体が他のものより活性であるときには立体異性体が使用できる場合もある。このような場合、特定の異性体を単離することが好ましい。本発明はもちろん特定の立体異性体およびラセミ混合物のいずれも用いることができる。ここに記載されているように、たとえば市販の光学的に純粋な出発原料〔もしくは鏡像異性体選択(enantioselective)反応を用いて作られた〕を用いて始める化学的方法も、光学的に純粋なタイプの本発明の化合物を合成するために用いることができる。このような光学的に純粋な化合物も本発明の範囲内にあるものである。鏡像異性体過剰率(Enantiometric excess(ee))は結晶化もしくはキラール支持体上のクロマトグラフィーのような精製技術によって増強することができる。鏡像異性体過剰率はNMR、光旋光および適当なクロマトグラフィーを含む多くの分析技術により測定することができる。
【0048】
更に追加的な関連した化合物が、本件の親出願と同時に出願された米国特許出願中に記載されており、この特許出願としては米国特許出願第08/656,063号(Docket No.317743−103,Ognyanov et al.)、米国特許出願第08/655,912号(Docket No.317743−106,Ognyanov et al.)、米国特許出願第08/807,754号(神経症および神経心理学的傷害の治療のための薬剤、Docket No.317743−103A,Ognyanov et al.)および米国特許出願第08/807,682号(神経症および神経心理学的傷害の治療のための薬剤、Docket No.317743−106A,Ognyanov et al.)である。また本発明の親出願たる米国特許出願第08/655,847号(Docket No.317743−107,Ognyanov et al.)および米国特許出願第08/807,681号(Docket No.317743−107A,Ognyanov et al.)も参考のために記載する。
【0049】
本発明の化合物の成分の或る種の組合せは他のものに比べ安定性に欠けることに留意すべきである。たとえば環Dもしくは環Eが十分に飽和であるとき、安定性を保つために環構成異項原子のいずれの2つも通常少なくとも2個の環構成炭素原子で分離されているべきである。薬剤として有用なほどに十分な安定性を有する化合物は有用性の大きいものである。
好ましい実施態様では、環Dもしくは環Eは多くても1個のアリールもしくはヘテロアリールで置換されている。
グリシン運搬体遺伝子および各々の遺伝子生成物は、シナプス接続部からシナプス前部神経末端もしくはグリア細胞へのグリシンの再引上げを担っており、それによってグリシンの作用を終わらせているのである。不適当に調節されたグリシン受容体に付随している神経傷害もしくは症状、あるいはグリシン受容体活性を調節する治療剤で治療できるような傷害もしくは症状としては痙攣(Becker,FASEB Journal,2767−2774(1990))および痛感認識(Yaksh,Pain37,111−123(1989))のようなものがある。更にグリシンはN−メチル−D−アスパラギン酸エステル(NMDA)受容体において相互作用し、このものは学習および記憶障害および転換、アルツハイマー病およびその他の同族の病気および精神分裂病のようなある種の臨床症状に関係してきたのである。Rison and Stanton,Neurosci.Biobehav.Rev.19,533−552(1995);Danysz et al.,Behavioral Pharmacol.,6,455−474(1995)を参照されたい。
【0050】
Gly T−1に媒介されるグリシン運搬を抑制する化合物は他の領域の中で前頭部に位置するNMDA受容体におけるグリシン濃度を増大させる。この濃度上昇はNMDA受容体の活性を上昇させ、それによって精神分裂症を緩和し、認識機能を強めるのである。一方、NMDA受容体のグリシン受容体成分と直接作用する化合物は、Gly T−1活性の抑制もしくは増強によって生ずる細胞外グリシンの利用の増強もしくは減少すると同一もしくは同様の効果を有することができる。例えば、Pitkanen et al.,Eur.J.Pharmacol.253,125−129(1994);Thiels et al.,Neuroscience46,501−509(1992);およびKretschmer and Schmidt,J.Neurosci.16,1561−1569(1996)を参照されたい。Gly T−2に媒介されるグリシン運搬を抑制する化合物は主に脳幹および脊髄索に位置する受容体におけるグリシン濃度を増大せしめ、グリシンはその位置でシナプス伝達の抑制剤として作用するのである。これらの化合物はてんかん、痛みおよび痙攣、筋痙攣および他のそのような症状に有効である。例えば、Becker,FASEB J.,2767−2774(1990)およびYaksh,Pain37,111−123(1989)を参照されたい。
【0051】
本発明の化合物は例えば経口で、舌下に、直腸に、経鼻に、膣内に、局所的に(パッチもしくは他の経皮輸送器を含めて)、エアロゾルを使用した経肺で、または例えば筋肉内、皮下、腹腔内、心房内、静脈内もしくはくも膜下といった非経口投与によって投与される。投与は周期的もしくは連続的輸送のためのポンプを使って行なうことができる。本発明の化合物は単独で投与してもよいし、製薬学的に許容し得る担体もしくは標準製剤プラスチックによる賦形剤と共に投与することもできる。投与が経口で行なわれる場合、本発明の化合物は錠剤、カプセル、ロゼンジ、チューイングガム、トローチ、粉末剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性溶液および水性懸濁液等の形で使用される。錠剤の場合には使用される担体はラクトース、クエン酸ナトリウムおよびリン酸塩を包含する。でんぷんのような種々の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクのような潤滑剤が錠剤には普通使用される。カプセル形での経口投与のための有用な希釈剤はラクトースおよび高分子量ポリエチレングリコールである。所望であれば、ある程度の甘味剤及び/又は香味剤を添加する。非経口投与については本発明の化合物の滅菌溶液を通常調製し、これらの溶液のpHを好適なものに調整し、緩衝液とする。静脈内用については、溶質の総濃度を調整して生成物をアイソトニックなものとする。眼への投与用については、塗布器もしくは点眼瓶のようなよく知られている眼薬用輸送システムにより輸送できる軟膏剤や滴下し得る液体を加えることができる。このような生成物はヒアルロン酸、硫酸コンドロイチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはポリビニルアルコールのような粘稠化剤、ソルビン剤、EDTAもしくはベンジルクロミウムクロライドのような防腐剤および通常の量の希釈剤及び/又は担体を含有することができる。肺への投与については希釈剤および/又は担体をエアロゾールが生成できるように適当なものと選択する。
【0052】
本発明の化合物の坐剤形態は、膣用、尿道用及び直腸用に有用である。このような坐剤は一般に室温で固体であるが体温では融ける物質の混合物から成っている。この物質は普通このような賦形剤をつくるために用いられるが、テオブロミン油、グリセリン化ゼラチン、水素化野菜油、種々の分子量のポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールの脂肪酸エステルの混合物のようなものが挙げられる。坐剤投与形態について、更に検討を要する場合はRemington’s Pharmaceutical Sciences,16th Ed.,Mack Publishing,Easton,PA,1980,pp.1530−1533を参照されたい。ゲルやクリームの類似体が膣用、尿道用および直腸投与用に用いることができる。
多くの投与のための賦形剤が当業者にとって自明であり、緩放出剤、リポソーム製剤およびポリマー基質等があるが、これらに限定されることはない。
【0053】
本発明において使用される製薬学的に許容し得る酸付加塩の例としては塩化水素酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸のような鉱酸、および酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、p−トルエンスルホン酸およびアリールスルホン酸のような有機酸から誘導されるものを挙げることができる。本発明で使用される製薬学的に許容し得る塩基付加塩のナトリウムもしくはカルシウムのような非毒性金属からのもの、アンモニウム塩およびトリエチルアミン塩のような有機アミノ塩を挙げることができる。多くのこのような好適な塩が当業者には自明であろう。
医者や健康管理者は患者の体重、年齢および体調に応じて好適な剤、投与量および処置を選択できる。投与量は、本発明の化合物の血清における濃度を保持するように約0.01μg/ccから約1000μg/ccの間、特に約0.1μg/ccから約100μg/ccの間で選択できる。非経口投与については、好ましくは約0.01mg/kgから約10mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kgから約1mg/kgの量が選ばれる。経口投与の場合、約0.1mg/kgから約10mg/kgの量が、より好ましくは約0.1mg/kgから約1mg/kgの量が投与される。坐剤の場合には好ましくは約0.1mg/kgから約10mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kgから約1mg/kgの量が選ばれる。
グリシン輸送の抑制活性の測定のために、真核細胞、好ましくはウズラ線維芽細胞由来のQT−6細胞に形質移入してヒトGly−T 1の3種の公知の変性体、即ちGly−T 1a、Gly−T 1bもしくはGly−T 1cの内の1種またはヒトGly−T 2を発現させる。これらGly−T 1運搬体の配列はKim et al.,Molec.Pharm.45:608−617,1994に記載されているが、Gly−T 1aの極N末端をコードする配列は対応のラット由来配列から単に推測して記載されている。このN末端蛋白質をコードする配列はKim等によって推測されたものに相当しているが現在は確認されている。ヒトGly−T 2の配列は1996年8月20日に出願されたAlbcrt等の米国特許出願第08/700,013号に記載されている。好適な発現ベクターとしてはpRc/CMV(lnvitrogen),Zap ExpressVector(Stratagene Cloning Systems,LaJolla,CA;以下“Stratagene”と記載),pBk/CMVもしくはpBk−RSV vectors(Stratagene),Bluescript II SK +/− Phagemid Vectors(Stratagene),LacSwitch(Stratagene),pMAMおよびpMAM neo(Clontech)等がある。
【0054】
好適な発現ベクターは、好適な宿主細胞、好ましくは真核細胞でも、真菌でも原核細胞でもようが非哺乳動物宿主中で含有されているGly−T DNAの発現を促進できる。好ましい宿主細胞として、両生類、鳥類、真菌、昆虫および爬虫類の細胞が挙げられる。
上記のように本発明の化合物は多数の薬理学的作用を有している。該化合物の比較性は次のような方法を含む多数の方法で評価することができる:
・Gly−T 1およびGly−T 2運搬体により媒介される活性の比較。この試験は化合物を(a)Gly−T 1運搬体に比べより活性で精神分裂症の治療もしくは予防、認識の増進および記憶の強化に有用であるもの、または(b)Gly−T 2運搬体に比べより活性で痙攣、痛み、痙直もしくは筋痙攣の治療もしくは予防に有用であるものとして確定する。
・NMDA受容体結合のための試験。この試験はこの部位に十分な結合があるかどうか、アンタゴニスト活性かアゴニスト活性かを確定し、このような結合の薬剤学的効果の更なる試験へと進めるものである。
・原発性神経組織培養物中のカルシウム線密度(flus)の強化もしくは消滅における化合物の活性を試験。カルシウム線密度を増強すると試験化合物が(a)NMDA受容体においてアンタゴニスト活性を全くもしくは少ししか持たず、Gly−T 1運搬体抑制を用いてのグリシン活性の増強には影響を与えないか、または(b)比較のために用いられたGly−T 1抑制剤に対し顕著な増強が見られ、NMDA受容体との直接の相互作用がわずかしかないような場合にはこの化合物は受容体アゴニストである。上記のケースのいずれかである場合、この試験は精神分裂症の治療もしくは予防、認識の増強もしくは記憶の増強における活性を確認するものである。これと逆に、カルシウム線密度を減少させる試験化合物は、受容体アンタゴニスト活性が本化合物のもつどのような活性にも勝るような場合に、グリシン輸送を抑制することによるグリシン活性の増加に正味の効果を有するのである。このような場合、この試験は細胞損傷および卒中やその他の虚血性導入状況後に生じる細胞死を制限もしくは抑制したり、また神経変質症に付随する細胞損傷を制限もしくは抑制する活性を確定するものである。
ここに記載されている動物ための治療もしくは予防法は哺乳動物、特にヒトに適用するのが好ましい。
【発明の効果】
【0055】
本発明では、好ましくは本発明の化合物および製剤学的に許容し得る賦形剤を含有する薬剤組成物を提供する。好ましくは、本発明の化合物が次のための有効量存在する薬剤組成物である:
(1)精神分裂症の治療もしくは予防、(2)痴呆症の治療もしくは予防強化剤、(3)てんかんの治療もしくは予防、(4)痙直の治療もしくは予防、(5)筋痙縮の治療もしくは予防、(6)痛みの治療もしくは予防、(7)卒中後の神経細胞死の予防、(8)神経変性症に罹っている動物における神経細胞死の予防、(9)うつ病のような情緒障害の治療もしくは予防、(10)記憶もしくは学習の強化、または、(11)学習障害の治療もしくは予防。
本発明では更に以下のような治療、予防もしくは強化のために有効な量の本発明化合物を投与する方法を提供するものである:
(1)精神分裂症の治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する精神分裂症の治療もしくは予防法、(2)痴呆症の治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する痴呆症の治療もしくは予防法、(3)てんかんの治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与するてんかんの治療もしくは予防法、(4)痙直の治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する痙直の治療もしくは予防法、(5)筋痙縮の治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する筋痙縮の治療もしくは予防法、(6)痛みの治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する痛みの治療もしくは予防法、(7)卒中後の神経細胞死の予防に有効な量の本発明化合物を投与する卒中後の神経細胞死の予防法、(8)神経変性症に罹っている動物における神経細胞死の予防に有効な量の本発明化合物を投与する神経変性症に罹っている動物における神経細胞死の予防法、(9)うつ病のような情緒障害の治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する情緒障害の治療もしくは予防法、(10)記憶もしくは学習の強化に有効な量の本発明化合物を投与する記憶もしくは学習の強化法、または、(11)学習障害の治療もしくは予防に有効な量の本発明化合物を投与する学習障害の治療もしくは予防法。
好ましい態様としては、治療もしくは予防されるべき痙直はてんかん、卒中、脳外傷、多発性硬化症、脊髄索損傷、ジストニーと付随して生じている場合である。また好ましくは、治療もしくは予防されるべき神経変質症が、アルツハイマー病、多発梗塞性痴呆、AIDS症候群、ハンチングトンス氏病、筋萎縮性側索硬化症や神経細胞死が生じる卒中もしくは脳外傷のような場合である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の化合物の合成にあたって採用することのできるいくつかの反応を示しているものである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下に示す実施例は本発明を更に説明するものであるが、本発明を限定するものでないことは勿論である。
【実施例1】
【0058】
3−ビス(4−フルオロフェニル)メトキシピペリジン−1−イル酢酸エチルエステル(化合物C5
3−ビス(4−フルオロフェニル)メトキシピペリジン0.170g(0.5mmol)〔これは3−ジフェニルメトキシピペリジン合成のためにイー.ファルク,ピ.クログスガード−ラーセン(E.Falch,P.Krogsgaard−Lersen)のEur.J.Med.Chem.1991,26,69−78に記載された合成スキムを用いて3−ヒドロキシピペリジンヒドロクロライド(アルドリッヒ)から三段階で調製された〕、エチルブロモ酢酸(アルドリッヒ)0.092g(0.55mmol)及び炭酸カリウム0.276g(2mmol)のアセトニトリル1ml中の混合物をアルゴン雰囲気中で20時間かき混ぜた。反応混合物を濾過し、溶媒を蒸発させ、残渣を30%酢酸エチル含有ヘキサンを用い、薄層液体クロマトグラフ
(TLC)で精製し、油状の3−ビス(4−フルオロフェニル)メトキシピペリジン−1−イル酢酸エチルエステル(化合物C5)0.150g(収率77%)を得た。生成物のNMRスペクトルは以下の通りであった。
1H NMR(CDCl3,300 MHz)δ7.60−7.35(m,4H),5.72(s,1H),4.38(q,2H),3.90−3.65(m,1H),3.42(br.s,2H),3.25(d,1H),2.97(d,1H),2.42(dt,2H),2.17(d,1H),2.00−1.80(m,1H),1.70(dt,1H),1.60−1.50(m,1H),1.46(t,3H);13C NMR(CDCl3,75 MHz)δ 170.16,163.52,160.27,138.14,138.11,128.50,128.40,115.13,114.85,79.30,72.45,60.27,59.31,57.83,52.80,30.06,23.12,14.01。
【実施例2】
【0059】
反応1及び反応2による付加的な合成
反応1及び反応2を用いて次のような化合物が合成された。

化合物 反応 アミン 試薬 溶媒 収率
C3 1 2 A X 38%
C4 2 1 A X 58%
C6 2 3 A X 86%
C10 1 4 A X 89%
C14 2 5 B X 65%
C15 1 6 A X 67%
アミン:1)4,4−ジフェニルピペリジン(J.M.Wetzel et al.,J.Med.Chem.,38:1579−1581,1995);2)d,d−ジフェニル−4−ピペリジノメタノール(Acros,Pittsburgh,PA);3)2,2−ジフェニル−4A,5,6,7,8,8A−ヘキサヒドロ−4H−1,3−ジオキシノ〔5,4−b〕ピリジン(Sigma−Aldrich Library of Rare chemicals);4)ペルヘキシンマレイン酸[2−(2,2−ジシクロヘキシルエチル)ピペリジン](Sigma,St.Louis);5)3,3−ジフェニル−2−エチルピロリジン[3,3−ジフェニル−2−エチル−1−ピロリドン(Sigma−Aldrich Library of Rare chemicals)のナトリウムボロハイドライドの還元により調製された];6)2,2−ジフェニル−1,3−ジオキソラン−4−イルピペリジンヒドロクロライド(Sigma−Aldrich Library of Rare chemicals)。
試薬:A)エチルブロモ酢酸エステル(Aldrich);B)ベンジル2−ブロモ酢酸エステル(Aldrich)。
溶媒:X)アセトニトリル。
【実施例3】
【0060】
3−ジフェニルメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−1−イル酢酸エチルエステル(化合物C1)の合成
段階1:3−ジフェニルメチルピリジン(Sigma−Aldrich Library of Rare chemicals)0.490g(2mmol)及びエチルブロモ酢酸エステル(Aldrich)0.334g(4mmol)のアセトニトリル2ml中の混合物を還流化1時間加熱した。溶媒を蒸発し、残渣をジエチルエーテル中に懸濁し、濾過し、黄色粉末状の1−エトキシカルボニルメチル−3−ジフェニルメチルピリジニウムブロマイド0.8gを得た。
1H NMR(CD3OD,300 MHz)δ8.87(d,1H),8.77(s,1H),8.42(d,1H),8.10(dd,1H),7.50−7.10(m,10H),5.96(s,1H),5.55(s,2H),4.28(q,2H),1.29(t,3H)。
段階2:1−エトキシカルボニルメチル−3−ジフェニルメチルピリジニウムブロマイド(段階1からのもの)0.206g(0.5mmol)の氷冷却された溶液にナトリウムボロハイドライド0.034g(0.92mmol)を少しずつ撹拌しながら1時間以上で加えた。溶媒を蒸発し、残渣をジエチルエーテルに溶解し、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を蒸発した後、残渣を、30%エチル酢酸エステル含有ヘキサンを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフを行ない、薄黄色油状の3−ジフェニルメチル−1,2,3,6,−テトラヒドロピリジン−1−イル酢酸エチルエステル(化合物C1)0.107g(64%)を得た。NMRスペクトルは以下の通りであった。1H NMR(CDCl3,300 MHz)δ7.40−7.10(m,10H),5.22(br.s,1H),4.61(s,1H),4.12(q,2H),3.25(s,2H),3.03(s,2H),2.68(t,2H),2.22(br.s,2H),1.19(t,3H);13C NMR(CDCl3,75 MHz)δ 170.24,141.86,137.89,129.11,128.10,126.19,123.24,60.31,58.79,56.24,55.13,49.51,25.64,14.05.
El−MS:335(10,M+,C2225NO2),262(50)。
【実施例4】
【0061】
付加的合成
化合物C8を、実施例3の製造方法を用いて、4−ジフェニルメチルピリジンの相当する第4級塩のナトリウムボロハイドライド還元により29%収率で調製した。
【実施例5】
【0062】
化合物C1の水素化による3−ジフェニルメチルピペリジン−1−イル酢酸エチルエステル(化合物C2)の調製
3−ジフェニルメチル−1,2,3,6,−テトラヒドロピリジン−1−イル酢酸エチルエステル(化合物C1)0.041g(0.122mmol)を室温で40psi、6時間、4mlのエタノール中10%Pd/C 0.040gを用いて水素化した。混合物をセライトを通して触媒から分離し、溶媒を蒸発し、油状の3−ジフェニルメチルピリジン−1−イル酢酸エチルエステル(化合物C2)0.038g(収率93%)を得た。生成物のNMRスペクトルは以下の通りであった。
1H NMR(CDCl3,300 MHz)δ7.40−7.10(m,10H),4.11(q,2H),3.52(d,1H),3.10(s,2H),2.87(d,1H),2.72(d,1H),2.65−2.40(m,1H),2.20−2.00(m,1H),1.87(t,1H),1.70−1.50(m,3H),1.17(t,3H),1.00−0.8(m,1H);13C NMR(CDCl3,75 MHz)δ 168.89,142.11,141.81,126.92,126.90,126.36,126.28,124.58,124.50,58.78,58.47,57.29,55.34,52.05,37.97,27.86,23.58,12.57.
El−MS:337(5,M+,C2227NO2),264(70)。
【実施例6】
【0063】
実施例6A 付加的合成
化合物C7を実施例5の製造方法を用いて、化合物C8の水素化により調製した。

実施例6B 実施例6Aの操作を用いる付加的合成
化合物C13を、化合物C14(実施例6Aの製造方法を用いて調製された)を水素化し、ついでHClで酸性化して調製した。

実施例6C 2−(2,2−ジシクロヘキシルエチル)ピペリジン−1−イル酢酸塩酸塩(化合物C9)の合成
2−(2,2−ジシクロヘキシルエチル)ピペリジン−1−イル酢酸エチルエステル(化合物C10)0.413g(1.136mmol)のメタノール溶液4mlに1N水酸化ナトリウム8mlを加え、混合物を1時間還流して加熱した。反応混合物を半分の容量まで濃縮し、4N塩酸水溶液で酸性化し、メチレンクロライドで4回抽出した。一緒にされた抽出物を乾燥し、蒸発して、2−(2,2−ジクロヘキシルエチル)ピペリジン−1−イル)酢酸塩酸塩(化合物C9)0.400g(収率95%)を得た。

実施例6D 実施例6Cの操作を用いる付加的合成
化合物C11を化合物C2の加水分解により調製し、HClで酸性化した。
化合物C12を化合物C1の加水分解により調製し、HClで酸性化した。
【実施例7】
【0064】
Gly T−1及びGly T−2を発現する細胞の調製
この実施例はQT−6細胞の増殖及び形質移入のために用いられる方法及び物質を明らかにする。
QT−6細胞はAmerican Type Culture(Accession No.ATCC(RL=1708))から入手した。 QT−6の増殖用完全QT−6培地は10%燐酸トリプトース、5%牛胎児血清(Sigma);1%ペニシリン−ストレプトマイシン(Sigma)及び1%無菌ジメチルスルホキシド(DMSO;Sigma)となるように添加された培地199(Sigma Chemical Company,St.Louis,MO;以下“Sigma”)である。QT−6細胞の増殖及び形質移入するために必要な溶液は次のものを含有した:
DNA/DEAE混合物:TBS450μl、DEAEデキストラン(Sigma)450μl及びTE中のDNA(4μg)100μl、該DNAは好適な発現ベクター中にGly T−1a、Gly T−1b、Gly T−1c又はGly T−2を含有している。使用されたDNAは以下に定義されるものであった。
PBS:0.2μのフィルターを通して滅菌された1mM CaCl2及び1mM MgCl2を含有する標準燐酸塩緩衝食塩水溶液。
TBS:フィルター滅菌され、4℃で保存された、溶液B 1ml、溶液A 10mlを蒸留水で100mlとした溶液。
TE:pH8.0の0.01Mトリス、0.001M EDTA。
DEAEデキストラン:Sigma、#D−9885、貯蔵液はTBS中にDEAE0.1%(1mg/ml)からなるように調製された。該貯蔵液はフィルター滅菌され、1ml標本として凍結された。
クロロキン:Sigma、#C−6628、貯蔵液は水中にクロロキン100mMからなるように調製された。該貯蔵液はフィルター滅菌され、0.5ml標本中に貯蔵され、凍結された。
溶液A(10X)
NaCl 8.00g
KCl 0.38g
トリス塩基 3.00g
Na2HPO4 0.20g
該溶液はHClでpH7.5に調節され、蒸留水で100.0mlとされ、フィルター滅菌され、そして室温で貯蔵された。
溶液B(100X)
CaCl2・2H2O 1.5g
MgCl2・6H2O 1.0g
該溶液は蒸留水で100.0mlとされ、フィルター滅菌された;ついで該溶液は室温で貯蔵された。
HBSS:150mM NaCl、20mM HEPES、1mM CaCl2、10mM グルコース、5mM KCl、1mM MgCl2・H2Oを含有し、NaOHでpH7.4に調節されたもの。
【0065】
用いられた標準増殖及び継代操作は次の通りであった。細胞は225mlフラスコ中で増殖された。継代のために、細胞は温HBSSで3回洗浄された(5mlで各々洗浄)。0.05%トリプシン/EDTA 2ml溶液を加え、該培養物は渦巻き撹拌され、ついで該トリプシン/EDTA溶液は急激に吸引された。該培養液はついで2分間(細胞が離昇するまで)インキュベートされ、ついでQT−6培地10mlが加えられ、そして、該培養液はフラスコを渦巻き撹拌し、その底を軽くたたいてさらに移動させる。該細胞を取り出し、15mlの円錐チューブに移し、10分間1000×gで遠心分離し、QT−6培地10ml中に懸濁した。試料を計測のため除去し、該細胞液をQT−6培地を用いて1×105セル/mlの濃度に希釈し、継代細胞の225mlフラスコ当りに65mlの培養液を加えた。
【0066】
形質移入は次のようにして行なわれた。
用いられたラットGly T−2(γGly T−2)クローンは、Lie et al.,J.Biol.Chem.268,22802−22808(1993)に記載されているように、EcoRl−HindIIIフラグメントとしてpBluescriptSK+(stratagen)中にクローンされたGly T−2の全配列を含む。ついでGly T−2は次のように、pRc/RSVベクター中にサブクローンされる;該γGly T−2配列のヌクレオチド208から702に相当するPCRフラグメントは、5′プライマーとしてのオリゴヌクレオチド:5′GGGGGAAGCTTATGGATTGCAGTGCTCC3′及び3′プライマーとしてのオリゴヌクレオチド:5′GGGGGGGTACCCAACACCACTGTGCTCTG3′を用いてPCRによって増幅された。これによって翻訳開始部位の直ぐ上流にHindIII部位を創った。3′末端にKpn1部位を含有する該フラグメント、およびGly T−2のコードする配列の残部を含有するKpn1−Pvu フラグメントは、3つの部位を連結して、HindIII及びSma1を用いて予め切断したpBluescriptSK+中にクローン化された。このクローンから得られたHindIII−Xba1フラグメントを次いでpRc/RSVベクター中にサブクローン化した。この結果得られた構造はγGly T−2核酸の208から2720のヌクレオチドをpRc/RSV発現ベクター中に含有するものであった。
【0067】
用いられたヒトGly T−1a(hGly T−1a)クローンは、Kim et al.,Mol.Pharmacol.45,608−617,1994に記載されたHind −XbalフラグメントとしてpRc/CMVベクター(Invitrogen,San Diego,CA)中にクローン化されたヌクレオチド183から2108位のhGly T−1aの配列を含有する。このGly T−1aをコードするcDNAはラットからのGly T−1a配列の最初の17ヌクレオチド(最初の6アミノ酸に相当する)を含有した。ヒトGly T−1aの配列がこの領域で相違するかどうかを決定するために、ヌクレオチド1から212までのhGly T−1aの5′の領域をGibco BRL(Gaitherberg, MD) から供給された5′RACEシステムを用いるcDNA末端の急速な増幅により得た。遺伝子特定プライマー:hGly T−1a配列のヌクレオチド558から539に相当する5′CCACATTGTAGTAGATGCCG3′はヒトの脳mRNAからのcDNA合成を活性化するために用いられた。遺伝子特定プライマー:hGly T−1a配列のヌクレオチド454から431に相当する5′GCAAACTGGCCGAAGGAGAGCTCC3′がPCR増幅用に用いられた。Gly T−1aの5′領域の配列決定によりコードする配列の17ヌクレオチドがヒト及びラットGly T−1aとにおいて同一であることが確認された。
【0068】
用いられたヒトGly T−1b(hGly T−1b)クローンは、Kim et al.,Mol.Pharmacol.45,608−617,1994に記載のように、Hind −XbalフラグメントとしてpRc/CMVベクター中でクローン化されたヌクレオチド部位213から2274からのhGly T−1bの配列を含有する。
用いられたヒトGly T−1c(hGly T−1c)は、Kim et al.,Mol.Pharmacol.45,608−617,1994に記載されているHindIII−XbalフラグメントとしてpRc/CMVベクター(Invitrogen)中にクローンされたヌクレオチド部位213から2336からのhGly T−1cの配列を含有する。HindIII−XbaフラグメントはついでpRc/RSVベクター中にサブクローンされた。形質移入実験はpRc/RSV及びpRc/CMV発現ベクターの両者中でGly T−1cを用いて行なわれた。
【0069】
形質移入のため次の4日間方式の操作が用いられた。
第1日目、QT−6細胞を、100mmの皿に入れられた完全QT−6培地10ml中に1×106細胞の密度で加えた(plate) された。 第2日目、該培地を吸引し、該細胞をPBS 10ml、ついでTBS 10mlで洗浄した。該TBSを吸引し、ついでDEAE/DNA混合物の1mlを該プレートに加えた。該プレートをフード中で5分毎に渦巻き撹拌した。30分後、80μMクロロキン8mlをQT−6培地中に加え、該培養物を37℃、5%CO2中で2.5時間インキュベートした。ついで該培地を吸引し、該細胞を完全QT−6培地を用いて2回洗浄し、ついで完全QT−6培地100mlを加え、該細胞をインキュベーターにもどした。
第3日目、該細胞を上記したようにしてトリプシン/EDTAと共に除去し、ほぼ2×105細胞/ウェルで96−ウェルアッセイプレートのウェル中に加えた。
第4日目、グリシン運搬は実施例8に記載のようにしてアッセイされた。
【実施例8】
【0070】
Gly T−1又はGly T−2運搬体を経由する運搬アッセイ
この実施例は形質移入された培養細胞により取り込まれたグリシンの測定方法を説明する。
実施例7により増殖された一過性Gly T−形質移入された細胞をHEPES緩衝食塩水(HBS)で3回洗浄した。ついで該細胞を37℃で10分間インキュベートし、その後、50mM[3H]グリシン(17.5Ci/mmol)及び(a)潜在的に競合体のないもの、(b)10mM非放射性グリシン又は(c)候補となっている薬の濃度のいずれかを含有する溶液が加えられた。候補となっている薬の濃度範囲は、その効果の50%(例えばIC50S、これはグリシンの取り込みを50%抑制する薬の濃度である)になる濃度を計算するためのデータを作るのに用いられた。該細胞はついで37℃で更に10分インキュベートし、その後、該細胞を吸引し、氷−冷却HBSで3回洗浄した。該細胞を採取し、シンチラント(scintillant)を該細胞に加え、該細胞を30分間振盪し、該細胞の放射能をシンチレーションカウンターを用いて測定した。行なわれたアッセイにより、候補となる薬と接触したか又は接触していない細胞間、及びGly T−2活性を有する細胞に対するGly T−1活性を有する細胞間でのデータを比較した。
【実施例9】
【0071】
NMDA受容体への結合のアッセイ
この実施例はNMDA受容体上のグリシン部位を有する化合物の相互作用を測定するための結合アッセイを説明する。
NMDA−グリシン部位への[3H]グリシンの直接結合がGrimwood et al.,Molecular Pharmacology41,923−930(1992);Yoneda et al.,J.Neurochem.62,102−112(1994)の方法により行なわれた。
結合テストのための膜の調製は一連の標準方法の適用を必要とした。特に記載しない限り、組織及びホモジネートは氷上に保存し、遠心分離は4℃で行なわれた。均質化(ホモジネーション)は組織/ホモジネート温度の上昇が最小で済むように行なわれた。該膜の調製は次の工程を含有する。
1.4匹のラットを殺し、断頭、皮質(cortices)及び海馬(hippoampi)を除去する。
2.20ストロークのグラス/テフロンホモジナイザーを用いて0.32Mシュークロース/5mMトリスアセテート(pH7.4)の20容量部中で組織を均質化する。
3.1000×gで10分間組織を遠心分離し、上清液を蓄える。少量の緩衝液中にペレットを再懸濁し、再び均質化する。均質化したペレットを遠心分離し、上清液を前の上清液と一緒にする。
4.一緒にされた上清液を40,000×gで30分遠心分離し、上清液を捨てる。
5.5mMトリスアセテート(pH7.4)20容量中で該ペレットを再懸濁し、該懸濁液を1時間氷上でかきまぜ、40,000×gで30分、該懸濁液を遠心分離する。該上清液を捨て、該ペレットを少なくとも24時間凍結する。
6.蛋白質濃度1mg/mlに対して0.1%サポニン(w/r;Sigma Chemical Co.,St.Louis)を含有するトリスアセテート緩衝液中に上記工程5からのペレットを再懸濁する。20分間氷上に置く。該懸濁液を40,000×gで30分間遠心分離し、サポニンを含有しない緩衝液中に該ペレットを再懸濁し、再び遠心分離する。10mg/mlの濃度で該ペレットをトリスアセテート緩衝液中に再懸濁し、一定量の標本中で凍結する。
7.3日目に、膜の標本を取り出し、氷上で解かす。該懸濁液をトリスアセテート緩衝液10ml中で希釈し、40,000×gで30分間遠心分離する。この洗浄工程を更に2回繰り返し、全体で3回洗浄を行なう。最終のペレットをグリシンのないトリスアセテート緩衝液中に1mg/mlの濃度で再懸濁する。
【0072】
該結合テストは0.5mlの容量中に膜蛋白質150μg及び50mM[3H]グリシンを含有するエッペンドルフチューブ中で行なわれた。非特定結合が1mMグリシンを用いて測定された。薬剤類はアッセイ緩衝液(5mMトリスアセテート、pH7.4)又はDMSO(最終濃度0.1%)中に溶解された。膜は氷上で30分間インキュベートされ、結合放射リガンドがWhatmanGF/Bガラス繊維フィルターでの濾過或いは遠心分離(18,000×g、20分)により遊離の放射リガンドより分離された。濾過物或いはペレットは氷冷却5mMトリスアセテート緩衝液で素早く3回洗浄された。フィルターを乾燥し、シンチレーションチューブ中に置き、そして計量した。ペレットをデオキシコレート/NaOH(0.1N)中に一晩溶解し、中和し、放射活性がシンチレーションチューブで測定された。
NMDA−グリシン部位の第2の結合テストは[3H]ジクロロキヌレン酸(DCKA)を用い、膜は上記のように調製した。Yoneda et al.,J.Neurochem.60,634−645(1993)参照。結合アッセイは、[3H]DCKAをグリシン部位のラベルとして用いる以外は、上記[3H]グリシン用に記載されているように行なわれた。[3H]DCKAの最終濃度は10nMであり、該アッセイは氷上で10分間行なわれた。
NMDA−グリシン部位用に用いられた第3の結合テストは、[3H]MK−801(dizocilpine)の結合を測定することによるこの部位に対するリガンドの親和力の間接的評価を用いた。Palmer及びBurno,J.Neurochem.62,189−196(1994)参照。テスト用膜の調製は上記と同様であった。該結合アッセイはアンタゴニストとアゴニストのそれぞれを別個に検出可能とした。
第3の結合テストは次のようにしてアンタゴニストを同定するために操作された。膜100μgをグルタメート(10μM)及びグリシン(200nM)およびテストされるべき種々の濃度のリガンドと共に96−ウェルプレートのウェルに加えた。該アッセイは5nM[3H]MK−801(23.9Ci/mmol)の添加により開始され、それがNMDA受容体と結合するイオンチャンネルに結合する。該アッセイの最終容量は200μlであった。該アッセイは室温で1時間行なわれた。結合放射活性はTOMTECコンバイン(harvester)を用いて濾過により遊離のものから分離された。アンタゴニスト活性はテストされるリガンドの濃度を増加させた際のNMDAと結合している放射活性の減少により表示された。
第3の結合テストは、グリシンの濃度が200nMである以外は上記と同様のテストを行なうことにより、アゴニストの同定を行なうために操作された。
アゴニストの活性はテストされるリガンドの濃度を増加させた際のNMDA受容体と結合した放射活性の増加により表示された。
【実施例10】
【0073】
カルシウム束密度(Calcium Flux)のアッセイ
この実施例は原発性神経細胞におけるカルシウム束密度を測定するためのプロトコールを説明する。
該カルシウム束密度は原発性神経細胞培養物中で行なわれ、それは無菌の解剖器具、マイクロスコープ及び特定の培地を必要とする標準操作及び技術を用いて妊娠したラットから切り出したラットの胎児の皮質から調製される。用いられた該プロトコールはLu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, 6289-6292 (1991) を改変して用いた。定義された培地は次の調製法に基いてあらかじめ調製される。
【0074】
成分 供給源(カタログ番号) 最終濃度
D-グルコース Sigma(G-7021) 0.6%
トランスフェリン Sigma(T-2252) 100 μg/ml
インシュリン Sigma(I-5500) 25 μg/ml
プロゲステロン Sigma(P-6149) 20 nM
プトレスシン Sigma(P-7505) 60 μM
(putrescine)
セレニウム Sigma(S-5261) 30 nM
pen-strep ▲ GIBCO(15070-014) 0.5U-0.5μg/ml
L-グルタミン * GIBCO(25030-016) 146 mg/l
MEM ° GIBCO(11095又は11090) 500 ml/l
F−12 GIBCO(11765) 500 ml/l

▲ pen-strep: 5,000 U/ml ペニシリンおよび5,000 μg/ml ストレプトマイシン
* L-グルタミンの入っていないMEMを用いる時にのみ加える。
° L-グルタミンを用いるときと、用いないときの各々を示す。
【0075】
解剖を開始する前に、組織培養物はポリリシンで処理され(100μg/ml、37℃で少なくとも30分間)、蒸留水で洗浄された。又、無菌の簡単な解剖器具(はさみ及びピンセット)2セット及び数セットの精巧な解剖器具を含む金属トレイを高圧滅菌した。一対のはさみ及びピンセットを70%アルコールの入った無菌ビーカー中に入れ、解剖テーブルに持ち込んだ。冷却燐酸塩緩衝食塩液(PBS)の入ったペトリ皿を解剖の行われる場所に、次いで氷上に置いた。
妊娠したラット(Hilltop Lab Animals (Scottdale, PA))から到着したE15又は16、解剖におけるE17又は18)が気絶するまでCO2/ドライアイス室に置かれた。該ラットを取り出し、裏返して(backing) ピン留めし、解剖領域を70%アルコール含有綿棒でふき、皮膚を切り出し、その領域から取り出した。第2の一対のはさみで切り開き、それらの嚢(sac) 中の胎児を取り出した。嚢のひもを冷却PBS中に置き、無菌のフードに運んだ。
胎児を該嚢から取り出し、その首を切断した。頭蓋骨を次いで除去し、脳を注意深く移動し、冷却PBSを入れてある汚れていないペトリ皿中に入れた。この時点では解剖マイクロスコープで操作を進めることが必要であった。該脳は皮質が該プレートと接触するように回転され、解剖器具と皮質(線条及び他の脳部分)との間の組織がすくい出された。海馬及び嗅球が該皮質から切り落とされた。次いで該組織はひっくり返され、髄膜が鉗子で取り除かれた。残った組織(皮質)を前記特定の培養液の入ったペトリ皿に置いた。
該組織は外科用メスで切られ、次いで磨かれたガラスピペットですりつぶされた。切断されすりつぶされた組織は次いで滅菌されたプラスチックチューブに移され、細い開口を有するガラスピペットでのすりつぶしが続けられた。細胞が適当な計数室中で計測された。細胞は、96ウェル プレートでは100μlの特定培地中におおよそ40,000細胞/ウェルの割合で、24ウェル プレートでは500μlの特定培地中におおよそ200,000細胞/ウェルの割合で、12ウェル プレートでは1mlの特定培地中におおよそ400,000細胞/ウェルの割合で、1.5ml中に1.5×108細胞/35mmディッシュの割合、10ml中に10×108細胞/100mmディッシュの割合で加えられた。グリア増殖を抑制するために、培養物を100μMの5−フルオロ−2−デオキシウリジン(FDUR,Sigma(F−0503))もしくは50/μMウリジン(Sigma(U−3003))および50μMのFDURで処理した。
【0076】
標準カルシウム束密度測定のための皮質培養物を上記特定の培地中の24ウェルプレートで7日間増殖させ、途中で1回該培地の半分を交換することにより培地(10%熱不活性化牛胎児血清、0.6%グルコースのMEM溶液)を含有する血清を供給した。培養物はイン ビトロでの12日間のインキュベーション後に使用した。この培養物をHCSS(即ち、HEPES緩衝調節塩溶液で、120mMのNaCl、5.4mMのKCl、1.8mMのCaCl2、25mMのHEPES、および15mMのグルコースをHPLC水中に入れ、同様にHPLC水中で作られたNaOHでpH7.4に調整)で3回洗浄した。第3回目の洗浄において、培養物を37℃で20〜30分間インキュベートした。
45Ca++含有溶液(5000dpm/ml)およびテストもしくは調節のための薬剤をHCSS中で調製した。上記45Ca++溶液を添加する直前に、培養物をHCSSで2回洗浄し、次いで1ウェルにつき250μlの45Ca++溶液を1プレートにつき同時に加えた。この培養液を10分間室温でインキュベートし、HCSSで3回洗浄し、次いで1ウェルにつき1mlのシンチレーション液を添加し、次いで少なくとも15分間の振盪を行なった。残っている放射活性をシンチレーションカウンターでカウントした。
この発明は好ましい実施態様について特に述べているが、ここで具体的に述べられていないが当業者にとって自明の他の種々の好ましい態様も当然使用し得るものである。従って、本発明は次に示す特許請求の範囲及びその思想の範囲内に包含される全ての改変を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の薬剤組成物は、神経障害および神経心理学的障害の治療分野において有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式IおよびIIの内の一つで表される化合物またはそれらの薬学的に許容し得る塩、及び製剤学的に許容し得る賦形剤を含有する薬剤組成物。


式中
(1)Xは炭素であり;
(2)R2は(a)水素、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、(C2−C7)アルカノイルであり;
(b)(R1が−O−R8または−S−R8*でないとき)ヒドロキシ、フルオロ、クロロ、ブロモもしくは(C2−C7)アルカノイルオキシを含有し、
(2iii )Rx、Ryは各々独立してアリール、ヘテロアリール、アダマンチルまたは酸素、硫黄および窒素からなる群から選択される0ないし2個の異項原子を有する5ないし7員の非芳香族性環であり、式中
(a)アリールはフェニルもしくはナフチル
(b)ヘテロアリールは5員環、6員環、5員環に融合した6員環、6員環に融合した5員環、または6員環に融合した6員環を含有し、該ヘテロアリールは芳香族であり酸素、硫黄および窒素からなる群から選択される異項原子を含有し他の環の原子は炭素である、
(c)Rx、Ryの各々は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、アミドスルホニルからなる群から選択される置換基で追加的に置換されていてもよく、これらは2個までの独立的な(C1−C6)N−アルキル置換基、アダマンチル、(C1−C12)アルキル、(C1−C12)アルケニル、アミノ、(C1−C6)アルキルアミノ、ジアルキルアミノ基(以上各アルキルは独立してC1〜C6である)、(C1−C6)アルコキシ、(C2−C7)アルカノイル、(C2−C7)アルカノイルオキシ、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシカルボニル、(C2−C7)アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニルであり、これらはその水素が2個まで独立的に(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキルスルホニル、アミジノ基で置換されていることができ、これらは独立して3個までの(C1−C6)アルキルまたはアリールもしくはヘテロアリール環構造に隣接する位置に結合した2つの酸素と共にメチレンジオキシもしくはエチレンジオキシで置換されていてよく、このメチレンジオキシもしくはエチレンジオキシは2個までの独立した(C1−C6)アルキルで置換することができる、
(3)R1は単結合;直鎖の(C1−C3)脂肪族基;または−O−R8もしくは−S−R8*、このときR8もしくはR8*のいずれかは単結合、(C1−C3)アルキレンまたは(C2−C3)アルケニレンであり、OもしくはSはXに結合している;
式中R1は1個までのヒドロキシ、1個までの(C1−C6)アルコキシもしくは1個までの(C2−C7)アルカノイルオキシ、2個までの独立した(C1−C6)アルキル、1個までのオキソ、1個までの(C1−C6)アルキリデンで置換されていてもよく、ただし、このヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、オキソ置換基は窒素もしくは酸素に結合している炭素原子には結合していないものである、または(R1が−O−R8のとき)Xへのオキサ結合が1,3−ジオキソランを形成してもよい、
(4)環Dは3ないし8員環、3ないし6員のスピロ環で置換されている3ないし8員環、環Dの各構成環については酸素、硫黄もしくは図示された窒素を含めた窒素から選択された2個までの異項原子が存在し、残りは炭素原子であり、ただしこの環原子は4級窒素を含有せず、また飽和環においては環窒素原子は少なくとも2個の介在炭素原子によって他の環異項原子と分離されているものである;
ここで環Dの炭素および窒素環原子は(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニレン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C2−C7)アルキルオキシカルボニル、(C1−C6)アルキリデン、ヒドロキシル、(C1−C6)アルコキシ、オキソ、ヒドロキシカルボニル、RxおよびRyで定義されたアリールまたはRxおよびRyで定義されたヘテロアリールで置換されていることができ、ただしアルキリデン、ヒドロキシカルボニルもしくはオキソで置換された環原子は炭素であり、またヒドロキシルもしくはアルコキシで置換された環原子は少なくとも2個の介在炭素原子によって他の環異項原子と分離されているものである;および
1、R3およびGは少なくとも2個の原子がXと図示された環窒素とを分離しているようなものである;
(5)式中環Eは3ないし8員環、3ないし6員のスピロ環で置換されている3ないし8員環、または5ないし6員環と融合している3ないし8員環であり、図示された第3級窒素を欠く融合環は芳香族もしくは異項芳香族であることができ、環Eの各構成環については酸素、硫黄もしくは図示された窒素を含めた窒素から選択された2個までの異項原子が存在し、残りは炭素原子であり、ただしこの環原子は4級窒素を含有せず、また飽和環においては環窒素原子は少なくとも2個の介在炭素原子によって他の環異項原子と分離されているものである; ここで環Eの炭素および窒素環原子は(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニレン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C2−C7)アルキルオキシカルボニル、(C1−C6)アルキリデン、ヒドロキシル、(C1−C6)アルコキシ、オキソ、ヒドロキシカルボニル、(C1−C6)アルコキシカルボニル、RxおよびRyで定義されたアリールまたはRxおよびRyで定義されたヘテロアリールで置換されていることができ、ただしアルキリデン、ヒドロキシカルボニルもしくはオキソで置換された環原子は炭素であり、またヒドロキシルもしくはアルコキシで置換された環原子は少なくとも2個の介在炭素原子によって他の環異項原子と分離されているものである;および
式中G*およびR18はRxおよびRyに結合している炭素から図示されている環の窒素と少なくとも2原子分分離している;
(6)R19は(a)R1、R3もしくはGと二重結合を形成し、
(b)水素であり、
(c)(C1−C3)アルキルもしくはアルキレンであり、
または
(d)融合環中に導入されている;
(7)R4およびR4*は独立して水素もしくは(C1−C6)アルキル;および
(8)Rは(CO)OR15であり、式中R15は水素、(C3−C8)シクロアルキルを包含した(C1−C8)アルキルであり、式中R15の酸素に結合している炭素はそれ以上第2級分枝を持たず、(C2−C6)ヒドロキシアルキル、アルキルがC1−C6であるアリールアルキル、アルキルがC1−C6であるヘテロアリールアルキル、アリールもしくはヘテロアリールであり、
式中、
アリールはフェニルもしくはナフチルであり、
ヘテロアリールは5員環、6員環であり、このヘテロアリールは芳香族であり酸素、硫黄および窒素からなる群から選択される異項原子を含有し他の環の原子は炭素である;
式中、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルのアリールまたはヘテロアリールアルキルのヘテロアリールは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、アミドスルホニルからなる群から選択される置換基で追加的に置換されていてもよく、これらは2個までの独立的な(C1−C6)N−アルキル置換基、(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキルアミン、各アルキルが独立してC1〜C6であるジアルキルアミン、アミノ、(C1−C6)アルコキシ、(C2−C7)アルカノイル、(C2−C7)アルカノイルオキシ、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシカルボニル、(C2−C7)アルコキシカルボニル、2個まで独立的に(C1−C6)アルキルで置換できるアミノカルボニル、(C1−C6)アルキルスルホニル、3個までの(C1−C6)アルキルで置換できるアミジノ、アリールもしくはヘテロアリール環構造に隣接する位置に結合した2個の酸素を有するメチレンジオキシもしくはエチレンジオキシからなる群から選択される置換基で置換されていてよく、このメチレンジオキシもしくはエチレンジオキシは2個までの独立した(C1−C6)アルキルで置換することができる。
【請求項2】
式中、Rx、RyおよびR2の少なくとも一つはフルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、シアノ、(C3−C8)アルキルで置換されているものである請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項3】
式中、Rx、RyおよびR2の少なくとも一つが、フルオロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、シアノまたは(C3−C8)アルキルで置換されているものである請求項2記載の薬剤組成物。
【請求項4】
式中、Rx、RyおよびR2の少なくとも一つのアリールもしくはヘテロアリールがフェニルである請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項5】
式中R5が(CO)OR15である請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項6】
式中R15が(C2−C6)アルキル、(C2−C4)ヒドロキシアルキル、フェニル、アルキルがC1−C3であるフェニルアルキルであり、式中フェニルもしくはフェニルアルキルのフェニルは置換されていてもよいものである請求項5記載の薬剤組成物。
【請求項7】
式中R15が水素である請求項5記載の薬剤組成物。
【請求項8】
式中R4が水素、メチルもしくはヒドロキシメチルであリ、R4*が水素である請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項9】
式中Rx、RyおよびR2の少なくとも一つがヘテロアリールであり、このヘテロアリールはジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チオリル、ジアジニル、トリアジニル、ベンゾアゾリル、ベンゾジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキソリル、ベンゾチオリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾジアジニル、ベンゾトリアジニル、ピリジル、チエニル、フラニル、ピロリル、インドリル、イソインドイルもしくはピリミジルを包含するものである請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項10】
式中R1が−O−R8もしくは−S−R8*である請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項11】
式中Rx、RyおよびR2のアルキレンジオキシ置換基が次のものである請求項1記載の薬剤組成物:


式中アルキレンジオキシは2個までの独立した(C1−C3)アルキルで置換されていることができる。
【請求項12】
環Dが式A′およびB′のものである請求項1記載の薬剤組成物。

式中Zは炭素もしくは窒素であり、式A′およびB′の各々は破線で表されている結合の2個までが2個の二重結合が隣り合わせていない限り二重結合であることができ、式A′およびB′の環は環Dにおけると同様の置換基を有することができる。
【請求項13】
式中環Dもしくは環Eが3個までの置換基で置換されている請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項14】
式中R15のアリール、ヘテロアリール、アリールアルキルのアリールもしくはヘテロアリールアルキルのヘテロアリールが3個までの置換基で置換されている請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項15】
該化合物が光学的に純粋な鏡像異性体である請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項16】
請求項1記載の化合物が次のための有効量存在する請求項1から15記載の薬剤組成物:
(1)精神分裂症の治療もしくは予防、
(2)痴呆症の治療もしくは予防の強化剤、
(3)てんかんの治療もしくは予防、
(4)痙直の治療もしくは予防、
(5)筋痙縮の治療もしくは予防、
(6)痛みの治療もしくは予防、
(7)卒中後の神経細胞死の予防、
(8)神経変性症に罹っている動物における神経細胞死の予防、
(9)情緒障害の治療もしくは予防、
(10)記憶もしくは学習の強化、または、
(11)学習障害の治療もしくは予防。
【請求項17】
A)次の式の化合物を
1)

式中L1は求核置換解離基である
次の式の化合物と反応させるか、
2)



またはB)次の式の化合物を
1)

次の式の化合物と
2)

式中L2は求核置換解離基である。
反応させる請求項1記載の化合物の合成方法。
【請求項18】
次式の化合物のいずれか一方を還元して

環Cii もしくは環Cixにおける二重結合を還元する、
式中R28は環への結合が二重結合でないことを除いてはR1と同様であり、環Cix は環形成炭素間で形成される二重結合と共に破線で示された1もしくはそれ以上の結合においてモノもしくはジ不飽和であり、2個の二重結合が隣接することはなく、環Cii もしくは環Cixは融合フェニルであってもよく、次のように置換されていることもできる:
環Cii もしくは環Cix の炭素および窒素環原子は(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニレン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチルおよび(C2−C7)アルキルオキシカルボニルから選択される2個までの置換基で置換されていてもよく、I-は負の対向イオンである、
請求項1記載の化合物の製造法。
【請求項19】
還元される化合物が環Cii を含有する請求項18の化合物の製造方法。
【請求項20】
請求項1記載の化合物を製造するために使用することのできる次式の化合物:

式中I-は負の対向イオンであり、R28は環への結合が二重結合でないことを除いてR1と同じであり、環Cii は融合フェニルであってもよく、次のように置換されていることもできる。
環Cii の炭素および窒素環原子は(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニレン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチルおよび(C2−C7)アルキルオキシカルボニルから選択される2個までの置換基で置換されていてもよい。
【請求項21】
次式の化合物と

次式の化合物

式中L4は求核置換解離基であり環Ci はフェニルと融合もしくは置換されていることができ環Cii の定義と同じ
を反応させる請求項20の化合物の製造方法。
【請求項22】
次式の化合物

を次式

式中Lは求核的置換解離基であってRcは独立してRxの定義と同じであり、R27はR27が窒素、酸素または硫黄を含まないことを除いてR1の定義と同じである
と反応させることからなる、請求項1記載の化合物を合成するために使用することのできる次式

の化合物の合成方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−149663(P2009−149663A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23296(P2009−23296)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【分割の表示】特願平9−543001の分割
【原出願日】平成9年5月29日(1997.5.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(505166351)エヌピーエス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】NPS PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】