説明

神経障害処置におけるトリフルオロメチル置換ベンズアミドの使用

本発明はトリフルオロメチル置換ベンズアミド化合物およびその塩を含む本発明化合物、並びに同化合物を含有してなる、Eph受容体関連(例えば、神経性)傷害および障害の処置における医薬組成物に関する。また、本発明は有効量の本発明化合物を細胞または対象に投与することにより、細胞中のEph受容体の活性を調節し、神経再生を刺激し、またニューロン変性を回復させることに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
成体哺乳動物中枢神経系(CNS)に対する傷害は、多くの場合、切断された軸索がその目標に向かって再成長するのを不能とし、その結果、当該傷害を受けた対象を永久に麻痺させる軸索損傷を特徴とする。現在、脊髄傷害(SCI)などのCNS関連外傷を有する患者にとっての治療法は存在せず、この傷害は頻繁に、対麻痺または四肢麻痺など、身体を衰弱させる臨床症状を伴う。
【背景技術】
【0002】
軸索再生(例えば、傷害後の)は、成体CNSにおける多くの阻害の影響、とりわけ、阻害性ミエリンタンパク質および神経膠瘢痕形成などにより妨害される。ミエリン阻害と関連する分子(例えば、ノゴ(Nogo)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、および乏突起神経膠細胞−ミエリン糖タンパク質(OMgp))の同定は相当進歩しているが、傷害に対するグリア細胞の応答として形成される神経膠瘢痕については、余り知られていない。(GrandPre, T., et al. (2000) Nature, 403(6768): 439; Fournier, A.E. et al. (2001) Nature 409(6818): 341; Wang, K.C., et al. (2002) Nature 417(6892): 941; および Wang, K.C., et al. (2002) Nature 420(6911): 74)。神経膠の瘢痕は星状細胞グリオーシスを特徴とし、その場合、通常、休止した星状細胞が傷害に応答して増殖して肥大成長し、また別の場合には、軸索再生に対して物理的および化学的障壁を形成する。(Silver, J., et al. (2004) Nat Rev Neurosci 5(2): 146; および Morgenstern, D.A., et al. (2002) Prog Brain Res. 137: 313)。様々なグリア細胞は瘢痕形成に寄与するが、星状細胞応答(すなわち、星状細胞グリオーシス)は、この出現の主要なメカニズムであると考えられる。
【0003】
Eph受容体チロシンキナーゼ・サブファミリーは、膜透過受容体チロシンキナーゼの最大のサブファミリーであると考えられ、そのリガンドであるエフリンとともに、神経発生に際しての適当な細胞の移動と位置づけを、恐らく細胞間の反発を調節することで、制御する役割を担っている。(Pasquale, E. (1997) Curr. Opin. Cell Biol. 9:608-615)(Orioli and Klein (1997) Trends in Genetics 13:354-359)。Eph受容体は密接に関係し合って、それらのエフリンリガンドに結合したときに、活発にシグナルを送り(それらの作用は細胞−細胞間接触により仲介される)、その結果として、それらは前方および双方向にシグナルを伝達することができる。(Murai, K.K., et al. (2003) J Cell Sci. 116: 2823)。
【0004】
Eph受容体は既知の神経発育制御因子であり、その役割は、移動する細胞または軸索の制御、発達する脳の個別の領域における組織パターンと組織分布的地図の確立、およびシナプス形成と可塑性の制御にある。Eph受容体は、EphA4およびEphA7を含め、脊髄傷害または輸入路切断後に上方制御される。(Miranda, et al. (1999) Exp Neurol 156:218; Willson, et al. (2002) Cell Transplantation 11:229);それ故、それらの阻害は神経障害の処置にとっての有力な治療戦略と見做される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脊髄損傷から生じる合併症の治癒または軽減に向かう重要なステップが、SCIの複雑かつ多因子の性質のために、欠けていた。ミエリン阻害因子(GrandPre, T., et al. (2002) Nature 417(6888): 547; Kim, J.E., et al. (2003) Neuron 38(2): 187)、硫酸コンドロイチンプロテオグリカン(Bradbury, E.J., et al. (2002) Nature 416 (6881): 636)またはこれらの両方の下流のシグナル伝達分子(Fournier, A.E., et al. (2003) J Neurosci. 23(4): 1416; および Sivasankaran, R., et al. (2004) Nat Neurosci. 7(3): 261)のいずれかを遮断することにより、SCI後の回復を評価するために、インビボの研究がなされたが、その成果はわずかなものであった。しかし、Eph受容体を実験的に阻害すると、傷害後に相当に軸索が再生され、星状細胞グリオーシスが抑制されることをも明らかにし、この阻害が神経膠の瘢痕を劇的に低下させ、軸索傷害とグリオーシスに至らしめる脊髄損傷と脳卒中に対し、これら受容体が理想的な治療目標となることを明らかにした。従って、Eph受容体機能を遮断するように設計した戦略と治療薬は、CNS関連障害の処置を有意に進歩させ、また恐らく、SCI、脳卒中および他の神経変性障害などの神経傷害後の回復を大きく改善させる可能性があろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はEph受容体関連(例えば、神経性)傷害および障害の処置のために、本発明化合物を使用する方法、およびEph受容体関連(例えば、神経性)傷害および障害の処置における本発明化合物を含有してなる医薬製剤の使用方法に関する。
【0007】
本発明はまた細胞におけるEph受容体の活性を調節する方法であって、該細胞を有効量の本発明化合物と接触させることによる方法に関する。特定の実施態様において、Eph受容体はインビトロまたはインビボ両方で調節し得る。
【0008】
本発明は神経再生を刺激し、促進する方法(脊髄損傷後の軸索再生など)、および外傷による損傷、低酸素症状、または梗塞による神経変性(例えば、多発性硬化症および他の神経変性疾患において内在する原因である脳卒中または神経変性におけるように)を回復させる方法に関する。これを達成し得る一方法は神経再生(軸索再生など)を刺激し、促進するか、またはニューロン変性を回復させるために十分な量の本発明化合物を哺乳動物に投与することを介することである。本発明化合物は正常のおよび傷害を受けた細胞双方に送達し得る。一部の実施態様において、本発明化合物はEph受容体のリン酸化を阻害する。他の実施態様において、本発明化合物はエフリンリガンドがEph受容体に結合するのを阻害する。
【0009】
本発明はまた本発明の化合物に連結した治療剤(例えば、結合剤(linking reagent))を含んでなる接合体を経由するなど、細胞に治療薬を送達する方法に関する。
【0010】
本明細書に記載する場合、また国際特許公開WO06/015859号明細書(その内容を参照により本明細書の一部とする)において、本発明化合物、例えば、トリフルオロメチル置換ベンズアミド化合物は、とりわけ、プロテインキナーゼ阻害剤として有用であり、従って、プロテインキナーゼ関連障害の処置に有用である。一例として、本発明化合物はエフリン受容体キナーゼ阻害剤などの受容体チロシンキナーゼ阻害剤として有用であり、それ故、例えば、神経傷害および障害の処置に使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1はEphA4リガンド依存性リン酸化の阻害を示す(EphA4免疫沈降に付し、次いでホスホ−チロシン・ウエスタンブロットに付したサンプルから)。図1のレーン1および2は、対照(未処理)および血清飢餓後のエフェリンB3−Fc刺激細胞におけるEphA4リン酸化を示す。他のレーンはすべて試験したEph阻害剤の多様な濃度(示したとおり)の存在下、エフェリンB3−Fcで刺激した細胞からのサンプルを表わす。
【図2】図2は実験的に決定した神経突起発芽後成長阻害のグラフ表示を示す。Y軸は平均神経突起の長さをミクロンで示す。棒グラフは左から右へ、ミエリン、PDL、および本発明の試験化合物を表わす。
【図3】図3Aおよび3Bは、Eph受容体がサイトカイン(TGF−α、LIF、およびIFN)で誘導した星状細胞の移動を遮断することの実験的決定の写真およびグラフ表示をそれぞれ示す。図3Aは、左から右へ、無血清、サイトカイン、およびサイトカインと化合物3をそれぞれ表わす。図3Bにおいて、Y軸は対照(無血清=1)に比較した細胞移動の相対面積を示す。左から右へ、棒グラフは、無血清、サイトカイン、およびサイトカインと10nMの化合物3を表わす。
【図4】図4は、Eph受容体阻害剤がマウスの脳(脳ホモジネート溶解液をEphA4免疫沈降に、次いでホスホ−チロシン・ウエスタンブロットに付した)においてインビボでEphA4リン酸化を遮断することを示している。動物に関連化合物を静脈内投与し、投与から25分後または1時間後(0.25時間または1時間)に殺し、その脳を取り出し、EphA4免疫沈降に、次いでホスホ−チロシン・ウエスタンブロットに付した。動物4匹を対照として使用し、動物3匹は各薬物について時点ごとに使用した。化合物3は上から2番目に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は特に、式(I):
【化1】

[式中、
は、水素または−N(R)であり、ここで、RおよびRのそれぞれがアルキルであるか、またはRおよびRが、それらが結合する窒素と一体となって、5員ないし7員のヘテロ環状環を形成し、そこでのさらなる環原子が炭素および0、1もしくは2個の窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロ原子から選択され、その環は未置換であるか、またはさらなる窒素環原子が存在する場合には未置換であるか、もしくは当該窒素においてアルキルにより置換されており;
は、水素または−CH−N(R)であり、ここで、RおよびRのそれぞれがアルキルであるか、またはRおよびRが、それらが結合する窒素と一体となって、5員ないし7員のヘテロ環状環を形成し、そこでのさらなる環原子が炭素および0、1もしくは2個の窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロ原子から選択され、その環は未置換であるか、またはさらなる窒素環原子が存在する場合には未置換であるか、もしくは当該窒素においてアルキルにより置換されている;
ただし、RおよびRの少なくとも一方は水素であり;
は、ハロまたはC−C−アルキルである;
【0013】
は:
【化2】

からなる群より選択される二環式ヘテロシクリルであり、
ここで、
Xは、CH、NまたはC−NHであり;
Yは、CHまたはNである;
ただし、XおよびYは共に同時にはNではなく;
そして、Rは、水素、C−C−アルキルまたは未置換もしくは置換フェニルであり;
Aは、−C(=O)−NH−(−NH−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)または−NH−C(=O)−(−C(=O)−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)であり;
Zは、CHまたはNであり;そして
Qは、−S−または−CH=CH−である。]
で示されるトリフルオロメチル置換ベンズアミド化合物に、または1個以上の塩形成基が存在する場合には、(好ましくは、医薬的に許容される)その塩に関する。
【0014】
本発明の好適な実施態様において、本発明化合物は以下からなる群より選択される:N−(3−イソキノリン−7−イル−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(“化合物1”)、N−(4−メチル−3−キナゾリン−6−イル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(“化合物2”)、3−イソキノリン−7−イル−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド(“化合物3”)、4−メチル−3−キナゾリン−6−イル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド(“化合物4”)、N−(3−ベンゾチアゾール−6−イル−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(“化合物5”)、3−ベンゾチアゾール−6−イル−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド(“化合物6”)、N−(4−メチル−3−フタラジン−6−イル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(“化合物7”)、4−メチル−3−フタラジン−6−イル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド(“化合物8”)、N−(3−ベンゾチアゾール−5−イル−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(“化合物9”)、および3−ベンゾチアゾール−5−イル−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(“化合物10”)。
【0015】
本発明の実施態様において、本発明化合物はEph受容体関連(例えば、神経的)傷害および障害の処置方法に使用する。
【0016】
本発明の別の実施態様において、本発明化合物から調製される医薬組成物は、Eph受容体関連(例えば、神経的)傷害および障害の処置方法に使用する。該医薬組成物は、好ましくは、本発明化合物と医薬的に許容される担体とを含有してなる。担体は本明細書で詳述する。
【0017】
本発明の別の実施態様において、本発明化合物は、細胞中でのEph受容体の活性を調節するために、細胞に接触させ使用する。細胞はそこに含まれるEph受容体を調節するために、本発明化合物の有効量と、インビトロまたはインビボで接触させ得る。
【0018】
本発明のさらに別の実施態様において、本発明化合物は、神経再生(軸索再生など)を刺激し、促進する方法、および外傷性損傷、脳卒中、多発性硬化症および神経変性疾患によるニューロン変性を回復させる方法に使用する。これを達成し得る一方法は、神経再生(軸索再生など)を刺激し、促進するか、またはニューロン変性を回復させるために十分な量の本発明化合物を哺乳動物に投与することを介することである。本発明化合物は正常のおよび傷害を受けた細胞双方に送達し得る。一部の実施態様において、本発明化合物はEph受容体のリン酸化を阻害する。他の実施態様において、本発明化合物はエフリンリガンドがEph受容体に結合するのを阻害する。
【0019】
本発明のなおさらに別の実施態様において、本発明化合物は治療薬を細胞に送達する方法に使用するが、その方法は本発明化合物に結合した当該治療薬を含んでなる接合体を経由する。本明細書により詳細に記載するように、該治療薬は結合剤であり得る。
【0020】
定義
本明細書において前記および後記で使用する一般的用語または記号は、特に断りのない限り、本開示の文脈内で以下の意味を有する。
【0021】
本明細書にて使用する場合、「Eph受容体」は、Ephファミリーに属する受容体チロシンキナーゼを意味し、例えば、EphA2、EphA4、EphA5、EphA7、EphB2およびEphB4などである。本ファミリーは文献、例えば、Pasquale, E. (1997) Curr. Opin. Cell Biol. 9:608-615; and Orioli and Klein (1997) Trends in Genetics 13:354-359、に概説がある。
【0022】
「Eph受容体関連傷害および障害」とは、神経傷害および障害であり、例えば、限定されるものではないが、脊髄損傷(SCI);四肢麻痺、片麻痺、および対麻痺、例えば、傷害を原因とする形態および遺伝性形態;末梢神経障害;およびCNS関連障害(例えば、細菌性およびウイルス性髄膜炎)である。
【0023】
「Eph受容体関連傷害および障害」はまた、低酸素症状から、または脳卒中におけるなどの梗塞から生じる神経変性をも含む。この症状は、多くの部分で、傷害を受けた軸索が再生し得ず、またシナプスの再組織化を受け得ないことによる、行動、感覚および認識機能の欠損に至り得る。SCIでのように、脳卒中はグリア瘢痕の形成に続いて梗塞部位で起こるが、EphA4の阻害(例えば、本発明化合物でのように)が瘢痕形成を阻害し、その結果、接続の再生と再組織化を改善し得る。星状細胞−海馬ニューロン同時培養による脳卒中のインビトロモデルは、星状細胞ギャップ−接合間が低酸素ストレス後のニューロンの生存にとって非常に重要であることを示した。(Blanc, E.M., et al. (1998) J Neurochem, 70(3): 958)。Eph受容体はギャップ−接合でのシグナル伝達に関与していることが知られているので、このことは虚血性脳卒中においてEphA4のもう一つの有力な関係を提示している(Mellitzer, G., et al. (1999) Nature, 400(6739): 77)。
【0024】
本明細書にて使用する場合、用語「処置」とは、予防的または防止的処置、並びに治療的または疾患抑制的処置の両方を包含し、神経学的障害の危険性のある患者、並びに病気の、および傷害を受けた患者の処置も含む。この用語はさらに疾患進行遅延のための処置をも含む。
【0025】
以下の略号は、実施例を含み、それに限定されない本明細書において共通に使用される用語(括弧内)を表わすために使用する:DMSO(ジメチルスルホキシド);ES−MS(電子スプレー質量スペクトル法);EtOAc(酢酸エチル);HPLC(高速液体クロマトグラフィー);mL(ミリリットル);NMR(核磁気共鳴);RT(室温);RET(分でのHPLC保持時間;方法A);BtRET(分でのHPLC保持時間;方法B);RET(分でのHPLC保持時間;方法C);RET(分でのHPLC保持時間;方法D);TFA(トリフルオロ酢酸);THF(テトラヒドロフラン);TMSCI(塩化トリメチルシリル)。
【0026】
結合に垂直な波線を使用する各事例において、このものは所定の部分が相当する分子の残りの部分に結合している結合をマークするものである。
【0027】
「低級」または「C−C−」という用語は、最大7個を含む7個までの、特に、最大4個を含む4個までの炭素原子を有する部分と定義し、当該部分は分枝鎖または直鎖である。低級またはC−C−アルキルとは、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシルもしくはn−ヘプチル、または好ましくは、C−C−アルキル、とりわけ、メチル、エチル、n−プロピル、sec−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルである。
【0028】
未置換または置換フェニルは、未置換であるか、または1個以上の、好ましくは1個もしくは2個の置換基が置換しており、その場合の置換基は、以下の官能基のいずれか1個以上から独立して選択される:ハロ、低級アルキル、ハロ低級アルキルなどの置換低級アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルカノイル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−置換アミノ(例えば、モノ−もしくはジ−低級アルキルアミノ)、アミノ低級アルコキシ;低級アルカノイルアミノ;アミジノ、ニトロ、シアノ、シアノ−低級アルキル、カルボキシ、エステル化カルボキシ、とりわけ、低級アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、またはイソプロポキシカルボニル)、低級アルカノイル、ベンゾイル、カルバモイル、N−モノ−もしくはN,N−ジ置換カルバモイル(例えば、N−モノ−もしくはN,N−ジ−低級アルキルカルバモイルまたはN−モノ−もしくはN,N−ジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)−カルバモイル)、アミジノ、グアニジノ、ウレイド、メルカプト、スルホ、低級アルキルチオ、スルホンアミド、ベンゾスルホンアミド、スルホノ、フェニル、フェニル−低級アルキル(例えば、ベンジル)、フェノキシ、フェニル−低級アルコキシ(例えば、ベンジルオキシ)、フェニルチオ、フェニル−低級アルキルチオ、低級アルキル−フェニルチオ、低級アルキル−スルフィニル、フェニルスルフィニル、フェニル−低級アルキルスルフィニル、アルキルフェニル−スルフィニル、低級アルカンスルホニル、フェニルスルホニル、フェニル−低級アルキルスルホニル、アルキルフェニルスルホニル、ハロゲン−低級アルキルメルカプト、ハロゲン−低級アルキルスルホニル(例えば、トリフルオロメタンスルホニル)、ジヒドロキシボラ(−B(OH))、環の隣接するC−原子で結合する低級アルキレンジオキシ(例えば、メチレンジオキシ)、ホスホノ(−P(=O)(OH))、ヒドロキシ−低級アルコキシホスホリルまたはジ−低級アルコキシホスホリル、または−NR(ここで、RおよびRは同一または異なって、独立してH、低級アルキル(例えば、メチル、エチルまたはプロピル)であるか、またはRおよびRがN原子と一体になって、1〜4個の窒素、酸素もしくは硫黄原子を含む3員ないし8員のヘテロ環状環(例えば、ピペラジニル、低級アルキル−ピペラジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、モルホリニル、イミダゾリニル)を形成する。
【0029】
本明細書にて使用する場合、「本発明化合物」はトリフルオロメチル置換ベンズアミドを含む式(I)で示される化合物である。本発明化合物はまた「化合物(番号)」として本明細書に引用した化合物をもいう。番号を付した化合物のさらなる定義は、本出願の実施例の部に見出し得る。
【0030】
「アリール」は6個ないし14個の炭素原子を有する芳香族基、とりわけ、フェニル、ナフチル、インデニル、アズレニル、またはアントリルであり、未置換であるか、または1個以上、好ましくは1個もしくは2個の置換基が置換する;その場合の置換基は以下に定義する官能基のいずれかから選択され、以下を包含する:低級ハロ、アルキル、置換アルキル、ハロ低級アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルカノイル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−置換アミノ、アミノ低級アルキル、アミノ低級アルコキシ;アセチルアミノ;アミジノ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、シアノ−低級アルキル、カルボキシ、エステル化カルボキシ、とりわけ、低級アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、またはイソプロポキシカルボニル)、アルカノイル、ベンゾイル、カルバモイル、N−モノ−もしくはN,N−ジ置換カルバモイル、カルバメート、カルバミン酸アルキルエステル、アミジノ、グアニジノ、尿素、ウレイド、メルカプト、スルホ、低級アルキルチオ、スルホアミノ、スルホンアミド、ベンゾスルホンアミド、スルホネート、フェニル、ベンジル、フェノキシ、ベンジルオキシ、フェニルチオ、フェニル−低級アルキルチオ、アルキルフェニルチオ、低級アルキルスルフィニル、フェニルスルフィニル、フェニル−低級アルキルスルフィニル、アルキルフェニルスルフィニル、低級アルカンスルホニル、フェニルスルホニル、フェニル−低級アルキルスルホニル、アルキルフェニルスルホニル、ハロゲン−低級アルキルメルカプト、ハロゲン−低級アルキルスルホニル(とりわけ、トリフルオロメタンスルホニルなど)、ジヒドロキシボラ(−B(OH))、ヘテロシクリル、および環の隣接するC−原子で結合する低級アルキレンジオキシ(例えば、メチレンジオキシ)、ホスホノ(−P(=O)(OH))、ヒドロキシ−低級アルコキシホスホリルまたはジ−低級アルコキシホスホリル、カルバモイル、モノ−もしくはジ−低級アルキルカルバモイル、モノ−もしくはジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)カルバモイル、または−NR(ここで、RおよびRは同一または異なって、独立してH、低級アルキル(例えば、メチル、エチルまたはプロピル)であるか、またはRおよびRがN原子と一体になって、1〜4個の窒素、酸素もしくは硫黄原子を含む3員ないし8員のヘテロ環状環(例えば、ピペラジニル、低級アルキル−ピペラジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、モルホリニル、イミダゾリニル)を形成する。
【0031】
アリールは、より好ましくは、未置換であるか、または独立して以下からなる群より選択される可溶化基から選択される1個または2個の置換基が置換するフェニルである:ハロ(ClまたはBrなど);ヒドロキシ;低級アルキル(C−C低級アルキルなど)、アリール(フェニルまたはベンジルなど);アミノ;アミノ低級アルキル(ジメチルアミノなど);アセチルアミノ;アミノ低級アルコキシ(エトキシアミンなど);低級アルキル(メチルなど);アルコキシ(例えば、メトキシまたはベンジルオキシであり、ここで、ベンジル環は置換または未置換であってもよい;3,4−ジクロロベンジルオキシなど);スルホアミノ;置換もしくは未置換のスルホンアミド(ベンゾスルホンアミド、クロロベンゼンスルホンアミドまたは2,3−ジクロロベンゼンスルホンアミドなど);置換もしくは未置換のスルホネート(スルホン酸クロロフェニルなど);置換尿素(3−トリフルオロメチルフェニル尿素または4−モルホリン−4−イル−3−トリフルオロメチルフェニル尿素など);カルバミン酸アルキルエステルまたはカルバメート(N−フェニル−カルバミン酸エチル)、または−NR(ここで、RおよびRは同一または異なって、独立してH、低級アルキル(例えば、メチル、エチルまたはプロピル)であるか、またはRおよびRがN原子と一体になって、1〜4個の窒素、酸素もしくは硫黄原子を含む3員ないし8員のヘテロ環状環を形成する;例えば、ピペラジニル、低級アルキル−ピペラジニル、ピリジル、インドリル、チオフェニル、チアゾリル、モルホリニル n−メチルピペラジニル、ベンゾチオフェニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、またはイミダゾリニル)。
【0032】
ヘテロアリール基は、好ましくは、単環式であるが、二環式または三環式であってもよく、3〜24個の、好ましくは4〜16個の環原子を含んでなり、その場合、少なくとも1個以上、好ましくは1個ないし4個の環炭素がO、NまたはSから選択されるヘテロ原子と置き換わっている。好ましくは、該へテロアリール基は以下から選択される:ピリジル、インドリル、ピリミジル、ピラゾリル、オキサゾリル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プリニル、ピラジニル、ピリダジニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キノリニル、インドリジニル、3H−インドリル、イソインドリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニルおよびベンゾ[d]ピラゾール。
【0033】
より好ましくは、該へテロアリール基は、ピリジル、インドリル、ピリミジル、ピラゾリル、オキサゾリル、チオフェニル、またはベンゾチオフェニルからなる群より選択される。
【0034】
該へテロアリール基は未置換であっても、またはアリール用として上記に定義した基から選択される1個以上の置換基により、最も好ましくは、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル(メチルなど)または低級アルコキシ(メトキシまたはエトキシなど)により置換されていてもよい。
【0035】
「脂肪族」とは、本明細書にて使用する場合、非芳香族炭素に基づく残基をいう。脂肪族残基の例は、置換または未置換のアルキル、シクロアルキル、アルケニルおよびアルキニルである。
【0036】
「アルキル」は低級アルキル、好ましくは7個までの炭素原子をもつアルキル、好ましくは5を含む1個ないし5個までをもつアルキルであり、直鎖または分枝状である;好ましくは、低級アルキルは、n−ペンチルなどのペンチル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどのブチル、n−プロピルもしくはイソプロピルなどのプロピル、エチルまたはメチルである。好ましくは、低級アルキルは、メチル、プロピルまたはtert−ブチルである。
【0037】
シクロアルキル基は、好ましくは、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであり、未置換であっても、またはアリール用として上記に定義した基から選択される1個以上、特に1個または2個の置換基により、最も好ましくは、低級アルキル(メチルなど)、低級アルコキシ(メトキシまたはエトキシなど)、またはヒドロキシにより置換されていてもよい。
【0038】
アルケニルおよびアルキニルは、好ましくは、7個までの炭素原子、好ましくは5を含む1個ないし5個までの炭素原子をもち、直鎖または分枝状であり得る。
【0039】
アルキル、シクロアルキル、アルケニルおよびアルキニルは置換されているか、または未置換であり、置換されている場合は、他のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニルを含む3個までの置換基で置換されていてもよく、その置換基はアリールについて上に定義した置換基のいずれかであるか、または以下に定義する官能基のいずれかである。
【0040】
「ハロ」または「ハロゲン」は、好ましくは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードであり、最も好ましくは、フルオロ、クロロまたはヨードである。
【0041】
本明細書にて使用する場合の用語「連結原子または基」とは、アルキル(−CH−など);オキシ−O−;ケト−CO−;チオ−S−;スルホニル−SO−;スルホキシド−SO−;アミン−NH−または−NR−;カルボン酸;アルコール;エステル(−COO−);アミド(−−CONR−、−CONHR’−);スルホンアミド(−SONH−、−SONR’−);スルホン(−SO−);スルホキシド(−SO−);アミノ基;尿素(−NH−CO−NH−、−NR−CO−NH−、−NH−CO−NR−、−NR−CO−NR−);エーテル(−O−);カルバメート(−NH−CO−O−、−NR−CO−O−);または逆アミドスルホンアミドおよびエステル(−NH−CO−、−NR−CO−、−NH−SO−、−NR−SO−、−OOC−)である。
【0042】
本明細書にて使用する場合の用語「官能基」とは:カルボン酸;ヒドロキシル;ハロゲン;シアノ(−CN);エーテル(−OR);ケトン(−CO−R);エステル(−COOR);アミド(−CONH、−CONHR、−CONRR’);チオエーテル(−SR);スルホンアミド(−SONH、−SONHR、−SONRR’);スルホン(−SO−R);スルホキシド(−SO−R);アミン(−NHR、NR’R);尿素(−NH−CO−NH、−NH−CO−NHR);エーテル(−O−R);ハロゲン;カルバメート(−NH−CO−OR);アルデヒド−官能基(−CHO);さらに、逆のアミド;スルホンアミドおよびエステル(−NH−CO−R、−NH−SO−R、−OOC−R)である。
【0043】
RおよびR’は同一または異なって、Hであってもよく、または上記定義の脂肪族、アリールもしくはヘテロアリール基である。
【0044】
塩は、特に、式(I)で示される化合物の医薬的に許容される塩である。これらの塩は、塩形成基、例えば、塩基性または酸性基などが存在する場合に形成され、少なくとも部分的に、水溶液中、pH4ないし10の範囲で解離した形状で存在し得るか、または特に固体の形状で単離し得る。
【0045】
かかる塩は、例えば、塩基性窒素原子をもつ式(I)の化合物から酸付加塩として、好ましくは有機酸または無機酸との塩、とりわけ、医薬的に許容される塩として形成される。適切な無機酸は、例えば、ハロゲン酸(塩酸など)、硫酸、またはリン酸である。適切な有機酸は、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸またはスルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、アミノ酸(グルタミン酸またはアスパラギン酸など)、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、安息香酸、メタン−もしくはエタン−スルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−もしくはN−プロピル−スルファミン酸、またはアスコルビン酸などの他の有機プロトン酸である。
【0046】
負電荷ラジカル基、例えば、カルボキシまたはスルホなどの存在下、塩は塩基とも形成し得る;例えば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などの金属塩またはアンモニウム塩、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムもしくはカルシウム塩、またはアンモニアもしくは三級モノアミンなど適当な有機アミンとのアンモニウム塩、例えば、トリエチルアミンもしくはトリ(2−ヒドロキシエチル)アミン、またはヘテロ環状塩基、例えば、N−エチル−ピペリジンもしくはN,N’−ジメチルピペラジンなどとの塩である。
【0047】
塩基性基と酸性基が同じ分子中に存在する場合、式(I)の化合物は内部塩をも形成し得る。
【0048】
単離または精製を目的とする場合は、医薬的に許容されない塩、例えば、ピクリン酸塩または過塩素酸塩などを使用することも可能である。治療に使用する場合は、医薬的に許容される塩または遊離の化合物のみが採用され(適用可能な場合は、医薬製剤に包含される)、従って、それらが好ましい。
【0049】
遊離形状の化合物とその塩形状の化合物との間の密接な関係に鑑みて、例えば、それらの化合物または塩の精製または同定において、中間体として使用し得るそれらの塩を含め、すでに記載した、または以後に記載する「化合物」、とりわけ、式(I)の化合物について言及する場合には、適切であり、得策であり、かつ他に断りがない限り、1種以上のその塩、または遊離の化合物と1種以上のその塩の混合物についても言及しているものと理解すべきである。
【0050】
複数形を化合物、塩、医薬製剤、疾患、障害などについて使用する場合、この複数形は単一の化合物、塩、医薬製剤、疾患などをも意味するものとし、逆もまた同様とする。
【0051】
遊離形状の化合物とその塩の形状の化合物との間の密接な関係に鑑みて、例えば、化合物、互変異性体または互変異性体混合物およびその塩の精製または同定において、中間体として使用し得るそれらの塩を含め、すでに記載した、または以後に記載する「化合物」、とりわけ、式(I)の化合物について言及する場合には、適切であり、得策であり、かつ他に断りがない限り、これら化合物の対応する互変異性体混合物、とりわけ、式(I)の化合物またはそれらのいずれかの塩の互変異性体混合物についても言及しているものと理解すべきである。
【0052】
「化合物....、その互変異性体;またはその塩」などと言及している場合、それは「化合物....、その互変異性体、または該化合物もしくは互変異性体の塩」を意味する。
【0053】
不斉炭素原子は、(R)−、(S)−または(RS)−立体配置、好ましくは、(R)−または(S)−立体配置に存在し得る。飽和結合をもつ原子での環の置換基は、可能であれば、シス−(=Z−)またはトランス(=E−)形状で存在し得る。従って、該化合物は異性体の混合物として、または好ましくは、純粋な異性体として、好ましくは、エナンチオマー−純−ジアステレオマーもしくは純エナンチオマーとして存在し得る。
【0054】
式(I)で示される化合物は有益な薬理学的性質を有し、Eph受容体関連(例えば、神経的)傷害および障害の処置において、例えば、神経疾患を処置する薬物として有用である。
【0055】
CNS−関連障害および傷害
中枢神経系に対する傷害は、通常、機能的に障害を受けた軸索の再生を、あるとしても非常に限定されたものとし、結果として永続的機能障害に至らしめる。一部のCNSニューロンは、出生後の軸索を再生する本来備わっている能力を失っていると思われる一方、多くの他のニューロン、例えば、錐体路(CST)ニューロンなどは、再生し得ると考えられるが、傷害部位の周囲の状況によっては、その動きが阻害される。(Goldberg et al., (2002) Science 296: 1860)。CNS再生に対する主要な障害は、ミエリン阻害因子と星状細胞グリオーシスの存在である。
【0056】
軸索再生は成体CNSにおける多くの阻害性作用、とりわけ、阻害性ミエリンタンパク質と神経膠瘢痕の形成により妨害される。ミエリン阻害と関連する分子(例えば、ノゴ(Nogo)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、および乏突起神経膠細胞−ミエリン糖タンパク質(OMgp))の同定には相当の進歩が見られるが、神経学的障害の処置または軽減のためのこれらタンパク質の標的化は、その解決が不完全である。脊髄傷害後に、個々のミエリンタンパク質またはその共通する受容体をインビボで遮断すると、部分的な軸索再生と、それに随伴して機能回復の改善が起こり得る;しかし、僅かなパーセントの軸索が再生するだけであり、より完全な治療的解決のためには、再生に対する他の障害を取り除く必要性を強調して示している(Simonen M., et al. (2003) Neuron 38: 201; Zheng B., et al. (2003) Neuron 38: 213)。
【0057】
神経膠瘢痕化の主たる成分は星状細胞グリオーシスであり、それによって正常な休止星状細胞が傷害に対して激しい応答を示す。(Stichel CC, et al. (1998) Cell Tissue Res 294: 1)。それらは神経膠原繊維酸性タンパク質(GFAP)の肥大性、増殖性、上方制御発現に適し、病巣部位での、およびそこから拡大する神経膠プロセスの緻密なネットワークを形成する。同時に、星状細胞は多様なサイトカインを分泌し、細胞接着性と細胞外マトリックス分子を生じるが、その一部は再生に阻害性である(例えば、硫酸コンドロイチン・プロテオグリカン(CSPG)およびコラーゲンIV)。当該星状細胞産物の沈降を遮断すると、軸索再生が促進される(Stitchel CC, et al.)。
【0058】
殆どの脊髄傷害関連のこれまでに試行されている治療薬は、ミエリン阻害因子または神経膠瘢痕の成分を克服することに集中しているので、Eph受容体の阻害に向けた薬剤(例えば、本発明化合物)は、神経再生を促進する新しい戦略の代表となる。
【0059】
Eph受容体およびエフリン
Eph受容体チロシンキナーゼ・サブファミリーは、膜透過受容体チロシンキナーゼの最大のサブファミリーであると考えられており、そのリガンドであるエフェリンと共に、神経成長に際しての細胞移動と位置づけの統御に、恐らく細胞間反発を調節することにより役割を果たしている(Pasquale, E. (1997) Curr. Opin. Cell Biol. 9:608-615)(Orioli and Klein (1997) Trends in Genetics 13:354-359)。Ephファミリーは錐体路と大脳前交連の形成に役割を果たしている(Kullander K., et al. (2001a) Neuron 29: 73; Henkemeyer M, et al. (1996) Cell 86: 35)。
【0060】
Eph受容体は密接に関連し合っており、それらがエフリンリガンドに結合したときに、活発にシグナルを送り(それらの影響は細胞−細胞の接触により仲介される)、それによって、前方および双方向にシグナルを伝達し得る。(Murai, K.K., et al. (2003) J Cell Sci. 116(14): 2823)。
【0061】
これらの受容体は3つの官能性ドメインを特徴とする;すなわち、細胞内チロシンキナーゼ触媒ドメイン、単一膜橋架けドメイン、および細胞外リガンド結合ドメインである。
【0062】
Eph受容体によるリガンド・エフリンの結合は、チロシン残基上のリン酸化を誘導し、それがSH2ドメインを含むシグナル伝達タンパク質の結合部位を確立し、一連のシグナル伝達経路を活性化する。エフリンはEph受容体を集団化し、自己リン酸化を誘導することによりEph受容体を活性化すると考えられ、一方、可溶性単体エフリンはEph受容体の活性化を阻害すると考えられる。(Davis et al. (1994) Science 266: 816)。
【0063】
16種の既知Eph受容体は配列相同性に基づいて、2つのサブグループ(EphAおよびEphB)に分類される。EphA受容体は優先してグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)−連結エフリン−Aリガンドに結合し、一方、EphB優先受容体は膜透過エフィン−Bリガンドに結合する。しかし、エフリン−リガンドはむしろ無差別であり、Eph受容体のそれらの活性化において選択性を欠く傾向がある。(Murai, K. et al. (2003) Molecular and Cellular Neuroscience 24:1000)。例えば、EphA4は、エフリンAリガンド・ファミリーのメンバーに加えて、リガンド・エフリンB2およびB3に結合し得る(従って、それにより活性化される)。
【0064】
Eph受容体ファミリーメンバーおよびそれらのエフリン・リガンドは、文献での知見に基づいて、軸索再生促進の標的としての興味を含め、神経障害および傷害の処置のための治療標的として興味深い。例えば、Eph−エフリン・シグナル伝達は、ニューロン成長錐体の崩壊を含め、接触反発を介して軸索指標を調節すると思われる(Wahl S., et al. (2000) J Cell Biol 149: 263; Kullander et al.);また、このファミリーのメンバーは神経障害後の成体において上方制御される(Moreno-Flores MT, et al. (1999) Neuroscience 91: 193; Willson CA, et al. (2002) Cell Transplant 11: 229);Eph受容体の異常な発現または不存在は、成熟CNSにおける傷害の結果を決定するに際して、極めて重要であることが証明し得た。
【0065】
EphA4
EphA4は成長中および成熟した神経系において重要な機能を有するEphAファミリーからの受容体チロシンキナーゼである。神経成長に際してのその既知の発現パターンと共に(Mori, T., et al. (1995) Brain Res Mol Brain Res 29:325; Ohta, K., et al. (1996) Mechanisms of Development(成長のメカニズム)54:59; Soans, C., et al. (1994) Oncogene 9:3353)、EphAは広範なシナプス改造作用を示す脳の領域において発現される(Murai, K., et al. (2003) Nature Neurosci 6:153)。成体において、EphAは、学習と記憶にとって決定的な2つの構造体、海馬と皮質において濃厚である。この受容体はまた神経稜細胞の移動、軸索突起の成長、および広範な可塑性を示す成熟脳構造体においても濃厚である(Murai, et al.)。
【0066】
最近の研究では、EphA4が脊髄傷害、軸索阻害および星状細胞グリオーシスの2つの決定的局面に関係していると見做している。(Goldshmit, Y., et al. (2004) J Neurosci. 24(45): 10064)。ゴールドシュミット(Goldshmit)は、野生型およびEphA−/−マウスにおいて脊髄の片側切断後の神経再生を比較し、星状細胞グリオーシスの欠如と同側軸索の再生を特徴とする、後者の全体的機能改善を発見した。改善が見られたそのメカニズムに関しては、実験(並びに文献)が、軸索再生におけるEph受容体の3つの役割を証明している。
【0067】
インビトロアッセイにより証明されるように、第一は、軸索上の受容体−リガンドに結合する星状細胞上、EphA4が仲介する神経突起発芽成長の直接阻害である。EphA4のかかる作用は、IFNの存在下に観察される星状細胞上の神経突起の発芽成長を阻害するメカニズムを提供し得る;ゴールドシュミットはこのことをEphA4発現の上方制御で示している。(Fok-Seang J., et al. (1998) Eur J Neurosci 10: 2400)。これらの結果は、EphA4が、細胞外マトリックスおよびミエリン由来分子などの他の阻害性成分に加えて、星状細胞グリオーシスに際して産生されるなお別の直接的阻害分子であることを示唆している。
【0068】
第二の、観察されることの稀なメカニズムは、再生する軸索上のEphA4よるもので、E16皮質ニューロンに対してと同様であり得る。しかし、EphA4は星状細胞と運動ニューロン上にのみ高度に発現され、傷害を受けた成熟脊髄においては、下降する軸索上に低レベルで存在することが判明した。
【0069】
EphA4が阻害作用を示す第三のメカニズムは、星状細胞を活性化し、グリオーシスと神経膠瘢痕の形成に導く上で、その極めて重要な役割を内包している。かかる活性化はサイトカイン刺激に対する応答性に依存していると思われ、またRho活性化に依存している可能性もある。このサイトカイン誘導応答は、星状細胞上のEphA4受容体発現の上方制御に寄与し得るものであり、増強されたリガンド結合と受容体活性化を可能とする。また可能なことは、サイトカイン誘導星状細胞増殖と肥大が、エフリンB分子のFGF2−およびPDGF−誘導リン酸化について示されているように(Chong et al., (2000) Mol Cell Biol 20: 724)、EphA4のトランス活性化により惹き起され得ること、それがRho活性化と細胞骨格再構成に導くということである。神経膠活性化における差異は、マクロファージ−ミクログリア活性化の明確な差異がない場合に星状細胞に特異的であると思われる。Ephとエフリンは、星状細胞と脳脊髄膜線維芽細胞間の相互作用に、神経膠瘢痕から線維芽細胞を排除する役割を演じていると報告されている。(Bundesen LQ, et al. (2003) J Neurosci 23: 7789)。
【0070】
製造工程
式(I)で示される化合物は、他の化合物について当該技術分野で基本的に既知である方法同様に、好ましくは、式(II):
【化3】

[式中、DおよびDはヒドロキシもしくは置換ヒドロキシであるか、または結合するホウ素原子および2つの酸素原子と一緒になって、式(IIA):
【化4】

の環を形成し、ここで、
Eはアルキレン、置換アルキレン、未置換もしくは置換シクロアルキレン、未置換もしくは置換ビシクロアルキレンまたは未置換もしくは置換トリシクロアルキレンである。]
で示されるボロン酸誘導体を、式(III):
【化5】

[式中、Rは、式(I)の化合物について上記に、または下記に定義するとおりであり、Lは脱離基である。]
で示されるカップリング・パートナーと反応させ、所望により式(I)の化合物を異なる式(I)の化合物に変換し、得られる式(I)の化合物の塩を遊離の化合物もしくは異なる塩に変換し、および/または得られる式(I)の遊離の化合物をその塩に変換することにより調製する。
【0071】
反応は、好ましくは、通例の条件、例えば、スズキ−ミヤウラのクロス−カップリング条件(参照例:Miyaura et al., Chem. Rev. 95, 2457 (1995))下、適切な(好ましくは、無水=絶対無水)溶媒、例えば、エチレングリコールジメチルエーテルもしくはジオキサンなどのエーテル、ヘキサンもしくはトルエンなどの炭化水素、またはエタノールなどのアルコール、またはそのいずれか2種以上の混合物の存在下、触媒、とりわけ、貴金属複合体触媒、例えば、イリジウム、ロジウムまたは好ましくはパラジウム触媒、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh))(このものは反応系中で、酢酸パラジウムなどのパラジウムおよび複合体リガンド、例えば、トリフェニルホスフィンからも形成し得る)の存在下、好ましくは、塩基、例えば、無機酸のアルカリ金属塩などの金属の酸付加塩、例えば、無機酸のアルカリ金属塩、例えば、(ナトリウムまたはカリウムなどの)リン酸塩または炭酸塩、炭酸のアルカリ金属塩、例えば、(ナトリウムまたはカリウムなどの)低級アルカン酸塩、例えば、酢酸塩、などの存在下、好ましくは上昇温度、例えば、25℃ないし還流温度、例えば、75℃ないし95℃の温度で実施する。反応は、好ましくは、窒素またはアルゴンなどの不活性ガス下に実施する。
【0072】
およびDがそれぞれ置換されたヒドロキシである場合、置換されたヒドロキシは、好ましくはアルキルオキシ、とりわけ、低級アルキルオキシ、アリールオキシ、特に、上記定義の未置換もしくは置換フェニルを有するフェニルオキシ、またはシクロアルキルオキシであり、その場合のシクロアルキルは、好ましくは、C−C−シクロアルキル、例えば、シクロペンチルもしくはシクロヘキシルである。
【0073】
およびDが(好ましい場合として)、結合するホウ素原子および酸素原子と一緒になって、上に示した式(IIA)の環を形成する場合、Eは、好ましくは、空間的に近傍の、または隣接する炭素原子である2個の異なる炭素原子、例えば、近接位(“1,2−”)または“1,3−”位(互いに相対的)で、ホウ素原子に結合する2個の酸素原子を担持する。
【0074】
アルキレンは、好ましくは、未分枝C−C12−、好ましくは、C−Cアルキレン部分、エチレンまたはプロピレン、より広い観点では、ブチレン、ペンチレンまたはヘキシレンであり、上記のように、2個の異なる炭素原子を介して、好ましくは、近接位または“1,3−”位で結合している。置換されたアルキレン(好適である)は、好ましくは、未置換であるか、または1個以上の、特に4個までの置換基により置換された上記定義の未分枝低級アルキレン部分である;該置換基は、好ましくは、メチルまたはエチルなどの低級アルキル(例えば、1−メチルエチレン、1,2−ジメチルエチレン、(好ましくは)2,2−ジメチルプロピレン(ネオペンチレン)もしくは(特に好ましくは)1,1,2,2−テトラメチルエチレンにおいて)、または本発明の広い意味では、ヒドロキシ(例えば、2−ヒドロキシプロピレンにおいて)、またはヒドロキシメチルなどのヒドロキシ−低級アルキル(例えば、1−ヒドロキシメチル−エチレンにおいて)から独立して選択される。
【0075】
未置換または置換シクロアルキレンは、好ましくは、Wについて記載したように、2個の異なる炭素原子を介して、好ましくは、近接位または“1,3−”位で結合したC−C12−、より好ましくは、C−C−シクロアルキレン、例えば、シクロヘキシレンまたはシクロペンチレンである。未置換または置換ビシクロアルキレンは、好ましくは、Eについて記載したように、2個の異なる炭素原子を介して、好ましくは、近接位または“1,3−”位で結合したC−C12−ビシクロアルキレンである。その例は、ピナニレン(2,3−(2,6,6−トリメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン)である。未置換または置換トリシクロアルキレンは、好ましくは、Eについて記載したように、2個の異なる炭素原子を介して、好ましくは、近接位または“1,3”−位で結合したC−C12−トリシクロアルキレンである。
【0076】
未置換もしくは置換シクロアルキレン、未置換もしくは置換ビシクロアルキレン、または未置換もしくは置換トリシクロアルキレンは、未置換であっても、あるいは1個以上の、とりわけ、3個までの置換基により置換されていてもよい;該置換基は、メチルもしくはエチルなどの低級アルキル、ヒドロキシ、メトキシなどのヒドロキシ−低級アルキル、または酸素原子を介して結合するモノ−もしくはオリゴ糖(好ましくは5個までの糖部分からなる“オリゴサッカリジル”)から独立して選択される。
【0077】
式(III)で示される化合物における脱離基Lは、好ましくは、ハロ、とりわけ、ヨード、ブロモ(好適)もしくはクロロ、またはペルフルオロアルキルスルホニルオキシ(例えば、−O−SO−(C2f+1);ここで、f=1、2または4)である。
【0078】
別法として、式(I)で示される化合物の製造は、原理的に、上に示した式(IIA)の基の代わりに脱離基Lをもつ式(II)の化合物を、また反応パートナーとして、脱離基Lの代わりに上に示した式(IIA)の基を担持する式(III)の化合物を採用することも可能である。従って、反応条件は上に示した式(II)および(III)の化合物の反応について記載した条件と同様である。
【0079】
所望の反応と変換
式(I)で示される化合物は、式(I)で示される異なる化合物に変換してもよい。例えば、低級アルコキシカルボニル置換基はアミノに水素化し得る。
【0080】
少なくとも1個の塩形成基を有する式(I)の化合物の塩は、それ自体既知の方法で調製し得る。例えば、式(I)で示される化合物の塩は、例えば、該化合物を適当な有機カルボン酸のアルカリ金属塩などの金属化合物、例えば、2−エチルヘキサン酸のナトリウム塩;有機アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属化合物、例えば、相当する水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩、例えば、水酸化、炭酸または炭酸水素ナトリウムもしくはカリウムなどにより;相当するカルシウム化合物により、またはアンモニアもしくは適当な有機アミンにより;好ましくは、化学量論的量または小過剰の塩形成剤を用いて処理することにより形成するとよい。式(I)で示される化合物の酸付加塩は、通例の方法で、例えば、該化合物を酸または適当なアニオン交換試薬で処理することにより得られる。酸および塩基塩−形成基、例えば、遊離のカルボキシ基および遊離のアミノ基を含む式(I)で示される化合物の内部塩は、例えば、酸付加塩などの塩を、例えば、弱塩基で等電点に中和することにより、またはイオン交換体で処理することにより形成し得る。
【0081】
式(I)で示される化合物の塩は、通例の方法で遊離の化合物に変換し得る;金属塩およびアンモニウム塩は、例えば、適当な酸での処理により、また酸付加塩は、例えば、適当な塩基性剤により処理して変換し得る。両方の事例において、適当なイオン交換体を使用してもよい。
【0082】
中間体および最終産物は標準的方法、クロマトグラフ法、分配法、(再)結晶化などを用いて、後処理および/または精製することができる。
【0083】
出発原料
出発原料は、例えば、好ましくは、以下のように調製し得る:
式(II)で示されるボロン酸誘導体は、好ましくは、式(IV):
【化6】

[式中、R、R、R、A、QおよびZは、式(I)で示される化合物について上記に定義したとおりであり;Gは脱離基、特に、式(III)の化合物において脱離基Lとして上記に定義したとおりである。]
で示される化合物と、式(VA)または(VB):
【化7】

[式中、DおよびDは、式(II)で示される化合物について上記に定義したとおりであり;Dは式(II)のもとで上記に定義した置換ヒドロキシである。]
で示される二ホウ素化合物とを、通例の反応条件下、すなわち、適切な(好ましくは、無水=絶対無水)溶媒、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランもしくはジオキサンなどのエーテル、炭化水素、例えば、ヘキサン、またはエタノールなどのアルコール、あるいはそのいずれか2種以上の混合物の存在下、イリジウム、ロジウムまたは好ましくはパラジウムなどの貴金属複合体触媒、例えば、好ましくは、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−ジクロロパラジウム(Pd(dppf)Cl)、複合体触媒、そして好ましくは、塩基、例えば、無機酸のアルカリ金属塩などの金属の酸付加塩、例えば、炭酸(ナトリウムもしくはカリウムなど)、または炭酸の塩、例えば、低級アルカン酸(ナトリウムもしくはカリウムなど)、例えば、酢酸塩などの存在下、好適な温度、例えば、20℃ないし反応混合物の還流温度、例えば、75℃ないし還流温度で、反応させることにより調製する。反応は、好ましくは、窒素またはアルゴンなどの不活性ガス下に実施する。別法として、式(IV)で示される化合物は、先ず、例えば、n−ブチルリチウムによりリチウム化し、次いで、得られるリチウム化産物を通例の反応条件下に式(VB)の化合物と反応させる。
【0084】
、R、R、QおよびZが式(I)で示される化合物について上記または下記に定義したとおりであり;Gが脱離基であり、Aが−C(=O)−NH−(−NH−で式(I)におけるQおよびZからなる環に結合する)である式(IV)で示される出発原料は、好ましくは、式(VI):
【化8】

[式中、RおよびRは、式(I)で示される化合物について上記に定義したとおりである。]
で示される炭酸の反応性誘導体と、式(VII):
【化9】

[式中、Q、ZおよびRは、式(I)で示される化合物について上記に定義したとおりであり;Gは式(IV)のもとで定義した脱離基である。]
で示されるアミノ塩基とを、適切な溶媒、例えば、アセトニトリルなどのニトリル中、好ましくは、0ないし50℃の温度、例えば、20ないし40℃の温度で、好ましくは、塩基、例えば、トリ−低級アルキルアミンなどの三級窒素塩基、例えば、トリエチルアミンの存在下に反応させることにより製造する。活性誘導体はその場で、例えば、式(IV)および(V)の化合物を適当な溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、塩化メチレン、または2種以上のかかる溶媒の混合物に溶かし、次いで、適当な塩基、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)またはN−メチルモルホリン、およびその場で式(III)の炭酸の好適な反応誘導体を形成する適当なカップリング剤、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(DCC/HOBT);O−(1,2−ジヒドロ−2−オキソ−1−ピリジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム・テトラフルオロボレート(TPTU);O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム・テトラフルオロボレート(TBTU);または1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を加えることにより、反応性誘導体に変換する。他の可能なカップリング剤の概説については、文献(例えば、Klauser; Bodansky, Synthesis 1972, 453-463)を参照されたい。反応混合物は、好ましくは、約−20℃ないし50℃の温度、とりわけ、0℃ないし室温で撹拌し、式(IV)の化合物を得る。別法として、式(VI)で示される炭酸は、反応性誘導体の形状で、例えば、塩化物などの炭酸ハロゲン化物として、炭酸との無水物、例えば、C−C−アルカン酸との無水物として、活性エステルとして、またはアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、リチウムもしくはカリウム塩の形状で使用する。両方の場合に、反応は、好ましくは、不活性ガス、例えば、窒素またはアルゴン下に実施し得る。
【0085】
式中、R、R、R、QおよびZが式(I)で示される化合物について上記または下記に定義したとおりであり;Gが脱離基であり、Aが−NH−C(=O)−(−C(=O)−で式(I)におけるQおよびZからなる環に結合する)である式(IV)で示される出発原料は、式(VIII):
【化10】

[式中、R、QおよびZは、式(I)で示される化合物について定義したとおりであり;Gは式(IV)のもとで定義した脱離基である。]
で示される炭酸の反応性誘導体(その場で形成するか、または直接提供する、上記式(VI)の炭酸の反応性誘導体を用いる類似の反応条件を参照)から、式(IX):
【化11】

[式中、RおよびRは、式(I)で示される化合物について定義したとおりである。]
で示されるアミノ化合物との反応により合成し得る;その場合に使用される反応条件は、式(VI)および(VII)で示される化合物の反応について本明細書に記載した条件と同様である。
【0086】
Lがペルフルオロアルカンスルホニルオキシ脱離基である式(III)で示される化合物は、例えば、Lの代わりにヒドロキシ基が存在する相当する化合物と、相当するペルフルオロアルカンスルホン酸無水物とを、例えば、ハロゲン化炭化水素などの適切な溶媒、例えば、ジクロロメチレン中、トリ−低級アルキルアミンなどの(好ましくは、三級窒素)塩基、例えば、トリエチルアミンの存在下、−10℃ないし50℃の好適な温度、例えば、0℃ないし25℃の温度で反応させることにより調製し得る。式(III)で示される化合物(式中、Lはハロである)は、例えば、Lの代わりに水素が存在する相当する前駆体化合物と、ハロゲン化剤、例えば、N−ブロモコハク酸イミドとを、濃硫酸/トリフルオロ酢酸中、0ないし40℃の好適な温度、例えば、室温で反応させることにより調製し得る。
【0087】
その他の出発原料、例えば、式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)の化合物は既知であるか、当該技術分野で既知の方法と同様に入手し得るか、および/または市販品として入手し得る;とりわけ、実施例に示した方法により、またはそれと同様に入手し得る。
【0088】
一般法の条件
以下は一般的にすでに記載した工程および以降に記載する工程すべてに適用する一方、上記または以下に記載する反応条件が好適である:
すでに記載した反応および以降に記載する反応のいずれにおいても、保護基について具体的に記載されていなくても、適切な場合、または要望される場合、所定の反応において反応の生起を意図していない官能基を保護するために保護基を使用してもよい;保護基は適切なまたは所望の段階で導入および/または除去することができる。それ故、保護および/または脱保護について具体的な考察のない反応が本明細書に記載されている場合であっても、保護基の使用で成り立つ反応が可能なものとして包含される。
【0089】
本文書の範囲内で、式(I)で示される特定の、所望とする最終産物の構成要素ではないが容易に除去し得る基のみが、特に文面に断りのない限り、「保護基」と見做される。かかる保護基による官能基の保護、保護基それ自体、およびそれらの除去に適切な反応は、例えば、以下の著作文献に記載されている:J. F. W. McOmie, “Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London and New York 1973, in T. W. Greene and P. G. M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis”, Third edition, Wiley, New York 1999, in “The Peptides”; Volume 3 (editors: E. Gross and J. Meienhofer), Academic Press, London and New York 1981, in “Methoden der organischen Chemie” (Methods of Organic Chemistry), Houben Weyl, 4th edition, Volume 15/I, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974, in H.-D. Jakubke and H. Jeschkeit, “Aminosaeuren, Peptide, Proteine” (Amino acids, Peptides, Proteins), Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield Beach, and Basel 1982, and in Jochen Lehmann, “Chemie der Kohlenhydrate: Monosaccharide und Derivate” (Chemistry of Carbohydrates: Monosaccharides and Derivatives), Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974。保護基の特徴は、それらが、例えば、加溶媒分解、還元、光分解、または別法として、生理学的条件下(例えば、酵素による切断)、容易に除去し得る(すなわち、不所望の二次反応を起こすことなく)ことである。
【0090】
上記の工程段階のすべては、それ自体既知の反応条件下、好ましくは具体的に述べた条件下、溶媒なし、または通例、溶媒または希釈剤の存在下、好ましくは、使用される試薬類に不活性であり、かつそれらを溶解する溶媒または希釈剤の存在下、触媒、縮合剤もしくは中和剤、例えば、カチオン交換体(例えば、H型で)などのイオン交換体の存在または不存在下、反応の、および/または反応剤の性質に依存的に、低温、常温または上昇温度、例えば、約−100℃ないし約190℃の温度範囲で、好ましくは約−80℃ないし約150℃で、例えば、−80ないし−60℃で、室温で、−20ないし40℃で、または還流温度で、大気圧下または密閉容器中、適切な場合には加圧下に、および/または不活性気流中、例えば、アルゴンまたは窒素気流下に実施し得る。
【0091】
特定の反応に適当な溶媒から選択し得る溶媒は、その工程の記載で特に断りを示さない限り、具体的に言及した溶媒、または例えば、水、低級アルカン酸低級アルキルなどのエステル、例えば、酢酸エチル;脂肪族エーテルなどのエーテル、例えば、ジエチルエーテル、または環状エーテル、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン;液状芳香族炭化水素、例えば、ベンゼンまたはトルエン;アルコール、例えば、メタノール、エタノールまたは1−もしくは2−プロパノール;ニトリル、例えば、アセトニトリル;ハロゲン化炭化水素、例えば、塩化メチレンまたはクロロフォルム;酸アミド、例えば、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド;ヘテロ環状窒素塩基などの塩基、例えば、ピリジンまたはN−メチルピロリジン−2−オン;低級アルカン酸無水物などのカルボン酸無水物、例えば、無水酢酸;環状、鎖状または分枝状の炭化水素、例えば、シクロヘキサン、ヘキサンもしくはイソペンタン、またはそれらの混合物、例えば、水溶液を包含する。かかる溶媒混合物はまた、後処理に、例えば、クロマトグラフィーまたは分配による処理に使用してもよい。
【0092】
該化合物は、その用語が各事例において、遊離の化合物および/または塩−形成基が存在する場合のそれらの塩を含んでおり、水和物の形状でも得られるか、またはそれらの結晶は、例えば、溶媒和を形成する結晶化に使用する溶媒を含み得る。異なる結晶形が存在し得る。
【0093】
本発明はまた製造法の形態にも関係し、その製造法ではその製造法のいずれかの段階で中間体として入手し得る化合物が出発原料として使用され、残りの製造工程が実施されるか、またはその製造法では、出発原料が該反応条件下で形成されるか、または誘導体の形状で、例えば、保護形状または塩の形状で使用されるか、または本発明による製造法により得られる化合物は、該製造法の条件下で製造され、さらにその場で処理加工される。本発明の製造法において、これらの出発原料は、好ましくは、好適であると記載されている式(I)の化合物となるものが使用される。実施例に記載した条件と同じか、または類似の反応条件に、特別の優先性が与えられる。
【0094】
本発明による好適な実施態様
以下の好適な実施態様においては、いずれもの1つ以上の表現が、上記および下記に提供した相当するより具体的な定義と置き換え可能であり、結果として、本発明のより強力な好適な実施態様を与える。
【0095】
本発明の好適な実施態様は、式(I)において、Qが−CH=CH−であり、R、R、R、R、R、AおよびZが式(I)で定義したとおりである化合物、またはその塩(好ましくは、医薬的に許容される塩)またはその使用に関する。
【0096】
本発明の別の好適な実施態様は、式(I)において、Aが−C(=O)−NH−(式(I)におけるQおよびZからなる環に結合する−NH−をもつ)であり、R、R、R、R、R、QおよびZが式(I)で定義したとおりである化合物、またはその塩(好ましくは、医薬的に許容される塩)またはその使用に関する。
【0097】
別の好適な実施態様は、式(I)において、RおよびRの一方が水素であり、他が:
【化12】

[式中、「Alk」はアルキル、好ましくは、低級アルキル、より好ましくは、メチルまたはエチルである;R、R、R、A、QおよびZは式(I)の化合物について上記でまたは下記で定義したとおりである。]
からなる群より選択される基である化合物またはその塩(好ましくは、医薬的に許容される塩)に関する。
【0098】
本発明は、より好ましくは:
およびRのそれぞれは水素であり;
はC−Cアルキル、特にメチルであり;

【化13】

からなる群より選択される二環式ヘテロシクリルであり:
ここで
XはCH、NまたはC−NHであり;
YはCHまたはNである;
ただし、XおよびYの両方が同時にNであることはなく;
そして、Rは水素、C−Cアルキルまたはフェニルである;
(ここで、Rは、好ましくは
【化14】

の基である)
Aは、−C(=O)−NH−(−NH−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)または−NH−C(=O)−(−C(=O)−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)であり;
ZはCHであり;そして
Qは−CH=CH−である
式(I)で示される化合物に、または1個以上の塩形成基が存在する場合には、(好ましくは、医薬的に許容される)その塩に関する。
【0099】
本発明の好適な実施態様は、式中のQはSであり、R、R、R、R、R、AおよびZは、式(I)の化合物について上記または下記で定義したとおりである式(I)で示される化合物、または医薬的に許容されるその塩の(上記定義の)使用に関する。
【0100】
好適には、また、式中のAはNH−C(=O)(−C(=O)−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)であり、R、R、R、R、R、QおよびZは、式(I)の化合物について上記または下記で定義したとおりである、式(I)で示される化合物、または医薬的に許容されるその塩の(上記定義の)使用である。
【0101】
とりわけ好適なのは、式(I)で示される化合物、または医薬的に許容されるその塩の使用、Eph受容体関連(例えば、神経的)傷害および障害の処置のための医薬製剤の製造における使用である。また好適なのは、Eph受容体関連(例えば、神経的)傷害および障害の処置における使用のために上に示した式(I)で示される化合物、または医薬的に許容されるその塩である。
【0102】
医薬組成物
本発明は、Eph受容体関連(例えば、神経的)傷害および障害の治療処置(本発明の広範な側面では予防も含む)における式(I)で示される化合物を含有してなる医薬組成物の使用にも関する。
【0103】
本発明の薬理学的に許容される化合物は、例えば、有効成分として式(I)で示される化合物またはその医薬的に許容される塩の有効量を、1種以上の無機もしくは有機の、固体もしくは液体の医薬的に許容される担体の有意な量と一緒に、またはそれと混合して含有してなる医薬組成物の調製のために使用し得る。
【0104】
また、本発明はキナーゼ活性の阻害に応答する疾患の処置、または本発明の広範な局面においては予防(=防止)のために、温血動物、とりわけヒト(または温血動物、とりわけヒト由来の細胞または細胞株、例えば、リンパ球)への投与に適する医薬組成物であって、当該阻害に有効な式(I)で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩の一定量を、少なくとも1種の医薬的に許容される担体と共に含有してなる医薬組成物に関する。
【0105】
本発明による医薬組成物は、温血動物(とりわけ、ヒト)への経腸投与用組成物(例えば、鼻腔、直腸もしくは経口)、または非経口投与用組成物(例えば、筋肉内または静脈内)であり、薬理学的有効成分の有効用量を、単独で、または医薬的に許容される担体の有意量と共に含有してなる組成物である。有効成分の投与量は、温血動物の種類、体重、年齢と個々の条件、個々の薬物動態学データ、処置すべき疾患、および投与形態による。
【0106】
本発明はまたキナーゼの阻害に応答する疾患を処置する方法に関する;該方法は(言及された疾患に対して)予防的にまたは特に治療的に有効な量の本発明による式(I)の化合物を、言及した疾患の一つのために、かかる処置を必要とする温血動物、例えば、ヒトに投与することからなる。
【0107】
温血動物、例えば、体重約70kgのヒトに投与すべき式(I)で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩の投与量は、好ましくは、約3mgないし約10g、より好ましくは約10mgないし約1.5g、最も好ましくは、約100mgないし約1000mg/人/日であり、これを好ましくは、例えば、同じサイズであり得る1回ないし3回用の単一投与剤に分割する。通常、小児は成人用量の半量を投与する。
【0108】
該医薬組成物は、約1%ないし約95%、好ましくは約20%ないし約90%の有効成分を含有してなる。本発明による医薬組成物は、例えば、単位投与量の形状、例えば、アンプル、バイアル、坐剤、糖衣錠、錠剤またはカプセルなどの形状としてもよい。
【0109】
本発明の医薬組成物はそれ自体既知の方法、例えば、常套の溶解、凍結乾燥、混合、顆粒化または舐剤調製方法により調製し得る。
【0110】
有効成分の溶液およびさらに懸濁液の場合、特に等張水溶液または懸濁液が好適に使用されるが、例えば、有効成分を単独で、またはマンニトールなどの担体と一緒に含有してなる凍結乾燥組成物の場合に、かかる溶液または懸濁液は使用前に調製することが可能である。該医薬組成物は滅菌処理可能であり、および/または添加剤、例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤および/または乳化剤、可溶化剤、浸透圧調節剤および/または緩衝剤を含有していてもよく、それ自体既知の方法で、例えば、常套の溶解または凍結乾燥プロセスにより調製する。当該溶液または懸濁液は増粘性物質、例えば、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンなどを含有し得る。
【0111】
油中懸濁液は油成分として、注射目的に常用される植物油、合成油または半合成油を含有してなる。酸成分として、8〜22個、特に12〜22個の炭素原子をもつ長鎖脂肪酸を含む特に液状の脂肪酸エステルについても言及し得る:例えば、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、または対応する不飽和酸、例えば、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、またはリノール酸であり、所望により、抗酸化剤、例えば、ビタミンE,β−カロテンまたは3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンなどを加える。これら脂肪酸エステルのアルコール成分は、最大6個の炭素原子を有し、モノ−もしくはポリ−ヒドロキシ、例えば、モノ−、ジ−もしくはトリ−ヒドロキシアルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールもしくはペンタノールまたはその異性体であるが、特にグリコールおよびグリセロールは除く。従って、脂肪酸エステルの以下の例が言及すべきものである:オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、「ラブラフィル(Labrafil)M2375」(トリオレイン酸ポリオキシエチレングリコール;ゲテフォッセ、パリ)、「ミグリオール(Miglyol)812」(C8ないしC12の鎖長の飽和脂肪酸のトリグリセリド;ヒュールス(Huels)AG、ドイツ);ただし、特に植物油、例えば、綿実油、アーモンド油、オリーブ油、ひまし油、ゴマ油、ダイズ油、およびさらに特にラッカセイ油は除く。
【0112】
注射用組成物は無菌条件下で通常の方法で調製する;同様のことが組成物のアンプルまたはバイアルへの導入および容器の密閉にも当てはまる。
【0113】
経口投与用の医薬組成物は、有効成分と固形担体とを組合わせることにより、所望により、得られる混合物を顆粒化し、混合物を加工処理し、所望により、または要すれば、適切な添加剤を加えた後、錠剤、糖衣錠コアまたはカプセルにすることにより得ることができる。また、有効成分を一定量拡散または放出するようなプラスチック担体にそれらを取り込ませることも可能である。
【0114】
適当な担体は、特に、充填剤、例えば、ラクトース、サッカロース、マンニトールまたはソルビトールなどの糖類、セルロース製剤および/またはリン酸カルシウム、例えば、リン酸トリカルシウムまたはリン酸水素カルシウム、およびデンプン糊などの結合剤、例えば、トウモロコシ、コムギ、コメもしくはバレイショデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウム・カルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドン、および/または所望により、崩壊剤、例えば、上記のデンプン、および/またはカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)である。添加剤は、特に、流動コンディショナーおよび滑沢剤、例えば、ケイ酸、タルク、ステアリン酸もしくはその塩、例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはカルシウム、および/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠コアは適当な任意の腸溶コーティング剤で調製するが、就中、濃縮糖溶液が使用される;該糖溶液は、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、または適当な有機溶媒中のコーティング溶液、または腸溶コーティング剤調製のためには、適当なセルロース製剤の溶液、例えば、フタル酸エチルセルロースもしくはフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有し得る。カプセルはゼラチンで作製した乾式充填カプセルおよびゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤で作製したソフトシールカプセルである。乾式充填カプセルは、例えば、充填剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、および/または滑沢剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および所望により、安定化剤を含み得る。ソフトカプセルの場合、有効成分は、好ましくは、適当な油性添加剤、例えば、脂肪油、パラフィン油または液状ポリエチレングリコールなど中に溶解または懸濁する;安定化剤および/または抗菌剤を加えることも可能である。染料または色素を、例えば、同定の目的で、または有効成分の異なる用量を示すために、錠剤または糖衣錠コーティング剤またはカプセル外皮に加えてもよい。
【0115】
組合わせ剤
本発明化合物は、Rhoキナーゼ阻害剤、古典的PKCイソ型の阻害剤、ノゴAまたはノゴ受容体に対する遮断抗体、コンドロイチナーゼABCもしくはGAG側鎖オフ・プロテオグリカンを切断する他の試薬、および本来備わっているニューロンの成長能力を増大させる薬剤など、突起成長阻害を克服することの知られた他の薬剤との組合わせに有利となるようにも使用し得る(例えば、cAMPおよびbcl−2)。
【0116】
非排他的例として、本発明化合物は、ミエリン阻害因子ノゴ、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、または希突起膠細胞−ミエリン糖タンパク質OMgpを遮断し得る薬剤との併用療法に使用し得る。
【0117】
コード番号、一般名称または商品名により同定される活性薬剤の構造は、標準的概要集「メルクインデックス」の現行版から、またはデータベース、例えば、国際特許(例えば、IMS World Publications)から引き出し得る。
【0118】
式(I)の化合物と組合わせて使用し得る上記の化合物は、上に引用した文献などの技術分野で記載されているように調製し、投与し得る。
【0119】
以下の実施例は単に説明するためのものであって、如何なる方法でも本発明請求項の範囲を限定することを意味しない。
【実施例】
【0120】
実施例1〜12:合成
以下の実施例は本明細書に掲載した略号を採用し、他の意味で記載しない限り、以下の条件を採用する:温度が示されていない場合、反応は外気温度(室温)で実施する;また、溶媒の比、例えば、溶出液または溶媒混合物の比は、容量/容量(v/v)で示す。
【0121】
溶媒の比、例えば、溶出液または溶媒混合物の比は、容量/容量(v/v)または容量パーセントで示す。温度は摂氏で測定する。特に断りのない限り、反応はRT(室温)で実施する。R値は、それぞれ命名した溶媒系を用いる薄層クロマトグラフィーにより、各物質が移動した距離と、溶出液前端が移動した距離の比を示すものであり、シリカゲル薄層プレート(メルク、ダルムシュタット、ドイツ)上で測定する。
【0122】
HPLCが言及されている場合の分析用HPLCの条件は、以下のとおりである:
カラム:(70×4.0mm)HPLCカラムCC70/4ヌクレオシル100−3C18(3μm平均粒子径、オクタデシルシランで共有結合誘導化したシリカゲルを含む;マッチェリー&ナーゲル、デューレン、ドイツ)。UV吸収215nmで検出。保持時間(t)は分で示す。流速:1ml/分。
勾配:20%→100% a)/b)5分間+1分間100%a)。a);アセトニトリル+0.1%TFA;b):水+0.1%TFA。
【0123】
他のHPLC条件:
HPLC(GRAD3):
カラム:(250×4.6mm)逆相物質C18−ヌクレオシル充填(5μm平均粒子径、オクタデシルシランで共有結合誘導化したシリカゲルを含む;マッチェリー&ナーゲル、デューレン、ドイツ)。UV吸収215nmで検出。保持時間(t)は分で示す。流速:1ml/分。
勾配:5%→40% a)/b)7.5分間+7分間40%a)。a);アセトニトリル+0.1%TFA;b):水+0.1%TFA。
【0124】
使用する短縮型および略号は、以下の定義をもつ:
conc.:濃縮;DMF:N,N−ジメチルホルムアミド;MS−ES:マス・スペクトル法(電子スプレー);h:時間;Me:メチル;min:分;mL:ミリリットル;m.p.:融点;RT:室温;TFA:トリフルオロ酢酸;THF:テトラヒドロフラン(Na/ベンゾフェノン上で蒸留);TLC:薄層クロマトグラフィー;t:保持時間。
【0125】
実施例1:N−(3−イソキノリン−7−イル−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(化合物1)
【化15】

乾燥ジオキサン(28mL)中、N−[4−メチル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェニル]−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(1.74g、4.3mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸イソキノリン−7−イルエステル(1.081g、3.9mmol)の溶液に、1.23g(5.79mmol)のリン酸カリウムを加え、この懸濁液に窒素流を15分間ゆるやかに吹き込み、脱気溶液とする。0.232g(0.33mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを添加した後、その混合物を90℃で10時間加熱する。同量の触媒とリン酸カリウムを再度添加し、その混合物を90℃で17時間撹拌する。反応混合物を冷却し、ハイフロスーパーセル(登録商標)(フルカ、ブッフス、スイス)で濾過し、残渣をジオキサンで洗浄する。併合したジオキサン溶液を蒸発させ、褐色の残渣をコンビ−フラッシュ・コンパニオン(商標)(イスク・インク)装置上、120gのシリカゲルカラムを用いるクロマトグラフィーにより精製する。tert−ブチルメチルエーテル/ヘキサン(1:1ないし4:1)の勾配を使用する。精製フラクションをプールし、蒸発させて標題化合物をピンクの泡状物として得る。R(tert−ブチルメチルエーテル)=0.32;HPLC t=3.24分;MS−ES+:(M+H)+=407。
【0126】
工程1.1:N−[4−メチル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェニル]−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド
【化16】

THF(50mL)中、5.0g(14mmol)のN−(3−ブロモ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドおよび3.42g(34.5mmol)の酢酸カリウムの混合物に、窒素を約20分間吹き込む。4.06mg(16mmol)のビス−(ピナコラト)−ジボランを加えた後、6mol%の1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム二塩化物(700mg、0.8mmol)を加え、得られる混合物を18時間加熱還流する。反応混合物をRTに冷却し、酢酸エチルで希釈する。この混合物を濃塩化ナトリウム溶液で洗った後、酢酸エチル相を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発する。粗製の産物をジクロロメタンを溶媒とするフラッシュ・クロマトグラフィーにより精製する。標題化合物を無色固体として得る;m.p.148−152℃;R(ジクロロメタン)=0.36;HPLC t=4.82分;MS−ES+:(M+H)+=406。
【0127】
工程1.2:N−(3−ブロモ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド
【化17】

アセトニトリル(80mL)中の5.8mL(39mmol)の塩化3−トリフルオロ−ベンゾイルの溶液に、トリエチルアミン12.2mL(78mmol)をRTで滴下し、次いで、3−ブロモ−4−メチル−アニリン7.8g(42.9mmol)を加えた。3−トリフルオロメチル−アニリンをゆっくり添加する間、温度が約30℃に上昇する。混合物を室温で10時間撹拌し、次いで、0℃に冷却する。水を加え(100mL)、得られる沈殿を濾取し、水洗し、乾燥する。固形物をヘキサンに懸濁し、数分間撹拌し、濾過し、再度乾燥し、標題化合物を無色固体として得る。m.p.153−155℃;HPLC t=4.54分。
【0128】
工程1.3:トリフルオロメタンスルホン酸イソキノリン−7−イルエステル
【化18】

ジクロロメタン100mL中、5.8g(0.04mol)の7−ヒドロキシキノリンおよび6.68mL(0.048mol)のトリエチルアミンの溶液を氷浴で冷却し、これに7.26mL(0.044mol)のトリフルオロ−スルホン酸無水物を30分で滴下する。添加終了後、冷却浴を除き、暗色の混合物をRTで1.5時間撹拌する。反応混合物を氷水100mLに注ぎ、ハイフロスーパーセル(登録商標)(珪藻土に基づく濾過剤;フルカ(ブッフス、スイス)から入手)で二相混合物を濾過する。有機層を分離し、10%クエン酸(50mL)、食塩水(50mL)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発して褐色残渣を得る。これをジクロロメタン/酢酸エチル(100:2.5ないし100:5)によるフラッシュ・クロマトグラフィーにより精製する。精製フラクションをプールし、蒸発させて橙色油を得る。HPLC t=2.35分;R(tert−ブチルメチルエーテル)=0.38;MS−ES+:(M+H)+=278。
【0129】
実施例2:N−(4−メチル−3−キナゾリン−6−イル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(化合物2)
【化19】

トルエン(3mL)およびエタノール(0.375mL)中、N−[4−メチル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェニル]−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(0.456g、1.125mmol)および6−ブロモ−キナゾリン(0.157g、0.75mmol)の混合物を、2モル炭酸ナトリウム溶液(0.75mL)で処理し、得られた混合物に窒素を該混合物を通して5分吹き込んで、脱気する。酢酸パラジウム(0.0075g、0.034mmol)およびトリフェニルホスフィン(0.0293g、0.117mmol)を添加した後、その混合物を90℃で2時間撹拌する。同量の酢酸パラジウムとトリフェニルホスフィンを再度添加し、その混合物を90℃で6時間撹拌する。反応混合物を冷却し、酢酸エチル10mLと水4mLを加える。二相混合物をハイフロスーパーセル(登録商標)(フルカ、ブッフス、スイス)で濾過し、有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させ、褐色の樹脂を得る。粗製の産物をコンビ−フラッシュ・コンパニオン(商標)(イスク・インク)装置上、40gのシリカゲルカラムを用いるクロマトグラフィーにより精製する。ジクロロメタン/メタノール(100:1ないし100:15)の勾配を使用する。濃厚化フラクションは同じシステム上、40gのシリカゲルカラムと溶媒としてtert−ブチルメチルエーテルを用いて再クロマトする。精製フラクションをプールし、蒸発させて標題化合物を黄褐色の泡状物として得る。R(ジクロロメタン/エタノール=9:1)=0.56;HPLC t=3.23分;MS−ES+:(M+H)+=408。
【0130】
工程2.1:6−ブロモ−キナゾリン
【化20】

温度計と機械的撹拌機を備えた反応容器に、トリフルオロ酢酸(10mL)を容れる。キナゾリン(2.6g、0.020mol)を20℃で加え、次いで、96%硫酸3.4mLを加える。次いで、N−ブロモコハク酸イミド(4.8g、0.027mol)を5分割して30分おきに加える。添加終了後、黄色の混合物をRTで17時間撹拌する。トリフルオロ酢酸とロータリーエバポレーター(ロタバップ)で除去し、残渣を20gの砕氷に注ぐ。30%水酸化ナトリウム溶液により混合物のpHを8〜9に調整する。得られる懸濁液を酢酸エチル40mLで希釈し、濾過する。有機層を分離し、水相を酢酸エチル20mLで抽出する。併合した酢酸エチル抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させる。残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1:3ないし1:2)によるフラッシュ・クロマトグラフィーに付し、標題化合物を無色結晶として得る。m.p.155−156℃;HPLC t=1.29分;R(酢酸エチル/ヘキサン、3:2)=0.36;MS−ES+:(M+H)+=210.9。
【0131】
実施例3:3−イソキノリン−7−イル−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド(化合物3)
【化21】

異なる出発原料として4−メチル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)ベンズアミドを用い、触媒の2回目の添加を必要としない以外、実施例1に記載の手順と同じ手順を使用する。標題化合物を無色固体として得る。m.p.189−191℃;HPLC t=3.30分;R(酢酸エチル/ジクロロメタン、1:4)=0.21;MS−ES+:(M+H)+=407。
【0132】
工程3.1:4−メチル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド
【化22】

3−ブロモ−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミドから出発する以外、実施例1の工程1に記載した手順と同じ手順を用いる。反応時間は8時間である。標題化合物は黄褐色固体として得る。m.p.157−159℃;R(ジクロロメタン)=0.36;HPLC t=4.93分;MS−ES+:(M+H)+=406。
【0133】
工程3.2:3−ブロモ−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド
【化23】

アセトニトリル(120mL)中、14g(60mmol)の塩化3−ブロモ−4−メチル−ベンゾイルの溶液に、RTで、12.6g(120mmol)のトリエチルアミンを、次いで、8.3mL(66mmol)の3−トリフルオロメチル−アニリンを滴下する。3−トリフルオロメチル−アニリンをゆっくり滴下している間に、温度が約35℃に上昇する。この混合物を室温で5時間撹拌し、次いで、酢酸エチルで希釈する。得られる混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液、1N−塩酸および食塩水で順次洗い、次いで、硫酸ナトリウムで乾燥する。溶媒を蒸発させると褐色油を得て、これをエーテル/石油エーテルで結晶化し、標題化合物を無色固体として得る。m.p.157−158℃;HPLC t=4.63分;R(ジクロロメタン)=0.75。
【0134】
実施例4:4−メチル−3−キナゾリン−6−イル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド(化合物4)
【化24】

異なる出発原料として実施例3.1の標題化合物を用い、触媒の2度目の添加を必要としない以外、実施例2に記載の手順と同じ手順を使用する。標題化合物を無色泡状物として得る。HPLC t=3.31分;R(tert−ブチルメチルエーテル)=0.21;MS−ES+:(M+H)=408。
【0135】
実施例5:N−(3−ベンゾチアゾール−6−イル−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(化合物5)
【化25】

異なる出発原料として6−ブロモ−ベンゾチアゾールを用い、触媒の2度目の添加を必要としない以外、実施例2に記載の手順と同じ手順を使用する。反応時間2時間、精製はフラッシュ・クロマトグラフィーによる。標題化合物を無色固体として得る。m.p.94−96℃;HPLC t=4.58分;R(ジクロロメタン/エタノール、98:2)=0.3;MS−ES+:(M+H)+=413。
【0136】
実施例6:3−ベンゾチアゾール−6−イル−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド(化合物6)
【化26】

出発原料として、6−ブロモ−ベンゾチアゾールおよび実施例3.1の標題化合物を用い、触媒の2度目の添加を必要としない以外、実施例2に記載の手順と同じ手順を使用する。反応時間3時間。標題化合物を無色固体として得る。m.p.102−104℃;HPLC t=4.66分;R(ジクロロメタン/エタノール、98:2)=0.3;MS−ES+:(M+H)+=413。
【0137】
実施例7:N−(4−メチル−3−フタラジン−6−イル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(化合物7)
【化27】

触媒の2度目の添加を必要としない以外、実施例2に記載の手順と同じ手順を使用する。反応時間3時間。標題化合物を無色固体として得る。m.p.205−206℃;HPLC t=3.34分;MS−ES:(M+H)=408。
【0138】
出発原料は以下のように調製する。
工程7.1:6−ブロモ−フタラジン
【化28】

エタノール(4mL)およびジクロロメタン(4ml)中、1.0g(4.7mmol)の4−ブロモ−ベンゼン−1,2−ジカルバルデヒドの溶液を、0℃、窒素下、ヒドラジン水和物(0.684mL、14.1mmol)とエタノール(4.7mL)からなる溶液に、40分間にわたり滴下する。得られる懸濁液を0℃で1時間撹拌し、次いで、溶媒を蒸発させる。結晶性物質をトルエン(20mL)と共に撹拌し、溶媒を再度蒸発させる。この手順をジクロロメタンで繰り返す。最後に、生成物を真空下に60℃で8時間乾燥し、標題化合物を無色結晶として得る。m.p.140−143℃、HPLC t=1.49分;ME−ES:(M+H)=210.9。
【0139】
工程7.2:4−ブロモ−ベンゼン−1,2−ジカルバルデヒド
【化29】

標題化合物は文献(O. Farooq, Synthesis 10, 1035-1037 (1994))記載の手法に従い、(4−ブロモ−2−ヒドロキシメチル−フェニル)−メタノールのスワーン酸化により合成し、僅かに黄色の結晶として得る。m.p.97−100℃;MS−ES:(M+H)=210.9+212.9。
【0140】
工程7.3:3−(4−ブロモ−2−ヒドロキシメチル−フェニル)メタノール
【化30】

1,2−ジメトキシエタン(24mL)中、3g(12.2mmol)の4−ブロモ−フタル酸の溶液に、1.394g(36.8mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを10回に分けて0℃で添加する。15分間撹拌した後、4.61mL(36.5mmol)の三フッ化ホウ素・エーテレートと8mLの1,2−ジメトキシエタンからなる溶液を10分以内に加える。0℃で10分間撹拌した後、混合物をRTまで加温し、2時間撹拌を続ける。次いで、反応混合物を40gの砕氷にゆっくりと加え、水性混合物を酢酸エチルで蒸発する。併合した酢酸抽出液を水と食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させる。残留する黄色油(粗製物)を、コンビフラッシュ・コンパニオン(商標)(イスコ・インク)クロマトグラフィー装置上、120gのシリカゲルカラムによるクロマトグラフィーにより精製する。ジクロロメタン/酢酸エチル0→50%酢酸エチルの勾配を用いる。標題化合物を油として得、これを放置して結晶化させる。m.p.79−81℃;HPLC t=1.94分;MS−ES:(M+H)=214+216。
【0141】
実施例8:4−メチル−3−フタラジン−6−イル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド(化合物8)
【化31】

実施例2に記載の手順と同じ手順を使用する。標題化合物:m.p.270−272℃;HPLC t=3.43分;R(ジクロロメタン/エタノール)=0.32;MS−ES(M+H)=408。
【0142】
実施例9:N−(3−ベンゾチアゾール−5−イル−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(化合物9)
【化32】

5−ブロモ−ベンゾチアゾールから出発して、実施例2に記載の手順と同じ手順を使用する。反応時間:合計4時間。標題化合物を無色固体として得る。M.p.90−93℃;HPLC t=4.54分;R(ジクロロメタン(エタノール)=0.30;MS−ES:(M+H)=413。
【0143】
出発原料は以下のように調製する:
工程9.1:5−ブロモ−ベンゾチアゾール
【化33】

35%臭化水素酸溶液(18mL)中、4−アミノ−ベンゾチアゾール(3.0g、0.02mol)に、亜硝酸ナトリウム(1.19g、0.0195mmol)と水(11mL)との溶液を0℃でゆっくりと加えてジアゾ化する。0℃で1時間撹拌した後、褐色溶液をCuBr(3.3g、0.023mol)と35%臭化水素酸溶液(45mL)との暗色溶液に0℃で滴下する。反応混合物を0℃で0.5時間、RTで2時間、次いで、90℃で2時間撹拌する。混合物をRTに冷却し、砕氷20gに注ぐ。この混合物に濃アンモニアを加えてアルカリ性とし、次いで、酢酸エチルで抽出する。有機層を併合し、食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させる。残渣を、ジクロロメタン/石油エーテルを溶出液として用いるシリカゲル上のフラッシュ・クロマトグラフィーにより精製する。標題化合物を固体として得る。m.p.104−106℃;HPLC t=3.44分;R(ジクロロメタン/石油エーテル)=0.30。
【0144】
工程9.2:5−アミノ−ベンゾチアゾール
【化34】

精製した5−ニトロ−ベンゾチアゾール(7.2g、0.04mol;参照:WO98/23612号明細書、実施例7A)を160mLのメタノールと160mLのTHFに溶かし、1.6gのPd/C(10%;エンゲルハード4505)の存在下に水素化する。触媒を濾去し、濾液を濃縮して、残留油を、ジクロロメタン/メタノール(97:3)を溶出液として用いるシリカゲル上のフラッシュ・クロマトグラフィーにより精製する。標題化合物を無色固体として得る。m.p.76−78℃;HPLC t=0.76分;MS−ES:(M+H)=151;R(ジクロロメタン/メタノール、97:3)=0.76。
【0145】
実施例10:3−ベンゾチアゾール−5−イル−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド(化合物10)
【化35】

実施例9に記載の手順と同じ手順を使用する。標題化合物:m.p.200−202℃;HPLC t=4.62分;R(ジクロロメタン/エタノール、98:2)=0.30;MS−ES:(M+H)=413。
【0146】
実施例11:ソフトカプセル
各カプセルが有効成分として、上記実施例のいずれか1例に記載された式(I)の化合物0.05g含有してなる5000個のゼラチンカプセルを以下のように調製する:
組成:
有効成分:250g
ラウログリコール:2リットル
【0147】
製造工程:粉末化有効成分をラウログリコール(Lauroglykol;登録商標)(ラウリル酸プロピレングリコール;ガテフォッセ(株)(Gattefosse S.A.)、サン・プリエスト(Saint Priest)、フランス)に懸濁し、湿式粉砕機で研磨し、粒子径約1〜3μmとする。次いで、この混合物の0.419g分をカプセル充填機によりソフトゼラチンカプセルに導入する。
【0148】
実施例12:式(I)の化合物を含有してなる錠剤
錠剤は有効成分として実施例1ないし10の式(I)で示される化合物のいずれか1種、100mgを含有してなり、標準的手法に従い、以下の組成で調製する:
組成:
有効成分:100mg;結晶性ラクトース:240mg;アビセル:80mg;PVPPXL:20mg;エーロジル:2mg;ステアリン酸マグネシウム:5mg;合計447mg
【0149】
製造:有効成分を担体物質と混合し、製錠機(コルシュ(Korsch)EKO、ステンペルデュルッフメッサー(Stempeldurchmesser)10mm)により打錠する。
アビセル(登録商標)は微結晶セルロース(FMC;フィラデルフィア、米国)であり、PVPPXLはポリビニルポリピロリドン架橋体(BASF、ドイツ)である。エーロジル(登録商標)は二酸化ケイ素である(デグッサ、ドイツ)。
【0150】
実施例13:EphA4様式および作用メカニズム
エフリンが軸索再生という意味で可能である前方および双方向シグナル伝達を識別するために、野生型およびキナーゼ致死EphA4のレンチウイルス発現ベクターを生成させ、精製した星状細胞にて過剰発現させる。皮質ニューロンを2つの星状細胞集団に塗布し、神経突起発芽成長をアッセイし、比較する。EphA4と関連するリガンドの相互作用を遮断し、結果として受容体活性化を阻害することの証明されている生物学的ペプチド(Murai, K.K., et al., (2003) Mol Cell Neurosci 24(4): p. 1000)は、星状細胞/皮質ニューロン培養系において、それらのEphA4阻害活性について試験する。ニューロンリガンド/エフリン仲介EphA4阻害の同定は、エフリンをノックダウンするためにRNA干渉を用い、ニューロンでの候補エフリン発現を系統的に遮断することにより、または優性ネガティブエフリン構築物を用い、次いでそれらを野生型星状細胞に塗布することにより、達成する。これらの実験はEphA4活性化の様式を集約的に明確にする。
【0151】
EphA4活性化が引き金となる細胞内事象を説明するためには、星状細胞のサイトカイン誘導活性化を用い、正確なシグナル伝達活性化経路を探究する。培養した星状細胞をEphA4遮断ペプチドの存在下または不存在下に、炎症性サイトカイン(これらは星状細胞の活性化に関与していることが示されている)LIFまたはIFNで処理し、その細胞を溶解し、適切なホスホ−抗体を用いて、主要シグナル伝達経路(MAPK、P13K、JNK、STAT、RhoA)の活性化について、ウエスタンブロットにより分析する。EphA4による神経突起発芽成長阻害に関わるシグナル伝達は、星状細胞上の、もしくはCNSミエリン上の皮質ニューロン、または脊髄抽出液を、主たるシグナル伝達経路の市場入手可能な薬理学的阻害剤およびEphA4阻害性ペプチドの存在下もしくは不存在下に培養することにより評価する。
【0152】
実施例14:自己リン酸化およびリガンド依存性リン酸化アッセイ
一次星状細胞培養を新生児マウス皮質から確立し、約95〜98%純度の星状細胞培養物となるように精製する。自己リン酸化を検出するためには、細胞を薬理学的阻害剤の存在下または不存在下に培養し、次いでそのまま溶解し、免疫沈降とウエスタン分析に付す。リガンド依存性リン酸化については(図1に示すように)、培養物を36時間血清飢餓状態として基礎的受容体リン酸化を低下させ、次いで、種々濃度で加える候補キナーゼ阻害剤または遮断ペプチドの存在下または不存在下に、可溶型同族体リガンドで様々な長さの時間刺激する。細胞を溶解し、溶解液をEphA4免疫沈降に付し、次いで、ホスホ−チロシン抗体を用いて、受容体リン酸化のレベルについて、ウエスタン法により分析する。
【0153】
実施例15:神経突起発芽成長/軸索再生についてのインビトロアッセイ
本アッセイは、星状細胞上に発現されるEph受容体による胎児性皮質ニューロンの神経突起発芽成長阻害の評価、またはミエリンに存在するエフリンリガンドによる生後の皮質ニューロンの神経突起発芽成長阻害の評価に使用する。生後(P3)皮質ニューロンを4穴チャンバーまたは96穴プレートにて固定したCNSミエリンに塗布する。薬理学的阻害剤を培地に加え、各ニューロンからの最長の神経突起の長さを各条件下で測定し、薬理学的薬剤不存在下のミエリン上の平均神経突起の長さと比較する。図2はCNSミエリン上に塗布した皮質培養において、化合物3および他の化合物すべて(100nM濃度で試験)で観察される神経突起発芽成長作用の定量化を示す。
【0154】
実施例16:アストログリオーシス−星状細胞掻き傷についてのインビトロアッセイ
アッセイ用星状細胞は新生児C57BL/6マウス(P1−P2)の大脳皮質から調製する。細胞は10%FBSを含むダルベッコ変法イーグル培地に維持する。4〜7週令の星状細胞を掻き傷アッセイ用の血清飢餓ポリ−D−リジン被覆2穴チャンバースライドにコンフルーエントに塗布する。血清飢餓48時間後、星状細胞の単層を無菌200μlチップで掻き、PBSで2回洗い、細胞片を取り除く。条件化培地(+/−サイトカイン)を、傷つけた星状細胞に加える。掻き傷の微視的イメージは引っ掻き直後に10倍に拡大して捕捉し、引っ掻き後、0.24時間、48時間または72時間後の時点で、同じ引っ掻き領域を画像化し、1μg/mlのDAPIを含むメタノールで固定し、星状細胞の移動と増殖をモニターして検討する。
【0155】
実施例17:メカニズムの証明
本実験は、本発明の化合物が脳関門を通過し、インビボでEphA4のリン酸化を効率的に遮断することを証明する。雄性NMRIマウスに関連化合物を10mg/kg体重の用量で注射し、投与(図4に示す0.25時間または1時間)の25分後または1時間後に犠牲とした。脳を取り出し、各脳の1/2の重量を測定し、適切な容量の溶解バッファー中で30秒間均一化した(10秒のパルスと10秒の停止−3回)。ホモジネートを12,000gで30分間遠心する。上清についてタンパク質量を評価し(BCAを使用)、各条件について等量のタンパク質をEphA4免疫沈降に付し、次いで、ホスホ−チロシン・ウエスタンブロットに付した。4匹の対照動物を使用し、試験化合物それぞれについて、時点ごとに3匹の実験動物を使用した。
【0156】
実施例18:高処理能力スクリーニング(HTS)
EphA4活性の選択的特異的な薬理学的阻害剤を探索するために、高処理能力スクリーニング法を開発し得る。かかる化合物は、本発明化合物でのように、そのリガンドとEphA4の相互作用を遮断するか、および/またはEphA4キナーゼ活性化を特異的に遮断するキナーゼ阻害剤または結合アンタゴニストである。かかる化合物は、本発明化合物でのように、グリオーシスおよび軸索再生という面において、EphA4活性を効率的に遮断する阻害剤として働き得る。
【0157】
実施例19:マウスSCIモデルにおけるインビボ標的検証
本明細書に記載したHTSからの現存のEphA4阻害性ペプチド/ヒット、例えば、本発明化合物は、軸索再生を促進する上でのそれらの有効性を決定するインビボ脊髄傷害(SCI)実験に使用し得る。マウスを3つのグループに分ける:傷害なし;媒体注入による傷害;および薬物/ペプチド注入による傷害。薬物または媒体(例えば、本発明化合物の1種を含む)は、浸透ポンプを介して脊髄内に投与し、順向性トレーサーを用いて傷害された軸索の解剖学的再生を追跡記録する。適切な行動および電気生理学的アッセイを実施し、知覚および運動機能の機能的回復を評価する。
【0158】
上記のSCIモデル実験に加えて、EphA4阻害性薬剤、例えば、本発明化合物について、ノゴシグナル伝達を障害させて試験でき、これが改善された機能回復に導く相乗効果をもたらすかどうかを見ることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Eph受容体関連傷害または障害の処置方法であって、式(I):
【化1】

[式中、
は、水素または−N(R)であり、ここで、RおよびRのそれぞれがアルキルであるか、またはRおよびRが、それらが結合する窒素と一体となって、5員ないし7員のヘテロ環状環を形成し、そこでのさらなる環原子が炭素および0、1もしくは2個の窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロ原子から選択され、その環は未置換であるか、またはさらなる窒素環原子が存在する場合には未置換であるか、もしくは当該窒素においてアルキルにより置換されており;
は、水素または−CH−N(R)であり、ここで、RおよびRのそれぞれがアルキルであるか、またはRおよびRが、それらが結合する窒素と一体となって、5員ないし7員のヘテロ環状環を形成し、そこでのさらなる環原子が炭素および0、1もしくは2個の窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロ原子から選択され、その環は未置換であるか、またはさらなる窒素環原子が存在する場合には未置換であるか、もしくは当該窒素においてアルキルにより置換されている;
ただし、RおよびRの少なくとも一方は水素であり;
は、ハロまたはC−C−アルキルであり;
は:
【化2】

以下からなる群より選択される二環式ヘテロシクリルであり、
ここで、
Xは、CH、NまたはC−NHであり;
Yは、CHまたはNである;
ただし、XおよびYは共に同時にはNではなく;そして
は、水素、C−C−アルキルまたは未置換もしくは置換フェニルであり;
Aは、−C(=O)−NH−(−NH−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)または−NH−C(=O)−(−C(=O)−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)であり;
Zは、CHまたはNであり;また
Qは、−S−または−CH=CH−である。]
で示される化合物、または1個以上の塩形成基が存在する場合にはその塩を、かかる処置の必要な温血動物、とりわけヒトに投与することを含む、方法。
【請求項2】
さらに、式(I)において、Qが−CH=CH−であり、R、R、R、R、R、AおよびZが請求項1で定義したとおりである化合物、または(好ましくは、医薬的に許容される)その塩を投与することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、式(I)において、Aが−C(=O)−NH−(式(I)におけるQおよびZからなる環に結合する−NH−をもつ)であり、R、R、R、R、R、QおよびZが請求項1で定義したとおりである化合物、または(好ましくは、医薬的に許容される)その塩を投与することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
さらに、式(I)において、RおよびRの一方が水素であり、他が:
【化3】

[式中、「Alk」はアルキル、好ましくは、低級アルキル、より好ましくは、メチルまたはエチルであり;R、R、R、A、QおよびZは請求項1で定義したとおりである。]
からなる群より選択される基である化合物または(好ましくは、医薬的に許容される)その塩を投与することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
さらに、式(I)において、
およびRのそれぞれが水素であり;
がC−Cアルキル、特にメチルであり;
が:
【化4】

からなる群より選択される二環式ヘテロシクリルであり
ここで、
XはCH、NまたはC−NHであり;
YはCHまたはNである;
ただし、XおよびYの両方が同時にNであることはなく;
そして、Rは水素、C−Cアルキルまたはフェニルであり;
(ここで、Rは、好ましくは
【化5】

の基である)
Aが、−C(=O)−NH−(−NH−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)または−NH−C(=O)−(−C(=O)−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)であり;
ZがCHであり;そして
Qが−CH=CH−である;
化合物または(好ましくは、医薬的に許容される)その塩を投与することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
さらに:
N−(3−イソキノリン−7−イル−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド、
N−(4−メチル−3−キナゾリン−6−イル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド、
3−イソキノリン−7−イル−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド、
4−メチル−3−キナゾリン−6−イル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド、
N−(3−ベンゾチアゾール−6−イル−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド、
3−ベンゾチアゾール−6−イル−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド、
N−(4−メチル−3−フタラジン−6−イル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド、
4−メチル−3−フタラジン−6−イル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド、
N−(3−ベンゾチアゾール−5−イル−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド、および
3−ベンゾチアゾール−5−イル−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド
からなる群より選択される式(I)で示される化合物または1個以上の塩形成基が存在する場合には、医薬的に許容されるその塩を投与することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
さらに、化合物1〜10の群から選択される化合物を含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
処置すべき疾患が神経変性疾患である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
Eph受容体関連傷害または障害が、四肢麻痺、片麻痺、および対麻痺である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
四肢麻痺、片麻痺、および対麻痺が、傷害または外傷を原因とするものである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
四肢麻痺、片麻痺、および対麻痺が、遺伝病を原因とするものである、請求項9記載の方法。
【請求項12】
処置すべき傷害が脊髄傷害であるか、またはそれに起因するものである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
処置すべき傷害が脳卒中などの脳梗塞に起因するものである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
Eph受容体関連傷害または障害の処置方法であって、式(I):
【化6】

[式中、
は、水素または−N(R)であり、ここで、RおよびRのそれぞれがアルキルであるか、またはRおよびRが、それらが結合する窒素と一体となって、5員ないし7員のヘテロ環状環を形成し、そこでのさらなる環原子が炭素および0、1もしくは2個の窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロ原子から選択され、その環は未置換であるか、またはさらなる窒素環原子が存在する場合には未置換であるか、もしくは当該窒素においてアルキルにより置換されており;
は、水素または−CH−N(R)であり、ここで、RおよびRのそれぞれがアルキルであるか、またはRおよびRが、それらが結合する窒素と一体となって、5員ないし7員のヘテロ環状環を形成し、そこでのさらなる環原子が炭素および0、1もしくは2個の窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロ原子から選択され、その環は未置換であるか、またはさらなる窒素環原子が存在する場合には未置換であるか、もしくは当該窒素においてアルキルにより置換されている;
ただし、RおよびRの少なくとも一方は水素であり;
は、ハロまたはC−C−アルキルであり;
は:
【化7】

からなる群より選択される二環式ヘテロシクリルであり、
ここで、
Xは、CH、NまたはC−NHであり;
Yは、CHまたはNである;
ただし、XおよびYは共に同時にはNではなく;そして
は、水素、C−C−アルキルまたは未置換もしくは置換フェニルであり;
Aは、−C(=O)−NH−(−NH−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)または−NH−C(=O)−(−C(=O)−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)であり;
Zは、CHまたはNであり;そして
Qは、−S−または−CH=CH−である。]
(または1個以上の塩形成基が存在する場合にはその塩)
で示される化合物、または医薬的に許容されるその塩、および医薬的に許容される担体を含有してなる医薬組成物を、かかる処置を必要とする温血動物、とりわけヒトに投与することを含む、方法。
【請求項15】
さらに、式(I)において、Qが−CH=CH−であり、R、R、R、R、R、AおよびZが請求項14で定義したとおりである化合物、または医薬的に許容されるその塩を投与することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
さらに、式(I)において、Aが−C(=O)−NH−(式(I)におけるQおよびZからなる環に結合する−NH−をもつ)であり、R、R、R、R、R、QおよびZが請求項14で定義したとおりである化合物、または医薬的に許容されるその塩を投与することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
さらに、式(I)において、RおよびRの一方が水素であり、他が:
【化8】

[式中、「Alk」はアルキル、好ましくは、低級アルキル、より好ましくは、メチルまたはエチルであり;R、R、R、A、QおよびZは請求項1で定義したとおりである。]
からなる群より選択される基である化合物または医薬的に許容されるその塩を投与することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
さらに
およびRのそれぞれが水素であり;
がC−Cアルキル、特にメチルであり;
が以下からなる群より選択される二環式ヘテロシクリルであり:
【化9】

ここで、
XはCH、NまたはC−NHであり;
YはCHまたはNであり;
ただし、XおよびYの両方が同時にNであることはない;
また、Rは水素、C−Cアルキルまたはフェニルであり;
(ここで、Rは、好ましくは、
【化10】

の基である)
Aが、−C(=O)−NH−(−NH−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)または−NH−C(=O)−(−C(=O)−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)であり;
ZがCHであり;また
Qが−CH=CH−である;
式(I)の化合物、または1個以上の塩形成基が存在する場合には医薬的に許容されるその塩を投与することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項19】
さらに:
N−(3−イソキノリン−7−イル−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド、
N−(4−メチル−3−キナゾリン−6−イル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド、
3−イソキノリン−7−イル−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド、
4−メチル−3−キナゾリン−6−イル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド、
N−(3−ベンゾチアゾール−6−イル−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド、
3−ベンゾチアゾール−6−イル−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド、
N−(4−メチル−3−フタラジン−6−イル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド、
4−メチル−3−フタラジン−6−イル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミド、
N−(3−ベンゾチアゾール−5−イル−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド、および
3−ベンゾチアゾール−5−イル−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチルフェニル)ベンズアミド
化合物からなる群より選択される式(I)で示される化合物または1個以上の塩形成基が存在する場合には、医薬的に許容されるその塩を投与することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項20】
さらに、化合物1〜10の群から選択される化合物を含んでなる、請求項14記載の方法。
【請求項21】
処置すべき疾患が神経変性疾患である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
Eph受容体関連傷害または障害が、四肢麻痺、片麻痺、および対麻痺である、請求項20記載の方法。
【請求項23】
四肢麻痺、片麻痺、および対麻痺が、傷害または外傷を原因とするものである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
四肢麻痺、片麻痺、および対麻痺が、遺伝病を原因とするものである、請求項22記載の方法。
【請求項25】
処置すべき傷害が脊髄傷害であるか、またはそれに起因するものである、請求項20記載の方法。
【請求項26】
処置すべき傷害が脳卒中などの脳梗塞に起因するものである、請求項20記載の方法。
【請求項27】
神経再生を刺激するか、またはニューロン変性を回復させるか、またはその両方の方法であって、式(I):
【化11】

[式中、
は、水素または−N(R)であり、ここで、RおよびRのそれぞれがアルキルであるか、またはRおよびRが、それらが結合する窒素と一体となって、5員ないし7員のヘテロ環状環を形成し、そこでのさらなる環原子が炭素および0、1もしくは2個の窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロ原子から選択され、その環は未置換であるか、またはさらなる窒素環原子が存在する場合には未置換であるか、もしくは当該窒素においてアルキルにより置換されており;
は、水素または−CH−N(R)であり、ここで、RおよびRのそれぞれがアルキルであるか、またはRおよびRが、それらが結合する窒素と一体となって、5員ないし7員のヘテロ環状環を形成し、そこでのさらなる環原子が炭素および0、1もしくは2個の窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロ原子から選択され、その環は未置換であるか、またはさらなる窒素環原子が存在する場合には未置換であるか、もしくは当該窒素においてアルキルにより置換されている;
ただし、RおよびRの少なくとも一方は水素であり;
は、ハロまたはC−C−アルキルであり;
は:
【化12】

からなる群より選択される二環式ヘテロシクリルであり、
ここで、
Xは、CH、NまたはC−NHであり;
Yは、CHまたはNである;
ただし、XおよびYは共に同時にはNではなく;そして
は、水素、C−C−アルキルまたは未置換もしくは置換フェニルであり;
Aは、−C(=O)−NH−(−NH−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)または−NH−C(=O)−(−C(=O)−で式(I)においてQおよびZを含んでなる環に結合する)であり;
Zは、CHまたはNであり;そして
Qは、−S−または−CH=CH−である。]
で示される化合物、または1個以上の塩形成基が存在する場合にはその塩を温血動物、とりわけヒトに投与することを特徴とする方法。
【請求項28】
該温血動物がニューロン傷害に罹患しているものである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
該温血動物が神経障害に罹患しているものである、請求項27記載の方法。
【請求項30】
該温血動物が遺伝病を原因とする四肢麻痺、片麻痺、および対麻痺に罹患しているものである、請求項27記載の方法。
【請求項31】
該温血動物が脊髄傷害に罹患しているものである、請求項27記載の方法。
【請求項32】
該温血動物が脳卒中などの脳梗塞を経験しているものである、請求項27記載の方法。
【請求項33】
式(I)で示される化合物を、併用療法において、ミエリン・阻害剤ノゴ(Nogo)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、または乏突起神経膠細胞−ミエリン糖タンパク質OMgpを遮断し得る薬剤と組合わせる請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−543801(P2009−543801A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519650(P2009−519650)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/073238
【国際公開番号】WO2008/008821
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】