説明

神経障害治療に有用な組合せ

【課題】
本発明は、ヒトなどの哺乳動物の神経障害を治療する方法を提供する。
【解決手段】
該方法は、それを必要とする哺乳動物に、効果的な、無毒な、及び医薬として許容し得る量の少なくとも1つのQC-インヒビターを、任意に、PEP-インヒビター, DP IV/DP IV-様酵素のインヒビター, NPY-レセプターリガンド, NPY アゴニスト, NPY アンタゴニスト, ACE-インヒビター, PIMT エンハンサー, ベータセクレターゼのインヒビター, ガンマセクレターゼのインヒビター, 及び中性エンドペプチダーゼのインヒビターからなる群から選択された少なくとも1つの薬剤と組み合わせて投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、グルタミニルシクラーゼ、及びプロリルエンドペプチダーゼのインヒビターの組合せ、及び神経障害 (例えば、アルツハイマー病, ダウン症, パーキンソン病, ハンチントン病, 病原性精神病(pathogenic psychotic condition), 統合失調症, 摂食障害, 睡眠覚醒, エネルギー代謝の恒常性調節障害, 自律機能障害, ホルモンバランス障害, 調節障害, 体液, 高血圧症, 発熱, 睡眠調節不全, 食欲不振, うつ病を含む不安関連疾患, てんかん性, 薬剤脱離症状, 及びアルコール依存症を含む発作、認知機能障害, 及び痴呆を含む神経変性障害)の治療のための、これらの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
グルタミニルシクラーゼ(QC、EC 2.3.2.5)は、それぞれアンモニア、又は水の遊離を伴う、ペプチド、及びタンパク質のN末端グルタミン残基、及びN-末端グルタミン酸残基のピログルタミン酸(pGlu*)への分子内環化反応を触媒する (Schilling, S. らの論文 2004 FEBS Lett 563, 191-196)。QCは、1963年にMesserが熱帯植物パパイヤ(Carica papaya)のラテックスからはじめて精製された(Messer, Mの論文、1963 Nature 4874, 1299)。24年後、相当する酵素活性が、動物脳下垂体において発見された(Busby, W. H. J.らの論文、1987 J Biol Chem 262, 8532-8536;Fischer, W. H. 及びSpiess, J.の論文1987 Proc Natl Acad Sci U S A 84, 3628-3632)。該哺乳動物QCにおいて、QCによる pGluへのGln の転換は、TRH 及びGnRHの前駆体に見ることができる(Busby, W. H. J.らの論文1987 J Biol Chem 262, 8532-8536;Fischer, W. H. 及びSpiess, J.の論文、1987 Proc Natl Acad Sci U S A 84, 3628-3632)。その上、QCの初期局在実験によって、ウシ脳下垂体における触媒の推定的産物との同一場所での局在が明らかになり、さらに、ペプチドホルモン合成における示唆された機能が裏付けられた(Bockers, T. M.らの論文、1995 J Neuroendocrinol 7, 445-453)。これに対し、植物QCの生理学的機能は、明らかでない。C.パパイヤ由来の該酵素の場合、病原微生物に対する植物防御における役割が示唆された(El Moussaoui, A.らの論文、2001 Cell Mol Life Sci 58, 556-570)。近年、配列比較によって、他の植物からの推定上QCが同定された(Dahl, S. W.らの論文、2000 Protein Expr Purif 20, 27-36)。これらの酵素の生理学的機能は、依然として明らかとなっていない。
【0003】
植物、及び動物由来の公知のQCは、基質のN末端のL-グルタミンに高い特異性を示し、かつその速度論的挙動は、ミカエリス−メンテン式に従うことが見い出された(Pohl, T.らの論文、1991 Proc Natl Acad Sci U S A 88, 10059-10063;Consalvo, A. P.らの論文、1988 Anal Biochem 175, 131-138;Gololobov, M. Y.らの論文、1996 Biol Chem Hoppe Seyler 377, 395-398)。しかしながら、C.パパイヤ由来QC、及び保存性の高い哺乳動物由来のQCの一次構造の比較では、配列の相同性がないことが明らかになった(Dahl, S. W.らの論文、2000 Protein Expr Purif 20, 27-36)。該植物QCが、新しい酵素ファミリーに属していると思われるのに対し(Dahl, S. W.らの論文、2000 Protein Expr Purif 20, 27-36)、哺乳動物QCは細菌アミノペプチダーゼと顕著な配列相同性をもつことが見い出され(Bateman, R. C.らの論文、2001 Biochemistry 40, 11246-11250)、植物、及び動物由来のQCは異なる進化上の起源をもつという結論が導かれた。
【0004】
欧州特許出願公開第02 011 349.4号には、昆虫グルタミニルシクラーゼをコードしているポリヌクレオチド、それによってコードされるポリペプチドが開示されている。さらに、この出願は、該発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。昆虫QCを含む精製ポリペプチド、及び宿主細胞は、グルタミニルシクラーゼ活性を低下させる薬剤のスクリーニング方法において有用である。そのような薬剤は、殺虫剤として有用である。
【0005】
プロリンに連結したペプチド結合は、広範囲の特異的ペプチダーゼに比較的耐性を示ようである。プロリンを含むペプチド結合を加水分解するペプチダーゼは、プロリン含有ペプチドの代謝に重要であろうことを提案する(Atack,らの論文, Eur. J. of Pharm., 205, 157-163 (1991))。プロリルエンドペプチダーゼは、生物学的活性プロリン含有ペプチドの代謝において、そのような役割を担うようである。該酵素は、オキシトシン, 甲状腺刺激ホルモン, 黄体形成ホルモン放出ホルモン, アンギオテンシン II, ブラジキニン, サブスタンスP, ニューロテンシン, 及びバソプレシンなどの、プロリンを含む多くの生物学的活性ペプチドを加水分解する。
【0006】
プロリルエンドペプチダーゼは、カルボキシ末端プロリン開裂酵素として、活性ペプチドの分解に作用する。特に、プロリルエンドペプチダーゼは、プロリンのカルボキシ側のペプチド結合の加水分解に作用する。プロリルエンドペプチダーゼは、セリンプロテアーゼとして作用する機序が考えられ、α-キモトリプシン, トリプシン, 及びスブチリシンなどの、他のセリンプロテアーゼと類似した機序により、ペプチド結合を開裂する。該酵素は、プロリン誘導体を含むペプチド結合で、普遍的に作用するが、該酵素の形態は、異なる組織源で異なるようである。該酵素は、基質特異性に違いが見られる。プロリルエンドペプチダーゼは、多くの植物(ニンジン、マッシュルーム)、微生物(フラボバクテリウム メニゴセプチクム(Flavobacterium menigosepticum))、及び動物組織から精製される。動物において、該酵素は、体の全体に偏在的に見つけられる。しかし、プロリルエンドペプチダーゼは、一般的に、該CNS内に高濃度で見つけられる(Wilk, 1983)。動物源に対する基質を試験するための該酵素の共通供給源は、ウシ、ラット、及びマウスの脳である。
【0007】
プロリルエンドペプチダーゼの低分子量インヒビターが、研究されている。一般的に、これらのインヒビターは、プロリン、又は末端プロリン含有小ペプチドの化学的誘導体である。ベンジルオキシカルボニル-プロリル-プロリナールは、該酵素の特異的遷移状態インヒビター(specific transition state inhibitor)であることを示している(Wilk, S. 及びOrloeski, M.の論文, J. Neurochem., 41, 69 (1983), Friedmanらの論文, Neurochem., 42, 237 (1984))。L-プロリン、又はL-プロリルピロリジンのN-末端置換基(Atackらの論文, Eur. J. of Pharm., 205, 157-163 (1991), JP 03 56,460, EP 384,341)、並びに該カルボキシ末端にプロリナールを含むN-ベンジルオキシカルボニル(Z)ジペプチドの変異体は、プロリルエンドペプチダーゼ インヒビターとして合成されている(Nishikataらの論文, Chem. Pharm. Bull. 34(7), 2931-2936 (1986), Baker, A.らの論文, Bioorganic & Medicinal Chem. Letts., 1(11), 585-590 (1991))。該核構造のチオプロリン, チアゾリジン, 及びオキソピロリジン置換基は、プロリルエンドペプチダーゼを阻害することが報告されている(Tsuruらの論文, J. Biochem., 94, 1179 (1988), Tsururらの論文, J. Biochem., 104, 580-586 (1988), Saitoらの論文, J. Enz. Inhib. 5, 51-75 (1991), Uchida, I.らの論文 PCT Int. Appl. WO 90 12,005, JP 03 56,461, JP 03 56,462)。類似して、様々なフッ素化ケトン誘導体(Henning, EP 4,912,127)を含む、該カルボキシ末端プロリンの様々な修飾体が合成されている。フッ素化ケトン誘導体の一般的合成法は記載されている(Angelastro, M.R.らの論文, テトラhedron Letters 33(23), 3265-3268 (1992))。アシル-プロリン、又はアシルペプチド-プロリン のクロロメチルケトン誘導体(Z-Gly-Pro-CH2Cl)などの他の化合物は、該酵素活性部位をアルキル化することにより、該酵素を阻害することを明らかにした(Yoshimoto, T.らの論文, Biochemistry 16, 2942 (1977))。
【0008】
EP-A-0 286 928は、プロピルエンドペプチダーゼインヒビターとして、2-アシルピロリジン誘導体を開示している。
さらに、公知のプロリルエンドペプチダーゼ インヒビターは、例えばFmoc-Ala-Pyrr-CN、及び下記リストのものである。
【0009】
【化1】

【0010】
さらに、プロリルエンドペプチダーゼインヒビターは、下記公報に開示されている:JP 01042465, JP 03031298, JP 04208299, WO 0071144, US 5847155; JP 09040693, JP 10077300, JP 05331072, JP 05015314, WO 9515310, WO 9300361, EP 0556482, JP 06234693, JP 01068396, EP 0709373, US 5965556, US 5756763, US 6121311, JP 63264454, JP 64000069, JP 63162672, EP 0268190, EP 0277588, EP 0275482, US 4977180, US 5091406, US 4983624, US 5112847, US 5100904, US 5254550, US 5262431, US 5340832, US 4956380, EP 0303434, JP 03056486, JP 01143897, JP 1226880, EP 0280956, US 4857537, EP 0461677, EP 0345428, 4JP 02275858, US 5506256, JP 06192298, EP 0618193, JP 03255080, EP 0468469, US 5118811, JP 05025125, WO 9313065, JP 05201970, WO 9412474, EP 0670309, EP 0451547, JP 06339390, US 5073549, US 4999349, EP 0268281, US 4743616, EP 0232849, EP 0224272, JP 62114978, JP 62114957, US 4757083, US 4810721, US 5198458, US 4826870, EP 0201742, EP 0201741, US 4873342, EP 0172458, JP 61037764, EP 0201743, US 4772587, EP 0372484, US 5028604, WO 9118877, JP 04009367, JP 04235162, US 5407950, WO 9501352, JP 01250370, JP 02207070, US 5221752, EP 0468339, JP 04211648, 及びWO 9946272である。これらの教示は、全体として引用により、特に、これらのインヒビター、これらの定義、使用、及びこれらの製造に関して、本明細書中に取り込まれている。
【0011】
適切なDP IV-インヒビターは、例えば下記の公報に開示されているものである:US 6,380,398, US 6,011,155; US 6,107,317; US 6,110,949; US 6,124,305; US 6,172,081; WO 95/15309, WO 99/61431, WO 99/67278, WO 99/67279, DE 198 34 591, WO 97/40832, DE 196 16 486 C 2, WO 98/19998, WO 00/07617, WO 99/38501, WO 99/46272, WO 99/38501, WO 01/68603, WO 01/40180, WO 01/81337, WO 01/81304, WO 01/55105, WO 02/02560, 及びWO 02/14271, WO 02/04610, WO 02/051836, WO 02/068420, WO 02/076450; WO 02/083128, WO 02/38541, WO 03/000180, WO 03/000181, WO 03/000250, WO 03/002530, WO 03/002531, WO 03/002553,WO 03/002593, WO 03/004496, WO 03/004498, WO 03/024965, WO 03/024942, WO 03/035067, WO 03/037327, WO 03/035057, WO 03/045977, WO 03/055881, WO 03/68748, WO 03/68757, WO 03/057666, WO 03057144, WO 03/040174, WO 03/033524, 及びWO 03/074500である。
【0012】
さらに適切なDP IV-インヒビターには、下記のものがある:バリン ピロリジド (Novo Nordisk), Hughesらの論文(1999 Biochemistry 38 11597-11603)により開示されたNVP-DPP728A(1-[[[2-[{5-シアノピリジン-2-イル}アミノ]エチル]アミノ]アセチル]-2-シアノ-(S)-ピロリジン)(Novartis社)、Hughesら(アメリカ糖尿病協会会議、2002年、要旨番号272)により開示されたLAF-237(1-[(3-ヒドロキシ-アダマント-1-イルアミノ)-アセチル]-ピロリジン-2(S)-カルボニトリル)(Novartis社)、Yamadaらの論文(1998 Bioorg Med Chem Lett 8, 1537-1540)に開示されたTSL-225(トリプトフィル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸)、Asworthらの論文(1996 Bioorg Med Chem Lett 6, 1163-1166、及び2745-2748)に開示された2-シアノピロリジド、及び4-シアノピロリジド、Sudreらの論文(2002 Diabetes 51, 1461-1469)によって開示されたFE-999011(Ferring社)、及び国際公開第01/34594号で開示された化合物(Guilford)のようなDP IVインヒビターがあり、上記の文献で設定した投与量を採用する。
疑いを回避するために、特に、上記公報の各々に開示された実施例は、全体として引用により、個々に開示された化合物として、特にこれらの構造、定義、使用、及びこれらの製造に関して、本明細書中に取り込まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
神経障害治療に有用な組合せを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(定義)
該用語“DP IV-インヒビター”、又は“ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビター”は、一般的に、当業者に公知であり、かつDP IV、又はDP IV-様酵素の触媒活性を阻害する酵素インヒビターを意味する。
DP IV-活性“は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DP IV)、及びDP IV-様酵素の触媒活性として規定される。これらの酵素は、腎臓、肝臓、及び腸を含む、哺乳類の体内の様々な組織にあるセリンプロテアーゼを開裂するポスト-プロリン(より小さい範囲のポスト-アラニン、ポスト-セリン、又はポスト-グリシン)であり、これらは、これらの配列中において、該N-末端アミノ酸に隣接する残基がプロリン、又はアラニンである場合、高度な特異性で、生物学的活性ペプチドのN-末端から、ジペプチドを除去する。
【0015】
該用語“PEP-インヒビター”、又は“プロリンプロリルエンドペプチダーゼインヒビター”は、一般的に、当業者に公知であり、かつプロリンプロリルエンドペプチダーゼ(PEP)の触媒活性を阻害する、酵素インヒビターを意味する。
本明細書中で使用される用語“QC”は、グルタミニルシクラーゼ(QC)、及びQC-様酵素を含む。QC、及びQC-様酵素は、酵素活性が、同じか、又は類似しており、さらに、該酵素活性をQC活性と規定する。この点において、QC-様酵素は、QCのこれらの分子構造とは、基本的に異なり得る。
【0016】
本明細書中で使用される用語“QC活性”は、アンモニアを遊離して、N-末端グルタミン残基からピログルタミン酸(pGlu*)への分子内環化、あるいはN-末端L-ホモグルタミン、又はL-β-ホモグルタミンから環状ピロ-ホモグルタミン誘導体への分子内環化として規定される。スキーム1、及び2を参照されたい。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
本明細書中で使用される用語“EC”は、グルタメートシクラーゼ(EC)としてのQC、及びQC-様酵素の副活性を含み、さらに該活性をEC活性と規定する。
本明細書中で使用される用語“EC活性”は、QCによるN-末端グルタメート残基からピログルタミン酸(pGlu*)への分子内環化として規定される。スキーム3を参照されたい。
【0020】
【化4】

【0021】
該用語“QC-インヒビター”“グルタミニルシクラーゼインヒビター”は、一般的に、当業者に公知であり、かつグルタミニルシクラーゼ(QC)、及び/又はそのグルタミルシクラーゼ(EC)の触媒活性を阻害する、酵素インヒビターを意味する。
本明細書中で使用される用語“対象”は、治療、観察、又は実験の目的のある、動物、好ましくは哺乳類、さらに好ましくはヒトのことである。
【0022】
本明細書中で使用される用語“治療的有効量”とは、研究者、獣医師、医師、又は他の臨床医により探究される組織系、動物、又はヒトにおいて、生物学的、又は医薬的応答を発現する、活性のある化合物、又は医薬品の量のことであり、これらは、治療される疾病、又は疾患の症状の緩和を含む。
本明細書中で使用される用語“医薬として許容し得る”とは、ヒト、及び獣医の使用、両方を含み:例えば、該用語“医薬として許容し得る”は、獣医学的に許容し得る化合物、又はヒト医学、保健医療に許容し得る化合物を含む。
【0023】
本明細書、及びクレームを通して、該表現“アシル”は、C1-20アシル残基、好ましくはC1-8アシル残基、さらに好ましくはC1-4アシル残基のことを示し得る;“シクロアルキル”は、C3-12シクロアルキル残基、好ましくはC4、C5、又はC6シクロアルキル残基のことを示し得る;かつ“炭素環”は、C3-12炭素環残基、好ましくはC4、C5、又はC6炭素環残基のことを示し得る。“ヘテロアリール”は、環原子の1〜4個、及びそれ以上、好ましくは1、2、又は3個を、N、S、又はOのようなヘテロ原子で置換したアリール残基として規定される。“複素環”は、環原子の1、2、又は3個を、N、S、又はOのようなヘテロ原子で置換したシクロアルキル残基として規定される。“ペプチド”は、ジペプチド〜デカペプチドから選択され、好ましくはジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、及びペンタペプチドである。該“ペプチド”を形成するアミノ酸は、前述のものから選択することができる。
【0024】
本明細書、及びクレームを通して、該表現"アルキル(alkyl)"は、C1-50アルキル基、好ましくはC6-30アルキル基、さらに好ましくはC8-12アルキル基のことを示し得る;例えば、アルキル基を、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又はブチル基とすることができる。例えば該表現"アルコキシ(alkoxy)"、及び該表現"アルカン(alkane)"、例えば該表現"アルカノイル(alkanoyl)"における、該表現"アルク(alk)"は、"アルキル(alkyl)"として規定され;芳香族化合物は、好ましくは置換された、又は任意に非置換のフェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、又はアントラセン基であり、好ましくは、これらは、少なくとも8C原子を有し;該表現"アルケニル"を、C2-10アルケニル基、好ましくはC2-6アルケニル基とすることができ、これらは、所望の位置すべてに二重結合を有し、かつ置換、又は非置換とすることができ;該表現"アルキニル"を、C2-10アルキニル基、好ましくはC2-6アルキニル基とすることができ、これらは、所望の位置すべてに三重結合を有し、かつ置換、又は非置換とすることができる。
【0025】
該表現"置換"、又は置換基を、1以上、好ましくは1、又は2のアルキル、アルケニル、アルキニル、1-、又は多価アシル、アルカノイル、アルコキシアルカノイル、又はアルコキシアルキル基で、所望されるすべての置換とすることができ;前述の置換基は、側鎖として、1以上(しかし、好ましくはゼロ)のアルキル、アルケニル、アルキニル、1、又は多価アシル、アルカノイル、アルコキシアルカノイル、又はアルコキシアルキル基を順繰りに有してもよく;各々8〜50C原子、好ましくは10〜20C原子を有する有機アミン、アミド、アルコール、又は酸は、式(アルキル)2N-、又はアルキル-NH-、-CO-N(アルキル)2、又は-CO-NH(アルキル)、-アルキル-OH、又は-アルキル-COOHを有することができる。
本発明中で使用され得るアミノ酸は、L、及びD-アミノ酸、N-メチル-アミノ酸、アザ-アミノ酸;Ile、及びTHrのアロ-、及びトレオ形態であり、これらを、例えばα-、β-、又はγ-アミノ酸とすることができ、α-アミノ酸が好ましい。
アミノ酸の例を挙げると、次のものがある:
アスパラギン酸 (Asp)、グルタミン酸(Glu)、アルギニン (Arg)、リシン (Lys)、ヒスチジン (His)、グリシン (Gly)、セリン (Ser)、システイン (Cys)、トレオニン (Thr)、アスパラギン (Asn)、グルタミン (Gln)、チロシン (Tyr)、アラニン (Ala)、プロリン (Pro)、バリン (Val)、イソロイシン (Ile)、ロイシン (Leu)、メチオニン (Met)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン (Trp)、ヒドロキシプロリン (Hyp)、ベータ-アラニン(beta-Ala)、2-アミノオクタン酸 (Aoa)、アセチジン-(2)-カルボン酸(Ace)、ピペコリン酸(Pip)、3-アミノプロピオン酸、4-アミノ酪酸、及び以後、アルファ-アミノイソ酪酸 (Aib)、サルコシン (Sar)、オルニチン (Orn)、シトルリン (Cit)、ホモアルギニン (Har)、t-ブチルアラニン (t-ブチル-Ala)、t-ブチルグリシン (t-ブチル-Gly)、N-メチルイソロイシン (N-MeIle)、フェニルグリシン (Phg)、シクロヘキシルアラニン (Cha)、ノルロイシン (Nle)、システイン酸(Cya)、及びメチオニンスルホキシド(MSO)、アセチル-Lys、ホスホリル-セリン (Ser(P))、ベンジル-セリン (Ser(Bzl))、及びホスホリル-チロシン(Tyr(P))のような修飾アミノ酸、2-アミノ酪酸(Abu)、アミノエチルシステイン (AECys)、カルボキシメチルシステイン (Cmc)、デヒドロアラニン (Dha)、デヒドロアミノ-2-酪酸 (Dhb)、カルボキシグルタミニン酸 (Gla)、ホモセリン (Hse)、ヒドロキシリシン (Hyl)、シス-ヒドロキシプロリン (cisHyp)、トランス-ヒドロキシプロリン (transHyp)、イソバリン (Iva)、ピログルタミン酸 (Pyr)、ノルバリン (Nva)、2-アミノ安息香酸 (2-Abz)、3-アミノ安息香酸 (3-Abz)、4- アミノ安息香酸 (4-Abz)、4-(アミノメチル)安息香酸 (Amb)、4-(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸(4-Amc)、ペニシルアミン (Pen)、2-アミノ-4-シアノ酪酸 (Cba)、シクロアルカン-カルボン酸がある。ω-アミノ酸の例を挙げると、例えば:5-Ara (アミノラレリック酸(aminoraleric acid)、6-Ahx (アミノヘキサン酸)、8-Aoc (アミノオクタン酸)、9-Anc (アミノバノイック酸(aminovanoic acid))、10-Adc (アミノデカン酸)、11-Aun (アミノウンデカン酸)、12-Ado (アミノドデカン酸)がある。さらに、アミノ酸には:インダニルグリシン (Igl)、インドリン-2-カルボン酸(Idc)、オクタヒドロインドール-2-カルボン酸 (Oic)、ジアミノプロピオン酸 (Dpr)、ジアミノ酪酸 (Dbu)、ナフチルアラニン (1-Nal)、及び(2-Nal)、4-アミノフェニルアラニン (Phe(4- NH2))、4-ベンゾイルフェニルアラニン (Bpa)、ジフェニルアラニン (Dip)、4-ブロモフェニルアラニン (Phe(4-Br))、2-クロロフェニルアラニン (Phe(2-Cl))、3-クロロフェニルアラニン (Phe(3-Cl))、4-クロロフェニルアラニン (Phe(4-Cl))、3,4-クロロフェニルアラニン (Phe(3,4-Cl2))、3-フルオロフェニルアラニン (Phe(3-F))、4-フルオロフェニルアラニン (Phe(4-F))、3,4-フルオロフェニルアラニン (Phe(3,4-F2))、ペンタフルオロフェニルアラニン (Phe(F5))、4-グアジニノフェニルアラニン (Phe(4-グアジニノ))、ホモフェニルアラニン (hPhe)、3-ジュードフェニルアラニン (3-judophenylalanine)(Phe(3-J))、4-ジュードフェニルアラニン (Phe(4-J))、4-メチルフェニルアラニン (Phe(4-Me))、4-ニトロフェニルアラニン (Phe-4-NO2))、ビフェニルアラニン (Bip)、4-ホスホノメチルフェニルアラニン (Pmp)、シクロヘキシルグリシン (Ghg)、3-ピリジニルアラニン (3-Pal)、4-ピリジニルアラニン (4-Pal)、3,4-デヒドロプロリン (A-Pro)、4-ケトプロリン (Pro(4-ケト))、チオプロリン (Thz)、イソニペコ酸 (Inp)、1,2,3,4,-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸 (Tic)、プロパルギルグリシン (Pra)、6-ヒドロキシノルロイシン (NU(6-OH))、ホモチロシン (hTyr)、3-ジュードチロシン (Tyr(3-J))、3,5-ジジュードチロシン (Tyr(3,5-J2))、メチルチロシン (Tyr(Me))、2',6'-ジメチルチロシン (Dmt)、3-NO2-チロシン (Tyr(3-NO2))、ホスホチロシン (Tyr(PO3H2))、アルキルグリシン、1-アミノインダン-1-カルボン酸、2-アミノインダン-2-カルボン酸 (Aic)、4-アミノ-メチルピロール-2-カルボン酸 (Py)、4-アミノ-ピロリジン-2-カルボン酸 (Abpc)、2-アミノテトラリン-2-カルボン酸 (Atc)、ジアミノ酢酸 (Gly(NH2))、ジアミノ酪酸 (Dab)、1,3-ジヒドロ-2H-イソイノール-カルボン酸 (Disc)、ホモシクロヘキシルアラニン (hCha)、ホモフェニルアラニン (hPhe、又はHof)、トランス-3-フェニル-アゼチジン-2-カルボン酸、4-フェニル-ピロリジン-2-カルボン酸、5-フェニル-ピロリジン-2-カルボン酸、3-ピリジルアラニン (3-Pya)、4-ピリジルアラニン (4-Pya)、スチリルアラニン、テトラヒドロイソキノリン-1-カルボン酸 (Tiq)、1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸 (Tpi)、β-(2-チエンリル)-アラニン (Tha)がある。
“ペプチド”は、ジペプチド〜デカペプチドから選択され、好ましくはジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、及びペンタペプチドである。該“ペプチド”を形成する該アミノ酸を、前述から選択することができる。
“アザ-アミノ酸”は、キラルα-CH基が、窒素原子で置換されたアミノ酸として規定され、一方、“アザ-ペプチド”は、ペプチド鎖中の1以上のアミノ酸残基の該キラルα-CH基が、窒素原子で置換されたペプチドとして規定される。
また、遺伝子暗号にコード化された他のアミノ酸置換基も、本発明の範囲内のペプチド化合物に含むことができ、かつ、この一般スキームに分類することができる。蛋白新生の(Proteinogenic)アミノ酸は、天然タンパク質誘導化α-アミノ酸として規定される。非蛋白新生の(Non-proteinogenic)アミノ酸は、他のアミノ酸すべてとして規定され、これらは一般的な天然タンパク質の構成単位ではない。
【0026】
“ペプチド模倣体”自体は、当業者に公知である。好ましくは、これらは、ペプチドのような二次構造、及び任意に、さらなる構造特性を有する化合物として規定され;これらの作用機序は、該天然ペプチドの作用機序によく類似しているか、又は同じである;しかし、これらの活性(例えば、アンタゴニスト、又はインヒビターとして)を、天然ペプチド、特にレセプター、又は酵素に対して比較して、改質することができる。さらに、これらは、該天然ペプチド(アゴニスト)の作用を模倣することができる。ペプチド模倣体の例を挙げると、足場模倣体、非-ペプチド性模倣体、ペプトイド、ペプチド核酸、オリゴピロリノン、ビニログペプチド(vinylogpeptides)、及びオリゴカルバメート(オリゴカルバミン酸塩またはエステル)がある。これらのペプチド模倣体の定義は、Lexikon der Chemie、Spektrum Akademischer Verlag Heidelberg、Berlin、1999を参照されたい。
これらの模倣体構造を使う目的は、該活性を増加すること、副作用を減らし選択性を向上させること、該作用の長期化による酵素的分解に対して、該化合物を保護することである。
【0027】
(立体異性体):
請求項の化合物の可能な立体異性体すべては、本発明に含まれる。
本発明の化合物が、少なくとも1つのキラル中心を有する場合、それに応じて、これらは、エナンチオマーとして存在し得る。該化合物が、2以上のキラル中心を有する場合、それに応じて、これらは、ジアステレオマーとして存在し得る。このような異性体、及びその混合物が、本発明の範囲内に含まれることは理解される。
【0028】
(立体異性体の製造、及び単離):
本発明の化合物の製造方法が、立体異性体の混合物を生じる場合、これらの異性体を、分離クロマトグラフィーのような、従来の技術により分離することができる。該化合物を、ラセミ形態で製造することができ、又は個々のエナンチオマーを、エナンチオ特異的合成により、又は分割により製造することができる。例えば、該化合物を、(-)-ジ-p-トルオイル-d-酒石酸、及び/又は(+)-ジ-p-トルオイル-l-酒石酸のような光学活性酸を用いて塩形成し、続いて分別結晶、及び遊離塩基への再生により、ジアステレオマー対を形成するような、標準的技術により、これらの成分であるエナンチオマーに分割することができる。また、該化合物を、ジアステレオマーエステル、又はアミドを形成し、続いて、クロマトグラフ分離、及びキラル補助基の除去により分割してもよい。または、該化合物をキラルHPLCカラムを用いて分割してもよい。
【0029】
(医薬として許容し得る塩):
遊離化合物と、これらの塩形態化合物との密接な関係を考慮して、本明細書中に参照された化合物とは、対応する塩をも意図され、提供されるこれらの塩は、ある状況下で可能、又は適切である。
一般的に、該医薬として許容し得る塩は、アミノ酸塩基性側鎖が、無機、又は有機酸でプロトン化される形態をとる。代表的な有機、又は無機酸には、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸,リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シュウ酸、パモン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、サッカリン酸、又はトリフルオロ酢酸がある。本発明の化合物の医薬として許容し得る酸付加塩形態すべては、本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0030】
(多形結晶形態):
さらに、該化合物の幾つかの該結晶形態は、多形体として存在し、それ自体が、本発明の範囲内に含まれることが意図される。さらに、該化合物の幾つかは、水との溶媒和物(すなわち、水和物)、又は一般的な有機溶媒との溶媒和物を形成してもよく、そのような溶媒和物も、本発明の範囲内に含まれることが意図される。また、これらの塩を含む該化合物を、これらの溶媒和の形態で得ることができる、又は、該化合物は、これらの結晶化に使用する他の溶媒を含み得る。
【0031】
(プロドラッグ):
さらに、本発明は、該化合物のプロドラッグを、本発明の範囲内に含む。一般的に、前記プロドラッグとは、生体内で、所望の治療的に活性のある該化合物に容易に変換され得る、該化合物の官能性誘導体であろう。従って、本発明の治療方法において、該用語"投与する"は、本請求項の1以上の化合物のプロドラッグ種で記載された、様々な疾患の治療を含むべきであろう。しかし、該化合物は、該対象に投与した後に、生体内で上述の特定の化合物に変換される。適切なプロドラッグ誘導体の従来の選択、及び製造手順は、例えば、"プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)"、ed. H. Bundgaard、Elsevier、1985、及び特許出願DE 198 28 113、DE 198 28 114、WO 99/67228、及びWO 99/67279に記載されており、これらは、引用により、本明細書中に完全に取り込まれている。
【0032】
(保護基):
本発明の化合物の全製造プロセスの間に、関与する幾つかの分子の感受性基、又は反応性基を保護することが必要、又は所望され得る。これは、有機化学における保護基(Protective Groups in Organic Chemistry)、ed. J.F.W. McOmie, Plenum Press、1973;及び有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)、John Wiley & Sons, 1991 (これらは、引用により、本明細書中に完全に取り込まれている)に記載されているような、従来の保護基の手段により成し遂げることができる。該保護基を、都合の良い後の段階で、該技術の公知の方法を用いて、除去することができる。
本明細書中で使用する該用語"組成物"は、治療的有効量の本請求項の化合物を含む製品、並びに本請求項の化合物の組合せから直接的に、又は間接的に得られる製品すべてを含むことが意図される(evtl. zu Definitionen)。
【0033】
(生薬配合用キャリア、及び添加剤):
例えば、懸濁液、エリキシル、及び溶液のような、液体の経口用製剤に対して適切なキャリア、及び添加剤は、有利に、水、グリコール、オイル、アルコール、香料、保存料、及び着色剤などを含み得る;例えば、粉末、カプセル、ジェルキャップ、及び錠剤のような、個体の経口用製剤に対して適切なキャリア、及び添加剤は、デンプン、糖類、希釈剤、顆粒化剤、滑剤、結合剤、及び崩壊剤などを含む。
該混合物に添加され得るキャリアには、制限はないが、適切な結合剤、懸濁化剤、滑剤、風味剤、甘味料、保存料、コーティング剤、崩壊剤、染料、及び着色剤を含む、必須かつ不活性の医薬賦形剤がある。
【0034】
標的を定めることができる薬剤キャリアとしての可溶性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミド-フェノール、又はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリルリシンを含み得る。さらに、本発明の化合物を、薬剤の制御放出の実現に有用な生分解性ポリマー類と結合することができ、例えば、ポリアクチック酸(polyactic acid)、ポリエプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシブチエリック酸(polyhydroxy butyeric acid)、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート(ポリシアノアクリル酸塩またはエステル)、及びヒドロゲルの架橋、又は両親媒性コポリマーがある。
【0035】
適切な結合剤には、制限はないが、デンプン、ゼラチン、グルコース、又はベータラクトースのような天然糖類、コーン甘味料、アカシア、トラガカント、又はオレイン酸ナトリウムのような天然、及び合成ゴム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムなどがある。
崩壊剤には、制限はないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、及びキサンタンガムなどがある。
【0036】
(ペプチド配列)
本明細書中に記載、及び使用したペプチドは、下記配列を有する:
Aβ(1-42), アミロイド β-ペプチド(1-42):
Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-Val-His-His-Gln-Lys-Leu-Val-Phe-Phe-Ala-Glu-Asp-Val-Gly-Ser-Asn-Lys-Gly-Ala-Ile-Ile-Gly-Leu-Met-Val-Gly-Gly-Val-Val-Ile-Ala
Aβ(1-40), アミロイド β-ペプチド(1-40):
Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-Val-His-His-Gln-Lys-Leu-Val-Phe-Phe-Ala-Glu-Asp-Val-Gly-Ser-Asn-Lys-Gly-Ala-Ile-Ile-Gly-Leu-Met-Val-Gly-Gly-Val-Val
Aβ(3-42), アミロイド β-ペプチド(3-42):
Glu-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-Val-His-His-Gln-Lys-Leu-Val-Phe-Phe-Ala-Glu-Asp-Val-Gly-Ser-Asn-Lys-Gly-Ala-Ile-Ile-Gly-Leu-Met-Val-Gly-Gly-Val-Val-Ile-Ala
Aβ(3-40), アミロイド β-ペプチド(3-40):
Glu-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-Val-His-His-Gln-Lys-Leu-Val-Phe-Phe-Ala-Glu-Asp-Val-Gly-Ser-Asn-Lys-Gly-Ala-Ile-Ile-Gly-Leu-Met-Val-Gly-Gly-Val-Val
Aβ(1-11), アミロイド β-ペプチド(1-11)a:
Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-NH2
Aβ(3-11), アミロイド β-ペプチド(3-11)a:
Glu-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-NH2
【0037】
Aβ(1-21), アミロイド β-ペプチド(1-21)a:
Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-Val-His-His-Gln-Lys-Leu-Val-Phe-Phe-Ala-NH2
Aβ(3-21), アミロイド β-ペプチド(3-21)a:
Glu-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-Val-His-His-Gln-Lys-Leu-Val-Phe-Phe-Ala-NH2
Gln3-Aβ(3-40), Gln3-アミロイド β-ペプチド(3-40):
Gln-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-Val-His-His-Gln-Lys-Leu-Val-Phe-Phe-Ala-Glu-Asp-Val-Gly-Ser-Asn-Lys-Gly-Ala-Ile-Ile-Gly-Leu-Met-Val-Gly-Gly-Val-Val
Gln3-Aβ(3-21)a, Gln3-アミロイド β-ペプチド(3-21)a:
Gln-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-Val-His-His-Gln-Lys-Leu-Val-Phe-Phe-Ala-NH2
Gln3-Aβ(1-11)a, Gln3-アミロイド β-ペプチド(1-11)a:
Asp-Ala-Gln-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-NH2
Gln3-Aβ(3-11)a, Gln3-アミロイド β-ペプチド(3-11)a:
Gln-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-NH2
【0038】
(本発明の要旨)
本発明は、哺乳動物QCの新規生理学的基質, [Glu3] アミロイドβ-タンパク質(3-40/42), [Gln3] アミロイドβ-タンパク質(3-40/42), [Glu11] アミロイドβ-タンパク質(11-40/42), [Gln11] アミロイドβ-タンパク質(11-40/42), 及び[Gln5]-サブスタンスP(5-11)、並びにQCエフェクターの使用、及びQC活性の調節により治療され得る症状の治療のための、QCエフェクターを含む医薬組成物を提供する。
予想外に、組換え型ヒトQC、並びに脳抽出液由来QC-活性、双方が、N-末端グルタミニル、並びにグルタミン酸環化を触媒することを示した。最も著しいのは、シクラーゼ-触媒Glu1-転換は、約pH 6.0が好ましく、一方、pGlu-誘導体へのGln1-転換は、最適pH約8.0で生じる。pGlu-Aβ-関連ペプチドの形成は、ブタの下垂体抽出物由来の組換え型ヒトQC、及びQC-活性の阻害により抑制され得る。該酵素QC(及びそのEC活性)は、アルツハイマー病治療用薬剤開発の標的である。
【0039】
QC (EC)活性のエフェクターを、哺乳動物に投与することにより、神経障害 (アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、ハンチントン病、病原性精神病、統合失調症、摂食障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝の恒常性調節障害、自律機能障害、ホルモンバランス障害、調節障害、体液、高血圧症、発熱、睡眠調節不全、食欲不振、うつ病を含む不安関連疾患、てんかん性, 薬剤脱離症状, 及びアルコール依存症を含む発作、認知機能障害, 及び痴呆を含む神経変性障害)を抑制し、又は緩和し、又は治療することができる。
好ましい実施態様において、本発明は、QC-、及び/又はPEP-活性の調節により治療され得る症状の治療、又は緩和用のPEPインヒビターと組み合わせた、QC活性のエフェクターの使用を提供する。
【0040】
さらに好ましい実施態様において、本発明は、QC-、及び/又はDP IV-活性の調節により治療され得る症状の治療、又は緩和用のDP IV、又はDP IV-様酵素のインヒビターと組み合わせた、QC活性のエフェクターの使用を提供する。
神経疾患の治療にさらに好ましいのは、NPY-レセプター-リガンド, NPY アゴニスト, 及び/又はNPY アンタゴニストと組み合わせた、少なくとも1つのQC-エフェクターの使用である。
【0041】
神経疾患の治療にとってさらに好ましいのは、少なくとも1つのアセチルコリンエステラーゼ (ACE) インヒビターと組み合わせた、QC-エフェクターの使用である。
本発明は、任意に、慣用のキャリア、及び/又は賦形剤と組み合わせた、少なくとも1つのQCエフェクターを含む;或いは、慣用のキャリア、及び/又は賦形剤と組み合わせた少なくとも1つのPEP-インヒビター、及び/又はDP IV-インヒビター、及び/又は少なくとも1つのNPY -レセプター-リガンドと組み合わせた、少なくとも1つのQCエフェクターを含む、非経口、経腸、又は経口投与用の医薬組成物を提供する。
【0042】
これらの組合せは、行動性状態(behavioral condition)に特に有益な効果を提供し、従って、前記組合せは、神経障害 (アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、ハンチントン病、病原性精神病、統合失調症、摂食障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝の恒常性調節障害、自律機能障害、ホルモンバランス障害、調節障害、体液、高血圧症、発熱、睡眠調節不全、食欲不振、うつ病を含む不安関連疾患、てんかん性, 薬剤脱離症状, 及びアルコール依存症を含む発作、認知機能障害, 及び痴呆を含む神経変性障害)の治療に効果的、かつ有用であることを示す。
【0043】
従って、本発明は、神経障害 (アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、ハンチントン病、病原性精神病、統合失調症、摂食障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝の恒常性調節障害、自律機能障害、ホルモンバランス障害、調節障害、体液、高血圧症、発熱、睡眠調節不全、食欲不振、うつ病を含む不安関連疾患、てんかん性, 薬剤脱離症状, 及びアルコール依存症を含む発作、認知機能障害, 及び痴呆を含む神経変性障害)の治療方法を提供する。
【0044】
該方法は、QC-インヒビター、及び/又は少なくとも1つのPEP-インヒビター、及び/又は少なくとも1つのDP IV-インヒビター、及び/又は少なくとも1つのNPY-レセプター-リガンド、及び/又は少なくとも1つのACE-インヒビターの同時投与、或いは順次投与を含む。
同時投与は、少なくとも1つのQC-インヒビター、及び/又は少なくとも1つのPEP-インヒビター、及び/又は少なくとも1つのDP IV-インヒビター、及び/又は少なくとも1つのNPY-レセプター-リガンド、及び/又は少なくとも1つのACE-インヒビターを含む製剤の投与、或いは各薬剤の個々の製剤の本質的同時投与を含む。
【0045】
他の態様において、本発明は、神経障害の治療用組成物の製造使用のための、少なくとも1つのQC-インヒビター、及び/又は少なくとも1つのPEP-インヒビター、及び/又は少なくとも1つのDP IV-インヒビター、及び/又は少なくとも1つのNPY-レセプター-リガンド、及び/又は少なくとも1つのACE-インヒビターの使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、PEP-インヒビター, DP IV-インヒビター, NPY-レセプター リガンド, NPY-アゴニスト, NPY-アンタゴニスト, 及びACE インヒビターからなる群から選択された他の化合物とQC-インヒビターとの組合せを基礎にした、神経障害の新しい治療を提供する。
【0047】
本発明はアルツハイマー病、及びダウン症の新規な治療方法を提供する。アルツハイマー病、及びダウン症の脳に沈着したアミロイドβ-ペプチドのN末端は、ピログルタミン酸を有する。pGluの形成は、該疾患の発症、及び進行における重要な事象である。その理由は、改質されたアミロイドβ-ペプチドは、β-アミロイドの凝集、及び毒性を増大し、疾患の発病、及び進行を悪化させ得るからである(Russo, C.らの論文、2002 J Neurochem 82, 1480-1489)。
【0048】
これに対し、本来のAβ-ペプチド(3-40/42)においては、グルタミン酸がN末端アミノ酸として存在する。今日までに公知のGluのpGluへの酵素転換は存在しない。さらに、GluペプチドのpGluペプチドへの自然環化反応は、今までのところ観察されていない。したがって、本発明の一態様は、アルツハイマー病、及びダウン症におけるQCの役割を決定することであった。この一態様においては、3位のアミノ酸としてグルタミン酸の代わりにグルタミンを含む、Aβ(3-11)、及びAβ(1-11)の合成、これらの改質アミロイドβ-ペプチドのQC、DP IV、及びDP IV様酵素、及びアミノペプチダーゼに対する基質特性の決定、及び、QCインヒビターを使用して、該アミロイドβ-誘導体ペプチド1-11、及び3-11のN末端グルタミン残基からpGluの形成を抑制し、解決することに向けられている。該結果を、実施例8に示す。適用された方法は、実施例6に記載されている。
【0049】
今日まで、該疾患の進行におけるQCの関与が全く示唆されていない。その理由は、グルタミン酸がAβ(3-40/42、及び11-40/42)におけるN末端アミノ酸だからである。しかし、QCはペプチドのN末端でpGluを形成できる唯一公知の酵素である。本発明の他の形態は下記の知見、及び発見に関与している:
a)副反応として、QCはごく低速度でグルタミン酸のピログルタミン酸への環化反応を触媒する、
b)APP、又はその後に形成されるアミロイドβ-ペプチドのグルタミン酸は、未知の酵素活性により翻訳後にグルタミンに転換され、かつ第二工程として、QCはグルタミンのピログルタミン酸への環化反応を、アミロイドβ-ペプチドN末端のプロセス後、触媒する、
c)グルタミン酸は化学触媒、又は自己触媒により、翻訳後にグルタミンに転換され、かつ続いて、該アミロイドβ-ペプチドN末端のプロセス後、QCは、グルタミンのピログルタミン酸への環化反応を触媒する、
d)アミロイドβ-タンパク質をコードするAPP遺伝子において、3位のGluの代わりにGlnをもたらす突然変異がある。翻訳、及び該N末端のプロセシング後、QCはグルタミンのピログルタミン酸への該環化反応を触媒する、
e)グルタミンは、未知の酵素活性の異常により、APPの未完成のペプチド鎖に取り込まれ、かつ続いて、該アミロイドβ-ペプチドN末端のプロセシング後、QCは、N末端グルタミンのピログルタミン酸への環化反応を触媒する。
【0050】
QCは上記全5事例における重要な工程、すなわちアミロイドβ-ペプチドの凝集を促進するピログルタミン酸の形成に関与している。このように、QCの阻害は、環化反応が起こる機構に関わらず、アルツハイマー病、及びダウン症の発症と進行を起こす、プラーク形成型アミロイド-β-ペプチド3-40/42、又はアミロイド-β-ペプチド11-40/42の沈着の予防を可能にする。
【0051】
グルタミン酸は、アミロイドβ-ペプチドの3、11、及び22位に見い出される。その中で、22位のグルタミン酸(E)からグルタミン(Q)への突然変異(アミロイド前駆体タンパク質APP 693、スイスプロットP05067に相当)は、いわゆるオランダ型脳動脈アミロイドーシス突然変異として記載されている。3、11、及び22位にピログルタミン酸を有するβ-アミロイドペプチドは、アミロイド-β-ペプチド1-40/(42/43)に比べて、細胞毒性、及び疎水性がより高いことが記載されている(Saido T.C.の論文、2000 Medical Hypotheses 54(3):427-429)。
【0052】
多種のN末端変異は、異なる部位でのβ-セクレターゼ酵素、β-部位アミロイド前駆体タンパク質-切断酵素(BACE)(Huse J.T.らの論文、2002 J. Biol. Chem. 277(18):16278-16284)により、及び/又はアミノペプチダーゼのプロセシングによって、産生が可能である。全ての場合において、先に記載したa)〜e)の経路によって環化反応が起こり得る。
【0053】
今までのところ、経路a)に相当する、未知のグルタミルシクラーゼ(EC)による、Glu1ペプチドのpGluペプチドへの酵素的転換を支持する実験的証拠はない(Garden, R. W., Moroz, T. P., Gleeson, J. M., Floyd, P. D., Li, L. J., Rubakhin, S. S., 及び Sweedler, J. V.の論文 (1999) J Neurochem 72, 676-681; Hosoda R.らの論文(1998) J Neuropathol Exp Neurol. 57, 1089-1095)。今日までに、弱アルカリpH条件下で、N末端側がプロトン化され、かつ負電荷のGlu1γ-カルボン酸部分をもつGlu1ペプチドを、環化できるような酵素活性は同定されていない。
【0054】
Gln1基質に対するQC活性は、pH 7.0以下で劇的に低下する。これに対し、Glu1転換は酸性反応条件で起こるようである(Iwatsubo, T., Saido, T. C., Mann, D. M., Lee, V. M., 及びTrojanowski, J. Q.の論文 (1996) Am J Pathol 149, 1823-1830; Russo, C., Saido, T. C., DeBusk, L. M., Tabaton, M., Gambetti, P., 及びTeller, J. K.の論文 (1977) FEBS Lett 409, 411-416; Russo, C., Salis, S., Dolcini, V., Venezia, V., Song, X. H., Teller, J. K., 及びSchettini, G.の論文 (2001) Neurobiol Dis 8, 173-180; Tekirian, T. L., Saido, T. C., Markesbery, W. R., Russell, M. J., Wekstein, D. R., Patel, E., 及びGeddes, J. W.の論文 (1998) J Neuropathol Exp Neurol. 57, 76-94; Russo, C., Violani, E., Salis, S., Venezia, V., Dolcini, V., Damonte, G., Benatti, U., DArrigo, C., Patrone, E., Carlo, P., 及びSchettini, G.の論文 (2002) J Neurochem 82, 1480-1489; Hosoda, R., Saido, T. C., Otvos, L., Jr., Arai, T., Mann, D. M., Lee, V. M., Trojanowski, J. Q., 及びIwatsubo, T.の論文 (1998) J Neuropathol Exp Neurol. 57, 1089-1095; Garden, R. W., Moroz, T. P., Gleeson, J. M., Floyd, P. D., Li, L. J., Rubakhin, S. S., 及びSweedler, J. V.の論文 (1999) J Neurochem 72, 676-681)。
【0055】
本発明に従って、QCが弱酸性条件下でアミロイド-β誘導ペプチドを認識し、かつ代謝回転できるか否かを調べた。したがって、該酵素の潜在的基質として、ペプチドGln3-Aβ(1-11)a, Aβ(3-11)a, Gln3-Aβ(3-11)a, Aβ(3-21)a, Gln3-Aβ(3-21)a, 及びGln3-Aβ(3-40)を合成し、かつ調べた。これらの配列は、翻訳後のGluアミド化が原因で起こり得る、本来のN末端、及びC末端切断型Glu3-Aβペプチド、及びGln3-Aβペプチドを模倣するように選択された。
【0056】
本発明において、パパイヤ、及びヒトQCがグルタミニル、及びグルタミル環化反応の両方を触媒することを示した。明らかに、QCの主要生理学的機能は、ホルモン分泌プロセスに先立つ、又はその間の、グルタミン環化反応による内分泌細胞内のホルモン成熟を完成させることである。そのような分泌小胞は、酸性pHであることが知られている。従って、pH 5.0〜7.0の狭いpH範囲内での該酵素の副活性は、Glu-Aβペプチドをも転換する、新規に発見されたグルタミルシクラーゼの活性(スキーム3)であり得る。しかしながら、Gln転換に比べてGlu環化はかなり遅く起こるので、該グルタミル環化反応が有意義な生理的役割を果たすかどうかは、疑問の余地がある。しかしながら、神経変性疾患の病理においては、該グルタミル環化反応は有意義である。
【0057】
該酵素反応のpH依存性を研究し、本発明者らは、プロトン化されていないN末端がGln1ペプチドの環化反応に不可欠であり、かつ従って、該基質のpKa値は、QC触媒のpKa値と同一であることを見いだした(図12参照)。このように、QCは、プロトン化されていないα-アミノ部分の、アミド化により親電子的に活性化されたγ-カルボニル炭素への分子内求核攻撃を安定化させる(スキーム1)。
【0058】
N末端グルタミン含有ペプチドに存在する一価の電荷に対して、Glu含有ペプチドにおけるN末端Glu残基は、中性付近のpHで、大部分は二価に荷電される。グルタミン酸は、γ-カルボキシル、及びα-アミノ部位に対し、各々、約4.2、及び7.5のpKa値を示す。すなわち、中性、及びそれ以上のpHでは、該α-アミノ窒素は、部分的に、又は全体的にプロトン化されず、かつ求核的であるが、γ-カルボキシル基はプロトン化されず、かつそれにより親電子的カルボニル活性を発揮しない。したがって、分子内環化反応は不可能である。
【0059】
しかしながら、pH約5.2〜6.5の範囲において、その各々のpKa値の間、全N末端Glu含有ペプチドの約1〜10%(- NH2)、又は10〜1%(-COOH)の濃度で、2官能基は両方非イオン化型で存在する。その結果として、弱酸性pH範囲間で、電荷していない両基を持つN末端Gluペプチドが存在し、かつ従って、QCがpGluペプチドへの分子内環化反応の中間体を安定化させることが可能である。すなわち、もし、該γ-カルボキシル基がプロトン化していると、該カルボニル炭素は親電子的で、プロトン化されていないα-アミノ基による親核攻撃が可能になる。このpHにおいて、水酸基イオンは脱離基として機能する(スキーム3)。これらの仮説は、QCが触媒するGlu-βNAの転換のために得られたpH依存性のデータによって確認された(実施例10参照)。QCによるGln-βNAのグルタミン転換に対し、該触媒の至適pHはpH 6.0付近の酸性範囲、すなわち、基質分子種がプロトン化されたγ-カルボキシル基、及びプロトン化されていないα-アミノ基を同時に十分に持って存在するようなpH範囲に移動する。さらに、速度論的に決定したpKa値7.55±0.02は、滴定により決定されたGlu-βNAのα-アミノ基のpKa値に極めてよく一致している(7.57±0.05)。
【0060】
生理学的に、pH 6.0で、QCが触媒するグルタミン酸環化反応の二次速度定数(又は特異性定数、kcat/KM)は、グルタミン環化反応の該定数より、8,000倍程度遅くなり得る(図11)。しかしながら、Glu-βNA、及びGln-βNAの両モデル基質の非酵素的転換がごくわずかであることは、本発明において観察されたごくわずかなpGluペプチド産生と一致する。それゆえ、QCによるpGluの産生において、酵素対非酵素の速度定数の比から、少なくとも108の加速を推定することが可能である(該酵素触媒の該二次速度定数を、各非酵素環化反応の一次速度定数と比較すると、Gln転換、及びGlu転換における触媒有効係数は、各々109〜1010 M-1である)。これらのデータからの結論は、pGlu産生をもたらす酵素経路は、インビボでのみあり得ると思われる。
【0061】
QCは脳内に非常に豊富に存在しており、かつ最近見い出された、30μM(Gln-)TRH様ペプチドを成熟するための高代謝回転(0.9分-1)(Prokai, L., Prokai-Tatrai, K., Ouyang, X., Kim, H. S., Wu, W. M., Zharikova, A., 及びBodor, N.の論文 (1999) J Med Chem 42, 4563-4571)であるから、同様の反応条件下での適切なグルタミン酸基質には、約100時間の環化反応半減期を予測し得る。さらに、分泌経路における脳QC/ECの局在化、および位置を考慮すると、実際のインビボ酵素、及び基質濃度、及び反応条件は、正常細胞の酵素的環化反応において、なおさら好都合であり得る。かつ、N末端GluがGlnに転換されているなら、QCにより調節される、かなり急速なpGluの産生を予想し得る。インビトロにおいて、両反応はQC/EC活性のインヒビターを適用することによって抑制された(図4、5、及び10)。
【0062】
要約すると、本発明は、脳内にかなり豊富に存在するヒトQCが、Glu-Aβ、及びGln-Aβ前駆体から、アルツハイマー病で見い出されるプラーク沈着の50%以上を構成する、アミロイド生成性pGlu-Aβ-ペプチドを産生する触媒であることを示した。これらの知見は、QC/ECを老人プラーク形成に関わる一因子と同定し、かつ従って、アルツハイマー病の治療における新規な薬剤標的と同定した。
【0063】
本発明の第二の実施態様において、アミロイドβ-誘導ペプチドが、ジぺプチジルペプチダーゼIV(DP IV)、又はDP IV-様酵素の基質であることを見い出された。DP IV、又はDP IV-様酵素は、改質したアミロイドβ-ペプチド(1-11)のN末端からジペプチドを放出し、グルタミンをN末端アミノ酸残基に持つアミロイドβ-ペプチド(3-11)を産生する。その結果は、実施例7に示した。
【0064】
本発明の第三の実施態様において、DP IV活性のインヒビター、及びQCのインヒビターとの組み合わせを、アルツハイマー病、及びダウン症の治療のために使用することができる。
DP IV、及び/又は DP IV様酵素、及びQCを組合せた効果は、以下に示すとおりである:
a)DP IV、及び/又は DP IV様酵素はアミロイド β-ペプチド(1-40/42)を切断し、H-Asp-Ala-OHを含むジペプチド、及びアミロイド β-ペプチド(3-40/42)が放出される、
b)副反応として、QCは低速度でグルタミン酸のピログルタミン酸への環化反応を触媒する、
c)グルタミン酸は、未知の酵素活性により翻訳後にグルタミンに転換され、かつ続いて、アミロイドβ-ペプチドN末端のプロセシング後、QCはグルタミンのピログルタミン酸への環化反応を触媒する、
d)グルタミン酸は化学触媒、又は自己触媒により、翻訳後にグルタミンに転換され、かつ第二工程として、アミロイドβ-ペプチドN末端のプロセシング後、QCはグルタミンのピログルタミン酸への環化反応を触媒する、
e)アミロイドβ-タンパク質をコードするAPP遺伝子において、Aβの3位のGluの代わりにGlnをもたらす突然変異がある。翻訳、及びN末端のプロセシング後、QCはグルタミンのピログルタミン酸への環化反応を触媒する、
f)グルタミンは、未知の酵素活性の異常により未完成のペプチド鎖に取り込まれ、かつ続いて、アミロイドβ-ペプチドN末端のプロセシング後、QCはグルタミンのピログルタミン酸への環化反応を触媒する。
【0065】
また、QC活性への該N末端Glnの露出は、異なるペプチダーゼ活性によって、引き起こし得る。アミノペプチダーゼは、アミロイド β-ペプチド(1-40/41/43)のN末端から、Asp、及びAlaを順次取り去ることが可能で、従って、環化反応され易い3番目のアミノ酸が露出される。DP I、DP II、DP IV、DP 8、DP 9、及びDP 10のようなジペプチジルペプチダーゼは、一工程でジペプチドAsp-Alaを除去する。従って、アミノペプチダーゼ、又はジペプチジルペプチダーゼの活性の阻害は、アミロイド β-ペプチド (3-40/41/43)の産生を防止するのに有用である。
【0066】
DP IV、及び/又はDP IV-様酵素のインヒビター、及びQCの活性低下エフェクターとの組合せ効果を、下記の経路で示す:
a)DP IV、及び/又はDP IV様酵素は、アミロイド β-ペプチド (1-40/42)のアミロイド β-ペプチド(3-40/42)への転換を阻害する。
b)それにより、グルタミン酸のN末端露出を妨げ、酵素による、又は化学触媒によるグルタミンへの転換はなく、続いてピログルタミン酸産生することは不可能である。
c)さらに、QCのインヒビターは、残基が改質されたアミロイド β-ペプチド(3-40/42)分子、及びAPP遺伝子の突然変異により産生された、これらの改質アミロイド β-ペプチド(3-40/42)分子からのピログルタミン酸形成を阻害する。
【0067】
プロリルエンドペプチダーゼ (PEP)は、細胞外空間に存在する神経ペプチドを不活性化すると考えられる。しかし、細胞内に存在するPEPは、この酵素の付加的な、まだ同定されていない生理学的機能を提案する。
【0068】
本発明は、下記の予期しない発見を含む:
1)PEPは、軸索輸送、及び/又はタンパク分泌物における、PEPの新規機能を示すラット初代神経、及びグリア細胞、並びにヒト細胞株の核周辺の空間、及び細胞骨格に局在化する。
2)U-343、及びSH-SY5Y細胞中の代謝標識実験において、PEP阻害条件下で、全体的なタンパク分泌物の増加が生じる。
3)大量に分泌された該タンパク質のうちで、β-アミロイド ペプチドが培養液中に蓄積された。
4)マウス脳において、PEPは、神経細胞にのみ発現され、かつ発現量において、領域-、及び年齢-特異的差異を示した。
5)アミロイド前駆タンパク質トンラスジェニックTg2576マウスの脳において、海馬のPEP活性は、β-アミロイドプラーク病理学で、前プラーク相(pre-plaque phase)中において増加したが、加齢マウスにおいては増加しなかった。
6)PEP発現は、Tg2576マウス、及びアルツハイマー病患者の脳内のβ-アミロイドプラークを囲む活性化グリア細胞において検出されなかった。
【0069】
本発明のこの観測は、PEP阻害の、報告されている神経保護、及び認知向上効果は、β-アミロイドペプチドを含むタンパク分泌物増加が原因であるかもしれない。これは、細胞内IP3濃度の上昇により支持されている。
本発明のさらなる態様は、アセチルコリンエステラーゼ (ACE)のインヒビターを考慮する。ACE インヒビターは、用量依存性方法において、基礎的、及びK+-刺激脳ピロリドンカルボキシルペプチダーゼ活性の増加を示す。このため、これらの薬剤は、脳ピロリドンカルボキシルペプチダーゼの活性化をトラフするコリン作用性伝達を促進するだけでなく、ピログルタミル-末端アミロイド-b-ペプチド沈着の産生を回避する作用し、アルツハイマー型痴呆 (ATD)認知障害を改善することができる(Ramirez-Expositoらの論文(2001), European Neuropsychopharmcology 11, 381-383)。好ましいACE-インヒビターは、SDZ ENA 713である(リバスティグミン(+)-(S)-N-エチル-3-[(1-ジメチルアミノ)エチル]-N-メチルフェニルカルバメート酒石酸水素である。
【0070】
先に記載した事実を要約すると、該酵素QC, PEP, DP IV/DP IV-様酵素, 及びピロリドンカルボキシルペプチダーゼは、障害性神経状態に関与し、かつ従って薬剤開発における標的である。これらの酵素のインヒビターの特定の効果を、表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
アルツハイマー病, ダウン症, パーキンソン病, 及びハンチントン病の患者に見られる全プラークペプチドの50%以上が、pGluから始まる。前記N-末端 pGluは、該ペプチド分解耐性、及び例えば、該CNSにおける神経細胞中のpGlu-Aβ 3-40(42/43), pGlu-Aβ 11-40(42/43)、及びpGlu-Aβ 22-40(42/43)の細胞内沈着から始まる要因プラーク形成を与える。これらのpGlu-含有ペプチドの形成、及び細胞内沈着は、下記により効果的に抑制、又は減少することができる:
1)QCの阻害、それにより、アミロイド β-ペプチドのN-末端グルタミン、又はグルタミン酸残基の環化反応を阻害する;
2)PEPの阻害、それにより、該細胞外空間内のアミロイドβ-ペプチド(1-40/42/43)分泌物を増加し、かつ、それにより、その後のN-末端切断アミロイドβ-ペプチド(3-40/42/43), 及びアミロイドβ-ペプチド(11-40/42/43)に作用するQCを抑制する;又はACE インヒビターの投与、それにより、ピログルタミル-末端アミロイドβ-ペプチドの形成を阻害する;又は
【0073】
4)QC、及びPEPの両酵素の刺激阻害、それにより、1)、及び2)に記載した効果を組み合わせる。スキーム4において、細胞内のpE-Aβ3/11-42産生、及び蓄積を抑制する治療的介入のそれぞれの標的点を、QC/EC阻害に対して数字(1)、PEP阻害に対して(2)、及びCE インヒビター投与に対して(3)を示した。
【0074】
【化5】

【0075】
該アミロイド前駆タンパク質(APP)同化作用に関与するさらなる酵素を、次に記載した。
I型膜貫通APPは、アルツハイマー病の原因であるβ-アミロイドペプチドを形成するプラークの元である。該APPは、異なる処理工程を受ける。該アルファ-セクレターゼによる正常な開裂は、β-アミロイドペプチド配列内で生じ、かつ可溶性、及び無毒性断片を生成する。一方、該APPは、また、アミロイド生成性ベータ-A4 1-40、又は1-42 ペプチドを放出する、次のベータ-、及びガンマ-セクレターゼの作用により加水分解される。
【0076】
1999、及び2000年において、2つのアスパラギン酸プロテアーゼBACE1、及びBACE2(メマプシン-2、及び-1)が同定された。これらは、ベータ-セクレターゼ部位でAPPを開裂することができる(Vassar R.らの論文1999 Science 286 (5440):735-741, Acquati F.らの論文2000 FEBS Lett 468 (1):59-64)。特に、いわゆるスウェーデン変異(Swedish mutation)(K670M671→NL)が、存在する場合、APPは、BACE1にとって50倍よい基質である(Grueninger-Leitch F.らの論文2002 J Biol Chem 277 (7):4687-4693)。さらに、システインプロテアーゼは、ベータ部位開裂の有力な候補として議論中にある(Hook V. Y.らの論文2002 J Neurochem. 81 (2):237-256)。β-アミロイドペプチド(1-40/42)の放出後、該ペプチドは、N-末端グルタミル残基を有するβ-アミロイドペプチド(3-40/42)を産生する、アミノペプチダーゼ、又はジペプチジルアミノペプチダーゼにより攻撃され得る。
先に示したように、β-アミロイドペプチド(3-40/42)の該N-末端グルタミル残基は、その環化反応を触媒し、N-末端ピログルタミン酸残基を産生する、グルタミニルシクラーゼにより受け取られる。このpGlu3-β-アミロイド ペプチド (3-40/42)は、アミノペプチダーゼに対する高いタンパク質分解安定度により、及びそのアミロイド生成性の向上により特徴付けられる。
【0077】
イソ-アスパルチル(イソAsp)、又はD-アスパルチル(D-Asp)残基の自然形成は、タンパク質の一般的工程であり、該APPの位置672で起こり得る。それは、該β-アミロイドペプチドの位置1に対応する。実際、N-末端イソAsp含有β-アミロイドペプチドは、アルツハイマー患者のプラークにおいて測定される(Shimizu T.らの論文2000 Arch Biochem Biophys 381 (2):225-234)。
【0078】
本発明のさらに好ましい実施態様として、第一の実験的証拠があり、この位置でイソAsp残基を有する基質は、対応するアスパルチル含有ペプチドよりも、ベータセクレターゼ様開裂に高い感受性を有する(図21、及び22)。
タンパク質イソアスパラギン酸カルボキシメチルトランスフェラーゼ(PIMT)は、ポリペプチド鎖の自発的形成イソAsp、又はD-Asp残基内部を、この非天然アミノ酸のメチル化により修復することができる酵素である。このメチル化は、Asp、又はイソAspに対する可能性により転換するスクシンイミド中間体を迅速に形成する(Clarke S.の論文 2003 Ageing Res Rev 2 (3):263-285)。PIMTの繰り返し作用は、ペプチドを含む該Aspの逆側にペプチド鎖を含む該イソAspを完全修復する(Harigaya Y., T. C.らの論文2000 Biochem Biophys.Res Commun 276 (2):422-427, Russo C.らの論文2002 J Neurochem 82 (6):1480-1489)。PIMTよる触媒作用の機序は、スキーム5を参照されたい。
【0079】
【化6】

【0080】
要約すれば、pGlu3-β-アミロイドペプチド(3-40/42)産生のカスケードにおける一段階を抑制する化合物の全ての組合せは、アルツハイマー病の治療に有用である。前記組合せは、例えば、下記のものである。
1.β-アミロイドペプチド(3-40/42)からN-末端 pGluの形成を抑制するQC活性インヒビター
2.老化APPを修復するPIMT エンハンサー
3.制限されないが、BACE1, BACE2, 及びシステインプロテアーゼを含むベータ-セクレターゼのインヒビター、並びにAPPからのβ-アミロイドペプチドの形成を抑制するガンマセクレターゼのインヒビター
4.制限されないが、β-アミロイド ペプチド(3-40/42)の産生を抑制するジペプチイルペプチダーゼ II、ジペプチイルペプチダーゼ IVを含むアミノペプチダーゼ、及びジペプチジルアミノペプチダーゼのインヒビター、
5.可溶性β-アミロイド ペプチドの開裂が可能であることが発見された、中性エンドペプチダーゼ活性のエンハンサーである。
【0081】
これらの組合せの略図を、スキーム6に示した。該APPは、ベータ、及び/又はガンマセクレターゼによりβ-アミロイドペプチド(1-40/42)に開裂される。該ベータセクレターゼ開裂は、イソAsp672の産生により促進され得る。β-アミロイドペプチド(1-40/42)は、例えばアミノペプチダーゼ(AP)、又はジペプチジルペプチダーゼ(DP)により、N-末端 Glu残基を含むβ-アミロイド ペプチド(3-40/42)に加水分解される。これは、グルタミニルシクラーゼによりさらに処理され得て、該アミロイド生成性pGlu3-β-アミロイドペプチド(3-40/42)を形成する。スキーム6中のxは、40/42を表す。
【0082】
本発明に従って、先に記載した1.〜5.から選択された化合物を2〜5つ含む組合せが好ましい。さらに好ましい組合せは、先に記載した1.〜5.から選択された化合物を2〜5つ含む。最も好ましい組合せは、先に記載した1.〜5.から選択された化合物を2つ含む。
【0083】
特に好ましくは、少なくとも1つのQC インヒビター、及び先に記載した2.〜5.から選択された少なくとも1〜5つの化合物を含む組合せである。最も好ましくは、少なくとも1つのQC インヒビター、及び少なくとも1つのPIMT エンハンサーを含む組合せ、又は少なくとも1つのQC インヒビター、及び少なくとも1つのベータセクレターゼ インヒビターを含む組合せ、又は少なくとも1つのQC インヒビター、及び少なくとも1つのガンマセクレターゼ インヒビターを含む組合せである。
【0084】
【化7】

【0085】
適切なQC-インヒビターは、例えば一般式1を有するものである:
【化8】

【0086】
(式中、nは、1、2、3、又は4であり、好ましくは2、又は3であり、特に2であり、かつAは、飽和又は不飽和複素環とすることができ、かつ置換又は非置換としてもよく、式中R1は、H、あるいは分岐又は非分岐アルキル鎖、分岐又は非分岐アルケニル鎖、分岐又は非分岐アルキニル鎖、カルボシクリカ炭素環(carbocyclica carbocycle)、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリカ複素環(heterocyclica heterocycle)、アザ-アミノ酸、アミノ酸又はこれらの模倣体、アザ-ペプチド、ペプチド又はこれらの模倣体であり;前記残基R1のすべては、任意に、互いに独立に置換されている。)。
さらに、適切なQC-インヒビターは、すべての立体異性体を含む、一般式2、及びその医薬として許容し得る塩により一般的に記載され得る:
【0087】
【化9】

【0088】
(式中、R1、R2、及びR3は、独立に、H、あるいは分岐又は非分岐アルキル鎖、分岐又は非分岐アルケニル鎖、分岐又は非分岐アルキニル鎖、カルボシクリカ炭素環、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリカ複素環、アザ-アミノ酸、アミノ酸又はこれらの模倣体、アザ-ペプチド、ペプチド又はこれらの模倣体であり;前記残基R1、R2、及びR3のすべては、任意に、互いに独立に置換されている。)。
さらに、本発明は、すべての立体異性体を含む、下記3、及びその医薬として許容し得る塩を提供する。
【0089】
【化10】

【0090】
(式中、nは、1、2、3、又は4であり、好ましくは2、又は3であり、特に2であり、かつAは、飽和又は不飽和複素環とすることができ、かつ置換又は非置換としてもよく、かつ式中R1、及びR2は、独立に、H、あるいは分岐又は非分岐アルキル鎖、分岐又は非分岐アルケニル鎖、分岐又は非分岐アルキニル鎖、カルボシクリカ炭素環、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリカ複素環、アザ-アミノ酸、アミノ酸又はこれらの模倣体、アザ-ペプチド、ペプチド又はこれらの模倣体であり;任意に、前記残基R1、及びR2のすべては、互いに独立に、置換されている。)。
さらに、本発明は、すべての立体異性体を含む、下記式4、及びその医薬として許容し得る塩により一般的に記載され得るQC-インヒビターを提供する:
【0091】
【化11】

【0092】
(式中、R1、R2、及びR3は、独立に、H、あるいは分岐又は非分岐アルキル鎖、分岐又は非分岐アルケニル鎖、分岐又は非分岐アルキニル鎖、炭素環、アリール、ヘテロアリール、複素環、アザ-アミノ酸、アミノ酸又はこれらの模倣体、アザ-ペプチド、ペプチド又はこれらの模倣体であり;前記残基のすべては、任意に、互いに独立に置換されている。)。
さらに、本発明は、すべての立体異性体を含む、下記式5、及びその医薬として許容し得る塩により一般的に記載され得るQC-インヒビターを提供する:
【0093】
【化12】

【0094】
(式中、nは、1、2、3、又は4、好ましくは2、又は3、特に2であり、かつAは、飽和又は不飽和複素環とすることができ、かつ置換又は非置換としてもよく、式中R1、R2、及びR3は、独立に、H、あるいは分岐又は非分岐アルキル鎖、分岐又は非分岐アルケニル鎖、分岐又は非分岐アルキニル鎖、炭素環、アリール、ヘテロアリール、複素環、アザ-アミノ酸、アミノ酸又はこれらの模倣体、アザ-ペプチド、ペプチド又はこれらの模倣体であり;任意に、前記残基のすべては、互いに独立に、置換されている。)。
他の適切なQC-インヒビターは、すべての立体異性体を含む、下記式6、及びその医薬として許容し得る塩により一般的に記載され得る化合物である:
【0095】
【化13】

【0096】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、独立に、H、あるいは分岐、又は非分岐アルキル鎖、分岐又は非分岐アルケニル鎖、分岐又は非分岐アルキニル鎖、炭素環、アリール、ヘテロアリール、複素環、アザ-アミノ酸、アミノ酸又はこれらの模倣体、アザ-ペプチド、ペプチド又はこれらの模倣体であり;任意に、前記残基のすべては、互いに独立に、置換されている。)。
さらに、本発明は、すべての立体異性体を含む、下記式7、及びその医薬として許容し得る塩により一般的に記載され得るQC-インヒビターを提供する:
【0097】
【化14】

【0098】
(式中、nは、1、2、3、又は4、好ましくは2、又は3、特に2であり、かつAは、飽和又は不飽和複素環とすることができ、かつ置換又は非置換としてもよく、式中R1、R2、及びR3は、独立に、H、あるいは分岐又は非分岐アルキル鎖、分岐又は非分岐アルケニル鎖、分岐又は非分岐アルキニル鎖、カルボシクリカ炭素環、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリカ複素環、アザ-アミノ酸、アミノ酸又はこれらの模倣体、アザ-ペプチド、ペプチド又はこれらの模倣体であり;任意に、前記残基R1、R2、及びR3のすべては、互いに独立に、置換されている。)。
本発明の他のQC-インヒビターは、すべての立体異性体を含む、下記式8、及びその医薬として許容し得る塩により一般的に記載され得る化合物である:
【0099】
【化15】

【0100】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、独立に、H、あるいは分岐、又は非分岐アルキル鎖、分岐又は非分岐アルケニル鎖、分岐又は非分岐アルキニル鎖、カルボシクリカ炭素環、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリカ複素環、アザ-アミノ酸、アミノ酸又はこれらの模倣体、アザ-ペプチド、ペプチド又はこれらの模倣体であり;任意に、前記残基R1、R2、R3、R4、及びR5のすべては、互いに独立に、置換されている。)。
さらに、本発明は、すべての立体異性体を含む、下記式9、及びその医薬として許容し得る塩により一般的に記載され得るQC-インヒビターを提供する:
【0101】
【化16】

【0102】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、独立に、H、あるいは分岐、又は非分岐アルキル鎖、分岐又は非分岐アルケニル鎖、分岐又は非分岐アルキニル鎖、炭素環、アリール、ヘテロアリール、複素環、アザ-アミノ酸、アミノ酸又はこれらの模倣体、アザ-ペプチド、ペプチド又はこれらの模倣体であり;任意に、前記残基R1、R2、R3、R4、及びR5のすべては、互いに独立に、置換されている。)。好ましいQC-インヒビターは、式10に関するものである:
【0103】
【化17】

【0104】
(式中Aは、分岐又は非分岐C1-C7アルキル鎖、分岐又は非分岐C1-C7アルケニル鎖、分岐又は非分岐C1-C7アルキニル鎖であり、あるいは式中Aは、下記からなる群から選択された化合物であり:
【0105】
【化18】

【0106】
(式中、R6-R10は、独立に、H、あるいは分岐又は非分岐アルキル鎖、分岐又は非分岐アルケニル鎖、分岐又は非分岐アルキニル鎖、炭素環、アリール、ヘテロアリール、複素環であり、好ましくはH、又はメチルであり、
式中、n、及びn1は、独立に、15であり、mは15であり、oは04であり、
好ましくは、Aは、m = 1-4、1,4-ジメチルフェニル、又は1,3-ジメチルフェニルを有する式(IV)のC3アルキル鎖、C3メチル分岐アルキル鎖、シクロアルキル-1,1-ジメチルであり、かつ
式中、Bは、下記からなる群から選択された化合物であり:
【0107】
【化19】

【0108】
(式中、D、及びEは、分岐又は非分岐アルキル鎖、分岐又は非分岐アルケニル鎖、分岐又は非分岐アルキニル鎖、炭素環、アリール、ヘテロアリール、又は複素環であり、
好ましくは、D、及びEは、置換フェニルであり、該置換基は、オキシアルキル、チオアルキル、ハロゲニル(halogenyl)、カルボン酸アルキルエステル、又はアリールエステルであり、
さらに好ましい実施態様において、式中、D、及びEは、ジヒドロベンゾジオキシン、ベンゾジオキソール、ベンゾジチオール、ジヒドロベンゾジチイン、ベンゾオキサチオール、ジヒドロベンゾオキサチインであり、
式中、Zは、CH、又はNであり、
好ましい実施態様において、Zは、Nであり、
式中、Xは、O、S、又はN-CNとすることができるが、但し、式(VIII)、及び(IX)において、Z = CHである場合、Xは、O、又はSであり、
式中、X1、X2、及びX3は、独立に、O、又はSであり、
好ましい実施態様において、Xは、Sであり、
式中、Yは、O、又はSであり、
式中、Zは、CH、又はNであり
好ましい実施態様において、Zは、Nであり、
【0109】
式中、R11-R14は、独立に、H、あるいは分岐又は非分岐アルキル鎖、分岐又は非分岐アルケニル鎖、分岐又は非分岐アルキニル鎖、炭素環、アリール、ヘテロアリール、複素環、ハロゲニル、オキシアルキル、チオアルキル、カルボキシル、カルボン酸エステル、カルボニル、カルバミド、カルビミド、チオカルバミド、又はチオカルボニルであり、
好ましい実施態様において、R11、及びR14は、Hであり、
さらに好ましい実施態様において、R12、及びR13は、独立に、オキシアルキル、又はチオアルキル、ハロゲニル、又はカルボン酸アルキルエステル又はフェニルであり、あるいは結合して、及びR13が、ジヒドロベンゾジオキシン、ベンゾジオキソール、ベンゾジチオール、ジヒドロベンゾジチイン、ベンゾオキサチオール、ジヒドロベンゾオキサチインを形成しており、
【0110】
式中、R15、及びR16は、独立にH、あるいは分岐又は非分岐アルキル鎖、又は分岐又は非分岐アルケニル鎖であり、
好ましい実施態様において、R15、及びR16の少なくとも1つはHであり、
最も好ましくは、R15、及びR16が、双方ともHであり、
式中、R17、及びR18は、互いに独立に、H、あるいは分岐又は非分岐アルキル鎖、分岐又は非分岐アルケニル鎖、分岐又は非分岐アルキニル鎖、炭素環、アリールであり、又は6個までの環原子で炭素環を形成するように結合することができ、
好ましい実施態様において、R17、及びR18の1つが、Hであり、かつ他がMeであり、
さらに好ましくは、R17、及びR18の1つが、Hであり、かつ他がフェニルである化合物であり、
さらに好ましい実施態様において、R17、及びR18は、6個までの環原子で炭素環を形成していてもよく、
式中、nは、0、又は1であり、
任意に、前記残基のすべては、互いに独立に置換されている。)。)。)。
【0111】
さらに、本発明は、神経疾患の治療用薬剤の製造のための、下記式10のQC-インヒビターの使用であって、任意に、PEP-インヒビター, ジペプチジルアミノペプチダーゼのインヒビター, NPY-レセプターリガンド, NPYアゴニスト, NPYアンタゴニスト, ACEインヒビター, PIMTエンハンサー, ベータセクレターゼのインヒビター, ガンマセクレターゼインヒビター、及び中性エンドペプチダーゼのインヒビターからなる群から選択された少なくとも1つの薬剤を組み合わせた、前記使用を提供する。
【0112】
【化20】

【0113】
適切なPIMTエンハンサーの例は、それぞれWO 98/15647、及びWO 03/057204に記載されている、下記一般式の10-アミノアリファチル-ジベンゾ[b, f] オキセピン(10-aminoaliphatyl-dibenz[b, f] oxepines)である。
【0114】
【化21】

【0115】
式中、アルク(alk)は、二価脂肪族ラジカルであり、Rは、非置換アミノ基、或いは一価脂肪族及び/又はアラリファティックラジカル(araliphatic radical)により一、若しくは二置換されたアミノ基、又は、二価脂肪族ラジカルにより二置換されたアミノ基であり、かつR1, R2, R3, 及びR4は、各々、他のものとは独立に、水素原子, 低アルキル, 低アルコキシ, ハロゲン, 又はトリフルオロメチルである。
本発明に従って、下記一般式I-IVのPIMT活性の調節がさらに有用である:
【0116】
【化22】

【0117】
(式中、置換基R1-R5, (R3)p, (R6)p, X, Y, 及びZの定義は、WO 2004/039773に記載されている。)。
WO 98/15647, WO 03/057204, 及びWO 2004/039773は、これらの全体において本明細書中に取り込まれており、そこに記載された化合物の合成法、及び使用に関しては、本明細書の一部である。
【0118】
適切なベータ及び/又はガンマセクレターゼのインヒビター、及び前記インヒビターを含む組成物は、例えば、GB 2 385 124, GB 2 389 113, US 2002-115616, WO 01/87293, WO 03/057165, WO 2004/052348, 及びWO 2004/062652に記載されている。これらの引用例は、これらの全体において本明細書中に取り込まれており、かつベータ及び/又はガンマセクレターゼにとって、そこに記載されている化合物、及び組成物の合成、製造、及び使用に関しては、本明細書の一部である。
【0119】
有力な選択性、及び細胞透過性のガンマセクレターゼインヒビターは、(5S)-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-6-フェニル-(4R)ヒドロキシ-(2R)ベンジルヘキサノイル)-L-leu-L-phe-アミドであり、下記式を有する。
【化23】

【0120】
有力なベータセクレターゼインヒビターは、下記式のPNU-33312である。
【化24】

【0121】
適切なプロリルエンドペプチダーゼのインヒビターは、例えば、プロリンの化学的誘導体、又は末端プロリンを含む小ペプチドである。ベンジルオキシカルボニル-プロリル-プロリナールが、該酵素の特定の遷移状態インヒビター(transition state inhibitor)となることを示している(Wilk, S.、及びOrloeski, M.の論文、J. Neurochem.、41、69 (1983)、Friedman, らの論文、Neurochem., 42、237 (1984))。L-プロリン、又はL-プロリルピロリジンのN-末端置換(Atack, らの論文、Eur. J. of Pharm., 205、157-163 (1991)、JP 03-56,460、EP 384,341)、並びにカルボキシ末端でプロリナールを含む、N-ベンジルオキシカルボニル (Z) ジペプチドの変形体が、プロリルエンドペプチダーゼインヒビターとして合成されている(Nishikata, らの論文、Chem. Pharm. Bull. 34(7)、2931-2936 (1986)、Baker, Aらの論文、Bioorganic & Medicinalの論文 Chem. Letts., 1(11)、585-590 (1991))。該コア構造のチオプロリン、チアゾリジン、及びオキソピロリジン置換体が、プロリルエンドペプチダーゼを阻害することが報告されている(Tsuru, らの論文、J. Biochem., 94、1179 (1988)、Tsuru, らの論文、J. Biochem., 104、580-586 (1988)、Saito らの論文. J. Enz. Inhib. 5、51-75 (1991)、Uchida, I., らの国際特許出願WO 90/12,005、JP 03-56,461、JP 03-56,462)。類似して、多くのフッ化ケトン誘導体を含む、該カルボキシ末端プロリンの様々な改質が行われている。フッ化ケトン誘導体の一般的合成は、記載されている(Angelastro, M.R.,らの論文、テトラhedron Letters 33(23)、3265-3268 (1992))。アシル-プロリン、又はアシルペプチド-プロリン(Z-Gly-Pro-CH2Cl)のクロロメチルケトン誘導体のような、他の化合物は、該酵素活性部位をアルキル化することにより、該酵素を阻害することが示されている(Yoshimoto, T.,らの論文、Biochemistry 16、2942 (1977))。
【0122】
EP-A-0 286 928には、プロピルエンドペプチダーゼインヒビターとして有用である2-アシルピロリジン誘導体が開示されている。
さらに、本発明の適切なプロリルエンドペプチダーゼインヒビターは、Fmoc-Ala-Pyrr-CN、及び下記リストのものがある。
【0123】
【化25】

【0124】
さらに、本発明の適切なプロリルエンドペプチダーゼインヒビターは、下記の公報に開示されている:JP 01042465, JP 03031298, JP 04208299, WO 0071144, US 5847155; JP 09040693, JP 10077300, JP 05331072, JP 05015314, WO 9515310, WO 9300361, EP 0556482, JP 06234693, JP 01068396, EP 0709373, US 5965556, US 5756763, US 6121311, JP 63264454, JP 64000069, JP 63162672, EP 0268190, EP 0277588, EP 0275482, US 4977180, US 5091406, US 4983624, US 5112847, US 5100904, US 5254550, US 5262431, US 5340832, US 4956380, EP 0303434, JP 03056486, JP 01143897, JP 1226880, EP 0280956, US 4857537, EP 0461677, EP 0345428, 4JP 02275858, US 5506256, JP 06192298, EP 0618193, JP 03255080, EP 0468469, US 5118811, JP 05025125, WO 9313065, JP 05201970, WO 9412474, EP 0670309, EP 0451547, JP 06339390, US 5073549, US 4999349, EP 0268281, US 4743616, EP 0232849, EP 0224272, JP 62114978, JP 62114957, US 4757083, US 4810721, US 5198458, US 4826870, EP 0201742, EP 0201741, US 4873342, EP 0172458, JP 61037764, EP 0201743, US 4772587, EP 0372484, US 5028604, WO 9118877, JP 04009367, JP 04235162, US 5407950, WO 9501352, JP 01250370, JP 02207070, US 5221752, EP 0468339, JP 04211648, 及びWO 9946272である。これらの技術文献は、全体として、引用により、特に、これらのインヒビター、これらの定義、使用、及びこれらの製造に関して、本明細書中に取り込まれている。
【0125】
適切なDP IV-インヒビターは、例えば下記公報に開示されているものである:US 6,380,398, US 6,011,155; US 6,107,317; US 6,110,949; US 6,124,305; US 6,172,081; WO 95/15309, WO 99/61431, WO 99/67278, WO 99/67279, DE 198 34 591, WO 97/40832, DE 196 16 486 C 2, WO 98/19998, WO 00/07617, WO 99/38501, WO 99/46272, WO 99/38501, WO 01/68603, WO 01/40180, WO 01/81337, WO 01/81304, WO 01/55105, WO 02/02560, 及びWO 02/14271, WO 02/04610, WO 02/051836, WO 02/068420, WO 02/076450; WO 02/083128, WO 02/38541, WO 03/000180, WO 03/000181, WO 03/000250, WO 03/002530, WO 03/002531, WO 03/002553,WO 03/002593, WO 03/004496, WO 03/004498, WO 03/024965, WO 03/024942, WO 03/035067, WO 03/037327, WO 03/035057, WO 03/045977, WO 03/055881, WO 03/68748, WO 03/68757, WO 03/057666, WO 03057144, WO 03/040174, WO 03/033524, 及びWO 03/074500である。
【0126】
好ましいDP IV-インヒビターは、バリンピロリジド(Novo Nordisk社)、Hughes らの論文Biochemistry、38 (36)、11597-11603、1999に開示されているNVP-DPP728A (1-[[[2-[{5-シアノピリジン-2-イル}アミノ]エチル]アミノ]アセチル]-2-シアノ-(S)-ピロリジン)(Novartis社)、Hughesらの論文、Meeting of the American Diabetes Association 2002、Abstract no. 272に開示されている又は(Novartis社)のLAF-237(1-[(3-ヒドロキシ-アダマント-1-イルアミノ)-アセチル]-ピロリジン-2(S)-カルボニトリル)、Yamadaらの論文、Bioorg. & Med. Chem. Lett. 8 (1998)、1537-1540に開示されているTSL-225(トリプトフィル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸)、Asworthらの論文、Bioorg. & Med. Chem. Lett.、6、No. 22、pp 1163-1166、及び2745-2748 (1996)に開示されている2-シアノピロリジド,及び4-シアノピロリジド、Sudreらの論文Diabetes 51 (5)、pp 1461-1469 (2002)(Ferring社)に開示されているFE-999011([(2S)-1-([2’S]-2’-アミノ-3’,3’ジメチル-ブタノイル)-ピロリジン-2-カルボニトリル])、Randhawa SAらの研究ACS Meeting 2003、226th:New York (MEDI 91)により開示されているGW-229A(GlaxoSmithKline社)、MK-0431((2R)-4-オキソ-4-[3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル]-1-(2,4,5-トリフルオロフェニル)ブタン-2-アミン)、及びWO 01/34594(Guilford社)に開示されている化合物があり、前記引用例に定められた投与量を使用する。
【0127】
疑いを避けるために、前述の各出版物に開示されている例は、個々に開示された化合物として、その全体を引用により明確に取り込まれており、特にこれらの構造、これらの定義、使用、及びこれらの製造に関する。
QC-インヒビターと組合わせて、本発明に従って使用され得る他の適切な薬剤には、NPY、NPY模倣体、又はNPYアゴニスト又はアゴニスト、又は該NPYレセプターのリガンドがある。
本発明に好ましいのは、該NPYレセプターのアンタゴニストである。
該NPYレセプターの適切なリガンド、又はアンタゴニストは、WO 00/68197に開示されている3a,4,5,9b-テトラヒドロ-1h-ベンゾ[e]インドール-2-イルアミン誘導化合物である。
【0128】
記載され得るNPYレセプターアンタゴニストには、下記公報に開示されているものを含む:欧州特許出願EP 0 614 911, EP 0 747 357, EP 0 747 356, 及びEP 0 747 378;国際特許出願WO 94/17035, WO 97/19911, WO 97/19913, WO 96/12489, WO 97/19914, WO 96/22305, WO 96/40660, WO 96/12490, WO 97/09308, WO 97/20820, WO 97/20821, WO 97/20822, WO 97/20823, WO 97/19682, WO 97/25041, WO 97/34843, WO 97/46250, WO 98/03492, WO 98/03493, WO 98/03494, 及びWO 98/07420;WO 00/30674, 米国特許第5,552,411, 5,663,192, 及び5,567,714; 6,114,336号, 日本特許出願JP 09157253;国際特許出願WO 94/00486, WO 93/12139, WO 95/00161, 及びWO 99/15498;米国特許第5,328,899号;ドイツ特許出願DE 393 97 97;欧州特許出願 EP 355 794、及びEP 355 793;及び日本特許出願JP 06116284、及びJP 07267988である。これらの文献すべての開示は、引用により本明細書中に取り込まれている。好ましいNPYアンタゴニストには、これらの特許文献に具体的に開示されている化合物がある。さらに好ましい化合物には、アミノ酸、及び非-ペプチド-ベースのNPYアンタゴニストがある。記載され得るアミノ酸、及び非-ペプチド-ベースのNPYアンタゴニストには、下記公報に開示されているものを含む:欧州特許EP 0 614 911、EP 0 747 357、EP 0 747 356、及びEP 0 747 378;国際特許出願WO 94/17035, WO 97/19911, WO 97/19913, WO 96/12489, WO 97/19914, WO 96/22305, WO 96/40660, WO 96/12490, WO 97/09308, WO 97/20820, WO 97/20821, WO 97/20822, WO 97/20823, WO 97/19682, WO 97/25041, WO 97/34843, WO 97/46250, WO 98/03492, WO 98/03493, WO 98/03494, WO 98/07420, 及びWO 99/15498;米国特許第5,552,411、第5,663,192、及び第5,567,714号;及び日本特許出願JP 09157253である。好ましいアミノ酸、及び非-ペプチド-ベースのNPYアンタゴニストには、これらの特許文献に具体的に開示されている化合物がある。
【0129】
特に好ましい化合物は、アミノ酸-ベースのNPYアンタゴニストである。記載され得るアミノ酸-ベースの化合物には、国際特許出願WO 94/17035、WO 97/19911、WO 97/19913、WO 97/19914、又は好ましくはWO 99/15498に開示されている化合物がある。好ましいアミノ酸-ベースのNPYアンタゴニストには、これらの特許明細書に具体的に記載されているものがあり、例えばBIBP3226、及び特に(R)-N2-(ジフェニルアセチル)-(R)-N-[1-(4-ヒドロキシ-フェニル)エチル]アルギニンアミド (国際特許出願WO 99/15498の実施例4)がある。
【0130】
疑いを避けるために、前述の各出版物に開示されている例は、個々に開示された化合物として、特にこれらの構造、これらの定義、使用、及びこれらの製造に関して、その全体を引用により明確に取り込んでいる。
好ましいDP IV-インヒビターは、ジペプチド様化合物として以下に記載した、ジペプチド-様化合物、及びアミノ酸とチアゾリジン又はピロリジン基とから形成されたジペプチド化合物に類似した化合物、並びにこれらの塩である。好ましくは、該アミノ酸と該チアゾリジン又はピロリジン基は、アミド結合で結合している。
【0131】
ジペプチド様化合物が、本発明の目的に特に適切であり、該化合物のアミノ酸は、好ましくは、例えばロイシン、バリン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、イソロイシン、アスパラギン、及びアスパラギン酸のような天然アミノ酸から選択される。
本発明に使用される該ジペプチド様化合物は、血漿ジペプチジルペプチダーゼIVの活性低下、又は少なくとも10%、特に、少なくとも40%のDP IV類似体酵素活性低下となる、10μMの(ジペプチド化合物の)濃度で示される。頻繁に、少なくとも60%、又は少なくとも70%の活性低下も要求される。また、好ましい薬剤は、最大20%、又は30%の活性低下を示し得る。
【0132】
好ましい化合物は、N-バリルプロリル、O-ベンゾイルヒドロキシルアミン、アラニル ピロリジン、イソロイシルチアゾリジン様L-アロ-イソロイシルチアゾリジン、L-トレオ-イソロイシルピロリジン、及びこれらの塩、特にフマル酸塩、並びにL-アロ-イソロイシルピロリジン、及びその塩である。
さらに好ましい化合物を、表2に示す。
該ジペプチド様化合物の塩は、ジペプチド(-類似体)成分:塩成分のモル比が、1:1、又は2:1で存在し得る。このような塩は、例えば、(Ile-チア)2フマル酸がある。
【0133】
【表2】

【0134】
他の好ましい実施態様において、本発明は、神経疾患の併用療法のための、ジペプチジルペプチダーゼ IV触媒作用の競合的調節(competitive modulation)に有用な、式11の基質-様ペプチド化合物の使用を提供する:
【0135】
【化26】

【0136】
(式中、A, B, C, D, 及びEは、独立に、タンパク新生アミノ酸、非タンパク新生アミノ酸、L-アミノ酸、及びD-アミノ酸を含む全てのアミノ酸部位であり、かつ式中、E、及び/又はDは、欠けていてもよい。)。
【0137】
式11に関して、さらなる定義は、下記である:
Aは、D-アミノ酸を除いたアミノ酸であり,
Bは、Pro, Ala, Ser, Gly, Hyp, アセチジン-(2)-カルボン酸、及びピペコリン酸から選択されたアミノ酸であり,
Cは、Pro, Hyp, アセチジン-(2)-カルボン酸, ピペコリン酸を除き、かつ例えばN-メチルバリン、及びサルコシンなどのN-アルキル化アミノ酸を除いた全アミノ酸であり,
Dは、全アミノ酸であるか、又は欠けており, かつ
Eは、全アミノ酸であるか、又は欠けている。
或いは:
Cは、Pro, Hyp, アセチジン-(2)-カルボン酸, ピペコリン酸を除き、例えばN-メチルバリン、及びサルコシンなどのN-アルキル化アミノ酸を除き、かつD-アミノ-酸を除いた全アミノ酸であり,
Dは、Pro, Ala, Ser, Gly, Hyp, アセチジン-(2)-カルボン酸, 及びピペコリン酸から選択された全アミノ酸であり, かつ
Eは、Pro, Hyp, アセチジン-(2)-カルボン酸, ピペコリン酸を除き、例えばN-メチルバリン、及びサルコシンなどのN-アルキル化アミノ酸を除いた全アミノ酸である。
【0138】
本発明に使用することができるアミノ酸の例を挙げると:L及びD-アミノ酸, N-メチル-アミノ-酸; アロ-及びトレオ-形態のIle及びThrがあり、例えば、α-, β-, 又はω-アミノ酸とすることができ、α-アミノ酸が好ましい。
【0139】
本請求項、及び明細書を通して、アミノ酸の例は、下記のものである:アスパラギン酸 (Asp), グルタミン酸 (Glu), アルギニン (Arg), リシン (Lys), ヒスチジン (His), グリシン (Gly), セリン (Ser), 及びシステイン (Cys), トレオニン (Thr), アスパラギン (Asn), グルタミン (Gln), チロシン (Tyr), アラニン (Ala), プロリン (Pro), バリン (Val), イソロイシン (Ile), ロイシン (Leu), メチオニン (Met), フェニルアラニン (Phe), トリプトファン (Trp), ヒドロキシプロリン (Hyp), ベータ-アラニン (ベータ-Ala), 2-アミノオクタン酸 (Aoa), アゼチジン-(2)-カルボン酸 (Ace), ピペコリン酸 (Pip), 3-アミノプロピオニック, 及び4-アミノブチリックなど, アルファ-アミノイソ酪酸 (Aib), サルコシン (Sar), オルニチン (Orn), シトルリン (Cit), ホモアルギニン (Har), t-ブチルアラニン (t-ブチル-Ala), t-ブチルグリシン (t-ブチル-Gly), N-メチルイソロイシン (N-MeIle), フェニルグリシン (Phg), シクロヘキシルアラニン (Cha), ノルロイシン (Nle), システイン酸 (Cya), 及びメチオニンスルホキシド (MSO), アセチル-Lys, ホスホリル-セリン (Ser(P)), ベンジル-セリン (Ser(Bzl)), 及びホスホリル-チロシン (Tyr(P))などの改質アミノ酸, 2-アミノ酪酸 (Abu), アミノエチルシステイン (AECys), カルボキシメチルシステイン (Cmc), デヒドロアラニン (Dha), デヒドロアミノ-2-酪酸 (Dhb), カルボキシグルタミニン酸 (Gla), ホモセリン (Hse), ヒドロキシリシン (Hyl), シス-ヒドロキシプロリン (cisHyp), トランス-ヒドロキシプロリン (トランスHyp), イソバリン (Iva), ピログルタミン酸 (Pyr), ノルバリン (Nva), 2-アミノ安息香酸 (2-Abz), 3- アミノ安息香酸 (3-Abz), 4- アミノ安息香酸 (4-Abz), 4-(アミノメチル)安息香酸(Amb), 4-(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸 (4-Amc), ペニシラミン (Pen), 2-アミノ-4-シアノ酪酸 (Cba), シクロアルカン-カルボン酸である。
【0140】
ω-アミノ酸の例には、例えば:5-Ara (アミノラレリック酸(aminoraleric acid)), 6-Ahx (アミノヘキサン酸), 8-Aoc (アミノオクタン酸), 9-Anc (アミノバノイック酸(aminovanoic aicd)), 10-Adc (アミノデカン酸), 11-Aun (アミノウンデカン酸), 12-Ado (アミノドデカン酸)がある。
【0141】
さらに、アミノ酸には、下記のものがある:インダニルグリシン (Igl), インドリン-2-カルボン酸 (Idc), オクタヒドロインドール-2-カルボン酸 (Oic), ジアミノプロピオン酸 (Dpr), ジアミノ酪酸 (Dbu), ナフチルアラニン (1-Nal), (2-Nal), 4-アミノフェニルアラニン(Phe(4- NH2)), 4-ベンゾイルフェニルアラニン (Bpa), ジフェニルアラニン (Dip), 4-ブロモフェニルアラニン (Phe(4-Br)), 2-クロロフェニルアラニン (Phe(2-Cl)), 3-クロロフェニルアラニン (Phe(3-Cl)), 4-クロロフェニルアラニン (Phe(4-Cl)), 3,4-クロロフェニルアラニン (Phe (3,4-Cl2)), 3- フルオロフェニルアラニン (Phe(3-F)), 4- フルオロフェニルアラニン (Phe(4-F)), 3,4- フルオロフェニルアラニン (Phe(3,4-F2)), ペンタフルオロフェニルアラニン (Phe(F5)), 4-グアジニノフェニルアラニン (Phe(4-グアジニノ)), ホモフェニルアラニン (hPhe), 3-ヨードフェニルアラニン (Phe(3-J)), 4-ヨードフェニルアラニン (Phe(4-J)), 4-メチルフェニルアラニン (Phe(4-Me)), 4-ニトロフェニルアラニン (Phe-4-NO2)), ビフェニルアラニン (Bip), 4-ホスホノメチルフェニルアラニン (Pmp), シクロへキシグリシン (Ghg), 3-ピリジニルアラニン (3-Pal), 4-ピリジニルアラニン (4-Pal), 3,4-デヒドロプロリン (A-Pro), 4-ケトプロリン (Pro(4-ケト)), チオプロリン (Thz), イソニペコチン酸 (Inp), 1,2,3,4,-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸 (Tic), プロパルギルグリシン (Pra), 6-ヒドロキシノルロイシン (NU(6-OH)), ホモチロシン (hTyr), 3-ヨードチロシン (Tyr(3-J)), 3,5-ジヨードチロシン (Tyr(3,5-J2)), d-メチル-チロシン (Tyr(Me)), 3-NO2-チロシン (Tyr(3-NO2)), ホスホチロシン (Tyr(PO3H2)), アルキルグリシン, 1-アミノインダン-1-カルボン酸, 2-アミノインダン-2-カルボン酸 (Aic), 4-アミノ-メチルピロール-2-カルボン酸 (Py), 4-アミノ-ピロリジン2-カルボン酸 (Abpc), 2-アミノテトラリン-2-カルボン酸 (Atc), ジアミノ酢酸 (Gly(NH2)), ジアミノ酪酸 (Dab), 1,3-ジヒドロ-2H-イソイノール-カルボン酸(1,3-dihydro-2H-isoinol-carboxylic acid)(Disc), ホモシクロヘキシルアラニン(hCha), ホモフェニルアラニン(hPhe oder Hof), トランス-3-フェニル-アゼチジン-2-カルボン酸, 4-フェニル-ピロリジン-2-カルボン酸, 5-フェニル-ピロリジン-2-カルボン酸, 3-ピリジルアラニン (3-Pya), 4-ピリジルアラニン (4-Pya), スチリルアラニン, テトラヒドロイソキノリン-1-カルボン酸 (Tiq), 1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸 (Tpi),β-(2-チエンリル)-アラニン (Tha)である。
【0142】
また、遺伝コード中にコードされたものに対する他のアミノ酸置換基は、本発明の範囲内のペプチド化合物に含むことができ、かつこの一般的スキーム中に分類することができる。
タンパク新生アミノ酸は、天然タンパク質誘導α-アミノ酸として規定される。非蛋白新生アミノ酸は、共通の天然タンパク質の基礎単位でない、他のすべてのアミノ酸として規定される。
【0143】
得られるペプチドは、遊離C-末端酸として、又は該C-末端アミド形態として合成され得る。該遊離酸ペプチド、又は該アミドを、側鎖改質により変更してもよい。前記側鎖改質は、制限されないが、例えば、下記のものを含む:ホモセリン形成, ピログルタミン酸形成, ジスルフィド結合形成, アスパラギン又はグルタミン残基の脱アミド, メチル化, t-ブチル化, t-ブチルオキシカルボニル化, 4-メチルベンジル化, チオアニシレーション(thioanysilation), チオクレシレーション(thiocresylation), ベンジルオキシメチル化, 4-ニトロフェニル化, ベンジルオキシカルボニル化, 2-ニトロベンコイレーション(2-nitrobencoylation), 2-ニトロスルフェニル化, 4-トルエンスルホニル化, ペンタフルオロフェニル化, ジフェニルメチル化, 2-クロロベンジルオキシカルボニル化, 2,4,5-トリクロロフェニル化, 2-ブロモベンジルオキシカルボニル化, 9-フルオレニルメチルオキシカルボニル化, トリフェニルメチル化, 2,2,5,7,8,-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル化, ヒドロキシル化, メチオニンの酸化, ホルミル化, アセチル化, アニシレーション(anisylation), ベンジル化, ベンコイレーション(bencoylation), トリフルオロアセチル化, アスパラギン酸又はグルタミン酸のカルボキシル化, ホスホリル化, 硫酸化, システイン化, ペントース, デオキシヘキソース, ヘキソースアミン, ヘキソース又はN-アセチルヘキソースアミンを用いたグリコール化, フェルネシル化, ミリストイル化, ビオチン化, パルミトイル化, ステアロイル化, ゲラニルゲラニル化, グルタチオン化, 5’-アデノシン化, ADP-リボシル化, N-グリコリルノイラミン酸, N-アセチルノイラミン酸, ピリドキサールリン酸, リポ酸, 4’-ホスホパンテテイン, 又はN-ヒドロキシスクシンイミドでの改質がある。
【0144】
式(3)の化合物において、該アミノ酸部位A, B, C, D, 及びEは、それぞれ、標準的命名法に従って、通常の方法において、隣接部位にアミド結合で結合する。該アミノ酸(ペプチド)のアミノ末端(N-末端)は、左に記載し、かつ該アミノ酸(ペプチド)のカルボキシル-末端は、右に記載する(C-末端)。
好ましいペプチド化合物を、表3に示した。
【0145】
【表3】

【0146】
t-ブチル-Glyは、下記のように規定される。
【化27】

【0147】
Ser(Bzl)、及びSer(P)は、それぞれ、ベンジル-セリン、及びホスホリル-セリンとして規定される。Tyr(P)は、ホスホリル-チロシンとして規定される。神経疾患の併用療法のための、本発明に従って使用され得るさらに好ましいDP IV-インヒビターは、式12のペプチジルケトン、及びその医薬として許容し得る塩である:
【0148】
【化28】

【0149】
(式中、Aは、下記構造からなる群から選択され:
【0150】
【化29】

【0151】
(X1は、H、或いはアミノ酸残基、N-保護アミノ酸残基、ペプチド残基、又はN-保護ペプチド残基を含むアシル、又はオキシカルボニル基であり、
X2は、H、或いはm = 2-4を有する-(CH)m-NH-C5H3N-Y、又は-C5H3N-Y (二価ピリジル残基)であり、かつYは、H, Br, Cl, I, NO2, 又はCNから選択されたものであり、
X3は、H、或いはアルキル-, アルコキシ-, ハロゲン-, ニトロ-, シアノ-, 又はカルボキシ-置換フェニルから選択されたもの、又はアルキル-, アルコキシ-, ハロゲン-, ニトロ-, シアノ-, 又はカルボキシ-置換ピリジル残基から選択されたものであり、
X4は、H、或いはアルキル-, アルコキシ-, ハロゲン-, ニトロ-, シアノ-, 又はカルボキシ-置換フェニルから選択されたもの、又はアルキル-, アルコキシ-, ハロゲン-, ニトロ-, シアノ-, 又はカルボキシ-置換ピリジル残基から選択されたものであり、
X5は、H、或いはアルキル, アルコキシ, 又はフェニル残基であり、
X6は、H、或いはアルキル残基である。)、
n = 1に対して、
Xは:H, OR2, SR2, NR2R3, N+R2R3R4からなる群から選択され、式中:
R2は、任意にアルキル, シクロアルキル, アリール, 又はヘテロアリールで置換されたアシル残基、又は任意にアルキル, シクロアルキル, アリール, 又はヘテロアリールで置換されたアミノ酸残基、又はペプチド残基、又はアルキル残基を意味し、
R3は、アルキル、又はアシル残基を意味し、ここでR2、及びR3は、飽和、又は不飽和炭素環、又は複素環の一部であってもよく、
R4は、アルキル残基を意味し、ここでR2、及びR4、又はR3、及びR4は、飽和、又は不飽和炭素環、又は複素環の一部であってもよく、
n = 0に対して、
Xは、下記から選択される:
【0152】
【化30】

【0153】
(式中、Bは、O, S, 又はNR5を意味し, 式中R5は、H, アルキル, 又はアシルであり、
C, D, E, F, G, Y, K, L, M, Q, T, U, V, 及びWは、独立に、アルキル及び置換アルキル残基, オキシアルキル, チオアルキル, アミノアルキル, カルボニルアルキル, アシル, カルバモイル, アリール, 及びヘテロアリール残基であり、かつ
Zは、H、或いはC1-C9の分岐又は直鎖アルキル残基、C2-C9の分岐又は直鎖アルケニル残基、C3-C8のシクロアルキル残基、C5-C7のシクロアルケニル残基、アリール又はヘテロアリール残基、又はすべての天然アミノ酸、又はその誘導体の全側鎖から選択された側鎖から選択される。)。)。
【0154】
式12の好ましい化合物において、Aは、下記式であり、
【化31】

【0155】
(式中、X1は、H、或いはアミノ酸残基を含む、アシル又はオキシカルボニル基、N-アシル化アミノ酸残基、ジ-〜ペンタペプチドのペプチド残基、好ましくはジペプチド残基、又はジ-〜ペンタペプチドのN-保護ペプチド残基、好ましくはN-保護ジペプチド残基であり、
X2は、H、或いはm = 2-4を有する-(CH)m-NH-C5H3N-Y、又は-C5H3N-Y (二価ピリジル残基)であり、かつYは、H, Br, Cl, I, NO2, 又はCNから選択されたものである。)、
n = 1に対して、
Xは、好ましくは:H, OR2, SR2, NR2R3から選択され、式中:
R2は、任意にアルキル, シクロアルキル, アリール, 又はヘテロアリール残基で置換されたアシル残基、又は任意にアルキル, シクロアルキル, アリール, 又はヘテロアリール残基で置換されたアミノ酸残基、又はペプチド残基、又はアルキル残基を意味し、
R3は、アルキル、又はアシル残基を意味し、ここでR2、及びR3は、飽和、又は不飽和炭素環、又は複素環の一部であってもよく、
n = 0に対して、
好ましくは、Xは、下記から選択される:
【0156】
【化32】

【0157】
(式中、Bは、O, S, 又はNR5を意味し, 式中R5は、H, アルキル, 又はアシルであり、
C, D, E, F, G, Y, K, L, M, 及びQは、独立に、アルキル及び置換アルキル残基, オキシアルキル, チオアルキル, アミノアルキル, カルボニルアルキル, アシル, カルバモイル, アリール, 及びヘテロアリール残基であり、かつ
Zは、H、或いはC1-C9の、好ましくはC2-C6の分岐又は直鎖アルキル残基、C2-C9の分岐又は直鎖アルケニル残基、C3-C8のシクロアルキル残基、C5-C7のシクロアルケニル残基、アリール又はヘテロアリール残基、又はすべての天然アミノ酸、又はその誘導体の全側鎖から選択された側鎖から選択される。)。
式12のより好ましい化合物は、Aが下記式であり、
【0158】
【化33】

【0159】
(式中、X1は、H、或いはアミノ酸残基を含む、アシル又はオキシカルボニル基、N-アシル化アミノ酸残基、ジ-〜ペンタペプチドのペプチド残基、好ましくはジペプチド残基、又はジ-〜ペンタペプチドのN-保護ペプチド残基、好ましくはN-保護ジペプチド残基である。)
n = 1に対して、
Xは、好ましくは:H, OR2, SR2から選択され、式中:
R2は、任意にアルキル, シクロアルキル、又はアリール残基で置換されたアシル残基を意味し、
n = 0に対して、
Xは、好ましくは、下記から選択される:
【0160】
【化34】

【0161】
(式中、Bは、O, S, 又はNR5を意味し, 式中R5は、H, アルキル, 又はアシルであり、
C, D, E, F, G, Y, K, L, M, 及びQは、独立に、アルキル及び置換アルキル残基, オキシアルキル, チオアルキル, アミノアルキル, カルボニルアルキル, アシル, カルバモイル, アリール, 及びヘテロアリール残基であり、かつ
Zは、H、或いはC1-C9の、好ましくはC2-C6の分岐又は直鎖アルキル残基、C2-C9の分岐又は直鎖アルケニル残基、C3-C8のシクロアルキル残基、C5-C7のシクロアルケニル残基、アリール又はヘテロアリール残基、又はすべての天然アミノ酸、又はその誘導体の全側鎖から選択された側鎖から選択される。)。
式12の最も好ましい化合物は、Aが下記式であり、
【0162】
【化35】

【0163】
(式中、X1は、H、或いはアミノ酸残基を含む、アシル又はオキシカルボニル基、N-アシル化アミノ酸残基、又は最後から2番目の位置にPro、又はAlaを含むジ-ペプチド残基、或いは最後から2番目の位置にPro、又はAlaを含むN-保護ジペプチド残基である。)、
n = 1に対して、
Xは、Hであり、
n = 0に対して、
Xは、好ましくは、下記から選択される:
【0164】
【化36】

【0165】
(式中、Bは、O, 又はSを意味し, 好ましくはSであり、
C, D, E, F, G, Y, K, L, M, Q, 及びH、並びにZは、H、或いはC3-C5の分岐又は直鎖アルキル残基、C2-C9の分岐又は直鎖アルケニル残基、C5-C7のシクロアルキル残基、C5-C7のシクロアルケニル残基、アリール又はヘテロアリール残基、又はすべての天然アミノ酸、又はその誘導体の全側鎖から選択された側鎖から選択される。)。
【0166】
好ましい実施態様に従って、該アシル基は、C1-C6-アシル基である。
さらに好ましい実施態様に従って、該アルク(アルキル)基は、C1-C6-アルク(アルキル)基であり、これは分岐、又は非分岐であってもよい。
またさらに好ましい実施態様に従って、該アルコキシ基は、C1-C6-アルコキシ基である。
【0167】
また他の好ましい実施態様に従って、該アリール残基は、任意に縮合環を有するC5-C12 アリール残基である。
またさらに好ましい実施態様に従って、該シクロアルキル残基(炭素環)は、C3-C8-シクロアルキル残基である。
【0168】
他の好ましい実施態様に従って、該ヘテロアリール残基は、任意に、縮合環、及び少なくとも1つの環において付加的に1〜4個、好ましくは1〜2個のO, N 及び/又は Sなどのヘテロ原子を有するC4-C11アリール残基である。
さらに好ましい実施態様に従って、ペプチド残基は、2〜50個のアミノ酸を含む対応残基である。
【0169】
他の好ましい実施態様に従って、該複素環残基は、付加的に1〜4個、好ましくは1〜2個のO, N 及び/又は Sなどのヘテロ原子を有する、C2-C7-シクロアルキルラジカルである。
またさらに好ましい実施態様に従って、該カルボキシ基は、C1-C6カルボキシ基であり、これは分岐、または非分岐であってもよい。
【0170】
また、他の好ましい実施態様に従って、該オキシカルボニル基は、式O-(CH2)1-6COOH基である。
該アミノ酸は、全ての天然、又は合成アミノ酸とすることができ、好ましくは天然アルファアミノ酸である。
【0171】
式(4)の好ましい化合物には、下記のものがある:2-メチルカルボニル-1-N-[(L)-アラニル-(L)-バリニル]-(2S)-ピロリジン臭化水素酸塩; 2-メチル)カルボニル-1-N-[(L)-バリニル-(L)-プロリル-(L)-バリニル]-(2S)-ピロリジン臭化水素酸塩; 2-[(アセチル-オキシ-メチル)カルボニル]-1-N-[(L)-アラニル-(L)-バリニル]-(2S)-ピロリジン臭化水素酸塩; 2-[ベンゾイル-オキシ-メチル)カルボニル]-1-N-[{(L)-アラニル}-(L)-バリニル]-(2S)-ピロリジン臭化水素酸塩; 2-{[(2,6-ジクロロベンジル)チオメチル]カルボニル}-1-N-[{(L)-アラニル}-(L)-バリニル]-(2S)-ピロリジン; 2-[ベンゾイ-ルオキシ-メチル)カルボニル]-1-N-[グリシル-(L)-バリニル]-(2S)-ピロリジン臭化水素酸塩; 2-[([1,3]-チアゾール-2-イル)カルボニル]-1-N-[{(L)-アラニル}-(L)-バリニル]-(2S)-ピロリジントリフルオロ酢酸塩; 2-[(ベンゾチアゾール-2-イル)カルボニル]-1-N-[N-{(L)-アラニル}-(L)-バリニル]-(2S)-ピロリジン トリフルオロ酢酸塩; 2-[(-ベンゾチアゾール-2-イル)カルボニル]-1-N-[{(L)-アラニル}-グリシル]-(2S)-ピロリジントリフルオロ酢酸塩; 2-[(ピリジン-2-イル)カルボニル]-1-N-[N-{(L)-アラニル}-(L)-バリニル]-(2S)-ピロリジントリフルオロ酢酸塩である。
【0172】
さらに、本発明に従って、式13のDP IV-インヒビター(全ての立体異性体、及び医薬として許容し得る塩を含む。)は、神経疾患の併用療法に使用することができる:
【0173】
【化37】

【0174】
(nは、0、又は1、
R1は、H、C1-C9の分岐又は直鎖アルキル、好ましくはH, n-ブタン-2-イル, n-プロパ-2-イル, 又はイソブチル、C2-C9の分岐又は直鎖アルケニル、C3-C8 シクロアルキル、好ましくはシクロヘキシル, C5-C7 シクロアルケニル, アリール, ヘテロアリール, 又は天然アミノ酸の側鎖又はその模倣体を意味し、
X2は、O, NR6, N+(R7)2, 又はSを意味し、
Bは、下記の基から選択される:
【0175】
【化38】

【0176】
(式中、X5は、アミノ酸を含むH、又はアシル若しくはオキシカルボニルであり、
R5は、H、C1-C9の分岐又は直鎖アルキル、好ましくはH, n-ブタン-2-イル, n-プロパ-2-イル, 又はイソブチル, C2-C9の分岐又は直鎖アルケニル, C3-C8 シクロアルキル, 好ましくはシクロヘキシル, 3-ヒドロキシアダマント-1-イル, C5-C7 シクロアルケニル, アリール, ヘテロアリール, 又は天然アミノ酸若しくはその誘導体の側鎖, 又は式(CH)m-NH-C5H3N-Y基であり、式中、mは、2-4の整数であり、-C5H3N-Yは、二価ピリジル部位であり、かつYは、水素原子, ハロゲン原子, ニトロ基, 又はシアノ基であり、
R6, R7, R8, 及びR9は、独立に、H、任意に置換されたC1-C9の分岐又は直鎖アルキル、好ましくは任意に置換されたC2-C5 分岐又は直鎖 アルキルであり;又は任意に置換されたC2-C9 分岐又は直鎖 アルケニル、好ましくはC2-C5 分岐又は直鎖 アルケニルであり;又は任意に置換されたC3-C8 シクロアルキル、好ましくは任意に置換されたC4-C7 シクロアルキルであり;又は任意に置換されたC5-C7 シクロアルケニル、又は任意に置換されたアリール残基であり、
【0177】
Zは、H、ピリジル、又は任意に置換されたフェニル、任意に置換されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ、シアノ、及びカルボキシ基から選択され、
Wは、H、ピリジル、又は任意に置換されたフェニル、任意に置換されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、ニトロ、シアノ、及びカルボキシ基から選択され、
W1は、H、又は任意に置換されたアルキル、アルコキシ、又は任意に置換されたフェニルであり、かつ
Z1は、H、又は任意に置換されたアルキル、
R3、及びR4は、独立してH, ヒドロキシ, アルキル, アルコキシ, アラルコキシ, ニトロ, シアノ, 又はハロゲンであり、
Dは、任意に置換された、下記式の化合物である:
【0178】
【化39】

【0179】
(該式は、飽和とすることができ、或いは単、二重、又は三重結合とすることができ、
式中、
X8〜X11は、不飽和の場合、独立にCH, N, N+(R7), 又はCR8であり、又は
X8〜X11は、飽和の場合、独立にCH2, NH, NH+(R7), O, 又はSであり、
X12は、飽和の場合、CHA, NA, CH2, NH, NH+(R7), 又はCHR8
X12は、不飽和の場合、CA, NA+, CH, N, N+(R7), 又はCR8であり、かつ
Aは、H、又はCN, SO3H, CONOH, PO3R5R6, テトラゾール, アミド, エステル, 又は酸無水物などのカルボン酸のアイソスターである。)。)。
【0180】
本出願を通して、好ましくは、Dは、該環中に多くても2個、好ましくは多くても1個のヘテロ原子を含む。
本発明の好ましい実施態様に従って、Dは、下記式の、任意に置換されたC4-C7 シクロアルキル、好ましくはC4-C6 シクロアルキル、任意に置換されたC4-C7 シクロアルケニル、又は任意に置換された(ヘテロ)シクロアルキルを意味する:
【0181】
【化40】

(式中、該残基は、先に規定したものである。)、
【0182】
【化41】

(これは、該環中に単、又は二重結合を含む5員環であり、
式中、該残基は、先に規定したものである。)、又は
【0183】
【化42】

(式中、該残基は、先に規定したものである。)、又は
【0184】
【化43】

(式中、該残基は、先に規定したものである。)、又は
【0185】
【化44】

(これは、該環中に単、又は二重結合を含む5員環であり、
式中、該残基は、先に規定したものである。)、又は
【0186】
【化45】

(式中、該残基は、先に規定したものである。)。
【0187】
好ましい実施態様に従って、Bは、下記式を有する:
【化46】

(式中、該残基は、先に規定したものである。)。
【0188】
他の好ましい実施態様に従って、Bは、下記式を有する:
【化47】

(式中、該残基は、先に規定したものである。)。
【0189】
式13の好ましい化合物は、下記のものである:
1-シクロペンチル-3-メチル-1-オキソ-2-ペンタンアミニウム クロライド,
1-シクロペンチル-3-メチル-1-オキソ-2-ブタンアミニウム クロライド,
1-シクロペンチル-3,3-ジメチル-1-オキソ-2-ブタンアミニウム クロライド,
1-シクロヘキシル-3,3-ジメチル-1-オキソ-2-ブタンアミニウム クロライド,
3-(シクロペンチルカルボニル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリニウムクロライド, 及び
N-(2-シクロペンチル-2-オキソエチル)シクロヘキサンアミニウム クロライドである。
【0190】
体内のタンパク質分布、及びDP IV, DP IV-活性, 及びDP IV-関連タンパク質に関与する多種多様の機序のために、DP IV-インヒビターを用いた全身療法(経腸的、又は非経口的投与)は、一連の望ましくない副反応を生じ得る。
【0191】
解決すべき問題は、さらに、局所的に制限された病態生理学的、及び生理学的プロセスの標的影響のために、神経疾患の併用療法に使用することができるDP IV-インヒビターを提供することである。本発明の問題は、特に、局所的活性基質の活性の調節において、標的とする介入の目的のために、DP IV、又はDP IV-類似体活性の局所的制限、及び高特異的阻害を獲得することにある。
神経障害の併用療法において、この問題は、一般式14のDP IV-インヒビターの使用により、本発明に従って解決される:
【0192】
【化48】

【0193】
(式中、Aは、側鎖に少なくとも1つの官能基を有するアミノ酸、
Bは、Aの側鎖の少なくとも1つの官能基に共有結合した化学的化合物であり、
Cは、Aに結合した、チアゾリジン, ピロリジン, シアノピロリジン, ヒドロキシプロリン, デヒドロプロリン, 又はピペリジン基アミドである。
本発明の好ましい実施態様に従って、少なくとも1つの一般式(6)の化合物、及び少なくとも1つの、作用部位に適した慣用のアジュバントを含む、医薬組成物を使用する。
【0194】
好ましくは、Aは、α-アミノ酸であり、特に、側鎖に1、又は2以上の官能基を有する天然α-アミノ酸であり、好ましくは、トレオニン, チロシン, セリン, アルギニン, リシン, アスパラギン酸, グルタミン酸, 又はシステインである。好ましくは、Bは、20 アミノ酸までの鎖長を有するオリゴペプチド、20 000 g/molまでのモル質量を有するポリエチレングリコール、任意に置換された、8〜50 C原子を有する、有機アミン, アミド, アルコール, 酸, 又は芳香族化合物である。
【0195】
延長された側鎖機能にもかかわらず、それでも、式14の化合物は、該酵素ジペプチジルペプチダーゼ IV、及び類似体酵素の活性中心に結合する。しかし、該ペプチドトランスポーターPepT1により、活発に輸送されることはない。結果として低下し、又は大きく制限された、本発明の化合物の輸送能力は、DP IV、及びDP IV-様酵素の局所、又は部位直接的阻害を生じる。該側鎖改質、例えば7炭素原子数を超えた延長/拡大により、結果的に、劇的な低下を獲得することができる。
【0196】
該側鎖の空間的サイズの増加に伴い、該基質の輸送能力を低下する。該側鎖、例えば一置換フェニルラジカル、ヒドロキシルアミンラジカル、又はアミノ酸残基の原子団サイズを超えた、空間的、及び立体的拡大により、本発明に従って、該標的基質の輸送能力を改質、又は抑制することができる。
【0197】
式14の好ましい化合物は、該オリゴペプチドが3〜15の鎖長、特に4〜10の鎖長を有し、かつ/又は該ポリエチレングリコールが、少なくとも250 g/molのモル質量、好ましくは少なくとも1500 g/mol、及び15 000 g/molまでのモル質量を有し、かつ/又は任意に置換された、少なくとも12 C原子、好ましくは30 C原子までを有する有機アミン、アミド、アルコール、酸、または芳香族化合物を有する化合物である。
【0198】
本発明の医薬組成物を製造するために、任意に、少なくとも1のPEP-インヒビター、及び/又は少なくとも1のDP IV-インヒビター、及び/又は少なくとも1のNPY-レセプター-リガンド、及び/又は少なくとも1のACE-インヒビターを組合わせた、少なくとも1のQCエフェクターを、活性成分として使用することができる。該活性成分を、従来の医薬配合技術により、医薬キャリアと完全に混合することができ、該キャリアは、例えば、経口、又は筋内のような非経口投与に所望される製剤の形態に依存する、多種多様の形態にすることができる。経口投与形態の該組成物の製造において、幾つかの通例の医薬媒体を使用してもよい。従って、例えば、懸濁液、エリキシル剤、及び溶液のような、液体の経口用製剤にとって、適切なキャリア、及び添加剤は、水、グリコール、オイル、アルコール、香料、保存料、及び着色剤などであり;例えば、粉末、カプセル、ジェルキャップ、及び錠剤のような固体経口用製剤にとって、適切なキャリア、及び添加剤は、デンプン、糖類、希釈剤、顆粒化剤、滑剤、結合剤、及び崩壊剤などである。投与の容易さのために、錠剤、及びカプセルが、最も有利な経口投与単位形態であり、当然、固体医薬キャリアの場合に使用される。所望であれば、錠剤を、標準的技術により、糖衣、又は腸溶性の被覆をしてもよい。通常、非経口投与用のキャリアは、滅菌水であろう。しかし、例えば、溶解性を助ける目的の、又は保存用の他の成分を含んでもよい。
【0199】
また、注射可能な懸濁液を調製することができ、その場合の適切な液体キャリア、及び懸濁化剤などを使用してもよい。本明細書中の医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末、注射、及び茶さじ1杯(teaspoonful)などのような投与単位ごとに、前述した有効量の輸送に必要な量の活性成分を含むであろう。本明細書中の該医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末、注射、及び茶さじ1杯などのような投与単位ごとに、約0.03 mg〜100 mg/Kg(好ましくは0.1〜30 mg/Kg)の各活性成分、又はこれらの組合せを含み、1日につき、約0.1〜300 mg(好ましくは1日につき1〜50 mg/Kg)の投与量で与えてもよい。しかし、該投与量は、患者の要求、治療される状態の重症度、及び使用される化合物に依存して変えることができる。毎日の投与、又は周期的投与、どちらかの使用を使用してもよい。
【0200】
好ましくは、これらの組成物は;経口、非経口、経鼻、舌下、又は直腸投与に対して、若しくは吸入、又は吹送による投与に対して、錠剤、ピル、カプセル、粉末、顆粒、滅菌非経口溶液又は懸濁液、計量エアロゾル(metered aerosol)又は液体スプレー、ドロップ、アンプル、自動注入装置、又は坐薬のような単位投与量形態である。あるいは、該組成物を、週1回、又は月1回の投与に適した形態に調製することができ、例えば、デカン酸塩のような活性のある化合物の不溶性塩を、筋肉注射用デポ製剤の製造に適合させてもよい。錠剤のような固体組成物の製造では、該主要な活性成分を、例えば、トウモロコシ、デンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、又はゴムなどの従来の錠剤成形成分、及び例えば水などの他の医薬希釈剤のような、医薬キャリアと混合し、本発明の化合物、又はその医薬として許容し得る塩の均一混合物を含む、固体予備処方組成物を形成する。これらの均一の予備処方組成物に関して、該組成物は、容易に、錠剤、ピル、及びカプセルのような均一で有効な投与形態にさらに分割することができるので、該活性成分は、該組成物の全体に均一に分散していることを意味する。次に、この固体予備処方組成物を、本発明の各活性成分、又はこれらの組合せを0.1〜約500 mg含む、前述の単位投与量形態に分割する。
【0201】
持続性作用の効果を持つ投与形態を提供するように、本発明の組成物の錠剤、又はピルを、コートするか、又は混合することができる。例えば、該錠剤、又はピルは、内部製剤(inner dosage)、及び外部製剤(outer dosage)を含み、後者は、前者の一面を包む形態である。該2つの成分を、胃での分解に耐える働きをする腸溶性層で分離させ、該内部成分が、十二指腸内に無傷で通過すること、又は放出を遅らせることを可能にし得る。前記腸溶性層、又はコーティング剤として、様々な物質を使用することができ、前記物質には、セラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースのような物質を有する、多くの重合体の酸がある。
【0202】
本発明の組成物を、経口的投与のために、又は注射により、取り込むことができる、この液体形態には、水溶液、適切に風味をつけたシロップ、水性又はオイル懸濁液、及び綿実油、ごま油、ココナッツ油、又はピーナッツ油のような食用油とともに、風味をつけたエマルション、並びにエリキシル剤、及び類似の医薬ビヒクルがある。水性懸濁液用の適切な分散剤、又は懸濁化剤には、トラガカント、アカシア、アルギネート(アルギン酸塩、又はエステル)、デキストラン、ナトリウム カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチンのような合成及び天然ゴムがある。
【0203】
本発明の化合物の製造プロセスが、立体異性体の混合物を生じる場合、これらの異性体を、分取クロマトグラフィーのような従来の技術により分離することができる。該化合物を、ラセミ体で製造してもよく、又はエナンチオ特異的合成により、又は分割により、個々のエナンチオマーを製造してもよい。例えば、(-)-ジ-p-トルオイル-d-酒石酸、及び/又は(+)-ジ-p-トルオイル-l-酒石酸のような光学活性酸を用いた塩形成によるジアステレオマー対の形成、続いて、分別結晶、及び該遊離塩基の再生のような、標準的技術により、該化合物を、これらの成分エナンチオマーに分割することができる。また、該化合物を、ジアステレオマーのエステル、又はアミドの形成、続いて、クロマトグラフィーの分離、及び該キラル補助基の除去により、分割することができる。あるいは、該化合物を、キラルHPLCカラムを用いて分割することができる。
【0204】
本発明の化合物の全製造プロセスの間に、関係する全ての分子上の感受性、又は反応性基を保護することを必要、及び/又は所望としてもよい。これは、有機化学(Organic Chemistry)、ed. J.F.W. McOmie、Plenum Press、1973中の保護基の項;及びT.W. Greene & P.G.M. Wuts、有機合成(Organic Synthesis)、John Wiley & Sons、1991中の保護基の項に記載されているような、従来の保護基の方法により、実現することができる。該保護基を、都合のよい次の段階で、該技術から公知である従来の方法を用いて除去することができる。
【0205】
また、本発明に記載した神経障害の治療方法は、任意に、PEP-インヒビター、及び/又はDP IV/DP IV-様酵素のインヒビター、及び/又はNPY-レセプター-リガンド、NPY アゴニスト、NPY アンタゴニスト、ACE-インヒビター、PIMT エンハンサー、ベータセクレターゼのインヒビター、ガンマセクレターゼのインヒビター、及び中性エンドペプチダーゼのインヒビター、又は本明細書中で規定したような、すべての他の化合物、及び医薬として許容し得るキャリアからなる群から選択された少なくとも1つの薬剤と組合わせた、少なくとも1のQCエフェクターの医薬組成物を用いて実行することができる。該医薬組成物は、各化合物の約0.01 mg〜100 mg、好ましくは5〜50 mgを含むことができ、かつ選択される投与様式に適した形態に構成することができる。キャリアは、必要な、及び不活性な医薬賦形剤を含み、制限されないが、結合剤、懸濁化剤、滑剤、風味剤、甘味料、保存料、染料、及びコーティング剤がある。経口投与に適した組成物は、ピル、錠剤、カプレット、カプセル(それぞれ、即時放出、徐放、及び持続放出配合を含む。)、顆粒、及び粉末のような固体形態、及び溶液、シロップ、エリキシル剤、エマルション、及び懸濁液のような液体形態がある。非経口投与に有用な形態には、滅菌溶液、エマルション、及び懸濁液がある。非経口投与に有用な形態には、滅菌溶液、エマルション、及び懸濁液がある。
【0206】
都合のよいことに、本発明の化合物を、毎日1回の投与量で投与してもよく、又は1日当りの総量を、毎日2、3、又は4回に分割した投与量で投与してもよい。さらに、本発明の化合物を、当業者に公知である、適切な経鼻投与ビヒクルの局所使用を介しする経鼻投与形態で、又は経皮的な皮膚パッチ剤を介して投与することができる。経皮的な輸送システムの形態で投与するためには、もちろん、該投与法の間中、該投与は、断続的よりもむしろ、持続的となるであろう。
【0207】
例えば、錠剤、又はカプセルの形態で経口投与するために、該活性薬剤成分を、エタノール、グリセロール、及び水などのような、経口的な、無毒性の医薬として許容し得る不活性キャリアと組み合わせることができる。さらに、所望、又は必要とする場合、適切な結合剤;滑剤、崩壊剤、及び着色剤を、該混合物に組み入れてもよい。適切な結合剤には、制限はないが、デンプン、ゼラチン、グルコース又はベータラクトースのような天然糖類、コーン甘味料、アカシアのような天然及び合成ゴム、トラガカント、又はオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムなどがある。崩壊剤には、制限されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、及びキサンタンガムなどがある。
【0208】
該液体は、例えば、トラガカント、アカシア、及びメチル-セルロースなどの合成、及び天然ゴムのような、適切な風味をつけた懸濁剤、又は分散剤で構成する。非経口的投与にとって、滅菌懸濁液、及び溶液が所望される。静脈内投与が所望される場合、一般的に適切な保存料を含む等張製剤を使用する。
また、本発明の化合物、又は組合せを、小さい単層小胞、大きい単層小胞、及び多層小胞のような、リポソーム輸送システムの形態で投与することができる。リポソームを、コレステロール、ステアリルアミン、又はホスファチジルコリンのような、様々なリン脂質から形成することができる。
【0209】
また、本発明の化合物、又は組合せを、該化合物分子を結合させた個々のキャリアとしてモノクローナル抗体を用いることにより、運ぶことができる。また、本発明の化合物を、標的化薬剤キャリアとして溶解性ポリマーと結合させることができる。前記ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアルパルトアミドフェノール、又はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリルリシンを含み得る。さらに、本発明の化合物を、薬剤の制御放出の実現に有用な生分解性ポリマー類と結合してもよく、該ポリマーには、例えば、ポリアクチック酸、ポリエプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシブチエリック酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及びヒドロゲルの架橋、又は両親媒性ブロックコポリマーがある。
【0210】
該扱われる疾患の治療が要求されるときには、本発明の化合物、又は組合せを、前述のすべての組成物によって、かつ該技術によって確立されている投与法に従って投与してもよい。
該製品の毎日の投与量を、一日あたり哺乳類ごとに0.01〜1.000 mgの広い範囲に渡って変えてもよい。経口投与にとって、好ましくは、該組成物を、治療されるべき症候の調節に対して、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、150、200、250、及び500ミリグラムの各活性成分、又はその組合せを含む錠剤の形態で提供する。通常、該薬剤の有効量は、1日に約0.1 mg/kg体重〜約300 mg/kg体重の投与量水準で提供される。好ましくは、該範囲は、一日に約1 mg/kg体重〜約50 mg/kg体重である。該化合物、又は組合せを、1日に1〜4回で投与してもよい。
【0211】
投与されるべき最適の投与量を、当業者により容易に決定することができ、かつ使用される特定の化合物、投与様式、該製剤の強さ、投与様式、及び疾病状態の進行に伴って変化するであろう。さらに、患者年齢、体重、食事、及び投与時間を含む、治療を受ける特定の患者に関連した要因が、投与量の調節に必要となるであろう。
【0212】
適切に、本発明の治療により提供される、糖血症制御に特に有益な効果は、該組合せの1つの化合物を単独で、及び本発明の組合せと同等の効果を提供する投与量で使用した場合の治療可能比と比較して、本発明の組合せによって治療可能割合が改善されることである。
好ましい態様において、本発明の治療により提供される、糖血症制御に特に有益な効果は、該個々の活性薬剤の効果から期待される制御と比較して、相乗効果となることが示される。
【0213】
本発明のさらなる態様において、少なくとも1のPEP-インヒビター、及び/又は少なくとも1のDP IV-インヒビター、及び/又は少なくとも1のNPY-レセプター-リガンドと、少なくとも1のQC-インヒビターとを組合わせた投与は、該組合せの薬剤に使用した、どちらかの薬剤を単独で2回投与して達成され得る効果よりも有益な効果を生じるであろう。
好ましい態様において、本発明の治療に従って使用する場合、該活性薬剤の各々の投与水準は、ニューロンの状態への純粋に添加剤効果から要求されているであろうものよりも低いだろう。
【0214】
また、本発明の治療は、個々の薬剤と比較して、pGlu-アミロイド-β-ペプチドの細胞内沈殿の減少、及びその結果による、哺乳類の脳内、好ましくはヒトの脳内のプラーク形成の劇的な減速において、改善をもたらすであろうことが考えられる。
【0215】
さらなる態様において、本発明は、また、少なくとも1のPEP-インヒビター、及び/又は少なくとも1のDP IV-インヒビター、及び/又は少なくとも1のNPY-レセプター-リガンド、及び/又は少なくとも1のACE-インヒビター、及び医薬として許容し得るキャリアを任意に組合わせた、少なくとも1のQCエフェクターを含む、医薬組成物の製造方法を提供し、該方法は、QCエフェクター、及び/又はDP IV-インヒビター、及び/又はPEP-インヒビター、及び/又はNPY-レセプター-リガンド、及び/又はACE-インヒビター、及び医薬として許容し得るキャリアを混合することを含む。
好ましくは、該組成物は、適切な毎日の投与量に見合う量の単位投与量形態である。
【0216】
特に単位投与量を含む、該QC-インヒビター、該PEP-インヒビター、該DP IV-インヒビター、及び該NPY-レセプター-リガンドの適切な投与量は、イギリス、及びUS薬局方、Remingtonの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(Mack Publishing社)、Martindale 特別な薬局方(The Extra Pharmacopoeia)(ロンドン、The Pharmaceutical Press) (例えば、31版、341ページ、及びその中で引用されているページを参照。)、又は前述の出版物などの参考テキストに記載、又は参照されているような、これらの化合物の単位投与量を含む、公知の投与量である。
【実施例】
【0217】
(実施例1)
(ペプチドの固相合成)
本明細書中で使用するペプチドを、改質されたFmoc-プロトコルを用いる自動合成機SYMPHONY(RAININ)で合成した。サイクルを、5倍過剰量のFmoc-アミノ酸、及び結合剤と、該ペプチドのC-末端からの第15番目のアミノ酸から二重結合を用いることにより改質した。該ペプチド結合を、25μmolのスケールで、0.23 mmol置換NovaSyn TGR-樹脂、又は該対応する前処置したWang-樹脂を用いて、TBTU/NMM-活性化により行った。該樹脂からの開裂を、94.5%TFA、2.5%水、2.5%EDT、及び1%TISからなる、開裂-混合物により行った。
【0218】
分析、及び分取HPLCを、Merck-Hitachi社のLiChrograph HPLCで、異なる勾配を用いて行った。該勾配を、2つの溶媒:A)H2O中の0.1%TFA、及び(B)アセトニトリル中の0.1%TFAから作った。分析HPLCを、次の条件で行った:溶媒を、UV検出器(l = 220 nm)を有する125-4 Nucleosil RP18-カラムを通して、15分に渡って5%-50%Bから、次に20分に渡って95%Bまでの勾配で、(1 ml/分)で流した。該ペプチドの精製を、ペプチド鎖長に依存して、様々な条件下で、250-20 Nucleosil 100 RP8-カラム、又は250-10 LiChrospher 300 RP18-カラム(流速6 ml/分、220 nm)の分取HPLCにより行った。
ペプチド、及びペプチド類似体の同定に対して、Hewlett-Packard社のHP G2025 MALDI-TOFシステムを用いて、レーザー脱離質量分析を使用した。
【0219】
(実施例2)
(DP IV-阻害剤のIC50-値の測定)
阻害剤の貯蔵液100μlを、100μlの緩衝液(HEPES pH 7.6)、及び50μlの基質(Gly-Pro-pNA、最終濃度0.4 mM)と混合し、かつ30℃で前保温した。精製したブタのDP IVを20μl添加して、反応を開始した。該生成物pNAの形成を、HTS 7000Plus プレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて10分に渡り405 nmで測定し、かつスロープを保温した。該最終阻害剤濃度は、1 mM〜30 nMの間の範囲である。
IC50値の計算に、GraFit 4.0.13(Erithacus Software)を使用した。
【0220】
(実施例3)
(DP IV-阻害剤のKi-値の測定)
Ki-値の測定のために、DP IV活性を、最終基質濃度0.05、0.1、0.2、及び0.4 mM、及び、さらに該IC50濃度に及ぶ7インヒビター濃度で、実施例2に記載した方法と同様の方法で測定した。計算を、GraFitソフトウェアを用いて行った。
【0221】
(実施例4)
(プロリルエンドペプチダーゼ(PEP)酵素活性評価)
PEPの酵素活性を、近年記載された(Schulzらの論文、2002、プロリルエンドペプチダーゼ阻害剤による、イノシトール1,4,5-トリホスフェート濃度の調節、Eur J Biochem 269: 5813-5820)ように定量化した。前述のような細胞抽出物を、4つの細胞チェンジャーを備え、かつIBM-互換性パーソナルコンピューターにより制御されたKontron分光蛍光計SFM25(励起波長380 nm、発光波長460 nm、Kontron、Neufahrn、ドイツ)に、蛍光発生的な基質Z-Gly-Pro-NHMec(10μM;Bachem、Heidelberg、Germany)を用いて、該アッセイ緩衝液中で保温した。該得られたデータを、ソフトウェアFLUCOL(Machleidtら、1995)を用いて分析した。
【0222】
(実施例5)
(グルタミニルシクラーゼ活性評価)
(蛍光分析評価法)
全ての測定を、マイクロプレート(Perkin Elmer)に対して、30℃で、BioAssay Reader HTS-7000Plusで行った。QC活性を、H-Gln-bNAを用いて、蛍光定量的に評価した。最終体積250μl内に、20 mMのEDTA、及び適切に希釈した一定分量のQCを含む0.2 Mトリス/HCl、pH 8.0の中に、0.2 mMの蛍光発生的基質、該試料0.25 U ピログルタミルアミノペプチダーゼ(Unizyme、Hrsholm、デンマーク)からなる。励起/発光波長は、320/410 nmとした。該評価反応は、グルタミニルシクラーゼの添加により開始した。QC活性を、評価条件下、β-ナフチルアミンの検量線から測定した。1単位は、前記条件下、1分につきH-Gln-βNAから1μmol pGlu-βNAの形成を触媒するQCの量として規定した。
【0223】
第二の蛍光分析評価法において、QCは、活性であり、基質としてH-Gln-AMCを用いて測定した。反応を30℃で、マイクロプレート用NOVOStarリーダー(BMG labtechnologies)を利用して行った。該試料は、最終体積250μl内に、5mMのEDTA、及び適切に希釈した一定分量のQCを含む0.05 Mトリス/HCl、pH 8.0の中に、該蛍光発生的基質、0.1 U ピログルタミルアミノペプチダーゼ(Qiagen)の異なる濃度からなる。励起/発光波長は、380/460 nmとした。該評価反応は、グルタミニルシクラーゼの添加により開始した。QC活性を、評価条件下、7-アミノ-4-メチルクマリンの検量線から測定した。該速度データを、GraFitソフトウェアを用いて評価した。
【0224】
(QCの分光光度的評価法)
この新規評価法を、ほとんどの該QC基質に対して、速度パラメーターを測定するように使用した。QC活性を、連続的な方法を用いて、分光光度的に分析した。該方法は、補助的な酵素としてグルタメートデヒドロゲナーゼを利用した、以前の非連続的評価法(Batemanの論文、R. C. J. 1989 J Neurosci Methods 30、23-28)をアレンジすることにより得られる。試料は、最終体積250μlの該個別のQC基質、3 mM NADH、14mM α-ケトグルタル酸、及び30 U/ml グルタメートデヒドロゲナーゼからなる。反応を、QCの添加により開始し、かつ8〜15分間、340 nmでの吸収の低下をモニタリングすることにより調べた。生成物形成の典型的時間経過を、図1に提示した。
該初期速度を評価し、かつ該酵素活性を、評価条件下で、アンモニアの検量線から測定した。すべての試料を、マイクロプレート用のSPECTRAFluor Plus、又はSunrise(両方ともTECAN社)リーダーを用いて、30℃で測定した。速度データを、GraFitソフトウェアを用いて評価した。
【0225】
(阻害剤評価法)
阻害剤試験のために、該試料組成物を、添加される推定上の阻害性化合物を除き、前述と同様のものとした。QC-阻害の迅速試験のために、試料は、4 mMの個別の阻害剤、及び1KMで基質濃度を含む。該阻害の詳細な調査、及びKi-値の測定のために、初めに、補助的な酵素の該阻害剤の影響を調査した。全ての場合において、検出された酵素の影響はなかった。従って、該QC阻害の信頼できる測定を可能にする。該阻害定数を、GraFitソフトウェアを用いて、一連のプログレス曲線と、競合阻害の一般的な式とを一致させることにより評価した。
【0226】
(実施例6)
(MALDI-TOF質量分析)
マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析を、飛行線形時間分析計を備えたHewlett-Packard G2025 LD-TOFシステムを用いて行った。該機器は、337 nm窒素レーザー、電位加速源(5 kV)、及び1.0 mの飛行管を備えている。検出操作は、正イオンモードであり、かつシグナルを、パーソナルコンピューターに接続したLeCroy 9350Mデジタルストレージオシロスコープを用いて記録し、かつフィルターに通した。試料(5μl)を、等量の該マトリックス溶液と混合した。マトリックス溶液として、発明者らは、水(1/1、v/v)の1 mlアセトニトリル/0.1% TFA中に、30 mgの2',6'-ジヒドロキシアセトフェノン(Aldrich)、及び44 mgのクエン酸2アンモニウムを溶解させて調製したDHAP/DAHCを使用した。該マトリックス-検体-混合物の少量(≒1μl)を、プローブチップに移動させ、かつ直ぐに減圧チャンバー(Hewlett-Packard G2024A sample prep accessory)内で留去し、迅速、かつ一様な試料の結晶を確保した。
【0227】
Glu1-環化の長期試験のために、Aβ-誘導化ペプチドを、100μl 0.1 M 酢酸ナトリウム緩衝液、pH 5.2、又は0.1 Mビス-トリス緩衝液、pH 6.5で。30℃に保温した。ペプチドを、0.5 mM[Aβ(3-11)a]、又は0.15 mM[Aβ(3-21)a]濃度とし、かつ0.2 U QCを、全24時間加えた。Aβ(3-21)aの場合において、該評価法は、1%のDMSOを含んだ。異なる時間で、試料を、該アッセイチューブから除き、ZipTips(Millipore)を用いて、製造者説明書に従って抽出し、マトリックス溶液(1:1 v/v)と混合し、かつ次に該質量スペクトルを記録した。ネガティブコントロールは、QCを含まないか、又は加熱し不活性化した酵素を含む。該阻害剤の研究にとって、該試料組成物は、添加される阻害性化合物を除き、前述のものと同様である(5 mM ベンゾイミダゾール、又は2 mM 1,10-フェナントロリン)。
【0228】
(実施例7)
(アミロイドβ-ペプチド(3-40/42)誘導体の産生)
3位にグルタミン酸残基の代わりにグルタミンを含有した、アミロイドβ-ペプチド(3-40/42), [Gln3]-アミロイド β-ペプチド(1-11) (配列: DAQFRHDSGYE), 及び[Gln3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)の2種の短鎖N末端ペプチド配列を用いて、測定を行った。2種のペプチドのDP IVによる開裂、及びQCによるN末端グルタミン残基の環化反応を、MALDI-TOF質量分析を用いて調べた。測定は、連続触媒反応測定用の両酵素と同様に、精製DP IV(ブタ腎臓)、又は粗ブタ脳下垂体ホモジネートをQC源として用いて行った。
【0229】
(結果)
1.DPIVにより触媒された[Gln3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)から[Gln3]-アミロイド β-ペプチド(1-11)の産生、及びDP IVインヒビター、Val-ピロリジド(Val-Pyrr)によるその抑制
DPIV、又はDPIV様活性は、[Gln3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)産生下における、[Gln3]-アミロイド β-ペプチド(1-11)の開裂をする(図2)。その3位の残基は、この開裂により露出し、それゆえ他の酵素、すなわち、QCによる改質のために、利用されやすくなる。予想どおり、触媒作用は、Val-Pyrrにより完全に抑制することが可能である(図3)。
2.脳下垂体ホモジネートにおけるQC触媒作用による[Gln3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)から[pGlu3]- アミロイド β-ペプチド(3-11)の産生、及び1,10-フェナントロリンによる抑制
ブタ脳下垂体ホモジネートに存在するQCは、[Gln3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)の[pGlu3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)への転換を触媒する(図4)。ピログルタミル-アミロイド β-ペプチド(3-11)の産生は、1,10-フェナントロリンの添加により阻害された(図5)。
【0230】
3.[pGlu3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)の産生をもたらすDP IV、及びQCの連続触媒作用、及びVal-Pyrr、及び1,10-フェナントロリンによる抑制
粗ブタ脳下垂体ホモジネートにブタ腎臓由来DP IVを付加して測定した、[Gln3]-アミロイド β-ペプチド(1-11)から[pGlu3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)の産生は、DP IV、及びQCによる連続触媒反応後、起こる(図6)。QCインヒビター1,10-フェナントロリン(図7)、又はDP IVインヒビターVal-Pyrrを添加したとき(図8)は、[pGlu3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)は産生されなかった。[pGlu3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)のわずかな出現は、アミノペプチダーゼの開裂、次いでグルタミン残基の環化反応に起因し、また、[Gln3]-アミロイド β-ペプチド(2-11)の産生により示唆された。
4.アミノペプチダーゼ触媒作用による、粗脳下垂体ホモジネートにおける[pGlu3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)の産生
DPIV触媒作用に依存しない[pGlu3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)に起因して、[Gln3]-アミロイド β-ペプチド(1-11)の分解を、DP IVを添加しない粗脳下垂体ホモジネートにおいて調べた(図9)。4項におけるデータから予想されるように、[pGlu3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)の産生が観察された。また、該データは、[Gln3]-アミロイド β-ペプチド(1-11)の分解はアミノペプチダーゼによって触媒され、[pGlu3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)を生じ得ることを示す。それ故、該結果は、ピログルタミル産生は、この組織におけるN末端ペプチド分解の指標であることを示し、さらにプラーク形成におけるQCの役割を支持した。
【0231】
(実施例8)
(組み換えヒトQCによるGln3-Aβペプチド 3-11a; 3-21、及び3-40の代謝回転)
調べた全てのGln3-Aβ誘導ペプチドは、ヒトQCにより、対応するピログルタミル型へ効率よく転換された(表4)。水溶液におけるGln3-Aβ(3-21)a、及びGln3-Aβ(3-40)の難溶解性のため、該決定は、1% DMSOの存在下で行った。しかしながら、Gln3-Aβ(3-11)aでは、良好な溶解性により、DMSO存在、及び非存在下におけるQC触媒作用の代謝回転の動態解析が可能であった(表4)。まとめると、鎖長8、18、及び37アミノ酸の、QC基質としてのAβ-ペプチドの研究(表4参照)により、基質の鎖長が伸張するにつれヒトQC活性が上昇するという観察を裏付けた。従って、その特異性定数を考慮に入れると、Gln1-ガストリン、Gln1-ニューロテンシン、Gln1-GnRHは、QC基質の中でも最良である。同様に、これまで調べた最長のQC基質であるGln3-Aβ(3-40)、及びグルカゴンは、1% DMSO存在下においても、高二次速度定数(各々449 mM-1s-1、及び526 mM-1s-1)を示した(表4)。
【0232】
興味深いことに、調べたアミロイドペプチドにおける該転換の該速度パラメータが、鎖長の伸張につれて劇的に変化しなかったことは、QC触媒おけるAβのC末端のごく軽度の影響を示唆した。従って、より良溶解性、及び実験処理によって、Aβの小断片、Gln3-Aβ(1-11)a、Gln3-Aβ(3-11)a、及びAβ(3-11)aを用いて、これらのペプチドN末端アミノペプチダーゼプロセズに関するさらなる研究を行った。
【0233】
【表4】

【0234】
(実施例9)
(組み換えヒトQCによるAβ(3-11)a、及びAβ(3-21)aの代謝回転)
QC存在下でのAβ(3-11)a、及びAβ(3-21)aのインキュベートにより、以前の研究と対照的に、グルタミン酸含有ペプチドがQCの基質になる得ることが示された(図10C、及びD)。QC触媒によるpGlu3-Aβ(3-11)、及びpGlu3-Aβ(3-21)aの産生を、各々pH 5.2、及び6.5で調べた。該QCの添加による活性の開始前に、QCインヒビター、ベンズイミダゾールを該溶液に添加した場合は、pGlu3-Aβ(3-11)a、又はpGlu3-Aβ(3-21)aを生じる基質転換は抑制された(図10E、及びF)。QCを添加前に煮沸した場合は、pGluペプチドの産生はごく僅かであった(図10A、及びB)。
【0235】
(実施例10)
(パパイヤQC触媒のGln-βNA、及びGlu-βNA の環化反応におけるpH依存性)
パパイヤQCは、ミカエリスメンテン速度論に従い、2 mM(基質溶解性により限定された)までの濃度範囲においてGlu-βNAを転換した(図11)。pH 6.1〜8.5の間で調べた、QC触媒のGlu-βNAの転換における基質濃度に対する代謝回転の図を検討することにより、このGlu基質における、KM、及びkcatの両パラメータが、pHに依存することが示された(図11)。これは、以前に記載されたQC触媒のグルタミン環化反応とは対照的であり、その反応においては、該既定のpH範囲ではKMの変化のみが観察された(Gololobov, M. Y.らの論文、(1994)Arch Biochem Biophys 309, 300-307)。
【0236】
続いて、Glu、及びGln環化反応中のプロトン濃度の影響を検討するために、低一次速度条件下(すなわち、KM値をはるかに下回る基質濃度)における、Glu-βNA、及びGln-βNAの環化反応のpH依存性を調べた(図12)。pH 6.0で至適pHを示したグルタミン酸の該環化反応に対し、グルタミンの環化反応は、pH 8.0で至適pHを示す。各々の至適pHにおける該特異性定数は、およそ80,000倍異なる一方、pH 6.0付近でのECに対するQCの活性は8,000倍だけである。
pH 6.0において4週間調べた、Gln-βNAから非酵素的pGluの産生により、一次速度定数を1.2*10-7 s-1と示された。しかしながら、同期間においてGlu-βNAからpGlu-βNAは産生されなかったことから、代謝回転の律速速度定数は1.0*10-9 s-1と推定できた。
【0237】
(実施例11)
(PEPの細胞内分布)
計画的局在化研究において、適した細胞株を同定するために、異なるヒトグリオーマ、及び神経細胞株、並びに、初代神経、及びグリア細胞を、PEP発現、及び活性について調査した。全ての細胞株、及び初代細胞の研究において、PEPは、特異的ポリクローナル抗体PEP-S449を用いて、ウエスタンブロット分析により検出した(図13A)。特異的基質Z-Gly-Pro-AMCを用いた酵素評価法を用いることにより、ラット初代神経細胞が、最も高いPEP酵素活性を示した(図13B)。初代星状細胞、ミクログリア、及びオリゴデンドログリア細胞中では、低特異的活性が検出された(図13B)。該細胞株試験の間に、該U-343 グリオーマ細胞、及びSH-SY5Y神経芽細胞腫が、初代星状細胞中について、最も高い特異的PEP活性を示した(図13B)。該グリオーマ細胞株LN-405, LNZ-308, T98p31, 及びU138-MGは、2.5〜5倍低い量の特異的PEP活性を検出した(図13B)。従って、次の実験に、U-343、並びにSH-SY5Y、及び場合によってはLN-405細胞を選択した。
【0238】
PEPの細胞内局在化を明らかにするために、異なる独立した方法を使用した。第一に、別々に遠心分離したヒトグリオーマU-343細胞、及び神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞の細胞内断片を、細胞区画特異的マーカータンパク質に対する異なる抗体を用いて、ウエスタンブロットにより特性化した(図14A)。PEPタンパク質は、可溶性細胞基質画分S100中の粗抽出液(CE)中に独占的に見つかり、PEP個々の断片において、酵素活性評価法により確認された(図14B)。該SH-SY5Y、及びU-343細胞において、それぞれ、全活性の約99%、及び87%が、該S100断片中に見つかった。特定の断片中には、少量のPEP活性のみが見つかり、また培養上清中には、PEP活性がないことがわかった。
【0239】
免疫細胞化学により、内在性PEPタンパク質の細胞内分布を評価するために、モノクローナルPEP抗体4D4D6を使用した。全ての細胞株、及び初代細胞を調査し、PEPタンパク質を検出した。PEP-免疫反応性は、主に核膜腔に見つかった(図15A)。さらに、全てのLN-405細胞内、並びに、多くのSH-SY5Y、及びU-343細胞内に、典型的細胞骨格様PEP分布を観察した(図15A)。ヒトPEP-アンチセンス細胞株U-343(as60)、及びヒトグリオーマ細胞株T98p31を使用して、使用したPEP抗体の特異性を確認した。両細胞種は、ヒトグリオーマU-343細胞を比較して、50%未満の残存PEP活性を有し、かつ同一のPEP染色パターンを示した。しかし、U-343細胞と比較して、PEP免疫反応性は、有意に低いことを示した(図15AのU-343(as60)を参照)。
【0240】
免疫細胞化学的検出に基づかない方法を用いて、PEPのこの細胞内局在化を確認するために、PEP-EGFP融合タンパク質を、U-343, SH-SY5Y, 及びLN-405中に転換した。野生型EGFP-融合ベクターpEGFP-N3を、コントロールとして用いた。16時間後に、全ての形質転換試料に、緑蛍光細胞を観察した。該野生型EGFPの過剰発現は、核を含む、細胞体全体の均一染色を導いた(図15B)。対照的に、野生型、並びに変異PEP-EGFP融合タンパク質は、主に、特定の空間が高濃度である、不均一分布を示した。該野生型、及び変異PEP-EGFP-融合タンパク質において、分布パターンの違いは観察されなかった。しかし、全ての調査した細胞株において、適切な多くの細胞は、繊維状の、発現PEP-EGFP-融合タンパク質の細胞骨格様分布パターンを示した(図15B)。この分布パターンは、図15Aに示した免疫細胞化学的染色結果によく一致する。該活性測定、及びウェスタンブロット分析に従って、PEP-EGFP-融合タンパク質の分泌は、検出されなかった。
【0241】
野生型、及び変異PEP-EGFP-融合タンパク質の過剰発現は、2週の間の全てのトランスフェクト細胞の死を導いた。この事実は、PEPを安定して過剰発現する細胞株の生成を妨げる。両方の変異体の融合タンパク質に関して、多くのトランスフェクト細胞は、非常に強い細胞基質空胞形成を示し、続いて、"アポトーシス体"を形成する。さらに、全てのトランスフェクト細胞は、この短い存続時間の間に細胞分裂を示さなかった。対照的に、該EGFP野生型タンパク質を発現する細胞は、正常の増殖速度を有し、かつ安定な細胞株を維持することが可能である。
【0242】
PEPの特異的な繊維状の細胞骨格様分布を、チューブリン、主に該細胞骨格の構造的要素を用いた共局在化により確認した。チューブリン-ラベル化LN-405細胞における、通常の繊維状細胞骨格パターンと比較して、球状のチューブリンラベル化は、ほとんどの該U-343細胞中に検出された(図16A)。この観察は、これらの細胞の内在性PEP、及びEGFP-PEPの染色パターンと一致する(それぞれ、図15A、及び15Bとの比較)。繊維状、及び球状チューブリン、双方の染色パターンは、対応するPEP免疫反応性とともに、ほとんど完全に共局在化した(図16A)。
【0243】
さらに、該細胞骨格構築、及びPEPの局在化を検証するために、U-343、及びLN-405細胞のマイクロチューブリ(microtubuli)を、ノコダゾール (Sigma社, ダイゼンホルム(Deisenhofen), ドイツ)処置により解重合した。概況局在化研究と対照的に、未処置、及び処置細胞は、モノクローナルチューブリン(Sigma社, ダイゼンホルム, ドイツ)、及びPEP(4D4D6)抗体で1つラベル化した(図16B)。これらの条件の下、該U-343細胞の多くは、LN-405細胞に観測された、通常の細胞骨格構造を示した。ノコダゾールで処置後に、該繊維状構造は、両細胞中で完全に失われた。マイクロチューブリ構造の該ノコダゾール効果の特異性を試験するために、処置、及び未処置細胞を、モノクローナルカルネキシン抗体でラベル化した(1:100, ストレスゲン(Stressgen), ビクトリア, Can.)。本発明者らは、ノコダゾールが、該特異的ERマーカータンパク質カルネキシンの分布パターンに影響はないことを観察した(データは示さず。)。
【0244】
該チューブリンラベル化との類似点において、該PEP免疫反応性は、ノコダゾール処置後には、もはや繊維状でない(図16B)。U-343細胞において、マイクロチューブリ-解重合後に、チューブリンは、全細胞質中に広く分布され、主に該細胞膜近くに局在化している。対照的に、該PEPタンパク質は、大きな細胞膜パフ(large cell membrane puffs)中に独占的に見つかった。ノコダゾール-処置LN-405細胞において、該チューブリンタンパク質は、核を含む全細胞体に渡って分布していた。該PEPタンパク質は、核内にはないが、該チューブリンタンパク質のように分布していた。一般的に、膜パフの形成は、U-343細胞よりもかなり少ない。
【0245】
PEPの局在化に対する酵素的活性の役割を調査するために、U-343, 及びLN-405細胞を、5μMの特異的PEPインヒビター、Fmoc-AlaPyrr-CNを用いて24時間処置した。モノクローナルPEP、及びチューブリン(Sigma社, ダイゼンホルム, ドイツ)を用いて、よりラベル化した。PEP酵素活性の完全阻害による該チューブリン、又はPEP局在化パターンは、未処置細胞と比較して変化はなかった。
【0246】
(実施例12)
(タンパク質分泌物、及びβ-アミロイド分布における、PEP阻害効果)
タンパク質分泌物におけるPEP阻害効果を試験するために、代謝的ラベル化実験を、PEP活性の薬理学的阻害の条件下で行った(Schulzらの論文, 2002, プロリルエンドペプチダーゼによるイノシトール1,4,5-三リン酸塩濃度の調節(Modulation of inositol 1,4,5-triphosphate concentration by prolyl endopeptidase inhibition.)Eur J Biochem 269: 5813-5820)。
【0247】
PEP酵素活性の阻害は、24時間において、U-343、及びSH-SY5Y細胞由来タンパク分泌物の増加、それぞれ、2倍(197±27%)、及び1,8倍(181±19%)の増加を示した(図17A)。ゲル電気泳動による分泌タンパク質の分離、及び続く、タンパク質増加を示す放射性バンドの検出は、広い分子量範囲に渡って、多くの異なるタンパク質を含んでいた。
【0248】
β-アミロイド ペプチドは、分泌経路中に処理されたタンパク質中に存在し、かつPEP活性によりAPP処理の調節が、最近の議論となっているために、PEP阻害実験系を、U-343、及びSH-SY5Y細胞中のβ-アミロイド分泌分析に適用した。ヒトU-343細胞におけるPEPの完全阻害は、該培養液中のβ-アミロイドペプチドの増加を示した(図18)。24時間後に、β-アミロイド1-40、及び1-42 (106細胞につき8,6±1,2、及び4,8±1,1 pg/ml)の量は、コントロール試料を測定した濃度(106細胞につき2,7±0,7、及び1,1±0,3 pg/ml)よりも最大4.3倍高かった。同様であるが、処置SH-SY5Y細胞において、β-アミロイドペプチド1-40、及び1-42の分泌レベル(106細胞につき3,6±0,6、及び4,2±0,5 pg/ml)のわずかな変化が、未処置細胞(106細胞につき2,2±0,4、及び1,9±0,6 pg/ml)と比較して観察された。使用した細胞株には依存せず、β-アミロイド 1-42 ペプチドの細胞内濃度は、影響されない。対照的に、PEP インヒビター処置U343、及びSH-SY5Y細胞(86,7±9,9、及び156,7±28,5 pg/gタンパク質)のβ-アミロイド 1-40 ペプチドの量は、未処置細胞(111,2±11,4、及び127,0±12,7 pg/gタンパク質)と比較して20%低かった。
【0249】
背景強度の相違のために、ベータ-アミロイド1-40の低下は、SH-SY5Y細胞において有意差があるとはいえない。同時に、上記実験は、β-アミロイドペプチドが、PEP酵素活性の阻害後に、より豊富に分泌されたタンパク質中に存在することを、はっきりと示している。
【0250】
(実施例13)
(マウス脳中のPEP発現)
脳中のPEPの分布、及び細胞源を確認するために、冠状マウス脳切片において、モノクローナルPEP抗体4D4D6を用いて、免疫組織化学ラベル化を行った。PEPは、主に神経細胞により発現され、かつマウス脳の至る所に検出される。PEP-免疫反応性は、神経細胞質、及び軸索中、及び樹状突起に存在し、ラット初代神経細胞中のPEPの細胞内局在化によく似ている(図19A;図15Aと比較)。異なる脳領域中のPEP発現は、ウエスタンブロット分析、及び酵素PEP活性評価法により比較した。ウエスタンブロット分析、及び光学密度判断のデンシトメトリー定量法は、PEP発現が、成熟(8月齢)マウスの小脳において最も高く、かつ頭頂皮質、及び海馬において低いことを示した。高齢17月齢マウスにおいて、PEPタンパク質レベルは、海馬を除き、成熟マウスと比較して変化はなかった。該海馬は、約30%のPEP発現の上方制御を示した(図19B)。これらの結果は、異なる脳領域における、PEP酵素活性の定量化から誘導されるものにより反映される。成熟マウスにおいて、最大PEP活性は、小脳 (16 mU/mgタンパク質)、続いて頭頂皮質(11 mU/mgタンパク質)、及び海馬(10 mU/mgタンパク質)において検出された。加齢マウスにおいて、PEP酵素活性は、海馬組織において有意に増加する。しかし、研究した他の脳領域においては、変化ないままであった(図19C)
【0251】
(実施例14)
(ヒト脳におけるPEP発現)
ヒト脳PEPは、免疫組織化学的に示されるように、神経細胞により選択的に発現される。核周囲細胞質ラベル化、及び神経突起のフィラメント状染色(図20A)を観察した。脳構造は、ADのβ-アミロイドプラーク症状により影響され、本発明者らは、わずかなPEP-免疫反応性神経細胞を検出した。それは、コントロールの脳よりも、より強く染色され、かつ縮んでいるように見える(図20A)。全てのADの調査において、ミクログリア細胞、及び星状細胞の強い活性化が、β-アミロイドプラークの近くに観察された。しかし、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて、PEP、およびグリアマーカーの二重免疫蛍光ラベル化により示したように、活性化ミクログリア細胞も、反応性星状細胞もPEPを発現しなかった(図20A)。
頭頂皮質における、PEPの全タンパク質レベル、及び酵素活性は、齢が同じのコントロール脳検体と比較して、AD脳において変化はなかった(図20B、及び20C)。
【0252】
(実施例15)
(β-セクレターゼ評価法)
β-セクレターゼ評価法を、該BACE活性アッセイキット(Calbiochem Cat.No. 565785)、並びにAPPの野生型配列を一致する蛍光クエンチ基質RE(Edans)EVKMDAEFK(Dabcyl)Ra;及びAPPのそれぞれのイソAspと一致するRE(Edans)EVKMisoDAEFK(Dabcyl)Raを用いて行った。SY5Y、又はU344細胞の細胞抽出液を、該キットの抽出緩衝液を用いて調製した。細胞抽出液、及び評価法手順を、使用する基質(上記)を除き、該製造者プロトコルに従って行った。該基質加水分解を、GENiusPro蛍光マイクロプレートリーダー(TECAN)を用いてモニターし、かつ励起、及び蛍光波長を、それぞれ、340、及び495 nmにした。RFU/分の活性を、時間-応答-曲線の線形部の直線回帰により計算した。
(図面の簡単な説明)
本発明のこれらおよび他の態様のさらなる理解は、以下の図を参照することより、得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0253】
【図1】図1は、ヒトQCにより触媒されるH-Gln-Ala-OHの環化反応のプログレス曲線を示し、340 nmにおける吸光度の低下をモニターする。該試料は、0.3 mM NADH/H+、14 mM α-ケトグルタル酸、30 U/mlグルタミン酸デヒドロゲナーゼ、及び1 mM H-Gln-Ala-OHを含んだ。曲線A〜Dには、様々な濃度のQCを加えて:その濃度はA、10mU/ml、B、5 mU/ml、C、2.5 mU/mlであった。曲線Dの場合は、QCは除いた。QC濃度、及び観察された活性との間に、直線関係を得た(挿入図)。
【図2】図2は、DPIV により触媒された、Gln3-アミロイド β-ペプチド(1-11)からのGln3-アミロイド β-ペプチド(3-11)の形成を示す。試料を測定管から除去し、マトリックス溶液(1:1 v/v)を混合し、かつ質量スペクトルを記録した時のものを示す。
【図3】図3は、DP IV-インヒビター Val-ピロリジド (Val-Pyrr)によるGln3-アミロイド β-ペプチド(1-11)の開裂の抑制を示す。試料を測定管から除去し、マトリックス溶液 (1:1 v/v)を混合し、次に質量スペクトルを記録した時のものを示す。
【図4】図4は、QCにより触媒されたGln3-アミロイド β-ペプチド(3-11)からのpGlu3-アミロイド β-ペプチド(3-11)の形成を示す。表示された時間に、試料を測定管から除去し、マトリックス溶液 (1:1 v/v)を混合し、次に質量スペクトルを記録した。
【図5】図5は、QC-インヒビター 1,10-フェナントロリンによる[Gln3]-アミロイド β-ペプチド(3-11)からのpGlu3-アミロイド β-ペプチド (3-11)の形成阻害を示す。表示された時間に、試料を測定管から除去し、マトリックス溶液 (1:1 v/v)を混合し、次に質量スペクトルを記録した。
【0254】
【図6】図6は、DP IV、及びQCによる連続的触媒作用後の、Gln3-アミロイド β-ペプチド(1-11)からのpGlu3-アミロイド β-ペプチド(3-11)の形成を示す。表示された時間に、試料を測定管から除去し、マトリックス溶液 (1:1 v/v)を混合し、次に質量スペクトルを記録した。
【図7】図7は、触媒活性DP IV、及びQCQC-インヒビター 1,10-フェナントロリンによる、Gln3-アミロイド β-ペプチド(1-11)からのpGlu3-アミロイド β-ペプチド(3-11)の形成阻害を示す。表示された時間に、試料を測定管から除去し、マトリックス溶液 (1:1 v/v)を混合し、次に質量スペクトルを記録した。
【図8】図8は、DP IV-インヒビター Val-Pyrrによる、Gln3-アミロイド β-ペプチド(1-11)からのpGlu3-アミロイド β-ペプチド(3-11)形成の減少を示す。表示された時間に、試料をアッセイ混合物から除去し、マトリックス溶液 (1:1 v/v)を混合し、次に質量スペクトルを記録した。
【図9】図9は、ブタ下垂体ホモジネートに存在するアミノペプチダーゼ(s)、及びQCによる連続的触媒作用後の、Gln3-アミロイド β-ペプチド(1-11)からのpGlu3-アミロイド β-ペプチド(3-11)の形成を示す。表示された時間に、試料を測定管から除去し、マトリックス溶液 (1:1 v/v)を混合し、次に質量スペクトルを記録した。
【図10】図10A、及びBは、組換え型ヒトQCを用いてインキュベートし、使用前に10分間煮沸させた、Glu3-Aβ(3-11)a、及びGlu3-Aβ(3-21)の質量スペクトルを示す。Dは、活性ヒトQCの存在下での、Glu3-Aβ(3-11)a、及びGlu3-Aβ(3-21)の質量スペクトルを示す。これらは結果的に、それぞれpGlu3-Aβ(3-11)a、及びpGlu3-Aβ(3-21)aを形成する。E、及びFは、pGlu3-形成を抑制する活性QC、及び5 mM ベンゾイミダゾールの存在下での、Glu3-Aβ(3-11)a、及びGlu3-Aβ(3-21)aの質量スペクトルを示す。
【0255】
【図11】図11は、基質の濃度に対してプロットされた、パパイヤQCに触媒されるGlu-βNA転換の反応速度を示す。初速度は、0.1 Mピロリン酸緩衝液(pH 6.1)(四角)、0.1 Mリン酸緩衝液(pH 7.5)(丸)、及び0.1 Mホウ酸緩衝液(pH 8.5)(三角)で測定した。速度パラメータは、下記のとおりであり:KM=1.13±0.07 mM、kcat=1.13±0.04 分-1(pH 6.1);KM=1.45±0.03 mM、kcat=0.92±0.01 分-1(pH 7.5);KM=1.76±0.06 mM、kcat=0.56±0.01 分-1(pH 8.5)であった。
【図12】図12は、低一次反応速度条件下(S<<KM)で決定された、Gln-βNA(丸)、及びGlu-βNA(四角)の転換のpH依存性を示す。基質濃度は、各々、0.01 mM、及び0.25 mMであった。両決定には、0.05 M酢酸、0.05 Mピロリン酸、及び0.05 Mトリシンを含む、三成分緩衝系を使用した。全ての緩衝液は、イオン強度の相違を防ぐため、NaClの添加により等電気伝導度に調節した。該データは、2種の解離基を説明する公式に適合し、pKa値は、Gln-βNAにおいては、6.91±0.02、及び9.5±0.1、及びGlu-βNAにおいては4.6±0.1、及び7.55±0.02であった。滴定により決定された、各々の基質アミノ基のpKa値は、6.97±0.01(Gln-βNA)、及び7.57±0.05(Glu-βNA)であった。全ての決定は、30℃で行った。
【図13】図13:A)アクチン含有量に対して規格化された、異なる細胞株の細胞抽出液中のPEPのウエスタンブロット分析。PEPタンパク質は、10μg全タンパク/レーンを用いて、PEP-特異的ポリクローナル抗体S449 (プロバイオドラッグ, 1:400)により検出した。PEPに対する高タンパク質濃度は、U-343細胞中、続いてSH-SY5Y細胞中に見つかった。分析した全ての他の細胞種は、PEP含有量が極めて低かった。ラット脳初代培養において、高PEPタンパク質濃度が、神経細胞中、続いて星状細胞、ミクログリア細胞、及びオリゴデンドログリア細胞中に検出された。B) 図示した、ヒト細胞株中、並びにラット初代神経細胞、及びグリア細胞中のPEP酵素活性の定量。PEP活性は、ラット初代神経細胞中に最も高く、続いて星状細胞、ミクログリア細胞、及びオリゴデンドログリア細胞中が高かった。ヒト神経芽細胞腫、及びグリア細胞株は、ラット初代星状細胞、及びミクログリア細胞中に存在するレベルの間の範囲内のPEP活性を示した。
【図14】図14:A)ヒトグリア細胞株U-343中の内在性細胞内PEP発現の特性。画分CE(粗抽出液), P1 (核画分), P20 (リソソーム画分), P100 (ミクロソーム画分), 及びS100 (可溶性細胞基質画分)の性質を、アクチンに対する抗体(1:1000, Sigma社)を用いて、異なる細胞区画特異的タンパク質の検出により確認した。PEPタンパク質は、ポリクローナルPEP特異的抗体S449 (1:400, probiodrug社)を用いて、該CE、及びS100画分にのみ検出された。B)ヒトグリア、及び神経芽細胞株U-343、及びSH-SY5Yの分離細胞断片中の、特定のPEP活性の割合。該分離細胞画分CE(粗抽出液)、P1(核画分)、P20(リソソーム画分)、P100(ミクロソーム画分)、及びS100(可溶性細胞基質画分)を、示したように、PEP活性に対してスクリーニングした。該CEの全特異的PEP活性のほぼ100%が、調査した両細胞株のS100画分中に検出された。特定の画分P20、及びP100中、並びに核画分P1には、わずかなPEP活性のみが測定された。
【図15】図15:A)ヒト神経細胞、及びグリア細胞株中、並びに、ラット初代神経細胞、及びグリア細胞中のPEPタンパク質の免疫ラベル化。異なるヒト細胞株、及びラット初代神経細胞を、共焦点レーザー走査顕微鏡検査用の、特異的モノクローナルPEP抗体4D4D6を用いてラベル化した(LSM510, Zeiss)。全ての調査したヒト細胞株、及びラット初代細胞PEPタンパク質は、主に、核周辺の空間中に見つかった。全てのLN-405細胞、並びに多くのSH-SY5Y、及びU-343細胞において、フィラメント状の、細胞骨格-様PEP分布を観察した。B)ヒト細胞株中のPEP-EGFP融合タンパク質の分布。ヒト細胞株U-343, SH-SY5Y, 及びLN-405を、説明書に従ってPOLYFECTIN(Biontex)を使用し、発現ベクターpEGFP(Clontech)、及びPEP/EGFP融合構築体pIS-7-MP7を用いてトランスフェクトした。12〜24時間の培養後に、細胞を、PBS中 4% (w/v) PFAを用いて固定化し、かつレーザー操作顕微鏡(LSM510, ツァイス(Zeiss), オベルコチェン(Oberkochen), ドイツ)でイメージを撮った。すぐに内在性PEP分布を観察するために、PEP-EGFP融合タンパク質は、SH-SY5Y、及びLN-405細胞の核周辺、及びフィラメント状細胞骨格様ラベル化を示した。
【0256】
【図16】図16:A)ヒトグリオーマ細胞株中のPEP、及びチューブリンの共局在化。U-343、及びLN-405細胞は、示したように、共焦点走査顕微鏡検査用の、モノクローナルチューブリン(Sigma)、及びPEP抗体(4D4D6)で二重ラベル化した。黄色(右列)は、チューブリン、及びPEP免疫蛍光の共焦点を示す。B)天然ヒトグリア細胞株U-343、及びLN-405 (上列)における、PEP、及びチューブリンの類似した細胞内分泌。U-343、及びLN-405細胞において、ノコダゾール処置による該ミクロチューブリネットワークの解重合、双方の完全損失後に、該チューブリン、及び該PEPフィラメント状分布パターンを観察した(下列)。
【図17】U-343、及びSH-SY5Y細胞における、代謝ラベル化実験によるタンパク分泌物の定量化。 U-343、及びSH-SY5Yからの基礎的なタンパク質分泌を、PEP酵素活性阻害条件下と比較した。ヒトU-343、及びSH-SY5Y細胞を、PEPインヒビターを用いて24時間処置した。未処置コントロール細胞よりも、培養上清中のタンパク質含有量は、それぞれ2倍(197±27%)、及び1,8倍(181±19%)高かった。データは、± SEMを意味し、かつ分散分析(ANOVA)による統計的有意性に対して試験し、続いて両側のステューデントt-検定を試験した。*統計学的有意な差は、P<0.05である。
【図18】図18:U-343、及びSH-SY5Y細胞における細胞内ベータ-アミロイド濃度、及びPEP阻害条件下の培養液中に分泌されるβ-アミロイド ペプチドの定量化。 ヒトU-343、及びSH-SY5Y細胞のPEPの完全阻害は、培養上清中のベータ-アミロイドペプチドが4.3倍増加する結果を得た。使用した、両方の細胞株において、細胞内のベータ-アミロイド 1-42 ペプチドの量は、影響されなかった。対照的に、ベータ-アミロイド 1-40 ペプチドの量は、PEP インヒビター処置したU343、及びSH-SY5Y細胞中よりも20%低かった。背景強度の大きな相違のために、ベータ-アミロイド1-40の減少は、SH-SY5Yにおいて有意でない。 データは、3つの試料を用いた、2つの独立した実験からの± SEMを意味し、かつ分散分析(ANOVA)による統計的有意性に対して試験し、続いて両側のステューデントt-検定を試験した。*統計学的有意な差は、P<0.05である。
【図19】図19:A)上列において、野生型マウス脳の通常のPEP免疫蛍光ラベル化を、低(左)、及び高(右)倍率で示した。高倍率イメージは、野生型マウス脳の頭頂皮質中のPEPの核周辺、及び細胞骨格局在化を示す。下列において、示したように、17月齢野生型、及び齢一致APPトランスジェニックTg2576マウスの脳の頭頂皮質における、PEP(Cy2-ラベル化;緑蛍光)、及びGFAP (Cy3-ラベル化, 赤蛍光)の免疫反応性を示した。Tg2576新皮質における強い星状細胞活性化、及びこれらの反応性星状細胞によるPEP発現の欠損に注目されたい。B)示したように、成熟(8月齢)、及び加齢(17月齢)野生型、及びTg2576マウス由来の脳ホモジネート中のPEPのウエスタンブロット分析。この図は、ウェスタンブロットの代表的な例を示し、かつアクチン免疫反応性に対して規格化した、光学密度判断の定量化を与える。データは、1実験グループにつき7動物から得られた± SEMを意味し、かつ分散分析(ANOVA)による統計的有意性に対して試験し、続いて両側のステューデントt-検定を試験した。*統計学的有意な差は、P<0.05である。C)示したように、成熟(8月齢)、及び加齢(17月齢)野生型、及びTg2576マウス由来の脳ホモジネートにおけるPEPの酵素活性。データは、1実験グループにつき7動物から得られた± SEMを意味し、かつ分散分析(ANOVA)による統計的有意性に対して試験し、続いて両側のステューデントt-検定を試験した。*統計学的有意な差は、P<0.05である。*a 8月齢コントロールマウスの小脳におけるPEP活性は、同一脳の頭頂皮質、及び海馬中よりも有意に高い。
【図20】図20:A)示したように、非痴呆症ヒトコントロール患者の脳中、およびAD脳中のPEP免疫反応性。PEPは、低倍率で示したように、頭頂皮質(上左)において、神経性に発現される。高倍率イメージ(上右)は、コントロール脳の頭頂皮質錐体神経中の、PEPの核周辺、及び細胞骨格局在化を現す。下列では、コントロール(C)、及びAD(D)のヒト頭頂皮質中の、PEP(Cy2-ラベル化; 緑蛍光)、及びGFAP (Cy3-ラベル化; 赤蛍光)に対する二重免疫蛍光ラベル化を示す。強い少数の神経細胞中の強いPEPラベル化は、縮んだ形態を示すことに注意されたい。PEPは、AD脳中の反応性星状細胞により発現されない。B)示したように、非痴呆症コントロール患者、及びAD患者由来の脳ホモジネート中のPEPのウエスタンブロット分析。この図は、ウエスタンブロットの代表例を示し、かつアクチン含有量により規格化された光学密度判断の定量化を与える。データは、7AD患者、及び8コントロール患者からの± SEMを意味し、かつ分散分析(ANOVA)による統計的有意性に対して試験し、続いて両側のステューデントt-検定を試験した。C)示したように、コントロール患者、及びAD患者からの脳ホモジネート中のPEPの酵素活性。データは、7AD患者、及び8コントロール患者からの± SEMを意味し、かつ分散分析(ANOVA)による統計的有意性に対して試験し、続いて両側のステューデントt-検定を試験した。
【図21】野生型(赤四角)、及びSY5Y細胞抽出液を用いてインキュベートしたAPPの、ベータセクレターゼ開裂部位を含むイソAsp(緑丸)を模倣した、蛍光クエンチペプチド基質(RE(Edans)EVKMDAEFK(ダブシル(Dabcyl))Ra)の時間応答曲線。
【図22】野生型(黒四角)、及びSY5Y細胞抽出液を用いてインキュベートしたAPPのベータセクレターゼ開裂部位を含むイソAsp(白丸)を模倣した、蛍光クエンチペプチド基質(RE(Edans)EVKMDAEFK(ダブシル)Ra)のv-S-特性。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのQC-インヒビターを含む組成物であって、任意に、PEP-インヒビター, ジペプチジルアミノペプチダーゼのインヒビター, NPY-レセプター リガンド, NPY アゴニスト, NPY アンタゴニスト, ACE インヒビター, PIMT エンハンサー, ベータセクレターゼのインヒビター, ガンマセクレターゼのインヒビター, 及び中性エンドペプチダーゼのインヒビターからなる群から選択された少なくとも1つの薬剤を組み合わせた、前記組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのQC-インヒビターを含む医薬組成物であって、任意に、PEP-インヒビター, DP IV/DP IV-様酵素のインヒビター, NPY-レセプターリガンド, NPY アゴニスト, NPY アンタゴニスト, ACE インヒビター, PIMT エンハンサー, ベータセクレターゼのインヒビター, ガンマセクレターゼのインヒビター, 及び中性エンドペプチダーゼのインヒビターからなる群から選択された少なくとも1つの薬剤、及び少なくとも1つの医薬として許容し得るキャリアを組み合わせた、前記組成物。
【請求項3】
少なくとも1つのQC-インヒビターを含む医薬組成物であって、任意に、少なくとも1つのPIMT エンハンサー、及び少なくとも1つの医薬として許容し得るキャリアを組み合わせた、前記組成物。
【請求項4】
少なくとも1つのQC-インヒビターを含む医薬組成物であって、任意に、少なくとも1つのベータセクレターゼのインヒビター、及び少なくとも1つの医薬として許容し得るキャリアを組み合わせた、前記組成物。
【請求項5】
少なくとも1つのQC-インヒビターを含む医薬組成物であって、任意に、少なくとも1つのガンマセクレターゼのインヒビター、及び少なくとも1つの医薬として許容し得るキャリアを組み合わせた、前記組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのQC-インヒビターを含む医薬組成物であって、任意に、少なくとも1つのプロリルエンドペプチダーゼのインヒビター、及び少なくとも1つの医薬として許容し得るキャリアを組み合わせた、前記組成物。
【請求項7】
少なくとも1つのQC-インヒビターを含む医薬組成物であって、任意に、少なくとも1つのジペプチジルアミノペプチダーゼのインヒビター、及び少なくとも1つの医薬として許容し得るキャリアを組み合わせた、前記組成物。
【請求項8】
前記ジペプチジルアミノペプチダーゼのインヒビターが、DP IV 及び/又は DP IV-様酵素のインヒビターである、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記DP IV 及び/又は DP IV-様酵素のインヒビターが、下記からなる群から選択されたもの、及び少なくとも1つの医薬として許容し得るキャリアである、請求項8記載の医薬組成物:L-トレオ-イソロイシルピロリジン, L-アロ-イソロイシルチアゾリジン, L-アロ-イソロイシルピロリジン, バリン ピロリジン, NVP-DPP728A (1-[[[2-[{5-シアノピリジン-2-イル}アミノ]エチル]アミノ]アセチル]-2-シアノ-(S)-ピロリジン) LAF-237 (1-[(3-ヒドロキシ-アダマント-1-イルアミノ)-アセチル]-ピロリジン-2(S)-カルボニトリル); TSL-225 (トリプトフィル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸), 又はFE-999011 ( [(2S)-1-([2’S]-2’-アミノ-3’,3’ジメチル-ブタノイル)-ピロリジン-2-カルボニトリル] ), MK-0431 ( (2R)-4-オキソ-4-[3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル]-1-(2,4,5-トリフルオロフェニル)ブタン-2-アミン)、及びこれらの医薬として許容し得る塩である。
【請求項10】
前記キャリアが、非経口的、又は経腸的に適用するためのものである、請求項2〜9のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記キャリアが、経口的に適用するためのものである、請求項2〜10のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記キャリアが、経鼻的に適用するためのものである、請求項2〜10のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項13】
哺乳動物の神経疾患の治療用薬剤の製造のための、請求項1〜12のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項14】
前記神経疾患が、下記からなる群から選択された神経障害からなる群から選択されたものである、請求項13記載の使用:アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、ハンチントン病、病原性精神病、統合失調症、摂食障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝の恒常性調節障害、自律機能障害、ホルモンバランス障害、調節障害、体液、高血圧症、発熱、睡眠調節不全、食欲不振、うつ病を含む不安関連疾患、てんかん性, 薬剤脱離症状, 及びアルコール依存症を含む発作、認知機能障害, 及び痴呆を含む神経変性障害。
【請求項15】
前記神経疾患が、アルツハイマー病である、請求項13、又は14記載の使用。
【請求項16】
哺乳動物の神経疾患の治療方法であって、それを必要とする哺乳動物に、効果的な、無毒な、及び医薬として許容し得る量の少なくとも1つのQC-インヒビターを、PEP-インヒビター, DP IV/DP IV-様酵素のインヒビター, NPY-レセプター リガンド, NPY アゴニスト, NPY アンタゴニスト ACE インヒビター, PIMT エンハンサー, ベータセクレターゼのインヒビター, ガンマセクレターゼのインヒビター, 及び中性エンドペプチダーゼのインヒビターからなる群から選択された少なくとも1つの薬剤と任意に組み合わせて投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
前記神経障害が、下記からなる群から選択されたものである、請求項16記載の方法:アルツハイマー病、ダウン症、パーキンソン病、ハンチントン病、病原性精神病、統合失調症、摂食障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝の恒常性調節障害、自律機能障害、ホルモンバランス障害、調節障害、体液、高血圧症、発熱、睡眠調節不全、食欲不振、うつ病を含む不安関連疾患、てんかん性, 薬剤脱離症状, 及びアルコール依存症を含む発作、認知機能障害, 及び痴呆を含む神経変性障害。
【請求項18】
前記DP IV/DP IV-様酵素のインヒビターが、下記からなる群から選択されたものである、請求項16、又は17記載の方法:L-トレオ-イソロイシルピロリジン, L-アロ-イソロイシルチアゾリジン, L-アロ-イソロイシルピロリジン, バリン ピロリジン, NVP-DPP728A (1-[[[2-[{5-シアノピリジン-2-イル}アミノ]エチル]アミノ]アセチル]-2-シアノ-(S)-ピロリジン) LAF-237 (1-[(3-ヒドロキシ-アダマント-1-イルアミノ)-アセチル]-ピロリジン-2(S)-カルボニトリル); TSL-225 (トリプトフィル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸), 又はFE-999011 ( [(2S)-1-([2’S]-2’-アミノ-3’,3’ジメチル-ブタノイル)-ピロリジン-2-カルボニトリル] ), MK-0431 ( (2R)-4-オキソ-4-[3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル]-1-(2,4,5-トリフルオロフェニル)ブタン-2-アミン ), 及びこれらの医薬として許容し得る塩。
【請求項19】
前記NPYアンタゴニストが、3a,4,5,9b-テトラヒドロ-1h-ベンゾ[e]インドール-2-イル アミン-誘導化合物, BIBP3226, 及び(R)-N2-(ジフェニルアセチル)-(R)-N-[1-(4-ヒドロキシ-フェニル)エチル]アルギニンアミドからなる群から選択されたものである、請求項16、又は17記載の方法。
【請求項20】
前記PEP-インヒビターが、下記からなる群から選択されたものである、請求項16、又は17記載の方法:プロリンの化学的誘導体、又は末端プロリンを含む小ペプチド、例えば、ベンジルオキシカルボニル-プロリル-プロリナール、N-末端置換L-プロリン、又はL-プロリルピロリジン、カルボキシ末端にプロリナールを含む置換N-ベンジルオキシカルボニル(Z)ジペプチド、置換チオプロリン、置換チアゾリジン、置換オキソピロリジン、フッ素化ケトン誘導体を含むカルボキシ末端改質プロリン、アシル-プロリン、又はアシルペプチド-プロリン(Z-Gly-Pro-CH2Cl)のクロロメチルケトン誘導体、及び2-アシルピロリジン誘導体。
【請求項21】
前記PEP-インヒビターが、Fmoc-Ala-Pyrr-CN, Z-321, ONO-1603, JTP-4819, 及びS-17092からなる群から選択されたものである、請求項16、又は17記載の方法。
【請求項22】
前記ACE-インヒビターが、(リバスティグミン(+)-(S)-N-エチル-3-[(1-ジメチルアミノ)エチル]-N-メチルフェニルカルバメート酒石酸水素である、請求項16、又は17記載の方法。
【請求項23】
前記PIMT エンハンサーが、下記一般式の10-アミノアリファチル-ジベンゾ[b, f] オキセピンである、請求項16、又は17記載の方法:
【化1】

(式中、アルクは、二価脂肪族ラジカルであり、Rは、非置換アミノ基、或いは一価脂肪族及び/又はアラリファティックラジカルにより一、若しくは二置換されたアミノ基、又は、二価脂肪族ラジカルにより二置換されたアミノ基であり、かつR1, R2, R3, 及びR4は、各々、他のものとは独立に、水素原子, 低アルキル, 低アルコキシ, ハロゲン, 又はトリフルオロメチルである。)。
【請求項24】
前記ガンマセクレターゼインヒビターが、下記式を有する(5S)-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-6-フェニル-(4R)ヒドロキシ-(2R)ベンジルヘキサノイル)-L-leu-L-phe-アミドである、請求項16、又は17記載の方法:
【化2】


【請求項25】
前記ベータセクレターゼインヒビターが、下記式を有するPNU-33312である、請求項16、又は17記載の方法:
【化3】



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2007−509898(P2007−509898A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537220(P2006−537220)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012301
【国際公開番号】WO2005/049027
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(505403119)プロビオドルグ エージー (39)
【Fターム(参考)】