説明

秘匿情報カード、カード読み取り装置、カード読み取り方法、カード読み取りシステム、プログラム及び記録媒体

【課題】1枚のカードの同一面に異なる複数の秘匿情報を配置して、その複数の秘匿情報を読み取ることが可能な秘匿情報カード、カード読み取り装置、カード読み取り方法、カード読み取りシステム、プログラム及び記録媒体を提供する。
【解決手段】秘匿情報カードは、二値化パターン生成手段により生成した基準となる透かしパターンと少なくとも1以上の他の透かしパターンとを赤外線吸収インキにて基材上に複数印刷した透かしパターンと、複数の透かしパターン上に赤外線透過インキによって形成された図柄層と、を有する。カード読み取り装置は、カードを回転させることが可能なカードガイドと、赤外光源と、帯域通過フィルタと、撮像手段と、透かしパターン画像取得手段と、ブロック化手段と、データ変換振幅取得手段と、総和振幅取得手段と、拡大縮小率検出手段と、回転角検出手段と、データ検出手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非可視に表示する情報を複数配置した秘匿性が高い秘匿情報カード、カード読み取り装置、カード読み取り方法、カード読み取りシステム、プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
任意の情報を視認不可能に表示(秘匿情報)して、特定の読み取り装置により秘匿情報を読み取れるようにした秘匿情報カードが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、「電子透かし挿入方法及びその装置並びに電子透かし検出方法及びその装置」によって開示される方法で生成した電子透かしパターンを、フルカラー印刷プロセスにおいて特定の色の画像中に挿入して印刷することにより、任意の情報を視認不可能としたカードがある。
【0004】
また、本出願人による特許文献2においては、赤外線吸収インキにて基材上に印刷した透かしパターンと、透かしパターン上に赤外線透過インキによって形成したインキ層により、任意の情報を視認不可能としたカードがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−15396号公報
【特許文献2】特開2008−130042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている方法は、図柄の一部である単色画像に透かしパターンを挿入しているため、情報そのものを読み取ることができなくても、その部分に何らかの情報が埋め込まれている場所が特定されてしまうと、秘匿情報を容易に解析されてしまう恐れがあり、秘匿情報の機密性が高くないという問題があった。
【0007】
また特許文献2に記載されている方法は、視認不可能に表示する情報が赤外線吸収インキを用いて透かしパターンとして表示されたカードで秘匿情報の機密性は高いが、表示する秘匿情報が1つであり複数の異なる情報を配置することができないという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、1枚のカードの同一面に異なる複数の秘匿情報を配置した秘匿情報カード、その複数の秘匿情報を読み取ることが可能なカード読み取り装置、カード読み取り方法、カード読み取りシステム、プログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る秘匿情報カードは、周波数領域において、画像の拡大縮小率を検出するための非ゼロの周波数成分を生成する拡大縮小率検出パターン生成手段と、周波数領域において、画像の回転角を検出するための非ゼロの周波数成分を生成する回転角検出パターン生成手段と、周波数領域において、第1の所定数の候補位置のうち挿入すべきデータにより相互に組み合わされる位置であって第1の所定数よりも少ない第2の所定数のものに非ゼロの周波数成分を生成するデータパターン生成手段と、生成された3つの非ゼロの周波数成分を合わせて周波数領域から空間領域に変換したパターンを生成する変換パターン生成手段と、変換パターンをゼロを閾値として所定の値に二値化したパターンを得る二値化パターン生成手段と、二値化パターン生成手段により生成した基準となる透かしパターンと少なくとも1以上の他の透かしパターンとを赤外線吸収インキにて基材上に複数印刷した透かしパターンと、複数の透かしパターン上に赤外線透過インキによって形成された図柄層と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るカード読み取り装置は、筺体上面に設けられてカードを置いて該カードを回転させることが可能なカードガイドと、筐体内に配置されて赤外光を発する少なくとも1つの赤外光源と、赤外光の波長域の光のみを筐体に入出射させる帯域通過フィルタと、赤外光源から発せられ、帯域通過フィルタを透過して筐体外のカードガイドに置かれたカード上で反射されたのちに帯域通過フィルタを再び透過した赤外光が入射する撮像手段と、撮像手段に入射した赤外光が表示する画像から基準となる透かしパターン画像と少なくとも1以上の他の透かしパターン画像とを取得する透かしパターン画像取得手段と、取得した透かしパターン画像を複数のブロックに分割するブロック化手段と、各ブロックのデータを空間領域から周波数領域に変換することにより、又はその変換をしてから、各ブロックの各周波数成分の振幅を取得するデータ変換振幅取得手段と、各周波数成分の振幅をブロック間で加算することにより、各周波数ごとの総和振幅を取得する総和振幅取得手段と、周波数領域において、総和振幅のうち画像の拡大縮小率を検出するための非ゼロ周波数成分に対応したもの検出することにより、画像の拡大縮小率を検出する拡大縮小率検出手段と、周波数領域において、総和振幅のうち画像の回転角を検出するための非ゼロ周波数成分に対応したものを検出することにより、画像の回転角を検出する回転角検出手段と、拡大縮小率及び回転角により周波数領域における位置が補正された総和振幅であって第1の所定数の候補位置にあるもののうち、これらの間で相対的に大きな値を示す前記第1の所定数よりも少ない第2の所定数の総和振幅の位置の組合せを基に挿入されているデータを検出するデータ検出手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るカード読み取り方法は、筺体上面に設けられてカードを置いて該カードを回転させることが可能なカードガイドと、筐体内に配置されて赤外光を発する少なくとも1つの赤外光源と、赤外光の波長域の光のみを筐体に入出射させる帯域通過フィルタと、を有した秘匿情報カード読み取り装置のカード読み取り方法であって、赤外光源から発せられ、帯域通過フィルタを透過して筐体外のカードガイドに置かれたカード上で反射されたのちに帯域通過フィルタを再び透過した赤外光が入射する撮像工程と、撮像工程に入射した赤外光が表示する画像から基準となる透かしパターン画像と少なくとも1以上の他の透かしパターン画像とを取得する透かしパターン画像取得工程と、取得した透かしパターン画像を複数のブロックに分割するブロック化工程と、各ブロックのデータを空間領域から周波数領域に変換することにより、又はその変換をしてから、各ブロックの各周波数成分の振幅を取得するデータ変換振幅取得工程と、各周波数成分の振幅をブロック間で加算することにより、各周波数ごとの総和振幅を取得する総和振幅取得工程と、周波数領域において、総和振幅のうち画像の拡大縮小率を検出するための非ゼロ周波数成分に対応したもの検出することにより、画像の拡大縮小率を検出する拡大縮小率検出工程と、周波数領域において、総和振幅のうち画像の回転角を検出するための非ゼロ周波数成分に対応したものを検出することにより、画像の回転角を検出する回転角検出工程と、拡大縮小率及び回転角により周波数領域における位置が補正された総和振幅であって第1の所定数の候補位置にあるもののうち、これらの間で相対的に大きな値を示す前記第1の所定数よりも少ない第2の所定数の総和振幅の位置の組合せを基に挿入されているデータを検出するデータ検出工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るカード読み取りシステムは、上記に記載の秘匿情報カードとカード読取装置とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るプログラムは、上記に記載のカード読み取り方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る記録媒体は、上記に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、1枚のカードの同一面に異なる複数の秘匿情報を配置した秘匿情報カード、その複数の秘匿情報を読み取ることが可能なカード読み取り装置、カード読み取り方法及びカード読み取りシステムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るカード読み取りシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る秘匿情報カードの構成を示す図である。
【図3】透かしパターン挿入装置の構成を示す図である。
【図4】拡大縮小率パターンの一例を示す図である。
【図5】回転角検出用パターンの一例を示す図である。
【図6】データパターンの一例を示す図である。
【図7】データパターンの一例を示す図である。
【図8】データパターンの一例を示す図である。
【図9】透かしパターン挿入装置の基本動作の流れを示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る複数の透かしパターンを挿入する動作の流れを示す図である。
【図11】1枚の秘匿情報カード上に複数の透かしパターンを形成したイメージを示す図である。
【図12】基準となる透かしパターン(主コード)と他の透かしパターン(他コード)の位置関係の一例を示す図である。
【図13】カード読み取り装置の構成を示す図である。
【図14】透かしパターンとIRフィルタレスイメージセンサに入射する画像光との関係を示す図である。
【図15】IRフィルタレスイメージセンサにおいて検出される画像光の一例を示す図である。
【図16】透かしパターン検出装置の構成を示す図である。
【図17】透かしパターン検出装置のデータ検出部の動作を説明するための図である。
【図18】透かしパターン検出装置の基本動作の流れを示す図である。
【図19】本発明の実施形態に係る複数の透かしパターンを検出する動作の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、カード読み取りシステムの構成を示す図である。本実施形態に係るカード読み取りシステムは、1枚の秘匿情報カード10に隠蔽された複数の秘匿情報をカード読み取り装置20で読み取るシステムである。
【0019】
秘匿情報カード10は、非可視に表示する複数の情報が赤外線吸収インキを用いて透かしパターンとして表示されたカードである。カード読み取り装置20は、秘匿情報カード10に非可視に表示された複数の秘匿情報を光学的に読み取るための読取装置である。
【0020】
図2は、秘匿情報カード10の層構成を示す図である。このカードは、基材1の上に赤外線吸収インキ7によって透かしパターンが形成され、その上にシアンインキ層2、イエローインキ層3、マゼンタインキ層4及びブラックインキ層5が形成されている。
【0021】
シアンインキ層2、イエローインキ層3、マゼンタインキ層4及びブラックインキ層5は、炭素を含有しないノンカーボンインキ(赤外線透過インキ)を用いて形成され、任意の図柄を表示する。これらの各インキ(赤外線透過インキ)としては公知のものを適用可能である。
【0022】
赤外線吸収インキ7は、赤外線吸収剤を0.5〜10重量%含有したインキであり、公知のものを適用可能である。なお、基材1と同系色であることが好ましい。
【0023】
赤外線吸収インキ7によって形成された透かしパターン(IRCコードと呼ぶ)の上には、シアン、イエロー、マゼンタ及びブラックの各色のインキ層が形成される。透かしパターンは、図柄の表示を目的としていない(元々視認性の低い)赤外線吸収インキ7で形成されているため、透かしパターンの上に図柄が重ねて印刷されていない状態でも肉眼による視認は困難である。その上、透かしパターンの上に各色のインキ層2〜5を形成すれば、透かしパターンはインキ層2〜5によって隠蔽され、肉眼での視認が一層困難となるだけでなく、拡大表示したとしても、透かしパターンの存在は確認しにくくなる。なお、インキ層2〜5は、例えば1つの透かしパターンの上に図柄や絵柄を形成しても良いし、複数の透かしパターンの上のカード全面に図柄や絵柄などを形成しても良い。
【0024】
赤外線吸収インキ7を用いて挿入する透かしパターンの生成方法の一例について説明する。
【0025】
図3は、透かしパターン画像を生成するための透かしパターン挿入装置の構成を示す図である。透かしパターン挿入装置は、拡大縮小検出用パターン生成部101、回転角検出用パターン生成部102、データ保持部103、データパターン生成部104、合成部105、逆離散フーリエ変換部106、及び二値化部107を備える。
【0026】
拡大縮小率検出用パターン生成部101は、透かしパターン検出装置で入力した画像の拡大縮小率を検出するための周波数領域における拡大縮小率用パターンを生成する。
【0027】
図4は、生成した拡大縮小率パターンの一例を示す図である。図4を参照すると、拡大縮小率検出用パターンは、周波数領域において最外周の円上に均等に分布する24個の点のうちの20個の点より成る。なお、24個の点のうちの全ての点より成る拡大縮小率検出用パターンを生成しても良い。
【0028】
拡大縮小率検出用パターンの各点を、実数部の振幅が非ゼロであり、虚数部の振幅がゼロの非ゼロ周波数成分とし、拡大縮小率検出用パターンの非ゼロ周波数成分を周波数領域において点対称分布とすることにより、拡大縮小率検出用パターンを逆離散フーリエ変換したときに虚数部が発生しないようにしている。
【0029】
この条件は、後述する回転角検出用パターン及びデータパターンにおいても満たされている。
【0030】
また、拡大縮小率検出用パターンを成す非ゼロ周波数成分の周波数領域における分布は、点対称であるのみならず、左右対称且つ上下対称である。
【0031】
また、この最外周の円の半径は、設定した周波数領域の最大周波数を高周波数としたときの中間周波数に対応する。これは、高周波数に拡大縮小率検出用パターンを設定すると検出精度が良くなる一方で、IRフィルタレスイメージセンサ23で画像が小さく撮影されたときにも拡大縮小率検出用パターンの周波数がナイキスト周波数を越えないようにマージンを設けておかなくてはならないからである。
【0032】
例えば、片側周波数の最大周波数が1024[サイクル/単位長さ]であれば、この最外周の円の半径を64〜512[サイクル/単位長さ]のうちのいずれかの周波数に相当する値にする。ここで、単位長さとは、逆離散フーリエ変換のブロックの一辺の長さである。
【0033】
回転角検出用パターン生成部102は、透かしパターン検出装置で、入力した画像の回転角を検出するための周波数領域における回転角検出用パターンを生成する。
【0034】
図5は、回転角検出用パターンの一例を示す図である。図5を参照すると、回転角検出用パターンは、周波数領域において、最外周の円の一つ内側の円上に均等に分布する24個の点のうち10個の点より成る。なお、回転角検出用パターンは、10以外の数の点より構成されていても良い。
【0035】
回転角検出用パターンを成す非ゼロ周波数成分の周波数領域における分布は左右非対称かつ上下非対称とする。すなわち、回転角検出用パターンを成す非ゼロ周波数成分の周波数領域における分布は、回転が検出できるように、偏りをもったものである。
【0036】
なお、回転角検出用パターンを設定する円周を拡大縮小率検出用パターンを設定する円周の内側のものとしたが、外側のものとしてもよい。
【0037】
データ保持部103は、透かしパターンの形態で埋め込みたいデータを保持する。
【0038】
データパターン生成部104は、データ保持部103が保持するデータの値に応じたデータパターンを生成する。
【0039】
本来のデータパターンは、図6、7及び8に示すパターンを相互に加算したものである。ここでは説明のために図6、7及び8に分割して記載している。
【0040】
図6にデータパターンのうち最外周の円周上に分布する部分、図7にデータパターンのうち中央の円周上に分布する部分、図8にデータパターンのうち最内周の円周上に分布する部分を示す。
【0041】
データパターンのうち最外周の部分は、周波数領域において、当該円周上に均等に分布する20個の点のうち10個の点より成る。これらの10個の点は等振幅の非ゼロの周波数成分である。
【0042】
データパターンの三つの部分(最外周の部分、中央の円周の部分及び最内周の部分)のうちの最外周の部分を成す非ゼロ周波数成分の数10は不変であり、挿入すべきデータの値に応じて10個の非ゼロ周波数成分の分布を変える。10個の非ゼロ周波数成分は点対称に分布しているので、実際には、データの値に応じて、10個の候補位置のうち5個の位置に非ゼロ周波数成分を設定する自由度をもって10個の点の位置が決定されることとなる。
【0043】
従って、最外周の部分で105=252種類のデータを表すことが可能となる。10個の候補位置のうち他の数ではなく5個の位置に非ゼロ周波数成分を設定することとしたのは、組み合わせの数が最大となるからである。
【0044】
データパターンのうち中央の円周の部分は、周波数領域において、当該円周上に均等に分布する12個の点のうち6個の点より成る。これらの6個の点は等振幅の非ゼロの周波数成分である。データパターンの三つの部分(最外周の部分、中央の円周の部分及び最内周の部分)のうちの中央の円周の部分を成す非ゼロ周波数成分の数6は不変であり、データの値に応じて6個の非ゼロ周波数成分の分布を変える。6個の非ゼロ周波数成分は点対称に分布しているので、実際には、挿入すべきデータの値に応じて、6個の候補位置のうち3個の位置に非ゼロ周波数成分を設定する自由度をもって6個の点の位置が決定されることとなる。
【0045】
従って、中央の円周の部分で63=20種類のデータを表すことが可能となる。6個の候補位置のうち他の数ではなく3個の位置に非ゼロ周波数成分を設定することとしたのは、組み合わせの数が最大となるからである。
【0046】
データパターンのうち最内周の部分は、周波数領域において、当該円周上に均等に分布する4個の点のうち2個の点より成る。これらの2個の点は等振幅の非ゼロの周波数成分である。データパターンの三つの部分(最外周の部分、中央の円周の部分及び最内周の部分)のうちの最内周の部分を成す非ゼロ周波数成分の数2は不変であり、挿入すべきデータの値に応じて2個の非ゼロ周波数成分の分布を変える。2個の非ゼロ周波数成分は点対称に分布しているので、実際には、データの値に応じて、2個の候補位置のうち1個の位置に非ゼロ周波数成分を設定する自由度をもって2個の点の位置が決定されることとなる。
【0047】
従って、最内周の円周の部分で21=2種類のデータを表すことが可能となる。
【0048】
最外周の円の部分で252種類、中央の部分の円で20種類、最内周の円の部分で2種類のデータを表せるので、これらの組み合わせにより、10080通りのデータを表せることが可能となる。
【0049】
なお、最外周の円の部分の10個の候補位置、中央の円の部分の6個の候補位置及び最内周の円の部分の2個の候補位置の合わせた18個の候補位置のうちのデータの値に応じた9個の位置に非ゼロ周波数成分を設定するようにしても良く、この場合には、48620通りのデータを表すことが可能となる。
【0050】
また、データの種類は減るが、三つの円のうちの二つ又は一つのみにデータパターンを乗せるようにしてもよい。逆に、データの種類を増やすために、三つを超える数の円にデータパターンを乗せるようにしてもよい。
【0051】
また、データパターンを設定する全ての円を拡大縮小率検出用パターンを設定する円及び回転角検出用パターンを設定する円の内側のものとしたが、データパターンを設定する一部又は全ての円を拡大縮小率検出用パターンを設定する円及び回転角検出用パターンを設定する円の外側のもの又は拡大縮小率検出用パターンを設定する円及び回転角検出用パターンを設定する円の間のものとしてもよい。
【0052】
上記の拡大縮小率検出用パターンが乗る円、回転角検出用パターンが乗る円及びデータパターンが乗る三つの円の半径は、相互に所定の比例関係にある。
【0053】
合成部105は、拡大縮小率検出用パターン生成部101、回転角検出用パターン生成部102及びデータパターン生成部104が生成した非ゼロ周波数成分を合成する。なお、ここでいう合成とは、加算のことである。
【0054】
逆離散フーリエ変換部106は、合成部105が合成した非ゼロ周波数成分を逆離散フーリエ変換して、空間領域におけるパターンを生成する。逆離散フーリエ変換部106が出力するパターンの大きさは、逆離散フーリエ変換で扱うサンプル数によって決定され、例えば、256×256画素、512×512画素、1024×1024画素等の大きさである。なお、空間領域におけるパターンは、データパターン生成部104の出力の直流成分の値がゼロであるので、一般にマイナスの値の画素も有するが、図面の印刷の都合上、このパターンにマイナスの値の画素が無くなるようにする。
【0055】
二値化部107は、逆離散フーリエ変換部106が生成したパターンをゼロをしきい値として所定の値a又は−aに二値化する。二値化されたパターンは−aの画素も有するが、図面の印刷の都合上、マイナスの値の画素が無くなるようにして二値化パターンを得る。
【0056】
次に、図9を参照して、本実施形態による透かしパターン挿入装置の基本動作を説明する。
【0057】
まず、拡大縮小率検出用パターン生成部101は、図4に示すような拡大縮小率検出用パターンを生成する(ステップS151)。次に、回転角検出用パターン生成部102は、図5に示すような回転角検出用パターンを生成する(ステップS152)。
【0058】
次に、データパターン生成部104は、データ保持部103が保持するデータの値により定まるデータパターン(図6、図7及び図8の非ゼロ係数を合わせて得たもの)を生成する(ステップS153)。
【0059】
次に、パターン合成部105は、拡大縮小率検出用パターン生成部101、回転角検出用パターン生成部102及びデータパターン生成部104が生成したパターンを合成する(ステップS154)。
【0060】
次に、逆離散フーリエ変換部106は、合成部105が合成して得たパターンを逆離散フーリエ変換して、空間領域におけるパターンを生成する(ステップS155)。
【0061】
次に、二値化部107は、逆離散フーリエ変換部106が生成した空間領域におけるパターンを二値化する(ステップS156)。
【0062】
以上のようにして得られた二値化画像を赤外線吸収インキ7を用いて印刷することにより、基材1上に透かしパターンを形成する。
【0063】
図10は、本実施形態に係る複数の透かしパターン挿入の動作を説明する。
【0064】
秘匿情報カードの中央に配置される透かしパターンを主コードと記述し、その周辺に配置される透かしパターンを他コードと記述する。
【0065】
まず、主コードに関して、拡大縮小率検出用パターン生成部101は、図4に示すような主コード拡大縮小率検出用パターンを生成する(ステップS201)。次に、回転角検出用パターン生成部102は、図5に示すような主コード回転角検出用パターンを生成する(ステップS202)。
【0066】
次に、主コードに関して、データパターン生成部104は、データ保持部103が保持するデータの値により定まる主コードデータパターン(図6、図7及び図8の非ゼロ係数を合わせて得たもの)を生成する(ステップS203)。
【0067】
次に、主コードに関して、パターン合成部105は、拡大縮小率検出用パターン生成部101、回転角検出用パターン生成部102及びデータパターン生成部104が生成した主コードパターンを合成する(ステップS204)。
【0068】
次に、主コードに関して、逆離散フーリエ変換部106は、合成部105が合成して得た主コードパターンを逆離散フーリエ変換して、空間領域におけるパターンを生成する(ステップS205)。
【0069】
次に、主コードに関して、二値化部107は、逆離散フーリエ変換部106が生成した空間領域における主コードパターンを二値化する(ステップS206)。
【0070】
そして、主コード二値化データを記憶する(ステップS207)。
【0071】
続いて、他コードに関して、拡大縮小率検出用パターン生成部101は、図4に示すような他コード拡大縮小率検出用パターンを生成する(ステップS208)。次に、回転角検出用パターン生成部102は、図5に示すような他コード回転角検出用パターンを生成する(ステップS209)。
【0072】
次に、他コードに関して、データパターン生成部104は、データ保持部103が保持するデータの値により定まる他コードデータパターン(図6、図7及び図8の非ゼロ係数を合わせて得たもの)を生成する(ステップS210)。
【0073】
次に、他コードに関して、パターン合成部105は、拡大縮小率検出用パターン生成部101、回転角検出用パターン生成部102及びデータパターン生成部104が生成した他コードパターンを合成する(ステップS211)。
【0074】
次に、他コードに関して、逆離散フーリエ変換部106は、合成部105が合成して得た他コードパターンを逆離散フーリエ変換して、空間領域におけるパターンを生成する(ステップS212)。
【0075】
次に、他コードに関して、二値化部107は、逆離散フーリエ変換部106が生成した空間領域における他コードパターンを二値化する(ステップS213)。
【0076】
そして、他コード二値化データを記憶する(ステップS214)。
【0077】
続いて、次の他コードがあるかを判断する(ステップS215)。次の他コードがある場合(ステップS215、YES)は、ステップS208に戻り、次の他コードパターンを生成する。次の他コードが無い場合(ステップS215、NO)は、生成した主コードパターンと他コードパターンを、予め設定された秘匿情報カードの位置に配置する(ステップS216)。そして複数の透かしパターンを挿入する(ステップS217)。
【0078】
以上のようにして得られた二値化画像を赤外線吸収インキ7を用いて印刷することにより、基材1上に複数の透かしパターンを形成する。
【0079】
図11に、本実施形態に係る1枚の秘匿情報カード10上に複数の透かしパターンを形成したイメージを示す。主コード30はカード10の中央に配置される。他コード31〜34は主コード30の周辺に配置される。ここでは透かしパターンを四角い形で示したが、丸や三角、多角形、その他色々な形で形成することが可能である。
【0080】
また配置した透かしパターンの位置を分かり易いように白黒ハンチングで示したが、実際には図柄の表示を目的としていない(元々視認性の低い)赤外線吸収インキ7で形成されているため、透かしパターンの上に図柄が重ねて印刷されていない状態でも肉眼による視認は困難である。
【0081】
通常は、透かしパターンの上に各色のインキ層2〜5を形成するので、透かしパターンはインキ層2〜5によって隠蔽され、肉眼での視認が一層困難となるだけでなく、拡大表示したとしても、透かしパターンの存在は確認しにくくなる。透かしパターンの上に形成されるインキ層とは、図柄や絵柄のことであるため、透かしパターンの個数や形成されている位置はわからない。
【0082】
また、図12に基準となる透かしパターン30(主コードと記述する)と他の透かしパターン31〜34(他コードと記述する)の位置関係の一例を示す。ここでは、主コードと他コードを併せて透かしパターンを5つ配置する例を示したが、特に5つに限ることではない。
【0083】
図13は、カード読み取り装置20の構成を示す図である。カード読み取り装置20は、赤外光源21、バンドパスフィルタ(BPF)22、IRフィルタレスイメージセンサ23、及びカードガイド24を有する。
【0084】
赤外光源21は、波長780〜820nmの光(いわゆる赤外光)を発する光源である。本実施形態においては赤外光源を2つ配置した例を示すが、1つでも良いし、2つ以上でも良いし、特に2つに限ることではない。また赤外光源としては公知のものが適用可能である。
【0085】
BPF22は、赤外光のみを透過するフィルタである。本実施形態においてはカードガイド24の直下に配置しているが、例えばIRフィルタレスイメージセンサの直前などに配置しても良い。つまり赤外光源21から発せられた赤外光が、秘匿情報カード表面の透かしパターンで反射して、IRフィルタレスイメージセンサに入射する間の光路に配置されていれば良いことになる。
【0086】
IRフィルタレスイメージセンサ23は、赤外光をカットするためのIRフィルタを備えていないイメージセンサである。
【0087】
本実施形態においてはIRフィルタレスイメージセンサを例に説明するが、赤外光を撮像できるイメージセンサ(例えば、C−MOSやCCDなど)であれば公知のものが適用可能である。
【0088】
カードガイド24は、秘匿情報カードを容易に回転させることができるためのガイドである。本実施形態においては、盤面の中央に円形に凹んだ形状を有しているが、秘匿情報カードを容易に回転させることができるガイド形状であれば構わない。
【0089】
次に、図13を参照して本実施形態に係るカード読み取りシステムの動作について説明する。
【0090】
秘匿情報カード10は、カード読み取り装置20の所定の位置(カードガイド24)にセットすると、透かしパターンが挿入された部分(以下、透かしパターン挿入領域という)がBPF22に当接するようになっている。赤外光源21から発せられた赤外光は、BPF22に到達する。BPF22においては、赤外光以外の波長成分がカットされるため、透かしパターン挿入領域には、赤外光のみが照射される。
【0091】
透かしパターン挿入領域に到達した赤外光は、各色のインキ層2〜5を透過する。インキ層2〜5を透過した赤外光は、透かしパターンに応じて一部が赤外線吸収インキ7によって吸収され、残りの一部は基材1によって反射される。
【0092】
これにより、赤外光は赤外線吸収インキ7が存在する部分は暗く、それ以外の部分が明るい画像光となる。
【0093】
基材1によって反射された赤外光は、再び各色のインキ層2〜5を透過し、BPF22に入射する。BPF22に再入射した赤外光は、赤外波長域以外の成分が除去される。
【0094】
BPF22を透過した赤外光はIRフィルタレスイメージセンサ23に入射する。IRフィルタレスイメージセンサ23に入射する赤外光は、透かしパターンに応じた画像光である。IRフィルタレスイメージセンサ23の各画素において、画像光は電気信号に変換される。
【0095】
IRフィルタレスイメージセンサ23の各画素において光電変換された電気信号は、図1では不図示の透かしパターン検出装置へ入力され、所定の処理が行われることによって透かしパターンとして挿入されていた情報が復元される。
【0096】
なお、透かしパターン検出装置は、カード読み取り装置20に内蔵された構成であっても良い。
【0097】
図14に、IRフィルタレスイメージセンサ23に入射する画像光の一例を示す。ここでは、1つの秘匿情報の透かしパターンのみを示している。透かしパターン挿入領域内で赤外線吸収インキ7が存在する部分に対応する位置は暗く、それ以外の部分が明るい画像である。
【0098】
図15に、本実施形態に係る1枚の秘匿情報カード10上に複数の透かしパターンを形成した秘匿情報カードにおけるIRフィルタレスイメージセンサ23に入射する画像光の一例を示す。
【0099】
図16は、本実施形態に係る透かしパターン検出装置の構成を示す図である。本実施形態に係る透かしパターン検出装置は、ブロック化部201、離散フーリエ変換部202、振幅計算部203、振幅積算部204、拡大縮小率検出部205、回転角検出部206及びデータ検出部207を備える。
【0100】
ブロック化部201は、IRフィルタレスCCD23が入力した透かしパターン画像をブロック化する。ブロックは、透かしパターン挿入装置の逆離散フーリエ変換部106が変換した画素の数に等しい数の画素よりなるブロックであり、例えば、256×256画素、512×512画素又は1024×1024画素等のブロックである。
【0101】
なお、ブロック化部201が作成するブロックを構成する画素の数は、透かしパターン挿入装置の逆離散フーリエ変換部106が変換した画素の数に等しいが、ブロック化部201が入力する画像はIRフィルタレスイメージセンサ23が入力した画像であるので、ブロック化部201が作成するブロックは、一般に、透かしパターン挿入装置の逆離散フーリエ変換部106による逆離散フーリエ変換のブロックを拡大又は縮小したものである。
【0102】
離散フーリエ変換部202は、ブロック化部201が出力する全てのブロックを離散フーリエ変換して、ブロック化部201が出力する全てのブロックの全ての周波数成分を出力する。
【0103】
振幅計算部203は、離散フーリエ変換部202が出力する一般に複素数である周波数成分の振幅(絶対値)を求め、ブロック化部201が出力する全てのブロックの全ての周波数成分の振幅を出力する。
【0104】
振幅積算部204は、振幅計算部203が出力する周波数成分の振幅を基に、各周波数成分の振幅を全てのブロック間で加算することにより、各周波数ごとの総和振幅を得る。
【0105】
拡大縮小率検出部205は、振幅積算部204が出力する各周波数ごとの総和振幅を基にIRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像の拡大縮小率を検出する。拡大縮小率の検出は、拡大縮小率検出用パターンの半径を検出することにより行う。
【0106】
拡大縮小率検出用パターンは、所定の半径の円周上の所定数の非ゼロ周波数成分より構成されるので、いずれかの半径の円周上にその所定数又はその所定数から一定範囲にある数の特に振幅が大きい総和振幅が検出されたならば、その半径と透かしパターン挿入装置の拡大縮小率検出用パターン生成部101が生成した拡大縮小率検出用パターンの半径の比をIRフィルタレスイメージセンサ23が撮像した透かしパターン画像の拡大縮小率とすることができる。
【0107】
振幅積算部204は、振幅積算部204が出力する各周波数ごとの総和振幅及び拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率を基にIRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像の回転角を検出する。回転角の検出は、回転角検出用パターンの角度を検出することにより行う。
【0108】
まず、振幅積算部204が出力する各周波数ごとの総和振幅に対して、拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率により倍率の正規化を行い、回転角検出用パターンに対応した総和振幅が所定の半径に現れるようにする。
【0109】
そして、所定の半径に現れた総和振幅のうち特に振幅が大きい総和振幅が構成するパターンを検出し、そのパターンの角度と透かしパターン挿入装置の回転角検出用パターン生成部102が生成した回転角検出用パターンの角度の差を検出することにより、IRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像の回転角を検出する。
【0110】
なお、拡大縮小率検出用パターンの非ゼロ周波数成分の分布を非対称とすることにより、拡大縮小率検出用パターンが回転角検出用パターンを兼用するようにしてもよい。この場合には、拡大縮小率の検出は、拡大縮小率検出兼回転角検出用パターンの半径を検出することにより行う。
【0111】
拡大縮小率検出兼回転角検出用パターンは、所定の半径の円周上の所定数の非ゼロ周波数成分より構成されるので、いずれかの半径の円周上にその所定数又はその所定数から一定範囲にある数の特に振幅が大きい総和振幅が検出されたならば、その半径と透かしパターン挿入装置の拡大縮小率検出用パターン生成部101が生成した拡大縮小率検出兼回転角検出用パターンの半径の比をIRフィルタレスイメージセンサ23が撮像した透かしパターン画像の拡大縮小率とする。
【0112】
回転角の検出は、拡大縮小率検出兼回転角検出用パターンの角度を検出することにより行う。まず、振幅積算部204が出力する各周波数ごとの総和振幅に対して、拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率により倍率の正規化を行い、拡大縮小率検出兼回転角検出用パターンに対応した総和振幅が所定の半径に現れるようにする。
【0113】
そして、所定の半径に現れた総和振幅のうち特に振幅が大きい総和振幅が構成するパターンを検出し、そのパターンの角度と拡大縮小率検出兼回転角検出用パターンの角度の差を検出することにより、IRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像の回転角を検出する。
【0114】
データ検出部207は、振幅積算部204が出力する各周波数ごとの総和振幅、拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率及び回転角検出部206が出力する回転角を基にIRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像から透かしパターンの形態で埋め込まれているデータを検出する。
【0115】
データの検出は、データパターンを検出することにより行う。まず、振幅積算部204が出力する各周波数ごとの総和振幅に対して、拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率により倍率の正規化を行い、回転角検出部206が出力する回転角により回転の補正を行い、データパターンに対応した総和振幅が所定の半径の候補位置に現れるようにする。
【0116】
そして、拡大縮小率及び回転角の補正後の総和振幅を候補位置のみの周波数成分を通すフィルタに通す。そして、三つの半径のうち各半径ごとにフィルタ出力の全ての総和振幅を、高い値から低い値に変化する共通のしきい値と比較し、値がしきい値を上回る総和振幅が所定数(データパターンの三つの部分のうち最外周の部分であれば5、中央の円周上の部分であれば3、最内周の部分であれば1)に達したところで、しきい値の変化を中止する(図17参照)。
【0117】
このときに、しきい値を上回っている総和振幅が成すパターンより透かしパターンの形態で埋め込まれているデータの値を検出する。
【0118】
なお、パターンは周波数領域において、実数部のみしか有さず、点対称に分布するので、拡大縮小率検出部205、回転角検出部206及びデータ検出部207は、周波数領域の第1象限から第4象限の周波数成分のうちの二つの象限のみの周波数成分を用いて検出を行っても良い。
【0119】
次に、図18を参照して、本実施形態に係る透かしパターン検出装置の基本動作を説明する。
【0120】
まず、ブロック化部201は、IRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像をブロック化する(ステップS251)。次に、離散フーリエ変換部202は、ブロック化部201が生成した各ブロックを離散フーリエ変換する(ステップS252)。
【0121】
次に、振幅計算部203は、離散フーリエ変換部202が出力する複素数の各周波数成分の振幅を求める(ステップS253)。次に、振幅積算部204は、振幅計算部203が出力する振幅をブロック間で周波数ごとに積算して、周波数ごとの総和振幅を求める(ステップ254)。
【0122】
次に、拡大縮小率検出部205は、振幅積算部204が出力する周波数ごとの総和振幅を基に、IRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像の拡大縮小率を求める(ステップS255)。
【0123】
次に、回転角検出部206は、振幅積算部204が出力する周波数ごとの総和振幅及び拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率を基に、IRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像の回転角を求める(ステップS256)。
【0124】
最後に、データ検出部207は、振幅積算部204が出力する周波数ごとの総和振幅、拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率及び回転角検出部206が出力する回転角を基に透かしパターンの形態で埋め込まれているデータを検出する(ステップS257)。
【0125】
図19は、本実施形態に係る複数の透かしパターンを検出する動作を説明する。
【0126】
秘匿情報カードの中央に配置される透かしパターンを主コードと記述し、その周辺に配置される透かしパターンを他コードと記述する。
【0127】
最初に、IRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した複数の透かしパターン画像の全画像の取り込みをする(ステップS301)。
【0128】
次に、主コード画像の切り出しをする(ステップS302)。続いて、主コードについて、ブロック化部201は、IRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像をブロック化する(ステップS303)。
【0129】
次に、主コードについて、離散フーリエ変換部202は、ブロック化部201が生成した各ブロックを離散フーリエ変換する(ステップS304)。
【0130】
次に、主コードについて、振幅計算部203は、離散フーリエ変換部202が出力する複素数の各周波数成分の振幅を求める(ステップS305)。次に、振幅積算部204は、振幅計算部203が出力する振幅をブロック間で周波数ごとに積算して、周波数ごとの総和振幅を求める(ステップ306)。
【0131】
次に、主コードについて、拡大縮小率検出部205は、振幅積算部204が出力する周波数ごとの総和振幅を基に、IRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像の拡大縮小率を求める(ステップS307)。
【0132】
次に、主コードについて、回転角検出部206は、振幅積算部204が出力する周波数ごとの総和振幅及び拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率を基に、IRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像の主コード回転角を求める(ステップS308)。
【0133】
そして、主コードについて、データ検出部207は、振幅積算部204が出力する周波数ごとの総和振幅、拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率及び回転角検出部206が出力する回転角を基に透かしパターンの形態で埋め込まれている主コードデータを検出・解析する(ステップS309)。そして得られたデータを転送・記録する(ステップS310)。
【0134】
次に、得られた主コードの回転角から他コードの情報座標系をマッピングする(ステップS311)。
【0135】
次に、ステップS301で取り込んだ全画像から、全ての他コード画像の切り出しをする(ステップS312)。続いて、他コードについて、ブロック化部201は、IRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像をブロック化する(ステップS313)。
【0136】
次に、他コードについて、離散フーリエ変換部202は、ブロック化部201が生成した各ブロックを離散フーリエ変換する(ステップS314)。
【0137】
次に、他コードについて、振幅計算部203は、離散フーリエ変換部202が出力する複素数の各周波数成分の振幅を求める(ステップS315)。次に、振幅積算部204は、振幅計算部203が出力する振幅をブロック間で周波数ごとに積算して、周波数ごとの総和振幅を求める(ステップ316)。
【0138】
次に、他コードについて、拡大縮小率検出部205は、振幅積算部204が出力する周波数ごとの総和振幅を基に、IRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像の拡大縮小率を求める(ステップS317)。
【0139】
次に、他コードについて、回転角検出部206は、振幅積算部204が出力する周波数ごとの総和振幅及び拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率を基に、IRフィルタレスイメージセンサ23が撮影した透かしパターン画像の他コード回転角を求める(ステップS318)。
【0140】
そして、他コードについて、データ検出部207は、振幅積算部204が出力する周波数ごとの総和振幅、拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率及び回転角検出部206が出力する回転角を基に透かしパターンの形態で埋め込まれている他コードデータを検出・解析する(ステップS319)。そして得られたデータを転送・記録する(ステップS320)。
【0141】
続いて、次の他コードがあるかを判断する(ステップS321)。次の他コードが有る場合(ステップS321、YES)は、ステップS313に戻り、次の他コードのブロック化から繰り返す。次の他コードがない場合(ステップS321、NO)は、終了する。
【0142】
本実施形態にかかる秘匿情報カードでは、図柄の表示を目的としない赤外線吸収インキを用いて複数の透かしパターンを形成しており、その上に通常のフルカラー画像形成プロセスで画像を形成している。すなわち、そもそも透かしパターン自体が視認しにくい色で形成されていることに加え、その上に積層された各色のインキによって隠蔽されるため、可視光での透かしパターンの検出はできない。そして、透過性の高い赤外線を検出光として用いることによってのみ透かしパターンを検出できるため、情報の秘匿性が高い。
【0143】
また、本実施形態においては、複数の透かしパターンの他コードは拡大縮小率及び回転角の情報を持ったものとしているが、主コードだけに上記の情報を挿入して、他コードは単にパターン(形状、図柄、絵柄など)だけや文字だけなどを形成しても良い。すなわち透かしパターンの全画像を取り込んでいるため、主コードの情報に基づいて、座標系において他コードとの位置関係を算出することが可能であるためである。
【0144】
また、本実施形態においては、パターン認識や文字認識などにも応用が可能である。
【0145】
なお、上記実施形態は本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれに限定されることはない。
例えば、上記実施形態では、透かしパターンの上にフルカラー画像を形成する場合を例としたが、1以上の単色画像を透かしパターンの上に形成するのであれば、同様の効果が得られることは言うまでもない。
また、透かしパターンの生成・検出は、上記実施形態と異なる公知の方法を用いても構わない。
このように、本発明は、様々な変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明によれば、1枚のカードに複数の秘匿情報を配置した秘匿情報カード、カード読み取り装置、カード読み取り方法及びカード読み取りシステムなどの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0147】
1 基材
2 シアンインキ層
3 イエローインキ層
4 マゼンタインキ層
5 ブラックインキ層
7 赤外線吸収インキ
10 秘匿情報カード
20 カードリーダ
21 赤外光源
22 バンドパスフィルタ(BPF)
23 IRフィルタレスCCD
24 カードガイド
30 主コード(基準となる透かしパターン)
31、32、33、34 他コード(他の透かしパターン)
101 拡大縮小率検出用パターン生成部
102 回転角検出用歩ターン生成部
103 データ保持部
104 データパターン生成部
105 合成部
106 逆離散フーリエ変換部
107 二値化部
201 ブロック化部
202 離散フーリエ変換部
203 振幅計算部
204 振幅積算部
205 拡大縮小率検出部
206 回転角検出部
207 データ検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数領域において、画像の拡大縮小率を検出するための非ゼロの周波数成分を生成する拡大縮小率検出パターン生成手段と、
前記周波数領域において、前記画像の回転角を検出するための非ゼロの周波数成分を生成する回転角検出パターン生成手段と、
前記周波数領域において、第1の所定数の候補位置のうち挿入すべきデータにより相互に組み合わされる位置であって前記第1の所定数よりも少ない第2の所定数のものに非ゼロの周波数成分を生成するデータパターン生成手段と、
生成された3つの前記非ゼロの周波数成分を合わせて周波数領域から空間領域に変換したパターンを生成する変換パターン生成手段と、
前記変換パターンをゼロを閾値として所定の値に二値化したパターンを得る二値化パターン生成手段と、
前記二値化パターン生成手段により生成した基準となる透かしパターンと少なくとも1以上の他の透かしパターンとを赤外線吸収インキにて基材上に複数印刷した透かしパターンと、
前記複数の透かしパターン上に赤外線透過インキによって形成された図柄層と、
を有することを特徴とする秘匿情報カード。
【請求項2】
筺体上面に設けられてカードを置いて該カードを回転させることが可能なカードガイドと、
前記筐体内に配置されて赤外光を発する少なくとも1つの赤外光源と、
前記赤外光の波長域の光のみを前記筐体に入出射させる帯域通過フィルタと、
前記赤外光源から発せられ、前記帯域通過フィルタを透過して筐体外の前記カードガイドに置かれた前記カード上で反射されたのちに前記帯域通過フィルタを再び透過した赤外光が入射する撮像手段と、
前記撮像手段に入射した赤外光が表示する画像から基準となる透かしパターン画像と少なくとも1以上の他の透かしパターン画像とを取得する透かしパターン画像取得手段と、
取得した前記透かしパターン画像を複数のブロックに分割するブロック化手段と、
各前記ブロックのデータを空間領域から周波数領域に変換することにより、又はその変換をしてから、各前記ブロックの各周波数成分の振幅を取得するデータ変換振幅取得手段と、
各周波数成分の前記振幅をブロック間で加算することにより、各周波数ごとの総和振幅を取得する総和振幅取得手段と、
前記周波数領域において、前記総和振幅のうち前記画像の拡大縮小率を検出するための非ゼロ周波数成分に対応したもの検出することにより、前記画像の拡大縮小率を検出する拡大縮小率検出手段と、
前記周波数領域において、前記総和振幅のうち前記画像の回転角を検出するための非ゼロ周波数成分に対応したものを検出することにより、前記画像の回転角を検出する回転角検出手段と、
前記拡大縮小率及び前記回転角により周波数領域における位置が補正された前記総和振幅であって第1の所定数の候補位置にあるもののうち、これらの間で相対的に大きな値を示す前記第1の所定数よりも少ない第2の所定数の総和振幅の位置の組合せを基に挿入されているデータを検出するデータ検出手段と、
を有することを特徴とする秘匿情報カード読み取り装置。
【請求項3】
筺体上面に設けられてカードを置いて該カードを回転させることが可能なカードガイドと、前記筐体内に配置されて赤外光を発する少なくとも1つの赤外光源と、前記赤外光の波長域の光のみを前記筐体に入出射させる帯域通過フィルタと、を有した秘匿情報カード読み取り装置のカード読み取り方法であって、
前記赤外光源から発せられ、前記帯域通過フィルタを透過して筐体外の前記カードガイドに置かれた前記カード上で反射されたのちに前記帯域通過フィルタを再び透過した赤外光が入射する撮像工程と、
前記撮像工程に入射した赤外光が表示する画像から基準となる透かしパターン画像と少なくとも1以上の他の透かしパターン画像とを取得する透かしパターン画像取得工程と、
取得した前記透かしパターン画像を複数のブロックに分割するブロック化工程と、
各前記ブロックのデータを空間領域から周波数領域に変換することにより、又はその変換をしてから、各前記ブロックの各周波数成分の振幅を取得するデータ変換振幅取得工程と、
各周波数成分の前記振幅をブロック間で加算することにより、各周波数ごとの総和振幅を取得する総和振幅取得工程と、
前記周波数領域において、前記総和振幅のうち前記画像の拡大縮小率を検出するための非ゼロ周波数成分に対応したもの検出することにより、前記画像の拡大縮小率を検出する拡大縮小率検出工程と、
前記周波数領域において、前記総和振幅のうち前記画像の回転角を検出するための非ゼロ周波数成分に対応したものを検出することにより、前記画像の回転角を検出する回転角検出工程と、
前記拡大縮小率及び前記回転角により周波数領域における位置が補正された前記総和振幅であって第1の所定数の候補位置にあるもののうち、これらの間で相対的に大きな値を示す前記第1の所定数よりも少ない第2の所定数の総和振幅の位置の組合せを基に挿入されているデータを検出するデータ検出工程と、
を有することを特徴とする秘匿情報カード読み取り装置のカード読み取り方法。
【請求項4】
請求項1に記載の秘匿情報カードと請求項2に記載の秘匿情報カード読取装置とを備えることを特徴とするカード読み取りシステム。
【請求項5】
請求項3に記載のカード読み取り方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−60244(P2011−60244A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212485(P2009−212485)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(506393293)株式会社リアルテクノロジー (3)
【Fターム(参考)】