説明

秘匿情報カード及びその読み取り装置並びにカード読み取りシステム

【課題】秘匿情報の機密性に優れた秘匿情報カード及びその読み取り装置並びにカード読み取りシステムを提供する。
【解決手段】秘匿情報カード10は、周波数領域において、画像の拡大縮小率を検出するための生成された非ゼロの周波数成分と、周波数領域において、画像の回転角を検出するために生成された非ゼロの周波数成分と、周波数領域において、第1の所定数の候補位置のうち挿入すべきデータにより相互に組み合わされる位置であって、第1の所定数よりも少ない第2の所定数のものに生成された非ゼロの周波数成分とを合わせて周波数領域から空間領域に変換して生成したパターンを、赤外線吸収インキ7にて基材1上に印刷した透かしパターンと、透かしパターン上に赤外線透過インキによって形成されたシアンインキ層2、イエローインキ層3、マゼンタインキ層4及びブラックインキ層5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不可視に表示する情報の秘匿性が高い秘匿情報カード及びその読み取り装置並びにカード読み取りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、任意の情報を視認不可能に表示し(秘匿情報)、特定の読み取り装置を用いた場合にのみ秘匿情報を読み取れるようにした秘匿情報カードが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の「電子透かし挿入方法及びその装置並びに電子透かし検出方法及びその装置」によって開示される方法で生成した電子透かしパターンを、フルカラー印刷プロセスにおいて特定の色の画像中に挿入して印刷することにより、任意の情報を視認不可能としたカードが知られている。
【0004】
図15に、このような秘匿情報カードの構成例を示す。基材1の上に、フルカラー印刷プロセスによってシアンインキ層2、イエローインキ層3、マゼンタインキ層4及びブラックインキ層5を形成し、図柄を表示させている。図示する構成においては、フルカラー印刷プロセスのシアン、イエロー、マゼンタ及びブラックの各色の画像のうち、イエローの単色画像に透かしパターンを挿入することにより、任意の情報を肉眼では読み取れないようにしている。
【特許文献1】特開2004−15396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図15に示したカードでは、図柄の一部である単色画像に透かしパターンを挿入しているため、透かしパターンを挿入した色と同色又はその色合いが強い部分では、光の加減によっては、情報そのものを読み取ることができなくても、その部分に何らかの情報が埋め込まれているという事実が肉眼でも認識される可能性がある。そして、本来図柄を表示するためのインキを用いて透かしパターンを表示しているため、情報が埋め込まれている場所が特定されてしまうと、秘匿情報を容易に解析されてしまう恐れがあった。
【0006】
このように、単色画像に透かしパターンを挿入した従来の情報秘匿カードは、秘匿情報の機密性が高くないという問題があった。
【0007】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、秘匿情報の機密性に優れた秘匿情報カード及びその読み取り装置並びにカード読み取りシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、第1の態様として、周波数領域において、画像の拡大縮小率を検出するための生成された非ゼロの周波数成分と、周波数領域において、画像の回転角を検出するために生成された非ゼロの周波数成分と、周波数領域において、第1の所定数の候補位置のうち挿入すべきデータにより相互に組み合わされる位置であって、第1の所定数よりも少ない第2の所定数のものに生成された非ゼロの周波数成分とを合わせて周波数領域から空間領域に変換して生成したパターンを、赤外線吸収インキにて基材上に印刷した透かしパターンと、透かしパターン上に赤外線透過インキによって形成された図柄層とを有する秘匿情報カードを提供するものである。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第2の態様として、筐体内に配置され赤外光を発する赤外光源と、赤外光の波長域の光のみを筐体に入出射させる帯域通過フィルタと、赤外光源から発せられ、帯域通過フィルタを透過して筐体外で反射されたのちに帯域通過フィルタを再び透過した赤外光が入射する撮像手段と、撮像手段に入射した赤外光が表示する画像を複数のブロックに分割し、各ブロックのデータを空間領域から周波数領域に変換することにより、又はその変換をしてから、各ブロックの各周波数成分の振幅を取得し、各周波数成分の振幅をブロック間で加算することにより、各周波数ごとの総和振幅を取得し、周波数領域において、総和振幅のうち画像の拡大縮小率を検出するための非ゼロ周波数成分に対応したもの検出することにより、画像の拡大縮小率を検出し、周波数領域において、総和振幅のうち画像の回転角を検出するための非ゼロ周波数成分に対応したものを検出することにより、画像の回転角を検出し、拡大縮小率及び回転角により周波数領域における位置が補正された総和振幅であって第1の所定数の候補位置にあるもののうち、これらの間で相対的に大きな値を示す第1の所定数よりも少ない第2の所定数の総和振幅の位置の組合せを基に挿入されているデータを検出するデータ検出手段とを有する秘匿情報カード読み取り装置を提供するものである。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第3の態様として、上記第1の態様にかかる秘匿情報カードと第2の態様にかかる秘匿情報カード読み取り装置とを用いたカード読み取りシステムを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、秘匿情報の機密性に優れた秘匿情報カード及びその読み取り装置並びにカード読み取りシステムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好適な実施の形態について説明する。図1に、カード読み取りシステムの構成を示す。本実施形態にかかるカード読み取りシステムは、秘匿情報カード10に隠蔽された秘匿情報をカードリーダ20で読み取るシステムである。秘匿情報カード10は、不可視に表示する情報が赤外線吸収インキを用いて透かしパターンとして表示されたカードである。カードリーダ20は、秘匿情報カード10に不可視に表示された秘匿情報を光学的に読み取るための読取装置である。
【0013】
図2に秘匿情報カード10の層構成を示す。このカードは、基材1の上に赤外線吸収インキ7によって透かしパターンが形成され、その上にシアンインキ層2、イエローインキ層3、マゼンタインキ層4及びブラックインキ層5が形成されている。
【0014】
シアンインキ層2、イエローインキ層3、マゼンタインキ層4及びブラックインキ層5は、炭素を含有しないノンカーボンインキ(赤外線透過インキ)を用いて形成され、任意の図柄を表示する。これらの各インキとしては公知のものを適用可能である。
【0015】
赤外線吸収インキ7は、赤外線吸収剤を0.5〜10重量%含有したインキであり、公知のものを適用可能である。なお、基材1と同系色であると好ましい。
【0016】
赤外線吸収インキ7によって形成された透かしパターンの上には、シアン、イエロー、マゼンタ及びブラックの各色のインキ層が形成される。透かしパターンは、図柄の表示を目的としていない(元々視認性の低い)赤外線吸収インキ7で形成されているため、図柄が重ねて印刷されていない状態でも肉眼による視認は困難である。その上、透かしパターンの上に各色のインキ層2〜5を形成すれば、透かしパターンはインキ層2〜5によって隠蔽され、肉眼での視認が一層困難となるだけでなく、拡大表示したとしても、透かしパターンの存在は確認しにくくなる。
【0017】
赤外線吸収インキ7を用いて挿入する透かしパターンの生成方法の一例について説明する。
【0018】
透かしパターンを生成するために、図3に示すような透かしパターン挿入装置を用いる。透かしパターン挿入装置は、拡大縮小検出用パターン生成部101、回転角検出用パターン生成部102、データ保持部103、データパターン生成部104、合成部105、逆離散フーリエ変換部106、及び二値化部107を備える。
【0019】
拡大縮小率検出用パターン生成部101は、透かしパターン検出装置で、入力した画像の拡大縮小率を検出するための周波数領域における拡大縮小率用パターンを生成する。
【0020】
拡大縮小率パターンの例を図4に示す。図4を参照すると、拡大縮小率検出用パターンは、周波数領域において最外周の円上に均等に分布する24個の点のうちの20個の点より成る。なお、24個の点のうちの全ての点より成る拡大縮小率検出用パターンを生成しても良い。拡大縮小率検出用パターンの各点を、実数部の振幅が非ゼロであり、虚数部の振幅がゼロの非ゼロ周波数成分とし、拡大縮小率検出用パターンの非ゼロ周波数成分を周波数領域において点対称分布とすることにより、拡大縮小率検出用パターンを逆離散フーリエ変換したときに虚数部が発生しないようにしている。この条件は、後述する回転角検出用パターン及びデータパターンにおいても満たされている。また、拡大縮小率検出用パターンを成す非ゼロ周波数成分の周波数領域における分布は、点対称であるのみならず、左右対称且つ上下対称である。また、この最外周の円の半径は、設定した周波数領域の最大周波数を高周波数としたときの中間周波数に対応する。これは、高周波数に拡大縮小率検出用パターンを設定すると検出精度が良くなる一方で、IRフィルタレスCCD23で画像が小さく撮影されたときにも拡大縮小率検出用パターンの周波数がナイキスト周波数を越えないようにマージンを設けておかなくてはならないからである。例えば、片側周波数の最大周波数が1024[サイクル/単位長さ]であれば、この最外周の円の半径を64〜512[サイクル/単位長さ]のうちのいずれかの周波数に相当する値にする。ここで、単位長さとは、逆離散フーリエ変換のブロックの一辺の長さである。
【0021】
回転角検出用パターン生成部102は、透かしパターン検出装置で、入力した画像の回転角を検出するための周波数領域における回転角検出用パターンを生成する。
【0022】
回転角検出用パターンの例を図5に示す。図5を参照すると、回転角検出用パターンは、周波数領域において、最外周の円の一つ内側の円上に均等に分布する24個の点のうち10個の点より成る。なお、回転角検出用パターンは、10以外の数の点より構成されていても良い。回転角検出用パターンを成す非ゼロ周波数成分の周波数領域における分布は左右非対称かつ上下非対称とする。すなわち、回転角検出用パターンを成す非ゼロ周波数成分の周波数領域における分布は、回転が検出できるように、偏りをもったものである。なお、回転角検出用パターンを設定する円周を拡大縮小率検出用パターンを設定する円周の内側のものとしたが、外側のものとしてもよい。
【0023】
データ保持部103は、透かしパターンの形態で埋め込みたいデータを保持する。
【0024】
データパターン生成部104は、データ保持部103が保持するデータの値に応じたデータパターンを生成する。
【0025】
データパターンは、図6、7及び8に示すパターンを相互に加算したものである。説明のために図6、7及び8に分割して記載している。図6にデータパターンのうち最外周の円周上に分布する部分、図7にデータパターンのうち中央の円周上に分布する部分、図8にデータパターンのうち最内周の円周上に分布する部分を示す。データパターンのうち最外周の部分は、周波数領域において、当該円周上に均等に分布する20個の点のうち10個の点より成る。これらの10個の点は等振幅の非ゼロの周波数成分である。データパターンの三つの部分(最外周の部分、中央の円周の部分及び最内周の部分)のうちの最外周の部分を成す非ゼロ周波数成分の数10は不変であり、挿入すべきデータの値に応じて10個の非ゼロ周波数成分の分布を変える。10個の非ゼロ周波数成分は点対称に分布しているので、実際には、データの値に応じて、10個の候補位置のうち5個の位置に非ゼロ周波数成分を設定する自由度をもって10個の点の位置が決定されることとなる。従って、最外周の部分で105=252種類のデータを表すことが可能となる。10個の候補位置のうち他の数ではなく5個の位置に非ゼロ周波数成分を設定することとしたのは、組み合わせの数が最大となるからである。データパターンのうち中央の円周の部分は、周波数領域において、当該円周上に均等に分布する12個の点のうち6個の点より成る。これらの6個の点は等振幅の非ゼロの周波数成分である。データパターンの三つの部分(最外周の部分、中央の円周の部分及び最内周の部分)のうちの中央の円周の部分を成す非ゼロ周波数成分の数6は不変であり、データの値に応じて6個の非ゼロ周波数成分の分布を変える。6個の非ゼロ周波数成分は点対称に分布しているので、実際には、挿入すべきデータの値に応じて、6個の候補位置のうち3個の位置に非ゼロ周波数成分を設定する自由度をもって6個の点の位置が決定されることとなる。従って、中央の円周の部分で63=20種類のデータを表すことが可能となる。6個の候補位置のうち他の数ではなく3個の位置に非ゼロ周波数成分を設定することとしたのは、組み合わせの数が最大となるからである。データパターンのうち最内周の部分は、周波数領域において、当該円周上に均等に分布する4個の点のうち2個の点より成る。これらの2個の点は等振幅の非ゼロの周波数成分である。データパターンの三つの部分(最外周の部分、中央の円周の部分及び最内周の部分)のうちの最内周の部分を成す非ゼロ周波数成分の数2は不変であり、挿入すべきデータの値に応じて2個の非ゼロ周波数成分の分布を変える。2個の非ゼロ周波数成分は点対称に分布しているので、実際には、データの値に応じて、2個の候補位置のうち1個の位置に非ゼロ周波数成分を設定する自由度をもって2個の点の位置が決定されることとなる。従って、最内周の円周の部分で21=2種類のデータを表すことが可能となる。
【0026】
最外周の円の部分で252種類、中央の部分の円で20種類、最内周の円の部分で2種類のデータを表せるので、これらの組み合わせにより、10080通りのデータを表せることが可能となる。
【0027】
なお、最外周の円の部分の10個の候補位置、中央の円の部分の6個の候補位置及び最内周の円の部分の2個の候補位置の合わせた18個の候補位置のうちのデータの値の応じた9個の位置に非ゼロ周波数成分を設定するようにしても良く、この場合には、48620通りのデータを表すことが可能となる。また、データの種類は減るが、三つの円のうちの二つ又は一つのみにデータパターンを乗せるようにしてもよい。逆に、データの種類を増やすために、三つを超える数の円にデータパターンを乗せるようにしてもよい。
【0028】
また、データパターンを設定する全ての円を拡大縮小率検出用パターンを設定する円及び回転角検出用パターンを設定する円の内側のものとしたが、データパターンを設定する一部又は全ての円を拡大縮小率検出用パターンを設定する円及び回転角検出用パターンを設定する円の外側のもの又は拡大縮小率検出用パターンを設定する円及び回転角検出用パターンを設定する円の間のものとしてもよい。
【0029】
上記の拡大縮小率検出用パターンが乗る円、回転角検出用パターンが乗る円及びデータパターンが乗る三つの円の半径は、相互に所定の比例関係にある。
【0030】
合成部105は、拡大縮小率検出用パターン生成部101、回転角検出用パターン生成部102及びデータパターン生成部104が生成した非ゼロ周波数成分を合成する。なお、ここでいう合成とは、加算のことである。
【0031】
逆離散フーリエ変換部106は、合成部105が合成した非ゼロ周波数成分を逆離散フーリエ変換して、空間領域におけるパターンを生成する。逆離散フーリエ変換部106が出力するパターンの大きさは、逆離散フーリエ変換で扱うサンプル数によって決定され、例えば、256×256画素、512×512画素、1024×1024画素等の大きさである。なお、空間領域におけるパターンは、データパターン生成部104の出力の直流成分が値がゼロであるので、一般にマイナスの値の画素も有するが、図面の印刷の都合上、このパターンにマイナスの値の画素が無くなるようにする。
【0032】
二値化部107は、逆離散フーリエ変換部106が生成したパターンをゼロをしきい値として所定の値a又は−aに二値化する。二値化されたパターンは−aの画素も有するが、図面の印刷の都合上、マイナスの値の画素が無くなるようにして二値化パターンを得る。
【0033】
次に、図9を参照して、本実施形態による透かしパターン挿入装置の動作を説明する。
【0034】
まず、拡大縮小率検出用パターン生成部101は、図4に示すような拡大縮小率検出用パターンを生成する(ステップS151)。次に、回転角検出用パターン生成部102は、図5に示すような回転角検出用パターンを生成する(ステップS152)。次に、データパターン生成部104は、データ保持部103が保持するデータの値により定まるデータパターン(図6、図7及び図8の非ゼロ係数を合わせて得たもの)を生成する(ステップS103)。次に、パターン合成部105は、拡大縮小率検出用パターン生成部101、回転角検出用パターン生成部102及びデータパターン生成部104が生成したパターンを合成する(ステップS154)。次に、逆離散フーリエ変換部106は、合成部105が合成して得たパターンを逆離散フーリエ変換して、空間領域におけるパターンを生成する(ステップS155)。次に、二値化部107は、逆離散フーリエ変換部106が生成した空間領域におけるパターンを二値化する(ステップS156)。
【0035】
以上のようにして得られた二値化画像を赤外線吸収インキ7を用いて印刷することにより、基材1上に透かしパターンが形成される。
【0036】
図10に、カードリーダ20の構成を示す。カードリーダ20は、赤外光源21、バンドパスフィルタ(BPF)22、及びIRフィルタレスCCD23を有する。赤外光源21は、波長780〜820nmの光(いわゆる赤外光)を発する光源である、BPF22は、赤外光のみを透過するフィルタである。IRフィルタレスCCD23は、赤外光をカットするためのIRフィルタを備えていないCCDである。
【0037】
本実施形態にかかるカード読み取りシステムの動作について説明する。
秘匿情報カードは、カードリーダ20の所定の位置にセットすると、透かしパターンが挿入された部分(以下、透かしパターン挿入領域という)がBPF22に当接するようになっている。赤外光源21から発せられた赤外光は、BPF22に到達する。BPF22においては、赤外光以外の波長成分がカットされるため、透かしパターン挿入領域には、赤外光のみが照射される。透かしパターン挿入領域に到達した赤外光は、各色のインキ層2〜5を透過する。インキ層2〜5を透過した赤外光は、透かしパターンに応じて一部が赤外線吸収インキ7によって吸収され、残りの一部は基材1によって反射される。これにより、赤外光は赤外線吸収インキ7が存在する部分は暗く、それ以外の部分が明るい画像光となる。基材1によって反射された赤外光は、再び各色のインキ層2〜5を透過し、BPF22に入射する。BPF22に再入射した赤外光は、赤外波長域以外の成分が除去される。BPF22を透過した赤外光はIRフィルタレスCCD23に入射する。IRフィルタレスCCD23に入射する赤外光は、透かしパターンに応じた画像光である。IRフィルタレスCCD23の各画素において、画像光は電気信号に変換される。
【0038】
IRフィルタレスCCD23の各画素において光電変換された電気信号は、図1では不図示の透かしパターン検出装置へ入力され、所定の処理が行われることによって透かしパターンとして挿入されていた情報が復元される。なお、透かしパターン検出装置は、カードリーダ20に内蔵された構成であっても良い。
【0039】
図11に、IRフィルタレスCCD23に入射する画像光の一例を示す。透かしパターン挿入領域内で赤外線吸収インキ7が存在する部分に対応する位置は暗く、それ以外の部分が明るい画像である。
【0040】
図12を参照すると、本実施形態による透かしパターン検出装置は、ブロック化部201、離散フーリエ変換部202、振幅計算部203、振幅積算部204、拡大縮小率検出部205、回転角検出部206及びデータ検出部207を備える。
【0041】
ブロック化部201は、IRフィルタレスCCD23が入力した透かしパターン画像をブロック化する。ブロックは、透かしパターン挿入装置の逆離散フーリエ変換部106が変換した画素の数に等しい数の画素よりなるブロックであり、例えば、256×256画素、512×512画素又は1024×1024画素等のブロックである。なお、ブロック化部201が作成するブロックを構成する画素の数は、透かしパターン挿入装置の逆離散フーリエ変換部106が変換した画素の数に等しいが、ブロック化部201が入力する画像はIRフィルタレスCCD23が入力した画像であるので、ブロック化部201が作成するブロックは、一般に、透かしパターン挿入装置の逆離散フーリエ変換部106による逆離散フーリエ変換のブロックを拡大又は縮小したものである。
【0042】
離散フーリエ変換部202は、ブロック化部201が出力する全てのブロックを離散フーリエ変換して、ブロック化部201が出力する全てのブロックの全ての周波数成分を出力する。
【0043】
振幅計算部203は、離散フーリエ変換部202が出力する一般に複素数である周波数成分の振幅(絶対値)を求め、ブロック化部201が出力する全てのブロックの全ての周波数成分の振幅を出力する。
【0044】
振幅積算部204は、振幅計算部203が出力する周波数成分の振幅を基に、各周波数成分の振幅を全てのブロック間で加算することにより、各周波数ごとの総和振幅を得る。
【0045】
拡大縮小率検出部205は、振幅積算部204が出力する各周波数ごとの総和振幅を基にカメラ等が撮影した透かしパターン画像の拡大縮小率を検出する。拡大縮小率の検出は、拡大縮小率検出用パターンの半径を検出することにより行う。拡大縮小率検出用パターンは、所定の半径の円周上の所定数の非ゼロ周波数成分より構成されるので、いずれかの半径の円周上にその所定数又はその所定数から一定範囲にある数の特に振幅が大きい総和振幅が検出されたならば、その半径と透かしパターン挿入装置の拡大縮小率検出用パターン生成部101が生成した拡大縮小率検出用パターンの半径の比をカメラが撮像した透かしパターン画像の拡大縮小率とすることができる。
【0046】
振幅積算部204は、振幅積算部204が出力する各周波数ごとの総和振幅及び拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率を基にIRフィルタレスCCD23が撮影した透かしパターン画像の回転角を検出する。回転角の検出は、回転角検出用パターンの角度を検出することにより行う。まず、振幅積算部204が出力する各周波数ごとの総和振幅に対して、拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率により倍率の正規化を行い、回転角検出用パターンに対応した総和振幅が所定の半径に現れるようにする。そして、所定の半径に現れた総和振幅のうち特に振幅が大きい総和振幅が構成するパターンを検出し、そのパターンの角度と透かしパターン挿入装置の回転角検出用パターン生成部102が生成した回転角検出用パターンの角度の差を検出することにより、IRフィルタレスCCD23が撮影した透かしパターン画像の回転角を検出する。
【0047】
なお、拡大縮小率検出用パターンの非ゼロ周波数成分の分布を非対称とすることにより、拡大縮小率検出用パターンが回転角検出用パターンを兼用するようにしてもよい。この場合には、拡大縮小率の検出は、拡大縮小率検出兼回転角検出用パターンの半径を検出することにより行う。拡大縮小率検出兼回転角検出用パターンは、所定の半径の円周上の所定数の非ゼロ周波数成分より構成されるので、いずれかの半径の円周上にその所定数又はその所定数から一定範囲にある数の特に振幅が大きい総和振幅が検出されたならば、その半径と透かしパターン挿入装置の拡大縮小率検出用パターン生成部101が生成した拡大縮小率検出兼回転角検出用パターンの半径の比をカメラが撮像した透かしパターン画像の拡大縮小率とする。回転角の検出は、拡大縮小率検出検出兼回転角検出用パターンの角度を検出することにより行う。まず、振幅積算部204が出力する各周波数ごとの総和振幅に対して、拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率により倍率の正規化を行い、拡大縮小率検出兼回転角検出用パターンに対応した総和振幅が所定の半径に現れるようにする。そして、所定の半径に現れた総和振幅のうち特に振幅が大きい総和振幅が構成するパターンを検出し、そのパターンの角度と拡大縮小率検出兼回転角検出用パターンの角度の差を検出することにより、IRフィルタレスCCD23が撮影した透かしパターン画像の回転角を検出する。
【0048】
データ検出部207は、振幅積算部204が出力する各周波数ごとの総和振幅、拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率及び回転角検出部206が出力する回転角を基にIRフィルタレスCCD23が撮影した透かしパターン画像から透かしパターンの形態で埋め込まれているデータを検出する。データの検出は、データパターンを検出することにより行う。まず、振幅積算部204が出力する各周波数ごとの総和振幅に対して、拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率により倍率の正規化を行い、回転角検出部206が出力する回転角により回転の補正を行い、データパターンに対応した総和振幅が所定の半径の候補位置に現れるようにする。そして、拡大縮小率及び回転角の補正後の総和振幅を候補位置のみの周波数成分を通すフィルタに通す。そして、三つの半径のうち各半径ごとにフィルタ出力の全ての総和振幅を、高い値から低い値に変化する共通のしきい値と比較し、値がしきい値を上回る総和振幅が所定数(データパターンの三つの部分のうち最外周の部分であれば5、中央の円周上の部分であれば3、最内周の部分であれば1)に達したところで、しきい値の変化を中止する(図13参照)。このときに、しきい値を上回っている総和振幅が成すパターンより透かしパターンの形態で埋め込まれているデータの値を検出する。
【0049】
なお、パターンは周波数領域において、実数部のみしか有さず、点対称に分布するので、拡大縮小率検出部205、回転角検出部206及びデータ検出部207は、周波数領域の第1象限から第4象限の周波数成分のうちの二つの象限のみの周波数成分を用いて検出を行っても良い。
【0050】
次に、図14を参照して、本実施形態による透かしパターン検出装置の動作を説明する。
【0051】
まず、ブロック化部201は、IRフィルタレスCCD23が撮影した透かしパターン画像をブロック化する(ステップS251)。次に、離散フーリエ変換部202は、ブロック化部201が生成した各ブロックを離散フーリエ変換する(ステップS252)。次に、振幅計算部203は、離散フーリエ変換部202が出力する複素数の各周波数成分の振幅を求める(ステップS253)。次に、振幅積算部204は、振幅計算部203が出力する振幅をブロック間で周波数ごとに積算して、周波数ごとの総和振幅を求める(ステップ254)。次に、拡大縮小率検出部205は、振幅積算部204が出力する周波数ごとの総和振幅を基に、カメラ等が撮影した透かしパターン画像の拡大縮小率を求める(ステップS255)。次に、回転角検出部206は、振幅積算部204が出力する周波数ごとの総和振幅及び拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率を基に、カメラ等が撮影した透かしパターン画像の回転角を求める(ステップS256)。最後に、データ検出部207は、振幅積算部204が出力する周波数ごとの総和振幅、拡大縮小率検出部205が出力する拡大縮小率及び回転角検出部206が出力する回転角を基に透かしパターンの形態で埋め込まれているデータを検出する(ステップS257)。
【0052】
本実施形態にかかる情報秘匿カードでは、図柄の表示を目的としない赤外線吸収インキを用いて透かしパターンを形成しており、その上に通常のフルカラー画像形成プロセスで画像を形成している。すなわち、そもそも透かしパターン自体が視認しにくい色で形成されていることに加え、その上に積層された各色のインキによって隠蔽されるため、可視光での透かしパターンの検出はできない。そして、透過性の高い赤外線を検出光として用いることによってのみ透かしパターンを検出できるため、情報の秘匿性が高い。
【0053】
なお、上記実施形態は本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれに限定されることはない。
例えば、上記実施形態では、透かしパターンの上にフルカラー画像を形成する場合を例としたが、1以上の単色画像を透かしパターンの上に形成するのであれば、同様の効果が得られることは言うまでもない。
また、透かしパターンの生成・検出は、上記実施形態と異なる公知の方法を用いても構わない。
このように、本発明は、様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の好適な実施の形態にかかるカード読み取りシステムの構成を示す図である。
【図2】秘匿情報カードの構成を示す図である。
【図3】透かしパターン挿入装置の構成を示す図である。
【図4】拡大縮小率パターンの一例を示す図である。
【図5】回転角検出用パターンの一例を示す図である。
【図6】データパターンの一例を示す図である。
【図7】データパターンの一例を示す図である。
【図8】データパターンの一例を示す図である。
【図9】透かしパターン挿入装置の動作の流れを示す図である。
【図10】カードリーダの構成を示す図である。
【図11】透かしパターンとIRフィルタレスCCDに入射する画像光との関係を示す図である。
【図12】透かしパターン検出装置の構成を示す図である。
【図13】透かしパターン検出装置のデータ検出部の動作を説明するための図である。
【図14】IRフィルタレスCCDにおいて検出される画像光の一例を示す図である。
【図15】従来の秘匿情報カードの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 基材
2 シアンインキ層
3 イエローインキ層
4 マゼンタインキ層
5 ブラックインキ層
7 赤外線吸収インキ
10 秘匿情報カード
20 カードリーダ
21 赤外光源
22 バンドパスフィルタ(BPF)
23 IRフィルタレスCCD
101 拡大縮小率検出用パターン生成部
102 回転角検出用歩ターン生成部
103 データ保持部
104 データパターン生成部
105 合成部
106 逆離散フーリエ変換部
107 二値化部
201 ブロック化部
202 離散フーリエ変換部
203 振幅計算部
204 振幅積算部
205 拡大縮小率検出部
206 回転角検出部
207 データ検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数領域において、画像の拡大縮小率を検出するための生成された非ゼロの周波数成分と、前記周波数領域において、前記画像の回転角を検出するために生成された非ゼロの周波数成分と、前記周波数領域において、第1の所定数の候補位置のうち挿入すべきデータにより相互に組み合わされる位置であって、前記第1の所定数よりも少ない第2の所定数のものに生成された非ゼロの周波数成分とを合わせて周波数領域から空間領域に変換して生成したパターンを、赤外線吸収インキにて基材上に印刷した透かしパターンと、
前記透かしパターン上に赤外線透過インキによって形成された図柄層とを有する秘匿情報カード。
【請求項2】
筐体内に配置され赤外光を発する赤外光源と、
前記赤外光の波長域の光のみを前記筐体に入出射させる帯域通過フィルタと、
前記赤外光源から発せられ、前記帯域通過フィルタを透過して筐体外で反射されたのちに前記帯域通過フィルタを再び透過した赤外光が入射する撮像手段と、
前記撮像手段に入射した赤外光が表示する画像を複数のブロックに分割し、各前記ブロックのデータを空間領域から周波数領域に変換することにより、又はその変換をしてから、各前記ブロックの各周波数成分の振幅を取得し、各周波数成分の前記振幅をブロック間で加算することにより、各周波数ごとの総和振幅を取得し、前記周波数領域において、前記総和振幅のうち前記画像の拡大縮小率を検出するための非ゼロ周波数成分に対応したもの検出することにより、前記画像の拡大縮小率を検出し、前記周波数領域において、前記総和振幅のうち前記画像の回転角を検出するための非ゼロ周波数成分に対応したものを検出することにより、前記画像の回転角を検出し、前記拡大縮小率及び前記回転角により周波数領域における位置が補正された前記総和振幅であって第1の所定数の候補位置にあるもののうち、これらの間で相対的に大きな値を示す前記第1の所定数よりも少ない第2の所定数の総和振幅の位置の組合せを基に挿入されているデータを検出するデータ検出手段とを有する秘匿情報カード読み取り装置。
【請求項3】
請求項1記載の秘匿情報カードと請求項2記載の秘匿情報カード読取装置とを用いたカード読み取りシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−130042(P2008−130042A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317602(P2006−317602)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(506393293)株式会社リアルテクノロジー (3)
【Fターム(参考)】