移乗用板付き入浴装置
【課題】移乗用板に腰掛けた使用者の体重を浴槽の開口縁部のみで支持する。
【課題を解決するための手段】固定した支持具12,13に支持させた移乗用板14を、浴槽15の左右方向の開口縁部15aの上に起立する待機状態Fから浴槽15の前後方向の左右の開口縁部15b,15cに跨がって伏倒する使用状態Gまで揺動可能且つ左右移動不能とし、移乗用板14は、揺動中心側の左右方向の縁面14dより内側の位置に、左右方向へ延びる支持軸16,16を設け、支持具12,13は、揺動中の移乗用板14の上記縁面14dを浴槽15の開口縁部15aに摺動案内させるように、揺動中の移乗用板14の支持軸16,16を上下移動自在に案内しつつ支持軸16,16の前後方向の移動を規制する縦長凹部12a,13aを設け、使用状態における支持軸16,16を縦長凹部12a,13aの底面に当接させない。
【課題を解決するための手段】固定した支持具12,13に支持させた移乗用板14を、浴槽15の左右方向の開口縁部15aの上に起立する待機状態Fから浴槽15の前後方向の左右の開口縁部15b,15cに跨がって伏倒する使用状態Gまで揺動可能且つ左右移動不能とし、移乗用板14は、揺動中心側の左右方向の縁面14dより内側の位置に、左右方向へ延びる支持軸16,16を設け、支持具12,13は、揺動中の移乗用板14の上記縁面14dを浴槽15の開口縁部15aに摺動案内させるように、揺動中の移乗用板14の支持軸16,16を上下移動自在に案内しつつ支持軸16,16の前後方向の移動を規制する縦長凹部12a,13aを設け、使用状態における支持軸16,16を縦長凹部12a,13aの底面に当接させない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴者が洗い場側から浴槽内へ出入りするときに腰掛けできる移乗用板を、浴槽の開口縁部に跨がって配置できるようにした移乗用板付き入浴装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の移乗用板付き入浴装置1は、図11に示す如く、浴室壁面Wに取付けた支持具2に回動連結具3を介して支持した移乗用板4を、浴槽5の洗い場側から反対側へ向かう左右方向に沿う開口縁部5aの上に起立する待機状態Fから浴槽4の前後方向に沿う左右の開口縁部5b,5cに跨がって伏倒する使用可能状態Gまで揺動可能且つ左右移動不能としたものである(特許文献1)。そして、回動連結具3は、移乗用板4の基端部4aに固定した回動部6と、支持具2に連結した固定部7と、固定部7に回動部6を枢支させる支持軸8とからなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−17594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の移乗用板付き入浴装置1は、浴室壁面Wに対する支持具2の取付け誤差等により、使用可能状態Gの移乗用板4の基端部寄りと浴槽5の左右の開口縁部5b,5cとの間に隙間を生じたとき、移乗用板4に腰掛けた使用者の体重の一部からなる大きな荷重が回動連結具3及び支持具2を介して浴室壁面Wに伝達するため、浴室壁面Wに対する支持具2の取付け及び移乗用板4の基端部4aに対する回動部6の取付けを、大きな荷重に耐えるようにする必要がある。このため、従来の移乗用板付き入浴装置1は、支持具2及び回動部6の取付けを強固にする対応が必要であり、この対応が採れないとき施工することができない問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するために、使用可能状態の移乗用板に腰掛けた使用者の体重を浴槽の開口縁部のみで支持するようにした移乗用板付き入浴装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために請求項1記載の本発明が採用した手段は、図1に示す如く、固定した支持具12,13に支持させた移乗用板14を、浴槽15の洗い場側から反対側へ向かう左右方向に沿う開口縁部15aの上に起立する待機状態F(図2(B)参照)から浴槽15の前後方向に沿う左右の開口縁部15b,15cに跨がって伏倒する使用状態Gまで揺動可能且つ左右移動不能とした移乗用板付き入浴装置11において、移乗用板14は、揺動中心側の左右方向に沿う縁面14dより外側へ突出しない内側の位置に、左右方向へ延びる支持軸16,16を設け、支持具12,13は、揺動中の移乗用板14の上記縁面14dを浴槽15の左右方向に沿う開口縁部15aに摺動案内させるように、揺動中の移乗用板14の支持軸16,16を上下移動自在に案内しつつ支持軸16,16の前後方向の移動を規制する縦長凹部12a,13aを設け、使用状態における支持軸16,16を縦長凹部12a,13aの底面に当接させないようにした(図4(B)参照)ことを特徴とする移乗用板付き入浴装置である。
【0007】
請求項1記載の本発明にあっては、使用可能状態の移乗用板の支持軸が縦長凹部の底面に当接しないため、浴槽の開口縁部に載る使用可能状態の移乗用板に腰掛けた使用者の体重を、浴槽の開口縁部のみで支持して支持軸及び支持具へ伝達させることがない。
【0008】
なお、支持軸を移乗用板の上下面から外側へ突出させないようにするために、移乗用板の板厚みの範囲内に支持軸を設けることもある。また、使用しない移乗用板の撤去を簡単にできるようにするために、支持具の縦長凹部に上端開口部を形成し、この上端開口部を通じて縦長凹部へ支持軸を出し入れ可能に構成することもある。
【0009】
撤去した移乗用板を再度使用するときに移乗用板の上下面の向きを間違わずに支持具に支持できるようにするために請求項2記載の本発明が採用した手段は、図1に示す如く、前記支持具12,13及び前記支持軸16,16を左右両側寄りに各々設けると共に、左右両側の支持具12,13に対して左右両側の支持軸16,16を着脱自在とし(図3(A)参照)、図6(A)に示す如く、左側の支持軸16から移乗用板14の最外側の左側縁面14gまでの寸法L1と、右側の支持軸16から移乗用板14の最外側の右側縁面14hまでの寸法L2とが異なる請求項1記載の移乗用板付き入浴装置である。
【0010】
請求項2記載の本発明にあっては、移乗用板の上下面の向きを間違えて移乗用板を支持具に支持させようとしたとき、移乗用板の左右方向の位置が移乗用板の上下面の向きを間違えずに支持させたときの左右方向の位置から外れて相違するため、この間違を使用者や介護者等に気付かせることができる。
【0011】
移乗用板を使用しないときに支持具の撤去ができるように請求項3記載の本発明が採用した手段は、前記浴槽15に近接する壁面W又は浴槽15に対して前記支持具12,132を着脱自在に配置した(図4(A)(B)及び図8(A)(B)参照)請求項1又は2記載の移乗用板付き入浴装置である。
【0012】
請求項3記載の本発明にあっては、移乗用板を使用する期間中には支持具を配置でき、移乗用板を使用しない期間中には支持具を撤去すことができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の本発明に係る移乗用板付き入浴装置は、使用可能状態の移乗用板に腰掛けた使用者の体重を、支持軸及び支持具へ伝達させることがないため、支持軸及び支持具の取付けを強固にすることなく施工できる。
【0014】
請求項2記載の本発明に係る移乗用板付き入浴装置は、移乗用板を支持具に支持させるときに、移乗用板の上下面の向きを間違わせないようにできる。
【0015】
請求項3記載の本発明に係る移乗用板付き入浴装置は、移乗用板を使用しない期間中には邪魔となる不要な支持具を撤去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る移乗用板付き入浴装置(以下、「本発明入浴装置」と言う。)の第1の実施の形態を示すものであって、図(A)は支持具12,13に支持させた使用状態の移乗用板14を実線で示すと共に折畳んだ状態の折畳み側14Bを二点鎖線で示す平面図、図(B)はこれら状態の正面図である。
【図2】第1の実施の形態を示すものであって、図(A)は支持具12に支持させた移乗用板14を折り畳んで仰伏させる途中を実線で示すと共に伏倒状態を二点鎖線で示す側面図、図(B)は折り畳んだ移乗用板14を起立させた待機状態Fを示す側面図である。
【図3】第1の実施の形態を示すものであって、図(A)は折り畳んだ起立状態の移乗用板14を支持具12から分離した状態を実線で示すと共に支持具12に支持させた移乗用板14を二点鎖線で示す断面した側面図、図(B)は図(A)のb−b線で断面した背面図である。
【図4】第1の実施の形態を示すものであって、図(A)は浴室壁面Wから支持具12を分離した状態を示す断面した側面図、図(B)は浴室壁面Wに支持具12を取付けた状態を示すと共に伏倒した使用状態の移乗用板14を二点鎖線で示す断面した側面図である。
【図5】第1の実施の形態における後方左側に配置する支持具12を示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は側面図、図(C)は平面図、図(D)は背面図、図(E)は断面した側面図である。
【図6】第1の実施の形態における移乗用板14を示すものであって、図(A)は折り畳んでない展開状態を示す平面図、図(B)は同状態の側面図、図(C)は図(A)のc−c線で断面して支持軸16の取付け状態を拡大して示す正面図、図(D)は支持軸16の取付け状態を拡大して示す側面図、図(E)は図(A)のe−e線で断面して拡大した正面図である。
【図7】第1の実施の形態における移乗用板14を示すものであって、図(A)は図6(A)のVII−VII線で断面して拡大した接合部近辺の側面図、図(B)は折り畳んだ接合部近辺の側面図である。
【図8】第1の実施の形態において支持具12を浴槽15に取付ける態様を示すものであって、図(A)は浴槽15に取付けて固定配置した支持具12から移乗用板14を分離した状態を示す側面図、図(B)は浴槽15から支持具12を分離した状態を示す側面図である。
【図9】第1の実施の形態において浴槽15の前後寄りのいずれにも移乗用板14を配置できる態様を示す中間省略した平面図である。
【図10】本発明入浴装置の第2の実施の形態を示すものであって、図(A)は支持具32,33に支持させた移乗用板34の使用状態を実線で示すと共に折り畳んだ状態を二点鎖線で示す平面図、図(B)は左側の支持具32の拡大した平面図、図(C)は右側の支持具33の拡大した平面図である。
【図11】従来の移乗用板付き入浴装置を示すものであって、図(A)は平面図、図(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
図1乃至図7に示す第1の実施の形態に係る本発明入浴装置11は、図1に示す如く、固定した支持具12,13に支持させた移乗用板14を、浴槽15の洗い場側(浴槽内への出入り側)15dから反対側15eへ向かう左右方向に沿う開口縁部15aの上に起立する待機状態F(図2(B)参照)から浴槽15の前後方向に沿う左右の開口縁部15b,15cに跨がって伏倒する使用状態Gまで揺動可能且つ左右移動不能としたものである。移乗用板14は、図1に示す伏倒した使用状態Gにおいて、左右の支持具12,13の縦凹部12a,13aに移乗用板14に設けた左右の支持軸16,16を挿着して前後移動を防止すると共に、左右の支持具12,13の間に移乗用板14の揺動側の縁部14kを挟み込ませて左右移動を防止し、更に、浴槽15の開口縁部15a,15b,15cに移乗用板14の揺動中心側の縁部14k及び左右の縁部14m,14nを載せて上下移動させないようにしてある。
【0018】
前記移乗用板14は、図6に示す如く、発泡スチレン樹脂等で成形した厚み寸法T1が20mm程度の芯材18aの両面側に繊維強化樹脂(FRP)等で成形した厚さ寸法T2が2.0mm程度の補強用の表面材18b,18bを接合した板状部18と、板状部18の外周縁部に嵌着したオレフィン系エラストマー等で成形したエッジ19と、揺動中心側に設けた左右方向へ延びる左右の支持軸16,16とを備えている。移乗用板14は、左右の支持軸16,16を、揺動中心側となる後方の左右方向に沿う縁面14dより前方へ向かう内側に位置させることで、図2(A)に示す如く、浴槽15の開口縁部15aに縁面14dを前後方向へ摺動させつつ揺動できるようにしてある。すなわち、移乗用板14が揺動するときの瞬間中心は、移乗用板14の縁面14dと浴槽15の開口縁部15aとの接触点であり、揺動に伴い前後方向へ移動することになる。
【0019】
前記移乗用板14は、図6に示す如く、揺動中心側となる基部側14Aと、基部側14Aに折り重ねることができる折畳み側14Bとに区分すると共に、両側14A,14Bを折曲げ可能に接合部14Cで接合し、折り重ねて折り畳むことができるようにしてある。移乗用板14は、図2に示すように折り畳むことで、左側の壁面Wに取付けられている手すり(図示省略)と衝突することなく仰伏揺動できるようになり、また、起立する待機状態F(図2(B)参照)での背丈を低くして立て掛け状態を安定させることができるようになる。移乗用板14は、前後長さ寸法について、図6に示す基部側14Aを255mm程度にすると共に折畳み側14Bを200mm程度としてある。接合部14Cは、図7に示す如く、両側14A,14Bを形成する板状部18,18の対向する縁部に嵌着したオレフィン系エラストマー等で成形したエッジ20,21と、エッジ20,21の表面側を折曲げ自在に連結するように一体成形した連結部22とからなる。エッジ20,21は、図7(A)に示す如く、両者の接近する対面箇所に逃げ用段部20a,21aを設けることで移乗用板14の使用状態において指先等を挟まない挟み阻止用空間14pを形成すると共に、エッジ20,21の上面側を連結部22で連結することで、移乗する入浴者の尻部等をエッジ20,21の隙間に挟ませないようにして、安全性を確保してある。
【0020】
前記左右の各支持軸16は、図6(A)(C)に示す如く、取付部16a及び軸部16bを備え、前記板状部18の芯材18aの一部と置換した軸固定材18cに取付部16aを挿着すると共に、軸部16bを左右両側の支持具12,13に対して着脱自在としてある。また、各支持軸16は、移乗用板14の板厚み寸法T0の範囲内に設けられ、移乗用板14の上下面14e,14fから外側へ軸部16bを突出させないようにしてある。更に、各支持軸16は、軸部16bの半径寸法について下面側(浴槽15に面する側)半径R2を上面側(入浴者が座る側)半径R1に比べて小さくすることで、図4(B)に示すように移乗用板14が伏倒した使用状態のときに、支持軸下面側を支持具12,13の縦長凹部13a,14aの底面に接触させることなく浮かした状態にして、移乗用板14を浴槽15の開口縁部15a,15b,15cの上に確実に載置できるようにしてある。
【0021】
前記移乗用板14は、図6(A)に示す如く、基部側14Aの左右の縁面14g,14hについて揺動中心側となる後方へ行く程に内側へ偏倚させるように曲成し、左右の縁面14g,14hの間の左右幅寸法について、基部側14Aの支持軸16,16を突設させる部分を折畳み側14Bの部分に比べて短くしてある。また、移乗用板14は、基部側14Aの左右に突出せた各支持軸16の軸部16bを、移乗用板14の最外側の縁面となる折畳み側14Bの左右の平行な縁面14g,14hの間の範囲内に位置させることで、支持具12,13から分離して折り畳んだ状態で縁面14g,14hのいずれか一方を下にした縦長状態で立て掛けたとき、立て掛け面に支持軸16の軸部16bを接触させることなく、立て掛けを安定せることができるようにしてある。
【0022】
前記移乗用板14は、図6(A)に示す如く、左側の支持軸16から移乗用板14の最外側の左側縁面となる折畳み側14Bの縁面14gまでの寸法L1と、右側の支持軸16から移乗用板14の最外側の右側縁面となる折畳み側14Bの縁面14hまでの寸法L2とを異なるようにすることで、上下面14e,14fの向きを間違えて支持具12,13に支持させようとしたとき、上下面14e,14fの向きを間違えずに支持させたときの左右方向の位置から大きく外れるようにして、この間違を使用者や介護者等に気付かせるようにしてある。上下面14e,14fの向きの間違は、図7(A)に示す指挟み阻止用空間14pが上面となり、指挟み阻止用空間14pに尻部等を入り込ませて不快感を移乗者に与えることになるため、回避させる必要がある。
【0023】
前記左右の支持具12,13は、図1(A)に示す如く、左右対称の形状に形成され、縦長凹部12a,13aを対向させるようにしてある。左右の支持具12,13は、図2に示すように移乗用板14の揺動中心側の縁面14dを浴槽15の開口縁部15aに摺動案内させつつ移乗用板14が揺動するときに、左右の支持軸16,16を縦長凹部12a,13aで上下移動自在に案内しつつ前後方向の移動を規制すると共に、図4(B)に二点鎖線で示すように伏倒した使用状態の移乗用板14の支持軸16,16を縦長凹部12a,13aの底面に当接させないようにして、浴槽15の開口縁部15a,15b,15cの上に移乗用板14を載置(図1参照)できるようにしてある。左右の支持具12,13は、縦長凹部12a,13aに上端開口部を形成し、図3(A)(左側の支持具12のみを示す図)に示す如く、この上端開口部を通じて縦長凹部12a,13aへ支持軸16,16を出し入れ可能にしてある。
【0024】
前記左右の支持具12,13の各々は、図3及び図4に示す如く、浴槽15のフランジ部15gに立設した壁パネル等からなる壁面Wに対して、取付具23を介して着脱自在となっている。取付具23は、支持具12(13)の後面側に形成した二個一組の逆U字状の係合部12b,12b(13b,13b)を着脱自在に係合させる二個一組のボタン状の係止部24,24と、係止部24,24を壁面Wに取付けて固定させるボルト・ナット25とからなる。左右の支持具12,13は、二個一組の係止部24,24に二個一組の逆U字状の係合部12b,12b(13b,13b)を係合させることで、上下方向の位置を確定して前後方向及び左右方向の移動を阻止した状態で固定されることになり、また、移乗用板14を使用しない期間中に、この係合を解いて撤去できるようにしてある。取付具23は、支持具12(13)が撤去されても見栄えのよいよう、図4に示す如く、各係止部24に化粧カバー26を係合させる等して取付けてある。
【0025】
前記左の支持具12は、図5に示す如く、合成樹脂素材から成形され、前記係合部12b,12bを形成した取付部12hと、前記縦長凹部12aを形成した支持部12gを備えている。支持部12gは、縦長凹部12aの上端及び右端を開口させ、縦長凹部12aを形成する前後壁部12c,12dどうしを底壁部12e及び左壁部12fで連結して補強し、縦長凹部12aの底面を底壁部12eで形成してある。前記右の支持具13は、左の支持具12と同様に支持部13gに縦長凹部13aが形成され、縦長凹部13aの底面を底壁部で形成してある。固定配置した左右の支持具12,13は、図1に示す如く、縦長凹部12a,13aに左右の支持軸16,16を挿入した移乗用板14の左右両側の縁部14m,14nを支持部12g,13gで挟んで、移乗用板14の左右方向への移動を防止することになる。
【0026】
前記左の支持具12は、図4に示すように壁面Wに対して着脱可能に配置固定できるようにする以外に、図8に示す如く、浴槽15に対して着脱可能に配置固定できるようにすることも可能である。この場合、支持具12は、下面側から係合用ピン12p,12pを突設し、浴槽15の開口縁部15aに開設した係合孔15h,15hに係合用ピン12p,12pを着脱可能に挿入して係合できるようにする。また、右の支持具13は、図示は省略したが、左の支持具12と同様に、下面側から係合用ピンを突設し、浴槽15の開口縁部に開設した係合孔15h,15hに係合用ピンを着脱可能に挿入して係合できるようにすることも可能である。なお、浴槽15の係合孔15h,15hは、支持具12,13が撤去されると、化粧用蓋(図示略)を挿着して水や埃の浸入を防止するとよい。
【0027】
本発明入浴装置11は、図2(B)に示す起立した待機状態の移乗用板14が不意に転倒しないように、図示は省略したが、待機状態を維持させるためのストッパーを壁面W等に設けることもある。
【0028】
本発明入浴装置11は、図9に示す如く、使用者の障害の程度等に応じて移乗し易いようにするために、浴室の前後の壁面W,Wの各々に支持具12,13を取付けて浴槽15の前後寄りのいずれにも移乗用板14を配置できるようにすることもある。なお、支持具12,13は、図8に示すように浴槽15の前後の開口縁部15a,15aに取付けることもある。移乗用板14の配置を変更するときには、平面状態で180度だけ回転させて前後方向の向きを変更するとよい。
【0029】
本実施の形態に係る本発明入浴装置11の使用方法は、図1に示す如く、移乗用板14の基部側14Aに折畳み側14Bを折り畳むことなく展開した状態で、移乗用板14の左右の支持軸16,16を左右の支持具12,13の縦長凹部12a,13aに挿入して支持させることで移乗用板14を前後及び左右方向へ移動させない状態にすると共に、移乗用板14の揺動側の縁部14k及び左右の縁部14m,14nを浴槽15の開口縁部15a,15b,15cに載せて移乗用板14を上下移動しない使用可能状態にする。入浴するときには、先ず入浴者が洗い場側から移乗用板14に腰掛け、次に腰掛けたままの状態で入用者の脚を洗い場側から浴槽15の内側へ移動させ、続けて入用者の尻部を浴槽15の内側へ移動させて入浴状態にする。逆に、湯上がりするときには、上記と逆の手順で行い、先ず入浴者の尻部を移乗用板14に腰掛け、次に腰掛けたままの状態で入用者の脚を浴槽15の内側から洗い場側へ移動させ、続けて移乗用板14から立ち上がって浴槽15から離れる。
【0030】
移乗用板14を使用しないときには、先ず図1に示すように移乗用板14の基部側14Aに折畳み側14Bを折り重ね、次に図2に示すように移乗用板14の接合部14Cの近辺を持ち上げて移乗用板14を起立させて待機状態にする。また、移乗用板14を長期間にわたって使用しないときには、移乗用板14を持ち上げて移乗用板14の左右の支持軸16,16を左右の支持具12,13の縦長凹部12a,13aから出し、分離して折り畳んだ移乗用板14を適当な場所で保管するとよい。なお、移乗用板14は、移乗用として使用しないときに、図1に示すように展開した状態にして、風呂蓋の一部として使用することも可能である。
【0031】
本発明入浴装置11は、移乗可能状態の移乗用板14の支持軸16,16が支持具12,13の縦長凹部12a,13aの底面に当接しないため、浴槽15の開口縁部15a,15b,15cに乗る使用可能状態の移乗用板14に腰掛けた使用者の体重を、浴槽15の開口縁部15a,15b,15cのみで支持して支持軸16,15及び支持具12,13へ伝達させることがないため、腰掛けた使用者の体重を支持軸16,15及び支持具12,13で支持する場合に比べて支持軸16,15及び支持具12,13の取付け強度を強固にする必要がなく、施工が簡単にできる。
【0032】
(第2の実施の形態)
図10に示す第2の実施の形態に係る本発明入浴装置31が前記第1の実施の形態に係る本発明入浴装置11(図1乃至図9参照) と相違する点は、四角形に形成した基部側34Aにおける揺動中心側の左右両側寄りに、縁面34dから切り込んだ凹部34q,34qを凹設すると共に各凹部34qを左右へ横断する支持軸36,36を配設し、左右の支持具32,33の各縦凹部32a,33aに左右の支持軸36,36の各軸部36bを出入れ自在に挿着したことである。本発明入浴装置31における該相違点以外の構成については、前記第1の実施の形態に係る本発明入浴装置11と実質的に同一である。
【0033】
各支持軸36は、左右の取付部36a,36a及び中間の軸部36bを備え、移乗用板14を形成する板状部18の芯材18a(図6(E)参照))の一部と置換した左右の軸固定材18c,18cに左右の取付部36a,36aを取付けてある。左右の支持具32,33は、支持部32g,33gに形成した縦凹部32a,33aに各支持軸36の中間の軸部36bが出入れ自在に挿着するように、縦凹部32a,33aの左右両側を開口させてある。
【0034】
前記移乗用板34は、前記移乗用板14(図6(A)参照)と同様に、左側の支持軸36から移乗用板34の左側縁面34gまでの寸法L1と、右側の支持軸36から移乗用板34の右側縁面34hまでの寸法L2とを異なるようにすることで、上下面の向きを間違えて支持具32,33に支持させようとしたとき、上下面の向きを間違えずに支持させたときの左右方向の位置から大きく外れるようにして、この間違を使用者や介護者等に気付かせるようにしてある。
【符号の説明】
【0035】
11(31)…本発明入浴装置、12(32)…左側の支持具、12a(32a)…縦長凹部、12b…係合部、12c,12d(32c,32d,33c,33d)…前後壁部、12e(32e,33e)…底壁部、12f…左壁部、12g(32g)…支持部、12h(32h)…取付部、12p…係合用ピン、13(33)…右側の支持具、13a(33a)…縦長凹部、13b…係合部、13g(33g)…支持部、14(34)…移乗用板、14A(34A)…基部側、14B(34B)…折畳み側、14C(34C)…接合部、14d(34d)…揺動中心側の縁面、14e…上面、14f…下面、14g(34g)…左側縁面、14h(34h)…右側縁面、14k(34k)…揺動中心側の縁部、14m(34m)…左側縁部、14n(34n)…右側縁部、14p…指挟み阻止用空間、15…浴槽、15a…左右方向に沿う後方の開口縁部、15b…前後方向に沿う左側の開口縁部、15c…前後方向に沿う右側の開口縁部、15d…洗い場側、15e…反対側、15g…フランジ部、15h…係合用孔、16(36)…支持軸、16a(36a)…取付部、16b(36b)…軸部、18…板状部、18a…芯材、18b…表面材、18c…軸固定材、19…エッジ、20…基部側14Aのエッジ、20a…逃げ用段部、21…折畳み側14Bのエッジ、21a…逃げ用段部、23…取付具、24…係止部、25…ボルト・ナット、26…化粧カバー、W…浴室壁面、F…待機状態、G…使用可能状態、T0……移乗用板の板厚み、T1……芯材厚み、T2……表面材厚み、L1…左側の支持軸16から移乗用板の左側縁面14gまでの寸法、L2…右側の支持軸16から移乗用板の右側縁面14hまでの寸法、R1…軸部16bの表面側半径、R2…軸部16bの裏面側半径
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴者が洗い場側から浴槽内へ出入りするときに腰掛けできる移乗用板を、浴槽の開口縁部に跨がって配置できるようにした移乗用板付き入浴装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の移乗用板付き入浴装置1は、図11に示す如く、浴室壁面Wに取付けた支持具2に回動連結具3を介して支持した移乗用板4を、浴槽5の洗い場側から反対側へ向かう左右方向に沿う開口縁部5aの上に起立する待機状態Fから浴槽4の前後方向に沿う左右の開口縁部5b,5cに跨がって伏倒する使用可能状態Gまで揺動可能且つ左右移動不能としたものである(特許文献1)。そして、回動連結具3は、移乗用板4の基端部4aに固定した回動部6と、支持具2に連結した固定部7と、固定部7に回動部6を枢支させる支持軸8とからなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−17594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の移乗用板付き入浴装置1は、浴室壁面Wに対する支持具2の取付け誤差等により、使用可能状態Gの移乗用板4の基端部寄りと浴槽5の左右の開口縁部5b,5cとの間に隙間を生じたとき、移乗用板4に腰掛けた使用者の体重の一部からなる大きな荷重が回動連結具3及び支持具2を介して浴室壁面Wに伝達するため、浴室壁面Wに対する支持具2の取付け及び移乗用板4の基端部4aに対する回動部6の取付けを、大きな荷重に耐えるようにする必要がある。このため、従来の移乗用板付き入浴装置1は、支持具2及び回動部6の取付けを強固にする対応が必要であり、この対応が採れないとき施工することができない問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するために、使用可能状態の移乗用板に腰掛けた使用者の体重を浴槽の開口縁部のみで支持するようにした移乗用板付き入浴装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために請求項1記載の本発明が採用した手段は、図1に示す如く、固定した支持具12,13に支持させた移乗用板14を、浴槽15の洗い場側から反対側へ向かう左右方向に沿う開口縁部15aの上に起立する待機状態F(図2(B)参照)から浴槽15の前後方向に沿う左右の開口縁部15b,15cに跨がって伏倒する使用状態Gまで揺動可能且つ左右移動不能とした移乗用板付き入浴装置11において、移乗用板14は、揺動中心側の左右方向に沿う縁面14dより外側へ突出しない内側の位置に、左右方向へ延びる支持軸16,16を設け、支持具12,13は、揺動中の移乗用板14の上記縁面14dを浴槽15の左右方向に沿う開口縁部15aに摺動案内させるように、揺動中の移乗用板14の支持軸16,16を上下移動自在に案内しつつ支持軸16,16の前後方向の移動を規制する縦長凹部12a,13aを設け、使用状態における支持軸16,16を縦長凹部12a,13aの底面に当接させないようにした(図4(B)参照)ことを特徴とする移乗用板付き入浴装置である。
【0007】
請求項1記載の本発明にあっては、使用可能状態の移乗用板の支持軸が縦長凹部の底面に当接しないため、浴槽の開口縁部に載る使用可能状態の移乗用板に腰掛けた使用者の体重を、浴槽の開口縁部のみで支持して支持軸及び支持具へ伝達させることがない。
【0008】
なお、支持軸を移乗用板の上下面から外側へ突出させないようにするために、移乗用板の板厚みの範囲内に支持軸を設けることもある。また、使用しない移乗用板の撤去を簡単にできるようにするために、支持具の縦長凹部に上端開口部を形成し、この上端開口部を通じて縦長凹部へ支持軸を出し入れ可能に構成することもある。
【0009】
撤去した移乗用板を再度使用するときに移乗用板の上下面の向きを間違わずに支持具に支持できるようにするために請求項2記載の本発明が採用した手段は、図1に示す如く、前記支持具12,13及び前記支持軸16,16を左右両側寄りに各々設けると共に、左右両側の支持具12,13に対して左右両側の支持軸16,16を着脱自在とし(図3(A)参照)、図6(A)に示す如く、左側の支持軸16から移乗用板14の最外側の左側縁面14gまでの寸法L1と、右側の支持軸16から移乗用板14の最外側の右側縁面14hまでの寸法L2とが異なる請求項1記載の移乗用板付き入浴装置である。
【0010】
請求項2記載の本発明にあっては、移乗用板の上下面の向きを間違えて移乗用板を支持具に支持させようとしたとき、移乗用板の左右方向の位置が移乗用板の上下面の向きを間違えずに支持させたときの左右方向の位置から外れて相違するため、この間違を使用者や介護者等に気付かせることができる。
【0011】
移乗用板を使用しないときに支持具の撤去ができるように請求項3記載の本発明が採用した手段は、前記浴槽15に近接する壁面W又は浴槽15に対して前記支持具12,132を着脱自在に配置した(図4(A)(B)及び図8(A)(B)参照)請求項1又は2記載の移乗用板付き入浴装置である。
【0012】
請求項3記載の本発明にあっては、移乗用板を使用する期間中には支持具を配置でき、移乗用板を使用しない期間中には支持具を撤去すことができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の本発明に係る移乗用板付き入浴装置は、使用可能状態の移乗用板に腰掛けた使用者の体重を、支持軸及び支持具へ伝達させることがないため、支持軸及び支持具の取付けを強固にすることなく施工できる。
【0014】
請求項2記載の本発明に係る移乗用板付き入浴装置は、移乗用板を支持具に支持させるときに、移乗用板の上下面の向きを間違わせないようにできる。
【0015】
請求項3記載の本発明に係る移乗用板付き入浴装置は、移乗用板を使用しない期間中には邪魔となる不要な支持具を撤去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る移乗用板付き入浴装置(以下、「本発明入浴装置」と言う。)の第1の実施の形態を示すものであって、図(A)は支持具12,13に支持させた使用状態の移乗用板14を実線で示すと共に折畳んだ状態の折畳み側14Bを二点鎖線で示す平面図、図(B)はこれら状態の正面図である。
【図2】第1の実施の形態を示すものであって、図(A)は支持具12に支持させた移乗用板14を折り畳んで仰伏させる途中を実線で示すと共に伏倒状態を二点鎖線で示す側面図、図(B)は折り畳んだ移乗用板14を起立させた待機状態Fを示す側面図である。
【図3】第1の実施の形態を示すものであって、図(A)は折り畳んだ起立状態の移乗用板14を支持具12から分離した状態を実線で示すと共に支持具12に支持させた移乗用板14を二点鎖線で示す断面した側面図、図(B)は図(A)のb−b線で断面した背面図である。
【図4】第1の実施の形態を示すものであって、図(A)は浴室壁面Wから支持具12を分離した状態を示す断面した側面図、図(B)は浴室壁面Wに支持具12を取付けた状態を示すと共に伏倒した使用状態の移乗用板14を二点鎖線で示す断面した側面図である。
【図5】第1の実施の形態における後方左側に配置する支持具12を示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は側面図、図(C)は平面図、図(D)は背面図、図(E)は断面した側面図である。
【図6】第1の実施の形態における移乗用板14を示すものであって、図(A)は折り畳んでない展開状態を示す平面図、図(B)は同状態の側面図、図(C)は図(A)のc−c線で断面して支持軸16の取付け状態を拡大して示す正面図、図(D)は支持軸16の取付け状態を拡大して示す側面図、図(E)は図(A)のe−e線で断面して拡大した正面図である。
【図7】第1の実施の形態における移乗用板14を示すものであって、図(A)は図6(A)のVII−VII線で断面して拡大した接合部近辺の側面図、図(B)は折り畳んだ接合部近辺の側面図である。
【図8】第1の実施の形態において支持具12を浴槽15に取付ける態様を示すものであって、図(A)は浴槽15に取付けて固定配置した支持具12から移乗用板14を分離した状態を示す側面図、図(B)は浴槽15から支持具12を分離した状態を示す側面図である。
【図9】第1の実施の形態において浴槽15の前後寄りのいずれにも移乗用板14を配置できる態様を示す中間省略した平面図である。
【図10】本発明入浴装置の第2の実施の形態を示すものであって、図(A)は支持具32,33に支持させた移乗用板34の使用状態を実線で示すと共に折り畳んだ状態を二点鎖線で示す平面図、図(B)は左側の支持具32の拡大した平面図、図(C)は右側の支持具33の拡大した平面図である。
【図11】従来の移乗用板付き入浴装置を示すものであって、図(A)は平面図、図(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
図1乃至図7に示す第1の実施の形態に係る本発明入浴装置11は、図1に示す如く、固定した支持具12,13に支持させた移乗用板14を、浴槽15の洗い場側(浴槽内への出入り側)15dから反対側15eへ向かう左右方向に沿う開口縁部15aの上に起立する待機状態F(図2(B)参照)から浴槽15の前後方向に沿う左右の開口縁部15b,15cに跨がって伏倒する使用状態Gまで揺動可能且つ左右移動不能としたものである。移乗用板14は、図1に示す伏倒した使用状態Gにおいて、左右の支持具12,13の縦凹部12a,13aに移乗用板14に設けた左右の支持軸16,16を挿着して前後移動を防止すると共に、左右の支持具12,13の間に移乗用板14の揺動側の縁部14kを挟み込ませて左右移動を防止し、更に、浴槽15の開口縁部15a,15b,15cに移乗用板14の揺動中心側の縁部14k及び左右の縁部14m,14nを載せて上下移動させないようにしてある。
【0018】
前記移乗用板14は、図6に示す如く、発泡スチレン樹脂等で成形した厚み寸法T1が20mm程度の芯材18aの両面側に繊維強化樹脂(FRP)等で成形した厚さ寸法T2が2.0mm程度の補強用の表面材18b,18bを接合した板状部18と、板状部18の外周縁部に嵌着したオレフィン系エラストマー等で成形したエッジ19と、揺動中心側に設けた左右方向へ延びる左右の支持軸16,16とを備えている。移乗用板14は、左右の支持軸16,16を、揺動中心側となる後方の左右方向に沿う縁面14dより前方へ向かう内側に位置させることで、図2(A)に示す如く、浴槽15の開口縁部15aに縁面14dを前後方向へ摺動させつつ揺動できるようにしてある。すなわち、移乗用板14が揺動するときの瞬間中心は、移乗用板14の縁面14dと浴槽15の開口縁部15aとの接触点であり、揺動に伴い前後方向へ移動することになる。
【0019】
前記移乗用板14は、図6に示す如く、揺動中心側となる基部側14Aと、基部側14Aに折り重ねることができる折畳み側14Bとに区分すると共に、両側14A,14Bを折曲げ可能に接合部14Cで接合し、折り重ねて折り畳むことができるようにしてある。移乗用板14は、図2に示すように折り畳むことで、左側の壁面Wに取付けられている手すり(図示省略)と衝突することなく仰伏揺動できるようになり、また、起立する待機状態F(図2(B)参照)での背丈を低くして立て掛け状態を安定させることができるようになる。移乗用板14は、前後長さ寸法について、図6に示す基部側14Aを255mm程度にすると共に折畳み側14Bを200mm程度としてある。接合部14Cは、図7に示す如く、両側14A,14Bを形成する板状部18,18の対向する縁部に嵌着したオレフィン系エラストマー等で成形したエッジ20,21と、エッジ20,21の表面側を折曲げ自在に連結するように一体成形した連結部22とからなる。エッジ20,21は、図7(A)に示す如く、両者の接近する対面箇所に逃げ用段部20a,21aを設けることで移乗用板14の使用状態において指先等を挟まない挟み阻止用空間14pを形成すると共に、エッジ20,21の上面側を連結部22で連結することで、移乗する入浴者の尻部等をエッジ20,21の隙間に挟ませないようにして、安全性を確保してある。
【0020】
前記左右の各支持軸16は、図6(A)(C)に示す如く、取付部16a及び軸部16bを備え、前記板状部18の芯材18aの一部と置換した軸固定材18cに取付部16aを挿着すると共に、軸部16bを左右両側の支持具12,13に対して着脱自在としてある。また、各支持軸16は、移乗用板14の板厚み寸法T0の範囲内に設けられ、移乗用板14の上下面14e,14fから外側へ軸部16bを突出させないようにしてある。更に、各支持軸16は、軸部16bの半径寸法について下面側(浴槽15に面する側)半径R2を上面側(入浴者が座る側)半径R1に比べて小さくすることで、図4(B)に示すように移乗用板14が伏倒した使用状態のときに、支持軸下面側を支持具12,13の縦長凹部13a,14aの底面に接触させることなく浮かした状態にして、移乗用板14を浴槽15の開口縁部15a,15b,15cの上に確実に載置できるようにしてある。
【0021】
前記移乗用板14は、図6(A)に示す如く、基部側14Aの左右の縁面14g,14hについて揺動中心側となる後方へ行く程に内側へ偏倚させるように曲成し、左右の縁面14g,14hの間の左右幅寸法について、基部側14Aの支持軸16,16を突設させる部分を折畳み側14Bの部分に比べて短くしてある。また、移乗用板14は、基部側14Aの左右に突出せた各支持軸16の軸部16bを、移乗用板14の最外側の縁面となる折畳み側14Bの左右の平行な縁面14g,14hの間の範囲内に位置させることで、支持具12,13から分離して折り畳んだ状態で縁面14g,14hのいずれか一方を下にした縦長状態で立て掛けたとき、立て掛け面に支持軸16の軸部16bを接触させることなく、立て掛けを安定せることができるようにしてある。
【0022】
前記移乗用板14は、図6(A)に示す如く、左側の支持軸16から移乗用板14の最外側の左側縁面となる折畳み側14Bの縁面14gまでの寸法L1と、右側の支持軸16から移乗用板14の最外側の右側縁面となる折畳み側14Bの縁面14hまでの寸法L2とを異なるようにすることで、上下面14e,14fの向きを間違えて支持具12,13に支持させようとしたとき、上下面14e,14fの向きを間違えずに支持させたときの左右方向の位置から大きく外れるようにして、この間違を使用者や介護者等に気付かせるようにしてある。上下面14e,14fの向きの間違は、図7(A)に示す指挟み阻止用空間14pが上面となり、指挟み阻止用空間14pに尻部等を入り込ませて不快感を移乗者に与えることになるため、回避させる必要がある。
【0023】
前記左右の支持具12,13は、図1(A)に示す如く、左右対称の形状に形成され、縦長凹部12a,13aを対向させるようにしてある。左右の支持具12,13は、図2に示すように移乗用板14の揺動中心側の縁面14dを浴槽15の開口縁部15aに摺動案内させつつ移乗用板14が揺動するときに、左右の支持軸16,16を縦長凹部12a,13aで上下移動自在に案内しつつ前後方向の移動を規制すると共に、図4(B)に二点鎖線で示すように伏倒した使用状態の移乗用板14の支持軸16,16を縦長凹部12a,13aの底面に当接させないようにして、浴槽15の開口縁部15a,15b,15cの上に移乗用板14を載置(図1参照)できるようにしてある。左右の支持具12,13は、縦長凹部12a,13aに上端開口部を形成し、図3(A)(左側の支持具12のみを示す図)に示す如く、この上端開口部を通じて縦長凹部12a,13aへ支持軸16,16を出し入れ可能にしてある。
【0024】
前記左右の支持具12,13の各々は、図3及び図4に示す如く、浴槽15のフランジ部15gに立設した壁パネル等からなる壁面Wに対して、取付具23を介して着脱自在となっている。取付具23は、支持具12(13)の後面側に形成した二個一組の逆U字状の係合部12b,12b(13b,13b)を着脱自在に係合させる二個一組のボタン状の係止部24,24と、係止部24,24を壁面Wに取付けて固定させるボルト・ナット25とからなる。左右の支持具12,13は、二個一組の係止部24,24に二個一組の逆U字状の係合部12b,12b(13b,13b)を係合させることで、上下方向の位置を確定して前後方向及び左右方向の移動を阻止した状態で固定されることになり、また、移乗用板14を使用しない期間中に、この係合を解いて撤去できるようにしてある。取付具23は、支持具12(13)が撤去されても見栄えのよいよう、図4に示す如く、各係止部24に化粧カバー26を係合させる等して取付けてある。
【0025】
前記左の支持具12は、図5に示す如く、合成樹脂素材から成形され、前記係合部12b,12bを形成した取付部12hと、前記縦長凹部12aを形成した支持部12gを備えている。支持部12gは、縦長凹部12aの上端及び右端を開口させ、縦長凹部12aを形成する前後壁部12c,12dどうしを底壁部12e及び左壁部12fで連結して補強し、縦長凹部12aの底面を底壁部12eで形成してある。前記右の支持具13は、左の支持具12と同様に支持部13gに縦長凹部13aが形成され、縦長凹部13aの底面を底壁部で形成してある。固定配置した左右の支持具12,13は、図1に示す如く、縦長凹部12a,13aに左右の支持軸16,16を挿入した移乗用板14の左右両側の縁部14m,14nを支持部12g,13gで挟んで、移乗用板14の左右方向への移動を防止することになる。
【0026】
前記左の支持具12は、図4に示すように壁面Wに対して着脱可能に配置固定できるようにする以外に、図8に示す如く、浴槽15に対して着脱可能に配置固定できるようにすることも可能である。この場合、支持具12は、下面側から係合用ピン12p,12pを突設し、浴槽15の開口縁部15aに開設した係合孔15h,15hに係合用ピン12p,12pを着脱可能に挿入して係合できるようにする。また、右の支持具13は、図示は省略したが、左の支持具12と同様に、下面側から係合用ピンを突設し、浴槽15の開口縁部に開設した係合孔15h,15hに係合用ピンを着脱可能に挿入して係合できるようにすることも可能である。なお、浴槽15の係合孔15h,15hは、支持具12,13が撤去されると、化粧用蓋(図示略)を挿着して水や埃の浸入を防止するとよい。
【0027】
本発明入浴装置11は、図2(B)に示す起立した待機状態の移乗用板14が不意に転倒しないように、図示は省略したが、待機状態を維持させるためのストッパーを壁面W等に設けることもある。
【0028】
本発明入浴装置11は、図9に示す如く、使用者の障害の程度等に応じて移乗し易いようにするために、浴室の前後の壁面W,Wの各々に支持具12,13を取付けて浴槽15の前後寄りのいずれにも移乗用板14を配置できるようにすることもある。なお、支持具12,13は、図8に示すように浴槽15の前後の開口縁部15a,15aに取付けることもある。移乗用板14の配置を変更するときには、平面状態で180度だけ回転させて前後方向の向きを変更するとよい。
【0029】
本実施の形態に係る本発明入浴装置11の使用方法は、図1に示す如く、移乗用板14の基部側14Aに折畳み側14Bを折り畳むことなく展開した状態で、移乗用板14の左右の支持軸16,16を左右の支持具12,13の縦長凹部12a,13aに挿入して支持させることで移乗用板14を前後及び左右方向へ移動させない状態にすると共に、移乗用板14の揺動側の縁部14k及び左右の縁部14m,14nを浴槽15の開口縁部15a,15b,15cに載せて移乗用板14を上下移動しない使用可能状態にする。入浴するときには、先ず入浴者が洗い場側から移乗用板14に腰掛け、次に腰掛けたままの状態で入用者の脚を洗い場側から浴槽15の内側へ移動させ、続けて入用者の尻部を浴槽15の内側へ移動させて入浴状態にする。逆に、湯上がりするときには、上記と逆の手順で行い、先ず入浴者の尻部を移乗用板14に腰掛け、次に腰掛けたままの状態で入用者の脚を浴槽15の内側から洗い場側へ移動させ、続けて移乗用板14から立ち上がって浴槽15から離れる。
【0030】
移乗用板14を使用しないときには、先ず図1に示すように移乗用板14の基部側14Aに折畳み側14Bを折り重ね、次に図2に示すように移乗用板14の接合部14Cの近辺を持ち上げて移乗用板14を起立させて待機状態にする。また、移乗用板14を長期間にわたって使用しないときには、移乗用板14を持ち上げて移乗用板14の左右の支持軸16,16を左右の支持具12,13の縦長凹部12a,13aから出し、分離して折り畳んだ移乗用板14を適当な場所で保管するとよい。なお、移乗用板14は、移乗用として使用しないときに、図1に示すように展開した状態にして、風呂蓋の一部として使用することも可能である。
【0031】
本発明入浴装置11は、移乗可能状態の移乗用板14の支持軸16,16が支持具12,13の縦長凹部12a,13aの底面に当接しないため、浴槽15の開口縁部15a,15b,15cに乗る使用可能状態の移乗用板14に腰掛けた使用者の体重を、浴槽15の開口縁部15a,15b,15cのみで支持して支持軸16,15及び支持具12,13へ伝達させることがないため、腰掛けた使用者の体重を支持軸16,15及び支持具12,13で支持する場合に比べて支持軸16,15及び支持具12,13の取付け強度を強固にする必要がなく、施工が簡単にできる。
【0032】
(第2の実施の形態)
図10に示す第2の実施の形態に係る本発明入浴装置31が前記第1の実施の形態に係る本発明入浴装置11(図1乃至図9参照) と相違する点は、四角形に形成した基部側34Aにおける揺動中心側の左右両側寄りに、縁面34dから切り込んだ凹部34q,34qを凹設すると共に各凹部34qを左右へ横断する支持軸36,36を配設し、左右の支持具32,33の各縦凹部32a,33aに左右の支持軸36,36の各軸部36bを出入れ自在に挿着したことである。本発明入浴装置31における該相違点以外の構成については、前記第1の実施の形態に係る本発明入浴装置11と実質的に同一である。
【0033】
各支持軸36は、左右の取付部36a,36a及び中間の軸部36bを備え、移乗用板14を形成する板状部18の芯材18a(図6(E)参照))の一部と置換した左右の軸固定材18c,18cに左右の取付部36a,36aを取付けてある。左右の支持具32,33は、支持部32g,33gに形成した縦凹部32a,33aに各支持軸36の中間の軸部36bが出入れ自在に挿着するように、縦凹部32a,33aの左右両側を開口させてある。
【0034】
前記移乗用板34は、前記移乗用板14(図6(A)参照)と同様に、左側の支持軸36から移乗用板34の左側縁面34gまでの寸法L1と、右側の支持軸36から移乗用板34の右側縁面34hまでの寸法L2とを異なるようにすることで、上下面の向きを間違えて支持具32,33に支持させようとしたとき、上下面の向きを間違えずに支持させたときの左右方向の位置から大きく外れるようにして、この間違を使用者や介護者等に気付かせるようにしてある。
【符号の説明】
【0035】
11(31)…本発明入浴装置、12(32)…左側の支持具、12a(32a)…縦長凹部、12b…係合部、12c,12d(32c,32d,33c,33d)…前後壁部、12e(32e,33e)…底壁部、12f…左壁部、12g(32g)…支持部、12h(32h)…取付部、12p…係合用ピン、13(33)…右側の支持具、13a(33a)…縦長凹部、13b…係合部、13g(33g)…支持部、14(34)…移乗用板、14A(34A)…基部側、14B(34B)…折畳み側、14C(34C)…接合部、14d(34d)…揺動中心側の縁面、14e…上面、14f…下面、14g(34g)…左側縁面、14h(34h)…右側縁面、14k(34k)…揺動中心側の縁部、14m(34m)…左側縁部、14n(34n)…右側縁部、14p…指挟み阻止用空間、15…浴槽、15a…左右方向に沿う後方の開口縁部、15b…前後方向に沿う左側の開口縁部、15c…前後方向に沿う右側の開口縁部、15d…洗い場側、15e…反対側、15g…フランジ部、15h…係合用孔、16(36)…支持軸、16a(36a)…取付部、16b(36b)…軸部、18…板状部、18a…芯材、18b…表面材、18c…軸固定材、19…エッジ、20…基部側14Aのエッジ、20a…逃げ用段部、21…折畳み側14Bのエッジ、21a…逃げ用段部、23…取付具、24…係止部、25…ボルト・ナット、26…化粧カバー、W…浴室壁面、F…待機状態、G…使用可能状態、T0……移乗用板の板厚み、T1……芯材厚み、T2……表面材厚み、L1…左側の支持軸16から移乗用板の左側縁面14gまでの寸法、L2…右側の支持軸16から移乗用板の右側縁面14hまでの寸法、R1…軸部16bの表面側半径、R2…軸部16bの裏面側半径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定した支持具に支持させた移乗用板を、浴槽の洗い場側から反対側へ向かう左右方向に沿う開口縁部の上に起立する待機状態から浴槽の前後方向に沿う左右の開口縁部に跨がって伏倒する使用状態まで揺動可能且つ左右移動不能とした移乗用板付き入浴装置において、
移乗用板は、揺動中心側の左右方向に沿う縁面より外側へ突出しない内側の位置に、左右方向へ延びる支持軸を設け、
支持具は、揺動中の移乗用板の上記縁面を浴槽の左右方向に沿う開口縁部に摺動案内させるように、揺動中の移乗用板の支持軸を上下移動自在に案内しつつ支持軸の前後方向の移動を規制する縦長凹部を設け、使用状態における支持軸を縦長凹部の底面に当接させないようにした
ことを特徴とする移乗用板付き入浴装置。
【請求項2】
前記支持具及び前記支持軸を左右両側寄りに各々設けると共に、左右両側の支持具に対して左右両側の支持軸を着脱自在とし、左側の支持軸から移乗用板の最外側の左側縁面までの寸法と、右側の支持軸から移乗用板の最外側の右側縁面までの寸法とが異なる請求項1記載の移乗用板付き入浴装置。
【請求項3】
前記浴槽に近接する壁面又は浴槽に対して前記支持具を着脱自在に配置した請求項1又は2記載の移乗用板付き入浴装置。
【請求項1】
固定した支持具に支持させた移乗用板を、浴槽の洗い場側から反対側へ向かう左右方向に沿う開口縁部の上に起立する待機状態から浴槽の前後方向に沿う左右の開口縁部に跨がって伏倒する使用状態まで揺動可能且つ左右移動不能とした移乗用板付き入浴装置において、
移乗用板は、揺動中心側の左右方向に沿う縁面より外側へ突出しない内側の位置に、左右方向へ延びる支持軸を設け、
支持具は、揺動中の移乗用板の上記縁面を浴槽の左右方向に沿う開口縁部に摺動案内させるように、揺動中の移乗用板の支持軸を上下移動自在に案内しつつ支持軸の前後方向の移動を規制する縦長凹部を設け、使用状態における支持軸を縦長凹部の底面に当接させないようにした
ことを特徴とする移乗用板付き入浴装置。
【請求項2】
前記支持具及び前記支持軸を左右両側寄りに各々設けると共に、左右両側の支持具に対して左右両側の支持軸を着脱自在とし、左側の支持軸から移乗用板の最外側の左側縁面までの寸法と、右側の支持軸から移乗用板の最外側の右側縁面までの寸法とが異なる請求項1記載の移乗用板付き入浴装置。
【請求項3】
前記浴槽に近接する壁面又は浴槽に対して前記支持具を着脱自在に配置した請求項1又は2記載の移乗用板付き入浴装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−143056(P2011−143056A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5928(P2010−5928)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
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