説明

移動スキル情報提供装置

【課題】移動中のトラブル発生を低減しながら、他の車両の移動スキルに関する情報を得られるようにした移動スキル情報提供装置を提供する。
【解決手段】センタ装置20の制御装置21は、登録された車両S,A,B,Cのランク付けを行うことで、最上級ランクの車両S,上級ランクの車両A、中級ランクの車両B、初級ランクの車両Cであることをランク付けする。センタ装置20の制御装置21は、最上級ランクの車両Sの車載端末1Sから得られた移動スキルに関する情報を上級ランクの車両Aの車載端末1Aに提供する。車両Aの車載端末1A側で移動スキルが確立されると、制御装置21は、上級ランクの車両Aの車載端末1Aの移動スキルに関する情報を当該車載端末1Aから受信し、中級ランクの車両Bの車載端末1Bに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある車両の移動スキルを他車両の車載端末に提供する移動スキル情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動支援システムは、VICS(登録商標)、ブローブカーによって収集される情報を用いて交通情報を生成し、渋滞回避経路等についてより効率的な移動経路を提供するシステムとして知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1の技術思想を適用したとしても、合流やレーン移動が苦手なユーザに車線数の多い道路の合流する経路誘導を行うなど、ユーザのスキルや嗜好に合わない経路誘導を行うことがあった。
【0003】
また、ユーザを類似性の高いグループ毎に分け、行動上の傾向を分析してグループの好みを把握し、好みに合った形式で経路情報を提供する技術も提供されている(例えば、特許文献2参照)。また、他者の抜け道データを利用する際、運転技能や車両サイズによってユーザのスキルに合わない可能性がある場合はデータを利用しない技術も提供されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3には、情報提供側の運転技能が自車両のドライバーよりかなり上なら抜け道の走行軌跡情報を経路案内に利用しない点が開示されている。また、走行軌跡情報送信側の車両のサイズが自車両のサイズよりも小さいときには、経路案内に抜け道の走行軌跡情報を利用しない、点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−31422号公報
【特許文献2】特開2002−228471号公報
【特許文献3】特開2004−257825号公報(請求項6、請求項7、0030段落、0031段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3記載の技術思想では、運転者は運転経験の長い熟練運転者が保有する豊富な移動スキルに関する情報を得られることはない。これは、例えば運転初心者は運転経験の長い熟練運転者の経験を利用したり真似したりすると移動中にトラブルを発生することがあるためである。しかし、他の車両の移動スキルに関する情報を得られなければ移動スキルに関する情報の取得利便性に劣る。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、移動中のトラブル発生の可能性を低減しながら他車両の移動スキルに関する情報を得られるようにした移動スキル情報提供装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、第2ランクの車両において第1ランクの車両の移動スキルに関する情報を利用して移動スキルが確立された後、提供手段は第2ランクの車両の移動スキルを一段階下の第3ランクの車両の車載機器に提供する。このため、一段階上にランク付けられた車両の運転者の移動スキルを利用でき、少し上の運転技能を利用できるようになる。これにより、移動スキルが相当ランク上の熟練運転者の経験を直接利用することがなくなるため、移動中におけるトラブル発生の可能性を低減でき、しかも上級の運転者の移動スキルに関する情報を初級の運転者が得られるようになる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、提供手段は車両の移動経路情報を移動スキルに関する情報として提供する。第1ランクの車両の移動経路情報が第2ランクの車両の車載機器に提供された後に、提供手段が第2ランクの車両の移動経路情報を第3ランクの車両の車載機器に提供するときには、第1ランクの車両の移動経路情報に一部経路変更が加わった移動経路情報を提供する。このため、第1ランクの車両の移動経路情報が直接第3ランクの車載機器に直接提供されることがなくなり、移動中におけるトラブル発生の虞を低減できる。特に第3ランクの車両側では、第2ランクの車両で一部経路変更が加わった移動経路情報を利用できるようになり、移動中におけるトラブル発生の虞を低減でき、かつ他車両の移動スキルに関する情報を得る機会が増す。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、提供手段は、複数の車両の所定率以上が採用または一台の車両が採用した回数が所定回数以上となることを条件として車両の移動スキルに関する情報を提供する。この場合、移動スキルに関する情報はより採用率の高いまたは一般に適した情報となるため、ユーザが利用するのに難易度が低くなりトラブル発生の虞を低減できる。
【0010】
請求項4記載の発明によれば、車両特性、もしくは、当該車両の運転者の嗜好に関する特性に応じて車両が初期の複数グループに分類された後、設定手段は車両の走行距離に応じて複数グループ内で細分化グループを設定する。このため、グループに所属する車両が多くなったとしてもグループに所属する車両が飽和することなくグループを細分化できる。
【0011】
請求項5記載の発明によれば、ランク付け手段は、車両特性、もしくは、当該車両の運転者の嗜好に関する特性に応じて車両を複数グループに分類された状態で当該分類された同一グループ内で車両の移動スキルをランク付けする。提供手段は、車両特性、車両の運転者の嗜好に関する特性毎にグループ分けされた同一グループ内にて移動スキルに関する情報を下位ランクの車両の車載機器に提供する。このため、車両特性、車両の運転者の嗜好に関する特性毎に移動スキルが異なる場合には、下位ランクの車両の車載機器に対しより有効な情報を提供できる。
また、グループに分類し、グループ内でのスキルをやり取りするため、初級者は同じ傾向を持つ上級者のスキルを得られ、結果的にトラブルを低減できる。
【0012】
請求項6ないし9の何れかに記載の発明によれば、ランク付け手段は、車両特性、もしくは、当該車両の運転者の嗜好に関する特性に応じて車両を複数グループに分類された状態で当該分類されたグループ毎に車両の移動スキルをランク付けする。このとき、請求項6記載の発明のように、互いに類似した第1および第2グループ間の同等ランクのランクを対応付けても良いし、請求項7記載の発明のように、第2グループの車両のサイズが第1グループの車両のサイズより大きいときには、第2グループの上位ランクを一段階下の第1グループの下位ランクと同等ランクに対応付けるようにしても良い。また、請求項8記載の発明のように、第1グループの車両が大きな商用車であり、第2グループの車両が前記第1グループの車両よりも小さな普通車であるときには、第2グループの最上位ランクを第1グループの全ランクと同等ランクに対応付けるようにしても良い。
【0013】
すると、提供手段は、第1グループの車両の移動スキルに関する情報をランク付け手段に対応付けられた同等ランクの第2グループの車両の車載機器に提供することによって、類似したグループ間でより利用しやすい移動スキルに関する情報を提供できるようになり、移動中におけるトラブル発生の虞を低減しつつ、より多くの有用な上級運転者の情報を得られるようになる。また、請求項9記載の発明のように、第1グループの車両が前記第2グループの車両に比べて同等の大きさもしくは小型の車両である場合、提供手段は、第1グループから第2グループの車両の車載機器への移動スキルに関する情報の提供を行わないようにしても良い。
【0014】
請求項10,11,12記載の発明のように、車両が頻繁に移動する経路を逸脱した移動距離の長さに応じてランク付けしたり、車両の移動履歴情報、車両の操作履歴情報に基いてランク付けすると良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態について概略的に示すブロック構成図
【図2】移動スキル情報提供システムのイメージ図
【図3】データベースの管理態様を示すイメージ図
【図4】スキル判定処理を概略的に示すフローチャート
【図5】ランクの説明図
【図6】事例説明図(その1)
【図7】事例説明図(その2)
【図8】本発明の第2実施形態についてランク対応付け内容を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図7を参照しながら説明する。図1は、移動スキル情報提供システムのブロック図を示しており、図2は移動スキル情報提供システムのイメージ図を示している。移動スキル情報提供システムASは、移動スキル情報提供装置としてのセンタ装置20,および複数の車両S,A,B,Cの車載端末1S,1A,1B,1Cを備える。
【0017】
図2に示すように、車両Sには車載端末1Sが搭載されており、車両Aには車載端末1Aが搭載されている。また、車両Bには車載端末1Bが搭載されており、車両Cには車載端末Cが搭載されている。これらの車載端末1S,1A,1B,1Cはそれぞれセンタ装置20との間で電波信号により相互通信する。これにより、各車両S,A,B,Cの車載端末1S,1A,1B,1Cは相互に情報交換できる。
【0018】
各車載端末1S,1A,1B,1Cは、車両用ナビゲーション装置としての機能を備える。車載端末1S,1A,1B,1Cは互いに同様のナビゲーション機能を備えると仮定し、以下、車載端末1Aの機能のみ説明する。
【0019】
車載端末1Aは制御装置2を備え、当該制御装置(制御ユニット)2に、位置検出器3、地図データ入力器4、操作スイッチ群5、VICS(登録商標)受信機6、通信装置7、外部メモリ8、表示装置9、音声コントローラ10、音声認識部11、リモコンセンサ12を接続して構成される。リモコンセンサ12にはリモコン13が赤外線接続され、音声コントローラ10にはスピーカ14が接続され、音声認識部11にはマイク15が接続される。
【0020】
制御装置2は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されたものであり、CPU、RAM、ROM及びI/Oバス(何れも図示せず)を備え、各種の制御プログラムを実行して装置全体の動作を制御する。位置検出器3は、Gセンサ3a、ジャイロスコープ3b、距離センサ3c、GPS受信機3d等を備えて構成され、これらの各構成要素は互いに性質の異なる検出誤差を有しているため、制御装置2はこれら各構成要素から入力した検出信号を互いに補間して車両の現在位置を特定する。
【0021】
地図データ入力器4は、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカード又はHDD等の記録媒体を装着し、地図データ、マップマッチング用データ等を入力する。操作スイッチ群5は、表示装置9の周辺に配置されるメカニカルキーや表示装置9の表示画面上に形成されるタッチキーから構成されている。
【0022】
VICS受信機6は広域通信網を通じて広域通信を行い、VICSセンタ装置(図示せず)から送信されたVICS情報について広域通信網を通じて受信する。外部メモリ8は、HDD等の大容量記憶装置から構成されている。
【0023】
表示装置9は、例えばカラー液晶ディスプレイにより構成され、メニュー選択画面、目的地設定画面、経路案内画面等の各種の表示画面を表示し、車両の現在位置を表す現在位置マークや走行軌跡、VICS情報等を地図データの地図上に重ねて表示する。
【0024】
音声コントローラ10は、例えば警告音や経路案内の案内音声等をスピーカ14から出力させる。音声認識部11は、制御装置2により動作が制御され、起動状態ではマイク15から入力した音声を音声認識アルゴリズムにしたがって音声認識可能な状態とする。リモコンセンサ12は、リモコン13から送信された操作検出信号を受信すると、その受信した操作検出信号を制御装置2に出力する。撮像装置16は、車両A、B、Cの各周辺(前方、後方、右側方、左側方)などを撮像するカメラであり、制御装置2から撮像指示を受け付けると、車両周辺を撮像する。
【0025】
制御装置2は、地図データを取得する地図データ取得部、車両の現在位置と地図データ取得部により取得された地図データ内の道路データとを使用して車両の現在位置が存在する道路を特定するマップマッチング部、マップマッチング部により特定された車両の現在位置からユーザにより設定された目的地までの経路を探索する経路探索部、経路探索部により探索された経路及び地図データ内の道路データや交差点の位置データ等に基づいて経路案内に必要な地点を算出して経路案内する経路案内部、車両の現在位置周辺の地図や高速道路の略図や交差点付近の拡大図等を描画する描画部等を備えている。
【0026】
他方、センタ装置20は、制御装置(ランク付け手段、提供手段、設定手段)21を主として構成され、当該制御装置21に通信装置22、ユーザ情報データベース23、移動操作履歴情報データベース24、道情報データベース25を接続して構成される。
【0027】
図3は、センタ装置が管理するデータベースの概要を示している。
ユーザ情報データベース23には、多数の車両S,A,B,Cの車載端末1S,1A
1B,1Cの各ユーザが登録されており、ユーザIDと車両特性(例えば車種情報:後述参照)が対応付けて登録されている。
【0028】
移動操作履歴情報データベース24には、ユーザID毎に、移動履歴情報、操作履歴情報、総走行距離、経路種別の選択回数、平均右左折回数(右折回数,左折回数の距離に応じた平均値)、制限速度超過割合(=M1%:制限速度以下通行回数,制限速度超過回数)、有料道路使用割合(=M2%:走行距離に対する有料道路走行距離)、細街路使用割合(=M3%)、繰り返し移動外の移動距離(往復移動道路が同一以外の移動距離)が登録されている。 道情報データベース25には、ユーザID毎に、所定回数以上通過した道路のリンクIDとその方向(正方向、逆方向)が登録され管理されている。
【0029】
ここで、移動履歴情報は、各車両S,A,B,Cが走行した移動の履歴情報を示している。各車載装置1S,1A,1B,1Cの制御装置2は、車内センサ(図示せず)を用いて測定した移動履歴を内部メモリに記憶する。各車載装置1S,1A,1B,1Cの制御装置2は当該移動履歴情報をセンタ装置20に送信することで、センタ装置20が移動履歴情報を移動操作履歴情報データベース24に記憶し管理する。
【0030】
この移動履歴情報は、移動軌跡情報、移動体の動作情報を含んでおり、移動軌跡情報は、出発地情報(出発地座標、出発地出発時刻)、目的地情報(目的地座標、目的地到着時刻)、出発地から到着地までの座標点列、出発地〜到着地に至るまでに通過(出発/到達)するリンクの識別情報(リンクID列:通過経路情報)、さらに、出発地〜到着地に至るまでに通過するノードの識別情報を示している。また、移動体の動作情報は、エネルギーの消費オンオフやその消費量、方向指示器操作情報、急加速情報、急減速地点情報、移動速度情報を示している。
【0031】
また、操作履歴情報は、車載端末1S,1A,1B,1C内における操作の履歴情報を示している。各車載装置1S,1A,1B,1Cの各制御装置2はユーザが操作スイッチ群5を操作したか否かを検出し、当該操作履歴を内蔵メモリ内に記憶する。各車載装置1S,1A,1B,1Cの制御装置2は、それぞれ操作履歴情報をセンタ装置20に送信し、センタ装置20の制御装置21が操作履歴情報を移動操作履歴情報データベース24に記憶し管理する。
【0032】
操作履歴情報は、例えば、目的地を検索の有無、目的地設定した場合には選択、指定した経路条件の有無など、全体経路表示後の地図操作をしたか(スクロール、縮尺変更等)、案内開始の有無、案内中の地図画面表示情報(地図方位、縮尺、モード(2D,3D等)、案内中の地図操作(スクロール,縮尺変更等))の情報を示す。
【0033】
制御装置21は、ユーザ情報データベース23に基いて所属グループ(図3中のAグループ、…、Gグループ)を設定する。このグループは、ユーザ情報データベース23に記憶される車両特性(車両の種類:例えば、大型自動車、普通自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、電動車イス、大型輸送車、大型バス、キャンピングカー、軽自動車、コンパクトカー、ワンボックスカーなど、また、車両特徴(車両サイズ:幅、高さ、長さ、重量、乗員可能数等、動力エネルギーの種類:化石燃料、電気、水素、バイオ燃料、化石燃料および電気等)、車両の製品名(車種)、車両識別番号)に応じて分類されるものであり、あるユーザが所有する1台の車両であっても1または複数グループに分類されることもある。
【0034】
また、このグループは、車両の運転者の嗜好に応じた特性に応じて分類しても良い。これは、運転者の行動傾向、健康関心度、エコ意識(省エネルギー意識の高低)、新たな道路や道なり施設に対する好奇心、など運転者の好みに応じて分類することを示している。
【0035】
制御装置21は、各ユーザの移動履歴情報に基いて各ユーザの総移動距離を算出し、ある一つのグループ(例えばGグループ)内において、ユーザの総移動距離(走行距離)が所定距離(Nkm以上)であるときには、例えば選択した最多経路の道路種別、および、行動特性でさらにグループを細分化して分けている。すると、グループに所属する車両が多くなったとしてもグループに所属する車両が飽和することがなくなる。
【0036】
図4は、グループ分け処理(詳細グループ分け処理)の動作についてフローチャートにより示している。前述したように、センタ装置20側の制御装置21では、各車両S,A,B,C(車載端末1S,1A,1B,1Cのユーザ)をユーザ情報データベース23に記憶される車両特性に応じて初期所属グループに分ける(S1)。ここでは、例えば車両Aが車種情報に基づいて主グループGに分けられていると仮定する。その後、制御装置21は、移動履歴情報に基いて車両Aが所定距離(Nkm)以上走行したか否かを判定する(S2)。これは、走行距離がどの程度であるかに応じて各車両がどのように使用されているか判別できるためである。
【0037】
ステップS2において、NOと判定されると、制御装置21は所属グループを主グループ内の全ての細分化グループに所属させる(S3)。制御装置21は、ステップS1にて車両Aが車種情報に基づいて主グループGに分けられたと仮定すると、ステップS3において主グループの全ての細分化グループ(G1〜Gn)に所属するように設定する。
【0038】
他方、ステップS2において、制御装置21は走行距離がNkm以上である(S2:YES)と判定すると、選択最多経路の種別、行動特性に応じて1または複数の細分化グループを設定する(S4,S5)。制御装置21は、各車両の移動履歴情報、操作履歴情報を参照し、この情報に応じて各車両(車載端末1S,1A,1B,1C:ユーザ)をグループに分ける。
【0039】
その後、制御装置21は、繰り返し移動を伴わない移動距離の長さに応じて移動スキル(最上級、上級、中級、初級)のランクを設定する(S6)。例えば、最上級ランク、上級ランクの移動スキルユーザは、地図認識能力や空間認知能力も高く、例えば高速道路、一般道(国道、県道、市道など)、細街路、抜け道、難交差点、峠道などの経路も熟知しており、様々な道路に精通する。
【0040】
また、中級ランクの移動スキルユーザは、例えば細街路、難交差点、抜け道などは熟知していないものの、一般道(国道、県道、市道など)、高速道路などを主に利用して走行する。また、初級ランクの移動スキルユーザは、地図認識能力や空間認知能力も低い初心者などであり一般道を慎重に走行するユーザであり、高速道路などの走行は不得手である。
【0041】
すなわち、このステップS6では、車両が何れの経路を頻繁に繰り返し移動しているか否かを判定し、この頻繁に移動している経路を逸脱した移動距離の長さを計測し、この長さに応じて車両(車載端末1S,1A,1B,1C:ユーザ)を最上級ランク、上級ランク、中級ランク、初級ランクなどの3以上のランクの移動スキルの車両(車載端末1S,1A,1B,1C:ユーザ)に分ける。
【0042】
すなわち、頻繁に移動する経路を逸脱する移動距離の長さが長い場合には、新たな経路を開拓する余裕のある上級ランクの移動スキルのユーザと判断できる。また、頻繁に移動する経路を逸脱することなくほぼ同一の経路を頻繁に通行する場合には、新たな経路を開拓する余裕のない初級ランクの移動スキルのユーザと判断できる。特に、制御装置21は、頻繁に移動する経路を逸脱した移動距離の長さに応じて最上級ランク…上級ランク…中級ランク…初級ランクと判断するため、移動スキル判断を的確に行うことができる。
【0043】
また、以下のように、移動履歴情報から移動スキルを判定しランク付けする方法も挙げられる。すなわち、制御装置21が移動履歴情報と地図情報を参照し、車両S,A,B,Cが移動した道路毎に経験回数をカウントし、一定値を超えた場合には、その道路特徴を克服する移動スキルを有するものと判断し、一定値に満たない場合にはその道路特徴を克服する移動スキルが十分ではない可能性があるものと判定し、当該情報に応じてランク付けする。さらに具体的には、移動軌跡情報(移動経路の特徴)に基いてランク付けできる。この移動経路の特徴とは、例えば左折,右折,合流、レーン移動等を示している。制御装置21は、移動軌跡情報と地図データと方向指示器操作情報とから右折、左折、合流、レーン移動等の行動を行ったか否か判断し、その経路特徴を克服する移動スキルがあるか否かを判定する。制御装置21は、この判定結果に応じてランク付けを行うことができる。つまり、一度付けられたランクであっても、その後の移動スキルの向上等、変化に応じて変動していくのである。
【0044】
また、操作履歴情報に基いてランク付けできる。制御装置21は、操作履歴情報を参照し「ユーザが目的地を検索するが、目的地設定をすることなく地図スクロールや縮尺変更を行い移動開始し、検索した目的地に向かった」として判定した場合には、目的地は過去の目的地に存在しない場所である可能性が高いと判断し、移動スキル(地図を読み取る能力、方向間隔、運転技能等)が高いと判定する。また、例えば、制御装置21が、「目的地を設定した後、地図スクロールや縮尺変更を行うことなく経路誘導に従って移動し、目的地は、過去の目的地の履歴に存在し、複数回目である」と判定した場合には、移動スキル(地図を読み取る能力、方向間隔、運転技能等)が低いと判定する。制御装置21は、このような例に基いて総合的に移動スキルのランクを判定できる。
【0045】
例えば3つのランクに分けたときには、移動スキルに応じたユーザ数は、中級ランクが最も多く、初級ランク、上級ランクのユーザは中級ランクのユーザに比較して少ない。センタ装置20の制御装置21は、道情報データベース25の記憶内容および移動スキルのランクに応じて、車両Sの車載端末1S、車両Aの車載端末1A、車両Bの車載端末1B、車両Cの車載端末1Cにそれぞれ経路演算結果を提供する。
【0046】
図5は、本実施形態の特徴部分について模式的な説明図を示している。この図5では、ある所定の同一グループ(例えばGグループ)内でランクを4段階に分けてランク付けした例を示している。図5には、上から最上級ランクの車両S、上級ランクの車両A、中級ランクの車両B、初級ランクの車両Cを示している。
【0047】
初級ランクの車両Cのユーザは、最上級ランクの車両S、上級ランクの車両Aのユーザの移動スキルに関する情報(移動経路情報、道路知識など)を利用しにくい。これは、最上級ランクの車両S、上級ランクの車両Aのユーザは様々な道路に精通しているため、例えば難解な道路も苦も無く通行でき、一般道のみを慎重に走行する初級ランクの車両Cのユーザにとって上級ランクの車両Aの移動スキルに関する情報は手に余るためである。
【0048】
そこで、本実施形態では、センタ装置20の制御装置21は、移動スキルのランクを車両S,A,B,C(車載端末1S,1A,1B,1C)間で相対的に評価し、最上級ランクの移動スキルを有する車両Sのユーザが確立した移動スキルに関する情報を上級ランクの移動スキルを有する車両Aのユーザ(車載装置1A)に提供し、上級ランクの移動スキルを有する車両Aのユーザが確立した移動スキルに関する情報を中級ランクの移動スキルを有する車両Bのユーザ(車載装置1B)に提供するようにしている。
【0049】
また、中級ランクの移動スキルを有する車両Bのユーザが確立した移動スキルに関する情報を初級ランクの移動スキルを有する車両Cのユーザ(車載装置1C)に提供するようにしている。この場合、センタ装置20の制御装置21が移動スキルに関する情報を統括管理し通信装置22を通じて当該情報を送信し、それぞれの車載装置1A,1B,1Cでは通信装置7を通じて制御装置2が受信する。
【0050】
すでに述べたように、車両S,A,B,Cのユーザの移動スキルは互いに異なるものである。このため、各車両S,A,B,C(車載端末1S,1A,1B,1C)間で送受信される移動スキルに関する情報は様々な事情に応じて異なる。以下、その説明を行う。
【0051】
<事例1>
事例1は、全ランクの車両S,A,B,C(車載端末1S,1A,1B,1C)で互いに異なる移動方法の変換が発生したことを考慮している。この事例1では、例えば、車両S(車載端末1S)のユーザが、自身の好みに合った最適な経路(例えば抜け道、細街路など)を通過することでその旨の移動履歴情報を車載端末1S内に蓄積する。車載端末1Sの制御装置2は、この情報を逐次蓄積することで車両Sのユーザの移動スキルとして確立されるようになる。
【0052】
図6(a)は、この例を示している。出発地Sから目的地Eまで至るルートは多数存在するが、車両Sのユーザが出発地Sから目的地Eまで何度も通行し確立したルートは細抜け道Y1、Y2、難交差点Zなどを通行するルートとなっている。このルートは、車両S内の移動スキルとして確立された後、車載端末1Sから車載端末1Aに当該移動スキルに関する情報として提供される。
【0053】
この移動スキルが車載端末1Sからセンタ装置20を通じて提供されると、車載装置1Aはこの移動スキルを車載装置1Aの表示装置7の表示画面に表示し推奨ルートの案内を行う。車両A(車載端末1A)のユーザは、自身の好みに合った最適な経路を通過することでその旨の移動履歴情報が車載端末1A内に蓄積される。
【0054】
例えば、図6(b)に示すように、車両Aのユーザは、車両Sのユーザにより確立された移動スキルを参考とし、細抜け道Y1、Y2、難交差点Zを通行するルートを参照するものの、難交差点Zの通行が苦手である場合もあるため、この難交差点Zを避けるように碁盤目状経路Y3を通行し、その後、近道を選択するため車載端末1Sから提供された細抜け道Y2を選択して通行する。すなわち、車両Aのユーザには車両Sの移動スキルが提供されるものの、この移動スキルを参考にするに留め、一部の経路Y2を利用するものの、それ以外の道路では他の移動経路Y3を選択している。
【0055】
車両Aのユーザは自身の好みに合った最適な経路を通過することで、車載端末1Aはその旨の移動履歴情報を蓄積する。そして、移動スキルが確立されることになる。すなわち、車載端末1S内で蓄積される移動スキルに関する情報と、車載端末1A内で蓄積される移動スキルに関する情報とは互いに異なる情報となる。図6(b)に示すように、経路Y3、Y2を選択して通行することが車載端末1Aの移動スキルとして確立されると、車両Aの車載端末1Aから車載端末1Bにこの旨の移動スキルが提供される。車載装置1Bはこの移動スキルを車載装置1Bの表示装置7の表示画面に表示し推奨ルートの案内を行う。
【0056】
車両Bのユーザは、車両Aの移動スキルが提供されたとしても、自身の好みに合った最適な経路を運転して通過することでその旨の移動履歴情報を車載端末1B内に蓄積する。例えば、図6(c)に示すように、車両Bのユーザは、車両Aの車載端末1Aから提供された移動スキルを参考とし、この移動スキルを参考にするに留め、交差点Z2で右折することなく直進する他の経路を選択している。すると、車両Bの車載端末1B内でも同様に移動スキルが車載端末1Aとは異なる態様で確立される。
【0057】
図6(c)に示す例では、車両Bのユーザは、経路Y3を通行した後、細抜け道Y2を選択することなく直線上の道路を選択し碁盤目状の経路Y4を選択している。図6(c)に示すように、車載端末1内では、経路Y3,Y4を選択して通行することが移動スキルとして確立されると、車両Bの車載端末1Bから車載端末1Cにこの旨の移動スキルが提供される。車載装置1Cはこの移動スキルを車載装置1Cの表示装置7の表示画面に表示し推奨ルートの案内を行う。
【0058】
車両Cのユーザは、この経路Y3,Y4についての移動スキルを参考とし、自身の好みに合った最適な経路を運転して通過することでその旨の移動履歴情報を車載端末1C内に蓄積する。車両Cのユーザは、車両Bの移動スキルを参考とするものの、より慎重に道路を選択し、経路Y3の一部および大道路Y5を通行する。
【0059】
<事例2>
事例2は、車載端末1Sが車載端末1Aに移動スキルを提供したものの、車両A(車載端末1A)のユーザが受信した移動スキルを試行することなく、以後、移動スキルの変換が行われない例を示す。
【0060】
この事例2は、車両S(車載端末1S)のユーザが移動スキルを提供したものの車両A(車載端末1A)のユーザは移動スキルをそのまま利用する。図7(a)に示すように、車載端末1Sから車載端末1Aに経路Y1,Y2の情報が提供された後、図7(b)に示すように、車載端末1Aのユーザは経路Y1の一部、Y6,Y4を開拓する。すなわち、車両Aのユーザは、車載端末1Sから従来から使用していた経路より早く到着可能な経路が提供されたと感じたが、難交差点Z付近の道路形状が非常に複雑で合流が多く走行困難であると感じた。この難交差点Z付近は信号つきの交差点であり直進することで経路Y6方向に転換することが容易であることを知っていたため経路Y6を採用した。
【0061】
車載端末1Aのユーザは、当該経路Y1の一部,Y6,Y4をそのまま移動スキルとして構築し、その移動スキルは車載端末1Bに提供される。車載端末1B,1Cのユーザは経路Y3,Y2をそのまま利用して移動スキルとして構築する。すなわち、車載端末1B,1Cでは移動スキルの変換が生じない。このような事例2も考えられる。
【0062】
<事例3>
事例3は、車載端末1Sが車載端末1Aに移動スキルを提供したものの、車両A(車載端末1A)のユーザが当該提供された移動スキルを利用することなく車両Aの車載端末1Aから下位ランクの車載端末1B,1Cに提供されないという事例である。すなわち、車載端末1B,1Cには移動スキル自体が提供されることはない。このような事例3も考えられる。
【0063】
なお、センタ装置20の制御装置21には多数の車両が登録されており、当該車両はそれぞれランク付けされるようになっているが、これらの車両のうちの所定率以上が採用または一台の車両が採用した回数が所定回数以上となることを条件として他の車両に移動スキルを提供すると良い。すると、一般に適した情報がより下位ランクの車両の車載端末に提供されるようになり利用難易度が低くなる。
【0064】
要するに、第1実施形態によれば、次の特徴的な構成、作用効果を奏する。センタ装置20の制御装置21は、登録された車両S,A,B,Cのランク付けを行うことで、最上級ランクの車両S,上級ランクの車両A、中級ランクの車両B、初級ランクの車両Cであることをランク付けする。センタ装置20の制御装置21は、最上級ランクの車両Sの車載端末1Sから得られた移動スキルに関する情報を上級ランクの車両Aの車載端末1Aに提供する。
【0065】
車両Aの車載端末1A側で移動スキルが確立されると、制御装置21は、上級ランクの車両Aの車載端末1Aの移動スキルに関する情報を当該車載端末1Aから受信し、中級ランクの車両Bの車載端末1Bに提供する。車両Bのユーザは、この移動スキルに関する情報を参照し、自身の都合の良い経路に変更し移動スキルを確立する。車両Bの車載端末1B側で移動スキルが確立されると、制御装置21は、当該車載端末1Bの移動スキルに関する情報を当該車載端末1Bから受信し、初級ランクの車両Cの車載端末1Cに提供する。
【0066】
これにより、最上級ランクの車両Sのユーザの移動スキルが上級ランクの車両A(車載端末1A)のユーザに提供され、上級ランクの車両A(車載端末1A)のユーザの移動スキルが中級ランクの車両B(車載端末1B)のユーザに提供される。そして、中級ランクの車両Bのユーザの移動スキルが初級ランクの車両C(車載端末1C)のユーザに提供される。
【0067】
この場合、熟練した最上級ランク(最上位)の車両Sのユーザの移動スキルが初級ランク(最下位)の運転初心者の車両Cのユーザに車載端末1Aに提供されることはない。したがって、運転初心者である車両Cのユーザが、熟練運転者である最上級ランクの車両Sのユーザの運転技能を真似ることがなくなり、トラブル発生を低減できる。つまり初心の運転者が得る情報は最上級ランクの運転者のスキルをその下位ランクの運転者が噛み砕いたものであるので、扱いづらくなることが少ない。しかも、上級ランクの運転者のスキルの一部を多少変換された形であっても得られるため、運転の上級者のスキルを得られる機会が従来よりも増している。
【0068】
また、センタ装置20の制御装置21は、車両の所定率以上が採用または一台の車両が採用した回数が所定回数以上となることを条件として他の車両に提供しているため、この提供情報は一般採用率が高くより一般に適した情報となり、ユーザの利用難易度が低くなり、さらにトラブル発生の虞を低減できる。
【0069】
センタ装置20の制御装置21は、車両特性にてグループ分けされた同一グループG内でランク付けして移動スキルに関する情報をより下位ランクの車載装置に提供している。このため、同一グループ内において下位ランクの車両の車載機器に対しより有効な情報を提供できる。このような場合、例えば、軽自動車に乗車した初級ランクの運転初心者のユーザが、別グループに分類された大型トラックが頻繁に走行する道路を走行する可能性が低くなり、各グループ毎に誘導道路を棲み分けることができ、各グループの車両のユーザは、その他大きく異なるグループに所属する車両と遭遇する可能性を低減できる。
【0070】
また、車両Cの運転者は、運転技能が低い、または、不慣れな土地を走行するなどの理由から、適切な移動知識を自ら獲得することが困難な状況下にあっては、運転者の嗜好が同一または類似のグループ内の移動知識を活用できるようになり、無理のない移動支援を実現できる。
また、各車両の運転者は、移動支援のサービスに基いて自らの移動スキルに合わせて変更を施した移動を行うことができ、さらにひとつ下のランクの他車両に対して移動スキルを提供できる。
【0071】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、車両を複数のグループに分類し、同一グループ内のみに関わらず類似グループ間においてランクを対応付けし、対応付けられたランク間で車両の車載端末に対し移動スキルに関する情報を提供するところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分について説明する。
【0072】
図8は、ランクの対応付けの例を示している。センタ装置20の制御装置21は、前述実施形態に説明したように複数グループに分類するが、これらの複数グループが例えば、軽自動車グループ、コンパクトカー(軽自動車よりも大きな車両サイズとなる自動車)グループ、大型トラック(コンパクトカーよりも大きな車両サイズとなる商用車)グループに分けられると仮定した例を示している。
【0073】
センタ装置20の制御装置21は、これらのグループについて同一グループではないもののほぼ同じ分類に属する類似グループであると判定する。前述実施形態では、同一グループ内においてランク付けを行ったが、本実施形態では、類似グループ間でランクが対応付けられた車載装置に対して移動スキルに関する情報を送信する。
【0074】
図8(a),図8(b)に示す例では、センタ装置20の車載装置21が、小さな車両サイズの軽自動車グループからより大きな車両サイズのコンパクトカーグループに移動スキルに関する情報を送信する例を示している。
【0075】
この図8(a)に示す例によれば、センタ装置20の車載装置21は、軽自動車グループのランクSaの車両をコンパクトカーグループのランクSbの車両と同等ランクに対応付けている。同様に、センタ装置20の車載装置21は、軽自動車グループのランクAaの車両をコンパクトカーグループのランクAbの車両と同等ランクに対応付けている。さらに、センタ装置20の車載装置21は、軽自動車グループのランクBaの車両はコンパクトカーグループのランクBbの車両と同等ランクに対応付けている。さらに、軽自動車グループのランクCaの車両をコンパクトカーグループのランクCbの車両と同等ランクに対応付けている。
【0076】
図8(b)に示す例によれば、センタ装置20の車載装置21は、軽自動車グループのランクAaの車両をコンパクトカーグループのランクSbの車両と同等ランクに対応付けている。同様に、軽自動車グループのランクBaの車両をコンパクトカーグループのランクAbの車両と同等ランクに対応付けている。さらに、軽自動車グループのランクCaの車両をコンパクトカーグループのランクBbの車両と同等ランクに対応付けている。これは、小さな車両サイズの移動スキルを大きな車両サイズの車両の運転者に提供すれば、一段階上のランクの移動スキルを利用できることを想定し、このような対応付けを行っている。
【0077】
図8(c)に示す例では、センタ装置20の車載装置21は、大きな車両サイズの大型トラックグループ(大きな商用車のグループ)からより小さな車両サイズのワンボックスカーグループ(小さな普通車のグループ)に移動スキルに関する情報を送信する例を示している。
【0078】
図8(c)に示す例によれば、センタ装置20の車載装置21は、大型トラックグループのランクSa,Aa,Ba,Caの車両をワンボックスカーグループのランクSbの車両と同等ランクに対応付けている。これは、大型トラックの運転に係る移動スキルの情報は、ワンボックスカーを運転する運転者にとっても運転技能の優れた運転者にしか利用できないという判定を行っており、移動スキルに関する情報を供給制限することを示している。
【0079】
すなわち、商用車においては、運転を職業としているいわゆるプロのドライバーの移動スキルを用いる。これは、普通車のドライバー(一般ドライバー)にとっては、たとえ自分より体格の大きな商用車であっても扱いにくい情報の可能性が高い。
【0080】
つまり、より大きな車両サイズの商用車の運転に係る移動スキルは、より小さな車両サイズの普通車の運転者にとっては利用しにくいものとなる場合には、運転技能の優れたランクSbのワンボックスカーの運転者にしか供給しないようにしている。すると、大型トラックの移動スキルであってもワンボックスカーの運転者にとって利用できるものとなる。
【0081】
また、次のように移動スキルの情報について条件付きで提供するようにしても良い。例えば、商用車のタクシーの移動スキルを、一般の1ボックスカーのドライバーに提供することは行わないようにしても良い。これはただでさえ比較的体格の大きなワンボックスカーの一般ドライバーに、運転のプロであるタクシードライバーの移動スキルを提供することは非常に酷だからである。すなわち、最上位ランクの一般ドライバーであっても、タクシードライバーのスキルはもてあます可能性があり、トラブルを誘発しかねないためである。
【0082】
そして、センタ装置20の制御装置21は、対応付けられた各グループ間で対応付けられた軽自動車グループの車両の移動スキルに関する情報についてコンパクトカーグループの同等ランクの車両の車載機器(例えば1S,1A,1B,1C)に送信する。
【0083】
本実施形態では、同一グループにおける各ランク間の車両の移動スキルの送受信のみに関わらず、類似グループにおける各ランク間の車両の移動スキルの送受信をも行っている。このため、センタ装置20の制御装置21は、所定グループの車両の移動スキルに関する情報を同等ランクの類似グループの車両の車載機器(1S,1A,1B,1Cの何れか)に提供することにより、類似したグループ間でより利用しやすい移動スキルに関する情報を提供できるようになり、トラブル発生の虞を低減できる。
【0084】
(他の実施形態)
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形または拡張が可能である。
「移動スキルに関する情報」として、各車両S,A,B,Cの移動経路情報(経路)を直接下位ランクの車両の車載端末に提供する実施形態を示したが、移動経路情報(経路)に限らず、その他の道路知識に関する情報(ノウハウなど)を提供するようにしても良い。車両はパーソナルモビリティ、電動車イス、自動二輪車、普通自動車、大型輸送車、大型バス、キャンピングカー、など多種多様な車両を適用できる。
【0085】
同一グループ、類似グループ間で移動スキルに関する情報を送受信する実施形態を示したが、グループ分けは必要に応じて行えば良い。
前述実施形態においては、センタ装置20の制御装置21が各ランクの車両S,A,B,Cの車載端末1S,1A,1B,1Cにそれぞれ必要な移動スキルに関する情報を送信する実施形態を示したが、車両Aの車載端末1Aの制御装置2から車両Bの車載端末1Bに直接または他車両を介して移動スキルに関する情報を提供し、当該車両Bにて移動スキルが確立された後、当該車両Bの車載端末1Bの制御装置2から車両Cの車載端末1Cに直接または他車両を介して移動スキルに関する情報を提供する態様に適用しても良い。
【0086】
すなわち前述実施形態ではセンタ装置20が車両S,A,B,Cの車載端末1S,1A,1B,1Cを統括管理して車載端末1S,1A,1B,1Cに対し移動スキルに関する情報を送信する実施形態を示したが、各車両S,A,B,Cが当該移動スキルに関する情報を車々間通信する態様に適用しても良い。すなわち、各車両S,A,B,Cのそれぞれの車載端末1S,1A,1B,1Cが提供手段としての機能を備えても良い。
【0087】
ランク付け手段の機能はセンタ装置20の外部装置が備える態様に適用できる。
4つのランクS,A,B,Cにランク付けし1段階下位のランクに移動スキルに関する情報を提供する実施形態を示したが、3つにランク分けした形態にも適用できることは言うまでもない。また、4以上の複数段階(例えば5段階)にランク付けされている場合には、1段階下のみに関わらず2段階以上の下位ランクの車両の車載機器に移動スキルに関する情報を提供するようにしても良い。すなわち、4以上の複数段階の最上位ランクの車両から最下位ランクの車両に移動スキルに関する情報を直接提供しなければ如何なる形態で情報を提供するようにしても良い。
【符号の説明】
【0088】
図面中、20はセンタ装置(移動スキル情報提供装置)、21は制御装置(ランク付け手段,提供手段,設定手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の移動スキルについて第1ないし第3ランクを含む少なくとも3つ以上にわけてランク付けするランク付け手段により第1ランクにランク付けされた車両の移動スキルに関する情報が下位の第2ランクの車両の車載機器に提供され、当該第2ランクの車両において前記第1ランクの車両の移動スキルに関する情報を利用して移動スキルが確立された後、当該確立された第2ランクの車両の移動スキルを下位の前記第3ランクの車両の車載機器に提供する提供手段を備えたことを特徴とする移動スキル情報提供装置。
【請求項2】
前記提供手段は車両の移動経路情報を前記移動スキルに関する情報として提供するものであり、
前記第1ランクの車両の移動経路情報が第2ランクの車両の車載機器に提供された後に、前記提供手段が前記第2ランクの車両の移動経路情報を前記第3ランクの車両の車載機器に提供するときには、前記第1ランクの車両の移動経路情報に一部経路変更が加わった移動経路情報を提供することを特徴とする請求項1記載の移動スキル情報提供装置。
【請求項3】
前記提供手段は、複数の車両の所定率以上が採用または一台の車両が採用した回数が所定回数以上となることを条件として当該車両の移動スキルに関する情報を提供することを特徴とする請求項1または2記載の移動スキル情報提供装置。
【請求項4】
車両特性、もしくは、当該車両の運転者の嗜好に関する特性に応じて各車両が初期の複数グループに分類された後、当該車両の走行距離に応じて複数グループ内で細分化グループを設定する設定手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の移動スキル情報提供装置。
【請求項5】
前記ランク付け手段は、車両特性、もしくは、当該車両の運転者の嗜好に関する特性に応じて車両を複数グループに分類された状態で当該分類された同一グループ内で車両の移動スキルをランク付けし、
前記提供手段は、前記特性にてグループ分けされた同一グループ内にて移動スキルに関する情報を下位のランクの車両の車載機器に提供することを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の移動スキル情報提供装置。
【請求項6】
前記ランク付け手段は、車両特性、もしくは、当該車両の運転者の嗜好に関する特性に応じて車両を複数グループに分類された状態で当該分類されたグループ毎に車両の移動スキルをランク付けし、
互いに類似した第1および第2グループ間のランクを対応付けるものであって、前記第2グループのランクを、当該ランクと同等ランクの前記第1グループのランクに対応付けるランク対応付け手段を備え、
前記提供手段は、前記第1グループの車両の移動スキルに関する情報を前記ランク対応付け手段により対応付けられた同等ランクの第2グループの車両の車載機器に提供することを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の移動スキル情報提供装置。
【請求項7】
前記ランク付け手段は、車両特性、もしくは、当該車両の運転者の嗜好に関する特性に応じて車両を複数グループに分類された状態で当該分類されたグループ毎に車両の移動スキルをランク付けし、
互いに類似した第1および第2グループ間のランクを対応付けるものであって、前記第2グループの車両のサイズが前記第1グループの車両のサイズより大きいときには、前記第2グループのランクを、当該ランクの一段階下の前記第1グループのランクと同等ランクに対応付けるランク対応付け手段を備え、
前記提供手段は、前記第1グループの車両の移動スキルに関する情報を前記ランク対応付け手段により対応付けられた同等ランクの第2グループの車両の車載機器に提供することを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の移動スキル情報提供装置。
【請求項8】
前記ランク付け手段は、車両特性、もしくは、当該車両の運転者の嗜好に関する特性に応じて車両を複数グループに分類された状態で当該分類されたグループ毎に車両の移動スキルをランク付けし、
互いに類似した第1および第2グループ間のランクを対応付けるものであって、前記第1グループの車両が商用車であり、前記第2グループの車両が普通車であるときには、前記第1グループの車両が前記第2グループの車両より大型の車両であっても、前記第2グループの最上位ランクを前記第1グループの全ランクと同等ランクに対応付けるランク対応付け手段を備え、
前記提供手段は、前記第1グループの車両の移動スキルに関する情報を前記ランク付け手段に対応付けられた同等ランクの第2グループの車両の車載機器に提供することを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の移動スキル情報提供装置。
【請求項9】
前記第1グループの車両が前記第2グループの車両に比べて同等の大きさもしくは小型の車両である場合は、前記提供手段は、前記第1グループから前記第2グループの車両の車載機器への移動スキルに関する情報の提供を行わないことを特徴とする請求項8記載の情報提供装置。
【請求項10】
前記ランク付け手段は、前記車両が頻繁に移動する経路を逸脱した移動距離の長さに応じてランク付けすることを特徴とする請求項1ないし9の何れかに記載の移動スキル情報提供装置。
【請求項11】
前記ランク付け手段は、前記車両の移動履歴情報に基いてランク付けすることを特徴とする請求項1ないし10の何れかに記載の移動スキル情報提供装置。
【請求項12】
前記ランク付け手段は、前記車両の操作履歴情報に基いてランク付けすることを特徴とする請求項1ないし11の何れかに記載の移動スキル情報提供装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−117877(P2012−117877A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266638(P2010−266638)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】