説明

移動体の位置把握システム

【課題】 通信データ量を低く抑えつつ、目的地への正確な到着時刻を把握する。
【解決手段】 物品輸送を行うトラックなどの移動体11に、移動端末装置110を搭載し、配送拠点Zに設置された管理装置200に対してパケット通信網300を介したデータ通信を行わせる。目的地設定部112には、予め、移動経路に沿った目的地A,B,Cの位置データ(X,Y)が設定され、現在位置認識部111はGPS機能を利用して、現在位置(x,y)を認識する。状況報告部113は、逐次、現在位置(x,y)と目的地(X,Y)とを比較する処理を行い、比較結果が不一致から一致に転じた時点で、データ送信部114を用いて、当該目的地への到着の事実および到着時刻を管理装置200へ報告する。また、比較結果が一致から不一致に転じた時点で、当該目的地からの出発の事実および出発時刻を管理装置200へ報告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置把握システムに関し、特に、移動体が特定の目的地へ到着したり出発したりする時刻を把握するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品輸送を行うトラックや顧客輸送を行うバスなどの運行管理を行う事業所では、個々のトラックやバス(移動体)の所在を認識することが重要である。このため、何らかの通信手段を利用して個々の移動体と連絡をとり、各移動体の現在位置や目的地への到着時刻を把握するシステムが古くから利用されている。
【0003】
たとえば、下記の特許文献1には、無線通信機能を備えたタクシーについて、目的地に到着した時点で管理センターへ無線による報告を行わせ、タクシー乗り場への帰着時刻を算出するシステムが開示されている。また、下記の特許文献2には、路側帯に設置された交信器とトラックとの交信により、各トラックの運行状況を認識し、効率的な運行管理を行うシステムが開示されており、下記の特許文献3には、バスに搭載した携帯電話機を用いて管理センターへの報告を行わせ、個々のバス停留所への到着予定時刻を利用者に提示するシステムが開示されている。更に、下記の特許文献4には、GPS機能を搭載したバスから、現在地を管理センターに報告させることにより、個々のバスの現在地を把握することができる運行管理システムが開示されている。
【特許文献1】特開平8−129694号公報
【特許文献2】特開2004−234198号公報
【特許文献3】特開2004−070766号公報
【特許文献4】特開2007−094630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トラックやバスなどの移動体が、特定の目的地に到着した時刻を把握することは、運行管理上、非常に重要である。しかも、最近は、インターネットの普及により、Web画面や電子メールを利用して、物品の到着を荷主に対して報告したり、乗客の到着を家族に対して報告したりするサービスも行われてきており、移動体の到着時刻を把握することは、単なる運行管理の面のみならず、顧客サービスの観点からも益々重要性をおびてきている。
【0005】
また、顧客からの要望として、できるだけ正確な到着時刻を知りたい、との声も高まってきている。たとえば、小中学校に給食用の食材を搬入する場合、給食は毎日定刻に提供する必要があるため、何時に食材が到着したのか、という正確な到着時刻情報を把握することが望まれる。また、会議用の資料を搬送したような場合も、顧客から分刻みの正確な到着時刻の報告を要求されるケースも少なくない。
【0006】
もちろん、このような正確な到着時刻を報告することは、従来の運行管理システムを用いても可能である。すなわち、移動体に搭載している無線通信機や携帯電話機を利用して、必要な頻度で、現在位置や目的地への到着状態を管理センターへ報告させるようにすればよい。たとえば、1分おきに報告させれば、管理センターでは、分単位の精度で各移動体の現在位置や目的地への到着状態を把握することができる。もちろん、秒単位の精度が必要な場合には、1秒おきに報告させるようにすればよい。
【0007】
このように、従来のシステムでは、移動体側からの報告頻度を高めれば高めるほど、各移動体の把握位置に関する時間的精度を向上させることができる。しかしながら、報告頻度を高めると、それだけ単位時間あたりの通信情報量が増大するという問題が生じる。特に、移動体の現在位置や到着時刻をデジタルデータとして送信する場合、パケットデータの通信網を利用するのが一般的であるが、通常、送信対象となるデータ量が増えれば増えるほど、通信網の利用料金も増大することになる。したがって、多数のトラックやバスを所有する事業体が運行管理を行う場合、通信コストの面で、報告頻度を高めることが困難であるのが実情である。
【0008】
そこで本発明は、通信対象となるデータ量を低く抑えつつ、各移動体の目的地への正確な到着時刻を把握することが可能な移動体の位置把握システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明の第1の態様は、移動体の位置を把握する移動体の位置把握システムにおいて、
移動体に搭載して用いる移動端末装置と、この移動端末装置と交信してその位置情報を収集する管理装置と、を設け、
移動端末装置は、
自己の現在位置を認識する現在位置認識部と、
管理装置に対してパケットデータを送信するデータ送信部と、
移動体が向かう所定の目的地の位置を設定する目的地設定部と、
現在位置認識部が認識した現在位置と目的地設定部に設定された目的地の位置とを所定の時間間隔で繰り返し比較する処理を行い、比較結果が不一致から一致に転じた時点で、データ送信部を用いて、目的地への到着を示す到着情報を管理装置へ報告する状況報告部と、
を有し、
管理装置は、
移動体から送信されてくるパケットデータを受信するデータ受信部と、
移動端末装置から到着情報が報告されたときに、所定の到着時刻に当該移動端末装置が目的地に到着した旨を記録する状況記録部と、
を有するようにしたものである。
【0010】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る移動体の位置把握システムにおいて、
状況報告部が、特定の目的地への到着を示す到着情報を報告した後も、現在位置認識部が認識した現在位置と到着した当該特定の目的地の位置とを比較する処理を行い、比較結果が一致から不一致に転じた時点で、データ送信部を用いて、当該特定の目的地からの出発を示す出発情報を管理装置へ報告する機能を有し、
状況記録部が、出発情報が報告されたときに、所定の出発時刻に当該移動端末装置が当該特定の目的地から出発した旨を記録する機能を有するようにしたものである。
【0011】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第2の態様に係る移動体の位置把握システムにおいて、
状況報告部が、現在位置認識部が認識した現在位置と目的地設定部に設定された目的地の位置とを繰り返し比較する時間間隔として、第1の時間間隔と、この第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔とを設定し、比較結果が不一致を示している間は第1の時間間隔で比較を行い、比較結果が一致を示している間は第2の時間間隔で比較を行うようにしたものである。
【0012】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1〜第3の態様に係る移動体の位置把握システムにおいて、
目的地設定部が、移動体の移動経路上に位置する複数の目的地について、当該目的地を識別する目的地識別コードと当該目的地の位置を示す目的地位置コードとを、移動経路上の到着予定順に従って格納し、
状況報告部が、現在位置認識部が認識した現在位置と、現在向かっているもしくは現在駐留中の「現在目的地」の目的地位置コードとを比較する処理を行い、比較結果が不一致から一致に転じた時点もしくは一致から不一致に転じた時点で、「現在目的地」の目的地識別コードを含んだ到着情報もしくは出発情報を管理装置へ報告するようにしたものである。
【0013】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1〜第4の態様に係る移動体の位置把握システムにおいて、
状況報告部が、現在位置認識部が認識した現在位置と目的地設定部に設定された目的地の位置とを繰り返し比較する時間間隔よりも長い間隔をもって設定された定時報告時に、データ送信部を用いて、現在位置認識部が認識した現在位置を示す位置情報を報告する機能を有し、
状況記録部が、位置情報が報告されたときに、所定の位置報告時刻に当該移動端末装置が位置情報で示される位置にいることを記録するようにしたものである。
【0014】
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第1〜第5の態様に係る移動体の位置把握システムにおいて、
状況報告部が、到着情報、出発情報、位置情報を報告する際に、現在時刻を示す時刻コードを含んだ情報を報告し、
状況記録部が、報告された情報に含まれていた時刻コードを用いて、到着時刻、出発時刻もしくは位置報告時刻の記録を行うようにしたものである。
【0015】
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第1〜第5の態様に係る移動体の位置把握システムにおいて、
状況記録部が、データ受信部によって情報の受信が行われた時刻を、到着時刻、出発時刻もしくは位置報告時刻として記録するようにしたものである。
【0016】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第1〜第7の態様に係る移動体の位置把握システムにおいて、
それぞれ所定の端末識別コードが付与された複数の移動端末装置を設け、
各移動端末装置の状況報告部が、付与された端末識別コードを含んだ情報を報告し、
状況記録部が、報告された情報に含まれていた端末識別コードを用いて、個々の移動端末装置ごとに記録を行うようにしたものである。
【0017】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第1〜第8の態様に係る移動体の位置把握システムにおいて、
目的地設定部が、目的地を所定の面積をもった領域として設定し、
状況報告部が、現在位置認識部が認識した現在位置が、目的地設定部に設定された領域内に入っているときに、比較結果が一致した旨の判定を行うようにしたものである。
【0018】
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第1〜第9の態様に係る移動体の位置把握システムにおいて、
自己の現在位置を認識する現在位置認識部が、GPSを用いて緯度経度データとして示される現在位置を認識し、
目的地設定部が、緯度経度データを用いて目的地の位置を設定するようにしたものである。
【0019】
(11) 本発明の第11の態様は、上述の第10の態様に係る移動体の位置把握システムにおいて、
移動端末装置をGPS機能付き携帯電話機を用いて構成し、
現在位置認識部をこの携帯電話機のGPS機能を利用して構成し、
データ送信部をこの携帯電話機のパケットデータ送信機能を利用して構成し、
目的地設定部をこの携帯電話機内のメモリを利用して構成し、
状況報告部をこの携帯電話機内のCPUおよびこの携帯電話機内にインストールしたプログラムを利用して構成するようにしたものである。
【0020】
(12) 本発明の第12の態様は、上述の第1〜第11の態様に係る移動体の位置把握システムにおいて、
移動体に移動端末装置とともに搭載して用いる副端末装置を更に設け、
この副端末装置を、管理装置に対してパケットデータを送信するデータ送信部と、温度センサと、所定の時間間隔でデータ送信部を用いて、温度センサが測定した温度を示す温度情報を管理装置へ報告する温度報告部と、によって構成し、
状況記録部が、この副端末装置から温度情報が報告されたときに、報告時刻とともに当該温度情報を記録するようにしたものである。
【0021】
(13) 本発明の第13の態様は、上述の第1〜第12の態様に係る移動体の位置把握システムにおいて、
管理装置が、状況記録部の記録内容をWeb上に公開するWebサーバ装置を更に備えているようにしたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る移動体の位置把握システムによれば、移動体自身が目的地への到着を認識した時点で、当該目的地への到着を報告させるようにしたため、通信対象となるデータ量を低く抑えつつ、各移動体の目的地への正確な到着時刻を把握することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0024】
<<< §1.本発明の基本的実施形態の構成 >>>
図1は、本発明の基本的実施形態に係る移動体の位置把握システムの構成を示すブロック図である。このシステムは、各移動体の位置を把握する機能を有しており、特に、移動体が特定の目的地に到着した時点で、当該到着の事実とその到着時刻を認識することができる。ここでは、3台の移動体11,12,13の位置を、配送拠点Zにおいて把握する場合の例を以下に述べることにする。
【0025】
なお、各移動体11,12,13は、ここでは物品輸送用のトラックとして説明するが、バス、タクシー、列車はもちろん、何らかの目的地へ向かって移動する機能を有する対象物であれば、どのようなものを移動体として用いてもかまわない。また、ここでは説明の便宜上、3台の移動体11,12,13の位置把握を行う例を述べるが、実用上は、より多数の移動体についての位置把握が行われることになる。
【0026】
図示のとおり、このシステムは、各移動体11,12,13に搭載して用いる移動端末装置110,120,130と、これら移動端末装置110,120,130と交信してその位置情報を収集する管理装置200と、によって構成される。移動端末装置110,120,130の構成は、基本的に同じものであるので、以下、移動体11に搭載された移動端末装置110を代表として、その構成および機能を説明する。
【0027】
移動端末装置110には、現在位置認識部111,目的地設定部112,状況報告部113,データ送信部114が設けられている。現在位置認識部111は、自己の現在位置(すなわち、移動体11の現在位置)を認識する構成要素である。ここに示す実施形態では、現在位置認識部111は、GPS受信装置によって構成されており、GPSを用いて緯度経度データとして示される現在位置を認識する機能を有する。ここでは、この現在位置認識部111によって、現在位置を示すデータが(x,y)なる緯度経度を示す座標値によって取得されるものとする。
【0028】
一方、目的地設定部112は、移動体11が向かう所定の目的地の位置を設定するための構成要素である。ここでは、図示のとおり、移動体11(物品輸送用のトラック)は、配送拠点Zで荷物を積載した後、矢印で示す移動経路に沿って、第1の目的地A、第2の目的地B、第3の目的地Cの順に運行するスケジュールが組まれているものとしよう。この場合、移動体11が配送拠点Zを出発する際に、目的地設定部112に、各目的地A,B,Cの位置を示すデータが設定されることになる。ここでは、各目的地の位置は、(X,Y)なる緯度経度を示す座標値によって設定されるものとする。
【0029】
状況報告部113は、現在位置認識部111が認識した現在位置(x,y)と目的地設定部112に設定された目的地の位置(X,Y)とを所定の時間間隔で繰り返し比較する処理を行い、比較結果が不一致から一致に転じた時点で、一致が生じた当該目的地への到着を示す到着情報を管理装置200へ報告する構成要素である。
【0030】
なお、後に詳述するように、ここに示す実施形態では、状況報告部113は、特定の目的地への到着を示す到着情報を報告した後も、現在位置認識部111が認識した現在位置と当該特定の目的地の目的地位置コードとを比較する処理を行い、比較結果が一致から不一致に転じた時点で、不一致を生じた当該特定の目的地からの出発を示す出発情報を管理装置200へ報告する機能も有している。
【0031】
また、データ送信部114は、パケット通信網300を介して管理装置200に対してパケットデータを送信する構成要素であり、状況報告部113から管理装置200へ報告される到着情報や出発情報は、このデータ送信部114から送信されることになる。
【0032】
このような構成からなる移動端末装置110は、実用上、GPS機能付き携帯電話機を用いて構成することができる。現在、GPS機能付き携帯電話機は、様々な市販品が入手可能であり、このような市販品を利用すれば、本発明に用いる移動端末装置110を安価に実現することが可能である。具体的には、現在位置認識部111は、この携帯電話機のGPS機能を利用して構成することができ、データ送信部114は、この携帯電話機のパケットデータ送信機能を利用して構成することができる。この場合、パケット通信網300としては、当該携帯電話用の通信設備が利用されることになる。また、目的地設定部112は、この携帯電話機内のメモリ(着脱可能型のメモリカードでもよい)を利用して構成することができ、状況報告部113は、この携帯電話機内のCPUおよびこの携帯電話機内にインストールしたプログラムを利用して構成することができる。
【0033】
一方、管理装置200は、図示の実施形態では、配送拠点Zに設置されたコンピュータを利用して構成されている。もちろん、管理装置200の設置場所は、必ずしも配送拠点Zである必要はなく、たとえば、事業体の本社に設置してもかまわない。図示のとおり、管理装置200は、データ受信部210,状況記録部220,Webサーバ装置230を有している。
【0034】
データ受信部210は、各移動体11〜13に搭載された移動端末装置110〜130から送信されてくるパケットデータを受信する構成要素である。このデータ受信部210は、実際には、コンピュータの一般的なパケットデータ通信機能(IPプロトコルを用いたネットワーク接続機能)によって実現することができる。
【0035】
状況記録部220は、各移動端末装置110〜130から到着情報や出発情報が報告されたときに、所定の到着時刻もしくは出発時刻に当該移動端末装置が特定の目的地に到着した旨もしくは特定の目的地を出発した旨を記録する構成要素である。後に詳述するとおり、データ受信部210が、パケット通信網300を介して到着情報や出発情報の報告を受けるたびに、状況記録部220内には、どの移動体(移動端末装置)が、どの目的地にいつ到着したか、もしくはどの出発地をいつ出発したか、を示す情報が記録されることになる。
【0036】
Webサーバ装置230は、状況記録部220の記録内容をWeb上に公開するサーバコンピュータによって構成される装置である。配送事業者もしくはその顧客が、パソコンや携帯電話機のWeb閲覧機能を利用して、このWebサーバ装置230へアクセスすると、状況記録部220の記録内容をWeb画面上で閲覧することが可能になる。もちろん、実用上は、個々の顧客は、Webサーバ装置230へのアクセスを行う際に、ユーザIDおよびパスワードを入力することが要求され、特定のアクセス権限が与えられた情報(たとえば、自己が配送を依頼した物品を輸送中の移動体に関する情報)のみを閲覧することができるように、必要なセキュリティ対策を施すようにするのが好ましい。
【0037】
<<< §2.本発明の基本的実施形態の具体的動作 >>>
続いて、図1に示す実施形態に係るシステムの動作を、具体例に即して説明しよう。ここに示す実施形態では、まず、配送拠点Zに設置された管理装置200に対して、事務担当者が、個々の移動体(トラック)11〜13の運行スケジュールを入力する。図2は、こうして入力された運行スケジュールの一例を示すものであり、状況記録部220内に格納されるデータの一例を示している。
【0038】
既に述べたとおり、移動端末装置110,120,130は、それぞれ移動体11,12,13に搭載される端末装置であり、それぞれに固有の端末識別コードが付されている。ここでは、移動端末装置110,120,130に対して、それぞれ「T11」,「T12」,「T13」なる端末識別コードが付与されているものとしよう。また、目的地A〜Gに対しては、それぞれ「DST(A)」〜「DST(G)」なる目的地識別コードが付与されており、各目的地の位置は、(X,Y)なる座標値をもつ目的地位置コードで定義されるものとする。
【0039】
図3は、目的地の位置を定義する方法の一例を示す平面図である。この例では、各目的地は、所定の面積をもった矩形の領域として設定され、当該矩形の左上隅の座標値と右下隅の座標値との組み合わせによって、図にハッチングを施した矩形領域の内部が示され、当該内部の領域が目的地の位置として定義されている。たとえば、目的地Aの場合、左上隅の座標値(Xa1,Ya1)と右下隅の座標値(Xa2,Ya2)との組み合わせによって、目的地Aの占有領域が示されている。ここでは、このような座標値の組み合わせ「(Xa1,Ya1)(Xa2,Ya2)」を「目的地位置コード」と呼ぶことにする。
【0040】
もちろん、個々の目的地の占有領域は必ずしも矩形ではないので、近似矩形で代用することが困難な場合には、その他の図形で定義してもよいし、複数の図形の組み合わせで定義してもよいし、輪郭線を直接規定することによって定義してもよい。ここでは、説明の便宜上、目的地A〜Gがいずれも矩形領域を有しており、当該矩形領域の左上隅の座標値と右下隅の座標値との組み合わせによって、各目的地の位置が示されているものとする。
【0041】
なお、ここで述べる実施形態の場合、前述したとおり、現在位置認識部111は、GPSを用いて緯度経度データとして示される現在位置を認識する機能を有しているので、各目的地の位置も、緯度経度データを用いて定義することにする。たとえば、目的地Aの位置を示す目的地位置コードは、「(Xa1,Ya1)(Xa2,Ya2)」という座標値の組み合わせから構成されるが、ここで、(Xa1,Ya1)なる座標値および(Xa2,Ya2)なる座標値は、それぞれ特定の緯度経度データになる。
【0042】
図2に示すように、状況記録部220内には、各端末識別コードごとに、所定の運行スケジュールが表の形式で記録される。たとえば、図2の上段の表には、「端末識別コード:T11」で特定される移動端末装置110を搭載した移動体(トラック)11の運行スケジュールを示すためのデータが記録されている。この表の第1行目には、目的地識別コード「DST(A)」と目的地位置コード「(Xa1,Ya1)(Xa2,Ya2)」が記録されているが、これは、移動体11の第1の目的地が目的地Aであり、その位置が、「(Xa1,Ya1)(Xa2,Ya2)」であることを示している。同様に、第2行目および第3行目に記録されたデータは、移動体11の第2,第3の目的地が、それぞれ目的地B,Cであることが示されている。
【0043】
なお、表の右側には、「到着時刻」および「出発時刻」の欄が設けられているが、この欄は、後述するように、移動端末装置110からの報告を受けた時点でデータを記録する欄であり、移動体11の運行開始時点では空欄となっている。同様に、図2の中段の表には、「端末識別コード:T12」で特定される移動端末装置120を搭載した移動体(トラック)12の運行スケジュールを示すためのデータが記録されており、図2の下段の表には、「端末識別コード:T13」で特定される移動端末装置130を搭載した移動体(トラック)13の運行スケジュールを示すためのデータが記録されている。
【0044】
結局、図2に示す例の場合、移動体11については、目的地A→B→Cという運行スケジュールが設定され、移動体12については、目的地D→E→F→Gという運行スケジュールが設定され、移動体13については、目的地B→Gという運行スケジュールが設定されたことになる。
【0045】
図2の各表に示すようなデータを、予め状況記録部220内に用意しておくことは、本発明の実施にあたって必須の事項ではないが、このようなデータを予め用意しておくと、後に到着や出発の報告を受けたときの処理が容易になる。
【0046】
なお、図2では、説明の便宜上、個々の目的地識別コードの右隣にそれぞれ目的地位置コードを記録した形式の表を示したため、冗長性をもったデータ構成になっている(たとえば、下段の表における目的地B,Gについての目的地位置コードは、上段および中段の表にも掲載されている)。実際には、1つの目的地識別コードに対して、1つの目的地位置コードが対応づけられていれば足りる。
【0047】
さて、各移動体(トラック)11〜13の運転手は、配送拠点Zで荷物を積み込んで出発する際に、各移動端末装置110〜130に対して、運行スケジュールに従った目的地の設定作業を行う。たとえば、移動体11の運転手は、図1に示す移動端末装置110内の目的地設定部112内に、図4の表に示されているようなデータの設定を行う。この図4の表は、図2の上段の表の左側2欄のデータを抜き出したものであり、移動体11の運行スケジュールが、目的地A→B→Cであることを示すとともに、これら各目的地の位置を示すものである。ここに示す実施形態の場合、目的地位置コードは、緯度経度のデータであるので、目的地設定部112には、緯度経度データを用いて目的地の位置が設定されることになる。
【0048】
なお、移動端末装置110内の目的地設定部112内に、図4の表に示されているようなデータを設定する作業は、管理装置200内の状況記録部220に用意されているデータの一部をコピーする処理によって行うことができる。前述のように、移動端末装置110は、実際には、GPS機能付き携帯電話機を用いて構成することができるので、上記作業は、状況記録部220内のデータの一部を当該携帯電話機内のメモリへコピーする処理によって行うことができる。このようなコピー処理は、携帯電話機を管理装置200と直接接続して行うこともできるし、管理装置200側から携帯電話機へ送信する電子メールを仲介して行うこともできる。もちろん、あまり実用的ではないが、運転手の手作業により、目的地設定部112へ直接的に目的地の位置設定を行ってもよい。
【0049】
続いて、移動体11が配送拠点Zを出発した後の動作を説明する。図5は、移動経路と、このシステムの動作との関係を示す平面図である。図に×印で示す地点は、移動体11の移動経路上の通過点を示しており、その脇に付したt1〜t124なる記号は、当該地点を通過する時刻を示している。すなわち、図示の例の場合、移動体11は、図の左上から右方向へと進行し、時刻t4において目的地A(矩形で示す領域内)に到着し、時刻t7〜t20の間、目的地A内の所定位置に停車して積み荷を降ろし、やがて時刻t23には目的地Aを離れて次の目的地Bへと向かっている。そして、時刻t101において目的地B(矩形で示す領域内)に到着し、時刻t103〜t120の間、目的地B内の所定位置に停車して積み荷を降ろし、やがて時刻t122には目的地Bを離れて次の目的地Cへと向かっている。
【0050】
ここで、時刻t1〜t124は、それぞれ状況報告部113が、現在位置認識部111が認識した現在位置と目的地設定部112に設定された目的地の位置とを比較する処理を実行するタイミングを示している。ここに示す実施形態の場合、現在位置認識部111が認識した現在位置は、(x,y)なる緯度経度データで与えられるが、目的地設定部112に設定された目的地の位置は、図3に示すように、左上隅と右下隅とが緯度経度データで指定された矩形領域として与えられる。
【0051】
したがって、状況報告部113が行う比較処理は、(x,y)なる緯度経度データで与えられる現在位置を示す点が、目的地の位置を示す矩形領域内に含まれるか否かを判断する処理ということになる。現在位置を示す点が、矩形領域内に含まれている場合には、現在位置と目的地の位置とが一致したことになり、矩形領域内に含まれていない場合には、現在位置と目的地の位置とが不一致ということになる。
【0052】
このように、目的地設定部112に対して、目的地を所定の面積をもった領域として設定した場合には、状況報告部113は、現在位置認識部111が認識した現在位置が、目的地設定部112に設定された領域内に入っているときに、比較結果が一致した旨の判定を行うようにすればよい。
【0053】
図5に示す例の場合、時刻t1,t2,t3のタイミングで実施される比較処理では「不一致」なる比較結果が得られるが、時刻t4のタイミングで実施される比較処理から「一致」に転じることになる。そして、時刻t4〜t22のタイミングで実施される比較処理では「一致」状態が持続するが、時刻t23のタイミングで実施される比較処理では「不一致」に転じることになる。こうして、目的地Aを出発した移動体11が、次の目的地Bへと向かう時刻t23〜t100のタイミングで実施される比較処理では「不一致」なる比較結果が得られるが、目的地Bに到着した時刻t101のタイミングで実施される比較処理から「一致」に転じることになる。そして、時刻t102〜t121のタイミングで実施される比較処理では「一致」状態が持続するが、時刻t122のタイミングで実施される比較処理では「不一致」に転じることになる。
【0054】
ここで重要な点は、時刻t1〜t124のタイミングで行われる比較処理は、移動端末装置110の状況報告部113内部で実行される処理であり、データ送信部114は何ら関与しない点である。別言すれば、比較処理による「一致/不一致」の結果は、各タイミングにおいて、常に外部に報告されるわけではない。データ送信部114から、パケット通信網300を介して、管理装置200側へ報告が行われるのは、比較結果が不一致から一致に転じた時点、および一致から不一致に転じた時点のみである。比較結果が不一致から一致に転じた時点では、目的地への到着を示す到着情報が報告され、比較結果が一致から不一致に転じた時点では、目的地からの出発を示す出発情報が報告されることになる。
【0055】
したがって、図5に示す例の場合、時刻t4,t23,t101,t122の時点においてのみ、管理装置200側への報告が行われることになる。具体的には、時刻t4の時点では、目的地Aへの到着を示す到着情報が報告され、時刻t23の時点では、目的地Aからの出発を示す出発情報が報告され、時刻t101の時点では、目的地Bへの到着を示す到着情報が報告され、時刻t122の時点では、目的地Bからの出発を示す出発情報が報告される。
【0056】
図6は、図5に示す移動経路に沿って移動中の移動体11から、上記各時刻t4,t23,t101,t122のタイミングで、管理装置200宛に送信されるパケットデータの一例を示す図である。時刻t4において送信されるパケットデータは到着情報であり、移動体11が時刻t4に目的地Aに到着したことを示す。具体的には、この到着情報は、「T11,DST(A),Arv,t4」なるデータ列から構成されている。ここで、「T11」は、報告主となる移動体11を示すコード(すなわち、移動端末装置110に付された端末識別コード)であり、「DST(A)」は、「一致」と判定された目的地の目的地識別コードである。また、「Arv」は、当該パケットデータが、目的地への到着を報告するための到着情報であることを示す識別コードであり、「t4」は、時刻t4を示す時刻コード(たとえば、時分秒などのコード)である。
【0057】
一方、時刻t23において送信されるパケットデータは出発情報であり、移動体11が時刻t23に目的地Aから出発したことを示す。具体的には、この出発情報は、「T11,DST(A),Dpt,t23」なるデータ列から構成されている。ここで、「T11」は、報告主となる移動体11を示す端末識別コードであり、「DST(A)」は、「不一致」に転ずる直前までに「一致」と判定されていた目的地の目的地識別コードである。また、「Dpt」は、当該パケットデータが、目的地からの出発を報告するための出発情報であることを示す識別コードであり、「t23」は、時刻t23を示す時刻コード(たとえば、時分秒などのコード)である。
【0058】
同様に、時刻t101において送信されるパケットデータは到着情報であり、具体的には、「T11,DST(B),Arv,t101」なるデータ列から構成されており、移動体11が時刻t101に目的地Bに到着したことを示す。また、時刻t122において送信されるパケットデータは出発情報であり、具体的には、「T11,DST(B),Dpt,t122」なるデータ列から構成されており、移動体11が時刻t122に目的地Bから出発したことを示す。
【0059】
この図6に示すような各パケットデータは、データ送信部114からパケット通信網300を介して、管理装置200へと送信される。送信された各パケットデータは、管理装置200のデータ受信部210で受信され、状況記録部220へと与えられる。状況記録部220は、これらのパケットデータによって到着情報が報告されたときには、所定の到着時刻に所定の移動端末装置が所定の目的地に到着した旨の記録を行い、出発情報が報告されたときには、所定の出発時刻に所定の移動端末装置が所定の目的地から出発した旨の記録を行う。
【0060】
ここに示す実施形態の場合、状況記録部220内には、図2に示すような表で示されるデータが用意されているので、この表の空欄の対応箇所に、時刻のデータを記録する処理が行われる。
【0061】
たとえば、図6の第1段目に示すようなパケットデータ「T11,DST(A),Arv,t4」が報告された場合には、当該報告が端末識別コード「T11」をもった移動端末装置110からの報告であり、「DST(A)」なる目的地識別コードをもった目的地Aに、時刻t4に到着したことを示す到着情報の報告であることが認識できるので、「端末識別コード:T11」の記録データの目的地Aについての到着時刻欄に「時刻t4」を記録する処理が行われる。また、図6の第2段目に示すようなパケットデータ「T11,DST(A),Dpt,t23」が報告された場合には、当該報告が端末識別コード「T11」をもった移動端末装置110からの報告であり、「DST(A)」なる目的地識別コードをもった目的地Aから、時刻t23に出発したことを示す出発情報の報告であることが認識できるので、「端末識別コード:T11」の記録データの目的地Aについての出発時刻欄に「時刻t23」を記録する処理が行われる。
【0062】
全く同様に、図6の第3段目に示すようなパケットデータ「T11,DST(B),Arv,t101」が報告された場合には、当該報告が端末識別コード「T11」をもった移動端末装置110からの報告であり、「DST(B)」なる目的地識別コードをもった目的地Bに、時刻t101に到着したことを示す到着情報の報告であることが認識できるので、「端末識別コード:T11」の記録データの目的地Bについての到着時刻欄に「時刻t101」を記録する処理が行われる。また、図6の第4段目に示すようなパケットデータ「T11,DST(B),Dpt,t122」が報告された場合には、当該報告が端末識別コード「T11」をもった移動端末装置110からの報告であり、「DST(B)」なる目的地識別コードをもった目的地Bから、時刻t122に出発したことを示す出発情報の報告であることが認識できるので、「端末識別コード:T11」の記録データの目的地Bについての出発時刻欄に「時刻t122」を記録する処理が行われる。
【0063】
図7は、このような記録が行われた後の「端末識別コード:T11」の記録データを示すものである。図示の例は、移動体11がまだ目的地Cに到着していない時点の状態を示しているため、第3行目の到着時刻欄および出発時刻欄は空欄の状態であるが、もちろん、移動体11が目的地Cに到着し、そこから出発すれば、これら空欄にも到着時刻や出発時刻が記録されることになる。前述したとおり、状況記録部220内のデータは、Webサーバ装置230によってWeb上に公開されるので、端末識別コードT11に関する情報に対するアクセス権限を有する者は、この時点において、移動体11の目的地A,Bについての到着時刻および出発時刻をWeb画面上で確認することができる。
【0064】
以上、移動体11に搭載された移動端末装置110からの報告動作を例にとって、図1に示すシステムの動作説明を行ったが、移動体12,13についての報告動作も全く同様である。各移動端末装置110〜130には、それぞれ所定の端末識別コードT11〜T13が付与されており、各移動端末装置110〜130の状況報告部は、付与された端末識別コードを含んだ情報を報告する。したがって、管理装置200内の状況記録部220は、報告された情報に含まれていた端末識別コードを用いて、個々の移動端末装置ごとに記録を行うことができる。
【0065】
本発明に係るシステムの重要な特徴は、図5に示す時刻t1〜t124の各タイミングにおいて、状況報告部113による比較処理が行われるため、到着時刻や出発時刻の精度は、この比較処理を行うタイミングの時間周期に依存して決定できる点である。たとえば、10秒おきのタイミングで、この比較処理を実行すれば(すなわち、時刻t1〜t124の各タイミングを10秒間隔に設定すれば)、管理装置200側に報告される到着時刻や出発時刻は、10秒刻みの精度をもったものになる。
【0066】
しかも、この比較処理の周期を短く設定しても、実際にデータ送信部114から到着情報や出発情報が送信される頻度に変わりはない。これは、到着情報の報告が、状況報告部113による比較結果が不一致から一致に転じたときにのみ行われ、出発情報の報告が、状況報告部113による比較結果が一致から不一致に転じたときにのみ行われるためである。したがって、比較処理の周期を1秒に設定しても、0.1秒に設定しても、状況報告部113による処理負担は重くなるものの、データ送信部114から到着情報や出発情報が送信される頻度は一定である。このように、本発明に係るシステムでは、到着時刻や出発時刻の精度を向上させても、通信データ量が増えることはないので、パケット通信コストが高騰することもない。
【0067】
<<< §3.いくつかの変形例 >>>
以上、本発明の基本的実施形態に係る移動体の位置把握システムの構成および動作を説明したが、ここでは、この基本的実施形態に対するいくつかの変形例を述べておく。
【0068】
(1) 状況報告部の比較対象
状況報告部113は、現在位置認識部111が認識した現在位置と目的地設定部112に設定された目的地の位置との比較処理を行う際に、目的地設定部112に設定されたすべての目的地を比較対象としてもよいが、複数の目的地へ向かうための移動経路が決まっており、各目的地の到着順が一意に決まっている場合には、関連する1つの目的地の位置との比較のみを行うようにしてもかまわない。
【0069】
たとえば、図1に示すように、移動体11の移動経路が定まっており、必ず目的地A→B→Cの順に移動することが決まっている場合は、目的地設定部112内に、移動体11の移動経路上に位置する複数の目的地A,B,Cについて、当該目的地を識別する目的地識別コードと当該目的地の位置を示す目的地位置コードとを、この移動経路上の到着予定順に従って格納しておくようにする(図4に示す例は、この到着予定順に従って格納した例である)。
【0070】
そうすれば、状況報告部113は、現在位置認識部111が認識した現在位置と、現在向かっているもしくは現在駐留中の「現在目的地」の目的地位置コードとを比較する処理を行い、比較結果が不一致から一致に転じた時点もしくは一致から不一致に転じた時点で、「現在目的地」の目的地識別コードを含んだ到着情報もしくは出発情報を管理装置へ報告すればよい。
【0071】
たとえば、目的地Aに向かっている状態では、「現在目的地」は目的地Aであるから、比較対象は、図4の第1行目に示す目的地位置コード「(Xa1,Ya1)(Xa2,Ya2)」のみで足りる。この場合、目的地Aについての出発情報の報告が行われるまでは、目的地Aが「現在目的地」になるので、状況報告部113は、比較対象を「現在目的地」の目的地位置コードとし、目的地Aについての出発情報の報告が行われた後は、次の目的地(この例の場合は、目的地B)を「現在目的地」とする更新を行うようにすればよい。
【0072】
このように、状況報告部113の比較対象を、目的地設定部112に設定されている複数の目的地のうちの「現在目的地」の位置に限定すれば、比較処理の演算負担を軽減することができる。
【0073】
(2) 状況報告部の比較処理の周期
状況報告部113は、所定の時間間隔で、現在位置認識部111が認識した現在位置と目的地設定部112に設定された目的地の位置とを比較する処理を繰り返し実行することになる。図5に示す例では、この時間間隔が常に一定となるような設定例を示したが、もちろん、比較処理は必ずしも一定の周期で行う必要はない。
【0074】
ここでは、この比較処理を行う時間間隔として、第1の時間間隔T1と、この第1の時間間隔T1よりも長い第2の時間間隔T2とを設定し、比較結果が不一致を示している間は第1の時間間隔T1で比較を行い、比較結果が一致を示している間は第2の時間間隔T2で比較を行う変形例を示しておく。
【0075】
図8(a) は、この変形例に係る動作を示すタイムチャートである。横軸は時間軸tであり、図に黒丸で示す各時点が、状況報告部113による比較処理のタイミング(図5に示す例における各時刻t1〜t124に対応)を示している。図示のとおり、比較結果が不一致を示す期間内は第1の時間間隔T1の周期で比較処理を実行しているが、比較結果が一致を示す期間内は第2の時間間隔T2(T2>T1)の周期で比較処理を実行している。
【0076】
このように、比較結果が不一致を示す期間と一致を示す期間とで、比較処理の周期を変えるのは、前者では、移動体が目的地に向かって比較的高速で走行中であり、比較結果が一致に転じる(すなわち、目的地に到着する)までの時間が比較的短いと予想されるのに対して、後者では、移動体が当該目的地に駐留中であり(通常、荷物の積み降ろしが行われている)、停車もしくは徐行中である可能性が高く、比較結果が不一致に転じる(すなわち、当該目的地から出発する)までの時間が比較的長いと予想されるからである。また、一般に、物品輸送などの場合、移動体が目的地に到着した時刻(到着情報で報告される時刻)は高い精度での報告が求められるが、移動体が目的地から出発した時刻(出発情報で報告される時刻)については、それほど高い精度での報告は求められない傾向にあるので、後者における比較処理の周期を長くとっても、大きな支障は生じないのである。
【0077】
したがって、たとえば、比較結果が不一致を示す期間(目的地に向かって走行中の期間)の比較周期の時間間隔をT1=10秒とし、比較結果が一致を示す期間(目的地に駐留中の期間)の比較周期の時間間隔をT1=1分とするような運用を採れば、目的地に駐留中における状況報告部113の処理負担を軽減することが可能になる。移動端末装置として、携帯電話機を用いた場合などでは、運転手が駐留中に携帯電話機を用いて別な操作(たとえば、Web画面の閲覧操作など)を行うことも十分に考えられるので、この期間内のCPUの負担をできるだけ軽減することは望ましい。また、携帯電話機などの移動端末装置は、内蔵バッテリで動作するものが多く、バッテリの電力消費を軽減するという観点からも、上述した比較処理の周期を変える運用を行い、無駄な処理をできるだけ省くようにするのが好ましい。
【0078】
(3) 位置情報の定時報告
これまで述べた基本的実施形態に係るシステムでは、移動端末装置から管理装置に対する報告は、移動体が目的地に到着した時点と、移動体が目的地から出発する時点に限定される。したがって、たとえば、移動体が事故や渋滞に巻き込まれて、目的地に到着するまでに長時間を要するような事態が発生すると、その間は、管理装置200に対して、移動体の位置に関する情報が全く報告されなくなってしまう。
【0079】
このような弊害を防ぐためには、状況報告部113に、比較結果とは無関係に、定時報告を行う機能をもたせておくようにすればよい。すなわち、状況報告部113に、現在位置認識部111が認識した現在位置と目的地設定部112に設定された目的地の位置とを繰り返し比較する時間間隔(たとえば、図8(a) に示す時間間隔T1やT2)よりも長い間隔T3をもって設定された定時報告時に、データ送信部114を用いて、現在位置認識部111が認識した現在位置を示す位置情報(緯度経度データ)を報告する機能をもたせておく。
【0080】
図8(b) は、このような位置情報の定時報告動作を示すタイムチャートである。横軸は時間軸tであり、図に黒丸で示す各時点tt1,tt2,tt3が、定時報告が行われる時点を示している。図示のとおり、比較処理が行われる時間間隔T1,T2に比べて、定時報告が行われる時間間隔T3は長く設定されており(たとえば、T3=10分といった程度の時間に設定すればよい)、定時報告はそれほど頻繁に行われるわけではない。したがって、パケットデータの通信データ量は、それほど増大することはない。
【0081】
一方、管理装置200側では、状況記録部220に、このような定時報告時の位置情報が報告されたときに、所定の位置報告時刻に当該移動端末装置が、報告された位置情報で示される位置にいることを記録する機能をもたせておく。そうすれば、管理装置200側では、時間間隔T3ごとに、確実に移動体の位置を確認することができる。
【0082】
図9は、図1に示す移動端末装置110から時間間隔T3おきに送信される位置情報の一例を示す図である。図示のとおり、最初の位置情報は、「T11,(x1,y1),tt1」なるデータ列から構成されている。ここで、「T11」は、報告主が移動端末装置110であることを示す端末識別コードである。「(x1,y1)」は、報告対象となる位置情報の本体部であり、現在位置認識部111が認識した現在位置を示す緯度経度を示す位置コードである。また、最後の「tt1」は、定時報告の時点を示す時刻コードである。同様に、2番目の位置情報「T11,(x2,y2),tt2」は、時刻tt2の時点の位置が(x2,y2)であることを示し、3番目の位置情報「T11,(x3,y3),tt3」は、時刻tt3の時点の位置が(x3,y3)であることを示している。
【0083】
このような定時報告の位置情報を受け取った状況記録部220は、たとえば、図10に示すような表形式で、「端末識別コード:T11」の定時報告記録データを記録する。この表は、位置報告時刻と位置コードとをそのまま収録したものであり、移動体11が所定時刻に所定位置に居たことを示している。このような情報を、Webサーバ装置230で公開すれば(実用上は、位置コードで示される位置を地図上にプロットして提示するのが好ましい)、少なくとも時間間隔T3ごとに、移動体11の位置を確認することが可能になる。
【0084】
(4) 時刻コードの送信省略
これまで述べた例では、状況報告部113が、到着情報、出発情報、位置情報を管理装置200側に報告する際に、現在時刻を示す時刻コードを含んだ情報を報告するようにしているため、状況記録部220は、報告された情報に含まれていた時刻コードを用いて、到着時刻、出発時刻もしくは位置報告時刻の記録を行っていた。たとえば、図7に示す例において、到着時刻欄に記録されている時刻t4,t101や、出発時刻欄に記録されている時刻t23,t122は、図6に示すように、移動端末装置110側から送信されてきた到着情報や出発情報に含まれている時刻コードをそのまま記録したものである。また、図10に示す例において、位置報告時刻欄に記録されている時刻tt1,tt2,tt3は、図9に示すように、移動端末装置110側から定時報告時に送信されてきた位置情報に含まれている時刻コードをそのまま記録したものである。
【0085】
しかしながら、現在時刻は、管理装置200側でも認識することが可能であるから、これらの時刻コードは、必ずしも移動端末装置110側から送信する必要はない。すなわち、移動端末装置110側から送信する到着情報、出発情報、位置情報に、時刻コードが含まれていなかったとしても、状況記録部220が、データ受信部210によって情報の受信が行われた時刻を、到着時刻、出発時刻もしくは位置報告時刻として記録するようにすれば、何ら支障は生じない。
【0086】
(5) 温度情報の報告
移動体によっては、冷凍食品など、温度管理が必要な積み荷を配送する必要が生じる場合がある。このような場合、積み荷の温度に関する情報を、管理装置200側に報告する機能をもたせておくのが好ましい。
【0087】
図11は、このような温度情報の報告機能をもたせた変形例を示すブロック図である。この変形例では、移動端末装置110とともに移動体に搭載して用いる副端末装置410を更に設けている。この副端末装置410は、図示のとおり、温度センサ411,温度報告部412,データ送信部413を備えており、トラックなどの荷台に積み荷とともに搭載される。
【0088】
温度センサ411は周囲の温度を測定して、デジタルデータとして出力する機能を有しており、積み荷周辺の温度を測定することができる。温度報告部412は、この温度センサ411が測定した温度情報を、所定の時間間隔で管理装置200へと報告する機能を有し、データ送信部413は、この温度情報を示すパケットデータをパケット通信網300を介して管理装置200へ送信する処理を行う。
【0089】
図11には示されていない管理装置200側では、この温度情報をデータ受信部210で受信する。そして、この副端末装置410から温度情報が報告されたときには、状況記録部220によって、当該報告時刻とともに当該温度情報を記録する処理が行われる。もちろん、記録された温度情報は、Webサーバ装置230によってWeb上に公開される。
【0090】
なお、図11に示す例では、副端末装置410側に別個独立したデータ送信部413を設けているが、移動端末装置110側のデータ送信部114を用いて温度情報の送信を行うようにすれば、データ送信部413を省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の基本的な実施形態に係る移動体の位置把握システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すシステムにおける状況記録部220内に格納されるデータの一例を示す図である。
【図3】目的地Aの位置を定義する方法の一例を示す平面図である。
【図4】図1に示すシステムにおける目的地設定部112内に格納されるデータの一例を示す図である。
【図5】図1に示すシステムにおける移動体11の移動経路と、当該システムの動作との関係を示す平面図である。
【図6】図5に示す移動経路に沿って移動中の移動体11から、個々の時刻ごとに送信されるパケットデータの一例を示す図である。
【図7】図2に示す状況記録部220内に格納されるデータの変遷例を示す図である。
【図8】図1に示すシステムの動作例を示すタイムチャートである。
【図9】図1に示す移動端末装置110から送信される位置情報の一例を示す図である。
【図10】図1にシステムにおける状況記録部220内に格納される定時報告記録データの一例を示す図である。
【図11】図1に示すシステムの変形例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0092】
11,12,13:移動体(トラック)
110,120,130:移動端末装置
111:現在位置認識部(GPS受信装置)
112:目的地設定部
113:状況報告部
114:データ送信部
200:管理装置
210:データ受信部
220:状況記録部
230:Webサーバ装置
300:パケット通信網
410:副端末装置
411:温度センサ
412:温度報告部
413:データ送信部
A,B,C:目的地
DST(A)〜DST(G):目的地識別コード
t1〜t124:比較処理を行う時刻
tt1〜tt3:定時報告を行う時刻
T1,T2,T3:周期的な時間間隔
T11:移動端末装置110の端末識別コード
T12:移動端末装置120の端末識別コード
T13:移動端末装置130の端末識別コード
X,Y:目的地の座標値(緯度経度)
x,y:現在位置の座標値(緯度経度)
Z:配送拠点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の位置を把握するシステムであって、
移動体に搭載して用いる移動端末装置と、この移動端末装置と交信してその位置情報を収集する管理装置と、を備え、
前記移動端末装置は、
自己の現在位置を認識する現在位置認識部と、
前記管理装置に対してパケットデータを送信するデータ送信部と、
移動体が向かう所定の目的地の位置を設定する目的地設定部と、
前記現在位置認識部が認識した現在位置と前記目的地設定部に設定された前記目的地の位置とを所定の時間間隔で繰り返し比較する処理を行い、比較結果が不一致から一致に転じた時点で、前記データ送信部を用いて、前記目的地への到着を示す到着情報を前記管理装置へ報告する状況報告部と、
を有し、
前記管理装置は、
前記移動体から送信されてくるパケットデータを受信するデータ受信部と、
前記移動端末装置から前記到着情報が報告されたときに、所定の到着時刻に当該移動端末装置が前記目的地に到着した旨を記録する状況記録部と、
を有することを特徴とする移動体の位置把握システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体の位置把握システムにおいて、
状況報告部が、特定の目的地への到着を示す到着情報を報告した後も、現在位置認識部が認識した現在位置と前記特定の目的地の位置とを比較する処理を行い、比較結果が一致から不一致に転じた時点で、データ送信部を用いて、前記特定の目的地からの出発を示す出発情報を前記管理装置へ報告する機能を有し、
状況記録部が、前記出発情報が報告されたときに、所定の出発時刻に当該移動端末装置が前記特定の目的地から出発した旨を記録する機能を有することを特徴とする移動体の位置把握システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、
状況報告部が、現在位置認識部が認識した現在位置と目的地設定部に設定された目的地の位置とを繰り返し比較する時間間隔として、第1の時間間隔と、この第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔とを設定し、比較結果が不一致を示している間は前記第1の時間間隔で比較を行い、比較結果が一致を示している間は前記第2の時間間隔で比較を行うことを特徴とする移動体の位置把握システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の移動体の位置把握システムにおいて、
目的地設定部が、移動体の移動経路上に位置する複数の目的地について、当該目的地を識別する目的地識別コードと当該目的地の位置を示す目的地位置コードとを、前記移動経路上の到着予定順に従って格納し、
状況報告部が、現在位置認識部が認識した現在位置と、現在向かっているもしくは現在駐留中の「現在目的地」の目的地位置コードとを比較する処理を行い、比較結果が不一致から一致に転じた時点もしくは一致から不一致に転じた時点で、前記「現在目的地」の目的地識別コードを含んだ到着情報もしくは出発情報を管理装置へ報告することを特徴とする移動体の位置把握システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のシステムにおいて、
状況報告部が、現在位置認識部が認識した現在位置と目的地設定部に設定された目的地の位置とを繰り返し比較する時間間隔よりも長い間隔をもって設定された定時報告時に、前記データ送信部を用いて、現在位置認識部が認識した現在位置を示す位置情報を報告する機能を有し、
状況記録部が、前記位置情報が報告されたときに、所定の位置報告時刻に当該移動端末装置が前記位置情報で示される位置にいることを記録することを特徴とする移動体の位置把握システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のシステムにおいて、
状況報告部が、到着情報、出発情報、位置情報を報告する際に、現在時刻を示す時刻コードを含んだ情報を報告し、
状況記録部が、報告された情報に含まれていた時刻コードを用いて、到着時刻、出発時刻もしくは位置報告時刻の記録を行うことを特徴とする移動体の位置把握システム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のシステムにおいて、
状況記録部が、データ受信部によって情報の受信が行われた時刻を、到着時刻、出発時刻もしくは位置報告時刻として記録することを特徴とする移動体の位置把握システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のシステムにおいて、
それぞれ所定の端末識別コードが付与された複数の移動端末装置を備え、
各移動端末装置の状況報告部は、付与された端末識別コードを含んだ情報を報告し、
状況記録部が、報告された情報に含まれていた端末識別コードを用いて、個々の移動端末装置ごとに記録を行うことを特徴とする移動体の位置把握システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のシステムにおいて、
目的地設定部が、目的地を所定の面積をもった領域として設定し、
状況報告部が、現在位置認識部が認識した現在位置が、前記目的地設定部に設定された領域内に入っているときに、比較結果が一致した旨の判定を行うことを特徴とする移動体の位置把握システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のシステムにおいて、
自己の現在位置を認識する現在位置認識部が、GPSを用いて緯度経度データとして示される現在位置を認識し、
目的地設定部が、緯度経度データを用いて目的地の位置を設定することを特徴とする移動体の位置把握システム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、
移動端末装置をGPS機能付き携帯電話機を用いて構成し、
現在位置認識部を前記携帯電話機のGPS機能を利用して構成し、
データ送信部を前記携帯電話機のパケットデータ送信機能を利用して構成し、
目的地設定部を前記携帯電話機内のメモリを利用して構成し、
状況報告部を前記携帯電話機内のCPUおよび前記携帯電話機内にインストールしたプログラムを利用して構成することを特徴とする移動体の位置把握システム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のシステムにおいて、
移動体に移動端末装置とともに搭載して用いる副端末装置を更に備え、
前記副端末装置は、管理装置に対してパケットデータを送信するデータ送信部と、温度センサと、所定の時間間隔で前記データ送信部を用いて、前記温度センサが測定した温度を示す温度情報を前記管理装置へ報告する温度報告部と、を有しており、
状況記録部は、前記副端末装置から前記温度情報が報告されたときに、報告時刻とともに当該温度情報を記録することを特徴とする移動体の位置把握システム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のシステムにおいて、
前記管理装置が、状況記録部の記録内容をWeb上に公開するWebサーバ装置を更に備えていることを特徴とする移動体の位置把握システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−69958(P2009−69958A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235331(P2007−235331)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】