説明

移動体位置検出システム、移動体位置検出装置、移動体位置検出方法及びコンピュータプログラム

【課題】移動体の検出位置に対して生じる誤差範囲を正確に推定することを可能にした移動体位置検出システム、移動体位置検出装置、移動体位置検出方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】停止線を認識対象とした高精度ロケーションシステムを用いて、最も新しく認識した停止線から車両の現在位置を検出し、検出された停止線の道路幅に対する傾斜角度を取得し、停止線における座標特定点の配置と停止線の傾斜角度とに基づいて、検出した車両の位置の誤差範囲を推定し、検出された車両の現在位置と推定された誤差範囲を用いて車両が案内開始地点に到達したか否か判定し、車両が案内開始地点に到達したと判定された時に、案内分岐点の案内を開始するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置を検出する移動体位置検出システム、移動体位置検出装置、移動体位置検出方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行案内を行い、運転者が所望の目的地に容易に到着できるようにしたナビゲーション装置が車両に搭載されていることが多い。ここで、ナビゲーション装置とは、GPS受信機などにより自車の現在位置を検出し、その現在位置に対応する地図データをDVD−ROMやHDDなどの記録媒体またはネットワークを通じて取得して液晶モニタに表示することが可能な装置である。更に、かかるナビゲーション装置には、所望する目的地を入力すると、出発地から目的地までの最適経路を探索する経路探索機能を備えている。そして、探索結果に基づいて設定された案内経路をディスプレイ画面に表示するとともに、右左折等の案内の対象となる分岐点(以下、案内分岐点という)に接近した場合には音声やディスプレイ画面を用いた案内を行うことによって、ユーザを所望の目的地まで確実に案内するようになっている。また、近年は携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ等においても上記ナビゲーション装置と同様の機能を有するものがある。更に、車両以外にも歩行者や二輪車を対象として上記案内を行うことも可能である。
【0003】
ここで、案内分岐点において右左折等の案内を行う場合には、案内を適切なタイミングで行うことが重要である。そして、案内を適切なタイミングで行う為には、車両等の現在位置を正確に検出することが必要となる。ここで、車両等の位置を正確に検出する方法の一つとして、例えば特開2007−147521号公報には、車両後方のカメラから取り込んだ白線や路面ペイントを画像認識により検出し、更に、白線や路面ペイントを予め記憶した地図情報DBと照合することにより、車両の詳細な現在位置を検出する技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−147521号公報(第14頁、図16)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1の技術では、車両が検出した白線や路面ペイント等の地物に対する車両の相対位置を正確に特定することが重要である。しかしながら、白線や路面ペイント等の地物が傾斜して配置されている場合には、相対位置を正確に検出することができない場合があった。
【0006】
例えば、図16及び図17では、車両201が停止線202の路面標示をカメラで検出した場合であって、停止線202の位置データとして停止線202の左端部にある座標特定点Xの座標がDBに記録されており、検出時の停止線202から車両201までの距離がDである場合について説明する。この場合に、図16に示すように、停止線202が道路幅方向に対して傾斜していない場合には、座標特定点Xから距離Dだけ進行方向前方に車両201が位置することとなり、座標特定点Xと距離Dから車両201の位置を検出することが可能となる。それに対して、図17に示すように、停止線202が道路幅方向に対して傾斜している場合には、座標特定点Xから距離Dだけ進行方向前方に車両201が位置せず、座標特定点Xから距離Dだけ進行方向前方の位置よりも実際の車両201の位置は後方となる(即ち、車両の検出位置に誤差が生じる)。従って、座標特定点Xと距離Dからは車両201の位置を正確に検出することができない。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、地物が傾斜して配置されている場合において、その傾斜角度を考慮して移動体の検出位置に対して生じる誤差範囲を正確に推定することを可能にした移動体位置検出システム、移動体位置検出装置、移動体位置検出方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る移動体位置検出システム(1)は、移動体(81)の周辺に存在する地物(90〜93)を検出した検出結果を取得する地物検出結果取得手段(13)と、前記地物検出結果取得手段によって検出結果が取得された前記地物と該地物に含まれる座標特定点の位置情報とが対応付けられた地物情報(37)を取得する地物情報取得手段(13)と、前記地物情報取得手段により取得された前記地物情報に基づいて、前記移動体の位置を検出する位置検出手段(13)と、前記地物検出結果取得手段によって検出結果が取得された前記地物の傾斜角度を取得する角度取得手段(13)と、前記地物における前記座標特定点の配置と前記角度取得手段により取得された前記地物の傾斜角度とに基づいて、前記位置検出手段により検出した前記移動体の位置の誤差範囲を推定する誤差範囲推定手段(13)と、を有することを特徴とする。
尚、「移動体」としては、車両以外に、歩行者や二輪車も含む。
また、「地物」としては、道路上又は道路付近において位置や角度が固定されている物が該当し、障害物、建造物、道路標識(路面標示含む)等がある。
また、「地物の傾斜角度」とは、道路幅方向を基準とした傾斜角度でも良いし、道路の長さ方向を基準とした傾斜角度でも良い。
【0009】
また、請求項2に係る移動体位置検出システム(1)は、請求項1に記載の移動体位置検出システムであって、前記誤差範囲検出手段(13)は、前記地物(90〜93)における前記座標特定点の配置と前記角度取得手段により取得された前記地物の傾斜角度とに基づいて、前記誤差範囲が前記位置検出手段(13)により検出した前記移動体(81)の位置に対して前記移動体の進行方向、逆方向又は両方向のいずれにあるかを特定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る移動体位置検出システム(1)は、請求項1又は請求項2に記載の移動体位置検出システムであって、前記移動体(81)の移動する道路の車線数を取得する車線数取得手段(13)を有し、前記誤差範囲推定手段(13)は、前記角度取得手段により取得された前記地物(90〜93)の傾斜角度と前記移動体の移動する道路の車線数とに基づいて、前記誤差範囲の誤差量を推定することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る移動体位置検出システム(1)は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の移動体位置検出システムであって、前記地物検出結果取得手段(13)により前記地物(90〜93)を検出した検出結果を取得する度に、前記位置検出手段(13)の検出結果に基づいて前記移動体(81)の位置を更新する位置更新手段(13)を有し、前記角度取得手段(13)により取得された前記地物の傾斜角度が所定角度以上の場合には、前記位置検出手段(13)の検出結果に基づいて前記移動体の位置を更新しないことを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に係る移動体位置検出システム(1)は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の移動体位置検出システムであって、前記地物検出結果取得手段(13)により前記地物(90〜93)を検出した検出結果を取得する度に、前記位置検出手段(13)の検出結果に基づいて前記移動体(81)の位置を更新する位置更新手段(13)と、第1地点から第2地点までの前記移動体の移動に伴って生じる前記移動体の位置の検出誤差である走行誤差を取得する走行誤差取得手段(13)と、を有し、前記第1地点で前記地物検出結果取得手段により取得された検出結果に基づいて前記誤差範囲推定手段により推定された誤差範囲である第1誤差範囲と前記走行誤差とを合わせた誤差量が、前記第2地点で前記地物検出結果取得手段により取得された検出結果に基づいて前記誤差範囲推定手段により推定された誤差範囲である第2誤差範囲の誤差量よりも小さい場合には、前記第2地点での前記位置検出手段の検出結果に基づいて前記移動体の位置を更新しないことを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に係る移動体位置検出システム(1)は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の移動体位置検出システムであって、前記地物検出結果取得手段(13)は、前記移動体(81)に設置された撮像手段(19)より撮像した画像に基づいて、前記移動体が移動する道路に形成された前記地物(90〜93)を検出した検出結果を取得することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に係る移動体位置検出システム(1)は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の移動体位置検出システムであって、前記地物(90〜93)は、前記移動体(81)が移動する路面に形成された路面標示であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項8に係る移動体位置検出システム(1)は、請求項7に記載の移動体位置検出システムであって、前記地物検出結果取得手段(13)は、前記路面標示として停止線を検出した検出結果を取得することを特徴とする。
【0016】
また、請求項9に係る移動体位置検出装置(1)は、移動体(81)の周辺に存在する地物(90〜93)を検出した検出結果を取得する地物検出結果取得手段(13)と、前記地物検出結果取得手段によって検出結果が取得された前記地物と該地物に含まれる座標特定点の位置情報とが対応付けられた地物情報(37)を取得する地物情報取得手段(13)と、前記地物情報取得手段により取得された前記地物情報に基づいて、前記移動体の位置を検出する位置検出手段(13)と、前記地物検出結果取得手段によって検出結果が取得された前記地物の傾斜角度を取得する角度取得手段(13)と、前記地物における前記座標特定点の配置と前記角度取得手段により取得された前記地物の傾斜角度とに基づいて、前記位置検出手段により検出した前記移動体の位置の誤差範囲を推定する誤差範囲推定手段(13)と、を有することを特徴とする。
【0017】
また、請求項10に係る移動体位置検出方法は、移動体(81)の周辺に存在する地物(90〜93)を検出した検出結果を取得する地物検出結果取得ステップと、前記地物検出結果取得ステップによって検出結果が取得された前記地物と該地物に含まれる座標特定点の位置情報とが対応付けられた地物情報(37)を取得する地物情報取得ステップと、前記地物情報取得ステップにより取得された前記地物情報に基づいて、前記移動体の位置を検出する位置検出ステップと、前記地物検出結果取得ステップによって検出結果が取得された前記地物の傾斜角度を取得する角度取得ステップと、前記地物における前記座標特定点の配置と前記角度取得ステップにより取得された前記地物の傾斜角度とに基づいて、前記位置検出ステップにより検出した前記移動体の位置の誤差範囲を推定する誤差範囲推定ステップと、を有することを特徴とする。
【0018】
更に、請求項11に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、移動体(81)の周辺に存在する地物(90〜93)を検出した検出結果を取得する地物検出結果取得機能と、前記地物検出結果取得機能によって検出結果が取得された前記地物と該地物に含まれる座標特定点の位置情報とが対応付けられた地物情報(37)を取得する地物情報取得機能と、前記地物情報取得機能により取得された前記地物情報に基づいて、前記移動体の位置を検出する位置検出機能と、前記地物検出結果取得機能によって検出結果が取得された前記地物の傾斜角度を取得する角度取得機能と、前記地物における前記座標特定点の配置と前記角度取得機能により取得された前記地物の傾斜角度とに基づいて、前記位置検出機能により検出した前記移動体の位置の誤差範囲を推定する誤差範囲推定機能と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
前記構成を有する請求項1に記載の移動体位置検出システムによれば、移動体の周辺にある地物を検出するとともに、その検出結果に基づいて移動体の位置を検出する場合において、地物が傾斜して配置されていたとしても、その傾斜角度を考慮して移動体の検出位置に対して生じる誤差範囲を正確に推定することが可能となる。その結果、推定された誤差範囲を考慮することによって、移動体に対する案内や制御を適切なタイミングで実行することが可能となる。
【0020】
また、請求項2に記載の移動体位置検出システムによれば、地物における座標特定点の配置と地物の傾斜角度とに基づいて、誤差範囲が移動体の検出位置に対して移動体の進行方向、逆方向又は両方向のいずれにあるかを特定するので、地物検出時の地物と移動体の位置関係を考慮することによって、移動体の検出位置と実際の移動体の位置との間で生じる誤差の方向を正確に推定することが可能となる。
【0021】
また、請求項3に記載の移動体位置検出システムによれば、地物の傾斜角度と移動体の移動する道路の車線数とに基づいて、誤差範囲の誤差量を推定するので、地物検出時の地物と移動体の配置を考慮することによって、移動体の検出位置と実際の移動体の位置との間で生じ得る最大の誤差量を正確に推定することが可能となる。
【0022】
また、請求項4に記載の移動体位置検出システムによれば、地物の傾斜角度が所定角度以上の場合には、検出結果に基づいて移動体の位置を更新しないので、誤差量が非常に大きいと予測される状況では移動体の位置を更新しないことにより、推定される移動体の位置と実際の移動体の位置との間に大きな差異が生じることを防止することが可能となる。
【0023】
また、請求項5に記載の移動体位置検出システムによれば、以前の地物検出時の誤差範囲とその時点からの走行に基づく走行誤差を合わせた誤差量が、今回の地物検出時の誤差範囲よりも小さい場合には、検出結果に基づいて移動体の位置を更新しないので、以前の地物検出時の移動体の位置検出結果を継続して用いた方が良いと予測される状況では移動体の位置を更新しないことにより、推定される移動体の位置と実際の移動体の位置との間に大きな差異が生じることを防止することが可能となる。
【0024】
また、請求項6に記載の移動体位置検出システムによれば、移動体に設置された撮像手段より撮像した画像に基づいて地物を検出するので、既存のシステムに用いられる撮像手段を流用して移動体の周囲にある地物を正確に検出することが可能となる。その結果、地物を検出する為の新たな手段やシステムを設けることなく、当該システムを実現することが可能となる。
【0025】
また、請求項7に記載の移動体位置検出システムによれば、検出対象とする地物は移動体が移動する路面に形成された路面標示であるので、検出対象物が道路上において位置や角度が常に固定され、また、路面との明度の違いによって地物の検出を行い易くなる。従って、移動体の位置の検出を容易に行うことが可能となる。
【0026】
また、請求項8に記載の移動体位置検出システムによれば、検出対象とする地物は移動体が移動する路面に形成された停止線であるので、検出対象物が道路上において所定間隔で多数設置されており、移動体の走行中に移動体の位置の検出を所定間隔で高い頻度により行うことが可能となる。従って、推定される移動体の位置と実際の移動体の位置との間に大きな差異が生じることを防止することが可能となる。
【0027】
また、請求項9に記載の移動体位置検出装置によれば、移動体の周辺にある地物を検出するとともに、その検出結果に基づいて移動体の位置を検出する場合において、地物が傾斜して配置されていたとしても、その傾斜角度を考慮して移動体の検出位置に対して生じる誤差範囲を正確に推定することが可能となる。その結果、推定された誤差範囲を考慮することによって、移動体に対する案内や制御を適切なタイミングで実行することが可能となる。
【0028】
また、請求項10に記載の移動体位置検出方法によれば、移動体の周辺にある地物を検出するとともに、その検出結果に基づいて移動体の位置を検出する場合において、地物が傾斜して配置されていたとしても、その傾斜角度を考慮して移動体の検出位置に対して生じる誤差範囲を正確に推定することが可能となる。その結果、推定された誤差範囲を考慮することによって、移動体に対する案内や制御を適切なタイミングで実行することが可能となる。
【0029】
更に、請求項11に記載のコンピュータプログラムによれば、移動体の周辺にある地物を検出させるとともに、その検出結果に基づいて移動体の位置を検出させる場合において、地物が傾斜して配置されていたとしても、その傾斜角度を考慮して移動体の検出位置に対して生じる誤差範囲を正確に推定させることが可能となる。その結果、推定された誤差範囲を考慮することによって、移動体に対する案内や制御を適切なタイミングで実行させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係るナビゲーション装置を示したブロック図である。
【図2】分岐点に配置される信号機及び停止線の一例を示した図である。
【図3】地物データとして記憶される停止線の一例を示した図である。
【図4】案内フレーズ条件テーブルの一例を示した図である。
【図5】案内フレーズ条件テーブルで規定された案内開始地点を説明した図である。
【図6】本実施形態に係る分岐点案内処理プログラムのフローチャートである。
【図7】車両の検出位置に対して誤差範囲を推定した場合における案内開始地点への到達判定方法について示した図である。
【図8】本実施形態に係る車両位置詳細検出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【図9】本実施形態に係る車両位置詳細検出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【図10】地物テーブルの一例を示した図である。
【図11】最も新しく認識した手前分岐点の停止線から次の案内を行う案内開始地点までの距離Mの算出方法について説明した図である。
【図12】停止線を撮像する車両を示した側面図である。
【図13】車両のバックカメラによって停止線を撮像した撮像画像を示した図である。
【図14】最も新しく認識した手前分岐点の停止線から車両の現在位置までの距離Nの算出方法について説明した図である。
【図15】車両の検出位置に対して生じる誤差範囲の特定方法を説明した図である。
【図16】停止線が傾斜していない場合の車両位置の検出結果を説明した図である。
【図17】停止線が傾斜する場合の車両位置の検出結果を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る移動体位置検出システム及び移動体位置検出装置をナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るナビゲーション装置1を示したブロック図である。
【0032】
図1に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、ナビゲーション装置1が搭載された車両の現在位置を検出する現在位置検出部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU13と、ユーザからの操作を受け付ける操作部14と、ユーザに対して車両周辺の地図や施設の関する施設情報を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17と、プローブセンタやVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール18と、から構成されている。また、ナビゲーション装置1には後述する路面標示を検出する為のバックカメラ19が接続されている。
【0033】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS21、車速センサ22、ステアリングセンサ23、ジャイロセンサ24等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度、現在時刻等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ22は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU13に出力する。そして、ナビゲーションECU13は発生するパルスを計数することにより駆動輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記5種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0034】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB31、案内フレーズ条件テーブル32、地物テーブル33及び所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。尚、データ記録部12をハードディスクの代わりにメモリーカードやCDやDVD等の光ディスクにより構成しても良い。
【0035】
ここで、地図情報DB31は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ34、ノード点に関するノードデータ35、各分岐点に関する分岐点データ36、路面上に形成された地物の内、特に停止線の路面標示に関する地物データ37、施設等の地点に関する地点データ、地図を表示するための地図表示データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ等が記憶された記憶手段である。
【0036】
ここで、リンクデータ34としては、例えば、該リンクを識別するリンクID、該リンクの端部に位置するノードを特定する端部ノード情報、該リンクを構成する道路の道路種別、車線数等が記憶される。また、ノードデータ35としては、該ノードを識別するノードID、該ノードの位置座標、該ノードがリンクを介して接続される接続先ノードを特定する接続先ノード情報等が記憶される。また、分岐点データ36としては、該分岐点(交差点)を形成するノードを特定する該当ノード情報、該分岐点に接続されるリンク(以下、接続リンクという)を特定する接続リンク情報、分岐点の周辺に設置された信号機に関する信号機情報38等が記憶される。
【0037】
また、信号機情報38としては、全国の各分岐点(交差点)の周辺に設置された信号機について、信号機の設置された方向(即ち、信号機のライトが向いている方向であり、以下、設置方向という)や灯数(3灯式、1灯式等)や信号機の設置された位置座標(以下、設置座標という)等が記憶される。更に、一の分岐点に対して複数の信号機が設置されている場合には、複数の信号機毎に上記設置方向や設置座標等が記憶される。例えば、図2に示すように片側2車線の道路が交差する分岐点51では、8個の信号機52〜59が設置されている。従って、分岐点51の信号機情報38としては、信号機52〜59の設置方向や設置座標等が記憶される。
【0038】
尚、信号機情報38としては、分岐点からの退出方向毎に、最も退出側にある信号機(即ち車両が分岐点を通過する際に、その分岐点で最後に視認できる信号機であり、以下、退出側信号機という)に関する情報のみを記憶する構成としても良い。例えば、図2に示す分岐点51では、図の下から上への退出方向に対して退出側信号機である信号機53に関する情報を記憶し、図の上から下への退出方向に対して退出側信号機である信号機55に関する情報を記憶し、図の左から右への退出方向に対して退出側信号機である信号機57に関する情報を記憶し、図の右から左への退出方向に対して退出側信号機である信号機59に関する情報を記憶する。即ち、8個の信号機52〜59の内、信号機53、55、57、59の設置方向と設置座標のみを記憶する構成としても良い。また、分岐点からの進入方向毎に、最も進入側(即ち出発地側)にある信号機(即ち車両が最初に視認できる信号機であり、以下、進入側信号機という)に関する情報のみを記憶する構成としても良い。
そして、ナビゲーションECU13は、後述のように地図情報DB31に記憶された各データに基づいて、車両の進行方向前方にある案内分岐点と該案内分岐点よりも案内経路の出発地側に存在する分岐点(以下、手前分岐点という)を特定する。また、案内分岐点や手前分岐点の周辺にある信号機の信号機情報38や停止線の地物データ37を取得する。そして、特定された案内分岐点や手前分岐点に関する情報や取得した信号機情報38や地物データ37に基づいて、後述の地物テーブル33(図10参照)を作成する。尚、案内分岐点とは、ナビゲーション装置1に設定されている案内経路に従ってナビゲーション装置1が走行の案内を行う際に、右左折指示等の案内を行う対象となる分岐点である。
【0039】
一方、地物データ37は、路面上に形成された地物の内、特に停止線の路面標示に関する情報が記憶される。具体的には、識別IDと、停止線の位置を地図上で特定する座標データと、停止線が設置された分岐点を識別する分岐点IDとが記憶される。例えば、図2に示すように片側2車線の道路が交差する分岐点51では、4箇所に停止線60〜63が設置されている。従って、地物データ37としては、停止線60〜63に関する各種情報が記憶される。
【0040】
また、地物データ37に含まれる座標データは、停止線の座標特定点の位置座標を示す。ここで、本実施形態では停止線の座標特定点は、図3に示すように車両の進行方向に対して最も左側の端部にあって、前後方向の中央位置にある点Xとする。尚、停止線内に含まれるのであれば他の点を座標特定点としても良い。また、座標特定点の位置は、絶対位置ではなく停止線の設置された分岐点のノード点に対する相対位置によって特定しても良い。
そして、ナビゲーションECU13はバックカメラ19で撮像した撮像画像から路面に形成された停止線を認識した場合に、認識した停止線に関連付けられた座標データに基づいて車両の詳細な現在位置を検出(又は既に検出された位置を補正)することが可能となる。そして、検出された現在位置に基づいて案内や車両制御を行う。
【0041】
また、案内フレーズ条件テーブル32は、案内分岐点の案内について、発話されるフレーズの内容とともに、案内の発話を開始する条件等がそれぞれ対応付けられて記憶されたテーブルである。以下に、案内フレーズ条件テーブル32について具体例を挙げてより詳細に説明する。図4は案内フレーズ条件テーブル32の一例を示した図である。図5は、図4に示す案内フレーズ条件テーブル32で規定された案内開始地点を説明した図である。尚、図4では、案内分岐点で行われる案内の内、特に案内分岐点に信号機が設置されている場合であって、該信号機を用いた表現内容で右左折の案内を行う場合に出力される案内について示す。また、以下の実施例の説明では、案内分岐点及び手前分岐点はいずれも信号機の設置された分岐点であり、案内分岐点の一つ手前側(案内経路に沿った出発地側)の分岐点を第1手前分岐点と称し、第1手前分岐点の更に一つ手前側(案内経路に沿った出発地側)の分岐点を第2手前分岐点と称し、第2手前分岐点の更に一つ手前側(案内経路に沿った出発地側)の分岐点を第3手前分岐点と称して説明する。
【0042】
図4に示すように、例えば、「2つ目の信号を左(右)方向です」との案内を行う場合には、案内分岐点に進入するまでに案内分岐点を含めて2箇所の信号機をユーザがカウントできる状態にある間に、案内の発話を開始する必要がある。従って、「2つ目の信号を左(右)方向です」との案内フレーズは、第2手前分岐点の退出側信号機に対して設定された案内開始地点を車両が通過したことを条件として案内を開始する。また、第2手前分岐点の退出側信号機に設定された案内開始地点は、第2手前分岐点の退出側信号機の所定距離手前(例えば5m手前)の地点や、車両の乗員(特に運転手)から第2手前分岐点の退出側信号機が視認できる状態から視認できなくなる状態へと切り替わる地点等がある。例えば、図5に示す例では、案内分岐点71に対して2つ手前側の第2手前分岐点72の退出側信号機73の5m手前の地点Aを案内開始地点とし、地点Aを車両が通過した時点で、案内分岐点の案内が開始される。その結果、案内を受けたユーザは、案内分岐点71に進入するまでに第1手前分岐点74と案内分岐点71の2箇所の信号機の設置された分岐点をカウントすることが可能となり、案内文中の『2つ目の信号』が案内分岐点71に設置された進入側信号機75であることを明確に特定することが可能となる。
尚、案内フレーズ中の信号機の数は、分岐点単位での信号機の数とすることが望ましい。即ち、大型の道路等において同一分岐点に複数の信号機が設けられている場合には、該複数の信号機は1の信号機としてカウントすることが望ましい。その場合には、案内フレーズ中の信号機の数は、信号機の設置された分岐点(即ち、信号機交差点)の数に相当する。但し、分岐点単位でカウントする場合であっても、分岐点以外に設置された信号機(例えば押しボタン式信号機等)も信号機の数としてカウントすることが望ましい。以下の説明でも同様である。
案内フレーズ条件テーブル32には、同様にして他の案内フレーズについても記憶されている。尚、案内分岐点の案内方向は、左(右)方向以外に、右(左)斜め方向や右(左)手前方向等も存在する。
【0043】
また、地物テーブル33は、後述のように車両が案内分岐点に対して所定距離以内(例えば1.47km以内)に到達した時点でナビゲーションECU13によって作成される。そして、地物テーブル33は、車両の進行方向前方にある案内分岐点を基準にして、該案内分岐点及び手前分岐点にある停止線及び退出側信号機の相対的な位置関係を特定したテーブルである(図10参照)。尚、地物テーブル33の詳細については後述する。
【0044】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、ナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、後述の分岐点案内処理プログラム(図6、図8、図9参照)等が記録されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。尚、ナビゲーションECU13は、処理アルゴリズムとしての各種手段を構成する。例えば、地物検出結果取得手段は、車両(移動体)の周辺に存在する地物を検出した検出結果を取得する。地物情報取得手段は、地物検出結果取得手段によって検出結果が取得された地物と該地物に含まれる座標特定点の位置情報とが対応付けられた地物情報を取得する。位置検出手段は、取得された地物情報に基づいて、車両の位置を検出する。角度取得手段は、地物検出結果取得手段によって検出結果が取得された地物の傾斜角度を取得する。誤差範囲推定手段は、地物における座標特定点の配置と地物の傾斜角度とに基づいて、位置検出手段により検出した車両の位置の誤差範囲を推定する。車線数取得手段は、車両の走行する道路の車線数を取得する。位置更新手段は、地物検出結果取得手段により地物を検出した検出結果を取得する度に、位置検出手段の検出結果に基づいて車両の位置を更新する。走行誤差取得手段は、第1地点から第2地点までの車両の走行に伴って生じる車両の位置の検出誤差である走行誤差を取得する。
【0045】
操作部14は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部14は液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。また、マイクと音声認識装置によって構成することもできる。
【0046】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、出発地から目的地までの案内経路、案内経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。特に本実施形態では、案内分岐点が車両の進行方向前方の所定距離以内(例えば300m)に接近した場合には、案内分岐点付近の拡大図や車両の案内分岐点における進行方向について表示する。
【0047】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU13からの指示に基づいて案内経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。特に本実施形態では、案内分岐点が車両の進行方向前方にある場合には、案内内容に基づく所定の案内の開始タイミング(例えば、「2つ目の信号を左方向です」との音声案内を出力する場合には、第2手前分岐点の退出側信号機の所定距離手前を通過したタイミング)で案内分岐点の音声案内を出力する。
【0048】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて音楽や映像の再生、地図情報DB31の更新等が行われる。
【0049】
また、通信モジュール18は、交通情報センタ、例えば、VICSセンタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0050】
また、バックカメラ19は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたものであり、車両の後方に装着されたナンバープレートの上中央付近に取り付けられ、視線方向を水平より所定角度下方に向けて設置される。そして、走行時に車両の進行方向と逆方向となる車両後方を撮像する。そして、撮像画像の画像認識処理を行うことによって、車両の周囲にある地物の種類や位置を検出する。そして、検出された地物(本実施形態では特に停止線の路面標示)に基づいて、車両の詳細な位置を算出する。
【0051】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてナビゲーションECU13が実行する分岐点案内処理プログラムについて図6に基づき説明する。図6は本実施形態に係る分岐点案内処理プログラムのフローチャートである。ここで、分岐点案内処理プログラムは車両のACCがONされた後に所定間隔(例えば車両の現在位置の検出周期毎)で繰り返し実行され、案内経路上にある案内分岐点に対する案内を行うプログラムである。尚、以下の図6、図8、図9にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM42やROM43に記憶されており、CPU41により実行される。
【0052】
先ず、分岐点案内処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU41は、ナビゲーション装置1において設定された案内経路に基づく経路案内が行われているか否か判定する。ここで、案内経路は、出発地(例えば自車の現在位置)からユーザに選択された目的地までの推奨経路であり、経路探索処理の結果に基づいて設定される。また、経路探索処理は、地図情報DB31に記憶されたリンクデータ34やノードデータ35、VICSセンタから取得した交通情報等を用いて、公知のダイクストラ法等により行われる。
【0053】
そして、ナビゲーション装置1において設定された案内経路に基づく経路案内が行われていると判定された場合(S1:YES)には、S2へと移行する。それに対して、ナビゲーション装置1において設定された案内経路に基づく経路案内が行われていないと判定された場合(S1:NO)には、当該分岐点案内処理プログラムを終了する。
【0054】
S2においてCPU41は、車両の現在位置を現在位置検出部11の検出結果や推測航法に基づいて取得する。尚、車両の現在位置を地図データ上で特定するマップマッチング処理についても行う。更に、車両の進行方向前方の所定距離以内に案内分岐点が位置する状態では、後述のように車両の現在位置は高精度ロケーション技術を用いて詳細に特定される。ここで、高精度ロケーション技術とは、車両後方のバックカメラ19から取り込んだ白線や路面ペイント等の地物を画像認識により検出し、更に、白線や路面ペイント等の地物を予め記憶した地物データ37と照合することにより、走行車線や高精度な車両位置を検出可能にする技術である。特に本実施形態では地物として分岐点に設けられた停止線を検出対象とする。また、前記S2や後述のS6で検出された車両の現在位置はRAM42等に格納され、新たな車両の現在位置が検出される度に更新される。
【0055】
次に、S3においてCPU41は、ナビゲーション装置1において設定されている案内経路(案内経路中の案内分岐点を含む)を取得する。
【0056】
続いて、S4においてCPU41は、前記S2で取得した車両の現在位置と前記S3で取得した案内経路に基づいて、車両の進行方向前方の所定距離以内(例えば、1.47km以内)に案内分岐点が有るか否か判定する。尚、案内分岐点とは、前記したようにナビゲーション装置1に設定された案内経路に従ってナビゲーション装置1が走行の案内を行う際に、右左折指示等の案内を行う対象となる分岐点である。
【0057】
そして、車両の進行方向前方の所定距離以内に案内分岐点が有ると判定された場合(S4:YES)には、S5へと移行する。それに対して、車両の進行方向前方の所定距離以内に案内分岐点が無いと判定された場合(S4:NO)には、当該分岐点案内処理プログラムを終了する。
【0058】
S5においてCPU41は、車両の進行方向前方にある案内分岐点に対する案内が既に行われたか否か判定する。尚、前記S5では、案内分岐点に対する案内の内、特に案内分岐点での右左折等を指示する音声案内が行われたか否かを判定する。
【0059】
そして、車両の進行方向前方にある案内分岐点に対する案内が既に行われたと判定された場合(S5:YES)には、当該分岐点案内処理プログラムを終了する。それに対して、車両の進行方向前方にある案内分岐点に対する案内が行われていないと判定された場合(S5:NO)には、S6へと移行する。
【0060】
S6においてCPU41は、後述の車両位置詳細検出処理(図8、図9)を実行する。尚、車両位置詳細検出処理は、後述のように分岐点に設けられた停止線をバックカメラ19で検出し、その検出結果に基づいて車両の詳細な現在位置を検出する処理である。また、車両の検出位置に対する誤差範囲についても推定される。尚、誤差範囲は、検出位置に対して誤差の生じる方向(車両の進行方向又は逆方向)と生じ得る最大の誤差量(例えば10m)によって特定される。
【0061】
次に、S7においてCPU41は、前記S6で検出された車両の検出位置及び誤差範囲に基づいて、案内開始地点に車両が到達したか否か判定される。尚、案内開始地点は、案内フレーズ条件テーブル32(図4)に予め案内毎に対応付けて記憶されている。また、案内開始地点に車両が到達したか否かは、前記S6で推定された誤差範囲を考慮して判定される。例えば、図7に示すように、前記S6で推定された誤差範囲が車両の進行方向の逆方向に10mである場合には、前記S6で検出された車両の現在位置76の後方10mの地点Bが、手前分岐点(例えば第2手前分岐点72)の退出側信号機73の所定距離手前に設定された案内開始地点Aに到達した場合に、案内開始地点Aに車両が到達したと判定される。それによって、乗員の視界と矛盾する案内(例えば、案内分岐点まで信号機が3つ見える状態で、「2つ目の信号を左(右)方向です」との案内)が行われることを防止することが可能となる。
【0062】
そして、案内開始地点に車両が到達したと判定された場合(S7:YES)には、S8へと移行する。それに対して、案内開始地点に車両が到達していないと判定された場合(S7:NO)には、当該分岐点案内処理プログラムを終了する。
【0063】
S8においてCPU41は、到達した案内開始地点に対応する案内フレーズにより案内分岐点に関する案内を行う。具体的には、案内分岐点を特定させる案内と車両の案内分岐点での退出方向を特定する案内(即ち、車両が案内分岐点から退出する退出道路を特定させる為の案内)を行う。例えば、本実施形態では、案内フレーズとして「3つ目の信号を左方向です」、「2つ目の信号を左方向です」、「次の信号を左方向です」があり、それぞれの案内フレーズに対応して案内開始地点が設定されている。例えば、第2手前分岐点の退出側信号機の所定距離手前に設定された案内開始地点に車両が到達した場合には、「2つ目の信号を左(右)方向です」とのフレーズをスピーカ16から出力する。更に、案内分岐点が車両の所定距離以内(例えば300m)に接近した場合には、案内分岐点付近の拡大図や車両の案内分岐点における進行方向について液晶ディスプレイ15に表示する。
その結果、案内分岐点及び該案内分岐点から車両が退出する道路をユーザに正確に特定させることが可能となる。
【0064】
次に、前記S6において実行される車両位置詳細検出処理のサブ処理について図8及び図9に基づき説明する。図8及び図9は車両詳細位置検出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0065】
先ず、S11においてCPU41は、車両の進行方向前方に位置する案内分岐点に対する地物テーブル33が作成されているか否か判定する。ここで、地物テーブル33は、後述のS12において作成され、車両の進行方向前方にある案内分岐点を基準にして、該案内分岐点及び手前分岐点にある停止線及び退出側信号機の相対的な位置関係を特定したテーブルである。
【0066】
そして、車両の進行方向前方に位置する案内分岐点に対する地物テーブル33が作成されていると判定された場合(S11:YES)には、S14へと移行する。それに対して、車両の進行方向前方に位置する案内分岐点に対する地物テーブル33が作成されていないと判定された場合(S11:NO)には、S12へと移行する。
【0067】
S12においてCPU41は、車両の進行方向前方に位置する案内分岐点と、該案内分岐点の手前側に位置する手前分岐点について、各分岐点の位置情報を地図情報DB31から取得する。また、案内分岐点及び手前分岐点に設置された退出側信号機に関する情報(位置座標、灯数等)を信号機情報38から取得する。更に、案内分岐点及び手前分岐点に配置された停止線(実停止線以外に仮想停止線も含む)に関する情報(位置座標、分岐点までの距離等)について地物データ37から取得する。そして、取得した各情報に基づいて地物テーブル33を作成する。尚、地物テーブル33の作成対象とする手前分岐点は、車両の現在位置から案内分岐点までにある全ての手前分岐点としても良いし、所定の手前分岐点のみ(例えば第1手前分岐点から第3手前分岐点)としても良い。
【0068】
ここで、図10は、前記S12において作成される地物テーブル33の一例を示した図である。図10に示す地物テーブル33では、車両81の進行方向前方にある案内分岐点82を基準にして、該案内分岐点82及び第1手前分岐点83、第2手前分岐点84、第3手前分岐点85にある退出側信号機86〜89及び停止線90〜93の相対的な位置関係が記録されている。
例えば、案内分岐点82の退出側信号機86は、3灯式であり、案内分岐点82に対して出発地側と逆方向に10m離れた位置に設置されていることが記録される。また、第2手前分岐点84の停止線92は、「ID:345」の仮想停止線であり、案内分岐点82に対して出発地側に220m離れた位置に設置されていることが記録される。尚、退出側信号機86〜89の案内分岐点82からの相対距離は、例えば案内分岐点82の位置座標と信号機情報38から取得された各退出側信号機86〜89の位置座標とに基づいて算出される。また、停止線90〜93の案内分岐点82からの相対距離は、例えば各分岐点82〜85の位置座標と地物データ37から取得された各停止線90〜93の位置データとに基づいて算出される。
【0069】
次に、S13においてCPU41は、前記S12で作成された地物テーブル33に基づいて、案内分岐点の案内を行う際の案内フレーズの内容と、案内分岐点の案内を開始する案内開始地点をそれぞれ決定する。例えば、案内経路が車両の進行方向前方にある案内分岐点で左折する経路であった場合には、案内フレーズとして「3つ目の信号を左方向です」、「2つ目の信号を左方向です」、「次の信号を左方向です」がそれぞれ決定される。また、「3つ目の信号を左方向です」との案内には、第3手前分岐点の退出側信号機の所定距離手前(例えば5m手前)の地点を案内開始地点に決定する。同じく、「2つ目の信号を左方向です」との案内には、第2手前分岐点の退出側信号機の所定距離手前(例えば5m手前)の地点を案内開始地点に決定する。同じく、「次の信号を左方向です」との案内には、第1手前分岐点の退出側信号機の所定距離手前(例えば5m手前)の地点を案内開始地点に決定する。
【0070】
その後、S14においてCPU41は、前記S12で作成された地物テーブル33と前記S2で取得した車両の現在位置に基づいて、車両が手前分岐点の停止線から前後40m以内に位置するか否か判定する。
【0071】
そして、車両が手前分岐点の停止線から前後40m以内に位置すると判定された場合(S14:YES)には、S15へと移行する。それに対して、車両が手前分岐点の停止線から前後40m以内に位置しないと判定された場合(S14:NO)には、RAM42に記憶された車両の現在位置を更新することなくS7へと移行する。
【0072】
S15においてCPU41は、当該分岐点案内処理プログラムと並行して所定間隔で実施されている地物認識処理の検出結果を取得する。ここで、地物認識処理は、地物データ37に記録されている路面標示(本実施形態では特に停止線)の位置座標から所定距離以内(例えば40m以内)に車両が位置する場合に、バックカメラ19で撮像した画像から該当する路面標示を認識(検出)する処理である。
【0073】
その後、S16においてCPU41は、前記S15で取得した地物認識処理の検出結果に基づいて、手前分岐点の停止線を認識(検出)した検出結果を取得したか否か判定する。
【0074】
そして、手前分岐点の停止線を認識(検出)した検出結果を取得したと判定された場合(S16:YES)には、S17へと移行する。それに対して、手前分岐点の停止線を認識(検出)した検出結果を取得できなかったと判定された場合(S16:NO)には、RAM42に記憶された車両の現在位置を更新することなくS7へと移行する。
【0075】
S17においてCPU41は、認識した手前分岐点の停止線の道路幅に対する傾斜角度φを取得する。具体的には、停止線の画像認識処理の結果に基づいて算出する。尚、バックカメラ19は、車両の後バンパー付近から後方を撮像できるように光軸Lを水平から所定角度θ(例えば45度)下方向に向けるように取り付けられており、撮像範囲が固定されている。従って、バックカメラ19によって撮像された撮像画像中の画像データの位置(具体的には下縁からの画素数)から、検出された停止線の道路幅に対する傾斜角度φを算出することが可能となる。
【0076】
次に、S18においてCPU41は、前記S17で取得された停止線の道路幅に対する傾斜角度φが20度以上であるか否か判定する。尚、前記S18の判定基準となる角度は20度以外に設定しても良い。
【0077】
そして、検出された停止線の道路幅に対する傾斜角度φが20度未満であると判定された場合(S18:NO)には、S19へと移行する。それに対して、検出された停止線の道路幅に対する傾斜角度φが20度以上であると判定された場合(S18:YES)には、今回認識された停止線に基づく車両位置の検出では、検出位置の誤差範囲が大きくなりすぎるので、RAM42に記憶された車両の現在位置を更新することなくS7へと移行する。
【0078】
S19においてCPU41は、認識した手前分岐点の停止線を識別する識別IDを地物データ37から取得し、RAM42に記憶する。尚、新たに手前分岐点の停止線を認識した場合には、認識する度に新たな識別IDに上書きされる。即ち、最も新しく認識した手前分岐点の停止線の識別IDが記憶される。また、手前分岐点の停止線を認識した時点の車両の生涯走行距離についても取得する。尚、生涯走行距離は、車両が製造されてから現在までの累積走行距離であり、車両に搭載されたメモリ等から取得する。そして、取得した車両の生涯走行距離についても同様にRAM42に記憶する。
【0079】
次に、S20においてCPU41は、“最も新しく認識した手前分岐点の停止線から次の案内を行う案内開始地点までの距離M”を算出する。具体的には、前記S12で作成された地物テーブル33(図10)と前記S13で決定された案内開始地点とに基づいて算出する。
以下に、前記S20における距離Mの算出方法について具体例を挙げて説明する。
例えば、図11では、案内分岐点82へと向かう車両81が、第3手前分岐点85の停止線93を直前に認識しており、次に「2つ目の信号を左方向です」との案内を行う場合について示す。図11に示す例では、次の案内を行う案内開始地点は上述したように第2手前分岐点84の退出側信号機88から所定距離X手前の地点となる。従って、CPU41は、地物テーブル33から先ず、停止線93から案内分岐点82までの距離Aと、退出側信号機88から案内分岐点82までの距離Bをそれぞれ取得する。そして、以下の式(1)により距離Mを算出する。
M=A−B−X・・・・(1)
【0080】
続いて、S21においてCPU41は、“最も新しく認識した手前分岐点の停止線から車両の現在位置までの距離N”を算出する。具体的には、前記S12で作成された地物テーブル33(図10)と、前記S19で記憶した停止線の認識時点の車両の生涯走行距離と、新たに取得した現時点での車両の生涯走行距離と、停止線の画像認識処理の結果とに基づいて算出する。
以下に、前記S21における距離Nの算出方法について具体例を挙げて説明する。
先ず、CPU41は、車両のバックカメラ19によって停止線を認識した際の停止線から車両(特に運転席)までの距離を算出する。図12は停止線93を撮像する車両を示した側面図であり、図13は車両のバックカメラ19によって停止線93を撮像した撮像画像98を示した図である。
【0081】
バックカメラ19は、図12に示すように車両81の後バンパー99付近から後方を撮像できるように光軸Lを水平から所定角度θ(例えば45度)下方向に向けるように取り付けられており、撮像範囲が固定されている。従って、バックカメラ19によって撮像された図12に示す撮像画像中の画像データの位置(具体的には下縁からの画素数)から、被写体までの距離を計算することができる。
【0082】
ここで、停止線を含む各種路面標示には車両との距離を計測する為の測定開始点が予め定義され、路面標示を形成するライン(境界線)の角部や先端部に設けられている。例えば、停止線93では、停止線93と路面100との車両側の境界中央部分に設けられている。従って、CPU41は、図13に示す停止線93を撮像した撮像画像中において、測定開始点Yの位置(具体的には下縁から測定開始点までの画素数)からバックカメラ19と測定開始点Yの間の距離D1を算出することが可能となる。
【0083】
また、CPU41は、バックカメラ19の位置から車両(特に運転席)までの距離D2を取得する。尚、バックカメラ19の位置から車両(特に運転席)までの距離D2は、車両情報として予めデータ記録部12に記憶されている。
【0084】
その後、CPU41は、現時点で新たに取得した車両の生涯走行距離と、前記S19で記憶した停止線の認識時点の車両の生涯走行距離との差分距離Eを算出する。尚、差分距離Eは、最も新しく停止線を認識してから現在までの車両の走行距離に相当する。そして、図14に示すように以下の式(2)により距離Nを算出する。
N=D1+D2+E・・・・(2)
そして、上記式(2)で算出された手前分岐点の停止線から車両の現在位置までの距離Nによって車両の詳細な現在位置が特定される(即ち、車両の現在位置が検出される)。尚、検出した停止線の位置座標を記憶した地物データ37を用いれば、車両の位置座標を算出することも可能である。また、地物テーブル33を用いて、車両から車両の前方にある案内分岐点、停止線、退出側信号機までの道なり距離を算出することも可能である。
【0085】
次に、S22で車両が走行する道路の車線数Tをリンクデータ34から取得する。
【0086】
続いて、S23においてCPU41は、前記S17で取得した停止線の傾斜角度φと、前記S22で取得した車両が走行する道路の車線数Tに基づいて、今回の車両位置検出の誤差範囲(第2誤差範囲)α1を推定する。尚、誤差範囲α1は、検出位置に対して誤差の生じる方向(車両の進行方向又は逆方向)と生じ得る最大の誤差量(例えば10m)によって特定される。
【0087】
先ず、図15を用いて検出位置に対して誤差の生じる方向(以下、誤差方向という)の特定方法について説明する。
具体的に、誤差方向は停止線に設定された座標特定点の位置と、停止線の傾斜方向によって特定される。例えば、図15(A)に示すように停止線101の座標特定点Xが停止線101の左端に設定されており、停止線101が右下がり(φがマイナス方向)に傾斜している場合には、検出された車両位置102よりも実際の車両の位置103は進行方向の逆方向になる。従って、誤差方向は進行方向の逆方向となる。一方、図15(B)に示すように停止線101の座標特定点Xが停止線101の左端に設定されており、停止線101が左下がり(φがプラス方向)に傾斜している場合には、検出された車両位置102よりも実際の車両の位置103は進行方向となる。従って、誤差方向は進行方向となる。同様にして、停止線に設定された座標特定点の位置と、停止線の傾斜方向との組み合わせに基づいて特定される(図15のテーブル参照)。尚、停止線101の座標特定点Xが停止線101の中央に設定されている場合には、車両が中央よりも右側の車線を横行するか左側の車線を走行するかによって誤差方向が変化する。従って、誤差方向は進行方向及び進行方向の逆方向の両方向となる。但し、検出位置に対して生じ得る最大の誤差量は他の場合と比べて半分となる。
【0088】
次に、検出位置に対して生じ得る最大の誤差量(以下、最大誤差量という)の特定方法について説明する。
具体的に、最大誤差量は車両の走行する道路の車線数Tと、停止線の傾斜方向φによって特定される。具体的には、座標特定点が停止線の左端又は右端に設定されている場合には、以下の式(3)により算出される。
最大誤差量P[m]=T×3.5×tanφ・・・・(3)
また、座標特定点が停止線の中央に設定されている場合には、以下の式(4)により算出される。
最大誤差量P[m]=T×3.5×tanφ÷2・・・・(4)
尚、上記式(3)、(4)中の3.5[m]は、車線幅の最大値を示す。車両が走行する道路の車線幅が取得できる場合には、取得できた車線幅を代わりに用いても良い。また、前記S22で検出された誤差範囲α1はRAM42等に記憶される。
【0089】
次に、S24においてCPU41は、前回の停止線検出時において前記S23で推定された車両位置検出の誤差範囲(第1誤差範囲)α2をRAM42から読み出す。
【0090】
続いて、S25においてCPU41は、前回の停止線検出時において前記S19で記憶した生涯走行距離と、今回の停止線検出時において前記S19で記憶した生涯走行距離との差分を算出することによって、前回の停止線検出時から今回の停止線検出時までの車両の走行距離Rを算出する。
【0091】
その後、S26においてCPU41は、前回の停止線検出時から今回の停止線検出時までの車両の走行に伴って生じる車両位置の検出誤差(以下、走行誤差という)βを算出する。具体的には、以下の式(5)により算出される。
走行誤差β[m]=R×0.34%・・・・(5)
尚、上記式(5)中の0.34%は、適宜変更することが可能である。例えば、車両の走行する道路種別や車種によって変更する構成としても良い。
【0092】
次に、S27においてCPU41は、前記S23で推定された今回の停止線検出時における車両位置検出の誤差範囲α1(より具体的な最大誤差量P)が、前記S24で読み出した前回の停止線検出時における車両位置検出の誤差範囲α2(より具体的な最大誤差量P)と前記S26で算出した走行誤差βとを合わせた誤差量よりも小さいか否か判定される。
【0093】
次に、S27においてCPU41は、前記S23で推定された今回の停止線検出時における車両位置検出の誤差範囲α1が、前記S24で読み出した前回の停止線検出時における車両位置検出の誤差範囲α2と前記S26で算出した走行誤差βとを合わせた誤差量よりも小さいと判定された場合(S27:YES)には、今回認識された停止線に基づく車両位置の検出結果を用いたほうが誤差が少なく、今回認識された停止線に基づく車両位置の検出結果でRAM42に記憶された車両の現在位置を更新したほうが良いと認定し、S28へと移行する。
【0094】
一方、前記S23で推定された今回の停止線検出時における車両位置検出の誤差範囲α1が、前記S24で読み出した前回の停止線検出時における車両位置検出の誤差範囲α2と前記S26で算出した走行誤差βとを合わせた誤差量以上であると判定された場合(S27:NO)には、前回認識された停止線に基づく車両位置の検出結果を用いたほうが誤差が少なく、今回認識された停止線に基づく車両位置の検出結果で車両位置を更新しないほうが良いと認定し、RAM42に記憶された車両の現在位置を更新することなくS7へと移行する。
【0095】
S28においてCPU41は、前記S21及びS23で検出された車両の検出位置及び誤差範囲に基づいて、前記RAM42に記憶された車両の現在位置を更新する。その結果、停止線をバックカメラ19で検出した検出結果に基づいて検出された車両の詳細な現在位置に基づいて、車両の現在位置が修正される。従って、その後に車両が案内開始地点に到達したか否かを正確に判定することが可能となる(S7)。また、誤差範囲を考慮することによって、乗員の視界と矛盾する案内(例えば、案内分岐点まで信号機が3つ見える状態で、「2つ目の信号を左(右)方向です」との案内)が行われることを防止することが可能となる。
【0096】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1を用いた移動体位置検出方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムによれば、停止線を認識対象とした高精度ロケーションシステムを用いて、最も新しく認識した停止線から車両の現在位置を検出し(S21)、検出された停止線の道路幅に対する傾斜角度を取得し(S17)、停止線における座標特定点の配置と停止線の傾斜角度とに基づいて、検出した車両の位置の誤差範囲を推定し(S23)、検出された車両の現在位置と推定された誤差範囲を用いて車両が案内開始地点に到達したか否か判定し(S7)、車両が案内開始地点に到達したと判定された時に、案内分岐点の案内を開始する(S8)ので、検出対象の停止線が傾斜して配置されていたとしても、その傾斜角度を考慮して車両の検出位置に対して生じる誤差範囲を正確に推定することが可能となる。その結果、推定された誤差範囲を考慮することによって、車両が案内開始地点に到達した正確なタイミングで案内分岐点の案内を開始することが可能となる。
また、停止線における座標特定点の配置と停止線の傾斜角度とに基づいて、誤差範囲が車両の検出位置に対して移動体の進行方向、逆方向又は両方向のいずれにあるかを特定するので、停止線検出時の停止線と車両の位置関係を考慮することによって、車両の検出位置と実際の車両の位置との間で生じる誤差の方向を正確に推定することが可能となる。
また、停止線の傾斜角度と車両の移動する道路の車線数とに基づいて、誤差範囲の誤差量を推定するので、停止線検出時の停止線と車両の配置を考慮することによって、車両の検出位置と実際の車両の位置との間で生じ得る最大の誤差量を正確に推定することが可能となる。
また、停止線の傾斜角度が所定角度以上の場合には、検出結果に基づいて車両の位置を更新しないので、誤差量が非常に大きいと予測される状況では車両の位置を更新しないことにより、推定される車両の位置と実際の車両の位置との間に大きな差異が生じることを防止することが可能となる。
また、以前の停止線検出時の誤差範囲とその時点からの走行に基づく走行誤差を合わせた誤差量が、今回の停止線検出時の誤差範囲よりも小さい場合には、検出結果に基づいて車両の位置を更新しないので、以前の停止線検出時の車両の位置検出結果を継続して用いた方が良いと予測される状況では車両の位置を更新しないことにより、推定される車両の位置と実際の車両の位置との間に大きな差異が生じることを防止することが可能となる。
また、車両に設置されたバックカメラ19より撮像した画像に基づいて停止線を検出するので、既存のシステムに用いられるバックカメラ19を流用して車両の周囲にある停止線を正確に検出することが可能となる。その結果、停止線を検出する為の新たな手段やシステムを設けることなく、当該システムを実現することが可能となる。
また、検出対象とする地物は移動体が移動する路面に形成された路面標示であるので、検出対象物が道路上において位置や角度が常に固定され、また、路面との明度の違いによって地物の検出を行い易くなる。従って、車両の位置の検出を容易に行うことが可能となる。
更に、検出対象とする地物は車両が移動する路面に形成された停止線であるので、検出対象物が道路上において所定間隔で多数設置されており、車両の走行中に車両の位置の検出を所定間隔で高い頻度により行うことが可能となる。従って、推定される車両の位置と実際の車両の位置との間に大きな差異が生じることを防止することが可能となる。
【0097】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態ではナビゲーション装置1による案内分岐点の案内をスピーカ16から音声案内により出力することにより行う構成としているが、液晶ディスプレイ15に文章を表示することにより案内を行う構成としても良い。
【0098】
また、本実施形態では、車両の現在位置を特定する為に認識対象とする地物として、特に停止線を用いているが、停止線以外の路面標示を用いても良い。また、路面標示以外の障害物、建造物、道路標識等を用いても良い。但し、認識対象とする地物は、手前分岐点よりも出発地側にあり、且つ案内分岐点の手前側に所定間隔で複数個存在することが望ましい。
【0099】
また、本実施形態では、停止線の道路幅方向に対する傾斜角度φに基づいて車両の検出位置の誤差範囲を推定することとしているが、停止線の長さ方向に対する傾斜角度に基づいて車両の検出位置の誤差範囲を推定する構成としても良い。
【0100】
また、本実施形態では、バックカメラ19を用いた画像認識により停止線等の地物を検出する構成としているが、停止線等を検出する手段として他の手段(例えばセンサなど)を用いても良い。同様に停止線等の傾斜角度をバックカメラ19を用いた画像認識以外の手段を用いて検出する構成としても良い。
【0101】
また、本実施形態では信号機情報38として分岐点の周辺に配置された全ての信号機に関する情報を記憶する構成としているが、分岐点からの退出方向毎に最も退出側にある信号機に関する情報のみを記憶する構成としても良い。その場合には、本実施形態中の進入側信号機を退出側信号機に置き換えることによって、本発明を実施することが可能である。更に、分岐点への進入方向毎に最も進入側にある信号機に関する情報のみを記憶する構成としても良い。また、信号機の代わりに停止線に関する情報を記憶する構成としても良い。
【0102】
また、本実施形態では、案内分岐点の案内として、車両の現在位置から車両の現在位置から案内分岐点までにある信号機(又は信号機の設置された分岐点)の数を用いた案内を行うこととしているが、他の案内を行うようにしても良い。但し、特に信号機や分岐点を用いた案内を行う場合において、本願発明の効果は顕著なものとなる。
【0103】
また、本発明はナビゲーション装置以外に、車両等の移動体の現在位置を検出する機能を有する装置に対して適用することが可能である。例えば、携帯電話機やPDA等の携帯端末、パーソナルコンピュータ、携帯型音楽プレイヤ等(以下、携帯端末等という)に適用することも可能である。また、サーバと携帯端末等から構成されるシステムに対しても適用することが可能となる。その場合には、上述した分岐点案内処理プログラム(図6、図8、図9)の各ステップは、サーバと携帯端末等のいずれが実施する構成としても良い。また、本発明を携帯端末等に適用する場合には、車両以外の移動体、例えば、携帯端末等のユーザや2輪車等の車両位置の検出を行う場合もある。
【符号の説明】
【0104】
1 ナビゲーション装置
13 ナビゲーションECU
19 バックカメラ
31 地図情報DB
33 地物テーブル
37 地物データ
41 CPU
42 RAM
43 ROM
81 車両
82 案内分岐点
83〜85 手前分岐点
87〜89 退出側信号機
90〜93 停止線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周辺に存在する地物を検出した検出結果を取得する地物検出結果取得手段と、
前記地物検出結果取得手段によって検出結果が取得された前記地物と該地物に含まれる座標特定点の位置情報とが対応付けられた地物情報を取得する地物情報取得手段と、
前記地物情報取得手段により取得された前記地物情報に基づいて、前記移動体の位置を検出する位置検出手段と、
前記地物検出結果取得手段によって検出結果が取得された前記地物の傾斜角度を取得する角度取得手段と、
前記地物における前記座標特定点の配置と前記角度取得手段により取得された前記地物の傾斜角度とに基づいて、前記位置検出手段により検出した前記移動体の位置の誤差範囲を推定する誤差範囲推定手段と、を有することを特徴とする移動体位置検出システム。
【請求項2】
前記誤差範囲検出手段は、前記地物における前記座標特定点の配置と前記角度取得手段により取得された前記地物の傾斜角度とに基づいて、前記誤差範囲が前記位置検出手段により検出した前記移動体の位置に対して前記移動体の進行方向、逆方向又は両方向のいずれにあるかを特定することを特徴とする請求項1に記載の移動体位置検出システム。
【請求項3】
前記移動体の移動する道路の車線数を取得する車線数取得手段を有し、
前記誤差範囲推定手段は、前記角度取得手段により取得された前記地物の傾斜角度と前記移動体の移動する道路の車線数とに基づいて、前記誤差範囲の誤差量を推定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動体位置検出システム。
【請求項4】
前記地物検出結果取得手段により前記地物を検出した検出結果を取得する度に、前記位置検出手段の検出結果に基づいて前記移動体の位置を更新する位置更新手段を有し、
前記角度取得手段により取得された前記地物の傾斜角度が所定角度以上の場合には、前記位置検出手段の検出結果に基づいて前記移動体の位置を更新しないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の移動体位置検出システム。
【請求項5】
前記地物検出結果取得手段により前記地物を検出した検出結果を取得する度に、前記位置検出手段の検出結果に基づいて前記移動体の位置を更新する位置更新手段と、
第1地点から第2地点までの前記移動体の移動に伴って生じる前記移動体の位置の検出誤差である走行誤差を取得する走行誤差取得手段と、を有し、
前記第1地点で前記地物検出結果取得手段により取得された検出結果に基づいて前記誤差範囲推定手段により推定された誤差範囲である第1誤差範囲と前記走行誤差とを合わせた誤差量が、前記第2地点で前記地物検出結果取得手段により取得された検出結果に基づいて前記誤差範囲推定手段により推定された誤差範囲である第2誤差範囲の誤差量よりも小さい場合には、前記第2地点での前記位置検出手段の検出結果に基づいて前記移動体の位置を更新しないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の移動体位置検出システム。
【請求項6】
前記地物検出結果取得手段は、前記移動体に設置された撮像手段より撮像した画像に基づいて、前記移動体が移動する道路に形成された前記地物を検出した検出結果を取得することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の移動体位置検出システム。
【請求項7】
前記地物は、前記移動体が移動する路面に形成された路面標示であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の移動体位置検出システム。
【請求項8】
前記地物検出結果取得手段は、前記路面標示として停止線を検出した検出結果を取得することを特徴とする請求項7に記載の移動体位置検出システム。
【請求項9】
移動体の周辺に存在する地物を検出した検出結果を取得する地物検出結果取得手段と、
前記地物検出結果取得手段によって検出結果が取得された前記地物と該地物に含まれる座標特定点の位置情報とが対応付けられた地物情報を取得する地物情報取得手段と、
前記地物情報取得手段により取得された前記地物情報に基づいて、前記移動体の位置を検出する位置検出手段と、
前記地物検出結果取得手段によって検出結果が取得された前記地物の傾斜角度を取得する角度取得手段と、
前記地物における前記座標特定点の配置と前記角度取得手段により取得された前記地物の傾斜角度とに基づいて、前記位置検出手段により検出した前記移動体の位置の誤差範囲を推定する誤差範囲推定手段と、を有することを特徴とする移動体位置検出装置。
【請求項10】
移動体の周辺に存在する地物を検出した検出結果を取得する地物検出結果取得ステップと、
前記地物検出結果取得ステップによって検出結果が取得された前記地物と該地物に含まれる座標特定点の位置情報とが対応付けられた地物情報を取得する地物情報取得ステップと、
前記地物情報取得ステップにより取得された前記地物情報に基づいて、前記移動体の位置を検出する位置検出ステップと、
前記地物検出結果取得ステップによって検出結果が取得された前記地物の傾斜角度を取得する角度取得ステップと、
前記地物における前記座標特定点の配置と前記角度取得ステップにより取得された前記地物の傾斜角度とに基づいて、前記位置検出ステップにより検出した前記移動体の位置の誤差範囲を推定する誤差範囲推定ステップと、を有することを特徴とする移動体位置検出方法。
【請求項11】
コンピュータに、
移動体の周辺に存在する地物を検出した検出結果を取得する地物検出結果取得機能と、
前記地物検出結果取得機能によって検出結果が取得された前記地物と該地物に含まれる座標特定点の位置情報とが対応付けられた地物情報を取得する地物情報取得機能と、
前記地物情報取得機能により取得された前記地物情報に基づいて、前記移動体の位置を検出する位置検出機能と、
前記地物検出結果取得機能によって検出結果が取得された前記地物の傾斜角度を取得する角度取得機能と、
前記地物における前記座標特定点の配置と前記角度取得機能により取得された前記地物の傾斜角度とに基づいて、前記位置検出機能により検出した前記移動体の位置の誤差範囲を推定する誤差範囲推定機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−29426(P2013−29426A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165828(P2011−165828)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】