説明

移動体位置検出システム

【課題】赤外線を用いた位置検出において、位置検出精度の向上を図るためには、赤外線発信機から照射される赤外線照射範囲を狭くする必要があり、一方、位置検出精度の向上をさせるためには、赤外線発信機の設置個数を増やさなければならない。
【解決手段】赤外線発信機10は9つの赤外線発信用LED51〜59を備え、赤外線発信用LED51〜59は、それぞれが異なる位置IDデータを移動体に照射する。赤外線照射範囲は重複を回避するように定め、赤外線発信用LED51〜59の照射タイミングもずらせる。これにより、1つの赤外線発信機10からの赤外線照射範囲内を9つに分割し、移動体の詳細な位置検出を可能とすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的狭い範囲内で人や物が移動するときに、それら移動体の位置認識を行う移動体位置検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の移動体位置検出システムは、図9に示すように、建物の天井部にピッチをおいて多数配設された位置センサユニットが基地局からの人体検知コマンドを受信し、床上を歩行する被験者を検出すると、位置データIDを被験者の肩等に装着された携行ユニットに赤外線で発信し、携行ユニットは位置IDデータに自己IDコードを付加した合成信号を基地局へ電波で送信し、基地局のコンピュータは、受信したデータに基づいて、人体を認識すると共に人体の動きを演算するというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10-293886号公報(第2頁−第3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の移動体位置検出システムでは、赤外線発信機から照射される赤外線は、照射範囲全てに同一の位置IDデータを発信しているため、位置の検出精度を向上させるためには、赤外線の照射範囲を小さくすることが必要となり、それに伴い赤外線発信機の設置個数を増やさなければならないため、検出する位置精度を向上させるには、多数の赤外線発信機を用いなければならないという第1の問題点がある。
【0005】
また、赤外線発信機から照射された赤外線を携行ユニットが受信した時点で、基地局に位置IDデータを送信しているため、赤外線を受信する携行ユニットの数が増加するに従い、赤外線受信の履歴等を管理する基地局と携行ユニット間の通信トラフィックが増大するという第2の問題点がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、赤外線発信機から照射される赤外線の照射範囲を小さくすることなく、位置検出精度の向上が可能な移動体位置検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移動体位置検出システムは、移動体に対する位置検出範囲をカバーするように配備され発信源の位置IDデータを赤外線で発信している複数の赤外線発信機と、位置検出範囲において赤外線発信機から赤外線を受信する移動体に装着された赤外線受信機と、赤外線受信機と一体化され赤外線受信機から通知された一定期間の位置IDデータの受信記録を基に現在の位置を算出する携帯端末と、携帯端末から算出された位置に対応する位置IDデータの送信を受け、位置IDデータの送信元の携帯端末を特定して携帯端末毎に受信履歴を保存または表示する位置管理サーバを備え、赤外線発信機のそれぞれは、異なる一意な位置IDデータを順次に照射する複数の赤外線発信用LEDを備えたことを特徴とする。
【0008】
より詳しくは、本発明の移動体位置検出システムは、赤外線発信機からの赤外線照射時に各赤外線発信用LEDから照射される赤外線が干渉しないように、赤外線発信用LEDから赤外線を照射するタイミングを制御する手段を備えている。
【0009】
また、携帯端末は、受信した赤外線位置IDデータから現在位置を特定し、現在位置特定後に再度赤外線位置IDデータを受信した場合、同一の赤外線位置IDデータであるかを判定し、同一の赤外線位置IDデータであれば、位置管理サーバへ位置情報を送信することを抑止する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、赤外線発信機から照射される赤外線の照射範囲を狭くすることなく、位置検出の精度を向上できる。その理由は、1つの赤外線発信機から照射される赤外線照射範囲内に、複数の異なる位置IDデータを照射し、異なる位置IDデータが照射される範囲を作り出すことにより、1つの赤外線発信機から照射される赤外線照射範囲内を複数に分割し、赤外線の照射範囲を十分に広く設定した場合でも詳細な位置を検出できるためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[構成の説明]
図1は本発明の移動体位置検出システムの一実施例を示す。この移動体位置検出システムは、n個の赤外線発信機11〜1n(10で代表する)と、移動体に装着された携帯端末30と、携帯端末30と一体化された赤外線受信機20と、位置管理サーバ40とから構成されている。
【0013】
赤外線発信機10は、赤外線照射範囲が移動体に対する位置検出範囲をカバーするように配備され、発信源の位置IDデータを赤外線で発信している。移動体が位置検出範囲に入って、赤外線受信機20が赤外線発信機11〜1nから赤外線を受信すると携帯端末30に位置IDデータを通知する。携帯端末30は、一定期間の位置IDデータの受信記録を基に現在の位置を算出し、算出された位置に対応する位置IDデータを位置管理サーバ40へ送信する。位置管理サーバ40位置IDデータの送信元の携帯端末30を特定し携帯端末30毎に受信履歴を保存または表示する。
【0014】
赤外線発信機10のそれぞれは、図2に示すように、例えば、9個の赤外線発信用LED51〜59(50で代表)を備え、赤外線発信用LED51〜59のそれぞれは、異なる一意な位置IDデータを順次に発信する。この位置IDデータの構成を図3に示す。図3を参照すると、位置IDデータは32ビットにより構成され、前半の24ビットが赤外線発信機の位置を示す赤外線位置ID、後半の8ビットが赤外線発信機に実装された赤外線発信用LEDの位置を示す詳細位置IDとなっている。
【0015】
赤外線発信用LED50は、それぞれ一定の照射角度を持って赤外線発信機10に実装されており、図4が示すとおり重複エリアが少なくなるように赤外線を照射することを可能としている。この赤外線照射範囲61〜69(図4)は赤外線発信用LED51〜59(図2)に対応している。
【0016】
図5は赤外線発信用LED50の照射角度の算出方法を説明するためのモデル化した図である。図5のように、赤外線発信機100から照射面への垂直距離(照射距離)をd、赤外線照射範囲60の半径(照射半径)をeとすると、赤外線発信用LED51と赤外線発信用LED54に対する照射角度nは、次式により求められる。
COSn=d/f、fの二乗=(dの二乗)+4×(eの二乗)
他の赤外線発信用LED50についても同様に考えればよい。従って、隣り合う赤外線発信用LED50の間の角度は、図6に示す平面図から明らかなようにnとなるので、各赤外線発信用LED50はnの角度を保って赤外線発信機10に実装される。
【0017】
図7は、赤外線発信機10における位置IDデータ合成回路を示す。本移動体位置検出システムは、このような位置IDデータ合成回路を赤外線発信機11〜1nと1対1対応に備え、それぞれの位置IDデータ合成回路は並行して動作する。このように、赤外線発信機10に実装される複数の赤外線発信用LED50がそれぞれ異なる位置IDデータを照射するように構成されているため、1つの赤外線発信機10の赤外線照射範囲内の位置を詳細に検出することが可能となる。この位置IDデータ合成回路は9つの赤外線発信用LED51〜59に対するものであって、赤外線発信用LED51〜59と1対1対応の8ビットレジスタ71〜79,上位24ビットレジスタ80,電源回路90,セレクト信号生成回路91,2つのセレクタ92,93およびLED制御回路94で構成されている。
【0018】
8ビットレジスタ71〜79は、図3に示した詳細位置IDを保持し、上位24ビットレジスタ80は、図3に示した赤外線位置ID(当該赤外線発信機10の赤外線位置ID)を保持している。電源回路90は赤外線発信用LED51〜59に赤外線発信のための電力を供給している。セレクト信号生成回路91は、移動体の移動速度に対し切替時間が無視できる程度の速さで一定周期のセレクト信号を発生してセレクタ92,93に出力している。セレクタ92はセレクタ信号に応答して赤外線発信用LED51〜59の内の1つのみを活性化する。
【0019】
また、セレクタ93はセレクタ信号に応答して8ビットレジスタ71〜79の内の1つのみを選択して、その内容をLED制御回路94に出力する。LED制御回路94には上位24ビットレジスタ80も接続されているので、LED制御回路94は、上位24ビットレジスタ80からの赤外線位置IDと、8ビットレジスタ70からの詳細位置IDとから位置IDを合成し、それをデコードして赤外線発信用LED51〜59へ出力する。この結果、赤外線発信用LED51〜59の内で活性化されている1つのみから位置IDデータが赤外線で発信される。
【0020】
[動作の説明]
次に、以上のように構成された本移動体位置検出システムの動作について説明する。移動体に対する位置検出範囲をカバーするように赤外線発信機10が配備され、被験者等の移動体には、一体化された赤外線受信機20と携帯端末30が装着されている。移動体が赤外線照射範囲に入ったことを検知すると、赤外線発信機10は発信源の位置IDデータを赤外線で発信する。それぞれの赤外線発信機10からは、前述のようにして複数の赤外線発信用LED50により赤外線が発信される。
【0021】
赤外線受信機20は赤外線に含まれる位置IDデータを検出し、受信した位置IDデータを携帯端末30へ通知する。携帯端末30は、赤外線受信機20から通知された位置IDデータを一定期間保存し、一定期間の赤外線受信記録を基に現在の位置を算出し、算出された位置に対応する位置IDデータを位置管理サーバ40へ送信する。位置管理サーバ40は位置IDデータの送信元の携帯端末30を特定し携帯端末30毎に受信履歴を保存または表示する。
【0022】
図8は、携帯端末30における動作を示すフローチャートである。先ず、動作開始時に位置判定の基準となる現在時刻を記録する(図8のステップS1)。次に、赤外線受信機20からの位置IDデータ通知の有無を判定する(ステップS2)。このとき位置IDデータ受信の通知を受信していないときはステップS3へ進み、受信している場合にはステップS8へ進む。
【0023】
ステップS3では現在時刻を取得し、この時刻からステップS1で記録された時刻を減算する(ステップS4)。次に、ステップS4における減算の結果、時間差が10秒未満であればステップS2へ戻りステップS2〜S5を繰り返す。時間差が10秒以上であればタイムアウトとしステップS6を実行する。
【0024】
ステップS6では、一定期間の間に位置IDデータを受信できなかったことになるため、現在位置を不明として携帯端末30が赤外線照射範囲外に存在するものと設定し、そのことを位置管理サーバ40に通知する(ステップS7)。
【0025】
一方、ステップS2において赤外線受信機20からの位置IDデータを受信した場合の動作について述べる。この場合は、赤外線受信機20から位置IDデータを読み込み(ステップS8)、現在記録されている現在位置を示す位置IDデータと赤外線受信機20から読み込んだ位置IDデータを比較し、同じ位置IDデータであった場合には、携帯端末30の移動が発生していないと判断し、位置管理サーバ40への通知は行わず、ステップS1へ戻る。
【0026】
比較結果が異なる場合には、携帯端末30の移動があったと判断し、現在携帯端末30が受信している位置IDデータを記録する(ステップS10)。次に、記録された位置IDデータを位置管理サーバ40へ通知する(ステップS11)。このように、同一の位置IDデータを受信した場合には、位置管理サーバ40への通知を抑止し、位置の変化のみを位置管理サーバ40へ通知しているため、携行ユニットの数が増加した場合でも通信トラフィックを抑えることができ、ネットワークの負荷を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、施設内の人および物体の動線を管理する動線管理システムや、施設内の在籍状況や移動状況を管理するプレゼンテーションシステムといった用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の移動体位置検出システムの実施の形態を示すブロック図
【図2】本発明の赤外線発信機の一実施例を示す図
【図3】本発明における位置IDデータのフォーマットを示す図
【図4】本発明の赤外線発信機の赤外線照射範囲を示す図
【図5】赤外線発信用LED50の照射角度の算出方法を説明するためのモデル化した図
【図6】隣り合う赤外線発信用LEDの間の角度を示す平面図
【図7】本発明の赤外線発信機における位置IDデータ合成回路を示すブロック図
【図8】本発明における携帯端末の動作を示すフローチャート
【図9】従来技術の一例を示すブロック図
【符号の説明】
【0029】
10〜1n 赤外線発信機
20 赤外線受信機
30 携帯端末
40 位置管理サーバ
50〜59 赤外線発信用LED
60〜69 赤外線照射範囲
71〜79 8ビットレジスタ
80 上位24ビットレジスタ
90 電源回路
91 セレクト信号生成回路
92〜93 セレクタ
94 LED制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に対する位置検出範囲をカバーするように配備され発信源の位置IDデータを赤外線で発信している複数の赤外線発信機と、
前記位置検出範囲において前記赤外線発信機から赤外線を受信する前記移動体に装着された赤外線受信機と、
前記赤外線受信機と一体化され前記赤外線受信機から通知された一定期間の位置IDデータの受信記録を基に現在の位置を算出する携帯端末と、
前記携帯端末から前記算出された位置に対応する位置IDデータの送信を受け、位置IDデータの送信元の携帯端末を特定して携帯端末毎に受信履歴を保存または表示する位置管理サーバを備え、
前記赤外線発信機のそれぞれは、異なる一意な位置IDデータを順次に照射する複数の赤外線発信用LEDを備えたことを特徴とする移動体位置検出システム。
【請求項2】
前記赤外線発信機からの赤外線照射時に各赤外線発信用LEDから照射される赤外線が干渉しないように、赤外線発信用LEDから赤外線を照射するタイミングを制御する手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の移動体位置検出システム。
【請求項3】
前記携帯端末は、受信した赤外線位置IDデータから現在位置を特定し、現在位置特定後に再度赤外線位置IDデータを受信した場合、同一の赤外線位置IDデータであるかを判定し、同一の赤外線位置IDデータであれば、前記位置管理サーバへ位置情報を送信することを抑止することを特徴とする請求項1または請求項2記載の移動体位置検出システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−102023(P2008−102023A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284993(P2006−284993)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】