説明

移動体位置検出装置

【課題】マップマッチングによる移動体の現在位置の測位を、車両の進行方向を加味しつつ簡便かつ精度よく行えるようにする。
【解決手段】移動体としての車両Vに、道路周辺の物体を検出する物体検出センサ1が設けられる。車両Vの現在位置の測位に先立って、物体検出センサ1によって検出された所定の固定物についての検出データと地図データとをマッチングさせることにより、車両Vの進行方向の補正が行なわれる。補正された後の車両Vの進行方向に基づいて、移動体の現在位置の測位のためのマッチングが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)を用いたナビゲーションシステムにおいては、GPSの測位誤差等を考慮して、表示装置における地図上の道路上に自車両を表示するべく、特許文献1に示すように、走行軌跡と道路形状によりマップマッチングが行われている。
【0003】
ところで、近時は、ナビゲーションシステムと移動体の走行制御等とを関連づけて移動体の運転支援を高める等のことが考えられており、このため移動体の位置情報に関してマップマッチングを行っている場合の誤差数m程度の精度では足りず、より高精度な位置情報が求められるようになっている。
【0004】
特許文献2には、絶対位置が既知とされた外部の固定対象物に対する自己の相対位置を検出手段により検出して、その検出結果に基づいてGPS検出に基づく自己の位置を補正するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−102052号公報
【特許文献2】特開2007−218848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、移動体の位置情報は、移動体を上方から見た平面図上の位置つまり直交座標系によって示すことが一般的である。この一方、移動体としての例えば車両において、レーダやカメラによって道路周辺に存在する固定物までの距離と方位とを検出して、この固定物の地図データ上での位置情報に基づいて、車両の現在位置と方位を精度よく検出することが可能となる。
【0007】
しかしながら、移動体としての例えば車両の進行方向が道路に対して左右方向にずれていると、つまり車両の向きと道路の方向とが相違していると、例えば車両の中心位置においての現在位置が同じであっても、道路周辺に存在する固定物(のある特定位置)までの距離および方位が相違してしまうことになる。このことは、車両の向きの相違に応じて、地図データを利用したマップマッチングによって得られる車両の現在位置に誤差を生じさせる原因となる。このため、現在位置をマップマッチングにより精度よく検出するには、直交座標系におけるX軸方向とY軸方向の誤差に加えて、進行方向の誤差をも勘案してマップマッチングを行わなければならず、その演算処理が制御系の大きな負担となる。
【0008】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、マップマッチングによる移動体の現在位置の測位を、車両の進行方向を加味しつつ簡便かつ精度よく行えるようにした移動体位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
移動体に周囲の物体を検出する物体検出手段が設けられ、
地図データと前記物体検出手段で検出された検出データとをマッチングさせることにより移動体の現在位置の測位を行う移動体位置検出装置であって、
移動体の現在位置の測位に先立って、前記物体検出手段によって検出される道路周辺の所定の固定物の検出データと地図データとをマッチングさせることにより移動体の進行方向の補正を行ない、
補正された後の移動体の進行方向に基づいて、移動体の現在位置の測位のためのマッチングが行われる、
ようにしてある。上記解決手法によれば、あらかじめ移動体の進行方向の補正が行われるので、その後の現在位置の測位のためのマップマッチングの処理を簡単にかつ精度よく行うことができる。
【0010】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記移動体の進行方向の補正が、あらかじめ設定された所定条件を満足したことを条件として行われる、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、極力不必要に進行方向の補正を行なわないようにして、制御系の負担を軽減する上で好ましいものとなる。
【0011】
前記移動体の進行方向の補正が、所定エリアにおける地図データの線分方向と検出データの線分方向とを対比させて行われる、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、線分部分、つまり例えばガードレール等の長く伸びる部分を対比させるので、進行方向の補正そのものを精度よく行って、現在位置の測位も精度よく行うことができる。
【0012】
前記所定エリアが移動体の前方領域とされている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、レーダやカメラ等によって移動体の前方領域にある物体(特に障害物)を検出することが一般的に行われているので、この前方領域にある物体を検出する検出手段を有効に利用して、進行方向の補正を行うことができる。
【0013】
前記所定エリアが、前回現在位置の測位に用いた地図データのエリアとされ、
前回現在位置測位のためにマッチングしたデータを用いて、移動体の進行方向の補正ためのマッチングが行われる、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、用いるデータ量を極力少なくしつつ進行方向の補正を精度よく行うことができる。
【0014】
移動体の進行方向の補正を行うための前記所定の固定物が、移動体が移動している道路レーンと平行な平行物とされている、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、進行方向の補正を精度よく行うことができ、かつ、道路に沿って平行な固定物が多く存在するので、進行方向の補正を行う機会を極力多く確保する上でも好ましいものとなる。
【0015】
前記平行物のうち、前記物体検出手段によって該平行物までの距離と方位とが検出可能な範囲内のものが前記進行方向の補正に用いる、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、平行物のうちある長さ範囲に限定された状態で距離と方位とを検出するので、つまり平行物を無限延長したようなデータを利用しないので、進行方向の補正のための処理が簡便となり、しかもカーブを移動しているようなときでも平行物を利用した進行方向の補正を行うことが可能となる。
【0016】
前記平行物を用いて、移動体の現在位置の測位のためのマッチングが行われる、ようにしてある(請求項8対応)。この場合、道路に沿って平行な固定物が多く存在するので、現在位置の測位を行う機会を極力多く確保する上で好ましいものとなる。
【0017】
同一の前記検出データを用いて、移動体の現在位置の測位と移動体の進行方向の補正とが行われる、ようにしてある(請求項9対応)。この場合、用いるデータ量を極力少なくして制御系の負担を軽減しつつ、進行方向の補正に用いられたデータを用いて現在位置の測位が行われるので、現在位置の測位をより精度よく行う上でも好ましいものとなる。
【0018】
前記固定物が、ガードレール、車線を区画する車線ライン、建物のうち少なくとも1つとされている、ようにしてある(請求項10対応)。この場合、道路に沿って多く存在する車線ライン、ガードレール、建物を有効に利用して、進行方向の補正やこれに引き続く現在位置の測位を行う機会を増大させる上で好ましいものとなる。
【0019】
前記移動体が自動車とされている、ようにしてある(請求項11対応)。この場合、GPSの利用度が極めて高くしかも衝突回避等の安全が要求される自動車について、現在位置を精度よく測位して、種々の運転支援等の上で好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、マップマッチングによる移動体の現在位置の測位を簡便かつ精度よく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が適用された車両の簡略平面図。
【図2】本発明の制御系統例をブロック図的に示す図。
【図3】車両が走行している道路の周辺にある固定物の例を示す平面図。
【図4】図3に対応した固定物を車両に搭載した物体検出センサによって検出した検出データの一例を示す図。
【図5】図3に対応した固定物の地図データ上での状態を示す図。
【図6】車両の進行方向のずれによって、マップマッチングに誤差を与えている状態を
【図7】車両の進行方向のずれが補正されて、マップマッチングが精度よく行われれちる状態を示す図。
【図8】道路に沿って平行に伸びる固定物を利用して車両の進行方向のずれ補正を説明するための平面図。
【図9】本発明の制御例を示すフローチャート。
【図10】本発明の制御例を示すフローチャート。
【図11】マップマッチングの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1において、Vは、移動体としての車両(実施形態では自動車)である。車両Vは、左右4隅にそれぞれ、レーダ(例えばレーザレーダ)あるいはカメラの少なくとも一方からなる物体検出センサ1が装備されている。前2個の物体検出センサ1は、車両前部側方から前方に渡って周囲の物体の方位と相対距離を検出するものであり、後ろ2個の物体検出センサ1は車両の後部側方から後方に渡って物体の方位と距離を検出するものである。車両Vは、前後左右の車輪の速度を検出する車輪速センサ2を装備している。各車輪速センサ2で検出された車輪速の平均値が車速とされる。車両Vは、ナビゲーション装置を有しており、ナビゲーション装のGPS(GPSセンサ)が符号3で示され、地図データベースが符号4で示され、表示画面が符号5で示される。コントローラUによる制御によって、表示画面5に表示された地図上に、GPS3で検出された車両Vの現在位置が表示される。車両Vはさらに、ジャイロ6,舵角センサ7を有する。
【0023】
車両Vは、マイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)Uを有する。コントローラUは、後述するように、車両Vの現在位置と進行方向とを精度よくマップマッチングする機能と、衝突回避のための運転支援等の制御を行う。このため、コントローラUには、図2に示すように、前述の各種センサ等1〜7からの信号が入力される一方、表示画面5、警報装置8,車両制御装置9を制御するようになっている。コントローラUは、表示画面5に対して、車両Vの現在位置を表示する制御を行う。物体検出センサ1で検出された物体が車両Vに接触する可能性があると判断したときに、警報装置8を作動させて、例えば音声によって運転者に警報を行う。また、コントローラUは、物体検出センサ1によって、警報装置8が作動するよりもより近い距離にある物体を検出して衝突の危険性が極めて高いと判断したときに、車両制御装置9を作動させて、例えば自動操舵を行ったり自動ブレーキを行う等によって、衝突を回避する制御を行うようになっている。
【0024】
また、コントローラUは、車車間通信によって、車両Vの現在位置と進行方向とを前方付近に存在する他車両に知らせて、他車両との衝突等を未然に防止するようになっている。さらに、コントローラUは、車両Vが車線を逸脱して危険である場合に、自動操舵を行って車線逸脱を防止するようになっている。コントローラUは、この他、例えば車両Vと、停止線位置、交差点位置、死角域のガードレールとの距離に応じて車両Vについての適正な制御を行う。なお、車両Vの位置に応じたコントローラUによる各種の制御は種々想定されるが、位置検出そのものとは直接関係ないので、これ以上の説明は省略する。
【0025】
車両Vの現在位置と進行方向とを精度よく検出するために、次のような制御が行われる。まず、車両Vの現在位置は、車両Vを上方から見た平面図上、つまり例えば前後方向をX軸、左右方向をY軸とする直交座標系で示される。また、車両Vの進行方向は、車両Vの左右方向(ヨー方向)となるものであって、例えば直交座標系における1次直線の傾きとして示すことができる。
【0026】
地図データベース4には、三次元地図データとしてのボクセルデータが記憶されている。表示画面5上に表示される地図は、実際の地形を上方から見た平面図であり、地図上の各位置は実際の地形に応じて精度よく設定されている。また、ボクセルデータは、三次元空間を例えば一辺50cmの立方体に分割したものであり、この分割された多数のボクセルには、ボクセルの中心位置の位置座や、ボクセル内に含まれる物体(固定地物)、例えば電柱、ガードレール、建物、電源ボックス、道路の車線等の正確な位置情報が位置データとして含まれる。なお、以下の説明では、三次元地図データを単に地図データと称する。そして、車両Vの位置決定等のために用いられる地図データ中の位置情報は、物体検出センサ1でのセンシング平面と同じ高さ位置でのデータが用いられることになる。
【0027】
図3は、車両Vの周囲にある実際の固定物の一例が示される。この図3中、11はガードレール、12は建物、13は塀、14は建物である。また、車両Vが走行している道路の車線のうち、中央車線が符号21で示され、左右の側方車線が符号22,23で示される。また、中央車線21と側方車線22の間の走行レーンが符号24で示され、中央車線21と側方車線23の間の走行レーンが符号25で示される。そして、車両Vは、走行レーン24を走行している状態が示される。なお、物体検出センサ1は、各車線21、22、23や、走行レーン24、25をも検出可能であり、各車線21〜23は、ガードレール11等と同様に、物体検出センサ1での検出対象となる固定物(地物)とされる。なお、以下の説明では、符号11〜14あるいは21〜23を固定物として総称する場合がある。
【0028】
図4は、図3の状態において、固定物11〜14について物体検出センサ1が検出したときの検出データが示される。この検出データにおいては、各固定物11〜14は、道路に面した部分の形状として把握される。この図4において、固定物11〜14に対応したデータ部分が、「A」の符号を付して示される。すなわち、例えばガードレール11に対応したデータが符号11Aで示される。
【0029】
図5は、図4に対応した所定エリアでのセンシング平面と同じ高さの地図データを示す。この図5において、四角形の1つ1つのマス目は、ボクセルである。この図5において、固定物11〜14に対応したデータ部分が、「B」の符号を付して示される。すなわち、例えばガードレール11に対応したデータが符号11Bで示される。
【0030】
図4での直交座標系の方向と図5での直交座標系の方向とが一致しているときは、図7に示すように、図4の検出データ上の固定物11A〜14Aと図5の地図データ上の固定物11B〜14Bとが完全に一致させることが可能となる。すなわち、11Aと11Bとが一致する等、全ての固定物のデータ同士を一致させることができる。
【0031】
一方、図4での直交座標系の方向と図5での直交座標系の方向とが一致していないときは、図6に示すように、一部の固定物のデータ同士は一致可能であっても、データ同士が一致されない固定物も存在することになる。特に、車両Vの遠方にある固定物14Aと14Bとが一致しないことになる。このため、従来は、直交座標系におけるX軸方向のずれと、Y軸方向のずれと、検出データと地図データとの間での直交座標系の向きのずれ(つまり車両Vの進行方向のずれ)との3つのずれ要素を考慮して、マップマッチングさせる必要があり、その演算量が膨大となって、制御系の大きな負担となっていた。
【0032】
次に、図8を参照しつつ、車両Vの進行方向のずれ補正の点について説明する。まず、図8において、符号21〜25は、図3で示すのと同様の車線あるいは走行レーンを示す。そして、走行レーン24の中心線が符号24aで示され、走行レーン25の中心線が符号25aで示される。また、道路の周辺に位置すると共に道路と平行な固定物として、ガードレール31,32と建物33とが示される。そして、このガードレール31,32,建物33のうち、道路に臨む側でかつ道路と平行な面にハッチングが付されている。
【0033】
図8では、車両Vは、走行レーン24の中心線24aに対して、右方向に角度δだけずれた状態となっている。ここで、ガードレール31,32,建物33が道路と平行であることは、例えば地図データを参照することにより、あるいは検出データから例えば側方車線22とガードレール31,32や建物33との間の位置関係をみることにより知ることができる。したがって、物体検出センサ1によって平行な固定物を検出したときの検出データから、車両Vが走行レーン24の中心線24aとなす角度δおよび車両Vと平行固定物との間の距離Lを知ることができる。
【0034】
平行固定物31〜33の位置および方位は地図データによって精度よく設定されていることから、車両Vの平行固定物31〜33からの離間距離Lと中心線24aに対してなす角度δとから、車両Vの進行方向(絶対的な方位)を精度よく知ることができる。このようにして、車両Vの進行方向の補正(進行方向の絶対的な方位の決定)が行われる。
【0035】
ここで、位置ずれと方位ずれの両方を含む場合に、そのずれ量を演算する手法例について説明する。まず、地図データ上での固定物体の位置を(xi,yi)とし、検出データ上での固定物体の位置を(ui、vi)とし、位置ずれをqx、qyとし、方位のずれをθとすると、数1が成立する。そして、n個のデータを使用すると、数2が成立する。
【0036】
【数1】

【0037】
【数2】

【0038】
数2に示す方程式群は、数3の行列として置くことができる。
【0039】
【数3】

【0040】
ここで、Aの転置行列をAt としたときに、数4を解いて、qx、qy、θを求める。そして、求められたqx、qy、θが所定値以下の場合(ずれが小さい場合に)に、精度が十分とされる。なお、数4中の「AtA」、「AtY」を展開すると、数5になる。
【0041】
【数4】

【0042】
【数5】

【0043】
上述のように、方位ずれθを加味したずれ量の決定には、演算量が多くなり、制御系の大きな負担となる。しかしながら、前述のように、あらかじめ方位ずれが補正されて精度よいものに決定されていれば、前述した演算において方位ずれθを既知の一定値とみなして行えばよく、位置ずれを補正すること、つまりマップマッチングによる車両Vの現在位置の測位が簡便かつ精度よく行うことができる。
【0044】
また、方位ずれが補正された後の状態において、地図データの直交座標系と検出データの直交座標系とをマッチングさせる際に、次のような手法で行うこともできる。すなわち、図11において、黒塗り部分が、地図データと検出データとの比較対象される固定物体(の部分)であり、四角形の枠体が要求位置精度に対応したメッシュ(升目)である(例えば10cm四方)。なお、図11では、抽出された特徴部分(領域)としては、特に、道路に沿って直線状に長く伸びる(例えば5m〜10m)固定物(例えば建物やガードレール)を含むようにするのが好ましく、線分としての直線状であれば建物やガードレールの一部であってもよい。
【0045】
地図データと検出データとの抽出された各特徴部分同士を、例えば地図データ上の特徴部分を固定しつつ、検出データ上の特徴部分をX軸方向およびY軸方向に1メッシュづつ移動させて、その一致度合が判定される。すなわち、地図データ上の抽出特徴部分に対して、検出データ上の抽出特徴部分をX軸方向およびY軸方向に1メッシュ移動させる毎に、その一致度合をみて、最終的に、もっとも一致度合が高い状態が、地図データと検出データとの直交座標系での位置ずれ量となる。このような手法によって、地図データと検出データとの位置ずれ量を簡便に知ることができる。この位置ずれ量に基づいて、地図データ上の車両Vの位置を補正することによって、直交座標系における車両Vの絶対位置が精度よく測位されることになる。
【0046】
次に、コントローラUの詳細な制御内容について、図9,図10のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下の説明でQはステップを示す。まず、図9のQ1において、図2に示す各種センサ等からの信号が入力される。この後、Q2において、GPS3での検出結果に基づいて、車両Vの暫定の現在位置が決定されると共に、この暫定現在位置の道路情報が地図データ4から読み込まれる。
【0047】
Q2の後、Q3において、物体検出センサ1の検出範囲内で、車両Vの周辺の所定エリア(例えば車両Vを中心とする25m四方)が設定される。この後、Q4において、物体検出センサ1での検出結果に基づいて、周辺エリア内における検出データ(図4に示すようなセンサ地図データ)が作成される。
【0048】
Q4の後、Q5において、方向判定を行なう必要があるか否か、つまり車両Vの進行方向の補正が必要なときであるか否かが判別される。実施形態では、方向判定する必要がある場合の所定条件が、次のように設定されている。すなわち、(1)エンジン始動後でGPSデータの取得時、(2)所定距離走行したとき(速度×時間が所定値に達したとき)、(3)操舵角度が所定角度以上のとき、(4)左右の車輪速の差が所定値以上のとき、(5)ウインカが作動されたとき、(6)地図データに記憶された所定の特徴点(道路に平行な固定物が存在するとき)に位置したとき、とされている。
【0049】
上記Q5の判別でYESのときは、Q6において、後述するように、方向判定が実行される。Q6の後、あるいはQ5の判別でNOのときは、Q7において、方向判定された結果に基づいて(進行方向の補正が行われた状態で)、車両Vの現在位置の算出が行われる。Q7の後、Q8において、現在位置の算出が可能であったか否かが判別される。このQ8の判別でYESのときは、Q9において、Q7で算出された現在位置が、最終的な現在位置として決定される。また、Q8の判別でNOのときは、Q9を経ることなくリターンされる。なお、Q8の判別でNOのときは、現在位置として、Q2での暫定現在位置をそのまま用いたり、あるいは前回決定された現在位置と車速と舵角とヨーレートに基づいて現在位置を推定する等のことが行われる。
【0050】
図6のQ6の詳細が図10に示される。すなわち、まずQ21において、道路レーンと平行な固定物が抽出される。この後、Q22において、抽出された平行な固定物に対する角度と距離が算出される。この後、Q23において、Q22で算出された角度と距離とを用いて、検出データの方向補正が行われる。Q23の処理は、つまるところ、図6の向きアンマッチングを図7の向きマッチング状態にすることになる。
【0051】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。移動体としては、自動車、二輪車等の車両や、歩行者等、道路を移動する任意のものを含むものである。検出データで切り出す所定エリアを、前回の現在位置の測位に用いた地図データのエリアとして、前回現在位置の測位のためにマッチングしたデータを用いて移動体の進行方向の補正のためのマッチングを行うのが、使用するデータ量の軽減する等の上で好ましいものとなる。車両Vの後方にある固定物を検出データとして用いるようにしてもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、車両等の現在位置の測位を簡便に精度よく行う上で好ましいものとなる。
【符号の説明】
【0053】
V:車両
U:コントローラ
1:物体検出センサ
2:車輪速センサ
3:GPS
4:地図データ
5:表示画面
6:ジャイロ
7:舵角センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に周囲の物体を検出する物体検出手段が設けられ、
地図データと前記物体検出手段で検出された検出データとをマッチングさせることにより移動体の現在位置の測位を行う移動体位置検出装置であって、
移動体の現在位置の測位に先立って、前記物体検出手段によって検出される道路周辺の所定の固定物の検出データと地図データとをマッチングさせることにより移動体の進行方向の補正を行ない、
補正された後の移動体の進行方向に基づいて、移動体の現在位置の測位のためのマッチングが行われる、
ことを特徴とする移動体位置検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記移動体の進行方向の補正が、あらかじめ設定された所定条件を満足したことを条件として行われる、ことを特徴とする移動体位置検出装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記移動体の進行方向の補正が、所定エリアにおける地図データの線分方向と検出データの線分方向とを対比させて行われる、ことを特徴とする移動体位置検出装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記所定エリアが移動体の前方領域とされている、ことを特徴とする移動体位置検出装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記所定エリアが、前回現在位置の測位に用いた地図データのエリアとされ、
前回現在位置測位のためにマッチングしたデータを用いて、移動体の進行方向の補正ためのマッチングが行われる、
ことを特徴とする移動体位置検出装置。
【請求項6】
請求項1において、
移動体の進行方向の補正を行うための前記所定の固定物が、移動体が移動している道路レーンと平行な平行物とされている、ことを特徴とする移動体位置検出装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記平行物のうち、前記物体検出手段によって該平行物までの距離と方位とが検出可能な範囲内のものが前記進行方向の補正に用いる、ことを特徴とする移動体位置検出装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記平行物を用いて、移動体の現在位置の測位のためのマッチングが行われる、ことを特徴とする移動体位置検出装置。
【請求項9】
請求項1において、
同一の前記検出データを用いて、移動体の現在位置の測位と移動体の進行方向の補正とが行われる、ことを特徴とする移動体位置検出装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、
前記固定物が、ガードレール、車線を区画する車線ライン、建物のうち少なくとも1つとされている、ことを特徴とする移動体位置検出装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、
前記移動体が自動車とされている、ことを特徴とする移動体位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−242262(P2012−242262A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113227(P2011−113227)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】